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吐き出す心・下

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吐き出す心・上のあらすじ。

 封印したポケモンと融合して戦う人間〝BURST(バースト)戦士〟は〝あの大戦〟と呼ばれる戦いでポケモンたちに敗れ、廃れていった。
 それから10年。BURST戦士の里・ナワメシティ出身の青年ベイガンは、心臓病に冒された身体を押して、父から受け継いでいたクルマユのBURST能力を身に付ける。
 通りすがりの旅人ラハードにBURST戦士の気配を感じてバトルを挑むが、ラハードは「自分はBURST戦士ではない」とこれを拒否。
 しかしラハードの所有ポケモン、ミカルゲの紫影螺(シエイラ)がベイガンを挑発したため、BURST戦士VSトレーナーのポケモンという変則バトルに突入することに。
 結果、ラハードの巧みなポケモン裁きに翻弄され、ベイガンは一方的な敗北を喫してしまう。
 医師であったラハードに手当を受けたベイガンは、トレーナーの強さと、BURST戦士との戦う理由の違いを教えられる。
 更に紫影螺に「世襲BURST戦士は身勝手にポケモンの力を使っている」と糾弾され、反論するも却って自分がクルマユのことを何も理解していなかったと思い知らされて、激しく落ち込むベイガン。
 追い討ちに紫影螺は〝あの大戦〟で斃れた戦士〝アルカデス〟も批判するが、その時ベイガンは言った。「そのアルカデスは、おれの父さんだ」と……。


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第3章・広角と精細と 


 ××××

 アルカデス――複合BURST能力者。
 通常のBURSTが封印したポケモンと直接融合するのに対し、アルカデスは前任者の魂と融合し、〝光の羅針盤〟というアイテムに蓄積されたBURSTポケモンたちの情報を取り込むことで完成する*1、特殊なBURST能力。
 羅針盤に一度でもはめ込まれたBURSTハートのポケモンならばどんなポケモンにでも瞬時に自由自在にBURSTが可能で、融合した前任者の魂によるサポートでポケモンの能力を常に100%の状態で使用でき、しかも本来BURSTのためにかかる負担もその魂が引き受けるため、通常のBURSTでは考えられないほど長時間BURST状態を維持することか可能……など、多くの面で通常のBURSTを凌駕する、まさしくBURST戦士の理想型。
 けれどこの破格な能力には、余りにも過酷なリスクが存在した。
 一度アルカデスの能力を得たら、前任者との融合状態を解くことは不可能。
 羅針盤との連結を断つことでBURSTを解除することはできても、もう普通の人間には決して戻れないのである。
 しかもこの魂は、負荷が限界を超えた時、使用者の肉体を巻き込んで結晶化する性質を持つ。
 結果、アルカデスとなった者は、能力を使い切った時点で全身が内蔵、血液に至るまで石のように凝結、死に至る。力は無制限に振るえても、寿命は致命的に縮まってしまうのだ。そして石化した骸に封じ込められた魂は、後任者をアルカデスにするための材料となるのである。
 ある代のアルカデスなど、入手した能力に夢中になって、様々なポケモンにBURSTしつつ各タイプの技をひとつひとつ試し撃ちしていたら、全タイプの技を繰り出した時点で何もできずに石化した、という悲惨な逸話が残っている。それ程に扱いどころの難しい能力だということだ。禁断の秘術と呼ばれる、これが理由だった。
 そのリスクに加えて、光の羅針盤が材料の希少性と製法の困難さから一台しか現存していないため、複数人が同時にアルカデスになることはできない、という問題点もあり、とてもじゃないが通常運用が可能な代物ではなかった。故にその使用は、緊急時に通常の戦力では対処できないと判断された時、特別に選ばれた者のみに限られていた。
 そんなワケで、当初宇宙人の襲撃とされていた〝あの大戦〟で、ナワメのBURST戦士団のリーダー格だった父さんが、苦戦の中アルカデスとなったのは……必然の流れ、だったのだ。
 だが、父さん一人がどれほど奮戦しようが、既に崩壊していた戦線を立て直せるはずもなかった。
 粘り強く防戦を繰り返しつつ、ポケモンたちを先導していた首魁を前線に引きずり出すところまでは成功したが、そこで能力を全て使い果たし、石となり果てた――
 戦後、父さんの亡骸は光の羅針盤共々ポケモンたちに接収され、2度とアルカデスの力が戦いに使われることのないようにと、現在では人間の立ち入りが禁止されている件の施設の奥深く、厳重な封印を施された場所で眠っているらしい。
 いつか乗り込んでいって、おれがアルカデスを継いで父さんのように華々しく玉砕してやろう、という野望を抱いたりもしていたが……無様に敗れてここでうずくまっているおれには、父さんの所に辿り着くことなど叶いそうになかった。

 ××××

「アルカデスが、父さんて……え、マジ!?」
「……あぁ」
 燐光をエクスクラメーションマークにして固まった紫影螺に、おれは頷く。
 幼い日、TV画面の向こうで、仁王立ちになったまま石に変わっていった父の姿を思い出しながら。
 そんなおれの告白を聞いても、ラハードは紫影螺のように驚く素振りもなくあっさりと言った。
「アーガン氏の息子さんだな。だろうと思った」
「……!? 父さんのこと……知ってるのか!?」
 驚いて顔を上げると、ラハードは黒い顔を懐かしそうにさせて応える。
「面識というほどでもないがね。私は〝あの大戦〟の時、民間医療隊の一員として後方で参加していたんだよ。だから他の人よりも〝あの大戦〟についてはよく覚えているんだ。アーガン氏のことは、BURST戦士団が参戦した時、リーダーとして挨拶しに来たのを遠くから眺めた程度で、あと知っていることと言えばTVで流された程度のことぐらいだ。アルカデスになる前に何のBURSTハートを使っていたのかすら、私は知っていなかったよ」
 フッ、と落ち着いた笑みを浮かべ、ラハードは続けた。
「だが、それだけでも十分察しは付けられる。その蜂蜜色の髪も、細面の顔立ちもよく似ているし、名前もA(アー)ガンに対してB(ベイ)ガンだ。それで同じBURST戦士なら、よほど鈍い者でもなければ関連性を疑いぐらいするさ。お前さんの話を聞いている内に、やはりそういうことかと確信したがね」
「話?」
 ハッキリそうだと言ったのは今し方だ。父さんが戦士団のリーダーだったことも口にした覚えはないが、一体どこで見当を付けられたのだろうか?
「あぁ。親父さんが〝大戦〟で戦死されたことは言っていただろう? だが私の知る話では、あの時戦死したBURST戦士のBURSTハートは、全てポケモンたちに回収され戻ってこなかったはず。なら、その親父さんから受け継いだというクルマユのBURSTハートがなぜここにあるのか、だ。アルカデスのBURSTは、前任者の魂と〝光の羅針盤〟が記録したポケモンたちの情報を使ってBURSTするもので、BURSTハートを必要としないと聞いている。そして使えば必ず命を落とす……死を覚悟されたアーガン氏は、自分のBURSTハートを送り返したんだね? 息子であるお前さんに受け継いで貰うために」
「あぁ、そうだ。参ったな、断片的な情報だけでそこまで解るなんて……」
 つくづく、どう戦っても勝てる気がしないと思い知らされた。
「もう先生(センセ)ったら、見当付いてたんなら先に行ってよぉ! 亡くなった父親を名指しで罵倒だなんて、さすがにあたしでもンなことしたかったワケじゃ……」
「よせ、と私は言ったぞ。BURST戦士の問題点はベイガン自身の行いや言動にも言えることだから指摘する意味があったが、アルカデスのことまで言う意味がどこにあった? 本人と直接関係ない件まで批判するべきじゃない」
 ラハードに窘められて、ばつが悪そうに俯く紫影螺。この毒舌ミカルゲにも、意外に情に甘い一面があったようだ。
「色々言われて気に障ることもあったろうが、この紫影螺も以前BURST戦士と色々因縁があってね……ポケモンとして言わずにはいられなかったんだろう。理解してくれると助かる」
「因縁か……やたらBURSTのことについて詳しかったもんな。そんなところだろうとは思ってた。いいさ、言われても仕方ないような指摘ばかりだったし、たかが悪口ぐらい根に持っちゃいられないよ。硬い石やじめじめ肥やしの類が飛んでこないだけマシだからな……」
「ちょ、肥やしってあんた、それマジでやられたワケ……!?」
 多分に同情の篭もった紫影螺の声に、おれは無言で頷いた。
 TVで全国に伝えられた無様な敗北と、その後に続く組織によるネガティブキャンペーン。それまでBURSTこそ人類の革新であると喧伝してきたBURST戦士に対する反発もあり、生き残ったBURST戦士や関係者に対する風当たりは冷たかった。殊更にリーダー格の息子であるおれは格好の標的にされ、ほとぼりが冷めるまでナワメを離れて親族の間を転々としなければいけなかったのである。
「……『戦局も読めずに』って言ってたけど」
 叩きどころを見失って絶句している紫影螺に向かって、おれは言った。
 せめて父さんのことだけでも、擁護をしておきたかった。
「父さんはアルカデスになることを選んだ時、もう勝ち目がないことぐらい解っていたはずだよ。それでも、戦わなきゃいけなかったんだ。〝あの大戦〟は、宇宙人の侵略だって言われてた。自分たちが負けて敵の侵攻が広がっても、この地球に生きる人やポケモンたちが希望の全てを失ってしまわないように、BURST戦士として、地球人として、意地を示す戦いを残す――それが父さんの担った役目だったんだよ。あの時、敵の前線で指揮を執っていたポケモンには、バシャーモやバクーダのような炎タイプが多くいた。クルマユのままでは、戦い続けることさえ難しかったんだ。一瞬でも長く戦って意地を示すためには、アルカデスになるしかなかった。攻勢に出る隙を与えられないまま防戦するしかなくても、そのまま石化するしか未来はないと解っていてもね。だから、死ぬまで戦い抜いたこと、それ自体が父さんの上げた戦果だ。『何の戦果も上げられなかった』なんて、おれはそれだけは認めない……!」
 自らの意地を、存在を示す、そのための戦い。
 それは〝あの大戦〟を――反乱を起こしたポケモンたちも同じだった。組織に酷使され、潰されるだけの運命を断ち切り、彼らの居場所を人間に認めさせるために、ポケモンたちは戦いを始めたのだ。
 その経緯を知った時、おれを含めたナワメの誰も、父さんたちを死に追いやったポケモンたちを恨めなかった。愚劣な組織に対する怒りの方が強かったこともあるし、その点でよりポケモンたちに共感したのも事実だが。
「……でも結局、宇宙人なんて嘘っぱちだったんじゃん! そんな無意味な戦いで負けて、BURST戦士もナワメシティも廃れちゃって、後に何が残ったっちゅ~のよ……っ!?」
「少なくとも!」
 この一点だけは。
 何を言われても、譲れなかった。
「おれの心には、残った! だから……無意味じゃない!!」
 父さんは、あの劣勢の中、大勢のポケモンから集中砲火を浴びながら、遂に誰にも倒されなかった。
 最後の最後まで、諦めずに戦い抜いて、最期には相手の大将と対峙したまま――戦い続けたまま、石と化したのだ。
 その壮絶な死に様を、生き様を画面越しに見て、悲しいと思うより、悔しいと思うより、素直に美しいと心を打たれた。その憧れが、おれを病魔や虐遇の中で支えてくれた。だから、例え歴史に敗北と記されようと、おれは父さんを誇りに思う……!
「いい答えだ。勝ち負けだけでは本当の強さが計れるとは限らない。例え負けても、何を残せるのかが重要なんだからな。それはお前さんの先刻の戦いにも言えることだ」
 深く頷いて、ラハードはおれの言葉を受け止めた。
「さてベイガン、親父さんから受け継いだ志と今回の敗北を、お前さんはどう明日に繋げていく気だい? BURST戦士の抱える諸問題はもう解ったと思うが、それを抱えたまま、病気の体を酷使して、力尽きるまで無謀な野試合を続けるのか?」
 そしてすぐに、厳しい現実を突き付けてくる。
 原点を振り返って自分の立ち位置を確保したものの、八方塞がりの状況は何ら好転していないのだ。 
「他の方法なんか……思いつかない。この身体が動く内に、一試合でも多く戦って、ナワメの剣士として人に語り継がれるようなバトルを残すしか……」
「だがBURSTのバトルでは、そんなバトルを残すのは極めて困難だ。この先誰と戦おうが、昨日よりマシな戦いになるとは思えんね。いや、バトル自体受け付けて貰えないまま野垂れ死にする可能性の方が大きいか。嫁さんでも探して次代に望みを託した方がまだマシだろう」
「そのためにも、剣士としての名声が必要なんだ。現時点で何も持っていないどころか、病気持ちで未来すら持っていないおれに、嫁の来手なんて考えられないよ……」
 抜けられる道が、全く見付からない。
 狭苦しい部屋の中に、閉じ込められたかのようだった。
雷妃(ライヒ)ちゃんでよけりゃ嫁にやってもいいんだけど、子供を産めるわけでもないしねってぎゃああああああっ!?」
「……お前ら、励まそうとしてくれたのか、追い討ちをかけてんのかどっちだよ?」
 頼みもしてないのに、雷妃に分かりやすい拒絶の意を示させてくれた紫影螺へ、おれは溜息混じりにツッコみを入れた。
 そんな俺たちの様子に苦笑しながら、ラハードは言葉を進める。
「まぁ冗談はさておき、だ。思うにお前さんは、無理に何もかも背負い込もうとし過ぎなんだよ。ひとつふたつ、荷を減らすことをお勧めするね」
「荷を……減らす? どういうことだ?」
「自分が本当にやりたいことだけを残し、他は一度捨ててみるのさ。例えば……BURST抜きでバトルする、とかな」
「な……っ!?」
 思いも寄らぬ提案に、おれは激しく動揺した。
 ナワメの出身者として、BURSTを使わないバトルなど、考えられないことだったのだ。
「そんなに驚くほど突飛な提案かね? BURSTのバトルが条例で禁止されている上、無理して戦ってもポケモン一匹にも適わない有様では、最早そのBURST能力はお前さんの足枷にしかなっていない。実際、今回のバトルもポケモンを使うものとしての差が大きく出ただけで、いち戦士としての技量は決して悪いものではなかった。BURSTなど捨てて、生身で普通の剣を振るった方がまだ希望がある。お前さんにとって、剣士として名を揚げることこそが目的で、BURSTが手段でしかないのなら、BURSTを捨てて他の手段を選んだところで何の問題もあるまい。そうだろう?」
 困惑に凍てついた顔を、おれは横に振った。
「分からない……答えられないんだ。BURSTをすることとバトルをすることを、別々に考えたことなんて一度もなかった…………」
「だから、そこを切り離して考える時がきたのさ。お前さんにとって〝BURST戦士〟であることが本当に必須なのかどうか、じっくりと考えて見ればいい」
 荷物の中からBURSTハートを取り出して握りしめたまま、ラハードの言葉を何度も頭の中で巡らせる。
 結論を出すのに、そう時間は掛からなかった。
「……いや、やっぱり駄目だ。このクルマユとのBURSTは、先祖代々受け継いできた大切な能力だ。ナワメのBURST戦士は常に戦いの中に身を置き、戦いの中で散るのを誉れとする。おれのご先祖様たちだって、父さんのように戦死した人や戦傷が原因で命を落とした人が多くいるんだ。だけどこのBURSTハートだけは、確実に後継者の手に渡るように代々努力してきたんだよ。斃れたBURST戦士からBURSTハートを奪うことなんて当たり前の世界でね。そんなご先祖様たちの遺産を捨ててまで、剣士の名声だけ欲しいとはおれには思えないんだ。どんなにBURSTが無力と言われようと、俺たちとポケモンとの関係が酷薄と言われようと、それでもおれはこいつの力で戦いたい。その結果斃れるなら、何も残せなくても悔いはないさ!」
「不器用なんだな、お前さんは……」
 ラハードの静かな笑いが、動けないおれを打った。
 嘲笑いたければそうするがいい。結局、おれには他の生き方なんてなかったのだ。
「……では、もう一つの荷物は下ろせるか?」
「…………えっ!?」
 言われた意味が分からなかった。BURSTを捨てずに、他の何を捨ててバトルしろというのか? 病魔を捨てられるものならそうしたいが、それができたら苦労はないワケで……?
「BURSTを捨てられないなら、〝バトル〟の方を捨てるんだよ。BURSTを戦い以外の手段で活かしてみろってことさ」
「な…………っ!?」            
 その提案は。
 この夜最大級の、衝撃だった。
 暗闇の中に、光明の亀裂が走るほどの。
「BURST戦士に……BURSTに、バトルじゃない使い道があるっていうのか……!? そんなこと、考えたこともなかった……一体、何ができるっていうんだ……!?」
 軽くパニックに陥って、思考の整理が追いつかない。
 おれにとってはそれほどに、理解を超えた話だったのだ。
 途方に暮れて縋るように問い返すと、紫影螺が先に答えた。
「コンテストに出て芸でもすればぁ? 甲翅奏響(ビートルビート)をギター代わりにして音楽でも弾けば、意外にウケるんじゃね? って思うしぃ」
 からかっているとしか思えない口振りに、おれは憤慨して怒鳴り返した。
「またそんな愚弄しやがってっ!! BURST戦士の神聖な技を、そんな見せ物みたいな低俗なことに使えるものガギャアアアアアアッ!?」
 突然の衝撃に叩きのめされて振り返ると、目を吊り上げた縞々の顔がブルルルルッ! と唸りを上げて睨んでいた。
「雷妃……!? ど、どうしてここでおれに電撃制裁を…………!?」
「そりゃ怒るわよ。雷妃ちゃん、無類のコンテストファンだもん。芸の技とかはさっぱりだけど、その手の番組とかやってたら画面から離れないぐらい大好きなんよ」
 紫影螺の説明を聞いて、おれは2匹の顔を交互に見比べた。
「……えっと、電撃制裁がいかないってことは…………?」
「マジよマジ! 疑われるところからして失礼だわ! あたしらだってバトルばっかやってるワケじゃないんだっちゅ~の! あんたもそのバトルしか入ってない野蛮な石器時代頭をかち割って、もっと色々やってみろっちゅ~ことよ! BURSTとハサミは使いようよ!?」
「お前はとことんおれをバカにしないと気が済まないのかよ!?」
「……真面目な話、コンテストも選択肢の一つだぞベイガン。バトルなどより余程、BURSTする意義があると私は思うがね」
 そう言って、ラハードは懐から銀色の小箱を取り出した。
 前面に伸縮する円筒を、背面に液晶画面を持つ、よくあるタイプのコンパクトデジタルカメラだった。
「先だって私は、BURST戦士の弱点は視野の狭さにある、と言った。だが、視野が狭いということは、何も悪いことばかりじゃない。丁度このカメラのように、」
 と、ラハードの指が、カメラ上部のレバーを傾ける。
 広角(ワイド)から望遠(テレ)へ。
 円筒のレンズ部が一杯まで伸び切り、液晶画面に部屋の奥の壁を拡大して映し出した。
「より細かくものを見ることができる、ということでもあるのさ。常に周囲の状況を測って臨機応変に当たることを要求されるバトルには不向きでも、職人技が要求されるような場面では、その精細な視点こそが役に立つ場合もあるんだよ。バトルで勝てないからといって、BURSTが何の役にも立たないと決めつけるなど、それこそ視野の狭い話だとは思わんかね?」
 目から鱗がごっそりと剥がれ落ちた。
 見えていなかった世界が、目の前に広がっていく気がした。
「それに、考古学をやってる友人の話によれば、BURSTという名は元々Birth(バース)――誕生という言葉から来ているという説があるそうだ。それが何の誕生を指していたのかは、今となっては知る由もないがね。全ての命は、別の命と出会い、何かを生み出す……BURSTも人とポケモンの出会いの一つなら、戦いの力として扱うより、もっと創造的な用途に使うことこそが本来の役目だったんじゃないかな」
 おれには想像できないようなことだった。
「どうすればいいっていうんだよ……? おれはこれまで父さんやご先祖様たちの、戦士の道をひたすら追いかけ続けてきたんだ。いきなり他の道を探せだなんて言われても、ワケが分からないよ……」
 BURSTハートを握り締めたまま、苦悩に頭を抱える。
 まるで突然果てしない荒野の真ん中に放り出され、迷子になった気分だった。
「迷った時には、一歩下がって考えるのも一つの手だぞ。そうすることで視野が広がり、自分の立ち位置も見えてくる。いくら精細にものが見えても、闇雲に突っ走ってばかりでは……」
 適当に窓の外へカメラを持つ手を向け、ラハードはシャッターを切った。
 フラッシュの閃光が、夜空に散っていく。
「自分が何を見ているのかも、判らないままだからな」
 液晶画面には、何も写っていなかった。
 どことも知れない真っ暗な闇だけが、一面を染めていた。
 窓を覗いて、カメラが撮ったであろう空を、視野を広げて眺めてみる。
 そこには数多の星々が、色とりどりの光を描いていた。
 まるでBURSTが本来持っていた、数多くの可能性を暗示しているように、おれには感じられた。
 少し視野を広げるだけで、BURSTで紡げる未来はいくらでもあったのだろう。
 ――だけど。
「やっぱり、駄目だ……!」
 さっきと同じ言葉を、違う意味を込めて、おれは吐き捨てた。
「無理なんだ。違う道なんて、選びたくても選べない……一歩下がってやり直す時間が、もうおれには残されてないんだ!!」
「病気か……」
「あぁ、そうさ…………」
 乱れた鼓動を震わせる左胸を、おれは掻き毟るように握り締めた。
「おれはずっと、BURSTのバトル一筋に生きてきた。バトル以外のことなんて、何も知らない……今更新しいことをゼロから始めたとして、実を結ぶまでにどれだけの時間がかかる!? それより早く、病魔がおれの心臓を喰い破るだろう。とっくに引き返せない道に、おれは迷い込んでしまっていたんだ……」
 空に輝く可能性の星は、おれにとってはどんなに手を伸ばしても届かない星だった。
 白いシーツに、滴が落ちる。
 負けても、罵られても、涙なんて流れなかったのに。
 こんな気持ちになるのなら、星空を見上げなければよかった。バトルの他に道があったなんて、知らなければよかったんだ。
 羽化できない小虫は、飛べないまま繭の中で朽ちていく。
 結局、おれには他の生き方なんて、なかったのだ。
 ついさっき誇り高く掲げたのと同じ言葉が、今は絶望となっておれを圧し潰していた。 
「……つまり、こういうことだな」
 不意に。
 銀色の眼光が、妖しさを秘めておれに語りかけた。
「時間があれば、心臓さえ治れば、お前さんは無謀な野試合を止め、BURSTを創造的な目的のために使うことを考える――そうだな、ベイガン?」
「……!?」
 ほんの一瞬だけ、おれは答えを躊躇した。
 そもそも身体さえ健常であるのなら、地道に野試合の相手を延々と探し続けることだって可能ではあるのだ。
 だけど、もし他にBURSTを、クルマユを活かせる方法があるのなら。
 唾を飲み込んだ後、おれはゆっくりと頷いた。
 ラハードは、微笑んでおれに応えた。
「その覚悟が本当なら、治す方法はないわけでもない」
「……!! ほ、本当か!? …………い、いや、ちょっと待て!」
 はっと気が付いて、おれはラハードを制した。
「まさかその方法って……心移植じゃないだろうな!?」
 実は、おれの病状を直す方法は、元々皆無というワケではなかった。
 病根である心臓を、丸ごと入れ替えてしまえばいいのだ。
 だが。
「採れないんだろう、その方法は」
 ラハードは、そのことも見透かしていた。
「夕べからお前さんの身体を調べさせてもらったが、確かに移植するのが、お前さんの体を治す一番確実な方法だ。私が知る同様の症例でも、完治したのは心移植した場合だけだった。適合する提供者(ドナー)さえ見つかれば、今の医学なら十分健康な身体になれるだろう。だが、」
 黒い指が、おれの左胸を差した。
「お前さんの心臓は、それ自体がBURSTトリガーだ。移植してしまえば、2度とクルマユとBURSTできなくなる。それはお前さんの望むところではないんだろう?」
「……あぁ」
 恋人がいるのに、生殖器系の病気を患った人って、こんな気持ちになるのだろうか。
 それでも生きる方を望む人もいるのだろうが、おれは断じて御免だった。
「BURSTは……おれの人生そのものだ。さっきも言ったが、捨てて生きながらえるぐらいならBURST戦士のまま斃れた方がマシだ。他の何を失っても、心臓(ハート)だけは絶対に替えられない!」
「……だろうな。BURSTを捨てるかどうか聞いたのも、実はそのことだったのさ。お前さんがBURSTを捨ててバトルを選ぶというのなら、私も心移植を勧めるつもりだった、が、あくまでもBURSTを続けたいというのであれば、リスク覚悟で別の手段を執るしかないな」
 別の手段。
 その言葉に希望を見いだして、おれは訪ねた。
「じゃあ、本当に治せるんだな!? BURSTをそのままに、おれの心臓を……!?」
「方法はある。理論上はな。こんな手段を人間に試すのは、私の知る限り初めてのことだ。だからリスクは極めて高い。何より……」
 頷きながらも、ラハードは厳しく顔を引き締めて言った。
「成功するには、お前さん自身の努力が必要不可欠になる」
 戦慄に震える、心臓を押さえ。
 おれは静かに、ラハードの説明を聞いた。
「お前さんの病気は、心腫瘍の一種だ。心房内で膨れ上がった腫瘍が、心臓の動きを阻害している。単純に考えれば、この腫瘍だけを切除すれば治療できそうだが、この腫瘍は周囲の心組織に細かい枝を張り巡らせていて、本体を切り離そうとすれば、枝が心組織を破壊する。だから心臓ごと入れ替えない限り、治療の方法はない……そうだな?」
「あぁ。実は一度、心臓を全部摘出して、腫瘍の切除を試みたことがあるんだ。腫瘍に少しメスを入れただけで、枝部分が過敏に反応したらしいよ。色々薬品とかも使って治そうとしてくれたそうだけど、結局どうにもできずに元に戻すしかなかったらしい……もちろん全身麻酔をかけられてたから、俺自身は何も覚えちゃいないけどね」
 服の上から手術痕をなぞり、おれはラハードに問いかける。
「それで、どんな奇策だったらこの難病を治せるんだ?」
 緊張に瞳を尖らせながら、ラハードはフッと笑みを浮かべた。
「それはな、ベイガン。お前さんがBURST戦士だからこそ使える方法なんだよ。BURSTの力を借りるんだ」
「……BURSTの!? どういうことだ、BURST状態でメスを入れたって、出てくるのは……」
「クルマユと融合した健常な心臓、だな。肝心の病巣がBURSTハートの中に守られてしまうため、BURST状態のまま手術しても意味がない」
「分かってるんじゃないか。だったら一体、BURSTをどう使うっていうんだ!?」
 ますます当惑が深まる。
 何か、とんでもない答えを聞かされそうな予感がした。
「つまり、順番はこうだ。まず生身のお前さんの心臓から、病巣である腫瘍を切除する。その直後、心組織を破壊される前にお前さんはクルマユとBURSTし、クルマユの心臓と融合すると同時に患部をBURSTハートの中に送り込む。本体さえ取ってしまえば、枝だけならBURSTハートの治癒能力で排除できるはずだ。それが完了するのを待ってから、BURSTを解除すればいい」
「……………………はぁ!?」
 最初は、自分の耳がどうにかなったのかと思った。
 もう一度、聞いた順番を頭の中で並べ直す。
 おかしい。どう考えても、本当にとんでもない答えしか出てこない。
「ちょっと待て。生身で手術を受けて、手術の後でBURSTする……って言ってるんだよな? けどそれだと、おれの意識が回復する前に、枝に心臓を破壊されてしまうんじゃ…………?」
「そりゃそうだ。手術の後では間に合わんよ。だから、BURSTするのは手術の後ではなく、腫瘍を切除した直後……手術中ということになる」
「待て待て待て待て!?」 
 聞き違いじゃなかった。やっぱりとんでもない答えだった。
 疑うべきはこっちの耳じゃない。相手の頭の方だ。
「気は確かなのかあんた!? 心臓の手術だぞ!? 全身麻酔は必須だろ!? どうやってBURSTすればいいんだ!? 寝言でBURSTしろとでも言うつもりか!?」
「麻酔はかけない」
 こともなげに、ラハードは言い放った。
「ベイガン、お前は麻酔抜きでこの手術を受け、BURSTするんだ。それがお前の命とBURST能力、両方を救うための唯一の方法だ」
 完全に顎が落ちて、しばらく閉じることができなかった。
「無茶苦茶だ……」
 唇が乾いた頃、おれは何とか声を吐き出した。
「何をバカなことを言ってるんだ!? 麻酔抜きで胸を開けっていうのか!? ってよく考えたら、切除直後って縫合する前って意味かよ!? 手術のために人工心肺に移した血はどうするんだ!? 無理だ! どこをどうしたって無理に決まってる!!」 
「無理じゃない」
 立ち上がったラハードが、つ、と左手を挙げる。
「お前さんの生きたいという意志と、私の技量……そして、」
 パシッと、突然飛んできたモンスターボールがその掌に収まる。
 ボールが飛んできた方を振り返ると、今までそこにいたはずの紫色の渦が消えていた。
 では、あれは紫影螺が纏っていたモンスターボールか……!?
「こいつの能力があれば、それは決して不可能なことではない!!」
 通常のサイズに戻ったボールから突き出たボタンを、ラハードの真っ黒な指が押す。
 蓋が開き、転がり落ちたそれを、ラハードは右手で掴み取った。
 ミカルゲの本体の石、ではなかった。
「……!?」
 それよりもずっと見慣れた、よく知っている物だった。
 六角形にカットされた、赤く透き通った宝石。
 紛れもなくそれは――
「ばっ、BURSTハート……!? そんな、バカな!?」
 予想もしていなかったボールの中身に、釘付けになったおれの目の前で。
 ラハードはそれを左眼の上に、おそらくそこが彼のBURSTトリガーなのであろう場所に掲げ、厳かな声を響かせた。

「――BURST!!」

 光輪が閃いたあとに、岩の鎧に覆われた足が立っていた。
 腰から上は、紫色に揺らめく人型の影。
 肋骨の形に浮かび上がった燐光が、胸元を緑色に飾っている。
 その上に浮かぶ黒い精悍な顔には、やはり緑の燐光がアイマスクのように覆っている。
 その左眼に輝くのは――深紅の、BURSTハート。
「ラ、ラハード……やっぱりあんた、BURST戦士だったのかっ!?」
「違うと言っているだろう」
 どこからどう見てもミカルゲと融合した姿で、しかしあくまでもラハードは否定する。
「何故なら私はこの能力を、バトルのためには使わないからな」
「あ…………っ!?」
 出会って最初にラハードと交わした会話と、手術の話に入る直前に交わした会話とが、一本の線に繋がった。
「そっ……それじゃまさか、『BURST戦士ではない』っていうのは、単に〝戦士〟じゃないということ……!? 戦わないBURSTの使い道を、とっくにあんたは実践してたっていうのか!?」
 初めてラハードを見た時に感じた共感覚は、やはり正しかった。
 その上でラハードは、全て真実を語っていたんだ。
「そういうことだ。BURSTによって得た能力を、人やポケモンを癒すために使う〝BURST医師〟。それが私だと言うことなのだよ!!」
「ばっ……BURST……医師、だってぇ……!?」
 相次ぐ怒濤の衝撃に、またしても思考が追い付かず。
 取り敢えずおれは、思ったままを口にした。
「語呂悪っ……!? せめて〝BURSTドクター〟とかにならなかったのか!?」
「私もそう思う!! んだが、こいつがなぁ……」
「だってさぁ、それを言うのなら〝BURST戦士〟だって相当な語呂の悪さじゃん。それに合わすこと考えたら、BURST医師でもいいって思うしぃ」
 そのコギャル言葉は。
 ラハードの左眼を、さながら額帯鏡*2のように覆ったBURSTハートから、発せられていた。
「そ、そうだ、紫影螺!? お前がどうしてBURSTハートの中に……い、いやいや、そうじゃなくて……」
 正しい順序に情報を直して、おれは再度問いかけた。
「どうしてBURSTハートに封印されているお前が、普通に出てきたり喋ったりできていたんだ!? それは無理なはずだ!!」
 本来、BURSTハートのポケモンの声を聞くことができるのは所有者だけ。他の人間とは一切のコミュニケーションを取ることができない。
 おれのクルマユなど、心を交わしたときにBURSTハートで会った切りで、以来声も聞いていないのだ。
 なのにこの紫影螺ときたら、話すどころか姿を現して、自らバトルまで行っていたのだ。モンスターボールを土台に着ていた他は、まるで外にいるポケモンと何も変わらないかのように。
「あたしがミカルゲだから、よ」
 BURSTハートの中に得意げなドヤ顔を浮かばせて、紫影螺はおれの問いに答えた。
「人はあたしらのことを、〝封印ポケモン〟って呼んでるじゃん。その名が示す通り、あたしらミカルゲの本体は要石っていう石コロに封印されてるの。ご先祖の悪行が原因とか言われてるけどね。だからあたしらは、生まれて最初にその封印を破らなきゃ動くこともできないのよ。おかげで他のどんなポケモンよりも、封印を破る能力に長けちゃっててね。取り分けあたしみたいな特性〝すり抜け〟のミカルゲなら、BURSTハートの封印を破って外に出てくることぐらい朝飯前なワケ。他のすり抜け特性のポケモンにはできない、封印破りに特化したミカルゲだからこそできるオンリーワンの特技だっちゅ~の!!」
「もっとも、要石をBURSTハートの中から出せないために重量のバランスが悪く、モンスターボールを重石代わりに履いていなければまともに動けんのだがね」
 ラハードの補足が加えられて、紫影螺に関する疑問のほとんどが解決した。
 道理で……BURSTハートのポケモンのことについて、やたら詳しかったワケだ。
 おれたちBURST戦士のポケモンへの態度に対してあれだけ厳しかったのも、今なら納得だ。
 あれは全部、紫影螺自身の経験からきた、BURSTハートのポケモンとしての意見、だったんだ……。
「そして、このBURSTでできる能力が……これだ!!」
 ラハードは雷妃の傍らに立ち、縞柄の胴に手を添えて、エネルギーを集中させる。
幽体術式(アストラルオペレーション)!!」
 するり、と、影の腕が雷妃の胴に埋没した。
 腕は音もなく雷妃の身体を貫通し、反対側から生えた手が机のコップを掴み取る。
 そのまま、ラハードは腕を引き抜いた。
 掴んだコップも、雷妃を通り抜けて現れた。 
 一連の行動の間、雷妃は何事もなかったかのように佇んでいた。
「すり抜け特性と、ゴーストタイプの技〝影打ち〟を応用したこの技があれば、麻酔も切開もせず、患者に一切の苦痛も負担も与えることなく、病巣だけを切除することが可能なのだよ*3
 これが、ゴースト・悪タイプのミカルゲが、〝医者の助手〟をするという謎の真相。
 患者と執刀医、双方がBURSTハート所有者だからこそ、無理だと思われた手術も〝無理〟じゃなくなる……!!
「……だがな、切除の際の痛みは幽体術式(アストラルオペレーション)の効力で消すことができるが、枝が心臓を浸食する痛みは防げない。私も可能な限り、枝の反応を押さえ込むつもりだが……苦痛を乗り越えてBURSTできるかどうかは、お前さんの精神力次第だ。もしできなかった場合、やり直しはきかない。間違いなく死ぬことになるだろう。命を懸けて生を掴み取る覚悟がお前にはあるのかベイガン? もしその気なら、今すぐこの場でも手術は可能だが」
 そうか。腫瘍だけを直接抜き取れるなら、人工心肺を使って患部の血を抜いておく必要もない。大掛かりな設備もいらないんだ。
「……やろう」
 即断を、おれはラハードに告げた。
「どうせ使い捨てるつもりだった命だ。失敗を怖れる理由はない……やってくれラハード。今すぐ、この場で!!」

 ××××

第4章・死と生と 


 ××××

 一度BURSTを解除したラハードたちは、即座に手術の準備を開始した。
 各種器具の設置、おれの身体や室内の除菌。黙々とラハードの作業が進んでいく。
 ……ラハードは黙々としていたが、紫影螺の方は相変わらずやかましかった。
 何を言っていたのかは、脳が記憶するのを拒否したので定かではないが、断片を拾うと、
『蜂蜜色の髪の少年を宿に連れ込んで』とか、
『ベッドの上に寝かせて服をはだけさせ』とか、
『太く長く逞しいそれを裸体に潜り込ませ』とか、
『熱く脈動する大切な場所を弄くって探り当てる』とか。
 もしかしたら繋ぎ合わせれば割とあっさり意味が分かったりするのかも知れなかったが、手術前に腐った妄想に触れたりしたら、胃液が逆流しそうなのでやめておく。それこそ手術に差し障るので電撃制裁してもらうわけにもいかず、やめろと言っても聞かないので満場一致で無視を決め込むことにした。こんな奴をBURSTのパートナーにして平静を保っていられるラハードは、それだけで尊敬に値するというべきだろう。
「雷妃……今の内に頼んでおくよ。もしこの手術に失敗して、おれが死んだら……電撃制裁は、あいつが死なない程度にやってくれ! 冥土の土産にしても要らな過ぎる!!」
「いやあんた、ここは『ブッ殺すぞ!!』ぐらい言って気合いを付けるところじゃん」
「誰が気合いを削いでるんだよこの悪霊!!」
 結局釣られて反応してしまった。ふてくされ気味にベッドに身を横たえる。
「ラハード、あんたにも頼んでおくことがある」
「分かった。雷妃が紫影螺を殺さないようにしっかりコントロールするから心配するな」
「いや、そのことじゃなくてさ……おれが死んだ時は、死体を解剖するなり標本にするなりして、医学の発展に役立ててくれよ。ただ荼毘に付されて骨になるよりは、死に甲斐があるからな」
「……つまらんことを言うのなら、今からでも解剖手術に切り替えるぞ?」
「…………」
 おれが応えずにいると、ラハードは小さく溜息を吐いて、宥めるように言った。
「ベイガン、失敗した時のことばかり考えず、もっと気を強く持ちたまえ。何度も言うが、この手術の成否はお前さんが握っているんだからな」
「あぁ、分かってる。大丈夫だ」
 気を強く持て、か。
 おれは、気弱になっているんだろうか……?
 そっと胸に手を当て、自問してみる。
 ……いや、気弱になんかなってない。
 死ぬことなんか、少しも怖れていないのだから。

 ××××

「後は、執行するだけだ」
 準備を全て整え、再度紫影螺とBURSTしたラハードがベッドの脇に立つ。
 おれは上半身裸になって横たわっていた。着衣のままでも幽体術式(アストラルオペレーション)は可能だが、少しでも遮る物が少ない方がやり易いのだそうだ。
 BURSTハートを持った左手を胸のそばに添え、おれはラハードを見上げて言った。
「とっくに覚悟はできてる。いつでも始めてくれ」
 頷いて、掌をおれの左胸の上に押し当てるラハード。BURSTした顔の左眼を覆ったBURSTハートの中で、紫影螺ももう軽口は叩かずに真剣な気配を漂わせている。
「では、行くぞ……幽体術式(アストラルオペレーション)!!」
 気合いと共に、紫の腕がおれの胸に入り込む。
 感触としては、何も感じなかった。 
 ただ、ふたりの意志が、自分の中に入り込んでくるイメージは感じ取れた。
 紫影螺の視線が、おれの体内を透かして捕らえ。
 ラハードの視線が、目指す場所を的確に捕らえる。
 二つの心が。おれの心臓に辿り着いて病巣を切除する、という一つの目的のために、鮮やかな縄目を描いて一つに絡み合いながら突き進んでくる。
 これこそまさに、完全なるBURSTの概念そのものじゃないか。
 これに比べたら、おれとクルマユの縄目なんて、ただクルマユに力を巻き付けてもらっていただけだ。(ポケモン)に世話される子供だ、と紫影螺に責められた通りだった。
 おれに、彼らのようなBURSTができるのだろうか?
 BURSTハートの中でクルマユと何を話したのかすら、いまだに思い出せないおれに――――
「……病根を捕らえた」
 ラハードの告げた声で、おれは我に返った。
 脈打つおれの鼓動に、ラハードと紫影螺の力が突き立てられているのを感じる。
 その力に挟まれているのが、生まれてからずっとおれを苦しめ続けてきた元凶。思えば正確な位置を知覚するのは初めてだ。
「一気に切除する。合図したら即座にBURSTしろ。……できるな?」
 こんな完全なBURSTが、できるのか、と。
 そう問われたように、おれには思えた。
「あぁ。……やってやるさ!」
 胸に添えたBURSTハートを握る掌に力を込め、おれは心を奮い立たせた。
 できなければ、どの道ここで終わる。
 怖じ気付いて引き下がったところで、未来なんてない。
 やるしか、ないんだ!!
「よし、切除……開始!!」
 胸の中でエネルギーが急速に集中し。
 動いた。
「ぐあ……っ!!」
 瞬間、心臓を引き裂く凄まじい激痛がおれを襲う。
「今だ! BURSTしろベイガン!!」
「ぐ……ば……BURS……っ」 
 苦悶に詰まる喉が、おれの言葉を遮った。
 駄目だ……BURSTできない!!
「どうしたベイガン! 早くBURSTするんだ! くっ!!」
 ラハードの力が、心臓を包み込む。痛みが僅かに和らいだ。
 力を失いつつあったおれの左手を強引に胸に押し付けて、ラハードは再度おれに合図する。
「もう一度やれ! 早く」
「BU……ST…………」
「それじゃおっぱいじゃないか!? BURSTだ! しっかりしろっ!!」
 言葉が紡げない。もう、喉に力が入らない。
 痛みが膨れ上がる。意識が、圧し潰されていく…………。
「雷妃! スパークだっ!!」
 遠く嘶きが聞こえたと思った瞬間、衝撃と共に意識が鮮明になる。
 雷妃……ゼブライカをラハードが連れていたのは、乗用のためだけじゃなかったのか。電気ポケモンとして、除細動器*4の役目も担っていたワケだ。
「まだだ! 諦めるな! お前は戦士なんだろう!? なら戦え! 痛みと戦うんだ!!」
 ラハード……この体制では自らもスパークの余波を受けただろうに、そうまでしておれを呼び覚まそうと……っ!
 何としてでも応えなければならない。負けて、たまるかっ!!
「……BUR…………」
 けれど、やはりもう、喉はおれの言うことを聞いてくれなかった。
 なおもおれに呼びかけ続けるラハードの声が、闇の向こうに遠ざかっていく。
 おれには……無理だったんだ。
 戦士を気取りながら、自分の命一つ守れなかった……

「ったくあんたはっ! いい加減にしろっちゅ~のっ!!」

 ラハードの左眼から放たれた、耐えかねたような紫影螺の声が、やけに強く響いた。
 けれど、その罵声の矛先は。
「いつまで引きこもってるつもりだ! 泣き虫クルマユ!!」
 おれに向けられたものでは、なかった。
 おれの握るBURSTハートに向かって、紫影螺は叫んでいた。
「あんたがこれまで言うべき事を言ってこなかったから、このバカがどうしたらいいか分かんなくなって、こんな所まで迷って来ちゃったんでしょ~がっ! 自分に責任がないなんて思わないでよね!」
 鋭い舌鋒だった。
 おれを批判していた時よりも、更に鋭さを増していた。
「あたしの見る限りでもこいつってば、バカでバカでバカで、もひとつオマケにバカで、可愛く言ってアンポンタンだけどっ!」
 おいこら……。
「だけどねぇっ! BURSTが戦いの役に立たない能力だって聞かされても、さっさとBURST捨てて心移植しちゃえば確実に助かるんでも! それでもあんたと一緒にいる方がいいって言っちゃえるぐらいの気概は見せてんじゃん!?」
 ……………………!!
 認めていて、くれたのか。
 じゃああの時、ラハードがおれを不器用だと笑ったのも、嘲ったのではなくて、評価してくれたから、だったのか…………。
「今度はあんたが自分を見せる番だよ。こいつに不満があるんなら文句ぐらい言いなさいよ。 相棒(パートナー)だったらケンカぐらいしなさいよ! ポケモンってもんはね、泣いて笑ってケンカして当ったり前だっちゅ~の! あんた、それで本当に……っ!!」
 一際激しい一喝が、BURSTハートを打った。

「それで本当に、〝ホンキで生きてる〟って言えるワケぇっ!?」

 ホンキで、生きてる。
 懐かしさを感じる言葉だった。
 幼い日、独り修行に明け暮れる中、壁の向こうで遊ぶ子供たちの、歌の文句に聞いた憶えがある…………。
「嫌われたくないからって、捨てられたくないからって、自分を誤魔化して流されててど~すんのよ!? 解ってんの!? もう次はないんだよ!? 今ここで何もしなかったら、あんたが初代の人と築いた絆がなくなっちゃうんだよ!? 何もかも終わってひとりぼっちになってから、死ぬほど後悔したって遅いんだからね! 涙が枯れるほど泣いたって、もう取り返しは付かないんだからねっ!!」
 いつしか、涙声が混じっていた。
 悲痛に声を上げて、紫影螺は叫んでいた。
「それが嫌なら心を吐き出せ! ホンキで生きてるあんたの気持ちを、今すぐ残さずこいつの前にぶちまけろ! 聞いてんのかこのボンクラァーーーーッ!!」

 あんまりクルマユのことを、責めないでやってくれよ。
 憧れだったクルマユのBURST戦士になれた――ただそれだけで、おれの人生は本当に幸福だったんだから。
 それこそ、有頂天になるあまり、クルマユの言葉も忘れてしまうほどに。
 おれの方こそ、その嬉しかった気持ちを、自分の心を、ちゃんとクルマユの前で吐き出してやるべきだったんだ。
 父さんたちの名誉だの、BURST戦士の力を知らしめるためだの、そんな用事や都合を並べ立てるより、おれ自身の気持ちこそ伝えなきゃいけなかったんじゃないか。
 挙げ句、それよりももっと大事なクルマユの言葉を、この土壇場に至ってもまだ思い出せないときた。
 お約束ならそろそろこの辺で走馬燈印の記憶復旧サービスが働いて、クルマユが何を言っていたのか思い出させてくれそうなものなのに、それすらないってことは本当にまるっきり聞いてなかったんだなおれは。
 責められるべきは、全てこのおれだ。
 ごめんな、クルマユ。
 子供も残してやれなかったけど、どうかなるべく早く、お前の言葉をちゃんと聞いてくれる人に貰われてくれ。
 ラハード、紫影螺、雷妃。折角こんなにしてもらったのに、応えられなくてごめん。でもたくさんのことを教えてくれたおかげで、自分がバカだったことを納得して死んでいけるよ。
 ありがとう。ごめん、みんな。
 さよなら。

「…………いや……」
 …………!?
 消え失せかけた意識が、幽かな囁きに呼び覚まされる。
 気付いたそこは、宿の一室ではなかった。
 深い霞が渦を巻く、荘厳な空間。
 ここは……そうだ。かつて一度だけ入った、BURSTハートの中の世界だ。
 ならば、おれに呼びかけたあの囁きは。
「さよならなんて……いや…………っ!」
 もう囁きとは呼べない、ハッキリとした訴えを聞いて。
 おれはその声のした方に、左手を包む暖かな温もりに、意識を向けた。
 BURSTハートを握っていたはずの手は、緑の葉に握られていた。
 葉に覆われた、虫の肢に。
「クル……マユ…………!?」
 かつてこの場所で、一度だけ対面したおれのBURSTポケモンが、今おれの傍らで、身を包んだ葉を震わせていた。
 おれの手を掴んだ腕の葉に顔を埋めていて表情は分からなかったが、微かに覗く瞳は悲しい潤いを帯びていた。
「いやだっ、て……そう言ったら、聞いてくれるんですか…………?」
「…………えっ!?」
 おもむろに、クルマユが顔を上げる。
 涙でぐちゃぐちゃになったその顔で、クルマユは。
「私の言うことなんか、これまで誰も聞いてくれなかったじゃない! あなたも! お父様も! お祖父様もその前も、ずっと!!」
 怒っていた。
 泣き咽ぶ唇から、激しい非難をクルマユは浴びせかけていたのだ.。
「私はいつだってお願いしてきたのに! みんなお願いを聞いてくれるって約束したのに、誰も守ってなんかくれなかったじゃない!!」
 何を、言ってるんだクルマユ。
 何を、お前は、あの時。
「最後に残ったあなたまで、約束を守らずに、守ろうともせずに逝っちゃうんだ!! お願いしたのに……」
 あの時。
 おれは、何、を――――
「『自分から命を縮めたり捨てたりするような戦いはしない』って、お願いしたのに! 約束してくれたのに…………っ!!」
 ……………………!!

 見つからなかったジグソーパズルのピースが、ようやく在るべき場所に嵌まった。
 できあがった絵は、しかし想像を超えて酷いものだった。
 何を話していたか忘れたまま、振り返りもせずにBURST能力を好き勝手に使っていたことを悪いとは思っていた――それぐらいにしか、思っていなかった。
 全て分かってみれば、それどころではない裏切りを、おれは……おれたちは犯していたのだ。
 ナワメのBURST戦士は常に戦いの中に身を置き、戦いの中で散るのを誉れとする。おれのご先祖様たちも、父さんのように戦死した人や戦傷が原因で命を落とした人たちばかりだ。
 ところが、クルマユはずっと、代々に渡って、そんな戦いをしないよう訴え続けてきたという。
 おれたちに傷付いて欲しくなくて、少しでも長く一緒にいたくて、そうお願いしていたのだろう。 
 それだけ、おれたち一族のことを、大切に思ってくれていたのだろう。
 なのに、そんなに大切に思われた人間たちは、クルマユのお願いを聞くことを約束してBURSTの力を授かりながら、悉く約束を反故にして命懸けの戦いに身を投じ、みんな若くして死んでいったのだ。
 そんな残酷な裏切りを常に目の当たりにし、その痛みまでをも押し付けられて、クルマユは一体どれほど苦しんできたのだろうか。
 想像しただけで、気が狂いそうになる。
 いや……想像なんてつけられない。
 ご先祖様たちのことは責められない。父さんを含め、みんなそれぞれの時代で命を払わなければいけない理由があったのだ。無駄に捨てられた命などなかったと、この血に懸けて言い切れる。
 それに引き替え、おれ自身ときたらどうだ!? せっかく世の中が平和になったというのに、生来の病気を言い訳に自暴自棄になって、闇雲にバトルして華々しく死のうとばかり考えてきた。
 クルマユとの約束を守ることを考えたら、心移植さえ受け入れる方が正しかったのに。例えBURSTできなくなっても、この手で次代に受け継がせるまで側に置いてやるべきだったのに。
 挙げ句、ラハードたちのおかげでBURST能力ごと救われる機会を与えてもらいながら、おれはまた『どうせ使い捨てるつもりだった命だ。失敗を怖れる理由はない』などと……! 死を怖れなかったのは、生きようとしていなかったからだ。そんな自分の命に後ろ向きの姿勢で、この手術を成功させられるはずなんてなかったのに!!
 おれが浅はかで愚かな行動を繰り返す度に、クルマユの心を傷付けてきたことに気付きさえしないで。
 酷いことをした。
 申し訳のないことを、してしまっていた…………。
「ごめん……クルマユ。おれが悪かった。本当に、ごめんなさい…………」
 謝りながら、クルマユの小さな身体を抱き寄せる。
 無視され、裏切られ、傷付けられながら、それでもおれたちのために心を砕き続けてくれた、心優しいポケモンの温もりを魂に感じて。
 死ねない、と強く思った。
 死にたいほど情けなくても、死ぬワケにはいかなかった。
 クルマユをこんな目に遭わせてきたおれに、死の安寧に身を委ねる資格なんかない。
 今おれが死んだら、我が一族はクルマユを裏切り続けたままで終わってしまう。その罪にようやく気付けたのに、是正もせずに死んでたまるか!!
「クルマユ……おれ、死にたくない」
 格好悪いと思った。
 生きることに、未練たらしく縋るなんて、みっともないと。
 だけど、もうそれでも構わない。
「生きてお前との関係を築き直したいんだ。おれにチャンスをくれ。時間をくれ。命をくれ!」
 胸に顔を埋めたままのクルマユに、体裁をかなぐり捨てて呼びかける。
「格好良く死にたいなんて二度と思わない! アルカデスの力ももう要らない! おれは……っ!!」
 心からの本音を、赤裸々にさらけ出して、おれは。
「おれは、お前と生きる未来が欲しいんだ! クルマユ!!」

 弾けるように、クルマユがおれを仰ぎ見た。
 笑顔だった。
 涙を煌めかせながらも、見たこともないような至福の微笑みを、クルマユはおれに向けていた。
 突如、目映い閃光がおれたちを包み込む。
 クルマユの笑顔が、光の中に融けていく。
 おれの中に、光が満ち溢れていく。

 全身を駆け巡る、痛みを感じる。
 痛みが駆け巡る、全身を感じる。
 おれは、まだ、生きている……!!
 心臓を切り刻む激痛が、おれを再び死の淵へと引きずり込もうと責め苛む。
 だけど、おれたちの一族がクルマユにしてきた仕打ちを思えば、たかが胸の痛み一つ、耐えられなくてどうする!?
 この痛みは〝壁〟だ。
 おれとクルマユの心を隔てていた壁。
 おれを戦士というちっぽけな殻の中に封印していた壁。
 こんな壁、ぶち破ってやる! 突き抜けてやる!!
 そしてこの向こうで、鮮やかな縄目を描いておれを支え続けてくれているラハードたちのところに、絶対に辿り着いてやるんだ! クルマユと、一緒に!!

「目ぇ覚ましたっ!!」
 開かれた視界の中、覗き込んだラハードの顔の上で、紫影螺のBURSTハートが鋭く光る。
「いけぇーーっ! ベイガン!!」
 ラハードの絶叫に、おれの精神は鞭打たれた。
 体内に広がっていく光が、爆発的にせり上がってくる。
 その勢いのままに。
 おれは喉笛を貫く息吹に、確かな命の証に魂を込め、叫びへと変えて吐き出した。

「BURァァSTォォォォォォォオオッ!!」

 その瞬間。
 結び合うおれたちの絆が、完璧な縄目を描いた。

 ××××

「気が付いたか」
 ようやく意識が、明確な形を成した時。
 変わらずBURSTしたままのラハードの顔が、窓から差し込む朝の日差しに照らされていた。
「ラハ……ード…………」
「よかったあぁぁっ!!」
 雷妃の熱い唇で頬を舐められ、おれは完全に覚醒した。
 まだ自分の身体に、あの優しい温もりが宿っているのを感じる。 
「ラハード、おれ……できたんだ。クルマユと、本当のBURST……」
「クルマユではない」
「…………え?」
 否定されて戸惑うおれに、ラハードは黒い口元を綻ばせて応える。
「もう、クルマユではないのだ。……見ろ」
 小さな鏡が、おれに示される。
 そこに写されたおれの顔は、若葉色のヘルメットに覆われてはいなかった。
 大気に晒された蜂蜜色の髪を突き抜けて、二本の触覚が揺れている。
 その頭部を、若葉色の大きな襟が、優雅な曲線を描いて覆っている。
 首を動かして身体を見下ろすと、マントも失われていた。
 剥き出しの腕は細いながらも力強く、先端をシャープに尖らせている。
 マントだった葉は腰から下に纏められ、燕尾服の裾のように広がっていた。
 これは。この姿は――
「ハハ……コモリ? 進化したっていうのか!?」
「そうだ。BURSTハート内での進化は、飛躍的にエネルギーを増大させる。BURSTに成功した瞬間、巻き起こったエネルギーの波導が全ての枝を消滅させた……もう、お前は大丈夫だ」
「だっ……だけど、どうして急に進化なんか……!?」
 変貌した我が身に、おれはますます困惑を強くする。
「BURSTポケモンは、時が閉ざされた世界に封印されているから、進化させるのはとても難しいことのはずだろう!? 現にこれまでご先祖様たちの誰も、クルマユを進化させることはできなかったのに……」
「バカね」
 雷妃が、小さく鼻を鳴らした。
「……え?」
 戸惑いに触覚を揺らしていると、今度は紫影螺が、BURSTハートの中から穏やかに笑いかけた。
「おバカって言ったのよ雷妃ちゃんは。全くじゃん。自分がどんだけ幸福な存在だか、知りもしないってんだから……」
 そんな紫影螺を左眼にかけて、ラハードも同じように笑って言った。
「ポケモンが進化するためには、その種によって様々な条件がある。自らの能力によって進化するもの、道具や場所、環境などの外的要因に応じて進化するものなどだな。そして、クルマユがハハコモリに進化する条件は……」
 不意に、おれの脳裏に。
 BURSTハートの中で見たクルマユの、光の中に融けていった笑顔が、浮かんだ。
「愛情、だ。他者を思う強い気持ちを知った時、クルマユは進化できるんだ。つまり、お前さんが今その姿で生きていることそれ自体が、お前とハハコモリがこの上なく完全にBURSTしたという、何よりの証なんだよ……」
 あぁ、と嗚咽が漏れる。
 これまで、それが叶わないことだと思うほど、おれは、おれたちは……BURST戦士は、ポケモンと心を重ねられてはいなかったんだ。
 そんな進化の〝壁〟を乗り越えてくれるほど、こいつは……おれが振り返ることを、共に生きる道を選び取ることを、ずっと長い間待ち焦がれていたんだ。
 全身に漲る力が、暖かくおれに囁きかける。
 深い、限りなく深い、それは感謝の念だった。
 おれの方こそ……おれの方こそ、どんなに感謝しても足りないというのに――!!
「アーガン氏は……親父さんは多分、こうなることを望んでいたんじゃないかな」
「……!?」
 はっと顔を上げたおれに、ラハードは告げた。
「自分の息子なら、きっとクルマユと深い絆を結んでハハコモリに進化させてくれると……そして進化したハハコモリなら、きっと息子の心臓を治してくれると、そう思っていたんじゃないだろうか。だからこそ、クルマユのBURSTハートをお前さんに託して、アルカデスへの道を選んだのだろうよ……それが親心というものだ」
 そう……か。
 父さんは、クルマユを裏切ってなんか、いなかった。
 果たせない約束を、おれに託すことで貫いたんだ。
 そしてきっと、父さんだけじゃない。
 他のご先祖様たちだって、それぞれの時代で命を懸けなければならない状況に……クルマユとの約束を破らなければいけない状況に追い込まれながら、それでもきっと次の世代なら、次で駄目でもその次の、その先の世代なら、きっとクルマユの願いに応えてやれると信じて、次代にBURSTハートを託し続けてきたに違いない。だからこそ、こいつはここにいて、そして、おれを護ってくれた……
 感じる……。
 父さんや、ご先祖様たちから受け継いだ絆が、縄目を描いて深く絡み合い。
 ラハードや紫影螺や雷妃たち、その他おれがこれまで関わってきた全ての人々の絆と一緒に、太く大きな一本の縄になって。
 おれとハハコモリとを、固く、堅く結び付けてくれているのを――!!

 気が付けば、おれは叫んでいた。
 若葉のおくるみに包まれた嬰児(みどりご)のように。
 止めどなく喉笛から迸るそれは、再生(ReBirth)を歓ぶ生命の(Verse)に他ならなかった。

 ××××

「あたしもさぁ、ラハードに拾われる前は、〝BURST戦士〟のポケモンやってたワケよ」
 BURSTを解除し、体力が完全に回復するまで休んでいる間、おれは紫影螺の昔語りに付き合わされた。
 窓際で眩しい陽光を浴びながら、モンスターボールの上の紫影螺はどこか寂しげに揺らめいていた。
「もう知っての通り、封印されても外に出られる身なモンでね、気軽に永久封印されちゃったワケ。もう一生、寝る場所と食う物と下僕に困らずに済むわ、とか思ってたり」
 いや、下僕て。
「それでもね、下僕を気に入っていなけりゃ、封印なんかされなかったっちゅ~の。実際いい奴だったんよ……そいつは、ね。でも、そのガキ共ときたら、これがどいつもこいつも超ありがちな世襲BURST戦士でさぁ」
 紫影螺の差す『ありがちな世襲BURST戦士』がどんなものであったかは、おれに向けられた批判を思い出せばよく解る。あの時の剣幕からも、彼女の受けた冷遇が察せられた。
「ただでさえ世襲のBURST戦士は奢りやすいってのに、弱点のないミカルゲの無敵(インビンシブル)耐性持っちゃったから、ダーテングよりも鼻高くして威張り散らしてたのよ。あたしも『持った力に相応しい強い心を持って』って何度も注意したんだけど、ワガママ通すことを『強い心』だと勘違いしたみたいで、ますますどんなに言うことを聞けっちゅ~ても聞かなくなっちゃった。しまいにゃあたしが顔出すだけで『お前は引っ込んでろ』なんて煙たがられたわ。ま、あたしが説教臭い小言ババァしてたのもホントだけどね」
 紫影螺が煩く言うのは、相手のことを心底思いやっているからこそだと、今のおれは身に染みて解っている。けれど彼女のかつてのパートナーたちには、その心が届かなかったのだろう…………
「……ちょっと待て。まさかお前その頃から、ポケモンの言葉をデタラメに通訳したり、バトル中に腐妄想垂れ流したりしてたんじゃないだろうな? さっきも下僕とか言っていたし。ふざけて嫌われたんなら自業自得だろう?」
 ジト目で睨んで詰問すると、紫影螺は燐光で舌を出しておどけた顔を見せつつ、しかし静かに返答した。
「だよねぇ。あたしもそう思ったわ。だから……あの頃は軽口の一つも叩けなくなってたんよ」
「…………」
 BURSTハートのポケモンにとって、所有者を失う孤独がどれほど辛いものであるか、紫影螺はこれまで何度も語っていた。
 嫌われたくないから。
 捨てられたくないから。
 自分を誤魔化して流されるしか、なかったのだろう。
 今の彼女がこれだけ傍若無人に振る舞えるのも、ラハードに対する絶対的な信頼があるからこそだったんだ。
「引っ込んでろって命令にも、あたしは素直に従った。そんな関係が何代も続いて、あたしもすっかり引きこもっちゃってさ。元々はあたしが外に出て認めてやってた所有権の継承も、他のBURSTポケモン同様に向こうから入ってきてもらうようになってっちゃった。丁度〝あの大戦〟の頃も、あたしは引き継ぎの真っ最中でさ。だからあたしは、〝あの大戦〟のことは聞いた話しか知らなかったっちゅ~ワケ」
 ラハードは父さんのことを知っていたのに、紫影螺が知らなかったのはそのためか。
「引き継ぎに散々もたついたおかげで大戦の洗礼に曝されずに済んだワケだけど、それがあの子にとって……BURST戦士としてはあたしの最後のパートナーになったあの子にとって、良かったのか悪かったのか……」
 紫影螺の視線が、遠くの空を見上げる。
「……多分、悪かったんだと思うわ。〝あの大戦〟で明白にされたBURST戦士の弱さを知らないまま、ミカルゲの無敵(インビンシブル)の能力を手に入れたあの子は、それまでのパートナーと同じように傲慢に能力をひけらかして回ったの。その結果どうなったか……あんたもあの時代にBURSTハートを守ってきたんなら、大体想像付くでしょ?」
「盗賊……BURSTハート狩りに遭ったのか?」
「そゆコト。ミカルゲにBURSTするってこっちからバラしちゃってるんだもん。当然キッチリ対策立てられて襲われたわ。無敵(インビンシブル)ちゅ~たってね、ホントは完璧(パーフェクト)ってワケじゃないの。〝肝っ玉〟って特性を持ってるポケモンには、ゴーストタイプの無効化耐性が効かない。格闘技で攻められたら、悪タイプの弱点を突かれちゃうんよ」
 薄く自嘲を浮かべて、紫影螺は続けた。
「盗賊がけしかけたのも、その肝っ玉特性のガルーラってポケモンだった。ひと目見てヤバいって思ったけど、あたしは何も言わなかった。たかがポケモン一匹とナメてかかって無造作に突っ込んだあの子が、身代わり人形相手に無駄に技を空打ちさせられて体力をすり減らされていっても、あたしは何も言わなかった。ヘロヘロになって力尽きたところに、肝っ玉気合いパンチの連発……一溜まりもなくブッ倒されちゃって、あたしは盗賊に連れて行かれたわ。BURSTハートから飛び出せば、動けないまでも抵抗することはできたけど、それでもあたしは動かなかった。倒れてるあの子にも、一言も声をかけなかった……」
 紫影螺の表情が、凍てついていく。
 感情の壊れた声が、虚ろに響いた。
「だって、『引っ込んでろ』って言われてたんだもん。だからお望み通り、動かないでおいてやった、っちゅ~ワケよ」
 影が震えた。
 笑うように――もしくは、嗚咽するように。
「笑っちゃうでしょ。嫌われたくないからって機械みたいに言う通りにしてたって、会えなくなっちゃったら何の意味もないっちゅ~のにね! 盗賊にすら笑われたわよ。『お前、それで本当に、ホンキで生きてるって言えるのか?』って。あの頃のあたしったら、自分が生きてることさえも忘れてたみたいなんだわ……」
 笑えない。
 おれ自身、手術の前まではホンキで生きようとしてなかったのだから。
 クルマユだって、あの時紫影螺に発破をかけられなかったら……。
「それに気付いた時、あたしも笑ったわ! もうけゃはけゃはって、イカレるぐらい笑い続けた。声が枯れるほど笑いまくって、それでようやく、自分が生きてるって実感できたじゃんよ……」
 この嘘吐きめ。おれが雷妃だったら電撃制裁を落とすところだ。
 手術中に言っていた啖呵、一字一句覚えてるんだからな。
 涙が枯れるほど、泣いたんだろう。
 死にたくなるほど、後悔したんだろう。
 それでも、どうしようもなかった。取り返しは付かなかったんだ。
「まぁその後BURSTハートが値崩れしてくれたおかげもあって、貧乏医学生に買われてこの仕事を始めて、それなりに生き甲斐のある日々を送らせてもらってんだけどね。昨日あんたがバトルを挑んできた時、あんたの無茶に何も言えず引きこもってるその仔を見たら、何だか昔のあたしを見てるみたいでさ……放っとけなくなって、先生の制止を振り切って飛び出しちゃったっちゅ~ワケ」
 もしも紫影螺がおれとの戦いを買ってくれなかったら、おれは何一つ気付かないまま彷徨い続けた果てにどこかで無駄に命を落とし、クルマユにかつての紫影螺と同じ思いをさせてしまうところだった。
「ありがとうな。紫影螺」
 感謝の言葉をかけたおれに、紫影螺は小さく微笑み返し、真剣に声を引き締めて言った。
「ベイガン、あんたがこの先どんな道を選ぼうと知ったこっちゃないわ。結局戦う道を選んだって構わない。だけど、これだけは決して忘れないで」
 紫影螺の言葉が、深く、深く、おれの胸に刻み込まれる。
「あんたが掌にしているそれは、決して能力を得るための道具なんかじゃない。いつでもいつも、ホンキで生きてる生き物だっちゅ~コトをねっ!!」
 それはきっと、ポケモンを扱う人間が常に胸に抱いていなくてはならない言葉。
 その言葉を多くのBURST戦士は忘れてしまった。だからBURSTは廃れていったんだ。 
「……あぁ!!」
 もう、決して忘れない。
 命の温もりを握り締めて、おれは誓った。
「どんな道を進むことになっても、おれは他の誰でもない、このハハコモリのためにBURSTするよ。何てったって、こいつに貰った命なんだからな!!」
 BURSTハートのポケモンは、人間が視野に入れていないものをちゃんと見てくれている。
 ラハードが見捨てようとしたおれを、紫影螺が拾ってくれたように。
 ポケモンの心を理解し、彼らが感じているものを共有することで、BURSTしながらでも広い視野を持つことができるんだ。
 そして、BURSTハートから出られないポケモンの代わりにおれがその想いに応える。ポケモンの力を使うのではなく、おれがポケモンの手足になる。きっとそれが完全なBURSTの形なんだ。
「棺桶に片足突っ込んで、ちっとはバカも治ったみたいじゃん。これまで粗末にしてきた分も、しっかり尽くしてやんなよ」
「こいつが望むなら、何だってやってみせるさ。それこそ、コンテストでも何でもね。……あ、そうそう、気にしてたことだけど」
「?」
「少なくとも、ホモじゃなかったよ」
「……ちぇっ、つまんないの」
 どんなものが好きなのかとかは、これから付き合っていかないと分からないけど。
 ただ一つ、どんなことがあってもおれを暖かく包み込んで守り続けていてくれた、聖母のような雌だということだけは、間違いなかった。
 聖母……そうだ。まさしく彼女は、あのBURSTでおれに命をくれた〝母親(かあさん)〟だ。
 紫影螺の言うように、BURSTではポケモンが親で、人間がその子供のような関係にあるのなら。
 ラハードの言うように、人とポケモン、それぞれが与えられた役目をこなすのが理想の形であるのなら。
 ハハコモリ――分類名〝子育て〟ポケモン。
 これからも、おれは彼女に養われる子供であり続けるのだろう。
 ならばおれは子供として、彼女がくれたものを一つ一つ返していこう。
 彼女がおれの〝親〟でいてよかったと、いつも心から思ってくれるような、そんな〝孝行息子〟に、おれはなっていこう。

 ××××

「こいつは治療費の頭金代わりに頂いていく」
 ラハードが掲げたのは、パックに詰められた小さな肉塊……おれから摘出した、腫瘍だったものだ。
「約束通り、貴重な研究資料として活用させてもらうよ。残りの治療費は出世払いだ。BURSTでの新しい生活でやっていける目処が立ってからでいい。どんなに時間がかかっても構わんが、」
 大らかな笑顔で、ラハードは言った。
「必ず支払えよ」
「あぁ。必ず!」
 支払え、という言葉に込められた、無事と大成、そして再会への願いに、おれは頷いた。
「頑張ってね」
 雷妃が優しく嘶くと、すかさず紫影螺が、
「今雷妃ちゃんがさぁ、『ハハコモリを大事にし過ぎて、子孫作れなくならないようにね』ってででででででででっ!?」
「言ってなぁいっ! ふざけたコト言いたきゃ自分の台詞で言えーーっ!!」
 最後の最後まで、紫影螺らしく焦げてみせた。
「普通に励ましてくれたんだよな。ありがとう雷妃」
「……え? あれ? もしかして……話通じてる?」
 不思議そうに耳をこちらに向けた雷妃の鼻面を撫で、おれは笑顔だけを答えにして返した。
 言葉が解るようになったワケじゃない。何が言いたいのかが、解るようになっただけだ。
 人間の言葉が話せないポケモンでも、その動作の一つ一つにはちゃんと意志が込められているのだから。
 解り合うには、その意志に少し心を傾ければいいのだと、おれはハハコモリに教えられたんだ。
「紫影螺の冗談も忠告として肝に銘じておくよ。ハハコモリは……おれの母さんだ。甘え過ぎてマザコンにならないように気を付けなきゃな」
「分かってんじゃん。ま、あたしもちょっぴり期待しとくわ」
 互いに笑顔を交わし合った後、全員に向かって一礼する。
「それじゃ」
「あぁ。またな」
 紫影螺が入ったボールを懐にしたラハードが、雷妃の背に颯爽と跨がったのを見届けて、おれは踵を返した。
 遠ざかる蹄音に、しかしもう振り返らない。
 次に彼らを眼にするのは、治療費と共に成長した姿を見せる時だと心に決めていたから。
 敗れて、挫折して、でもたくさんのことを教わった。
 迷った日々も、間違えたことも、何一つ無駄にせずに明日への羅針盤にして、一つ一つ新たな縄目を結わえていく。
 さあ、どんな未来を紡ぎ上げようか……?
 掌の中の母と、語り合いながら。
 行く先の見えない道を、とりあえず歩き始めた。

 ××××

終章・未来の落とし文 


 ××××

 机の上に、封を切られた封筒が転がっている。
 取り出した中身を、ラハードは銀の眼差しで穏やかに眺めていた。
 一枚の、整然と――しかし心を込めて綴られた手紙と、チケットの束。
 黒い手の中に広げられたそれらを、脇から覗き込んだミカルゲの紫影螺が、
「……ほらね。ウケるっちゅ~たじゃんよ」
 と、得意げに燐光を揺らめかせた。
「まさか両方とも使うなんて発想は、あたしにもなかったけどさ。あいつらってば、ダテに遠回りしたワケじゃないっちゅ~コトね」
 そんな紫影螺に静かな笑みを返し、ラハードは流れてくる旋律に耳を傾ける。
 その音色は、ゼブライカの雷妃が聞き入っている、お気に入りのコンテスト番組から奏でられていた。
 TV画面の中、舞台の上でスポットライトを浴びながら音楽を紡いでいたのは、若葉色の衣装に身を包んだ青年だった。
 長く伸びた裾の右端から、頭上に掲げた左手までの間に張り詰める銀色の弦。
 それを弾き奏でるのは、右手に携えられた深緑の弓。
 虫の糸と草葉の刃。ふたつの異なる力が擦れ合う。まるでふたつの異なる心が触れ合うように。
 交錯する力と力が織り成すハーモニーが、溢れんばかりの生命の歓びを詩い上げる。
 それはまるで世界との融合(BURST)。聞く者の魂までをも掻き鳴らす、〝心奏鳴曲(ハートフルソナタ)
「…………楽しそうじゃん」
 満足げに漏れた感想は、メロディに聴き入る雷妃に向けられたものか。
 それとも画面の中の弾き手に対してか。あるいはその弾き手と共にメロディを刻む、もう一つの心へと向けられたものか。
 もしくは、彼らが心を重ねてやり遂げた成果に対する、彼女自身の評価なのか。はたまた……その全てか。
 碧い燐光が画面越しに見つめる、そのハハコモリの姿をした青年は、荘厳な旋律を終曲まで奏で終えると、万雷の拍手に向かって蜂蜜色の頭を下げたのだった。

 ~Happi-End~


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*1 独自設定。こういうことにでもしなければ、光の羅針盤の存在価値が分からない。
*2 医者が額に付けている丸い鏡。使用時には左眼の位置に移動させ、ライトを反射させて患部を照らしつつ中央の穴から覗いて観察する。
*3 ラハードの能力及び顔立ちの元ネタは、手塚治虫著『ブラック・ジャック』の『その子を殺すな!』というエピソードに登場した黒人心霊医師ハリ・アドラ。服装と話口調はブラックジャック自身をイメージしている。
*4 電気ショックによる心肺蘇生装置。AEDなど。

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Last-modified: 2013-05-13 (月) 00:00:00
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