この作品は、炎と水の出会いの物語から少し後のお話になります。 written by 慧斗
Side フレイ
窓から差し込む日差しがまぶしい。もう少し寝ていたかったけどそろそろ起きる時間か。
俺は8番道路のポケモンセンターの一室で目を覚ます。
マスターやカイン、そしてアクアは既に起きているみたいだ。
今日はみんなとバトルの特訓をして、明日草の試練に挑もうとマスターが言っていた。
相性を考えても明日の試練は俺が主戦力になるだろうから今日は気合い入れて特訓しなくちゃな!
横になった状態から起き上がって小さく伸びをした。
マスターが俺たちのコンディションのチェックを終えると、最初は基礎的な動きのトレーニング。そして技の練習を終えたらいよいよ模擬戦だ。
模擬戦では先に相手に技を当てた方が勝ちで、お互いにマスターからのバトル指示はない。
この模擬戦のスタイルはあまりダメージを受けないものの、マスターからの指示がないので、比較的安全ではあるが自分の判断で戦わなければいけない。
マスター曰く、「安全にできるなら練習の難易度が高い方が本番で役に立つからね」ということらしい。
というわけで、これから俺とカインで模擬戦だ。
挨拶代わりに威嚇するとそれに答えるように電磁波が飛んできた。
咄嗟に地面に二度蹴りを当てて砂ぼこりを巻き起こし、電磁波が乱れた隙に回避する。
生憎俺は近接攻撃技しかないのでカインに接近しなければ何も始まらない。砂ぼこりのサイドからニトロチャージで加速しながら接近する。
「もらった!」
「そうはさせるか、チャージビーム!」
俺の行動を予測したらしく、カインはチャージビームで俺を迎撃しようとする。
でも攻撃が飛んでくることは俺にだって想定内だ。とんぼ返りで跳び上がって攻撃を回避、そのまま上から攻撃を仕掛ける。
「あれ、どこだ⁉」
一瞬反応の遅れたカイン。慌てて俺に二度目のチャージビームを放とうとするが、それより先に俺の(威力を抑えた)二度蹴りがカインの頭にヒットする。
「はい、フレイの勝ちだね」
マスターの一声でお互いに戦闘態勢を解く。
「放電覚えられたらフレイに勝てたかもしれないのに!」
「でもカインも結構強くなってると思うぞ?」
「あ~、指示のないバトルの時お前本当に強すぎるんだって! 普段のバトルでもやっとなのに、指示がなくなったら全然勝てなくなる!」
俺に負けたのがよっぽど悔しいらしい。
「まあ、俺は指示のないポケモンバトルは実戦で経験済みだからな…」
「アクアと一緒にダダリンと戦ったんだっけ? そりゃ強い訳だな」
「あ、訂正しとくけど、私はほぼ何もしてないからフレイだけで倒したような感じだよ?」
「アクア、さらにハードル上げないで…」
アクアのフォローは無意識のうちにカインのハードルを上げていたらしい。
というか、あの時は俺だけで戦ってる様に思わなかったんだよな…
もしアクアと出会っていなければ、俺は今でも戦えずにいたかもしれないからな…
「フレイは一旦下がっててね、次はカインとアクアでやってみようか!」
マスターの指示で俺は練習用のバトルフィールドから離れた。
その後、接戦で電磁波を当てたカインが勝利、俺とアクアは俺の勝ちで終わった。
「みんなお疲れ様。リザードンで飛べる様になったし、ちょっと遊びに行く?」
「ん?」
遊びに行く? これから一体どこに行くんだろう…
Side アクア
「着いた~! 今日はちょっと面白そうなイベントがあるみたいだから来てみたよ」
マスターが連れてきてくれたのはハウオリシティのショッピングモール。
面白そうなイベントって一体なんだろう…?
中に入るとエントランスに大きな植物が飾られていて、店員さんとアブソルが縦長の紙をお客さんに配っている。
マスターも紙を4枚もらって来て私たちに見せる。
「ホウエン地方では、ある幻のポケモンが千年に一度目覚めて、願いを叶えてくれるっていう伝説にあやかって、この短冊に願い事を書いて笹に飾る行事があるんだ。今日はそのイベントがあるって聞いて来たんだ。みんなのお願いも書いてあげるからね!」
そう言うとマスターは油性ペンで短冊に何かを書き込んでいる。
「ほら、こんな感じで願い事は何でもいいよ!」
マスターの持っている短冊には【次期アローラリーグチャンピオンになれますように】と書いてある。
「じゃ、俺は【放電を覚えられますように】でお願いマスター!」
「はーい。フレイとアクアはどうする?」
「俺は、もう少し考えてみる」
「じゃあ私も」
「OK、先にカインの短冊から書いてるね」
願い事、一体何をすればいいんだろう?
今よりももっと可愛くなりたい?
美味しい木の実をお腹いっぱい食べたい?
バトルでフレイみたいに活躍してみたい?
フレイともっと二匹だけのポケモンバトルしたい? これは流石に恥ずかしいかな…
そういえばフレイは何をお願いするんだろう?
私はなかなか決まらないしちょっと聞いてみよう。
「ねぇ、フレイは何をお願いするの?」
「そうだな、【みんなでポケモンリーグを優勝できますように】かな?」
「みんなで?【ポケモンリーグ優勝できますように】じゃダメなの?」
「【みんなで】は大事な要素だ。俺も最初はアクアの言うように【みんなで】はいらないと思ってたけど、アクアと出会って色々と思ったんだ」
「私と出会って?」
「ああ。俺の力で色々出来るんだってずっと思ってたけど、本当はマスターやカイン、アクアの存在のおかげで今の俺があるんだなって」
「そうなんだ…」
「だから、【みんなでポケモンリーグを優勝できますように】にしようと思うんだ」
「そっか、ありがとう。私も考えてみるね!」
みんなで、か…
何となく私も一番叶えたい願い事が決まったような気がする。
「アクアも決まったの?」
「うん。私のお願いは…」
大きな笹に私たちの短冊も飾られる。
「そういやアクアは何をお願いしたんだ?」
「私のお願いはね…内緒!」
「そんなこと言わずに教えてよアクア!」
「願いが叶ったら教えてあげるからそれまで待っててね」
「分かった。叶うといいな、アクアの願い事。」
じゃれつくような感じから一変して、フレイはちゃんと待ってくれるみたい。
やっぱりフレイは優しいんだね
「うん!」
「おーいそこのバカップル、そろそろ帰るぞ!」
「バカップルは余計だカイン! アクア、早く行こうぜ」
「分かった!」
ショッピングモールを出るときに振り返ると、私の願い事を書いた水色の短冊は一番上に飾られていた。
【フレイの願い事が叶いますように】
水と短冊の願い事 完
突然思いついた七夕ネタです。投稿時間はギリギリOUTだけどアローラとの時差を考慮すればセーフ?
久々にアクアを書きたくなったのが本音だったりします
本編の執筆も頑張って進めているので、もうしばしお待ちください…
【追記】
pixivへの投稿準備中に誤字訂正してたら、「タイムスタンプを変更しない」にチェックを入れ忘れて更新しちゃった…
この小説書いたのも一年前か、みんなの短冊の願い事も叶いますように! 2022年 7月”7日”
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