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PHOENIX 24 ‐疑念‐

/PHOENIX 24 ‐疑念‐

PHOENIX
作者 SKYLINE
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24話 疑念

別行動していたナイト達と数日ぶりに合流し、しばしその場で互いの無事と再会の喜びを分かち合いながら私達は他愛もない会話に花を咲かせていた。
互いに別行動している間にこんな事があったとか、こんな物を見たとか、本当に他愛もない内容なのだが、数日間顔すら見ていなかった皆との話は自然と弾み、色々な話に展開していく。
そんな楽しい会話に終止符を打ったのは、私達を束ねるナイトであった。
私達を束ねる隊長である彼の言葉にはどこか不思議な力があるようで、私達全員が彼の一声に瞬時に口を閉じる。
今日、初めてナイトと出会った筈のバンですらも、黙り込んでいた。
ナイトはそんな私達一人一人に目を合わせ、自分の話を聞いていると言うのを目で確かめ、最後に自分の隣に居るデイを横目で見た後に何時もの彼と同じとても落ち着いた雰囲気で話始めた。

「会話を切ってすまなかったが、そろそろ切り替えよう。先ず、こっちから知らせておくことがある。……この部屋に来る前に見たと思うが、俺達に協力してくれる新しい仲間についてだ。以前ブイエイト町で襲撃を受けた時、俺達以外にも町の皆が同様に襲撃を受けていたんだ。つまりは軍は怪しいと思った場所を虱潰しに調べていたんだろう。それでブイエイト町を事実上統治していた暴力団も襲撃を受けたんだ。俺達はその暴力団の頭に接触してな、色々話をして協力してくれる事になった。このアジトも彼らの協力なしには確保できなかった。彼等には感謝し……そしてくれぐれも喧嘩はするなよ」

廊下に居た彼等が仲間なのは聴かずとも分かっていたが、どうりで廊下に柄の悪い人達が居た訳だ。
私は間違っても喧嘩なんてするつもりはないが、バンは少々危なそう。
警察官という仕事をしていた彼は、あのような人達を取り締まるのも仕事の一環だっただろうし、性格的にも喧嘩しそうだ。
横目でそっとバンを見てみれば、ナイトの話を聞いて少し表情が硬くなっていた。
やはり、暴力団と手を組むのが少なからず納得できていない様子。
常に彼を見張っておくなんて出来ないし、いくら彼とは言えど、そんな事をするのは失礼に値するだろう。
四六時中誰かに見られているなんて私だってストレスが溜まってしまう。
ここは、彼の自制心に委ねるしか無さそうだ。
いざとなったら、ナイトやリュウが止めてくれるだろうし。
ただ、心配なのは鉱山の時のようにいきなり“破壊光線”をぶっ放すことだ。
あの時は奇跡的に助かったが、ここで放たれたら今度こそ私達の命を奪う事になる。
それだけはバンに警告しておこうと、相変わらずの疑いを持った横目でバンを見ながら呟くように、けれど彼にははっきりと聞えるように言った。

「バンさん。くれぐれも喧嘩したり、いきなり“破壊光線”とかぶっ放さないでくださいよ?」

「な、なんだその疑いの目は!……幾らなんでも俺だってあの時の事は反省したし、そんな馬鹿じゃなぇよ!」

そんな事を言われても、今まで自分の行動を振り返ればそういった目で見られるのは必然でしょ……って、彼に言葉に突っ込みたくなる。
しかし、彼の性格を考えればここで言い返したら話が長くなりそうだから切っておく。
バンの言葉を華麗(?)にスルーし、私は話しをしているナイトに視線を戻したが、それと同時に後ろから囁くような声がしてきた。

「どうだか……」

その小さな一言はバンの耳にも届いていたようで、バンはゆっくりと振り返った私とは正反対に素早く、そして大きく振り返る。
振り返った私の視線の先には、クスクスと笑うグレンとイーブイの二人が居た。
その二人の表情を見たバンは目を鋭くして顔を顰め、歯軋りを立てている。
バンに対して何かと鋭くものを言うグレンは睨まれても怖くなどない……とでも主張するかのように未だにイーブイと一緒になってクスクスと笑う。
まぁ、冗談交じりにからかっているだけだろうし、バンもそれが分かっているのか、怒ってはいるものの本気で怒っている訳ではないようだ。
それにしても、別行動し始めてからどうもグレンとイーブイは仲が良くなった気がする。
歳が近いだけあって、話が合うのだろうか。
……おっと、あまりナイトから目を逸らしているとそれこそナイトに本気で怒られそうなので、グレンとバンの言い争いを観戦するのはこの辺にしておこう。
まぁ、この言い争いが始まってのは私が原因なのかもしれないけど……
放っておけば自然に終息するだろうから、種を撒いといて放っておくと言う無責任かも知れないが、ここは放っておく。
それから数分、ナイトが別行動中にあった事や、新しい仲間についてなどの話は終わり、解散となった。
そのころには私の予想通りにグレンとバンの言い争いも終っており、互いに普段の表情に戻っている。
ナイト曰く、長距離の移動で疲れただろうからゆっくり休めとの事。
ただし、リュウは私達と違って居残りのようだ。
恐らくは別行動時の隊長だった彼は掴んだ情報を話し、フェニックスの材料となる鉱石をナイトに渡すのだろう。
ざわざわと話しながらナイトから休めと言われた皆は部屋から出て行く。
私は最後までこの場に残り、部屋からぞろぞろと出て行く皆の背中を理由もなく眺めていた。
自分でも何故眺めていたのか分からない。ただ、なんとなくだ。
しいて言えば、久しぶりに再会した皆の姿が私の目に新鮮だったのだろうか。
ぞろぞろと出て行く皆をぼんやりと眺めていた私であったが、ふと、後ろから声を掛けられた。

「どうした?そんなところに突っ立って。皆に付いて行って部屋で休んでろって」

「いや、私も残るよ。どうせならリュウと一緒に居たいし」

「そ、そうか……まぁ、本心を言えば俺もフェザーとは一緒に居たいんだけどな」

普段は少し恥ずかしがり屋であまり今のような事は口に出さないので、少し驚いてしまった。
普段なら照れてしまいそうだが、今日はなんだか自然と恥ずかしくはない。
ここに来る途中、皆が見ている中で恥ずかしさを気にせず二人で身を寄せ合って歩いていたから、それに比べれば普段口に出さないこういった会話であっても、あまり恥ずかしさは感じなくなった。
それに、私達を見ているのはせいぜいナイト一人。
彼は既婚者なのだから私達の会話を聞いたり見たりしてもグレンのように嫌らしい笑みを浮べたりはしないだろう。
寧ろ彼がそんな顔をしていた方が驚きだ。私の中で彼に対するイメージの崩壊になりかねない。

「ゴホン……聞きたい事があるんだがそろそろ良いか?」

「あ、はい。すみません」

私とリュウが二人で話をしていたせいで、ナイトは聞きたい事を聞けずにいたようで一度、かなりわざとらしく咳払いして私達の注意を自分に引き寄せた。

「早速、手に入れた情報と材料の鉱石からフェニックスへの対抗手段を考えよう」

「そうですね……とりあえず、俺達が突き止めたのは軍の作るフェニックスの弱点は恐らく水であるという事です。フェニックスは普段、俺達ポケモンが体内に蓄えている程度の水分ならそれをエネルギーとしているみたいですが、大量の水には弱いと思われます。簡単な実験をして結果も出ましたから確実かと……後はその弱点をどうやって突くかです」

「大量の水か……フェニックスを入れられた相手に“雨乞い”などで水を掛けたとしても、体内にあるフェニックスには効果は無いだろうし、戦闘中の相手に水を飲ませる訳にもいかないからな……」

リュウから私達が突き止めたフェニックスの弱点を聞かされたナイトであったが、彼の知能を持ってしても、そう直ぐには対抗手段が浮かんでこないようだ。
顔を若干だが下に傾け、視線を床に当てるナイトの表情は何時もにも増して真剣な表情で、それに釣られるかのようにリュウも目付きを変えて真剣に考え出す。
久しぶりの再会を果たした先程とは打って変わり、和やかさなど微塵も存在せず、部屋には重い空気が淀んでいた。
元々、突貫工事だったせいで塗装の施されていない無機質な壁や天井、さらには私達の足元に広がる床が、重くなった場の空気に拍車を掛けているようにすら感じてくる。

「やはり……フェニックスを入れられる前に全てを破壊する必要がありますね。フェザーが言うには、軍は俺達を含めた国民全てにフェニックスを入れるつもりらしいですし」

一時の沈黙はリュウが呟くように言ったナイトへの意見によってささやかに破られ、今度はリュウに釣られるようにナイトが顔を上げた。
私はリュウの後ろでただ二人の会話を聞いているだけ。
確かに皆の役……それ以上に悩んでいるリュウの役に立ちたいが、私程度の知識で役に立てる自信がなく、ナイトとリュウに突き付けられているこの問題について何か考えようともしていなかった。
今の私には役立たずという言葉がお似合いだろうか。
リュウとナイトはそんな私を気にする事なく、互いに持てる知識の全てを注いでいるような真剣な表情でフェニックスへの対抗手段を未だに考え続けている。
しかし、結局有効な対抗手段が見つからないまま、二人の会話は終焉を迎え、後はリュウが私達の知り得た情報を事細かくナイトに伝え、入手したフェニックスの材料となる鉱石をナイトに譲渡して詳しい分析やらを頼んでいた。

「さ、皆の所に戻ろう」

「うん」

ナイトに鉱石を渡したリュウはゆっくりと振り返り、先程の真剣な表情とは似ても似つかない穏やかな表情で私を見るとそのまま歩き出して、私の横を通って扉に歩いてゆく。
私もそんな彼に釣られるように歩き、二人一緒に部屋から出た。
部屋の外は相変わらず柄の悪い人達が屯しており、雰囲気は物々しい。
この居心地の悪い場所からはさっさと抜け出したいところだ。
私は逃げるように早足で蛍光灯に照らされた窓のない廊下を進み、会話の終盤でリュウがナイトから教えてもらっていた部屋に急ぐ。
廊下で屯している人達は仲間なのは確かなのだが、私達を睨んでくる鋭い目付きが怖く、絡まれる前に……言い方は良くないかも知れないが彼等を視界から消したかった。
“そんなに急ぐなよ”とでも言っているかのような表情で歩くリュウは、私と違って鋭い視線が気にならないのかゆっくりと歩いている。
私もリュウのように割り切れるようになりたいが、どこか彼等のイメージの悪さが抜けず、どうしても目を合わせられない。
ナイトに指示された部屋は以前のアジトとは違って広さはあるのだが、どうやら今回は皆と共用のようだ。
さすがに新たな仲間が増えたので、いちいち個室など用意出来ないのだろう。
部屋の中では皆が雑談を交わしていたり、グレンの傷をデイが診察したりしていた。
扉の前でじっとしている私に気が付いた明るく楽天的な性格のブースターが手招きならぬ足招きする。
どうやら会話に混ざれと言っているようだ。
……結局、今日は移動で疲れた体を休める一日とし、再会を果たした皆と楽しく会話を楽しみ、その後は普段就寝する時間よりも早く眠りに付いた。








一方、再会を果たし、和やかな雰囲気のフェザー達とは違い、軍の秘密施設は軍隊という事もあり、和やかさなどは存在しなかった。
さらには、何時もより施設内は騒がしく、兵隊や研究員と思われる者達が廊下を行き交っている。
そんな廊下の一角に保管室と書かれた部屋が存在し、そこには改良され、小型化されたフェニックスは、気温、湿度、その全てが徹底的に管理され、密閉された室内に保管してあった。
無論、警備は厳重で、監視カメラに、兵士二人が入り口の前に常駐し、そこだけは異様に程物々しい空気が漂う。
施設の外では、辺りがすっかり暗くなり、朧月と雲間から見える宝石のような星々が闇を優しく照らす中で砂粒程の大きさにまで小型化されたフェニックスを散布する為、新しく屋外に建設された特注の散布機を丁寧に整備する兵士達が動く音が無音の暗闇に響く。
着々とフェニックス計画実行の時は近付いており、スプーンは自室で準備を進める兵士達の様子をモニター越しに眺めていた。

(準備はほぼ整った。後は保険として自らが潜入しているあの方から連絡が入れば……)

液晶画面から放たれる光りが、スプーンの顔を怪しく照らし、彼の瞳には保管室に大量に保存された恐ろしきフェニックスが写りこんでいた……
時を同じくして、秘密施設が木々の間から見える森の中に、フェザー達の味方についた暴力団のマッスグマとリザードがナイトからの指示で偵察を行っていた。
近くの町の住民などに場所が知られないように一切の照明もない中で、懐中電灯を片手に新たに建設された散布機のチェックを行う兵士の様子を二人は暗視ゴーグル越しに鋭く睨む。
マッスグマはともかく、リザードは尻尾の先端から常時炎が噴出しているので、夜間の偵察では位置がバレてしまいがちなのだが、もちろんリザード本人もそれに付いては理解しており、彼の尻尾の先端には耐火性に優れた黒い布で覆われ、炎の光りが見えないようになっていた。
暗視ゴーグル特有の緑がかった視界に映る散布機を睨みながら、リザードは小声に白い吐息を乗せてマッスグマに尋ねた。

「なぁ、あれは一体なんだ?」

「さぁな、ただ、フェニックス計画とかに関係するものだろう。早速写真を撮って送ろうぜ」

「そうだな」

リザードは暗視ゴーグルを外し、背負っているバックを下ろすと、チャックと開けて中から暗視ゴーグルと同じく夜間でも対象を撮影できる特殊なカメラを構える。
しかし、その時、彼らの背後の叢から物音が響いた。
シャッターを切ろうとしていたリザードと、暗視ゴーグル越しに秘密施設を睨んでいたマッスグマは素早く振り返り、同時に身構えた。
緊張の中で、互いに一度目を合わせてからマッスグマが叢を睨みながら小さな声で怒鳴りつける。

「誰だ!?出て来い!」

マッスグマの声に反応したかのように再度、叢がざわめくと、背の高い草を掻き分けながら、一人のゲンガーが姿を現した。
彼の体には、軍のバッジが付けられており、軍人だと言うのは歴然。
当然の如く、マッスグマとリザードは構えを崩さず、いつでも攻撃できる態勢を維持していた。
一方、叢から姿を現したゲンガーは両手を高く上げ、敵意が無い事を二人に見せている。
偵察を行っている二人から見て、そのゲンガーは明らかに様子が変であった。
普通なら、偵察中に一番見つかりたくない軍人に見つかってしまったので、手を上げるのはマッスグマとリザードの二人なのかもしれない。
しかし、ゲンガーは二人にお決まりの“手を上げろ!”と言った台詞を吐かず、何故か自分が手を上げている。

「何のようだ?」

様子がおかしいながらも、マッスグマは警戒を解く事なくゲンガーに尋ねると、ゲンガーは手を上げたままの状態で、ゆっくりと口を開いた。

「あんた等、フェニックス計画を阻止しようとしてる連中だろ?……実は俺、フェニックス計画には反対なんだ。それで、あんた等に協力したくて……」

「フン、どうせ嘘だろ。……騒がれる前にコイツを始末しようぜ」

「あぁ、同感だ」

全くと言って敵意を見せていないゲンガーに対し、敵意……寧ろ殺意と言っても良いそれをむき出しにするマッスグマとリザードは、身構えた状態から、ゲンガーに攻撃を仕掛けようと駆け出そうとする。
二人の足がゲンガーに向かって踏み出されようとしたその時、ゲンガーは慌ててポーチから丸められた一枚の紙を取り出し、それを二人の前に放り投げた。
方物線を描きながらゆっくりと二人の前に落ちたその紙を、マッスグマは警戒しながらも手に取る。
そして、丸められた紙を広げたマッスグマの目が見開いた。

「こ、これは……!!」

「どうした?何が書いてある?」

目を見開くマッスグマの傍らで、依然としてゲンガーを睨みながら身構えているリザードが視線をゲンガーから移さずにマッスグマに小声で尋ねる。

「こりゃ……施設内の地図だ。それもかなり詳細だ」

「詳細な地図だと?」

返って来たマッスグマからの答えに、ゲンガーを睨み続けていたリザードの視線もその地図に移される。
ゲンガーから渡された思わぬ物に、マッスグマとリザードは動揺を隠す事が出来なかった。
張り詰めた緊張の中で偵察を行っていた彼等にとって、その詳細な地図は彼等の心情に大きく作用し、しばらく地図を見入っていた二人が揃ってゲンガーを見ると、彼は依然として手を上げたままで、抵抗する様子は無い。
そして、ゲンガーを敵としか見えていなかった二人の目も、今は鋭さを失いつつあった。

「それはお前達にやる。その地図に色々とあんた等が必要な情報は記載しておいた……有効利用してくれ。後、フェニックス計画の実行は近い。甘く見積もっても一週間以外に実行される……それにフェニックスは小型化されてばら撒くだけで効果を発揮するように改良された……まるで細菌テロみたいにな。だから、何としてでもあの恐ろしい計画を阻止してくれ」

「…………」

ゲンガーの嘘を付いているとは全く思えない態度と、渡された施設内の詳細な地図、さらにフェニックスが改良されていると言う事実にマッスグマもリザードも、彼を信じて良いと思い始めていた。
暗闇の中で、マッスグマは取りあえず渡された地図を再び丸め、それをバックの中に仕舞う。
施設内の詳細な地図を渡したゲンガーは最後にマッスグマとリザードに“頼んだぞ”と言い残し、その姿を闇に消した。
残された二人は一度顔を合わせてから、互いの意見が一致したように同時に頷くと、偵察を中断してフェザー達の潜伏するアジトに向かって闇夜の森を軽快な動きで木々の間縫って駆け出したのだった。








ナイト達と合流した翌日、私は昨日何時もより早く眠りに就いたせいか、目が覚めたのは日の出前の早朝だった。
部屋のスペースと人数的に、ベットなど無く、無造作に敷かれたたった一枚の、それも決して質が良いとは言えない布団から私は体を起す。
部屋の中はまだ誰も起きては居ないのか、聞える音は時計の秒針が動く音と、誰とは言わないが体が大きな人の豪快な鼾ぐらい。
薄暗い部屋は足元に注意しないと誰かを踏んでしまいそうだ。
……さて、少し喉が渇いたから水でものもうか。
そう思い、立ち上がった私は薄暗い部屋の中にスペースの問題で足の踏み場も無いくらいに敷き詰められた布団と、そこに眠る皆の間を縫って進み、皆が目を覚まさないようにそっと扉を開けて部屋の外に出た。
廊下は静寂そのもので、物音一つ聞えず四方八方が灰色に染まっている。
当然、蛍光灯も点いてはなく、部屋から漏れる僅かな光だけが、私の視界を確保していた。
半分手探りで廊下の蛍光灯のスイッチを探し、それをオフからオンに切り替えると、細かく点滅した後、寝起きの目には眩しい位に廊下を白光が照らし出す。
私は目が慣れてから何処かにあるだろうキッチンを捜し、彷徨った。
途中、暴力団の人達が眠っている部屋に入ってしまったりもしたが、幸いな事に誰も目を覚ましていなかった。
ただ、扉を開けた際の物音に反応して寝返りを打った人などが居たが目を覚ます事はなかったので、取りあえずセーフ、セーフ。
キッチンを何とか見つけ、そこでコップ一杯の水を飲んだ後、私は寄り道なしに一直線に部屋に戻ろうとした。
無機質な灰色の上に蛍光灯の白光が被さる廊下を未だ残る眠気と戦いながら進み、私は部屋のドアノブに翼を掛ける。
と、その時だった。
突然、物音が響いたかと思うと、地上へ続く階段がある場所とこの廊下を隔てている一際頑丈な扉が重低音を響かせながら開いた。
開いた扉に私が目を奪われた時には、そこからナイトが仲間にしたと思われるマッスグマとリザードが全速力で駆け抜けていったのだ。
それも私に向かって“邪魔だ!退け!”と怒鳴りながら。
正直、彼等の態度は私の逆鱗に触れそうだったが、ナイトから喧嘩はするなと釘を刺されていたので、私は何も言わずに彼等の背中を見詰める。
少し、目付きが悪くなっていたかもしれないけれど……
二人は吸い寄せられるようにナイトの部屋へ入って行き、私の視界から姿を消した。
随分と慌てていた様子だったが、何かあったのだろうか?
まぁ、きっと朝になれば皆にナイトが話してくれるだろう。
部屋に戻り、少し不吉な予感が残っていたが私はあまり思い詰めないようにして再び眠りに就いた。
二度目に私が起きたのは、いや、起こされたと言うべきか。
その時は、既に日の出を迎えた後で、寝ていたのは私だけだった。
既に皆の姿は無く、きっと各々に朝食やらを摂っているのだろう。
私を起こした張本人であるリュウは、なにやら焦ったような表情で、私に何かを訴え掛けてきていた。
重い瞼を擦りながら、私は寝起きのはっきりしない耳でその声を受け止める。

「フェザー、緊急事態だ!早く起きろって!」

「……ん?緊急事態?」

全く、リュウも朝から元気な事だ。耳元で大声を出されたら煩くて……って緊急事態!?
俗に言う寝ぼけた状態から、私は一瞬で目が覚めた。
リュウの言った緊急事態と言う単語と、彼の表情から私の頭の中に別行動する前に受けた襲撃が嫌でも思い起こされた。

「もしかして、また軍に見つかったの?」

「いや、見つかった訳じゃないんだが……寧ろ見つかるより問題かもしれない。とにかく来てくれ」

軍に見つかるより事より、問題だなんて……一体、私達に何が起きているのだろうか。
私には、想像も付かなかった。
突然の事態に混乱する私の翼をリュウはジャウとの戦闘で負傷し、包帯の巻かれた前足で握ると、私を引っ張って駆け出す。
あまりに突然リュウが走り出したので、少し驚いたが、私は転ばぬように彼のペースに合わせようとする。
けれど、私が転ばないように体勢を整えている間に、直ぐに私とリュウはナイトの部屋に辿り着いた。

「ちょっと、そんなに慌てる必要があるの?」

「あ、すまん。ちょっと急ぎすぎたか……けど、緊急事態なんだ」

さっきから緊急事態と言っているが、未だに私は何が緊急事態なのか何も理解していない。
ん?……もしかしたら、日の出前の早朝に見た、マッスグマとリザードが関係しているのだろうか。
彼等も、今のリュウのように焦っていたようだったし。
とにかく、中に入ればナイトが全てを話してくれると信じよう。
リュウが開けた扉を潜り、私がナイトの部屋に辿り着いた時には、既に皆が集合していた。

「フェザーさん、遅いですって!」

「ごめん」

グレンから浴びせられた遅いと言う指摘を軽く謝って受け流し、私は集合して整列している皆の列に並んだ。
重々しい空気に満たされた部屋の中で、私達の先導するナイトは壇上に立つ演説者のように私達の視線を受けながら立った。
これから一体何を話すのだろうか。
私の中はそのたった一つの疑問で埋め尽くされていた。
周りの全員とまではいかなくとも、大多数の皆は隠しきれない不安が顔に現われている。
ナイトの表情も普段から真面目な彼でさえも初めて見るような真剣な顔で、リュウの言う緊急事態はそうとう深刻な事態なのかもしれない。

「さて、率直に言うが、今朝……それも日の出前の早朝だ。偵察に行っていた二人が帰還してな。彼等から信じがたい情報を知らされた。……軍は少なくとも、一週間以内にフェニックス計画を実行するらしい」

一週間以内にあの恐ろしい計画が実行に……!?
ナイトから知らされた事で、ようやく私は緊急事態と言う事が理解出来たが、同時に背筋が凍るような感覚も覚えた。
雪山を降りた後に起きたあの惨劇がまた繰り返されようとしているのだ。
リュウも私と同様にあの時の二度と経験したくない惨劇を思い出したのか、表情はとても険しいものだし、周りの皆もざわざわと動揺していた。
ナイトは動揺する私達を“静かにしろ”と、一喝して黙らせ、話を続ける。
彼の話では、偵察に向かった人が得た協力者からの情報によると、フェニックスが小型かされ、今までように誰かの手によって混入するしかなかったのが、散布するだけでその効果を発揮できるように改良されたらしい。
まるで、細菌テロのように……
あの計画が実行されるだけでも身も凍るような恐怖を感じるのに、改良までされているとなると、もはや私は恐怖を通り越して、絶望していた。
こちらは、まだこれといった対策が立てられていないのに、相手……軍は改良までして計画を実行させようとしている。
言うならば……防ぎようが無い状況だった。
秘密施設の位置は割り出せているので、総攻撃を仕掛ける事も可能だが、散布されたら最後、私達も軍の操り人形になってしまう。
一体、どうすれば良いのだろうか。
深い絶望に飲まれたは私だけではなく、周囲に集まった皆が手の施しようがない状況に黙り込んでしまっていた。
けれども、その中で一人、ナイトだけは私達と違い、落ち着いている。

「いいか、確かに状況は厳しい。だが諦めるな。協力者から秘密施設内の詳細な地図を受け取った。これで内部に侵入するのは容易になった。さらに地図に記載してあった情報に寄れば、フェニックスは保管室と言う場所に全てが保管されているらしい。つまりはそこまで辿り着き、それを纏めて破壊すれば良い」

「で、でも、どうやって破壊するんだよ?弱点が水だとしても、大量の水が必要なんだろ?そんな大量に水を持ち込めないし……」

諦めるなと言ったナイトに、彼の相棒とも言えるサンダースが耳を垂れ下げながら、明らかにトーンの下がった重い声で彼に反論するかのように聞き返す。
私も諦めたくはなかったが、サンダースの言う通りで敵だらけと想定される室内に、大量の水を持ち込むなんて不可能。
水の沢山入ったタンクなんて担いだら、動きが鈍くなって敵の攻撃をかわせない。
水タイプであるシャワーズに同行してもらい、水タイプの技で破壊する……と、言うのも浮かんだが、彼女にも限界はあるし、“水鉄砲”ならともかく“波乗り”などの大技を繰り出すには何かしら水源が必要になってくるので、室内での使用は出来ない。
勿論、室内では“雨乞い”を繰り出す事も不可能だ。
考えても考えても、有効な手段を私は思い付く事が出来ず、込み上げる焦りが私を苛立たせた。
焦ったり、絶望したりしている皆と違い、唯一冷静さを保っているナイトは、心配は無いと訴えているかのような瞳で私達を見ながら、また話を再開する。

「だから諦めるな。ちゃんと作戦は考えておいた」

「えっ!?」

ナイトが真剣な表情を保ったまま、私達に告げた言葉に、皆が揃って声を上げた。
もちろん私もだ。
同時に私を含めた皆の絶望に囚われていた表情に希望が花開いた。
ナイトは詳しい作戦の内容を伝える為に、一端ここで解散にして広い廊下に暴力団の人達も含めた全員を集め、そこで作戦の説明をすると最後に言うと、私達を解散させる。
果たして、彼はこの絶望的な状況をどう打開しようと考えているのだろうか。
私は部屋から出てもずっとその事を考えていた。









ナイトが一端解散させてから数十分の時が経った頃だろうか。軍の秘密施設から離れた場所にある人気のない谷底に、フェニックス計画を実行させようとしている軍でもなければ、それを阻止しようとしているフェザー達でもない“第三の勢力”が集まっていた。
それは人数こそ少ないが、しっかりと統率された集団……そう、前々から不穏な陰で動きを見せていたヨノワールのソウル率いる軍の偵察部隊だ。
ゴーストタイプが含まれている者のみで構成され、中でも実力者のみが入隊を許されると言っても過言ではない部隊で、所属こそ軍ではあるが、彼等は密かに裏で軍を裏切っていのは事実。
そしてその目的が何なのか……それは彼等しか知りえなかった。
集まった十数名の隊員達はソウルの前に綺麗に整列しており、見張り以外の全員がソウルの話に耳を傾けている。

「全ての準備は整った。もうすぐ我々の努力が報われる。お前達が私の思想を理解してくれ、全員が私の元で一致団結してくれたお陰だ。素直にお前達には感謝している。そして、これからが一番重要な時間となるだろう。皆頑張ってくれ。そして死ぬな。死んだら意味がないからな……全員で掴んでこその勝利だ」

「了解です!」

集まった部下に隊長として演説したソウルに部下達は忠実な返事を返した。
そして、彼等はそれぞれがソウルから与えられた任務を胸に仕舞い、散開していく。
谷底に残ったのは、ソウルと彼の部下であるゲンガー。
ソウルは、谷間から見える青空を仰ぐと、隻眼を細めながらゲンガーに一言尋ねた。

「今更聞く事ではないが、奴等に情報と地図はしっかりと渡したな?」

「はい。……しかし、情報も全て事実ですし、地図も本物ですが良いのですか?これでは奴等に協力している事になってしまいます……」

一つの嘘も付かずに全て事実を伝えた事に不安を感じているのか、ゲンガーはソウルに聞き返した。
そんな彼を落ち着かせるかのように、ソウルは空を見上げて隻眼を細めたまま、諭すような口調で彼に向かって言う。

「問題は無い。……確かに協力している事のなるかもしれんが、それは協力ではない、利用だ。心配を覚える必要はない」

「……そうですか。すみません。過ぎた質問をしてしまいまして」

「気にするな。お前の働きがあってこそここまで来れた。最後まで頑張ってくれ」

頭を下げたゲンガーに青空から視線を移したソウルは、最後に彼のそう言うと、落石した岩が転がる谷底の地面に何時もやるように身を沈めていき、ゲンガーの視界から消えた。
ふと、どこから吹いてきたのか、谷間を駆ける風がソウル達の居た谷底を吹き抜ける。
吹き抜けるその風が谷間に木霊した時、そこにはもう誰も姿も無かった……









「作戦は説明した通りだ。決行は明日。それまで各自準備を怠るな。俺達がやらなければ、軍のくだらない陰謀は実行される。そしてこれからは軍の兵士との戦闘も避けられないし、厳しい状況に置かれる事もあるだろう。だが、その中でもこれから言う事は守ってくれ……決して諦めるな、仲間を見捨てるな、命を無駄にするな。以上の三つだ。…………いいか、絶対に明日はフェニックス計画を阻止するぞ!!」

「おぉ!!」

廊下に集まった暴力団を含めた全員にナイトは作戦と各自に役割を説明し終え、締めと思われる最後の言葉を、普段あまり声を高らかと上げる事のない彼は叫ぶように言い放った。
そして、その直後、決起の雄叫びが密閉された廊下に轟いた。
その殆どが暴力団の皆であったが、彼等も暴力団とは言えど、自分の故郷である町を奪われ、無実の罪で攻撃を受けただけに軍に仕返ししようと考えているのだろう。
暴力団の皆と合わせても、私達の人数はざっと四十名程。
決して大きな戦力ではないが、ナイトの考え出した作戦通りに事を運べれば、勝算は十分だ。
後は私を含めた皆の努力次第。
絶対に成功させなければ。……今は亡きフィンにもそう誓ったのだし、彼もきっと天国から私達を見守ってくれている事だろう。
こうして、作戦の詳細な説明と決起集会は終わり、各自が一斉に準備に取り掛かり始めた。
私の為に囮になり、囚われの身となったリュウを救出作戦の前日のように。
準備に追われていると時間の進みはとても早く、時計を見た時にもうこんな時間か……と驚かさせる。
今は各々が殆ど全ての準備を整え、各部屋で最終的な作戦の確認作業に追われている夜。
私も例外なく準備と作戦内容の確認に追われていた。
前と同様に、今回もチームワークは大事だ。それに今回、私はかなり重要なポジションにいる。
なぜなら、リュウやナイト達と一緒に軍の秘密施設内に侵入し、フェニックスその物を破壊する役割を担っているのだから。
任務の重要性からくる重圧は、例え信頼出来るナイトやリュウを始め、施設内に詳しいグレンに分散しているとは言え、私には重すぎる。
緊張からか、準備している時に時折、道具を持つ翼が震えるような感覚すら覚えた。
周りの皆は至って冷静で、私のように緊張したような素振りは一つとして見せていない。
バックに道具を詰め込む音や、無線機などの調子を整える電子音の中に、無駄な音はなく、この部屋にいる全員が真剣な顔で準備を進める。
部屋の中を見回していてふと気が付いたのだが、数名の姿がなく、その数名の中にリュウも加わっていた。
一体、どこに行ったのだろう。
私がリュウと出会ってから今まで、ずっと彼が使用しているポーチの周りはまだ散らかっているので、準備は終っていない様子なのに……でもまぁ、直に返って来るだろう。
……フェザーがリュウが部屋にいない事に気が付いた時、彼は廊下に居た。
殆ど全員が準備に明け暮れているのか廊下には誰も居なく、静寂そのもの。
作戦が外部に漏れるのを防ぐ為に外出禁止となっているのにも拘わらず、静寂の廊下を忍び足で外へと通じる階段がある扉へと向かう。
その姿はまるで自分の姿を誰かに見られたくないような様子で、彼は仕切りに周囲に目を配っていた。
足音を立てる事なくようやく扉まで辿り着いたリュウは、そこで一息付く
そこで彼はフェザーが巻いてくれた包帯の付いた右前足を見つめると、何かを決心したのか扉の取手に掛けた。
音が立たぬように全神経を集中させてそっと扉を開き、そこを抜けて彼は階段の一段
目に足を置くと、そっと扉を閉めた。
しかし、リュウが扉を閉めたその時、彼の姿を見ていた者が居た。
蛍光灯の明かりさえなければ、その姿をこの廊下で見る事は出来ないであろう、ナイトだ。
リュウの立場からすれば、一番見られたくない相手かもしれない。
当然、見ていたナイトはリュウに“外出禁止だ”と声を掛けようとしていたが、その前に彼の姿は扉の向こうに消えた為、ナイトはリュウの不可解な行動に棒立ちすると、彼に限ってまさか……という疑念を浮べながら扉を睨んでいた。

「どうしたんすか?」

廊下で一人棒立ちしていたナイトの後ろから低い声が廊下に木霊する。
その低く反響する低音に、反射的に耳を小さく動かしたナイトはゆっくりと振り返った。
ナイトの視界には大きな岩……ならぬ、巨体のバンが体に不釣合いな程小さなハンカチで手を拭きながら立っていた。
ナイトは自分に気が付かれずに背後を取るとは……巨体に似合わず気配を消すのが上手いな。などと考えながらまるで聳え立つ山のように立つバンを見上げた。
蛍光灯の光りを遮るまるで大きな障害物のような彼は、逆光の影響でナイトから見れば暗く、それこそ山のようである。
しかし、ナイトはその大きさに怯む事なく、扉を睨んでいた際の鋭さが残った目で山のような彼を見上げると、徐に口を開いた。

「今、リュウが外出禁止にも拘わらず無断で外出してな……ありえないとは思うが、リュウが裏切ってこちらの情報を流している可能性を考えていてな……」

「リュウが裏切る!?……そんなまさか。アイツは裏切るような奴じゃないですって。……でも、心配なら尾行しましょうか?俺、犯人を追いかけるのは職業柄得意ですから」

ナイトの口から漏れるように出た疑念をバンは八割方信じていないようであったが、自分達を纏める隊長であるナイトに余計な心配を掛けたくないとでも思ったのか、バンはそう提案した。
彼の提案をその細長く伸びた漆黒の両耳で聞き止めたナイトは一度ゆっくりと頷き、バンに“俺はまだ色々やるべき事が残っているからよろしく頼む”と、言葉を残して身を翻し、自室に向かって足音を立てながら早足で歩いて行く。
隊長と言う彼の立場上、彼の言う通りで、まだまだ彼にはやるべき事が残っているようだ。
それが何なのかは、自ら担当する作戦内容しか頭に入っていないバンには知る由がないが、彼の頭は、どうせ皆と同じ最終的なチェックだろう……と、判断を下した。
ナイトの木霊する足音が聞えなくなった時、静寂に包まれた無機質な廊下に一人、残されたバンはナイトが消えて行った彼の自室とは反対方向にある外への扉へ向かって歩き出し、どういう訳か外出禁止にも拘わらず無断で外出したリュウの尾行を開始したのだった……








25話に続きます。


PHOENIX 25 ‐決戦‐


あとがき
ちょっと、情報公開……今回の話を書き終わりまして、取りあえず完結までの目途が立ちました。
予定としては、後二話(26話)で完結する予定です。
さて、今回の話はとうとうフェニックス計画の実行が近付き、実行へ向けて準備を進めるスプーン率いる軍隊、それを阻止しようと奮闘してきたナイト率いるフェザー達(その中におけるフェザーの心境)、そして、ソウル率いる“第三の勢力”の動向などを書いてみました。
さらに、不審な行動を取るリュウの目的とは……?
総合的に出撃前の緊張感みたいなものが表現できていたら良いな~なんて。
……とか何とか言っても、私の欠如した文章力ではそういったものを伝えられていないかもしれませんが(汗)
取りあえず、残りも僅かですので最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

こんな駄文にお付き合い頂き、誠にありがとうございました。
もし、宜しければ誤字、脱字の指摘や感想などを頂きたいです。




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Last-modified: 2010-08-24 (火) 00:00:00
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