大会は終了しました。このプラグインは外して下さって構いません。
ご参加ありがとうございました。
今作はオムニバス形式の短編集のような物になっています。
人によって好きなシチュエーションやポケモンに差があると思うので、嫌な話は読み飛ばしてもらっても話の前後の繋がりは基本的にございません。
もちろん、全部を通しで読んでもらえれば少しずつ話は進んでいっているのでどちらでも構わないような作りになっています。
若干のネタバレを含むため、話の初めに登場するポケモンと人を選ぶシチュエーションを反転で記入します。
好みのある方は確認してから進んでください。
全ての話がポケモン×人間♀となっています。
登場ポケモンゴローニャ
荒々しい岩だらけの山を登る一人の女性と、その少し前を歩く、大きな鞄を背負った一匹のポケモンの姿があった。
その山は見渡す限りが土色一色で、一応整備はされているが、それでも登るのにはそれなりの登山の練習が必要なほど険しい道だった。
「ふぅ……結構登ってきたな……しかしゾロ、君はよくそんなにひょいひょいと登っていくな」
その女性は自分の前を飛ぶように登っていき、少し進んでは彼女の心配をして振り返るそのゾロと呼ばれたゾロアークに少し息を切らしながらそう言った。
「まあ、腐ってもポケモンだし、アカリよりは体力はあるよ」
とゾロは少し笑いながらアカリと呼んだ女性に言った。
このアカリという女性は研究者だ。
彼女の研究はポケモンに関する生態や、その特性、分布などを細かく調べる、所謂生物学者で、今まさにその研究の実地実験を行っている最中だった。
彼女のが今行っている実験は『人間がポケモンの子供を生むことができるか』という突拍子もないものだった。
その理由は、もしそれが可能ならば、より人間に近いポケモンかポケモンに近い人間という新しい進化した種族を生み出すことが出来るかもしれないからだった。
そのため彼女は一度、実験の協力者を公募したが、当たり前のように実験に協力してくれる女性は現れてはくれなかった。
彼女はそれで諦めるような女性ではなく、協力してくれる人間がいないのなら、自分で実験すればいいと思い切った判断をし、旅をしていた。
今回アカリはその実験のためにそれに協力してくれるポケモンを探しに行くため、わざわざこの険しい山を登っていた。
普段は彼女は白衣に身を包んでるが、今日ばかりは流石にそんな服装で山を登るわけにはいかなかったのか、ガッチリと山登り用の厚手の登山服に身を包み、道具も整えていた。
それに対しゾロアークの方は、アカリが言った通り、何も持っていないならまだしもゾロの上半身とほとんど同じ大きさの鞄を背負って飛び出した大岩の上から上へひょいひょいと飛び移っていた。
アカリが女性ということもあるが、ポケモンと人間とでこれほどの体力差があるのだから、アカリが少しゾロのことを羨ましくも思うのは当然だろう。
体力が有り余っているのか、ゾロはその後も遊びながら山登りを続け、アカリは少し休みながらゆっくりと登っていく。
そうこうしている内にいつもなら昼頃にはポケモンを探し終えているのだが、今日はそんな余裕すらなく、まだ山を登る途中だった。
「はぁ……はぁ……無理だ。私が疲れた。今日はもうここで休もう」
肩で息をするアカリは未だ元気なゾロにそう言って、山道を外れて少し開けた場所へ移動した。
ゾロもすぐそちらへ向かい、鞄から折り畳み式のとてもコンパクトなテントを取り出した。
それを組み立て、二人が今日一日過ごすための場所を確保した。
そのままアカリはいつものように食事の用意をしようとするが、ここであることに気が付く。
「そういえば燃やせる物がないな……鞄にそんな物は入っているか?」
アカリがそう言い、ゾロに鞄の中身を確認させるが、どうやらめぼしい物はなく、首を横に振っていた。
そこでアカリが今度は自分の登山用鞄の中身を見る。
運良く、と言っていいのか分からないが、アカリの鞄の中には松明などを作るための簡易キットが入っていた。
他に燃やせる物もないのでアカリはそれを少し使い、点火はゾロの火炎放射でお願いし、とりあえず火を灯した。
あまり火を使うこともできないので、アカリは今日の料理はできる限り手早く済ませた。
そのため今日の食事は携帯食料とパンとアカリ特性のスープとなった。
そのまま食事も終え、夕暮れになる頃にはアカリもゾロも早めにテントに入った。
――それからさらに時間が経った頃、ゾロは少しモゾモゾとしていた。
『ここ最近、ずっとご無沙汰だったからなぁ……シてくれないかなぁ……』
そんなことを考えていると自然とゾロのモノは元気になっていた。
結局、ゾロはそのムラムラが抑えきれず、ゆっくりと近づいていって、アカリに抱きついた。
「お前は状況を分かってやっているのか? お前みたいなケダモノとは違って私はそんなに体力がないんだ。 無茶をさせないでくれ」
口では淡々とそう語っていたが、すでにゾロの額にはアカリの初めての拳が振り下ろされていた。
「はい……すみません。調子に乗りました……。でも! コレはどうすればいいんですか!? 俺はもう何日もやってなくて今にも襲ってしまいそうなほどなんだよ! 倒れたらその時は俺が介抱するから!」
額を押さえ、目に少し涙を浮かべながらも、ゾロはアカリにそう訴えかけた。
必死そうなゾロの様子を見てアカリは初めてイラついた表情を見せた。
そもそもここでテントを張った理由は、アカリが疲れてどうしようもなくなったからだ。
なのにも拘らず、自分はまだ体力が有り余っているからと疲れているアカリに行為を求める独り善がりな者の姿がそこにあった。
しかし、そこでアカリも一つ思いつく。
この先も恐らくこういう事態が訪れることがあるだろう。
その際、実際にゾロの性的欲求を解消できるのはアカリだけだ。
それと、アカリは旅に出る前、もしものために男性を性的興奮状態にする方法を調べていた。
今まで手淫を使ったことはあるが、もう一つの方は使う必要がなかったため、今まで一度も試していなかった。
その方法が口淫、つまりフェラチオである。
この状況ならアカリが実際に性行為をするよりは体力を消費しないだろうし、ゾロの性欲も解消できる。
それと、フェラがポケモンに効くのかという検証と、アカリ自身の練習も必要だったため、半分実験目的で
「仕方がないな……口で世話をしてやるからそこに寝ろ」
とゾロに言った。
すると、ゾロはあからさまに嬉しそうな表情を見せた。
よほど嬉しかったのか、興奮した様子のまますぐに布団に仰向けに寝た。
するとアカリは髪を耳まで掻き揚げ、ゆっくりと顔をゾロの既に期待で最大まで勃起したモノに近付けていった。
『はあぁ……! アカリが、アカリが自分から俺に奉仕してくれてる!!』
既にその状況自体が嬉しいのか、期待でゾロは既に息が上がっていた。
しかし、恥ずかしさから思わずゾロは思わず股を閉じてしまう。
「君は馬鹿なのか? 足を開いてじっとしていろ」
アカリがそう言い、足に手をかけて無理矢理開くと、ものすごく恥ずかしそうな表情を見せた。
『もしかしなくてもゾロは、相手から攻められるのに弱いようだな……』
そんな無理矢理押し倒されて息を荒くしながら、少し瞳に涙を浮かべているようないつもの勇猛さが一切見当たらない子猫のようなゾロを見てアカリはふとそう思った。
そのままゆっくりと顔を近づけ、まずは舌でモノの先端を舐めてみた。
するとゾロは今まで効いたこともないようなヒャン! という鳴き声を上げて、ビクンと震えた。
そのままアカリは少しの間、舌だけで舐め、暫くしてからスッと口の中へゾロのモノを入れた。
独特の獣臭さと味が口に広がり、少し嫌になるが、ゾロがあからさまに反応を示していたのがアカリとしても面白かった。
『なるほど……少しだけゾロの気持ちが分かった気がするな……』
アカリはモノをそのまましゃぶりながらそんなことを考えていた。
ゾロは普段、アカリと行為を行う場合、アカリができる限り気持ち良くなるように努力しているのをアカリも知っていた。
何故、それほどまでに相手を気持ち良くさせようとしていたのか、今のアカリにならよく分かった。
その可愛らしい反応が見たいからだ。
アカリも少しずつ愉しくなってきたため、ゾロが何処を舐めればもっといい反応をするのか調べながら全体を舐め回していった。
あまりの気持ち良さにか、ゾロは体をくねらせて逃げようとしていた。
それを押さえつけてなおもしゃぶり続けた。
「無理! 無理ぃ! 出るぅ!!」
必死にそう訴えるが、アカリには伝わらない。
ただ、必死に泣き喚いてるようにしか聞こえないからでもあったが、アカリは一度好奇心に火が付くと抑えられなくなるからだった。
結局、ゾロはそれからほとんど耐える間もなく、すぐに彼女の口内へ精液を放った。
急に熱いものが口の中へ広がり、思わず吐き出しそうになるが、吐き出すと服が汚れると思い、それを飲み込んだ。
「はあぁ……!? 飲んでる! アカリが俺の精子を飲んでる!!」
口の中へ放たれる独特の臭いと味を持つ精液をアカリは嫌な顔一つせず飲み干していった。
ゾロのモノの脈動が弱くなり、次第に放たれる精液の勢いが弱くなったのを感じて、アカリは残りを飲み干してモノから口を離した。
少しの間、ゾロは心地良い開放感を味わいながらボーっと上の空になっていた。
「ふむ……正直、精液自体はかなり不味いが……、君のそんな表情を見れたのなら十分だな」
アカリがそう言うと、ゾロはゆっくりと起き上がった。
そして鼻息を荒くしながらアカリに近寄っていく。
「やっぱシよう! もう我慢できそうにない! アカリも気持ち良くしてあげるから!」
そう言いながら抱き付こうとしたが、アカリは素早く後ろに一歩下がった。
「私は君のように体力があるわけではないと説明したはずだ。それとも額だけではなくその鼻頭も殴られないと気が済まないか?」
明らかにイラついた表情でアカリは拳を見せながらそう言った。
流石にそれは強さに関係なく、ものすごく痛いのでゾロも諦めて退いた。
少しだけ寂しそうな表情をゾロが見せたので、アカリは彼の耳元で
「分かった分かった。山から降りたら好きなだけ付き合ってやる。だからそれまでは我慢しろ」
と囁いた。
レポート07:たまごタイプ こうぶつ
翌日、その山の頂上付近までやってきたアカリたちは一息入れていた。
「昨日から歩きっぱなしで流石に疲れた……。だが、これも研究のためだ」
そんなことを言いながらアカリは足をしっかりと揉み解していた。
その間にゾロはとある物を探していた。
一際高い岩の上に立ち、グルリと周りを見渡すが、この辺りにはゾロが探していたものは見つからなかったようだ。
「グァウ!」
そんな声を出し、アカリにこの辺りにはないことを伝えて、ゾロもその岩から飛び降りた。
アカリもそれを見てスッと立ち上がり、次の目的地を大まかに定めてから歩き始めた。
それを繰り返すことおよそ1時間。
「ガウ! グアウ!」
ゾロはついに目的のものを見つけたのか、嬉しそうにアカリに報告した。
するとアカリもそれを見てとても晴れやかな表情を見せた。
アカリは足を解すのをやめて、走ってそのゾロが見つけたものの場所へ近寄っていった。
「おお! 間違いない! この溝は間違いなくゴローニャが通って作られたものだ! しかもまだ新しいな……これを辿っていけば会えるかもしれないな!」
そこにあった大きく湾曲した丸い溝を見てアカリは興奮した様子でそう言った。
ゴローニャというポケモンは山から山へ渡り歩きながら生きている鉱物のように硬いポケモンだ。
非常に丸い形状と重い体重を持っているため、移動する際は巨大な岩のようになり、転がって移動するそうだ。
そのため、ゴローニャが通った後はこの独特の溝が残るのが特徴だ。
普段はその溝を避けて通るのだが、アカリは全速力でその溝を辿りながら山を下り始めた。
今アカリが言った通り、新しい溝だということは、その先にこの溝を作ったゴローニャがいるということだ。
――山を下ること1時間、少し開けt場所でその溝は一度途切れていた。
「道がない! ということは……ここにいるはずだ! 探せ!」
アカリはゾロにそう言い放った。
アカリのあまりにも必死な様子にゾロは思わず驚くが、とりあえず彼女に言われた通り、そのここに辿り着いたばかりと思われるゴローニャの捜索に向かった。
何故ここまで必死にアカリがゴローニャを探しているのか。
それには非常に深い訳があった。
ポケモンには多種多様な種族がある。
同じ種族でも進化すればその見た目が大きく変わるポケモンも少なくはない。
そして、進化するとたまごタイプが変わるポケモンもいる。
話が少し反れたが、それだけ多種多様なポケモンには同様に多種多様なタマゴのタイプもある。
アカリが戦慄したのはたまごタイプ、不定形や鉱物といったものが存在していたことだった。
不定形に分類されるポケモンはベトベターだとか、ゲンガーのような存在や形状があやふやなものの集まりだ。
鉱物に分類されるポケモンはギルガルドや、ガントルのようなそもそも生物に分類していいのか怪しいポケモンが多かった。
それとは別に性別不明のポケモンが存在するが『性別が存在しないのなら調べなくていい』という無理矢理な解釈で無視することにした。
そのためアカリは悩んだ。
この二種類には性別が存在する以上、調べなければならない。
しかし、そんなよく分からない生き物に自分の体を好きなようにされるなど、彼女からすれば拷問以外の何者でもなかった。
そこでアカリはポケモン図鑑を熟読し、それらの二種類のポケモンに、比較的まともな形状のポケモンがいないか必死に調べた。
するとアカリにとっては救いとなるポケモンが何匹か見つかった。
不定形の方は今回関係がないので無視するが、鉱物の方には比較的、生物的なポケモンがいることをアカリは知った。
ほぼ、唯一といってもいいかもしれなかったが、ゴローニャは鉱物タイプのそんなポケモンたちの中で、救いにも思えた。
体は若干、人間よりも大きいが、アカリも生態を観察していたので、どちらかというと蛇や亀のような生態であることを知っていた。
ならば目標はただ一つ。
何が何でもゴローニャを捕まえなければ訳の分からないポケモンに股を開かなければならなくなる。
「ゴローニャー!! いるのは分かってるんだ!! すぐにでてこーい!!」
大声で、いるはずのゴローニャを探し回りながら、アカリも必死に歩き回っていた。
歩き回ることさらに30分。
それでもゴローニャは見つからず、諦めかけていたその時!
「ギュア?」
「いた! 見つけた! 絶対に逃がさないからな!」
岩陰からゴローニャが顔を出した。
それを見てアカリは疲れ果てていたにも関わらず、猛ダッシュでゴローニャへ駆け寄った。
鬼気迫る表情で駆け寄ってくるアカリにゴローニャは思わず逃げ出しそうになるが、
「逃げる気だ! ゾロ! 挟み込め!」
そう言われ、何処からともなく現れたゾロに逃げ道を塞がれてしまった。
どうすることもできなくなり、慌てたゴローニャだったが、身の危険を感じて体の中に手足と頭を引っ込めて丸くなり、命だけは奪われないようにした。
ゴローニャが防御姿勢になったのを見てアカリは少し走る速度を落としながら近づき、
「つか……捕まえた……。研究に……いぃ」
限界を超えて体力を消耗したため、息も絶え絶えその丸くなったゴローニャに捕まり、力尽きた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
彼、ゴローニャには自分が何故、自分を鷲掴みにしたまま女性がそこに倒れているのか意味が分からなかった。
勿論彼は彼女たちとの面識もないし、追い回されるようなやましい事もしていない。
ポケモントレーナーならすぐにポケモンを繰り出すか、モンスターボールを投げてくるので、そのどちらもしないでひたすら追いかけてくるアカリにひたすら混乱していた。
だが、その追い回していた本人は彼に掴まったまま力尽きていた。
防御状態を解いて少し心配そうにアカリを覗き込む。
「悪いな。多分、驚かせただろ?」
すると後ろからゾロが声を掛けた。
そこでもう一人彼を追いかけていた者がいることを思い出し、振り返る。
「そ、そりゃまあ……驚きもするが、君達は一体何者だ? 何故私を追いかけて、追い詰めたりしたんだ?」
そのゴローニャはそのままゾロに返答し、今度は自分の疑問を投げかける。
するとゾロは手を横に広げ、首を横に振り、
「分からん。普段はアカリはこういうことはしない人なんだけどな。多分、何か理由があるんだろ」
そう答えた。
唯一話の通じるゾロがそう答えたのでは、ゴローニャは更に疑問が増えるばかりだ。
もう少し、理由の部分に関して詳しく聞きたかったが、ゾロにそれを話すと、『それは小難しいから俺よりも本人に聞いた方がいい』とだけ答えた。
そのためアカリが復活するまでゴローニャとゾロは適当に雑談でもしながら待つしかなかった。
かなり疲労していたのか、アカリがまともに喋れるようになるまでに5分ほどかかった。
ようやく復活したアカリは色々と聞きたそうな二匹を前に、一度止め、水を2,3口飲んで一息ついてから話し始めた。
「ふぅー……とりあえず追い回してすまなかった。だが、君にはなんとしても私の実験に協力してもらわなければならなかったのでね……。先に言っておくが、君に拒否権はない」
アカリはそう、いつもとは違う言葉を彼に投げかけた。
拒否権がないなどと言われれば、当然彼も不安になる。
「え!? ちょっと待って下さいよ! 私は何ですか? 殺されるんですか!?」
焦りと絶望感に満ちた表情を覗かせた顔でゴローニャはアカリに聞き返す。
勿論アカリは言葉が分からないため、ゾロが代わりに彼を落ち着かせる。
なんとかゾロに宥められ、落ち着いたところでアカリは残りの言いかけていた言葉を続けて言う。
「私と交尾してもらいたい。だが、体格的に無理があるだろうから、君には下になってもらわないといけないんだ」
何を言われるのか気が気でない状態でアカリの言葉を待っていたゴローニャは一瞬、何を言っているのか理解できなかった。
そして、理解した瞬間、ゴローニャは顔を赤らめていった。
「い、いや……それは……私というか……なんというか……」
明らかに声が上ずり、しどろもどろになっていた。
彼が予想していたこととかなり違ったことと、まさかそんなお願いをされると思っていなかった期待からか、顔はあからさまににやけていた。
どうやらまんざらでもないらしく、彼の焦りは不安感のものではなくなっていた。
あからさまに先程までと態度が変わり、そわそわとしているゴローニャを見てゾロはうっすらと笑い、
「むっつりだったか……」
と呟いた。
ゼロの言葉が聞こえていたのか、それとも聞こえていなかったのか、ゴローニャは誰に宛てたものでもない言い訳をボソボソと言っていた。
そこでゾロは確信する。
『ああ、多分、こんなんだから今まで交尾できなかったんだろうな……』と。
――その後、アカリは自分の研究に関する詳しい事を、そのゴローニャにも説明した。
しかし、当の本人は『交尾できる』ということで頭が一杯なのか、話がほとんど頭に入っていなかったようだ。
それからアカリはその程良く開けてはいるが、大きな岩もゴロゴロと転がっているその場所にテントを立てた。
『もう歩きたくない』とかなり疲れた表情で語り、一晩泊まるのに適しているとは言えないが、疲れきった彼女はもうそこでいいと思ったのだろう、ゾロがアカリを優しく持ち上げたが、断ってすぐにテントを張るようにお願いした。
そして今日も燃料を必要分だけ取り出し、それに火を点けて、手早く料理を済ませた。
今日のアカリ特製のスープはウブの実とイアの実を使った酸味の強いスープだった。
本人曰く、疲れを吹き飛ばしたいらしく、それなら酸味の強い物がいいだろうと思い立ち、そうなった。
実際に酸っぱい物には疲れを取る成分が多く含まれるが、アカリが今回選んだのは『そんな気がする』食材たちだ。
学者ならそこはしっかりしてもらいたいと思ってしまうが、アカリは生物学者だ。
基本的にどんな人間でも、専門分野以外は疎いものだ。
食事を終えると、アカリたちは一息ついた。
山の夕方は冷え込みが激しく、まだ日中なら暑いと感じるほどの気温だったが、あっという間に寒さを肌で感じるほどになっていた。
アカリはテントの中で準備をしながら待っていたが、ゾロとゴローニャはそこまで寒さを感じていないのか、外で少しの間談笑していた。
というのも、三人もテントの中に入ったのでは狭すぎて身動き一つ取れないからだ。
「ハハハ! てことはまだ一人とも交尾したことないのか。それで、あんなに分かりやすく慌ててたのか」
ゴローニャから話を聞き、ゾロは思わず笑っていた。
彼は今まで、『強いオスは好きなポケモンと交尾できる』と、誰かが噂していたのを聞き、全てはそのために武者修行の旅をしていた。
ある程度一つの場所で戦ったり、特訓したりすると、次の山へという感じで色んな山を転々としていたそうだ。
そして彼もかなり強くなってきた頃、いざそこにいたゴローニャのメスに話しかけようとした。
「あ、あの……! も、ももももし! よかったら……交尾してくれましゅんか!?」
しどろもどろな上に、噛みまくりで、明らかに女性経験がないのが見て取れる彼の態度に唖然としたのか
「ごめんね。私、童貞には興味ないの」
と一蹴された。
本当のところは、ただ単にそのゴローニャの態度を見ていて、相手にするのが面倒そうだったから適当についた嘘だったのだが、これが当の本人には凄まじくショックだったようだ。
初めてのナンパ(?)は玉砕に終わり、彼は心に深い傷を負った。
男なら誰しも最初は童貞なのにも関わらず、頭の固い彼は、今までずっと特訓と武者修行しかしてこず、女性と関係を持つのが遅すぎたと勝手に思い込んでしまった。
全ての女性がそうではないというのにも関わらず、勝手にそう思い込み、今の今ゾロに言われるまでそう信じきっていた。
「俺も言っとくが、遅い方だったぞ? トレーナーさんに出会って、それからかなり鍛えてから野性に帰った時だったから……結構最近だな」
ゾロがフォローのために自分の性体験を話すが、それが止めを刺したのかゴローニャは、がっくりと落ち込んでいた。
そんな話を続けていると、アカリがテントの中から顔を出した。
「ゴローニャ! そろそろお願いする」
そうアカリが言うと、ゾロはすぐにたちあがり、
「じゃ、頑張れよ。アカリは変な奴だけど悪いようにはしないと思うから」
そうゴローニャに声を掛けて、その場を離れていった。
『今からなのか……』とゴローニャは初めての体験を意識し、既に少し興奮していた。
期待に胸を高鳴らせながらテントの中へ入る。
すると、そこには既に裸になったアカリの姿があった。
「よし、仰向けにそこに寝てくれ」
そう言われ、ゴローニャはアカリの指示に従い、ゴロンと転がった。
するとアカリはゴローニャの脚側の方に立つ。
既に興奮からか、ゴローニャのモノは僅かに勃起し、ゴツゴツとした体表の間から柔らかく赤いものが伸びてきていた。
アカリがそれに手を伸ばし、ゆっくりと優しく撫でていく。
するとゴローニャは思わず言葉を失った。
彼の想像をはるかに上回ってその刺激は心地良く、柔らかくモノを包み込むアカリの手は温かく感じた。
あっという間にゴローニャのモノは伸びていった。
最大まで伸びきったゴローニャのモノはその体型からか、長さ、太さ共にアカリの腕と同じだけのとても立派なモノだった。
基本的に体の自由が利きにくい生き物ほど、ペニスが長くなったり、器用に動かせるようになる。
ゴローニャの体型は分かりやすいほどに当てはまっており、股下から伸びるモノはアカリの手の動きに合わせてウネウネと動いていた。
十分に伸びきり、先端から少しずつ透明の液が溢れてきたのを確認してアカリはそのゴローニャのモノを自らの秘部に宛てがい、
「それでは入れるぞ。わかってはいると思うが、君は動かないでくれ。そんなことをされたら私の体が持たないからな」
そう彼に告げ、ゆっくりと中に押し込んでいった。
先端が少し入ったところで、ゴローニャのモノはうねり、ズズズッとアカリの膣内へ向けて動いた。
「こ、こら!? 止めろ! きついんだ!」
しかし、その動きは止まらない。
というよりはゴローニャも故意にしているわけではなく、本能的に勝手にそう動いていた。
不自由の多い生き物に多い傾向だが、相手の膣内に入ると、できる限りペニスが抜けにくいようになっているものが多い。
ゴローニャの場合はウネウネト動き、勝手に相手の膣の一番深くまで入るようになっていた。
そのためただ長いモノが入っているというだけではなく、ウネウネと動きながら中へ中へと入ってくるため、アカリの体にかかる負担がとても大きかった。
お陰でアカリもゴローニャも動いていないのに、二人の嬌声だけが響いていた。
一番奥深くまでゴローニャのモノは辿り着き、そこで彼のモノは動きを止めた。
動きが止まったところでアカリは一度息を整えた。
そしてゆっくりと動こうとするが、そこでアカリの秘部へしっかりと食い込んだそのゴローニャのモノは、まっすぐ立った状態のアカリの膣に入っているため、それ以上自分の体の動かしようがなかった。
どうするか悩んでいたが、ここでアカリはふと思い付く。
そしてゴローニャの体の岩のような体表の一つをしっかりと掴み、少し手前に引っ張ってみる。
するとアカリの予想通り、丸い体が転がり、ゆっくりとアカリの中からゴローニャのモノが出て行く。
そしてある程度手前に転がすと、今度は奥へ動かす。
そうやって、バランスボールでも転がすように動かすと、間もなくアカリの中へ熱いものが溢れた。
「えっ」
あまりにも唐突だったため、アカリは思わず声に出してしまったが、ゴローニャは非常に気持ちよさそうな顔をしていた。
そのままビュビュッ! と音を立てながら溢れた精液がアカリの膣内から溢れ出ていった。
そして、水風船の水が抜けたかのように、アカリの中にあったゴローニャのモノはヌルンと抜けた。
ゴローニャの長いモノは完全に力を失い、掃除機のコードを巻き取るようにゆっくりと体の中へ消えていった。
――その日の夜、元々そんな荒々しい岩肌で生活しているゴローニャは外で寝ることに、アカリとゾロはいつものようにテントで眠ることになった。
彼女の実験に付き合ってくれたポケモンには、次の日の朝食まで振る舞うのが彼女なりの流儀だ。
しかし、あまりにも体の大きなポケモンには外で眠ってもらっている。
そしてその日、ゴローニャは先程までの本人のとっては夢心地のような時間を思い出してにやけていた。
『気持ちよかったなぁ……。それに、多分、これは交尾に含まれるはずだから……。童貞卒業ということでいいんだよな? 明日からは大手を振って歩けるんだよな?』
そんなことを考えながらその夜を過ごした。
だが、恐らく彼の性格は変わっていないのでその後、彼がいい人に巡り合えたかを知る者はいない。
登場ポケモンサメハダー
さんさんと降り注ぐ、眩しいほどの日差し。
どこまでも青く澄み渡った空。
ここまで海水浴に適した日はあるだろうか、と誰かに問いかけても答えが一つになってしまいそうなほどの晴天の日、一人の女性と一匹のポケモンはとある海水浴場へやってきていた。
「ああ……美しい海だ……。ようやくアカリと一緒に恋人らしいことができるのか……」
そんなことを呟いているのは一足先に浜辺へやってきたゾロアークだった。
普段はキリッと引き締まった顔をしているのだが、今日は日差しで溶けたかのようにデレーと伸びた顔をしていた。
彼の名はゾロ。
先程呼んだ、アカリという女性のパートナーであり、恋人だ。
しかし、恋人であるのにも関わらず、二人は今のところ誰から見ても恋人だと分かるような行動はとっていなかった。
既に浜辺には他のカップルや、友達同士で遊びに来た人間やポケモンで賑わっている。
ゾロはそれを眺めながらアカリが来るのを今か今かとワクワクしながら待っていた。
『水着姿のアカリかぁ……。なんだかんだアカリはスタイルもいいし、早くみたいな』
頬に手を当てて可愛らしく座って僅かに左右に揺れながら、そんな妄想をしてひたすら彼女がやってくるのを待つ。
アカリという女性は、ポケモンに関する事を調べているポケモン学者だ。
そのため普段は白衣に身を包み、ほぼ毎日代わり映えのない姿で過ごしている。
学者のみんながみんなそうなのかと言われると、実際の所そうではないが、アカリは根が真面目なのか、ただ面倒なだけなのかは知らないが、日頃服装が変わることは滅多にない。
そんな彼女でも海に来れば必ず水着を着る。
大きすぎず小さすぎず、程良く豊満な胸を持ち、日頃運動不足なのが信じられないほどスラッとした美しいスタイルの彼女が、さらに体のラインが際立つ衣装を身に付けるのだ。
そう考えただけでゾロはどんどん鼻の下が伸びていった。
「待たせたな。案外着替えるのに手こずったよ」
ゾロの後ろからそう、声だけはいつもと調子の変わらない淡々とした口調のアカリが声をかけてきた。
一体どんな水着を選んだのか、どんな色の水着を選んだのか、柄物なのか……。
そんな期待を胸いっぱいにしてゾロはバッ! と後ろを振り返った。
そこにいた彼女は、見事にゾロの期待を裏切ってくれた。
勿論、悪い意味で。
全身をカッチリとしたウェットスーツで固め、水中用のゴーグルと口腔内に収まるタイプの携帯型酸素ボンベを手に持って現れた。
ゾロは一瞬固まった。
なぜわざわざ海水浴場にまで来て、それほどガッチリと遊ぶ格好ではない姿で現れたのか理解できなかった。
だが、思った以上にウェットスーツでもアカリの美しいスタイルは際立っていたので、少し悩んだが、ゾロは親指をまっすぐ上に向かって立てた。
これでせめて髪まで覆うタイプのウェットスーツでなかったのなら、ゾロは迷わず喜んでいたかもしれない。
「それじゃコレは君が身に付けておかないといけないものだ。私が帰ってくるまで外すんじゃないぞ?」
今から二人でキャッキャウフフの楽しいビーチデートを予想していたゾロは、アカリから腕輪を渡されて、そう言われたことによって一瞬で伸びきった顔が引き攣る。
「はっ!? ちょっと待って! 何言ってるの!? 俺とアカリで一緒にデー……行動するんでしょ!? 帰ってくるまでってどういうこと!?」
おもわず立ち上がり、アカリにそう焦った様子で詰め寄るゾロだったが、アカリは冷静にゾロを躱した。
「お前まさかついてくる気だったのか? 波乗りも出来ないのに? 今回お前は実験に協力してくれるポケモンを探すのには足でまといになるだけだ」
更にアカリは冷静にそう言い放った。
わざわざアカリが海水浴場を選んでいたため、完全に遊びに来ていると思っていたゾロは、逆に完全に仕事モードのアカリに嘆いた。
「ならせめてわざわざこんな楽しそうな場所選ばずに普通の海岸を選んでくださいよぉぉぉお!!」
膝から崩れ落ちながらゾロは真っ白な灰になっていた。
それを見てアカリは首を横に振り、深い溜め息を吐いた。
「ゾロ。言っておくが遊びに来たわけではない。それにここを選んだ理由は君のためを思ってだ」
そう言った。
この海水浴場はポケモントレーナーもよく出入りする場所らしく、昔から頻繁にポケモンバトルが行われていた。
そのため、ポケモンを出しっぱなしにして遊ぶトレーナーや、勝手に遊び回るポケモンが多く、野生のポケモンと間違ってモンスターボールを投げつけ、トレーナー同士でのトラブルもよく起こっていたそうだ。
その対策としてこの浜辺を管理する人が、トレーナーが申請すればポケモン用の腕輪を貸し出すようになった。
その腕輪を付けたポケモンは、つまり近くに人がいなかったとしても誰かのポケモンであることがひと目で分かるという仕様だ。
これを取り入れてからは、トレーナー同士でのトラブルが激減し、今もこの海水浴場では使われている。
そしてゾロはアカリのパートナーではあるが、アカリがモンスターボールで捕まえたポケモンではない。
そのため半野生のポケモンであるゾロは、もし他の海岸などで彼を一人待たせた場合、捕獲されてしまう可能性があったため、彼女なりの配慮だった。
「それと私は潜水用具など持ち合わせていない。こういう場所で借りなければ深い海に棲むポケモンなど捕まえようがない。あと、波乗りやダイビングを使えるポケモンも持ち合わせていないからな」
続けて彼女はそう説明した。
つまり、彼女はこの浜辺に元から実験のために来ていたので、彼の願望が叶うことは最初からなかったのである。
酷く落ち込んだゾロを見て、アカリはひとしきりゾロの頭を撫でた後、
「できる限りすぐ戻ってくるから、それまでは折角なら海水浴でも楽しんでいろ。ここでの実験が終わったら私も折角海まで来たのだから少しは遊ぶつもりだからな」
そう言って海へ去っていった。
最期の言葉で少しだけ元気を取り戻したゾロを置いて。
レポート08:たまごタイプ すいちゅう2
海水浴客で賑わう浜辺から少し離れた岩場でアカリは入念にストレッチを行っていた。
彼女は先程も解説した通り、日頃は研究施設に篭っているため運動不足だ。
そんな彼女が準備運動もせずに海へ飛び込めばそれは一大事になるだろう。
泳ぐのは確かにポケモンだが、そもそも運動していない人間はよくこむら返りを起こしたりするので要注意だ。
そして入念なストレッチを終えると、アカリは人生で初めてのモンスターボールの投擲を行った。
「フフフフフ……。一度言ってみたかったんだ……。出てこい! ゴルダック!」
そう言ってモンスターボールを宙に放り投げる。
すると途中でボールがパカッと開き、中からゴルダックが現れた。
そのままゴルダックは近くの岩場に降り立ち、ボールは吸い込まれるようにアカリの手の中へ帰ってきた。
そこでアカリは満面の笑みを見せる。
アカリは自分の運動不足とは関係なく、おそろしく投擲スキルがない。
止まっている標的にボールを投げ当てることすらできないほどに、当たり前のように明後日の方向へ投げるからだ。
そのためにゾロもボールに入れるのを諦め、この旅でポケモンを捕獲することも諦めていた。
『鞄の幅を取らなくて済む』と強がりを一度は言ったが、旅をする以上やはりポケモンの捕獲はしてみたかった。
その願いは叶わなかったが、モンスターボールからポケモンを出すという夢はこのような形で叶うことになった。
アカリは少しだけテンションが上がり、一人腕組みをして必死に大人気なくはしゃぎそうなのを抑えていたが、ゴルダックは外に出されたのにも関わらず、命令もなく放置されていたので、少し困っていた。
命令待ちの状態でそわそわしているゴルダックに気付き、アカリは指示を出した。
「そうだった、ゴルダック。私は今、交尾してくれるポケモンを探している。そのため君には私を乗せて海を泳いでもらいたい」
思わず息を吐くように出てきた交尾という言葉にたじろぐが、つまりは波乗りをしてほしいのだと理解し、一足先に海水へ飛び込んだ。
考えればゴルダックもポケモンであるため、アカリとしては彼も交尾の対象だが、流石に借りているポケモンに手を出すわけにはいかなかったので、凶行には至らなかった。
水中メガネを掛け、シュノーケル型の酸素ボンベを咥え、最後に伸びを一回した。
「グワッ」
ゴルダックが飛び込んで、海から顔を出したのを見て、アカリも海に飛び込んだ。
アカリも水中に入ると、ゴルダックはすぐにアカリの元に近寄って、背中を向けた。
アカリもすぐにそのゴルダックの背中に捕まり、沖へ向かって進み始めた。
ゴルダックは確かにアカリよりも大きいが、それでもアカリを背負ったままとは思えないほどの速度で泳ぐ。
あっという間にかなり岸から離れた場所までやって来た。
そこに着くとアカリは一度ゴルダックから離れ、
「よし……。それでは今からポケモンの探索に入る。ゴルダック、今度はダイビングで私を水中へ連れ回して欲しい。そして、私がポケモンを指差したらそのポケモンに近寄っていって、『実験に協力して欲しい』と伝えてくれ」
そうゴルダックにお願いした。
「グワッ!」
ゴルダックはそう元気に返事をし、もう一度アカリの背中を向けて、掴まらせた。
そしてゴルダックは大きく息を吸い込み、一気に海中へと潜っていった。
思っていたよりも海中の透明度は高く、かなり遠くまで見通すことができた。
そして海の中を飛ぶように泳いでいく水ポケモンたちの群れをアカリは凝視して、目的のポケモンを探し始めた。
―― 一方その頃ゾロは浜辺に建てられたビーチパラソルの下で小さくなっていた。
折角アカリと一緒に浜辺を存分に楽しめると思っていたゾロは、一人で楽しめばいいと言われてもそんな気分にはなれなかった。
色々とアカリの残念な所は今までよく見てきたが、大体予想していたのでそこまでダメージ自体はそこまででもなかった。
しかし、今回はわざわざ結構な人気を誇る海水浴場を選択して来ていたので、完全に期待していたゾロは今までとは計り知れないダメージを受けていた。
心情的には瀕死状態だが、この実験が終わればアカリと一緒に海で遊べるという話で少しだけ精神ダメージは回復していた。
楽しそうに遊び回る人やポケモンたちをプールに孫を連れてきたお婆ちゃんのようにゾロはただ見守っていた。
見続けていれば出てくるのは溜め息で、そのままずっと眺めていれば心がどんどん荒んでいきそうな気がしたゾロは、仕方なく気分転換のために浜辺を歩き回ることにした。
ビーチバレーを楽しんでいる一行や、水ポケモンたちと楽しそうに泳いでいるトレーナーなど皆、一様にこの場を満喫していた。
座って待っていても、歩き回っても横にアカリが居ないせいで少しずつ心が荒んでいっていたゾロだった。
「ねえ、そこのゾロアークさん。今一人?」
少しずつイライラし始めていたゾロに声を掛けたのは、一匹のフローゼルだった。
「そうだけど何? なんか用?」
あからさまに期限が悪そうにゾロは返事をした。
するとそんなゾロを見て、彼の状況を知ってか知らずか少しだけ微笑み
「んー……特に用は無いんだけど、お兄さん、なんだかつまらなさそうな顔してたからなんだか声かけずにはいられなかったの」
そうゾロに言った。
そう言われ、ゾロは少し溜め息を吐き
「そりゃあ、こんな絶好の海水浴日和の日にアカリは一人、海でポケモン追い掛け回してるだろうし、何が楽しくて一人で海を楽しまにゃいけないのかと……」
そう思わず愚痴を吐いた。
そう言うとそのフローゼルは楽しそうに微笑み、ゾロアークの手を取った。
「なら私と一緒。置いてけぼりにされた者同士、少しだけ一緒に遊ばない?」
そう言い、ゾロの返事を待つよりも早く、やや強引にゾロの手を引いて海の方へ歩き出した。
彼女の名はウミというそうだ。
なんでも彼女のトレーナーは根っからの海好きで、ほとんど毎日、春夏秋冬問わずに海に来るほどの筋金入りらしい。
そんな彼女のトレーナーが初めて捕まえたポケモンが彼女だった。
当然、それほど海が大好きな彼が付けた名前は分かりやすいほどだった。
そんな話をウミがすると、そのトレーナーの性格が何処かアカリに似ていたせいか、ゾロも気が付けば意気投合していた。
「俺も名前はゾロって言うんだ。ゾロアークだからゾロ。分かりやすいよな。そう考えればまだウミの方がひねりがあっていいな」
そんなことを言うと彼女は笑った。
「オスかメスか分からなかったからって、どっちでも大丈夫な名前を付けられたのよ?」
と彼女は言って、笑った。
そして話を聞いていると、彼女のトレーナーは今、彼女も放ったらかしで波が来たからと一人、サーフィンに出かけているそうだ。
それを聞いていると本当に今の彼の状況と彼女の置かれた状況が、似過ぎていて笑えてきた。
その後も、二人はマイペースなパートナーの話で盛り上がり、波打ち際までやってくると、座り込んで話をすることになった。
すると出てくるのは全く違う人間のはずなのに、異常なこだわりを持つ所や、それ以外が無頓着なところなどの恐ろしい程の共通点の数に、いつの間にか二人共元気になっていた。
ひとしきり、笑い合い、話し合っていると、ウミは立ち上がり
「ねえ、折角だし私たちも泳ごう! ただ話してるだけじゃ勿体ないし!」
そう言った。
すると、ゾロも立ち上がり
「こう見えて案外、泳ぎは得意だぜ。まあ、ウミほどじゃないだろうけどな」
と言って笑ってみせた。
すると海はとびきりの笑顔を見せて、先に海に浸かっていった。
ゾロも後を追いかけ、ゆっくりと海に浸かっていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ところ変わって沖の海中。
アカリは3時間にも及ぶ捜索の果て、ようやく目的のポケモンを見つけた。
アカリはそのポケモンを指差してゴルダックに向かうように指示した。
ゴルダックはスゥーと海底に並ぶ岩の間を通り抜けながら、先ほど指さされたポケモンの後を追っていた。
その目当てのポケモンもアカリとゴルダックに気が付いたのか、急いで岩の合間を縫って逃げていく。
それを見てゴルダックは逃がすまいと速度を上げて追いかけた。
そしてゴルダックはそのポケモンが消えていった一際大きな岩山の裏側へ回った。
すると、そこには鋭い牙の並ぶポケモンの大きく開かれた口が待っていた。
それを見てゴルダックは慌てて引き返してきたが、そこで背中に捕まっていたはずのアカリがいないことに気が付く。
直感的にやばいと思ったゴルダックは急いでその場所へ引き返した。
急いでその岩の裏側へ回り、戦闘態勢を取ったが、そこにいたのは目をキラキラと輝かせるアカリの姿と、先程大きな口を開いていたはずのかなり混乱している様子のサメハダーだった。
このサメハダーは、決してアカリのことを襲おうとしていたわけではない。
襲うフリをして他のポケモンやトレーナーを脅かすのが大好きな、悪戯好きなサメハダーだった。
そのため、ゴルダックが慌てて逃げたのは予定通りだったのだが、アカリが逃げるどころか自分からサメハダーに寄ってきたことがあまりにも予想外だったためサメハダーの方が状況が理解できなくなっていた。
『アレ……アレー? なんでこの人、逃げないの?』
顔の両端を両手で鷲掴みにしてアカリはゴボゴボと大量の泡を吐き出しながら興奮していた。
後ろからやってきたゴルダックがとりあえず状況が分からないものの、サメハダーにアカリから聞いていたセリフを伝えた。
伝えられたものの、サメハダーは今の状況とゴルダックの言っている実験の協力の接点が見つからなかった。
よく分からず、そのままキョトンとしていたが、アカリがついに上を指差した。
『とりあえず上に上がって欲しい』という意思表示だというのは一目瞭然だったため、サメハダーは誘われるままにゴルダックにしがみついて浮上するアカリを追いかけていった。
水上に出てアカリはすぐにシュノーケルを外した。
そしてアカリに続けて浮上してきたサメハダーに自分の口から内容を説明し出す。
「いや、よかったよかった。実は君に協力してほしいことがあるんだ」
最初は大人しくアカリの説明を聞いていたが、アカリの言っていることが少しおかしいことに気が付いた。
「是非とも私と交尾をして欲しい」
そう言われた時点でサメハダーは表情を失って絶句した。
普段、このサメハダーはその自分の容姿を利用して色んな人やポケモンを脅かしているのが日課だ。
元々性格は凶暴でもなく、寧ろ好奇心が旺盛で陽気な性格だ。
そのため彼は自分の容姿と性格のギャップを使って遊んでいた。
海にサメといえば、某映画*1を思い出す人も少なくないだろう。
そのため、基本的にサメを海で見たいと思う人は少ない。
しかし、実際の所はこんな陽気な性格のサメハダーだと気が付くと、彼を恐れずに近寄ってくる者もいる。
だいたいそういう人は既に一度は面識があるのでサメハダーも覚えているが、彼女のように最初からおそれもせずにやってくる人は今までで初めてだった。
それだけでも不思議な人だが、まさか初対面のしかも人間に交尾して欲しいなどと言われるとは夢にも思わなかっただろう。
最初こそ嫌だと思ったし、できればこの人とはもう面倒だから会いたくないと思ったが、サメハダーがそんな顔をしているのにも関わらず、アカリはめげずに自分の研究の説明を続ける。
その甲斐あってか、途中からサメハダーはそんなアカリの研究に惹かれていっていた。
そのアカリの研究とは、『人間とポケモンの進化』であり、まずその初期段階として人間がポケモンの子供を産む事ができるのかということを検証するために、アカリは自分を実験台にして旅して回っていた。
その理由としては、できる限りポケモンにも人間にも負担をかけない方法で進化を促したかったからだった。
生物学者であるアカリとしては人為的な進化は正確には進化ではなく、改造だと考えている。
今まででもミュウツーやゲノセクトのような人為的な進化をさせられたポケモンがいたため、アカリとしてはそういうことを望んではいなかった。
アカリはポケモンが大好きだからこそ、ポケモンが望んでいないことをしたくはなかった。
人間が人間に何かをするのはアカリとしては勝手だが、ポケモンには人間に自分の意思を伝える方法がない。
そんなポケモンたちを人間が勝手に色々するのはおかしいだろうというのがアカリの考え方だった。
そのため基本的に彼女の研究は双方の許可を取って行っている。
「どうだ? 協力してくれるか?」
そこまで説明して、アカリはもう一度サメハダーに訪ねてみた。
すると先程までとは違い、サメハダーは快く承諾してくれた。
人間と交尾するのは少しばかり恥ずかしかったが、アカリという人が悪い人ではないと確信できたからこそサメハダー交尾してももいいと思えたのだろう。
承諾を得たため、アカリはゴルダックを一旦、ボールの中へ戻した。
そしてサメハダーの背びれに掴まった。
「君の交尾しやすい場所に連れて行って構わないぞ。酸素はあるからな。ただ、くれぐれも私は人間だから手加減してくれ」
アカリはサメハダーにそう告げた。
するとサメハダーは少しだけ頷くような動きをして、ゆっくりと海底に向かって潜っていった。
そして海底の岩場ではなく、砂地にたどり着くとそこで動きを止めた。
「シャー」
そしてそんな声を出した。
恐らく、そこで降りて欲しいということなのだろうとアカリは解釈し、彼のヒレを離してその砂地に寝る。
が、そこでアカリは気が付いた。
今彼女が来ているのはウェットスーツだ。
交尾などできるはずがない。
そのためアカリは仕方なく、水中でウェットスーツを脱ぐことにした。
バタバタとして水中でウェットスーツを脱ぎ、裸になるともう一度海底にウェットスーツを敷いてその上に寝た。
そしてその上にサメハダーがゆっくりと近寄ってきた。
魚類の生き物は基本的に生殖器を持たない。
水中であるということと、その体の構造上、卵子に直接精子を振りかけた方が楽だからだ。
しかし、サメは魚類の中でも珍しく、生殖器を持つ生き物だ。
アカリがサメハダーを探していた理由はこれにあった。
アカリが人間である以上、相手にも生殖器がなければ交尾ができない。
そのため、アカリはこのサメハダーがアカリを見た際に逃げた時は焦ったが、岩の裏で待っていた時は嬉しくなったため、普通の人と違う反応を見せたのだった。
実を言うと、ポケモンは生態的に『ポケモン』という括りにされている理由が、自然界に存在する生き物と比べて感情がとても豊かなことともう一つ、『分類上、たまごタイプの近いポケモンなら繁殖できるように全てのポケモンが生殖器を持っている』のだが、そこに関して詳しく研究を重ねていないアカリは知る由もなかった。
そのまま白いサメハダーのお腹から赤いモノが生えてきた。
それはそのまま狙いを定めてゆっくりと降下を続け、交尾というよりは連結のようにアカリの膣内へと入ってきた。
そのまま降下し続け、一番奥まで挿入される。
が、体格の割にはサメハダーのモノは小さく、アカリでも十分苦しくない程度だった。
そしてそのまま一番奥まで物を入れた状態でサメハダーは静止した。
水中生物は大体そうだが、基本的に激しい動きを好まない。
本来のサメもメスに体を巻きつけるようにして挿入した後は、そのままじっとしている。
不自由な体で動いても快感を得るどころか行為自体が失敗に終わってしまう可能性が非常に高いからだ。
基本的に本能で生きているポケモンも、無駄な行為はあまりしない。
そのため、そのサメハダーも挿入したままゆっくりと精液をアカリの中へと流し込んでいった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一方その頃、ゾロとウミは楽しく泳いだり、水を掛け合ったりして十分に海水浴を満喫していた。
ポケモン同士の遊泳カップルはこの浜辺では珍しい光景ではなかったため、あまり二人とも目立つことなく、馴染んでいた。
そのまま夕暮れまで二人とも楽しく海を満喫していた。
「あっという間だったな。そろそろトレーナーの所に帰らなくていいのか?」
とゾロはウミに問いかけた。
すると、ウミは少し遠くの方を見て
「そうね……。もうそろそろあの人も心配するだろうし。ありがとうね。今日は楽しかったわ」
そう言った。
そしてゆっくり立ち上がり、ゾロの頬にキスをしてその場を去ろうとした。
「お! いたいた! ウミー。悪いな! この後サーファーの集まりで飲むことになったんだ。今日一晩悪いが一人で過ごしてくれ!」
ウミのトレーナーらしき人がやってきて、ウミにそう言ったかと思うと、本当にトレーナーなのかと思うほどあっという間にその場を去っていった。
それを見てウミとゾロはポカンとしていた。
そして少し経ってから、二人で顔を見合わせて大きな声で笑った。
「ホントに言ったままのトレーナーだったな。サーフィンが楽しすぎて仕方がないってかんじだな」
目に涙が溜まるほどゾロは笑い、ウミにそう言った。
「ね? あんな人なの。でも、おかげで今日はまだあなたと一緒にいられるわ」
ウミも同じく泣くほど笑い、ゾロにそう告げた。
既にゾロもウミもお互いの気持ちに気付いていた。
二人とも本当に好きな人は自分のトレーナーだ。
だがその恋心とは別に、ポケモンとして二人は相手を好きになっていた。
今日だけの関係だが、それでも二人は自分の気持ちに素直だった。
ポケモンたちはそういった意味ではとても純粋だ。
誰かを好きになった時も誰かを嫌いになった時も、基本的に本能で動く。
理性的でもあり、野生的でもあるポケモンたちはそういった所で人を惹きつける魅力があるのだろう。
そのまま顔だけでゾロとウミは少しの間見つめ合い、静かにキスをした。
そして、ゾロはウミの手を引いてその浜辺から少し離れた林の中に移動した。
そこでもう一度キスをする。今度は軽いキスではなく、舌を絡める深いキスを。
ゆっくりと二人が顔を離して行くと透明な橋が二人の間にかかり、すぐに消えていった。
「それじゃ……優しくしてね?」
そう言い、ウミはうつ伏せになり、四足歩行のポケモンのような体勢をとって、股を開いた。
そしてその上からゾロが覆い被さる。
体格的に大きな差のあるゾロはウミの上から同じように地面に手を付いて立っていた。
そしてゆっくりとウミの中へモノを入れていく。
「んっ……! おお……きい」
ウミは恍惚とした表情を浮かべてそう言った。
そのままゾロもゆっくりと体全体を前へ動かす。
ズズッと奥へ入って行き、さらにウミが嬌声を上げる。
そしてそれに対してウミは逆に腰を後ろに動かして、自分からゾロのモノを受け入れていた。
そんな動きを続けていたためか、かなり体格差があったはずなのにも関わらず、ゾロのモノはウミの中に根元まで入っていた。
「はぁ……! んっ……! 気持ち……良い」
ウミはそんな声を出して、更に艶のある声を出していた。
ゾロも少しずつ息遣いが荒くなり、だんだんと限界が近くなっていた。
「ウミ、もうそろそろ……出る!」
ゾロがそう告げると、ウミは自分から動くのを止めた。
というよりもウミの方が先に限界が来たのか、既に絶頂を迎えていた。
膣が締まり、ゾロに更に刺激を与える。
これ以上挿入を続けているとウミの中に出してしまいそうだったため、ゾロは急いで抜いた。
「ハァ……!?」
一気に引き抜かれた刺激と、まだ絶頂に達していたため、抜き放たれた刺激で耐え切れなくなったのか、そのまま少しの間地面に倒れこみ震えていた。
ゾロのモノは最高に怒張した状態で放置されていた。
「大丈夫か……? きつくなかったか?」
荒い息のまま、ゾロはそのやりきれない自分のモノは無視して、ウミの方を心配していた。
するとウミは息を整えると、起き上がり
「きついのはあなたの方じゃないの? ちゃんと最後までシてあげるから、今度はあなたが下ね」
彼にそう言った。
彼女もゾロもトレーナーのポケモンだ。
そのため不用意に交尾して、タマゴができようものならトレーナーに迷惑が掛かる。
分かっているポケモンは基本的に最後まで交尾をしないから、ウミがそう言ったのにゾロは非常に焦った。
だが、ウミは彼を押し倒し、彼の股間に顔を近付けていった。
「あっ! 最後までするってそういう意味!?」
ウミがそのまま上に跨ると思っていたゾロは少し安心して、そんな声を出した。
すると既にゾロのモノを舐めていたウミは顔を離して
「私だってそのくらい分かってるわよ。だからってそのまま放置はあなたも嫌でしょ?」
そうウミが言うと、ゾロは黙って頷いた。
そしてウミはすぐにゾロのモノにしゃぶりついた。
全体をしっかりと口全体と舌を使って心地良い刺激を与えていく。
だが、元々限界が近かったせいもあり、すぐに彼女の口の中に精液を放った。
するとウミはそれを嫌がらずに一気に飲み干していった。
「気持ち良かった?」
全て飲みきってから、ウミは上目遣いでそう聞いてきた。
あまりにも可愛いその表情にゾロのモノはまた元気を取り戻していた。
「もう一回だけシていい?」
そうウミに聞いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ガウ!」
テントからアカリの帰りをそんな声で出迎えた。
「疲れた……。もう、なんか……帰ってきたらポケモンが一匹増えてるし、もう精神的に疲れた……」
帰ってきたアカリは疲労の色が色濃く出ていた。
「キュウ!」
今日一日は好きにできるウミは、ゾロに誘われるままにこのテントに一晩泊まらせてもらいに来ていた。
そんな今の状況と、ここに戻ってくるまでに起こった出来事で心身ともに疲れていた。
その後、アカリはサメハダーに好かれてしまい、少しの間、行為を求められたり、鮫肌でまだウェットスーツを着込んでいない状態で擦り寄られたりした。
そのため、かなり痛い思いをしたり、スーツを着込むまでの間にかなり体温を失ったりと散々な目にあった。
アカリもだんだんとゾロに対してだけは女性らしくなっていたため、少しは慰めてもらおうを急いで帰ってきたのに、そこに他の知らないポケモンがいたのでは素直に甘えられない。
そのため、本来はアカリが帰ってきてから料理を作るのだが、心身ともに疲れきったのかアカリはそのまま眠ってしまった。
仕方がないのでゾロとウミは携帯食料を少しだけ取り出し、食べてから二匹も眠った。
――翌日、アカリは起きるとすぐに料理を作り、二匹にも振舞った。
その後、本来の予定通りならアカリはすぐに次のポケモンを捜しに行くつもりだったが
「行くぞゾロ! 今日は海水浴だ! 楽しむぞ! 楽しまなきゃやってられん!」
アカリは楽しそうに会話するゾロとウミの間に割り込んで、そう言い放った。
いつもと違う調子のアカリにゾロは少し驚いたが、黙ってアカリに付いて行くことにした。
日もまたいだのでウミも自分のトレーナーの所に帰って、今度こそアカリとゾロは二人きりになっていた。
アカリが更衣室に入っている間に、ゾロはまた外で待ちぼうけとなっていた。
『どうせまた微妙な水着を選ぶんだろうなー』
などと考えながら、ゾロはあまり期待せずに待っていた。
「待たせたな。今日は一緒に海を満喫するぞ!」
そう高らかに宣言してやってきたアカリの姿を振り返って確認したゾロは絶句した。
昨日、ゾロが期待していた姿以上の美しいアカリの姿がそこにはあった。
赤を主体とした暖色をふんだんに使ったモザイク調の花柄のビキニを身に付け、サングラスを掛けて現れたアカリの姿はさながらモデルのようだった。
勿論ゾロだけではなく、周りにいた人たちも口々に噂するほどだった。
「どうした? さっさと行くぞ?」
アカリがそう言うと、ゾロは急いで立ち上がり、アカリの横に立った。
普段の彼女を知らない人からすればさながら美女と野獣のカップルだ。
そんな少し緊張したゾロの手を取ってアカリは、悠々と歩き出した。
「ガ、ガウ……」
しかし、ゾロはアカリのそんな手を離してしまう。
「どうしたんだ?」
ゾロはとても申し訳ないような声を出していた。
彼の中では、自分が想像していたよりも美しかったアカリを見て、自分なんかがアカリの横にいるのは相応しくないと思ってしまう。
そのため、ゾロは自分から退こうと思った。
それに、ゾロとしてはサンオイルでも塗って二人でゆっくりと夏を満喫してみたかった。
しかしこれだけアカリが綺麗だと誰も彼女を放ってはおかないだろう。
「馬鹿か君は? 何を遠慮しているのかは知らないが、私の恋人は君だけだぞ?」
アカリはそう言い、ゾロの額にチョップをした。
何度も言うが、アカリにはゾロ以外に恋人はいない。
そしてゾロの心がアカリから離れてしまわない限りは、アカリはいつまでもゾロのことを愛している。
そんなアカリがゾロとは違い、他の男に目移りするはずもなく、アカリの性格上、声を掛けてきた男がいたとしても一蹴するだろう。
そう考えるとゾロとアカリは性別が逆だったなら普通のカップルに見えなくもなかっただろう。
それでも遠慮するゾロを少し強引に手を引いて海へ向かうアカリは今日一日、久し振りに二人で仲良く楽しいひと時を過ごした。
登場ポケモンアバゴーラ
今回はいつもと違い、引き続いて浜辺にいた。
前回の話から二日後、アカリたちは今度は二人で沖へとやってきていた。
今回は以前と違い、ゴルダックを返して、今度はラプラスを借りていた。
「いいか? ゾロ。今回は君がポケモンを見つけてきてくれ。前回私は散々な目にあったからな」
アカリはゾロにそう言った。
ラプラスは人を乗せて移動するのが大好きなポケモンで、かなりの大きさと安定感があるため、レンタルポケモンの中でも非常に人気が高い。
なかなか貸し出してもらえないのだが、今回運良くアカリは借りることができた。
非常に大きなポケモンのうえ、ラプラスは何人も人を乗せるのも大好きなので、比較的大人しく背中に乗っていたゾロもラプラス的には好きなお客さんだ。
しかし、ゾロが大人しい理由はそういう理由ではなく、アカリがあからさまに怒っているからだった。
先程のアカリの台詞も、口調はいつも通りだったが、アカリの顔は明らかに怒っていた。
前回の一件があり、アカリは少しゾロを一人にしておくのが不安になったのと、いつの間にか可愛らしい海鼬と一日過ごしていたことに少し嫉妬していたようだ。
ポケモン同士が中睦まじくしているのはごく普通の光景なのだが、アカリにとって恋人はゾロ一人しかいないので、なんだかんだ言ってゾロが自分から離れていくのは嫌だったようだ。
というよりも、ポケモンは人間と違い、一夫多妻でもごく普通のことのため、ゾロの最初の考えがよくぶれるのは仕方のないことでもあった。
唯一つだけ言えることがあるとすれば、ポケモンは全員の事をきちんと愛しているという差があるということだろうか。
というよりも、野生的な面からして、子供を産んでくれる雌は雄としては大事な存在だ。 基本的にはないがしろにはいない。
が、人間のアカリにはそんなこと関係ない。
そのため、前回の私怨も含めて、今回は苦労役はゾロの仕事ととなった。
今回は、ゾロはアカリの変わりに海中にいるポケモンで、アカリの研究に協力してくれるポケモンを探すことになった。
ゾロはポケモンであるため、アカリに比べれば非常に身体能力が高い、
が、それでもただの陸生ポケモンであるゾロにはかなりきつい仕事だ。
『うん……これ完全にアカリ怒ってるな……』
それを確信したゾロは文句も言わずにラプラスの上から海に飛び込んだ。
常にアカリと行動を共にしているゾロならばアカリが何を望んでいるのかは説明されなくても分かっている。
そのため、少しアカリたちから離れた所で海中を覗き込んだ。
以前同様、透明度がかなり高い水中はかなり見通しが良かった。
とはいえ、海底付近は流石に見えないため、狙いを定めて、息を吸えるだけ吸い込んで潜水を開始した。
以前はご紹介できなかったゾロの泳ぎの腕前はなかなかのもので、潜水する際に勢いよく潜るのならドルフィンキックという泳法が優れているため、ゾロも美しいフォームでズンズンと潜っていく*2。
この泳法の欠点といえばやたら体力を消費することだろう。
そして海底付近に着くと、バタ足だけでゆっくりと眺めるように岩場の周りや、遠くの方も確認する。
遠くの方にそれらしき影を確認できないのを理解した時点で、泳ぎ方をできる限り体力を消耗せず、辺りを確認できる水中での平泳ぎにする。
ぐるりと大きな岩場の周りを泳ぎ、岩場の中へと岩伝いに進んでいく。
が、何も見つからず、ゾロは一度息継ぎのために海面まで浮上した。
一度の潜水の時間はおよそ5分ほど。
一切、遊泳技術を鍛えていないゾロが人間の熟練した人と同等かそれより僅かに劣る程度の泳ぎを見せるのだから、やはりポケモンの身体能力の高さは恐ろしいものだ。
一度ゾロは休むためにアカリたちの所に戻り、よじ登ろうとした。
「協力してくれるポケモンは見つかったのか?」
とラプラスの甲羅に手をかけていたゾロにアカリは言い放った。
『休ませてくれすらしないのか……』
心の中でそう思ったが、今のアカリに口答えでもしようものなら鼻っ先に正拳突きを貰そうだったので、仕方なく反転して他の場所を探した。
もう一度今度はゆっくりと体力を消費しないように潜っていく。
休憩できないことを念頭に置き、できる限り緩やかに動く。
そしてついに岩場に一匹のメノクラゲを見つけた。
ゾロはゆっくりと近づいてゆき、メノクラゲがこちらに気が付いた時点で動きを止め、手を動かしてそのポケモンがまず、好戦的かどうかを確認した。
するとメノクラゲは彼の振る手をじっと見つめるだけで、攻撃したり逃げたりをしようとはしなかった。
そこでゾロは両手をメノクラゲに向けて開き、ゾロのジェスチャーに集中させた。
『一緒に上まで上がってきて欲しい』
とゾロは精一杯のアピールをする。
するとそのポケモンはジェスチャーの意味を汲み取ってくれたのか、上へと浮上してくれた。
それを追いかけるようにゾロも自分の浮力に任せてゆっくりと浮上する。
既にゾロの中では『できる限り体力を消費しない』の優先度が高くなっており、『アカリがどんなポケモンを求めているのか』は二の次になっていた。
海面まで浮上するとゾロは大きく息を吸い、呼吸を整えた。
「やあ。僕を上に呼んだけどどうしたんだい?」
どうやらかなりそのメノクラゲは友好的な上に紳士的なようだ。
どこか品格溢れる緩やかな口調で彼はゾロにそう訪ねた。
「実はな……アカリ……俺のトレーナーの実験に協力して欲しいんだ。頼めるか?」
息を整えながらゾロがそう聞くと、彼は少し驚いたような反応を示した。
「なるほど……。実験の内容にもよるが、基本的に頼まれたことは断らない主義なのでね。その内容を聞かせていただけるかい?」
少しだけ悩んだ後、メノクラゲは変わらず爽やかにそう聞いた。
ゾロは自分が分かる範囲で、アカリの研究に関して説明する。
すると、怪しい研究ではないことを理解し、その素晴らしい研究の意義を理解してくれたのか、そのメノクラゲは快く承諾してくれた。
そこでゾロはそのメノクラゲについてくるように言い、アカリの元まで引き返した。
「成程、そのメノクラゲが私の相手か……ゾロ、ちょっとこっちに来い」
メノクラゲを紹介したゾロはアカリに呼ばれ、ようやく海中から出ることができた。
ずぶ濡れの体をブルブルと振って今すぐにでも水を少しでも落としたかったが、そんなことをすればアカリがずぶ濡れになるためしなかった。
そしてそのままアカリの横に立つと、アカリは静かにゾロの方を振り返り
「お前は私が触手姦を望んでいるとでも思ったのか! 少しは女性の心境を考えろこの大馬鹿者!」
……ながら初公開の回し蹴りをゾロに喰らわせて、反対側の海に落とした。
ここ最近はアカリもかなり女性らしくなったとゾロも思っていたのでこの回し蹴りはかなり聞いたのか、水死体のように浮かび上がっても身動き一つしなかった。
『いや……もう……。研究に協力してくれるんだからいいじゃん……』
心の中では愚痴っていたが、彼も心の中に疚しい隠し事があるので反論するわけには行かず、ただただぼーっと浮かんでいた。
当たり前だが、蚊帳の外のメノクラゲとラプラスは何が起こったのかよく分からず、ただ唖然としていた。
その後、ゾロは折角、協力してくれると言ったその紳士的なメノクラゲに謝り、精神的に重たくなった体でもう一度海のポケモン探しに出かけた。
その後も近場の海で何度か潜るが、どうにも見当たらず、仕方なくさらに沖の方まで泳いでいった。
息を整えてもう一度ゆっくりと潜水を開始する。
深い海のそこすら見えない深海を見て、ゾロは少しだけそこに恐ろしさを感じたが、できるだけ気にしないようにしてポケモンがいないか探して回る。
すると、少し深い所にポケモンがいるのを見つける。
ゆっくりと潜水して行き、そのポケモンの近くまで寄る。
そこで自分の存在に気付かせようとしたが、そのポケモンがブルンゲルであることに気が付き、それ以上接近するのを止めた。
もし、こんなポケモンを連れていけば今度は回し蹴りではすまないだろうという考えだった。
が、そう思ってゾロが浮上を開始するよりも早く、ブルンゲルはゾロの足を絡め取り、ゆっくりと下降を開始していた。
『あ……やばい。これ死ぬパターンだ』
と思ったゾロだが、ずっと泳ぎ続けていて疲れていたため、少しの間何もできなかった。
だんだんと深くなっていき、離す気配が一向になかったため、ゾロは力を振り絞りブルンゲルにシャドーボールを喰らわせた。
するとブルンゲルが一瞬ひるんだので、その隙に急いで海面まで逃げた。
「ぶはぁ……!? ゲホッ! ……死ぬかと思った」
そのまま少しの間、波に漂いつつ、体力を回復しようとしていた。
しかし、海は思っているよりも生易しい場所ではない。
上からは太陽が照りつけ、その熱を凌ぐための日陰も存在しないためじりじりと体力が奪われていく。
さらに波の揺れは意外と体にストレスを与えるものだ。
その上、ゾロは海上以外では休憩することができないため、体をしっかり休めることもできない。
極めつけは、泳ぐという行為は意外と体力を使う。
しかし、そこで消費したカロリーや水分を補給する方法が存在しないということだ。
これ以上はもしもがあった時に確実に死んでしまうと思い、ゾロはアカリたちの側まで戻ってきた。
そこでもう一度海底付近を捜す。
すると今度は海底に一匹のヒトデマンを見つけた。
ラストチャンスと思い、ゾロは一気に潜水する。
そしてそのヒトデマンにもジェスチャーをしてみせた。
するとヒトデマンはゾロについてきてくれた。
説明する気力も残っていなかったゾロは急いで、しかし疲れが酷かったので背泳ぎでゆっくりと戻っていく。
そしてアカリにそのヒトデマンを見せる。
「ゾロ……。言っておくがヒトデマンは性別不明だぞ?」
もう既に精根尽き果てたゾロは何を言われてもプカプカと浮いているだけだった。
それを見てアカリは少しだけ溜め息を吐き、
「これで少しは私がどんな思いをしていたのか分かったか? それと悪いな、少しやりすぎた。今日はもう帰ろう」
そう言った。
それを聞いてゾロはゆっくりとラプラスの甲羅に手を掛けるが、水をたっぷりと吸って重たくなった体を持ち上げられるほどの体力がもう残っていなかった。
レポート09:たまごタイプ すいちゅう3
翌日、まだ昨日の疲れが残っているゾロはテント待機となり、今度はアカリ一人で海へ向かった。
その間にゾロも自分にできることはないか考え、重い体を引きずりながら海の家に行き、お得意のイリュージョンを使って人間に化け、釣竿を一式借りた。
ポケモン捜索のついでに、たまには新鮮な食材でもあれば彼女も機嫌を取り戻すかもしれないと思い立ち、釣りに出かけた。
釣りのポイントはアカリたちが飛び込みに使っている岩場から、そう離れていない場所だ。
実を言うと、ゾロが人間のふりをして釣竿を借りに言った際、ゾロが一切喋らないので対応した店員が、ゾロにこの場所を教えていた。
元々釣りのスポットとしてはこの辺りでは有名な場所だったらしく、ゾロは言われるままにそこで座ってゆっくりと釣りをする事にした。
――その間、アカリは今回ラプラスを返し、またゴルダックを借りていた。
「グワッ!」
見たところ、アカリに対して特に反応もなかったため、以前のゴルダックとは違うゴルダックのようだ。
そのため、アカリはそのゴルダックにもアカリの目的を説明し、海へ飛び込んだ。
アカリがゴルダックを選ぶ理由は、アカリを連れたままでも高速でかつ安全に泳いで回ることができるからだ。
基本的にポケモンたちは、種族や属性的か、個人的に泳げないポケモン以外は泳ぐことができる。
だが、波乗りを覚えているポケモンでなければ人間を連れたまま高速で泳ぐ術を知らない。
水生ポケモンなら全てがそれぐらいできそうだが、人間を『安全に』連れたまま泳ぐことはできない。
それと、ゴルダックはダイビングも一緒に覚えることができるので、安心してかなり深い海域まで行くことができるからだ。
どんな場所にアカリが求めているポケモンがいるのかは分からないため、何処にでも行けるように準備は用意周到に行っていた。
アカリが借りた酸素ボンベもそのためにできる限り幅を取らず、かつ長時間使用できる物を選択した。
そして今回は、前回の反省点としてウェットスーツを着込まず、水着にしていた。
そのため体温の消耗は早くなるため、あまり岸からは離れずに近場を探し、すぐに体温が落ちたら岸に戻って体を温められるようにした。
そうして海と岸とを往復しながらポケモンを探した。
岩場や岸を探し回っていたため、案外ポケモンは多くいたのだが、アカリとしてはその辺りのポケモンはお気に召さなかったようだ。
というのも、ウデッポウやキングラーのような甲殻類に似たポケモンや、カラナクシのような軟体生物似のポケモンなどだったため、アカリでなくても基本的にこういうポケモンは性行為をするということを前提に考えれば嫌にもなるだろう。
かといって、魚タイプのポケモンは勿論交尾が可能なのだが、アカリが勘違いしているためスルーしていた。
そうなると水中にいるポケモンで、アカリが望むようなポケモンがいる可能性は非常に少ない。
焦る必要はないのだが、アカリが選り好みをするのであればこの研究はできる限り急がなければならないだろう。
しかし、雲一つないほどの晴天だったとしても元々水生でないアカリは容赦なく体温を奪われていくため、次第に岸で体を温めている時間の方が多くなっていた。
『もしかして昨日、私がしたことはかなり酷いことなのではなかったのか?』
冷え切った体を温めながらアカリはふとそう思っていた。
先日はかなり怒りが溜まっていたため、後先考えずにそうしたが、いざ自分も同じ立場になってみると恐ろしく辛いことを実感した。
ここでいくら体力があるとはいえ、ポケモンであるはずのゾロが今日全く動けなくなっていたことを思い出し、アカリは蒼褪めた。
『もしかして私は今までで、一番嫌われたのではないのか?』
体操座りのまま膝を抱いてアカリは心底不安になっていた。
もしかすると、今この瞬間にもゾロは何処かへ行ってしまっているかもしれないと不安で仕方がなくなった。
日はおよそ中ほど。
いても立ってもいられなくなったアカリはゴルダックをボールへと戻し、急いでテントまで戻った。
そのままゾロがいるはずのテントへアカリは駆け込んでいった。
「ゾロ! 悪かった! 昨日は……」
そこでアカリは言葉を失う。
そこにはもぬけの殻となったテントだけがあり、ゾロの姿は何処にもなかったからだ。
気が付けばアカリの頬を涙が伝っていた。
そうなってしまったのは自分のせいだと思い込んだからこそ、もうどうしようもないと確信したからだった。
恐らく、昨日の可愛いフローゼルと何処かへ行ってしまっただろうと思い込んでいたアカリは、膝から崩れ落ちて泣いていた。
「ゾロ……ゾロォオ!!」
「ガウ?」
泣きながら叫ぶ彼女の真後ろに彼がいることにも気付かずに……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「悪かった……。あんな事をしたが、好きなのは君だけなんだ……愛せるのは君だけなんだ」
アカリはそう言い、ゾロに全力で謝罪をしていた。
「うん……。いや、俺も悪かったし、そこまで謝る必要ないけどなんで俺はさっき殴られたんだ?」
ゾロはそう言ってアカリを許していた。
が、先程泣いている最中に後ろから声を掛けた際、ゾロはアカリから振り向きざまの右フックをもらっていた。
アカリとしてはゾロに泣き顔なんて見られたくなかったからだったのだろうが、それで殴られた理不尽さの方がショックが大きかったようだ。
そこでアカリはその分も含めて必死に謝罪と自分の気持ちを正直に伝えるのだが、ゾロとしてはアカリと二人きりならそれで構わなかったのだが、横に見つけたポケモンも一緒にいる状態でそんな全力の愛の宣言をされると恥ずかしくて仕方がなかった。
そのゾロの横にいるポケモンはアバゴーラというこだいがめポケモンだった。
何故、このアバゴーラがこの場にいるのかというと、話はおよそ3時間前に戻る。
その頃ゾロは、調子良く魚を釣っていた。
流石にいい釣りスポットと教えられただけはあり、ゾロ以外にも沢山の釣り人がその場にいた。
そんな中に混ざって釣りをしていたが、既に化ける必要もないのでイリュージョンは解いていたが、ゾロ以外にポケモンで釣りをしているポケモンは存在しなかった。
かなり浮いている上に、釣りをする珍しいゾロアークがいると噂になってしまったのか、気が付けば釣り客たちはゾロアークを見に寄って来ていた。
『釣りしてるんだから静かにしてくれよ……』
と心の中で思ったが、ゾロが珍しいのは当たり前だったため、イリュージョンを解いたのは失敗だったと痛感しながらそのまま釣りを続けた。
長く経てばゾロもただの釣り客だと分かったのか、元々釣り人のため釣りの方が大事だったのか、意外と早く散っていった。
ようやくゆっくりと釣れるようになり、小さな魚をちょいちょい釣っていた。
ここで一つ不思議なのが、何故ゾロが釣りを知っているのかということだった。
ポケモンならば体を使って獲物を獲るのが普通だ。
そのためゾロのように道具を使って獲物を獲るようなことはほとんどない。
なら何故ゾロは釣りをするという事を知っていたのかというと、昔のゾロのパートナーが釣り好きだったからだ。
何もない日はよく、ゾロとトレーナーは川釣りや海釣りに出掛けていた。
そこでゾロはトレーナーから渡された竿を器用に長い爪で持って、釣りを一緒に楽しんでいた。
結構な回数をトレーナーと一緒に釣りに行っていたので、ゾロも十分に釣りのコツは掴んでいた。
そのため、今回のように疲れていて体が動かせないような時には釣りの方が体に掛ける負担が少なかったので良かった。
ゾロ自身も釣りを行うのは久し振りだったが、普段からかなり魚が多いポイントなのか、それでもかなりの魚が釣れていた。
クーラーボックスにそこそこの数の魚が獲れたため、ゾロは一度テントに戻ろうと思い、立ち上がった。
そして、ポケモンであるゾロがいい感じに魚を釣っていたため、帰る時には小さく拍手の音が聞こえ少しだけ気分が良かった。
クーラーボックスを肩に掛け、竿を手に持ち浜辺を辿ってテントまで戻ろうとしていると、そこに一匹のアバゴーラがいた。
『何だ? あれ。甲羅干しか?』
ゾロの視線の先にはアバゴーラと思われるポケモンが殻に篭った状態で浜辺にいた。
しかし、どう見てもそのアバゴーラの甲羅は仰向けになっているようだった。
そこで一応気になり、ゾロは声をかけてみる。
「そこのアバゴーラどうしたんだ? 甲羅干ししてるようには見えないが……」
すると、ゾロの声に気が付いたのか、中から手足を出してワタワタと動いた後、諦めたのか首を出して
「すみません! 助けてください! こけてしまって立ち上がれないんです!」
そうゾロに訴えかけた。
見たところ、かなり起き上がろうと努力していたのか、アバゴーラの周りの砂は掻き分けられていた。
それを見てゾロは少し考え込んだ。
「うーん……起こしてやりたいが俺も今、体が……」
ゾロの今のコンディションでは正直なところ、アバゴーラを引っくり返せる気がしなかった。
それで悩んでいたのだが、ゾロがそのまま何処かに行ってしまうと思ったのか、アバゴーラは必死にバタバタとしながら
「待ってください! 行かないでください! 起こしてくれたらなんでもしますから!」
それを聞いてゾロはピクンと耳を動かした。
「ほう? なんでもしてくれるのか? なら、何が何でも助けなきゃな」
ゾロがそう言い、アバゴーラに近づいてきたのを感じて、アバゴーラは少しだけ嫌な予感がしたが、素直にお礼を言った。
ゾロはアバゴーラの頭側に回り込み、全身を使ってアバゴーラを持ち上げた。
半分ほど持ち上げたところでアバゴーラも足が届いたのか、一気に軽くなった。
後はグッと押してやると、まっすぐ立てたようだ。
「ふぅ~……助かりました! なんとお礼を言っていいか……」
まっすぐに立てたアバゴーラは振り返り、ゾロに対して深々とお辞儀をしてそう言った。
思っていた通り、ゾロの体にはかなり負担がかかり、昨日の今日ということもあって体中が痛んだが、悟られないように笑顔で答えた。
「いいっていいって。それよりさっきの話、必ず守るよな?」
そのままゾロは笑顔でアバゴーラにそう聞いた。
アバゴーラの顔が一瞬だけ強張るが、自分から言い出したことだったので、快く承諾した。
そこでゾロは新鮮な魚の手土産に、更に追加でアバゴーラをアカリへの手土産にテントへ戻っていった。
ここで話は先程の時間まで戻る。
そこでゾロは恥ずかしい思いをしながらアカリの謝罪をひたすら聞いていた。
こちらもかなり耐え難いが、横で他人の惚気話を聞かなければならないアバゴーラは更に拷問だ。
しかし、ゾロたちの言葉はアカリには伝わらないので止めたくても彼女の気が済むまでか、ゾロの鳴き声をアカリが許してくれたと解釈するまでは待つしかなかった。
それから更に5分後、アカリの謝罪はようやく終了して、アカリもゾロの横にいるアバゴーラの存在が気になり始めたようだ。
「そういえばゾロ、そのポケモンはどうしたんだ?」
ようやく質問されたので、ゾロもアカリの実験のために連れてきたポケモンであることを必死に身振り手振りで伝えたが、いまいち伝わりきっていなかったようなのでゾロはテントを出て行くことにした。
そうすれば何故このアバゴーラがここに連れてこられているのかアカリが気付くだろうと思ったためだった。
テントを出たゾロは今日は疲れもあったため、それほどテントから離れていない日当たりのいい場所で少しの間、昼寝をする事にした。
――その頃、アカリは何故ゾロがテントを出て行ったのかよく理由が分かっていなかった。
恐らく、このアバゴーラはゾロが連れてきたのだろうということはアカリも分かるが、アカリとしてはアバゴーラと交尾するというのは少し抵抗があった。
「もしかして君は私の研究に協力してくれるのか?」
一応そのアバゴーラに聞いてみると、少し間はあったものの頷いた。
そこでアカリは悩む。
昨日、あれだけのことをしたため、ゾロがポケモンを連れてきたこと自体予想外だった。
そのため、ゾロが連れてきたということもあり、なかなか断るに断れなかった。
一度アカリはアバゴーラに待ってもらい、ポケモン図鑑を使ってアバゴーラのたまごタイプを調べる。
そこでアバゴーラが二種類の、しかも水中に関するたまごタイプを持つことを知る。
アカリにとって水中のポケモンは苦痛でしかない。
そのため、今度は水中1と水中3に分類されるポケモンの項目を絞り込んで見た。
「よろしくお願いするぞ! アバゴーラ! 君は救世主だ!」
途端にアカリはアバゴーラの手を取り、そう言った。
ポケモンのたまごタイプですいちゅう3の部類に入る栄物は、基本的に化石から復元されたポケモンか軟体生物や昆虫のような無脊椎動物に近い形状のポケモンばかりだ。
無論、アカリがその中から選択したポケモンは一番マシに思える部類の昆虫か復元ポケモンだ。
だが、昆虫タイプのポケモンもサソリのような見た目であり、今近くにいないというのもアカリが少しだけ敬遠した理由だ。
目の前にいるアバゴーラは所謂復元ポケモンで、今でこそ普通に生きているが、ごく最近までは生きてすらいなかったポケモンだ。
そんな化石ポケモンの他も調べてみたが、アバゴーラ以外でまともそうなポケモンが少なかったため、アカリの中で妥協するか否かの考えが、アバゴーラしかないという考えに変わった。
急にアカリに手を取られ、キラキラした瞳で見られたため、思わずアバゴーラは現時点で自分が何をされるのかは分かっていなかったが、その表情に思わずドキッとした。
アバゴーラは少しだけ実験に協力してもいいかと思えたが、ここでアカリが更に実験の詳しい説明をした。
アカリの行っている実験は、『人間がポケモンの子供を産むことができるのか』というものだった。
それを聞いた時点ではよく理解していないアバゴーラはきょとんとしていた。
正確にはアカリとしては、人間がポケモンの子供を産めるよりも、更にその先の結果が出ることが望ましかったが、急激な環境の変化*3でもない限り生物の進化というものは起こりにくい事を知っていた。
そして、生物学としての進化とポケモンの進化が全くの別物であることも、ポケモンであるアバゴーラのためにわざわざ説明した。
生物学における『進化』とは、環境の変化や、状況の変化に応じてその現在の世代では対応できない変化を経験した親が、その種の次の世代に情報を遺伝子として渡し、対応、適応することができるようになることを指す。
難しく言ったが、簡単に説明すると、パソコンや携帯電話のバージョンアップだと思ってくれればいい。
もっと分かりやすく言うのなら、○phone5がi○hone5Sになることが進化だ。
ここまで説明した時点で気付いているとは思うが、ポケモンの進化は全て一世代、一個体の中で完結している。
そのため、生物学的に見るのならポケモンの進化とは、『進化』ではなく、『成長』に当たる物だ。
ただ、その容姿が大きく変わるため、差別化するためにそう呼ばれたのだろう。
そして、アカリがこの研究を始め、実験の旅に出た理由にもなった『シンオウ神話』には、その真偽は定かではないが、人とポケモンがもっと近しい存在であったことが綴られている一節がある。
もしそれが本当ならば、元々進化していった生物の根本が近い生物ならば、時が経ち、大きく分かれて進化を遂げた人間とポケモンも種族としては近い可能性があることになる。
進化の簡単に説明できない所は、必ず全ての性能が進化することによって前の世代よりも強化されたというわけではないということだ。
ip○one5が出て、更なる進化を期待していたら、iph○ne6が出て、がっかりしたような感覚だ。
進化とは、前の世代の情報から必要なものと不要なものを想定し、不足していた部分が進化し、不必要だと思われた部分が退化するようなものだ。
ipho○e6が性能面で言えば今までよりも更に良くなったが、持ちにくく、簡単に曲がってしまうようになったというのも進化と退化といえるかもしれない。
とりあえず引き合いに出したが、iphon○6ユーザーの皆様に先に謝罪しておこう。
話を戻すと、つまり以前は人間とポケモンが近い存在である必要があったが、進化するうちにそれが不要だと認識され、それぞれ別の方向へ進化したのならば、またアカリのように必要だと感じた人間が自然に進化を促せば、再度そういう時代が来るかもしれないということだ。
しかし、あくまで仮定の話であり、確証はないため、その第一段階として人間がポケモンを産むことが可能な近い種族であるのかを確認しようとアカリは考えた。
だが、ポケモン内でもたまごタイプと呼ばれる種類分けがあり、たまごタイプの違うポケモンではタマゴが生まれない。
そのため、どのタイプのたまごタイプが最も人間との親和性が高いのかを調べるために今回の実験を行っていた。
「つまり、君には私と交尾してもらう」
学者らしく、研究のこととなると長々と説明したくなるが、小難しい言葉が多くて理解がしにくい話をアカリは、分かりやすく何をしてほしいのかわざわざ一番最後に簡潔に説明した。
そう言われた時点でアバゴーラは非常に恥ずかしがっていた。
というよりは興奮してしまったのか、股間の辺りを手で隠し、目を泳がせていた。
勿論アカリはそれを見逃さない。
「なんだ、やる気十分のようだな! ならさっさと終わらせてしまおう!」
そう言い、アカリはすぐに服を脱ぎ捨てた。
未だたじたじとしているアバゴーラの手を無理矢理どけさせ、やはり興奮で伸びてきていたアバゴーラのモノをまじまじと見つめた。
腰というよりは、それよりも更に下の方から青い体色と正反対な赤色のモノが伸びてきていた。
アカリはそれを優しく撫で
「私の方が体が大きいからな、リードしてやろう」
そう言い、ようやく立てたというのにアバゴーラはまた押し倒されてしまった。
そのままアカリは上に乗り、撫でて少しずつ元気になるアバゴーラのモノを膣内へ挿入した。
「んっ……。思ったよりも太いな……」
中に入れたアカリはそう感想を漏らした。
亀は体格からするとかなり大きなペニスを持っている。
これは甲羅という防御には素晴らしいが、自由な動きを制限する物のために進化した証でもある。
できる限り抜けてしまわないように、非常に太くて長い。
アカリがアバゴーラの上で少し腰を動かし始めると、アバゴーラには素晴らしい快感が押し寄せていた。
それに連れてモノも最大まで伸びていこうとする。
そのままゆっくりと伸び続けるが、途中でアカリの一番奥まで届いてしまった。
だが、それでも伸び続ける。
思っていたよりも長いアバゴーラのモノにアカリは心底驚いたが、他のポケモンたちと違ってアバゴーラは名前に似合わず大人しくしていたのですぐに腰を上げた。
大体、亀のペニスは体の半分ほどの長さがある。
アバゴーラの上に立った状態のアカリに、アバゴーラのモノは入っていた。
そこで完全に勃起した状態になったのか、それ以上伸びることはなかったためアカリも腰の動きを再開するが、アバゴーラは寝たまま、アカリは立っているという不思議な構図が生まれた。
ジュプッジュプッと卑猥な水音を立てて、棒のように伸びるアバゴーラのモノがアカリの中に出たり入ったりしていた。
「はぁっ……! 助けてもらった上に……こんな極楽まで味わえるなんて……!」
アバゴーラはそんなことを言いながらひたすら快感を味わっていた。
馴染み始めた辺りでアカリは腰の動きを早め、一気にアバゴーラに快感を与えていく。
するとついに耐え切れなくなったのか、アバゴーラの方が、腕や足を反らせてビクビクと震えた。
太い棒のようなモノを伝って精液がアカリの膣内へと注がれていく。
そこでアカリも動きを止めたが、かなり長い間、アバゴーラの射精は続いた。
ようやくアバゴーラのモノは力を失い、ゆっくりと倒れるように抜けていった。
勿論それだけのモノが入っていたアカリの膣からは、抜き放たれると同時に精液も溢れ出ていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後、かなり時間が経っていたが、疲れが溜まっていたゾロは自分から目を覚ますことはなかった。
交尾を終えたアカリがやってきて、ゾロの体を揺すって起こすと、
「ゾロ。寝起きですまないが、アバゴーラを起こしてくれないか? 私では無理だ」
とアカリはゾロに伝えた。
テントに戻ってみると、そこにはまた仰向けに倒れたアバゴーラの姿があった。
アカリでも起こせそうに見えるが、身長に見合わずアバゴーラはかなり重い。
アカリの力では起こすことも敵わず、ゾロに助けを求めた。
その後、ゾロは夕食のために取ってきた魚をアカリに見せた。
するとアカリは非常に喜び、
「海の幸か! そういえば海に来たのに食べていなかったな……。 ゾロ、今日は全部君のお手柄だな」
そう言ってゾロの頭をワシワシと撫でた。
釣り人たちにもアカリにも褒められたため、ゾロとしては昨日の一件も忘れられるほど嬉しかった。
その日は、アカリとゾロ、さらにアバゴーラで海の幸をふんだんに使った豪勢な夕食となった。
焼き魚にアラ汁、刺身と今日獲れた魚を全て使い、かなりの量をアカリが腕を奮って並べた。
「いやぁ、最初はどうなることかと思いましたけど、助けてもらった上に食事まで振舞ってもらって、まるで私が浦島太郎みたいですね!」
と、料理を美味しそうに食べながらアバゴーラはゾロに言った。
ゾロは焼き魚を一匹、ムシャムシャと食べた後、
「それだとお前、この後爺さんになっちまうぞ?」
とゾロが突っ込んだ。
するとアバゴーラは笑い、
「何言ってるんですか、私既に結構な歳ですよ?」
そう言い放った。
そこでゾロが固まる。
亀は新陳代謝が遅いため、非常に高齢まで生きる生き物だ。
ポケモンの場合でもこうなるわけではないが、アバゴーラがかなり小さく、見た目若く見えたため、アバゴーラがそんな歳だということに気が付かなかった。
「すんません。完全に年下だと思ってました」
元々トレーナーの元で生活していたゾロは急いで頭を下げたが、アバゴーラは特に気にいている風ではなく、許してくれた。
――翌日、アバゴーラとも別れを告げ、体の疲れも回復したゾロはアカリに今日、どうするのかを聞くために待っていた。
すると、アカリは珍しくゾロをギュッと抱き
「悪かったな。お前はもう分かってくれてると思うが、それでも言わないと私の気が済まないんだ」
そう言った。
ゾロもそれに答えるようにアカリを優しく抱いて、頭を撫でた。
「グゥゥ……」
なんと言ったかは分からなかったが、アカリにはそれが『俺も悪かった』と言ったように聞こえた。
アカリは少しだけ離れ、
「そうだな、今日は君が何をしたいのか決めるといい。いつも私が決めているからな」
そう笑顔で言った。
すると、ゾロはゆっくりとその場を離れ、そこにあるテントを畳んでいった。
そしていつものように荷物をまとめると
「ガウ!」
そう元気に吠えた。
決して先を急ぐ旅ではない。
アカリも今日はゾロの好きにしていいと言った。
だが、ゾロはアカリとすぐに次のポケモンを探しに行く旅に出ることを選んだのだった。
ゾロのその行動の本心は分からない。
だが、少しだけ微笑むと
「よし、なら次は……」
そう言ってまた次の目的地を決めていた。
だが、アカリにはそのゾロの心境は判ったような気がした。
雲一つないの絶好の海日和に、海でもう一日遊ばずに旅に出た二人は、とても楽しそうだった。