大会は終了しました。このプラグインは外して下さって構いません。
ご参加ありがとうございました。
今作はオムニバス形式の短編集のような物になっています。
人によって好きなシチュエーションやポケモンに差があると思うので、嫌な話は読み飛ばしてもらっても話の前後の繋がりは基本的にございません。
もちろん、全部を通しで読んでもらえれば少しずつ話は進んでいっているのでどちらでも構わないような作りになっています。
若干のネタバレを含むため、話の初めに登場するポケモンと人を選ぶシチュエーションを反転で記入します。
好みのある方は確認してから進んでください。
全ての話がポケモン×人間♀となっています。
登場ポケモンガブリアス
洞窟の中をカンテラ片手に進む一人の若い白衣をまとった女性と、同じぐらいの背丈のポケモンの姿がそこにはあった。
見た目の通り彼女は研究者で、今はとある研究のために旅をしていた。
そして彼女たちは今、次の目的地へ向けて移動している最中だった。
先頭を歩くのは彼女の方で、カンテラで先を照らしながらゆっくりと進んでいた。
後ろに続くポケモンはゾロアークで、自分と同じぐらいの大きさの鞄を背負って歩いていた。
「ゾロ……何か聞こえないか?」
そう彼女は、ゾロと呼んだゾロアークに聞いた。
するとゾロはピンと耳を立てて周囲の音を探るが、何も聞こえなかったのか首を横に振った。
彼女の名はアカリ。
名前の通り明朗な性格なのだが、どうも暗闇というものが苦手らしく、今日はいつもの明るさは何処へやら、かなり怯えながら先へ進んでいた。
ならば何故彼女の方が前にいるのかかなり不思議なところだが、その理由はカンテラの明かりが欲しいからだった。
最初はゾロが前をカンテラで照らしながら歩いていたのだが、ゾロで明かりが遮られ、微妙に暗かったのが不安だったのか、カンテラを持ちたいために前に出た。
『そんなに怖いのなら整備された道を行けばいいのに……』
とゾロは心の中では思っていたが、決して口にも出さなかったし、聞こうともしなかった。
アカリは基本的に明るく、なんでもはっきりと言う性格なのだが、ゾロの手前となると基本的に自分の苦手な物や嫌な物に関しては絶対に口にしなくなる。
アカリとゾロは人間とポケモンの関係なのだが、二人は恋人同士でもあった。
そのためか、アカリはできる限りゾロには自分の弱みを見せないようにしている。
知られたくないというよりは、それで余計な心配をして欲しくないという感じのようだ。
しかし、残念なことに基本的にハキハキとものを喋るので、逆に怪しくなってしまう。
ならば何故、ゾロの言うようにきちんと整備された道を使わないのか。
整備された道ならば、年間を通して多くのトレーナーが通行するため、洞窟内には光源が沢山用意されている。
人間が多いということは同時に姿を現すポケモンの数も多いということになる。
アカリとしては願ったり叶ったりのはずだが、アカリは何故かそんな絶好の道を避けている。
逆に今アカリが使っている洞窟の道は、野生ポケモンが開けた、整備されていない穴だ。
危険が多く、光源も設置されていないため視界も悪く、更にポケモンの住処となっている分、道が多岐に別れ、定まったルートが存在しない。
そして今言ったようにポケモンの住処となっているため、子育てに集中している親ポケモンが多いため、アカリの研究の協力をしてくれるポケモンは少ないだろう。
理由はただ一つ。
ゾロにアカリが暗闇を怖がっていると気付かれたくないからではなく、自分でも言っていることのおかしさに漸く気が付いたからだ。
暫く前の事だが、アカリは他のポケモンを見つけた際に、『私と交尾してくれないか?』といつものように声を掛けた。
その時、そのポケモンは怪訝な顔をしていたのはいつものことだったので見慣れていたが、その後ろにちょうどそこを通りかかったトレーナーがついに居てしまった。
勿論そのトレーナーも完全に引いた顔をしていた。
そこでようやく気が付く。
『これはポケモンだからダイレクトに何をして欲しいのか言っていたが、もしかするとポケモンももう少しオブラートに包んで言った方がいいのではないのか?』
と、ここでようやく当たり前の疑問が浮かび上がった。
次に見つけたポケモンで試しに
「そこの君、私に精子を提供してくれないか?」
そう言ってみた。
感覚のずれているアカリらしい言葉選択だが、勿論全然オブラートに包めていない、寧ろ更に変態度の増したそのセリフで言われたポケモンはさらに複雑な表情を見せていた。
そうやって何度か検証し、どう言えばポケモンの反応も良くなるのかを研究していき、ついに
「そこの君、もしよければ私の研究に協力してくれないだろうか?」
と原点回帰した台詞になった。
というよりも、こんな普通の台詞を言うために紆余曲折を果たさなければならないアカリにどれほどの常識があるのかが不思議に思えてくるほどだが、お陰で話だけでも聞いてくれるポケモンが多くなっていた。
ようやくそうはなったものの、やはり実験で行っている事の行為自体は変わらないので、一般の目から見て彼女が異常なのは明白だったため、そういったひと目につく場所を避ける必要が出てきた。
正直な所、以前のアカリならそれすらも気にせずに強行していただろう。
しかし、ゾロという存在が現れ、異質ではあるものの評価の気になる人物が現れたことはアカリに良い変化をもたらした。
だからといってアカリの心がゾロから離れることはなかったようだ。
そのため、実験の勧誘の際の羞恥心とゾロに怖いものがあるというのがバレたくない乙女心を両天秤にかけ、選ばれたのは羞恥心の方だった。
別にゾロはアカリに気丈な所は求めていないのだが、アカリが常日頃周囲の人間に優しくしているのは彼女にとって当たり前なので、そこに惹かれてゾロがアカリのことを好きになったとは微塵も思っていない。
そのため別にゾロに怖いものがある乙女な部分を見せても何ら問題はないどころか、ゾロの中で女性らしくて可愛い部分があるというプラスの評価になるのだが、彼女が気付くわけもない。
足元に注意しながら洞窟をゆっくりと進み、そこに住んでいるポケモンたちに迷惑を掛けないように気を付けて進んでいた。
そしてようやく洞窟の出口が近いのか、次第に洞窟内自体がかなり明るくなっている場所まで進んできた。
ギュッとゾロの手を掴み、少し早足で歩き出す。
「よし! ようやく洞窟も出られたな! 目的地までもう少しだ……ぞ?」
そう言いながらゾロの方へ振り返ると、そこにいたのは見ず知らずのガブリアスだった。
レポート10:たまごタイプ ドラゴン
アカリのあまりにもキョトンとした表情が堪らず、ゾロは今にも笑い転げそうだった。
実はアカリが今手を掴んでいるガブリアスは間違いなくゾロだった。
ゾロは自身の特性であるイリュージョンを使い、暗闇に怯えながら進んでいたためあまりゾロの方に気が向かなかった隙に、ガブリアスに化けていた。
それだけ用心して進んでいるのだから、気が付いたらそこにいたポケモンが知らないポケモンになっていれば確実に驚くだろうと思い、少しだけ悪戯をした。
「うおぁ!?」
案の定、アカリはそんな声を出しながらゾロの手を勢いよく離し、距離をとった。
そこまでずっと堪えていたからもうゾロにはあからさまに面白い反応を見せてくれたアカリを見て、ついに笑い出した。
ただ笑うのでは耐え切れず、腹を抱え、転げ回りながら笑っていた。
息ができないほど笑っていると、ようやくアカリが正体に気が付いたのか少し怒り気味に
「ゾロか! そういうことは止めてくれ!」
そう言ってきた。
あまり笑い続けているとアカリが本当に怒りそうだったので、ゾロは何とか調子を戻した。
が、あまりにもそれが面白かったのか、イリュージョン自体は解かずにそのままガブリアスの姿でいた。
「君は元の姿には戻らないつもりか?」
アカリが少しだけ怪訝な顔をしてゾロに言うと、ゾロはにっこりと微笑んで頷いた。
ゾロとしてはアカリのそんな反応が普通に面白かったのだが、アカリとしてはそんな姿を見せたくなかった。
ゾロが結局その姿から元に戻らず、嬉しそうにアカリについてきていたのはかなり複雑な気分だった。
そのまま洞窟を抜けたアカリたちは獣道を進んで行こうとしていた。
「ほら行くぞゾロ! 頼むからこれ以上私を驚かせないでくれ」
そう言ってゾロの手をまた引いて、あまり広くないその道を身長に進んでいく。
「ギュア?」
だがここでさらにゾロとしては面白いハプニングが起きた。
今、アカリが掴んでいるゾロだと思っているガブリアスの手は、本物のガブリアスの手だった。
勿論その野生のガブリアスは何故、自分が見ず知らずの人間に手を引かれて何処かへ連れて行かれているのかは分からなかった。
だが、元々人間をそこまで警戒していなかったこのガブリアスは、当然人間のことが嫌いでもないためガブリアスは彼女が手を離してくれるまではついて行こうと思った。
それを後ろの方で見ていた本当のゾロが化けているガブリアスはまた笑いを堪えるので必死だった。
そこでアカリに気付かせるのも手だったが、折角ガブリアスも大人しくアカリについていっているので、今度は自分の連れているガブリアスがゾロではなく、本物のガブリアスだと気付いた時の反応が見てみたくなった。
そこでゾロは今度、ガブリアスに化けるのを止めて、自分の姿を見えないようにした。
といっても近くの風景に溶け込むだけなので、ぶつかられたりしたらばれるためそんな二人の後ろの方からゆっくりとついていった。
結局アカリはその後も気付かず、山の付近の森の中までやってきていた。
そこでアカリはいつものようにとりあえずテントを張る場所を探しているようだ。
およそ1時間ほど歩き回り、いい感じの開けた場所を見つけてゾロだと思い込んでいるガブリアスに言う。
「今日はここを拠点にしよう。さあ、テントを出してくれ」
勿論ガブリアスはテントなど持っていない。
持っているのは後ろの方からニヤニヤしながらついて来ている、現在認識不可能な状態のゾロだ。
よほどお人好しなのか、ガブリアスはおたおたとしていた。
そこでアカリは不思議そうな顔をするが、まだそれが本物のガブリアスだということには気が付いていない。
ゾロだと思い込んでいるため、ゾロがそんな演技をしているものだと思っていた。
そこでガブリアスもすぐ何処かへ行けば嫌でもゾロが出てくるしかなかったのだが、なんとかしようと必死のようだった。
それを見てゾロは一つピーンと閃いた。
やけにいやらしい笑顔を浮かべて、ゾロはゆっくりとそこへ近づき、自分の背負っている鞄を音でばれないようにゆっくりと地面に置き、鞄の周りの幻影を取り払った。
「なんだ? 今日は何が何でもその姿から元に戻らないつもりか?」
アカリから見れば急に鞄が現れたようにしか見えないため、不思議な光景だが、ゾロアークの幻影に関しては彼女は詳しい調査を行って見慣れているため、すぐにゾロの幻影から出てきたのだと理解した。
だが、当のガブリアスはそんなこと知る由もなく、急に現れた鞄にかなり驚いていた。
さらに言うなら、自分の事を誰と勘違いしているかは彼は知らないが、完全にガブリアスのことを誤解して微塵も疑う気のないアカリにも驚いていた。
そのためガブリアスもアカリが完全に信じきっている以上、急にこの場を離れるのはおかしいため、動くに動けなかった。
テントを立てるように頼まれたが、生まれてこの方初めて人間を見たガブリアスはもちろんテントがなんなのかを知らない。
ワタワタと慌てていると、いつの間にか一人でにテントが立っていた。
それを見てガブリアスは次々と起こる怪奇現象に目を丸くしていたが、アカリはついにいつもと変わらない調子に戻っていた。
初めて見るテントがいつの間にか立っていて、ガブリアスはその不思議な三角の建物に興味津々になる。
壊してしまわないようにチョンチョンと優しく触っていると
「ゾロ! それじゃいつものように薪を拾ってきてくれ」
とアカリがさらにそのガブリアスにお願いをする。
薪拾いと言われてもその言葉自体が意味が分からないガブリアスはきょとんとする。
そんな様子を見て、アカリは一切疑問を抱かず、『そういう振りをしている』と思っていた。
「分かったから、すぐに行ってきてくれ。その間にサッと昼食の準備をするから」
そう言ってガブリアスの背中を押して、森の方へ向かわせる。
何のことを言っているのかはよく分かっていなかったが、森の方に押されていったため、恐らく開放されたのだろうとガブリアスは思った。
そのためそのまま自分の住処へ帰ろうとしたが、そこでゾロがついに彼の前に姿を現した。
いきなり目の前に現れたゾロにガブリアスは驚いたが、ガブリアスが何かを言うよりも先にゾロは声をかけた。
「ガウ」
よく聞けばゾロの鳴き声とガブリアスの鳴き声が全く違うのは一目瞭然だが、アカリには分からなかったようだ。
そのままゾロは何の説明もなく彼を放置していたことを謝り、アカリが勘違いしていたのは自分であることを説明した。
そしてゾロは一つ彼にお願いをした。
その内容は、今日一日、ガブリアスがゾロの振りをすることだ。
そう言われてガブリアスは不思議そうにするが、まずゾロはそのガブリアスに協力してくれるかどうかを聞いた。
よくは分かっていないガブリアスだったが、アカリもゾロも悪い人ではないことは感じからして分かっていたため、ガブリアスも一先ず協力することにした。
そこでゾロはガブリアスに何故、協力して欲しいのか、何を協力して欲しいのかを事細かに説明し始めた。
彼女、アカリはポケモンの研究者だ。
元々アカリのところに来たゾロは最初は研究対象だったのだが、次第にゾロが心を開いていき今では恋人同士の仲だ。
そんな二人は今、アカリのとある研究のための旅をしている最中で、ゾロは基本的にその旅の雑用兼助手役だ。
そのため基本的にゾロはこの旅のおまけ的役割だ。
彼女の旅の目的は、世界中に広く分布するポケモンの中から、たまごタイプで見た際の種類分けされたポケモンの中から一種類ずつのポケモンと交尾をすることだ。
それだけではよく意味は分からず、ガブリアスは眉間に皺を寄せて首を傾げていた。
そこでゾロはさらに彼にわかり易く説明する。
『君に彼女と交尾して欲しい』と、直球な言葉を投げかけた。
いきなりそう言われ、やはりガブリアスは焦る。
見ず知らずのしかも種族が違うどころかポケモンですらない彼女と交尾をしろと言われてすんなりうんと言うポケモンは少ないだろう。
焦る様子の彼をゾロは宥め、さらに説明を続ける。
まず、彼女は交尾をしてもらいたいということ。
その理由として先程の研究について言った。
研究はあくまで初期段階だが、もし彼女の定説が正しいのなら、ポケモンと人間が会話することができる時代が来る可能性があると言った。
ゾロも詳しく理解しているわけではないため、説明はそんな感じでふわっとしたものだ。
よく理解していない者が分かっていない者に説明するのは混乱を招くだけなのだが、ゾロは諦めなかった。
アカリの研究についての説明は一旦止めて、今度は自分の目的を説明し始めた。
ゾロがなんとしてもガブリアスをアカリと交尾させたい理由は、まだガブリアスのようなたまごタイプのポケモンを見つけていなかったことと、折角ならこの勘違いしている状況を利用したかったことだ。
ゾロもこの旅とその目的にも既にかなり慣れていたので、他のポケモンがアカリと交尾する事にもあまり抵抗感を持たなくなっていた。
そのため、もしゾロだと思い込んでいるガブリアスと交尾をしている最中に、本物のゾロがスッと現れたらどういう反応をするのか気になって気になって仕方がなくなっていた。
アカリは基本的にゾロがいるとそういう反応を見せたがらないため、この機会を最大限利用しようと考えた。
そこまで説明してガブリアスは当たり前だが、渋っていた。
しかしそこでゾロは必死に頼み込む。
交尾もできて、上手い食事ももらえる。
それだけの報酬のために今日はただ、アカリのところにいてくれたらいい。
そして、頃合いが来たらアカリを襲ってくれたらいい。
説明だけ聞けば確かにいい事尽くしだが、ガブリアスの中では罪悪感が酷かった。
しかし、ついにゾロの頼み込みに折れたのか、ガブリアスは首を縦に振った。
そこでゾロは急いでガブリアスにも薪拾いを教えて、薪を拾い集めた。
そして自分の集めた枝もガブリアスに渡して、グッと親指を立ててゾロはまた消えていった。
ガブリアスは小さく溜め息を吐き、その枝を持ってアカリの所へ戻っていった。
「遅い! 早く火を点けてくれ! 食事をしたらすぐに探しに行くぞ!」
アカリは戻ってきたガブリアスにそう文句を言った。
そう言われ、先程ゾロに教わった通りに火を点ける。
そのまま暫くゆっくりと待っていると、それほど時間もかからずにアカリは調理を終え、すぐに皿に並べた。
アカリに呼ばれたのですぐに皿を受け取りに行くが、ガブリアスの手では食器が受け取りにくい。
必死に頑張っていたが、ゾロがそっとサポートしてくれたためなんとか取ることができた。
料理自体はかなり美味しく、ガブリアスも満足していたが、皿はどう頑張ってもガブリアスに掴める物ではなかったのでそこだけは困った。
そのまま食事を終えると食器を片付け、アカリはガブリアスを連れて森へ繰り出した。
いつものようにポケモンを探しに行っているのだが、そこにいるガブリアスはアカリが何をしているのかよく分かっていなかった。
ポケモンを見つけてはアカリが交渉する様をガブリアスは横から見ていた。
既にこの時は、アカリは一匹一匹のポケモンに正しく勧誘のために声をかけ、興味を持ったポケモンには詳しく説明していた。
ガブリアスもアカリの話を聞いていて、アカリがどれだけ凄いことをしようとしているのかを理解した。
『というよりもあのゾロアークさん、説明下手すぎるでしょ……』
心の中でそう思ったガブリアスだったが、口に出すとばれかねないので言わなかった。
そして、結局その日は彼女に協力してくれるポケモンは現れなかったが、確実に横にいたガブリアスは心が動いていた。
自分たちの世代では不可能な話だが、もしかするとこの先何世代も経たなら、いつかは人間とポケモンが更に寄り添って生きていくことができるかもしれない。
そんな可能性は十分にガブリアスの中の不信感を取り除いていった。
それは同時に彼が今日の協力者に自主的になってくれることを意味していたが、もちろんそんなことはアカリは知らない。
「ギャウ」
落ち込んでいるアカリを見てガブリアスは思わず声をかけてしまった。
彼女がやっていることに間違いはなかったのでそんなに落ち込んでいて欲しくなかった。
「悪いなゾロ。だが大丈夫だ。こんなことでめげていたら学者なんてやってられない。さあ、今日はもう日も落ちてきた。帰ろう」
もちろんそれがガブリアスだと気付いていないアカリは彼を連れてテントを張った場所まで帰っていった。
因みに、この間ゾロはアカリたちにはついて回らず、昼食と夕食の代わりになる木の実を探して食べていた。
ゾロからしても最後の反応のために今日一日食事が自分で採った木の実になるのは問題なかった。
テントへ戻ってくるとアカリはすぐに夕食の準備を開始した。
薪の方はゾロとガブリアス二人で集めた量だったため、十分すぎるほどにあった。
そのためガブリアスはゆっくりとアカリの食事ができるのを待っていた。
そのまま夕食も済ませ、少しゆっくりした後、アカリはテントへと入っていった。
ゾロはそれを見て一応アカリにばれないように姿を現し、ガブリアスにGOサインを出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「なんだ? ゾロももう寝るのか? いつもは夕涼みをしているのに」
アカリはいきなり入ってきたガブリアスにそう言った。
普段、彼女が言うようにゾロは食事を終えた後、少し外でぼーっとしている。
基本的に月明かりや夜の森の静けさが好きなため、少し外の景色を楽しんでいることが多かった。
大体、すぐにテントの中に戻ってくる時は疲れている時か、雨が降っている時だ。
アカリは食事を終えるとすぐにテントの中に戻り、カンテラの明かりの下で日記とレポートを書くのがこの時間の日課だ。
何かがあっても何もなくても必ず毎日の記録を残すのは大事なことだとアカリは常日頃から言い、実行している。
元々研究者であるアカリにとって日々の記録をとるのはとても大事なことだ。
そんな彼女がもちろん旅の中でもそれを怠るわけがなかった。
だが、ゾロはそれを知っているがガブリアスはそれを知らない。
そのまま彼女の後ろまで歩いていき、彼女の肩に手を掛けた。
「ん? どうした?」
アカリはそんなことを言いながら振り返る。
ガブリアスからすれば目的はただ一つしかないが、ゾロだと思い込んでいるアカリからすればゾロがいつもと違う行動をしているとか思えなかった。
とりあえず、交尾をして来いと言われたまではいいが、この状態の彼女をどうするかまではガブリアスは考えていなかった。
そもそもポケモンなら意思の疎通も可能だが、相手は人間のため交渉や会話ができない。
そして人間はどういう状況なら欲情するのかも分かっていない。
ポケモンの場合なら大体雌の方から誘ってくるため分かりやすい。
しかし、今のアカリにはそういった様子も見られないためどうしていいのか検討がつかなかった。
ガブリアスはそのまま何を言っていいのか分からず、微妙な表情のままじっとしていた。
そんなもじもじとした態度をずっととっていたため、アカリが気が付く。
「もしかして交尾したいのか?」
そう言われ、まるで心を見抜かれたような気になり、ガブリアスは思わず驚いた。
恐る恐るガブリアスは首を縦に振る。
するとアカリは僅かに微笑み、
「分かった。ならそこで横になって待っててくれ。日誌だけは付けないといけないからな」
そう言ってガブリアスの頭を撫でた。
人に頭を撫でられたことがなかったので少しだけビクッとしたが、思ったよりも優しく、気持ちの良いものだったため少しだけ笑顔になった。
そしてガブリアスはアカリに言われた通りに指差された布団の上で大人しく待っていた。
そのまま暫く待っていると、アカリは日誌を書き終わったのか、お待たせと言い、するすると服を脱いでいく。
少しずつ露わになっていくアカリの肌にガブリアスは思わずときめいてしまった。
野生のポケモンには服という概念がないため、基本的にどんなポケモンでも裸だ。
そのためかは知らないが、交尾のために服を脱ぎ捨てていき、少しずつ裸になっていくのにはとても興奮するものがあった。
じっと待っている間にガブリアスのモノは勃起し、スリットから出てきていた。
全て脱ぎ捨てるとアカリはガブリアスの元へやってきて
「なんだ? 行為もそのままするのか? まあ、たまにはそういうのもいいかもな」
そう言った。
ゾロの目論見通り、アカリは一切ガブリアスを警戒しなかった。
というよりも、アカリは確かに頭はいいが、色々と抜けている部分もある。
今回もゾロがガブリアスに化けて、途中で本物のガブリアスと見間違っていた時点で今回のこれもいけるのでは? と思っていた。
そのままアカリはガブリアスの前に座り、仰向けになる。
「さあ、いいぞ。君の好きにしてくれて」
そう言われ、ガブリアスのスイッチが入ったのか、一気に興奮した。
ゆっくりとガブリアスはアカリに覆い被さり、息を荒くしながらモノをアカリの秘部に当てる。
そのまま少しずつ腰を振り、アカリの秘部にモノが入るようにずらしていく。
すると次の瞬間、先端が中に入ったのを感じた。
ガブリアスはそのまま一気に一番奥までモノを突き入れる。
アカリが少しだけ腰を浮かせ、嬌声を上げる。
基本的に野生のポケモン同士だと、快感を求めることは少ない。
そのためかこのガブリアスも最初から全力で腰を振っていた。
もちろん本物のガブリアスのため、ゾロよりも体が大きい分、モノも大きい。
普段よりも苦しい攻めのはずなのだが、アカリはそういった様子を見せない。
そのままガブリアスは一番奥まで自分のモノを全力で出し入れする。
交尾自体を楽しむというよりは、種を残すのに必死な交尾だった。
そのためか、アカリはそこまで気持ちよさそうにもしていなかった。
そんなペースで続けていれば、あっという間に限界を迎えてしまい、ガブリアスはすぐに精液を中へ放った。
「うぅっ!! はあはあ……」
ガブリアスは思わず声が出たが、アカリは特には気にしていなかったようだが、かなり不満そうだった。
息を荒げながらアカリの上でジッとしていると、アカリがガブリアスに向けて
「今日はいつもより荒くないか? なにがあった?」
そう言った。
流石に体での関係はすぐに気付くようだ。
ここでゾロはイリュージョンを解いてついに姿を現した。
「残念でしたアカリ! 俺じゃないよ!」
そしてそう言い放つ。
それを見て途端にアカリの顔が強張る。
一応、ゾロはこの最低な悪戯を考えた時点で殴られる覚悟までしていた。
だが……。
「そっち!?」
殴られたのはゾロではなく、ガブリアスだった。
――それから数分後。
「悪かったって……。まさかアカリもお前を殴ると思ってなかったんだよ……」
殴られたガブリアスにそう謝罪し、
「悪かったってアカリ! だからそんなに拗ねないでくれよ!」
今の今までそこにいたのがゾロではなかった事に気付かず、更には行為までしてしまったことが嫌で拗ねているアカリにも謝った。
その後、ゾロは二人にこっ酷く怒られ、二度とこういう悪戯はしないと心に誓った。
だが、アカリがそれから長い間、ゾロが求めてきても決して答えなかった。
登場ポケモンオンバーン
シチュエーション体格差・青姦
丘と森が広がり、歩くにはかなりきつい林道の間に、白衣をまとう女性と大きな荷物を背負ったゾロアークの姿があった。
なだらかに坂が続いていたかと思うと、急に傾斜がきつくなったりと、山ではない分楽ではあるが、それでも平地を歩く感覚では歩けないような場所だった。
その白衣をまとう女性の名はアカリ。
見た目の通り学者で、今は自身の研究のために世界中を回ってポケモンを捜し歩いていた。
しかし、この旅ももう間もなく大詰め。
かなり長い間、色んな土地を転々として暮らしていた。
しかし、ここでアカリの研究も少しだけ大変なものになってきた。
もうそろそろ探さなければならないポケモンに絞込みをかけなければならないため、目的地に向かって歩いている間の方がポケモンを探している期間よりも長くなり始めていた。
そのため、次第にアカリもゾロアークもかなり疲れが見え始めていた。
ゾロアークの名はゾロ。
アカリが付けた名前で、ゾロアークだからゾロとシンプルなものだ。
しかし、本人はかなり気に入っているようで、とても嬉しそうだ。
ゾロの方はポケモンであるため元々かなり身体能力も高く、旅の疲れなど感じてすらいなかった。
しかし、アカリの方は元々研究者であるため、普段はあまり出歩かず、朝から晩まで研究に没頭していることが多いため体力は人間の中でもかなり低い方だった。
このここ最近は日のある内は目的地へ向かって移動し、日が傾き始めた頃には休むという繰り返しだった。
短期ならば実地検証などを行っていたため、アカリでも問題はなかったのだが、今のように長い間旅をし続けるとなると話が変わる。
そもそも旅慣れしていない人間は、旅の疲れと慣れない環境でのストレスで後から一気に体にダメージが帰ってくることが多い。
アカリの場合もまさにそれで、ポケモンを探しながら歩く旅から黙々と次の目的地へ向けて歩くだけの旅となっているため、口数がかなり減り、元々ではあるが笑顔の数も減ってき始めていた。
これはパートナーであるゾロの方が顕著に感じていたが、心配してアカリのことを気遣うとアカリはより一層無理をするタイプなのでゾロも本人が言い出すまではできる限りその心配を態度に表さないようにしていた。
アカリは元々、研究者となった時から自分が女性であるということをネックにしていた。
元々負けず嫌いの性格らしく、心配されることを極力嫌う。
アカリがこの旅に出た理由の半分は、『女だからと馬鹿にされたくない』という気持ちがあったからだった。
彼女の人間性を評価している人間は多い。
寧ろ女だからと彼女のことを否定している人間はいないだろう。
彼女の過去に何があったのかは本人が語らないため分からないが、研究者になった時点で彼女は女を捨てた。
元々感覚がずれていることもあるが、彼女に女性らしさが足りない理由はここにある。
しかし、最近はゾロという存在ができたためか笑顔も増え、恋人に対する配慮もかなり増えていた。
だからこそ、アカリもゾロも焦っていた。
こういう時は本当に言葉が通じないことを憎く思える程に辛かった。
「急がなくていい。アカリのペースでゆっくり行っていいんだ。誰もアカリの事を責めてなんかいない」
ゾロは心の底からそう伝えられたらと何度も思った。
ポケモンは人と共に暮らし、そのパートナーとして生きるためか、人間の言葉を理解することができる。
しかし、逆に人間はポケモンに指示を出すことはできてもポケモンの意思を聞くことはできない。
一方的な意思の疎通はトレーナーである人間が、他に頼れる人間がいない時にそのパートナーであるポケモンが一番辛い。
誰よりも心を分かっているのに、それを自分では拭うことができないという悔しさがあった。
そんな日々を重ねれば重ねるほどゾロにも日に日に自分の意思を伝えたい、この研究をなんとしても成功させたいという強い意志が生まれるようになった。
ポケモンは非常に感情が豊かで素直だ。
だからこそ子供のように純粋で、どんなことでも覚えようとする。
そして、その純粋さを利用して時にポケモンを残虐な事に使おうとする者もいる。
各地にあるポケモンを用いた悪の組織、ここに居るポケモンたちを救いたい。
アカリが本当にこの研究を始めた理由でもある。
ポケモンは意思を伝える術を持たない。
そのため一方的に人間がまるで道具でも扱うかのように扱う者もいる。
もしもここで意思の疎通ができるのなら、それを少しでも軽減することができるだろう。
根本的な解決は不可能だが、そこに巻き込まれる者を少しでも減らすことができる。
それがアカリの行動理念だった。
だからこそアカリはすぐにでもこの旅を終わらせて、結果を出したかった。
だが、疲れは確実に蓄積していく。
本人の進みたい意思とは関係なく、体は悲鳴を上げていく。
だが人間は本能よりも理性が強いせいで、よく無茶をする。
目的のためにならば己を犠牲にしてもいい。
旅に出た理由も彼女の実験に協力してくれるものが現れなかったから。
実験の確証が得られなければ他の学者は簡単には動かせない。
誰かが現れるのを待っている時間は彼女にはなかった。
だからこそ歩き出した。
誰にも頼らずに……。
次の瞬間、ドサリという音が聞こえ、全てが暗闇に呑まれていった。
「アカリ!? アカリ!!」
レポート11:たまごタイプ ひこう
ゆっくりと目を開けるとそこは何時振りかに見た建物の天井だった。
「こ……ここは……?」
アカリは重たい身体を起こして周囲を見渡した。
アカリが元々居た研究所にも似ているが、どことなく雰囲気の違う施設であることは理解した。
「グルァウ!!」
横から聞き覚えのある声が聞こえ、そちらを見る。
そこには目に一杯の涙を浮かべたゾロの姿があった。
アカリが今いるのはポケモンセンターだった。
ただひたすらに無理を続けて歩き続けたアカリはついに体が限界を迎え、森の真ん中で意識を失った。
ゾロは何が起きたのか分からず、最初は彼女の名を呼び続けていた。
そしてすぐ彼女の安否を確認するために呼吸と脈拍の有無を確認した。
幸い疲れで倒れただけで、どちらも正常だったアカリを見て、ゾロは少しだけ平常心を取り戻した。
彼も街での暮らしがそれなりに長かったため、そういう時は何処に行くべきかは把握していた。
今まで歩いてきた道の途中、少なくなった消耗品や食料を購入するために街に寄ったことを覚えていたゾロはすぐに彼女を背負い、全速力で街まで戻った。
ゾロの迅速な判断のお陰で大事には至らなかったが、それでもアカリは3日眠り続けていた。
ジョーイさんたちのお陰ですぐに回復したが、それでもゾロはその間気が気ではなかった。
アカリの目が覚めた時、すぐにでも抱きつきたかったが、まだ病み上がりの状態のアカリに負荷をかけたくないためなんとかその心を抑えつけて手をわずかに明かりに伸ばして震えるまでで抑えた。
「ここは……ポケモンセンターか。こうしてはいられない。意識が戻ったんだ。すぐに旅を再開するぞ」
アカリは起き上がるとそう言い放った。
ゾロは流石にそれを止めようとしたが、もちろんアカリがその程度で止まるはずもなかった。
「駄目ですよ。貴方は疲労で倒れてたんですからもう数日安静にしてないと。それにこのゾロアークも心配してしまいますよ?」
そんなアカリを止めてくれたのは、ジョーイさんだった。
流石のアカリもジョーイさんにそう言われ、今にも起き上がりそうだったが、止めてくれた。
元々今すぐ動けるほど体力も回復していなかったアカリは立ち上がるのすら無理な話だが、お陰でアカリも動こうとするのを諦めてくれたようだ。
その後、アカリはジョーイさんにもう数日はここで安静にすることと、ゾロアークにお礼を言うようにと言った。
そしてジョーイさんは去っていった。
「……すまなかったなゾロ。だが……これで旅は確実に遅れるな……。体調管理を怠った私の責任だ」
二人きりになるとアカリはゾロにそう言った。
それを聞いてゾロは少し切なくなる。
誰のせいだとか、旅が遅れるということはゾロにしてみればどうでも良かった。
例えどれだけ旅が長引こうと、例えアカリが旅を諦めると言おうとゾロは全て受け入れるつもりだった。
だが、当の本人が気にしているのはこの旅が長引いてしまったということだった。
だが、そんな思いも全て飲み込み、ゾロはまずアカリが無事だったことを素直に喜んだ。
そしてアカリが目覚めたことによって今まで不安で眠れなかったゾロは、その疲れがいっぺんに来て気付けば眠っていた。
アカリの横でそのまま眠っているゾロの頭をアカリは撫でた。
「ゾロ……。本当にすまないな……。君は何もかも覚悟してついてきているはずなのに……。私がこれではな……」
アカリの心は焦りで支配されていた。
早くしなければならない。
ゾロと共に楽しく旅をしていた頃はそんなことも忘れられていたが、ここ最近の目的地までのただの移動が原因でアカリの心の中にあった『とある思い』が蘇ってしまった。
そのせいでアカリも闇雲に歩き続けるほどに心に余裕がなくなっていた。
その後、アカリも眠り続けていたとはいえ、衰弱した体は体力を回復するために次第にアカリを眠りへと誘った。
翌日、アカリとゾロは目を覚まし、ジョーイさんの持ってきた食事で腹を満たした。
その後はアカリも大人しくしていたが、病院というのは何もできないものにとっては退屈以外の何者でもない。
ゾロとアカリでは会話することもできないのでひたすら暇な時間が続くだけだった。
「ゾロ、私の体調が回復したら今までより旅のペースを上げよう。もう終わりは近いんだ。こんな所で躓いてなどいられない」
急にアカリは独り言のようにゾロに告げた。
それを聞いてゾロはアカリの顔を見ながら、とても切ない表情を見せた。
それを見てか、アカリは一呼吸置いてゆっくりと語り始めた。
彼女の本当の旅の目的を……。
「私はな……ゾロ。昔、まだ私がもっと幼かった頃、ポケモンに襲われたことがあるんだ……」
それはアカリがまだ、5歳の頃だった。
小さな子供らしく、アカリは野山で遊んでいた。
草むらにいた他のポケモンたちと一緒に遊んでいたのだが、そこでアカリは森に近づいた際、他のポケモンに襲われた。
怪我をして恐ろしい目に遭い、アカリは泣きじゃくった。
そんな思いをしたのなら普通はアカリのようにポケモンに深く関わる仕事をしようとはしないはずだ。
だが、そんなアカリを助けてくれたのもまたポケモンだった。
アカリを襲ったポケモンを追い払ってくれたそのポケモンは決して誰かのポケモンではなかった。
アカリを襲ったポケモンも助けたポケモンも両方とも野生のポケモンだった。
その上、そのポケモンは怪我をしたアカリを心配し、近くの人間のいる所までアカリを連れて行ってくれたのだった。
だからこそアカリはポケモンのことが怖くもあり、好きでもあった。
それが彼女の人生の転機となった出来事だった。
その後、彼女はポケモンに複雑な思いと、一つの疑問を抱いたまま成長していく。
そして学校でポケモンに関する生態と歴史を学んだ時、
「ポケモンは元々とても純粋な生き物です。そんなポケモンたちがみんなに協力してくれるのも、誰かを傷つけるのも全部、ポケモンと接する人間が原因で変わってしまうんです。皆さんはポケモンたちを大事にしてあげてくださいね」
そう、先生から聞いた。
そこでアカリは本格的にポケモンについて調べ始めた。
何故、あの時ポケモンが襲ってきたのか……。
その理由は、心無いポケモントレーナーによって育てられ、虐待され、捨てられたポケモンたちの存在だった。
そんなポケモンたちは人間に強い不信感と憎しみを抱いてしまう。
基本的にポケモンはどんなことにでも好奇心が旺盛で、助け合おうとする。
だからこそ、アカリは悲しかった。
ポケモンたちは純粋に人間と一緒に生きようとする。
例えそのトレーナーがどんな人間であっても尽くそうとする。
そのトレーナーのために尽くし、どんなことにでも耐え、必死に生きた結果、トレーナーは容赦なくそのポケモンを切り捨てる。
そんなことをされてそれでも人間を信用できるような者はいない。
ここでアカリも何が本当に大事で、ポケモンの本当の姿と、そこに向き合う人間のどんな姿勢が必要なのかを思い知った。
その日からアカリは誓った。
『あの日、自分を襲ったポケモンのようなポケモンが決して生まれない世界を目指す』
それは簡単なことではない。
常に高い理想を掲げる者は、それと同じだけの覚悟を持って生きる。
「私は、ポケモンの学者になりたい。どんなポケモンと人間も笑いあって生きれる世界を作りたい」
15歳になる時に、アカリは両親にそう告げた。
親は子供の背中を押してくれるものだとその時はアカリも思っていた。
だからこそ、自分の中にある小さな不安を両親の後押しで吹き飛ばそうと思っていた。
「夢を見るな。現実を見ろ。そんなことできるわけないだろう」
両親が放った言葉はそんなあまりにも夢のない言葉だった。
夢を現実に変えるために努力をするのだとアカリはずっと勉強してきた。
だが、親が示した
勿論、その夢の最後に加えるならば安定も信頼もアカリのためのものではなく、『自分たちの』ためのものだった。
そんな親に失望した彼女は、単身都会へ出た。
本来、親の同意を得て行く予定だった、ポケモンに関するトレーナーとしてではなく学者として深く理解することのできる学校へ進んだ。
その学校で勉強する時の嫌味な学生からも、親からも『女がそんな事を極めてどうする』と言われた言葉は彼女を深く苦しめた。
そこでアカリは研究に集中するために、その嫌な思いを払拭するために、女であることを捨てて来る日も来る日も研究に没頭した。
全ての人間が彼女の意思を邪魔しようとしてきた。
そんな日々のせいか、アカリは次第に人との関わりを極力持たないようにしていた。
そして18歳になり、学校を卒業した時、アカリはその素晴らしい学者としての才能を買われ、今の研究所に所属することになった。
最初、研究所で働くようになったアカリは決して周りの人に自分から声を掛けることはなかった。
そのため彼女は『寡黙な天才』などと呼ばれていた時もあったほどだった。
次第に周囲の人間は彼女に対して友好的だと分かるとアカリは少しずつ自分から声を掛けるようになっていた。
そこでアカリは初めて自分の夢を聞かれた。
「つまらない夢ですので聞いてもつまらないでしょう」
最初はそう言って断ったが、研究所の人たちも自分の夢を語っていき、彼女にも語らせるようにした。
皆の夢はどれも素敵なものだった。
『ポケモンのためにもっと飲みやすくて高い効果のあるお薬を作りたい』
『ポケモンが覚えられる技の限界は4つで覆らないのか』
『新しいポケモンが発表される度に、そのポケモンの誰よりも詳しい情報をまとめたい』
そこにいたみんながアカリが今までに出会った人たちと違い、ポケモンのために、誰かのために必死に研究を続けていた。
だからこそ、アカリも語ってもいいと思えた。
「もっと……ポケモンと人間が、悲しまなくていい……誰もが優しくなれる世界を作りたい」
恐る恐る口にする彼女の夢。
最初こそ、その規模の壮大さに皆が息を呑んだ。
だが、誰一人として彼女の夢を『くだらない』とは言わなかった。
「素晴らしい事だ! それだけの夢を掲げられる人間はそうそういない」
皆一様にアカリのことを褒め称えた。
その日まで、アカリは半分諦めていた。
そんな夢をたった一人で叶えられないことはよく分かっていた。
だが、協力してくれる者などいない。そう思って諦めていた。
「でも、一人でできることではない。みんなにもっと頼っていいんだ」
初めて、アカリはそう言われた。
「その日からだったかな……。私がなんとしても夢を叶えようと本気で周りの皆まで巻き込んで動いたのは……。私が久し振りに笑ったのは……」
アカリはそう語った。
そして少しだけ遠くを見てからアカリは一呼吸置き、
「だからこそ、この旅をすぐにでも終えて、結果を持って帰らなきゃいけない。例え自分を犠牲にしてもな……」
そう言った。
アカリがそう決意を表した時、ゾロはスッと立ち上がり、アカリにチョップを喰らわせた。
「アイタ! 何をするんだ!」
「グァウ!!」
急なことでアカリが怒り気味にそう言うとゾロはまっすぐアカリの瞳を見てそう吼えた。
ゾロの顔はどう見ても怒っている。
基本的に怒らないゾロの顔を見てアカリも押し黙るが、そのままアカリはゾロの瞳を見続けて
「分かったよ……。いや、本当は自分でも分かってた。もう無茶はしないよ。」
彼の意思を悟ったのか、そう言って彼の頭を撫でた。
「ガウ」
彼の言葉は決して通じない。
だが、その笑顔で彼女を見つめるゾロの心は確かに、彼女に届いた。
『自分を大切にしないと、何も始まらない』
そんな彼の思いは……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから数日後、ようやく退院できたアカリはそのポケモンセンターにお礼を言い、旅に戻った。
今までよりも足取りは軽く、アカリの中で色々と積もり積もっていた物が、今回の件で少し整理できたのだろう。
そしてアカリもできる限り淡々と歩くことを止めた。
「ゾロ、あそこに木の実があるぞ。採れるか?」
「見ろ! 綺麗な川だ! 折角ならここで一休みしていこう!」
そうやって、アカリはできる限りゾロに話しかけるようにした。
ゾロも勿論返事をする。
そうやってアカリはようやく、楽しそうに旅を続けた。
それから更に数日経った頃、アカリとゾロの前に一匹のポケモンが現れた。
「おお、ようやく見つけた! そこのトレーナーさんとゾロアーク! 大丈夫だったか?」
空から現れ、彼らにそう声をかけたのはオンバーンというポケモンだった。
「おお! あの時は助かったよ! お陰でこの通りだ」
ゾロはそのポケモンにそう声をかけた。
このオンバーンは実は、アカリが倒れた際にそのアカリを背負って走っているゾロに街までの最短距離を教えてくれたポケモンだった。
彼のお陰もあってアカリは比較的早く街に着く事ができた。
そのためアカリもあまり体力を消耗せずに入院できたので数日で済んだのだろう。
ゾロとしては彼には感謝してもしきれない恩があるが、アカリはそのことを知らない。
「おや? ゾロ。知り合いか? なら丁度いい。実験に協力してくれるか聞いてくれないか?」
と、楽しそうに会話をするゾロとオンバーンにアカリは声をかけた。
そこでゾロもいい笑顔を見せて彼に話しかけた。
「そうだよ! 折角なら実験にも協力してくれ!」
そこでオンバーンは不思議そうな顔を見せる。
「実験? 私で協力できるのなら構わないが……何の実験をしているのだ?」
オンバーンはそのままの表情でそう聞いた。
ゾロは少しだけいやらしい顔をして
「簡単な話、アカリと交尾してくれりゃいいんだよ」
と笑顔で言った。
そう言われオンバーンは困惑する。
実験と言っていたため、治験のようなものを想像していた分、まさかそんな返答が帰ってくると思っていなかった。
「い、いやしかし! その女性は君の大事な人だと言っていただろう? 流石に私がそんな事をするのは気が退ける」
オンバーンの言葉にも焦りが見られ、元々二人が出会った時に経緯はゾロから聞いていたので思わずそう聞き直す。
するとゾロは笑い
「いいんだよ。あんたなら俺も任せられるし、それにこれが旅の目的だからな。俺ももう慣れたし」
そう言い放ったため、オンバーンはぽかんとしていた。
そこでゾロはアカリに声をかける。
基本的にきちんと説明できるのはアカリのため、ここからはアカリが説明した方が手っ取り早いからだ。
そこでアカリは改めて自分の研究の説明を始める。
彼女が今行っているのはとある彼女の研究のための旅だ。
とある研究とは言うまでもなく先程の彼女の夢を実現するための第一歩となる旅だ。
その実を語るなら、半分は協力者が現れず、自棄になっていたというのもあった。
もう半分はやはり彼女も研究者であるため、自分が抱いていた夢の研究を他の人に後押しされだして、いても経ってもいられなくなっていた。
話を戻すが、この旅の目的は『人間がポケモンの子供を産むことができるのか』というものである。
正確には『人間と最も親和性の高いポケモンは何か』ということを調べるための旅である。
それを調べるだけならわざわざ旅をする必要はないだろう。
だが、先程も言った通り、協力してくれる人間がいない。
その上、ポケモンも理性的なため、人間と交尾をするというのはかなり抵抗があるらしい。
後はそれまでかなりアカリは研究所に対して迷惑をかけたと思っているため、それ以上研究所に迷惑をかけたくなかったというのもある。
そのため、アカリは全国にポケモンのたまごタイプ一種類ずつを捜し歩き、それらのポケモンと交尾をしてその実験結果をまとめて実証の第一段階を持って帰ろうと旅を行っている。
「どうだ? 是非とも協力してくれ。君はドラゴンだと思っていたのだが、たまごタイプが飛行なら君を逃す手はないからな」
説明を一通り終えるとアカリはポケモン図鑑を見ながらそう言った。
オンバーンはアカリが言った通り、ドラゴンタイプのポケモンでは珍しく、たまごタイプがドラゴンに属さず、ひこうタイプに属している。
そして何故、アカリが飛行のたまごタイプのポケモンであることに執着したかというと、その飛行というのがねっくだったからだ。
飛行のたまごタイプには鳥ポケモンが非常に多い。
そして鳥類はその生態上、生殖器を持たない雄が普通だ。
鳥類の中でペニスに該当する物を持っているのはダチョウのような鳥と水鳥だけだ。
それ以外の鳥類は総排泄腔と呼ばれる唯一の穴から精液を直接相手に渡す。
勿論アカリは人間のためそんな器用なことはできない。
そのため、飛行のたまごタイプとの交尾をどうするか悩んでいたのだった。
因みに補足すると、オンバーンがそうであるように全てのポケモンが同じたまごタイプのポケモンとなら交尾を行うことができる上に、タマゴも作れる。
そのため、ポケモンはその類似する生物とは違いポケモンと名前が付く時点でペニスが存在する。
アカリの先入観と調査不足によりそんなケアレスミスをしているが、アカリはそのことを知らない。
「……もしかして、彼女はもうかなりの数のポケモンと?」
僅かに同情した表情でゾロの方を見ながらオンバーンは聞いた。
「だな。諦めがついたっていうのと、アカリが愛してるのは俺だけだって言ってくれたからな」
と頷きながらゾロは答えた。
それを見てオンバーンは少し溜め息を吐いた後、アカリを見て首を縦に振った。
時間は既に日が暮れ始めていた。
元々オンバットは夜行性のため、日が昇っている内は活動しない。
彼とゾロが出会ったのも日が暮れ始めた頃だった。
一応、この辺りは彼の縄張りらしく、その日も縄張り内の見回りを行っていた。
そこで偶然ゾロたちを見つけただけだというので、二度も会えるのは本当に運が良かったのだろう。
アカリたちはその後、オンバーンにテントを張るのに丁度良い場所へ案内してもらい、夕食の準備をした。
テントを張り、オンバーンにも夜食を振る舞い、ゆっくりとしているとあっという間に夜も更けていった。
「そろそろオンバーンにお願いするとしよう。あまり遅くなると明日に響くだろうからな」
アカリはそう言い、いつものように交尾の準備をするため、テントに先に入ろうとした。
「アカリ! ちょっと待ってくれ!」
するとゾロがそう言い、アカリを引き止めた。
アカリもそれに気が付いたらしく、足を止める。
「どうした? まさか協力してもらえないのか?」
アカリがそう聞くとゾロとオンバーンは首を横に振る。
協力したくないというわけではないが、アカリのいつも通りのテントの中では不可能だということを伝えようとした。
オンバーンは体高自体は高くないものの、ドラゴンであるためかかなり全長は大きい。
そのためオンバーンがテントに近づいて頭がテント内の天井で押さえ付けられることを実証してみせた。
「ま、まさか……外でしろと!? 嫌だ! それだけは嫌だ!」
アカリの表情が引き攣り、全力で顔を横に振りながらそう答えた。
もちろんアカリにも羞恥心はないわけではない。
誰に見られるか分からないような野外で流石にポケモンと交尾をするのは嫌だったようだ。
そこでゾロはイリュージョンを使って周りの景色を変えてみせた。
ゾロアークのイリュージョンの凄い所は、周囲の景色だろうと自分自身だろうとゾロアーク自身が思い描いた姿に変化させることができる。
ゾロはその力を使い、ひとまず周りの景色を一目見れば分かるように建物にしてみせた。
「イリュージョンか……。でも君はつまり近くにいるんだろ? 君がよくてもそれは私が嫌だ」
それを見てアカリは恥ずかしそうな表情でそう言った。
『メンドくせぇ……。別に何処で交尾しても同じだろ……。つーか俺が近くにいるから嫌だって……』
そもそもポケモンは野外で交尾をするのが当たり前なので、人間のそういう部分の羞恥心はよく分からない。
更に言えばポケモンはハーレムも簡単に形成する。
この場合は逆ハーレム状態だが、既にゾロは感覚が麻痺しているのでアカリがオンバーンと目の前で交尾していようと興奮する程度だろう。
そのためそういう感覚もポケモンと人間でかなり違う。
仕方なくゾロはイリュージョンの景色を周囲に合わせ、ゾロ自身は遠くに離れた。
とはいえ、あまり離れすぎるとゾロのイリュージョンの効果範囲外にアカリたちが出てしまうため遠くに行き過ぎることはできない。
アカリたちの声が聞こえないと思われる程度の距離まで離れて、二人の後尾が終わるまで夕涼みでもして待つことにした。
ゾロがそのまま何処かへ走り去ってしまったため、アカリはゾロになにかしろ文句を言うこともできなくなった。
アカリも諦めがついたのか、深く溜め息を吐き、服を脱いでテントの中へ放り込んでいった。
全て脱ぎ終わるとアカリはそのままオンバーンへと近寄り、
「仕方がない。さあ君の好きにしてくれ」
そう言って両手を広げた。
目の前で裸体を晒し、両手を広げるアカリの姿を見てオンバーンは思わずドキリとした。
種族は違えど、オンバーンの目から見てもアカリはかなり美しかった。
するとオンバーンは本能か、自然と興奮し、モノに力も入っていた。
長い両腕でアカリの体を、ドラキュラが女性を連れ去る時のようにバサッと覆った。
そして背中側から包み込むように肩に手を掛ける。
そのまま彼はモノをアカリに近づけようとしたが、流石にまだ興奮が足りないらしく、スリットから僅かにモノが現れているだけだった。
「少し私を見て欲情したのか? なら君もゾロに退けをとらない変態のようだな」
アカリはそう、自分の恥ずかしさを紛らわすためか強気な言葉をオンバーンに投げかけた。
するとオンバーンは少しだけムッとした表情を見せた。
それを見た上でアカリは手をスッとスリットから僅かに現れたオンバーンのモノへ伸ばす。
先端から優しく指で包み込む。
オンバーンのモノは既に僅かに湿っていた。
アカリはその湿りを利用して、優しくマッサージしていく。
既にかなりモノの扱いに慣れていたアカリは優しく、しかし時に強くモノに刺激を与えていく。
するとあっという間にそのオンバーンのモノの全景を拝むことができた。
「フフフ……。冗談だよ。男なら誰だってこうされてしまえば興奮するからな」
そう言い、アカリは最大まで勃起したオンバーンのモノを優しく撫でながらアカリの秘部へ宛てがった。
オンバーンのモノはたまごタイプこそ飛行だが、ドラゴンタイプの名に恥じない雄々しい物だった。
それを宛てがった次の瞬間、オンバーンは体を動かし、一気にアカリの秘部の奥まで突き入れた。
「んあっ!?」
あまりにいきなりのことだったため、アカリは矯正のような悲鳴のような声を出した。
流石のオンバーンもそこまでされれば雄としてのプライドに火が付いたのか、いきなり激しく責め立てた。
アカリの体では少し辛いモノがジュッ! ジュッ! と水音を立てて激しく動いていた。
肩に当てていた手をオンバーンは背中に回し、傷つけないように気を付けながら彼女の体を持ち上げた。
そのためアカリの体はオンバーンの手とモノのみで支えられている状態になっていた。
その状態で更にオンバーンは激しく責め立て続けた。
流石のアカリもきつくなったのか、荒々しい息遣いに混じって僅かに嬌声が聞こえていた。
オンバーンもその激しい責め立てで一気に快感の波が襲いかかってきていた。
荒い息遣いだけが響く中、ついにオンバーンは耐え切れなくなり、アカリの中へ精液を放った。
ビクビクと脈動し、アカリの中へ精液を送り込むモノは僅かにアカリのお腹を内側から圧迫するほどだった。
ようやく勢いを失ったモノを引き抜き、オンバーンはアカリをそっと離して地面に立たせた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌朝、アカリとゾロは朝食を摂り、同じ物をオンバーンにも振舞おうとしたが、夜行性の彼には既に辛かったのかうつらうつらとしていた。
「食事はありがたいのだが……無理だ……。眠い……」
そう口にするオンバーンは何度も首をカックンカックンと落として眠ってしまいそうになっていた。
「それは別に構わないけど、俺たちはもうすぐ旅に出るぞ? まだ先は長いしな」
ゾロが一応オンバーンにそう言うと
「そのことだが、イイ事をさせてもらった礼だ。そう離れていないのならその目的地の付近まで乗せて行ってやろう」
オンバーンは今にも眠ってしまいそうな顔のままそう言った。
それを聞いてゾロは喜ぶ。
それをアカリに何とかして身振り手振りで伝えると、やはりアカリも喜んだ。
「本当か!? 助かる!」
元気いっぱいにそう言うアカリとは対照的に今にも死にそうな顔をしてオンバーンは眠気で落ちる首とは違う頷きを一度だけ見せた。
そのまま彼は限界を迎え、眠りに就いた。
彼が起きるまでの間は二人はその場を移動することができないため、アカリは昨日の晩にできなかった日誌とレポートをまとめるためにテントへと戻り、ゾロはいつものように遊びに出かけた。
アカリの心にも今回の件で余裕が出来ていたため、ここでオンバーンの助け舟は嬉しいものだった。
その晩、二人を乗せたオンバーンは夕闇の中を彼女たちの目的地へ向けて飛んでいった。
登場ポケモンフライゴン
シチュエーション体格差・青姦
今日もその赤い瞳で広く、どこまでも同じような景色の続く世界をぐるっと見回した。
「よし、今日も異常はなさそうだな。散歩にでも出かけるか」
彼はそう呟くと、大きな羽を広げて空へと舞い上がり、砂塵を巻き上げながら何処かへと飛んでいった。
彼はそこで生まれ、そこで育ち、そこでこの世界に住む者、外から来た者全ての安全を祈りながら生きている。
そのため、彼が知っている世界の色は黄土色の大地と青い空だけだ。
たまに、違う色の物があるとすれば、それは彼の知らない外の世界からやってきたものだ。
そういったものたちがやってきては去っていく。
彼はそういった者たちを排除するのが仕事ではない。
ただ見守り、命の危険に曝されるようなら守る。
逆も然りだ。
彼の住む世界を汚そうとするものには決して容赦はしない。
しかし、命までは奪わない。
二度と彼の住む世界へ侵入して来ないように追い返す。
そうして彼はこの世界を守り続けてきた。
その生き方しか知らず、それを続けている内に、彼は『精霊』と呼ばれるようになっていた。
彼は決して精霊などではない。
ただ、その生き方しか知らず、外の世界に恋焦がれながら、今も皆の生きる世界を守り続けているだけだ。
そんな厳しくも多くの者が暮らす世界に、外の世界からやってきたであろう者を、彼は見つけた。
『こんな奥地までやってきたのか……。あの人たちではこれ以上進むのは危険だ。引き返させよう』
彼はそう思い、その白と黒の外界の者たちへ近づいていく。
目の前に降り立ち、進行を遮るように立ちはだかる。
「これ以上奥へ進んではいけない! 進めば帰れなくなるぞ!」
もしものことを考え、彼は自らの周りに砂塵を纏わせ、目の前の彼らにそう言い放つ。
大抵の者は彼の声を聞いた時点で、退却か戦闘を選ぶ。
そのため彼は砂塵の中でもしっかりと見える、そのルビーのような赤い瞳で向こうの存在がどう動くのかをじっと見つけた。
「これは幸運だ! まさか自分から現れてくれるとは!」
その存在は高らかにそう言った。
今までに彼が何度も聞いたセリフ。
それは彼から逃亡するもののセリフではない。
『やる気か! なら僕も構えなければ!』
臨戦態勢を彼が取ると、その存在は彼の巻き起こす砂塵の中へ自ら突き進んできた。
こんなことをしてきた者は今まで一人もいなかったため、彼は焦った。
多少の怪我を負わせることを覚悟し、その者へ鋭利な爪を開き、飛び掛る。
するとその者の後ろから黒い影が飛び込み、二人の間に割り込み、彼の一撃を止める。
『マズイ! 油断した! 後ろの彼も戦えるのか!』
判断を誤り、自らの怪我も覚悟したが、その黒い者は腕を掴んだままジッとしていた。
決して彼を傷つけようともせず、逆に彼からも傷つけられないようにしていた。
そうしているともう一人の白い者がそのまま彼の体に飛びついた。
『懐まで飛び込まれた……! 殺られる!』
そう彼が覚悟し、必死に抵抗したが、その白い者は彼の体を掴んだまま
「きみがフライゴンだな! 是非、私の実験のために君の力を貸してくれ!」
そう言い放った。
「えっ!?」
死をも覚悟した彼の耳に届いた思いがけない言葉に、彼は驚きのあまりそう言った。
巻き起こす砂塵を止ませ、目の前のその二人を再度、しっかりと確認する。
そこには何故かキラキラと瞳を光らせながら彼に抱きつく一人の白衣をまとう女性の姿と、彼の一撃を止めた、ゾロアークの姿があった。
戦闘でも退却でもなく、今までで聞いたこともないような言葉を投げかけてきたその女性に彼はずっと慌てていた。
するとその女性は続けてこう言った。
「簡単な話だ! 私と交尾してくれたらいい!」
「えっ……えぇ!?」
驚きのあまり、また彼は声を上げた。
レポート12:たまごタイプ むし
所変わり、とある街の中。
そこに白衣の女性とその後ろをついて回る大きな荷物を抱えたゾロアークの姿があった。
彼女の名前はアカリ。見て分かる通り、学者だ。
彼女の後ろをついて回るゾロアークの名はゾロ。彼女が名付けた名だ。
二人は旅を行ってはいるが、ポケモントレーナーとそのパートナーという関係ではない。
アカリはとある研究のために世界各地を周り、様々な種類のポケモンを探している研究者だ。
ゾロはポケモンであるがそんな彼女の恋人であり、彼女の実験を手伝っている助手でもある。
なぜそういったのかと言うと、アカリは3メートル離れた場所にいるポケモンにすらモンスターボールを当てられないほどの投球センスのせいでゾロは未だに彼女について回ってはいるが、扱いは野生のポケモンと同じだ。
そのため二人は、心では繋がっているが厳密にはポケモントレーナーの定義に含まれないからだ。
そんな彼らは今、とある場所に向かうためにこの街で準備を整えていた。
「案外高い物なのだな。このゴーゴーゴーグルという物は」
アカリはそう言いながら自分の手にある一つのゴーグルをまじまじと見つめてそう言った。
彼女が持つゴーグルはゴーゴーゴーグルといい、この街のすぐ近くにある砂塵吹き荒れる砂漠へ行くためにはなくてはならない存在だ。
必需品ならば値段もそれなりに安くなりそうなものだが、需要と供給が追いついていないためかかなりの値段だったようだ。
このゴーグルの凄い所は、なんと砂嵐から目を守ってくれるだけではなく、見通しもそれなりに良くしてくれる所だ。
残念ながら流石に砂嵐の中から気にする必要がないほどの視界を確保することはできないため、必ず砂漠を抜けるためのマップも必要になる。
こちらはさほど大変ではないため非常に安く手に入った。
更に砂漠では命とも言える水を多めに買い込む。
髪を砂嵐から守るためにターバンのような長い布も購入し、残りはいつものように消耗品を買い足す。
それらを買い終えると、分担して消耗品を買っていたアカリはゾロと合流する。
もちろんゾロが単独で行動していると目立つため、ゾロにはイリュージョンを使ってもらい、人間の姿に化けてもらっていた。
「そっちも買い出しは終わったようだな。なら久し振りに宿で一晩休んで、しっかりと体の疲れを取ってから動こう。なんたって向かうのは砂漠だからな」
アカリは人の姿のゾロにそう言った。
声を出せばバレてしまうため、ゾロは頷いて答えた。
普段アカリたちはポケモンを探して世界中を旅しているため街にいないことも多く、基本的にはテントで寝泊まりしていた。
そのため、きちんとした宿で寝るのは恐らくこの旅が始まって以来、初めてだ。
そのことに少しテンションが上がっていたのかゾロとアカリは楽しそうに手を繋いで街道を歩いていた。
誰から見ても仲睦まじい恋人同士だが、その実片方はゾロアークなどとは誰も思わないだろう。
「そうだ! 見てくれ! ゴーゴーゴーグルというらしい。なかなかいい代物のようだ」
そう言い、先程買ったゴーグルをアカリは付けてゾロに見せてみた。
元々アカリはメガネをかけていないため、普段はただの白衣の女性だが、密閉式のそのゴーグルを付けていると研究者というよりは科学者に近くなった印象を受けた。
ゾロはニッコリと笑い、何か閃いたような表情を見せた後、アカリにすっと手を伸ばした。
アカリは最初、ゾロに何を求められているのか分からず、不思議そうな顔を見せた。
それに気付いたのか、ゾロも分かりやすくアカリが付けているゴーグルを指差し、今度は自分の目の辺りを指差した。
それを見てアカリが一瞬固まった後
「あっ!!」
そう叫んだ。
何事かと思ってゾロが驚いた表情を見せると、アカリは両手を合わせてゾロに謝り。
「すまない! うっかりしていて一つしか買っていない」
そう言った。
「ガウッ!?」
あまりの衝撃にゾロは思わず口から声が漏れてしまう。
もちろん周囲の人間から見れば人間がそんな声を出したように見えているため、いきなり街中でそんな声が聞こえたら声の主を探すのは普通だろう。
しかし、そんな声を出せそうな者は何処にもいないため、周囲の人間がキョロキョロとしだす。
これ以上注目されるとまずいのでゾロはアカリの手を引いてとりあえず人目のつかない所まで移動した。
「すまない……とりあえずすぐに買いに行こう。まさかこんな大事なことを忘れるとは……」
場所を移動した後、アカリは本当に申し訳なさそうにそう言った。
モンスターボールには入れない以上、ゾロもアカリと共に砂漠をポケモンを求めて彷徨うことになる。
ただの砂粒だが、それが砂嵐ともなれば体に与えるストレスは凄まじいものになる。
ほとんど常に砂嵐が吹き荒れていると言われるその砂漠に、ゴーグルなしで挑むのは無謀どころか死にに行っているようなものだ。
そのため砂漠を横断するのもそこでポケモンを捕獲するのもゴーグルなしでは入れないようにされている。
もちろん普通の交通用の道も整備されているため、ただ旅をするだけなら砂漠を避けて通ればいいようになっている。
流石にそんな高い物を必ず買わなければ街から街へと移動できないようなあくどい商売はしていない。
そんな表情を見せるアカリに対して、ゾロは優しく抱きつき、背中を撫でてやった。
ゾロも別に怒っているわけではなかったため、そんな顔のアカリを元気付けたかったのだろう。
するとアカリは少し元気を取り戻したのか、その後もう一度謝りゾロの分のゴーグルも買いに行った。
かなり高い物を恋人とはいえゾロの分まで買って大丈夫なのかとこちらが不安になるが、忘れている方も多いかもしれないがアカリは研究者だ。
研究者とは自分の研究や実験を円滑に進めるために資金援助をしてもらえる。
普段アカリはそのお金に手を付けていないため、有り余るほどのお金があった。
ゴーグルを二つ買うなど造作もないことだった。
すぐにゴーグルを買い終えるとアカリたちは久し振りに宿でゆっくりと休むことになった。
広々としたホテルの一室に、ダブルベッドがあり、バスルームも完備してある。
ダブルベッドを用意したのはアカリのきっての要望だった。
体を休めると言っておいて、そんな物を頼む辺り、アカリの魂胆が丸見えだが、これも彼女が少しでも女性らしくなったのだと考えればいいだろう。
まずは久し振りのホテルということもあり、アカリとゾロは先に久し振りの自炊ではない食事に舌鼓を打っていた。
「うむ。やはり上げ膳据え膳というだけで物が美味しく感じる」
アカリは独り言のようにそう呟き、食事を口へと運んでいく。
ゾロは既に元のゾロアークの姿に戻り、アカリと共に夕食を楽しんでいた。
このホテルはもちろんアカリがチェックインしたため、ポケモンの泊まりも許可されている場所だ。
そうでなければ確かにイリュージョンでゾロは姿を変えることができるが、ベッドや風呂を利用した時点で毛が大量に残るためバレてしまう。
そういったヒヤヒヤをしないためにも少し高いお金を出してアカリはゾロとの一夜を楽しむつもりだった。
食事の後は先に風呂を利用することにした。
部屋にもバスルームがあるが、ポケモンと人間別々ではあるが大浴場があるとのことだったのでそちらを利用させてもらうことにした。
大浴場と呼ばれているだけはあり、かなり広々とした浴場が準備してあった。
アカリは日頃、川を見つけなければなかなか洗うことのできない体を入念に洗い、さっぱりとしたところで湯船に浸かった。
薬効はない普通の湯船だが、伸び伸びと足伸ばせるだけの浴場はそれだけで十分精神的な効果があった。
「ふぅー……極楽だ。やはり風呂はいいものだな」
そんな独り言を言いながら風呂を満喫していると、横にいた同じここの宿泊客と思われる女性が声をかけてきた。
「日頃の旅の疲れを癒してくれますもんね。」
横の彼女も恐らくポケモントレーナーとして旅をしているのだろう。
彼女はそう言いながら肩にお湯をそっとかけた。
彼女の言葉にアカリもうんうんと頷き、しっかりと満喫していた。
「どちらからいらしたんですか? もしよければ他の人の旅の話でも聞きたいです!」
そう彼女は興味津々にアカリに声をかけた。
彼女はまだ冒険に出て日が浅いらしく、知らない土地の方が多いそうだ。
ポケモントレーナーはできる限り自分の足で世界中を回る人の方が多いため、やはり先にそういう他の旅人の話を聞いて思いを馳せたいのだろう。
だが、アカリの旅は普通の人間に話せるような代物ではない。
「す……すまないが、私はただの旅行客なので話せるようなお話は……」
アカリは顔を赤らめながら彼女にそう語った。
――その頃ゾロも同じように顔を真っ赤にしていた。
『ちょっとは気を遣ってくれよ……。なんでオスメス分けずに混浴なんだよ……』
こちらはこちらでポケモンにも男湯女湯があると思っていたら、なんとポケモンはポケモン専用風呂で一括りにされていた。
ここに初めて来る客も多いらしく、どう見てもオスとメスで気を遣って浴場の左右に分かれていた。
人間からすればポケモンは動物とさして変わらないようなものだが、本人たちからすれば野生ならまだしも、こんな風呂に入れるだけで野生なはずもなく、勝手に交尾などしてタマゴでも生まれようものなら大惨事を引き起こすトレーナーのポケモンたちだ。
そしてポケモンには人並みの感情と理性がある。
目の前に同じような種族の異性のポケモンがいれば、戦闘とは違う浴場という特別な場では必然的にドキリとしてしまうわけで、目のやり場に困っていた。
更にポケモンの中には鼻の利くポケモンも多い。
そのため……。
『つーかふざけんなよ……。なんでわざわざここで誰かヤってるんだよ!? 部屋でやれよ!』
ゾロが心の中でそう呟いたのは、目の前で誰かが交尾していたわけではなく、確実に精液の匂いがしたからだ。
恐らく本人たちは隠れてしたつもりなのだろうが、匂いまでは隠すことができない。
そのため、湯船に浸かっているポケモン達の中の一部は顔を赤くし、自分の陰部を隠していた。
元々ペアで入ってきたポケモンたちもこの状況を見てかなり気まずくなったのか、二人で固まって湯船には浸からなかった。
皆、ゆったりと風呂に入れると思っていたのにまさかこんな状況とは思わず、大体のポケモンが早々と湯船から去っていくのだった。
もちろんゾロもその中の一人となった。
早々とゾロは風呂を上がり、アカリが上がってくるのを待っていたが、思っていたよりもアカリも早く上がってきた。
ゾロの方が気まずくなっているのはよく分かるが、アカリの方がなぜか気まずそうな顔で出てきたのはゾロにはよく分からなかった。
部屋に戻ってきたアカリはただ風呂で体を洗い、乾かしただけのボサボサのゾロの毛並みを綺麗にトリミングしてあげた。
二人にとってはこの時間が一番の至福の時間となっていた。
「よし! これでバッチリだな」
アカリがそう言うと、ゾロはそのまま布団にうつ伏せに倒れこんだ。
これはアカリとしては計算外だったようで、かなり驚いていた。
アカリの本来の計画ではこの後ゾロがいい雰囲気になったところで襲ってくれると確信していた。
だがその当の本人は先程の風呂場が原因で、精神的に疲れていたため、もうそのまま寝たかった。
折角の恋人との二人旅らしい雰囲気もゾロがそのまま眠ってしまったのではただのポケモントレーナーとそのパートナーだ。
そこでアカリは服を脱ぎ、ゾロの上に覆い被さった。
「折角のホテルなのにそれはないだろう? ちょっとぐらい愛し合ってもいいじゃないか」
アカリはそれでもピクリとも動かないゾロの耳元にそう囁く。
『旅の疲れを取れって言ったのは何処の誰だよ……。ていうか、ヤリたいなら最初からそう言えよ……』
ゾロとしてはアカリが最初にそう言っていた時点で旅のことを念頭に置いて考えていると思っていた。
そのため元々彼にヤル気はなく、さっさと寝てしまいたいといった感じだった。
だが、アカリがそうやって積極的に求めることも少ないためゾロも少しだけならいいか? という考えになっていた。
わざとらしく胸を押し付けてくるせいもあって、ゾロは案外すぐに興奮し、モノがスルッと伸びていた。
背中にアカリが乗ったままゾロはスッと起き上がり、横に彼女を降ろして今度は逆にゾロがアカリの上に乗る。
アカリとしては既にかなり期待していたのか既に彼女の秘部は濡れていた。
『というかシーツは濡れてしまっても大丈夫なんだろうか……』
ゾロがそんな一抹の不安を抱いたが、既に恍惚とした表情を浮かべているアカリを見てそんなのはどうでも良くなった。
アカリの頬を舌でペロッと舐め、可愛い反応を伺った後、ゾロはゆっくりと唇を重ねた。
するとアカリの方から求めるように舌を伸ばしてくる。
舌を絡め、お互いを激しく求め合う。
そしてその間にゾロはアカリの中へと自らのモノを挿入していく。
絡め合う舌の間にも熱い吐息が溢れるが、それでもアカリは決してそれを止めようとはしない。
ズッとモノをアカリの奥へと滑り込ませる。
既にクチュッという卑猥な音が溢れるほどに濡れた秘部は早くゾロのモノが欲しかったと言わんばかりに僅かにキュッと締まる。
初めはお互いに愉しむように緩やかにピストン運動を続ける。
それほどアカリは彼が愛しかったのか、それでもゾロの舌を絡めとって離さない。
それから少し経つとアカリが一番好きな、一番奥でモノをゴリゴリと押し付けるような動作。
するとついに苦しくなったのかアカリが艶のある声を出しながら舌を名残惜しそうに離していく。
まだ始まって僅かしか経っていないがそれだけのことを繰り返していたため、既に二人共息が荒くなっていた。
アカリが嬌声を上げ始めるとゾロは先程よりも少しだけ激しいピストン運動に変える。
パチュッ! パチュッ! と僅かに水音を立ててアカリの秘部はさらにゾロのモノをキュッと締める。
次第にベッドの軋む音が聞こえるほどに激しく腰を動かす。
一応ホテルということもあってか、アカリは僅かに声を殺していた。
次第に水音すら聞こえないほどにパンッ! パンッ! と力強く腰を打ち付けていく。
快感をどんどん強力な物にしていくと、ついに耐え切れなくなったアカリが先に全身を痙攣させ、ゾロのモノを目一杯締め上げて絶頂を迎えた。
それでゾロも達してしまいそうになるが、耐え、さらに速度を上げていく。
既に絶頂を迎えたアカリは更に激しい攻め立てに大きく腰を反らす。
そんなアカリをギュッと抱き上げるように両腕で捕まえて、ゾロも彼女の一番奥で絶頂を迎えた。
激しく脈打ちながらアカリの中へと精液を注ぎ込む。
二人の息遣いだけが聞こえるほどに静かになった後、ゾロとアカリはそのまま少しの間じっとしていた。
アカリの中へ全て注ぎ込み終わるとゾロはアカリから離れ、荒い息を整えながら横に寝転がった。
「フフフ……やはり君だけは私を興奮させてくれる。愛しているぞ、ゾロ」
アカリはゾロにそう囁き、長い鼻の横にそっと口付けをしてそのまま心地よい疲れに身を任せて眠りに就いた。
ゾロもそんなアカリを少しだけ愛でてから、同じように眠りに就いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日、なんだかんだあったがきちんと疲れを取れたアカリとゾロは装備をきちんと整えて砂漠へと向かった。
アカリたちの向かっている砂漠は世界中に存在する砂漠の中でも五本指に入るほどの大きな砂漠だ。
その上基本的にここに住んでいるポケモンと悪天候のせいで日常的に砂嵐が吹いている。
ここに住んでいるポケモンはもちろん砂漠で生きている乾燥地帯に強いポケモンたちだ。
常に強い日差しが降り注ぎ、砂嵐が吹き荒れるという過酷な環境だがそんな場所にも逞しく生きているポケモンは沢山いる。
サボテンのような容姿のポケモンや汗の代わりに砂が溢れ出るというポケモンまで存在している。
そんな中でアカリが今回探しに来たポケモンは『砂漠の精霊』と謳われるポケモンだ。
その羽音は美しい音色、砂塵を身に纏い、砂漠の砂嵐もものともしない緑色の美しい色をしたポケモン。
そのポケモンの名前はフライゴンだ。
アカリがこのポケモンを探して砂漠へやってきた理由はただ一つだ。
そのポケモンはドラゴンタイプなのだが、生態が虫に近いためたまごタイプは虫に属しているという点だ。
「絶対に虫と交尾なんてしたくない。死んでもしたくない。あ、でもペンドラーならいいかもしれない。でも毒があるからな……」
そんなことをこの実験の旅が始まる前からアカリは口々に言っていた。
アカリは虫タイプのポケモン自体は嫌いではないが、それと性行為をするというのはどうしても嫌だったようだ。
というよりも当たり前だろうという感想が浮かぶが、彼女の中でペンドラーだけが別扱いなのがとても気になる。
つまり、彼女の中で虫ポケモンとは交尾したくないという感情が強かったが、研究者であり、実験である以上調査しないわけにはいかないため必死にポケモン図鑑を見て、その中でこれならいいかもしれないというものを探していた。
そこで見つけたのがフライゴンだった。
フライゴンの容姿は既にドラゴンとなっているためか、彼女の中では何の抵抗もなかったようだ。
そのためにアカリはこの砂漠でフライゴンを探すのだが、ゾロはその事実を知らない。
二人共ゴーゴーゴーグルをしっかりと装着し、アカリはターバンを頭に巻いて鼻と口までしっかりと防御した。
ゾロの方は鼻が長すぎるため残念ながらそういう防御ができず、仕方なく手で覆っていた。
そうやってお目当てのフライゴンを探し続けていたが、なかなか見つからず、およそ3時間が過ぎていた。
「うん……。砂が混ざってジャリジャリする……。早く砂漠を抜けてまともな食事が摂りたいものだな」
アカリとゾロは砂嵐が弱まったのを見計らい、水分と食料を摂って少し休憩していた。
砂漠は広大で砂嵐が原因で未だ解明されていない場所も多い。
アカリたちの持つマップにもその砂嵐の向こう側は詳しい説明が記されていないが、アカリたちはあえてそちらへ向かった。
解明されていない場所ということはポケモンが多く存在する可能性が高いからだ。
アカリたちは意を決して砂漠のさらに奥地へと向かう。
より一層強い砂嵐が吹き荒れ、アカリたちの行く手を遮った。
「流石にこれ以上は無理か!?」
アカリがそう叫んだ時、目の前の砂嵐から美しい鳴き声が聞こえた。
「フォォォウ!!」
ここで冒頭に戻る。
――フライゴンからすれば外界の情報など一切入ってこないので、自分に掴みかかってきたその女性も不思議な生き物の一つでしかない。
しかし、人間の中でそんなことを言った者は今までいなかったため彼も対応に困った。
いつもならすぐにでも振りほどいて逃げ去ろうとするのだが、アカリは決して危害を加えようともしていないし、迷ってここまで来たわけでもなく、彼自身を求めてやってきているため逃げる理由もなかった。
『女性の人は初めて見たけど……これが普通なんだろうかな?』
フライゴンがかなり誤解した見解を持ち、ひとまず彼女とゾロに敵意や悪意を感じなかったため、砂嵐を止めた。
もちろんゾロも本気でフライゴンと戦うつもりではなく、ただアカリが襲われそうだったので止めただけだ。
彼が戦う意思を見せないのを確認し、ゾロも掴んだ彼の手を離した。
「おお……! 砂嵐が止んだ……。本当にフライゴンは砂嵐を巻き起こせるのか……」
周囲の止んだ砂嵐を見てアカリがそう呟いた。
「ふぅ……どうなるかと思ったが大丈夫だったな。悪いないきなり掴みかかって」
ゾロもようやく口を開いた。
フライゴンにそう言うと、彼は少しだけ驚いた様子だった。
「まさか見てないのに僕を止めたのか!?」
彼にとっては驚きだった。
大抵のポケモンはその砂嵐の視界の悪さと体にかかる負担の大きさとで諦めて戻るものが多いため、まさか目を瞑ったまま止めに来る者がいるとは思いもしなかった。
するとゾロは笑いながら
「いや、ゴーグルのおかげだよ。それにしても人間用だからサイズが合ってよかったよ」
と、自分が掛けているゴーグルを指差した。
彼の言うようにゴーグルにはポケモン用など存在しないため、ゾロがきっちりとゴーグルをはめれたのは奇跡だろう。
そう言うとフライゴンは笑った。
「まさかゴーグルを付けたポケモンがいるなんてね……。びっくりだ」
彼らはそのまま意気投合したのか、アカリの突拍子もないお願いにも快く了承していた。
そのまま砂漠で一夜を明けるわけにはいかなかったので、アカリたちは一度砂漠を抜けて、近くの森へ行くことにした。
それはフライゴンにとってずっと夢見てきた砂漠の外の世界だった。
なぜ森かというと、アカリはモンスターボールを持ち歩いていない。
前述したように投球センスが一切なかったため、モンスターボールでポケモンを捕獲することを諦め、説得だけでポケモンを勧誘していたからだ。
アカリはこの時知らないが、別にモンスターボールは投げ当てる必要はなく、手に持った状態のボールにポケモンが触ってくれるだけでも十分に意味がある。
そのため二匹はボールに入ることができないため、場所の移動が不便なのと、目的は交尾のため体の大きなフライゴンのために広いスペースが必要だからだ。
しかし、砂漠ではアカリたちの体への負担が大きいので森が選ばれた。
アカリとゾロはフライゴンに乗り、森の方を指示する。
初めて見た森の風景は彼にとって刺激的なものだった。
一面に広がるのは彼が今まで知っていた黄土色のみの風景ではなく、代わりに美しい新緑が広がっていた。
それだけではない。
森の中を走る青い川、人々の住む街からは煌く星のように光が輝く、遠く白む景色に並ぶ山々、そしてそこから続く美しいグラデーションで色を変えてゆく七色の空……。
全てが美しく見えた。
これまでに見たことのない美しい光景に思わず視界が滲んだ。
ゾロとアカリとの出会いにフライゴンは心から感謝した。
そうでなければこんな景色見ることはできなかっただろう。
いい感じの空き地を見つけてアカリはそこにフライゴンに降りてもらうように指示した。
その後、アカリはいつものようにテントを立て、ゾロの集めてきた枝で火を起こし、夕食を作った。
今日作った料理はフライゴンもいたためいつもより少し量を多めにしたマトマの実を使ったスープ。
実はマトマの実を使うのはアカリがこれが大好きだからだ。
それと携帯食料とパンを三人分用意した。
三人でそれを食べていくが、これもフライゴンにとってみれば初めての経験だった。
基本的に砂漠には食料がほとんどない。
あっても僅かな虫や植物でそのほとんどが味がないようなものだ。
そのためこれほど刺激的な味は彼にはあまりの衝撃だったのだろう。
「ピャ!?」
フライゴンは聞いたこともないような声を出してマトマスープを飲んでいた。
一口飲むたびにそんな声を出し、涙を浮かべながら飲み続けていた。
『辛いの苦手ならそんな無理して飲まなくても甘い物も結構あるのに……』
ゾロは心の中でそう思っていたが、本人が申告する気がなさそうだったので黙っていた。
食事を終えるとフライゴンは口がヒリヒリしてキツいのかまだ涙目だったので、ゾロがミックスオレを一つ鞄から取り出してフライゴンに渡した。
「ミャ!?」
これまた不思議な鳴き声を出してフライゴンは嬉しそうにそれを飲み干していった。
一通り食事を終えるとゾロは立ち上がり、
「それじゃ、俺は離れるから一発頑張れ。終わった頃に戻ってくる」
そう言ってゾロはフライゴンに親指をまっすぐ立ててグッとサインを出した後、イリュージョンを発動させてどこかへと去っていった。
ゾロアークのイリュージョンには本人を含む、周囲の景色まで幻影で作り出すことができる。
フライゴンの体の大きさ的にアカリたちがいつも使っているテントでは無理があるだろうと思い、ゾロはイリュージョンで周りからは見えないようにし、外で後尾ができるようにした。
これはゾロの計らいではなく、アカリが羞恥心を紛らわすためにゾロに頼んだものだ。
体の大きなポケモンはもしアカリたちが寝泊りで使っているテントに入って激しい動きをした時、万が一刺などがテントを突き破れば使い物にならなくなるからだ。
それを阻止するためにアカリは自分の羞恥心を押し殺して外で交尾することを選んだ。
ポケモンにとってしてみればなんともないことだが、アカリが最近自分の行為がおかしいことだと気が付き羞恥心が生まれたためだ。
ならばゾロが恋人ということに疑問を持たないのか? と気になるところだが、そこだけは決して変わることはないようだ。
アカリは服を全て脱いで裸になり、フライゴンの前に歩いて行った。
「さあ、君の好きにしてくれ」
「え、えぇ……」
アカリがそう言い、自分の体をフライゴンに預けるとフライゴンはあからさまに困った表情を見せてそう言った。
広い砂漠には過酷な環境ということもあり、ポケモンがいないわけではないがその数は他の土地に比べれば少ない。
そのためフライゴンにはまだ性体験がなかった。
一応、ポケモンの本能か交尾をすればいいことは分かっているが、初めてがアカリのため困っていた。
同種同士ならまだしもアカリは人間だ。
あまり乱暴にしてしまうと彼女が耐えられないのは目に見えていた。
どうするか悩んでいると興奮もしないわけで、フライゴンはうんうん唸るばかりで何もしなかった。
するとアカリはフライゴンが恐らく童貞だろうと見抜いたのか、そっと股間の辺りを触った。
あまりのことに驚いたが、別に嫌ではなかったためフライゴンもそのままじっとしていた。
優しく撫で続けるアカリの手は手馴れているかのようにフライゴンのスリットを見つけ、ズッと指を入れる。
「ひゃう!?」
急に来た快感の刺激でそんな声を上げてしまう。
そのままアカリは指を中へと滑り込ませていく。
すると次第にその快感から先走りが溢れ出したのか滑りが良くなっていく。
滑りが良くなるとアカリは更に奥へと指を入れていく。
「ひゃあぁ!!?」
フライゴンはまたそんな声を出し、気持ちよさから僅かに身震いをさせる。
これではどちらが女性か分からないが、そんなことを繰り返していると勢いよくフライゴンからはオスの証がズルリと飛び出してきた。
既にフライゴンは先程のアカリの攻め立てで息を荒くしていた。
「やっぱり立派なモノを生やしているな。さあ、今度こそ頼むぞ」
アカリはそう言い妖艶な笑みを浮かべる。
そんなアカリの表情と先程の快感から大分理性が機能しなくなっていた。
フライゴンに体を預けているアカリはゆっくりと地面に押し倒され、そのままフライゴンはアカリに挿入しようとしていた。
「待て待て待て! 流石にその体位はまずい! 君は私よりも大きいんだぞ!?」
既にそんな慌てた様子のアカリの声もフライゴンには届いていない。
目の前にいるアカリとただ後尾がしたいという思いしかなくなっていたフライゴンはそのまま逃げられないようにがっぷりと上に覆い被さり、モノをアカリの中へ挿入していった。
「んっ……!! くぅっ!」
アカリの中へ侵入してくるモノは先走りで既に滑らかな動きをするため、いきなりアカリの一番奥まで刺さりこんだ。
そのせいもありアカリは矯正よりは苦痛の悲鳴に近いような声を出していた。
それもそのはず、フライゴンのモノは先端こそは細いが、根元に近づけば近づくほど太くなっていく。
およそアカリの腕と同じ太さはありそうなモノがアカリの中へかなりの速さでピストン運動を続けていたからだ。
「はあ……はあ……! 気持ちいいよぉ!」
既にアカリを気遣うということは頭にないフライゴンは初めての性行為に全力を注いでいた。
激しく責め立て、アカリの膣内を捲り上げているのではないかというほどに激しく前後に腰を振った。
そのまま激しい動きを続ける内に、フライゴンは暴発するように彼女の中へ精液を放った。
しかし、激しく動いている最中に暴発したため精液が放たれている途中で抜け、アカリのお腹の上へも精液を放つこととなった。
ようやく勢いが収まり、興奮も覚めた時にフライゴンは自分が何をしでかしたのかを思い出す。
「あ……あぁ!! ごめんなさい!」
すぐにアカリから離れ、フライゴンはそう言いながらアカリに謝る。
ムクリとアカリは起き上がり、自分の惨状を見た。
腹から下半身にかけては全て精液まみれになり、背中にはしっかりと押さえつけられたため砂利が張り付いていた。
「やっぱり愛がないな……」
アカリはそう呟いて溜息を吐いた。