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推定無罪

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推定無罪 

♂×♂です。久しぶりに作りました。
青浪



夏真っ盛り・・・太陽が教室の窓から容赦なく光を差し込む。
「うああぁぁん!やめっ!やめろよぉ!ヴァイスっ!」
声変わりのないような可愛い悲鳴が響く。だが、周囲の反応はいたってドライだ。だれもそれを気にする気配がない。
「あぁん?だめだ。」
そのグラエナの黒とグレーの身体は白い身体を持つアブソルに蹂躙されていく。容赦なくそのアブソルはペロペロとグラエナの身体を舐めまわす。厳しい声とは裏腹に、笑顔だ。
仰向けにされたせいでそのグレーのお腹も顔も唾液まみれになり、糸を引いているし、背の黒い毛もよだれが浸食して、汚らわしい。
「グラウは可愛いからいじめたくなるんだよ~。」
グラウと呼ばれたグラエナは必死に四肢をばたばた動かすが、ヴァイスと呼ばれたアブソルはそのたび耳をぺろぺろ舐めてその意思を奪っていく。
「はぁっはぁっはぁっ・・・」
「楽しかったよ!」
ヴァイスはグラウから離れてもマイペースに、ベトベトのグラウの身体をぽんぽんと叩く。
「ん?何か言いたげだけど。」
ふとグラウの態度がおかしいのに気付いたヴァイスはグラウに問いただす。グラウはべとべとになった身体で恨めしそうに、ヴァイスを睨んでいる。
「お前なんて大っきらいだ!絶交してやる!」
教室中に響き渡るぐらいの大声で、グラウはヴァイスに言う。ヴァイスはちょっと待てよ、と引き留めようとするけど、グラウはとっとと自分の席に戻っていった。
「今度こそ本当に嫌われたかなぁ・・・」
悲しげにヴァイスは呟く。

グラウとヴァイスは昔からの幼馴染で、家も目の前。夏休みになれば昔からずっと遊んでたし、誕生日になればゲリラ的に押しかけることも互いにあった。
同じ学校に進み、いい友達だったけれど、この学校、同じクラスになってからヴァイスはグラウに下らないちょっかいをかけるようになった。
別にいじめたいとかじゃないけど、ヴァイスとグラウの仲は少し一方的になっていた。

「はぁ・・・」
机に伏せてため息をつくヴァイス。周りが少しぼやけて見える。
「ヴァイス?・・・ヴァイス?」
「ん・・・?」
声の主を探ると、この学校でオカマで有名なゾロアークのロトだった。青い目を細めて嬉しそうにヴァイスを見ている。
「なに?」
「今日さ。」
「断る。」
何かの誘いだと思ったヴァイスは内容を言われる前に断った。ロトはしょんぼりとして、ヴァイスの所から去っていった。
さっきのグラウ言葉を延々咀嚼しているヴァイス。たしかにさっきからグラウは全くヴァイスのことを見てこないし、水道で身体を洗ってからも、ずっとむすっとしてる。
「謝らないとなぁ・・・謝れないけどなぁ・・・はぁぁ・・・」
悩みは深い。友達だから簡単に手を出したけど、逆に友達だから簡単には謝れなくなっていた。その日は結局、グラウのことで頭がいっぱいだった。


次の日
「ヴァイス、おはよう。」
「ロト。おはよう。」
挨拶を交わして自分の席に着くが、グラウは昨日からと変わらず何も言ってくれない。そんなままで明日から連休だ。このままではヴァイスには少し後悔が残る。
「なんでこんな楽しくないんだろ・・・」
授業を受けていても無味乾燥、学校にいても楽しくないな、とヴァイスは思っていた。今までこんなこと思ったことないのにな・・・
時折ヴァイスがグラウを見ても、グラウは寝てるかずっと前向いてるかだし、休み時間になればトイレ行ったり、ロトと話したり、ヴァイスのことを気にしてる気配はない。
「お~い!行くぞ!」
体育の授業だ。みんな元気に走り回ってる。バトルの練習も授業の一環として組み込まれている。もちろん本気ではやらない。
「次!ヴァイスとグラウ。」
ヴァイスとグラウは向かい合う。いつもならヴァイスが速攻でグラウを片付けて、勝つ。先生にも怒られるくらい、ヴァイスは強い。
「申し訳ないけど、今日も速攻で勝つか。」
構えるグラウに、ヴァイスは先に動こうと四肢を震わせる。
「つじぎり!」
「ぎゃっ・・・」
いつもヴァイスの繰り出す技にグラウは当たって倒れる。いつもヴァイスはつじぎりを先制でうちこんで、あっという間にとどめを刺す。
「いつも通り・・・楽勝だよ。」
グラウは身体を起こすけれど、ヴァイスの動きのほうが早く、なかなか反撃できないでいる。
「へっへっへ・・・ばかぢから!」
お決まりの技を繰り出すヴァイスだったけれど・・・グラウはひょいっと避けて見せた。
「うそぉ!」
態勢を立て直して、グラウが攻撃してくる前に攻撃しようとしたけど・・・グラウはすでにヴァイスの目の前にいた。
「いかりのまえば!」
がぶっと深く、防御のとれないヴァイスの身体にグラウの牙が食い込む。
「いでででで・・・」
痛くてヴァイスはその場にあっさりとグラウごと倒れこんだ。
「グラウ!そこまで!」
先生は相当びっくりしたのか、ヴァイスが倒れこむまで止めることができなかった。グラウは先生に止められると噛むのをやめて、すぐにヴァイスから離れていった。
「な・・・なんで・・・」
痛みに耐えながら、ヴァイスは何が敗因なのかずっと考えていた。
「大丈夫か?なんか調子悪いようには見えなかったが・・・おーい、ロト。ヴァイスを保健室に連れていってくれ。」
「はいは~い。」
ヴァイスはロトに支えられるように保健室に連れていかれた。
「本当に嫌われたかもな・・・グラウに。」
「はぁ?」
ロトはヴァイスの呟きを逃さなかった。
「グラウとヴァイスが喧嘩なんて・・・考えられないよねぇ・・・いっつもベタベタしてて、グラウも楽しそうにしてたのにね・・・」
「最近さ・・・冷たいんだよな・・・」
普段ならロトに相談することなんてまずないヴァイス。
「私なら身体狙うけどね~。」
「はぁ?」
「冗談だよ。喧嘩して身体狙ったら、ただのレイパーだから。」
ヴァイスはたまにロトのオカマ口調が耳障りに感じる。でもヴァイスには催眠術のごとく、ロトの言葉が頭に残っている。
保健室から教室に戻ると驚くような視線を教室のみんなはヴァイスに浴びせる。
「お前、実は弱ぇな。」
みんなの心ない一言に、ヴァイスのプライドはずたずたにされていく。
「次、俺とやろうぜ。」
クラス1弱い奴も調子に乗って話してくる。ヴァイスはそいつの頭をパーンと叩くと自分の席に着いた。
「ああ・・・むしゃくしゃするなぁ・・・くっそ・・・グラウのやつ・・・」
この1時間以内でヴァイスのプライドはズタズタにされ、みんなにも嘲笑され、ヴァイスは相当イライラしていた。
グラウは机に突っ伏して寝てるし、ロトはなぜかヴァイスのほうをちらちら見ているし、授業に集中できないし・・・ヴァイスの精神にどんどんストレスがたまっていく。
授業中だというのにみんなは携帯電話をポチポチ叩いて、ゲームをしている。
ヴァイスも携帯電話を持っているが、あんまり使わない。ロトが毎日のように迷惑メールを送ってくるだけだ。

学校が終わって、いざ帰ろうにも、教室にはグラウしかいない。かなりヴァイスには気まずい。寂しく帰るのも、なんだか嫌だったし、ヴァイスはグラウと仲直りするいい機会、そうも感じていた。
グラウは何やら机に向かって作業をしている。ヴァイスは気になるけど、聞き出せないでいた。
「ふぁぁ・・・帰ろうかな・・・」
わざとらしく声を出してグラウの注意を・・・引けない。ヴァイスのもくろみは外れた。
「なぁ!」
「・・・」
もう思いっきり呼んでみる。でもグラウは答えない。相当怒ってるんだなぁ・・・とヴァイスは思った。
「今日・・・強かったな・・・」
適当に話題を振って反応を見てみるヴァイス。
「あれは・・・違うよ。ヴァイスが油断してたんだよ。」
グラウはようやく返事を返してくれた。安堵するヴァイス。
「油断?俺が?」
「そう。」
お互い顔を合わせて喋ってるわけじゃないけど、ちゃんと意思疎通は出来ていた。
「いつも、つじぎりした後、いつも俺の出方を窺ってからばかぢからをすんのに、今日はそれをしなかったから、攻撃を避けさえすれば機会が生まれただけ。偶然。」
「ちゃんと俺のこと知ってんじゃん。攻撃パターンとか考えてなかったなそういえば。」
カリカリと何かを書いているのはわかるけど、グラウが何をしているのかはヴァイスにはまだ、わからない。
「何してんの?さっきから。」
「宿題。」
そっけなく答えるグラウに、ヴァイスは偉いね、とだけ言う。
「家帰らないの?」
ようやくヴァイスは本題を切り出せた。
「家に誰もいなくて、鍵忘れたから、帰れないの。」
ちょっとむなしい感じに言うグラウに、ヴァイスは淡い期待を抱いて、言ってみる。
「ウチ来ない?俺の家も今日誰もいないから。」
ヴァイスは仲直りの・・・と言うよりは、彼女が彼氏を家に招くように、という口調で、誘ってみた。グラウは少し戸惑ってるのか、動きを止めた。
「うーん・・・行きたいのはやまやまなんだけど・・・迷惑かけるでしょ・・・俺なんか・・・」
「グラウ。俺はそんなこと考えてないから。来てよ。」
「・・・うん。」
「あと・・・ごめん。」
これ以上関係を悪化させまいと、というより素直に謝るヴァイスに、グラウはヴァイスのほうを振り返っていいよ、と笑う。
「じゃさ。さっさと帰ろうぜ。」
「ああ。」
ガチャガチャとグラウは宿題を片付けて、ヴァイスの席までやってきた。ヴァイスも首からカバンを提げて、グラウに笑顔で返す。
「帰ろう。」

帰り道、いつも、というより最近までずっと一緒に帰ってたのに、ヴァイスは嬉しそうにあれやこれやと指して、懐かしいとか変わってない、とか言ってた。
そんなヴァイスにグラウはその赤い瞳を細めてニコニコしていた。
「本当に誰もいないね。」
お互いの家の前で、真っ暗なお互いの家を指して笑う2匹。
グラウは緊張している。ヴァイスの家に入るのも久しぶりだからだ。
「緊張しなくていいよ。」
ぽんぽん、と前肢でグラウの背中を軽く叩くヴァイス。グラウも安心して家の中に入っていった。
居間でカバンを置いてくつろぐヴァイス。グラウはお座りをしたままで、くつろいでいるわけでは無さそうだ。
「カバン置いて寝っ転がってもいいよ。」
ヴァイスが言っても意味なさそうだったので、実力行使に出てみた。
「やめろっ!」
「くつろいだらいいのにって。」
無理やりカバンを奪って、ヴァイスはグラウを仰向けに寝かせた。しぶしぶグレーのお腹を上にしてごろんと寝転がるグラウ。
「ほんとに可愛いじゃん・・・グラウ・・・」
ふとヴァイスは呟く。たしかに仰向けに寝てるグラウは黒い四肢がいいアクセントになってかなり可愛い。しかもヴァイスは頭のほうに立っているから、上目遣いでヴァイスを見てくる。
「ん・・・なんか言った?」
グラウの反応に、やばいやばい、聞かれてたかな、と逃げるようにして台所に向かうヴァイス。
ヴァイスはモモンジュースを2つのコップに注いでグラウのいる居間へ持って行った。
「ジュースだよ。」
「ありがと。」
身体を起こしてヴァイスとジュースを飲むグラウ。ヴァイスもグラウのすぐそばでジュースを飲む。
「モモン?」
「そう。好きだったでしょ?」
「そんなことまで憶えててくれたんだ・・・」
ちょっと照れくさそうにグラウはヴァイスを見つめる。見つめられたヴァイスはその蒼い顔を真っ赤にしてうつむく。
「見んなよ!」
照れ隠しで言うが、グラウもわかってる、と言ってぼーっとよそを向いた。
さっきからずっとヴァイスはグラウの股間・・・モノを意識していた。知らず知らずのうちに♂であるヴァイスは同じく♂のグラウを欲するようになっていたのだ。
否定しようとぶんぶん頭を振っても、意識は強まるばかり。よそを向いてるグラウはそんなこと知る由もないだろう。

幼馴染が・・・幼馴染のグラウが・・・俺・・・好きなのかな・・・ヴァイスはその意識に盲目的に従うような気分になる。
そう考えたら、今までグラウにしてきたことが何を意味するか・・・そうか、ロトはわかってたんだな・・・ヴァイスはロトの言葉を思い出していた。
”私なら身体狙うけどね~”
違う違う!・・・自問自答して悶々としているヴァイス。いつの間にか白い体毛を前肢で、手でいじいじするようになっていた。
気を紛らわせようと前を向くも、目に入るのはグラウの横顔。赤く澄んだ瞳。特徴のある黒い逆三角の目の下の可愛い模様。・・・愛らしい三角の耳。
ぷいっと、グラウがヴァイスのほうを向いた。2つの赤い瞳がヴァイスを捉えた。
「どしたの?」
「いやいやいや、何もない。そうそう、おかわりいる?」
少し間をおいたグラウは恥ずかしいのか、グレーの顔を赤らめて、お願い、と言った。ヴァイスも高鳴る心臓の鼓動を抑えつつ、再び台所に向かい、ジュースを注ぐ。
またグラウのところに戻るも、黒く太いけれど、かわいらしい尻尾・・・などとますます深みにハマりつつあった。

「お待たせ・・・」
「ありがと。」
ジュースを飲むグラウ・・・目を細めて、無邪気な子供みたいだ・・・ヴァイスの心は限界に近かった。理性を保つのが、という意味でもあるし、これ以上じらされるのは、と言う意味でもある。
幼馴染しかも同性、その最後の鎖はヴァイスの心に残った唯一の理性だった。強固な、鎖。
アブソルはわざわいポケモン・・・災いを知らせる役目を負う。でも今のグラウにとってはアブソルのヴァイスそのものが、災禍だ・・・ヴァイスは冷静に、自分を落ち着かせる。
「落ち着け落ち着け・・・」
自分に言い聞かせるように呟くヴァイス。
「そ、そうだゲームしようぜ。ゲーム機持ってくるわ。」
「あ、ああ、お構いなく・・・」
だが、ヴァイスはグラウのその言葉を聞く前に、暴走する身体を必死に抑えて自分の部屋からゲーム機を持ってくるのだった。
「コンセント~コンセント~。」
ゲームの配線をつなぐ間は、それに集中できたので、その間だけはヴァイスの心も少し落ち着いた。
「さ、やるぞ。」
「うっし。」
残念ながら、ゲームをしている間、再びヴァイスの心はグラウに向かっていた。画面をまじまじと見つめるグラウ。負けて悔しがるグラウ。勝って照れてるグラウ。
コントローラーを不器用に動かすグラウ。どんな動きも見逃すまいと、ヴァイスは横目でじっと見ていた。
ふと、悪魔の提案がヴァイスの脳裏をよぎる。
「あのさ・・・このゲームで先に3連敗したほうが、相手の言うことを聞くってのは?」
ヴァイスの提案を聞いたグラウは身体をぴくっと震わせる。
「このゲーム、ヴァイスのほうが得意でしょ。」
「ま、まあさ、でも3連敗だよ。3連敗。そう簡単にはいかないって。」
なぜか、ヴァイスもグラウも2匹ともヴァイスが勝つのが前提みたいな話をしている。ヴァイスは自分の提案に、自分の残った理性全てを賭けた。
もし勝っても・・・何もしないで、適当なことを言うか・・・それとも襲ってしまうか・・・自分の幼馴染を・・・同性を・・・
今までちょっかいをかけていたのは好きだから?・・・好きだ・・・でもそれは友達として・・・いや・・・性的な関係としてか・・・違う違う・・・違うんだ・・・違わないけど。
「大丈夫?」
ずっと考えていると、グラウが心配そうにヴァイスに尋ねる。
「ああ、ごめんごめん、さ、やろうよ。」
ヴァイスはさっきと変わらないように、コントローラーを使うが、心の中ではもう限界だった。
そのせいか、なかなか3連勝出来ない。2連勝→1敗→2連勝というように、自分の理性を示すかのようになかなか勝てなかった。
ふと、ヴァイスの目に、ふいふいと緩やかに左右に揺れるグラウの尻尾が目に入った。
「それ。」
「んぁっ!やめろ!」
狙った通り、グラウの黒い尻尾をヴァイスが掴むと、グラウは集中力を失って、簡単に負けた。
「尻尾触んなよ!」
「もふもふしてて気持ちいいから、掴んだんだよ。」
ヴァイスの理性は徐々に崩壊していく。グラウの反応を面白がるように何度も尻尾を掴む。
「やめっ!やめろっ!」
「ほれほれ。あと1回負けたら、3連敗だよ。」
意地悪な口調のヴァイスはもうギリギリの自制心しか残っておらず・・・
「ほら、3連敗したじゃん。何言おうかな・・・」
楽しそうに言うヴァイスを涙目で睨むグラウ。だが、今のヴァイスには、それすら自分の欲を煽っているようにしか感じなかった。
ヴァイスは舐めまわすようにグラウの身体を見る。少し小さな身体、同い年なのにヴァイスに比べて幼い体つき、つぶらな赤い瞳・・・怯えた表情。
♀でもここまで魅力的なグラエナはいないんじゃないか・・・ヴァイスはそう感じた。でもヴァイスは最後の自制心を振り絞って言おうとする。
「じゃぁさ・・・キス・・・しよ・・・」
ダメだった。あなたのヴァイスはここに陥落しました。
「え?」
驚いた表情でヴァイスを見返すグラウ。ヴァイスは自分を制することが出来なくなって、グラウに抱きつく。
「やめろっ・・・ヴァイス!んぁぁぁ!」
必死に抵抗するグラウを、ヴァイスはあっという間に抑え込んで、仰向けに倒す。
「グラウのもふもふ・・・気持ちいいよ。」
撫でるようにグラウのお腹を触りまくる。確かにグレーのもふもふはヴァイスにとって何とも言えない気持ちのいいものだった。
グラウは涙目になって、ヴァイスを止めようとするけれど、今のヴァイスには無駄なこと。
「さぁ・・・グラウ・・・」
「んっ・・・んーんー!」
ヴァイスがグラウの顔を抑えて唇を重ねるが、グラウは必死に声を出して、ヴァイスを離れるように四肢を動かす。
「はぁはぁ・・・無駄だよ。」
欲に突き動かされるヴァイスには、グラウの涙も、必死に目を瞑って抵抗するのも、全て自分のモノを大きくするには十分だった。
「ヴァイスっ・・・やめてっ・・・」
涙を瞳からこぼすグラウ。
「じゃあもうちょっとするぞ。」
「んぁっ・・・んー・・・」
再び強引に唇を奪うヴァイス。頑なに口を閉ざすグラウに、ヴァイスはグラウの唇を指で思いっきり引っ張る。
「んんんんー!!!」
たまらず口を開けるグラウに容赦なく舌を突っ込むヴァイス。
「んふっ・・・ふぁっ・・・んふぅ・・・」
いやらしく、何度も、拒むグラウの口腔に唾液と舌を注ぎ込む。グラウは口横からだらだらと唾液を垂らす。唾液は床にぽちょぽちょと落ちる。
息を奪われ、唾液を口腔に入れられるグラウは目を虚ろにして、苦しそうにヴァイスを見ている。
「んっ・・・んんぁ!・・・はぁはぁ・・・」
ヴァイスの舌はグラウの口腔で散々暴れ回った後、強引に引き抜かれた。
「グラウ・・・汚されたグラウは素敵だよね・・・」
躊躇なく自分の欲を口にするヴァイス。グラウは息も絶え絶えに、ずっとヴァイスを睨む。
「そんな睨んでもだめだよ。さっきからばかぢからでずっと身体抑えてるから。」
授業のお返し、とばかりにグラウの身体を技で抑え込むヴァイス。
「次は・・・なにしよっかな?そうだ。」
「うぁぁっ・・・痛いっ!痛い痛い!」
ヴァイスは悦楽に顔を綻ばせて、グラウのグレーの体毛の中から、♂には必要ない乳首を探り、つねったり、なめずったり思い思いにいたぶる。
「意外と気持ちいいんだって・・・」
グラウは頭を振って痛痒から逃れようとする。涙は目じりから耳の下まで、一筋の濃いグレーの線を描いていた。
「うはぁっ!いぁっ!」
「ふーん・・・」
「きゃぅぅっ!」
ヴァイスが乳首をいたぶりながら、グラウのモノを握ると、グラウは今まで聞いたことのない声で喘いだ。
「ふふっ・・・可愛いなぁ・・・」
満足げにヴァイスはグラウのモノの皮を上下に動かして、乳首でグラウを刺激し続ける。
「くぅっ!きゃぅっ!・・・んはぁっ・・・くぅん!」
グラウのモノはヴァイスの意図通りどんどん脈打ちながら大きくなっていく。射精を急かすように、モノへの刺激を速めたり、遅くしたり、嬲るように動かす。
「きゃぅぅ!ヴぁ・・・ヴぁいすっ・・・やめてっ・・・くぅっ!」
何を言われてもヴァイスにはグラウの可愛い嬌声しか聞こえてなかった。次第にくちゅくちゅといやらしい音を立ててくる。
「もう何か出てるな。」
「くぅぅん・・・」
はぁはぁと息をもらし、可愛く喘ぐグラウは、力が抜けたように、四肢を動かすだけだった。ヴァイスは面白がって、モノの先端を指の腹でいじらしく、擦る。
「きゃぅぅ!」
グラウのモノからは透明な液体が少しだけ沁み出し、もうイくのが近いのを雄弁に語っていた。
「あははっ・・・このままイく?」
「やぁっ・・・きゃぅ!」
返事をする前にヴァイスはグラウのモノを弄る。グラウは耐えきれず喘ぐ。
「くぅぅ・・・」
「そんなに甘えてどうする~?」
くちゅくちゅくちゅと弄るスピードを速めていくヴァイス。突然、グラウのモノがびくびくと大きく脈打って震え、グラウの身体もぴくぴくと痙攣した。
「きゃぅっ!・・・きゃぁぁぁぁぁぁぁっ・・・」
どぴゅっどぴゅっと、グラウのモノから白濁が吐かれていく・・・グラウは涙を浮かべてヴァイスから受ける恥辱に身を震わせる。
「はぁはぁ・・・」
びちょびちょと、白濁はグラウのグレーの体毛に着いて、いやらしくその白をアピールしている。
「写真撮ってやりてぇな。」
「やぁっ・・・やめて・・・」
息も絶え絶えに訴えるグラウだけれど、ヴァイスはカメラ付き携帯を構えた。
パシャッ!
「大丈夫だよ。見せるために撮ってるんじゃないから。」
恨めしそうに潤む目で睨むグラウ。そのいやらしい肢体を見たヴァイスは自分の欲望を次第に我慢できなくなっていく。
まだ自分の手に少し付いてるグラウの白い精を舐めて、自分の精を付けたくなった。
「な・・・なにすんだよ・・・」
「はぁ?甘い声で何言ってんの?誘ってるの?」
「ち、ちがっ・・・」
仰向けのお腹に白い精を乗っけてるグラウに、ヴァイスは覆いかぶさるようになって自分のモノをグラウに見せつける。
「これ、立派だろ?」
「・・・」
「なんか言えよ。」
立派に勃ったヴァイスのモノを見ても、グラウは何も言わない。何か言ったらまたヴァイスをあおるだけだからだ。
「くぅぅ・・・やめっ・・・やめっ・・・」
ヴァイスはグラウの元気の少し無くなったモノに自分のモノをクチュクチュとこすりつけていく。
「やめて・・・あぁ・・・ふぁぁぁ・・・」
すぐさま喘ぎだすグラウをみて、ヴァイスの興奮は再び高まる。まるで♀と交尾するときのごとく、腰をリズム良く振ってグラウのモノに擦りつけた自分のモノをさらに大きくした。
表面上白く見えるヴァイスのモノとグレーに見えるグラウのモノは、1つになるかのように、激しくぶつかり合って、お互いを刺激する。
「ふぅっ・・・ふう・・・なんか俺のほうが先にイきそうだな・・・グラウと一緒にイきたいんだよな・・・」
ヴァイスはそう言って指をグラウの蕾・・・つまりアナルに挿れた。
「ぎゃぅっ!」
気持ち悪いのか、じっと我慢するような表情を浮かべるグラウ。
「こっちも気持ちいいんだって。」
そう言ってグラウの可愛い蕾に指をどんどん奥に突っ込んでいくヴァイス。痛そうに歯を食いしばって耐えるグラウ。
「きゃぅん!」
「あ?」
ふと、グラウが突然嬌声を出して、身体を震わせたので、ヴァイスは腰の動きを止めて指のほうに集中する。
「感じてるのか・・・」
ヴァイスはさっきのポイントを探すようにぐりぐりと荒く指を動かす。
「いあぃっ!痛い痛い!」
「違うなぁ・・・」
もはやヴァイスは自分の欲望を、グラウの欲望と強制的に置き換えて、尽くすように、蕾の中を探っていく。
「きゃぅぅ!」
「ここだ。」
そのポイントをしつこくヴァイスは刺激する。
「きゃぅ!くぅぅん!きゃぅぅ!きゃぅん!」
激しく喘ぐグラウ、グラウのモノはまた大きくなっていった。
「先にイったら許さねぇから。」
意地悪に言うが、ヴァイスの本心だった。素直なヴァイスのグラウを欲する気持ち。
「グラウのナカ・・・すっげぇあったかいよ。」
そう言ってまたポイントをぐいぐい刺激するヴァイス。
「くぅぅん!くぅぅっ!きゃぅぅん!はぁはぁ・・・」
ヴァイスは一端やめてさきに自分の欲求を優先することにした。またモノをグラウのモノにクチュクチュとこすりつける。いやらしい音を立ててモノを刺激し続けるヴァイス。
「はぁはぁ・・・もうイきそ・・・ふぁぁぁぁぁぁっ・・・」
大きくヴァイスも喘ぐと、容赦なくモノの先端から白濁でグラウのグレーのお腹を汚していく。
「はぁはぁ・・・さ、つづきしようか・・・」
「やだ・・・やめっ、きゃぅぅ!やぁぁぁん!」
さっきのポイントを逃すまいと、執拗に刺激を与えるヴァイス。グラエナ特有の喘ぎ声と、ポケモン特有の喘ぎ声の両方を混ぜて、せっせと喘ぐグラウ。
グラウのモノはまた先端から汁を噴き出しそうに、でも耐えるように、じわじわ沁み出てきた。
「もうちょっとか・・・」
グラウの身体を経験したことのない快感が貫き、さっきよりも大きく身体をけいれんさせた後、モノから白濁を再び放出した。
「きゃぅ!やぁぁっ!ぁぁぁっ・・・やぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!ぁぁぁっ・・・ぁぁぁ・・・」
ヴァイスはその肢体を見て、また興奮を抑えることが出来なくなっていた。グラウのグレーのお腹は、白濁で穢され、力なく四肢をぷらぷらさせていた。
「元気かな?」
潤むグラウの瞳をヴァイスは悪戯っ気満面の笑みで見つめる。2回すでにイったグラウはもう体力的な限界が近いのか、何も答えない。
「ふふっ・・・まだ終わらないんだけどね・・・」
そのヴァイスの一言にまたグラウは瞳から涙をぽろぽろ流して、もう止めるように訴える。グラウの目の下の可愛い逆三角の模様は涙で輪郭がにじんでいた。
「だめ。」
楽しみはこれから、とばかりに言うヴァイス。再びグラウの”蕾”に指を突っ込む。
「ぎゃぅっ・・・」
「もうグラウのナカ、トロトロだよ~・・・」
挑発的に言うヴァイス。
「そ・・・それは俺にいうせり・・・ふ・・・じゃない・・・よね・・・」
聞こえるか聞こえないかくらいの声で言うグラウ。それをふふっと笑い飛ばすとヴァイスは自分のモノが再び大きくなるまでしごいて、蕾にあてがう。
「や・・・やめっ・・・やめ・・・ぎゃぅっ!」
さっきの指よりも1回り以上大きなヴァイスのモノが自分の腸に入ってきたのを感じて身体をぶるぶると震わす。グレーの身体と白い身体は1つにつながった。
「もう柔らかくて、とろけそうだ・・・」
ヴァイスはそう言って少し入れにくい蕾にぐりぐりとモノを押しつけていく。
「あぁぁぁぁ・・・やめっ・・・ぁぁ・・・」
苦しそうに力の入らない身体で耐えるグラウ。
「くぅっ!」
「あれ?また当たった?」
ヴァイスはグラウが感じたのが嬉しくて笑顔で言う。
「あ、もう入った。」
グラウはヴァイスのその言葉で、自分の腸が全てヴァイスのモノをすっぽり飲み込んだのだ、と悟った。
「じゃ、動かすから。」
ヴァイスはグラウの感じるポイントを突くように腰をリズムよく動かしていく。
「くぅっ・・・くぅっ・・・くぅっ・・・くぅっ・・・」
静かな声で喘ぐグラウだが、ヴァイスのモノはどんどん、グラウの蕾を押し広げて、大きくなり腸を圧迫してくる。
「くぅぅ・・・」
「やべっ・・・もう出る・・・」
ヴァイスは腰の動きを一段と速め、ちゅぷちゅぷと腸液と反応するモノの興奮を高める。
「はぁぁっ・・・はぁぁっ・・・はぁぁっ・・・」
快楽の絶頂を迎えた瞬間、ヴァイスのモノがびくびくと脈打って精液を、グラウに放出した。グラウはなにかを感じるのか少し喘いで、力なくぐたっと寝ているだけだ。
「いい締め付けだった。ささ、引っこ抜くか。」
じゅぷっといい音がした腸から、ヴァイスは自分のモノを引き抜いた。グラウの蕾は再び閉じようとする。
「レイプされた・・・」
涙ながらにそう言うグラウに、ヴァイスはとくに驚きもせず、言い放つ。グラウはすでに♂の匂いに塗れていた。
「♂はレイプなんてないよ。」
「立法機関に訴えてやる。」
また涙ながらに言うグラウ。
「立法機関って・・・国会かよ。」
「行政機関に訴えてやる・・・」
また涙ながらにグラウは言う。
「内閣?」
「金閣寺に訴えてやる。」
意識が混濁しているのか、グラウは取り留めもないことを話し始めたぞ、と少し警戒するヴァイス。
「どういうリアクションをすればいいのかな・・・ん?」
ヴァイスはグラウの蕾の動きにごくっと息を呑んだ。
括約筋の動きで、さっき放ったヴァイスの白濁が、腸から押し出されて、ぷくぷくと蕾の周りに出てきたのだ。
「ひゃっ!」
蕾から白濁が垂れて、グラウの尻尾に付いた。その後も連続して白濁は床に付いたり、グラウの尻尾に付いたりした。
その動きを見とれていたヴァイスは自分のモノがまたグラウを欲しているのに、驚く。またむくむくとモノが大きくなりだしたのだ。

「ごめん、また挿れさせて・・・」
申し訳なさそうにヴァイスは言うが、グラウはそれを受け入れるはずがない。
「ぎゃぅぅっ!」
また、ヴァイスはモノを今度は白濁に塗れた蕾にあてがう。グラウの蕾は白濁が潤滑剤になっているのか、じゅるじゅるとヴァイスのモノを飲み込んだ。
「きゃぅぅ・・・やめっ・・・やぁぁっ・・・」
気付けば、グラウのモノもまた快感を欲しているのか大きくなっていた。ヴァイスもそれを見逃してはいない。
「さっきと違って楽勝だったなぁ。」
グラウのナカでも精液が潤滑液としてよく働いたみたいで、じゅぶじゅぶと音を立てて簡単に奥まで入って行った。
「ここだったかな?」
「きゃぅぅ・・・」
甘く喘いだのをヴァイスが確認するとまた腰を振り始めた。じゅぶじゅぶと液体同士の擦れる音を何度も出して、ヴァイスは正確にグラウの感じるポイントを狙う。
「くぅん!きゃぅ!きゃぅぅん!きゃぅっ!」
グラウの喘ぎ声に興奮して、もう3回目だというのに、ヴァイスのモノはまた蕾を締め付けるほどに大きくなっていく。
「きゃぅぅん!くぅん!くぅぅ!くぅん!きゃぅん!」
もはやグラウも、刺激に耐えるような力は残されていなかった。モノはどんどん大きくなっていくし、先走り液まで出始めた。ヴァイスの白い体毛が、時折下肢に当たってくすぐったい。
最後の力を振り絞って、グラウは身体を貫く電撃のような快感に身をぶるぶると痙攣させた。
「やぁっ・・・やぁぁっ・・・きゃぅぅっ・・・・くぅぅぅぅぅん!・・・きゃうぅぅぅぅぅぅぅん!くぅっ・・・くぅぅっ・・・くぅぅん・・・」
モノには結局一回も触らずに、グラウは果てた。モノは元気よく白濁を吐いてグレーのお腹を白く染めていくし、ヴァイスのはまだ、ナカで動いてる。
それを見て満足したのか、ヴァイスは快感の絶頂に耐える準備をした。
じゅぷっ、じゅぷっ・・・
「はぁぁ・・・いいよグラウ・・・もう溶けそうだ・・・」
ヴァイスがそう言った瞬間、モノは大きく脈打ち、グラウのナカに温かい液体が噴出されて、グラウは身悶える。
「あっ・・・なんか・・・あつぃ・・・のきた・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
もう限界、とばかりに満足したヴァイスは全ての精をグラウのに放つと、ごろっと仰向けになった。
「また出てる・・・」
そうヴァイスが呟いたように、グラウのグレーの蕾からはまたあふれ出た白濁がぽとり、ぽとりと床に落ちていった。
だけど、グラウにはそれを気にする体力は残っていなかった。ただ、強烈な♂の匂いだけがそれを主張している。
余裕綽々のヴァイスは、また携帯電話で、いやらしい肢体をさらすグラウを撮った。グラウはグレーのお腹も、蕾も白濁に塗れさせて、いやらしく、力なく横たわっている。

「なぁ?」
「・・・」
すこし休んだヴァイスはグラウを呼ぶも返事がない。
「おい。」
「ぅぅっ・・・なに?」
力なく答えるグラウ。
「起きないの?」
「起きれない・・・後ろ脚に力が入らなくて・・・」
仰向けのグラウは動こうとしているのか、何度か四肢を動かすが、震えて思う通りには動けていないようだ。その横でヴァイスは満足げにグラウを見る。
ヴァイスは欲望のすべてをグラウにぶつけた。けれどヴァイスにはその反省はない。満足だけだ。幼馴染に精を放てて。
「だいっきらい・・・」
弱々しいその言葉がグラウから発せられると、ヴァイスはおどけて返す。
「無罪だ無罪。推定無罪って。」
「なにそれ・・・」
かなり不満げに言うグラウ。♂の匂いは居間に充満するかのごとく、グラウから放たれている。ぽとりと時折小さな音が、まだグラウの蕾から聞こえてくる。
「証拠がないぞ。」
「あるよ。」
「何の?俺が何かしたか?」
そう言ってヴァイスはグラウに自分のした行為を言わせて、羞恥を煽ろうとした。
「言えない。」
ヴァイスの思惑は見抜かれたらしく、グラウは拒んだ。
「俺は・・・グラウをいじめたいからちょっかいを掛けてたんじゃない。」
申し訳ないと、思っているわけではないけど心情を吐露し始めるヴァイス。でもグラウには反応はない。
「グラウ・・・好きだ・・・俺は自分で言ってることの意味は理解してるはず・・・幼馴染の・・・♂が好きになったことの意味は・・・」
それでもまだ、グラウのリアクションはない。いい加減ヴァイスもイライラしてくる。
「なんか言えよ・・・」
グラウの身体は、次第にふるふると震え始めた。
「ヴァイス・・・俺・・・友達だとずっと思ってた・・・これからもそうあってほしいなって・・・」
泣いているのか、グラウの声は聞こえにくいけれど、ヴァイスにはグラウの言っている意味が明瞭に聞きとれた。
「・・・でも、それは無理だったんだ。」
悲しそうに言うグラウに、ヴァイスはようやく自分のしたことの重みに気付いた。
「グラウ・・・ごめん・・・俺・・・」
「もう・・・遅いよ。」
グラウは大粒の涙を流して、ヴァイスをじっと見つめている。

ギィィ、と家のドアが開く音がした。
「あれ?ヴァイスもう帰ってたんだ。」
少し年季の入った♀の声。
「おばさんじゃん・・・」
グラウはまだぽろぽろ涙をこぼして声を出す。ヴァイスは身体をビクン!と大きく震わせて、グラウを見た。
なにしろ、まだ♂の匂いは部屋にこもってるし、精子に塗れたグラウもさっきとあまり様子が変わっていないからだ。
「ヴァイス?友達き・・・」
居間にヴァイスより一回り大きなアブソルが口をあんぐり開けて、自分の息子と、家族ぐるみの付き合いのある汚された息子の幼馴染を見ていた。
どさっ・・・買い物にでも行ってたのだろう・・・袋を床に落とすと、まだ泣いてるグラウを凝視した。
最悪なことにヴァイスの母親は、グラウの尻尾の側にいたので、グラウの身体、自分の息子、ヴァイスの所業であろう・・・いや、それに間違いないものを見ることができた。
「ヴァイス・・・ちょっとこっちおいで・・・」
優しい撫で声で母親は、自分の息子を呼ぶ。ヴァイスは身体をぶるぶる震わせて逃げようと、母親から身体を遠ざけるが・・・
バキィッ!
その音はあからさまに大きく、そしてそのエネルギーは怒りに満ちていた。ヴァイスの母親は自分の息子を精いっぱいの力で殴った。
ヴァイスは、目から火花が飛び出るような衝撃を感じて吹っ飛ぶ。
どしぃん!
その衝撃はヴァイスが持っていた携帯が一瞬にして木っ端みじんになるほど、すさまじかった。床に身体を打ちつけたヴァイスは目に涙を浮かべている。
「ヴァイス!私の部屋に行ってなさい!」
蒼いはずのヴァイスの頬はすでに真っ赤に腫れていた。母親の声に従うようにヴァイスは自分の母親の部屋に向かった。母親はグラウの傍によって、必死に謝る。
「ごめんなさい!」
「いいです・・・もう・・・それよりヴァイスにまだお話をしてないことが・・・」
そう言ってグラウはヴァイスの母親に耳打ちをする。よっぽどの内容だったのか、ヴァイスの母親はまたびっくりするような顔をして、グラウを見た。
「・・・動ける?グラウくん。」
「ごめんなさい・・・ちょっと無理です・・・でも家まで身体引きずって帰りますんで・・・」
「ダメよ!・・・それにさっき見たけどまだグラウくんのおうち、誰も帰ってきてないみたいだったし・・・」
心配をかけまいと、ヴァイスの母親に話すグラウだったけれど、余計にヴァイスの母親は心配してあれやこれやと言う。
「とりあえず、お風呂入ろっか。ヴァイスに入れさせるから、まだもうちょっと待ってて。」
ヴァイスの母親はそう言い残して、自分の息子が待っている自分の部屋に向かった。
グラウはうとうとしながら、聞こえてくる音に、聞き耳を立てていた。泣き叫ぶ声と、何かを叩く音、そしてさらに泣き叫ぶ声、と、その音は阿鼻叫喚の地獄をグラウに想像させた。
ピタっと音がやんでも、すぐまた泣き叫ぶ声が聞こえる、そしてまた叩く音と、まさしく無限ループのようにグラウには感じられた。

かなり時間が経っただろうか、グラウの視界に顔を真っ赤に腫らして、ぼろぼろ泣いてるアブソルが映った。
「ヴァイス?」
「ぐらぅぅ~・・・」
ヴァイスはよっぽど叩かれたのか、頬は両側とも赤くはれているし、なによりはっきり喋れてない。
「大丈夫?」
仰向けのままだけど、グラウはシクシク泣いてるヴァイスを気づかう。
「はいひょうふ・・・」
「へ?」
「いあいの。」
何か、痛くて喋れないみたい、グラウはヴァイスにそう感じた。
「は、おふほはいひょうひょ・・・」
ヴァイスは動けないグラウを背負って、風呂場まで連れて行った。グラウはなんとなくだけど、ヴァイスの言ってることの意味を理解できている。
仰向けにごろんと寝かされたグラウは、ヴァイスに聞く。
「そんなに痛いの?」
「いあい。」
ヴァイスは痛そうに身体を動かしてバシャバシャとシャワーをグラウに浴びせる。
グラウが、よくよくヴァイスの尻尾の付け根あたりを見てみれば、顔だけじゃなくお尻一帯も真っ赤に腫れて、水が触れるたび、びくびくと震えていた。
可哀想だなぁと思う反面、自業自得だと、グラウはくすっと笑う。
「んあ?あんあおあひいあ?」
「ああ、なんかおかしいかって?うん。自業自得だなって。」
図星だったのか、ヴァイスは沈黙するなりまた瞳を潤ませて、グラウを濡らしていく。
「ほんあほんへいいは・・・」
「まともに喋れないの?」
「いいや・・・あいたた・・・」
普通に喋るたび、前肢で頬を抑えて痛がるヴァイス。
「まぁ、喋りたいように喋りなよ。」
「ぐらうっ・・・あいたた・・・」
ほどよくグラウに水がいきわたったのか、ヴァイスはシャンプーを手につけて泡立てていく。
「ひゃ、いふよお。」
ヴァイスは力強く、でも痛くないように優しくグラウを泡だらけにする。ごしごしという泡と体毛が擦れ合う音が心地よく風呂場に響き渡る。
精液が乾いてカピカピになったところも、あっという間に泡で、もとの綺麗な体毛にもどっていく。
「はへ、あはひあはふは・・・」
「なに?」
「あらいながっていてて・・・あらいながうかって。」
まともに喋っているつもりでも、ヴァイスは時折顔をゆがめて痛そうに語気を弱める。
「ごめん・・・話し忘れてたことあるんだけど・・・」
「ふぁ?」
グラウは申し訳なさそうにヴァイスに言う。
「実はね・・・俺、入院しないといけないみたい・・・」
「え・・・」
ヴァイスは言葉を失う。
「検診で・・・血が悪いって・・・なんで死なないのか不思議なくらい鉄が少ないんだって。」
グラウの言葉の意味をヴァイスはよく理解できていた。
「だから、この連休終わったくらいに入院するかの結果が出るんだ・・・」
「ごめん・・・俺がちゃんと把握してれば・・・そっか・・・だから最近冷たかったんだ・・・」
泡だらけのグラウに向かってヴァイスは最近の自分の行動を悔いていた。血中の鉄が少ないと、運動機能に支障をきたす、これくらいは生物の授業の基礎の基礎で憶えていた。
でもそんなグラウを俺は・・・と悔いるヴァイス。
「先生はずっと心配そうに俺を診てくれて・・・ロトにもどこからか聞かれてて・・・」
「なんで俺に先に言わないんだよぉ!」
怒るヴァイス。少し照れるグラウ。
「いやぁ・・・貧血がひどいから入院なんて、ヴァイスには言えなくて・・・」
「そんなことないよ!命にかかわるんだろ!」
ヴァイスは口の中の痛みなどもう忘れていた。喋り終わったころにようやく痛くなってくる。
友達の、いや、好きなグラウの身体のことを知らなかった後悔の念をぶつけるように、ヴァイスは仰向けのグラウに覆いかぶさる。
「んぁぁ・・・やめてやめて・・・んっ!」
また、最初の時と同じようにヴァイスはグラウの唇を奪う。でも今度はグラウは拒むことはなかった。
「んふぁ・・・んぁっ・・・んっ・・・」
ヴァイスは今度こそ、と舌をグラウのに絡ませて、泡だらけのグラウの身体と自分の身体を密着させて、逃さないようにする。
2匹はしばし、石鹸の香りの中で濃密な時間を堪能していた。
「んっ・・・」
お互いの口を離すと、その間には透明な糸がかけられていた。
「泡だらけじゃん・・・」
「えっ・・・ふふっ・・・ところで。」
ヴァイスはとろんとしたグラウの瞳を見て、さっきの性欲とは違う欲、承認の欲求・・・自分を認められたい欲求にかられた。
「俺のこと好き?」
大胆にもヴァイスは聞いてみる。
「友達としてね。」
相変わらずのあっさりとした答えに、ヴァイスはむすっとして泡だらけのモノを掴んだ。
「ぎゃぅっ!やめろっ!」
「もうやらないよ・・・さすがに。さっ、洗い流すよ。」
ヴァイスはそう言って、自分の身体に付いた汚れと泡とグラウの身体に付いた泡を丁寧に流していった。仲良く身体を拭きあうと、またヴァイスはグラウを背負って居間に戻った。

「だいぶ匂い取れたな・・・」
コツを掴んだのか、かなりまともに喋れるようになったヴァイスはふと呟く。眠たいのか、ヴァイスの背中の上のグラウと、ヴァイスの間に会話はない。
「みんな帰ってきたかなぁ・・・」
グラウも呟いた。そしてはぁ、と2匹同時にため息をつく。
「あ!グラウくん、よかったよかった。」
どこからともなく現れたヴァイスのお母さんが、グラウを見つけるなり傍に寄ってきた。
「どうしたんですか?」
「今、グラウくんのお母さん・・・グリンさんが来てくれてるよ。」
そう言ってヴァイスのお母さんはグラエナの、グラウの母親、グリンを居間に連れてきた。ヴァイスはタイミング良くグラウを降ろす。
「母さん、どしたの?」
グリンは何度もヴァイスのお母さんにペコペコお礼を言って、よっこいしょ、と後ろ脚を曲げて座り込む。
グラウが小さいせいもあるが、グリンはグラウよりも1回り以上大きいその身体で、グラウをキッと、睨む。グリンと比べて幼い顔つきのグラウはひぃ、と怯んだ。
「はぁ・・・グラウ~!ごめん!連休中ずっとみんな家にいないの!」
グリンは、端正で綺麗な顔つきの割にかなりフランクに話す。
「まぁね、私はね・・・グラウをね1匹で家にいさせたくないんだけど!お姉ちゃんは合宿でしょ~、お父さんは出張~。」
「え!ずっと留守?連休中ずっと1匹で家にいるの?お金ない、1匹、寂しい。予定ない。」
ぽりぽりと無作法に頭を掻くその大きなグラエナは、息子のグラウに比べて、少し大人げない。でもグラウはそんなこと構う様子はない。
「ほんとにごめん~・・・1匹で家にいさせるのは悪いんだけど~・・・」
そう言って何度もグリンはグラウの頭を撫でる。じっとそれを見てたヴァイスは少し妬きそうだった。
「母さん~・・・」
「あ、ごめんなさいね。こんな仲いいところ見せつけちゃって。」
自慢するようにグリンは言う。グラウは照れくさくなってふいっと横を見た。
「あ・・・あの・・・ウチで預かりましょうか?」
ヴァイスのお母さんが聞こえないくらいの声で呟く。
「はい?」
でも、グリンはきちんと聞き取っていたらしく、ヴァイスのお母さんのほうに向く。
「いやぁ・・・グリンさんと私の付き合いじゃないですか。」
「でも・・・そんなの悪いですよ・・・いくらシアンさんと私だからって・・・お休みだし・・・」
ヴァイスのお母さん・・・シアンはグラウとグリンの傍までやってきてなんどもグラウの頭を撫でる。ヴァイスはすっかりカヤの外だ。
「あの・・・どういう関係?」
グラウはふと感じた疑問をぶつける。
「え?グラウは私とシアンの関係をただの隣人だと思ってた?私たち、実は学生時代からの同級生なんだよぉ~。」
「なんでだまってたの!?」
びっくりしてヴァイスも自分の母親であるシアンに言う。
「聞かれなかったからね。」
「そういう問題じゃ・・・ぎゃっ!」
グリンは冷静に言うグラウに抱きついた。グラウを前肢で弄ぶようにぐりぐりと頭を撫でまわす。逃げるように頭を動かすグラウ。でもやっぱり逃げられません。
「きゃぅっ・・・やめてって。」
「まあでも、シアンのところに預けてみるのもいっか。迷惑に感じない?」
グラウ・・・自分の子供で遊ぶグリンはシアンに何度も確認を求めるように言う。
「うん。なんか私の小さい頃にそっくりなんだよね。グラウくんは。」
「あ~・・・そっか・・・だから私が扱いになれてたのかぁ・・・うーん・・・そういえばヴァイスくんって私のちっちゃいころに似てない?」
「あー!ほんとだ・・・うまく入れ替わってる・・・すごーい・・・」
母親同士なにか楽しそうに喋っているが、グラウにもヴァイスにもさっぱりついていけない。たださっきからグリンはグラウに抱きついて身体のあちこちを撫でまわってる。
「グラウ?」
「なに?」
グリンは様子がおかしいのに気付いたのか、上目遣いで自分を見るグラウの下肢をふいふいと触る。下肢がしびれてほとんど動かないグラウにはとてもじれったい。
「やめっ・・・あぁ・・・やめて・・・」
ぐいぐい。
「いだっ!」
グラウの尻尾を引っ張って、グリンはあきれるように言う。
「ちゃんとしびれてるならしびれてるって言ってよ。この前お医者さんに言われたばっかりでしょ?許容範囲を超えて動くとガタが来るって。」
「ガタ?」
カヤの外だったヴァイスがグリンに聞く。
「運動機能に制限が出るってこと。身体もそんなに大きくないのに、無理しないで。一応お薬もらってきたから。」
グリンはガサゴソと首からかけてたカバンを探り、薬袋を2つ取りだした。
「こっちが造血剤、んで、これが鉄剤。これで、薬に効果があれば、入院せずに済むのにね。」
「あの、どういう病気なんですか?」
それを聞くのが怖かったヴァイスだが、勇気を出して聞くと、グリンはまたカバンの中から細長い紙を取り出した。
「ええと。根本的な原因はわかってないんだけど、周期的に血中の鉄量が落ちていくの。これ。」
グリンはヴァイスに細長い紙に書かれた数値を指さす。
「鉄の許容範囲は10-250、でもグラウは1しかない。これが意味するのは、強烈な貧血にいつ襲われても不思議じゃない。それで何かあって死んでも不思議はないって。こら!」
「いだだだだ!やめてよ!」
うっとうしそうに聞くグラウの頬をぐいっとグリンはつねった。
「話を聞きなさい。」
「別に聞かなくてもいいじゃんかぁ。」
さっきから尻尾を引っ張られるし、頬をつねられるし、抱きつかれたままのグラウは拗ねてぷいっと横を向いてしまった。そんなグラウを尻目に、グリンは話を続ける。
「だから、すごく疲れやすいし、突然倒れるかもしれないし。たぶん、夏なのに身体は寒いと思うの。輸血するのもね~・・・怖いし。」
不安そうに、でも拗ねたグラウを嬉しそうに抱いて話すグリンを、シアンもヴァイスもうらやましげに見つめていた。
「ほれほれ~拗ねても駄目だよ~。」
前肢を抱いてるグラウごと、グリンはゆっさゆっさと揺さぶる。グラウの恥ずかしくて赤くなった顔も次第にほころび、またグリンを上目遣いで見た。
「さ、グラウ。私はそろそろ行かないといけないから。シアン、この仔のこと、1週間、お願いね。」
寂しそうなグラウの視線に気づいたグリンはふふっと笑って、自分の身体から離した。シアンも任せて、と笑顔でグリンに応える。
「ちゃんと薬飲んで、言うこと聞いて・・・まぁ聞かなくてもいいけど・・・」
「ちょっ!グリン!」
「ごめんごめん、喧嘩しないでね。」
そう言うとグリンはグラウの頭を撫でて、シアンと一緒に居間から出ていった。ヴァイスと2匹っきりになった居間。うつむくグラウの目の前にヴァイスはやってくる。
「なに?」
「いや・・・大丈夫?」
ヴァイスはよそよそしい物言いをしている。特にグラウは警戒してないけれど顔を上げて、大丈夫、とだけ答えてまたうつむいた。
「あのさ・・・親とずっとこんな仲なの?ポチエナの時から。」
グラウは顔を上げて、不思議そうに見つめるヴァイスの問いに答える。
「前までは普通だったんだよ。家にいたときに貧血で倒れて、それ以来ずっとベタベタなの。」
「へぇ・・・」
何か少し戸惑うような表情を浮かべるヴァイス。またグラウは床にベタっと貼りつくように伏せた。

「ささ、おいしいご飯作らなきゃ。」
玄関にいたシアンがとことこと居間から台所に移動する。
「あ。」
そう呟くとどんどんグラウとヴァイスのところに近づいてきた。
「どうかしましたか?」
身体を起こそうと、動くグラウ。
「あ、起きれた。」
グラウは身体のしびれがおさまって、四肢を嬉しそうにばたばた動かす。それを見ていたシアンもにこっと微笑んでグラウの頭を撫でた。
「何か、お手伝いできることありますか?」
身体を起こして、グラウは言う。
「へ?」
シアンはグラウの一言にびっくりして固まった。
「え・・・ああ・・・手伝い?・・・じゃあ料理作ってるあいだ、話相手になってくれないかな?」
「それでいいんですか?」
「うん。いやぁ・・・よくできた仔だわ・・・ホント。ヴァイスも見習いなさいよ。」
シアンはにこにこ笑いながらヴァイスの頭をバシッと叩く。
「痛ぇ!・・・痛いよ・・・」
「寝なさいよもう。私はこれからグラウくんと一緒にお料理しないといけないんだから。さ、台所行くよ~。あ、ヴァイス?後で起こしに行くからその時までに起きててね。」
ヴァイスは嬉しそうなシアンを横目に、とぼとぼと自分の部屋に戻っていった。

台所に着いたシアンとグラウ。
「さ、これつけて。」
シアンは水色のエプロンをグラウに差し出す。グラウは戸惑いながらもエプロンを着ける。
「おっ・・・よく似合うね。可愛い。」
自分もピンクのエプロンを着けて、グラウに言う。シアンは話相手、といいつつもグラウに料理のコツを教えたり、実際に調理を手伝わせたりしてる。
「塩とって。」
「はい。」
グラウは白い粒の入った白い匙の容器を渡す。ありがと、とシアンは礼を言うが、動きを止める。
「グラウくん。舐めてみなさい。」
シアンの指の上に少量の白い粒が乗っている。グラウは言われるがままにそれを舐めた。
「はい・・・ん?甘い・・・ごめんなさい・・・」
自分が砂糖と塩を渡し間違えたことに気付いたグラウは謝った。
「いやいや、いいの。私が言ってなかったから・・・黄色い匙のほうがお塩。白い方はお砂糖。わかった?」
「はい。」
少し落ち込んでいるグラウにシアンは気付いていたけれど、どう励ませばいいかわからず、昔話をしようと思った。
「昔ね・・・私大好きな仔がいたの。その仔も私のことが好きだった。でも・・・その仔とは結ばれなかった・・・」
じっとグラウはうなずきながらシアンの話に聞き入っている。
「理由は簡単だった・・・♀だったから・・・お互いね。」
驚いた表情でシアンを見たグラウ。照れくさそうにふふっと笑うとシアンは話を続ける。
「でも、今も連絡毎日取ってるし、その仔も家族もいて、幸せみたいだから、お互いに未練も何もないけどね。ささ、出来たぞ。」
そう言ってシアンは、深鍋に入ったシチューをお皿に分けていく。グラウもお皿をテーブルに運ぶ。
「ふぅ・・・こんなもんか。グラウくん、ヴァイスを起こしてきて。」
「はい。」
グラウはもう1年くらい行ってないヴァイスの部屋に向かった。ギィとドアを開けると幸せそうに眠っているヴァイスがいる。
ヴァイスが眠っているベッドに近づくグラウ。
「起きろ~。」
ゆさゆさと前肢でヴァイスをゆすってみるけど、やっぱり反応はない。くぅくぅと寝息を立ててるだけ。
「起きろ!」
叫んでみても、むにゃむにゃと寝言を言うだけ。
「あぁ・・・ぐらう・・・」
寝言で自分の名前を呼ばれたグラウはむかついてバシッとヴァイスの頭を叩く。う~う~と唸ったあと、また元通り気持ちよさそうに寝息を立ててる。
「んああ・・・起きない・・・」
「ぐらう・・・きもひいいよ・・・」
「何の夢見てるんだろ・・・鳥肌立ってきた。」
どうやって起こそうかとグラウは思案するけれど、なかなかいい案は浮かばない。
「やっぱり。こうなってると思った。起きてるわけないもんね~・・・」
遅かったみたいで、シアンが様子を見に来た。グラウは全く起きないことを報告すると、シアンは大丈夫、と言ってヴァイスのすぐそばまで行く。
「・・・ぁぁ・・・きんかくじ・・・こわい・・・ぐらう・・・たすけて・・・」
「さっさと起きろ!」
シアンはそう言うとヴァイスの身体を思いっきり揺さぶった。頭をがくがく揺らすヴァイスは気持ち悪いのか目を半開きにしたまま揺さぶられている。
「うぇぇぇぇ~・・・ってお母さん!なにやってるんだよ!」
嘔吐しそうな声を上げて、ヴァイスは目を覚ます。はぁ、とため息をついたシアンはヴァイスの頭を軽く叩くと、ご飯だよ、と言ってグラウとヴァイスを居間に連れ戻した。
「うおぉ・・・」
ヴァイスは変な唸り声をあげて、シチューをがつがつと食べていく。それを見ていたグラウは前肢を合わせて、ふふっと笑う。
「いただきます。」
グラウもゆっくり食べ始める。シアンは2匹の食べ方の違いに少し戸惑っているような表情を見せたが、グラウのほうを見ながらお茶をすする。
「ねえ、グラウ君はいつも家では手伝ったりしてんの?」
シアンに聞かれたグラウは食べるのをやめて、頭をポリポリと掻いた。
「母さんからやらされてるんで・・・たいていのことは。ご飯を作る以外のことなら・・・」
「へぇ・・・」
感心感心、とうなずいたシアンはヴァイスを睨む。
「この仔もそれくらい出来る仔ならいいんだけどね。」
「んあ?」
ヴァイスはシアンの声に気付いて、食べるのを止める。
「俺って結構出来る仔でしょ?」
何の悪気も感じない声にシアンは切れそうになるが、グラウがくすくす笑ったので、とりあえず抑えることにした。
「じゃあ、明日から掃除洗濯、炊事に頑張ってね。」
「え!?」
にこにこ笑顔でヴァイスに言うシアン。ヴァイスは拒否できないものだとわかっていた。昼のぼこぼこにされた一件ですでに。
「私はグラウくんといろいろお話したいことがあるから。じゃあ、早速お皿洗いよろしく。断ったら・・・」
笑顔のシアンは目に力を入れて、ヴァイスを睨む。ヴァイスは後悔した。調子に乗って適当なことを言ってしまったことに。グラウは事の成り行きをじっと見守っている。
「さ、さ、食べて食べて。冷めるよ。」
「とても・・・おいしいです。」
グラウの言葉。でも、その笑顔と言葉は気遣いで無く、本心であることをシアンはわかっていた。そのグラウの笑顔は母親のグリンに似ているだけでなく、気持ちまで同じだと、感じられた。
「グラウくん・・・ありがとう。」
にこっと笑うとシアンはグラウの頭を撫でる。嬉しいな、と思ってグラウを撫でるシアンだが、その心は見た目からでは分からないグラウに色濃く残るグリンの名残を見つけていた。

晩御飯が終わると、3匹は思い思いに過ごしている。グラウとヴァイスはゲームに熱中し、シアンは自分の部屋にこもって昔の日記を何度も読み返していた。
「おい~・・・眠いからって適当にやるなよ~。」
ヴァイスはあくびをしながらゲームをするグラウに言う。
「うん・・・ごめ・・ふぁぁ・・・」
適当に謝って、その場を流すグラウに、ヴァイスはこつん、と頭を小突いた。
「お風呂入りなさい。っていってもヴァイスはグラウくんと入ったらだめよ。グラウくん、一番最初に入ってくれない?」
「はい・・・」
グラウは待たせちゃいけないと思ってあわててお風呂に入って、そしてまたあわてて居間に戻ってきた。
「早いね・・・あわてなくてもいいのに。」
「いや・・・ありがとうございます。」
気づかいをするシアンに感謝をするグラウ。次にお風呂に入ったヴァイスはゆっくりと入浴してたみたいで、ちょっとのぼせてた。
「なんでのぼせてんの?」
「いや・・・ゆっくりしてたら、ボーっとしちゃって・・・」
普段蒼い顔を真っ赤にのぼせさせたヴァイスは息も絶え絶えに、グラウにいう。
「また・・・ゲームするか。」
「うん。」
ヴァイスとグラウはまたゲームにかじりつき始めた。シアンはそのころ・・・入浴中。
「もう飽きた・・・」
退屈そうに何度もあくびをするグラウ。
「そんなこと言うなよ、グラウ~。」
ヴァイスはそう言ってグラウの頭を何度も撫でる。ふるふると頭を振ってヴァイスの前肢を振り払うグラウ。
「なんだよ~。仲良くしようぜ~。」
「やめろって。暑苦しいんだって。」
首を横に振るグラウの身体にヴァイスは抱きついた。前肢で何度もグラウの身体を揉んだり、つまんだりしてる。
「やめて・・・」
「そんなこと言ったってダメダメ。」
グレーと黒の身体に覆いかぶさる白。白は愉快そうにグレーと黒を弄ぶ。時折波打つように白は動き、グレーと黒は身悶える。
「もういいでしょ・・・昼間ので・・・」
「なにが~?」
グラウの訴えにもヴァイスはおどけて答える。とことこと誰かがグラウ達に近づいてくる。
「こら!ヴァイス!」
シアンが、大声でヴァイスを叱る。怯えてヴァイスはグラウから退いた。
「さ、もう寝よっか。グラウくんは居間の横の空き部屋使って。もう布団は敷いたから。」
「ありがとうございます!」
グラウの屈託のない笑顔に、シアンもほほえましくなる。怒られたヴァイスは自分の部屋に逃げるように戻っていった。
シアンはグラウを部屋に案内し、何もないけど・・・と布団だけが敷いてある空き部屋を見せる。
「じゃ、お休み。」
「おやすみなさい、シアンさん。」
名前を言われたシアンは少し照れてグラウを見つめる。
「あのさ・・・」
「んっ・・・」
シアンはグラウの唇を奪った。軽く。わずかの出来事だった。
「じゃ、おやすみなさい。」
「おやすみなさい・・・」
キスをしたシアンは懐かしそうに、嬉しそうに、グラウを見つめた。大好きな友人の面影を目の前にして・・・

「くぅくぅ・・・」
グラウは伏せて寝息を立てている。部屋は暗く、窓から差し込む月光だけが、唯一の光源だ。月の光はうっすらとグラウの身体を映す。
ギィ・・・ドアが開く音。でも誰もそれに気付かない・・・現れたのは白と青の身体を持つ生き物・・・
「グラウ~・・・」
ヴァイスだ。ゆっくりと音をたてないようにグラウに近づく。別に何かしようと言うわけではない。なかった。さっきトイレに起きてくるまでは。
「グラウは俺のこと好き?」
寝ている相手に向かってヴァイスは聞く。もちろんグラウは答えるはずがない。
「くぅくぅ・・・」
ヴァイスは満足げにグラウを見つめる。昼間の淫靡な姿とは打って変わって可愛い寝顔。と言っても淫靡な姿にさせたのはヴァイス自身なのだが。
白濁に塗れ・・・と変な想像をしているうちにヴァイスは、グラウが自分のことを好きと言ってないことを思い出して、この部屋にやってきたのだ。
「俺のこと好き?」
何度となく言うヴァイス。もちろんグラウは答えるはずがないのだが。
「・・・ん・・・くぅくぅ・・・」
反応はしているみたいで、時折声にならない声を出して、ヴァイスに答える。
「それどっちなんだよ~。」
と、前肢でグラウの頬をプニプニと突くヴァイス。嫌そうに顔をヴァイスのいないほうに向けるグラウ。
「グラウは俺のこと好きだよね~?」
やっぱり何も答えない。
「好きって言えよ!」
「何してんの?」
母親の声にびくっと大きく身体を震わすヴァイス。見られてた・・・
「見てたの?」
「うん、入るところから今までずっとね。」
いやぁ、とヴァイスは照れくさそうに身体をくねくね動かす。
「さてと、朝までお説教かな。来なさい、って言うか来い。」
シアンはものすごく嫌がるヴァイスを思いっきり引っ張って、ずりずりと自分の部屋に連れていった。

・・・ヴァイスの夜はまだまだこれからだ。(お説教タイムという意味で。


いかがでしたでしょうか、久々の♂×♂モノは。
終始ネタに走ってしまいましたが、キャラを上手く立てれたとは思います。


誤植、指摘、コメントなどは↓へお願いします。


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Last-modified: 2010-10-17 (日) 00:00:00
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