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深紅の鎌.四

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・深紅の鎌.四



―1― 合流

「見えてきた!」
ゼネラ国からソルベ国目指して飛ぶ事ニ時間位経った時、ようやくゼネラ国軍が少し先を進んでいるのが視界に入った。
「随分と追いつくまで時間が掛かったわね」
「そうりゃそうだ。ゼネラ国の軍は皆、翼があるからな」
「分かってるわ」
そう会話しながら俺達は空を飛ぶ軍との距離をどんどん縮める。
軍の数はざっと見た所5000は超えているだろう……
「すごい数だなライ殿……」
「ああ」
そして俺とルチは飛行中の軍の中を進み続け、軍の一番先を行くカイリューに話しかけた。
「見た所、今お前が軍を率いているようだが?」
「そうです。私が王にライ様達が来るまで軍を率いるように言われた者です。
つまり、今からはルチ様が軍の指揮をする事になります」
「……ルチ」
「分かってるわ、皆、ソルベ国に向けて全力で羽ばたいて!」
ルチの言葉と共に全力飛行の合図の角笛が辺りに鳴り響き空気を振動させる。
それと同時に軍の兵士達が一斉に雄叫びを上げてスピードを上げる。
俺達もスピードを上げる。
「ユリ、各国の軍の状況は?」
「グランド国は先程到着……レイヲン国は今、到着したそうです……」
「そうか……丁度いい位かな?」
ソルベ国が見えてきたのを見ながら俺は返答をした。
そして俺達と軍はさらにスピードを上げる。
「ユリ、女王にもうすぐゼネラ国軍と共にソルベ国に到着すると伝えてくれ」
「分かりました……」

やがてソルベ国が間近に迫ってきた。
ルチの言葉と共にまた角笛が鳴り、軍はスピードを下げて着地態勢に入る。
「城の正面出入り口前の広場に軍を着地させて欲しいとの事です」
ユリの言葉をルチは軍に伝えた。
そしてゼネラ国軍と俺達は一斉に羽ばたいて広場に着地した。
「よう、ライ!」
軍と俺達が着地して真っ先に駆けつけてきたのはグランド国軍総司令官のスラーだった。
「また会ったな友よ」
「ああ、スラー」
俺とスラーは握手して軽く抱き合った。
「さて、ライ、女王に会いに行くんだ」
「分かった」
「ライ、私とユメは総司令官としての仕事があるから私達は此処に残るわ」
「ああ、分かってる」
返事をするとルチとユメは人ごみの中へと姿を消した。
「ライさん、ソラ様……」
ユリは右手を俺とソラの前に差し出す。俺とソラはユリの右手に触れる。
……シュンという音がして気が付くと俺達は女王の部屋の扉の前に立っていた。
見張り兵は俺達に一礼した。
「お帰りなさいませソラ様、ライ様、ユリ様、女王がお待ちです」
見張り兵はそう言い扉を開く……
俺達は部屋の中へ入った。
「母上、今戻ったぞ!」
「お帰りなさいライ、ソラ、ユリ……早速ですがフラッドガ国へ出陣する事になりました」
「どうしてですか?」
「フラッドガ国が動き始めたのです」
「我が軍の数は?」
「プロミネンス国は8150、グランド国は8200、レイヲン国は9700、ソルベ国はレイヲン国と同じく9700、ゼネラ国は……」
そういえばまだゼネラ国の兵の数をルチに聞いていなかった。
「少々、お待ち下さい女王様……」
ユリは瞼を閉じる……
「…………分かりました。女王様、8050だそうです……」
「ゼネラ国は8050、合計43800人……フラッドガ国の兵は推定31000位といった所です」
12000程こちらの軍の数が上か……
「この43800人の私達の軍を率いるのはソラ、貴女ですよ……」
「わ、妾がか!?」
「そうです、貴女は私の娘、きっと出来るでしょう。
他国の総司令官とその軍と団結しフラッドガ国を攻め落とすのです」
「でも、母上はこの城に残るのであろう?もしもフラッドガ国の手先が城を攻めてきたら……」
「ソラ、やらなくてはいけない事もあるのですよ?私は大丈夫です。さぁ、ソラ……」
ソラは俺とユリを見る。
「ライ殿、ユリ、協力してくれるかの……?」
俺とユリは頷く。
「母上、分かった……」
「良かった……それでは出陣して下さい、進路やソラが軍を率いる事は各総司令官に伝わっている筈です」
「うむ……」
そしてユリのテレポートで城の前の広場に出た。
「ライ、話は聞いたソラが指揮を取るんだってな?軍は今、進み始めた所だ」
フラッドガ国に向けて進み始めた兵士達の中からスラーが出てきてそう言った。
「ああ、ソラが全軍の指揮を取る」
「何だか妾には重すぎる様な事を任された気がするのだライ殿……」
「何言ってんだソラ……ソラ一人がやる事じゃない、俺達が手伝ってやるからそんな緊張するな」
「ラ、ライ殿……うむ、分かった」
「よし、それで良いんだ」
ソラは自信を取り戻したようだ。
そして俺達は全軍と共にフラッドガ国目指して歩き始めた。

―2― 雨の前夜

「……で、あいつ等の動きは?」
「はい、先程連絡が入りました。その情報によりますと敵軍は我々の国に向けて進軍中との事です」
「ほぉ……それで……?」
「敵軍の数は我が軍と同じ位、との事です」
「そんな数で攻めてくるとはな……無謀にも程があるぞ」
俺は報告をする兵の前でニヤリとする。
「それで、俺の軍は何所まで進軍中だ?」
「この国から十数km程の所です」
「それで、敵軍は?」
「先程5、6km程まで進行していたのですが急に敵の全軍消えてしまったとの事です」
「なんだと!?冗談はよせ、俺は冗談は嫌いだと言った筈だ!!」
俺は拳を椅子の手すりに叩きつけ、立ち上がった。
「きょ、恐縮ながら陛下、冗談ではありません……」
「そんな事がある訳無いだろ!3万ほどの敵軍が一瞬で消えるなど!!」
「し、しかし事実なのです。偵察兵がその目で見たと言ってましt……」
状況を報告していた兵は最後まで喋る事は無かった。
何故なら俺がそいつの顔に拳を思いっ切り喰らわせたからである……そいつは骨が粉々になる音をたてながら数m飛び地面に叩きつけられた。
そいつの頭からは血が流れ始めた。それを見ていた護衛のボーマンダ二匹の顔からは血の気が引いた。
「何だ?お前らも同じ目に合いたいか?あ゛?」
二匹のボーマンダは首を横に振った。
「だったら早くこの俺の部屋の床を汚すこいつを片付けろ!!」
俺は顔が原型を留めないほどぐちゃぐちゃになった兵を指差し言った。
素早く二匹の護衛はそいつの死体を回収して部屋を出て行った。
「どうして俺の兵は敵を虐殺をしたりするくせに俺を前にするとこうも臆病になるんだ?」
そう俺は呟きながらまた自分の席に着いた。

~その少し前~
「もう太陽が沈んじゃったな……」
「うむ……」
もう辺りはすっかり暗くなり、風で森の木々が揺れてざわざわと不気味な音を出す。
時刻は7、8時といった所だ。
俺達は今、全軍の一番先を歩いていた。傍にはソラとユリ、ルチとユメ、スラーとチャバが居る。
そしてその後ろを全軍が連いてきている。
「今、妾達はどの位歩いたのだライ殿?」
「多分、5kmか6km位かな」
「フラッドガ国まではどの位なのだ?」
「まだ6分の1程度しか進んでない」
「ええ~!?」
当然のリアクションだ。
「疲れたのか?何だったら俺の首に乗って歩くか?」
「疲れたとは言ってないぞ!た、ただ聞いてみただけだ!」
ソラは頬を赤く染めて下を向く……
「……ん?」
俺は前方に誰かが立っているのに気が付いた。
「ルチ、スラー、チャバ」
「分かってる」
「こんな時間に森に……一体何者だ……」
「敵か……?」
俺達は前方に夜の闇でよく見えないそいつから目を離さず軍に止まるよう指示した。
「どうするライ?」
「俺が見てくる」
「ライ殿、敵だったらどうするんだ!?」
「心配するなソラ」
ソラの頭を軽く撫でてやり、俺はそいつに向かって歩き始める。暗闇でよく見えなかったそいつは近づいて分かったがフーディンだ。
「お前、こんな所で何をしている?」
「君達を待っていたんだ」
「何?」
「気が付いてなかったようだな……君達の事を監視していたフラッドガ国の兵が居た事を」
そのフ-ディンの言葉に俺は驚かされた。
「で、用は?」
「君達をフラッドガ国付近に送ってやろう」
「そんな事が出来るのか?」
「私一人では出来ない、私の仲間が居る」
「何所にだ?」
「君達の軍の周りに19人潜んでいる。私も合わせて20人」
どうりで何だかさっきから少し何者かの視線を感じたわけか……
「嘘は無いだろうな?」
「勿論無い、何しろ私達はフラッドガ国周辺の国の一つなんだからな……君達に協力するように我が主に言われて来た」
俺はそいつの眼を見つめる……嘘ではないようだ。
「じゃあ、頼む」
「分かった」
そうして俺とそのフーディンはソラ達の所へ戻る。
「ライ、そいつは?」
「味方だ……フラッドガ国へ仲間と力を合わせて送ってくれるそうだ。だからソラ、全軍に今から現れるフーディンは皆味方だと伝えてくれ」
「うむ」
ソラはユリのテレパシーを借りて全軍にこの事を伝えた。
「ところでさっきのフラッドガ国の兵は?」
「私の仲間が眠らせておいた」
「そうか……」
そしてその時、軍を取り囲むように草むらから19人のフーディンが出てきた。
「では、送るぞ」
「ああ」
合わせて20人のフーディンは一斉に瞼を閉じて何かを呟き手の平を広げてこちらに向ける……
次の瞬間、体に浮遊感を感じて視界が真っ白に一瞬なり、気が付くと俺達と軍は何処かの見知らぬ森に立っていた。
「此処はフラッドガ国から十数km位の所だ」
フーディンがそう言った。森を見渡すと所々平地で陣を置くのには丁度いいかもしれない……
「ライ殿」
ソラが俺の右腕を引っ張る。俺がソラの見ている方を向くと……十数km離れた此処からもフラッドガ国の城のてっぺん近くが見えた。
「随分と大きいな……」
「ライ殿、妾が言っているのはそっちじゃない、あれじゃ」
「ん?」
ソラが指差す方向を見ると2km程先にフラッドガ国の方角からフラッドガ国軍がこちらへ進んできていた。
「どうするのだ……ライ殿?」
「決めるのはソラだ」
「いや、ちょっと待ってくれ」
フーディンはそう言って俺達の会話を止める。
「どうしたんだ?」
「あれを……」
俺達が見るとフラッドガ国軍の使者が一人こちらへ飛んでくるのが見えた。
「あのドンカラスは?ライ殿」
「使者だ。何か伝えに来るだけだから今は、敵じゃない」
そして俺はフラッドガ国軍の方を見ると、奴らはテントを張っているのが見えた。
多分、陣営を建てているのだろう……という事は今、あいつ等は攻めてこないという事か……
その間にフラッドガ国の使者が到着した。
使者のドンカラスはやはり紫色の眼をしていた。そいつは俺達の目の前に着地した。
「我が主から伝言を預かっています」
「話せ」
「『どうやって此処まで短時間でたどり着いたが分からないがその事は今は問題ではない……お前達の目的は分かっている。
だが、長距離を移動しただろう?軍は疲れている筈だ。今戦った所で軍は全力は出せないだろう……?、という訳で此処は明日まで一時休戦しようではないか?』との事です。」
「一時休戦を受け入れたとしたら何時から戦いは始まるんだ?」
スラーが聞いた。
「明日の午前10時にとの事です」
「ソラどうする?」
「……受け入れて一時休戦となったら不意打ちなどしてこないのだな?」
「勿論です」
「ライ殿、良いか?」
俺は頷く。
「受け入れよう、使いの者」
「では、明日の午前10時に貴方達軍の準備が出来次第……」
そう言いドンカラスは一度頭を下げて飛んでいった……
「よし、陣営を張ろう」
ユリが軍に伝え、俺達はテントを張ったりして陣営を建て始めた。


「……入れ」
俺が入室の許可を出し、報告をしに来た兵が入ってきて俺の少し先で跪く。
「……で、敵軍は一時休戦を受け入れたのか?」
「はい閣下、敵軍は一時休戦を受け入れました」
「そうかそうか……明日の10時頃、あいつ等が準備が整い次第戦闘は開始されるんだな?」
「はい、そうです」
「それまでは一切手を出してはいかないからな?分かっているんだろうな?」
「はい、閣下、心得ています」
「一応俺の軍にこう伝えておけ、約束の時間が来る前に敵軍に手を出したらこの俺が直々に処罰を下すとな」
「分かりました」
俺は立ち上がり、窓から城下を眺める。
「閣下」
「何だ?」
城下の街並みを見ながら俺は返事をする。
「女王様は何所へ行ってらっしゃるのでしょうか?」
兵は俺の席の横の席が空いているのを見ながらそう質問してきた。
「俺の妻か?妻は城の地下室でまた薬品の実験や調合をしているんだろう……趣味だからな」
「そうですか閣下、女王様は面白い趣味をお持ちですね」
「そうだな……俺の妻は何かと普通じゃないからな……さて、下がっても良いぞ?」
「では、閣下、これで……」
兵は部屋を出る前に一度頭を下げて扉を静かに閉めて出て行った。
時計を見ると時刻は午前1時41分を指していた。
地平線近くには灯りが見えた。きっとあそこに俺の軍と敵軍が互いに陣営を建てて、居るのだろう……
窓にはうっすらと黒いエレキブルの俺の姿が映る。
「おい、ボーマンダ」
そう俺が言い、振り返ると俺の席の近くに居た二匹のボーマンダの体ビクッと揺れて反応した。
「お前達は普通よりデカイ体をしてて、どうしてそんなに敏感に反応するんだ?」
このボーマンダ二匹はフラッドガ国に住んでいる奴の中では唯一、眼が紫色に輝いておらず虐殺が好きな奴じゃない……
何故なら俺がまだ王になる前にこの二匹をゼネラ国のある一家から連れ去ってきたからである。
二匹のこのボーマンダが臆病なのに俺は護衛にしている理由、それはいざとなったら出来る奴だからだ。
連れ去る前に戦ったから分かる。それに普通より大きい体をしているから移動用としても使えるのだ。
「おい、肩を揉んでくれ……何だか最近肩が疲れてるんだ……」
二匹のボーマンダは頷いた。


「よし、これでOKだな……」
やっと終わった……陣営を建て終えて俺は一息ついた。
全軍で全軍分のテントを張ったり、森の木を切って削り地面に刺して壁を作ったり……
陣営の周囲の地面を掘って敵の侵入をしにくくする工夫をしたり……罠を作って仕掛けたりした。
明日の戦いで使う岩を配置したり、地面を掘ったり積んだりして凹凸を作った。
偵察兵の報告によると敵は俺達の事を見縊っているのか陣営を建てるだけで俺達のように何も工夫をしていないとの事だ。
「奴らの驚く顔を見るのが楽しみだぜ」
「だな、スラー」
俺とスラーは笑いながらソラとルチ、ユリ、ユメが待つ、一番奥のテントの前に着いた。
「じゃあなライ、また明日会おうな」
「ああ、スラー、お前もゆっくり休んで明日の戦いに備えろ」
そしてスラーと分かれてテントに俺は入った。
「ライ殿、来たか!」
テントに入って早くもソラに抱きつかれた。
テントとは言っても5、6人は入れる広さだ。そのテントの中にベットが5つ置いてあった。
「で、何のようだソラ?……それにこのテントはお前とユリ、ルチ、ユメで四人の筈なのに何でベットが5つも?」
「妾が呼んだのもベットが5つあるのも同じ理由じゃ!」
「その理由は?」
「ライ殿は妾達と同じテントの中で寝るからなのだ~!」
ソラがそう言うと何故かユリとルチ、ユメが拍手する。
「待て待て!どうしてこういう展開になった!?」
「ライ殿、妾達の申し出を断るのか?」
「いやいや、側近護衛だからお前の言う事には逆らえん……だが理由は?」
「理由?そんなもの必要ないわライ、私達が決めた事なんだから♪」
「そうですね……」
「……コクッ」
「という訳で、ライ殿は今晩、此処で寝る事に決定!」
またパチパチパチという拍手が起こる。……何時からこいつ等、こんなに仲良くなったんだ!?
そして、俺は仕方なく言う事を聞き、ベットに寝転がる。ソラがテントの入り口を閉じて灯りを消す。
「何かして遊ぼうではないか?」
「賛成!」
「私もです……」
「……コクッ」
「すまんがお前ら、遠足とかそういうものじゃないんだぞ?」
「冗談だライ殿」
「明日は戦いだ。早く寝た方が良い」
「じゃあ、おやすみライ殿」
「おやすみ~ライ」
「お休みなさいませ……」
お休みなさい、ライさん……
「ああ……」
俺は瞼を閉じ、何時しか明日の事を考えながら眠りについた……



ん~、何だか息苦しいな……
俺は息苦しさを感じ目を覚ました。そして瞼を開けてびっくり!いつの間にかソラとルチとユメ、ユリが俺のベットの中に入っているのだ。
どうりで息苦しかったわけだな……さて、どうするかなぁ……起こすしかないよな?
ソラとルチは多分、普通に起こせないだろうし……ユリかユメを先に起こすべきかな……?
一応、ソラとルチの体を揺する……やっぱり起きないな……
俺はユメとユリの体を揺する。さすが、ユメとユリ、すぐに目を覚ました。
「ライさん、お早う御座います……」
お早う御座います……
「ああ、お早う……早速だがユメ」
「?」
「手に冷気を少し纏よわせてソラとルチを軽く叩いてくれ」
「……コクッ」
ユメの右手に冷気が発生した。そしてその手でユメはソラに触れる。
「ひゃい!?」
効果は抜群だ!▼
今まで聞いた事のない声を上げてソラはベットから飛び上がる。ユメは次にルチに触れる。
「ふぇっ!?」
効果は抜群だ!▼
ルチはソラと同じ様に飛び上がる。
ユリとユメと俺はソラとルチの反応を見て笑う。
「な!?さてはライ殿の仕業だな!」
「もう、びっくりしたじゃない!」
「揺すっても起きないソラとルチが悪いんだからな?」
ソラとユリは頬を膨らませる。
「さてと、今は何時だ?」
俺はテントの外で行き交う兵達の足音を聞きながら言った。
「今は、午前8時48分ですね……8時50分から今日の事についての会議があります」
「起きるのが遅くなったが会議が始まる前で良かった、すぐ近くだし……会議に向かおう」
「うむ」
俺達はテントを出た。小雨が降っている中、俺達は会議が行われるテントに向けて歩き始めた。
味方の兵士は忙しく行き交っていた。そんな彼らと擦れ違いながら俺達は歩き続ける。
数十秒歩くと俺達は会議を行うテントの前に着いた。
「もう着いたな……ライ殿」
「ああ」
会議が行われるテントの大きさは他のに比べて2、3倍ある……俺達はテントの中に入った。
すでにチャバは座っていた。
「席に掛けてくれ……」
テントの中はテーブルが殆どの面積を占めて席が7席置いてある。俺とソラ、ユリ、ルチ、ユメ、チャバで6つ……あと一席は……
「間に合ったー!」
スラーがテントの中に入ってきた。時刻は7時49分59秒
「あと一秒遅かったら遅刻だったなスラー」
「すまんすまんライ」
スラーは着席した。
「さて、軍の配置や作戦を決めよう……皆知っているように敵は陸戦が得意で対空戦と空中戦はあまり向かない奴等だ
という事でまずは各国の兵の種類や特徴を教えてくれ」
「では、まず私、チャバがプロミネンス国軍の事を話そう……プロミネンス国軍はリザード・リザードン・キュウコン・ウィンディ・ギャロップ
ブースター・マグマラシ・バクフーン・マグカルゴ・バシャーモ・バクーダ・ゴウカザルが居る。ウィンディとギャロップは特攻に向いている。
マグカルゴとキュウコンとバグーダは遠距離攻撃を得意としている」
「次に俺、スラーがグランド国軍の事を話す……グランド国軍の兵はサンドパン・ゴローニャ・ボスコドラ・ユレイドル・アーマルド
ラムパルド・トリデプス・ドサイドン・ダイノーズだ。ゴローニャとラムパルドは特攻向きで、ユレイドルやトリデプスは陣営の守りに向くだろう……」
では私、ユメがレイヲン国軍の兵について話します……レイヲン国軍の兵はイノムー・オニゴーリ・トドゼルカ・マニューラ
グレイシア・マンムー・ユキメノコ・カメックス・オーダイル・ラグラージ・ミロカロス・エンペルト・フローゼルです……。
マニューラとマンムーが接近戦向きです。他は長距離からの攻撃を得意とし、レイヲン国の兵は主に長距離からの攻撃を得意とします……
「じゃ、今度は私、ルチがゼネラ国の軍について話すね……ゼネラ国軍の兵はカイリュー・フライゴン・チルタリス・ボーマンダ
ガブリアス・ピジョット・オオスバメ・エアームド・ムクホーク・フワライドよ。皆分かると思うけどゼネラ国の兵は皆飛べるポケモンで技は平均的に皆高いわ」
「つ、次は妾、ソラがソルベ国の軍について話す……えっと、ソルベ国軍の兵はオニドリル・ニドキング・ニドクイン・ヨルノズク・リングマ・バクオング
エテボース・ミミロップ・ベロベルト・トゲキッス・ポリゴンZだ。ニドキングやリングマが接近戦向きでポリゴンZが上空に浮いて長距離攻撃をするのが得意だ」
「そうか……で、ソラ、兵の配置について何か案はあるか?」
ソラは首を振る。
「じゃあ、俺が考え付いた作戦を言っても良いか?」
「うむ、妾が考えるよりはライ殿の方が良い案を出せると思うのだ」
「よし、じゃあ俺の案を言わせて貰う。まず、特攻が得意なウィンディ・ギャロップ・ラムパルド・マニューラ・マンムー
ニドキング・リングマは全軍の最前線に配置し、長距離攻撃が得意なマグカルゴ・キュウコン・バクーダ・イノムー・オニゴーリ・トドゼルカ
グレイシア・ユキメノコ・カメックス・オーダイル・ラグラージ・ミロカロス・エンペルト・フローゼル・ポリゴンZは軍の後方に少し配置し
大半をユレイドルやタテトプスと一緒に陣営の周り中に作っておいた凸凹の陰に配置して遠距離からの攻撃を仕掛ける……というのはどうだ?」
「さすがライ殿」
「私は賛成ですね……」
「良いんじゃないか?」
「私は構わん」
「良いわねライ」
「……コクッ」
皆、賛成で俺の案が採用される事になった。
「で、スラー」
「何だライ?」
「ここら辺りの岩は固いか?」
「どうしてだ?」
「俺に案があるんだ」
「分かった。この辺は岩はとても固い、その上そこら中に岩が突き出てたりする。そうだな……岩砕きか強力な技じゃないと破壊できないかな……」
「よし、スラー、確かサンドパンとドサイドンが兵の中に居たと思うが?」
「ああ」
少し間を置いてからまた俺は喋った。
「サンドパンは岩砕きを覚えているか?」
「ああ、全員覚えているがそれがどうかしたのか?」
「俺に言い案がある」
そこで俺は軽くニヤリとする。
「よし、スラー聞きたい事が2つある。一つはゴローニャがかなり頑丈な体か、もう一つはドサイドンは重いものを遠くへ飛ばせる力があるかだ」
「ああ、俺が育て上げたやつ等だからな!皆、タフな奴ばかりだぞ?!」
「じゃあ、俺の案はこうだ。ドサイドン一匹とサンドパン一匹でペアを作らせてサンドパンが地面を掘った後、岩を岩砕きで破壊し
ドサイドンがその大きな岩を敵軍に向かって投げるみたいなのはどうだ?」
「珍しい戦法だな……でも、結構使えそうだな。岩もちゃんと敵の所まで届くだろう」
「そうだと思うだろう?」
「ああ」
この案にも皆賛成してくれた。
「……私に一つ案がある」
チャバがそう言う。
「言ってみてくれチャバ」
「全軍、常に二人でペアを作り、行動を共にするという事にしないか?そうすれば助け合い、勝利率も上がるんじゃないか?」
「そうだな……でも片方が戦死したらどうする?」
と、スラー。
「他のペアに加わるか同じ様に片方を失った奴と組むのはどうだ?」
「なかなか良いんじゃないか?」
これも、皆賛成した。
時刻は8時26分……
「よし、会議は此処までにしよう……各自、自分の軍に今話したことを伝えて10時までに準備を済ませよう」
スラーの言葉に皆、テントから出て各自、自分の軍の所へ向かった。
今、会議をしていたテントの前には俺とソラ、ユリが残った。
「ソラ、行かないのか?」
「ユリが居るではないか」
「よろしいですかソラ様……?」
「良いぞ」
ユリとソラは瞼を閉じた。そして、ソラは何かを呟いている……
……なるほど、ユリのテレパシーを通じてソラはソルベ国軍に指令を伝えているのか……
数分するとソラとユリが同時に瞼を開く……
「終わったか?」
「うむ、了解したとの事だ」
その時、ソラのお腹が鳴った。ソラは頬を赤らめる……
「そういえば起きたらすぐ会議だったもんな……」
「それでは、食堂へ向かいましょうか……」
ユリはお腹が俺達より減っているソラの事を気遣い、テレポートで食堂のテントの前まで移動させてくれた。
「ありがとなユリ、ソラの事、気遣ってくれたんだろ?」
「いえいえ……礼には及びませんよ……当然の事をしたまでですから……」
ユリは微笑む。ソラは俺とユリの会話を頬をまだ赤らめながら聞いていた。
食堂のテントはかなり大きく、入り口は大きく開かれて紐で結ばれて固定されていた。
50人は簡単に入るだろう……テーブルはかなり長く、幅は二人が向き合うようにして座るとピッタリだ。
雨が強くなってきたのを感じ、テントに素早く俺達は入った。
そして、中に入るとあのフーディン20人が食事中をしている事に気が付いた。
フーディン達は向かい合って座っていた。
「ん?ライか、丁度良かった。私達、フーディン兄弟は君達の軍に加わりたいんだ」
「別に良いけど……20人兄弟なのか……って、兄弟!!?」
「ああ」
20人兄弟なんて初めて聞いたぞ……多すぎるだろ……
「お前ら本当に兄弟?」
「ああ、そうだが?」
「ああ、そうだが?」
「ああ、そうだが?」
「ああ、そうだが?」
   …
   …
   …
「ああ、そうだが?」
いやいや、そんな一人ずつ返答しなくても……と、内心ツッコミを入れる。
「とりあえず、此処に来たという事は食事をしに来たのだろう?受付で貰ったらどうだ?因みにお金は必要ないからな?」
「お金は必要ないのは知ってるよ……」
そう返事を返しつつソラとユリと共に朝飯を受付で貰い、フーディン達の所へ戻ってきた。
俺はフーディンの右の席に座り、ソラは俺の右の席に座り、ユリは俺の向かい側の席に座った。
朝飯はジャムパン二つと大きなハムエッグと牛乳だ。
『いただきます』
俺達は朝飯を食べ始めた。
「なぁ、ライ?」
「何だ?」
俺は朝飯を頬張りつつフーディンに返事を返す。
「私は何男に見える?」
「……長男?」
「当たりだ。よく見抜いたな……」
「因みに私は次男」
「因みに私は三男」
「因みに私はy……」
「もう良いって、同じ様な事を20回近く聞きたくない!」
長男フーディンの頭を軽く叩く。
「ところで名前は?」
「長男の私の名前はフィカだ。よろしく」
「次男の私の名前は……」
「分かった。分かった!聞いた俺が悪かった」
キリが無いな、この兄弟は……
「ユリ、フーディンの事、伝えたか?」
「はい、伝えました……」
「で、フィカ、君達フーディン兄弟は俺達の軍に入った事になったが、この後始まる戦いではどうするんだ?」
「私達は兄弟全員で行動し、戦況に応じて移動し、戦うやり方だ」
「そうなのか……」
「ところで一つ聞いて良いか?」
「何だ?」
「フラッドガ国の王と女王、つまり大きなエレキブルとブーバーンの名前、ライは知っているか?」
「いや、知らないなぁ……」
「王の方がルサ、女王の方がユスカという名だ」
あの大きい黒色のエレキブルと紫色のブーバーンはそういう名前だったのか……初めて知ったな。
「名前、何所で知ったんだ?」
「それは秘密だが一つ良い事を教えてあげよう……ルサとユスカ、どっちもドラゴンタイプが弱点なんだ」
「えっ?でもあの二人は電気と炎じゃ?」
「きっかけは本人しか知らないがある時、あの二人の細胞が突然変異して体の色が変わり、弱点属性がドラゴンタイプになったんだ
でも、タイプは変わっていないから電気技や炎技は使えるんだ。変わったのは体の色と弱点属性だけだぞ?」
「ああ、分かった。良い事を教えてもらったよ」
こんな良い情報を入手できるとは思っても無かった。
丁度、俺達とフィカとその兄弟は朝飯を食べ終わった。
「よし、行こうか……」
俺達は席から立ち上がった。そして、食器を受付に返し食堂を後にした。
「雨が降っているな……」
「ああ、雨の中で今日は戦う事になりそうだな……ユリ、時間は?」
「午前9時13分です……」
「後、47分か……」
「ライ殿、戦いが始まる前に兵達の様子を見に行ったら良いのではないかの?」
「良いかもな」
こうして残りの40分近くの空いた時間は軍の様子を見に行く事に決まった。
フィカ達、フーディン兄弟は配置に着くといって俺達と別れた。
「さて、まずは何所から行くんだソラ?」
「うむ、ドサイドン達の所へ行こうぞ」
「ユリ、頼む」
「はい……」
テレポートを使い、陣営の左奥のドサイドン達が配置されている所へ来た。スラーの言う通り、岩が地面からあちこち出ていた。
「本当にここら辺は岩だらけなのだな……」
「ああ」
ドサイドン達は見た所、200近く居る。ドサイドン一匹とサンドパン一匹でちゃんと組んで立っている。
スラーの言う通り、ドサイドン達は皆、逞しく、普通のドサイドンより少し大きい。これは期待できそうだ。
「ライじゃないか!どうした?」
スラーがこっちへ向かってきながら、そう言った。
「一つ聞きたいスラー」
「何だ?言ってみろ」
「スラーの部下のゴローニャは頑丈だと言っていたな?」
「ああ、そうだが?」
「高い所から落ちても耐えられるのか?」
「まぁ……雲の辺りから落ちなければな」
「ゴローニャ達は今何所に?」
「今から軍の最前線に配置しようとしている所だが?」
「ドサイドン達の所へ寄越しても良いか」
「何か良い案があるのか?」
「ああ、ドサイドンがまず、岩を投げる前にゴローニャ達を投げさせるんだ」
「何!?」
「ゴローニャ達はドサイドン達に投げられ、敵軍の所へ着地してそのまま転がる攻撃で結構な打撃を与えられる筈だ」
「面白い特攻だな!よし、ゴローニャ達を呼んですぐに此処に配置させる」
「有難うスラー」
スラーは走って行き、やがて姿が見えなくなった。
「さて、ソラ、次は何所に行く?」
「う~む、陣営の守りが見たい」
「では……」
次に俺達は陣営の前方へやって来た。陣営は森の中にあり、森と平地の境目には昨日作った。木の壁が張り巡らされている。
木の壁と壁の間が少し空いているのでそこから出入りが出来る。そこから平地の方へ出ると味方兵士全軍、数百m先に並んでいた。
壁の近くは地面が凹凸になっており、その陰に長距離が得意な兵が隠れ、そこから攻撃するのだ。
動きが遅いユレイドルやトリデプスは同じ様に沢山の凹凸の陰に潜んでいる。
全軍と長距離攻撃兵の潜む、沢山の凹凸の間には沢山の罠が仕掛けてあるため、万が一、敵が来ても長距離からの攻撃と罠で攻めづらい事だろう……
「ユリ、時間は?」
「9時55分です……」
「そろそろ行かないとな……ユリ、ソラを頼んだ」
「任せておいてください……」
「ライ殿、死ぬでないぞ?」
「分かってるよソラ、俺は帰ってくるから心配するな」
ソラの頭を俺は撫でてやる。
「うむ……」
「じゃあな」
俺は羽ばたき、地面を蹴り、飛び立った。

―3― 初戦

「あそこか……」
俺は全軍の上空からスラー達を見つけた。スラー達は軍の最前線近くに居た。俺は高度を下げてスラー達の所へ着地した。
「おっ、ライか、いよいよだな」
「ああ」
「ライ、少し遅いんじゃない?」
「まぁ仕方ないさ……ところでユメは?」
「陣営の守護部隊の総司令官として陣営に居る。ライ、君の防具だ」
「有難うチャバ」
チャバに防具を渡され、俺は防具を着用した。
「さぁ、始まるぞ」
スラーがそう言った時、フラッドガ国の陣営と味方の陣営から空気を振動させて角笛が鳴り響いた。
「攻撃開始!!」
スラーの掛け声と共に全軍は雄叫びを上げて走り始める。敵軍も同じ様に此方へ走ってくる。
俺は飛び上がった。そしてゼネラ国軍の兵士達と共にフラッドガ国の空兵を攻める事にした。
その時だ。ドン!という音がたて続けに辺りに鳴り響き、視界の左上から丸い岩がフラッドガ国軍目掛けて落ちてゆく……
ゴローニャだ!俺の作戦通り、沢山のゴローニャがフラッドガ国軍に降り注ぐ……そして、地面に着地して転がるで敵軍を内部から攻撃する。
よく見ると、着地の際にゴローニャが敵を潰しているのも見えた。
この作戦は中々上手くいっているようだ。
「置いていかないでよね!」
聞きなれた声が聞こえたかと思うとルチが飛んできて俺の横に付いた。
「ルチ……」
「貴方のペアは私よ、全軍ペアで行動するって決まってるでしょ?」
「そうだったな」
「私は貴方の援護をするわ、だから貴方が進路を決めて」
「了解した。遅れるなよ!」
「OK!」
そして俺とルチは急降下を始めた。
直後にゼネラ国軍とフラッドガ国軍の空兵が交戦を開始したようだ。爆発音が上空から聞こえる。そして俺はある程度高度を下げると上昇を始めた。
思ったとおり、敵空兵はこちらに気が付いていない、俺達からすると隙だらけという訳だ。
そして、俺は敵空兵の下から竜の波動や大文字を放つ、ルチも竜の波動放ち、流星群を発動させる。
竜の波動の爆発で沢山の敵空兵が煙を纏ながら落ちてきた。俺とルチはそれを避け、さらに攻撃する。
正面からはゼネラ国軍の総攻撃、下からは俺とルチの竜の波動の連続攻撃、上からはルチの発動した流星群が襲い掛かり、敵空兵軍はどんどん削られる。
ドンカラス数匹と沢山のヤミカラス此方へ向かってきてシャドーボールを一斉に放つ、俺とルチは何とか避けて竜の波動をお見舞いする!
爆発が起こり、ヤミカラスとドンカラスが一匹ずつ残った。その二匹はつばさでうつを決めようと特攻してきた。
俺とルチはドラゴンクローで応戦したがその二匹の姿は消えた。
黒い霧が発生し、その中からドンカラスとヤミカラスが現れて至近距離でシャドーボールを放ち、俺とルチに攻撃が当たった。
俺達は体勢を何とか保ち、ドラゴンクローを今度こそ当てた。
二匹は落ちていった。
「大丈夫かルチ」
「まだまだ大丈夫よ」
「よし」
気が付くとゼネラ国軍がフラッドガ国軍の空兵を殆ど倒し、最後の一匹も俺の雷で倒した。
ゼネラ国軍は数百人犠牲が出たが結構な数が残っている。
俺とルチは降下を開始した。雨の中、陸では味方の軍と敵軍が激しく戦っていた。彼方此方で爆発が起こり、雄叫びや断末魔も聞こえる。
味方の陣営からは岩が飛んできている。岩が炸裂し、敵に被害を与えている。俺は雷を発動して飛んできた一つの岩を破壊した。岩の破片が散らばり、さらに敵に打撃を与える。
俺は高度を下げて味方の兵を背後から攻撃をしようとした敵兵の背中をドラゴンクローで攻撃し、倒した。
敵と味方は激しく戦い合い、相手に死を与えようと戦っている。
味方のラムパルドは突進し、敵を吹っ飛ばしながら突進を続ける。横から攻撃され倒れるラムパルドもいる。
敵と味方のボスコドラ同士が取っ組み合ったり、味方のアーマルドは切り裂くで敵を引き裂いたりしている。
遠距離からは味方の冷凍ビームやハイドロポンプ、ハイドロカノン、エナジーボール、噴火、破壊光線、岩石砲などが敵に襲い掛かる。
敵のドラピオンも破壊光線や切り裂くで攻撃し、敵ヘルガーは火炎放射で攻撃し、敵ライチュウやジバコイルやライボルトは放電で攻撃を仕掛けてくる。
敵ドラピオンが攻撃を仕掛けてきて、俺とルチは攻撃を避けてそのままドラゴンクローを決めるが同時にドラピオンの体当たりを喰らった。
バランスを失いかけたが大文字で倒した。
「ライ、怪我は?」
高度を上げている時、ルチが心配して聞いてきた。
「大丈夫だ」
「良かった……」
「この位じゃ、くたばらないさ」
「そうね」
俺とルチは笑顔を交わす。
(敵が陣営に攻めてきて来ています。ライさん、来られますか……?)
ルチからのテレパシーだ。
(分かった。今行く)
「どうかしたのライ?」
「陣営が攻められているから来て欲しいとの事だ。行こう」
「分かったわ」
俺達は味方の陣営に向けて進み始めた。

それから少し経ち、俺とルチは味方の陣営前上空に到着した。
敵兵と味方の兵は激しく戦っていた。陣営の守りに付いている味方の兵と同じ位の量の敵兵が絶え間なく攻撃を仕掛けていた。
味方も全力で反撃をしていた。戦う前に仕掛けておいた陣営前の落とし穴などの罠は殆どが発動してあり、敵兵に被害を出したようだ。
「ルチ、敵を一掃してくれ」
「分かったわ!」
上空から沢山の流星群が地上の敵兵目掛けて降り注ぎ始めた。それに合わせて俺とルチも急降下する。
ルチの放った流星群が敵兵士を襲い、敵の被害をどんどん増やす。
こちらに気が付いた数人の敵が攻撃を仕掛けてくるが俺とルチは翼を片方折りたたんで回避した。
「もしかしたらルチは一人でも流星群を連射すればこの敵軍を相手に出来るんじゃないか?」
「冗談きついわライ」
ルチは苦笑する。敵兵はあと数十人、俺とルチはそのまま接近し敵に攻撃を仕掛けようとした。
しかし、敵は一人のジバコイルの近くに集まったかと思うと敵ジバコイルを中心に敵兵達を包むようにバリアが発生した!
俺とルチは敵兵の周りに突然現れたバリアをギリギリながらも回避した。
味方の兵は地面の凹凸から攻撃を仕掛けるが攻撃はバリアに弾かれてしまう……
バリアの内側にいる敵はバリアの中から攻撃を仕掛けてくる。
「バリアを張るなんてずるいじゃない!」
「ルチ、一旦陣営に戻るぞ!」
俺とルチは後ろから飛んでくる敵の攻撃を避けながら陣営に戻った。その際、敵の攻撃が一回だけ、かすって俺の頬に浅い切り傷をつくった。
俺とルチは地面の凹凸の一つに身を潜めた。
「ライ、大丈夫?」
「この位の傷、どうでも良い……問題なのはあの敵兵達を包んでいるバリアだ」
「そうね……」
味方兵士達は尚もバリアを張った敵達が陣営に来れないように攻撃を続ける。
「このままじゃ陣営の中が攻められるのも時間の問題だ……何か良い案は無いかルチ……?」
「私には無いわライ……」
「そうか……」
このまま地面の凹凸に隠れてても意味は無い、しかしバリアがあるとなると……
俺は味方兵士の攻撃を見つめる……。
よく見るとバリアには味方の冷凍ビームで氷が少し付いているのが見えた。地面に付着した氷はバリアの中にも少し入っているのが見えた。
そうか!この手があるじゃないか!
「ライ、何か思いついた顔をしてるけど?」
「思いついたぞルチ!」
「本当!?その内容は?」
「まずはユメを探そう、ユメの力が必要不可欠だ」
「でも、どうやって探すの?」
その時、敵の攻撃で近くで爆発が起こり会話を一時中断されたがまた会話を続けた。
「ユリのテレパシーだ」
「なるほど、その手があったわね!」
「そうと決まれば行くぞ」
俺とルチは壁のように立っている地面に刺した木と木の間の僅かな隙間から味方の陣営の中に入った。
そして全力で木々の中を飛び、ソラとユリが居る大きなテントへ向かった。
「ユリ、君の力を貸して欲しい」
テントの入り口の布を捲くり、中に入りながら俺は言った。
「どうかしたのかライ殿?……ライ殿、傷があるではないか!大丈夫なのか!?」
「安心しろかすり傷だ。ユリ、すまないがユメと話したい」
「分かりました……」
ユリは瞼を閉じた。
「…………ライさん、どうぞ、貴方の言葉をユメさんに伝えます……」
「こう伝えてくれ、『バリアを打ち破るのに力を貸して欲しい』と」
「…………分かったそうです……場所は合図するそうです……」
「よし、ルチ、戦場に戻るぞ」
「気をつけるのだぞライ殿!」
「分かってるソラ」
俺とルチは飛んで戦場に戻った。敵兵達はじりじりと陣営に迫っていた。
ユメを探していると沢山の地面の凹凸の一つから天に向けて真っ直ぐと冷凍ビームが放たれているのが見えた!
「あそこだルチ!」
「ええ!」
俺とルチはユメの元に急いで向かい、着地した。ユメが隠れている地面の膨らみに俺とルチも身を潜めた。
ユメの周りの凹凸には沢山のレイヲン国軍兵士が居た。
「ユメ、あのバリアを打ち破るのに協力してくれるんだよな?」
「……コクッ」
「いいかユメ、あのバリアを観察して分かったんだ。あのバリアは氷の攻撃には脆いみたいだ。
見てみろ、バリアに冷凍ビームが集中して当たった場所に氷が出来ている。そこに攻撃が加わると僅かに穴が少しの間、開ているのが見えるだろ?
つまり、レイヲン国軍の冷凍ビームなどの氷タイプの攻撃をバリアに集中砲火し、他の仲間の攻撃を当てる……
そうすればきっとバリアは打ち破れる!バリアに出来た氷を撃てと陣営を守っている兵士にはユリが伝えた。
あとはユメ、君がレイヲン国軍の兵士にバリアの一点を攻撃するように伝えてくれ!」
「……コクッ!」
ユメは頷き、レイヲン国軍の兵士に指示を伝えた。
「よし、行くぞルチ!」
「盛り上がってきたわね!」
俺とルチは身を潜めていた地面の凹凸から飛び出した。そして、敵兵達へ一直線に向かう。
そして、俺とルチが敵兵達との距離が近づいてきた時、ユメの冷凍ビームがバリア目掛けて行き
その攻撃が当たった所にレイヲン国軍兵士全員の冷凍ビームが当たる!バリアとその周りの地面はたちまち氷漬けになる。
「今だルチ!」
「了解!」
敵兵達目掛けて急降下しながらもルチの流星群と陣営を守る味方兵士の攻撃が凍ったバリアを一斉に襲う!
攻撃が当たり始めて5秒程するとバリアはガラスが割れる音を発しながら粉々になり、砕けたバリアの破片が敵兵達を襲う!
破片は敵兵達の体に突き刺さる。地面に落ちた破片も凍った地面に当たり、飛び散って敵兵達の体を傷つける。
そして、俺とルチは破片に気をつけながら敵兵達の中に突っ込み、中心に居たバリアを発生させていたジバコイルに同時にドラゴンクローを決めた!
ジバコイルは俺とルチのドラゴンクローをまともに喰らって倒れた。俺とルチは急上昇して敵兵達から離れた。
そして、敵兵達にはルチの流星群と味方兵士達の一斉攻撃が掛かり、あっという間に全滅した。
その時、戦場の方から今回の戦いが勝利したという味方の角笛の合図が辺りに鳴り響いた!
「やったねライ!」
「ああ、勝ったな!」
こうしてフラッドガ国軍との一回目の戦いはこちらの勝利で終わった。
味方の軍が陣営に向けて引き返し始めた。
俺とルチも雨がまだ降る中、ソラとユリのテントへ向かい羽ばたき始めた……

「ライ殿!」
ソラとユリのテントの前に着地した途端、雨が降っているのにソラはテントを飛び出し俺に抱きついた。
「どうしたソラ?さっき会ったばかりじゃないか」
「だって……その……」
ソラは俺に抱きつきながら何だかモジモジする。
「俺はこの通り無事だ。安心しろ」
俺はそう言い、ソラの頭を撫でる……ソラは安心したらしく笑顔を見せる。
「皆様、会議を開くので朝と同じテントに来て欲しいとの事です……」
ユリは俺の頬の傷を治しながらそう言った。
「よし、行こうソラ」
「うむ」
ユリのテレポートを使い、俺とソラとユリとルチは会議が行われるテントの前に着いた。
テントの中に入るとチャバが既に着席していた。スラーは今入ってきたばかりらしく、イスに着席した所だった。
「ライ、お前とルチ大活躍だったな!」
「ああ、有難うスラー」
「何たって私とライのペアだからね」
そう会話しながら俺達は着席する。
俺達が着席したとき、丁度ユメがテントに入ってきて着席した。
「よし、皆揃ったな?私が各軍の被害報告をする。
プロミネンス国死者620、グランド国死者630、レイヲン国死者110、ソルベ国死者560、ゼネラ国死者390だ。
被害を最小限に抑えられたのはライの考えた作戦のおかげと言っても良い……そして、この戦いで犠牲になった兵の為にも今後も頑張ろう
私達の軍は残り41490、まだ十分な戦力がある」
「フラッドガ国へ向けての移動開始は何時になるんだ?」
「私としては今日、兵士達は雨の中で戦い、見事今回、フラッドガ国軍を全滅させた。その疲れもあるだろうから明日に移動するというのはどうだ?」
このチャバの意見に皆、賛成した。
「で、明日の出発時間はどうするんだ?」
「私としては朝が良いかと……」
「なるべく早く敵国に行ったほうが良いからな、俺はチャバに賛成する」
「私も」
「……コクッ」
「俺もだチャバ」
「妾も」
「では明日の朝、9時頃で良いでしょうか?皆さん」
こうして話はつき、俺達はテントを後にし、雨が降っているのでユリのテレポートで自分達のテントの中に入った。
テントに入るとタオルで濡れた体を拭いた。ソラが背中に手が届かないのでソラの背中を俺は拭いてやった。
時刻はいつの間にか夕方だが、雨は続いていた……。

―4― 落下

「何か寒いな……」
俺はテントの入り口の隙間から白い煙、冷気が入ってくるのを見た。
ソラとユリ、ルチは眠っていたがユメのベットが空いていた。
俺はベットから出て、寒さに体を少し震わせながらテントから出た。テントの少し先でユメが周りに冷気を漂わせて目を瞑り、立っていた……
「ユメ?」
俺がユメを呼ぶとユメは振り返り目を開けた。
「何してるんだ?」
私の仲間達と話をしていました……
「誰も周りに居ないが?」
互いに冷気を送って話をするのです……
「ほぉ……なるほどな」
それにしても寒いな……
!……すみません、寒かったのですね……
そうユメが言うと辺りに漂う冷気が消えた。
「謝ることは無いさ」
ユメは俺の言葉を聞き微笑む。
俺は先程まで冷気に気を取られていて気が付かなかったがまだ小雨が降っている……
「まだ雨、降ってるのか……」
「この辺りは雨が降りやすいからな」
ユメと俺が振り返るとフィカが立っていた。
「フィカか、おはよう」
「ああ、おはようライ……そろそろ仕度を整え始めた方が良いぞ?」
他のテントを見ると次々と中の兵士が起き、仕度をし始めていた。
「有難うフィカ、俺達も仕度を始めるよ」
フィカは自分のテントの方へ向かい始めた。
「ユメ、ソラ達を起こそう」
「……コクッ」
俺とユメはテントの中に入った。
「ソラ、起きるんだ」
ソラの体を俺は揺する。すぐにソラは起きた。
「うむ……もう、朝なのか……?」
「そうだソラ」
そして俺はルチの所へ行く、ユメはユリを起こしてくれた。
「ルチ、朝だ。起きろ!」
ルチの体を揺するがいつも通り、やはり起きない……その上、昨日の戦いの後ということもある。
どうしようかと悩んだ結果、この案が良いと思った。
「ユメ、よろしく」
「……コクッ」
ユメは手に冷気を集め、その手でルチの体に触れる。
前と同じく、ルチは意味の分からない言葉を叫んで目覚めた。
「相変わらずだなルチは」
「うむ」
俺達はニヤニヤする。
「な、何よ……!」
「さて、出発の準備を整えるぞ」

そして俺達はテントをたたんで荷物をまとめて、その後食事を取った。仕度は案外早く終わった。
気が付くと9時になり、出発の角笛が辺りに鳴り響いてフラッドガ国に向けて全軍が進み始めた。
小雨が降る中、俺達はその全軍の先頭を歩いていた。スラー達も近くに居る。
フラッドガ国に行くには昨日、戦場と化した広い平地を進み、高さ数kmある崖の底、つまり谷を通る。その谷は両側が崖に挟まれている。
つまり、前か後ろしか道が無いというわけだ。その谷を越えればフラッドガ国が2、3km先にあるとフィカ達は言う。
実際、今、俺達の軍は両側を壁に挟まれた谷を通っている。
フィカ達に言われた通り、谷を挟む壁は聳え立つように高かった。壁の高さは確かに数kmはあるだろう……
「ライ殿、高いな……」
「ああ、確かに……そうだ、壁の上まで飛んで俺達が歩いているこの谷を見下ろしてみるか?」
「あぅ……高いのは苦手なのだ……」
「分かったよ」
俺はソラの頭を撫でてやる。
何だか俺はこの谷に入ってから胸騒ぎがずっとする。どうしてか分からないが危ない気がする。
「どうしたのだライ殿?深刻そうな顔をしておるが?」
「さっきから胸騒ぎがするんだ」
「どうしてなのだ?」
「それが分からないんだ……」
「むぅ……」
「気のせいだと良いんだがな」
「うむ」
この時、俺達はこれから起こる事を知るはずも無かった。
俺達はその後も数時間歩き続けた。雨はだんだん強くなってきていた……それに伴い、視界も悪くなる。
ますます俺の胸騒ぎは強まっていた。と、その時だった。いきなり、谷に何者かの角笛が鳴り響いた!!
「何だ!?」
(この角笛はフラッドガの物だ気をつけろ!)
テレパシーでフィカの声が全軍に伝わった。
俺達と全軍は身構えてフラッドガ国の方角に警戒する。……が、何も起こらない……
「どういう事だ?」
「分からん……」
一分程、沈黙が続いた……しかし、その沈黙は一人の味方兵士の声で突如切り裂かれた。
「上だ!!」
俺達が上を見ると。岩が雨のように落ちてくる所だった!
「ソラ、危ない!!」
俺はソラ目掛けて飛んできた岩に気付き、ソラを押し倒した。間一髪だった。数秒前までソラが居た場所には大きな岩が地面を抉っていた。
「ソラ、大丈夫か?」
「うむ、大丈夫だライ殿」
「ユリに守ってもらうんだ」
ソラはユリの元へと走って行った。
岩は尚も上から垂直に落ちてきていた。落ちてきた岩は俺達の軍を襲う!
「ライ!きっと敵軍がこの谷の上から岩を落としているんだわ」
「上の奴らを倒しに行こう、このままじゃ軍が壊滅状態になる!」
「じゃ、行くわよ!」
俺とルチは翼を広げ、地面を蹴り、飛び立った。同時にゼネラ国軍も一斉に上に向けて飛び始める。
どうやらユリがテレパシーでゼネラ国軍に伝えてくれたらしい。ゼネラ国軍は皆、俺とルチの後に連いてくる。
そして、敵の兵士達が使ったのか霧が立ちこみ始めた。
おまけに雨も降っていて、かなり視界が悪くなったが俺は地上の味方軍が、攻めてきたフラッドガ国の兵と戦っているのが見えた。
「不味いわね、岩を落としている連中を倒さないと……確実に負けるわ」
「ああ」
そう会話していると突然、岩が姿を現した!
『!』
俺とルチはギリギリ岩を避けられた。
「視界が悪すぎる上に、上から岩が落ちてくるとはな……最悪だな」
上へ上へ向かいながら俺は呟く。
「皆、岩に気をつけて!」
ルチは後ろに連いてくるゼネラ国軍の兵士達に向かい言った。兵士達は雄叫びで返事をした。
俺達は雨が降り、霧が立ち込める中、岩の雨を避けながらもスピードを上げて上へと飛び続ける


続き:深紅の鎌.伍


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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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