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大好きな友達とその姉。

/大好きな友達とその姉。

大好きな友達とその姉 

青浪
ついつい♂×♂。まあヤヴァイシーンは入れる・・・予定ないけど・・・予定と気が狂えば入れます。
追記、すいません。案の定予定と気が狂いました。変なシーンがあります。
キャラは無利益な奇跡推定無罪と一緒です。
ポケモン的な遺伝感を壊してるかも・・・


適当にキャラ紹介

ヴァイス・・・幼馴染のグラウのことが好きになってしまい、ある日とうとう・・・一応主人公。♂。アブソル。

グラウ・・・いつも何かしらの出来事に見舞われるヴァイスの幼馴染。♂。グラエナ。

シアン・・・ヴァイスの母親。一児の母。アブソル。

グリン・・・グラウの母親。2児の母。グラエナ。




炎天下・・・じりじりと地面を太陽が焦がし・・・水を求めて生物はさまよう・・・

「うう・・・暑い・・・」
汗にまみれる暗い灰色の体毛と赤い長髪をなびかせて、ゾロアークはトコトコと歩いてく。友達の家に。
「夏休みの真昼間に私を呼ぶなんて・・・いい度胸だよね・・・」
その口調は♀のようだが、そいつは間違いなく♂である。別に何かに身体を乗っ取られたりしているわけではない。
ゾロアークは家の前に着くと出来心から、ベトベトンの幻影を作りながらその家のチャイムを鳴らした。
ピンポーン・・・
「はい?」
まだまだ幼く、♂特有でない声の返事がきた。
「ロトだよ。」
またロトと名乗るゾロアークも自分の名前を名乗った。インターホンの向こうの声は、嬉しそうな声で、今行くよ、とだけ答えて切れた。
しばらくしないうちにタッタッタ、と軽い足音が次第に近づいてきた。ロトはニヤッとほくそ笑む。このベトベトンの幻影を見たらどんな反応をするのかな・・・と。
ガチャっとドアの開く音・・・そしてロトの前に現れたのは・・・退院して間もない、ぬいぐるみのように可愛く、幼い風貌のグラエナだった。
幼い風貌、というのはまだそのグラエナが年齢的に幼いというのもあるし、身体が成体よりもかなり小さいというのもある。
ロトは前々から疑問に思っていた。グラウが、こんなに幼いのにグラエナであることに。しかし、授業でバトルを重ねるうちに、その疑問は簡単に解消できた。要は結構強いのだ。
「シャドーボ・・・」
「まてまてまて!待って!」
問答無用にシャドーボールを放とうとする可愛いグラエナに、ロトは怯んで幻影を解いた。
「グラウぅ~・・・」
謝る代わりに、甘い声を出してみたロト。
「ヴァイスが待ってるよ。」
悪戯だ、と分かっていたのか、特に気にする気配もなく、グラウと呼ばれたまだまだ幼く、成熟とは程遠い感じの♂のグラエナは、ロトを家の中に案内した。
退院したとはいえ、まだ全快はしてないグラウにトコトコ付いていくロトは、すぐさま居間に着いた。一応、ここはロトの家でも、グラウの家でもない。
「よお!ロト!」
嬉しそうなグラウより少し大きいくらいのアブソル、ヴァイスがロトを迎えた。そう、ここはヴァイスの家である。
「ヴァイス!」
ロトも嬉しくて、ヴァイスの名を呼んだ。
ヴァイスはグラウと遊んでいたみたいで、あっちやこっちやにボードゲーム、トランプ、ゲーム機のコントローラーが散乱していた。
一応片付けようとしているみたいで、ヴァイスは散乱したボードゲームのこまを拾い集めて、グラウはあちこちに飛んだトランプを集めて数えている。
「なにしてたの?」
「ハードに遊んでた。」
ロトは疑問に思って聞いてみた。ヴァイスはテレビの台の下を覗きながら、答える。
いまいち意味がわからないロトだったけれど、いろんな遊び道具の飛散の具合から2匹が身体を使って激しく遊んでたのは容易に想像出来た。
「トランプぜんぶあったよ。」
「ありがと、グラウ。」
ヴァイスは子供をあやすように、グラウの頭を撫でた。赤い瞳を細めてグラウも嬉しそうにニコニコしてる。受け答えが妙に楽しそうな2匹に、ロトは少し妬いていた。
「兄弟みたいだよね、あんたたち。」
別にうらやましい、というわけではなかったけれど、今のグラウとヴァイスを見ていると仲のいい兄弟にも見えないことはない。
ただ、目の前の白い毛並みのポケモンと、黒と灰の毛並みのポケモンの楽しそうな様子を見ていれば、ロトは知らずのうちに心が落ち着きそうだった。
「片付け終わったか~?」
台所からの少し高い声とともに、黒と水色の毛並み、そして尻尾の星が特徴のルクシオが、ジュースを3つ、居間に持ってきた。
「全然終わってない。」
ヴァイスが答える。そのルクシオはテーブルの上にジュースを置いて、はぁ、とため息をつく。
「なんだ、ロト。もうきたのか。」
「ゲルプ・・・」
ゲルプというルクシオはロトを見つけると、少し会話を交わしてまた台所に戻っていった。グラウはトランプをケースにしまうと、コントローラーを4つ、用意している。
ヴァイスはボードゲームの箱を持って、居間から出ていくと、再びゲームソフトを自分の部屋から居間に持ってきた。
「グラウ?準備いい?」
「うん。」
どうやら自分はTVゲームの匹数合わせのために呼ばれたんだな、ロトはそう直感で思った。
「ロト~、お待たせ。」
ゲルプはジュースをロトに渡す。ありがと、と言って喉が渇いていたロトは一気に飲み干した。その様子を見たゲルプがロトに聞く。
「暑かった?外。」
「かなりね・・・もうこの毛並みじゃ暑くて暑くて。」
ロトの話に、ゲルプもヴァイスもグラウもだよね~、と、頷きながらみんな笑う。
「さささ、ゲームしよ。」
ヴァイスがみんなを促して、コントローラーを持った。みんなもコントローラーを持ってゲームを始める。最初は仲良くゲームをしていたが、次第にヒートアップしていく面々。
「ロトぉぉっ!日ごろの恨みぃぃぃ!」
「どういう意味よ!ゲルプぅぅ!」
「ああ!そこのアイテムとるなよぉ!グラウぅぅ!」
「いいじゃんかぁ!ヴァイスっ!」
まさしく一触即発の状態である。とくにゲルプとロトは普段は仲がいいように見えるけれど、学校のテストの度に、激しく競い合っている、けれどお互い頭は良くない。
「ぎゃっ!」
ゲルプが悲鳴を上げた。にらみ合いをしていたヴァイスとグラウはゲルプのほうを振り向く。
「ああ!ロトやめろって!」
ロトとゲルプはヒートアップしすぎて、ついに手を出してしまう。泣き顔のゲルプにのしかかる怒り狂うロト。
「なんで味方の私を殺すのよきさまぁぁぁ!」
仲間割れしちゃって、ゲームでも、現実でも殴りあうゲルプとロト。あわてて2匹を止めるグラウとヴァイス。
「はぁはぁ・・・なんで私を殺すのよ・・・」
「ぜぇぜぇ・・・なんとなくイラついたから・・・」
「なんですってぇぇ!」
一度火が付いたものを消すのはなかなか難しいようで。首を絞めたり、頭をバシバシ叩いたり、ヴァイスがいくら止めても、なかなかやめようとはしない。
「あのさ・・・けんかするなら・・・」
そうヴァイスが言うと、急におとなしくなるロト。やれやれ、と言った感じで、ヴァイスはグラウのほうを見た。
「なになに?」
視線に気づいたのか、グラウはそのつぶらな赤い瞳でじっとヴァイスを見つめている。はやるイケナイ気持ちを抑えつつ、ヴァイスは、これからどうしよう、と聞いた。
ロトとゲルプのけんかで、気まずさから沈黙が部屋を覆う。
「はあ・・・じゃあチーム戦でもしようか・・・」
ヴァイスはとりあえず、とグラウとゲルプ、ロトとヴァイス、にチームを分けてチーム戦をすることにした。
「罰ゲームは?」
当然、みたいな表情で聞いてくるロト。ゲルプはかなり嫌そうな顔をしている。
「え・・・罰ゲームは・・・どうしようかな・・・」
ふと、ヴァイスの目に、母親のシアンが使っているピンクのリボンが目に入ってきた。ヴァイスの頭に1つの案が浮かぶ。
「連敗で、女装っていうのは?」
その提案に、ロトはなぜか目をキラキラさせているし、ゲルプとグラウはさっきの比じゃないくらいの嫌な顔をしていた。
「まま、やってみようよ。」
ヴァイスとロトは無理やり、グラウとゲルプにゲームをさせた。もちろん勝つのは決まっていた。

「最悪だ・・・」
ゲルプの力のない声。グラウにいたってはもうリアクションすらない。あっという間だった。ロトとヴァイスが瞬殺で2連勝。
「さ。」
ヴァイスがグラウを、ロトがゲルプをそれぞれがっちりと身体を掴んで、傍に在った♀がつけるリボンを付けた。
「ゲルプ可愛い~・・・」
ロトの冷やかすような声に、ゲルプはうんざり、と言った顔をしている。ヴァイスは何度か考えて、グラウの右の耳元に、リボンを付けた。
「おお・・・」
ヴァイスは驚いた。グラウにリボンをつけてもサマになっていることに。愛らしいグレーの耳と、幼い顔つきのグラウには、まだまだ♂の要素は薄く、♀みたいに見えないこともない。
リボンがかなり似合っている。当のグラウは嫌そう、と言うよりは憂鬱そうにうつむいている。
「グラウはどうよ?」
ロトの声に、ヴァイスはグラウの身体をがっしり掴んで、ロトとゲルプのほうに顔を向けさせた。
「グラウ・・・」
驚いているのか、口をあんぐり開けてロトはじっとグラウに見入っている。ポトポトと、ロトの背後から何かが垂れる音がした。
「ゲルプ?」
ロトが振り向くと、顔を真っ赤にして鼻血を垂らしているゲルプがいた。
「ちょっ・・・ティッシュティッシュ!」
ヴァイスはあわててティッシュをロトに渡す。ロトはそのティッシュをゲルプの鼻に詰めて、ゲルプを寝かせた。
「興奮してんじゃん・・・」
ロトはため息をついて力なく言う。ヴァイスはグラウの顔をまたじっと見つめている。
「うーん・・・」
唸るようなヴァイスの声に気付いたのか、ロトもグラウをじっと見つめる。
「なんか・・・少年が女の子の振りをしたらこんな感じになるよね・・・」
ヴァイスもロトの言葉通りだと、思った。頬を赤らめて恥じらうその姿、そのグラウの肢体、どれをとっても幼い♂の姿だ。けれど、リボンを付けただけでも、かなり♀っぽく、しかも色っぽい。
「まあ、続けよっか。」
「そうだね。」
倒れているゲルプを横目に、またゲームをしようとするヴァイスとロト。
ぴんぽーん・・・チャイムが鳴った。
「誰だろう・・・ちょっと待ってて。」
ヴァイスは白い身体を駆り、すぐさま玄関へ向かう。その間も何回か、チャイムの鳴る音がした。
「今開けます・・・」
玄関の白いドアをガチャッと開けると、そこには見たことのあるヘルガーがいた。
「あれ・・・グラウの姉ちゃんですよね?」
グラウの父親はヘルガーだ。母親のグラエナの形質を受け継いだのがグラウで、父親のヘルガーの形質を受け継いだのが、ヴァイスの目の前にいるグラウの姉のアカネだ。
「そうだよ。弟いる?」
アカネの母親譲りの適当な喋りに、ヴァイスはいつもグラウが母親の性格に似なくてよかったな、と思っている。
「おーい・・・グラウ!」
ヴァイスがグラウを呼ぶと、トコトコと、ゆっくりグラウがやってきた。リボンを付けたままで。
「グラウ?おひ・・・」
リボンをつけた弟を目にして、アカネは少し戸惑った。
「グラウ・・・いつからそんな趣味が・・・」
「ち、違います。罰ゲームで・・・」
誤解されるのを恐れたヴァイスは、真実を話す。アカネはやっぱりね、と答えて、まじまじとグラウの顔を見つめる。
「やるならちゃんとやらないと・・・」
「え?」
怒られると思ったヴァイスはその言葉に耳を疑う。
「ちゃんとやらないとって。ちょっとグラウの身体逃げないように抑えつけといて!」
命令するアカネ。嫌な予感がしたらしくグラウはすでに逃げようとしていたが、間一髪でヴァイスとロトが抑えつけた。
「やめろって!・・・いやだぁっ!」
必死に四肢を動かして抵抗するグラウ。ヴァイスを攻撃しようにも、それは出来なかったし、無関係のロトならなおさらだった。それでも一縷の望みを託して必死に牙を立てたりする。
けれどロトとヴァイス、2匹がかりの前には、どれだけ抵抗しても無駄だった。無情にも締められる玄関のドア。居間に無理やり再び連れてこられるグラウ。
「やめて・・・」
潤む目で必死にロトとヴァイスに訴えるけれど、そのヴァイスは悪いな、と思いつつもアカネの怖さが身にしみてわかっていたので、それが出来なかった。
前に、一度グラウとアカネが大ゲンカしているシーンを目にしたのだが、まだ小さいポチエナだったグラウは、デルビルだったアカネに散々いたぶられていて、それは見るに堪えないものだった。
その場面がまだ少しトラウマとして、ヴァイスの心の中には残っている。

しばらくして玄関のドアが開いた。ロトがアカネを出迎えて、居間に連れてきた。アカネは黒い箱を持ってきている。
「なんですか?それ。」
「これは・・・女の子がおめかしするときに使う道具です。」
アカネはグラウの前に立つと、まじまじと顔を見つめている。グラウは必死にそっぽを向こうとするけれど、そのたびにアカネの前肢が顔を抑えつける。
「さて・・・ブラシで毛並みを整えようかな・・・」
黒い箱からブラシを取り出すアカネ。そのブラシは水色の柄に、よくある白く透明なプラスチックでできたものだった。
「いだいっ!」
いきなりアカネはブラシを背中の毛に入れて、ぐいぐい引っ張ったので、グラウは痛みを訴える。
「あー・・・そうそう。40度くらいのお湯汲んできて。」
じっと身体を抑えつけているヴァイスに命令するアカネ。すぐさま風呂場に向かって駆けだすヴァイス。ロトは相変わらずグラウの身体を抑えつけている。
「女の子はね・・・可愛い弟がいるとついつい女装とかさせたくなるのよ・・・」
ぼそっと呟くアカネに、ロトは笑顔で自分の過去を言おうと思った。
「私もそうだったので・・・」
ロトの口調が可笑しかったのか、アカネは少し笑う。ちょっとむっとするロトに、アカネはごめんごめんと笑いながら謝った。
「私は姉と妹がいるんです・・・それでも私に・・・♂の私に女装を強要してきて・・・」
ご愁傷さま、と笑顔で慰めるアカネに、ロトは少しびっくりした。こんな話をされたらどんな奴でも普通は嫌悪を表情ににじませるからだ。
ばたばたと音がして、ヴァイスが居間に戻ってきた。
「ありがとう。」
アカネはバシャバシャとブラシをお湯に浸けて、グラウの毛並みをゆっくりと整えていく。こんなことをされたことのないグラウには、不快でたまらなかった。
「グラウは野生児みたいだからね・・・ブラシで整えたらいいのに、いっつも寝ぐせが付いたままのボサボサの毛並みで学校行くから・・・」
優しい口調のアカネ。
「普段ってどんなのですか?」
自分の知らないグラウを知りたくなったヴァイスはついつい聞いてしまう。アカネも特に迷うことなく答える。
「普段っていうか、お風呂から出ても、適当に乾かして寝てるんだよね・・・ちゃんとやったら女の子みたいになれるのにね。」
「なりたくないよ。」
きっぱりと拒むグラウに、アカネはクスクス笑って、ブラシを動かし続ける。
歳相応の外見への無関心を窺わせるグラウの乱れていた毛並みは次第に整えられ、愛らしい顔と、隠されていたグラウの素養を、ヴァイスは次第に目にしていくことになった。
「こうすれば♀っぽくなるでしょ?」
グラウはいつもグラウの母親のグリンが好んでしているような毛並みに幼い顔が相俟って♀のような外見をしている。
「・・・かわいいな。」
ぼそっと呟くヴァイス。
「さ、爪見せて。」
言われてから隠そうとするグラウの行動を見抜いてたのか、見せて、と言う割にはすでにアカネはグラウの前肢を抑えていた。
「やめてよぉ・・・」
「なにもしないから~。」
アカネは嫌がるグラウに下らない嘘をついた。何もしないから、と言うくせにもうマニキュアを取り出している。
「爪も綺麗に見せないとねぇ~。」
そう言ってグラウの幼く、まだ鋭くなっていない柔らかい爪に、透明なマニキュアを塗っていくアカネ。シンナー臭が辺りに立ち込めるが、台所の換気扇が勝手に働いて、すぐに消えていった。
シンナー臭をこらえて、素早くグラウの爪をツヤの出るマニキュアで塗った。
「さて、まだ終わらないよ。」
「えぇっ・・・まだするの・・・」
次第にグラウの赤い瞳がうるうると潤み、嫌がってはいるがそれを止めることはグラウには出来ない。無論、ヴァイスにも。
それどころか、ヴァイスは大好きなグラウがどう変わっていくのか、そっちの方にとっても興味があった。アカネは黒い箱から、まつ毛を整えるときに使うビューラーを取り出す。
「目、閉じたらダメだよ。痛いし、時間かかるし。」
「やあああっ!」
幼子のような甲高い悲鳴を上げるグラウにアカネはビューラーをグラウの上瞼にそっと近づける。恐怖でぶるぶると震える顔をぐっと抑えて、まつ毛を挟んだビューラーを操作するアカネ。
「ふぅ・・・もう片方あるから。」
そう言ってもう放心状態で抵抗する気のないグラウに、もう片方のまつ毛もさっさと処理した。
「こうやったらまつ毛が上に開くから目がパッチリして見えるんだよね~・・・って聞いてないか。」
アカネは言葉とは裏腹に、あくまでも、事務的に、あからさまに楽しんでいる様子を見せることなくこなしてく。その作業ぶりはヴァイスを感心させた。
「さてと・・・あとはコロンをつけて、リボンをつけたら完成かな?」
ビューラーとブラシを片付けて、コロンを取り出すアカネ。シュッシュと軽く、グラウに吹きつけていく。
「くちゃい。」
コロンの香りなど、まだ幼いグラウには興味がなく、くさいくさい、とわめきたてる。
ばしっ・・・
「いだっ・・・」
「臭くないの!これが女の子がいっつも使うやつなの。」
厳しい口調で、グラウを軽く叩くアカネ。前肢にのこったコロンの香りをグラウのお腹や、四肢の毛に塗りつけて、アカネは満足そうな顔をした。
「これでリボンを付けて・・・と。はい、終わり!」
さっき付けていたリボンより可愛いデザインのリボンをアカネはグラウの耳と尻尾に付けて、終わらせた。
「こっち向いてごらんグラウ!」
さっきとは違って優しく語りかけるアカネ。グラウは、これが終わればすぐに元に戻るんだ、と泣きたい気持ちをこらえて、ヴァイス達のほうを向いた。
「あ・・・」
「え・・・」
ロトもヴァイスも驚きで声が出なかった。目の前にいるのは、確かにグラウではあるが・・・今のグラウはどこからどう見ても女の子だ・・・
いつもの幼さのあるつぶらな瞳とは少し違うパッチリとした瞳、整った♀のような毛並み、マニキュアの塗られた爪、幼い女の子が初めて親におめかししてもらった、そういう風にヴァイス達には見える。
潤む目で、うつむき加減でヴァイス達を見るグラウは、ヴァイスやロトからしてみれば、可愛い女の子が目を輝かせつつ、上目遣いで甘えてくるようにも見えた。
「ぶふぅっ!」
寝ていたはずのゲルプの何かを噴き出す音が聞こえて、ドサッとまた身体を崩す音が聞こえた。どうやらいつの間にか起きていたみたいだ。
「ありゃりゃ・・・すごい鼻血。」
再び床にポチョポチョと鼻血を垂らして気絶しているゲルプ。仕方ないなと、ヴァイスは雑巾を敷き詰めて、その上にゲルプを置いた。

「はやく元に戻してよぉっ!」
威嚇する姿勢を見せて、この恥ずかしい女装を解きたいグラウだったけれど、周りの目は極めて好奇に満ちていて、その願いだけがむなしく響く。
アカネとヴァイスとロトでグラウそっちのけで何やら話しあっている。
「可愛いね。外連れて行こうか。」
「いや~・・・気付かれるかな?」
ヴァイスもロトもアカネも笑顔でグラウを一瞬ちらっと見た。
「早く戻してよぉ!」
「ダメ。」
冷たくグラウに言い放つアカネ。グラウは拗ねて家に帰ろうとする。
「あ!グラウが逃げる!」
ヴァイスの叫び声とともに、玄関に行こうとしていたグラウはロトに身体を抑えつけられた。
「はなっ・・・離してよ!」
再び居間に引っ張られるグラウ。今度は逃げられないように、ロトとヴァイスとアカネ、その3匹がいる三角形の中心に運ばれた。
グラウは必死に身体をぶんぶん振ったり、四肢を振り回したりするけれど、それが却ってアカネの嗜虐心を煽る。
「やめてよぉ・・・」
「逃げるでしょ!?」
アカネは嫌な笑みを浮かべて、ヴァイスから借りた縄跳びで無理やりグラウの四肢を縛る。
「逃げないって言うなら、解いてあげてもいいよ。」
「ぃやだ・・・」
涙を目に浮かべて、これから何をされるのか、その恐怖でグラウはグレーの身体を震わせる。しばしの沈黙の間、ギシギシと縄が軋む音だけがが居間に響いた。
「あ!そうだ!デートしなさいよ。ヴァイスくん!」
アカネは笑顔でヴァイスの身体をポンポン、と軽く2,3回叩く。突然の提案で驚きがあったが、ヴァイスにとって、アカネの提案は嫌ではなかった。むしろ嬉しいものだった。
「あ!それいいな!ヴァイス、デートしてあげなよ。」
ロトも乗り気だ。表面上、恥ずかしいフリをしないとな、とヴァイスは思って少し嫌々な感じで答える。
「デート?デートって言っても・・・どこ行きゃいいのやら・・・」
とりあえずと、困ったような表情を浮かべているが、グラウには本心を見抜かれているみたいでヴァイスを潤む目でじっと睨んでいる。
「じゃあデートコース組んであげるよ!」
アカネとロトは嬉々として、言う。もはや、ヴァイスもカヤの外になってしまったようだ。じっくりと四肢を縛られて横たわるグラウを見つめるヴァイス。
頬は涙で濡れ、赤い瞳も潤む。目がいつも以上にパッチリと目立つせいか、その瞳はいつもの可愛さよりも、不自然さを醸し出していた。
今のグラウにも色っぽいところは確かにある。コロンの香り、その瞳、整った毛並み・・・けれど、いつもに比べると、ヴァイスがグラウに感じていた魅力というものは薄くなっている。
自然体のいつものグラウのほうがヴァイスにとってはよっぽど可愛く、そしてヴァイスを引き付ける要素を多く持っていた。
ヴァイスは力の抜けたグラウの黒い尻尾をそっと触った。
「やめっ・・・」
グラウは動けない身体をぴくぴく震わせて、ヴァイスにやめて、と涙を流して訴える。
「ごめん・・・」
その姿に罪悪感を感じたヴァイスは、素直に謝った。グラウは安心したようで、出ない言葉の代わりにと、ヴァイスに軽くリボンの付けられた尻尾を振る。
「グラウ・・・」
ヴァイスはグラウの気遣いが素直にうれしかった。ずっと一緒にいる幼馴染のグラウ。昔と今とじゃ好き、って言う言葉の意味も違うけれど・・・一緒にいて楽しいのはずっと変わらない。
微笑むヴァイスは再びそっとグラウの頭を優しく何度も撫でてみる。そんなヴァイスにグラウはさっきの悲しげな訴えとは違う、甘い声でやめろよ~、と照れくさそうに口元を綻ばせて言ってくれた。

「じゃあ、食事と海とお泊まりで決まりね!」
突然、アカネの元気な声が響き渡る。ロトがヴァイスを引っ張って、デートコースの説明を熱心にしている。
「だからね、夏と言えば海だよ海。ご飯食べて・・・海行って・・・そのあとヴァイスのウチでお泊まりしちゃえばいいんだよ。」
はぁ?と首をかしげるヴァイス。ロトはすごくうれしそう。
「大丈夫。ちゃんと責任もって私たちが後から付いていくから。」
アカネが任せて、と言わんばかりにヴァイスを説き伏せようとする。
「そういえば、今日お母さん帰ってこないんだった・・・だから1日中遊ぶ約束したのに・・・なんでこんなはめに・・・」
大好きな親友のグラウなのに、それを苦しませるような行動をとったことも含めた後悔を滲ませて呟くヴァイス。でもその呟きには誰も気付いていなかった。
ヴァイスはすっかり安易な気持ちで女装しよう、なんて言ったことを深く後悔している。それを横目にロトとアカネは嬉しそうに外に行く準備をしている。
ポンポン・・・アカネがヴァイスの肩を叩く。
「さぁ!誘わないと。」
「でも・・・」
嫌々ながらグラウの身体を2,3回触って振り向くのを待つヴァイス。
「なに?」
振り向いたグラウは、ヴァイスの瞳をじっと見つめる。
「解いたげるよ。」
優しい口調で、それでも罪悪感を感じながら、ヴァイスはグラウの四肢を拘束していた縄をあっという間に解く。
「ありがと・・・」
「ごめんグラウ・・・こんなことになって。」
ヴァイスの口ぶりで、これから何をしないといけないのかを把握できたグラウは、反吐が出そうなくらいそれが嫌だったが、感情を押し殺してヴァイスの頭を撫でる。
「俺はヴァイスの彼女なんでしょ?」
にこっと微笑むグラウを見て、ヴァイスは征服心というイケナイ気持ちと、守らないといけないという義務感の相反する感情が心の奥底から湧き出てきた。
「あたりまえじゃん。」
笑顔で答えるヴァイス。まるで本当の恋人のように軽くキスすると、2匹はお互いを見つめあう。
「おーい!遊んでないで早くしてよ。」
ロトに急かされると、グラウとヴァイスは仲良く進むスピードを合わせて玄関に向かっていく。早く解放してあげたい、その強い気持ちでヴァイスはグラウと接することにした。
玄関ではアカネとロトがにこにこと微笑んでいたが、ヴァイスには受け入れられない笑顔だった。
「はい、これ。デートコース。」
ヴァイスに地図と紙切れを渡すロト。睨んでやりたかったが、グラウに止められて、しぶしぶ受け取った。
「海・・・食事・・・お泊まり?」
「そうそう。グラウを泊めてあげてね?グラウ。今日は帰ってこなくていいよ。」
紙を見て驚くグラウとヴァイスに冷酷に言い切るアカネ。隣にいるグラウの目がいつになく憎悪に満ちているのを、ヴァイスは感じていた。
「さ、さ。行きなさいよ!」
ロトの声にはいはい、と鬱陶しいように答えると、グラウとヴァイスは家を出た。ヴァイスは嫌がるグラウを守るように常に隣に立つ。グラウもヴァイスに身を預けるように進んでいった。
地図を見ながら海への道を進んでいくヴァイス。グラウはただ付いていくだけ、と言った感じだ。
「無理しなくていいから。いつでも俺んちに帰れるから。」
覚悟を決めたヴァイスのセリフに、グラウもうん、と小さくうなずいてヴァイスの胸元に頭を優しく擦りつけた。
普段のヴァイスならば、この時点で襲っているかもしれない。なにしろ前科があるし。けれど、今のグラウの心境を考えれば、そんなことをする気が起きなかった。
グラウに染みついてるコロンの良い匂いも、頭に付けられたかわいいだけのデザインのリボンも、♂であるグラウ自身にとっては憎悪でしかないだろう・・・ヴァイスはそう思いながら何度かグラウの頭を撫でる。
「普段のグラウのほうが可愛いのにな。」
ふとヴァイスの本音がぽろっとこぼれる。その言葉にグラウは顔を真っ赤にしてうつむく。
「ごめん。」
嫌われたかな?と思ったヴァイスは謝ってみる。グラウは数回横に首を振った。ヴァイスはグラウの言葉から、グラウ自身の心の中に自己嫌悪があるのに気付いた。
「俺はさ、グラウが可愛いとか可愛くないとかじゃなくて、その性格が好きだよ。」
ヴァイスがついこぼした言葉にグラウは口元を綻ばせて、ヴァイスをじっと見つめる。それに応えるようにヴァイスはグラウの額に軽くキスをした。
仲良く寄り添うように進む2匹。2匹が目指す海はもうすぐだ。坂道を下って行けば、もうそこは海。
「もう海だね。」
「うん。」
すぐさま2匹の目の前に真っ青な海が広がる。歩みを止めて、海に見入るグラウ。
「早く来いよ~!」
たまらず海に駆けだしたヴァイスの声にこたえるように、グラウもヴァイスを追いかけて駆けだす。ヴァイスの白い身体は、グラウには砂浜に溶けていきそうなくらい、まぶしい。
「待ってって・・・」
息を切らせながら走るグラウに気付いたヴァイスは、走るのをやめて、グラウが追いつくのを待つことにした。
がばっ!
「きゃっ!」
グラウが追いつくと同時に、ヴァイスはグラウの身体を砂浜に押し倒した。砂に埋もれるグラウの黒い毛並み。ぱたぱたと四肢をグラウが動かせば、砂を巻き上げて砂煙が立つ。
「抵抗は無駄だぞ。」
ヴァイスは砂の感覚をくすぐったそうに受け止めているグラウに、面白がるように言った。グラウも身体をふるふる震わせて楽しそうだ。
その仰向けの楽しそうなグラウを抱くようにヴァイスはそのまま覆いかぶさって、じろじろと埋もれていくグラウの身体を舐めるように見つめる。
ばたばたと動いていくうちに、いつしかグラウはグレーの毛並みだけ地面に出して、黒い毛並みは全て埋もれていた。リボンのついた黒い尻尾だけが砂からひょっこりとでて、ぶらぶら揺れている。
「エロいな~。」
「そんなの・・・言わないでよ・・・」
ヴァイスはグラウの肢体にごくっと息をのんだ。グラウも恥ずかしそうに、そっぽ向いている。 
「きゃん!」
ビクン、と突然グラウの身体が震えた。ヴァイスは覆いかぶさったまま何事かと思って辺りを見渡すが、何もない。
「どうした?」
心配になって聞いてみるヴァイスに、グラウは力なくふらふらと前肢で後ろを指す。え?とヴァイスが振り向くと尻尾が濡れていた。
よく見ると尻尾が濡れているだけでなく、さっきまで濡れていなかった砂浜が湿って暗い色をしているし・・・目の前には・・・大きな波が・・・
バシャァァン!
「つべてぇぇぇ!」
ヴァイスが後ろを向いているところをダイレクトに冷たい波が襲う。
白い毛並みはすっかり海水に塗れ、せっかくのいいムードを・・・とヴァイスは思ったけれど、自分の身体の下のグラウを心配して身体を動かすと、すっかり波をかぶったであろうびしょ濡れのグラウを見る。
「けほけほ・・・」
体毛をびしょびしょに濡らして咳き込んでいるグラウに、ヴァイスは身体を起こして何度もグラウの身体を優しくさする。
「海水飲んだ?」
「うん・・・」
どうやら海水を飲んで、それが気持ち悪いみたいだ。ヴァイスはそっと唇を近づける。グラウも特に拒むような様子は見せなかったので、グラウと唇を重ねた。
「んっ・・・」
グラウからは、確かに塩の味がした。ヴァイスは辛そうにしているグラウの口を少し引っ張り、開いた口に、舌を挿れて口腔を綺麗にするようにぴちょぴちょと音を立てて塩味を舐め取る。
「んんっ・・・んっ・・・んふぅっ・・・」
ここまであっさりと受け入れるのは、よほど気持ちが悪いからなのか、それとも・・・と考えているヴァイスに、グラウは時折甘く、喘ぎ声をだす。グラウの嫌っていたコロンの香りはいつしか、海水の匂いに負けている。
結局ヴァイスが満足するまでの間ずっと、グラウはヴァイスの舌に口腔を貪りつくされていた。
「んふあ・・・」
ヴァイスがグラウの口腔から舌を抜きとると、その動きを物語る糸が、出来ていた。それを口を動かしてグラウが絶つと、ヴァイスはにっこりとほほ笑む。
「シャワー浴びよっか。」
「うん。」
すっかり目がうつろになったグラウに、ヴァイスは興奮を隠せなかったけれど、そこはグラウのために我慢することができた。
一方のグラウは精神的な疲れと砂と海水に塗れた身体をなんとか引きずって、ヴァイスを心配させまいと独りでシャワーまでトコトコと進んでいく。
「ちょ・・・大丈夫そうじゃ無いじゃん・・・」
「きゃうっ!」
けれどヴァイスは何度も砂地に足を取られて転倒するグラウを見て、いてもたってもいられなくなる。結局グラウはヴァイスに引っ張られて何とか砂浜から抜け出した。
「じゃあかけるから・・・」
そう言ってヴァイスはシャワーをゆっくりとグラウに浴びせる。グラウの身体からは砂が混じった水がちょろちょろと流れていく。
水を含んで次第に細くなっていくグラウの体毛をヴァイスは解きほぐすようにして砂を掻き出した。グラウは身体をふるふると震えさせてとても気持ちよさそうだ。
「もう帰ろうよ・・・俺がグラウのお姉ちゃんくらい何とかしてみせるから・・・」
悲壮さをうかがわせるグラウをヴァイスはどうにかして助けたかったが、それをするにはロトとアカネを何とか説得するしかなかった。
ヴァイスはグラウを飾っているリボンからも砂をこそぎ落とすと、自分たちを見ているであろうロトたちを目で探す。いなければ・・・すぐに逃げられるのだが。
「いた・・・」
シャワーのすぐそばの海小屋に、自分たちを監視しているロトを見つけた。ヴァイスは来い、と前肢で合図をするが、ロトとアカネは睨むばかりで、何もリアクションをしてこない。
「ちょっと待ってろ。」
ヴァイスはグラウにそう言い残すと、ロトたちのもとへ走っていった。濡れた体毛を心地よく乾かすグラウ。
ちらっとヴァイスが走っていった方向を見てみると今さっき走っていったはずなのに、落ち込んだ感じでヴァイスはすでに引き返してきている。
「ごめん・・・グラウ・・・」
申し訳なさそうに謝るヴァイスに、グラウはいいよ、と言って何度もその白い頭を撫でる。
「ありがと・・・グラウ・・・」
ヴァイスはにこっと笑うが、自分でもわからないうちに身体はふるふると軽く震えていた。グラウが自分の、自分がこのことを口実にロトやアカネに殴られたりしないために彼女の役をしてくれてること、それにヴァイスは気付く。
アカネを怒らせるとどうなるか、一方のグラウにはわかっていた。だからヴァイスを、自分の大好きな友達を嫌な目に遭わせたくはなかった。

「なに食べる?」
にこっと笑うグラウだけれど、その本心には何か冷たいものが渦巻いている、それにヴァイスは気付いていた。
「楽しもうよぉ!」
あくまで気丈に振舞うグラウ。ヴァイスはそうだな、と笑顔で応えてグラウの頬を前肢で優しく触る。時折見せるグラウの本心と行動の乖離。ヴァイスにはそれが、痛々しいものに見えて仕方なかった。
痛々しい、と言うのは、単に空気が読めていないとか、そういう行動を揶揄するようなものではない。
言うなればそれは血だ。目の前のポケモンが目をそむけたくなるような傷を負い、血を流すのをみせられている。そんな状況によく似ているのだ。
グラウが本心と行動を乖離させればさせるほど、ヴァイスにはグラウの心の叫びが聞こえてくる、そんな気がしてならない。
「さて、行こうか。」
一通りグラウの身体の乾いたのを確認すると、物思いにふけっていたヴァイスはグラウを連れて、海沿いから家の近くに唯一あるファストフード店へ向かった。
「グラウ・・・喋らなくていいぞ。」
いくらグラウが可愛い女の子に負けないくらいの容姿を今はやらされているとはいえ、喋ってしまえば、声で少し違和感を感じ取られてしまう。
それを防ぐためにヴァイスはグラウが必要としていることを、暗黙のうちに理解しようとした。グラウは何を見ているのか、たまに物憂げな視線を前に投げかける。
「着いたぞ。」
オレンジがコーポレートカラーのファストフード店は、普段ならカップルとか、若い学生で良くにぎわっている。ヴァイス達がそのお店に入って時計を見た時点では、すでに2時。
その時間のせいか、昼ご飯を、という客はいなく、客数自体も少なかった。
「いらっしゃいませ。」
愛想のいいザングースがにこっと笑って2匹を迎える。グラウを隠すようにヴァイスは店員の前に立って、グラウが好みそうなものと、自分が普段よく食べるものを注文した。
ヴァイスの行動に店員は特に違和感を感じなかったのか、それともずっと営業スマイルなのか、わからなかったけれど、すぐにヴァイスに注文した品を渡してくれた。
店内を奥に進んでいくヴァイスとグラウ。
「ここに座ろうか・・・」
ヴァイスは見えにくい位置にあるテーブルにグラウを乗っけると、自分もそこに乗っかる。
「いただきます。」
いつものようにグラウは前肢を合わせて食事の挨拶をする。ヴァイスにはグラウの目を閉じたときの感じと、リボンが可愛く映り、本当に♀なんじゃないかと一瞬錯覚した。
「食べるぞ・・・」
唐突に宣言すると、バクバク食べ始めるヴァイス。グラウは行儀悪いよ、と苦笑いをしたけれど、そのあとヴァイスらしいね、とだけ言ってほほ笑んだ。
みるみるヴァイスとグラウの前から無くなっていく食べ物。ヴァイスもグラウも相当疲れているのか、食事の時の会話はほとんどなかった。
「グラウ・・・お腹一杯になった?」
「うん!」
子供に聞くような口調でヴァイスが言うと、グラウもそれに楽しそうに答える。グラウのグレーと黒の毛並みは店のオレンジの内装にはかなり暗い色彩だったが、ヴァイスには輝いて見える。
それは単純に・・・好きだからじゃない・・・守りたいからだ・・・大好きな幼馴染を。

2匹は店を出た。店員のありがとうございました!という声が、店内に余韻を残して響き渡る。
あとは家に帰るだけだ、とグラウを背負って走り出すヴァイス。周りから見ればいいカップルに見えるだろう・・・グラウのお腹の毛がヴァイスの背中にたまに擦れて、それがとってもくすぐったい。
「もうすぐ家だぞ・・・」
グラウに言い聞かせるつもりでいたが、その言葉はヴァイス自身の胸にも大きく響く。グラウがここまで嫌な気持ちになっている・・・それをもう終らせるんだ・・・と。
自分の家を目の前にして、ロトとアカネが追いついてきた。
「はぁはぁ・・・お疲れ。」
息を切らせて満足そうに話すアカネ。ロトはもうくたくたで言葉も出ない。
「今日は・・・本当におつかれ・・・あとはお泊まりだね。」
嫌な笑みを浮かべるアカネに、ヴァイスはきっぱりと言い放つ。
「自分の弟が嫌な思いしてるのに、それをほっとけるのか?」
ヴァイスの言葉に、アカネは少しうつむいて元気をなくした。
「いや・・・嫌な思いをしてるのは知ってた。昔はよく遊んだの・・・私が男装して、家でくぅくぅ可愛く寝てたグラウに女装させて兄妹みたいにね。」
照れくさそうに言うアカネ。ヴァイスは少なからず衝撃を受ける。
「私はいっつもね・・・グラウに迷惑かけてばっかだけど・・・本当に良くできた仔だわ・・・だから、今日は大好きな幼馴染として、ちゃんと扱ってあげてね。」
見たことのないような笑顔でアカネはヴァイスに言う。ヴァイスも怒りも忘れるくらい照れくさくなってコクリ、とうなずいた。
けれど背中のグラウはとてもしんどそうだ・・・

ヴァイスはグラウを居間に連れ込むと、背中からおろした。グラウはぐったりと、床に伏せる。
「大丈夫?」
「ちょっと寝させて・・・」
グラウの声に、ちゃんと休みなよ、とヴァイスも笑顔で言う。ありがとう、と聞こえるか聞こえないかくらいの声でグラウはそのグレーと黒の毛並みの身体の力を抜いて、ゆっくりと床に沈めた。
「くぅくぅ・・・」
ヴァイスとグラウ・・・2匹っきりの居間。今日はシアンも帰ってこない。可愛い寝息だけが響いている。
「本当に可愛いな・・・食べちゃいたいくらい・・・」
ふと呟くヴァイス。聞かれていないかな?と何回かグラウの頬を突っつくけれど、グラウはううん、とすこし唸るだけ。ヴァイスは安心してグラウの元から離れた。
時計は3と4のちょうど間を指している。ヴァイスはグラウが起きて何か飲みたい時のために、と大きめのマグカップに、ジュースを・・・
「あれ?モモンのジュースがいつものところにないぞ・・・」
しばらく探すも、なかったようなので、ひとまず諦めて、居間に戻ったヴァイスも少し眠ることにする・・・

つんつん・・・ヴァイスは夢うつつの中で誰かに突っつかれた気がして、現実に戻された。
「起きた?」
可愛く声をかけたのは・・・耳に可愛らしいリボンを付けたままのグラウ。ヴァイスはにこっと笑って、起きたよ、と答えた。
時計を見るともう5時。ヴァイスもグラウもご飯を作らないといけない時間だ。
「もうこれいいでしょ?」
「ありがと・・・」
グラウの耳を飾っていたリボンをヴァイスが取ってあげると、グラウはとっても嬉しそうだ。それからヴァイスはグラウの身体を2,3回ポンポンと軽く叩いて、ご飯作るから、と言うと台所に向かった。
「なに作れたっけ・・・」
頭を抱えるヴァイスは、ふと調味料をいつも入れているところにモモンの絵柄の瓶を見つけた。
「なんだ・・・ここにジュースあったのか・・・誰だ・・・こんなとこに置いたのは・・・」
ぐちぐち言いながらヴァイスはさっき出したままの大きめのマグカップにそのジュースをなみなみと注いだ。
「グラウ!ジュースだよ!」
グラウものどが渇いていたみたいでヴァイスからジュースを受け取ると一気に飲み干した。元気なグラウを見て、ほっと安堵するヴァイス。
「じゃ、料理作るから。」
そう言ってヴァイスは笑顔のグラウを台所から遠ざけた。グラウが居間に戻ったのを確認してからヴァイスは台所にある木の実を漁り始める。
「モモンにオレン・・・甘いやつばっかりじゃん・・・あ、そうだお母さんが料理作ってくれてるって言ってたんだ・・・忘れてた・・・」
シアンはヴァイスにきちんと料理を作っていた。ヴァイスはいけね、と思って冷蔵庫からマトマのシチューとナンを取り出す。
「これで晩御飯は・・・」
”きゃぁん・・・”
安堵しかけたその瞬間、今から何やら悲鳴みたいな声が聞こえた。きゃぅぅ・・・とか時折甘い声も混じり、グラウに何かがあったということを如実に示していた。
「グラウ!」
あわてて居間に戻ると、グラウが前肢を頭にすりすりと擦りつけて何か苦しいのか身体をくねくね動かしている。
「グラウ!グラウ!」
ヴァイスはあわててグラウの傍に駆け寄って顔を見た。
「・・・」
グラウの顔は少し赤らんで、その可愛い瞳は虚ろながらヴァイスをしっかりと捉えた。
「きゃん!」
「ふあっ!」
唐突に、きゃん!と甘い声を出したグラウは可愛い舌を出して、ヴァイスの蒼い顔を今までにないくらいの勢いでぺろぺろと舐め始めた。
「やめっ!うぷっ!くすぐったいからっ!グラウっ!どうしたんだよ!」
くすぐったい感覚におかしくなりそうなヴァイスはとりあえずグラウを必死に止めて、台所に戻った。
「きゃん!きゃん!きゃぅ・・・」
寂しいのか、上手く動けず再び黒とグレーの身体を床に擦りつけているグラウ。ヴァイスは涎まみれのべとべとの顔で、さっきグラウに上げたジュースの瓶を見つめる。
「ええと・・・モモンの蒸留酒?酒じゃん!」
やばい・・・とヴァイスは思った。さっきグラウにあげたこのお酒、量は普通に500ml近くあった。落ち着こうと説明書を読みあげるヴァイス。
「このお酒は、モモンの実を熟成させて作ったリキュールをさらに蒸留することで果実の甘味だけを残してアルコール度数を45%にまで上げることが出来たお酒です・・・」
落ち着くどころか読めば読むほど頭が真っ白になっていくヴァイスは、とりあえず最後まで読んでみることに・・・
「このお酒は口当たりがよく、甘いのでアルコールに弱い方は特に注意してください。必ず水又はソーダ水で割るか、少量づつ飲んでください、急性アルコール中毒になることがあります・・・」
再び居間のグラウに視線を移す。
「きゃん!きゃん!きゃん!」
嬉しそうに身体を床に擦りつけてる・・・ヴァイスは頭を抱える・・・どうしよう・・・と。
「どうやったら元に戻るのかな・・・お水飲ませないと・・・」
さっきより大きなマグカップに水を大量に注ぎ込んで、居間のグラウに持っていくヴァイス。グラウは相変わらず狂ったように身体の右横を床に擦りつけて、甘い声を出している。
傍にいるヴァイスは、グラウの身体を仰向けにしてその口を強引に開けると水を無理やり飲ませる。ヴァイスの狙った通りにごきゅごきゅと喉を鳴らして水を飲むグラウ。けれど表情に変化はない。
「グラウ・・・落ち着いてくれ・・・」
祈るように言うけれど、グラウはそんなことはお構いなしに、今度はくぅぅん・・・と甲高い寂しそうな声を出す。
「くぅぅん・・・くぅぅん・・・」
「なんか欲しいのかな・・・まさか・・・」
これは自分の欲望だと、いつになく真面目なヴァイスは性欲を出来る限り抑え込もうとする。けれどグラウはいつまでも甲高い声を出すのをやめない。
「くぅぅん・・・くぅぅん・・・くぅぅん・・・」
「はぁ・・・そういえば、グラウの喘ぐ声ってこんなんだったなぁ・・・」
だめだだめだ、と淫猥な想像をするたびに頭を振って否定するヴァイス。ただひたすらグラウが鳴きやむのをまって・・・そして、言葉のやり取りができないのも、ヴァイスには辛い。
「くぅぅん・・・くぅぅん・・・」
だめだ・・・もうどうにもならない・・・ヴァイスは諦めにも似た何かを感じ始める。
「どうしよう・・・ご飯食べさせないと・・・でもこの状態じゃご飯食べるのもなぁ・・・ひとまず寝させないと・・・」
寝させようとしても、グラウもさっきまでヴァイスと一緒に寝ていた。体力を使わせれば・・・と考えるも、それはなかなか難しい。
「グラウ・・・何してても可愛いな・・・って可愛いように映る行動しかしないもんな・・・誰がやっても可愛く映ることしか・・・」
えーい!今の勢いなら何しても怒られないかな・・・とヴァイスも次第に思うようになっていく。と、すると目に飛び込むのはとてつもなく無防備なグラウ。
仰向けで全てを見える肢体を尻尾を振ってさらしている。けれど攻略するのは至難の業。正気を保っていればいいものの、今の酔った状態のグラウでは、何をしでかすかわからない。
「グラウ・・・」
くぅぅん・・・と鳴くグラウにゆっくりと身体を近づけるヴァイス。
「しよっか・・・」
「くぅぅん・・・」
覆いかぶさると、ヴァイスとグラウは再び唇を重ねる。グラウは受け入れる・・・というよりは抵抗する気がないだけみたいだ。ヴァイスはグラウの未熟なモノが見える位置に身体を重ねたまま動く。
グラウの口腔からはすこしアルコール特有の匂いがして、またヴァイスの鼻に広がっていく。
「んっ・・・ふぁぁ・・・」
いつもならヴァイスが舌をグラウの口腔に滑り込ませるのに、今はグラウが舌をヴァイスの口腔に入れている。こういうのもいいかな、とグラウに身をゆだねるヴァイス。
「んふぅ・・・んっ・・・んぁ・・・」
グラウの舌は、このグラエナという種に特有のすこしザラザラした感覚があって、それが貪るように口腔で暴れているというのは、どうにもくすぐったい。
すこし疲れたのか、グラウの舌の動きが鈍ったところで、ヴァイスは自分の舌を絡ませた。何度も濃密に唾液のやり取りをし、グラウもヴァイスも今までにないくらい喘ぐ。
「んっ・・・んふぁ・・・」
「ん・・・んぁぁ・・・んぅっ・・・」
お互いの口腔に唾液を注ぎ込む2匹だが、グラウはすこし疲れているのか、涎をぽちょぽちょと、力が抜けたように口横から垂らす。
ヴァイスはグラウの周りに付いているアルコールの匂いですこしクラクラしそうになるが、何とか濃密なキスをやり遂げる。
「ぷはっ・・・はぁはぁ・・・」
昼間、キスをした時と同じように、お互いの口と口の間には透明な糸がかかっていた。グラウはくすぐったそうに頭をぴくぴく動かしてその糸を絶つ。
顔を少し、ヴァイスはグラウから遠ざける。グレーの毛にうっすら赤らんだ頬と、少しうるんだ綺麗な瞳、これだけでもヴァイスを欲情させるには十分だ。
ヴァイスはゆっくりと、グラウのグレーの体毛を前肢でゆっくりまさぐっていく。グレーの体毛に隠された”それ”だがすぐに見つかった。
「きゃん!」
♀にしか必要ない・・・いや、今のグラウには必要な・・・胸、乳首をヴァイスはゆっくりと揉みしだいていく。いつものように痛そうな反応ではあるが、けれど声は甘く、誘っているようだ。
「きゃん!きゃん!きゃぁ!・・・」
グラウの乳首の突起を舌でなめたり、指でつまんで転がしたり、思い思いにいたぶるヴァイス。グラウは、はっはっ、と息を荒くし時折顔をゆがめては痛みと気持ちよさで首を左右に振る。
「イくまでやったげよ。」
嫌な笑みだな、と自分で思いつつも、その笑みを浮かべて、少し勃ちつつあるグラウのモノをちらっと見る。一方のヴァイスのモノはすでに大きくそそり立っている。
前肢を止めることなく、乳首ごと胸をひねったり、押しつぶすように摘まんで痛がらせてみたり、とヴァイスはいろいろ試行錯誤をしてみる。
「きゃぁん!きゃん!きゃん!・・・きゃぁぁ!」
指でいじってばかりいたので、グラウの乳首はすでに赤くなっていた。そこをヴァイスがいじらしく舐めると、痛みで沁みるのか、グラウは身体をぴくぴく震えさせて喘ぎ、悶える。
乳首を弄ばれているグラウの身体は時折毛を逆立たせたり、ぶるぶる体毛ごと身体を震わせたり、ヴァイスでも見たことのないくらいの感度を見せた。
「もういいかな・・・」
「きゅひゃぁ・・・」
ヴァイスはグラウの乳首から手を離す。グレーの毛並み越しに見える赤くうっ血したグラウの胸。少しやりすぎたかな、とヴァイスは思ったけれど、それよりも征服した満足感の方が強い。
泣いているのか、ひっくひっくとひきつけを起こしたグラウは顔をヴァイスから背けている。
「顔あげなよ。」
ヴァイスがそうグラウにせっつく。言われたままゆっくりと顔を上げるグラウ。耳は垂れ、その澄んだ赤い瞳はずっとうるうると潤み、無垢な子供が親に甘える時にするような上目遣いでヴァイスを見つめている。
マシュマロのような泣き顔は実年齢よりも相当幼く感じられ、グラエナに進化していなければまだ1桁台前半くらいの幼子の年齢にも普通に見えた。
「ぬぁぁぁ・・・煽ってんのかぁぁ!」
性欲より母性本能をくすぐられたヴァイスは首に巻きつくように前肢を回してグラウをぎゅっと強く抱く。かすかなコロンの香りのするグラウ。黒とグレーの体毛はヴァイスの白の前肢のコントラストを引き立てていた。
もふもふした体毛がヴァイスの前肢にあたってくすぐったく、けれどとても気持ちがいい。体温を分かち合うようにグラウもヴァイスに身体をくっつけて身をゆだねる。
ドクドクと、高鳴るお互いの鼓動も、はっきりと伝わった。そしてすっかり勃ったヴァイスのモノがぐいっとグラウの体毛と身体に食い込んでいるのも。
けれど、ヴァイスはそれを恥じたりしない。好きだから。一方のグラウのモノは、まだ浅くしか勃っていないが、ヴァイスの身体にはしっかりとその存在を示している、というよりヴァイスは意識せざるを得ない。
「くぅぅん・・・」
またグラウの甘い鳴き声。ヴァイスには何とも悩ましい。誘っているのか・・・単に酔って酩酊してるだけなのか・・・まあ、襲っちゃえば一緒だけど。
ニヤッと笑ってヴァイスはグラウにぐいぐいとモノを押しつけていく。ヴァイスのモノはグラウの体毛に当たってさらに快感を増させる。
「さて・・・」
立派にそそり立つモノを抑えて、ヴァイスはグラウの下腹部に目をやる。まだ浅くしか勃っていないグラウのモノ。グラウの黒い毛並みのうなじを何度か愛撫すると、ヴァイスはグラウを離す。
「一回やってみたかったんだよな・・・」
そう呟いてグラウのモノを咥える。まだ海水をちゃんと流し終えていなかったのか、すこし塩気があった。
「んふぅ・・・んぁっ・・・」
「きゅひゃぁ・・・きゅうう・・・」
初めて咥えたグラウのモノはかわいらしく、よくポルノビデオにあるような嫌悪を感じるようものでは決してなかった。可愛く喘ぐグラウを見て満足げに”奉仕”していくヴァイス。
「きゅひゃっ・・・きゃぅっ・・・きゅひゃぁぁっ!」
いつもと違う喘ぎ声に、多少違和感はあったけれど、どうにもグラウの舌が上手く回ってないみたいでヴァイスには気にならない。
仰向けのグラウは、しゃぶられるたびにグレーのお腹をぴくん、と震わせて快感から逃れようとしている。ぴちゃぴちゃと音を立てて、舌で扱くヴァイスだったが、その動きを突然止める。
「ふぁ・・・らめら・・・舌がつかれひゃ・・・」
舌が疲れて、うまく動かせなくなったのだ。求めてくるかな、とグラウの身体を見つめるヴァイスだったけれど、期待した反応はなかった。
「きゃぅぅん!」
先にギブアップしたヴァイスは結局、前肢で自分の涎に塗れたグラウのモノを掴んで、その薄くグレーに色づいた包皮をゆっくりと上下に動かす。涎と包皮が摩擦でじゅぷじゅぷという音を立て、喘ぎ声とともに居間に響く。
「きゃぁっ・・・きゃぁん!きゃぅん・・・」
綺麗なピンクが、包皮の中からあらわになると、そこにもヴァイスは唾液を少し垂らして、再び扱き始める。
「きゃぁん・・・きゃん!きゃん!きゃぁぁ!」
すっかり勃ったグラウのモノは、ヴァイスの手の中で存在感を増し、ますます淫猥なムードを漂わせていた。見計らったようにヴァイスはいったん扱くのをやめて、グラウのモノの先端をいじらしく指の腹で刺激していく。
「きゃん!きゃぁん!うきゃぁぁ・・・」
もう限界が近いのか、ひと触りしただけでもグラウはよく喘ぐ。沁み出てくる先走り液。ヴァイスは先走り液と唾液の混じるモノの包皮の先を掴んで、じゅぷじゅぷと扱き始める。
途端に喘ぐグラウの脳髄に電撃のような快感が襲った。その身体をぴくぴくと大きく痙攣させて、グラウのモノはびくんびくんと脈打ちながらどぴゅどぴゅっと白濁を放った。
「きゃぅっ!きゃぁぁぁっ!きゃぁん!きゅゃぁぁぁぁぁぁ・・・きゃぅ・・・きゃぅ・・・きゃぅぅ・・・」
快感の余韻か、まだ白濁を放ち、喘ぎ続けるグラウ。グラウのモノはべちょべちょとその白濁を自分のグレーのお腹によく目立つように吐き続けていく。
その光景を目にしていたヴァイスはグラウのモノを抑えている手で、グラウの白濁を手にとって満足げに舐めた。
白濁を自分のお腹に吐き終わるとグラウは力なくくてーっと床に肢体をくっつけている。酔っているのか、意識がすでにもうろうとしているのか、明確に嫌がったり恥ずかしがったりする動きはしていない。
ヴァイスはグラウのグレーのお腹に付いた白い精液を舐めまわすように見て、いやらしさを感じていた。
「さて、俺のもやってもらおうかな?」
そう言ってふふっと嫌な笑みを浮かべると、ヴァイスはもうはちきれそうなモノをグラウの目の前に見せつける。グラウは相変わらず頬を赤らめて、少し涎を口から垂らしている。
「これ、扱いてよ。」
とろん、と快感から抜け切れていない虚ろな赤い瞳をじっとヴァイスのモノに向けるグラウ。ヴァイスは急かすように言った後、ぷるぷるとモノを振ってみる。
「きゃん!」
業を煮やしてヴァイスは、グラウの蕾、アナルに後ろ脚を軽く当てた。グラウはしぶしぶ、と言った感じで前肢でヴァイスのものをゆっくりしごき始める。
いつも食事をするときにグラウが両方の前肢を合わせて挨拶をする、その動作のままヴァイスのモノを握っている。爪にはまだツヤのあるマニキュアが付いていたが、砂浜に行ったせいか、かなり削れ落ちていた。
「くっ・・・はぁっ・・・」
思った以上の快感の刺激に、前肢をグラウの顔の両脇で立てて耐えようとするヴァイス。すでに先走りがちゅぷちゅぷといやらしい音を立てている。
甘えたように耳をだらん、と可愛く垂らしているグラウ。前肢を嫌そうに動かしているけれど、ヴァイスには嫌そうに、というより可愛い、としか映っていない。
「くっ・・・ふぁぁぁぁっ・・・」
次第にヴァイスの頭の中は快感の波で、真っ白に洗われていく。
「うっ・・・あっ・・・ああっ・・・」
ヴァイスは身体の芯に快感が達しようとしていた。身体が火照り、もうはちきれんばかりに、モノも大きくなっている。
グラウの爪がヴァイスのモノの先端に軽く触れた刹那、ヴァイスの身体を大きな快感が貫き、びくびくと痙攣した。
「ふあっ・・・あぁぁぁぁ!・・・ぁぁぁ・・・ぁぁ・・・ぁぁぁ・・・」
モノの先端から放たれた白い粘液は、そのままグラウの顔や、首を白く染めていった。ヴァイスはただ耐えるだけだった。
「ふぁ・・・ふぁぁ・・・」
ようやく終わった快楽に、ヴァイスはようやく周りを見ることができた。
「グラウ・・・」
グラウはいつものつぶらな瞳で、じっとヴァイスを見ている。けれどそのグレーの顔にはヴァイスの白濁が付いているし、少し不快そうだ。
♂の匂いにすでに塗れているグラウを、満足げにヴァイスは舐めまわすように見る。
「きゅぅぅん・・・」
まだ甘えるような声を出すグラウ。また少し興奮し始めるヴァイス。
「そんなにやってほしい?」
もちろん、ヴァイスはそんなことを聞いているわけではない。今のグラウは、なぜか言葉をしゃべらないし、何か言っても鳴き声で答えるだけ。けれど、そんなグラウも、ヴァイスにはたまらなく可愛いいものだった。
「さて・・・いっつもみたいにやってあげようかな。」
ふふっと笑うと、まだモノを掴んでたグラウを振り払って、グラウの蕾・・・アナルがよく見えるところから、グラウの蕾の動きをじっと見る。
「ひくひくしてるね・・・そんなに欲しいかな・・・」
そう言って、ヴァイスはグラウの柔らかな蕾に指を挿れていく。
ずぶぶ・・・
「きゅひゃぁあ!」
「グラウのナカ、すっごくあったかいよ・・・って聞いてないか。」
決して慣れることない感覚に、グラウは幼く驚いた声を出す。けれどヴァイスは構うことなくずぶずぶと指を挿れ続ける。
アルコールのせいか力の入っていないグラウの蕾は、あっさりと奥までヴァイスの指を呑み込んだ。身体をふるふる震わせて、その刺激にずっと耐え続けるグラウ。
「きゅぅぅっ・・・」
「だめだよ~。ちゃんとほぐさないと痛いからね~。」
時折痛そうに身体を悶えさせるグラウを、子供をあやすようにヴァイスは尻尾を触って諭す。それでも指の動きを休めることはない。
これから挿れている指よりももっと太いものを挿れるのに、と、指をヴァイスは蕾を押し広げるようにぐいぐい動かす。腸壁に何度か当たるが、そのたびにグラウはぴくっと震えた。
「きゅあぁぁぁ!」
突然身体をぶるっと震えさせて喘ぎ声を出したグラウ。
「ここかな?」
ヴァイスはそのポイントを何度か突いてみる。
「きゃぅっ!きゅぁぁ!きゃぁぁっ!」
感じるポイントを突かれる、そのたびに甘い声を出して、ヴァイスに篭絡されていくグラウ。
「ふふっ・・・そんなに気持ちいいんだね・・・」
言葉を発しないのをいいことに、ヴァイスは普段言えないような言葉を次々にぶつけた。気付けばグラウは涎をぽたぽた垂らして、はしたない格好をさらしている。
その肢体に満足したヴァイスはまたそのポイントを指で正確に突いていく。
「くぅぅ・・・くぅん!きゅぁっ!・・・きゃぅぅっ!」
「またちんちんおっきくなってんじゃん・・・」
グラウは未熟なモノを再び大きく勃たたせて、快感に身を悶えさせる。ヴァイスはイかせてやろうと、指の動きを速めてそのポイントを刺激する回数を多くした。
ちゅぷちゅぷと腸液と指の摩擦する音が居間に響く。言葉を喋りはしないものの、喘ぎ声は出し続けるグラウ。
「きゃぅん!きゃん!きゅひゃぁっ!きゃぅん!」
指が、蕾を犯していくのに合わせるようにグラウのモノは大きくなっていく。グラウのモノは透明な先走り液をちゅちゅっと噴き出して、もう限界が近いのを、ヴァイスに悟らせた。
「ようし・・・」
「きゃぅ!きゃん!きゃぅっ!きゅぁぁぁぁぁ!・・・きゃぅぅ・・・きゃっ・・・きゃぅぅん・・・」
ヴァイスが、最後の力を入れてグラウの蕾を突くと、悲鳴に近い喘ぎ声を出したグラウはびくんびくん、と身体を大きく痙攣させて、快楽に少し身体を浮かせた後、またすぐに身体を沈めた。
脈打つグラウのモノの先端からはさっきの比じゃない量の白濁をどぴゅどぴゅと再び吐きだして、元気よくぶるんぶるんと震える。
「きゃぅぅ・・・きゃぅん・・・きゃぁぁ・・・」
まだ喘ぐグラウ。よっぽど性的快感が大きかったのか、ぴくぴく震えるモノから吐きだされる白い粘液はなかなか止まらず、グラウのお腹の白濁の範囲をますます広げていく。
もう限界、みたいな肢体を力なくさらすグラウをヴァイスは心配はするけれど、それよりも自分の欲求のほうがやはり勝ってしまう。
「エロいな・・・」
「きゃぅ!」
ヴァイスは指を引き抜くと、案の定大きくなっていた自分のモノをゆっくりとあてがう。
ずぶぶ・・・
「ぎゃぅぅ・・・」
さっき挿れられた指より1回り以上大きなヴァイスのモノは痛いらしく、グラウは小さくうめき声をあげた。
「我慢してって。」
無理な注文だと思ったけれど、ヴァイスは一度入った自分のモノをどんどんグラウの蕾に挿しこんでいく。ぐいぐいと挿れられる感覚に、グラウは身体を何度も振るけれど、力が入っていなく、ほとんど無駄だった。
「全然力入ってないけど、もう慣れたの?」
ヴァイスは茶化すように聞いてみるけれど、やっぱり反応はない。蕾の柔肉を掻きわけるように、モノを進めていくヴァイス。グラウはそのたびに身体をプルプル震わせて、じっと耐えているようだ。
「きゃん!」
「おお・・・」
感じるポイントを突いたせいか、甘い声を出したグラウに、ヴァイスは嬉しくなって腰の動きを一度止める。気付けば、ヴァイスのモノはすでに根元近くまですっぽりと呑み込まれていた。
グラウの柔肉の締め付けと動きが、ヴァイスの快感を増していく。
「じゃ、動かすから。」
「くぅ・・・」
痛くないようにゆっくりと腰を動かすヴァイス。それでもグラウの感じるポイントだけは正確に突く。ちゅぷちゅぷと腸液と、モノの摩擦音が心地よく響く。
「きゃぅ・・・きゃぅ・・・くぅぅっ!」
次第に腰の動きを速めていくヴァイス。グラウの身体はただその動きに合わせて、動く。
「ああ・・・動いたらダメじゃん。」
「きゃぅぅ・・・」
グラウの前肢の付け根を抑えて、ヴァイスはグラウの身体が動かないように固定した。力なく喘ぐだけのグラウは息も荒く、かなり疲労がたまっているようだ。
またリズムよく腰を動かすヴァイス。
「くぅっくぅっくぅぅっ・・・」
喘ぐ声も次第に小さくなり、もう元気がないのかな?とヴァイスは焦って腰の動きをどんどん速めていった。焦りと快楽で、ヴァイスの思考はもうパニック寸前。
「ふぁぁ・・・もう出る・・・」
「きゃぅっ・・・きゃぅぅ・・・」
脳髄を焦がす快楽に、ヴァイスは耐えられなくなっていく。
「くぁぁっ・・・はぁはぁはぁ・・・」
「くぅぅん・・・きゅぁぁ・・・きゃぁぁ・・・」
ヴァイスは身体をぴくぴくと痙攣させて、もう元気のないグラウに白濁を放った。白濁を感じるようにグラウも喘いで、身体をぴくぴく震えさせる。
白濁はヴァイスの予想以上に時間をかけてグラウの蕾を犯していく。その締め付けも白濁を蕾の外へ追い出そうと動き、ヴァイスのモノを刺激し続ける。
「ふあぁぁ・・・」
ようやく快感がおさまったヴァイスは、腰を動かすのをやめて、しばらく繋がったままグラウの身体に抱きつく。グラウのお腹の白濁が、ヴァイスにも付いた。
「グラウ・・・」
「きゅぁぁ・・・」
息が荒く、虚ろな瞳で天井を見ているグラウに、ヴァイスは申し訳ないな、と思って何度か頭を撫でた。グラウは普段と違う高い声を出して、なんとか虚ろな意識を引き留めている、そんな風にヴァイスは感じられた。
グラウの瞳は光がないように・・・もうすっかり力を使い果たしたように・・・けれど意識を離すまいと・・・。
「くぅぅ・・・」
ヴァイスはグラウの胸に耳を当ててみるが、ただバクバクと高鳴るものは生命の鼓動と言うよりは、単に生命活動を維持させている、そんな風に聞こえた。
「早く身体洗ってあげるか・・・」
じゅぷぷっと音を立ててヴァイスはグラウの蕾から白濁がべっとり付いたモノを引き抜いた。今までの疲労からか、ヴァイスも思ったようには動けない。
栓がなくなったグラウの蕾からはぷくぷくと白い粘液を噴き出している。それを見たヴァイスはまた心の底から嫌悪すべき感情が湧出する。
「くっそ・・・」
今、ヴァイスは悔しいから声を出したわけではない。またモノが勃ち始めたのだ。どれだけグラウが嫌な思いをしてるのがわかっていても、ヴァイスは憎むべき欲求を抑えきれない。
醜い欲求にかられながら、ヴァイスはグラウの白い粘液でべとべとになったお腹を何度か撫でた。そして大きくなったモノをポトポトと白濁の滴る蕾へ再びあてがう。
「ひぅっ・・・」
挿れた瞬間、小さな声を出したグラウだったけれど、それ以上の声は出せずヴァイスの欲望を逆らえずに蕾から呑み込んでいく。
じゅぶじゅぶと白濁の潤滑によってグラウの蕾の柔肉をモノ・・・というより汚らわしい楔で奥にまで進めていくヴァイス。
「っぅ・・・」
「ふふっ・・・」
腰を再び動かし始めるヴァイス。その醜い欲望を身体に受け続けるグラウ。ヴァイスには、もはや理性はなかった。ただ、欲求を満たしたいだけだった。
「ぅっ・・・ぅっ・・・ぅっ・・・」
突き続けるたびに、声にならない声で喘ぐグラウ。そのグラウのモノは再び勃っていた。これ以上すれば、グラウの体力が尽きるのは明白。
でも、どうしてもヴァイスにはそれを止めることはできなかった。じゅぷじゅぷと気味のいい音を立ててずっと突き続ける。さすがに、さっきよりも、目指している快楽は遠い。
蕾の周りの白濁は泡を立てて、周りのグレーの体毛と黒の体毛のコントラストを侵していく。
「ぅぅっ・・・ぅぅっ・・・ぅぅっ・・・」
ヴァイスは狂いそうだった。今日1日中ずっと自分が好きになったグラウの乱れた姿を見続けて・・・女装・・・束縛・・・
「ふぁっ・・・もうでる・・・」
快楽が、と言う意味でも、体力が、という意味でも限界が近いヴァイスは、とっさに勃っているグラウのモノを掴んで扱き始める。
ちゅぷちゅぷと淫猥な音を立てさせて、グラウは果てた。
「ぅぅぁ・・・ぅぁ・・・ぅぅぁ・・・!・・・ぅぁ・・・ぅぁぁ・・・ぅぁぁ・・・」
身体がぴくぴく痙攣して、モノから白濁を吐きだしたとたん、喘いでいたグラウは一切の反応を見せなくなった。文字通り、果てたのだ。
満足したヴァイスは、グラウのモノから手を離して、快楽の絶頂をグラウの蕾に打ち付けた。
「ふぁぁ・・・ぁぁぁぁ!・・・はぁはぁはぁ・・・」
グラウのナカを白濁で満たすと、ヴァイスは勢いなくずぷっとモノを引き抜いた。蕾からまたぷくぷくと白濁を垂らし続けるグラウを見て、ヴァイスはようやく正気に戻ることができた。
「グラウ!グラウ!ごめん!」
あわてて傍に寄り添うけれど、♂の匂いに塗れたグラウは目を閉じて、すぅすぅと静かに呼吸をしているだけだ。途端に罪悪感にさいなまれるヴァイス。
「グラウ!グラウ!」
何度か呼び掛けてはみるけれど、グラウは気絶しているのか、眠っているのか、知識のないヴァイスには判断のしようがなかった。
床にもポトポトと白濁を落とすグラウを何とか風呂場に運ぼうと思い、ヴァイスはグラウを背負う。ときおり背中に水気が滴るのを感じたが、ヴァイスは気にせず風呂場へと運ぶ。
「グラウ・・・流すからね・・・」
そう言うとシャワーと石鹸とを使って、グラウの身体を穢している白い粘液とその乾いた跡を落としていくヴァイス。重度の疲労からなかなか上手くいかないが、それでも悔いるように懸命にグラウの身体を綺麗にしていく。
一通り綺麗になったところで、体力的な限界を迎えたヴァイスはグラウに覆いかぶさって眠ろうとする。
「だめだ・・・」
眠らないようにシャワーのつまみを回して、温水を身体にかけ続けるけれど、どうしても疲労に打ち勝てず、そのまま意識を失った。


「んっ・・・ふぁぁ・・・」
朝の光で目を覚ましたヴァイスは、自分の身体の下敷きにしているグラウがじっと自分を見つめていることに気付いた。温かいシャワーはまだヴァイスの身体を打ち続けている。
「ご、ごめ・・・」
はっと全てを思い出して、謝るヴァイスにグラウは赤い瞳を嬉しそうに細める。
「ありがと・・・ここまで運んでくれたんでしょ?」
「え・・・」
戸惑うヴァイス。グラウは明らかに昨日のことを覚えているような様子はなかった。
「え・・・いや・・・違うんだ・・・」
「へ?」
純真でまっすぐな瞳にじっと捉えられているヴァイスは、どうしても昨日のことを言うことができなかった。
「昨日さ・・・あの後、遊んでてさ・・・そしたらもう疲れて疲れて・・・」
とっさの嘘がとても苦しい。それでもグラウはヴァイスの言う虚構を信じたようだ。
「憶えてなくて・・・昨日ヴァイスがジュースくれたとこまではちゃんと覚えてるんだけどさ。」
えへへ、と照れくさそうに言うグラウ。
「い・・いや・・・」
ヴァイスは涙が止まらなくなった。ぽろぽろと涙を流すヴァイスをそっと撫でるグラウ。
「なんで泣くの?俺なんかしたの?」
「ちがうんだよぉぉっ!」
びっくりしてグラウの表情は一瞬、硬直した。けれどすぐにいつもの可愛い表情に戻って、ヴァイスを優しい瞳で見つめる。
「ご、ごめ・・・ぐらう・・・おれ・・・そんな・・・」
言葉が出ないヴァイスは、ひきつけを起こしながら、何とか涙を止めた。
「ご飯食べようよ。」
ヴァイスの身体を軽く叩くグラウ。にこにこと純粋無垢なほほ笑みをヴァイスにずっと向けている。ヴァイスはコクリ、と軽くうなずいてグラウの上から退いた。
「動ける?ずっと下敷きにしてたからしんどいでしょ?」
そのヴァイスの問いにグラウは四肢をパタパタ動かす。けれど後ろ脚は相変わらず上手く動いていない。前も・・・禁忌を犯してグラウを襲った時もそうだった。
「台所行こう。」
グラウをよっ、という声を出して背負うと、洗面所に置いて、タオルで拭いていく。
「ちょっと待っててね。シャワー止めてくる。」
まだすこし濡れているグラウを、タオルにコロコロ転がして、風呂場に再び入るヴァイス。シャワーを止めるとふと小さな赤いリボンが目に入った。
「これ・・・」
それは昨日、グラウの尻尾に付けられていたものだった。白い粘液が乾いて、シミになっている。ヴァイスはそのリボンを隠すように洗面所のゴミ箱に捨てた。
「さ、ご飯食べよう。」
グラウの身体が乾いたのを確認すると、ヴァイスはクンクンと匂いを嗅いだ。石鹸の匂いしかせず、それに安心すると、またヴァイスはグラウを背負って居間に向かう。
居間は、匂いは確かにほとんどなかったけれど、まだヴァイスにはフラッシュバックとして昨日のことが甦る。
冷蔵庫にあるシチューを温めて、ナンとともにグラウの前に差し出す。
「さ、食べよう。」
「いただきます。」
グラウは相変わらず食事をするときの挨拶を欠かさない。前肢を可愛く合わせて、食事の挨拶をした。ヴァイスはそれを見て、やっぱり、と自分のしたことの重さに苛まれる。
「おいひい・・・むしゃむしゃ・・・」
それでも心境を悟られたくないヴァイスはいつものようにがつがつと食べ始めた。その様子を見て傍でニコニコほほ笑むグラウを、ヴァイスはそっとその頭を撫でる。
「ごちそうさま・・・」
「うまかった・・・」
ヴァイスはそう言って空になった器を台所に持っていく。
「そういえばさ、シアンさんっていつ帰ってくるの?」
居間にいるグラウの質問に、ヴァイスは居間に戻るがてら、答える。
「ええと・・・今日の夕方。」
「じゃあさ、それまで遊ぼうよ。」
嬉しそうなグラウを見て、ヴァイスはうん、と小さくうなずく。
「何して遊ぶ?」
「トランプかな・・・」
そう言ってグラウは、昨日片付けてなかったおもちゃの山から、トランプを取り出す。
「今日は昨日みたいに神経衰弱して暴れないでよ。」
もうやらないでよ、と、静かに忠告するグラウに、ごめんごめん、と嬉しそうに答えるヴァイス。グラウとヴァイスはまたトランプを並べてく。
ヴァイスは、後ろめたい気持ちは消えなくても、せめてグラウと過ごす時間を、グラウにとって幸せであってほしい、と願うことだけはできる、そう強く思った。
「じゃあやるよ。」
「うっし・・・」
また2匹は、いつものように遊び始める・・・


五日後。
「やめてよ!姉ちゃん!」
どたどたという音とともに、グラウの声が家じゅうに響く。
「アカネ!やめなさい!」
グリンの声も響く。まだどたばたという音がしている。そのグラウの家の前にいるヴァイス。聞こえてくるにぎやかな音に終始苦笑いしている。グラウは、結局あの日の夜の出来事を覚えていなかった。
5日経った今でも毎日ヴァイスと遊んでいる。ヴァイスは不安と、偽りの安堵に包まれながら、毎日を過ごしていた。
「あの~・・・」
誰かに声をかけられたヴァイスは声のする方向を振り向いた。
「はい?」
そこにはヴァイスと同い年くらいのリーフィアがいた。
「私、隣に引っ越してきたんですけど・・・挨拶を・・・」
「あ・・・そうなんですか、はじめまして。俺もそこに住んでるんですよ。」
ヴァイスの言葉を聞いた途端に、そのリーフィアは目を輝かせる。
「あ、私アオイっていいます。独り暮らししてるんですよ~。」
え?とヴァイスは耳を疑う。どう見ても目の前にいるアオイというリーフィアは自分と同じくらいの年。独り暮らし、と言うには少し不自然なくらい若い。よっぽどお金持ちなのか・・・
ギィ・・・不意にグラウの家のドアが開いて、ぬいぐるみみたいな格好のグラウが現れた。
「グラウ・・・どしたの?」
ヴァイスの目の前にいるグラウは、綺麗に、というかまた女装させられていて、しかも前よりひどい。花の付いたヘアゴムやら、黄色とピンクのシュシュやら、をグレーと黒の毛並みのあちこちに付けられている。
「女の子?」
不意にアオイが言う。ヴァイスがいやいや、と言う前にアオイはグラウに抱きついた。
「かわいい~!お友達になってよ!ねぇねぇ!お名前は?」
やたらに厚かましい感じのするアオイだったけれど、ヴァイスには、特に気にも留めてなかった。むしろ、グラウに抱きついてることのほうが気になっていた。そのグラウははぁ、とため息をついている。
「あ!グラウ!いたいた・・・」
アカネが玄関からグラウを見つけて出てきた。
「ちょっと!誰?お友達?」
「かわい~・・・」
ギューっと抱きついてるアオイは、アカネの声に気付いて、ようやくグラウから離れた。
「失礼しました。私はアオイって言います。今度隣に引っ越してきました。これ、お気に召すかわかりませんけど・・・どうぞ。」
そう言って、女装させられているグラウに、大きな紙袋を渡した。
「姉妹なんですか?」
アオイが目を輝かせて言うけれど、アカネは困ったような顔をした。
「ええとね・・・弟です・・・」
「え!?」
アオイの驚きようは尋常ではなかった。けれど、グラウをじっと見つめて、頭を何度か撫でる。撫でられた途端、グラウの耳がふにゃっと寝てしまう。
「やっぱり・・・相変わらずだもんね・・・」
ふとアオイは呟いた。グラウはそれを聞いてはいたけれど、気にも留めてない。アカネは悪戯したグラウの姿を初対面のアオイに見られて、嫌だったのか、少し表情が暗くなった。
「ごめん・・・グラウ・・・もうこれっきりだからさ・・・1日中その格好でいてくれない?」
「いやだ!」
アカネの提案を、案の定、拒むグラウ。
「グラウくん!遊ぼうよ。」
アオイは笑顔でグラウの前肢を掴む。グラウも少し笑顔になって、アオイを見つめた。
「いいけど・・・この格好をどうにかしたいからちょっと待ってて。」
ヴァイスにはなぜ、グラウがこんなにアオイを早く受け入れられているのか、不思議でならなかった。家の奥へと消えていったグラウ。アカネとアオイは仲良くお話をしている。ヴァイスは独りぼっち。
グリンとグラウの話す声が少しだけ聞こえて、グリンが玄関から現れた。
「あ、アオイちゃんだっけ。これからよろしくね。」
「よろしくおねがいします!」
うれしそうに笑顔で答えるアオイ。なんでだろうか、アオイはすでにグリン一家に上手く溶け込んでいる。少し寂しいヴァイスは、グラウが出てくるのをじっと待つ。
「ああ・・・寂しいなぁ・・・」


焦げ付くような晴天の下、ヴァイスは白い毛並みに汗を滴らせて、大好きな幼馴染を待っていた・・・




なんとか終わりました・・・なんか今回のオチは極めて微妙ですね。
アオイの正体は、まぁ言わずもがなですけれど、グラウのキャラをよくよく考えるとかなりドライですよね。友達にはまずいないタイプです。ヴァイスの悪いところを強調してばかりですけれど、グラウも悪い点がないわけではないですよね。
最近♂×♂の話ばかりで、違う趣向の話も作ってはいますが、一進一退で、なかなか進んでいません。
悩ましい限りです。



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Last-modified: 2010-08-15 (日) 00:00:00
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