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僕らのレンジャー ~新たなる切り札~

/僕らのレンジャー ~新たなる切り札~

第四回仮面小説大会非エロ部門参加作品。


★本作からのお願い
・部屋を明るくして、画面から離れてご覧ください。
飲食をしながらの閲覧は、重大な事故に発展する可能性がありますのでお控えください。
・本作品はフィクションです。実在する人物、企業、番組、商品などとは一切関係ありません。



 進化後は海狸(ビーダル)作『からたち島の恋のうた・飛翔編』
 ★僕らのレンジャー ~新たなる切り札~★

 ★ ★ ★ ★ ★

 暗く、狭い部屋だった。
 ただ一枚重苦しげな鋼鉄の扉がある他は窓の一つもない、灰色の壁に囲まれた殺風景な部屋の中。ただでさえ狭く息苦しい部屋の奥隅に置かれた、鉄格子で組まれた大型のスポーツバッグ程度の大きさしかない(ケージ)の中に、その2匹のポケモンたちは閉じ込められていた。
「ねぇ、兄貴ぃ……僕らどうなっちゃうのかなぁ?」
 丸い褐色の身体を震わせ、真っ赤な鼻を啜り上げてビッパが呟く。
 兄貴と呼ばれたコアルヒーは、水色の柔らかな羽毛で優しく弟分を包み込むと、黄色く平たい嘴の先で怯える頭をくしくしと撫でて励ました。
「心配すんな。すぐにポケモンレンジャーさんたちが助けにきて、俺たちをさらったあのおかしな連中をやっつけてくれるさ!」
「ポケモン……レンジャー?」
 顔を上げて黒く円らな瞳をキラキラと煌めかせるビッパに、コアルヒーは力強く頷いた。
「おう。いつだって何処からともなく現れて俺たちポケモンの平和を守ってくれる人たちのことだよ。みんな最高に強くて格好いい、愛と正義の味方なんだぜ!!」
「正義の……味方……!!」
 ビッパの瞳が、更に輝きを増す。
 暗く、狭いその部屋が。
 冷たいばかりの鉄格子が。
 眩く、熱くなるほどに、2匹の心に希望の光が果てしなく膨らんでいった。

 ★ ★ ★ ★ ★



 ★ ★ ★ ★ ★

 何処とも知れぬ、遙か何処までも続くかに思える荒涼とした道路。
 突然、その荒野に爆音が轟く。
 砂塵を巻き上げ、陽炎を掻き分けて、道路を突き進みやってきたそれは、アグレッシヴなデザインのボディを燃える炎の色に塗り固めたオフロード・カブリオレだった。*1
 ドライバーシート上でハンドルを駆るは、車と同じ真っ赤な帽子を被り、紺色の半袖ジャケットに身を包んだ若い男。
 そして男の周囲には、助手席に1匹、後席に4匹、計5匹のポケモンが座っている。
 助手席に座りしは、やはり緋色の四肢を持ち火焔の鬣をなびかせるポケモン、ブースター。
 後席の右端には、深い海の色の四肢を持ち水魚の鰭を広げたポケモン、シャワーズ。
 その隣には、光り輝く金色の四肢を持ち、電光を帯びた鋭い針を背に逆立てるポケモン、サンダース。
 その隣には、神秘的なピアニィピンクの四肢を持ち、二股に分かれた尻尾を妖しく揺らすポケモン、エーフィ。
 そして後席左端には、夜天の色の四肢を持ち、月色の光を宿した輪を全身にまとったポケモン、ブラッキー。すべて俗に〝ブイズ〟といわれるイーブイの進化系ばかりであった。
 やがて甲高いブレーキ音とともに、タイヤが地を噛みしめるようにして車体が停止する。
 ドアを開け、ひらりと降りたった男に続き、5匹のブイズたちが颯爽と地に並び立つ。
 何処からか、荘厳な声が空を震わせた。
『イーブイ……いくつもの進化の可能性を秘めたポケモン。その未来は、この世界とともに無限の軌跡を描いて広がっていく!!』
 5色の閃光が、4方から迸る。
 その光に導かれるように、地平線の彼方から空を飛び越えて、鋭角的なラインで形作られた文字列が現れて天を飾った。
 ブイズたちの声がその文字列を、すなわち彼らに与えられた呼称を、高らかに、誇らしげに読み上げる。
 そう――――――――

 〝ブイズ戦隊イーレンジャー〟と!!

 流れ出した軽快なイントロダクションのメロディに乗って、イーレンジャーたちが走り出す。
 横一文字に足並みを並べ、躍動する四肢で道路を蹴りつけて、どこまでもどこまでも疾駆していく。
 勇壮な歌詞のヴォーカルに合わせ、荒野を抜けて涼やかに茂った林道を掻き分け、深く険しい谷間の道を駆け登る。
 そして谷を見下ろす崖の上に5匹揃い踏み、凛と虚空を見据えると、
 ドォン!! という爆音と共に色とりどりの噴煙が背後で巻き起こり、彼らの勇姿を飾りたてた。
 
 *21匹の、勇ましい闘志を瞳に秘めた雄のイーブイが力強く前足を振り上げる。
 熱血漢なみんなのリーダー。首の飾り毛に真紅の紋章〝E-ブレム〟を光らせた彼の名はビスケット。
 またの名をブイズ戦隊イーレンジャーが1匹〝ブースターレッド〟!!

 そしてまた1匹の、意志の強そうな唇を堅く結んだ雄のイーブイが静かに眼光を研ぎ澄ます。
 寡黙なる哲学者。飾り毛に紺青のE-ブレムを光らせた彼の名はムース。
 またの名をイーレンジャーが1匹〝シャワーズブルー〟!!

 そしてまた1匹の、俊敏に跳ね回る雌のイーブイが快活そうな笑顔を撒き散らす。
 いつもボジティブな元気っ娘。飾り毛に黄金のE-ブレムを光らせた彼女の名はエクレア。
 またの名をイーレンジャーが1匹〝サンダースイエロー〟!!

 そしてまた1匹の、しゃなりと上品に佇んだ雌のイーブイが優雅な微笑みを浮かべる。
 淑やかなる姫君。飾り毛に薄紅のE-ブレムを光らせた彼女の名はサンデー。
 またの名をイーレンジャーが1匹〝エーフィピンク〟!!

 そしてまた1匹の、斜に構えて取り澄ました雄のイーブイが荒んだ眼差しで睨み付ける。
 孤高な一匹狼。飾り毛に漆黒のE-ブレムを光らせた彼の名はゲッペイ。
 またの名をイーレンジャーが1匹〝ブラッキーブラック〟!!

 遙か彼方の砂漠の奥深く、砂の嵐に隠された黄金の四角錐。その金字塔こそイーレンジャーたちの城、〝バトルピラミッダー基地〟だ。
 内部中枢にある司令室では無数のモニターと計器が地球の各都市の情報を、そしてイーレンジャーたちの状況を精細に表示している。
 それを淡々と見守るもう一匹の雌のイーブイ。耳飾りに緑の宝玉を光らせた、彼女の名はミルフィユ。クールで知的なみんなのお姉さんだ。
 不意に彼女がマイクを引き寄せて何事か叫ぶ。
 その通信を受け取った赤い帽子のトレーナーが号令を上げる。
 そしてイーレンジャーたちは駆け行く。烈風に綱を軋ませる、長い長いスカイアローブリッジを。*3その行く手に立ち込める暗雲へと向かって。

 暗雲の彼方、稲妻轟く成層圏に、禍々しくもおどろおどろしい雰囲気を漂わせた巨鳥が鋼の翼を広げて飛んでいる。
 それこそがイーレンジャーの敵、地球の未来を脅かす悪の軍団、非伝説の無進化ポケモンのみ*4で構成されたムシンカ大軍団の空中要塞〝空無道(えあむどう)〟だった。
 その内部では、異様を漂わせるシンボラー大団長を中心に、禍々しくオーラが渦巻くミカルゲ司教、蒼く妖艶な肢体をくねらせる歌姫ラプラス、鋭く葉先を尖らせた長葱を振りかざす邪剣士カモネギ、謎めいた光沢に身を包んだ銀騎士フリージオらが、無数のアンノーン兵たちが犇めく中を伸し歩いていた。
 空無道から降り注ぐ光条に撃たれ、町並みが爆発し、ビルが倒壊し、怯えた人々が逃げまどう。
 そんな中、人々を守りながらアンノーン兵に立ち向かっていくイーレンジャー。
 サビの強烈なシャウトに呼応するように、ブースターレッドの炎の牙が、シャワーズブルーのハイドロポンプが、サンダースイエローの10万ボルトが、エーフィピンクのサイコキネシスが、ブラッキーブラックの悪の波導が、並み居るアンノーン兵たちを次々と打ち倒していく。
 そして虚空へと跳躍したブースターレッドが虹色に輝き、必殺の切り札〝イーレンジャーストーム〟を撃ち放つ!

 砂嵐を引き裂いて、黄金色に輝く頂上を青空にそびえさせたバトルピラミッダー基地。
 その壁面が展開し、中から屈強な3体のロボが出撃した。
 四方に視界が分割され*5、3体はそれぞれの視界の中で複雑に姿を組み替え、パーツをつなぎ合わせる。
 やがて合体したそれらは白銀の大巨神を形作り、地響きを上げて大地に降り立った。
『ブイズ戦隊! イィィレェンジャァァァァァァァァッ!!』*6
 ヴォーカルのフィニッシュとともに大巨神が豪快に爪を構え、それをバックにトレーナーとイーレンジャーたちが勢揃いして華々しいオープニングの締めを飾ったのだった。

     ★

『この番組は、勇気を試すブレーン・ピラミッドキング、JINDAIと、』
 ピラミッドマークに丸文字で描かれた〝JINDAI〟のロゴの後、名だたる各会社の名前がテロップに並べられた。
『御覧のスポンサーの提供でお送りします』



 流れる星々を背景に、ビスケットたちが首に付けている紋章がクリップ式のホビーとして現れる。
『正義の証し、E-ブレム!!』
 続けて同じくビスケットたちが左前足に着けていたブレスレットが、閃光を瞬かせながら流れていく。
『未来を掴む鍵、E-ブレス!!』
 イーブイの顔出し着ぐるみを羽織った男の子が、赤いE-ブレムとE-ブレスを装着する。
『2つが合わさる時、ライト&サウンドで君もイーレンジャーに進化する!』
 腕を胸の方に鋭く折り曲げながら、その子は叫んだ。
『E-ヴォルーション!!』
 激しい電子音と共にE-ブレムとE-ブレスに埋め込まれた数多くのランプが明滅し、男の子の着ぐるみがイーブイからブースターのそれへと早変わりした。
『友達から力を受けとって、決めろ必殺、イーレンジャーストーム!!』
 ブラッキーの着ぐるみを着た子がブースターの子のいる方へE-ブレスを着けた腕を振るうと、その瞬間放たれた信号を受信したブースターの子のE-ブレスが一層激しく反応する。
『オーバーヒート・フィニッシュ!』
 ブースターの子が叫びながら腕を振るうと、爆発の効果音がE-ブレスからけたたましく鳴り響いた。
『未来を守るのは君たちだ!! イーレンジャー進化シリーズ』



 青白い光で形成されたトラックの上を、色鮮やかな靴を履いた子供たちが走っていく。
『B-ダッシュで駆け抜けろ!』
 黒っぽい胴体、赤い頭の中心に十字の模様の入ったポケモンがトラックを併走する。
『アギルダーと競争だ!』
 素早さに定評のあるそのポケモンにも負ける事なきスピードで少年たちは加速していく。
『地平の彼方まで突き進め!!』
 遠ざかっていく子供たちを見送って、彼らの履いていた靴が宇宙船の如く飛来する。
『元気な僕らのコスチューム! デボンコーポレーション、ランニングシューズ!!』
 赤を基調とした物、青を基調とした物、黒を基調とした物の3足の靴がズラリと爪先を揃えた。 
『イーレンジャーVerついに登場!』



     ★

 前回のあらすじ。
 ムシンカ大軍団の幹部、銀騎士フリージオ自らの指揮による恐るべき計画、サンヨウシティ保育園バスジャック作戦。
 イーレンジャーたちの決死の活躍によって暴走するバスは停止、園児たちは全員無事救出された。
 そして――
「オーバーヒート・フィニッシュ!!」
 幾多の敵を葬ってきた必殺技イーレンジャーストームが、ついに銀騎士フリージオに炸裂する。
 しかし!
「ふはははは……」
「な、何っ!?」
 何事もなかったかのように爆炎の中から姿を現したフリージオに、イーレンジャーたちは驚愕の声を上げたのだった。
「残念だったな。イーレンジャーストームはたった今死に絶えた。次はお前らの番だ!!」
 思いも寄らぬ銀騎士フリージオの凄まじい反撃を受けて追い詰められるイーレンジャー。あわや吹雪の中に埋もれそうになったその時。
『引け……引くのだ銀騎士フリージオ…………』
 空無道からムシンカ大軍団大団長、シンボラーの声が轟き渡った。
「な!? 何故です大団長!? もう少しで我らに仇なすイーレンジャーめらを……」
『我の命は絶対なり……今すぐ我が元に戻るのだ……』
「くっ!……ぎょ、御意……」
 無念に身を震わせながらも、銀騎士フリージオは撤退した。
 その後足止めのために空無道から出撃した巨大アンノーン兵をロボによって撃退したものの、イーレンジャーたちの心には去り際にフリージオが残した言葉が重くのしかかっていた。
「命拾いしたなイーレンジャーども。だが、イーレンジャーストームはもう私には通じない。次に会う時が貴様らの最後の時だ! せいぜい首を洗って待っているがいい!! ふははははははははは……」

 ~№25・新たなる切り札~

 

『ふはははは……』
 真っ黒な粉塵を割り裂いて現れる、フリージオの銀白色のボディ。
 モニターに映し出されるその映像を、ビスケットたちは食い入るように睨み付けていた。
 前回の戦いの後バトルピラミッダー基地に帰還したイーレンジャーたちは、疲れを癒す間もなく会議室に集まって、なぜイーレンジャーストームが銀騎士フリージオに通じなかったのか、バトルビデオを幾度となく繰り返し再生して入念な検証を重ね続けていたのだった。
「くそっ!!」
 ドンッと前足を机に叩き付け、ビスケットが苛立ちを込めた声を荒げる。
「何度見ても、何度思い出しても分からない! まったくいつも通り、あれだけ完璧に決まっていたイーレンジャーストームがどうして銀騎士フリージオには通じなかったっていうんだ!?」
「ビ、ビスケット落ち着いて、大丈夫、大丈夫だよきっと……」
 エクレアが宥めにかかるが、隣に立っていたゲッペイがそれを鼻で一蹴する。
「ふん、頼みの綱の必殺技が破られてその原因も分からないってのに何が大丈夫だってんだよ!? そんな脳天気なこと言ってる場合かっての!」
「よせゲッペイ。エクレアは俺を励まそうとしただけだ。すまない。こんな時だからこそ冷静にならなきゃな……」
 シュンと落ち込んだエクレアに頭を下げるビスケット。ふんとそっぽを向くゲッペイ。ひとまずは落ち着いたものの、重苦しい室内の空気はいつまた荒れ狂うかも知れぬ剣呑さを漂わせていた。
「不思議なのはイーレンジャーストームのことだけじゃありませんわ」
 サンデーの品のいい眉が悩ましげに歪む。
「あそこまで私たちを追い詰めておきながら、何故シンボラーは銀騎士フリージオを退却させたのでしょう。彼らにしてみれば絶好の機会でしたでしょうに」
 その疑問にムースも無言のまま頷いて同意する。とにかく先の戦いは、不可解な事が多過ぎだったのだ。
「……もう俺たちなんざいつでも潰せると思われてるってこったろうな」
 忌々しげにゲッペイが吐き捨てる。
「もうよそうぜ。エクレアみたいに楽観的なことを言う気はねぇけどよ、とにかく現時点じゃ情報が少なすぎる。ムシンカの連中の事情なんざ奴らに聞かなきゃ分かるもんかよ! んなことをいつまでもウダウダ考えているより、ひとまずイーレンジャーストームのありそうな問題点を見当付けてそれを克服するために努力した方が前向きだろうが!」
「確かにゲッペイの言う通りだ」
 頷きながらも、ビスケットは苦々しく言葉を続けた。
「その通りだが、しかし見当付けるにしてもどこから手を付ければいいんだ? これだけ検証しても何のヒントも出てこないんじゃ……」
「とぼけんなよ。本当は分かってんじゃねぇのか?」
 ゲッペイが言い放ったその言葉に全員が振り向く。
「……何の話だ?」
「もし俺たちに問題があるとしたら、フィニッシュを放ったあんたしか考えられないってことだよ、リーダー」
『リーダー』の響きに含まれた嘲りに、ビスケットの瞳がカッと燃え上がる。
「俺がミスしたって言いたいのか!?」
「少なくとも俺はミスしてねぇよ? 黒い眼差しは完璧に奴を捕らえていたし、他のみんなから受けとった力にも狂いがあったとは思えねぇ。あんたにその力を渡した俺が言ってんだ。俺までに問題がないなら……」
 一際毒々しい嘲弄が放たれた。
「……あんたしかいないだろ?」
「何をっ!!」
 度重なる挑発に今度こそ激昂してゲッペイに掴みかかろうとするビスケット。
 その前にムースがすかさず立ち塞がって食い止めつつ、振り返って非難の視線をゲッペイに向ける。
 エクレアとサンデーはひたすらオロオロしながらも、
「け、喧嘩はダメだよぅ、仲良くしよ? ね?」
「はわわ、落ち着いてくださいし、落ち着いてくださいまし……」
 と何とか2匹を取りなそうと必死に呼び掛けていた。
「必殺技もまともに決められねぇんなら、次からフィニッシュは俺がやってやるぜ。ついでにリーダーも代わってやろうか?」
「ふざけるなこの野郎! 俺がまともに技を決められないかどうか今すぐ証明してやる! 表に出ろっ!!」
 完全に頭に血を滾らせてしまったビスケットは、ムースを押し退けてゲッペイに向かい激しく牙を剥く。不敵に笑い、迎え撃たんとするゲッペイ。2匹の間に一触即発の緊張感が迸る。
 その時。
「やめないかお前たち!!」
 扉を開けて飛び込んできた声が、今にもぶつかり合わんとしていたビスケットとゲッペイに冷水を浴びせかけた。
「司令……ミルフィユさん……」
〝司令〟と呼ばれた赤い帽子のトレーナーに続き、イーレンジャーのサポートを勤めるもう1匹のイーブイ、ミルフィユが緑の耳飾りを揺らして叱責の声を上げる。
「まったく何をやっているの!? 敵の驚異に振り回された挙げ句仲間割れだなんて、まるっきり奴らの思うつぼじゃない!?」
 唇を噛みしめてうなだれる一同を、司令は鋭く力強い声で奮い立たせる。
「イーレンジャーストームが破られたからといって気に病む必要はないぜ! お前たちには内緒にしていたが、実は俺とミルフィユでそれぞれに新しい兵器を開発しているんだ!」
「新しい……兵器?」
 呆然と復唱するエクレア。他のメンバーもみんな一様に目を丸くして司令たちの話を聞いていた。
「そういうことよ。もっとも、まだ完成までには少しかかりそうだけれど」
「例え敵が俺たちの技を防ぐ手段を持ち出してきたって、こっちにだって次に出す手は用意してあるんだ。どうか俺とミルフィユを信じて、動揺することなく次の戦いに備えていてくれ!!」
 司令の檄を受け、室内の張りつめた空気が解けていく。
 深く息を吐き出したビスケットは、それでもまだ色濃い苦悩を顔に宿していたが、 
「……騒ぎを起こしてすみませんでした司令。俺、頭を冷やしてきます」
 と頭を下げると足早に会議室を飛びだしていった。
「ケッ」
 と一言呟いたゲッペイも部屋を出て、ビスケットとは逆の方向に歩いていく。
「もうふたりとも、ちゃんと仲直りしていきなさい!」
「大丈夫だよ。ビスケットとゲッペイが喧嘩するのなんていつものことだもん」
 呆れた声で言い合うミルフィユとエクレア。サンデーも2匹に頷きかけたが、ムースが沈鬱な表情で開かれたままの扉を見つめているのに気付いて顔を曇らせた。
「あ……そうですわね。お二方の仲はともかく、ビスケットさんがまだかなり焦られておいでなのは気にかかりますわね……」
 砂塵渦巻くバトルピラミッダー基地に、果てしなく暗い影が立ち込めていた。 

 ☆

 遙かな上空、漆黒の積雲に包まれた暗黒空間の中に、銀色の翼が浮かんでいる。
 地球の未来を蝕む悪の軍団、ムシンカ大軍団の空中要塞空無道。その中枢にそびえる宮殿を、身も凍るような冷たい歌声が震わせていた。
 やがてその旋律が終止符を迎え、魔宮は重苦しい静寂に包まれる。
「……よし、これでまたしばらくは安心だ」
 宮殿の奥深くに秘められた一室で、歌い終えたポケモンが安堵の息を漏らした。
 ムシンカ大軍団の幹部が1匹、歌姫ラプラス。*7ほっそりと長い首を伸ばして彼女が見つめるその先には、透き通った巨大な塊が壮絶な冷気を漂わせている。
 氷の棺だった。そしてその中には、鈍く輝く六角形の結晶、銀騎士フリージオが眠っているのだ。
 固く継ぎ目を閉ざしたその寝顔を陶然と見つめるラプラスの背後に、怪しき気配を漂わせて忍び寄る者がいた。
「滞りなく、再凍結し終えたようじゃな」
 絨毯の上を静かに滑ってきた巨岩。その岩壁に穿たれた割れ目から紫煙のオーラが渦を巻いて浮かび上がる。
 ミカルゲ司教――シンボラー大団長に次ぐ軍団の実力者であり、『世界の未来を破壊する』ムシンカ大軍団の活動を前線で指揮する顔役であった。
「やれやれ、危ういところじゃったわ。まさかお前が銀騎士フリージオにかけた絶対凍結の呪縛がいつの間にか解けかかっていたとはのぉ。際どいところで気が付いて呼び戻したから良かったものの、もう少しで銀騎士を失っていたところじゃ」
 嫌味を含んでぶつけられた言葉に、歌姫は美しくも荒々しい声で叫び返した。
「黙れ生臭坊主! こうなったのも貴様の立てた作戦の不備のせいで出撃が長引いてしまったからだろうが! 今度下手な計画を立てて、私のフリージオにもしものことがあったら承知せぬぞ!!」
 蒼い鰭で背後の棺を庇いながら上げるラプラスのヒステリックな怒声に、ミカルゲはほとほと辟易とした様子でオーラを明滅させる。
「ふん、心配せんでもええ。こ奴のおかげでイーレンジャーストームが無力化できることも証明されたからの。今度こそ迅速かつ確実にあのイーブイめらを葬り去ってくれようぞ。……おぉ、目を覚ましたようじゃの」
 ラプラスが振り返ると、棺の蓋が音もなくスッと開いて中から白い霧に包まれた銀騎士フリージオの姿が浮かび上がるところだった。
 顔の中程にある継ぎ目が開き、青白い瞳が爛々と光を放つ。
「終わったのか……」
「あぁフリージオ、私のフリージオ!」
 愛おしげに首を絡ませて甘える恋ポケのラプラスを、銀騎士フリージオは氷の鎖で抱き返す。
「面倒をかけたなラプラス。まさか長時間戦いの場に居すぎたせいで、即座に修復せねばならぬほどの負担が俺の身体にかかってしまっていたとはな」
 その言葉に、首を擦り寄せている歌姫ラプラスが密かに妖しく瞳を光らせる。2匹の後ろで様子を見守っているミカルゲ司教もまた、この瞬間意味ありげにほくそ笑んだ顔をオーラの中に浮かべていた。
「最早このような醜態は見せぬ。ここまで尽くしてくれたお前のためにも、今度こそこの手でにっくき進化ポケモンどもの未来を閉ざしてくれよう! 司教、次の作戦はどうなっている?」
「たった今歌姫ともその話をしとったところじゃよ。来い、会議室で大団長がお待ちじゃて」 

 

「ふぅ」
 端末から前足を離してミルフィユが一息吐くと、見計らったように扉が開き、サンデーとムースがそれぞれにお茶と菓子を乗せた篭を咥えてやってきた。
「ミルフィユさんお疲れさま。新兵器の完成具合はどうなっていますの?」
「順調よ。……と言いたいところだけれど、正直壁に当たっちゃっているわ」
 疲労の色も濃い顔を拭ってお茶に口をつけたミルフィユの様子を、サンデーが心配そうに伺う。
「お身体には気を付けてくださいませ。指令のプランもあることですし、無理をなさらなくともよいのですから」
「気を使ってくれてありがとうサンデー。でもね、私は無理にでもこれをやり遂げたいのよ」
 モニターに整然と列をなす無数の記号と図形を眺めやり、ミルフィユは穏やかな笑みの中に微かな憂いを含ませた。
「このプランはね、兄さんが熱心に研究していた理論を形にしたものなの」
「ジェラートさんの……」
 はっと息を飲んだ2匹の前で、ミルフィユは机の引き出しを開ける。
 黒々と光る細く歪んだ鉄細工が、そこにあった。

 

 毎回御覧になられている方には今更ではあろうが、第1話の回想である。*8
 人知れぬ森の中、平和な時を刻むイーブイの里があった。
 しかし、未来を破壊することを目的とするムシンカ大軍団は、数多の進化系を持つイーブイたちを打破すべき未来の象徴であるとし、世界侵攻への先駆けに里を強襲したのだ。
 さて、このイーブイの里にジェラートという若者がいた。彼はポケモンでありながら人間を超える知能を持ち、博士号までも得たほどの天才児であった。
 ムシンカ大軍団の動向を事前に察知したジェラートは、人間の学者たちと連絡を取り合って密かに対策を講じようとしていたが、その対策が軌道に乗る前に襲撃の日を迎えてしまう。
 やむなくジェラートは彼の妹ミルフィユに村の幼い仔供たちと対策案の全てを託し、小型カプセルに乗せて脱出させることを決定した。
「僕は残って大人たちと一緒に戦うよ。ミルフィユ、子供たちを頼んだよ」
 黒縁の物知りメガネを陰らせて悲壮にも語るジェラート。カプセルを逃がすための足止めにしかならない戦いとなることは明白だった。
「ジェラートさん! 俺も一緒に戦う!!」
 小さなビスケットが果敢にも立ち上がり、カプセルの外に飛び出そうとしてミルフィユに押さえつけられる。
「駄目よ、ビスケット。お願い、言うことを聞いて……っ!」
 本当は誰よりもこの場に残りたかっただろう。もしくは死地に向かおうとする兄を引き留めて連れ出したかっただろう。その想いをミルフィユは決死の覚悟で噛み殺し、与えられた使命を果たすことを選んだのだ。
「ビスケット、他のみんなも、どうか今は逃げ延びて、明日の戦いのために強くなってくれ。僕もなるべく、できる限り……いや、」
 かぶりを振って、ジェラートはメガネの奥を光らせて立ち上がる。
「必ず生き残って、みんなが来るのを待ってるからね!!」
 カプセルの蓋が閉まる。ジェラートの笑顔が遠ざかる。
「ジェラートさあぁぁぁぁん!!」
 窓に取り縋って泣き叫ぶビスケットの肩越しに見えた、尻尾を振って見送るメガネのイーブイ。ミルフィユたちに取って、それがジェラートの最後の姿となった。
 その後彼らを乗せたカプセルは一人のトレーナー、即ち現在の司令によって救出される。
 彼の指導の元で成長したビスケットたち5匹は、ジェラートの研究をミルフィユが受け継いで完成させた特殊な進化法〝E-ヴォルーション〟によってイーレンジャーへと進化する能力を身につけた。
 そして開始されたムシンカ大軍団の世界侵攻。その尖兵となった戦鬼ケンタロスと相対したビスケットたちは、
「……………………っ!!」
 そのケンタロスが角の付け根に誇らしげに飾っていたそれを見て、驚愕の悲鳴を上げることになる。
「こいつに見覚えがあるかいイーブイのガキども。こいつはな、貴様らの里の連中を皆殺しにしたとき、最後までしつこく食い下がったクズヤローが着けてやがったものよ。跳ね飛ばしても跳ね飛ばしてもゾンビみてぇに立ち上がってきやがるから、この蹄で踏み砕いてミンチにしてやったぜぇ! げはははは、お前らもすぐに同じように仕留めてやんよ!!」
 それは、
 その黒い、歪み果てた、物知りメガネのフレームだったものは、紛れもなく。
「いっ……いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!!」
 魂も砕けるようなミルフィユの号泣が、首の飾り毛に着けた、通信機と進化発動器を兼ねた端末〝E-ブレム〟を切なく震わせる。
「貴様は……貴様だけは絶対に許さん! みんな、行くぞ!! E-ヴォルーションだ!!」
 ビスケットの怒号と共に、全員が一斉に左前脚の〝E-ブレス〟を振りかざした――
 
 

 それがイーレンジャーの初陣であった。
 憎むべき仇、戦鬼ケンタロスを、5匹の力を結集した必殺技イーレンジャーストームの最初の標的として血祭りに上げたことは回想するまでもないだろう。
「兄さんの研究と触れ合う時、私は兄さんを感じていられるの。だから、どんなに難しい問題でも……きっと解き明かしてみせるわ」 
 兄の形見である物知りメガネの残骸をしっかりと握りしめ、ミルフィユは誓いを新たにした。
 その肩をムースが優しく叩く。
 サンデーも柔らかな笑顔で頷いて、ミルフィユの手を取った。
「私たちにできることがあれば何でも言ってくださいまし。ジェラートさんのためにも、必ずこの困難に打ち勝ちましょう」
「えぇ、ありがとうムース、サンデー。……ところで、そういえば他のみんなは?」
「ビスケットさんとエクレアさんはパトロール中。ゲッペイさんはまだ独りで自主トレーニング中ですわ」

 ★

 トレーニングルームの闇の中を、真紅のターゲット・ポインターが縦横無尽に駆け巡る。
 それを一つ、一つ、また一つと、ゲッペイは前足を繰り出して撃ち落としていく。
 もしこの光景を傍から見るものがいたら、猫が光点を追いかけて猫パンチして遊んでいるかのように微笑ましく見えたかも知れないが、生憎当のゲッペイはそれほど上機嫌に勤しんでいるわけではなかった。
 ――俺はミスしていない。
 ミスなんかなかったはずだ。
 けれど、もしその認識が間違っていたとしたら? 何か重大な見落としがあったりはしやしないか!?
 畜生、考えれば考えるほど嫌なモヤモヤが沸き上がってきやがる……!?
 冗談じゃねぇ! ビスケットの奴に負い目を作るなんざゴメンだぜ!!
 苛立ちを振り払うように、ゲッペイはポインターを狩り続けていった。

 

「ここも異常なし、と。今のところ世の中平和そのものだよねっ」
「…………」
 努めて明るくエクレアが話しかけるも、ビスケットはずっと硬く口を閉ざしたまま黙々と足を進めていた。
 若葉茂る並木の間に整然と敷き詰められた煉瓦道の上を、2匹のイーブイは辺りを見回しながら歩き続けて行く。
 ブイズ戦隊イーレンジャーは司令による私設組織である。公的組織でもない団体に属する人間が物々しく周囲を伺いながら町中を彷徨いたりなどすればジュンサーさんから職務質問を受けかねないところなのだろうが、幸いにして彼らは人間ではない。誰の目にもただの小さなポケモン2匹による散歩としか映りようがないであろう。
「……なぁ、エクレア」
「何?」 
 振り返らぬまま、ビスケットは重苦しい声で問いかける。
「やっぱりイーレンジャーストームは、俺のミスで外れたんだと思うか……?」
「そ、そんなことないよ! ゲッペイだって本気であんなことを言ったわけじゃ……」
「夢を、見るんだ」
 エクレアの励ましも届かぬほど深く落ち沈んで、ビスケットは抱え続けていた不安を吐露した。
「あれ以来、ずっと毎日だ! 司令やミルフィユさんが次々と新しい戦法や武器を開発してくれて、あの銀騎士フリージオに向かって俺が撃つんだけど……当たらない。どう狙っても、何回撃っても、どんな攻撃も一発も当たらない!! そうこうしている内にフリージオが反撃してきて、みんな次々とやられてしまう。ゲッペイも、ムースも、サンデーも、君も……」
 震える前足で頭を抱えて呻くビスケットの頬に一筋の煌めきが伝う。
「もし本当に俺のせいだったら、そのことに気付かないままだったら!? いくら新兵器を作ってもあの夢の通りになるんじゃないのか……そう思うと俺は……っ」
 迷い子のように身を縮こまらせて泣きじゃくるビスケット。いつもの血気盛んで自信家な彼は面影すら見えなくなっていた。必殺技を破られたことは、彼にとってそれほどまでに衝撃的だったのだ。5匹のリーダーとは言え彼とてみんなと年齢は変わらない。抱え込んできた負担も少ないものではなかっただろう。それが今回の件で一気に噴出しているようだった。
 そんな彼をエクレアはそっと寄り添って抱き締め、聖母のように穏やかな声で慰めた。
「大丈夫だよ。あたしにはビスケットの失敗だなんて思えない。きっと何か他に原因があるんだよ。それだって司令やミルフィユさんが解決してくれるよ。だから次は絶対に当てられるよ。どうしても不安なら、基地に戻って失敗しない自信が付くまで特訓すればいいじゃない。ね?」
 互いの吐息が触れあうほどに顔を近付けて、エクレアは甘く囁きかける。
「あたしも、付き合うから」
 その『付き合う』という言葉に若い雄として敏感に反応し、思わず顔を赤らめてしまうビスケット。一体どう答えたらいいのかという困惑で頭の中が埋め尽くされる。
 図らずも、お陰であれほど重苦しかった悩みが何処かへ吹き飛んでしまった。
 気付いて苦笑し頭を掻いて、何か適当な返事をしてから急いで基地に引き上げようか、とビスケットが身を起こした時。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」
 けたたましい声を上げて木陰から転がり出てきたものがあった。
 茶褐色の脂ぎった光沢を持つ毛皮に全身を包んだビッパと、そのビッパの大きな前歯に水色の羽毛をズタズタに食い裂かれ血塗れになってもがいているコアルヒー。2匹ともまだごく幼い年頃のポケモンだった。
 野生ではない。どちらも紛れもなくトレーナー付きのポケモンだ。それぐらい見れば分かる。しかし辺りにトレーナーらしき姿は見当たらない。そしてポケモンバトルをしているにしてはビッパの攻撃は苛烈すぎる。コアルヒーは眼を覆いたくなるほどの酷い有様で、完全に反抗能力を喪失しているのは明らかだった。
「やめろ! 何をやってるんだ!?」
 ビスケットが一喝しただけで、ビッパはコアルヒーを放り出して逃げ出した。
「待て! こらっ!」
 声を荒げて呼び止めようとするが、茶色い毛玉はあっという間に木立の間に転がり込んで見えなくなってしまった。
「坊や、大丈夫? 酷い怪我だよ。すぐにポケモンセンターに行かなきゃ……」
「行かない、行かなくていいよ! 俺が何もかも悪いんだから!!」
 コアルヒーは錯乱したように喚き散らし、エクレアの差し伸べた前足から逃げるように引き裂かれた羽根をバタつかせる。
「エクレア、まずはこの仔を落ち着かせよう。ほら、ミックスオレだぞ。飲めるか?」
 半ば無理矢理コアルヒーの平たい嘴を押さえ、缶を宛がってゆっくりと傾ける。すると出血が止まり息も治まって、ようやくコアルヒーは暴れるのをやめた。
「あ……ありがとう……」
「なぁ、何があったのか訊いてもいいか? あのビッパはどうして君にこんなことをしたんだ?」
 ビスケットの問いに、コアルヒーは黄色い嘴をカタカタと震わせて話し始めた。
「アイツは俺と同じトレーナーさんの所で修行している弟弟子で、これまでは俺の言うことなら何でも聞くいい奴だったんだ……だけど、この前一緒に出たダブルバトルで、相手を押さえるはずだった俺が技を外したせいで負けちゃってさ。それでアイツ切れちゃって」
「そんな……たったそれだけのことでこんな酷い乱暴をしたって言うの!?」
 驚いたエクレアが非難の声を上げるも、コアルヒーは頭を振って否定した。
「『それだけのこと』なんかじゃないよ!!」
「!?」
 それだけじゃない、のではなく。
 それだけのことじゃない、のだとコアルヒーは言ったのである。
「これが当然なんだ! アイツは何も間違っちゃいない! 肝心な時に技を外して仲間に迷惑をかけた俺にはもう兄貴分の資格なんかない! こんなドジで間抜けな役立たずはぶちのめされても文句は言えない、殺されたとしても仕方がない、存在する価値もないゴミ屑以下の破棄されるべき最低野郎なんだよぉっ!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてよ!? 何を言い出すの!? そんなわけないじゃない!? ねぇ、ビスケットも何か言ってあげてよ!」
 支離滅裂なことを喚きだしたコアルヒーに困り果てたエクレアは、戸惑い顔でビスケットに助けを求めた。だが。
「肝心なときに……技を外して……俺にはもうリーダーの資格なんか……」
「ビ、ビスケット!?」
 彼女がそこに見たのは、色を失った顔で茫然とうわごとのようにコアルヒーの言葉を復唱するビスケットの姿だった。
「ドジで間抜けな役立たず……ゴミ屑以下の破棄されるべき……」
「やめて! 違う! そんなの間違ってる! どうしちゃったのよビスケット、目を覚まして!?」
 頬を叩き、揺さぶってもビスケットは元に戻らない。
 コアルヒーくんの言葉を自分の不安に置き換えて、やっと振り払ったはずの不安がぶり返してしまったのかしら……
 と途方に暮れたエクレアだったが、再度コアルヒーの方を振り返って、その異様な気配に気が付いた。
「ヤクタタズ……リーダーノシカクナシ……サイテイヤロウ……コロサレチャエ……コロサレチャエ……コロサレチャエ……コロサレチャエ……ケケケケケケケケケケケケ…………」
「……あなた、誰っ!?」
 さすがにいぶかしんだエクレアは、全身の細胞から溢れ出す力、〝目覚めるパワー〟をコアルヒーに向かって解き放つ。
 所詮イーブイの放つ目覚めるパワー、さしたる威力があるわけじゃない。が、敵の正体を曝け出させるにはそれで十分だった。
「ピキィィィィィィッ!!」
 一撃でコアルヒーの姿は歪み、崩れ、バラバラに四散して数匹のアンノーン兵へと変化する。
「やっぱり……ムシンカ!!」
「はっ!? お、俺は一体何を……」
 アンノーン兵の集合体勢が崩れたために彼らが発していた催眠音波が止み、ビスケットは我に返った。
「ビスケット!? 良かった……」
 安堵の声を漏らしかけたエクレアは、
「……!? う、後ろっ!?」
 しかし次の瞬間、その声を警告へと変えた。
「!!」
 とっさに拳を背後に繰り出すビスケット。その一撃はまっすぐに突撃してきたビッパに命中した。
「キュキィィィィィィッ!!」
 奇襲に失敗して砕け散ったビッパもまたアンノーン兵の群となり、コアルヒーだったアンノーン兵とともに2匹のイーブイを取り囲む。
「すまないエクレア。助かった!」
「話は後! まずはこいつらを片づけよっ!!」
「あぁ……進化だ!!」
 イーブイたちはともに、左前脚に巻いたE-ブレスを胸元に光るE-ブレムの前にかざして叫んだ。
「E-ヴォルーション!!」
 キーワードと声紋認証を受け、E-ブレスから特殊な周波の超音波が胸のE-ブレムへと放たれる。それによりE-ブレム内部に納められたレアメタル〝E-星卵(イースターエッグ)〟が共振して化学反応を起こし、強烈な放射線を装着者の全身へと浴びせかける。イーブイ種の細胞に秘められた不安定な遺伝子は放射線に反応して突然変異を起こし、それぞれの個体にもっとも最適な姿へと進化していく。
 これがジェラート博士によって発見され、その妹ミルフィユによって完成されたイーブイの新たなる進化法E-ヴォルーション。E-星卵の共振が続いている十数分間ほどしか進化形態を維持できず、再度の進化までにはしばらくの回復期間を必要とする弱点こそあるが、個体の能力を極限に引き出す形へと進化するために通常の進化よりも強力な性能を発揮できるのだ。
 かくして真紅に輝くE-ブレムはビスケットの肉体を炎の化進〝ブースターレッド〟へと進化させ。
 黄金に輝くE-ブレムはエクレアの肉体を雷の化進〝サンダースイエロー〟へと進化させた。
 尚、〝化身〟ではなく〝化進〟である。イーブイたちの遺伝子に刻み込まれた、それは未来を象徴する姿なのだ。
「キイィィィィィィィィッ!!」
 一斉に襲いかかるアンノーン兵を、2匹のイーレンジャーは果敢に迎え撃った。
「よくも俺の心を掻き乱してくれたな! これでも喰らえ!!」
 ブースターレッドの顎に灼熱の灯火が宿り、炎の牙となってアンノーン兵に突き立てられる。
「もう、許さないんだから!!」
 サンダースイエローが逆立てた背中の針から電光が迸り、10万ボルトの威力を持ってアンノーン兵を撃ち落とす。
「ピキィッ!」
 イーレンジャーたちの攻勢に一気に数を減らしたアンノーン兵たちは、密集体勢を取って反撃の機会を伺おうとした。
「させるか!」
 ブースターレッドの炎の鬣が、急速に熱量を増して揺らめく光とともに膨れ上がる。
「オーバー……」
「ケケケ、アテラレルモンカ。ヤクタタズ!」
「!?」
 突然アンノーン兵たちがぶつけてきた野次を受け、技を放とうとしていたブースターレッドの動きが止まる。
「役……立たず…………」
「ドジ! マヌケ! リーダーノシカクナシ! ゴミクズイカ! コロサレチャエ、コロサレチャエ!! ケケケ!!」
 怯んだ所にアンノーン兵たちの目覚めるパワーが浴びせられる。水、岩、地面。ブースターレッドの弱点となるパワーを持つアンノーン兵たちが前面に躍り出てその猛威を振るう。
「くっ……くっそぉぉぉぉっ!!」
 高い特殊防御力をフル回転させて持ち堪えながら、ブースターレッドは攻撃を放つ機会を伺う。
 外せない。外すわけにはいかない。
 外したら、俺は本当に役立たずの烙印を押されてしまう……!!
「ヤクタタズ! ワザモアテラレナイヤクタタズ! ヤクタタズ!!」
 繰り返される野次が、否応なしに悪夢を再燃させてくる。技が外れるビジョンばかりが脳裏を埋め尽くす。
 撃てない。
 撃てば、きっとまた、外
「外さないよ!!」
 サンダースイエローの声が、野次に挫けそうになる思考を遮った。
「ブースターレッドは外さない! もし外したって最後には絶対に決めてくれる! それが私たちのブースターレッドだもん!! だから、役立たずなんかじゃ絶対ないよ! あたしは信じてる。みんなだって信じてるもん!!」
「サンダースイエロー……」
 熱い声援をくべられて、ブースターレッドの闘志の炎が燃え盛る。
「吹っ切れたぜ。あぁ、外〝せ〟ないじゃないよな。外〝さ〟ない! 絶対に当ててみせる!!」
「キィッ!?」
 空気が変わったことを察して、アンノーン兵たちは散開しようと陣を崩した。が、
「逃がすかぁ! オーバー……ヒーーーート!!」
 一瞬早く、灼熱の鬣から吹き放たれた炎弾がアンノーン兵たちに炸裂する。
「ピィキィィィィィィーーーー!!」
 隊列のど真ん中に的確に命中したオーバーヒートは、アンノーン兵たちを悉く焼き尽くして消し炭へと変えた。
「やったね、ブースターレッド!!」
「サンダースイエロー、君のお陰だ。ありがとう。俺はもう迷わないよ」
 振り返ったブースターレッドの顔には、朗らかな微笑みが蘇っていた。
 と、倒れていたアンノーン兵たちの屍が突如蠢く。
「!?」
 息を飲む2匹の目の前で、アンノーン兵たちの身体はうねうねと動いて続々と文字列を形成する。
 それは、銀騎士フリージオからのメッセージを伝える文字列だった。
 ……ヨキョウハタノシンデイタダケタカ? ココカラガホンバンダ。アンノーンヘイタチガバケタコアルヒートビッパハ、ワレワレガトラエテイルポケモンヲモデルニシタモノダ。カレラヲタスケタクバタダチニE-ブレムトE-ブレスヲモタズニ5ヒキソロッテ12バンドウロニアルゾウセイチニクルガイイ。イウトオリニシナカッタリ、キョウノヒグレマデニコナカッタリシタバアイハムカンケイナコドモタチガギセイトナルデアロウ。ナオ、コノメッセージハシュウリョウトドウジニショウメツス
「伏せろぉっ!!」
 アンノーン兵が示す文章を読み終える直前、ブースターレッドは咄嗟にサンダースイエローを押し倒して庇った。
 次の刹那、凄まじい爆音を轟かせてアンノーン兵たちの死骸が爆発する。
 粉塵の中で身を起こし、ブースターレッドは心の底から罵り声を上げた。
「ムシンカめ!!」

     ★

 鋭く刻まれた旋律とともに、5匹のイーレンジャーたちが鮮やかに地を蹴って駆け抜けていく。
 Aパート終了のアイキャッチだった。



 ブースターレッドの背後に、カラフルに彩られた箱が現れる。
『イーレンジャーから君たちへの贈り物だ!』
 叫びと同時に箱の蓋が開き、中から肉色をした巨大な5本の棒が飛び出した。その棒を包むイーレンジャーたちのイラストが入った透明なフィルムが縦に裂かれ、中の肉色の物体が輪切りになって降り注ぐ。
『未来につながる元気の源がたっくさん詰まっているぞ!』
 箱から更にブースターレッドが描かれた煌めくカードが舞い落ち、他のイーレンジャーたちやムシンカ大軍団の面々が描かれたカードの上に並んだ。
『キャラクターカードもゲットだぜ!!』
 箱と肉色の棒、そしてカードたちが並べられ、その向こうからブースターレッドが爽やかな笑顔で呼びかけた。
『さぁこれを食べて君たちも進化だ! プクリンハム*9・イーレンジャーソーセージ!!』



 ハブネークを模した怪しい建物がクローズアップされ、入り口の牙が怪しくギラつく。
『運命を掴み取れ、バトルチューブ!!』
 続いて緑の木々の間から、血のように赤く染まった古めかしい宮殿が現れる。
『熱い心で見守れ、バトルパレス!!』
 バトルファクトリー、バトルアリーナ、バトルドーム……次々と情景が切り替わっていく。
『様々な戦いが、トレーナーとポケモンの力を試す! ポケモンバトルの最前線、バトルフロンティア!!』
 バトルピラミッドを背景に、探検家風の厳つい男が拳を振り上げる。
『君たちの挑戦を待っているぞ!!』
 バトルタワーが背後にそびえる中央広場で、イーレンジャーたちが並んでポーズを決めた。
『日曜日には、イーレンジャーたちもやってくる!』
 ブースターレッドがあどけなく笑う子供の手と前足をつなぐ。
『バトルフロンティアでボク*10と握手!!』



     ★

 再び鋭く刻まれた旋律とともに、白銀の大巨神が雄々しくそびえ立つ。
 Bパート開始のアイキャッチだった。

 

 進化状態を解除したビスケットとエクレアは、即座にポケモンセンターの転送装置からバトルピラミッダー基地へと帰還した。
 司令が新兵器開発が佳境に入ったためにラボに入り浸って不在の状況の中、6匹のイーブイたちは会議室に集り、捕らわれたポケモンたちを救出する作戦を練っていた。
「無茶よ! 相手の言いなりになろうだなんて! どんな罠が仕掛けられているか分からないのよ!?」
 悲痛な声を上げて、ミルフィユが机に爪を立てる。その机の上には、外された5匹のE-ブレムとE-ブレスが並べられていた。
「そりゃあ罠は仕掛けられているだろうさ。だからって知らん顔をしておくわけにもいかねぇだろ!」
 装備を取り払い裸になったゲッペイの言葉に、他の4匹も同様の姿で頷く。みんな、ビスケットとエクレアが伝えた銀騎士フリージオからのメッセージを苦々しく思い返していた。
 ――アンノーン兵たちが化けたコアルヒーとビッパは、我々が捕らえているポケモンをモデルにしたものだ。彼らを助けたくば直ちにE-ブレムとE-ブレスを持たずに5匹揃って12番道路にある造成地*11に来るがいい。言う通りにしなかったり、今日の日暮れまでに来なかったりした場合は無関係な仔供たちが犠牲となるであろう……
「ジュンサー隊に連絡した所、コアルヒーとビッパの行方不明届けが出されていらしたそうですわ。おそらくはその方たちかと……」
 サンデーが心配げに声を掠れさせ、ビスゲットは怒りを声に込めて爆発させる。
「銀騎士フリージオめ! 前回の保育園バスといい今回といい、まったく関係のない幼気な命を平気で巻き込みやがるとはなんて冷酷で卑劣な奴なんだ!!」
「だけど、装備を全部置いていくなんていくら何でも危険すぎるわ! もし万が一のことが起こったら……」
 兄のことを思い起こしたのだろう。青ざめて震え上がるミルフィユの肩に、ムースがポン、と前足を置いた。
「ムースの言う通りだよ!!」
「いや喋ってねぇだろ!?」
 ゲッペイにツッコまれつつも構わずエクレアは続けた。
「大丈夫だよ! 捕まった仔たちも助けるしあたしたちもやられたりしない。絶対生き残って戻ってくるから!!」
 ミルフィユを励ますつもりで言ったのであろうエクレアのその言葉は、しかし却ってミルフィユの不安を煽らせる。
「兄さんだって、絶対生き残るっていっていたじゃない。それなのに……」
 小さく呻き、あわや嗚咽を漏らしかける。だがミルフィユはそれを決死で飲み込み、歯を食いしばって言葉を綴った。
「私の新兵器がもうすぐ動かせるようになるわ。そうしたら装備を持って直ぐに追いかける!」
「あぁ、頼む。それまで俺たちは粘って守りに徹する。それで行くぞ!!」
 頼もしく宣言したビスケットに続き、イーレンジャーたちが出撃していく。
 後に残されたミルフィユは、フリージオのメッセージの一文を思い出し、忌々しげに呟いた。 
「『5匹揃って』か……進化できないからって、頭数除外してくれちゃって……」
 E-ヴォルーションをするためにはその個体の細胞に秘められた進化因子を解き明かさなければいけない。しかし、ミルフィユの技術ではは自らのそれを解くことができなかったのだ。
「私を侮ったこと、絶対後悔させてやるんだから!!」
 気合いを付けて端末に向かい、ミルフィユはキーに前足を疾らせた。

 

「ここ……でしょうか?」
「あぁ。あからさまにな」
 イッシュ地方12番道路。
 広大に広がるなだらかな丘を刻むように開発の手が加えられたその一角に、ぽっかりと謎の穴が口を開いていた。
 ムシンカ大軍団がイーレンジャーたちをその中へ向かわせようとしているのは明らかだった。どのぐらい明らかなのかというと、〝イーレンジャーご一行様はこちら→〟と明記された立て札が親切にもその入り口の脇に設置されているほどに明らかだったのだ。
「ふざけやがって!!」
 怒りにまかせて立て札を蹴り飛ばしたゲッペイを、ビスケットが窘める。
「ゲッペイ、くだらない挑発に乗るな。俺たちの使命は仔供たちを救い出し、かつミルフィユさんが来るまで5匹全員が生き残ることだ。慎重に行動した方がいい」
「けっ、分かってるよ!」
 隊列を組み、洞窟の奥深くへと一歩一歩進んでいく。
「ずっと付けていたものを外して外を歩くと、こんなにも物寂しく感じるものなんですのね……」
 胸元の飾り毛をまさぐりながら呟くサンデー。ムースも顔を曇らせて、微かに跡の残った左前脚を眺める。2匹の様子を見て、エクレアも感慨深げに溜息を吐いた。
「仕方ないよ。もう半年もE-ブレムとE-ブレスを着けて戦ってたんだもんね……」
 そんなことを言い合っているうちに、洞窟の突き当たりが見えてきた。
 そこにあったのは、一枚の重苦しげな鋼鉄の扉だった。
「仕掛けの気配は感じませんが……お気をつけあそばせ」
 資質により進化するイーレンジャーたちは、例え進化しなくとも一部の能力は並のイーブイより優れている。サンデーがその鋭敏な感覚で扉を探った後、器用さに優れるゲッペイが更に入念に調べの手を入れた。
「こりゃ仕掛けどころか閂も掛かってねぇな……開くぞ、これ」
 軋んだ音を響かせる扉をゆっくりと押し開けると、中は暗く、狭い部屋だった。
 入り口の扉の他は窓の一つもない、灰色の壁に囲まれた殺風景な部屋。その奥隅に鉄格子で組まれた大型のスポーツバッグ程度の檻が置かれていて、中に2匹のポケモンの影が見える。
「コアルヒーとビッパ……さっきの仔たちにそっくりね」
「またアンノーン兵の変装かもしれない。サンデー、調べられるか?」
「任せてくださいませ」
 再びサンデーはその超感覚を研ぎ澄ませて檻の様子を探った。
「アンノーン兵ではありませんわ。お二方とも本物のコアルヒーさんとビッパさんです……お待ちください!!」
 ぎょっとサンデーは眼を見開いた。
「檻の下に爆弾が……時限式!? タイマーがあと5分を割っていますわ!! 檻を動かすと即爆発するようですわよ!!」
「了解! はっ、5分ありゃ楽勝だぜ!!」
 前肢を振るい、ゲッペイが檻へと取りかかる。
「よっしゃ、檻の開閉や重量減と爆弾とは連動してねぇな。こんな鍵余裕で開けられるぜ!」
「助けてぇ、お兄ちゃん!」
「安心しな。脱出までの時間は楽勝でお釣りがくるからよ」
 仔供たちを励ましながら、ゲッペイは檻の錠を弄り回す。その隣でサンデーが爆弾の状態を注意深く見守り、他の3匹は周囲に厳しい警戒の眼を向けていた。
「うまく行きそうだね」
 エクレアは楽天的な笑みを浮かべたが、ムースは厳しい表情を崩さない。ビスケットもムースに賛成だった。
「うまく行き過ぎてる。敵の1匹も出てこず、檻を開けるだけで救出だなんてそれで済むわけがない。何か誘導されているような……!?」
「開いたぜ!」
 振り返ると、ゲッペイが檻の戸を開けてコアルヒーとビッパを抱きかかえている所だった。
「わぁぁん、ありがとう!!」
「よしよし、さぁこんなところはさっさと脱出……」
「やられましたわっ……!!」
 唐突に、狼狽えたサンデーの声が絶望を伝えた。
「みなさん逃げ、いえ、伏せてくださいませ! この爆弾、起爆設定がカウント0じゃありませんでしたの! もう爆発しますわっ!!」
「なっ……」
 サンデーの言葉を理解する間もなく。
 爆音が、灰色の壁を吹き飛ばした。

 

 閃光が地面を貫き、轟音とともに湧き上がった噴煙が天に舞い上がった。
「ふははははっ! イーレンジャーどもの最期だ!!」
 すぐ近くの丘の上で、多数のアンノーン兵を従えた銀騎士フリージオが得意満面と嘲笑う。
「まんまと引っかかったな! 簡単に攻略できそうに見せかけて誘い込んだところを一網打尽にする……さすがミカルゲ司教、見事に作戦通りになりおったわ!!」
 慎重になっている者ほど単純な罠を見落としやすい。心の隙をついた作戦であった。
「最早我らの行く手を遮る者は誰もいない! 世界の未来は何もかも我らムシンカ大軍団の思いのままだ!!」
 とフリージオが勝ち誇ったその時。
「お前らの思い通りになんてさせるものか!!」
「な、何っ!?」
 どこからともなく轟いた声とともに。
 爆炎を貫いて、何かが飛び出してきた。
「な、なんだあれは!?」
 それは、若葉の緑と純白とに色分けされた戦車だった。
 巨大なホイールで軽快に地面を蹴り、2本の角の如く掲げた緋色のドリルを回転させて、その謎のマシンはアンノーン兵たちを蹴散らしながら一気にフリージオに迫る。
「おのれ、何奴だっ!?」
 青白い瞳から放たれた冷凍ビームを躱して軌道を大きく横に逸らした戦車はそこで停止する。
 その脇腹のハッチから、数体のポケモンが大地に降り立った。
 言うまでもない。
「ええぃ、生きておったかイーブイども!!」
「当たり前だ! お前たちの邪悪な罠なんかで俺たちを倒せるものか!!」
 強気に宣言するビスケットの隣で、ゲッペイが肩を竦めた。
「ま、ぎりぎりの所でミルフィユさんがこの新兵器〝ランドシェイミー〟で駆けつけてくれなきゃ危なかったけどな」
 あの瞬間、爆音を立てて灰色の壁を吹き飛ばしたのはランドシェイミーのドリルだった。即座に全員で乗り込み、爆風を装甲で防ぎながら脱出したのだ。
「そういうことよ」
 コクピットで救出した仔供たちの背を撫でながらミルフィユが言った。
「私だって、立派にイーレンジャーの一員なんですからね。よく覚えておきなさい!!」
「銀騎士フリージオ! もうこれ以上、子供たちを盾に取った卑劣な計略なんか行わせはしない! 今度こそ真っ向からの対決で貴様を打ち倒す!!」
 そう宣言したビスケットの、そしてともに並んだイーブイたちの前肢には、それぞれのE-ブレムとE-ブレスが握られていた。
 素早くそれらを飾り毛と左前肢に括り付けると、イーブイたちはその左前肢を胸元に引き寄せ、声を疾らせる。
「E-ヴォルーション!!」
 E-星卵が震える。
 5色の閃光が、戦場を彩る。
 それが消え去ったとき、イーブイたちは勇壮なる5色の戦士へと進化を遂げていた。
 ビスケットだったイーブイは、その膂力溢れる全身を炎の赤に染め、灼熱の鬣をなびかせた姿へと進化し、叫んだ。
「炎の化進、ブースターレッド!!」
 ムースだったイーブイは、その柔軟さに富む肉体を海の青に染め、水魚の鰭を広げた姿へと進化し、この時ばかりは名乗りを上げた。
「水の化進、シャワーズブルー!!」
 エクレアだったイーブイは、その俊敏に躍動する四肢を電光の黄に染め、電光を帯びた鋭い針を背に逆立てた姿へと進化し、声を響かせた。
「雷の化進、サンダースイエロー!!」
 サンデーだったイーブイは、その感受性豊かな容貌を朝焼けの薄紅に染め、二股に分かれた尻尾を妖しく揺らす姿へと進化し、喉笛を奏でた。
「太陽の化進、エーフィピンク!!」
 ゲッペイだったイーブイは、その巧みさを秘めた体躯を夜天の黒に染め、月色の光を宿した輪を全身にまとった姿へと進化し、吼えた。
「月光の化進、ブラッキーブラック!!」
 5匹の戦士は揃い踏みし、高らかに、誇らしげに彼らの名を掲げる。
「未来に連なる進化の軌跡! ブイズ戦隊! イーレンジャー!!」
 背後で巻き起こった5色の爆発が、勇士たちに華を添えた。
「かかれぇっ!!」
 銀騎士フリージオの号令を受けて、アンノーン兵たちが一斉にイーレンジャーとフリージオの間に展開し立ち塞がる。
「行くぞぉぉぉぉっ!!」
 オープニングテーマの旋律に乗るようにして、イーレンジャーたちはアンノーン兵の群へと突撃していった。
「うおぉぉっ!!」
 ブースターレッドの炎の牙が唸りを上げてアンノーン兵に食らいつく。一瞬にして火達磨と化したそれは、他のアンノーン兵たちの所へと吹き飛ばされ巻き込んで爆発して果てた。
「!!」
 アンノーン兵の突撃を身を溶かして柔軟にいなすシャワーズブルー。物も言わずに放出したハイドロポンプが、数匹のアンノーン兵をまとめて貫き倒す。
「とぉっ!!」
 戦場を疾走し、反転し、跳躍して、サンダースイエローは縦横無尽にアンノーン兵たちを攪乱する。取り囲んで動きを封じようとしたアンノーン兵は、10万ボルトの閃光に包まれて崩れ落ちた。
「やあっ!!」
「喰らえっ!!」
 エーフィピンクがその額を飾る赤い宝玉(カーバンクル・アイ)からシャドーボールを、傍らに立つブラッキーブラックがその額を飾る月色の環から悪の波導をそれぞれ立て続けに連射する。太陽と月、2つの光より生まれた闇の弾丸はアンノーン兵たちを次から次へと地に墜していく。
 やがてイーレンジャーたちは全てのアンノーン兵を討ち果たし、銀騎士フリージオを取り囲んだ。
「小癪な……! ふん、だがそれからどうするつもりだ? イーレンジャーストームが私に通じないことはもう証明したはずだぞ?」
 追い詰められてなお冷然と嘲笑う銀騎士フリージオ。その不敵な態度に、イーレンジャーたちは猛然といきり立った。
「もう逃しはしない。本当に通じないかどうか確かめてやる! いくぞみんな、イーレンジャーストームだ!!」
 ブースターレッドの合図とともに、5匹は陣形を展開してそれぞれのポジションを取る。
「よろしくて? 行きますわよ!*12
 瞑想の念を込めたエーフィピンクが、その念をバトンタッチで繰り出した。
「シャワーズ!」
 頷いて受け取ったシャワーズブルーがアクアリングに身を包み、更にバトンを飛ばす。
「サンダース!」
「OK!」
 サンダースイエローが華麗なステップによる高速移動を加え、バトンをつなぐ。
「ブラッキー!」
「よし来たぁ!」
 続くブラッキーブラックは、黒い眼差しで目標を、銀騎士フリージオを睨み据えた。
「捕らえたぜ! 外すんじゃねぇぞブースタアァァァァっ!!」
「おぉうっ!!」
 ブラッキーブラックが中空に跳ね上げたバトンに向かい、ブースターレッドが大地を蹴ってひらりと舞い上がった。
 5匹の力をバトンでつないで相手に叩き付ける。これがイーレンジャーの必殺技、イーレンジャーストームなのだ!!
「オーバーヒート・フィニィィィィッシュ!!」
 みんなの力を受けて燦然と虹色の輝きを帯びたブースターレッドが、その輝きを爆熱の光弾へと変えて撃ち放つ。流星の如く宙を切り裂いて飛んだ光弾は、銀騎士フリージオへと炸裂し大爆発を引き起こした。
「やったか……!?」
 誰ともなく声が漏れる。
 今度こそ、完璧に決まった。
 そう思えた。だが、しかし!
「ふはははははは!!」
「!?」
 まるで前回の場面を再現するかのように、フリージオの銀に煌めく六角形をした姿が爆炎の向こうに浮かび上がる。
「何度やっても無駄だ!言ったであろう、イーレンジャーストームは死に絶えたと! もう逃しはせぬとはこちらの台詞だ。予告通り、ここをお前たちの墓場にしてくれるわ!!」
 凍てついた瞳が巻き起こす猛吹雪が、衝撃に立ち竦むイーレンジャーたちに襲いかかった。
「うあぁぁぁぁっ!?」
「そんな……どうして通じませんの……!?」
「知りたいか?」
 豪雪にまみれて悶え苦しむイーレンジャーたちに、銀騎士フリージオは勝ち誇った哄笑を向けた。
「冥土の土産に教えてやろう。イーレンジャーストームを構成する5つの技……バトンタッチで積み重ねられるそれらの技の内一つに隠されていた隙を私は見つけだしたのだよ! それは……」
 白い嵐の中、持ち上げられた鎖が青ざめた一匹を指し示す。
「貴様の技だ、ブラッキーブラック!!」
 血色の眼が、驚愕に見開かれた。
「俺、の……!?」
「そうだ! 貴様の黒い眼差しはバトンタッチでブースターレッドに引き継がれる際、ほんの一瞬だけ拘束を失う! その隙に乗じて脱出させて貰ったのだよ! ブースターレッドが攻撃したのは、後に残した私の幻影だったというわけだ!!」
 雪混じりの土を、震える漆黒の爪が悔しげに握り締める。
「俺の……俺のせいだったってのか……ちくしょう、ちくしょう……」
 涙さえ凍り付きそうな寒風の中、今にも絶望に崩れ落ちそうになるブラッキーブラックの肩を、シャワーズブルーの暖かな前足が支える。
「お前のせいじゃ、ない」
 そう言ったのは、シャワーズブルーのすぐ向こうにいたブースターレッドだった。
「気にするな。どんな技だっていつかは破られる。これも時の流れという奴さ*13
「……」
 ブラッキーブラックの唇が、僅かに動いた。
 ささやかでぎこちない、それは謝罪の言葉だった。 
「だ、大丈夫だよ! イーレンジャーストームが破られたって、あたしたちにはミルフィユさんが作ってくれたこの新しい切り札ランドシェイミーがあるんだから!」
 サンダースイエローが顔に積もった雪を振るい落としながら、いつものように元気を振り絞ってみんなを勇気づけようとした。が。
「ごめん、みんな。ランドシェイミーはまだ未完成でね。アンノーン兵ならまだしも、あいつみたいな幹部クラスの怪ポケモンを倒せるような武器なんて積んでいないのよ」
 コクピットの中でコアルヒーたちを寒さから庇いながら、ミルフィユが更なる絶望を告げた。
「『動かせるようになったら追いかける』って、言葉通りにするのが精一杯だったの。私に兄さんほどの頭脳があったなら、とっくに完成できていたでしょうけど……司令が作っているもう一つの新兵器も、もう間に合いそうにないわね……」
「そんなぁ……」
 さしものサンダースイエローも、もうポジティブな言葉をつなげることができない。余りにも重い冷気が、イーレンジャーたちを圧し潰しに掛かってくる。
「ふははははっ!! どうやらその新兵器も新たな切り札には成り得なかったようだな! さぁ、みんな仲良く氷漬けとなるがいい!」

「いいや、お前を斃す切り札はここにあるぜ!!」

 喝、一閃。
 戦場を覆っていた吹雪が、一瞬にして消し飛んだ。
「な、何っ!?」
 フリージオが、イーレンジャーたちが、一斉にその声を降り仰ぐ。
 丘陵地を見下ろす、舞台のようにスッパリと切り立った崖の上を。
 そこにいるのは、アイドリング音を甲高く嘶かせた真紅のオフロード・カブリオレ〝ダッシュギャロップ〟の運転席から降り立つ一人の男。
 真っ赤に燃える帽子。爽やかな紺色の半袖ジャケット。
「司令!!」
 そう。颯爽と現れてすっくと仁王立ちしたその男は、イーレンジャーの司令その人であった。
「ぬぅ……何だというのだ!? あの男から感じるこの底知れない威圧感は……!?」
 青白い瞳を瞬かせ、銀騎士フリージオは司令の方に向き直った。 
「私を斃す切り札と言ったな。そんなものがどこにあるというのだ!? 見たところ何も持っていないようだが……!?」
「ちゃあんと持ってきてるさ! それはな……」
 帽子の下に不敵な笑顔を浮かべて、司令は崖の上から戦場へと跳躍する。
「この、俺自身だぁぁぁぁっ!!」
 直立した姿勢で頭から叫びとともに飛び込んでくる司令。
 その紺色の胸が、唐突に左右に開く。
 中から現れたのは、鈍い鉄色の光沢を宿した巨大な筒状の砲身だった。
 進行方向に砲口を向けたまま、司令の身体全体が股間を軸に180°反転。前に伸ばした両脚の間に砲身が挟まれる。
 開いた胸の空間に頭部が収まり、背中に折り畳まれていたグリップが展開して、赤い帽子の男は一本のカノン砲へとその姿を変えた。
「変形! アッシュカノン!!*14
 名乗りを上げたそれはイーレンジャーたちの元へ悠然と飛来し、彼らによってがっしりと抱えられる。
「ば……ば……馬鹿な!? トレーナーが大砲に変形しただと!? 何の脈絡だこれは!? 一体何がどうなっている!?」
 想像を絶する状況に、激しく仰天し混乱するフリージオ。
 その狼狽えきった表情へと、砲口を貫いて司令の声が向けられた。
「お前には解らないだろう。未来を否定するお前たちなんかには決してな! これが、これこそが俺たちの進化! そして……」
「そう、そして俺たちと司令との……」
 司令の台詞を引き継いだイーレンジャーたちの身体から、それぞれの属性が秘めるエネルギーがアッシュカノンへと注ぎ込まれる。
「魂の、絆なんだぁぁぁぁぁぁっ!!」
 エーフィピンクが司令の右肩に開かれた操作盤(コンソール)を叩き、安全装置を解除する。
態勢完了(レディ)!」
「くっ!」
 六角形の身を翻し、銀騎士フリージオは回避行動を取った。
 否、取ろうとした。だが。
目標補足(ターゲット・ロック)!」
 司令の左腕から突き出た照準(サイト)スコープ越しに、ブラッキーブラックの黒い眼差しがフリージオを捕らえて火線上に縛り付ける。
「調子に乗ってペラペラと喋り過ぎだぜ! バトンタッチを介さないこの状態なら、俺の黒い眼差しに隙は生まれない! 今度という今度こそ、絶対に逃がさねぇからな!!」
 その視線で標的を射抜いたまま、ブラッキーブラックはブースターレッドに向けて口の端だけで笑って見せた。
 ブースターレッドはその笑みに前足を軽く上げて答え――
発射(ファイヤー)!!*15
 そのまま、上げた前足をトリガーへと叩き込んだ。
「ゴオオオオオオオオオオゥッ!!」
 瞬間、天地を揺るがす鳴動を上げて、アッシュカノンに結集したエネルギーが火の鳥の如く噴出する。
 炎の翼を広げて虚空を焼き焦がしながら、行く手を阻むもの全てを灰燼(アッシュ)にし尽くす勢いで、それは銀騎士フリージオへと襲いかかった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
 有り得ないほどの衝撃と高熱とを受けて、六角形の身体が軋み音を立てる。
 その身を守っていた絶対凍結の呪縛に、亀裂が走った。

 ☆

「いやぁぁぁぁっ!! 私の、私のフリージオがぁっ!?」
 空無道中枢部の宮殿に、闇を引き裂くような歌姫ラプラスの悲鳴が轟き渡る。
「ぬぅ……このままではマズいことになるのぉ」
 ラプラスと共に戦いの様子をモニターで逐一監視していたミカルゲ司教が、アッシュカノンの砲火に銀騎士フリージオが飲み込まれるのを見てオーラの色を青ざめさせた。
「歌姫よ。悲鳴を上げておる場合ではない。大至急終末暴走の呪歌を奏でよ。急げ、銀騎士を失ってもよいのか!!」
「い……言われるまでもないわ!! 許せ、フリージオぉぉぉぉっ!!」
 我に返った歌姫ラプラスの蒼い喉笛から、禍々しい旋律が鳴り響いた。

 ☆

 爆炎に身を焼かれ、今にも燃え尽きようとしていた銀騎士フリージオの肉体に、空無道から歌姫ラプラスの呪歌が降り注がれる。
 どくり、とフリージオの全身の細胞がざわめいた。
「ふ、はは、よもや我までもがこの屈辱にまみれようとは……だがかくなる上はやむを得まい。せめてイーレンジャーどもを道連れにしてくれるわぁぁぁぁっ!!」
 絶叫と共に、その肉体が膨れ上がる。
「!?」
「終末暴走か!?」
 イーレンジャーたちが叫んだその現象は、ムシンカ大軍団の怪ポケモンたちが追い詰められた時に行う戦法だった。
 歌姫ラプラスの呪歌に込められた魔力を受けることで細胞が活性化。それまで受けた負傷を全て回復すると共にその身を巨大化させて爆発的な戦闘能力を発揮する。その代償に理性を失い、誰にも制御できない怪物と化してしまう、まさしく最後の手段なのである。
 天空に浮かび上がった巨大なフリージオは、しかしイーレンジャーたちには目もくれずに進路を東へと向けた。
「!? いけない、あの先にはカゴメタウンが!!」
 それは、あるいは意識を失う寸前までイーレンジャーとの対決を望んだ銀騎士が自らに課した最後の命令だったのかもしれない。無闇に追いかけ回すより、街を狙えば確実にイーレンジャーは迎撃せざるを得なくなるのだから。
「銀騎士フリージオめ! あんな姿になってもまだ無関係な市民を巻き込もうっていうのか!!」
 怒りに唸るブースターレッドが、傍らのランドシェイミーに向かって叫ぶ。
「ミルフィユ、レジマシン発進だ!!」
「了解。レジマシン発進!!」
 ランドシェイミーのコクピットから、バトルピラミッダー基地へと信号が送られる。
 重厚なテーマソングが歌われ始めると、防衛システムの砂嵐が忽然と止み、荘厳な光を放つ金字塔が蒼天の下にその姿を現した。
 その4面ある壁の内3面に秘められた扉がおもむろに開放される。
 右の壁から褐色のゴツゴツとした巨体を現したのは、岩石の巨神レジロックロボ。
 左の壁から銀色の鋭角な巨体を現したのは、氷山の巨神レジアイスロボ。
 そして中央の壁から漆黒の丸みを帯びた巨体を現したのは、鋼鉄の巨神レジスチルロボだった。
 緊急発進(スクランブル)ロケットに火が点る。3体の巨神が、天空へ高々と打ち上げられる。
 さながらレックウザの如く噴射炎の尾を引いて天を駆けた巨神たちは、まさしく一瞬で戦場の上空まで飛来して、見上げるイーレンジャーたちの目の前に光の帯を照射した。
「搭乗!!」
 号令一番、そのガイドビームへとイーレンジャーたちは飛び込んでいく。
 エーフィピンクとブラッキーブラックはレジロックロボへ、シャワーズブルーとサンダースイエローはレジアイスロボへ。そしてブースターレッドはレジスチルロボへと続く光条に乗り、空へと運ばれてそれぞれの内部へと乗り込んでいった。
 アッシュカノンから人の姿へと戻った司令が、懐から紺色のポケモン図鑑のようなデバイスを取り出す。
 銀色の円の中に六光星*16型のシェリフスターマークが描かれたその機械*17の蓋に付けられたスイッチを押して、司令は真紅の全身スーツをまとい白銀色のヘルメットとプロテクターで武装したヒーローの姿*18へと変身した。
 その姿で司令はデバイスの蓋をクラムシェル状に開き、内部を天空の巨神たちに向けて、雄々しき気合いを込めた声を轟かせる。
「レジギガスロボ、無敵合体!!*19
 編隊を組んだ3体のレジマシンを電光が結び合う。
 レジスチルロボの胴体が左右に展開し、四肢がぐるりと回転して格納される。
 レジアイスロボの身体が中央線から真っ二つに分離し、翼状に延びた背中のパーツと腕とが向かい合って巨大な鉤爪を構成する。
 レジロックロボが万歳からひっくり返って逆立ちした姿勢を取る。
 そしてレジスチルロボの左右にレジアイスロボが両腕となって接続され上半身を形作り、その下部にレジロックロボが結合して下半身を構成する。
 幾千の光を集めてそのボディを輝かせ、無限大のパワーを漲らせる*20白銀の大巨神がそこに現れた。
「完成! レジギガスロボ!!」
 中央コクピットに集結したイーレンジャーたちが、朗々とした声を響かせた。

 ☆ 

「急げ、急がんかたわけが!!」
 遙か上空、空無道の操舵室の中、オーラを尖らせたミカルゲ司教が赤い翼で器用に舵を握るデリバード提督を猛然と急かす。
 正面のスクリーンでは、カゴメタウンに迫ろうとしていた巨大フリージオの前にレジギガスロボが地響きを立てて降り立ち行く手を遮る場面が映し出されていた。
「あぁ、レジギガスロボが出てきてしもうたわ! 再度あれが破壊される前に、何としてでも回収するのじゃ!!」
「なぁ、司教様よ」
 フリージオが青白い瞳から冷凍ビームを撃ち出してレジギガスロボの脚を凍り付かせる映像を眺めながら、デリバード提督は怪訝な顔で訪ねる。
「何だって今回に限って終末暴走しちまったポケモンを回収しなきゃいけないんで? いつものように放り出してイーレンジャーどもに始末をまかせりゃいいんじゃねぇのか?」
「話は後じゃ! とにかくあやつが敵の手に落ちれば大変なことになる! 早く空無道をあの地に向かわせるのじゃ!!」
 ミカルゲが指し示す映像の中で、フリージオが氷の鎖をレジギガスロボに絡め付けて動きを封じていく。
「よしいいぞ、そうやって粘っておってくれ! さぁ今の内に進め進めぇっ!!」
 喚き立てるミカルゲ司教の後ろでは、歌姫ラプラスが戦いの行方を固唾を呑んで見守っていた。
 その黒真珠の双眸が、
「ひっ…………!?」
 唐突に、大きく見開かれる。
「な、何じゃとっ……!?」
 オーラを総毛立たせてミカルゲ司教が仰ぎ見た画面の向こうでは。
 氷の鎖が、レジギガスロボの豪腕により、バラバラに引き千切られていた。

 

 鎖に続いて、脚を固めていた氷をもほんの一振りで吹き飛ばし、レジギガスロボは圧倒的な力を見せつけた。
「貴様の執念もここまでだ! 喰らえ、必殺!!」
 ブースターレッドの気合いを込めた爪を鋭く構えさせ、レジギガスロボは壮絶なる一撃を繰り出す。
「レジギガス・G・クラッシュ!!*21
 白熱した爪が振り抜かれ、激烈な音を立てて突き立てられる。
 ギリギリと食い込むごとに、フリージオの透明な身体に白い花のような亀裂が広がっていく。
「絶対無敵! レジギガスロボォォォォッ!!*22
 ヒーロー姿の司令が雄叫びを響かせる中、巨大フリージオは木っ端微塵に砕け落ち、粉雪となって舞い散った。

 

「やった!!」
 ランドシェイミーの中で、ミルフィユはコアルヒーたちと一緒に喚起の声を上げていた。
 飛び散った無数の白い破片が、風に乗ってすぐ側まで舞い落ちてくる。
 と、その破片に紛れて、何かが丘の上を転がるのをミルフィユの瞳が捕らえた。
「えっ……?」
 風が吹き抜ける。
 キラキラと破片が運ばれ、転がり落ちたその姿が露わになる。
「嘘……でしょ…………!?」
 眼に映ったそれを、理解した刹那。
 ミルフィユは、驚愕の声を上げた。

 ☆

「フリージオォッ! 私のフリージオォォォォッ!!」
 絶望的な声を上げて、歌姫ラプラスが咽び泣く。
 ミカルゲ司教も岩の中にオーラをくすぶらせて、力なく呻いていた。
「最悪の事態になってしもうたな。イーレンジャーを斃し損なったばかりか銀騎士の絶対凍結の呪縛を破壊され、あれをも奪い返されるとは……」
「手遅れになっちまったようたが、どうするね司教様。このまま12番道路に向かうかい?」
 白髭のように生やした羽を撫でながら淡々と訊ねたデリバード提督に、口惜しげに躊躇いながらもミカルゲは応える。
「引き返せ。この空無道にレジギガスロボと戦える装備はない。我らの位置を奴らに気取られる前に雲の中へと身を隠すのじゃ」
 岩の中で忌々しそうにミカルゲは軋み音を立てた。
 その頭上に、突如遠雷のような声がどよめく。
『ミカルゲ司教……この……愚か者めが……』
「し、シンボラー大団長!? ははーーーーっ!!」
 たちまちミカルゲは 震える霊体を床に這わせて平身低頭する。
 捻り潰さんばかりの重圧が、その身にのしかかった。
『あれは元々処分するはずだったもの……それを絶対凍結の呪縛をもって銀騎士としたのは貴様の案であったな……』
「お、仰せの通りでございます……」
『加えて今回、貴様が敵戦力をことごとく読み違えたが故のこの敗退……挙げ句に初戦で得た戦果さえ全て台無しにした失態をどう購う気か!? 答えよ! ミカルゲ司教!!』
「お許しを……お許しを……か、かくなる上は……」
 最早、後はない。
 覚悟を決めて、ミカルゲ司教は声を吐き出した。
「私自ら、必ずやイーブイどもを討ち果たしまする故……!!」 

 

「……!?」
 ランドシェイミーから勢い良く飛び出した緑色の慌しい煌きに、レジギガスロボのコクピットで気付いたシャワーズブルーが身を乗り出す。
「何……えっ!? まさか!?」
 シャワーズブルーの視線を追ったサンダースイエローも、耳飾りを振り乱したミルフィユが血相を変えて向かう先にあるそれに気付いた。
「そんな……!?」
「何だと……!?」
 全員の表情に、次々と衝撃の波紋が広がっていく。
 彼らが見たもの。
 それは、丘一面に降り積もった白い破片を褥にして身を横たえる褐色の影。
 微かに、しかし確かに胸を上下させて息づくそれは、長い耳、首下の豊かな飾り毛――彼らと同じイーブイの姿をしていた。
 しかもそれは、その場にいる誰もが、見知ったイーブイだった。
 だから、E-ブレムを響かせたミルフィユの声が、例えどれほど涙に濁っていようとも、彼らにはハッキリと聞き分けられたのだ。
「兄さん……どうして!? 兄さぁぁぁぁぁぁん!!」
「ジェラート、さん……!?」
 唐突すぎる展開に、ブースターレッド……ビスケットは、ただ呆然と呟くばかりであった。

 

 司令自ら変形するまさかの新たなる切り札〝アッシュカノン〟で、強敵銀騎士フリージオとの戦いを征したイーレンジャー。
 そしてなんと、フリージオの中には、死んだと思われていたジェラートが隠されていた!?
 一方――――
「おのれ……イーレンジャーども! 必ずや私のフリージオを取り戻させて貰うぞ!!」
 闇の中で呪わしき誓いを立てる歌姫ラプラス。歪みきった彼女の狂愛はどこに向かうのか!?
 そして遂に自ら前線に臨み決戦へと挑むミカルゲ司教。
 怒濤の急展開の中、果たしてイーレンジャーたちの戦いの行方は――!?

 To Be Continued……*23

     ★



 電光迸る暗雲の下、バトルピラミッダー基地のハッチを開いて鋼鉄の巨神が昇りくる。
『鉄壁の要塞、レジスチルロボ!』
 極海の白い世界の中、氷山の巨神が鋭く腕を振るう。
『凍てつく豪腕、レジアイスロボ!』
 旋風吹き荒ぶ山岳の上、岩石の巨神がそそり立つ。
『巌の怪力、レジロックロボ!』
 虚空を飛ぶレジマシンたち。
 レジスチルロボの四肢が折り畳まれ、左右に分かれたレジアイスロボが両腕に、逆立ちしたレジロックロボが下半身に合体する。
『3台のレジマシンが、衝撃の完全合体!』
 完成した白銀の大巨神レジギガスロボが、巨大な爪を豪快に開いて身体ごと振り抜いた。
『放て、必殺レジギガス・G・クラッシュ!!』
 闇の大地にすっくと仁王立ちしたレジギガスロボの頭上に、力強くその名前が描かれた。
『EX超Go金・無敵合体レジギガスロボ!!』



『てれびろとむ9月号は秋の超特大付録スペシャル!』
 紙を組んで形作られた、赤い帽子と紺色の半袖ジャケットを着けた人の姿――イーレンジャーの司令がパタパタと形を変えてアッシュカノンとなり、輪ゴムの弾を発射する。
『司令から超変形! イーレンジャーの超新兵器アッシュカノン!!』
 続いて現れたのは布で作られた、腕まで覆う大きさの手袋だった。手先は先ぼそって尖り、肘にも鮫の背鰭のような突起が付いている。
『仮面キリキザン、超必殺メタルクローグローブ!!』
 更に、V字型に切り抜かれた緑色の紙が、鮮やかに回転しながら飛来した。
『超発射、ウルトラジュカインリーフブレードブーメラン!!』
 5匹のブイズとキリキザン、ジュカインらがポーズを決めた大きな紙と虹色の円盤が掲げられる。
『3大ヒーロー超特製ポスター&スペシャルDVDも付いてくる!!』
 数々の付録が一冊の本の中へと吸い込まれていく。閉じられたその表紙は、たくさんのヒーローの顔で埋め尽くされていた。
『てれびろとむ9月号、フレンドリィショップで発売!!』



     ★

 軽やかな旋律が、爽やかな風に乗って流れ来る。
 そんな安らぎに満ちた緑豊かな公園で、イーブイたちが踊っていた。
 ビスケットも、エクレアも、サンデーも、みんな楽しそうに踊っていた。
 ゲッペイも、ムースも、ミルフィユも、穏やかな笑顔に包まれて踊っていた。
 彼らだけではない。遙か上空、空無道の宮殿の中では、ムシンカ大軍団の面々も一時戦いを忘れて踊っていた。
 まるで夢のような、平和な世界がそこに広がっていた。

*24
♪もしかブースターになったなら
 火炎放射の灯を掲げ
 もしかサンダースになったなら
 10万ボルトで乱れ飛ぶ
 もしかエーフィになったなら
 朝の日差しを浴びたまま
 もしかブラッキーになったなら
 月の光に吼えてたい
 こころはブイズ 可愛いブイズ
 進化道きわめれば
 毒にもなれる 岩にもなれる
 もしかブイズが好きならば……

     ★

 次回予告!! 
「タワーオブヘブンを制圧するのじゃ!!」
 遂に陣頭に立ったミカルゲ司教の指揮を受け、アンノーン兵たちが7番道路北にそびえる慰霊塔へと殺到する。
 突如として毒音波を鳴らし始めた鎮魂の鐘。悶え苦しむ人々を救うすべはあるのだろうか!?
「洗脳されてしたこととはいえ、僕の罪が許されるわけじゃないんだ……」
 自らの罪に思い悩むジェラート。寄り添うミルフィユの眼から滴がこぼれ落ちる。
「私たちも戦いましょう!」
 そしてついにミカルゲ司教と対峙するイーレンジャー。
 新たに銀縁のこだわりメガネに掛け替えたジェラートと、ついにその緑の耳飾りを戦場に直接なびかせるミルフィユ。運命の兄妹は白銀と深緑のE-ブレムを飾り毛に掛け、E-ブレスを着けた前脚を構えて、2匹声をそろえてその言葉を叫ぶ!
「E-ヴォルーション!!」
 次回、ブイズ戦隊イーレンジャー
 ~№26・タワーオブヘブンに立つ7匹のイーブイ*25
 変形せよ! 羽ばたけ、スカイシェイミー!!

     ★  ☆

『この番組は、勇気を試すブレーン・ピラミッドキング、JINDAIと』
 ピラミッドマークに丸文字で描かれた〝JINDAI〟のロゴの後、名だたる各会社の名前がテロップに並べられた。
『御覧のスポンサーの提供でお送りしました』
 来週をお楽しみに!!

 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★



 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

「……こんな感じだよね? ポケモンレンジャーって」
「アホだお前はあぁぁぁぁぁぁっ!!」
 断定である。
 檻をひっくり返さんばかりに怒号を上げながら、コアルヒーはその虚ろな三白眼を精一杯鋭く尖らせてビッパを睨みつけた。
「あれぇ? なんか違ってた? でも大まかなところは合ってるでしょ?」
「いや根本的に違うから。掠めもしてねーから!」
「でも兄貴、ここまで全然ツッコまなかったじゃん」
「お前のド天然っぷりに呆れ果てて固まってたんだっつーの!!」
 そう――
 現実には彼らはまだ解放されてはおらずいまだに檻の中であり、ここは洞窟ではなくどこかの建物の地下室であり、彼らを捕らえたのはムシンカ大軍団などではなくただの身の代金目当ての名もなきポケモン誘拐犯であった。
 もっとも、そんな状況にも終わりが近付いていたのだが。扉のすぐ向こうでは、誘拐犯たちのアジトに乗り込んできた男が悪党どもの最後の一人を取り押さえていたところだったのだ。
「ご苦労さん。もういいよ、お家へお帰り」
 力を貸してもらっていたポケモンをリリースして、その緑色の髪をした神秘的な雰囲気の優男は、パートナーのゾロアを伴って鋼鉄の扉を押し開けた。
「やぁ、無事でよかった! もう大丈夫だよ。すぐにトレーナーさんのところに連れて帰って……あれ?」
 小首を傾げた男の前で、捕らわれていた2匹のポケモンたちは延々と妄想の内容について言い争っていた。
「そりゃこの手のネタはよくある話だけどなぁ、OP、EDからアイキャッチやCM、果ては提供テロップに至るまで設定するか普通!?」
「こだわってみました。デヘヘ」
「照れてんじゃねーよ誉めてねーよ!!」
「これぐらいやんないとリアリティないかなって思って」
「どうリアルだったら人間が大砲に変形したりレジシリーズがギガスに合体したりするんだよReBURSTもビックリだよ!! 解説されんと誰も分からんようなパロネタばかり仕込みやがってどんだけマニアだお前は!?」
「いや~、僕としてはこのパロネタ*26では定番の某闇キャラ*27と、需要相当な某ドラゴンの王子様*28を混ぜられなかったのが心残りで」
「残さんでええわそんな心! これ以上カオスにされてたまるか! お前は一体何を目指してんだよ!?」
「ちなみにてれびろとむが9月号なのはね、レンジャー物は大抵2月頃始まるから2クール目の終わりが8月頃で、その頃出ている月刊誌は9月号になるからなんだよ」
「だからそれ以前にどうしていきなり25話なんだあぁぁぁぁぁぁっ!!」
「…………ねぇ、彼らはいったい何の事で言い争っているのかな?」
 途方に暮れた顔で問いかけてきた男に、ゾロアは苦笑しながら肩を竦めた。
「さぁね。ま、どうでもいいじゃん。面倒臭いから檻ごとこのまんま持ち帰ろうぜ。鍵はさっき連中から頂いてるし、一緒にトレーナーさんに渡せば問題ないだろ?」
 そうだねと微笑みながら、男は止め処なく喚き合うポケモンたちの入った檻籠に手を掛ける。勿論爆弾など仕掛けられてはおらず、あっさりと檻籠は持ち上げられた。
「これにてミッションコンプリートだぁ!!」
 得意げなゾロアの声が駆け上がり、建物を飛び出して蒼空へとこだました。
 何はともあれ、世界は今日も平和であった。

「っていうか、いくらアンノーン兵の変装とはいえ何の真似だよあの仕打ちは!?」
「あ、やっとそこ?」



 ★~次回に続「かねーよ! 終わりだ終わり!!」~★


ノベルチェッカー結果 


・全文
【合計枚数】 121.8枚(20字×20行)
【総文字数】 35436文字
【行数】 2436行
【台詞:地の文】 35:65(%)|11923:22452(字)
【漢字:かな:カナ:他】 23:44:16:19(%)|8065:15516:5551:6735(字)

・『ブイズ戦隊イーレンジャー』のみ
【合計枚数】 113.9枚(20字×20行)
【総文字数】 33294文字
【行数】 2278行
【台詞:地の文】 34:66(%)|10876:21551(字)
【漢字:かな:カナ:他】 23:43:16:19(%)|7635:14477:5357:6383(字)


あとがき 


 3万字越えの大ボケ、お楽しみいただけましたでしょうか。戦隊物はゴレンジャーからゴーバスターズまで全部見ている進化後は海狸(ビーダル)です。
「おいおい、ビッパが作者だったらこの話のエピローグはほとんどあとがきになっちまわね?」
 いやさすがにそれはないでしょコアルヒーくん!? しかしまぁ、問題があるというのなら、狸戦隊ジグザグマンのジグザグリーンということで。
「他のメンバーは何処にいるんだよ!? 仮面の上に仮面被ってんじゃねーよ!!」

 ★ ★ ★ ★ ★

 さて、第二回仮面小説大会エロ部門参加作品『悪夢のダンジョン』に続く偽外伝パロディとなりました本作でございます。
 この悪巧みを思い付いたのはアニポケベストウイッシュ12話『ヤブクロン戦隊と秘密基地』を見たとき。
 戦隊ごっこをしている子供たちを見たサトシの「こういう戦隊ごっこって俺もよくやった」の一言を聞いて、あぁ、大砲になって皆に担がれていたんですね分かります、と妄想しまして。
 どこからそんな発想飛びに至ったかは、仮面を外すと同時に大量追加した注釈を追っていけば分かります。
「もう一遍この与太話を読み直せってか……? ってかラストの謎の窓もついでに消されてやがるのな」
 で、折角思い付いたんだからポケレン物に見せかけて書いてしまおうかと。特性天然のポケモンによる妄想オチと言うことであれば少々の無茶も通りますしね。
「少々!? 多々の間違いだろ!?」
 ビッパにしたのはこの仮面名のため。鋭い目によるツッコミ役をコアルヒーにしたのは三白眼ネタを使いたかったからです。ホントにこの虚ろな目のどこが鋭いのやら。
「ほっとけ!!」
 そしてイーブイなら色分けも簡単な上に、大砲と並ぶ戦隊の定番的切り札であるボール技をバトンタッチで再現できるためにイーブイ戦隊に。2つの必殺技を出すためと、今回は基本の5匹だけで次回予告で追加戦士を足して7匹にするということで2クール目の終わり頃を舞台にすることに決めました。
「それで25話なんて半端な時期なのか」
 戦隊の名前は最初『進化戦隊ブイレンジャー』で行こうと考えていたのですが、調べたら別のサイトで既に使われていまして。
「やっぱイーブイ戦隊なんて誰でも考えるのな」
『エヴォレンジャー』にしようとしたら爆竜戦隊アバレンジャーの敵戦隊の名前で公式に使われていました。で、結局こんなダサダサな名前に。しかしおかげでE-で始まる変身ツールや変身時の掛け声をすんなり決めることができました。
 イーブイたちの進化前の名前は以前から7匹セットで使う機会があったら使おうと考えていたスイーツ名シリーズです。さりげに語原を進化後に合わせて選んでいたことに気付いた方はおられますでしょうか。
 進化後の名前は種族名+色。姿をイメージしやすいことを考慮し、また色+種族だと意味が変になるのでこうしたんですが、モチーフ+色の戦隊ヒーローって例がないんですよ。色+モチーフならジェットマンがそうですけど。……とか言っていたら大会後にキラデコ5がモチーフ+色で出てきましたが。
「それジュエルペットの話じゃねーか!?」
 ビスケットはラテン語の2度(ビス)焼かれた物(コクトゥス)が語原。その名の通りの物理・特殊2刀流ブースターになります。
 戦隊物はピンチやトラブル、仲間とのイザコザを力を合わせて乗り越えていくストーリーがセオリー。そのために前半ヘタレてもらいました。ヘタレすぎて心配になるぐらいでしたが、後半はしっかり熱血リーダーとして動いてくれたと思います。
 ムースはフランス語の〝泡〟で泡吐きポケモン。
 普通に5匹出すとシナリオの都合上1匹は影が薄くなるであろうことが予想されたため、いっそ喋らないことでキャラを出そうとした実験的キャラです。星獣戦隊ギンガマンのギンガブルーみたいな縁の下の力持ちタイプをイメージしました。
 エクレアは頭文字だとエーフィピンクと誤認しやすいかもしれませんが、フランス語の(エクレール)が語原だと知っていればサンダースになることも納得できるでしょう。
 大丈夫が口癖のポジティブキャラ。戦隊物でピンクとイエローが女性の場合はイエローが活動的な性格を当てられることが多いです。(例外もありますが)
 しかし以前某所で「ブイズはサンダース以外は♀イメージの方が強い」と発言した僕なのに、久連、設定でしか出番のない想矢の母親に続いて3匹目のサンダースも♀。どうしてこうなった?
 サンデーも頭文字のせいでついサンダースイエローと間違えがちですが、
「繰り返し言ったってことは、書いていて間違えたことがあったんだな?」
 ……コホン。サンデー→〝日〟曜日→太陽ポケモンですので。余談ですがスイーツのサンデーと日曜日のサンデーでスペルが違うのは宗教的な理由とかなんとか。
 ヒロインカラーらしくお嬢様な性格に。しかし彼女の方には檻のトリックを見抜く役とイーレンジャーストームの発動役という出番が確定*29していたため、前半のヒロインはエクレアに譲りました。
 ゲッペイはそのまんま月見饅頭の月餅(ユエピン)で月光ポケモン。
 鳥人戦隊ジェットマンのブラックコンドルや轟轟戦隊ボウケンジャーのボウケンブラックのような、レッドと真っ向から対立するライバルタイプ。イーレンジャーストームが破られる原因の鍵を握るキャラとして憎まれ役を買ってくれました。
 ミルフィユはフランス語で〝千枚の葉〟。耳飾りの色から言っても次回でリーフィアグリーンになるのでしょう。
 女性のグリーンというのは正規の戦隊では例がないです。敵方では忍者戦隊カクレンジャーの花のくノ一組・スイレンや獣拳戦隊ゲキレンジャーのメレなどがいますが。
 しかしリーフィアも種族値的には武闘派のポケモンなのに、僕が書くと想矢くんや彼女のような知的なタイプになってしまうのはなんででしょう?
 ジェラートはイタリア語で〝凍った〟の意味。フランス語で同様の意味の〝フラッペ〟の方が統一感があるかなとも思いましたが語呂的な格好良さを考えてこちらになりました。銀騎士から銀縁メガネと来ていますので次回からはグレイシアシルバーになるのでしょう。
 フリージオだったのは正体がジェラートだという伏線のための氷ポケモンで、黒い眼差しの仕様変更ネタの受け手としての説得力を考えて第5世代からということです。
 他のムシンカ大軍団のポケモンは大体イメージ優先で選びました。ミカルゲ司教だけは次回がタイトルのネタからタワーオブヘブンが舞台になるためゴーストタイプから選んだという裏がありますが。
「こんなトラップ話なんだから、マッギョでも出せばよかったじゃねーか」
 ……しまった。その手があったか。
 レジギガスロボはこの小説とは別にそれよりずっと前、キッズステーションでルカリオの映画が放映された際2chの実況スレに僕が匿名で書き込んだ冗談が元ネタになっています。↓

 レジシリーズはダイヤモンド・パールでレジギガスに変形合体します。
 ちなみにレジスチルが胴体に、レジアイスが両腕に、レジロックが両足に変形します。

 咄嗟に吐いた大嘘でしたが、頭の中で組み上げてみたら何となくそれっぽいシルエットになったので、いつかギャグで使ってやろうと企んでいたのを今回採用しました。
 EDの『こころはブイズ』も以前から発表の機会を狙っていたものです。OPも替え歌で作りたかったのですが思い付きませんでした。
「普段からアホなパロディばっかり考えてやがんのな」
 スポンサー役はバンダイのパロディでジンダイさんに。アニメに出てきたマグマ団のメタモン使いバンナイさんという手もあったのですが、マグマ団よりもフロンティアブレーンの方がCMも作りやすいしバトルピラミッダー基地やレジシリーズのロボを出す意味にも繋がりますのでこちらになりました。
「ところで、このあとがきもう本文からイーレンジャー抜いた本編より確実に長くなっているんだけど」
 あと一人! ラストに登場した本物(笑)のポケモンレンジャー。緑の髪の優男という容姿から察せられる通り、あれはゲームのBWに登場する某N氏のつもりです。
「伏せ字になってねーよ!」
 彼は本来の手持ちを連れ回さず、各所で主人公の前に現れる時にはその周囲に出現するポケモンを繰り出してきます。おそらくはゲット&リリースを繰り返しているのであろうそのスタイルはトレーナーというよりレンジャーに近いものを感じます。そこでBW後彼がレンジャーになったと仮定して登場させてみました。
「BW2発売直前の現時点じゃNがどうなるかはわかんねーけどな」
 まぁ名前も出しませんでしたし、予想が外れていたら別人だったということでw

 ★ ★ ★ ★ ★

 元々前大会に出そうと考えていた企画でしたが、諸事情で渓谷のフラストレーションの発表を優先する事になり今回の発表に至りました。
「お陰で青大将とのダブルギャグ参戦になっちゃたじゃねーか」
 なお、イーレンジャーの他の話を考える予定は今のところありません。完全な一発ネタですので。
「誰も期待しとらんと思うけどな」


大会中に頂いたコメントへのレス 

 >>(2012/04/08(日) 02:13)
 >>個人的に言わせてもらいますと、

 >>⊃[第一回食べ物を口に入れてると危ない小説大会優勝]って感じですねー
  ね、注意書きが必要だったでしょう?
  僕自身大笑いしながら書いたぐらいですからね。青大将の方は読者に口に物を入れる隙すら与えない連続ギャグですが、こっちは不意打ちの一撃必殺狙いなので特に危険性が高いと判断しました。

 >>ボクと握手、の芸の細かさに吹いた。
  そうそう。注釈ではあれは子供を指した二人称だと解釈しましたけど、本当のところは何故ほとんどの戦隊レッドの一人称が『俺』なのにヒーローショーのCMでは伝統的に『〝ボク〟と握手』と言うのかは謎なんですよね。
  細かいところまで見てくれてありがとうございます。貴重な一票に感謝します!


切り札のコメント帳 

C・マーベラス*30「さぁ、お前らの大いなる力を渡してもらおうか」
ゲッペイ「……ねぇよw」

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 自分が考えていたのは『進化進撃隊VIZ-E(ブイズ―イー)』だった
    ―― 2012-04-17 (火) 06:13:19
  • 本編もぶっ飛んでて面白かったんですが、合間に入るCMのクオリティの高さに感動しましたw
    ストーリーもお約束感たっぷりで懐かしいなあと思いつつ眺めておりました。残念ながら最近の戦隊シリーズ見て無いんですが(
    個人的には仮面キリキザンをぜひ見てみたい所です。あと8時半からは何やるんでしょうか気になります。
    読んでる最中もにやけながら読んでた気がします。面白い作品をどうもありがとうございましたw
    ――&fervor 2012-04-17 (火) 23:51:45
  • レンジャーってそっちww 空無道ww カオス全開で吹きましたw
    真面目な小説も良いですが、この作品の様なパロディ小説も思い切り笑えて好きですw

    戦隊物は幼い頃に観たきりで、怪人カップヌードルの極太麺攻撃に人間のねーちゃんが巻きつかれて苦悶の表情を浮かべる様に何かえろいものを感じたというしょーもない記憶があるんですけど、番組の構成、愚直なまでの勧善懲悪、友情模様などは不変みたいですね。
    で、早速こころはたまごをぐぐったんですけど歌ってるの影山ヒロノブですかw 最近の音楽は良く分かりませんが、この歌は結構馴染みますし良い歌ですね。
     
    青大将のバルジャロもそうなんですけど、ビッパとコアルヒーの漫才みたいなやり取りに笑わせられましたw
    ポケモンコンビでお笑い界の頂点を目指すお話があったら面白いかもしれないと思います。
    ―― 2012-04-18 (水) 01:18:27
  • >>2012-04-17 (火) 06:13:19の名無しさん
     コメントありがとうございます。
     やっぱりポケモンで戦隊やるなら真っ先にブイズで考えちゃいますよね。うちの兄も、この小説を書くことを知らせずにただ「ポケモンレンジャーとは、スーパー戦隊の一つである!」と冗談を言ってみただけで「……イーブイの戦隊か?」と返してきて僕をギクリとさせましたしw
     今回の場合、ポケレン物に見せかけるためにレンジャーを外すことができず、ブイがだめならイーしかなかったので必然的にこの名前になりました。

    >>&fervorさん
    >>CMのクオリティの高さに感動
     そういっていただけると、苦労してネタを集めた甲斐があります。

    >>最近の戦隊シリーズ見て無いんですが
     ポケスマの裏っていうのがポケモンファンにはつらいところですよね。
     近年の戦隊でいうと、ケモナー的にはレギュラーで獣人が登場するデカレンジャーやゲキレンジャー、巨大メカがそれぞれ意思を持ったキャラとして活躍するアバレンジャーやゴーオンジャーなどがおすすめですので機会が合ったらどうぞ。
     現在放送中の特命戦隊ゴーバスターズも、メンバーそれぞれにロボットのパートナーが付いていますので、人外好きとして今後の展開が楽しみです。

    >>8時半からは何やるんでしょうか
     そりゃもう、キュレムブラックとキュレムホワイトが活躍する『2匹はプリキュレ』が。あ、ちょっと想像して萌えた。
    「萌えるな! ないにも程があるわ!!」

    >>面白い作品をどうもありがとうございましたw
     こちらこそ、楽しんでいただいてありがとうございました!

    >>2012-04-18 (水) 01:18:27の名無しさん
    >>レンジャーってそっちwww
     どうしましょう、これを書いてからというもの、ポケモンレンジャーという呼称をみる度に戦隊物を連想するようになってしまいましたよ僕。
    「作者自ら混乱してんじゃねー! お前確実に同じ症状の人増やしてんだろーが!!」

    >>怪人カップヌードル
     あ、それ多分EDの元ネタである鳥人戦隊ジェットマンの第10話『カップめん』のヌードルジゲンのことではないでしょうか。かなりのカオス回だったので印象に残っています。ねーちゃんはおそらくその回の主役だったブルースワロー・早坂アコちゃんですね。

    >>友情模様
     同じくジェットマンの話題ですが、これのレッドホークとブラックコンドルは性格の不一致の他ホワイトスワンを巡る三角関係もあって中盤まで喧嘩が絶えない間柄でした。
     でも、ぶつかり合ううちにやがて相手のことを理解し合い、終盤には無二の親友と呼べる間柄になっていったのです。
     本作のビスケットとゲッペイは、そんな彼らをイメージして書きました。

    >>こころはタマゴ
     僕も歴代戦隊EDの中でやっぱりこれが一番大好きな歌ですよ。

    >>お笑い界の頂点を目指す
     ポケスペのダイヤ&パールのコンビをポケモンにしたようなイメージが浮かびました。気が向いたら書くかも……?
     コメントありがとうございました!
    ――狸吉 2012-04-19 (木) 02:09:45
  • 続編は「電霊戦隊ロトムレンジャー」でおK?
    ―― 2012-04-19 (木) 05:51:46
  • >>2012-04-19 (木) 05:51:46の名無しさん
    >>電霊戦隊ロトムレンジャー
     その発想はなかったあぁぁぁぁぁぁっ!!
     ロトムで戦隊ネタならあの手とかあの手とかも使えるかも!?(秘密♪)
     Vシネマ版でイーレンジャーと対決とかもありかもしれませんねwww
    ――狸吉 2012-04-20 (金) 01:31:01
  • やはりあなたでしたか。一緒に皆勤賞でも狙いましょうかね!
    最初から最後までシリアスな展開に突っ込みどころ満載のアホな展開を混ぜられていたため、何度も笑ってしまいました。反面、時折入るコマーシャルなどのせいで劇中劇の色が濃くなってしまったため、シリアス性が半減してしまい、キレが悪くなってしまったかもしれません。
    そんなわけで、どっちつかずという印象を受けてしまいましたのが、マイナス点だったかなと思います。
    しかし、それを補って余りあるギャグセンスはいまだ健在ですね。これからも貴方の作品を楽しみにしております。
    ――リング 2012-04-22 (日) 19:49:52
  • >>リングさん
     いらっしゃいませ。今回は大会優勝おめでとうございます。
     >>皆勤賞
     ふっふっふ。こちとら〝旧Wikiの最初の大会から全部門〟皆勤中ですよんw(もっとも、いまだに一作品仮面を外しておりませんが*31)お互い今後も大会を賑わしていきましょう!
    >>時折入るコマーシャル
     ご指摘通りといいますか、それこそ得点度外視でネタ方向に突っ走った次第ですw
     この手の戦隊パロディ一発ネタは本当によく見かけますので、マニア性でそれらのネタに負けたくありませんでしたので。
    「つくづく一体何を目指してんだか……」
    >>ギャグセンスはいまだ健在
     評価していただいてありがとうございます。リングさんの作品も楽しみにしていますよ!
    ――狸吉 2012-04-30 (月) 23:14:05
  • 無進化のポケモンをカウントしました。
    無進化のポケモンは 56 匹です。

    フィオネを含みますが、ミツハニー♂は除きます。

    ……自分、暇人やなぁ~……
    ――ジャッチ ? 2012-07-30 (月) 22:27:41
  • >>ジャッチさん
     計算ありがとうございます!
     自分でも数えてみましたが、確かにその基準なら56匹でした。
     ただし、フィオネは一応幻ポケモン扱いだと思いますので、55匹ですね。
     どちらにせよ4クールは持ちそうですw

     ムシンカ大軍団に加えるかどうか悩むのがヌケニン。あれは進化ではなく誕生だともいえますので。
     その事を利用したエピソードなども考えられるかもしれません。(やんねーっつーの!!)
    ――狸吉 2012-08-01 (水) 01:53:59
お名前:

歪んでいます……おかしい……何かが……物語のっ……



*1 Cabriolet=屋根のない車。いわゆるオープンカー。
*2 OPの前半でメンバー一人ずつの紹介カットが入るのは、戦隊物のお約束である。
*3 今後追加メンバーが入る時はこの辺に挿入されるはず。
*4 BW時点での話。
*5 デンジマンなどごく初期の戦隊に見られる、ロボットの変形や合体などの省略法。画面が4分割され、変形シークエンスが同時進行する。
*6 全ての戦隊は例外なくOPテーマの歌詞内に戦隊の名前が入る。多くの場合は締めで入る。
*7 戦隊物の悪役には、この手の〝悪の花〟が付き物である。
*8 書かれていないので探さないようにw
*9 元ネタはプリマハム。以前はユキワラシ(雪印)ハムだったとかw
*10 この場合の『ボク』は二人称。
*11 特撮の殺陣はそういうところでやるものである。
*12 イーレンジャーストームの元ネタは初代戦隊である秘密戦隊ゴレンジャーの最初の必殺技〝ゴレンジャーストーム〟。この台詞の元ネタもモモレンジャーの「いいわね? 行くわよ!」より。
*13 BWの仕様変更により、くろいまなざしがバトンタッチで引き継げなくなったという話。
*14 元ネタは地球戦隊ファイブマンの中盤の必殺兵器〝アースカノン〟。戦隊の世話をするマスコットロボ、アーサーG6が変形する。変形パターンもほぼ元ネタを踏襲。ちなみに〝アッシュ〟はサトシの英名から。
*15 元ネタのアースカノン発射シークエンスでは、レディ・ターゲットロック・ファイヤーは全てファイブレッドの台詞なのだが、ブラッキーブラックの名誉挽回に当てるため役割を分担した。
*16 三角形を互い違いに2つ組み合わせたマーク=六芒星から真ん中の六角形を抜いた形。要するに光条が6方向に延びた星形のこと。
*17 勇者シリーズの第三作、伝説の勇者ダ・ガーンに登場したアイテム〝ダイレクター〟が元ネタ。
*18 伝説の勇者ダ・ガーンの主人公、高杉星史の変身態のコスチュームである。
*19 エルドランシリーズ第一作、絶対無敵ライジンオーの合体時の掛け声が元ネタ。ダ・ガーンには決まった決め台詞がないためこちらを採用した。
*20 ビーファイターカブトの挿入歌〝幾千の光集まる時~大甲神カブテリオスのテーマ~〟のサビの歌詞より。
*21 Gはグリップの略。握りつぶすの英訳、Grip Crushより。
*22 ライジンオーの主人公、日向仁の決め台詞より。
*23 救急戦隊ゴーゴーファイブ以降、その話の決着はついてもわだかまりが残るような場合に入るようになった本編終了テロップ。大会中は入れ忘れていた。
*24 鳥人戦隊ジェットマンED『こころはタマゴ』の替え歌。ただしジェットマンのEDバックは踊りではない。
*25 元ネタは忍者キャプター第1話〝東京タワーに立つ七人の忍者〟
*26 アッシュカノンの元ネタであるアーサーG6、ロボ戦時に司令が変身したヒーロー姿の元ネタである高杉星史、ロボ戦時で司令が言った決め台詞の元ネタである日向仁は全て声優が司令自身の元ネタであるサトシと同じ松本梨香というCVパロ。
*27 遊戯王DMの獏良了。
*28 ピグマリオのレオン。
*29 秘密戦隊ゴレンジャーのモモレンジャーも、爆発物のスペシャリストでゴレンジャーストームの起動役だった。
*30 海賊戦隊ゴーカイジャーのゴーカイレッド。
*31 第一回仮面小説大会非エロ部門参加作品。他の作品は全て仮面割れしているので調べればバレバレ。

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Last-modified: 2012-04-16 (月) 00:00:00
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