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HEAL11,一夫多妻制

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 前……HEAL10,黒幕?

 ネッコアラを引き渡すと、真っ先に情報を引き出す役として指名されたのが悪夢を見せることにかけては定評があるダークライの中でも、飛び切り強力でえげつない趣味を持った女性であった。生まれてから死ぬまで夢を見ているネッコアラにとって、夢というのは人生そのものである。それが悪夢になるということは、この世が地獄になることと同義であり、自殺することも封じてやればすぐに吐き出してくれるだろうとのこと。
 自殺をしたところで強引に癒してでも殺させはしないとゼルネアスは胸を張り、死んだところで魂を逃がしはしないとギラティナも鼻息を荒くする、今回の件で迷惑をかけられた伝説のポケモン達は、総動員してネッコアラを攻め立てるようだ。自業自得とはいえ悲惨な末路である。

 ネッコアラがその後どうなるのかはともかくとして、三日間様子を見ても特に何か問題が起こる様子もなく、これ以上幻影のポケモンが発生することもなくなったために、数か所に集められた夢をつかさどるポケモン達は帰宅を許された。
 帰ったら、これまでサボってきた分の仕事が一斉にのしかかることになるだろう、窮屈ではあったが休みを満喫して休んでいたり眠っていた者達は若干ため息をつく者もいて、それら大量のポケモンを送って行くために運び屋のポケモンを総動員したため、ロウエン達の帰宅は少し後になりそうだ。
 もちろん、今回の事件を解決したロウエン達が頼めば、皆が優先してくれただろうが。せっかく遠くの都会にやって来たのだし、少しくらいは観光をしたり遊び歩いたりしたいということで優先的な帰宅は断っていた。
 それで、ロウエンはナイジャに話があるといわれて街の外れまで案内される。星空が綺麗な丘の上は風も気持ちよく、見上げるほど大きな木の下は絶景のスポットで、出来れば恋人とでもいっしょに来たい気分だが……レナはどこかを遊び歩いているのか、姿を見かけなかった。
「なぁ、ロウエン。俺は一つお前に黙っていたことがあるんだ」
「改まってどうしたよ? お前に秘密があったところで、今更驚きやしねーから」
「俺が女でもか?」
「あぁ、その程度……え?」
 ナイジャの思わぬ爆弾発言に、ロウエンは驚愕して聞き返す。
「ホッホウ! やっぱり驚いたじゃねえか!? 俺が臭いを誤魔化していた理由は、女だからだ。腐葉土にまぎれていれば分かりにくくなるが、体を綺麗にしていたらバレるからな。ジュナイパーにはもともと男でもチンコが生えていないからな、チンコが無くても女だとは思わなかったかい?」
「ってか、なんでそんな事してるんだよ? あ、あれか? 女に生まれていたのに女が好きとか……俺達の村にもそういうのがいるよ、うん」
「違うよ、一応男の方が好きだ。女もいけないこたぁないが……まぁ、一つの理由は変装だよ。一応お尋ね者になるようなことをしている自覚はあったからな。男の振りをして殺しをして、街に行って食料や酒を買いに行く時なんかは、女の振りをして何食わぬ顔で街を歩く。そのために男の振りをしていたというのもある。
 だけれど、それだけじゃない。俺の生まれた大陸……村長の村がある大陸では、奴隷に対する食事の制限や、虐待、休息無しの長時間労働、そして性的暴行は禁じられている……奴隷だった頃、俺はそれらをされていたんだ。
 から、そういうことをする奴らが許せなかったんだが……つまりな、俺はされていたんだ。何も知らない私を無理やり犯して……処女じゃないんだよ、私は」
「……そうか。辛いことがあったから、それを許せなかったんだな」
 ナイジャの過去を聞いて、ロウエンはこれ以上ないくらいに気まずそうな顔をする。
「そんな顔するな。俺は、女だからといって舐められたくないってだけで、別に男の全てが嫌いになったわけじゃない。それは、お前に俺の性別を明かしたことからも分かるだろ? それで、俺の名前はだな……本名は、ナタリアって言ってね。お前だったら、ナターシャって呼んでもいいんだぜ?」
「いまさらそんなこと言われてもな。慣れないし。っていうか、処女じゃないのは知ってるし、どうでもいいから……別に気にするなよ」
 ナイジャが処女でないことなど、村長と共に昔話をしていた時に知ってしまっている。ロウエンとしては、そんなこと程度で女の価値が下がるわけではないと、気にすることでもなかったが。
「そっか、まぁ……俺の名前を呼び慣れないのは仕方ねえよな。それでだ、実は俺は、お前が好きなんだが……」
「あぁ、それも驚きだけれど、もうさっきの聞いた後だとあんまり驚けねえよ……」
 ナイジャは思い切って彼への想いを告白するのだが。しかしながらロウエンは、『彼』が『彼女』だったことに驚き過ぎて、もはやそんなことはどうでも良くなってしまっていまいち反応が薄かった。
「なんだよそれ、寂しいじゃないか!?」
 あまりの反応の薄さに、ナイジャも思わず声をあげる。自分の告白の仕方がまずかったという可能性は考えていないようだ。
「そうは言われても、衝撃の連続過ぎて……あぁ、そうか、ナイジャが俺のことを好きなのはわかったが……そりゃまたどうして?」
 ロウエンも頭の中を必死で整理してナイジャの言葉を飲み込む。なんだがグダグダな告白になってしまったが、仕方ないとナイジャは続ける。
「お前と二回目に出会った時は……レナちゃんを他の大陸に逃がしたら後は知らないって感じで、あとは見捨てる気かと思って、少し怒りを覚えたよ」
「あぁ、あれはその……俺もあの時は焦っていたんだ。レナを衝動的に助けて、その後どうするかとか全く考えていなくって……レナをお前に押し付けようとしちゃったことは反省してるよ。あれは俺もいくらなんでもまずかったってわかってる」
 ロウエンが反省の言葉を口にすると、ナイジャはその様子を微笑んで見ていた。
「だけれど、俺はお前に『レナを癒してやれ』って、命じて、お前はそれを見事にやり遂げたじゃないか。はん、悪役を意味するヒール(heel)ポケモンなんて名前の割には、誰かを癒すヒール(heal)が得意だなんて、素敵な話じゃあないか。そんでもって、素敵な男だよ」
「いやー……でもそれも俺が癒したって言うよりはレナが自力で立ち直った感じだけれどなぁ。あいつはなんというか、特別だから……元が人間だってことを差し引いても、なんか特別なんだよ、あいつは」
「そうかも知れないが。レナはこうも言っていたぞ。『ロウエンさんは私以外にもいろんな人を励ましたし、救っていました』ってな。他にも、お前から託された金をニコニコ食堂のブーバーンに届けた時も、皆がお前を絶賛していたんだ。お前は、恨みを持った奴の幻影が襲ってくるのなら、恩を持っている奴の幻影が助けに来てくれてもいいじゃないかだなんて言っていたが……本当にその通りだったら、お前には多くの幻影が味方になってくれたかもな。
 そう確信できるぐらいみんなに感謝されているすごい奴だよ、お前は……正直、惚れるぜ?」
「……そう言ってくれると、嬉しいよ」
 言葉とは裏腹に、ロウエンは少し浮かない顔をしている。
「その割には、嬉しそうな顔には見えないぞ?」
「いや、俺は……まだ小さい頃。生きるためにたくさんの人から泥棒や強盗をした。中にはそれが原因で死んだ奴もいる。それが、悪い事だったとは思っていない。そうしなきゃ、そいつらの代わりに俺が死んでしまっただろうから。
 でも、そんなことをした俺が、幸せになっていいのだろうかとか、そういう事を考えてしまうんだ」
「逆だよ、ロウエン。お前は、隣にいる誰かが幸せだと、自分もいい気分になるんだろう? そして、近くに不幸な顔をした奴がいると、自分もなんだか気分が沈むんだろ? そうじゃなきゃ、俺をあんな風に励ましたりすることもないだろう?
 それに、お前は悪い幽霊には取り憑かれていないって以前俺が言っただろ? お前を心の底から恨んでいるような奴も、恨みを抱えて死んだ奴もいないんだよ」
「あぁ、そうだな……」
「他にも言いたいことはあるぞ? 何で俺やレナが、お前が幸せになることを望んでいるってことを考慮しないんだ? 俺は、お前が幸せでいてくれた方が嬉しい。損料だってきっと同じ気持ちだ」
「それは……」
「俺はな、ロウエン。お前が好きだし魅力的だと思うけれど、ただ一つ欠点があるとしたら、お前が幸せそうにしていない事だよ。素直に幸せな状況を喜べないことだ。もっと自分に素直になれって。お前は幸せになってもいいし、幸せになることを望まれているんだ」
「そう言われても、俺がいきなり幸せになれだなんて……」
 ナイジャに激励されてもまだ弱気なロウエンを見て、仕方のない奴だとナイジャは苦笑する。
「レナ、出てこいよ。バトンタッチだ」
「はいな!」
「レナもいたのか……ってうわぁぁぁ!?」
 そう言ってナイジャは木の陰に隠れていたレナが、泡のバルーンを使い、一跳びでロウエンに抱き付き、押し倒す。
「ロウエンさん、そういうわけで、私も貴方の事が好きです! 驚きましたか?」
「ずっと知ってたよ! 気付かない馬鹿がいるか!?」
「でしょうね! じゃあなんでロウエンさんは私の気持ちに応えてくれなったんですか!?」
 レナからは少しお酒の匂いがする。告白するのに勇気が要り、そのために酒に酔わなければできなかったのだろうか。
「……ナイジャに話した通りだよ。俺は、まだ許されているのか気になっているんだ」
「気にしないでください! その分、良いことをして罪を償いましょう!」 
 レナは泣き言をいうロウエンに、ロウエンと同じ調子で無責任に励まして見せる。
「たとえ貴方が誰かに許されなくても、償うんです。あなたは今までそれをやってきましたし、これからもそれをやればいいんですってば。というかですよ、女一人の愛に応えられないようで、この先も誰かを助け続けたり、癒し続けたりできませんってば。
 もしも、私が好みのタイプじゃないとか、そういう理由でダメならばそれでいいです……ですけれど、自分の過去が原因で私を受け入れられないなんて言うのは、絶対に嫌ですよ! 嫌ですよ!?」
 レナは酒のせいか、今までにないくらいに感情を表に出してロウエンに詰めよる。ロウエンと鼻面を突き合わせるほどの距離まで詰め寄る形で言われては、ロウエンも折れるか眼を逸らす以外の選択肢はなく。しかし、眼を逸らしても今のレナならば強引にでも顔の方向を直してくるんじゃないかと、そんな事が予想できるくらいの気迫である。
「わかった……ごめん、俺も素直じゃなかった」
「分かればいいんです。あなたは確かに、小さい頃に罪を犯したのかもしれません。けれど、貴方はそれ以上にいろんな人を助けているじゃあないですか。オオタニさんの本音を引き出すために私と一緒に頑張ってくれたり、村長を励ましたり、孤児を引き取ったり、お尋ね者を捕まえたり、他にも色々!」
「全部俺だけじゃ無理だったって」
「貴方が居なければそもそもそれらが始まりませんでしたー! そもそも、誰かに頼ることの何が悪いんですか! 私だって、あなたに頼らなければあの家から抜け出すことも出来ませんでしたよ? それに、それにですよ! 貴方が罪を償うために生きたいというのなら、私にも手伝わせてください!
 貴方と、一緒に生きたいんです!」
「……その……えっと」
 レナにまくしたてられ、ロウエンは思わず言葉に詰まってしまう。
「ありがとう……俺も幸せになるし、お前を幸せにするから……だからもう、そんなにまくしたてないでくれ。こんなんじゃ格好つけた、気の利いた言葉の一つも思いつかないじゃないか……」
「そう言ってくれて助かります……私も、なんというかこんな風にまくしたてるのは慣れていなくって……少し、精神的に疲れてしまって。ロウエンさんが私を受け入れてくれて安心したら、ちょっと力が抜けてしまいましたよ」
「大丈夫かよ?」
 疲れた笑顔を見せるレナの顔を見て、ロウエンは心配そうな顔をする。
「問題ありませんよ……ところで、ですね」
「ところで、だ」
 そんなロウエンの心配をよそにナイジャの声が混じる。見ればナイジャはこぎれいに化粧しており、弓の弦に使うお下げ髪のような器官には花飾りまで付けて、女性らしさを醸し出している。匂いも腐葉土の匂いを洗い流し、ほのかにメスのにおいを漂わせているあたり、粘液で粘ついて使えなくなった道具を洗浄するための不思議珠、『洗濯珠』とかいう道具でも使ったのだろう。
「私以外にもロウエンさんを好いている方がいらっしゃるのですがどうしましょう?」
「どうしましょうって何だよ!? いや、そりゃ申し訳ないけれど、ナイジャには諦めてもらうしかないだろう?」
 ロウエンは至極まっとうな意見を出す。だが、レナとナイジャは首を横に振る。
「いえ、それは選択肢の一つでしかありません!」
「酷いな、可憐な乙女を傷つける気か、お前?」
 ロウエンが至極まっとうな意見を出すと、レナとナイジャは理不尽なくらいにおかしなことを言いだす。
「良く考えてもみろ。確かに俺の魅力はレナに劣るかもしれんが、俺単独だったらそれはそれで俺という女もありだったと思うだろ? 違うか、ロウエン?」
「まぁ、ナイジャなら……ありっちゃありだけれど、レナがいるとなると……二番目、になっちゃうから」
「ナタリアと呼べ」
「お前もそう呼んで欲しいなら、その口調どうにかしろっての!? 女っぽくねーんだよ!」
「ふむ……そうね。これくらい女の子らしい口調なら。あたしを女って認めてくれるの?」
「急に女らしくなられても反応に困るだろぉ!?」
 ロウエンはナイジャもとい、ナタリアに迫られて、嬉しいやら恐ろしいやら複雑な気分だ。肝心のナタリアも、これで酒に酔っていないのだから、恐ろしい限りだ。
「まぁ、なんだ……あたしはね、レナがロウエンに好意を持っていたのは気付いていたから、邪魔するのは野暮かなって思ったんだけれど……」
「ロウエンさんなら、二人の女性を同時に愛することくらい余裕ですよね?」
「と、レナが言うものだから……ロウエンにはどちらか一人を選ぶのではなく、どちらも選ぶという選択肢をとってもらおうかなと」
 ナイジャとレナは息の合った掛け合いでロウエンの逃げ場を無くしていく。
「いったい何の根拠があって俺をそんな目で見ているんだよ……? 俺は何人も愛せるほど器用じゃねーよ! 多分」
「女の勘、です」
「女の勘、よ」
 レナとナタリア、二人の声が重なる。
「あれです、私達アシレーヌや、近縁種のトドゼルガとかも一夫多妻制ですから、男が複数の女性を娶る際の心構えは本能に刻まれています! それにロウエンさんもやってみなきゃわかりませんし!」
「カエンジシも一夫多妻制だ、ガオガエンとカエンジシなら似たようなものだろ?」
「似てるからって一緒にされても困るんだよ!?」
 レナとナタリアの息の合った口撃により、ロウエンはたじたじだ。
「っていうか、むしろ私はナイジャさんのことも好きですので……その、私がロウエンさんを独り占めしたりして、何か気まずくなりたくないんですよ」
「それは分かるけれど、だからと言って一夫多妻制とかいきなり言われてもだな……」
 困る。と言う言葉を出そうとして、ロウエンは考える。ナタリアは常に性別を偽っているくらいだし、その性別を明かすのはそれなりに勇気が要る行為だろう。それをやってくれたということは自分を信用してくれる証拠だし、おどけてはいたものの、ロウエンの事が好き、と言った彼女の言葉は嘘ではないはずだ。
 しかし、ここで二人の申し出を受け入れてしまえば、まるで自分がふしだらで性的に自由奔放な男に見られてしまうような気がして悩ましい。美しい女性二人から言い寄られることは幸福と言えばそうなのだが、それを受け入れるのはまだ抵抗がある。
 だが、黙って二人の目を見ていると、なんとなく二人の考えていることも伝わってくる。レナもナタリアも、今だけは絶対に本音しか言っていないのだろう。
どちらもロウエンをあきらめたくないし、かといってレナも、ナタリアがロウエンに振られてしまうところは見たくない。
 自分勝手な理由ではあるが、ナタリアもレナも誰かを傷つけることを嫌い、誰かが幸せでいることが好きな性質であることは間違いなく、その二人で考えた結果が一夫多妻制なのだ。
「わかったわかった。女を幸せにするのも、俺の償いの一つだ……二人くらい、一緒に愛してやるよ。仕方ねーな!」
 若干自棄になっているところもあったが、ロウエンは二人の要望を受け入れる形で二人の突拍子もない一夫多妻制という案を叫ぶように受け入れる。
「これでいいんだろ? 優柔不断だとか、後になって言うんじゃねーぞ!?」
 大きな声を出すのによほど気力が必要だったのか、言い切った後のロウエンは張っていた肩を落としてため息をついた。
「ホッホウ! やればできるじゃないか」
「えぇ、ロウエンさん格好いいです」
 そんな彼を手放しに誉める彼女らは、おもむろにロウエンの腕に抱き付いてくる。レナは心底嬉しそうな笑顔で、ナタリアは妖艶な笑みを浮かべ、思惑は違えどロウエンを愛したいという目的は一致している。ロウエンは興奮と驚愕が混じり、思わず腰の炎の火力を上げてしまう。敵意を持った炎ではないため熱くはないが、間近で見ると眩しいくらいだ。

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「それで、やっぱりこういう流れになるのか?」
 二人は、ロウエンの腕を下に引っ張り、『座れ』、『寝ころべ』といわんばかりの無言の圧力をかける。特にナタリアはロウエンの尻尾の付け根あたりを執拗に撫でている。何を望んでいるのかがはっきりとわかってしまう。
「今、疲れているなら遠慮しますけれど」
「いいや、疲れているはずなんてない。そうだろう、ロウエン?」
 逞しいロウエンには二人の体重を抱えて立っていることなど造作もないが、しかしどちらかというと精神的な圧力のせいで彼は立っていられない。
「もうういいや、突っ込むのも面倒くさいし……あぁ、けれど……誰も見ちゃいないとは思うけれど、せめて街から見えないところに移動しねーか? さすがに落ち着けないぜ?」
「ふむ、それもそうですね」
「確かにな。目がいいポケモンならこの距離でも覗ける」
 ロウエンがせめてもの慈悲をと頼み込むと、二人はそれもそうだと少し場所を移動して、草陰に隠れるような場所へ。そうして地面に座らされると今度は寝かされ、いつの間にやらロウエンは二人に見下ろされる格好に。
 こういう流れになってしまってからは、覚悟と期待を同時に行い、ロウエンの股間はすでに意外と小さめのものがそそり立っている。猫系のポケモンなので、小さいのも棘が生えているのも仕方がないのである。それを改めてジロジロとみられると恥ずかしいものがあったが、この二人になら大丈夫と言い聞かせ、二人の顔を見る。レナはやっぱり恥ずかしそうにしていて、ナタリアはそんなレナの事も含めて愛おしそうに見ている。
「レナ、勢いで始めたけれど大丈夫? 私がいろいろ教えてあげようか?」
「やり方が良くわかりません! アレに噛み付いたことはあるんですけれど! とっても血の味がしましたよ」
「んなこと言われてもどう反応すりゃいいか分かんねーよ! ってか怖いよ!」
 レナのとぼけた答えに、ロウエンは大声でツッコミを入れる。
「ホホウ……そういえば、そうだったね。随分と乱暴ね……ロウエンには噛みついちゃだめよ、レナ?」
 ナタリアは言ってしまった後でレナが初体験が散々であったという事を思いだし、気まずそうに笑ってごまかした。
「じゃ、レナにはお手本ってことで、ロウエンの一回目は私がもらおうかしら」
 ともかく、全く経験のないレナにそのままやらせるのもなんなので、ナタリアは一回目を自分から申し出た。レナは反対せず、小さくハイと頷いた。
「ナタリア……丁寧に頼むぜ……?」
「当然」
 ナタリアがどんなふうに性交をしようというのか、全く予想できずにロウエンは体が強張った。しかしそんな心配をよそに、ナタリアはロウエンのペニスを愛おしそうに翼で撫で、クチバシから覗かせる小さな舌で先端を舐める。お世辞にも気持ちいいとは言えないが、その生温かな吐息で、ペニスの全神経が目覚めてしまったようで、湧き上がった性欲がロウエンの下半身で唸り声を挙げている。
 今すぐにでもナタリアを押し倒して、彼女の下半身にペニスを突っ込んでしまいたいような衝動に駆られるが、なぜか開幕当初から寝かせられる体制になっていたロウエンは、無言の圧力でそんなことは許されていないと感じた。
 大人しく待っているロウエンに満足したナタリアは、その反応に満足して彼の体に馬乗りとなり、ペニスを総排出孔へと押し当てる。
「すまんね、あたしにはあんたのものを受け入れる場所はないからさ。素股で勘弁してくれ」
「構わねーよ。娼婦との性交渉は体でするもんだが、こういうのは心でやるもんだ。気持ちの方がよっぽど大事だ」
「ホッホウ、中々きざったらしいセリフを言うじゃあないかい。ならば、遠慮はいらないね」
 ナタリアは言いながら、首周りの羽毛に隠してあった小瓶を取り出し、自身の股に良い匂いのする油を塗りたくる。そうして滑りの良くなった自身の股でロウエンのペニスを押しつぶす形で前後に動く。義足の左足では素股のために踏ん張るのも辛そうだが、彼女は右足と翼の方に頑張ってもらうことで、前後運動を休みなく行っている。
「疲れないか、ナタリア? 脚がそんなじゃきついだろ?」
「問題ない。これでも体は鍛えているんだ、この程度で音を上げはしないよ」
 心配していまいち行為に熱中できないロウエンを見下ろしながら、ナタリアは気丈に微笑んで見せる。彼女は余裕をアピールするためか、自身の翼の中ほどにある指を咥えて、それをロウエンの口に突っ込んだ。彼女の唾液が染み込んだ指が容赦なくロウエンの口に突っ込まれ、思わず吐き出そうとしてロウエンは舌を動かすのだけれど、ナイジャはその感触が楽しくって仕方がないようだ。
 要約満足して指を引き抜けば、今度はロウエンの唾液が染み込んだその指を、嘴に咥えた。そういった行為がよほど好きなのか、満足そうな彼女の目が怪しく輝いている。
 ロウエンは、全く変わった性癖だなと思う一方で、そんな彼女に組み敷かれながら、為されるがままにしている自分も相当物好きだな感じてしまう。だけれど、こんなになされるがままに甘んじていられるのは、ナタリアを信頼しているからに他ならない。
 対するナタリアも、自分が信頼されているのが分かっているからこそ、こうして大胆な行動に出られている。これがお互いを最大限に興奮させて思わず顔がふやけてしまうようだ。
 気持ちが昂るに応じて、ナタリアの動きもより激しいものへとなっていく。ペニスを深くまで挿入できない体の構造上、そんな表面的な刺激でもナタリアは十分に感じるのだろう、やがて興奮したのか息が苦しくなったのか、開け放たれた彼女の口からは唾液がぽたりと漏れてしまう。それがロウエンの顔に滴ると、今まで以上に漂ってくる雌の匂いに思わず男の本能が滾るのを感じる。気付けば、下半身の方もいい具合に熱を帯びていて、油のおかげでぬるぬるになった彼女の秘所とこすれ合う感覚は、これまでで感じた何ものよりも心地よい感覚になっている。

 ロウエンの体も、自然と腰を突きだす態勢を取ってしまい、射精はもう秒読みだった。快感と愉悦で目がとろけていたナイジャは、ロウエンの様子を敏感に感じ取り、搾り取るように腰に力を入れた。
 瞬間、吐きだされる精液。ドクドクと脈うち、溢れ出る精液は、彼を快感で満足させたという証。今までそんなことをしてやりたいという男には出会えなかった彼女だけれど、ロウエンならば幸せにしたい、満足させたいという思いも湧き上がる。その念願がこうして叶うと、なんとも感慨深い。
 処女でなくなってからは長いこと男性不信がつづいたが、本来の性交というものはこんなにも気分が良いものだったのだなと、心が満たされる気分だ。タマゴグループが違うため、子供は決して出来る事はないだろうが。しかしそれでも、こうして交わった時の満足感は、無駄な行為ではないと確信できた。
 一方ロウエンは、自責の念のせいで女性を抱くことすらできなかった日々から解放され、思うように、思いのままに女性を抱くことが出来て、今までにない充足感があった。自身の体の上に感じるおもみ、体温、肌越しに感じる息遣い、そして幸せそうな顔。信頼した仲間のものだと思えば、そのすべてが尊く思える。
 ロウエンは体を起こしてナタリアを引きよせ、まだ荒い息をつく彼女を抱きしめる。湿気を伴った荒い息遣いがメスの匂いを直接ロウエンに吹きかけ、それだけでも心地よい。その上、ナタリアはまだ呼吸も苦しいだろうに、ロウエンと唇を重ね合わせて口付けをしてくれて、快感の余韻をいつまでもかみしめていられる。
 そうして抱き合っていると、ナタリアが不意にロウエンの体をぎゅっと抱くので、ロウエンも彼女の体を抱き返した。まるで甘えてくるかのような彼女の振る舞いに、いつもの飄々とした態度の奥に隠れた彼女の本性を引きずり出したような気がして、無性に愛おしい。
 ナタリアもまた、いつも強気な態度をとっていた自分が、本当に久方ぶりに甘えるような態度を出せて、胸がいっぱいになるくらいの幸せを感じている。そのまま、帯びていた熱が程よく冷めるまで二人は抱き合っていた。最初こそ気まずくて消極的だったロウエンも、随分と積極的になっていて、このまま離したくないとすら思うほど。
 けれど、今はレナを待たせている。ロウエンがナタリアの背中に回した指に力を入れ、そろそろ交代してやれとナタリア委に促す。
 満足したナタリアは、ゆっくりと起き上がり、レナの方に一度微笑み振り返りながら次を譲る。
「レナ。上手くやりなさいよ」
 ずっと抱き合っていたおかげだろう、ロウエンは射精するまでは早い分、回数で勝負するタイプで、彼のペニスはナタリアと抱き合っているうちにもう復活している。
「あー、レナ……ナタリアの後になるけれど、怒っちゃいねえよな?」
「当然、怒っていません。ナタリアさんの事は、私も好きですから。家族なんですもん、譲り合いは当然ですよ……でも、独り占めはさせませんからね。ロウエンさんが良ければ、いつでも始めてください」
「あぁ、もういけるよ」
 レナは、ロウエンとナタリアの行為を見ているうちに興奮したのか、むずついた下半身を鎮めるために、無意識のうちに自慰をしていたらしい。彼女の秘所の周りの毛が少し乱れ、そして秘所は明らかに湿り気を帯びている。
 緊張はしているのだろう、笑顔は堅いけれど、それ以上の期待に満ちたまなざしが煽情的だ。ロウエンは起き上がって彼女への不意打ちの口付けをすると、レナは一切抵抗するそぶりも見せずに舌を絡める。
 目を閉じて緊張しながらも身を任せる姿はあまりにかわいらしくて、思わず強く抱きしめてしまうけれど。レナはその息苦しいまでの抱擁が帰って心地よいようだった。胸の前に縮こまっていたレナ腕は、口付けを続けているうちにゆるゆるとロウエンの体に伸びてきて、その手がロウエンに邪険にされないとわかるや、レナはさらに大胆に彼の太ももあたりを撫でた。
 やがて、ロウエンが口を離すと、レナは言葉にするのが恥ずかしいのか、潤んだ瞳で見上げながら無言で地面に倒れる。いかにも犯してくれと言いたげなその顔を見て、ロウエンも彼女の体に跨ってあげると、レナは無言で頷き唾をのんだ。
「なんだよ、その今にも食われてしまいそうに潤んだ瞳は」
「だってぇ、嬉しいけれどちょっと怖いし緊張するし、うまく出来るか不安ですし」
「心配するな。さっきも言ったろ? こういうのは体じゃなく心でするもんだ。お前がお前らしくしていれば、それが下手なんてことはねえよ」
「本当ですか? その……頑張ります」
 レナはロウエンの言葉に頷き、体から力を抜く。ロウエンはレナの割れ目の付近を指でなぞり、彼女の反応を確かめる。爪を立てないように指の腹で押してやると、レナはびくびくとしながら体に力が入っているのが分かる。くすぐったいのかそれとも感じているのか。彼女の表情が幸せそうに見えるため、後者なのだろう。
 しつこくやっていると、レナはロウエンの腕を掴んで下に引っ張る。もう抱きしめて、次に行ってほしいという事のようだ。
「レナ、もう準備はいいのか?」
「えっと、はい……なんだか、体がうずいちゃって」
「案外いやらしいんだなお前……」
 彼女の胎内へと続く孔。それをめがけてペニスを突き入れると、棘のせいもあってかレナはいたそうに顔をしかめていた。
「大丈夫? 痛くない?」
「うーん……ちょっと痛いです。でも、始めてなんてこんなもんです……多分」
「ちょっと中断する?」
「いえ、問題ないです」
 当然、そんなんでは快感を感じるという状況でもないのだが、ロウエンがやっぱり止めようかと気を使っても、レナはロウエンの胸毛を指先で掴んで、『続けて』と要求する。
 ロウエンは無理をさせたくなかったが、レナは何事も慣れは必要だ。レナ自身、馬鹿ではないから耐えられるだけの確信があったのだろうと解釈して、そのまま動き始めた。
 そうして動いてみると、痛そうだった彼女の食いしばられた口元が、少しずつ力を失いついには開いていく。その頃には痛みよりも快感を感じているらしかった。やがてその口元には笑みすら浮かんできて、レナの全体の表情を見れば、もっとお願いとばかりに甘えた目をしている。
「どうやら大丈夫みたいだな」
「顔に出てます?」
「うん、とてもかわいいよ」
「本当ですか?」
 レナが嬉しそうに聞き返すので、ロウエンは笑顔で頷いた。こんな時でもいつものように眩しい笑顔を見せられてロウエンはこみ上げる気持ちが抑えきれない。一度射精した後だったため、一回目よりも長持ちさせるつもりだが、レナの表情を見てしまっては、もう耐えることは難しい。レナの表情を見てもうちょっと頑張りたいのに、皮肉なことにそのレナの甘えた表情があまりに魅力的過ぎて、射精を加速させてしまう。ロウエンはなんだか申し訳ない気分だ。
 腰を前後させ、快感以外の何も考えられなくなり、気付いた時にはロウエンもレナの中に精液を放っていた。目の前にいるレナは、その射精を感じて恍惚に浸っているのだろうか、潤んだ瞳でロウエンを見上げて、荒い息を突きながら濡れた舌を物欲しそうに突き出している。
 誘われるがままにロウエンも口付けを交わす。レナの唾液の味、舌の動きを堪能していると、よほど機嫌がいいのかレナの鼻から甘い声が漏れている。オシャマリのころから今まで、ずっと甘えられてきたけれど、こんな声を出すことなんて今までなかった。
 それだけレナにとって感極まっているのだろうと、今まで彼女の想いを受け入れてラゲられなかった自分が情けないとすら思えてしまう。
「あー……レナ。気持ちよかったか?」
 もっとレナを愛してあげたい、幸せにしてあげたいと、彼女の首筋を優しくなでながら尋ねると、レナはロウエンの胸にほおずりをしながら甘い吐息を出す。
「もう一回……やりましょう?」
 レナの言葉は質問の答えにはなっていなかったが、悪くはなかったという事は伝わった。ロウエンは安心して笑顔になり、ナタリアの方を向く。
「って、レナが言っているんだけれど……連続でいい?」
「ホッホウ! 好きになさいな。あたしは、貴方達の幸せそうな顔を見るのも悪くないと思っているよ」
 彼女は、楽しむ二人を暖かなまなざしで見守るのもまた楽しくて仕方がないのかもしれない。順番に行うべきかとも思ったけれど、ナタリアが大丈夫というのならばそれに甘えるのもいいだろう。羞恥心もようやく消え去ってきて、今度はさっきよりも楽しめる気がした。

 三人の行為は深夜まで及び、疲れ果てたら、レナの程よい温度に調整した熱湯を使って体を洗う。もう宿も閉まっていたため、三人は野宿をして一夜を明かした。
 一夜明けて、『おそよう』*1と言いながら目覚め、昨夜の混沌とした状況を思い出すと、これからどう接すればいいのか少し悩んでしまうが、ナタリアもレナも、今まで通りで構わないという。つまりそれは、ナタリアのことは相変わらずナイジャと呼ぶべきということで、それが意味するのは、村長の村で共同生活をするのはしばらく先という事らしい。
「すまんね、私は賞金首だから、村には行けないんだ」
「マジかよ!? せっかくあんなこともしたのに……まだそれは変わらずなのかよ」
 ロウエンもレナも、村長たちと一緒に暮らそうと申し出たのだが、ナタリアもとい、ナイジャは結局あの大陸にはまだしばらくは近づかないつもりのようだ。
「ほとぼりが冷めて、俺の賞金が解除されるか、それか村長が別の大陸に村を作ることになったらお前と暮らすのも考えるよ。それまでは、レナをきちんと愛してやれ。それでもって、たまには俺……いや、ナタリアに会いに来てくれると嬉しい。それに、あれだろ? 俺が村の中にいたら出来ないこともある。お前をあの村に送ることが出来たのは、俺があの村にいなかったからだ。そうだろ? 俺は外からあの村を支えて生きるよ
 俺も、色んな所を転々としながら、今度は積極的に村人をスカウトしてみようと思う。居場所を変えるときは、これからも変わらず手紙を送るよ。だから、いつだって気が向いた時に迎えに来てほしい」
 ナイジャは眩しいくらいの笑みを浮かべてロウエンへ告げる。
「……それもそうだな。早く、賞金首が解除されるのを祈ってるよ、ナイジャ」
「あぁ、その時は、うまい酒でも飲みかわそう」
 お互い頷き合って、ナイジャとロウエンは握手をする。二人の握手が終わると、レナもナイジャに握手を求め、それが終わると二人でハグをしあった。まだお別れの時間でもないのにとロウエンは苦笑したが、でもゼントや村長達の前で同じようにハグをするのはまだ恥ずかしいと、レナは顔を赤くして言う。
 どうもレナは、お別れの時はあっさり別れるつもりらしいが、その時になってレナが泣かないか心配である。

 後日、ロウエンはナイジャに誘われて二人きりで会話する時間を持つ。レナは二人きりで会話だなんて気になっちゃうなどと茶化していたが、ナイジャは『お前だってついさっきロウエンを独り占めしていたんだ、いいだろう?』と笑っていた。レナは『そうですね、行ってらっしゃい』と笑顔で二人を送り出す。
 そんなわけで、ロウエンとナイジャは宿を出て、石垣で作られた夜の街を歩き、改まった話をする。
「あの日、あの時も言ったが……おれは、お前の事はレナに任せるつもりだったんだ。タマゴグループも違うし、やっぱり子供を産めた方がいいだろうなって……」
「ま、それが普通の思考だわな。レナが俺のことを好いていたのは誰が見ても明らかだったわけだし」
「なのに、レナは『それならロウエンさんを二人で愛すればいいんです!』だ。全く、純粋で素直な性格なのはいいけれど、そこまで吹っ飛んだ発想を持つ奴だとは思わなかったよ」
「アイツは、なんというかおっとりとした性格で、普通の奴が気にするような色んな事を気にしない奴だからな。包容力があると言えば聞こえはいいんだが、適当と言っても間違いではない。でも、悪くはないんじゃないのか? 一夫多妻制だとか、馬鹿げたことを言ってはいるけれど、それはアイツなりにみんなが幸せになれる方法を探したまでのことだし。俺は……その、ナイジャのことだって悪いと思っていないしな。二人の女性を愛することが出来るだなんて、最高の気分だよ」
「本当か? 鬱陶しいと言っておくなら今のうちだぞ?」
「ナイジャもレナも、俺が一人でいたいときは空気くらい読んでくれそうだし、問題ないだろ」
「かもな。俺も、今まで一人で生きてきたせいもあってか、あんまり誰かの隣に長くい過ぎると、それはそれで苦痛だよ。だから、お尋ね者だから一緒に暮らせないってのもあるんだけれど、一人の方が性に合っているっていうのもある……」
「それで寂しくないのかよ?」
「どうだろうね? これから寂しくなるかもしれないが……それは、大切な人が出来たという事だ。いい事じゃないか。それに、もしも俺が寂しくなったらこっちから会いに行ってもいいしな……あまり長居をする気はないが、お前やレナと会って、一緒にワイワイ楽しんで。一年に一回そういうことをするくらいのが丁度よさそうだ」
「それじゃ、レナのほうが圧倒的に俺を占有しちゃうことになるが、いいのかい?」
「公認で浮気を出来るようなものだと思っておけばいいんじゃないのか? 私はそれでも、幸せだよ。ようやく、体を許せる相手が見つかったんだ」
 ロウエンの気遣いを必要ないと、ナイジャは言う。
「レナを大事にしてやれよ、ロウエン。俺のことはたまに思いだす程度でいい」
「そんな寂しいことを言うなって、ナイジャ。お前もいい女なんだから、自信をもって大手を振って歩いていけばいいんだ。何より、レナだってお前と仲良くしたいって思っているだろうし。あいつは、家族と一緒に居たことがないから、家族として暮らしたいんじゃねーの?」
「妻が二人っていうのはここら辺ではあまりなじみのない家族観だが……まぁ、そうかもな。みんなが仲良くしたいって、難しいけれど理想ではある。奪い合うのではなく、分け合う事で不満を無くす。レナらしいアイデアだよ、本当に。
 だが、そう考えると……ロウエン、お前はレナを独り占めしていることになるな。今度はロウエンを二人で攻めるのではなく、レナを二人で攻めるのも面白いかもしれん」
「さらっと怖いこと言いやがったぞこいつ……というかその理論だとお前も――」
「それはともかくとして、だ……ロウエン」
 話を遮る形でナイジャが話題を変える
「おう……何だ?」
 『話題を逸らしやがったなこいつ』と、ロウエンは苦笑する。
「誰かを幸せにするっていうのは、とても難しいことだ。お前はその難しいことを、何度も何度もやり遂げ来たんだ。だからお前は、自分が幸せになることを恐れちゃいけない。世界のどこかにお前の幸福を許さない奴がいようとも、俺がお前を許すし、お前の幸せのために協力したい。
 もちろん俺自身も、お前が自分の幸せのために生きるように……これからは自分の幸せのことも考えて生きていこうと思っている。
 だから俺は、別々に暮らすことになるけれど、何か困ったことがあればいつでも駆けつけるし、今度は……俺も困ったことがあったらお前を頼りに行くからな。今度は、戦力だからという理由でかりだすのではなく、家族として助け合おう」
「あぁ……そうだな、家族として。今度は、お前と家族として……か」
 今まで、故郷で暮らしていたブラストや子供たち。そしてナイジャに言われるがまま移り住んだ村の住人のことを、家族だとは思っていたが。こうして面と向かって言ってくれたのは、ナイジャが初めてだ。
 その響きがなんだか自慢したいくらいに嬉しくて、ロウエンは少しだけ目が潤んでしまった。
「あとで、レナにも同じ事を言ってやらないとな。俺達は家族だって」
 きっとレナも、はっきりと言葉に出して家族だと言えば喜んでくれるだろう。そう確信してロウエンは拳を握り締める。
「あぁ、言ってやろう。レナの笑った顔は可愛いからな」
 ナイジャはそう言ってほほ笑み、ロウエンの背中をポンと叩く。ナイジャとはしばらく肩を並べて歩き、宿に戻る。ロウエンがレナに、ナイジャと話し合った内容を話す。これからは家族だと改めて話すと、レナは満面の笑みを浮かべながらナイジャに抱き付き、喜びを露わにしていた。
 その際、ナイジャはさりげなくレナの尻を撫でていた。どうやら、後々レナを二人がかりで攻めるというのも、冗談ではないのかもしれない。

 それからまた数日たって、夢をつかさどるポケモン達の送り迎えも終わり、いよいよロウエン達も村へ帰宅した。その際のナイジャとロウエン、レナの別れは大分あっさりとしたもので、確かにレナの言う通り、村長やレナの前で同じようなお別れは出来なかった。
 これから、全員が日常に戻って行く。だけれど、村に帰ったその日のうちに、レナとロウエンは二人が結ばれたことを皆に告げたから、日常に戻るとは言っても、これまでとは違う日常が待っているだろう。いつかナタリアとも結ばれたことを村の住民に告げるべきなのだろうけれど、その時どんな顔をされるのか、二人は今から心配であった。
 
 
 
 
 
 ネッコアラは現実が醜いと言った。夢の世界は素晴らしいと言った。彼は夢を共有することで現実を垣間見た。そうなる原因を作ったのは一体誰……?
「ペイン……」
 悪夢のスペシャリストであるダークライの責め苦の果てに、ネッコアラはようやく口を割る。


 次……HEAL12,久しぶりのナイジャ

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  • メロエッタの歌の歌詞はなんか聞いたことあるなと思って考えてみたらそういえば中の人同じでしたねw

    確かにポケダンってどう考えても「はい」という選択肢しかないのにあえて「いいえ」も選択できる場面って多いですよね
    まぁ、寧ろ「いいえ」選んだ方が相手の可愛い反応見れて非常に眼福なんですけどねw(特に超ダン) -- ナス ?
  • 例の歌は、ケルディオの中の人も歌っていたため個人的にはネタ度も高い曲でしたw メロエッタの歌ならあれくらいのことは出来ると思いまして……

    ポケダンのお約束については、それらをふんだんに取り込んで作品を完成させたいと思っています。可愛い反応も含めて、自分が表現出来る限りのも絵を詰め込めるよう頑張ります。
    コメントありがとうございました -- リング
  • アローラの新ポケをいたるところで登場させる、SM発売を記念したような心意気あふれる長編でした。立ちはだかる困難に対して自分たちなりに考え抜き常に成長を続ける主人公サイドを描き切ったのは、ひとえにアローラ御三家への愛情がなせる業でしょうか。ポケダンの世界を踏襲した設定や小ネタも嬉しいところですね。
     ただオシャマリ救出後、開拓村以降のストーリーは中だるみ感が否めません。レナを救ったことでロウエンに対立するキャラが失せ具体的目標も見えなくなり、それからはレナに関する秘密をのろのろと解き明かしていくだけで緊張感が足りなかったように思います。ネッコアラやルナアーラ戦など、印象に残るシーンがもっと欲しかった。敵側に擁護できないレベルの悪役を登場させるなり主人公サイドで仲違いさせるなり、読み手を飽きさせない工夫があると読み進めやすかったのかな、と。 -- 水のミドリ

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*1 ポケダン特有の昼過ぎに起きた時の挨拶

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Last-modified: 2017-01-07 (土) 22:51:02
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