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時渡りの英雄第25話:暗黒の未来で・前編

/時渡りの英雄第25話:暗黒の未来で・前編

時渡りの英雄
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372:お目覚め 


 体中の痛みが体を果てしなく重くさせる。まるで全身の血液が泥か何かのように重く粘っこく流れ、動きを阻害しているような倦怠感がある。
 吐き気もする。仰向けのまま吐いてしまうと、そのまま気道が詰まってお陀仏だ。だが、寝返りを打つだけで傷つけられた場所が燃え上がるように痛む。
 無意識に光合成を行って体力を回復していたようだが、それでは少し足りない。
 横向きになる、吐いた。胃液の酸っぱく僅かに甘い味と饐えた香りが鼻腔に広がり、それがたまらなく不快だ。咳とともに涙と鼻水が垂れた。
 まだ、ガブリアスの肉の味の片鱗らしきものが残っている。
(いま、ここはどこだ……? それより俺はさっきまで何をやっていたんだっけか?)
 コリンは指を動かす。まだ力は入らないが感覚は失っていないようだ。
(確か……遺跡にたどりついて、戦って……そうだ、シデンをシャドーボールから庇って、ドゥーンと一緒に未来へ……)

「…………ううっ」
 声を出せるかどうかの確認のために、コリンは呻く。先ほどまで瞼が張り付いたように開かなかったが、今を以ってようやく開けることができた。
(ここは、未来なのか? オレは……また帰ってきたのか……。この暗黒世界に……。しかし、俺もドゥーンも隣で寝ている……ヤツも消滅せず……未来も暗黒のまま……と言う事は歴史は……歴史はまだ変わっていないのか?)
 コリンは仰向けに戻り、首を動かすだけで辺りを見まわす。
「もしかして……シデン達は時の停止を食い止めるのに……失敗したのか? ……いや、そんなことはない」
 自分を納得させるようにコリンは言いながら、光合成を意識的に行って回復能力をひたすら高めた。
(まだ、変化が訪れるのはこれからと言うことだって考えられるではないか。歴史が変わった影響は、もうしばらくしてからこの世界にも出始めることだってあるだろう……。とにかく、今はそれを信じるしかない)
 コリンは、二本の指をかたく握りしめる。開閉を続けている内に存外に力が入ることを感じて、これなら多少の人数に襲われても大丈夫だと安心する。
(シデン、アグニ……頼む、やり遂げてくれ。お前達を信じて……俺もやることをやるだけだ……だが、これから先どうすればいいのか?)
 再び意識を失いそうになるのを堪えて、その思考だけで意識を保ち続けた
 もう一つ、意識を保つための糧となったのはドゥーンと戦った時の傷の痛み。胸が上下するだけでも痛いのだから、あまり呼吸をしたくなくなるが、いい目覚ましにはなった。
(呼吸するのも辛いが……構わんか。どうせ、光合成の最中は酸素が体内で作られているから最低限の呼吸さえできれば……ん? この気配……敵? ……しかも、この匂いヤミラミ?)
 コリンは、薄目を開けつつ頭をゆっくりと動かして、体に力を込める。
「ウイイイイ~ッ!? コ、コリン!? 目覚めてやがったのか?1」
 どうやら体に力を込めた時に、そのわずかな動きで意識があることを悟られたらしく、ヤミラミは一目散に逃げて行った。
「チィッ……もう見つかってしまったか。ここもすぐに離れた方がよさそうだな」
 仲間を連れてこられると厄介だ思うなり、まだ動きたがらない体に鞭打って、コリンが立ち上がる。
 舌打ちと独り言の後に漏れ出たため息は大きい。出来ればここにはもう戻ってきたくなかったという思いの強さは、アグニと仲良くなりすぎたせいでより一層強くなっていた。もうすべてをやり遂げたような気がしたのに、まだひと仕事あると思うとイマイチやる気が起きなくなる。
(はぁ……燃え尽きたってところかな?)
「ぐっ……今、コリンがどうのこうの……」
 どうやらヤミラミの襲来で少し賑やかになりすぎたようで、ドゥーンすらも夢の世界から帰還してしまったようだ。
「ドゥーン……やれやれ、面倒だな」
 思ったことをそのまま口にして、コリンは嘲る。
「うぐぐっ……コリン! コリン……貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 その尊大な態度に激昂してドゥーンが襲いかかろうとするが、指先から軽く出した極小のエナジーボールの前にあっけなく転ばされた。
 光合成による高速再生を行ったコリンと、猛撃の種の後遺症に苦しみ、肩の外れたドゥーン。今までならいざ知らず、今この瞬間でどちらが上かなど、子供でも分かる。その差を理解できないはずのないドゥーンでありながら、コリンに策も無しに襲いかかったという事は、相当冷静さを欠いているという事か。
 冷静を絵に描いたようなドゥーンだが、今や普段の冷静な自分をことごとくひれ伏せさせて、猪突猛進するしか出来ないマッスグマのようなものだ。
 いつものドゥーンが冷静だっただけに、今の彼は哀れだった。策のすべてを失った今、コリンへ向けるべき怒りを解消したところで事態が好転するはずもなく、それでもやらずにはいられない激しい怒りが渦巻いているのだろう。

373:次の手段が来る前に 


「うぐっ……」
 そして、その怒りすらも解消するすべはない。ドゥーンに残された行動は、涙する事くらいだ。このままドゥーンが涙する光景をコリンも見てみたいと思うなど、意地悪な感情も浮かんでくるが、それを補って余りある憐れみが浮かんできた。
「お前も俺達との戦いで相当なダメージを負っているはずだ。無理をするな……」
 膝を地面につけて、コリンは出来るだけやさしく諭す。
「お、おのれコリン……うぐぅっ……うぐぐっ……こ、ここは……未来なのか。やはり、帰ってきてしまったのか……私は……この世界に……」
 ドゥーンが泣く。雨交じりに降りそそぐ(みぞれ)のように重い涙を滴らせるドゥーンに、コリンは攻撃のチャンスだというのに何も出来なかった。
 無視することができない規模の悲哀は、普段感情を押し殺していたドゥーンの姿相まって同情を誘う。
 泣くこと自体はある程度予想していたとはいえ、まさかここまで恥も外聞もなく咽び泣くとは思わなかった。コリンですら敵だということを忘れて涙を拭いてやりたくすら思う。
「……クッククククククッ」
 いつしか、静かになった笑い声は嘲笑へと変わる。コリン達を道化として、掌の上で踊らせていたと思っていたつもりが……シデンの鼻で潜伏を見破られ先制攻撃で手下の戦力をそがれる。
 アグニの必殺技に重傷を負わされ、果ては肩を外されて未来へ送り返された。これではまるで道化である。客観的に見ればこれ以上の喜劇はなく笑えてしまっても違和感はないのだが、自分でそれをしてしまうということは即ち、現実逃避が今の彼に出来る唯一の行為なのだろう。
 その、狂った笑い声に気押されながら、コリンはひたすら見ていた。目を背けることが出来なかった。いくら自分がやっていることが正しいと信じていても、こうして被害者となる者への業は必然的に生まれてしまうのだ。
 そうすることで何が変わるわけではないが、全部受け止めなくてはいけないと、心を痛ませながらも見ることを義務に感じてしまった。それがコリンの硬直の理由だ。

「結局……結局私は負けたのか……お前達に……。私はコリンやシデン達を……阻止することが出来なかったのだな……クククッ」
 ドゥーンに言われて、コリンはどんな声をかけていいのかわからなかった。
「でも、どうしてだ? 私は消えたくない……ただ、消えたくないだけなのだ。それなのに、どうしてお前達は……」
 コリンは気分に比例して重くなった口を開く。
「お前も過去の世界を見ただろう? 日が昇る素晴らしさを。そよ風の安らぎを。心が歪むこの暗黒世界にはない……人々の温かさを」
 一言一言に、苦虫を噛み潰すような思いで言葉を紡いだ。
「確かに俺だって消えたくなんてないが……でも、それも歴史を変える運命(さだめ)ならば……仕方がない。俺達が消えても、せめてこれから未来に生きる者のためになるのならば……すべてはこれから授かるであろう新たな命のためなのだ。アグニ……あいつが作る世界を見てみたいとは思わなかったのか?」
 これが、コリンの精いっぱいの答えだった。自身もなるべくなら消えたくないと思ってはいるが、それ以上に強い感情と言えばこれしかない。
「新たな命の……ために……。そうだ、私だって……アグニの作る世界は見たい……それでもだ!! 揺れ動くてんびんの皿の、両方を受け取る事なんて許されないんだ……」
 コリンの言葉が、心に響かないわけではない。ドゥーンとて、アグニ達が嫌いなわけではない。それは、アグニが推察した通り『信用させるための演技にしては度が過ぎること』をした事実からも伺える。
 コリンの言葉にドゥーンは悔しげな声を響かせるのも、アグニを救いたくても救えないというジレンマ。すべてを救う手段などありはしないという残酷な現実に対して、最大限の憎悪を抱くように。
「星の調査団により、心が暗黒に染まらなかった者達の……すべての意見は一致している。この暗黒の世界を変えることをな。死んでいった奴らもみな、覚悟の上でのことなのだ。お前もいい加減あきらめろ……もう、自分の子供が巣立つような気分で、過去の歴史を見守ろうじゃないか」
 今度は、ドゥーンが何も言えなかった。だが、コリンもさすがにその答えを待つようなことをせず、さっさと北にある洞窟へと歩みだす。

「どこに行く?」
「もう問答も十分だ。先程ヤミラミに姿を見られた。お前が倒れている時にな。お前の失敗も……じき、トキに伝わるだろう。そうなると、トキは次の手段に動くはずだ。しかし、過去の世界にまた新たな刺客を送り込むには……ディアルガ自身、パワーを蓄える必要があるはずだ。だから……その間にやつを叩く。時限の塔に行き……闇のディアルガをな」
「トキ様に勝つつもりなのか? おまえも私との戦いで手負いのはずだ。万全の状態で挑んでも分からんのに……今のお前が行ったところで勝てる訳ないだろう」
「フンッ」
 ずいぶんと優しいアドバイスだなと、コリンは鼻で笑う。
「俺も勝てるなんて思っちゃいない」
「なにっ?」
「シデン達が歴史を変えるまで……歴史を変えた影響がこの世界にも出始めるまで……それまで時間が稼げればいいと思っているだけだ。倒せなくとも力をためる事を妨害し切れればいい。もはや、過去が改変されるとあれば、この体にも、生きている意味もないのだからな」
 コリンはため息をつき、振り向きざまに、
「じゃあな。せいぜい、その腕のせいでヤミラミの足手まといになってくれ」
 と一言。それっきり後ろを振り向くことはなかった。
「そ、そんなことはさせんぞッ!」
 勇むドゥーンだが、体は言うことを聞かなかった。はずされた右腕の痛みが、激しい運動をひたすらに拒む。
「うぐっ……くそっ! 体が言う事を聞かん……だが、コリンの好きにさせてたまるか!!」
 それの激痛さえ、執念の前には瑣末なことだったのかもしれない。ドゥーンは、這う這うの体で起き上がり、その足跡を追った。

374:裏切り 


(残った荷物は……ソーダがくれたお守りだけか……装飾の復活の種も、もう一つしか残っていないが……)
 コリンはダンジョンに入ってからしばらく右腕につけっぱなしのお守りを気にして、やがて落ちそうにないことを確認すると先を急いだ。コリンが歩みを進める場所は、名を枯渇の谷と呼ぶ。つい先日シデン達と通った清流の谷のなれの果てであり、星が停止する際にまずは上流から停止して、下流へと水が流れるよりも時が停止速度が劣ったが故に渇水した、もとは流れの速い川があるV字谷である。
 谷から吹き上げる風ゆえか風に乗って世界中を旅する綿草ポケモンのワタッコが多く生息していて、現在ダンジョン化してしまった今でさえ、その個体数は多い。
 それらワタッコの空中からの攻撃は距離や挙動の不規則さも相まって反撃するには難しい。だが、逆にいえば反撃するのが難しいほど離れているならばそう簡単には当たらない。連続発射される種による攻撃も、過去の戦いで経験を積み続けたコリンの前には、豆鉄砲にすぎない。
 ジュプトルとワタッコは互いに、すばやさには定評のある種族だが、コリンは敵の攻撃を華麗に避けると、戦うのも時間の無駄だと判断して無視して先を行く。

 そうして、あっけなく枯渇の谷を抜けたところで、コリンは野営の準備をする。クラボの実を少しちぎり、掌で自然の恵みを発動させ、ダンジョン内で集めた枯れ草や薪に引火させる。
 やはり、時の止まったこの世界では薪を集めるのもダンジョン内でしかできず、バッグも紛失してしまったために少量しか持ってこれなかったのが非常にもどかしい。ともかく、コリンはやっと落ち着けたのだからと、ドゥーンが近くにいるせいで満足にできなかった光合成を今やってしまうことにする。
 コリンは体を目一杯に広げて息をつく。
 シデンとアグニのことがひたすら気がかりであった。ある意味では、気絶したまま消えてしまわなかったことが、『世界が変わる瞬間を見れていい』とプラスに考えることも可能だが、それもシデン達が成功する前提での話である。
(歴史が変わって、世界が作り変えられる瞬間……見られるのだろうかな? もしもダメなら……もう一度過去に……いや、出来るのか? シャロットがいなければどうにもならないが……あいつは生きていてくれるだろうか? 生きていたとして……また、送り出せるのだろうか)
「コリン!!」
 響く怒号に、寝転がっていた体が跳ね上がる。声の主などわかりきっている。
「やはり……追ってきたか、ドゥーン。しかし、闘うつもりか、その体で?」
 相も変わらず、腕がぶら下がっている。いくら簡単なダンジョンだったとはいえ、あれほどの手負いでどのように切り抜けてきたのかが非常に気になる。よく見れば細かい傷をいくつも負っているので、おそらくは強引に強行突破してきたのだろう。
 それだけ、実力があるということだろう。ドゥーンの強さは、コリンの身にしみている。
「クッ……手負いなのはお前も同じだろうが」
 負け惜しみのようにドゥーンは言う。一応ドーゥンの言う通りではあるのだが、怪我の度合いを見ても疲労の度合いを見ても、明らかにコンディションはコリンの方が上であった。第一、肩を外されている者に勝つなど赤子の手をひねるようなものである。
 いかに実力差があろうとも、コリンに分があるのは火を見るよりも明らかなことだ。
 しかし、それも一対一ならばの話である。

「いたぞ! あそこだ!」
 まるで、物語のヒーローのようにタイミングを見計らってソレは現われた。諸事情でもあるのか、数こそいつもより少ない4人だが、一人一人の戦闘能力が馬鹿に出来ないヤミラミだ。
 それが、ウィィと奇声を上げつつコリンとドゥーンを囲む。コリンをあざ笑うドゥーンの声の後、上機嫌なドゥーンの文句が高らかに響く。
「フフッ……コリン! 残念ながら状況が変わったな! ヤミラミ達よ、いい所に来た! コリンを倒すのだ!」
 まともに動く左腕を振りかざして、ドゥーンが命令を下す。それをきっかけに、堰を切ったかのようにヤミラミの爪が、コリンの数瞬前の位置をすれ違う。
 飛び交う奇声、ギラつく瞳、風切る爪。コリンは襲いかかるヤミラミの爪をなんとかいなしてはいるが、それもスタミナの問題で長く続きそうにはない。嬲り殺しのように疲れを誘って、息を切らしたが最後、死が待っている。
 しかしそれは、予想外なことに――
「ぐぁっ……」
 ドゥーンのぶら下がった腕に三本の赤い線が刻まれる。肉を抉る小気味よい音と共に、鮮血が散った。
 予想外な事に、死が待っているのは、ドゥーンにさえも同じことが言えた。
「な……何をする?」
 右腕ばかりを気にしているから、さらに左後方から迫るヤミラミに気が付かない、気が付けない。
 ザクリと左腕にも同様の傷が刻まれた。
「ぐっ……ど、どうしたのだ!? 何故……何故、私まで攻撃する!?」
 今度は左にばかり集中していて右腕を抉られた。ドゥーンの傷は、すでに血に弱い者が見たら卒倒しそうなほどに鮮血があふれ出ている。
「いいから反撃しろ、ドゥーン!! このまま、黙って死ぬつもりか?」
 冷静の塊であるドゥーンが冷静さを欠いて戸惑うのを、コリンの喝が救う。はじかれるように正気を取り戻したドゥーンは、すんでのところで左の追撃を避ける。
「何!?」
「わからないのか? こいつらの狙いは……俺だけじゃないってことを! こいつら……俺だけを囲っているんじゃない。お前も囲みの中に入っているってことを」
「なんだと!?」
 ドゥーンが我に返ったせいで、警戒をしているのか、じりじりと詰め寄り攻撃の機会をうかがうヤミラミに対し、二人は背中合わせた。
「何故だ……何故、私まで……」
「知るか、そんなこと!? 未来世界でアグニとシデンを同じように混乱に陥れて、自分も似たような状況で知らん顔とはいい気なものだな!?
 兎に角……このままだと……俺達二人とも……やられちまうぞ!! フンッ!!」
 コリンは振り向きざまに、ドゥーンの肩を強引に嵌め込む。

375:返り討ち 


「ぐぬぁぁぁっ……!!」
 攻撃された時よりもはるかに痛そうな声をあげて、ドゥーンは(うずくま)るが、肩は上手く嵌ったようだ。
「今だ、ウイイイーーーーーーーッ!!」
 その痛がっている隙を逃すまいと、ヤミラミが一気に輪を縮める。ヤミラミの腰が引けていたことが若干気になるが、二人はそれを気にする事もなく、すぐさま動く。
「何故だ……何故、私まで……」
「『知るか』、と言っているだろう!!」
 などと暢気に会話しながら、動き始めた二人は新しい傷を一つもつけられることなく敵を圧倒する。
 コリンは右前方から姿勢を低く飛びかかってきたヤミラミを草を操って結ぶ技で軽く転ばし、左前方からジャンプして飛びかかってきたヤミラミには、リーフブレードを斧のように振り下ろし、叩き潰す。
 ドゥーンに至っては、同じように上下攻撃を仕掛けてきたヤミラミを、ただ無造作に殴っただけだ。元々、手負いなのはコリンもドゥーンも同じだが、ヤミラミも同じで手負いであったおかげで勝負は案外簡単についてしまった。
 条件が同じならば、もはやまともに動けるのが一人となったヤミラミなどおそるるに足らない。
 立場の悪くなったヤミラミ達は、お互い顔を見合せては、その意図を互いに読み取った。即ち――
「に、逃げろぉぉぉぉ!! ウヒィィィィィ」
 という意図を。逃げるときだけはヤミラミも一人前に速く、追えば簡単に追いつけるコリンもなんだか追う気力も失せてしまった。

「……しかし、何故だ? ヤミラミ達は、なぜ私を……」
 ドゥーンはいまだに襲われたことを引きずり、怪訝な表情を浮かべる。そんな表情よりも、痛々しく腫れ上がっている脱臼した肩の方がコリンには気になる。だが執念深いこいつならばその腫れでさえ気にならないのかもしれないと強引に納得して、コリンは溜め息をついた。
「ふん、アイツらはすでに幻の大地でお前を見捨てて逃げ出したじゃないか。何をいまさら?」
「そうであったとしても……ヤミラミ達は、トキ様と私の命令には絶対に従う。その私を襲うなんて……考えられんのだが」
 今あった出来事を夢か幻と解釈したいと、ドゥーンの目は訴えていた。首を横に振り、今あった出来事が見間違いであってほしいと、目に焼きついたヤミラミに襲われた光景を振り払うように。
「ディアルガとお前……どっちの命令が優先される? ディアルガの命令に絶対に従うのだったら……ディアルガがそう命令したんじゃないのか?」
 ドゥーンは絶句した。コリンが凄んだわけでもないのに、ばつが悪そうに後ずさる。

「な……なんだと!? あ、あり得ん! 絶対に! そんなことは! トキ様が私を見捨てるなど……絶対にあり得ん」
 左腕を大振りし、コリンの吐いた暴言が文字となって眼前にふわふわと浮かんでいるのを振り払う。そんな勢いを持たせて、ドゥーンは否定する。
「ふん、どうだかな? さっきも言ったが……コリンとシデンを同じように混乱に陥れたお前が、自分も似たような状況で知らん顔とはいい気なものだな? よく考えても見ろ。お前はすでに過去の世界でシデン達の阻止に失敗しているんだ。そんなお前をディアルガが見捨ててもおかしくはないと思うがな」
「むっ……だが、見捨てるにしても、まだ私には利用価値があるだろう? 捨て駒にするならばまだわかるが、殺すメリットなどないはずだ!!」
「役立たずならば、たとえ最高幹部でも殺すと脅しておけば、士気が上がるとでも思ったんじゃないのか?」
 冷静さを失ったドゥーンは、今や口喧嘩にすら圧倒的な差を以って任されてしまった。
「兎に角、そんなこと俺の知ったこっちゃない。まぁ、内輪揉めは歓迎だからどんどんやってくれ」
 ドゥーンが沈黙して何も言い返せないのをよそに、コリンは今迄飲まされた煮え湯を飲ませ返すように嫌味を存分に口にする。マグマか熱油でも飲まされているかのような屈辱を腹の内に抱えたまま、ドゥーンは憎らしくて拳を握りしめる。
 このままコリンに怒りをぶつけてしまいたいが、今戦っても負けることはわかりきっている。
「俺は先を急ぐ。じゃあな……」
 しかし、別の考え方というものがある。煮え湯を飲まされる理由はコリンのせいではなく奴らのせいであると、怒りの矛先を変えることでドゥーンは心に安定を図る。
「まて、ひとまず休戦だ、コリン」
 ドゥーンの言葉にコリンがぴたりと歩みを止める。最初は意味がわからず、聞き間違いか何かだとさえ解釈したくもなった。
「とりあえずは……私と一緒に行かないか?」
 もはや、聞き間違いではないことが働かない頭でさえ十分に理解できた。
「なに!?」
(聞き間違いでなくても何かの間違いだろう?)
 コリンの表情と声色はいかにもそう言いたげで、むしろ『何をたくらんでいる?』という、疑いの眼差しが焼けつきそうなほどに強く向けられている。
「冗談ではない……私は本気で言っている」
(コイツ……何をたくらんでいるんだ!? 一緒に冒険すると見せかけて……油断したところを襲う気なのか? ヤミラミの造反もこれまで含めた作戦だとしたら……)
 当然のようにコリンは疑心暗鬼になる。表情を変えないようにと努めても表情に出てしまい、ドゥーンも目ざとく表情の変化を認めてため息をついた。

376:呉越同舟 


「心配するな。冒険中にお前を襲う事はしない。コリン、お前はとても用心深い奴だ。私の提案を聞いた瞬間から……もうすでに警戒しているはずだ。
 油断のない今のお前に、私が襲っても通用しないだろう。この通り……だしな」
 腫れ上がった肩を見せつけられて、コリンは沈黙した。その通り、このコンディションでならば襲い掛かられても返り討ちにしてやれるが、それでも怖いと言える。
「それより、私は知りたいのだ。何故、ヤミラミが私まで攻撃してきたのかを。私とお前が組めば強い……ダンジョンも抜けやすくなる。
 歴史を変えた影響のせいなのかは知らんが、ダンジョンに居るポケモンがますます凶暴になっているのはお前も感じているはずだ。
 お前にもそれなりにメリットがあると思うが……いや、トキ様を止めることになろうと、私がお前を殺すことになろうと……トキ様の元に行くまでの利害は一致しているはずだ。
 お互い、このままトキ様に会えなければ、死んでも死にきれんだろう?」
(確かに、コイツの強さは俺もよく分かっているし、こいつと冒険をともにする利点はある……。ドゥーンの気持ちの奥底が今一つ読めないが……とりあえず、一緒に行動するのもいいかも知れん)
 コリンは唾を飲んだ。
「わかった。一緒に行こう。ただし、下手な真似でもしてみろ……すぐにその場で叩きのめすからな。今度は腕一本じゃ済まないと思え。
 お前の関節を極めて極めて極めまくって、肉骨粉になるまで骨を砕いてしてヤミラミのエサにしてやるからな」
 なんとも穏やかではない脅し文句を向けて、コリンは釘を刺す。
「ふん……好きにしろ。行くぞ」
 怪我を理由に、ドゥーンはコリンの後衛につくことになる。殺気を感じたらすぐにでも振り返りたいところだが、その殺気を向けられることが長いこと歩いていて一度もない。相変わらず憎しみはくすぶっているのか、ドゥーンはコリンと目が合うたびに舌打ちやため息を吐く音が聞こえてくるが、それ以上はしない。まるで何か自分よりも強大な存在に押さえつけられているかのようにドゥーンはおとなしかった。
 それどころか。岩が浮かんだままの荒野を行く時も、まるでコリンを気遣うようなそぶりをするような場面もある。

「この暗がりの荒野を抜ければ時限の塔はすぐそこだ。一気に抜けるぞ!」
 例えばこうして急ぐコリンを宥めるような言葉を掛けたり。
「まて、その前に冒険の準備だ。急ぎ過ぎる行動は判断を狂わせる。焦っていくのは禁物だぞ」
 ドゥーンが制す。まるで、探検家グレイルであったときのような一面だ。こういった世話の焼き具合が素で行われているのであれば、シデン達が騙されるわけだとも感じるし、シデンを騙す手段をここでも使っているのだとすれば非常に白々しいとも感じる。
「ふん、俺に指示するな! ドゥーン」
 疑いを強めるでも気を抜くでも、コリンにはマイナスになる。出来るだけこっちの感情は表しちゃいけないと、コリンはあくまで無表情にクールにと、自身を押さえつける。
(ドゥーンの野郎、相変わらず何を考えているのかはわからんが……まぁいい。ヤミラミが襲ってきた理由が分かれば、コイツがこのまま味方で居るのか……それともやはり敵に回るのかはっきりするだろう……)
 そこまで考えてコリンは笑う。
(しかしお前、立派な探検隊じゃないか。お前は……。あの時のお前は……過去の世界のお前はどんな顔をしていたのだろうな……超有名探検隊……グレイル=ヨノワールのお前はさ。アグニにグレイルと呼ばれて喜ぶぐらいだから、なんだかんだでこいつも過去を満喫していたんだろうな)
 感情を隠したいコリンは、ドゥーンに見えないように前を見たまま、にやけた顔をしている。
 そのまま二人は、『準備ができたぞ』の一言以降、会話を交わすこともなくダンジョンを突き進む事になる。

 ダンジョンを突き進む間、目の前の敵を倒すまではいいのだが、それをしている間に自分の背後がふと気になる。殺意や敵意が自分に向けられているのではないと分かっていても、ダンジョンの中でそう言った意を発せられるのが恐くて何度も振り返るが、あいも変わらずドゥーンは何もするようなそぶりを見せなかった。
 コリンはサソリ型のポケモンであるスコルピが突き出してきた尾針を足で踏み潰し、足の指の間に毒の尻尾挟みこんで逆立ちする。そのまま鞭のようにスコルピの体を振り抜き地面に叩きつけた後で踏みつぶす。
 その一瞬、思わず気を抜いてため息をついてしまったが、慌てて後ろを振り向きドゥーンの動向を確認する。ドゥーンは特に何をするでもなく、コリンの分も周囲を警戒しているだけであった。
「後ろを気にしすぎだぞ、コリン。やはり気になるか? 私が背後にいることが……」
 コリンの視線に気づいてドゥーンは尋ねる。
「当たり前だろう。気にならなかったらそれこそ俺は変態だ。それに結果的にダメージは食らっていない……お前が居ようと居なかろうと関係ないだろう」
 面倒そうにコリンは言い捨て、ドゥーンを突き放す。
「目の前のことをおろそかにするとどうなるのか……お前はよく分かっていると思ったのだがな」
 ドゥーンの腹にある口が大きく開き、そこからシャドーボールが放たれる。コリンは身構えて、それが当たる軌道でないことを読み取ってドゥーンの視線の先を見つめる。
 シャドーボールの餌食になったのは、触手のような頭髪と胸に埋め込まれた恐怖などを感じ取る赤い珠。暗緑と紫の中間ほどの色を呈して浮遊するそのポケモン、種族名を夜鳴きポケモンのムウマといった。
「私を警戒するのはいいが。判断を誤ると状況が一変するぞ。ちょっとした隙が命取りになる。そして、集中力が切れれば判断を誤りやすい。お前のように後ろを気にしている……とかな」
 ドゥーンの言い草は正論過ぎてコリンは何も言えなかった。だが、それでも警戒を解くのは難しいだろうと、反論の一つや二つしたいが、本当に殺気を向けられていない今の状態では、ドゥーンに対してそれを言ってもただの言いがかりにしかならない。
(全く……言いたい事も言えないなんて、不便なものだ)
 心の中で毒づいて、コリンはため息を吐きつつ先を急いだ。

377:尋問 


「ウイイ……コリンはまだ来ていないようだな……。早くトキ様に報告しなくては」
 見張りか斥候のつもりなのか、一人集団から離れたヤミラミがぶつくさと独り言を呟いていた。宝石が体にちりばめられたヤミラミと言う種族は、暗闇でも僅かな光を反射してギラりと光る。
 その光を遠くから発見した二人は、当然のようにその一人を引き離そうと言う提案を浮かばせた。
 ひどく怯えながら辺りを見回すヤミラミの前で、突然地面が盛り上がる。
「ウィ?」
 穴を掘って草が芽吹くように現れたコリンがヤミラミの足を掴む。
「ヒィッ!!」
 それに驚く前に、虚空から体を実体化させて現れたドゥーンに、背後からその口を押さえられる。
「ちょっと聞きたいことがあるんだ。悪いが、付き合ってくれ。勿論、大声を出したりすれば……眼球を抉る」
 口を押さえられながらも、何とか声を出そうとムガムガ声にならない声を出して抵抗するが、瞼にコリンの腕の葉を当てられて背筋が凍った。ヤミラミはたちまち弱気になって見せて、脱出に関係ない力を全身に込めてがたがたと震える力に費やしている。
「了承してくれるならば……左足を上げてみろ。口を自由にしてやる」
 ドゥーンの低く重い言葉に、そろりとヤミラミが左足を上げた。二人の強者に囲まれて、ごく自然に震える足はおぼつかない。
「こっちだ」
 その挙動に満足して、コリン達は見つかりにくい岩陰にヤミラミを連行した。
「おい、教えろ。何故お前達は俺だけじゃなく……ドゥーンまで襲ったんだ?」
 コリンの研ぎ澄まされた腕の葉を眼球に突きつけられ、ヤミラミの体は震えていた。熱のこもった生物である事を感じさせないほど冷たいコリンの目は、何の感情もなく鈍く光っている。恐怖のせいなのか、力の緩んだヤミラミの下半身は軽く失禁を許していた。
「ウィィィ……そ、それは」
 それでも、口ごもる。失禁するほどの恐怖に身を置かれても簡単に口を割ることは出来ないようだ。時の守り人が行う支配が恐怖に拠るものか忠誠によるものかは知らないが、大したものだとコリンは感心する。
「ヤミラミよ、私の命令が聞けんのか?」
 ならば、その忠誠や恐怖よりも上の恐怖を与えてやればいいとばかりにドゥーンが脅す。葉の刃と、鈍器のような拳の脅しは、ひたすら恐怖を刺激する。ヤミラミは身を縮めるが、事態はなにも好転しない。

「ウィィィィ……」
 ヤミラミは重い頭をあげて二人を見回してみたが、どう見ても穏便に済ませられそうな雰囲気では無い。失禁はさらに度を増して、コリンは自分の足が濡れそうになるすんでのところで足を引いた。
 汚いじゃないかと怒りたくもなったが、コリンはその件については触れることはせずに成り行きを見守った。
「お前も知ってるだろう? 私を怒らせたらどうなるか……」
 ドゥーンが拳を硬く握り締めて詰め寄る。拷問器具のほうがまだ可愛らしいとすら思わせるドゥーンの圧力を前に、並の度胸で口を閉ざし続けることは難しい。
「ウヒィィィィ! 言います、言いますよ。私達も本当はやりたくなかったんです。ドゥーン様を襲うなんて……そんなことは!! 本当なんです、信じてください!」
 そして、そんなに難しい事は、ヤミラミには出来なかった。後はもう、やけくそになってずるずると喋ってしまうしかない。
「じゃあ、なぜ襲った?」
 コリンが腕の葉を、瞼に近づける。
「命令されて……仕方なく」
「当たり前だ。誰にか、と聞いている。トキとか言うディアルガか?」
 ついに葉は眼球の宝石に押し付けられて、いつでも角膜を切れるぞと脅す形になった。冷たい感触に、ヒィッと絹を裂くような声をあげて、ヤミラミは泣きじゃくった。コリンは動揺しなかったわけではないが、感情を出さないように努めて無表情を貫く。
「ドゥーン様に代わる……トキ様の新しい腹心です」
 今度凍りついたのはドゥーンだった。
「わ、私の代わりの……新しい腹心だと!?」
 オウム返しに聞いて、震える。先ほどのヤミラミの仕草となんら変わることがない、凍りついた表情。瞬間、何も考える事が出来ずにドゥーンは拳を握る。怒りの感情と絶望が綯い交ぜになった想いを燻らせながら、ドゥーンは続きを黙って聞く。

378:新しい腹心 


「はい……トキ様は、ドゥーン様に変わる直属の部下として……凄腕のポケモン達を新たに選び出しました。そしてそのポケモンを最後の刺客として……過去の世界に送るつもりなのです」
 最後に、コリンまでもが凍りついた。
「凄腕の……最後の刺客を過去の世界に……」
 シデンとアグニが危ない――コリンはギリリと歯を食い縛り、顔も名前も種族も知らないその相手に敵意を抱く。ドゥーンの硬く握り締められた拳は、ついに滾った殺意が砲口から放たれた。ヤミラミが座っている地面の手前、拳の風圧が触れる程の近距離を殴りつける。
 威嚇と脅しには十分すぎる恐怖が与えられることだろうその凄まじい攻撃は、地面が砕けるついでにヤミラミの腰まで砕いている。
「そいつが命令したんだな? その、新しい腹心が? 私を攻撃しろと!」
 憎しみ、殺意、敵意、怒り。攻撃に向かわせるありとあらゆる感情を携えて、ドゥーンが問いただす。
「は、はい……『失敗したドゥーンはもう必要ない。だから、消せ』と……私達もそれだけは出来ませんと反対したのですが……
 でも、その腹心は言ったんです。『これは私からの命令ではない。トキ様からの命令である』……と」
 再び地面に殴り掛かるドゥーン。最早それは脅しですらなく直接ヤミラミに当たる。何の波導を篭っていない無属性の拳ではあるが、その威力は岩を砕いてなお、お釣りが来るだろう。
 咄嗟に腕を翳したヤミラミの腕には、見るも無残な青アザが残った。首に葉を当てていたコリンも咄嗟に腕を引き、アレに巻き込まれたらまずかったと、肝を冷やして息をついている。
「そんな、馬鹿な……トキ様が……私を消すなどと……信じられるか、そんなことが!」
 ドゥーンがヤミラミの首根っこを掴み、空中に持ち上げる。濡れた股間から尿が飛び散りコリンの体に少しかかったが、それに顔をしかめる暇もない。ヤミラミはいつ殺されてもおかしくない状況でドゥーンの手の内にいる。
 もし、敵でなければ助けなければと無条件に思うような光景。それでも、コリンは目的のためには仕方がないと割り切って、無情な光景を前に動かなかった。

「言え、ヤミラミ! その腹心とは……新しい腹心とは、一体誰なのだ!?」
「そ、それだけは……それだけはご勘弁を!」
「駄目だ、言え! 言うんだ!!」
 握る力を強めた。無造作に握ったそれだけで意識を飛ばしてしまいたいほどの耐え難い激痛と苦痛が首周りに掛かる。しかし、どれだけ待ってもうめき声しか出せないヤミラミに、仕方なくドゥーンは握る力を弱める。
 耐えがたい憎悪を向けられた恐怖と、強烈な酸素不足に促されるまま、ヤミラミは首が楽になった瞬間恐怖に耐えきれず胃の中の物を吐き散らした。腕に吐しゃ物がまき散らされたが、それでもドゥーンは目元を動かす事もせずヤミラミを掴み続けた。
「……言え…ません。もし言ったら……私や仲間達はどうなるか……それだけは……それだけは本当にご勘弁を。もう、一人が……喉が潰れるほど叫んでから殺されているんです。
 生きたまま原型をなくしていく死体なんて……私は生まれて初めて見ました……シャロットでさえ、弄ぶのは死んでからだったのに……アレの……新しい腹心の残酷さはシャロット以上です」
(シャロット……あー……そう言えばアグニが卒倒していたあれか)
 あの時の光景もすさまじい物だったが、シャロット以上と聞いてコリンはどんな惨状を繰り広げられたのか考える。しかし、あれ以上の光景を想像する事が出来なかった。生きたまま原形を失っていくという苦痛がもたらす恐怖なんて、話しに聞くことすら恐ろしい。
 首を絞められたことも原因の一つであろうが、ヤミラミが吐き戻したのはその光景を思い出してしまったこともあるのかもしれない。その光景を作り出した者が、シデン達の前に立ちはだかるかと思うと、コリンはヤミラミよりも新しい腹心とやらに気をまわしてしまう。
「くそ」
「やめろドゥーン!!」
 渾身の力で、掴んだヤミラミを壁に叩きつけようとドゥーンが腕を振り上げる。それはあまりにやりすぎだと、咄嗟にコリンが止めなければ、ヤミラミは確実に死んでいたことだろう。
 コリンのおかげで、なんとかボテリと地面に落ちて生き繋いだヤミラミは、周囲の事なんて何も頭に入ることなくとにかく逃げた。殺されると言う焦燥のみが彼を突き動かし、絹を裂くような悲鳴と共に何処へともなく逃げていく。
 今度は、それを見送るドゥーンの呼吸が危うい。病的なまでに激しい呼吸が、焦燥するドゥーンの心情を表していて、このまま放っておけば死んでしまいそうな気すらする。コリンはそんなドゥーンをどこか遠い目で見ていた。間近で行われている事なのに実感に欠けて、そんなことよりも新しい腹心とやらを差し向けられるシデンとアグニを心配する思いだけが胸を支配している。

379:自嘲 


「トキ様が私を消そうとしただと!? ト……トキ様が……この私を……」
 がくがくと震えるドゥーンは、寒さとか病気なんて陳腐な例えでは到底表しきれない振動をしていた。
「ドゥーン……」
 ドゥーンの言葉でようやく我に返ったコリンは、その様子を見て流石に心配の一つでもしたくなったのか、その名を呼ぶ。
「クククッ……クハハハハハハ……コリン。お前が今、何を考えているか分かるぞ。哀れだと思っているんだろう? ……この私が。
 笑え、笑うがいい! 裏切られ……捨てられた者の顛末をな……クハハハハハハ」
(うわぁ……やっぱり放っておいた方が良かったかな……)
 道化としての自分を客観的に見て、ドゥーンは自嘲した。断末魔や悲鳴、呻き声などのオーソドックスに恐怖を誘う声よりも、こちらのほうがよほど恐怖を呼び起こしそうな狂気を帯びた笑い。
(どうしよ……俺の走りに、いくらドゥーンと言えどヨノワールがついてこれるとは思わないし……先に行こっかな)
 いつまで続くかも分からないその声を聞いているうちに、心底鬱陶しいと心の中で思うコリンだが、それよりも先に気がかりばかりがコリンの頭を支配していた。
(だが、その腹心とやらが襲ってきたときは……こいつ無しじゃ勝てないだろうし……やっぱり、連れて行くしかなさそうだな)
「ふん、笑うもなにも俺にとってはどうでもいいことだ、ドゥーン。それより俺が気になるのは、新しい腹心であり……最後の刺客でもある凄腕のポケモン。そいつがいったいどんな奴なのか……だ」
 コリンは憎まれ口をたたいた方が元気になってくれるだろうと思い、ドゥーンを挑発する。新しい腹心と聞いて嫌な予感がしてならず、尚更時限の塔へと急ぎたくなったがドゥーンが動かなくては困る。叱咤激励の一つで立ち直れるならばそうしてもらわなければ。
 コリンが憎まれ口を叩けば、不意にドゥーンの声が止まる。
「こうなれば……私も行くしかない。時限の塔へ……トキ様が本当に私を消そうとしたのかどうか……私はどうしても信じられないのだ。だから、私の時限の塔へ行き……確かめねばならない。トキ様の真意をな……行くぞ」
(とりあえずこいつが味方として動いてくれるのは心強いが……しかし、ドゥーンがディアルガに心酔していることは変わらない。いざ、時限の塔でディアルガに会った時、ドゥーンがディアルガに(なび)く恐れは十分にある。その時は、俺一人でディアルガとドゥーンを相手にしなければならんが……いや、今のディアルガには新しい腹心もいる。そうなると相手は三人。出来るのか……? そいつらの相手を……俺一人で)

「どうした? 行かないのか? 今更新たな敵の存在に怖気づいたわけでもあるまいに」
 コリンの思考はドゥーンの憎まれ口により遮られた。
(ふん、その時はその時。死ぬことなど覚悟の上だ……少しでも時間稼ぎが出来ればいいんだ、俺は)
 ドゥーンの声をうざったく舌打ちしながらコリンはドゥーンへ振り返る。
「行くに決まっているだろう。気持を高ぶらせていたところだ。行くぞ!!」
 時限の塔は、もう目と鼻の先であった。時が止まった今では虹の石舟はテコでも動かないが、その代わり崩れ去った時限の塔の残骸が浮かんでいるので、それにつかまることでロッククライムが出来る。
 ドゥーンは何度かその経験があるらしく、巨体に見合わずひょいひょいと上っていくが、やはり身軽なコリンには到底敵わない。コリンに何度もはるか上にいかれては、一人で大きめの岩を見つけては腰掛けて休んでいるということが繰り返された。

「着いたぞ……時限の塔の入口だ」
 ドゥーンはどこか懐かしげに、それでいて激しい悲しさに見舞われながら、そう呟いた。横で待ち構えていたコリンも、どこか感慨深い表情で施設を見回している。
(時限の塔か……そう言えば、過去の世界ではシデン達も……この時限の塔に上っているはずだ。シデン、アグニ……頑張れよ
 俺はお前達を信じて……後を託したんだ。俺も、この世界で……出来ることをやり切る! ともに……未来のために)
 心の中、奮い立たせるようにコリンは呟いた。そうしてコリンは時限の塔にシデン達の痕跡がないかを必死で探してみる。だがそれは何処にもなかく、無駄な事をしたなと落胆する溜め息が自然に漏れ出た。
(まぁ、仕方ないさ。アグニもシデンも来る戦いに備えて、いっぱいいっぱいだったのだろうよ。わかっていたことさ……)
 コリンは分かっていても寂しげに俯くのを抑えられず、気を紛らわそうとドゥーンを見る。
「私も……ここに来るのは久しぶりだ。とにかく、トキ様に会って確かめねばならん。その真意をな……」
 どうやらドゥーンは、もう腹心とトキの事しか頭にない様子。マイペースなことだと、コリンはため息をついた。
「あぁ、スタミナが残っているようならさっさと行くぞ……」
 憂鬱な気分を振り払うように、コリンは空元気に声を上げて言う。シデン達が失敗するんじゃないかという懸念が、コリンの中でいよいよ現実味を帯びていた。

380:時限の塔 


「ゴルバットか……」
 全体の7割方が顔で構成され、その顔の7割方が口で構成されている蝙蝠形のポケモン、ゴルバットを正面に迎え、コリンは嫌そうに呟く。
「俺とは相性がとことん悪い、ドゥーンに頼むよ」
 コリンの草の体は、毒と飛行のタイプを併せ持つゴルバットに対してとことん相性が悪い。
 大人しく譲る形でコリンは横に退き、目配せをする。
「ふん、仕方がないやつだ」
 なんて言いながら、まんざらでもない様子でドゥーンが前に出た。数は二匹――素早く飛び回るせいで、攻撃する時に動きを捕らえにくいが、そこはコリンの援護が光る。
 コリンは尻尾を揺らすことで、催眠波導を視覚から作用させ、敵の眠りを誘う。視覚に依存するこの技は聴覚に依存する草笛とは対を成し、上手く使い分ければ強力だ。
 ドゥーンの視界からはずれた位置からゴルバットに見せつけることで、敵の集中力が大幅に削がれる。
「ぬあぁぁぁぁ!!」
 ドゥーンは咆哮し、飛び上がるように空中へ浮いたと思えば、建造物の柱のように太く逞しいその腕に電気の波導を纏わせて掴み、右手で握ったまま何度も何度も左拳を叩きつける。飛行タイプのポケモンに対して効果抜群なその攻撃の後、残るもう一匹は、膨大な質量を伴った平手打ちの一撃のもとに翼を叩き折り、地を這わせた。
 ゴルバットにはポピュラーに使われる相手の錯乱を誘う技、超音波を使う暇すら与える事はなかった。
「おい、ドゥーン……その怪我、今付けられたものだろう。痛くないのか?」
 肩口を浅く切り裂かれた跡。コリンと同じ赤い血液が流れるそれは如何にも痛々しい。
「私の傷など気にするな……私の強さはお前がよく分かっているはずだ。だいたい、こんなものはヤミラミに傷付けられたほうがよっぽど痛い」
「ふん、それはそれは、いい部下に恵まれたと言うことだな」
 せっかく心配してあげたのに、それをなんでもないように言われて、気分もバツも悪くなったコリンは精いっぱいの皮肉を飛ばす。
(やれやれ、喧嘩して体力を減らしている場合じゃないんだがな……いや、口喧嘩で済むだけいいほうか。こうして神経をすり減らすのも、時限の塔へ上りきるまでだし)
「問題ないならば行くぞ、ドゥーン」
 急き立てて、コリンはひたすらドゥーンを先導した。

「だいぶ上ってきたな……ここは安全なようだし、少し休もう」
 道中、引き千切られたゴルバットの肉をコリンは食べ歩き、それなりに腹は満ちている。だが、流石に歩き詰めの強行軍で、体はガタがきて、スタミナも底を尽きかけだ。虚ろな目をして顎を上げて歩きながら、ダンジョンの雑魚がいないという意味で安全を確保できる場所を見つけて、ようやくコリンは張りつめていた糸が切れた。
 バタリと地面にへたばっては、そのまま深い眠りに就きたいところだが、ドゥーンがそばにいてはそれも出来そうにない。重い瞼をこする気力もないほどの疲れだが、疲労ならば機動力に欠けるドゥーンに至ってはコリンよりもさらに深刻らしい。アグニとシデンを連れていく気持ちで歩いていたが、やはり足の遅い種族ゆえかコリンの歩みに合わせるのは相当大変らしく、気絶しているように寝入っている。
(それでも油断はできない……)
 浅い眠りの呼吸法を用いて、コリンは多くが草食のポケモンがそうするようにまどろむ様にして浅く眠る。警戒を常にとかない眠りは、体は休められても心を休めるにはひどく不向きだ。完全に眠ってしまわないように体の各所に力を込める必要も生じて、体のほうだって回復は遅くなる。そんな努力もむなしいほどに、ドゥーンからは殺気がないのがまた憎たらしい。
(驚くほど……静かだな。自分の呼吸と心臓の音が一番よく聞こえそうなほど……静かだ。どうしてこいつ……ドゥーンはこんなにも落ち着いていられるのだろうか? 裏切られたことで、何が敵かが分からなくなって……混乱している?)
 そんな事を考えても意味がなく、果てのないコリンの思案はいつしか殺気そのものを感知する事を忘れさせた。いつしか、その思案も意識を保てなくなったコリンは、踏み外すように深い眠りに落ちる。
 夢うつつの中でしまったと思いつつ起きた時でさえ、そこは天国でも何でもなく、ドゥーンと一緒にいる時限の塔の中間地点であった。ドゥーンは、静かに血の滴る肉を食みながらそこにいた。

「起きたか……」
「あぁ、よく眠れたよ」
 コリンは皮肉ってドゥーンへ言おうとしたのに、まるで感謝するように自然に言ってしまったことに自分自身で驚いていた。それを知ってか知らずか、億劫そうに体を浮かせたドゥーンは左腕を振ったり、掌の開閉を繰り返すなりして準備運動をしながら、コリンを見る。ドゥーンは裏切られたことに対する哀愁が漂う、どこを見ているのかもわからないような疲れた顔をしていた。
「頂上まであと少しだ……そしてそこに……トキ様はいる。なぁ、コリンよ……頂上に着いたら……お前はすぐに戦うつもりか?」
 半ばあきらめに近い口調でドゥーンが聞く、注意深く見なければわからない程度にコリンが頷いて見せた。
「すぐかどうかは分からんが……ちょっとでも危険な匂いがしたら、すぐその場で仕掛けるつもりだ」
 ドゥーンが首を軽く横に振る。さらに深みを増した哀愁と共に、切実な想いを投げかける。
「その前に……トキ様と話す時間を少し……くれないか? トキ様の真意を知りたいのだ」
 懇願する口調で、ドゥーンはコリンの肩をつかむ。倍以上に身長の違う相手にそうするために、ドゥーンはかなり前かがみで、いつも浮かんでいる胴体も地面すれすれに降りている。ただ、コリンの肩を掴む手の弱々しさが、彼の精神的な憔悴を表していた。
「ダメだ! お前がディアルガと話したら……気持ちがディアルガに傾く可能性が高い。それに、例の新しい腹心もいるかもしれない。そうなると三人対一人……俺の勝ち目は……例え足止め程度であっても無いに等しい」
 これだけは退けないと、コリンが声を荒げた。するとドゥーンは急に冷静になって、鼻で笑って見せた。小さな舌打ちがコリンの口から洩れる。
「フッ……少なくとも私は、新しい腹心と仲良くするつもりはないがな。……まぁいい。だったら、私も頂上ではお前と一緒には闘わん。
 お前がトキ様と戦い……敗れた後に、トキ様に聞いてみるまでだ」
(あぁ、そうか……共闘気分もここまでかな……)
 ここまでいがみ合っておきながら、意見が割れたのは驚く事にこれが初めてであった。そんな事をなんとなく考えて、コリンは意気消沈したため息を放つ。
「ふん……好きにしろ!」
 それでも、意気消沈したはずのその顔に何故か笑みが灯っていたのを、コリンは気が付く事が出来なかった。ドゥーンと一瞬でも仲良くなれた事が嬉しいと、知覚できないほど深いところでコリンは思っていたのだ。
 その二人の間に生まれた絆を証明するように、アグニとシデンを苦しめた道中の敵でさえも、コリンとドゥーンの前には問題にならなかった。殴り、切り裂き、絡ませ、へし折って、ほとんど無傷で退け続けた。二人の絶妙なコンビネーションは、対立しあうが故に相手のことを想い続けた事で生まれた連携という皮肉なモノから始まった。だが、その憎しみも今となっては段々と薄れている。

381:本陣 


「よし、ダンジョンを抜けたぞ。あそこに見えるのが頂上だ、コリン」
「わかった、行こう……」
 頂上へ辿り着き、二人は辺りを見回した。
(静か過ぎる……誰もいないのか?)
 闇のディアルガ、トキの禍々しい気配も呼吸音も全くしない。シデン達が訪れた時よりも大きく崩れているそこは、その見た目どおりの廃墟となって、時の歯車を納めるべき祭壇も崩れなくなっている。
 塔の頂上が空っぽであることも相まって、二度と訪れない主を想い、嘆いているかのように見える。
「誰も……いないな」
 拍子抜けしたコリンは腕の力を解いて、昂ぶった心を静めるように息を細く長く吐き出した。身の安全を確保できた安心はあるが、それとは対照的にシデン達に刺客が送り込まれるという不安が募って、コリンは静かな心臓に胸を当てた。
「妙だな……いつもならあそこにトキ様がおられるのだが……」
「何故、ディアルガがいない? ヤミラミはディアルガが最後の刺客を送ると言っていた……しかし、再び過去の世界へタイムスリップさせるには……膨大なパワーが必要なはずだ。
 そのパワーを蓄えるためにも、ディアルガはじっと動かず……時限の塔に居ると思ったんだが……」
 ドゥーンも、コリンの言葉に頷く。
「コリン……お前の推察は正しい。私もそう思う……確かに、そうなのだが……しかし、タイムスリップさせるだけなら……一応、他にも方法がある」
「タイムスリップさせる……他の方法だと? それはなん……いや、あったな……」
 オウム返しに聞き返して、コリンは心臓を昂ぶらせる。
「そう……タイムスリップさせるだけならな。コリン、お前もよく知っているやり方だ」
「俺が……よく知っているやり方……そうか」
 最悪の予感を脳裏に掠めさせた。およそ、考えうる最も不都合な予感。

「ま……まさか、時の回廊を……」
「そうだ。セレビィを探し出し、時の回廊を使えば……トキ様は回復を待たずとも、過去の世界に刺客を送れる。間違いない……トキ様は、シャロットを探し出し、捕まえるためにここを離れたのだ」
 コリンはしばし絶句した。想像が、脳裏をかすめるなんて生易しい表現では足りない。ありとあらゆる苦痛にさらされている映像が克明に浮かんでしまう。
 その想像を実現されたわけでもないのに、光景を目の当たりにしたかのように胃がせり上がり、言葉が詰まる。
「ディアルガがシャロットを捕まえに!? し、しかし……シャロットがそう簡単に捕まるとも思えないが……」
「確かにそうだ……と言うか、それどころかあの女はトキ様をあと一歩のところまで追い詰めていた。だが、その後逃げられて消息不明だ……確かに、ヤミラミ達が相手ならばお前が言うとおり、確かに簡単に捕まりはしないだろう。しかし、トキ様自身が乗り出してくるとなると話は別だ。それに新しい腹心……そいつの力量も気になる……」
 コリンは普段あまり波打たない静かな心臓が大きく脈打つのを感じる。胸を押さえつつ、息を荒立つのを感じながらもそれを止めることは叶わない。
「黒の森だ! 俺は黒の森の黒い湿地帯でいつもシャロットと会っていた!」
 声を張り上げて、コリンはすでに走り出していた。
「待て……早過ぎだぞ、少し休ませ……聞いてないか」
 それを追うドゥーンはやれやれと溜め息をつきながら、必死でその後ろ姿を追い続けた。コリンは後ろを走るドゥーンの存在も、アグニとシデンが成功した記念に刻んでおいた文字さえも気に留める事もなく、突き進む。
 足が遅いドゥーンは憂鬱になりながら後をついて行った。









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コメント 


お名前:
  • >2013-11-03 (日) 02:46:36
    大体はお察しの通りなのです。ダークライの件がなかったら、アグニを成長させるためにも消えたままにするのが神としての役割だったかと思います。
    シデンを復活させたのも、おそらくは苦渋の決断だったのでしょう。ソーダは……私ももうすこし救ってあげたい気持ちですw

    テオナナカトルは、その通りコリンたちの世界の未来ですね。すでにコリンたちの戦いは神話になっているようです
    ――リング 2013-11-22 (金) 00:37:02
  • ふむふむ、こうして読むともし原作のストーリーにダークライの話が無かったら、リングさんバージョンはシデンが復活しないまま終わってたのかなって思いますね。

    ソーダがちょっと可哀想でした。

    テオナナカトルって多分、コリンたちの世界の未来の話ですよね?
    ―― 2013-11-03 (日) 02:46:36
  • >狼さん
    どうも、お読みいただきありがとうございました。
    『共に歩む未来』のお話では、もう一つの結末というか、私としてはこちらのほうがよかったという結末を書いて見ました。
    ディアルガのセリフから察するに、本当の未来はシデンが生き返らない方であったという推測が自分の中でありましたので……。
    こんな長い話ですが、読んでいただきありがとうございました
    ――リング 2013-06-26 (水) 09:49:35
  • 時渡りの英雄読ませていただきました。私は探検隊(時)をプレイしたのでだいたいのことはわかるのですが時渡りの英雄ではゲームとは違ったおもしろさがありゲームではいまいちでていないところまで実際そんなストーリーがありそうな気がしたり(当たり前か)してとてもおもしろかったです。
    『ともに歩む未来』では[シデン]が蘇らないのかと思ったら[アグニ]の夢というおち、少しほっとしたり…。
    これからも頑張ってください。
    ―― ? 2013-06-17 (月) 21:31:32
  • 時渡りの英雄これから読んでいきたいと思っています。
    時渡りの英雄は10日ぐらいかかると思われます。
    読むのが楽しみです
    ―― ? 2013-05-25 (土) 02:02:01

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Last-modified: 2012-05-01 (火) 00:00:00
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