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グラエナのコウ~カマ狐出現?~

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グラエナのコウ~カマ狐出現?~ 


ええとこれまでの忠犬ポチエナ?忠犬ポチエナ~進化?なにそれお(r~の続きというか、
こっちが本来のお話になるはずでした。設定等はこれら2つと同じです。
青浪



自分より高位の人が自分を慕ってくれたら?自分はどうしたらいいのだろう・・・特にその人のことが好きな場合。

ヒノキの林に囲まれた一軒の小さな家。その中には住人と思しき身丈からして17、8くらいのの青年がきずぐすりや非常食をリュックに詰めていく。

この家はいいなぁ・・・ヒノキのいい香りがする。特に晴れてる時は・・・
僕はリョウ。一応・・・っていうか両親の影響で植物の研究をしてる。おもに木の実の効果やら毒性を調べてる。今、フィールドワークのために荷造りをしている最中だ。
一応手持ちのポケモンもいるし・・・よいしょっと、リュックの中身を確認して植物とポケモンの図鑑を入れた後、リュックのひもを締める。
「はぁ・・・これでよし・・・」
そう僕は独り言をいう。とことこというちいさな足音がだんだん大きくなって僕に近づいてくる。その音に反応した僕はとっさに振り返る。
「コウ!」
僕の眼前にはグラエナが4足で立っている。相変わらずの獰猛さとはかけ離れた赤いつぶらな瞳で僕を見る。
「リョウ・・・準備出来た?」
コウはにこっと微笑んで僕に準備をせかす。
「うん。コウもいい?」
「ああ。いいよ。リョウがいいならいつでも。」
このコウというグラエナは・・・少しグラエナらしからぬ個体だ。優しいし、僕とはまぁ少し喧嘩するし・・・何より賢い。バトルを基本としない僕としては最良のパートナーなんだ。
僕とコウはコウが生まれたときからの付き合いだ。最初は僕がいろいろ教えてたのに、僕の両親や、コウの両親がいろいろ教え込んだみたいでいつの間にか頭の良さでは逆転されてしまった。
そんな僕でもコウは僕を旅、1人暮らしのパートナーとして認めてくれる。僕が手持ちのポケモンをひいきしてても何も言わないし、はるかに精神的に上だ。
「んじゃ出かけるか・・・」
当のコウは僕と同じ目線で会話してくれるし、戦わずして相手を懐柔するっていう僕のスタンスを貫きとおしてくれる。僕は手持ちのポケモン全てをコウの手腕でバトルなしに仲間にすることができた。
グラエナという種は本来、獰猛で力のある主人の言うことを絶対視する・・・そう言われてる。
コウは痛い思いを何度かしたけど・・・それでも僕のことを認めてくれてる。でも少し天然なんだよね・・・やることがどこか抜けてるっていうか・・・まぁそこが可愛いんだけど。
「おーい!タオ!ハナ!」
「はいは~い。」
そう元気な声でハナと僕が名付けたリーフィア、そしてタオと名付けたヘルガーがトコトコと僕のもとにやってくる。コウは少しあくびをしてる。
ハナはタマゴから孵った♀のイーブイを僕が育ててリーフィアにしたんだけど・・・リーフィアらしからぬ甘甘っぷりで少女みたい。ウチの3匹の紅一点。
タオについては・・・まぁ、略。
「誰が略だって?ご主人?」
「え?」
特有の低い声で僕に話しかけてきたタオ。心を見透かされたような声に僕は少しあわてた。
心の声が漏れてる?・・・仕方ない。タオはヘルガーでグラエナに進化したばっかりだったコウにバトルを仕掛けてきた。力押しで戦おうとするタオをコウは実に落ち着いて説得した。
そうするとタオはコウみたいになりたいって言って僕に主人になってほしいって頼んできたんだよね。今ではすっかりタオは・・・いや全然前と変わってない。結局いつもの力押しで僕をサポートしてくれる。
「ほら、ボールだぞ。入れって。」
出かける準備ができたし、今日は電車に乗りたいからコウたちにはボールに入ってもらおう。僕はボールを取りだす。
「は~い。」
「え~。」
「ごしゅじん~。」
みんな嫌そうだな。まぁいいや強制的にやったれ。ボールを3匹に向けると意外とおとなしくボールにおさまってくれた。
僕の手持ちはこの3匹だけ。戦わないで捕まえるっていう非現実的な方法をとればこんなもんだ。ウチの両親は研究家でコウのグラエナ一家とアブソルと同居してる。
あくタイプが多いのは両親のせいだなきっと。僕は小さいころからポケモンに触れて育った。コウのご両親なんて僕が生まれる前からいて、僕が始めて触れたポケモンだ。
山歩き用の靴をしっかりと履いて、僕は玄関のドアを開ける。
「さてと。鍵は閉めたし・・・窓もOK。電気の無駄もなさそうだし、行くか。」
扉を閉めたのをガチャガチャと動かして確認し、僕は駅への道を歩き出した。ヒノキの林が近くてよくコウとその林で遊んでる。
駅までの道は結構単純。駅に近いっていうより、この駅は僕の家とは反対側の海水浴場のために作られたんだけど、それ以外に利用価値ないから安く駅に近い今の家を借りることができた。

なんで戦わないで仲間にできるのか?・・・僕の頭には昔からバトルさせて相手を屈服させることに意味はあるのかとか、そんなことを考えてて、そうしてるうちにコウと暮らすことになった。
こんなことを言ったら悪いかもしれないが、自分のために意味なく戦わせるというのはエディプスコンプレックスから抜け出せない奴がやるもんじゃないのかな・・・
僕の根幹にはそもそも意思疎通のできる者とは戦わない・・・その教えが自然と刻まれてる。甘ちゃんと言われても仕方ない。甘ちゃんなのは事実だ。
話せばわかるなんて言うつもりじゃない。戦うものはやむにやまれず戦う場合が多い。それを回避するのも大事なことだ。
事実僕もコウもその教えを守ってるのか、野生のポケモンが戦いを挑んできても、たいていは戦わない。そもそもたいていの場合が僕たちが相手のテリトリーを侵してる。

コウの両親はコウと一緒に家を出るときに僕に”あの仔は案外かわいいとこあるから心配しなくていい”って言ってくれた。進化してからもそれは変わらない。
駅に続くあぜ道には背の低い草が両端に広がっている。その草むらの中からハブネークが僕をじっと見てる。敵意はない。いつものことだ。だいたい帰ってきてお土産あげてる。
このハブネークももとは林に住んでて、他のポケモンを襲ってたんだけど、相次いでコウにやられて以来、”悪さ”をしなくなった。
僕の眼前に相変わらず世界観ぶち壊しの駅が広がる。駅でこの2年を振り返る。
この2年・・・僕の周りではなにも変化がなかったな・・・タオがいるくらいか。見た目によらずタオは純真だからね~・・・ハナとまともに会話したことないんじゃないかな。
コウがハナとじゃれてると、タオはすごくうらやましそうに見るけど、タオはそこを突っ込まれると照れて逃げちゃう。可愛い。

電車が来た。なぜか2年前に比べて電車がぼろくなってる。ステンレス地に赤帯の電車はいつの間にか赤一色のいつの時代のだ?っていう外観の電車に置き換わった。
しかも音がうるさい。壊れるんじゃないかっていうくらいけたたましい音を出して走ってる。
重い荷物を背負って電車に乗る僕は今日行く森の地図を眺めてた。
今日行く森は、町とは逆の方向にあって町との距離が一般の人の侵入を防いでいる。めぼしい建物は森の駅側の入り口の近くにあるポケモンセンターくらい。
噂では妖怪が住んでるとか言われてる。でも一応崖と崖の間の橋とかは整備されてるらしい。
植物の調査だけど・・・なにがあるかわからないから、2日分の食糧と防寒具を一応持ってきた。
もちろん、泊まる予定はない。場所もない。ただ地図を見ても高低差があり、思うような行動がとれないのは自明だ。
いつも一緒に林で調査してるコウとよく相談した結果、最悪2泊を想定した装備をしないといけない、ということになった。
「まもなくツキミヤマ、ツキミヤマです。」
そのアナウンスを聞くと座席から立つが、ふらつくくらい荷物が重たい。少し揺れると電車は停まった。
電車の扉が開いて駅にまで漂う森のさわやかな空気が僕の心を落ち着かせる。この空気は魔物だ。人食い森の話もこの空気のせいじゃないのかな・・・そう思えてしまう。

駅舎をでるとまずコウたちの体調を確認するためにポケモンセンターに立ち寄る。
「どうですか?うちの仔たち・・・」
ラッキーしかいなかったみたいで、作業をしながら答える。
「そですね・・・このグラエナくん・・・ちょっと疲れてますね。まぁ常に随伴させなければスタミナが尽きることはないと思いますけど。」
「コウが・・・疲れてるか。」
そりゃここ最近ずっと今日のためにいろいろ話し合ってきたからね。他は大丈夫みたいだから戦うのを回避していきながら進むか。
僕は帰ってきたモンスターボールのうち1つをひょいっと投げてコウを呼び出した。
「コウ・・・疲れてるって・・・大丈夫?」
コウは少し間をおいてため息をつき、顔をあげて僕を見る。
「今日のためにいろいろやってきたんだからさ、リョウの心配もわかるけど、俺は大丈夫だよ。」
少し心配な僕はラッキーのほうを見る、コウの言うとおりにしていいっていう合図なのかラッキーは深くうなずいた。僕もコウを信じることにした。いつも無理ばっかり言ってるけど、コウがいないとね。
「よし、コウ。行くよ。」
「うん。行こう。」
コウを再びボールに戻し、ラッキーに挨拶をしてポケモンセンターを出た。
緩やかな坂道を登っていくと、山道の入口が見えてくる。入り口と言ってもただ看板が掛けられてるだけで常にGPSと地図を使って自分の位置を見失わないようにしないといけない。
山道の入り口でGPS兼植物図鑑で位置を確認していると、ふとピカチュウが目に入った。別に珍しくもないけど、何か雰囲気が違う。オカマみたいな感じ・・・がした。
中性的っていうのじゃなくて・・・たんに女装してる♂みたいな・・・ポケモンではありえない・・・そうなんだけど・・・直感がそう言ってるんだよね。

山道は一応狭いものではなく自転車程度なら自由に行き来できるくらいの勾配と広さを持っていた。
でも誰も出入りしていないのか、草は生え放題、木の実や山菜もそのまま放置されている。
「長いことだれも出入りしてないのかな・・・」
僕はそう呟いて奥に入るかどうかの判断をここですることにした。
判断、といっても単に植物の種類を調べて今までのデータから高地、低地の植物分布をある程度予想出来る。でも実物を見ないとね、わからないんだよ。
今日はいつも案内役をしてくれるコウが疲れてるから、ちょっと躊躇してるんだけど。
いつも近場の林や小さな森で済ませるときは山道の入り口からずっとコウと歩いて行って、野生の生き物が出てきたときの対処とかを一緒にしてるんだよね。
この森はなにがあるか地図を見てもわからないな・・・人気がないのが大きな要因ではあるけど。僕はプチっと山道のそばにこそっと生えていた木の実を取って調べる。
「これは・・・オレンの実だ。だれも取らないからすっかり熟してる。コウに食べさせたいな。・・・コウ!」
モンスターボールを投げてコウを呼び出す。待ってましたと言わんばかりの表情を浮かべてるコウにオレンの実を差し出す。
「どぞ。」
「リョウ・・・いいの?」
役割を果たしてないと思ってるコウは僕の申し出に少し謙遜気味だ。
「うん。案内してほしいし。」
「わかった。」
僕が案内を依頼すると了承の返事の代わりにコウはオレンの実を食べて、少し笑顔になった。
「じゃ、リョウ。行くよ。」
「うん。」
僕に先んじて進んでいくコウはいつもより少し警戒してるのか尻尾と耳ををぴんと立たせている。僕はコウを見つつ辺りの植物を見つつ進んでいた。
ほのかな緑の香りは次第にそれとわからないくらいに濃く、強くなっていく。それは僕にとって警戒を強めないといけない合図でもある。
食べれる木の実のなる木や、種類は限られている。調べたところだと、木の実のなる木は多いけど、そのうち食べられるのは3分の1以下。
ふと不審な焦げた木が目に入った。僕には興味深いシロモノだ。コウを止めるために声をかける。
「コウ、ストップ。」
「はい。」
コウはその場でくるっと回り、僕を見た。
「この木?」
コウがそう言うと僕はその木の周りの地面を這うように見た。少し違和感を感じたからだ。
「そう。半分以上焦げてる・・・でも周りには燃えたような感じはないな。相当前に燃えたのかな・・・でもその割に朽ちてないし。」
焦げた木の黒く焦げた部分を力を入れて握ったけど、その木は意外と頑丈で崩れることはない。ぐいぐいと握っていると僕はその木に裂け目があるのを見つけた。
「あれ?芽だ・・・」
その裂け目から新しい芽が出ているのに気がついた。その芽は発芽してから結構な時間がたっているようで根の近くは太く硬い。
「この木は・・・芽吹く命そのものなんだな・・・打たれても、また出てくる・・・」
コウが唐突に呟く。
「どしたの?コウ・・・ロマンチックなこと言って。」
「ん?なんか変なこと言った?」
「いや、コウらしくないなって。」
「そうかな・・・」
照れたのかコウは左の前肢で頭を掻くしぐさをした。少し可笑しかった僕は微笑む。
「落雷のせいかな?多分幹が腐りかけてたところに落雷があったんだろう・・・腐った木で新芽は守られたんだな。」
ノートをカバンから取り出して僕は考察を書き込んでいく。
「・・・よし。地図にも印をつけて・・・おしまい、と。」
いつも森の地図を持っているときは何かあるとすぐ印を書きこむ。また来た時に便利だからね。辺りを警戒していたコウを僕は呼ぶ。
「コウ?終わったよ。行こうか。」
「あい。」
再び僕たちは森を進んでいく。コウはさっきより警戒を深めているのか、やけに姿勢を低くし、草むらを静かに進んでいる。腕時計を見るとお昼ももう少しで目前だ。
ゆっくりとGPS端末を確認すると近くに滝があるみたいでその近くには休める空間がありそう、そんな表示が出ていた。
「コウ!この先に滝が見えるポイントがあるから、そこで休もう。」
「わかった。」
僕はお昼を取るためにコウに休憩場所を指示した。
草むらをかきわけて、背の低い木の枝をくぐると大きな瀑布が見えてくる。思ったよりもかなり大きい。水しぶきは苔を潤しているが、滝壺のようなものはない。
全ての激しく落ちてくる水は滝の周囲の凹凸の大きな岩によってその威力を消されているようだ。
少しすると目指していたポイントに到達した。思った通り、苔と背の低い草だけの空間が少し広がっている。
コウはほっとしたのかぴんと立てていた耳としっぽを少し寝かせると、お座りの格好でニコニコして僕の前にちょこんと鎮座している。僕はその可愛い姿を見るとカバンをおいて椅子代わりにそこに座った。
ザザァと水が落ちる大きな音が響く中、僕は弁当箱を広げた。コウの好きなものもいろいろ入れてきた。つぶらな瞳を紅く輝かせてじっと僕を見るコウ。
「コウ。ほら。」
「おう・・・ありがと。」
僕が好物の木の実を差し出すとコウは僕の手ごとペロッと舐めて口に含んだ。舐められた僕の手はくすぐったいけど、コウはこれをよくやる。
全部食べきると少し多く、この後の行動に少なからず影響が出るのでお弁当を僕は少し残した。
「さて、ハナとタオにもご飯あげないといけないから、コウ、少し待ってて。」
「うい。・・・」
満足なのかコウは含みのある返事をした。僕はハナとタオのボールを出した。
「ごしゅじん~。お腹すいた。」
「動いてないけどなんかお腹すいたわ。」
「お前らは気楽だなぁ。」
僕はそういうと二匹の前に木の実の少し入った容器を置いた。2匹はよっぽど空腹だったのか、あわててかごに飛びつきがつがつと食べてる。
「そんなにあわてなくていいのに。」
ちらっとコウのほうを見たけどちょっと警戒してるな・・・いつもより人がいない分警戒してるのかな?だいたいいつもなら登山者がいるからね・・・
ここには野生のポケモンもいるにはいるけどあんまり見てないし・・・不気味な森だな。
「ごしゅじん~おなかいっぱい~・・・」
「8分目くらい・・・かな。」
タオもハナも食べ終わったので、少し嫌がってたけど僕は再びボールに戻す。僕はコウのもとに駆け寄った。
「じゃ、コウ行こうか。」
「おう。なんか気味悪いな、ここ・・・」
不快そうな顔をしてコウは僕に言った。
「確かにね・・・見えるポケモン全てがおかしい・・・最初に見たピカチュウからしておかしかった。まるで・・・現実にいないみたいだ。」
そう言うと僕の頭を深いめまいが襲う。呼吸もおかしい・・・これは・・・現実?
「・・・ョウ?リョウ!大丈夫か?」
僕ははっとした。コウが大声で叫んで僕を正気に戻してくれたみたいだ。
「あぁ・・・大丈夫。もし何かあったらすぐに戻れるし。地図も、GPSも今の位置を正確に示してる。」
そう言うと僕はコウにGPSの画面を指差して場所の確認を求めた。
「よし・・・まぁでも何かあってもむやみに動かなければ1日は大丈夫だ。」
コウの言葉を聞いて僕は少し安心できた。再びカバンを背負ってコウに先導を任せて歩き始める。コウは僕のほうをちらちら気にするように見ながら進む。
疲れてるはずのコウにまた迷惑かけたかな・・・コウもまた耳をぴんと立てて後ろから見ると少し殺気を漂わせてるように感じた。さっきご飯をあげたときのその表情からは想像できないくらいの・・・
辺りを見回しても緑しかない・・・時折朱の葉を持つ見なれた植物が目に入るだけ。調べるまでもない・・・ざわざわと枝葉が風に揺られる音が僕の聴覚を狂わせている・・・
肉体は少ししか歩いてないような疲労を感じるけど、精神は疲労困憊・・・といった感じだ。コウも疲れたのかふらふらとおぼつかない感じで僕を先導する。
時計を見ると信じられないくらい時間がたっていた。位置を確認するか・・・
「コウ!ストップ。」
「うい。」
コウを止めて僕は地図とGPSで何度も丁寧に確認する。精神の疲労と相応の距離を歩いたみたいだ・・・肉体のほうが少し感覚がおかしいようだ。
地図にペンで書き込みを入れた。さっき休憩した場所から直線でもかなりの距離を歩いてる。
「どした?」
「コウ・・・結構な距離来てたね・・・知らないうちに。予定の2倍すぎたよ。」
「でも今日は帰れないな。」
コウの言葉の通り、予定の折り返し地点をかなり過ぎていたし、帰ろうとすると途中で日も暗くなるし・・・雲もかかってきてるし・・・。地図で風雨をしのげる場所を僕は確認した。
「コウ。今日はここに行くよ。」
「わかった。」
僕は地図でコウに泊まれる場所を確認すると、再び歩き出す。警戒してたコウはかなりへとへとみたい・・・僕もへとへとだけどただコウの後をついて行くだけだから。
すっかり折り返し地点の確認も忘れてたし。ルートから少し離れてざっざっと草を分けていく。進むたび地図にマークを入れた。
コウの身体がびくっとして唸り始めた。
「リョウ!なんかきた!」
「わかった。」
屈んで耳をすませるとぶ~んと低く大きな音が響く。あるポケモンの名前が頭をよぎった。
「ビークインだ!コウ!気をつけて!」
「わかってる。」
コウは警戒の姿勢を崩さない。黄色い巨体が木々の茂みから現れた。コウよりも大きい。
「おまんら!わてらのシマおかしたらはったおすど!」
???なに?・・・ひどく変に訛ってる・・・コウも少しあきれ顔でビークインを見た・・・
「な、なんさ・・・ひとんことわらいよんが?」
「あの・・・なまr」
「リョウ!」
訛りを指摘しようとするとコウに止められた。
「ここは・・・俺に任せて。」
そう言うとコウはとっととビークインのそばに言って何やら耳打ちしてる。ビークインに耳っぽいものがあるかはわからないけど。
コウがぼそぼそと耳打ちしているとビークインの黄色い顔は真っ赤になった。
「そ・・・そげんことなかよぉ・・・おまんらは・・・ええど。おまんらすきにしんしゃい・・・」
そのままビークインは茂みの中に消えていった。何が何やらさっぱりだ・・・
一難去ったので地図で確認する。休む予定の洞はもうちょっとだ。コウは顔に疲労を浮かべてる。
「コウ!戻れ!」
コウにボールに戻るように指示するけど少し嫌そうだ。
「リョウ・・・そりゃないよ・・・これから1人で大丈夫なのか?」
「そりゃ不安だけど・・・でもコウも休まないと・・・疲れたでしょ?ウチの頭脳に倒れられちゃ、僕も何もできないし。お願い。もうすぐ、洞だしね。」
「わかった、リョウ。でも、なんかあったら絶対呼べよ。」
「うん。ありがと。」
コウはしぶしぶといった感じでボールに戻ってくれた。でも1人で大丈夫かな・・・一応タオ出すかな・・・
「タオ!」
「おいっす。」
ボールからタオを出してコウのように先導は任せられないけど、一緒にいるくらいなら大丈夫だろう。タオを引き連れて洞への道を進む。
思ったよりも洞への道は開けてて、タオを呼び出さなくてもすぐ見つけることができた。その洞は入り口が1段上がっていて、風雨をしのぐには十分みたいだ。
「タオ、そこだよ。」
「マジで!」
「ちょっ・・・タオ!」
タオはうれしそうにその洞に突っ込んでいった。やれやれ・・・僕はその後を追って行った。コウならこの場合はいつも洞に何かいないか、崩落の危険はないかっていうのを確認してるからね。少し不安だ。
洞の中をじゃりじゃりと進むと意外と奥行きはなく、入口から20mくらいしかない。その中をタオはうれしそうに飛び跳ねてる。
「この洞なら十分だな。岩盤もがっちりとしてるし。」
洞の中を調べていると辺りはすっかり暗くなっていた。懐中電灯を付けるとタオはすっかり疲れてぐったりと眠りこんでる。タオも疲れるまで跳びはねなきゃいいのに・・・
「コウ!ハナ!出といで。」
残ったボールに手を掛けてコウとハナを呼び出した。コウの顔は少し元気そうになってる。
「コウ大丈夫?」
「まあね。おかげさまで休めた。リョウも無理してないよな?」
僕はコウの気遣いが素直にうれしい。
「うん・・・コウ・・・ほんとにありがと。」
「照れくさいよ。何年の付き合いだと思ってる?」
こうは言うけどコウもかなりうれしそうにデレデレしてる。
「だよね。」
疲労の残る笑顔で僕はコウを見るとコウも僕を照れくさそうに見てる。
「おにいちゃん!」
ハナは久しぶりに呼び出されてうれしかったのかコウに跳びついた。コウもため息をついてハナの攻撃に耐えてる。
「こら!ハナ!コウは疲れてるんだから・・・」
「え~っ、ごしゅじんもノリ悪いなぁ~。」
悪くないよ。疲れてるんだって。ハナはコウから離れても尻尾をぶんぶん振ってる。僕はさっきのビークインのことが気になったのでコウにこそっと耳打ちした。
「さっきのビークインだけど、どうやったの?」
コウは僕を見るとニヤッとした。
「さっきのはね・・・あのビークインは群れのトップになってまだ時間がたってなさそうだったから、ちょっとプライドをね。相手を立てたの。」
「そんなことしてたんだ・・・さすが・・・」
コウの戦術には頭が上がらないよ、ホント。しかもビークインが出てきてすぐだったからね・・・
ざぁざぁと突然雨が降る音がしてきた。山の天気は変わりやすいっていうけど・・・もしあの時帰ってたら今頃雨に打たれてたんだな。
「ご飯食べようぜ、ご主人。」
タオが僕に催促をしてくる。火を付けないと・・・誰かが何度か寝泊まりしたのか燃えカスはある。
「ちょっと木がないかな・・・灯りがほしい。」
「なんだ・・・ちょっと待ってろ。」
「ちょ!コウ!」
コウはそう言うと洞から僕の止める間もなく飛び出て行った。外は結構な雨で、僕はコウが帰って来た時のためにタオルを用意しておく。
バシャバシャと水音が外から聞こえてくる。全身に水を滴らせてコウは戻ってきた。4,5本手頃な木を口にくわえてる。
「コウ!風邪ひくぞ。ホント・・・」
僕はあわててタオルでコウの全身をふいた。
「木だぞ・・・へっくし!」
「ほら・・・もう・・・無理したらダメだって。」
コウは僕がタオルで拭き終わると咥えた木を僕たちの陣取る場所の真ん中に置いた。
「よっしゃあ!火炎放射じゃ!」
いつの間にか起きていたタオは元気に口から火を吐いた。木は湿っていてなかなか火がつかないが、タオがしつこく火力をあげるとついに勢いよく炎を出した。
火がついたのを確認すると僕は懐中電灯を消して、先客のコウのいた火のそばに座った、
「コウ?寒い?」
「まぁね・・・へっくし!自然の水でここまでびしょびしょになるのも久しぶりだな。」
「そう?」
「うん・・・川でおぼれて以来かな・・・でもさすがにそんなことはないか。」
川でおぼれた・・・あの時、僕は流れてきたタマゴを助けようと川に入った。
でも深みに足を取られて溺れそうになったんだった・・・その時コウが僕を助けようとして川に入ってきたんだ。結局僕もコウも溺れそうだった。
「あの時・・・コウに助けられてなかったら死んでたな・・・」
ぼそっと僕は呟いた。
「でも、俺が助けに行ったからリョウは余計に溺れそうになったんだよな・・・ごめん。」
「謝ることないって。あの事件のおかげで僕たちはハナを見れるんじゃないか?」
「そうだな・・・」
コウは火にあたってうとうとしている。お腹がすいただろうと思って僕は持ってきたポケモンフードをコウたちに食べさせた。
僕も昼の残りの弁当を平らげると、雨がやむ音が消えるまで、コウと話しながら火の番をしていた。コウと1対1でおしゃべりするのもかなり久しぶりのはずだ。
ハナもタオも僕たちに任せてすっかり眠っている。タオは一応年長者なんだよな・・・でもコウよりガキっぽい。
すっかり雨もおさまると、僕は火を消して、コウは燃えた後の確認を何度もしていた。久しぶりに顔も身体も寄り添うように僕たちは眠る。コウの汗の匂いは僕にとっては心地のいいものだった。

「お・き・ろ!ハナ!タオ!」
洞に大声が響く。僕は叫んでいまだに起きないハナとタオを起こし続ける。コウは僕が起こす前に・・・というより僕を起こしてくれた。
「ふぁぁ・・・ご主人。朝っぱらからうるさいよ。」
「起きないとそのままボール入れっぞ。」
「ごめんごめん。」
タオは一発で起きてくれたけどハナはね・・・なかなか起きてくれない。ゆさゆさと揺らしてようやく起きてくれた。
「ごしゅじん~・・・お腹すいた。」
「ああごめんごめん・・・朝すぐに用意するから。」
起きていきなり空腹を訴えるハナに少し驚いた。そんなにお腹すいてるのかな・・・コウは朝から空をじっと見てる。2日ここに踏みとどまれるけど、さすがに今日下山しないと危ない。
それを一番よくわかってるのがコウだと僕は思う。コウの報告では今日は全体的に晴れそうで下山の機会は今日の午前から昼がベストらしい。僕も用意をあわててしてる。
僕たちはもう朝ごはんを食べた。食べてすぐに動くと危険だからだ。お腹の調子を壊すかもしれないしね。
昨日の晩御飯と同じポケモンフードをハナたちに食べさせるけど、さすがに飽きたのかブーイングをしてくる。でも山の中だしね・・・仕方ないんです。
まぁポケモンフードなんて普段食べさせないからね・・・いっつも木の実のサラダとかライスサラダとか・・・自分で作るやつばっかりだからね、栄養的に考えて。
時計を見ると7時15分前。もうあと10分くらいしたらここから出ないと。雨はやんだけど地面がぬかるんでて厄介だな。何かに襲われたらおしまいだ。
「ごち。」
ハナたちが朝ごはんを食べ終わると僕は急いで片づけを済ませる。今日は下山するけどコウには少し休んでもらおう。
「タオ、今日は一緒に行くよ。」
「やった!」
タオに今日は任せてみるか。僕は安易な気持ちでタオに声をかけた。でもコウは少し不満そうだ。
「コウ・・・今日は休んでほしい。これ・・・僕の気持ち。」
「リョウ・・・ありがとう・・・ありがたく受け取る。でも何かあったら声かけてよ。」
「うん。ゆっくり休んで。」
ハナとコウをボールにしまうと僕とタオは洞から出た。地面は少しぬかるんでたけど、草のおかげでそこまでひどくはない。GPSと書き込んだ地図のおかげですいすい進める。
昨日感じた疲労がまるで嘘みたいだ。興奮してるのか先へ急ごうとするタオに僕は道の指示を出す。
ビークインが現れたところに着いたけど、今朝は昨晩の雨のせいか動物の物音ひとつしない。木々が風に揺られる音が響くだけだ。
あれほど感覚を狂わされた森なのに、今日はいたって平穏で何一つ感じられるものはない。タオがうるさく騒いでるだけだ。ぬかるみにハマっただの、なってる木の実がうまそうだの。
疲れが取れたせいなのかな・・・僕は考えたけど・・・地図を見ても昨日と何一つ移動距離も変わってないし・・・昨日と全く同じ光景が広がってるのにな・・・
洞を出てからわずか45分で本来予定していた折り返し地点に到着した。GPSをみても、地図を見ても、昨日と同じ・・・
「不気味だな・・・昨日は迷ってたのか・・・今が迷ってるのか・・・」
「どうした?ご主人?」
タオが愉快そうに聞いてくる。そんなに楽しいかな?こっちはもう昨日といろいろ違いすぎて心臓バクバクで何起こるかわからないっていう状況なのに。
「なんでもないよ。さ、こっちだ。」
僕はタオを山道の入り口のあるほうの分岐に進ませる。タオもさすがに僕の様子が変だってことに気付いて軽率な行動を取らなくなった。
まぁ下るだけだから時間はそんなにかからないんだ、と無理に自分自身を納得させる。不自然もいいところだ。
この森に来た本来の目的を僕は咀嚼するように思い出していた。
”この森に来たのは、ここでの経験を通じてもう少し大きな森の調査に挑む、その契機にする。”
でも全くその目的を果たせていない。人の手の入っていない自然を前にただおろおろしてるだけだ。こんなのでは・・・こんなのでは父さんに追いつけない・・・
「おい、ご主人、ほんとにしっかりしろよ。」
「え?」
タオに声を掛けられて僕は目の前の現実に引き戻された。木々は鬱蒼と生い茂り、道はわずかな木漏れ日で照らされてる。タオの黒い身体は暗い道では気付きにくいな。
「ああ、タオごめんごめん。さっさと行こう。もうすぐ昨日お昼食べた場所だよ。」
タオを見ると少し顔をしかめて僕を見てた。僕の言葉を聞くと僕の先をトコトコと進んでいく。気を取り直してタオを追いぬくように歩くスピードを上げた。
僕たちは思った以上のスピードで歩いたらしく、1時間と少しで昨日お昼を食べた滝の前に着いた。雨のせいか昨日よりも水の勢いが強い。
「はぁ、はぁ・・・つ、疲れた・・・」
「無理はダメなんじゃないのか?」
少しあきれたような声で僕の行動をやんわりと批判してきた。自然の中では無理はしない、ってのを口うるさく言ってきたからね。
「そうだったね・・・ついつい。」
「ま、さっきよか元気になってよかったじゃん。」
「タオのおかげだな。」
「俺ってすごいよな。」
「自分で言うなよ。」
御調子もののタオと一緒にいると元気になるけど、なんか僕までアホになるんだよな。タオには悪いけど。
轟々と滝の音が響き渡る中、少し休憩した僕たちは、再び歩き出す。タオも僕を置いていきそうなくらい元気に走ってる。黒いタオの身体は躍動している。
湿った土と草を踏み分けて山道から駅へ出る出口に近づいてきた。空には少し雲がかかっている。
ズサササ・・・何か滑るような音が聞こえた。
「ご主人!なんかきたぞ!」
タオが振りかえった方向に僕も振り向く。何かが茂みを滑ってこっちに近づいてきた。タオは身体を低くして唸っている。
ガサガサといよいよすぐそばまでその何かは近づいてきている・・・かなり大柄の2足の動物が見えてきた。見たことないような外見・・・
僕の知識がないのもあるだろうが、それでもそいつは普段見なれたポケモンとは違う形をしている。まさしく長い髪を持つ女性のような・・・でも獰猛さを感じる。
コウからたまに感じるものとは異質な感覚だ。雲が動いて日光が当たるとそいつは姿を現した。深紅の長髪。暗い紫の身体。鋭い爪。見たことのないポケモン、で、間違いはなかった。
紅い縁取りの目。瞳は薄蒼く輝き、こちらを凝視している。
「・・・オカマ?」
タオはふいにそう呟いた。だめだ。そんなこと言ったらオカマにしか見えない。
「ぷぷっ・・・」
必死で笑いをこらえる僕をそいつは睨んだ。やばっ・・・殺される?
「オカマじゃない!正真正銘♀だ!」
そいつは甲高い声で叫ぶけど、それが余計に笑いを誘う。僕たちはもう笑ってしまって話にならない。
「お前らぼっこぼこにしてやる!」
ああ・・・キレちゃった。やばいな・・・戦えるかな・・・タオを見ると少し余裕ムードだ。
「あ、そ。じゃあどうぞ。」
「タオ!ちゃんとしないと。」
「わかってるって。」
タオに注意したけど、あんまり効果ないな。余裕を見せるタオはおまけにそいつを挑発してる。そいつは身体を震わせてタオを潤んだ目で睨んでいる。まさしくいじめられっ子の逆襲、というような目だ。
「ふっ・・・」
そいつはタオに含み笑いをした。それを聞いた瞬間に僕はヤバイ相手を敵にしてしまったんじゃないか、そう思った。
「タオ!来るぞ!」
「ああ。」
早い・・・そいつは素早く跳びあがるとタオの視界から消えた。運動能力の高さをその体躯からうかがい知れることができた。僕もどこにいるか捉えることが出来ない。
ガバッ!
「ぐぇっ!」
攻撃を受けたタオの声が響く。僕はあわてた。
「タオ!」
「大丈夫だ。目の前にいるし。」
確かにそいつはタオの目の前にいた。
「かえんほうしゃ!」
「よっしゃあ!」
久しぶりに僕はタオに攻撃するよう指示した。タオは口から炎を吐きだしてそいつごと火で覆った。地面に当たった火が辺りに広がる。
「わははは・・・あいつは玉無しだ。」
タオは調子に乗ってまた余計なことを言う。僕はやれやれと思いながらタオに攻撃をやめるよう言った。焦げ臭いにおいが辺りに広がる。
「ふぅ・・・大分焼き尽くしたな。」
満足そうな顔でタオは振り返った。ガサッという音が今まで注意を払ってない方向からする。振り返ると影か動いた。
「ぎゃっ!」
空気を切り裂いてそいつは現れる。僕は悲鳴を上げたタオを見た。タオは鋭い爪で斬られたようだ。タオの元に駆け寄る。
「タオ!」
「うぅ・・ご主人・・・油断したぜ・・・」
タオはもう戦う力が残ってないみたいだ。僕はタオをボールに戻すと、少し考えた。なぜ全く違う方向から現れたのか・・・
「幻影?」
「気付いた?オカマだなんて言うからちょっと本気出しちゃった。」
そいつは僕をあざけるように言い放つ。この場を何としても逃れたい・・・僕は同じ♀なら大丈夫だろうと思ってハナのボールに手をかけた。
「ハナ・・・頼む!」
「はいは~い・・・ってなんでコイツ女装してるの?」
うわあぁぁぁぁぁ・・・終わった・・・ハナまでこんなこと言うなんて・・・もういいや、ボールに戻すか。
「戻ってハナ。」
やることが無くなった僕はハナのボールをしまうとそいつを睨む。
「な、なによ・・・怖いって・・・私とやるの?」
「自己紹介・・・」
「へ?」
いい加減名前が知りたくなって僕は名前を聞いた。
「知らないの?」
「知らない。」
「はぁ・・・私はゾロアークよ。♀です。で、もう終わりだけど。まだやるの?それとも私の勝ちを認める?」
「はぁ・・・最後の手段行くか・・・コウ・・・後よろしく。」
僕はコウを呼び出した。
「はいはい・・・えーっと・・・誰?」
「僕もさっき知ったんだけどゾロアークだって。」
「ポケモン図鑑の更新しとけよ・・・」
「ごめん・・・もうかれこれ1年半やってない。」
コウと僕はそのゾロアークそっちのけでしばらく会話をしていた。僕はポケモンを捕まえるために図鑑を持ってるんじゃないからね・・・ポケモンセンターに行っても回復目的だし・・・
なんて会話をしてるとゾロアークもイライラしてきたのか、再三僕たちに注意を向けさせる。
「もう!やるの?やらないの?」
・・・
「でさぁ・・・リョウは植物にしか興味ないのはわかるけど、図鑑の更新をしないと、何が起きるかわからないんだから・・・」
「でもコウはそう言うけど、僕は何が出てきても逃げる気だから・・・」
「それでもね・・・」
僕たちの話は終わらない・・・っていうかだんだん僕がコウに説教されてる感じになってきた。
「あのぉ~・・・いい加減相手してください・・・」
「え?」
ゾロアークの懇願でようやくコウの僕への説教は終わった。コウはゾロアークのほうを向くと首をかしげた。
「なんで現れたの?」
「ずっといたの!最初から!ずっと幻影見せたのに無視してどしどし進んでいくからでしょ!」
「え?そうなの?」
行きの変に疲れたあれも幻影だったんだ・・・にしてもそれを無視するコウって一体・・・恐ろしい仔・・・
「無視してないし・・・チャチだったからあえて相手するまでもないかな・・・って思ってたんだけど・・・」
「もういいです・・・自信無くした・・・」
「じゃあさよなら。」
コウはゾロアークとの会話を終えようとしたから、僕はモンスターボールに手を掛けてコウを戻すか考えた。
「ちょ、ちょと待ってって!戦ってよ・・・せっかく来たのに。」
ゾロアークは必死にコウを引きとめようとする。耐性ないのか・・・ずっと孤独だったのかな?
「戦いたいの?」
「うん。」
「そんなに?」
「うん。じゃあ私からいくね?」
「ちょ!」
コウが引きとめる前にゾロアークは高く跳びあがり、次々と鋭い爪をコウに向かって繰り出す。コウは何とか避けているような感じだ。
「ちょ・・・早いって・・・いでっ!」
ゾロアークの爪がコウの腹を斬った。コウは姿勢を崩さずゾロアークからの距離を保つ。
「どう?参った?」
「全然。」
「全然?まだやってほしいの?」
「いや。さっさとここから立ち去りたいなって。午後になれば天気が崩れるかもしれないからね。」
「また私をばかにしてぇ!」
コウは本気で戦ってないみたいだ・・・でもコウのお腹のグレーの毛は赤色を帯びている・・・怪我したんだな・・・
僕はきずぐすりを用意して戦いが終わるのをじっと待った。
「もう容赦しないよ?」
「いいよ。来なよ。」
コウの挑発でゾロアークはさっきよりも早く動いてるように感じるけどコウは動きを読み切ってるのか全然当たらない。
「なっ、なんであたらないのよ!こっ!やって!もっ!」
「幻影を使わないと戦闘力は並みかな・・・」
「くっ・・・グラエナのくせに!」
ゾロアークの動きはますます早くなるけどコウには全然当たらない。あまりにも当たらないからゾロアークのほうが見てて不安になる。
「じゃあこっちの番ね!ほれ!!」
そう言うとコウは疲れてきたのか動きが遅くなったゾロアークを軽々跳び越えて首後ろを深く噛んだ。
「うきゃぁぁぁっ・・・」
ゾロアークは断末魔のような悲鳴を上げた。
「うぅ・・・痛い・・・身体・・・しびしび・・・して・・・きt・・・」
「こっちは毒も持ってるんだって。」
ばたり、とゾロアークはその場に倒れこんだ。僕はコウを止める。
「コウ!やめなさい。」
「もう何もしてないって。」
確かにコウは動けなくなったゾロアークのそばから一歩も動いてないし、威嚇もしてない。僕はちょっと申し訳なくなって謝る。
「あ、ごめん。」
手に握ってたきずぐすりを思い出して、コウのもとに駆け寄る。
「コウ!血出てるでしょ?」
「ん?ああこれくらい大したことないよ。」
そう言うコウの下腹部は赤い線の染みが出来ていた。
「見せなさい。」
「大丈夫だって。」
「見せてみなさい。」
「いいって。」
「見せろって。」
「・・・仕方ないな。」
コウはそう言うとその場にごろっと仰向けになった。下腹部の赤い染みの出来た毛を慎重に動かしてきずぐすりを僕は使う。少し沁みたみたいでコウは身体をぴくぴくさせていた。
「終わったよ。」
「ありがと・・・ところでこのゾロアークにどくけし使ってあげて。」
コウはゾロアークに対して気づかいを見せた。普段から毒を使った相手には必ずどくけしを使うようにしてるんだ。じゃないと相手は毒が切れるまでずっと動けない。
ごそごそとどくけしの入ったカバンを探る・・・ない・・・いっつも使ってたやつがない・・・
「コウ・・・」
「どしたの?忘れた・・・わけないよな?」
コウは確認を求めるように少し僕を睨む。
「あるにはあるんだけど・・・錠剤のしかない・・・」
「え・・・」
いっつも液体のタイプと錠剤のタイプと持ってるんだけど、今日は液体のタイプを切らしてた。
液体だと相手の口に当てて飲ませるだけでいいんだけど、錠剤のタイプは呑みにくいから直接喉近くに飲み込ませないといけない。
錠剤しかないとき、コウは舌を使って相手に薬を飲ませるんだけど・・・これはコウがかなり嫌がる。だから液体ばっかり使ってた。これが無いんです。
「リョ~ウ~・・・」
唸るようにコウは僕の名前を呼ぶ。これは怒ってる。
「ごめんなさい。まじで。」
ひたすら謝るしかない。嫌がるっていうか、相手の口の中に自分の舌を突っ込まないといけないっていう状況は、誰でも嫌だよね。最初は僕が手で飲ませてたんだけど、苦しそうだったからコウに頼んだの。
「申し訳ないけど・・・これ・・・よろしく。」
僕はコウに白い錠剤を渡すとコウの舌を洗うために水筒を用意した。
「・・・ったく。なんで♂の口に舌つっこまないといけないんだよ♀でも十分嫌だけど・・・んじゃ口あけて。」
「・・・ん・・・ん・・・」
ゾロアークはしびれる体を必死に動かして口を最大限に開ける。コウは自分の舌の上にどくけしの錠剤を置いてゾロアークの口に迫る。
「ん・・・んぐんぐ・・・んっ・・・んえっ・・・けほっけほけほっ・・・」
咳き込むっていうのはうまく入ったサインみたいなもんだ。ゾロアークは咳き込んで潤んだ瞳でコウをじっと見てる。
「ああ。もうあと半時間したらちゃんと動けるようになるから・・・」
コウはもぞもぞと動こうとしたゾロアークを動かないように諭した。今だけとはいえゾロアークはコウに完全に服従してる・・・コウはまだゾロアークが♂だと思ってるのか。可哀想なゾロアークだな。
僕はべろっと出してたコウの舌に水をかける。満足したのかコウは舌をしまう。
「さて・・・リョウ、行こうか。」
「このままほっとくのもな・・・かなりひどい扱いしたし。」
「そう?」
「うん。」
僕たちは結局ゾロアークが上手く喋れるまでずっと待っとくことにした。
「でも図鑑更新しないといけないのホントに忘れてたんだって。」
「リョウはソラに対してもそんな感じだったもんね。リョウのお父さんはずっと興味津津って感じだったし。」
思いがけない休息で思い出話に花が咲いた。普段実家の話をしなくなってたからね。週1回くらい電話がかかってきてるからついつい。また帰らないとな。
ローとサナにコウの立派な姿を見てもらわないと。じゃじゃ馬だったソラは何してるのかなぁ・・・
「んっ・・・」
しびれが治まったようでゾロアークが動いた。僕はコウを遠ざけてゾロアークのもとに駆け寄った。
「大丈夫?」
「だいじょうぶ・・・でもなんでこんな優しいの?」
「♂だからだろ。」
コウの突っ込みが入る。
「こら!」
コウに怒ったけど、たしかコウはまだゾロアークが必死で♀アピールをしてたのを知らないんだな。僕はコウにゾロアークが♀だっていうことを耳打ちした。
「え?マジで?」
「うん。」
「嘘だぁ・・・」
「ほんとだって。まぁいいや・・・お別れをしてくるから。」
僕はコウにそう言い残すと再びゾロアークのもとに戻った。
「じゃ、ゾロアーク・・・元気で。」
別れの言葉を切り出すとゾロアークはなんだか不安そうな顔をした。戦ってたさっきまでの顔と違ってかわいらしい顔だ。ゾロアークの不安を取り除くために僕はある提案をすることにした。
「あのさ・・・もしよかったら、僕たちと一緒に来ない?」
「え?でも・・・」
僕の突拍子もない提案にゾロアークも、コウもびっくりしてた。驚いてるゾロアークに僕は続けた。
「満足できる食事も保証できないし、身勝手なことをするかもしれないけど・・・モンスターボールに入ってっていうし。」
「いいんですか・・・ほんとに・・・」
ゾロアークの気持ちは明らかに森に残るほうではなく僕のほうに向いていた。
「いいよ。」
「じゃあ・・・お願いします・・・」
「決定だね。」
僕はゾロアークに笑顔でグーサインをした。ゾロアークも僕をみて顔を赤らめて僕にウィンクをしてくれた。
「とりあえず・・・」
「あの、名前・・・決めてくれませんか?」
ゾロアークは顔を真っ赤にして僕に頼んできた。僕も少し悩んで、コウを呼んだ。コウも考えてくれてるのか悩んでるみたい。
「名前?ゾロアーク・・・ゾロアーク・・・ジョー○・ソ○スってのは?」
「コウ・・・なにその伝説の相場師みたいな名前。ダメだって。もっといいやつ考えて。」
半分ふざけてたのか、半分真面目だったのかコウは少し意気消沈したみたい。
「リョウのほうが名前考えるの得意でしょ?」
「昔はね・・・最近はちょっとセンスが失われてきた。ゾロアーク・・・ゾロ、アーク・・・クゥちゃんって言うのは?」
「ダメでしょ・・・はいやり直し。」
コウも僕のあきらめ半分で考えた名前を却下した。名前で悩むのもなぁ・・・僕にしては珍しいな。
「よし!ここはベタにナオっていうのは?ナオちゃん。」
「あ、それいいんじゃない。如何にも無難で。」
コウも賛成してくれたしゾロアークに名前を決めたことを報告する。
「えーっと・・・決まりました!・・・君の名前はナオです!」
「ナ・・・オ・・・?」
「そう、ナオちゃん。」
「いい名前つけていただいてありがとうございます。」
ゾロアーク・・・改めナオちゃんはすごくうれしそうだ。僕たちは森をさっさと抜けることにした。
「さ、行こうか!」
「うん!」
「コウ、行くよ?」
「はいはい。」
コウとナオちゃんは何やら喋ってる。僕は何をしゃべってるのか聞き耳を立てた。
「幻影ってどうやって出してるの?」
「ええと・・・何て言ったらいいか・・・フィーリングかな?」
「フィーリングね・・・で、ホントに♀なの?」
「♀です!証拠見せます!」
「見せなくていいって。」
聞いていた僕はナオちゃんが歩みをとめたことに気付いた。僕もつられて止まる。ナオちゃんはコウに何やら見せてる。
「ほら!♀でしょ?」
「それも幻影?」
「ちがいます!」
ナオちゃんも必死だなぁ・・・ってことはそこまで♂って言われてたのかな・・・コウもいい加減信じてあげたらいいのに。
「で、ナオはなんで俺たちに目を付けたわけ?」
「ええとぉ・・・あの森は知っての通りあんまり人がいなくて、時折来ては遊んでたんです。道に迷わせたりして。でもあなたたちは迷わなかったし・・・私の存在にそもそも気付いてくれなかったし・・・」
再び僕たちは歩き出した。僕は少し話に入っていけない。寂しい・・・
「私がいてリョウさんに迷惑かけないでしょうか・・・」
「そ」
「そんなことない。リョウは迷惑とか有益とかそんな安い判断するような人間じゃない。」
僕が言う前にコウがナオちゃんに話してくれた。コウにこんなこと言われるなんて・・・恥ずかしいな。僕は目を前に逸らした。
「そうですか・・・あなたは何てお呼びしたらいいですか?」
「俺?コウでいいよ。」
「呼び捨てで?」
「当たり前じゃん。」
コウとナオちゃんの雰囲気が妖しいぞ・・・ナオちゃんはコウに惚れたのかな・・・でもコウは僕の気持ちには敏感なのに、ハナとかタオの気持ちにはわりと鈍感だからなぁ・・・。
僕はどうなるかなと思ってナオちゃんとコウをじーっと見る。
「あの・・・コウさん・・・」
「コウでいいって。」
「コウ・・・はなんでそんなに強いんですか?」
「強いか?」
「はい。私・・・自分より強いのになかなか遭ったことなくて・・・」
「マジックもタネがわかると面白くないでしょ?俺のはそれと同じ。」
「コウのマジックってことですか・・・」
「そう。」
どんどん親密になっていくぞ・・・ナオちゃんってこんな照れ屋なのかな・・・
僕がコウとナオちゃんの話に気を取られているうちに山道の出入り口に着いた。僕はカバンをがさごそと漁って、コウのモンスターボールと予備のボールを取った。
「さて・・・お二方。モンスターボールに入ってもらおうかな・・・」
「わかった。」
「ちょっと不安ですね・・・」
「ナオちゃん、怖がることはないって。コウ?先に入る?」
「どっちでも。」
「ナオちゃんは?」
「じゃあお先に・・・」
不安がるナオちゃんに向かってボールを投げた。モンスターボールはナオちゃんを捉えるとやっぱりナオちゃんは怖いのだろうか・・・ボールが少しカタカタと揺れた。
「おさまったかな・・・」
落ち着いたようでボールの揺れはおさまった。
「コウも怪我してなかったら、一緒に帰りたいんだけどね。とりあえずポケモンセンター行くからそれまで我慢してね。」
「わかった。」
コウにボールを向けてボールを直すと、僕は昨日行ったポケモンセンターに向けて歩き出す。森を抜けると下りだけの砂利道を早歩きで下っていく。
すたすたと歩いていると見なれたポケモンセンターの建物が目に入る。
ドアを開けると、昨日はいなかったジョーイさんがいた。
「こんにちは・・・これ、お願いします・・・」
「はい。じゃあ少し待っててくださいね。」
僕はジョーイさんに1つ増えたモンスターボールを手渡した。僕は荷物を置いて長椅子に腰掛ける。ふと思い出してポケモン図鑑のデータの更新をする。
しばらくするとジョーイさんが僕のところにボールを持ってやってきた。
「終わりましたよ。ヘルガーが少ししんどそうにしてたくらいで他は大丈夫でしたよ。」
「ありがとうございました。」
僕はジョーイさんに軽く礼をするとボールを受け取ると、ジョーイさんはうれしそうにまた受付に帰って行った。
すっかり汗をかいて、お風呂に入りたくなった僕はポケモンセンターを後にすると家に帰る。
「とんでもないとこきちゃったなぁ・・・」
疲れきった僕はそう呟くしかなかった。日帰りの予定がすっかり2日使ってしまって・・・

ガチャッと家のドアを開けると僕は靴を脱いですぐリビングに倒れこんだ。荷物も何もかも背負ったまま。まだ昼の2時だ。
「あぁ・・・あいつらを出してあげないとな・・・」
ボール4つに手をかけて一気にゴロゴロと投げる。すると4匹も疲れたようでなんだかしんどそうだ。
「リョウ・・・ほんとお疲れ・・・俺も寝る・・・風呂入れよ。」
「コウ・・・ありがと・・・」
コウの気遣いに感謝すると少し仮眠をとった。

「ふあぁ・・・いま何時だ?」
目を覚ました僕は時計を確認した。針は午後5時を指していた。起きるとすぐに着替えを済ませ、風呂に入る準備をした。
不気味なくらいの静けさを感じる・・・コウたちの声が全く聞こえないな・・・僕は不安を感じ、辺りを見回した。すると力なく横たわっているコウを見つけた。
「コウ!」
「ん・・・ああリョウか・・・」
「どうしたの?大丈夫か?」
「ちょっとね・・・ハナの相手してたら疲れたの。」
その答えを聞いて僕はほっとした。ハナもコウから離れたところでうつ伏せで寝ていた。
「ハナ!大丈夫?」
「ごしゅじん・・・大丈夫。ふぁぁぁ・・・眠たい。」
ハナも終始こんな感じだ。よっぽど疲れたみたいだ。・・・ナオちゃんとタオがいない。僕は寝室へ入る・・・するとそばでおびえるようにタオが恐怖で顔をひきつらせていた。
「タオ!大丈夫か?」
「あのオカマ狐怖い・・・」
「へ?」
「俺が・・・ちょっかい掛けたら後ろ脚つかまれて・・・宙づりにされた・・・」
「ちょっかいかけるタオが悪いでしょ?」
「そ・・・そうかな・・・」
「うん。まぁゆっくりしなさい。」
タオにそう言い残すと僕はナオちゃんを捜す。なかなかいないな・・・諦めてリビングに戻るとナオちゃんがコウと何やら話をしていた。
「ナオちゃん!どこいたの?」
「ちょっと幻影を使って遊んでただけ。」
「はぁ・・・心配したって。」
「ごめんなさい。」
謝るナオちゃんに僕はいいよ、というジェスチャーをした。そしてコウとナオちゃんの話に再び聞き耳を立てる。みんなはもうオカマって言ったことをナオちゃんに謝ったらしい。
「私ってかわいいかな・・・ね?ね?」
「うーん・・・可愛いというか・・・まあ外見は気にしないことかな。」
「何それ?可愛くない?」
「かっこいい。」
「えっ・・・」
「なんか孤高の戦士みたい。」
「あんまりいじわるすると・・・」
「おっ・・・やるか?」
なんかやばそうな雰囲気になったのであわてて間に入って止める。
「2匹とも、やめなさい。」
「はい・・・リョウさん・・・」
「リョウ・・・こいつにうまく社会生活を送るコツを教えてあげてほしい。」
「コツ?」
「そう。なんかうまくまだ適応出来てないな・・・って思うから。」
僕はナオちゃんのほうを見るとすこしもじもじ照れくさそうにしている。ナオちゃんってコウとならんでると♂っぽいな確かに・・・コウのほうが♀みたいだ。
「もう・・・コウったら・・・」
するとナオちゃんはその暗い紫の身体を素早く動かし・・・赤い長髪は乱れるがその腕はコウに向かっていた。
「こら!ナオ!やめろって!」
コウはナオちゃんに上から抱きつかれるとそのまま仰向けにひっくり返されてしまった。下になったナオちゃんはもがくコウをニコニコ笑顔で見るとうれしそうに言う。
わがままな♂にからまれた♀みたいな構図になってる。逆だけどね。コウとナオちゃんの位置が。
「私は・・・コウのことが好きだな。」
「・・・だからってこういうのはダメだって。」
コウはナオちゃんの体の上でかったるそうにぷらぷら四肢を動かしてる。ナオちゃんの両腕はコウの前肢の脇をがっちり固めてるので、コウは後ろ脚でしか抵抗できない。
「放してくれ・・・」
「だめ~・・・」
なんかだるい空気だなぁ・・・僕はそう思うと自分でも突拍子もないことを切り出す。
「お前らもう付き合え。見ててだるい。」
「えっ・・・リョウさん!」
ナオちゃんはデレデレもいいところ。コウはすっかり顔を暗くしてる。そんなにいやなのか?
「どうせリョウは俺のほうが♀みたいだな、とか思ってるんだろ?」
「えっ・・・コウ・・・そんなわけないじゃんか・・・アハハハハ・・・」
ここまで見抜かれてると隠す必要もそもそもないけどな・・・これからこんな4匹と生活していくのか・・・ちょっとしんどいけどさらに楽しくなりそうだ・・・
コウには悪いけどね。仕方ないです。そう思うと僕はすっかり拗ねたコウのお腹をなでる。
「リョウ!やめろって!くすぐったいから!」
「どれどれ・・・」
ますますコウは拗ねてしまったぞ。コウを抱いてるナオちゃんはすごくうれしそうだ。無邪気にニコニコしてる。
なんか少女漫画の世界みたいだな。♂が♀にいいように遊ばれてるって。でも♂の方が賢いし。コウは四肢を動かすのを諦めて、ナオちゃんの蒼いもふもふに身をゆだねてる。
「放してくれ・・・」

・・・こうして僕たちの新しい生活は幕を開けた。何が待ってるのか・・・わからないけど・・・でもだいたいコウはすごく疲れる生活になるんじゃないのかな・・・
ごめんね、コウ。

おしまい


ああーやっと終わった。構想1週間、製作2日・・・
やっぱり1つの話にあれやこれやと詰め込むのはあんまりよくないみたいです。
グラエナのコウの災難な話なのか、ハッピーエンドなのか・・・よくわからんね。
ゾロアークをネタにしてみましたが、別に誰でもよかったような。
一応全3話で120kbでした。集中力の持続が今後の課題ですな。
次は面白い話を書ければ・・・とつくづく思うばかりです。


誤植、コメントなどは↓へお願いします。@10/7/2

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Last-modified: 2010-07-02 (金) 00:00:00
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