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El relato de dos personas 序章

/El relato de dos personas 序章

>>第一章

この作品は二人だけの秘密とある方とのコラボ作品となります。
相手方にはコラボの件は了承済みです。

作者ラプチュウより


 その研究所は、人里から離れた深い森のさらに奥深くにあった。人目を避けるように建てられたその研究所ではちょっとした騒ぎが起こっているようで、人があわただしく動き回っている。

「おい、そっちに逃げたぞ!」
「B-2ブロックを閉鎖だ! 急げ!」

 白衣を着た研究員と、黒い戦闘服に身を包んだ男たちが何かを探すように走り回っている。その目を盗むかのように、研究所の中を一匹のポケモンが逃げていた。水色のつるつるとした猫のようなしなやかな体と長い尻尾の先にはイルカのような尾ひれ、背中には尻尾の先まで魚の背びれのようなひれが続き、顔の周りにはライオンのたてがみを思わせる丸いひれ、両耳と頭にも魚の腹びれにも似たひれ状の器官を持ったシャワーズである。シャワーズが通路を曲がると、視線の先に黒い人影が二つ見えたので慌てて曲がり角に引き返して身を隠した。

「くっそぉ、どこ行きやがった……」
「出入り口は全部封鎖してるんだ。どのみち逃げられないさ」

 二人の男は簡単に会話を交わすと、お互いに相手が来た方向へと駆け足で向かう。その様子を曲がり角からそっとうかがっていたシャワーズはほっと胸をなでおろすと、周囲を警戒しながら通路を進もうと足を踏みだそうとした時だった。突然左足に何かが巻き付けられかと思うと思い切り引っ張られてバランスを崩す。

「きゅっ!?」

 通路の床に倒れ込みながらシャワーズが自分の後ろへ視線を向けると、その先にいたのは黄色い体毛に覆われたクモのような体に二対の足と顔の下にある二本の触覚の先にも黄色い体毛が生えていて、腹部は青い体毛 に覆われており両目の間には四つの目のような器官を持つデンチュラが口から糸をたらして立っていた。その 糸は自分の左足へとつながっている。

「ギィィッ!」

 デンチュラは小さく鳴くとシャワーズに向かって走り出す。シャワーズは慌てて立ちあがろうとするが、その前にデンチュラの足がシャワーズを踏みつけた。

「ぎゅうっ!」
「ギィッ!!」

 デンチュラの足の下でシャワーズはなんとか逃げ出そうともがく。だが、デンチュラは足元でもがくシャワーズに向かって[エレキネット]を放った。電気を帯びたクモの巣がシャワーズの体を包み込む。

「ーーーーーっ!!」

 水タイプを持つシャワーズにとっては最悪の捕獲方法だろう。全身に走る電気の痛みに声にならない叫び声をあげてもがき苦しむが、もがけばもがくほど[エレキネット]は体にからみついていった。

「きゅ……」

 全身がしびれてシャワーズの動きが鈍くなっていく。デンチュラがさらに動けないように再び糸をはきだそうと構えた。その瞬間、一つの影がデンチュラに襲いかかる。

「ギッ!?」

 シャワーズに注意が向いていたデンチュラは、その影に対応するのが一瞬遅れる。その隙に、その影の主はデンチュラに[でんこうせっか]で思い切りぶつかった。デンチュラを吹き飛ばしたその影は、シャワーズの前にしなやかに着地する。クリーム色の体毛に覆われたキツネの姿で、柔らかな九本の尻尾を持ち、頭にポニーテールのような毛と首から胸にかけての長い体毛が特徴的なキュウコンだ。

「きゅうっ!」
「コォン!」

 さっそうと現れて自分を助けてくれたキュウコンを見つめながら、いまだに全身はしびれたままだがシャワーズは目を輝かせている。キュウコンはシャワーズに視線を向けると、その体にからみついた[エレキネット]を取り除くために炎を口に溜めこんで小さく吐きだした。シャワーズは思わず目をつぶったが、吐き出された炎は[エレキネット]を完全に燃やしつくす。シャワーズ自身は水タイプを持っているで、さほどダメージは受けていなかった。まだしびれの残る体でなんとか立ち上がると、体を軽くふるわせて燃えカスを振り払う。

「ケェン、キョンコン?」
「きゅきゅう、きゅらきゅう」

 シャワーズとキュウコンは、その場で会話を交わすと出口を目指して歩き始めた。途中、何度も黒い服の戦闘員や白衣の研究員をやり過ごしながら少しずつ出口へと近づいていく。しばらくして出口を見つけた二匹は足早にそこから外に飛び出すが、そこに広がっていた光景に体が硬直した。

「どこに行くつもりだ? お前たち」

 出口で待ち構えていたのは、研究所の中で何度も見かけた黒い服の戦闘員達だった。その胸にはおなじエンブレムをつけている。戦闘員達が投げ上げたいくつものモンスターボールから、ポケモンが飛び出してきて二匹の前に立ちはだかった。

「きゅらっ!?」
「ウゥゥゥゥ……」

 驚いて一歩後ずさりするシャワーズに対し、キュウコンは鋭い目つきでうなりながら相手を睨みつけている。

「お前達の動きを把握してないとでも思ったか? 違うな、逆に俺達がお前らをここに誘導してたんだよ!」

 戦闘員の一人がそう言うと、相手のポケモン達が一斉に二匹に襲いかかる。キュウコンはシャワーズの前に飛び出すと、[まもる]で攻撃を受け止めた。

「ケェン! ケンコォン!」
「きゅら!? きゅう、きゅるるっ!?」
「キョォン! キュンケコォン!!」
「きゅっ……」

 相手の攻撃を受けとめながら、キュウコンがシャワーズに対して何かを話しかける。それを聞いたシャワーズは目を丸くして反論するが、キュウコンの気迫に口ごもった。相手の攻撃を受けきったキュウコンは、跳び上がると上空から[はじけるほのお]を敵ポケモンが密集している場所目がけて撃ち出す。地面にぶつかった炎は周囲に弾け、密集していた敵ポケモンへと襲いかかった。

「ケンケェン!」
「きゅる……」

 地面に着地したキュウコンの声を聞き、シャワーズは森の中を目指して走り出す。

「シャワーズが逃げるぞ! 逃がすなぁ!」

 戦闘員の指示で一匹のデンチュラがシャワーズをとらえるために後を追いかける。だが、そのデンチュラの前に素早く回り込んだキュウコンが[かえんほうしゃ]を浴びせて失敗に終わった。

「こいつ……何やってるお前ら! さっさとこいつを倒さねぇか!!」

 戦闘員の指示で、ポケモン達が身構える。対するキュウコンは、九本の尻尾を広げてここから先へは行かせないと言いたげに強いまなざしを見せていた。

「きゅう……」

 自分の後方で大きな爆音が響いてくる。一人残ったキュウコンの事を気にしつつも、シャワーズは森の中へとその姿を消した。


>>第一章

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Last-modified: 2018-10-22 (月) 00:37:52
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