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アブない蜜集め

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アブない蜜集め 

Written by 兎の皮をかぶった狸

ちゅうい:R18表現があります。
ネタバレ防止のため詳しい内容は伏せますが、強姦等の他、おなじみのアレも含んでます。

◇簡易キャラクター紹介◇

○チェリム:とある森に住むポケモン。可愛い。
○アブリボン:蜜を求めて森へ渡ってきた。訛りが強い。
○ガーメイル;ナンパなならず者。こちらも訛りが強い。



 枝葉を掻き鳴らす荒風の寒々しさに、春の足音がまだまだ遠いことをどうしようもなく思い知らされる。巣に篭もっていても隙間風が身に凍みるばかりなので、日射しに当たろうと森の南外れに立つ木に登ってみたものの、しつこく太陽にまとわりつくちぎれ雲たちに陽光を遮られ、冷え切った辻風にまともに曝される有様。溜まらず紫の花びらを寄せて身を震わせる。
「寒っ……」
 漏らした吐息は白く霞み、ワタッコの綿毛みたいに風に乗って飛んでいく。どこかに雲が切れるのを待ちながら風を凌げる場所ははないものかと、足を擦り合わせつつ枝の上を彷徨っていた。
「ヘイヘ~イ! そこのでら可愛ええチェリムちゃん! めちゃんこ(さぶ)そうだガね。俺の翅に入れたるで(ぬくと)まっときゃあせ!!」
 と、冷風を掻き乱して、違う意味で寒い声が背中に吹き付ける。
 振り返れば一羽のガーメイルが、琥珀の眼を好色に染めてこちらを向いていた。枯れ葉色をした細長い翅が羽ばたくのでますます寒さが酷くなる。『凄く寒そうだから、翅に入れてあげるので暖まっていきなさい』と言ってくれているらしいが、誘うならせめて枝に止まってからにして欲しい。
(なあ)も遠慮せんでええガや。ちいと気色ええ思いをさせてくれりゃあええだけだで。おみゃさんも&ruby(おなごし{雌};なら、ヤるこたあ解っとりゃすガね?」
 いったいどこの異次元語なのだろう。ガやだのガねだのやたらとガを強調している辺りガーメイル特有の方言なのだろうが、どうにか露骨なナンパをされていると翻訳して返事を返す。

「すみません解りません。僕、(おとこ)なもので。それでもいいなら、暖めていただけますか?」

「……はあ!?」
 正直、あまり考えずに応えたので、『雄でもいい』と言われたら全力で逃げ出さなければいけないところだったが、幸か不幸かガーメイルは険しい声で吐き捨てた。
「何でぇ、オカマかや!?」
「誰がオカマですか失礼な! あなたが勝手に間違えただけでしょ! 眼のレンズ歪んでるんじゃないですか?」
「んな可愛ええ顔して、内股でシナ作ってなよなよ歩いとりゃすだで雌だと間違われるんだガね!」
「や、それ、単に寒さで縮こまってただけですから! 暖めてくれる気がないならさっさと行ってください。さっきからあなたの羽ばたきで余計に寒いんです!」
「はあ分ぁった分ぁった、言われんでも行ったるわ! あ~時間をだだくさったガや。けっ、とろくしゃっ!」
 言いたい放題ぶちまけ、これ見よがしに烈風を煽り立てた枯れ葉色の翅が、ひらりと翻り森の奥へと飛び去っていく。まったく不愉快で傍迷惑な奴だ。おかげですっかり凍えてしまった。頭上の蔓先から足下までブルルッと悪寒が伝い落ちる。
 ……あぁ、いけない。散々冷やされたせいで催してきた。下腹が急速に重く張り詰めるのを感じる。
 この場で解放して爽快に虹を描いてもいいのだが、またさっきみたいにロクでもない飛行ポケの類にちょっかいをかけられる事態を考えると、こんな見晴らしの良すぎる木の上で無防備な姿勢を晒す行為は躊躇われる。住処に戻るまで我慢できそうもないし、どこか近くに外から見られない場所はないか……と辺りを見渡すと、ちょうどこの木のすぐ脇に茂みが長く青づく葉を伸ばしていた。ありがたい。あそこに隠れてケンホロウを射落とすとしよう。*1
 いそいそと枝を伝い、落ちるよりも早くとばかりに幹を滑り降りると、今にも破裂しそうな股間を押さえて茂みへと分け入る。緑のヴェールで四方がすっかり覆われたのを確認してホッとひと安心。これでとりあえず通りすがりに見咎められることはあるまい。力を抜いた拍子に堤が限界を訴えたので、花びらの前を開いて茂みの奥へと狙いを定め、

 ――瞬間、正面の草がバサッ! と勢いよく割れ、小さな影が飛び出した。

「……っ!?」
 息を飲み、眼を瞬かせて、現れたものを凝視する。
 僕と比べて半分ほどしかない身の丈に、透き通った大きな翅とほっそりとした脚。首に巻かれた蜜色の帯にくるまれた山吹色の頭。キラキラと輝く円らな瞳は、何だかとっても可愛らしくて、
「あ…………え、ちょ、待……っ?」
 一瞬見とれてしまったのが、致命的だった。
 既に堰を切ってしまっていた流れはどうにも止めようがなく、対応が遅れたがために身体を背けることもできなくて。
「だ、ダメええぇぇぇぇっ! 避けて、逃げてええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
 為すすべもなく、僕から噴出した黄金色の流水が、闖入してきたポケモンの顔面へと降り注いだ。

 ◇

 仰天した様子でひっくり返ったチェリム。身を包む花びらが足下であられもなくはだけ、小さなあんよとその間に生えたチェリンボ色も鮮やかな可愛い果実がまる出しとなる。尻餅をついたのと、果実がプッチリと弾けて黄金色の汁を迸らせたのはどちらが先だったか。茂みの狭間で鮮やかに孤を描いた蜜汁は、今にも食いつかんとばかりにチェリムのソコを凝視していたポケモンの顔面へと必然的に降りかかる。
「あ……あぁ……」
 突然の出来事で蜜を止めることもできず、漏れ行くに任せたまま狼狽えた呻きを上げるチェリム。そんな彼の様子を余所に、蜜を浴びせられた方は黒い瞳をトロンとさせて至福の表情を浮かべていた。
 やがて蜜の勢いは治まり、チョロチョロと地に流れ落ちた後、滴をこぼして尽き果てる。すべてが終わってようやく、ホカホカの湯気と甘い香りに包まれた相手にチェリムは恐る恐る訪ねかけた。
「ご、ごめんなさい! おしっこかけちゃって……あの、大丈夫、ですか……?」
「……ん? ああ、かめへんかめへん。ウチが好きでカブりに行ったんやさかい気にせんといてや」
「は……はぁ!?」
 雌らしい艶のある、訛りの強い声で明るく応えられてますます困惑した様子を見せるチェリム。この相手が少し前から自分を付け狙っていて、尿意もあらわに茂みへと駆け込んだのを見計らって反対側からタイミング良く飛び出した経緯など知る由もあるまい。
「だ、だってあなた……アブリボン、ですよね?」
「ん、そやけど?」
「確かアブリボンって、湿気が凄い苦手だって……よく晴れた日でないと、滅多に姿を現さないはずなんじゃ……?」
 その通りだがしかし、チェリムの知識は偏っていた。アブリボンが濡れるのを嫌うのは、集めた花粉を湿らせないため。集めたい蜜そのものを浴びて、アブリボンが嫌がるはずもない。
 いや、それよりも何よりも、チェリムは呑気に相手の心配などしていないで、蜜まみれになって悦んでいるような変態雌などからはまだ陶酔しているうちにさっさと逃げとくべきだったのだ。ソコの新鮮な色合いから見ても、そういう経験などまるでないウブな坊やだったのだろう。気の毒に。
「ウチらの種族のこと、知っててくらはったんか。そこまで気ぃ回してくれておおきになぁ。せやけどほんまにほんま、気にせんでええんやで? こないなもん、ウチの技使(つこ)うたれば、簡単に乾いてまうよってにな」
 華奢な黒い腕をしなやかに上空へと突き上げ、アブリボンは高らかに声を響かせる。
「ほい、日本晴れ!!」
 煌めく閃光が曇天を貫き、雲を切り裂いて日輪を空に浮かび上がらせる。強まった陽光が木々をすり抜けて茂みの奥まで照らし出し、チェリムの足下に広がる蜜溜まりからアブリボンの肢体を濡らす蜜に至るまで炙って干上がらせていく。さすが自ら浴びに行くだけあって、後始末も用意万端だったらしい。そして同時に、
「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 チェリムの身体を蕾状に覆っていた花びらがたちまちまくれ上がり、満開に咲いた艶姿へと変わる。桜色の花びらに囲まれた表情までもが羞恥の色に染まっており、腰回りを包む花びらの裾を必死に伸ばして秘部を隠そうとするが短い手では叶うべくもない。却ってちらほらと垣間見える熟れた色合いが、眺める者の劣情をひたすら煽るばかりであった。
「やあん、見ないでぇっ!」
「あらまぁ、花咲かすとますます可愛くならはったなぁ。どれ、もっとよく見せてみ」
 アブリボンの黒い魔の手がチェリムの恥じらいを払いのけ、腰の花びらをたくし上げて美味しそうな果実を弄り出す。
「やめて、そんなとこ触っちゃ、ぁあっ、汚いぃっ!?」
「別にババッちくなんてあらへんで? あんさんの大事なとこやおまへんか」
「だ、だってそこっ、はぅうっ、そんな風にされたら、僕、変になっちゃう……っ!」
「怖がらんでもええで。自然なことや。あんさんのココが花粉を出したがっとんねん。全部ウチが(もろ)たるさかい、たぁんとお出しぃな」
「か、花粉って……?」
「オトコノコのアレのことに決まっとるやないか」
「ふええぇぇぇぇっ!?」
「お蜜も美味しいけんど、アレも甘くて溜まらんのやで。チェリムくんのも早よぉ味わわせてぇな」
 この期に及んでようやく、チェリムは自分がどんな目に遭わされているのか気付いたらしく慌てて這い逃れようとするが、既に足首をがっちりと捕まえられていては手遅れ。リズミカルに上下する巧みな手捌きと淫猥な囁きに誘われ、快楽の証がムクムクと黒い指の中で膨れ上がってきた。
「あは、勃って来はった勃って来はった。ほらほら、心地ええんやろ?」
「や、やだぁ! こんなのイヤ、放してぇ!」
「分かっとる分かっとる。イヤよイヤよも好きの内っちゅう奴やな。ウチが前に世話したったポポッコくんもロゼリアくんも、始めの内はそんな風にイヤイヤ言うとったけど、すぐに可愛い声と一緒に花粉をたんと出してくらはったもんや。あんさんも心地よう出させたるさかい、全部お姉さんにまかせとき」
 チェリムの哀願などまるで聞く耳も持たず、アブリボンは愛撫を続ける。呆れたことに常習犯らしい。とんだ痴雌(ちじょ)もいたもんだ。
「うふふ、もうこないに(かと)ぉしよって。口では拒絶しとっても、ほんま雄の身体っちゅうのは正直もんやわ」
「イヤぁ、恥ずかしいよ、もう許してぇ……!」
「まだまだ、ここからがお楽しみやで。ほな、頂くわ」
 獲物を食らう欲情に瞳を滾らせて、アブリボンは今にもはち切れんばかりに張り詰めているソレに、形の良い唇をつける。
「ぁひっ!?」
 切ない悲鳴を上げて、チェリムが身を悶えさせる。アブリボンはまったく容赦せず、ピンクの舌先で根本から頂点まで這いずり上げ、蜜壺を啄んで啜った。
「ひゃうんっ!? やめて、やめてよぉっ!」
「たはぁー、甘露甘露。チェリムくんは先走りのお蜜も一級品やわぁ。こりゃ本番の花粉が楽しみやで。えへへ……」
 零れる涎を陽光に散らせて、アブリポンは口を大きく開き、隆々とした果実を先端から丸々咥え込む。
「んひゃひいいぃぃっ!!」
 最も敏感な箇所を根本まで呑まれたチェリムの、狂おしいばかりの絶叫が茂みを震わせる。きちきちの顎にみっちり絞められて上下に扱かれ、紅い瞳から蒸気を吹き上げながら何度もその身を仰け反らせた。
「た……すけて…………!」
 桜色の袖を虚空に振り上げて、もがくようにチェリムは救いを求める。
「助けて、助けて! お願い……たすけてよぉぉぉぉっ!!」
 どこへともなく叫び続けるチェリム。一体誰に訴えているのか。誰が助けなどするものか。雌とも見紛う可憐な花が、見目麗しき雌虫の餌食となる魅惑的な場面を目の当たりにして、水を差そうなどとは誰も思うまい。
「た、す……ぁああ、もう、ダメぇ…………っ!」
 アブリボンの頭の横で、小さなあんよがガクガクと痙攣する。鮮やかに燃えた桜の花びらが、散らんばかりに振り乱れる。
「ぁあ……っ、ぁひゃぁあぁぁぁあああっっ!!」
 木々にこだまするほど轟いた断末魔と共に、快楽の波が絶頂を越えて炸裂し、そして。
「……っ!」
 噴出した雄の飛沫が、足元の芝をねっとりと白く染めた。
「むほ、出おった出おった。こりゃええ花粉やわぁ」
 口を放したアブリボンは、ドクッドクッと脈を打って溢れ出る白濁を手に受けて、一滴たりともこぼすことなく首のリボンへと練り込んでいく。
「こうやって溜め込んどけば、後でじっくり味わえるからなぁ。遠慮せんとどんどん出してええんやで。ほら、もっともっと」
 喜色に声を弾ませながら、黒い指先が果実を持ち上げ、そのすぐ後ろを弄くる。
「ふぁっ……んひゃぁっ、みぎゃああぁっ!」
 悲惨な悲鳴を何度も上げながら、その度にチェリムは花粉を吐き出し続けた。

 こんもりとリボンを膨らませ、満足そうにアブリボンは立ち上がる。
「やー、大豊作やわ。こんなにもええもん(もろ)て、ほんまおおきになぁ」
 言われたチェリムは、しかし応えることなくぐったりと倒れ伏したまま。紅い瞳は焦点も定まらぬ様子でどこか遠くを泳いでいる。
「なんや元気ないなぁ。あんたかてええ思いしたんやろ? 感想とかないのん?」
「…………」
 やはり返事はない。最早呻きも上げられないようだ。
「ま、こんだけたんと出しはった後やしゃあないか。お疲れさん。ほんじゃ、また()うた時はあんじょうよろしゅうな」
 いまだ照り射す陽光よりもなお晴れやかに、荷物の重さも感じぬほどの軽い足取りで、アブリボンは絞りカスとなったチェリムを茂みの内に放置して羽ばたき出す。

 まったく、どうしようもないスベタで、我が儘で、
 そして本当に――愚かな(おんな)だ。

 翅を広げ、狙いを定めて、無防備な後ろ姿へと飛びかかる。

 ◇
 
 どうしてどの仔も、花粉を出し切った後は愛想のうなってまうんやろ?
 きっとそれが、(おとこ)の仔の賢者タイムってもんなんやろうけど。
 もっとオトナの雄なら、終わった後でも楽しめるんかなぁ。けど、年食った雄の花粉なんて加齢臭がして美味しゅうないし、やっぱ花粉を取るならピッチピチの雄に限るわなぁ…………。
 そんなことばっか考えとったから。
 突然背後からの衝撃に襲われた時、何が起こったのかほんまに分からんかった。
「痛……っ!?」
 突き倒され、地べたに転がされて凄い力で組み伏せられる。続けて啄むような感触が、首に巻いた花粉籠のリボンに突き刺さった。
「うひょお、こりゃほんとに極上の味だガや! へへ、採取ご大儀さん!」
「……!?」
 訛りの強い声に振り向けば、頭上を覆う枯れ葉色の翅。
「あっ……あんた確か、さっきチェリムくんに言い寄っとった……ガーメイル!?」
 な、なんで? なんで? こいつ、チェリムくんのこと雌と間違うとって、雄やったから興味なくしてどっかに飛んでったんとちゃうん?
「俺ゃあ雄なんぞ好みでにゃあが、あんだけええ雄なら寄ってくる雌もいるもんだで、隠れて待ち伏せとったんだガや。いやぁ、見事な入れ食いだったガね!」
 ハメられた。
 ウチがチェリムくんに目ぇつけた時点で、こいつはウチのこと狙っとったんや。
「ほんじゃ、もっとお呼ばれになるで。ぐへへへへ……」
 驚愕に震えるウチを押さえつけ、ガーメイルは吻先をリボンへと突っ込んで、練り固めた花粉団子を毟り取っては貪っていく。
「やあぁ、何すんねん! それ、チェリムくんの花粉やで? あんた、雄の花粉なんか興味ないんやなかったの!?」
「がはは、元は雄の種でも、雌の唾と汗がついとるんなら立派に雌のもんだでな。ついでに……」
 荒ぶる吻先が、ウチの腰回りを這いずる。染み着いたチェリムくんのお蜜の残滓までをも舐め取るために。
「いひゃああぁっ!?」
「肌を(ねぶ)り回す感触と、おみゃさんの悲鳴がとびっきりの調味料だガや! ギャハハハハ……」
 翅と脚を踏みつけられ、身動きのでけへんウチの身体を、ガーメイルの吻先は好き放題に蹂躙し、集めた花粉と蜜を貪り飲んでいく。
「やめてぇ! ウチの花粉や! ウチのお蜜やぁ! 盗らんといてぇ!!」
「たわけぇ、やめろ言われてやめる奴なんぞおりゃすか! 他の奴が集めた蜜を横からガメるっちゅうが、俺らガーメイルの流儀だガね!!」
「イヤああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 喉が裂けるほど叫ぼうと、略奪が止まることはあらへんかった。

 身体中を隅々まで舐め回され舐め尽くされ、せっかく溜め込んだ極上の花粉と蜜は、すべてガーメイルに食い荒らされてもうた。
「ぷはぁ、ようさん食ったわ。ご馳走さん。ガハハハ……」
 得意げに高笑いするガーメイルの下で、ウチは全身を啄まれた痛みと染み込んだ汚い雄の涎と、そして屈辱にまみれて咽び泣いた。
「うぐ……えぐっ、酷い……あんまりや。なんてことすんのや……チェリムくんに(もろ)た、大事な花粉やったのに……」

「とろくしゃっ、何調子(ちょうす)いたことこいとりゃあす。嫌がるチェリムから無理矢理搾り取っといてよう言わっせるわ!」

「え……!?」
 殴られた、かと思うた。
 ほんまは、ただ呆れた声に嘲られただけ。ほんでもそのガーメイルの『アホらし、何調子のいいこと言ってんのや……』という意味であろう言葉は、強烈にウチの心を打ち据えた。
「な……何言うてんねん? この花粉は、ウチとチェリムくんが、あ、愛しおう、て……」
「あんだけメ一杯イヤイヤ泣いとるもんをヤりたい放題辱めからかいといて妄想も大概にしときゃあ。えか、おみゃあがあのチェリムにやりよったんは、誰がどう見ようが下劣なレイプ以外のナニモノでもありゃせんガね!」
「レ、レイプて……あの仔は雄で、ウチは雌やで!? 雄は雌に抜かさせてて(もろ)たら嬉しいもんちゃうん!?」
「んなワケありゃすか! 雄だって了承しこなしで大事なとこ弄くられたり嬲られたりすりゃかんに決まっちょうガや。逆レイプとかも言うげなが、俺に言わせりゃ雄も雌も関係にゃあで、えっち無理強いすりゃレイプはレイプだガね!」
 急激に身を襲ってきた寒気は、気温のせいだけやなかった。
 何言われた……? 『雄かて、了承なしでされたら、あかんに決まっとるやろ』? 『雄も雌も関係なく、えっち無理強いすりゃレイプはレイプ』?
「そ……な……そない言うたら、ウチがこれまでしてきたんはみんな……ウチはみんな、喜んでくれてる思て…………」
 ウチという存在の真ん中に立っとった支柱が、ペッキリへし折れて崩れ果てる。
 バキバキ音を立てて割れてく脳裏の視界に映るんは、これまで花粉を(もろ)てきた(おとこ)の仔らの……泣き顔ばかり。みんな、照れて恥ずかしゅうて泣いとる思うとったのに。ウチがええ思いさせたったから花粉漏らしたんや思うとったのに。ほんまのほんまに、嫌やったん? ウチは、非道いことしとったん?
「マジ自覚なしかや……ひとりヨがりたぁまさにこんこっちゃな。文字通り食いもんにされとった坊主がでら哀れだガね!」
 もう力もなんも入らんで棒きれみたくダランと転がるしかない。木枯らしと共に身体を嬲りよるんは軽蔑に満ちた琥珀の眼差し。と、不意にその琥珀色が邪な色彩に濁る。
「フン……まぁ、そんなに花粉が欲しけりゃ返したるガや」
「か、返す、て……?」
 身も心もグチャグチャに掻き乱されたまま困惑しとると、
「分からっせんのか?」
 ニタニタと嘲笑したガーメイルが、ウチの両足を掴んで力任せに押し開きよった。
「要するに、代わりに俺のタネをぶち込んだるっちゅうてんだガや! へへ、さっき出したばっかだってのに、チェリムの花粉が滋養満点だでもうビンビンに張りからかいとるわ。いっくらでも出したるガね!!」
「…………!?」
 股間から身体の中心を這い昇るザワついた悪寒にギョッと頭を上げると、ガーメイルはウチの上で身を折り曲げ、腹先を突き出してこちらに向けとった。二股に分かれた腹先の間で悍ましい臭気を放ちてらてらと赤黒くそそり立つのは、
「や……いやあぁぁぁっ!」
 それ以上直視に堪えず、ウチはもがき暴れて声の限りに泣き叫んだ。
「イヤや、イヤや! そんなんいらへん! 何が悲しゅうてあんたみたいなオッサン臭いのなんか! 放して、放せぇぇっ!!」
 抵抗はしかし、すべて虚しいばかりやった。宙を掻いた両足が持ち上げられ、ウチの身体もひん曲げられて大事なところがお天道様に晒される。
「ほほぅ、ええ色したべんちょだガね」*2
「あぁ……見んといてぇ…………!」
「フン、ここまで若い雄のをようさん絞っといてこうも新鮮な色のままってこたぁ、雄たちにゃ何もさせてこんかったっちゅう証拠だで。べんちょは綺麗な分、心はばばっちいってワケだガや!」
「……っ!」
 言葉の牙にまた心を抉られ、怯んだウチの股間にガーメイルの頭が沈む。
「まぁ、綺麗なんもこれまでだて。俺がワヤクチャに汚したるでな!」
 ずぶり。
 身が引き裂かれ、内側に異物が潜り込んでくる。雄のソレではない。ガーメイルの顔に突き出した吻先が、ウチのソコを貫いとった。
「ひぎぃぃ……っ!」
 さして大きな吻先やない。そんでも、真っ二つに両断されてまうんやないかってぐらいのとんでもない激痛にウチは襲われた。その上、吻先が膣内で開いて舌を細長く伸ばし、何も知らない処女地をニョロリと荒らし回る。花の蜜壷を底まで飲み干すかのように。
「いぎゃあぁぁ! 痛い、痛い、イタいいぃぃぃぃっ! やめてやめて、抜いたってぇぇっ!!」
 ウチの苦悶なんぞまったく意にも介さんと、ガーメイルはウチの中を掻き乱す。吻に入り口をこづかれ、舌に秘奥を舐めまくられ、沸した荒息まで吹き込まれて、まるでハラワタを貪られとるみたいで、頭ん中がガンガンしっ放しでもう気絶してまいそうになる。
 と、不意にガーメイルが顔を上げよった。吻先から透明な雫がたらりと落ちて、日本晴れの中で湯気となって散る。
「これ、唾じゃにゃあガで。おみゃあが漏らしたべんちょ汁だガや。へへ、おみゃあもやっぱ感じとりゃしたんだガね。口ではイヤイヤ言っとっても、こっちのお口は正直もんだでなぁ」
 下卑た含み笑いと一緒に放たれた言葉を裏付けるが如く、ガクガクと痙攣するウチの脚の間で、くちゅっと生温かなヌメりが溢れて流れ落ちた。
「う……嘘や、嘘や、嘘やぁ、そんなん……! ウチはようなってなんぞおらへん。こない痛いのに、気色悪いだけやのに、なんで、どして…………?」
 かぶりを振って否定しようとすると、ガーメイルはウチの上にのしかかり、ビッタビタに濡れた顔で迫って声を荒げる。
「ったりめぇだガや! 口ん中にモノ突っ込まれりゃ、美味かろが不味かろが唾は垂れる。べんちょも同じってだけだで。俺らのも同じだガや。剥かれて扱かれりゃ嫌でもそれなりに反応ぐらいするわ。それをええ思いしとるなんて勝手に決めつけとったんはおみゃあだガね!」
「あ、ああ、ああぁぁぁぁ……っ!」
 疑念の余地もなく、ほんまに非道いことをウチはしとったと、今度こそ身に染みて思い知らされた。
「ちいたぁ思い知ったかや? 今までおみゃあがカマってきた坊主どもがどんだけ恥ずかしく悔しい思いしとりゃせたか」
「ゆる、して…… ほんま反省しとる……もう二度と嫌がってんのを勝手に弄くったりせえへん。せやからもう、これ以上は堪忍してぇ……!」
 震える声で絞り出した懺悔と哀願を、しかしガーメイルは吻先で笑い飛ばす。
「さんざっぱらヤりたい放題やらかしといて、んな虫のええ話がまかり通りゃすか! (しま)いまで思う存分ヤらせて貰うだで覚悟しゃあせ!」
 ガーメイルのひん曲がった腹先が、ウチの股間に突き当てられる。硬く熱い塊が、濡れた秘肉を押し破った。
「ぁひいぃぃっ! 痛い痛い、いやああぁぁぁぁっっ!」
「おぉ、さすがに処女だで、ちいと濡らした程度じゃまだきちきちだガや。まぁしゃあない、俺ので広げたるだで辛抱しゃあせな」
「イヤやイヤや! 助けて、誰かぁ、助けてぇぇっ!」
「やかましい、往生際が悪いガや! おみゃあみてぇなレイプ魔、犯されたって誰も助けっこにゃあガね! 腹がポンポコになるまでぶち込んだるだで、ガキ産んだらしたらかんことをしっかり教え込んどきゃあ!」
 メリメリと音を立てて、絶望が胎内を浸食する。最早なんもかんも無駄やて分かり切っとったが、それでも縋る思いでウチは命の限りに救いを求め続けた。
「ぅああぁぁぁぁあぁっ! た、たすけてぇぇぇぇっっ!!」

 瞬間、烈光が横に流れ、ウチの頭上を覆っていた枯れ葉色をなぎ払ろうた。

「ぎょええっ!?」
 勢いですっぽ抜けた腹先を振り回し、ガーメイルはもんどり打って強かに地面に転がる。見れば上翅の付け根辺りが抉れ、傷口からキナ臭い煙が上がっとった。
「アチャちゃちゃちゃちゃっ! 熱ゃあああっ! ちんちんに熱ゃああっ!!」
 もがきながら、焦げた傷跡を地べたに擦り付けて冷やそうとするガーメイル。まるでどこそこが焼かれたみたいな熱がり方やけど、ちんちんの発音がフラットやったところから察するにアッチッチっちゅう意味の方言なんやろう、多分。
「だ……っ、誰だ!? 火傷(やけ)ずるかと思ったガね!?」
 攻撃が飛んできた方角を、琥珀の眼がギロリと睨む。
 釣られるように、ウチも頭を上げてそちらを向いた。
 さっき出てきたばっかの、茂みのある方角を。
「……っ! おみゃさんは……!?」
 照り続ける陽光の中、燃え盛るウェザーボールを手に携え、桜色の花びらを凛と掲げて、チェリムくんがそこに立っとった。

 ◇
  
 琥珀に映った驚愕は、すぐに困惑へと色彩を変える。 
「何でだ、何でおみゃあが俺を攻撃しゃあす? 俺ぁおみゃさんの仇を討ったろうとしとったとこだガね!」
 ガーメイルからすれば当然の疑問。端から見れば、僕の行動はとんだ恩知らずに映ることだろう。だけど、この害虫がしていたことを考えれば考えるほど、このまま黙って見ているわけにはいかなかった。
「確かに、彼女は僕に非道いことをした。それは許せないし、実際蜜や花粉を奪われたり犯されそうになってるのを見て、いい気味だとも思ったよ」
「だ、だったら……?」
「だけど僕はこれでも雄だもの。目の前で助けを求められて、それを見過ごすことなんて、どうしても僕にはできなかったんだ……」
 熱い激情をウェザーボールに任せ、ただ冷ややかにガーメイルを見据えて、僕は言い放った。

「誰かさんと違ってね」

「ぎくっ!」
 仰け反ったガーメイルに指を突きつけ、僕は責め立てる。
「あなたさっき、僕がアブリボンさんに虐められているのを、ずっと茂みの外から盗み見てたよね? 僕、何度もあなたに手を伸ばして助けてって呼んだんだよ? なのにまるっきり無視したばかりか、ずっとニヤニヤと楽しそうに覗いていたじゃないか」
「ちょ、ちょう待ってちょーよ! 誤解だて。俺ぁおみゃさんが悪雌(あくじょ)に食わりゃすもええ社会勉強になるか思うて、敢えて心を鬼にして見捨てたんだガね。(なぁ)も悪気なんぞありゃせんガや。楽しそうに覗いてたて、根拠もなしで決めつきゃせんでよ!?」
「……へぇ、だったら、アレは何なの?」
 ガーメイルの余りにも白々しい言い訳を一蹴するべく、僕はすぐ足元、茂みの入り口に生えた芝を指し示す。
「そこの草にへばりついてる、白っぽい染みはさ?」
「ぎっくぅっ!」
「僕の、ってことはないよね。茂みの中でイかされた僕のがこんな外まで飛んできたわけないし、だいいち僕のはアブリボンさんが一滴たりとももこぼさずに回収してたはずだもの。ここから覗き込んでたあなたが僕らの痴態をオカズにして、一発漏らすほどにまで楽しんでた跡じゃないとでもいうつもり?」
「……あー、そう言えばあんた、さっき出したばっかやて……最低」
「ぎくぎっくぅっ!!」
 起き上がったアブリボンからもチクリと刺され、ますますガーメイルは狼狽える。とどめとばかりに、薄情な覗き魔へと僕は糾弾の声を浴びせかけた。
「一緒になってレイプしてたも同然の立場な癖にいけしゃあしゃあと被害者の代弁者みたいに振る舞って、自分だけ甘い蜜を啜ろうだなんて、それこそそんな虫のいい話がまかり通るとでも思ってるの? この説教強姦魔!」
「あ、あわわ……さいなら~」
 追い詰められ、ジリジリと後ずさったガーメイルは、枯れ葉色の翅を慌ただしく翻す。
「逃がすかぁっ!!」
 僕は日差しに燃えて火の玉と化したウェザーボールを投げつけた。狙うは逃げ去ろうと背を向けたガーメイルの無様な尻先。
「あびゃああぁぁぁぁっ! ち、ちんちんが、ちんちんがちんちこちんにあっじゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
 急所にもろ直撃を浴びたガーメイルは、お約束の方言ネタ込みの凄惨極まりない悲鳴を撒き散らしながらぶっ飛んで森の奥底へと消えていった。まぁ、これ以上追い打ちをかけることもないだろう。

 ガーメイルを退治した後、僕はもうひとりの、より直接的な加害者に歩み寄る。
 まだ傷つけられた場所が痛むのかへたり込んだ姿勢でしばらくぼうっとしていたアブリボンだったが、ハッと瞳を閃かせると僕に声をぶつけてきた。 
「な、何やのあんさん……そない強いんやったら、ウチに弄られとった時もそうやって反撃しとればいつかて逃げられたんちゃうん!?」
「うん……そうだね」
 指摘ごもっとも。照れ笑いが頬に浮かぶのを感じながら、僕はあの時の真実を打ち明ける。
「でも、日本晴れで炎技になるウェザーボールをアブリボンさんに撃って、もしせっかくの可愛い顔に火傷でもさせちゃったらって……そう思ったら、反撃することなんてできなかったんだ」
 僕の告白を聞いて、アブリボンの表情がほっと緩んだ。
「なんや、それ。やっぱりあんさん、ウチにメロメロやったんやん。ほなら、せやったら……」
 あれは無理強いやなかった。ウチは悪うない……そんな罪を逃れる卑劣な台詞を続けたなら、僕はもう彼女には関わらず、無視してその場に捨て置くつもりだった。今でも、ウェザーボールで彼女を焼く気にはなれないから。
 果たして、アブリボンは思い直したように首を振り、眼を伏せてこうべを垂れる。
「ちゃう、ね。そんなん関係あらへんわ。あないあかん言うとったのに、勝手言うて弄んで……ウチが、全部悪かったんや。堪忍。ほんまに……ごめんなさい……」
 すべての罪を認めた彼女の態度に真摯な反省を確かに感じて、僕は涙ぐむ彼女の傍らにそっと寄り添った。
「ウチ、どないして償えばええんやろ……」
 途方に暮れた顔を上げて、アブリボンは虚空に呟く。
「イヤイヤ言うとった仔だけやない。素直に言うこと聞いててくれたキノココくんやモンメンくんも、ほんまは嫌がっとったかもしれん思うと……」
「他にもいたんだ犠牲者……」
 詳しく訪ねるのは怖かったのでやめておいた。いずれにせよ彼女はやり直そうとしているのだ。罪を憎んでポケモンを憎まず。僕も被害者である以上は尚更のこと、罪からの更正をできる限り支えて上げたい。努めて優しく、アブリボンに話しかける。
「傷つけたみんなに償う、なんてことはもうできないよ。相手にしてみれば、顔も見たくないと思ってるかもしれないし」
「そやろか……そうなんやろなぁ……」
 力なく垂れた肩のリボンを抱き包んで直し、僕は彼女の耳元に囁きかける。
「差し当たって、僕だけなら償いを受けてあげてもいいけど?」
「……え?」
 振り向いた可憐な瞳に映る僕の顔が、真剣な面差しで唇を開いた。
「ちゃんとやり直そうよ。無理に搾り取ったり押し付けたりするんじゃなくて、僕から上げるのを、君が受け取って。礼儀を守れるって誓うのなら、これからずっと君が欲しがったものを上げるよ」
 緊張で掠れそうな声でそこまで言い切り、ふっと苦笑いして肩を竦める。
「……なんて、虫が良すぎかな?」
 被害にかこつけての、どさくさ紛れのプロポーズ。弱みに付け込むような要求は格好良さとは程遠く、あるいは軽蔑されても仕方ないかもしれない。それでも許されるのなら、僕は彼女と許し合う仲になりたかったから。
 戸惑いがちに頭上の触覚を巡らせ、けれど確かな意志を込めた瞳をこちらに向けて、アブリボンは微笑みを返す。
「ううん……それで許してくれる言うなら、願ってもないわ。ええよ……ウチをあんさんの好きにしたって」
 ふっと緩んだ僕の頬から、幸せが溢れ出るのを感じる。見つめ合う彼女もまた、笑顔を陽光に華やがせた。
「あは、チェリムくん、めっちゃ可愛い……考えて見りゃ、ウチ(おとこ)の仔の顔なんて、泣き顔とヨがり顔しか知らへんかったんやなぁ。笑うと、笑顔の花咲かすと、ずっと可愛(かわゆ)うなるもんなんね……」
 そういうアブリボンの澄んだ笑顔も、これまで見せていた笑い顔よりずっと素敵で愛おしくて、だけどそれを指摘するのも気恥ずかしくて、代わりに僕は、その笑顔へと自らの顔を寄せる。意図に気付いてくれた彼女は、薔薇色の唇をほのかに開花させて僕へと差し出した。さっきまでの彼女なら、飛びついて奪い取りにきていただろう。そうしなくても僕がちゃんとあげるって、今はもう信じてくれているんだ。魅惑の彩りと吐息に混ざった甘い香りが僕を誘う。まるで彼女の方が花で、僕がその蜜を吸いにきた虫であるかのように。僕の香りを彼女のそれと混ぜ合わせ、桜色と薔薇色を重ねてお互いの味を教え合った。柔らかな触れ合いに閉ざされた内側で、ふたつの舌がもつれて絡み合い温もりに融けていく。伝い上って喉を潤した味わいの、何と甘く美味であることか。舐めても舐め尽くしても、より深く味わいたいという欲求が募っていく。彼女のすべてを、僕の全部で味わいたい……。胸の奥で鼓動が激しくさざめく。強く掻き抱いた腕の中にも、高々と打ち鳴らされるさざめきを感じた。抑えられない衝動のまま、僕は彼女に覆い被さる。唇を離すと、蜜の糸がツッと引かれて落ちた。草の上に翅を横たえた彼女の身体。山吹色に広がる優雅な胴の下は、ほっそりとした脚の付け根までふんわりと純白の綿毛に覆われていて……けれどその脚の間には、僅かにだが鮮血がこびりついていた。
「……変な風になっとらへんかな? ウチの…………」
 不安に震えた声が訪ねる。ガーメイルに挿入され、処女を奪われたばかりなのだから無理もない。中出しこそ免れたとはいえ、受けた傷は小さいものとは言えないだろう。
 腰を持ち上げ、脚を開かせる。ガーメイルが彼女にさせたのと同じ姿勢。こんな風に見えてたんだ。
「どうなん?」
「分からないよ。僕、こんなの見るの初めてだもん。ごめんね。もっと早く助けに入っていれば……」
「謝らんといて。あれはウチへの罰や。助けて(もろ)ただけで御の字やわ」
 瞳を潤ませて呟く彼女を労るように、滲んだ血の跡を舐め拭う。
「ひぅうっ!」
「ごめん、滲みた?」
「ううん、ええねん、ええねんよ……お願い、チェリムくん、早よ……」
 両腕を僕へと掲げ、アブリボンが僕を求める。僕は彼女の中へと身を躍らせて、ふたりの花を(つがい)合わせた。
「ぁああぁぁっ……!」
 苦しげに喘ぐ小さな身体を抱き締めて、だけどもう止められない。遮二無二腰を律動させて、快楽を猛烈に高めていく。ねっとりと潤った胎内はとても暖かく、背に浴びる日差しと共に僕を熱く火照らせ、吹き行く冬の風の冷たささえ今はもう心地よい。
「あぁ、いい! 気持ちいいよ、アブリボンさん……」
「ほんま……? 嬉しい……もっと、もっと突いたって……ぁあ、はぅあぁぁぁ……」
 天上の楽園で、そよ風に揺れて戯れ踊る二輪の花。僕たちは正にそれだった。叶うなら永遠にこの歓喜に浸っていられたら……けれど昂り行く快楽は、頂点への歩みをも早めていく。終焉は近い。今、すべてを彼女の中へ――
 否、それじゃダメなんだ。
 彼女の求めたものを、あげるんだから。
「約束だよ、アブリボンさん。僕のを、あげるね……ぅあ、ああああぁぁっっ!!」
 弾けた刹那に引き抜き、爆発的に撃ち放たれ行く照準を彼女の蕩けきった顔に向ける。
 激しく迸る僕の愛を、サワーポフレみたいな淡黄色の顔へとクリームを盛りつけるようにデコレーションしていった。
 黒い指先が、それを掬い取って口に運ぶ。
「はぁ、美味しいわぁ……今まで(もろ)た花粉の中で一番美味しい。お互い愛しおうて生まれた花粉は、こない美味しゅうなるもんなんやね。おおきに、チェリムくん、ほんまおおきに…………」
 幸せそうに呟いた唇に再び僕の唇を重ね、彼女の言葉を、僕たちの愛を深く確かめ合った。

 ◇

 そんなこんなで、ウチらは夫婦として一緒に暮らすようになった。
 お蜜も花粉も顔立ちも甘い最高の夫に毎日たんと愛して(もろ)て、浮気なんぞする気にもならへん。ほんまのほんまに、ウチは幸せもんや。
「なぁあんた、そろそろくれへん?」
 今夜もウチがおねだりすると、蕾の下を恥ずかしげな色に染めながらも暖かく微笑んで彼は頷く。
「ほな、日本晴れや!」
 いつものように巣の天井へ向けて手を突き上げたると、天井も空の雲も透けてお月さんが顔を見せる。月輪がお天道様より明るく眩しく輝いて、燦然と巣の中を真昼のように照らし出す。たちまちウチの前に、花びらを鮮やかに月光に翳す見事な夜桜が一輪咲きよった。胴を包む花びらの裾をたくし上げて、夫はその立派に実った果実をウチに向ける。放たれるお蜜をこの身に受けようと、背筋をそらして身構えたその時、
「ちょう待って~!」
 巣の奥から、純白の綿毛に覆われた身体と山吹の頭を持つ小さなアブリーが、透明な翅を羽ばたかせて飛んできおった。
「ウチも~! ウチもおとんのお蜜浴びる~!」
「もう、寝よ言うたんに何で起きてきようねん」
「おかんばっかズルいわ。ウチもおとんのお蜜大好きやのに~!」
 最初の一滴ぐらいしか胎内に出さんで後は全部食うてまうような愛し合い方ばっかしとんのに、ようも生まれてきよったウチらの娘。こない天使みたいな仕草で駄々コネよるで強う叱れんくなるんは困ったもんや。夫の血ぃ受け継いだせいか器量良しになる素質抜群なもんで、うっかりしとると寝取られてまうかもしれんて時々心配になる。や、夫のことは信頼してるけどな。いつもウチのことほんま大切にしてくれとるし。
「しゃあないなぁ、もう。お蜜浴びたらちゃんと寝るんよ?」
「わぁい!」
 可愛い娘やさかい、お蜜ぐらいは分けたるけどな、花粉だけは絶対に分けたらんで。あんたのおとんの花粉は、一生全部ウチだけのもんや。
「ほな、おとん。お願いな~」
「ハハハ、はいはい……フンっ!」
 軽く息を吐いて、夫は蜜を解き放つ。
 プルンと震えて弾けた果実の先端から、黄金の蜜が孤を描いて飛び、月光の中で揮発して芳醇な香りを上げながらウチらへと降り注いだ。
 照らす光が蜜粒に散って、七色に彩られた環となりウチら親仔の幸せなひと時を包んどった。
 
 ~Fin~

第七回帰ってきた変態選手権参加作品
『からたち島の恋のうた・怒濤編』

ノベルチェッカー結果 

【原稿用紙(20×20行)】 48.4(枚)
【総文字数】 15756(字)
【行数】 347(行)
【台詞:地の文】 40:59(%)|6331:9425(字)
【漢字:かな:カナ:他】 32:59:6:1(%)|5136:9311:1092:217(字)


あとがき 


 おねショタおもらしネタや簡易キャラ紹介、場面ごとの一人称キャラ切り替えなどから三月兎さんかと思ってしまった人及び兎さん本人、すみません化けてました狸吉ですw 変態選手権ということで、作者の女装という変態ネタに走っていましたwww
 もっとも、兎さんらしくない♂視点♀受けの官能シーンやタマゴグループ一致*3など、尻尾をわざとちらつかせてもいましたが。女装はスネ毛が見えてこそ変態的なのですwww
 そんなわけで、兎さん風のネタを使っても内容はあくまで僕のポケモン小説であるよう工夫しています。お姉さんのおもらしぶっかけを『蜜の採集』と解釈して蜜集めポケモン&花ポケモンのカップリングとし、敵役に蜜をガメる習性を持つポケモンを選ぶなどの配役へのこだわりや、三人称と見せかけてのガーメイル一人称などおなじみのネタも盛り込んでいましたので判る人にはバレバレだったみたいですねwww


☆大会中コメントへのレス返し☆ [#1ZGyDY3] 

2018/01/21(日) 14:12さん
投票します!

 ご投票ありがとうございます!

2018/01/22(月) 08:13さん
今回は色々とイライラする作品がほとんどだったような気がする
その中で少しはましだった作品に投票。

 あまり大会をお楽しみいただけなかったようですが、癒しになられたのなら幸いです。投票ありがとうございました!

2018/01/27(土) 17:23さん
作品内から"助けて"という悲鳴がそのまま聞こえてくるかのような、鋭い作品でした。素敵でした!

 某シオン君みたいに、『雄の娘だけど戦う時は雄らしい仔』を描くよう話を組んだら、かくも過激に仕上がりました。評価いただきありがとうございます!

2018/01/27(土) 20:03さん
ド変態なアブリボンの誰もついていけない暴走小説と思わせながら、彼女がそうだと信じてきた思い込みを正され改心しハッピーエンドで盛り上げるという王道のストーリー。
悪役のガーメイルに悪い印象をすべて押し付けてフェードアウトさせる手法は鮮やかで目を見張ります。
多段階の濡れ場もアブリボンの心情変化で見事に差別化し、比較できることでえっちさのシナジーを生み出しています。

 ガーメイルは僕の作品ではおなじみピーピングネタ。注意書きで言ってる『おなじみのアレ』とは、実はおもらしではなくこれのことを指していましたw
 思えばこの説教強姦魔がいなければアブリボンが改心してチェリムと結ばれることもなかったわけで、悪党なりにいい仕事をしてくれたものです。投票ありがとうございました!

2018/01/27(土) 22:43さん
とてもJapanese Hentai Storyでした……いつも以上に(?)ぶっ飛んでるような。
キャラクターがみんな生き生きしてて、読んでいて楽しくなれますね。

 これだけ兎さん的ネタを使っても釣られないとはw……一層の仮面の強化が必要なようですw
 今回はガーメイルを郷土言葉にしたこともあり、描いていても楽しかったです。投票ありがとうございました!

2018/01/27(土) 23:58
面白かった。

 シンプルな感想ありがとうございます!

 多くの支持をいただき、同点ながらも変態選手権では悲願の初優勝となりました。
 遅くなりましたがみなさま、その節は本当にありがとうございました!!


コメント欄 

・ガーメイル「ところで、なんで俺はヨシノ弁なぁも?」
・狸吉「三月兎さんと言えば、サブキャラに関西弁♂キャラは付き物じゃないですか。兎さんが関西の人だから、ここは僕も郷土言葉で、と」
・チェリム「や、あの、何を言ってるのか解らないんですけど!? それって、『変装相手が名札をつけてるから、自分も自分の名前を書いた名札をつける』って言ってるようなものなんじゃ……!?」
・狸吉「…………あ」
・アブリボン「マジボケか~い!?」

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*1 雉撃ち=男性の小用を示す隠語。女性の場合は花詰み。
*2 べんちょ=女性器を意味する名古屋弁
*3 アブリボンが食った♂ポケたちは、チェリムも含めて全員が妖精タマゴグループなのでアブリボンと交配可能。

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Last-modified: 2018-08-06 (月) 15:43:15
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