ポケモン小説wiki
名無しの4∨クリムガン 夕陽の色の生存戦略テロル

/名無しの4∨クリムガン 夕陽の色の生存戦略テロル

 
名無しの4∨クリムガン プロローグ】 
名無しの4∨クリムガン ヤグルマの森で】  
名無しの4∨クリムガン シッポウシティのムーランド
名無しの4∨クリムガン 人間とポケモンの非構成的証明の法則




 愉快な言葉を言ってごらん。
 するとやつらの目は灰色に濁り、まるで揚げ物にされた魚さながら。
 ほろりとする話をひとつ。
 すると大声で笑いながら、完全に理解したことをわからせているつもり。


                     シャルル・ボードレール「ベルギー人と月」






 ある日、ポケモンセンターでのことだ。
 傷の手当てをしてもらったあと、タブンネはいつものような優しい口調で言った。「電気石の洞穴で、プラズマ団に会ったんだって?」
 おれはいつも不思議に思う。新しい街を訪れるたびに、そこのポケモンセンターのタブンネとけっこうな時間をかけて話をしているけれど、どんなに言葉を省略しても、まるで最後に会ったタブンネと連続して会話しているかのような感覚になるのだ。どこのポケモンセンターのタブンネだろうと、なんだか初対面のような気がしない。
「ああ」と、おれはタブンネに答えた。「いたな、そんなのが」
 それはたしか二日前の出来事だったが、べつにたいしたことではない。けれど、タブンネにとってはそうではなかったらしい。
 タブンネの顔が歪んだ。
「プラズマ団に関わるのは危険よ」
「関わるなんてものじゃない。ちらほら見かけただけだ」
 おれは、プラズマ団なんて本当にたいしたことじゃないと思っている。人間や、人間側のポケモンがプラズマ団のことをどう考えているかは知らないが、彼らは野生のポケモンに手荒な真似をはたらいたりはしないし(ロケット団とかいうジョウトやカントーの集団はそういうこともするらしいが)、おれはそこらの野生ポケモンよりは逃げ足に自信がある。バトルの特訓も欠かしてはいないし、半端なポケモン・トレーナーくらいならどうとでもなるという自覚がある。
「だけど」と、タブンネは言った。「あなたは割に珍しいポケモンなのよ?」
 たしかに――
 身ひとつでイッシュを旅する野生ポケモンなんて、珍しいのかもしれない。とくにクリムガンというポケモンは環境の変化に弱い部類の種族であり、おれもこれまでの旅でいろいろと苦労させられてきた。
 でも、よくわからない。おれが希少だからプラズマ団に近づくのは危ないのだろうか?
「わたしはあなたが心配なのよ」
「おまえが心配しても、おれ自身は心配してないんだ。そう思うのはおまえの好きにしたらいいけど、それはおまえ気持ちの問題だから、自分で処理してほしい」
 おれにしてみれば、他者の気持ちというのは場合によって汚物と同じようなものでもある。自分で処理してほしいというのは、そういう意味をこめて言ったのだ。
 タブンネは神妙になって言った。「すこしはわたしの気持ちもわかってほしいな」
「わかろうとはしている」
「本当?」
「本当だ」
 通信しようと試みているのは本当だった。
 これは、発想としては自殺に近い。トレーナーに捨てられながら社会化する過程をもう一度辿るようなもので、もう一度自分を殺すことに等しい。ただおれとしては死にたくはないので、自分を殺すとまではいかず言わばちょっと自傷する程度にとどまっている。
 おれがタブンネとわかりあおうとするというのはそういうことなのだ。おそらくタブンネには理解できないことなのだろうけれど。
 タブンネは大きなため息をついた。
「あんまり心配させないでね」
「おまえが心配してることは知ってる。でもなんで心配するのかわからないんだ」
「ともだちでしょう?」
「ともだちなのか?」
「そうよ」
「ともだちだから大事にするってことか?」
「そうよ」
「そうなのか」
 それはどちらも、なんというか――おれがはじめて知る事柄だった。
 あくまでひとつの簡潔な事実として、おれがプラズマ団に近づくことにほとんど危険はない。タブンネの心配は杞憂だ。ただ、タブンネはポケモンセンターにいるという役割柄、ジョーイのそばで、プラズマ団の影響によってたいせつなポケモンを手離すトレーナーや、それを望んでいないポケモンの悲しみを間近に体験してきた。だからあるいは、おれのことを不安に感じるのだろう。
 おれにもそのことは理解できた。けれど、事実のほうを優先したほうがいいんじゃないかと思った。つまり、危険がないのだから無駄に心配する必要なんてないのだ。けれど、タブンネはおそらく“心配したい”のだろうという推測も成り立つ。心配することを望んでいるのではないかと思ったのだ。
 だったら、わざわざ望んでいることを潰すこともない。タブンネが心配したいなら勝手に心配させておけばいい。
 おれの行動が制限されない限り、タブンネの言葉はおれには無関係なものだ。
 ――タブンネは自分が心配なだけなんじゃないか。
 それをタブンネに言ったら、おおかた否定が返ってくるだろう。まあ、それも知ったことじゃない。
 というのが、おれがつかみ取れる、自分自身の心の概要だった。
 ともだちだから無条件に大事にするなんて――
 そういう共同体の持つ枠組みは、おれには存在しない。





    夕陽の色の生存戦略テロル




「ちょっといいか?」
 おれはそのポケモンに声をかけた。
 ロウソクのような姿をしたポケモン――ヒトモシだ。
 もちろん特殊な個体ではない。身も蓋もない言い方をすれば、そこらにたくさんいる有象無象の野生ポケモンの一匹だ。身体的な特徴も、そのへんにいるヒトモシと変わるところはない。
 ヒトモシというポケモンの体長は平均すれば、だいたい三十センチ程度。ちょっとしたぬいぐるみのような大きさである。ゴーストタイプのポケモンであるが、周囲の人やポケモンから吸い取った生命力を燃やしているといわれているちいさな炎が頭に灯っているので、近くにいると温かい。
 声をかけられたヒトモシは、きょとんとした表情をしていた。
 それもそのはず。
 ここ――タワーオブヘブンでは、ヒトモシは不吉なポケモンだと考えられている。「場」の作りだす魔力というやつだ。人間やポケモンを霊界へ誘うとされているヒトモシは、死んだポケモンが眠るこの塔を訪れる人間たちからは一貫して無視されている。幸い、放っておけばほとんど害のないポケモンであるし、死んだポケモンたちが眠るこの場所でのポケモン・バトルなど無粋極まる行為であるので、退治されてしまうことはあまりないようだ。
 それでなくともタワーオブヘブンに来た人間は、ここに眠っているかつてのパートナーへの想いをしっとりと胸に満たしてやってきているのだし、どこにでもいるような野生ポケモンのことなど――多少やっかいな習性のあるポケモンだったとしても――気にしてはいない。そういう雰囲気が、この場所におけるデフォルトなのだ。
 そんなヒトモシをして、自ら接触してくる存在――ましてやそれが外から来た野性ポケモンで、人間を伴っておらず、あまつそうそう出会うことのないドラゴンタイプとなれば、すくなからず怪訝に思うのは当然のことだった。
 ヒトモシは上下関係に頓着するような性質の野生ポケモンではないが、それでも圧倒的な力の差は感じることができるらしく、住んでる世界が違う住人から突然話しかけられたような気分なのだろう。
 おれはもう一度口を開く。
「そう。おまえだ」
 ヒトモシはきょろきょろとあたりを見回した。墓標を前にした人間はちらほらいるが、おれとヒトモシの近くには誰もいない。
 ヒトモシは、ちいさな手で自分を指し、自分のことかと確認している。
「ああ、おまえのことだ」
 ふわりと、ヒトモシはすこしおれに近づいた。
「おまえ、しゃべれるか?」
 ヒトモシは、からだ全体を横に振った。かぶりを振ったのだ。
 どうやらしゃべることができないらしい。
 珍しいことではない。ポケモンは基本的にサイズによって力の大きさが決まっていて、力の大小が人間でいうところの精神年齢と直結しているというのがおれの見解だ。
 おれの目の前のヒトモシは、どちらかといえばそのへんのヒトモシよりもちいさいサイズに分類される。だから言葉を話せなかったとしてもおかしくはない。
 しかし、べつに言葉を理解していないわけではないらしい。そこらが難しいところで喃語(幼児言葉)を話す程度の能力を遙かに凌駕する知能は有している。喃語が人間の一歳児程度の知能とすれば、ちいさなヒトモシでも人間の五歳児程度の知能はあるように思える。では、発声ができないのかというとこれも違うようで、ちいさいけれどもその機能はきちんとしている。ンーとかヤーとか言うことを聞くことはあるし、じゅうぶんに聞き取れる程度の大きさだった。
 では、どうしてしゃべれないのだろう?
 おれの興味はこの一点に尽きた。
「おまえにききたいことがあるんだ」
 首をかしげるような感じで、ヒトモシのからだが傾いた。
「文字は理解できるのか?」
 ふるふると横に体が振られる。文字はわからない。これも野生ならふつうのことだ。
「じゃあ、仲間といっしょにいるとき、どうやって自分を表現してるんだ。ヒトモシどうしで、どうやって意思を伝えてる?」
 そのときのヒトモシの顔は――

 (;゚v゚)

 こんな感じだったので、おれはひとまず追及をあきらめることにした。




 観察してみるとヒトモシはタワーのどこにでもいて、仲間どうしで遊んでたりしているが、話すことができないちいさなヒトモシたちもいっしょにいることが多い。ときどき同じタイミングで笑ったり、ときどきよくわからない脈絡で喧嘩をしている。
 それがおれには不思議だった。
 テレパシーでもしているのだろうか。しかし、エスパータイプでもないヒトモシが心を読んだりする特別な能力を持っているとは聞かない。以心伝心とも違うだろう。ヒトモシはニュアンスで生きている傾向が強く感じるものの、笑ったり怒ったりするのは個を感じさせる行為だ。
 考えれば考えるほど不思議だ。
 とりあえず、おれはタワーのてっぺんで鐘を見ているワルビルにたずねることにした。
 そのワルビルとは、リゾートデザートにある遺跡で出会った。いろいろあって、しばらく旅を共にしている。ワルビルはずっと野生で生きてきて、それなりに多く人間も見てきているだけあって、話を聞いているといろいろなことを知っていた。おれの興味は移ろいやすいもので、そのときワルビルに尋ねたのも偶然によるものが多い。けれど、ワルビルは嫌な顔ひとつしない。おれがそのような性格であるのはじゅうぶんに理解しているし、あるいはおれの質問を興味深く聞いていっしょに思考することもあった。
「なあ」と、タワーのてっぺんにのぼったおれはワルビルにたずねた。「ききたいことがあるんだ」
 なぜかしら熱心に鐘を眺めていたワルビルは、おれがいることにいま気づいたという感じで振り返った。
「おう。なんだ?」おれの唐突な話の切り出し方にも、ワルビルは慣れたものだ。
「ここにいるポケモンのことなんだ」
「ヒトモシのことか?」
「べつにヒトモシじゃなくてもいいんだが、仲間どうしでも話せるポケモンと話せないポケモンがいるよな」
 ワルビルはうなずいた。「そうだな」
「話せないポケモンとはどうやって話をつけてるんだろう」
「話をつける」と、ワルビルは繰り返した。
「どうやってコミュニケーションをとってるんだろうな?」
「ああ、そういうことか」と、ワルビルは言った。「オレが知っているかぎりだと、仲間内に言葉が通じるやつもいて、そいつらを通して話をつけてる場合があるな。オレにきくよりも話ができるヒトモシにきいたほうが早いと思うぜ」
「なるほど」と、おれはうなずいて、それから言った。「その話せるヒトモシはどこにいる?」




 ワルビルといっしょにタワーの中を探すと、すぐに見つかった。
 熱察知に長けた目を持つワルビルが、タワーのフロア内にすこし大きめな炎を見つけて、そこへおれを案内してくれた。そこにいたヒトモシは、ほかのヒトモシよりもひとまわり大きい。四十センチほどだろうか。おれは好奇心が踊るのを感じた。
 今までどうでもよかった存在が、とつぜん素敵なものに見えるのはよくあることだ。タマゴから生まれて間もないおれの場合、思想の偏重がほとんどなく、思考形態がフラフラしているから、唐突にその価値観が変わったりすることもある。もちろん根っこの部分には変わりきれないものもたくさんあるが、表層は人間が服を着替えるように節操がない。
 ヒトモシはどうでもいい存在――という価値観にも、修正が加えられていた。
「おまえはしゃべれるのか?」と、おれはそのヒトモシにきいた。
 根無し草なポケモンとはいえ、やはりドラゴンタイプというのはそれなりに威圧感があるようだった。尋ねられたヒトモシのほうはすこしばかり緊張気味だったが、おれが先ほどの疑問を説明すると丁寧に答えた。
「はい。大丈夫です」
「おまえは、ちいさなヒトモシたちとはどうやって話してるんだ」
「実を言うと、たいして話をしているわけではないんです。わたしたちは基本的に自分の好きなように生きる性質ですから、仲間といっても、遊んでいたらなんとなく仲良くなっていっしょによくいるようになっただけでして」
「こちらから一方的に言葉でコミュニケーションを図るのか?」おれは質問を重ねる。「相手側から、なんらかの意思疎通行為はあったか? ボディ・ランゲージもすこしは使えるようだが」
「そうですね。ボディ・ランゲージとかもありますけど、表情もあります。あとは火とかでしょうか」
「火?」
 意外な言葉に、おれはオウム返しにきいた。
「はい」と、ヒトモシは言った。「火の出し方とか、温度とか、速度とか、そんなんです」
「すごいな」
 おれは感嘆した。横でおれとヒトモシのやりとりを見守っていたワルビルのほうを振り向く。
「すごいことを発見してしまったみたいだ」
「はあ」ワルビルは腕を組んだ。「なにがすごいのか、よくわからん」
「ちいさいヒトモシたちは独自の言語を持っているかもしれない」
「野生のポケモンが仲間うちでなにを話しても、たいして影響力なんてないんじゃねえの?」
 ワルビルにあっさりと切り返されて、おれはやや落胆した。あるいは、そういうふうに考えるのがふつうなのかもしれない。
「たとえば」と、おれは言った。「百万の人間が使ってる言語と、百人の人間が使ってる言語の、どちらが偉いと感じる?」
「そうだな」腕を組んだまま、ワルビルはすこしだけ間を置いてから言った。「べつに偉いとかそういうのとは違うと思うぜ」
「じゃあ、どちらを優先的に覚えるべきだと思う」
「そりゃ、百万のほうだろうな。言語なんて、結局はコミュニケーションするための道具なんだ。多くコミュニケーションをとれる可能性があるほうがいいに決まってる」
「それが平均的な考え方なのか?」
 ワルビルは、墓標に頭を垂れている人間のほうをちらりと見やった。「どうだろうな。でも、より多くの人間が話している言語を覚えるほうが合理的じゃねえか」
「たしかに」おれはうなずいた。合理的という言葉は数学的ということだから、おれにも理解できる。
 けれど――
 おれの価値観は、合理とは異なるところに置いてある。
 合理的であるという一点においては、ワルビルの言うことも理解できる。しかしそのほかの定性的な評価は、いわゆる「普通」とは隔絶しているらしいことが、これまでの経験上あきらかだ。だけど、べつにおれが特別だからヒトモシの言語に興味を持ったのだと言いたいわけではない。
 たぶん、それは言葉を話すことができないヒトモシたちが少数派であるということが大きな理由だったのだろう。精神の構造が世の大多数と異なっていて、その言語の構造も少数派に属する。同じ言葉を使っているのに、その言葉はいつまでたっても相手の心と交差することはない。少数派の悲哀みたいなものをすこしは感じる。
 あるいは、ズルい、という感覚。普通の人間やポケモンたちはおれが知らない未知の公式を使って現実世界を生きているのに、おれは生の計算能力だけでなんとか生き延びていかなければならない――という喩えが当てはまるかもしれない。まあ、そんなことをいちいち話しても簡単には伝わらないし、多数派はいつだって傲慢なのはさすがにおれも知っている。ともかく少数であるということは弱いということなのだ。仮におれという個がどれだけ強かったとしても、ひとりであるということはそれだけで弱いことらしい。だからヒトモシにもなんとなくの親近感が湧いたのかもしれなかった。
 おれにもそこらの理由はよくわからない。
 ともあれ、おれはヒトモシの言葉に興味をもったのだ。
 ふわふわと所在なく浮いていたヒトモシに、おれは言った。
「これからしばらくおまえたちを観察するが、今日のことは黙ってもらえると嬉しい。おれが観察しているとわかったらうまく話してくれないかもしれない」
 ヒトモシはこくこくと何度か頷いた。
「なあ」ワルビルが口を開く。「このヒトモシに教えてもらえばいいんじゃねえのか」
「いや」おれは首を振った。「このヒトモシから教えてもらっても、通訳を聞くのと同じだ」
「言葉を学ぶ過程は誰かから学ぶしかないんだから、結局いっしょじゃねえの?」
「それはそうだが……」
 おれは自分の感覚を言葉にするために、すこし考えた。「たしかにそうかもしれないが、このヒトモシはすでに半分くらい忘れているような気がするんだ」
「忘れている」と、ワルビルは言った。おれはうなずいた。
「そう、忘れている――というより、話せなくなっているんじゃないか」
 どうだ、とヒトモシを振り返る。ヒトモシはちょっと驚いたように言った。
「たしかに、いつのまにか話せなくなってました。かろうじて意思疎通はできる程度です」
「普段使ってる言葉を忘れるもんなのか?」ワルビアルは疑問顔だ。
「忘れるというより――忘れさせたのかもしれないな」と、おれは言った。




「要するに、多数派は傲慢なんだ」と、おれは説明した。
 ワルビルはよくわからないといった顔をしていて、四十センチヒトモシのほうはすでに考えることを放棄しているようだった。早くよそへ行きたそうにしていた。
 おれは続けた。
「言葉という同一の規格を持つ者たちが、共通規格を持たない存在を排斥しているんだ。なんと言えばいいか、言葉を持つということは、既存の言葉を忘れる上書き処理のようなものなんじゃないかと思う」
「上書き?」ワルビルは首をかしげた。
「そう。上書きだ。古い言葉のほうを忘れるってことだ」
「でもバイリンガルとかいるじゃねえか」
「それは同じ言葉だからだ」
 たとえば、イッシュとカロスの両方の言葉を話せる人間がいるようだが、おれにとってはどっちも同じ“レベル”の言葉だ。だから忘れないし、両方を使いこなすことができる。規格が同じだからだ。
 ワルビルはそれについて考え、そしておれの言いたかったことをしっかりと理解した。「ちいさいヒトモシたちの言葉と、オレたちの言葉は“レベル”が違うってことか」
「そうだ。レベルが違う。だから上書き処理されてしまう。両方を話せるってことにはならない」
 うーん、と唸りながら、ワルビルはどこでもない宙に目をやった。
「どうしてそうなるんだろうな」
「今おまえは言葉で考えてるだろう? その言葉を今すぐ忘れて言葉以外のやり方で思考しろって言われてできるか?」
「まあ……できねえな」
「そうだろうな。言葉を忘れるなんて、ふつうはできない」
「ヒトモシの言葉はレベルが違うから、オレたちの言葉を覚えることができないし、覚えてしまったら今度はヒトモシの言葉を忘れるってことになるわけだな。じゃあ逆はどうなんだろう」
 逆?
「ヒトモシの言葉を覚えたら、オレたちとは話せなくなるのか?」
 なるほど。それはじゅうぶんありえることのように思える。けれど、「そんなふうにはなかなかならないんじゃないか」と、おれは言った。
「なんでだ?」
「川の流れに似ていて、上流と下流みたいなのがあるはずだ。言語化されるってことは、つまり下流だ。また遡るのは難しいんじゃないか」
「言語は固定化されやすいってワケか。強い言語ってことなのかもな」
「強いから傲慢なんだろう」
 強ければ傲慢になってもいい。それは人間でもポケモンでも同じことが言える。
 ワルビルはすこし別の質問をした。
「なんで言語は固定化される傾向にあるんだろうな?」
 それは難しい疑問だ。それについてすぐに答えることはできなかったけれど、おれは一応、自分の意見でそれなりに見当をつけてみた。
「仮定に仮定を重ねるようだが、やっぱり口語かそうでないかっていうのが大きいんじゃないか」
 言語というのは口だけでコミュニケーションをとれるわけじゃない。もちろん表情などが大きな補助線にはなるが、べつに真っ白な箱が言葉を話したって会話することは可能だ。つまり、通常の言語のほうがコミュニケーションをとれる幅が広い。だからその言葉はほかの口語以外の言葉よりも強い。強い言葉は弱い言葉を駆逐するから自然と話し言葉が主流となっていく。これはワルビルにも想像できただろう。たとえば、この世界では絶対に手話がメインストリームになることはない。
「でも」と、ワルビルはあっけらかんと言った。「そのヒトモシの言葉ってのがよくわかんねえから、なんとも言えねえな。だいたいそんな火のなんたらってのが言葉っていえるのか?」
 ヒトモシどうしではちゃんとコミュニケートできてるから、すくなくとも機能的には言葉だ。しかしワルビルが言っているのは、そういうヒトモシの肉体的な所作を含めた言語が思考をトレースできるのかということだった。それも大きな違いだ。言葉は象徴的な記号だが、ヒトモシの言葉は現実と直結している。
「ヒトモシの言葉は世界を象徴化できねえ。つまり抽象論を一切使えないってことだよな。それって言葉っていえるのか?」
「おまえはそう考えるんだな」
「まあな。オレって、けっこう心配性なの」
「もしかして、おれのことが心配か?」
 おれはなんとなくきいてみた。
 もしかするとワルビルが事細かく質問するのは、おれがヒトモシの言葉を知ろうとすることの危険性を考えてのことかもしれない。他者の気持ちなんておれには知りようもないことだけど、それでもデータベースからおよその答えは予測できる。
「そりゃそうだぜ」
 当たった。おれはいくらかいい気になった。
 けれど、おれはいつものように無視することにした。
 都合の悪いことに目を瞑るのはお手の物なのだ。




「最近はよくタワーオブヘンブンに通ってるんだってね」
 フキヨセシティのポケモンセンターで休憩していると、タブンネが寄ってきてそんな話を切り出した。
 おれはうなずいた。
「わりと難しい言語だ。ある火の放ち方が『あ』に相当するとか、翻案すればそんな程度がわかってきたぐらいだな」
「そう」
 タブンネはにっこりした。
「なんだ?」
「誰かに関心を持つのはいいことよ」
 そうだろうか。
 おれとしては、それは違うような気がする。べつにおれは他者に関心を持ってるわけではない。ヒトモシの言葉が知りたいだけだ。
「ヒトモシの言葉が知りたいんでしょう?」
「そうだ」
「ヒトモシのってことは、つまり誰かのってことでしょう?」
 そこが違う。
 タブンネは「の」という接続を重視してるようだが、おれは個としてのヒトモシを重視してるわけじゃない。主体じゃない。ただの観察対象だ。おれはおれの観察に興味があるだけで、もっと言えばおれはおれに興味があるだけだ。
「でも」と、タブンネは言った。「外に意識を向けているのはまちがいないわけよね」
「どうだろうな。単に内側に向けているようにも思うが」
「なんにしろ」タブンネはため息のような呼吸をした。「わたしとしては、ヒトモシのことをわかろうとするのはいいことじゃないかなと思う」
「よくわからないな」おれはすこし笑った。「わかりあうってのは無条件にいいことなのか。なにがなんでもわかりあいたいって思うのは、精神疾患の一種じゃないか」
「ひとりぼっちじゃ生きられないもの。人間も、ポケモンも」
「そうか」
 タブンネの考え方はおそらく多数派に属するだろうというのは理解できる。しかし、その考え方をおれがいまいち受容できないということをタブンネは理解していない。
 端的に言えば、わかりあおうとするがゆえに、おれは共同体から引き裂かれたのだ。
 では、おれがタブンネと歩み寄ろうとするにはどうしたらよいのだろう。
 おれにしても、それは一種の悩みどころではあった。おれもタブンネにまったく興味がないわけではないので、話をしてみたりして仲間として振る舞っているわけだが、本質的には交われない可能性も大きく、数学的な判断としてたぶんそうなるだろうと思っている。べつにそれでもいいかと思う反面、なんとはなしに今の生活を続けてフラフラとイッシュのあちこちを放浪しているのも、どこかに解決策があるのではないかと考えているからだというのもある。
 ――結局、互いに希望を捨てきれないというだけかもしれない。
 だからおれは、ヒトモシの言葉を学ぼうとしているのだ。タブンネの言葉では達成できそうにないから、ヒトモシの言葉とあわせ技でなんとかわかってもらおうとしている。
 不意に、おれは笑いだしたい気になった。
 べつに、わかりあえなくてもいいはずなのに。




 ヒトモシの観察はとくに問題なく続いた。
 導き手がいない状況下でも、時間さえかければなんとなくわかってくるから不思議だ。
 それはたぶん通信規格としては両方を保持している状態なのだろう。通常の言語とヒトモシの言語を両方持っているからこそ、ヒトモシの言語もなんとなくわかるのだ。
 しかし、そのことは逆に言えば、ふつうの言葉が中途半端にしかわからない以上、ヒトモシの言葉も中途半端にしかわかりえないという可能性を示唆している。ニュートラルの位置にいるからこそ、どちらの側にも立つことができない。
 けれど、それでもよかった。
「それならそれで、翻訳家になれるかもしれないな」
「はい?」
 答えたのはまたもや四十センチクラスのヒトモシだ。疑問に思ったある言葉について、質問がてら連れてきた。
 四十センチについてはあれからすこしは打ち解けて、それなりに言葉を交わした。おれとしては無理強いするつもりはまったくなかったが、実情としてはドラゴンの威を借りたことになるかもしれない。所詮、この世は弱肉強食。ちゃらんぽらんなゴーストでも是非もない。
「翻訳してどうするんですか?」
「ヒトモシの言葉は今まで誰にも明かされたことがなかった。多数派たちは自分たちの言葉こそが正しいと信じてる。神様の言葉だって信じてる。けれど本当は違う。無数にある言葉のひとつに過ぎないってことが思い知らされる」
 それは、すこし楽しい想像だった。
「楽しい……ですか?」
「そうだ。いや――楽しいというのもちょっと違うか。知ってほしいと思ったんだ」
「わかってほしい?」
「ああ、それだ。わかってほしい」
 とてつもない矛盾だった。タブンネには自分のことなんてわからないと言っておきながら。
 もちろん認識自体は可能だろう。
 おれとタブンネ――つまり共同体に生きるポケモンすべて――が、違う心の有り様をもっていることを身をもって体験することは可能だろう。頭で数学的に理解することは可能だろう。おれにだってできているのだから、正常側から歩み寄れないはずはない。ただ、おれの場合、境界線に立っていることから正常も正常以外も眺めることができるのに対して、いくら正常からそれ以外の側に歩み寄ったところで、自分が正常の側にいることに気づけない。より正確に言えば、自分が正常という名の狂気に満たされていることに気づくことはできないのだ。
 どうしてと言われれば、瞳の構造のような感じだ。瞳は前方に固定されているから自分自身の姿を見ることはできない。それと同じことだ。したがって、タブンネがいくらがんばってもおれの心の構造を完全に理解することはできないし、タブンネ自身のことすらわからないのだ。
 このことを別におれは咎めるつもりはないし、おれがおれ自身のことを理解できることに優越感を感じるわけでもない。ただそうなのだという事実認識がある。それにおれの精神的な立ち位置はいわば正常を隔てる壁そのものの上に乗っかっているようなものなので、かなり不安定なのだ。誰かに優越感を感じたり、誰かを強く否認できるほど強い立場にはない。いいことといえば、見晴らしがいいことぐらいだ。
 おれは、目の前にいるちっぽけな存在に自分のことをすこしだけわかってほしいと思っていた。
 だからおれは、ゆっくりと口を開いた。
「おれはな……タブンネにはおれのことがわからないことをわかってほしい」
「それって……」
 おれはうなずいた。「矛盾してる。共同体に近い発想だ」
 正常という名の狂気はいつだって矛盾を孕んだものになる。
「もしかして、ポケモンセンターのタブンネと同じようになりたい、ですか?」
「同じ?」
「ふつうに」
「ふつうにか。つまり多数派になりたいのかってことか?」
「よくわかんないですけど、そうです」
「よくわからないのにそうなんて言葉、すごく素敵だな」
 おれは笑った。非常によくできたハリボテの笑いだった。
 四十センチは「ひっ」とちいさく声をあげて、身をすくませた。効果は抜群だ。
 おれはすこし圧力を下げた。ヒトモシはほっと息をつく。
「おまえはなにもしなくてもアンコンディショナルに自然な存在だからそんなことが言えるんだよ」
「よくわかりません」
「少数派になりにくいってことだ」
「そうなんでしょうか。たとえば、ヒトモシでもいろいろいますから、ポフィンとポフレのどっちが好きってきいたら、ポフィンって答えるほうが多くてポフレって答えるほうはすくなかったですけど」
「なるほど。賢いな」
 それほどでも、とヒトモシは照れ笑いした。
「おれが言ってるのは、存在を賭けなくてはいけないほどの場面における多数派・少数派のことだ」
「ポフィンもポフレも、野生にはすごく貴重なものですが」
「死ぬか生きるかの問題だよ」
「死ぬって、霊界で一回休みですか?」
 ……ヒトモシの言葉は、やっぱりふつうとはちょっと異なるみたいだ。
「おまえ」と、おれは言った。「そのポフィンとポフレのどっちが好きなんだ?」
「わたしは加工してないマトマの実が好きです」
「そうか」
 まあいずれにしろ、おれの通信規格がかなりいい加減なのはまちがいない。言葉が通じていない気がするのもおれのせいかもしれないのだ。
「今度、お礼になにかの木の実を探しておくよ」
「とってもハッピーです。二個くれるとダブルハッピーです」
「二個探しておく」
 そのときのヒトモシの顔は――

 (*゚ヮ゚)

 こんな感じだったので、おれは黙ってちいさいヒトモシの観察に戻ることにした。
 四十センチには伝え切れなかったが、結局死ぬか生きるかの問題にあるとき、『おれ』自身を伝達するには二つしかないんじゃないかと思う。
 ひとつは自殺。
 もうひとつはテロル。
 おれは性質としては生き意地きたないほうなので、自殺なんて考えない。やるならテロルだ。
 ヒトモシの言葉を覚えようとしたのもテロルの一端だった。ヒトモシの言葉は多数派が扱う言語とはレベルが異なるところにあることはワルビルに話した。そしてそのような言葉がおれを通じて翻訳されれば、多数派が持つ言語の特権性は失われる。翻訳といってもそれはカロス語をイッシュ語に直すのとは訳が違う。たとえば四次元の言葉を三次元に直すようなものなので「翻案」といったほうが正確だろうが、すくなくとも幼児言葉しか話していないと思われているヒトモシが予想よりも遥かに深みのある精神世界を持っていると知ったらどうなるだろう。
 その反応を見てみたい。
 それがおれの動機だった。
 そしてそれこそがおれの考えついた、いちばん柔らかなテロルである。




 それからは、とくに記すべきことのない日々が続いた。
 野生ポケモンの生は単調だ。おれはわりあい冒険が好きだから、できるだけ単調でないように旅を続ける工夫をしているが、いくらおれが努力してもヒトモシの言葉をモノにするには時間がかかった。
 たとえば、火を二発続けて撃つ場合と、単発で撃つ場合では選択される文脈が異なる。しかし単発かそうでないかはいくらか時間を見定めないとわからないし、じっとヒトモシを観察していてもなかなか機会が訪れないこともある。学びには時間がかかった。
 しかし、今ではもう過去の出来事だ。
 おれはヒトモシの言葉をじゅうぶんに日常言語として使いこなせるぐらいにはレベルアップした。四十センチクラスの例のヒトモシの太鼓判つきだ。本来なら、ここでちいさなヒトモシと会話のひとつでもしてみるべきなのだろう。
 けれど、おれは別段ヒトモシと話したいからヒトモシの言葉を学んだわけではない。なので結局、ちいさなヒトモシたちの交流はないままだった。
 おれはこれからどうするかを考えて、適当な草むらのなかでごろんと転がった。多くの者がそうであるように、これからのことについて考えるのは、それが希望に包まれているイメージがあるならば幸福だ。ヒトモシの言葉を覚えて、タブンネと通信できるかもしれないというのはおれにとっても希望であることに変わりはない。
 翌朝、おれはしばらく居ついているポケモンセンターを出た。
 なにが面白いのか、今日もタワーオブヘンブンの鐘を眺めているワルビルのところへ行き――こいつもこいつでおれといっしょにタワーに通い詰めている――声をかけた。
「ヒトモシの言葉はだいたい覚えた」
「マジかよ。あれから二ヶ月ぐらいしか経ってないぜ」
 あれ、とおれは思った。まだそれくらいしか経っていないのか……。集中していたからわからなかった。
「それで?」と、ワルビルは言った。
「それでって?」
「覚えてどうするんだ」
「ああ、言ってなかったな」
 簡単なことだ。
 おれは、ちょっと胸をそらして答えた。
「今からポケモンセンターに対してテロ活動する」
「て……テロぉ?」
 ワルビルは仰天した。推測される感情は焦りだ。
「べつに破壊活動するわけじゃない」
「破壊活動じゃないって、なんかイタズラでもするつもりか。ジョーイが怒るぞ」
「怒られてもかまわない。なぜってこれは、おれの存在を賭けた闘いなんだ」
「よくわかんねえけど……あんまり無茶はするんじゃねえぞ」
 ワルビルはそんなことを言った。無茶をしないで勝利を得られるわけがない。すでに戦線は崩壊し、おれは敗北寸前なのだ。
「だから、まずはおまえだ」
 その言葉とともにおれの気配が高まっていることを察して、ワルビルは身構えた。
「いや、意味がわからん」
「意味について思い悩むのは悪い癖だ。結局、思い悩んでも無意味かもしれない」
 おれは体のなかをかけめぐるエネルギーを集中させる。胸の奥から湧きあがり、みなぎる力。全身が震えるような感覚。
 ワルビルがなにか言おうとしたが、もう遅い。
 おれの、全身全霊をこめた意思の炎が、ワルビルを襲った。




 珍しく、おれは浮き足立っていた。
 はじめて覚えた新しい言葉に、新しい自分を表現する方法に、野生であるという自由と不自由の抑制をこえて、感情があふれだしてくる。
 なにかしなくてはいけない気分。そう――タブンネにテロ活動しなければ。
 タブンネのことを好きでなければならないという枠組みはおれには存在しないが、枠のない不定形の想いがないわけではない。
 だから、おれは全力でタブンネのもとに向かった。
 フキヨセシティのなかを疾走した。ポケモンセンターに入り、ホールを横断して、周囲のざわめきも気にせずに走り続けた。
 タブンネがいた! 受付にいるジョーイの横に付き添っている。
 おれは叫んだ。たぶんおれの声は、けたたましい咆哮のように聞こえていただろう。タブンネ!
 タブンネが、ジョーイが、顔いっぱいに驚愕の色を浮かべておれを見た。おれはそれより一瞬早く、たまりにたまりきった想いのたけをぶちまけた。
 ――もちろん、ヒトモシの言葉で。
 言語で表現するのは難しい。その炎はピンクの色をしている。橙と青の混じりあったコントラストは、あの日見た夕陽のようなコントラスト。見ようによっては、葉っぱのような形。
 きれいだ、と思った。きれいな炎になるように温度調節をずいぶん練習したのだ。吐き出した炎の数はたったひとつ。美しいけれど、まるで風船みたいな空虚さ。
 おれが放ったそのひらひらとした炎は、タブンネの目の前あたりをさまよい、プチンとあっけなく燃え尽きて、消えた。
 タブンネの顔は――

 ( ゚v゚)?

 こんな感じだった。
 おれとしてはすぐにでもわかってほしいところだったが、おれでもヒトモシの言葉を理解するのに二ヶ月もかかったのだし、いますぐわかれというのは無理があるところだったのだろう。そもそも既存の言葉で思考している者がヒトモシの言葉を理解できるかどうかも怪しい。
 ただ、おれの言葉はヒトモシの言語と通常の言語をかけあわせたものだ。存在の深いところではもしかするとなにかしらを感得できるかもしれないし、希望を捨てるにはまだ早い。
 なにより――
 おれがハート型のかえんほうしゃを放ったのは、その日がはじめてのことだったから。




【名無しのクリムガン】

じょうたい:Lv.34 健康 4V
とくせい :?
せいかく :?
もちもの :なし
わざをみる:かえんほうしゃ ??? ??? ???

基本行動方針:きれいな夕陽が見たい
第一行動方針:共同体と意思疎通を図る
第二行動方針:自分が生まれた橋を探す
現在位置  :フキヨセシティシティ・ポケモンセンター

 時間も場所も豪快にぶっ飛ばして、今回もいろいろと崩壊しています。
 これもある種のツンデレということで。


 


トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2015-05-22 (金) 20:10:03
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.