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番外編(正月) 新たな年の始まりに

/番外編(正月) 新たな年の始まりに

writter is 双牙連刃

 ざざっとしたためた新光メンバーの年越し(四匹)の様子をお届け! サクッと読める程度ですが、お楽しみ頂けましたら幸いです!



 夜更けのリビングでゆったりと時間を過ごす……のはいつもの事だが、今日は珍しいメンバーで同じ時間を過ごしている。俺とレン、それにリーフとソウだ。リーフはたまに居る事もあるが、ソウがのんびりリビングに居るのはかなりレアだろうな。

「いやぁ、なんだか眠れなくて起きてきてみたら皆起きててビックリッスよ」
「ま、年の瀬だからな。年越しまで起きてるってのもまた乙なもんだろうよ」
「皆って言っても、私達四匹だけだけどね」
「リィちゃんやプラス君は寝付き良いですし、ご主人は甘酒に酔ってダウンしちゃいましたからねぇ。あとレオさんとフロストさんは……まぁ違う意味で寝てるでしょうし」

 リーフの乾いた笑みに俺とレンは苦笑いで返してるが、ソウは良く分かってないのか首を傾げてる。我が弟子ながらピュアだよなー。いやまぁソウは弟子っつっても生き方なんかにはあんま干渉してねぇから、これは素のソウの性格の良さが出てるだけだけどな。
 リーフが四つの湯飲みをテーブルに置く。話しながら温めてたのはあのアホが酔った甘酒だ。噂にゃ聞いた事あったけど、まさか本当に甘酒で酔う奴が身近に居たとは驚いた。飲んで顔真っ赤にしてるから、間違えて神酒に使った酒でも出したのかってレンが焦ったくらいだ。何でも通年はハヤトの阿呆が甘酒に興味を持つ事も無いから飲んでこなかったようなんだが、俺が美味そうに飲んでるのに触発されて今年は飲んでみると意気込んで実践してみたら言った通りの状態に陥り、そのままひっくり返って寝そうだったから強制的に部屋に運んでベッドの上に捨ててきたという訳だ。

「しっかし、これってお酒じゃないんスよね? なんでご主人は酔ったんス?」
「ん? ソウは甘酒の原料って知らなかったか」
「へ? お米じゃないんスか? 缶のとかつぶつぶ入ってるッスよね?」
「お米で作る方法もあるけど、これは酒粕を使って作ってるよ」
「日本酒なんかを絞った後に残る物、でしたよね。だから確か、お酒程じゃないけどアルコール分を含んでるとか聞いた事ありますね」
「そう、正解。本来アルコールが含有してるって表記する程酒気が残ってるようなもんじゃないが、滅多にアルコールを摂取しなかったりアルコールへの反応が敏感な体だと酔った状態になっちまう事もあるって訳な」

 ま、今居るメンバーじゃ草タイプで毒なんかへの抵抗力が高いリーフに免疫持ちのソウ、それに鋼タイプ持ちのレンだから酔う心配はしてねぇけどな。俺? そもそも普段から纏ってる守りの雷がアルコール分飛ばしちまうから普通の酒でも酔わねぇよ。
 まぁ元々酔いを求めて飲むもんでもねぇからな甘酒って。ゆっくり喉の奥に通すと、じんわりとした温かさが体の中に広がっていく感覚がする。この時期の寒さに負けないように飲むには打って付けって奴だわな。

「はぁ~、あったかいッスね~」
「うん、美味しい。けどお部屋の中で飲むと少し熱いかもね」
「そうかもですね。よくテレビでも初詣に行った神社の境内で飲むなんてシーン見掛けますし」
「あるある。息白くしながら啜って溜め息なんて、良い絵撮るよな」

 そんな大晦日あるあるを話しながら時計を見ると、もうすぐ年が明ける時間だ。

「そろそろですね」
「来るッスよ来るッスよー」
「時間に……なったね」
「ん、新年明けましておめでとうって奴だな」

 家の他の面子は寝てるだろうし、大人しめに今居るメンバーで年明けの挨拶だ。今年はどうなるもんかいねってな。

「いやー俺っち年越しで起きてたの初めてッスよ。なんかちょっとドキドキするッスね」
「そんな大袈裟なもんじゃねぇだろ? ま、このちょっとした特別感は嫌いじゃねぇけどな」
「ふふっ、そうだね。朝食べる分のお雑煮とかも良い時間になったら用意しなきゃね」

 そうだなーなんて話してると、リーフが少しそわそわしているのに気付く。あら、どうかしたのかね?

「あ、あのー……良かったらなんですけど、今からちょーっとだけ、初詣って行ってみませんか?」
「ん? 初詣?」
「あー、うちはご主人が混むし面倒だから行かないって言うから行った事無いもんね」

 ははん? 今なら俺がボディガードについて行ってやる事も出来るし、珍しくソウが夜更かししてるからこれ幸いと思った訳だ。サッと行って帰ってくれば夜明け前に戻って来れるだろうし、たまにゃ弟子と同居者の縁結びをやってやるのも悪くないか。

「俺っちは良いッスよ。けど夜中にポケモンだけで出掛けるのって不味くないッス?」
「そこは俺が何とかしちゃるか。……珍しく自分から誘った奥手者の手助け、やってやらにゃ可哀想だしな」
「ふふふ、そうだね。軽く準備して、行ってみよっか」
「やった! じゃなくて、そういう事ならささっと用意しちゃいますね!」

 あらら、如実に張り切りだしたなリーフの奴。ま、一年に一度の晴れ日だ。良い思い出作りの手伝いしてやるとすっか。

 しっかり家の鍵を閉めたのを確認して、街路灯はあっても薄暗い年明けの町中を歩いていく。俺達と同じような目的だろう連中も出歩いてるし、警戒だけはしとくかね。

「おぉ、この時間でも今日はやっぱり出歩いてる人結構居るッスね」
「皆思う事は同じかなってな。逸れないように余所見しながら歩くんじゃねぇぞ?」
「あ、でもライトがふんわり明るいから、それを目印に集まるようにすれば逸れても大丈夫かも」
「そうですね。その時はライトさん、よろしくお願いします」
「えー? あんまり目立ちたくはねぇんだが……ま、逸れた時にはしゃーないから何とかするかね」

 とりあえず基本的には逸れないようにしろよってだけ伝えて歩を進める。吐く息は白いが、毛皮持ちのポケモンならそこまで寒くは無いかな。今の面子でしんどいのは、リーフだわな。

「大丈夫ッスかリーフ? 結構冷えるッスけど」
「て、提案者が言うのもアレですけど、思った以上に寒いです……」
「防寒用にマフラーでも持ってくりゃ良かったな。しゃーない、ソウ。お前邪魔にならない程度に傍に居て多少温めてやれよ」
「え、俺っちッスか? え、えーっとまぁ、リーフがそれで良いなら良いッスけど……」

 なんかリーフが驚いた顔してるが、ウィンクして大人しく受けとけと合図する。折角自分から誘ったんだ、それくらいの役得あっても良いだろさ。
 ソウもリーフも緊張と少しの紅潮をしながらも寄り添って歩き始めた。俺とレンはそれを微笑ましく見守っております。一言で言えば、お前らもうくっ付く宣言しちまえよって感じだ。

「そ、そう言えば! 何処の神社にお参りに行きましょうか!? あまり遠い所じゃ帰ってくるのが遅くなってしまいますけど」
「大きな神社も避けた方がいいかも。人もポケモンも多いだろうから逸れたりトラブルになり易いかもだし」
「そうさなぁ……」
「あ、それなら俺っち良いとこ知ってるッス!こっちッスよ!」

 あら、ソウがリーフを連れて向かい始めちまった。良いとこ? そんなもん近くにあったかね?
 ソウが案内するままに歩いて行くと、少々こじんまりとはしてるが綺麗な鳥居が見えてきた。どうやら最近出来たかリフォームでもした所みたいだな。

「どうッス? 人もそこまで多くなさそうだし、良い感じじゃねぇッスか?」
「へぇー、こんな所に神社出来てたんだ。知らなかったなぁ」
「最近創建された神社っぽいな。祀ってるのは天神だから……レックウザかね?」
「そうみたいですね。ほら、あそこにそれらしいポケモンの彫り物がありますよ」

 お、本当だ。拝殿の柱に彫り込まれてるのは間違い無くレックウザだ。どうやらホウエンからの分社って事で最近出来た神社らしいな。

「今年は辰年だし丁度良いんじゃねぇか? あいつも誰からも参られないよりかは喜ぶだろうし」
「え? あっ、あー……そう言えばライトさん、レックウザ様とお知り合いなんでしたっけ」
「改めてこういうトコで師匠の友好関係を思い出すと……ヤバいッスね」
「根無し草の風来坊してりゃ、そんな事もあるさぁな」
「あ、あははは……極めて特殊な例だと思うなぁ私……」

 まぁそう苦笑いしなさんなって言って、三匹にお参りを促す。来た目的くらいはしっかり果たさないとな。
 賽銭箱の前まで行って、レンが代表って事で四枚の五円玉を奉じた。ご縁がありますようにっつっても、俺達はもう良縁にゃ恵まれてるからな。まぁほどほどによろしく頼むと念じておいた。
 皆も終わったらしく神社を後にしようとしたところで、不意に懐かしい空気というか気配を感じた。振り返ってみると、どうやってんのか知らんけど姿を周囲に溶け込ませるようにして隠してる、あいつが居るのに気付いた。

『息災のようじゃな、光の。新たな分霊所を見に来て出会うとは、これも奇縁か』
『そっちもしっかり神様してるようで何よりだ。分霊って事は、本体でここに居るって訳じゃねーのな』
『分霊に意識を飛ばしてるが正解じゃな。霊のようなものじゃから、こちらから働きかける事も無ければ気付く者も居らんじゃろう』

 そういう事ね。まぁそりゃ新しい神社建てたら本物来ましたーなんて言ったら大騒ぎ待った無しだろうしな。

「ん? どうかしたのライト?」
「師匠? 神社の屋根の上に何か居たッスか?」
「……いいや、レックウザって名を久々に聞いて、少し懐かしいような気がしただけさな。気にせんでも心配ねぇよ」
「そうですか? なんかライトさん、明らかに何か見てたような気がするんですけど?」
「気の所為気の所為。俺が思わせぶりな事するのなんて、しょっちゅうだろ?」

 そこで確かにって反応されるとこっちも困るんだけどな? 当の神様は呑気に、新たな年を楽しむがよいぞーなんて言いながら消えるし、やれやれだな。

「まぁいいや。目的は達成したし、帰り足になるとするか」
「あ、ライトちょっと待って。折角だから、話してた事しない?」
「あん? 話してた事って……あぁ、そういう事か」
「あ、甘酒ッス! レンの姉御、持ってきてたんスか!」
「うん。紙コップだけど、さっき話してたテレビのワンシーンみたいでいいかなって思ってね」
「素敵ですね。じゃあちょっとだけ場所を借りて、一休みしていきましょうか」

 てきぱきとレンとリーフが甘酒をコップに注いで、コップの中からは白い湯気が立ち上る。家でも飲んできたもんだが、こうして外で飲むのも風情があって良いもんだ。俺だけ持つ姿がちょっとカッコ付かないけどな。

「ふぅ……良いッスねーこういうのも」
「あぁ、出掛けたからこそ味わえる一時って奴だな」
「私達だけで楽しんじゃって、家の皆にはちょっと悪い気もするけどね」
「ですねぇ。けどまぁ、たまには良いでしょうって事にしておきましょうか」

 そうしようって納得して、改めてそっと甘酒をゆっくり流し込む。キリッと冷えた空気の中で飲む温かい物ってのは格別だな。
 さてと、まったりタイムを楽しんだ事だし、ぼちぼち本当に帰り足になるとするか。このまま初日の出を拝みに行くってのも乙なもんだろうが、そこまでしちまうと家に残してきた奴等に恨み言言われそうだしな。
 新年、か。今年もレンやこいつ等と、面白おかしく過ごせると良いなぁ。


~後書き~

 ライト達の年越し、如何でしたでしょうか? 正月くらい平和にのんびり過ごせたらいいなと思い彼等もまったりモードで過ごしてもらいました。2024年も平和に過ごせますように! 明けましておめでとうございます!

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Last-modified: 2024-01-01 (月) 09:56:18
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