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漆黒の双頭“TGS”プロローグ

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作者……リング


 エレオスとの対談から数週間後。悪いことをやってお金を稼ぐ行為を有言実行しているレアスは、数枚にわたる書類を眺めながら、喜々として他人の裏のプライバシーを覗きこんでいる。

「う~ん……チャットってばこんなにスキャンダルがあるとは……これは、プクリンのギルドの名折れだね♪」
 チャットというのは、プクリンのギルドの親方ことソレイス=プクリンの一番弟子で、親方の引退と共に2代目親方のイスを任されたのだが、レアスにとっては、皆をまとめる資質は親方の足元にも及ばないと認識されている。

「苦労して調べた情報だからな……って言いたいところだがあんまり苦労しなかった。本当にこんな大金もらっていいのか?」
 ここは、ドラピオンが経営する喫茶店『(クロス)-poison』。レアスが海藻入りの塩水を啜るその傍らで、樹液を混ぜた紅茶を啜りながら、ノイは報酬を数えていた。
 それは、あまりにも量が多いから何かの間違いじゃないかと疑いたくなる額だった。

「いいのいいの。僕は欲しいモノを手に入れるためにお金の糸目を付けるつもりはないんだから。それに、金とプラチナの交渉も上手くやっているみたいだしね。そのボーナスもいろいろ入っているんだよ。
 よ~し、チャット=ペラップは早速親方のイスを蹴りとばして、僕が三代目親方、レアス=マナフィだぁ♪」
 相も変わらず恐ろしいことを簡単そうに、子供のように言う。それは天真爛漫な子供ほど怖いものはないなと、ノイに再確認させた。

「親方のイスに座ったら……まず何をするかい?」

「君ならどうする?」
 尋ねられたレアスは、ノイの方へ無茶振りをして、反応を楽しもうと考えた。

「辞退だ」
 しかし、レアスの思惑とは裏腹に、パッと聞かれてパッと答えたノイ。
 いつもレアスに呆然とさせられているノイだが、今日ばかりは一矢報いることが出来たようだ。

「あれぇ~~? テッカニンは頭の回転まで速かったんだっけ?」

「そうじゃないと、危険な仕事なんてできねぇよ……俺の情報屋は結構危ないことだってやっているんだぜ?」
 レアスは納得したように『あはぁ』、と相槌を打つ。

「それでね、君の質問の答えだけれど、僕はまず、姉妹ギルドの提携を結んでギルド同士の繋がりを強めたいと思うんだ。
 ノイ、何か成長しそうな良いギルドない? 僕の候補は、今のところメジャーなこんなところなんだけれど……」
 レアスはそう言って食卓におかれた紙のナプキンに、荷物をあさって取り出した筆を使って7つのギルドの名を書き記した。
 もちろん、イスに座ったまま書くことが出来るような高い身長では無いので、机にそのまま座って……である。

「ふむ……なんか、いろいろと仕事に見合った以上の金を貰って悪いからな。情報屋としてのアドバイスだ。もちろん無料でな。
 こいつとこいつは切れ。裏じゃ黒い噂が絶えないからな。あと、ここは最近業績が落ちている……皆、痩せた土地を捨てる流れが出てきているんだ。
 そうだな……俺がこのリストに加えるとしたら……チーム『かまいたち』って知っているか?」

「ん? あぁ、知っているよ。ザングースがリーダーでサンドパンとストライクのいる探検隊でしょ? 僕たちの両親の依頼を横取りしようとしたり、星の停止に巻き込まれて石像になっていたりしたそうだけれど……
 星の停止の危機から救われた後は、打って変わって頑張り屋なチームになっていたそうだよね……サンドパンが僕のことも可愛いって褒めてくれたとか……キャ♪
 確か……暗夜の森に渡ったって聞いたけれど……」

「なんだ、良く知っているじゃないか」
 レアスは、へへ~と言いながら舌を出して得意げな表情をする。

「奴らは元々、土地の開拓が得意な奴らだったんだが……暗夜の森は虫タイプの楽園だそうでな。俺も体が限界になったら行ってみたいんだが、それは私見だ。
 兎に角、そこを、ストライクのエッジって奴が偉く気に入っちまってな……今ではリーダーがエッジになりかわって村を作っている。
 名前は……スイクンが時々尋ねに来るからスイクンバイレージだとよ……。そこに、カマのギルドって言うギルドが最近できた。
 今のところの街の人口は70人ちょっと。現在は暗夜の森で無限に採集出来るカイコから採取できる絹織物の輸入や野生のオリーブの輸出……間違えた。
 絹織物の輸出とオリーブの輸出……だな。それで、きちんとしたギルドの建物を建てる資金を獲得しつつ、傍らで依頼を受けているって感じだ。
 まだ、ギルドの仕事はそれだけで成り立つほどの仕事は来ないんだってさ……」

「それが期待のギルドなの?」
 まだ、小さすぎてどれほどの可能性があるかも分からないギルドだ。実際に見てきたというのなら情報屋の勘を信用しなくもないが、人づてに聞いたことであるために信憑性は薄い。
 しかし、ノイは記憶を絞り出すと、抑揚をつけない淡々とした声で語り始める。

「……ギルドメンバーは現在7人。
・エッジ=ストライク
・スティング=サンドパン
・マリオン=ザングース
・ラナエル=トゲチック
・ルビー=レディアン
・テッド=ニョロトノ
 ……つまり、『かまいたち』と『ハッピーズ』のメンバーがそこに移り住んだわけだ……後もう一人のギルドメンバー……誰だと思う? かなり意外な人物なんだ」

「サムデラ=ハッサム? あの、氷漬けにされていた、かつての有名探検隊……」

「不正解だ……そいつの名前は、アズレウス=ラティオス。つまり、守護神と呼ばれ、それが住みつく街に無限の安寧を与えるポケモンだよ……
 俺が注目したくなる理由も分かるだろう?」

「あの子かぁ」
 レアスは目を輝かせて、納得した。それと同時にアズレウスで大丈夫なのかなぁという不安もあったが、それは口に出さないでおいた。

「知り合いか?」
 意外そうな顔をして、ノイは訝しげに聞いた。

「ん~~……昔ちょっとね。かまいたちのサンドパンのこともあるし、ちょっと考えてみよっかな? いや……かまいたちはかつてプクリンのギルドに籍を置いていた探検隊だ。
 親方になった僕がお祝いに行っても何の違和感もないじゃない」
 そうだ、きっとそうじゃない!! などと、はしゃぎまわりながらレアスはノイにちょっかいを出す。


 今となってはものすごく分厚くなったカマのギルドに関する日記は、この日から始まった。
To be continued……


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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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