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名無しの4Vクリムガン Pollyanna

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「なあ、キリキザン。おれは今日からみんなの良いところを探してゆこうと思うんだ」
 タチワキシティでの撮影が終わって楽屋で休んでいると、主人のハチクのいない隙に遊びにきたクリムガンに、突如そう告げられた。ずいぶん真剣な表情だった。
「どうしたの」と、僕は言った。「急にそんなことを言いだして」
「おれ、思ったんだ。おれには感情なんて理解できないけど、みんなにはたしかに存在する。みんなの感情を理解してゆこうと努めていったら、自分のそれについてもわかってくるんじゃないかって。みんなの良いところを見つけていったら、きっとみんな嬉しい。そしておれも見つけてあげられて嬉しい。そうやって嬉しさの共通部分を見出してゆけたらなって」
「それはいいけど、探すって言ってもどんなふうに?」
「たとえば……」
 クリムガンは僕の腕を両手で持ちあげて、こう言った。
「キリキザンの腕の刃、きれいだな。今日はとくに」
「別に、そんなわざとらしく褒めてもらわなくても……コマタナのときから、いつも刃こぼれしないよう磨いてるわけだから……」
「いいや、そんなことはない。今日のキリキザンの刃はすごくいい感じだ」
「そういうのをわざとらしいって言うんだって……」
 わかったのかわからないのか、そのあどけない表情から伺い知ることはできない。でも……きっと別に悪いことじゃない。たしかにクリムガンの言うとおりだった。だれかを褒めてあげることは、だれかを攻撃することなんかよりもずっとお互いに気持がいい。僕はクリムガンのこのちょっとした変化を快く思った。クリムガンにとってよい影響が及ぶのなら、どういうものであっても悪くないことなんじゃないか。
「まあ、いいよ。褒めてくれてありがとう。その、みんなのいいところ探し、頑張ってね」
「うん。またな。あ、今日の演技、すごくよかった。たとえば……」
 クリムガンは楽しそうにポケウッドの撮影の感想を語りだした。わざわざ僕の刃を褒めるのと、なにげなく僕の演技のよかったところを語るの、どちらが相手にとって好ましい「良いところ探し」なのか、今ひとつわかっていないらしい。それもしかたがないかもしれないな。みんなの良いところなんて、見つけようと思うとなかなか見つからなくて、それほど気にしていないときにだいたい発見する、道端に落ちているきれいなハネみたいなものだ。無論、どちらの「良いところ」についてもクムガンは他意なく語っているんだろうとはわかってるんだけど。
「それでまあ、こういう感じ。ごめんな、長々と喋って」
「全然いいよ。感想を聞かせてもらえるのはありがたい」
「じゃあ、今度こそまたな」
 去ってゆく背中の翼は、このあいだ見たときよりもピンと張っていて、だけどどこかフラフラ揺れているように見えたのは、気のせいだったんだろうか。




 わたしたちタブンネはこのところ、いつも一匹のクリムガンのことを心配している。
 わかってる。クリムガンはけっして愚かじゃない。でもタマゴから生まれて日が浅いクリムガンは、ちょっと素直すぎると思う。クリムガンのメンタルが弱いとか、心が軟弱とか、そんな侮蔑を言いたいんじゃなくて――そんなことを言うやつは二度と同じことを口にできないようにしてやる――、たとえばポケモンセンターのタブンネには、ある種の「ずぶとさ」が必要になる。それは心の強さとはそんなに関係がない。ジョーイの仕事を手伝いながら、のこのこと明後日の方向を向いていれば「ずぶとさ」は手に入る。そしてそれと引き換えに、空気が読めないだのなんだのと言われるようになる。言いたいことを言わせておけばいい。でも、クリムガンはそうやって割りきることができないポケモンだった。
 クリムガンが自分の殻に閉じこもるのは、周りから嫌われるということを恐れているから――というように見える。もちろん、それは直ちにまわりから好かれるようなるということは意味しない。難しいの。好かれるのには時間がかかるとしても、嫌われるのはほとんど一瞬。とりわけクリムガンが凶暴なポケモンである以上、好意を築くよりも崩してしまうほうがずっとずっと簡単。だとしたら、どんな陣営に属することもなく、非武装中立地帯で両手をあげて立っていれば、傷つくことも傷つけることもない。
 クリムガンは、自分が傷つくということ以上にだれかを傷つけることを恐れたんじゃないかな? それはある意味で分かちがたいものではあるし、そもそもそんなのはわたしたちの勝手な想像にすぎない。クリムガンがどう思っていたのかなんて、わからない。それにしても、心を閉ざすほうを選んだのはやっぱりもったいないとは思うんだけど……
 そうだ、そんなことを言いたかったんじゃない。最近、クリムガンはちょっと妙だった。
「タブンネってみんなにいつもやさしくしてあげて、偉いな」
 ありがとう、クリムガン。
「タブンネっていろんなポケモンの怪我や病気を見てもつらくならないなんて、強いな」
 そんなことないよ、クリムガン。
「タブンネってだれかを助けるわざをたくさん覚えてて、すごいな」
 今度あなたにもかけてあげる、クリムガン。
 ほかにもいろいろあるけど、こうやって褒められるのは悪い気分じゃない。そうしつこいわけでもないし、でも以前よりだいぶ頻度があがった気がしたから、わたしはある日、そのことについて尋ねてみた。
「クリムガン、最近わたしのことを褒めてくれるけど、なにかあったの?」
「前は褒めていなかったみたいだな」
「そんなつもりはないよ」
「みんなの良いところ探しをしてるんだ。こうやって、みんなの良いところを探すことで自分が幸せなんだって感じるんだよ」
「どういうこと?」
「タブンネにしてもそうだし、最近だとポケウッドのところのキリキザンとか、いっぱい良いところがあるんだ。そういう良いところがいっぱいある友達に囲まれてる毎日って、すごく幸せだと思わないか?」
「クリムガンがそう思うのなら、わたしもすごくいいことだって思う」
 良いところ探しか。
 ポケモンセンターで働いていたら、そんなことはわざわざ考える余裕もなかった。わたしたちは仕事に私情を挟めない。だから、そういうことができるのはクリムガンの特権なのかもしれない。
 とりあえず、わたしはそう思うことにした。




 僕は常に無表情だ。
 感情がないとかじゃない。むしろ俳優としてキャラクターを演じる以上、感情に敏感である必要があると思う。それは自分の感情であってもだれかの感情であっても変わらない。もちろん、演者だからだれかの感情に寄り添えるとは限らない。むしろそうでない者のほうが多いような気もする。でも僕は俳優である以前に、みんなにやさしくできるキリキザンでありたい。
 でも、そんなことをクリムガンに言う気には、とてもならない。クリムガンのあの言葉が「ねをはる」みたいに心のなかにあって、ジンジンと疼く。「おれには感情なんて理解できない」という言葉が。
 僕に言わせれば、クリムガンは表情豊かだ。だけどその表情はいつもひとつの方向を向いている。それがクリムガンにとってどういう意味を持っているのか、それを理解しようとするにはキリキザンとしての僕の脳みそには脂肪がつきすぎていると思う。ひとつ言えるのは、クリムガンだってみんなにやさしくできる……いや、きっと僕以上にそうすることができるだろう……僕はそう感じてる。
 最近、クリムガンはみんなの「良いところ探し」をはじめた。今日も公演前の楽屋にやってきて、いつもどおりの柔和な微笑みで嬉しそうに話しかけてきた。
「キリキザン、このあいだヒウンシティの噴水広場で劇をやったんだって? あの街の人間が、みんな足を止めて見てたって。すごいな」
「ああやって舞台を用意してもらえたら、僕たちもありがたいよ」
「でも忙しい人間たちを引き止めるなんて、そうそうできることじゃない」
「僕は僕のやれるだけのことをやっただけなんだ」
「でも、そんなすごいことができるポケモンと友達になれるなんて、おれは恵まれてるな」
「そう言っていただけると非常に光栄」
「おれ、もっとキリキザンの良いところを探してゆきたいんだ。そうすれば、きっとキリキザンのことを今以上に好きになれるし、今が幸せだってことをより実感できると思うんだ」
「ありがとう」と、僕は言った。「でも無理して探してもらわなくてもいいんだけどね。僕だって足りない部分はいっぱいあるんだから」
「なるべくみんなの良い部分に目を向けてゆきたいんだ。どんな悪い人間にも、どんなに凶暴なポケモンでも、良いところはあるって最近信じられるようになったから」
「それはけっこうなこと」
「じゃあ、公演、応援してるよ。またな」
 ドラゴンタイプの逞しい背中は、このあいだと変わらないようにも見えた。だけど翼をピンと張っているというよりはピシッと張り詰めているような感じがしたし、ふわふわと浮ついているというよりはどこか揺らぎを思わせるものだった。




 野生のポケモンの観点からいえば、人間に従うポケモンなど嫌われるにふさわしい。ポケモンセンターのタブンネなんて、その嫌われ者の総大将みたいなものだ。そういうわたしが言うのもなんだけど、それはある意味で正しくて、ある意味で大きな間違いだと思う。完全な善が存在しないように、完全な悪というのも存在しない。ポケモンセンターにいると、そのことを否応なく痛感することがある。どれほど悪辣をはたらく野生でさえ、その本質の多くは自衛であったり、仲間のためだったりする。自分本位に人間に外を為す野生ポケモンっていうのは稀だ。
 クリムガンはどうだろう。わたしたちタブンネはクリムガンと長く接してきたとはいえ、クリムガンのことを理解してあげられている気がすこしもしない。そして最近、とみにクリムガンのことがわからなくなっている気がする。もちろん、クリムガンが他者と壁を挟みたがるのが最大の原因だった。わたしはポケモンセンターのタブンネという立場に頼りがちだから、実はごくふつうのコミュニケーションというのがそんなに得意じゃない。クリムガンがなにを考えて、なにを感じて、なにを求めるのか……そういうことはクリムガンの表情や行動から読みとらなきゃいけない。でもクリムガンはいつもにこにこしていて、いつもふらふらしてる。わたしはわたしのできる精いっぱいをしているつもり。でもクリムガンがどう感じているかなんてわからない。そこにわたしなりの怖さもある。
「タブンネ」
 十四日ぶりにポケモンセンターにやってきたクリムガンは、いつもより上機嫌だった。
「今日はタブンネにお礼を言いにきたんだ」
「お礼? わたし、なにかしたかな」
「おれが来ると、ほかのみんなと同じように、怪我を治してくれて、食べるものをくれて、寝床を用意してくれること」
「ずっと前からじゃない」
「でもお礼は言ってなかったと思ったんだ。ありがとう。タブンネがやさしくしてくれて、おれはすごく幸せだ」
「そう。うん、どういたしまして」
 やっぱり、クリムガンは上機嫌。でもわたしにはあまりわからない。どうしてクリムガンはこんなに上機嫌なんだろう? たぶん、前に言っていた「良いところ探し」の一環だと思う。それはわかる。でもみんなの良いところを見つけられたからといって、それが直ちに幸せに繋がるのだろうか。わたしは、それこそどんな悪い人間だってポケモンセンターにポケモンを連れてくる部分に露ほどの良心を見つけだすことはできる。でもそのわずかばかりの良心に気づいたからといって、別に幸せになるわけじゃない。あいかわらず目の前の悪人はどうしようもない悪人のままで、なにかの気まぐれにポケモンを治しにくる自分勝手な人間と同じ空間にいるということは、あいかわらず実に不愉快だ。みんな勘違いしがちだけど、わたしたちタブンネだって天使や神様のように慈悲深くはない。それは親密な相手であっても――パートナーのジョーイに対してだって変わらない。良いところに気づいたからといって、根本的に幸せになれるわけじゃない。幸せなんて、そんな単純明快なものとは思えない。これが悪いところだったら話は別で、悪いところをひとつ見つけただけで、痘痕(あばた)笑窪(えくぼ)だとでも思わない限りはだいたいが不幸に繋がる。だから心っていうのはずいぶんと面倒なものだし、クリムガンがそういうものの扱い方に困っていることには共感してしまう。
「クリムガンが幸せになってくれるなら、わたしは嬉しいよ」と、わたしは言った。
「タブンネが嬉しいと、おれも嬉しい」と、クリムガンは言った。
 でも、うん。これはこれでいいのかもしれない。
 わたしは無理やりにでもそう思おうって思った。




「良いところ探し」をはじめてから、たしかにクリムガンは以前よりも笑うようになったと思う。いや、クリムガンが幸せならとくに文句をつけることでもない。でも僕がこういう微妙なものを抱くに至ったのは、先日の出来事がきっかけだった。
 クリムガンは公演後に楽屋にやってきた。あいもかわらず笑みを崩さない。
「キリキザン。こんにちは」
「あ、ああ、クリムガン」
「どうかしたのか? ようすが少し変だ」
「今日の公演で、ちょっと失敗してしまって……」
「それはつらかったな」
「別に褒めてもらわなくていいんだ。今日の公演は僕のなかでは納得いってないから」
「でも、どこか良い部分は必ずあると思うよ。おれはあそこ、腕を振りあげて刃を見せつけるところの演技がすごくよかったって思う」
「ありがとう……」
「こっちこそ。ごめん、ほんとうは公演に納得いってないだろうに、こんなこと言われてもな」
「いや、いいんだ」
「じゃあな。また撮影があったら覗きにいくよ」
 そう言って出てゆく背中は、前より尻尾が固くなっているように思えた。
 良い部分、ね。
 なるほど、なるほど。たしかに良い部分に目を向けることは大切だ。そのとおり、クリムガンの言うことになにも間違いはない。まさにそのとおりだ。クリムガンの言うところの良い部分――ここでは腕を大きく振りあげるところ――、それが僕のなかで悪い部分でなければの話ではあるけど。




 クリムガンが「良いところ探し」をはじめて一ヶ月くらい経った。
 今日もクリムガンはわたしの「良いところ」をいろいろ見つけてくれる。あまり品のない言葉を使わせてもらうなら、前に比べてベタベタするようになった。お世辞を言ってるとか、そんな感じじゃない。クリムガンの「良いところ探し」は本気だった。だからこそ、わたしはそれをどっしり受け止めてあげたいと思う。
「タブンネ、おれは最近、幸せなんだ」
「幸せ? それはすてきなことだわ」
「なぜって、おれのまわりはみんなたくさんの『良いところ』があるんだ。おれはタブンネと友達でよかったって思える。ありがとう」
「そんな褒めてもらわなくてもいいんだよ?」
「ごめん、あんまりいい気持ちにならなかったら」
「そんなことないの。褒めてもらえるのは嬉しい」
「ほんとうか? おれも嬉しい!」
 クリムガンはぴょんとかわいらしく飛び跳ねてみせる。わたしは、嬉しさの反面どうしても心配になってくる。この調子がずっと続けられるのならいいんだろうけど……わたしにはそれがどのようなものかはわからないけど、クリムガンはこれまでになにかどす黒いものにもたくさん近づいてきた。それでも今のクリムガンは「良いところ」を見つけようとするんだろうか? そのときにはもはや強いとか弱いとか、そんなものは関係ない。むしろそれは、たぶん「狂気」に近い場所に立たなければ見えないもの。わたしの友達は、たしかに空っぽの心を持っているのかもしれない。でもけっして「狂気」には侵されてはいない。そう信じてる。




 近く、大切な公演が控えてる。タチワキシティの大きな祭りで、ハチクといっしょに演目を披露するのだ。このごろの僕はそのための稽古に余念がない。
 クリムガンは今日もやってきた。変わらない笑みを浮かべながら、なにがそんなに面白いのか僕の稽古を眺めている。まあ練習に差し支えがなければ見ているのはぜんぜん構わない。
「それにしても、稽古なんか見て、なにがそんなに面白いんだ?」
「おれは『時代劇』とか『能』っていうもののことはわからないけど、たぶんそこにも『良いところ』はあるんじゃないかって」
「成長できることが稽古の『良いところ』ではあるかもしれない。でも稽古なんてむしろ『悪いところ探し』だよ。悪いところを見つけて、修正してゆく。それの繰り返し」
「ふうん。おれはそういう練習ってしたことがないから、よくわからないんだ。かえんほうしゃをハートの形にするのも、練習なんかしなかったし、いきなり実践だったから」
「僕は稽古でも本番でも、『良いところ』を指摘してくれる以上に『悪いところ』を指摘してくれるのがありがたいな。とくにそれが具体的なら、改善しやすい。まあ、いくら改善を続けていったところで、僕もハチクも完璧な演技なんてできっこないんだけど」
「悪いところばかりだとつらくならないのか?」
「へこむことは多々あるけどね。自分の至らなさに。でも僕は、それ以上に自分の演技を成長させられることが嬉しいかな」
 神妙な顔でクリムガンは聞いている。でもわかったのかわからないのか、あいかわらず微笑みに固定されたその表情から伺い知るのは難しい。
 クリムガンは、あまり他者と関わらないようにしていたという。
 ――なぜって……すごくつまらないんだ。捨てられたポケモンだからって憐れまれたり、クリムガンだからって怖がられたり、そういうのって。
 あのときのクリムガンの沈んだ面持ちを、僕は今も忘れられない。
 どのような形であれ、成長してゆくことはすなわち変化してゆくこと。樹木の枝はいろいろな方向へ好き放題に伸びてゆくから、その重みに耐えられなくなるかもしれない。となりの木の邪魔になるかもしれない。そんなときはきっと枝を伐採しなきゃならない。無責任に理想論を並べてよいのなら、その痛みに耐えることも必要なのかもしれない。でもだれしもがその激痛に耐えられるとは限らない。強いとか弱いとか、そんなものは関係ない。人間だろうがポケモンだろうが、基本的に棘が刺さったら痛いのだ。まわりから嫌われるのを恐れるな――そんなことを言えるのは、心が贅沢なヤツか、きわめて無神経なヤツだけだ。
「キリキザンは偉いな。そうやって練習を積み重ねてゆけて」
「ありがとう」
 訊くだけ野暮だと思ったから、それが「良いところ探し」の一環なのかどうか、いちいち訊かなかった。
「じゃあな、キリキザン。公演の日、見にいくからな」
 まるで浮いてるみたいにふわふわした足取りで、クリムガンは僕からすうっと離れていった。




 わたしがクリムガンの異変に気づいたのは、つい最近だった。
 たしかに以前から、それこそポケウッドに関心をもつようになってから、クリムガンの態度は緩みはじめてた。だけどこの一ヶ月のあいだにその緩みは急速に進行している。そしてクリムガンがそれに気づいているのか、ううん、どれだけ関心があるのかが気になる。そのことに気づいていればいいんだけど、気づいていなかったり、あるいは関心が向いていなかったりしたら、それは厄介だと思う。
 でも、どうやって訊いてみたものだろう。気づいていないところにいきなり自分のアイデンティティに関わる事柄について尋ねてみたりして、強いショックを受けないだろうか。かといってこのまま放っておくのも薄情だし……
 タマゴから生まれてほとんどの時間、クリムガンは「自我」とでも言うべきものを放棄して生きてきた。自意識を無意識へ埋没させ、生き物としての自然状態で生きる。それはクリムガンが話してくれるほど生易しいことじゃない。なんでもかんでも無意識で行動しているから、クリムガンは死んでしまうかもしれないほどの大怪我だってたくさんしてきた。無意識だから、ずたずたになった自分の心にも知らんぷりでいられた。それこそ、いきなり心の澱に向きあって自意識を受け止めてしまったら、クリムガンは今度こそ心が壊れてしまうかもしれない。
 どうしたらいいんだろう。
「タブンネってやさしいな。おれ、そういうところが好きだ」
「そんなにやさしいかな?」
「みんなにやさしくしてるだろう」
「わたしだって、根性のねじ曲がった相手にはやさしくしないよ」
「そうかな……」
 クリムガンは首を傾げる。クリムガンのそれは段々と計算によるエミュレートではなくなってきていた。このままいくと、クリムガンは自分の心をとり戻すんじゃないかと思う。どうしたものだろう。わたしはクリムガンをどうしてあげればいい?
「それで、タブンネ。今日はタブンネに報告があるんだ」
「報告? なにかな」
 うきうきしながら、クリムガンはこう言った。
「おれ、自我を解放してみようかって思う」
 そう――嬉しそうなのだ。まるで自分が愚かだったことに気づいた愚か者みたいに。
「どうしたの、急にそんなこと言いだして」
「おれ、『良いところ探し』を通じて気づいたんだよ。おれはこんな幸せな世界に住んでるんだって。みんな、だれでも良いところをもってる。だったら、もっとみんなの良いところを見つけたい。そうすればおれはもっともっと幸せになれると思う」
 その言葉に、なにひとつ嘘がないことはわかる。そして悲しいことに、わたしはポケモンセンターのタブンネだから、『正常』に歩み寄ろうとするクリムガンを止めることなんてできない。
「わたしは止めない。というより、あなたは止めてもやるんだよね?」
「ごめん、タブンネ」
「でも、危ないと思ったらすぐに元に戻してね。あなたは大切な友達なんだから」
「わかった。ありがとう。そうやっておれを信じてくれるところも、大好き」
 言うが早いか、クリムガンはわたしにハグを仕掛けてきた。されるがままになりながら、わたしは頭のなかがクリムガンのことでパンパンに膨らみきっていた。




 公演の三週間まえのこと。
 だいたいの所作はうまい具合になった。僕は仕上げのために、演技指導の人間が帰ったあとにも黙々と稽古に励んでいた。茂みからポケモンが現れる。案の定クリムガンだ。
「練習、忙しいか?」
「いいよ、別に。ちょっと根を詰めていたから、すこし喋りたかった」
「ほんとうはもうちょっと練習したいんだろ? わかるよ」
 ギクリとした。もともと僕は無表情だし、そんなことが伺えるような気配だって出したつもりはなかった。
「そんなことない」
「社交辞令っていうのが、今のおれはわかるんだ。そうしたほうが、お互いがいい気持ちでいられるから、っていう行動のこと。そうやっておれの付きあってくれるところとか、キリキザンはやさしいな」
 屈託などどこにもないような、まるでこの世に悪意など存在しないと思っているような、そんな笑みだった。
 ああ、あの表情だ。あの沈痛な表情が脳裏をよぎる。思いだすだけでクリムガンの苦しみが万分の一でも伝わってくるみたいな、あの表情と重なる。一点のみ違っているのは、すべての色が反転していること。
 これは、強さといっていいのか? これは、やさしさといっていいのか? いろいろな疑問が湧いてくる。
「おれ、この世界の解像度がもっと高くなって感じるんだ。悪い人間はいっぱいいるし、ふつうに人間だって悪いことを考えてる。でもそんなことよりも良いことに目を向けるほうが、きっと大切なんだ。そうすればおれの世界はきっと幸せでいっぱいになるんだから」
「それならそれでいいんだけど……きみがつらくなければ」
 そう言うだけで精いっぱいだ。きっと、どこかでなにかを違えている。そんな気がしてならない。でも僕はたいして賢くもないから、そういうなにかを言葉に変換できない。
「自分に気をつけてね。僕が言いたいのは、ただそれだけ」
「うん。ごめん、邪魔して。またな」
 去りゆく背中が、どこまでも心細そうに小さく見えてならなかった。




 クリムガンが閉ざした心を開きはじめた。
 心配はしたけど、それほど大事にならなかったのがよかった。クリムガンはあいわからず「良いところ探し」を続けている。他者への共感を厭わなくなったことで、些細に思えるかもしれない「良いところ」を見つけられるようになった、という弁だった。
「おれ、もっと早くこうしたらよかった。共感したくないなんて、もったいないよ。みんな心のどこかに良いところを隠し持ってるんだ」
「クリムガンはやさしいね」
「タブンネのほうがもっとやさしい。おれ、タブンネの友達になれてよかった」
 向けられた目の、純粋なこと。
 そうだ。わたしが忘れてしまった、忘れざるを得なかったもの、その双眸から放たれる眼差しは、わたしを一瞬、あやしいひかりのように混乱へと引きずりこんだ。クリムガンの言う「良いところ探し」の世界のなかに。うん、わたしはそこにのっぺりとしたものを見たんだ。狂気じみた淀みを抱いていなければ、生きることに軽傷でいられない者には、この世界は耐えられない。
 ごめんなさい、クリムガン。大事にならなかったなんて、わたしの勘違いだった。
「クリムガン、わたしをしっかり見て」
 これを使うのは、とても久しぶり。わたしは、クリムガンのなかへ飛びこんだ。
 ()()()()()()
 相手の特性を自分と同じ特性に変化させるわざ。それをわたしはわたし対して使う。きわめて完璧に近いクリムガンとの共感。それをもって、わたしはクリムガンへダイブした。
 ざぶん――
 たゆたう意識のなかで、わたしはクリムガンを見つけた。クリムガンは、それこそ長年を想い続けたトレーナーにゲットしてもらえたときのように、すてきな、とてもとてもすてきな笑みを浮かべていた。そうするのがしごく当然だというふうに、クリムガンは呟いていた。
「ありがとうたぶんねありがとうわるびるありがとうどれでぃあありがとうむーらんどみんなおれにやさしくしてくれたほかのみんなはおれからはなれていったありがとうみんないうんだおれはこころをとざしてるからこわいってすてられたからにんげんをうらんでるってだけどおれはみんなのいいところをみつけられるようになったからありがとうたぶんねはやさしいわるびるはいっしょにあそんでくれたどれでぃあはなかまおもいむーらんどはむずかしいべんきょうができるありがとうみんなみんないいところがあるありがとうだからおれはとってもしあわせでとってもめぐまれていてとってもかんしゃしなくちゃいけないんだありがとうだからおれはこのしあわせなせかいにずっといきてゆかなくちゃいけないんだおれはすごくありがとうだからすごくおれ――」
 ざばっ――
 わたしはダイブをやめて、浮上した。
 気づいたとき、わたしはクリムガンを強く抱きしめていた。クリムガンはわたしがなぜそんなことそするのか、ぽかんとしていた。
「タブンネ、どうしたんだ……いきなり」
 バカ。
 わたしたちは、なんてバカなんだろう。クリムガンが共感を嫌うことを言いわけにして、根本的なコミュニケーションを怠っていた。そんなことを後悔する日がくるとも考えずに。もっとクリムガンのことをわかってあげる必要があった。わからないことがわかりきっていたとしても、それを認める態度こそが友達として正しかった。なかまづくりなんて能力に頼らなければ、わたしはクリムガンのことをわかってあげられなかった。それがあまりに歯がゆい。
「タブンネ、どうしたんだ? つらそうだ」
 たぶん、今のクリムガンはバカなわたしの「良いところ」さえ簡単に見つけだしてしまう。それはきっとクリムガンにとってはなにごとにも代えがたい幸せへの鍵であり、そしてそれは同時に心の凹凸をどんどん失くしてゆく(やすり)なのだ。
 丸くてツルツルしたかわらずのいしを抱いているような感じ。その感触は手触りがよくて、とても安楽だった。ずっと抱えていたいくらい。だけどそんな心地よさを安易に貪っていられるほど、わたしは無責任にはなれない。クリムガン、あなたを助けるから。




 タブンネが、僕の元へやってきた。
 タブンネというポケモン自体がそれなりに珍しいのだけど、ポケモンセンターのタブンネをポケモンセンターの外で見るということは、僕にとって完全にはじめてだった。
「クリムガンの言ってたお友達って、あなた?」
「まあ、クリムガンのほうが友達って思ってくれているならそうなんでしょう」
「クリムガンのこと……もしかしたら、あなたも知ってるんじゃないかと思って」
「『良いところ探し』ですか」
「そう。クリムガンにとってなにが幸せなのか、わたしにはわからない。でも、今のクリムガンはどこか無理をしてるって思うの」
 人間に捨てられたポケモンというものに、あまり会ったことがない。クリムガンという種族のポケモンは、人間からは散々な言われようだということは知っている。そして人間に捨てられたクリムガンを友達にもつタブンネの、その口調、そのまなざしから、どこであろうとどんな者であろうと、およそ大切なだれかを想うときだれもが抱く感情をひしひしと伝えてきていた。それはハチクがある種の古典を演じるときに薄っすらと感じるものに近かった。
「同感です。僕はあなたよりずっと短い付きあいですけど。僕の知るクリムガンは、とてもやさしい。やさしすぎるくらい。クリムガンは『良いところ』ばかりの世界に耽溺してる。でも世界は『良いところ』ばかりじゃない。わかってます。汚い部分にも目を向けろとか、そんなことを言いたいんじゃない。ただ、世界は白と黒で割りきれるものではない、ということ」
「そこまでわかってもらえているなら、だいじょうぶ。あなたはすごく賢いんだね」
「そんなことを言われたのははじめてです。すこし恥ずかしいけど」
「わたしは、クリムガンに心を手放せなんて言えない。わたしは、クリムガンの意思を優先させてあげたい。クリムガンが今、この瞬間に幸せなら、その幸せを妨害できない」
「それはきっと、僕の役割です。必要なとき、殴ることができるのは」
「ごめんなさい、卑怯者で」
「いえ、こうやって街の外まで頼みに来ていただけてよかった。たぶん、これは僕とクリムガンだけの問題ではないでしょうから。第一、なによりも大事な友達のあなたが殴ったところで、逆効果でしょう」
「ほんとうに、ありがとうございます」
 タブンネはそう言って、深々と僕に頭を垂れた。それはジョーイの相棒としての感謝の表し方だった。とても人間流のやり方だった。ポケモン同士がどんなふうに気持ちを通じあわせるのか、人間に近すぎる僕たちはそんなことさえ知らずに生きている。このタブンネは、これまで何度、このやり方で感謝を伝えてきたのだろう。そしてそれがタブンネにとってどれほどの意味をもっているのか、じゅうぶんに理解するには、僕はコマタナから進化した今だって、まだまだ未熟すぎる気がした。




 クリムガンが「良いところ探し」をはじめたのは、やはりだれかを傷つけることを恐れたからじゃないか? あの日、キリキザンのお稽古を邪魔したと語ったとき、クリムガンはこんなことを言っていた。
「キリキザン、おれに気を遣われて、面倒に感じなかったかな……」
 共感に幸せを感じる今のクリムガンにとって、心にダメージを負うリスクは大きく高まっている。これまでは無意識の赴くままでいればよかったことに、今のクリムガンは論理と計算ではなく感情で向きあわなければならない。あたり一面、擬態して隠れたマッギョが潜んでいるようなものだ。クリムガンもバカじゃない。そんなことはじゅうぶんにわかっていたはず。だけど今は――
「だれかと共感するのって、すごく幸せにしてくれるんだ! みんなおれに他意なく接してくれる! この世界がすごく幸せに満ち溢れているってことがわかって、おれはすごく幸せだ!」
 心が……心が、ひび割れてゆく音がする。
 そんなことをしていたら、あなたはいつかきっと壊れてしまう。無意識に生きていたときの、真実(ほんとう)のあなたが死んでゆく。わたしは、この世界が幸せに満ち溢れていなくてもいい。不幸ばかりであってもまったくかまわない。だけど、あなたは()()()()()幸せである必要がある。そのためならわたしはジャイアントホールに放りこまれたっていい。だけどクリムガン、わたしはわたしの友達には幸せでいてほしいの。
「タブンネってみんなにいつもやさしくしてあげて、偉いな」
 もう、やめよう? クリムガン。
「タブンネっていろんなポケモンの怪我や病気を見てもつらくならないなんて、強いな」
 お願いだから、クリムガン。
「タブンネってだれかを助けるわざをたくさん覚えてて、すごいな」
 そんなふうに自分を殺さないで、クリムガン。
 なかまづくりなんか必要ないくらい、クリムガンの心が軋んでいるのが聞こえる。心が砕けてしまう前にあなたを助けなくちゃいけない。その手はわたしにはもちろん、ほかのだれにも向けられていない。手を掴めるのがわたしではないことは、わたしの力不足。ふさわしいだれかにあなたを引き揚げてもらいたい。だから、お願い。




 本番の日。
 僕はタブンネにクリムガンを公演に連れてきてもらうように頼んだ。おそらくクリムガンのことだから言っても言わなくても勝手に来たんだろうけど、大切なのはタブンネといっしょに来るということだ。
 僕は、俳優である以前にみんなにやさしくできるキリキザンでありたい。それはキリキザンという、残酷なあくタイプのポケモンにとっての自殺でもある。知ったことではない。僕は、きわめてエゴイスティックにしていればいい。
「このたびはお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は古典を演じさせていただきます」
 古典なんて、ほとんどの人間にとっては退屈きわまりないものらしい。だけど僕は演じるしかない。ハチクとともに。
 主催者側から観客へ、あらすじや台詞、現代語訳などが載った資料を配布する。あとは僕たちの腕の見せどころだ。
 ――タブンネ、『狂女物(Mad Woman)』ってどういう意味なんだ?
 ――そのまま、女のひとが狂うんだけど、今の『狂う』とはちょっと意味あいが違うみたいで、それはなにかひとつの相手に対して強い感情や想いを持ち続けることみたい。この演目では、亡くなった息子さんに対してなんだって。
 ――へえ、タブンネってなんでも知ってるんだな。
 どうやってか、最前列のチケットをとったクリムガンとタブンネが人間たちに混じって楽しげに喋っていた。
 今日の演目は、狂女物でも唯一の、悲劇で終わる演目だ。そして難易度の高い曲でもある。今の僕の腕前で、どれほどのことができるのか。でも僕は自分の稽古の成果を十全に発揮するだけだ。
 さあ、始まる……
 伴奏を伴う音楽劇。俳優の歌舞を中心に、今の僕は祭礼に催す音楽のような、目に見えない者のために舞っているような感覚だった。クリムガンが舞台上の僕の心へ共感しようとしても、普段どおりにはいかないだろう。そんなことをしようものなら、僕の心へ共感しようとするクリムガンのほうを、逆に僕が飲みこんでやろうというつもりだった。
 クリムガンと目があった。いつもの笑みはない。ただどこまでも真剣で、そして物憂げな顔だった。それは俳優たちが演じている狂女のものでもあると思う。
 ――タブンネ……
 ――どうしたの?
 ――自分の子どもに会えないなんて、悲しいな……
 ――うん……そうだね……
 タブンネのほうは表情を崩さなかった。僕の勝手な想像を語れば、相反する感情が複雑に絡みあい、渦巻いているんじゃないだろうか。
 さっきまでざわついていた会場は、もう静まり返っていた。演者の声だけがただ、静寂のなかに響きわたっていた。僕は今まで何度も映画や舞台で演じてきた。だけどこれほど静かなのは珍しい。退屈から生じる寝息や欠伸すら存在しない、というふうに思われた。すこし離れたところで観劇するオスの人間を見た。神妙な面持ち、そんなふうに捉えた。その近くにいるメスの人間を見た。感情を押し殺している。そんなふうに感じられた。
 そして最後に、クリムガンを見た。
 泣いていた。
 クリムガンは泣いている。素直な気持ちで、クリムガンは静かに泣いていた。
 タブンネは泣かなかった。
 クリムガンは泣いていた。
 明けの東の空の情景とともに終曲を迎える。狂女である母は結局、亡くなった息子の幻と手をとりあうことができなかった。荒れ放題の丘で、彼女は涙にむせぶ。その心がいかほどなのか、人間を理解できるほどの感情移入に僕は達していない。これからも、到達できるのかはわからない。
 クリムガンは、僕よりひと足もふた足も先に、その心を解したかもしれない。
 とても、悔しいことだ。とても、心に染みいることだ。




 クリムガンは結局、元のクリムガンに戻った。曰く、「あんなふうに簡単に泣いたらみっともないだろう」とのこと。また殻に閉じこもった以上、ほんとうのところはわからない。
「良いところ探し」はあいかわらず続いた。このあいだも、ハチクさんの舞台について「良いところ」をいろいろと見つけだしていた。
「でも、あのあたりは安易な感じがしていただけないな」
「その部分は、もうちょっと物語に慣れ親しまないと難しいかもね」
「そうか? おれはもっとビターな感じでもいいと思うんだが」
「珍しい。クリムガンがそんなこと言うなんて」
「すこしだけわかったんだよ。世のなかにはそういう苦い部分もあるって実感が」
「それはそうよね」
「でも、いつの間にか何気なしに感じとっているもののところを、おれは――たまに間違えるかもしれないけど――そういう気づきに敏感になれたらいいと思うんだよ」
 そう語るクリムガンの両目を見た。
 もう、クリムガンへの共感は難しかった。でもいいんだと思う。「良いところ探し」は、思えばずっと以前からクリムガンの特権だった。でも、わたしもわたしなりにもっとクリムガンの「良いところ」なんかを見つけてゆきたい。そうすることで、わたしたちはお互いがわからないってことを認めあうことができたら……
 昏いクリムガンの両目がきらきら光って見えたとき、わたしはそんなふうに思ってしまうんだから。




 
【名無しのクリムガン】

じょうたい:Lv.48 HP100% 4V
とくせい :?
せいかく :?
もちもの :なし
わざをみる:げきりん かえんほうしゃ ふいうち へびにらみ 

基本行動方針:幸せに生きたい
第一行動方針:旅を続ける
第二行動方針:他者と共感してみたい
現在位置  :タチワキシティ・ポケモンセンター
 

 あなたがたがかんがえるしあわせなくりむがん。

 



 

 


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Last-modified: 2022-02-16 (水) 00:05:15
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