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HEAL9,ルナアーラにお願い

/HEAL9,ルナアーラにお願い


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 前……HEAL8,悪夢の幻影


 超音速便のボーマンダに乗って、ナイジャからの手紙を手掛かりに、今彼が拠点にしているという森にたどり着くと、ロウエンの頭上に、不意に何者かの気配が漂う。
「ホッホウ! 人探しかい?」
 頭上から現れたのはいつもの調子の彼である。しかし、心なしかいつもほどの元気はない。
「お前を探していたんだ! 村長からの手紙も預かっている、読め! 拒否権はないぞ」
「……街や俺を襲ってきた、あのポケモンの幻影の件かい?」
「話が速いな。お前が襲われているんじゃないかと村長が心配していたが、その様子じゃ襲われはしても、問題なく撃退したみたいだな」
「そうさなぁ。しかし、昼夜を問わず襲ってくるおかげか、ちょっと寝不足気味だがねえ。それで、手紙の内容は知っているかい?」
「ちょっと伝説のポケモンと戦うことになるかもしれないから戦力になって欲しいとか、もしも怪我をしているのならば、強がりせずに戻ってこいって内容だよ!」
「非常に簡潔でよろしい。分かった、今が異常事態なのは俺にも分かる……」
 そう言って、ナイジャは首から垂れ下がるお下げ髪を引っ張って、顔を覆うフードのような飾り羽を閉じて顔を隠す。彼は少しだけ深呼吸をすると、もう大丈夫とばかりに顔を出して、笑みを浮かべる。
「たまには、村長にも顔を出してやるか」
 そのいやらしい不敵な笑みは、いつものナイジャである。
「お前、あんまり帰るのが乗り気じゃないみたいだが、村長の元に帰りたくないのか?」
「愛着はあるけれど、でも村長に顔向けできないことをやっているからな。お前さんみたいな筋肉ムキムキの男より強ーい俺でも、怖いものはあるんだよ」
「そういう俺への煽りは要らねーよ」
「俺が怖いのは、大事な者に軽蔑されることさ……思いっきり大量の幻影に襲われたとか言ったら、村長も俺を見る目が変わるかもしれねえ……」
「されてねえよ。いいから家に帰って村長に顔を見せてやれ。というか、村長自身めっちゃ大量の幻影に襲われているから気にするな。あの人どんだけ恨まれているんだよ本当に……」
 ナイジャはおどけた様子で口にしているが、ロウエンはきっと紛れもない本音なのだろうと思いつつ、彼への簡潔なアドバイスをする。
「だがよぉ。街で噂になっているんだ。例の幻影は、『誰かから恨みを買っている奴ほど狙われる』ってな。お前さんがあのオシャマリを助けだしたと思われるミルホッグの家族か……あそこも結構な数に襲撃されたらしいぜ。もう死んじまったから、お前こそ様子を見て故郷の仲間に顔を見せてやったらどうだ?
 それに、潜伏していた強盗やら強姦やらの犯人もガンガン襲われている。むしろ、犯罪者を炙りだしてくれていると、この摩訶不思議な現象を喜んでいる輩だっているくらいだ。だから、怖いんだよ、俺は……誰かが、俺が幻影に襲われていることを喜んでいるんじゃないかって思うと、すごく怖くってな……ポケモンの幻影は、俺にとっては弱いから……だから体の疲れはそんなでもねーけれど、なんというか精神がやられちまっているよ。
 誰かに恨まれている自覚はあったが、俺もここまであからさまだと……な。こんなに幻影に襲われている奴は街に入ることすらできねーし。分かるだろ? 大量の幻影に襲われているという事は、誰かから恨まれているってことだ。そんな奴を街に入れたいと思うか?」
 そう行ってナイジャは俯き気味に首を振る。
「あー、まあそれは分かる。でも、俺も、捕まえたお尋ね者に恨まれていて、そいつの幻影とかが俺を襲ってくるのは何でもないが……俺が昔酷いことをしてしまって、謝ることすらできないような奴に恨まれていたりすると、精神的に来るし……だが、それを踏まえても、村長はお前の味方だって断言しているって! だから素直に帰りたいって言ってみろよ」
 ロウエンナイジャの気持ちなんてお構いなしにまくしたてる。若干無神経でイラッとすることもあるが、嘘も上手そうじゃないロウエンの率直な言葉で言われると、村長が気にしていないというのも信ぴょう性がある。
「最近は、訳もなく不安になっていたが……まったく、村長は気にしていないのか。卑屈な自分が嫌になるな……負けたよ、お前さんの言う通りだ。たまには村長にも顔を見せてやらねえとな……」
 何より、ロウエン自身も後ろめたい過去はあるだろうに、前向きに生きているところを見ると、ナイジャは後向きなことが馬鹿らしく思えてくる。
「卑屈になる必要なんてねーだろ。具体的なことは聞かされていねーけれど、村長はお前の悪事はお前自身の正義があったって言っていたんだ。ナイジャは誰かを不幸にすることもあったけれど、その分誰かを救える人だとも言っていたし……あー、とにかく、暗い過去があるならそれが気にならないくらいに、これからいい事をすればいいってことだよ!
 大体俺はこの幻影は気に食わねーんだ。俺達を恨んでいる奴の亡霊が襲い掛かってくるのはいいけれど、逆に俺達に感謝してくれている奴らが全然味方になってくれやしねーし。こんな恨みだけが原動力の一方的な幻影が攻撃してきたところで気にすることじゃねーんだ!
 ともかく、何があったのか詳しくはしらねーけれど、今回の事態を収束させるのはいい事だ! それで罪を償え! そのために協力しろ! いいな!?」
「はいはい、そこまでまくしたてなさんな。……あぁ、だがそうだな。俺も罪を犯した分、人を救えばいい話か。そうすれば、村長にも気軽に会えるようになるか……」
 無責任なまでに暑苦しいロウエンの説得だが、その勢いに跡と死されると、ナイジャはなんだか元気が出る。と、言うよりは弱気になっているのが馬鹿らしくなる。
「で、俺は今回の事態をどうにかするために何をすればいいんだい?」
「あぁ、それなんだが……ルナアーラってポケモンに会いに行って協力を申し出るんだ。だが、そのルナアーラに会いに行くにあたって、いろいろ問題があってだな……」
 ロウエンはルナアーラをあがめる村の説明をするも、彼の場合は口下手で要約が下手で、うまいこと説明することが出来なかった。ナイジャはそんな彼の頭の悪さに苦笑しながら、詳しいことは村長に聞けばいいかなと気楽に考えていた。

 村へ向かうまでの道中では、風圧もすごく、ナイジャも必死でボーマンダに付いていく必要があったために話すことはほとんどできずに時が過ぎる。ボーマンダから下りるとナイジャは非常に疲労困憊していたため、ロウエンはそれをおぶって村長の元まで連れて行った。
 村にたどり着くとナイジャは大いに歓迎され、特に彼が引き取ったという孤児たちは、彼をもみくちゃにせんばかりの勢いで抱きしめている。ナイジャは高額の懸賞金をかけられているというのに、こうして村人に囲まれても穏やかな表情を見せている。こうしてみると手配書の人物と同一人物とはとても思えない。
 その様子を観察していると、ロウエンはもしかしたら自分が捕まえたお尋ね者にも、こんな風に誰かに愛されている奴はいたのだろうかと、少し心苦しい気分になってしまう。
 今のナイジャみたいに、賞金首が実はいい奴だった、なんてのは極めてまれな例だということは理解しているというのに。

 対して、ナイジャが感じたロウエンの印象だが、ロウエンが村の住民にものすごく慕われていることにロウエンと同じく感心していた。特に気になったのはレナである。あの時、憔悴しきっていたレナは、今や立派な最終進化形に成長していて、しかも村一番の人気物になっている。
 ロウエンがきちんと彼女を守ってあげたのだなと、これまでの日々を思い図ると、ロウエンに対する印象がうなぎ上りであった。もともと、彼に金を託され彼の故郷に行った際にそこの住人から話を聞いて印象が良かったこともあり、ナイジャはロウエンを無条件に信頼することに決めた。
 ちょっと頭が弱いところはあるようなので、知能が必要なことに関しては除外するが。



 ナイジャは歓迎もほどほどに村で休み、村長たちが酒を集めてくるのを待ち、村長が十分量のお酒を集めたところで、再会の喜びを堪能することもそこそこにルナアーラに会いに行く旅へと出発する。その道中、色々と積もる話も合って、ナイジャと村長の話はいつまでも尽きることがなかった。
 村長は今まで、ナイジャのいないところでナイジャのことを話す時は必要最低限の話しかしないという感じであったが、今はナイジャがその場にいるために、彼が知られたくないことはナイジャが止めてくれるだろうと、村長は短い手足で身振り手振りを交えながら大いに彼の事を話すのだ。
「ナイジャと出会ったのはね、こいつが足を切って間もない頃の話さ」
「あの時はまだフクスローだったな」
 村長が懐かしみながら話すと、ナイジャもそれに続く。
「こいつは、足に鎖付きの鉄球を付けられていて逃走を防止されていたんだ。それを、仲間に足を切ってもらい、炎で焼いて止血し、それを癒しの波導で治すという荒療治を経て、別の街に逃れて片足でお金もらいながら空のお使いをして日銭を稼いでいたんだ」
「手紙を届けたり、軽い物を運んだりする程度なら空輸が一番だからな。当時の俺に出来る仕事なんてのはそれしかなかったんだ」
「でもまぁ、そこでも安い金でこき使われていたものだから、お金も殆どたまらなかったようで、ナイジャは……そのうち悪者を倒してお金を貰うようになったんだ」
「闇討ちでな。路地裏でお金をせびっているもの、寄ってたかって田舎者から金を巻き上げようとするもの、女性を襲うもの。そういう奴らを屋根の上から狙い撃ちにして、その財布を奪っていた……一度返り討ちに遭ったけれどな」
「そこで拾ったのが、当時ムンナだった私というわけで。あの時のアンタ、ひどい有様だったよ」
「五日間、精液しか口にしていなかったからな。助けてほしいって念を送っていたとはいえ……まさか本当に助けてくれるお人好しが来るだなんて、今思えば信じられないよ。エスパータイプ様様だな」
 村長とナイジャは交互に笑みを交えて、ロウエンとレナに話す。ゼントは何度か聞いた話だが、それなのにロウエン達と同じように面白そうに聞いているあたり、意外と聞き上手なのかもしれない。
「そいつら男を犯していたのかよ……変態だな……」
「これでも俺は昔は美少年だったんだぞ? 特にフクスローの時はな」
 ロウエンがうへぇ、と舌を出して不快感をあらわにするが、ナイジャはそれに対して自慢げに言う。
「それで、私はその頃、村を作るための場所と人を探していたんだけれど……偶然ナイジャと出会ったその時から、この子が気に入ってしまってね。怖いお兄さんたちに囲まれて、汚物にまみれながら死んでしまいそうな状況だって言うのに、刃物のような鋭い目で睨みつけて憎しみをぶつける彼女の事をね」
「……村長」
 村長の言葉に、ナイジャは釘を刺すように言う。村長は何かに気付いたのか、罰が悪そうな表情をしていた。
「なにはともあれ、その時村長が助けてくれなかったら死んでいたよ……。それで、俺は『いつか村を立てるときに一緒に来ないか』って誘われたわけだ。
 俺は、当面の目的が達成されたら、そこに住むのもいいかなって思っていたんだ……それでその、当面の目的っていうのが、俺を逃がしてくれた奴隷仲間の皆を、俺が物心ついたときに働かされていた農園から取り戻すことだったんだけれど。
 けれど、俺が金を貯めて、働かされている仲間たちを救うつもりだったのに、農園の主が奴隷商の商品を品定めしていたのを見かけてね。嫌な予感がしたから様子を見てみたら……俺を助けてくれた奴ら全員死んでたんだ」
「それって、助けようとした御友人が、助けられなかったってことですよね?」
 レナの問いかけに、ナイジャは頷く。
「その時、私は怒りのあまりに進化して、農園の主を衝動的にぶち殺したんだ。それが、俺がこの大陸で指名手配されるきっかけだよ。奴隷に対してひどい扱いをしている奴らから、とにかく殺して金を奪っていたからね」
「……だが、その割には村に孤児が少ないようだが? まさか、七人しか生きていないってわけでもないだろう?」
「いや、預け先がこの村だけじゃないってことだ。奴隷の主人を殺しても、別の誰かが奴隷の主人になる。そいつがろくでなしだったらそいつも殺すまでだし、奴隷商を殺した時も一緒さ。同業者が引き取ったりするし、孤児院が引き取ったりすることもある。俺はそこにもきちんと金を寄越している。
 今では立派に働いている奴もいるよ。俺と違って真っ当な商売でな」
「ナイジャさん、そんな指名手配なんてされちゃっても大丈夫なんですか?」
「レナは面白いことを言うな? もちろん、大丈夫じゃない。大丈夫じゃないから、俺はあまりこの大陸には近寄らないんだ。俺が空を飛べないポケモンだったら、俺が運び屋に頼らないといけなかっただろうな。だというのに、村長は俺を村で暮らしたがらせるのだから意地が悪い」
 ナイジャはそう言って力なく笑う。
「俺だって、本心から帰りたくないわけじゃないんだからな」
 それが彼の本音なのだろう、珍しくいじらしい声色を出して、ナイジャは自分の顔を覆う葉の羽をすぼめて顔を隠した。
「……あんたの事情も分かるけれど、こっちもお前が無事かどうかと心配なんだよ、ナイジャ」
 村長はナイジャへ優しく声をかける。まるで本当の親子の様に気をかけているのが良くわかる。
「なら、次に村を作るところは私が指名手配をされていないところにして欲しい。そしたら、いつでも気軽に帰ってくるよ」
 ナイジャはそう言ってため息をついた。
「ところで、俺が去ってからというもの、奴隷を取り巻く事情はどうだい? 一時期は改善されたみたいだし、それとなく噂を聞いたりとかはしているけれど……また、少しずつ悪化しているんだろ?」
「残念ながらね。ただ、皮肉なことに、今回の件で良くなるかもしれないわ。奴隷商人や、奴隷に対する扱いが悪い奴ほど、幻影に囲まれて殺されたり重傷を負ったりすることも多いという情報が伝わっている。これで奴隷の扱いが悪い奴は、実質的にも、精神的にも少なくなってくれるかもね」
 村長が言うが、ナイジャはとても悔しそうな顔をしている。自分のやって来たことは無駄だったのかと、そう言わんばかりの表情だ。
「結局、人を言い聞かせるには愛よりも暴力の方がいいってわけか。俺もレナの扱いを見た時は、一回目は暴力なしだったけれど、二回目は暴力を使うしかなかったからなぁ」
 ロウエンはあのミルホッグの事を思いだして肩を落とす。
「暴力って決して褒められたものじゃないですけれど、やっぱり必要なんですね……世知辛い世の中です」
 そんなナイジャを見て、ロウエンとレナも気分が沈んでしまうようだった。


 一行が世間話をしながら目的地付近までたどり着くと、その村は遠めから見ても警戒しているのが良くわかる。街を囲う丸太の壁は、内部へ通じる門に門番が武装して立っている。肉体を強化する装飾品に加え、一時的に膂力をあげる猛撃の種や、回避をあげる回避玉などをいつでも使えるようにしており、まさしく完全武装だ。
 そして、その村を見下ろせる小高い丘には、すでにルナアーラが鎮座している。頭部、翼、足は全てを広げると月輪のようになり、翼はまるで星空のような紺色に、きらめく星が見えるのだ。夜空を舞えばその美しさに誰もが心を奪われるという彼女の体だけれど、迷惑にならないように昼に尋ねてきたためかその魅力は半減である。
 その姿が見えた時から、ナイジャはそそくさと木の陰に隠れてしまった。何かあった時は物陰から狙撃による援護するというつもりだろう。

 その後もロウエン達が近づいていくと、相手も気付いたのかルナアーラがこちらを睨んでいる。それに合わせて門番たちもこちらを睨んできたが、闘いに来たわけではないので恐れることなく堂々と進んでいく。門の前までくると、相手も警戒して門を閉じる。飛行タイプのポケモンには無意味だろうが、そこら辺のポケモンであれば数秒の足止めの効果はあるだろうか。
「止まれ! ここは今立ち入り禁止だ! 怪我をしたくなければ早々に帰れ!」
 門番をしているニドキングのの男が大声で警告する中、村長が一歩前へ出る。他の者達も、腕を腰の後ろに組み、ゼントは鉄骨を地面に置いて争う意思はないことを伝える姿勢をとる。
「私たちは争いに来たわけではありません。この土地に住まうルナアーラ様に会いに来たのです。お金も、貢物も用意してございます。何とぞ、お取次ぎをお願いしたい」
「断る。我らが長の決定だ」
「そうそう、長と言えば、私も北にある天道の湖の付近に村を拓き、そこで村長をやっておりまして、お近づきの印ということで……」
「くどいぞ!」
「せめて、私の言葉をあなた方の長に取り次ぐくらいでも……お願いします」
 そう言って、村長は浮かせた体を地面につけて頭を下げる。文句なしの土下座であり、また今回の騒動であるポケモンの幻影とはどうも無関係そうであるため、どう対応したものかと門番二人、ニドキングとプクリンはどうしたものかと顔を見合わせた。
「そういえば、ここの月の石にはお世話になりました。私、見ての通りムシャーナなのですが、ここで生産される月の石を行商人から買い付けて進化したのですよ。やはり仕事をするうえで、力が強い、体が大きいということは大きな利点でしてね。
 それに、ここに生える月光草ですか。うちでも、料理にお薬にと大活躍です。ここは月の力に満ちていますからね他のところではとても真似できない味で、特別な日にはいつも大活躍で……」
「あのなぁ、褒めてもらって嬉しいけれど、だからと言って通すわけにはいかないんだ」
 村長は頼み込んでもダメだとわかると、一転してこの村をほめちぎる。門番のプクリンはそれを見て困惑するが……
「……ただ、褒めているだけだとお思いで?」
 村長はそう言って、ルナアーラの目を見て微笑む。門番が何事かと振り返ると、ルナアーラはこちらをめがけてふわりと舞い降りる。
「テレパシーというのはバレずに会話が出来るから便利でね。ルナアーラの身分がこの村の長以下という事はないでしょう? 彼女が私に会うと言ったんだから、私は彼女とお話しますよ。ですよね、ヨト様」
 村長は、ニヤリと微笑みながら舞い降りてきたルナアーラ。ヨトという名前の彼女へ肉声で話しかける。
「あぁ、最低限の誠意は用意してきたようだしな。わらわの口に合うかどうかは分からぬが……話くらいは聞くのが筋というものだろう。あぁ、客人たちよ……わらわの名前はヨト。村の者はどうか知らぬが、わらわは主らを歓迎するぞ」
 ヨトは口元に微笑を浮かべて舌なめずりをする。
「な、ヨト様! 貴方は我々を守るためにこの村にいてくれる約束では?」
「……例の幻影は、正当な怨みだろうと逆恨みだろうと、恨みを買っている者ばかり狙われる。それゆえかな、交流が極端に少ないこの村はそれほど危険でもなさそうだ。そんな村を守る、という簡単な頼み事で飲む酒も悪くはないが……
 わらわも、それだけで大丈夫なのか気になっていたところだ。もしかしたら、これはただの序章に過ぎず、もっと事態が悪化して世界が滅びるという事につながらないとも限らぬ。わらわも長く生きてきただけあって、生への執着はそれなりにあるでな、根本的な解決に乗り出したいという者達の声に、耳を傾けないわけにはいかなかろう」
 ヨトはそう言って門番たちを諭す。門の中も住民たちが不安げにざわめいているが、彼女は気にする様子もない。
「用件は先程伝えたとおりです。今回の件は、夢の世界との繋がりを持つ私のようなポケモンを媒介にして、強制的に見せられた悪夢を具現化することにより幻影を生み出しているものと予想されます。
 もしやと思い、悪夢を見ている者の夢を食べてしまえば、幻影は発生しなくなります……しかし、私が何をしなくても、私の体は他人の悪夢を具現化してしまうように作り変えられている。どのような原理によるものかはわかりませんが、そういう体にさせる力が働いているのです。
 夢喰いをすれば大丈夫といっても、私は悪夢は食べ過ぎると体調を崩し、そして悪夢でなく普通の夢であったとしても、あまりに食べるべき量が多すぎて私には食べ切ることは不可能です……もしも、ヨト様が何か知恵か、力をお貸しいただけるのでしたら、それによって事態を少しでも軽減し、解決へ専念できるような状態へと持って行くか、もしくは実質的な解決への手助けをしていただきたく……、それでなくとも、貴方は悠久の時を生きてきた存在と聞きます。
 他にも強大な力を持った知り合いがいらっしゃるのであれば、それを紹介していただきたいと……」
「……お主と同じ種族、この村にもいるぞ。それゆえ、お主の言う通りの状況と言うのもわらわは分かっている。ムシャーナが、幻影を生み出す媒介となっていることは分かっているし、外部で生み出された幻影がこの地までやってくることも分かっている。
 そのため、ムシャーナやムウマージ、スリーパーといった夢をつかさどる者達を隔離し、わらわの力で他の者の悪夢とつながることを阻止することで、ある程度は事態を改善させることも出来るだろう。この村ひとつ程度の面積ならばわらわの力で他の者の悪夢とつながることを阻止することは容易ゆえ……
 大きな街に夢に関わる者達を集め、そこで隔離するというのが良いだろう……問題がないわけではないがな」
「問題とは?」
 意味深なことを言うヨトに村長が尋ねる。
「死ねば、お前も幻影を生み出すことがなくなるという事だ。わらわの知り合いには乱暴者も多い。まとまっていれば纏めて殺すことが出来る……なんて考える者もいるかも知れんな。纏めたら、殺しにくるものがおるやもしれんぞ?」
「う……」
 村長はヨト以外にも強大な力を持ったものがたくさんおり、そしてその恐ろしさを思い出して思わず言葉に詰まる。キュレムは幻影であってもすさまじい冷気を操っていたが、あれが本物となると、幻影二体分を同時に相手にするくらいの覚悟は必要だ。
 それに匹敵する相手が、一人ならまだしも何人も攻めてきたらと考えると、大惨事は避けられまい。
「それを防ぐためには、迅速にことを収束させる必要がある。やるというのならば、わらわは勿論、知り合いにも協力を頼むが……それだけのことをやる以上は覚悟も、強さも必要だ。わらわがお主らの力を試すことになる。いかがなさるか?」
「戦え、という事ですか?」
「ああ。今回の異常事態、尋常ではないために……場合によっては命を落とすことにもつながりかねない。故に、おぬしらにも命を懸けて戦ってもらうつもりだが、それでも良ければ、わらわがお相手しよう。だが、この戦いで死ぬことはないよう、あくまでお遊び程度だ。
 たまには運動をしないと、うまい酒も飲めないものでな」
 そう言って、ヨトは挑発するようにロウエンやレナを見る。
「望むところじゃねえか」
「美しい女性と戦えるなんて興奮するっすよ」
「よろしくお願いします」
 ロウエン、ゼント、レナ、全員がやる気十分なようで、村長は微笑み頷く。
「そういうわけです。むしろ、貴方が断っても無理やりにでも協力させるつもりでここに来ました」
「ほう、それは楽しみだ。童も久々の運動だ……つまらぬ結果だけはごめんだぞ! ……あぁ、あとお前ら。流れ弾が村に及ばぬよう注意はして置くが、巻き込まれても知らんからな。さあ、客人よ。こちらだ」
 ニヤリと口元を歪めながらヨトは上空高くへと飛びあがり、村から離れた場所まで飛んでいく。しばらくはゆったりした飛び方で村長たちを案内していたが、彼女はさらに上空高くまで飛びあがると、何も言わずに口元に力を溜める。どうやら戦闘開始のようだ。
「やべえぞ! あんな高くに居られたら俺の攻撃がほとんど通らねえっす!」
「物理型に優しくねえ姉ちゃんだな! おらぁ、降りてこいやぁ!!!」
 ロウエンは思わず耳を塞ぎたくなるような大声で叫ぶ。敵は見るからに直接攻撃よりも特殊攻撃に秀でている外見だ。バークアウトをすれば焦って勝負を決めに来るだろう。
 レナも口から出した泡のバルーンを歌で操ってヨトの方へと飛ばしていく。ヨトはロウエンの声が届くとひどく苦しそうに顔をしかめ、レナの操るうたかたのアリアもまともに喰らってしまったが、レナの技はほとんど気に留めることもなく極太のビームを放つ。
 紫色に妖しく輝くビームが周囲を薙ぎ払っていく。その威力はロウエンのバークアウト程度では気休めにしかならない威力だ。ゴーストタイプに弱い村長は、あれがゴーストタイプの技だと肌で察し、なんとしてでも喰らってはならないと考える。
(守らなきゃ!)
 と村長が思えば、
(じゃあ俺が!)
 とゼントが村長を抱きしめ、村長ごと『守る』を発動する。緑色の障壁が二人を守る中、村長はそのままシャドーボールをチャージする。
 ロウエンのバークアウトに嫌そうな表情を見せたということは、相手のタイプは少なくとも悪タイプに弱いであろうことは予想できる。ゴーストタイプは悪タイプと効果抜群の範囲がかぶっているため、ノーマルタイプでも混ざっていない限りは問題なくダメージは与えられるはずだ。
 しかしながら、遠くから放たれたシャドーボールは、距離のせいで威力も減退し、大した力も出ず、ヨトが張り出した光の壁ですべて防がれてしまう。ルナアーラが持つような無尽蔵の力でもなければ、こう遠く離れた場所まで十分な威力を送り出すことは出来ないようだ。
 ならば、とゼントは考える。ストーンエッジではギリギリ届くか届かない位置であるため、自分は攻撃なんて望むべくもない。このまま村長とロウエンの攻撃に任せっぱなしでは自分は何も出来ないことになってしまう。
 相手の戦いは理不尽で気に食わないが、しかしこの程度の理不尽を乗り越えられないようでは、今回の事態を収束することは難しいかもしれない。
(ならば、見破ってから我慢するしかないっすね!)
 捨て身じゃなければ、この相手には勝てないだろう。そう確信して、ゼントは俺を狙えとばかりに仁王立ちをする。ロウエンはバークアウトが効くとわかって叫び続けているが、やはり村長のシャード―ボールと同じく光の壁に阻まれ、ヨトに届くのは耳障りな程度の音量のみ。これでは特攻が下がる効果もほとんど期待できまい。
 レナのうたかたのアリアも光の壁に阻まれて通用しない。残された手段は我慢をしてやり返すくらいなのだ。幸い、ゼントはゴーストタイプのポケモンの正体を見破ることが出来、我慢を当てることは可能だ。極太のビームだろうがサイコキネシスだろうがどんと来いとばかりに、鉄骨を立てて構え、攻撃に備える。
「面白い、捨て身というわけか」
 その覚悟や良しとヨトは笑みを浮かべたが、その時。音を置き去りにする羽の矢が、ヨトの影を突き刺した。一瞬、ヨトは激痛で顔をしかめて、どこから放たれた攻撃なのかを探すが、見えるのは地面に刺さった羽のみだ。
 しかもその羽、どういう原理か四方八方へと散った羽がすべてヨトをめがけて再収束するので、敵がどの位置から羽を放ったのかすらわからない。
「ナイジャ、やってくれるじゃねーか!」
「伏兵がいたか! 小癪な!」
 ヨトは怒りを露わにして顔の前に黒い塊を作り出す。
「ナイトバーストだ!」
 村長が叫ぶ。巨大な黒い爆発を起こすバークアウトは、ルナアーラが使うだけあって、通常のものとは比べ物にならない途方もないほどの大きな爆発を引き起こすだろう。村長は自身を守る障壁を繰り出し、レナはそれを空中で暴発させようとバルーンを繰り出すが、運悪くバルーンに当たることなく素通りして地面に着弾する。
 彼女は泡のシールドを作って爆発のダメージを軽減しようとし、ロウエンは地面に伏せてその攻撃を受けないように耐える。
「望むところっす!」
 ゼントだけは視界を塞がれないように、鉄骨で正中線を守るものの、仁王立ちでそれを甘んじて受け止める。
 結果的に、村長はノーダメージ、ゼントは格闘タイプなので効果はいまひとつ。レナもロウエンも同様に効果はいまひとつだ。だが、そのナイトバーストの爆発でのダメージなどヨトは計算に入れていない。真の目的は目くらましだ。
 彼女は一気にゼントに接近すると、まだ視界も晴れておらず周囲の様子を把握できないゼントを大きな翼で弾き飛ばし、そのまま空中に吹っ飛んだ彼をサイコキネシスでさらに遠くへと飛ばし、自身は遠くに逃げる。
 我慢の攻撃も、距離が離れすぎれば命中しない。ゼントが吹き飛ばされた距離は明らかに射程外である。

「ホッホウ、我慢を恐れて、相手を遠くに投げ出して上に安全圏まで逃げる気か? だが、俺の攻撃のおかげでお前が逃げることは叶わぬ……」
 遠くでナイジャはそんなことを言っていたが現実は、ルナアーラはゴーストタイプなので……逃げられてしまうのだ。
「畜生! こんなに離れちまうといくら我慢でも届きやしねぇ!」
 その結果、ゼントがせっかく我慢して蓄えた力も射程外と、いうことになっている。
「嘘!? ルナアーラってゴーストタイプなの? なんで? えっと、あたしどうすればいいのよ……あぁ、予想外だわ!」
 影縫いによる逃走防止がきちんと働かず、我慢が不発に終わる光景を見て、ナイジャは一人狼狽え騒ぐのであった。

「ちっくしょう、嫌らしい闘い方をしやがる!」
「褒め言葉かい? それが戦いというものだぞ、小童よ」
 毒づくロウエンに、ヨトは挑発で返す。
「しかし先ほどの羽……ジュナイパーも近くにいるようだな。そちらも嫌らしく……それでもって目障りだ」
「おっと、そんなことよりも私の相手を頼むわ。なんてったって私村長なんだから」
「なんだムシャーナの女? 早死にをしたいなら……」
 村長はヨトを挑発し、自分の方向を向かせる。
「ふわぁぁぁむ……」
 その時、戦闘中にはふさわしくない間の抜けた声が聞こえる。それだけじゃない、念力でふわりと浮いた透き通った青いツボのようなものが、草笛と子守唄を奏でながらヨトの耳元へと向かって言った。あくびの技を用い、更にフリズムを使って、ヨトの眠気を呼び覚ますつもりのようだ。
「くっ……この女、私を眠らせる気か!?」
 あくび、この技を受けると、しばらくした後に眠ってしまうような強烈な眠気に襲われる。ヨトの力が圧倒的なこともあってか大した効果はないようだが、眠りを誘う技を三つも同時に使われては、集中力は壊滅的にそがれることだろう。
 ここで戦っている者達には知る由もないが、ナイジャもようやく平静を取り戻した。眠気で集中力をそがれた絶好のタイミングで、彼は遠くからの射撃を再開する。
「鬱陶しい! まずは貴様から眠れ!!」
 ヨトも、搦め手と強力な物理攻撃、二つを同時に受けていら立ちが抑えきれなくなり、自身の下にまばゆく輝く光源を発生させる。
「影を撃たれるならば、影を消せばいいだけの話だ」
 ヨトが宣言通り、彼女が作り出した光源により、彼女の影は消えてしまう。これにより、ナイジャが放つ影縫いは撃ちこめる場所がなくなってしまう。
「さぁ、降参するか死ぬか選べ!」
 言いながら、ヨトはゴーストタイプの技をチャージする。あの極太のビーム、シャドーレイの準備中だ。

 先ほどよりも膨大な力を溜め、例え守っていても、その障壁が崩れ去るまで照射し続けるくらいのパワーは溜まっているはずだ。しかもヨトは今まで以上に高高度に座しており、ロウエンのバークアウトもレナのうたかたのアリアも、有効な攻撃にはなるまい。
 『村長が危ない』、『守らなければならないが、このままじゃ力が足りない』と、ロウエンとナイジャが強く思ったその時、二人にレナからの力が届く。
「まただ……誰かを守らないといけないって思うと……この力が発動するのか?」
 ロウエンは体の底から湧き上がる力を感じてつぶやくが……だが、レナから力を貰っても、例えZ技であってもああまで高く飛びあがられると、ヨトがいる場所まで届くかどうかわからない。そう思いまごついていると、後からは音速に迫る勢いで、巨大な矢となったナイジャが――
「後悔する時間は与えない! 一瞬で楽にしてやる! これでオワリダシャドーアローズス******!!!」
「何言ってるか分かんねーっすよ!?」
「見事なドップラー効果ですね……」
 何とも締まらない、甲高い声で突撃してきた。彼の動きが音速に近くなったから、普通に喋ると音が高くなって潰れてしまうのは仕方のない事である。
 ナイジャが放った羽の矢の雨は、周囲に拡散して上下左右前後、あらゆる角度からヨトを狙う。ナイジャが声を出したのは、いつの間にか後ろに回っていた矢から気を逸らすためで、まず最初に数本の矢がヨトの背中に刺さる。
 次いで、正面、横、上下と、ヨトの大きさでは何をどうやっても避けられないような数とスピードを持った羽が影ではなく直接ヨトを突き刺していく、その暴風雨のごとき羽の矢に気を取られていると、巨大な弾丸となったナイジャの体当たりをまともに喰らってしまう。
 弱点であるゴーストタイプの攻撃を喰らい、ヨトは空中でバランスを崩してそのまま崩れ落ちる。
「おっしゃ、俺も行くぜ! 徹底的にぶちのめす! てめえにもう逃げ場はねえぜ!」
 ロウエンがそう宣言して地面を足で叩くと、ルナアーラの足元から地面が競り上がり、炎で彩られたリングが現れる!!!
「く……降参だ……」
 だが、残念。ヨトは降参してしまった。
「大人しく観念して焼け……はい」
 が、地面からせり出した燃え盛るリングは、ヨトの降参により使いどころを無くしてしまう。殺すのが目的ではないため、技を最後まで続けることは出来なかった。ロウエンはせっかくのZ技で格好よくとどめをさせると思ったのに、不発になってしまって失意のままにため息をついた。
「締まらねえな……俺、もうZ技使うの止めようかな……一回も敵を倒せたことないし」
「まぁまぁロウエンさん、いつかいいことありますよ」
 肩を落とすロウエンに、レナは明るく励ますのであった。

「……全く、隠れてこそこそと狙撃するとは、随分と性格の悪い事だ」
 地面に降り立ったヨトは、ナイジャが隠れながら攻撃したことに愚痴を漏らす……が。
「だが、性格が悪いのはお互い様か。そうとも、戦いというものは性格の悪いほうが勝つものだ。お前らの性格の悪さ、気に入ったぞ。まずは酒をよこせ、主らから受けた傷の痛みを酒で癒そう」
 ヨトはそんな隠れながら攻撃してきたナイジャを気に入っているようで、むしろ好印象を与えたようである。
「あとで村の者にも謝っておかねばならぬなぁ。この村を守ると約束しておったのに、抜け出すことになるからな」
 そんな愚痴も漏れていたが、ヨトの顔は久々の運動を大いに楽しんで満足しているかのようであった。



 次……HEAL10,黒幕?

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  • メロエッタの歌の歌詞はなんか聞いたことあるなと思って考えてみたらそういえば中の人同じでしたねw

    確かにポケダンってどう考えても「はい」という選択肢しかないのにあえて「いいえ」も選択できる場面って多いですよね
    まぁ、寧ろ「いいえ」選んだ方が相手の可愛い反応見れて非常に眼福なんですけどねw(特に超ダン) -- ナス ?
  • 例の歌は、ケルディオの中の人も歌っていたため個人的にはネタ度も高い曲でしたw メロエッタの歌ならあれくらいのことは出来ると思いまして……

    ポケダンのお約束については、それらをふんだんに取り込んで作品を完成させたいと思っています。可愛い反応も含めて、自分が表現出来る限りのも絵を詰め込めるよう頑張ります。
    コメントありがとうございました -- リング
  • アローラの新ポケをいたるところで登場させる、SM発売を記念したような心意気あふれる長編でした。立ちはだかる困難に対して自分たちなりに考え抜き常に成長を続ける主人公サイドを描き切ったのは、ひとえにアローラ御三家への愛情がなせる業でしょうか。ポケダンの世界を踏襲した設定や小ネタも嬉しいところですね。
     ただオシャマリ救出後、開拓村以降のストーリーは中だるみ感が否めません。レナを救ったことでロウエンに対立するキャラが失せ具体的目標も見えなくなり、それからはレナに関する秘密をのろのろと解き明かしていくだけで緊張感が足りなかったように思います。ネッコアラやルナアーラ戦など、印象に残るシーンがもっと欲しかった。敵側に擁護できないレベルの悪役を登場させるなり主人公サイドで仲違いさせるなり、読み手を飽きさせない工夫があると読み進めやすかったのかな、と。 -- 水のミドリ

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Last-modified: 2017-01-03 (火) 11:42:20
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