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El relato de dos personas 第二章

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この作品は短編「二人だけの秘密」を下地に構成しております。
未読の場合はぜひ短編のほうからお読みくださいませ。

作者ラプチュウより


 トラックの荷台にゆられてシュウ達がトルマリシティにたどり着いた時には、沈みゆく太陽で空は赤く染まっていた。ポケモンセンターの前でトラックから降りて運転手にお礼を言うと、運転手は軽く手を振ってその場から走り去る。

「……うん、あの角曲がったからもう平気だよ」

 シュウがトラックが完全に視界から消えた事を確認すると、ロアは小さくうなずいて空中にジャンプするとその姿を元のゾロアークへと戻す。ロアは少し疲れた表情を見せると、その場で大きく息を吐いた。

「ロア、大丈夫?」

 シュウの問いかけに、ロアは微笑みながら黙ってうなずく。それを確認したシュウは、ポケモンセンターの方へ視線をうつすと入口に向かって走り出した。ロアとサンディもそのあとを追って走り出す。

「すいません! ジョーイさん!」

 ポケモンセンターの自動ドアをくぐったシュウは、受付に向かって大声で叫ぶ。その声を聞いたジョーイがカウンターから小走りで出てきた。

「まぁ、ひどい怪我!? タブンネ、ストレッチャー持ってきて!」
「タブンネェ!」

 シュウの抱えるシャワーズを見て険しい表情を浮かべたジョーイがタブンネに指示を出す。タブンネは返事を返すとストレッチャーを取りにロビーの奥へと向かった。

「それじゃあお預かりします」
「はい、よろしくお願いします」

 険しい表情のままのジョーイに、シュウは抱きかかえていたシャワーズを受け渡す。それとほぼ同時にタブンネが運んできたストレッチャーにシャワーズを寝かせると、ジョーイはシャワーズを載せたストレッチャーと一緒にロビーの奥へと消えていった。

「きゃうぃ……」
「大丈夫、ジョーイさんがきっと元気にしてくれるから。サンディは休んでて」

 そう言うと、シュウは腰につけたモンスターボールを手にとってサンディに向ける。ボールから伸びた赤い光がサンディを包み込むと、サンディの体はその光の中に融け込んでボールの中へと吸い込まれた。サンディを入れたボールを腰に戻しながらシュウが周囲を見渡すと、ロビーにいたトレーナー数人がこちらを見ている事に気がつく。

「ロアはボールに入れてからはいるべきだったかな……まぁいまさらだけど」

 シュウは頭を軽くかきながらぼやくと、ロアを連れてジョーイが消えていったロビーの奥へと向かった。

――――――――――

 処置室の前に置かれた長椅子に座って、シュウとロアは扉の上で光るランプを見つめている。赤く「処置中」と光っているその先にシャワーズを連れたジョーイ達が入って行ってもうすぐ三時間が経とうとしていた。

「結構長いね……」
「うん……かなりひどい怪我だったから……」

 ぽつりとロアがつぶやくと、シュウもどこか上の空で返事を返す。少しの沈黙がその場を包んだ後、ロアがシュウの方を向いて声をかけた。

「ねぇ、あのシャワーズどうするの?」
「どうするって……このままほおっておくわけにもいかないし、元気になるまでは面倒見るつもりだけど……」

 今後の事について、シュウとロアが話していると赤いランプが消える。それに気が付いたシュウとロアが立ち上がると、処置室の扉が開いてジョーイとタブンネがシャワーズを載せたストレッチャーを押して出てきた。

「あ、ジョーイさん。そのシャワーズは……」
「もう大丈夫よ、今夜一晩ゆっくり休ませたら元気になるわ」
「タァブンネェ」

 心配そうにたずねるシュウの顔を見て、にっこりほほ笑んだジョーイが答える。タブンネもやさしい笑顔で合いの手を入れた。ジョーイの返事を聞いて、シュウは安心したのか胸をなでおろす。

「ところで、このシャワーズは君のポケモン?」
「あ、いえ……丘の向こうに広がる草原を流れてる川で見つけたんです。持ってたキズぐすりで応急手当はしたんですけど、ひどい怪我だったからたまたま近くを通りかかったトラックに乗せてもらってこの街に……」
「そうだったの……」

 ジョーイの問いかけに、シュウはこれまでのいきさつを簡単に説明する。事情を理解したジョーイは、少し厳しい表情でシャワーズを見た。

「この子が野生のシャワーズなのか、トレーナーのポケモンなのかは分からないけど……普通のポケモンバトルじゃこうは激しく傷ついたりはしないわ。何があったのかしら」

 薬が効いているのだろう、連れてきたときとは明らかに違う穏やかな寝顔を見せるシャワーズの頭を軽くなでながら、ジョーイはつぶやく。

「とりあえず、今夜は安静ね。タブンネ、この子を病室までお願いね」
「タブンネェ」

 小さく息を吐くと、ジョーイはタブンネにシャワーズを病室まで連れていくように指示を出す。タブンネは返事を返すと、ストレッチャーを押して病室へと向かった。

「君達も、今夜は泊っていくでしょ?」
「あ、はい。そのつもりです」
「じゃあベッドの準備をするわね、食事はあなたと……ポケモンフーズは何匹分用意すればいいかしら」

 ジョーイにたずねられたシュウは、少しロアの方をちらりと見てから答える。

「えっと……じゃあ三匹分と、ロアには僕と同じ食事を用意してくれませんか?」
「ロアって、そのゾロアークの事? それは構わないけど……」
「じゃあお願いします、僕はその間にシャワー浴びてきますから。ロアは一度ボールに入ってて」

 シュウの返答にきょとんとするジョーイを余所に、シュウはロアをモンスターボールに入れると壁の案内表示に従ってシャワー室へと向かった。

――――――――――

「う~ん、ふかふかぁ!」

 食事を終えた後に案内された部屋には、ベッドが二つ備え付けてあった。隣り合わせに備え付けられた片方のベッドに、ロアが大の字になって倒れ込みながらはしゃいでいる。

「あんまりはしゃがないでよ。今日は僕たち以外にここに泊まるトレーナーはいないらしいけど、ロアがしゃべれる事を知られたらいろいろ面倒なんだから」

 ベッドにうつぶせになって顔をうずめているロアに、シュウは小さくため息をしながら声をかける。シュウがジャケットをハンガーにかけて壁に取り付けられたフックにかけてから振り向くと、ロアは枕を抱きかかえてベッドに座りなおしていた。

「ねぇシュウ……あのシャワーズなんだけど、もしかしたら悪の組織から逃げてきたんじゃない?」
「はぁ? 急に何言いだすんだよ」

 いきなりの切り出し方に、シュウはあっけにとられた。ロアはあくまでも真面目な視線をシュウに送っている。

「だってあんなに怪我してるなんて、普通のバトルとかじゃ考えられないもの。きっとどこかの研究所で実験台にされてて、そこから逃げ出すときに追手から攻撃されながら追い詰められてるうちに崖から落っこちて……」
「ちょっとロア、ストップストップ!!」

 いかにもな顔をしながら話を進めるロアに、シュウは思わずロアの目の前に両手を突き出して話をさえぎった。

「それ、この前の街で観た映画の内容とほとんど一緒じゃないか」

 シュウが突っ込みの中で言った映画とは、トルマリシティの前に立ち寄った街でロアにどうしても観たいとせがまれて観る羽目になった『ラボラトリー・ブレイク』という映画の事である。ある国の研究所に捕まっていたポケモンが、追手の攻撃をかいくぐりながら故郷へ帰っていくという内容なのだが、ロアのしゃべった推理はこの映画のストーリーとほとんど一緒だった。

「でもさぁ……だったらなんであの子あんなひどい怪我してたの? 他に理由が思いつかないもん」
「だから映画は作り話だって何度も言ってるだろ? それに、あの映画の主人公はシャワーズじゃなくてリーフィアだったじゃないか」
「同じイーブイからの進化形じゃない、似たようなもんでしょ」

 映画を観るまではいいのだが、ロアはその映画の内容を本当の出来事だと信じ込んでしまう悪い癖がある。シュウがいくら作り話だと言っても聞き入れようとしない。以前にも海の底に眠っていた巨大な怪物が豪華客船を襲うという内容のパニック映画を観た時にも、その後で海を渡ろうとした時に船に乗りたくないと言いだし、なだめるのに丸一日かかったこともあった。この前観た映画は内容的に大丈夫だろうとシュウは思っていたのだが、まさか同じような状況に出くわすとは夢にも思っていなかったことだろう。

「とにかく、あのシャワーズの怪我はいつもより激しいバトルをしたせいかもしれないだろ? そんなに気になるなら、意識が戻ってから直接聞いてみればいいよ」
「はぁい……絶対間違ってないと思うんだけどなぁ……」

 ロアは独り言をつぶやきながら、座った体制から枕を抱きかかえたままベッドに横向きで倒れ込む。シュウも、部屋の電気を消すと空いているもう一つのベッドの中へと潜り込んだ。

「ふぅ……じゃあロア、おやすみ」
「うん、おやすみシュウ」

 月明かりの差し込む部屋の中で、シュウとロアは挨拶を交わしてまぶたを閉じる。彼らが寝息を立て始めるまでに、それほど時間はかからなかった。


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Last-modified: 2018-10-26 (金) 02:00:26
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