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こんにちは。どこかのだれかさんです。ちょっと気分転換にと作者名は伏せている次第であります。
つい先日友人とポケモンバトルをしたことを元ネタに執筆していきたいですね。
それでははじまりはじまり~。

【writer Southern Cross


注意です!
作者は他の小説の展開に行き詰っています!いきなりほかの小説を書きはじめてもあまり責めないでやってください。
(しばらくしたら名前を出すかも……。)
危険な小説ではありません。(文章力以外は)健全な小説です。タブンネ。







「リーフィア!リーフブレード!!」
「ブースター!炎の牙!!」

公園の一角で少年たちの熱い声が響き渡る。その声が途切れると同時に派手な轟音と砂煙があたりを包み込む。

「……両者、戦闘不能!」
そう声が聞こえるとともに二人の少年はがっくりとうなだれそれぞれのポケモンにねぎらいの言葉をかけてモンスターボールの戻す。そして、二人の少年はがっちりと熱い握手をかわす。

「ふぅ………。いい勝負だったよ」
「ああ!また今度な!次は俺が絶対勝ってやるからな!」
「ふふっ、僕だって負けないからね」
そう言葉をかわすとお互い帰路につく。しかし、お互い別れを惜しんでいるのか何度も振り返っては手を振っていた。







「さてと………とりあえずこの子を回復させてあげないとね……」
そう私のご主人は私の入っているモンスターボールを眺めながらつぶやいた。うんうん、早くしてほしいもの。まったく女の子にだって手加減なしで噛み付くんだから……あの子は。おかげで私の前足の付け根のあたりにくっきりと歯形が残ってる。……はぁ…。治るとはいえこの痛々しい歯形とその周りのちりぢりに焼け焦げてしまった毛を見るのはいやだな………。
そんなことを考えていると不意にモンスターボールの中がほんのりと暖かくなってくる。やっと回復が始まったみたいね。私のご主人は家の中に簡易回復装置をおいているとか何とかで重傷じゃない限りはポケモンセンターまで行かなくても家でポケモンを治療できるとかいう優れもの。
体が徐々に暖かくなっていく。さっきまで傷のあった前足の付け根のあたりの傷を見てみると焼け焦げた毛と一緒に再生していってる。後は少しゴロゴロしている間に治療が完了する。この装置で主に回復させるのは私たちの生命力、人間はHPと言ってやたらと数値化することが好きらしいものと技を使う時に消費する精神力、PPと呼ばれるものの二つ。その他にも毒を抜き去ったり痺れを和らげたりといろいろな機能も備わっているらしい。
そんなことを考えていると私はボールから出された。ここは…ご主人の部屋だね。そういえばさっき私がお世話になった装置、もともとはリビングにおいてあったものを「邪魔だから」とご主人のお母さんに言われてご主人の部屋に置くようになったんだっけ。そう真っ白い色をした箱のような装置を見て思い出した。
ご主人は回転できる椅子に座って足を組み眼鏡のずれを片手で直しながら顔をしかめて私を眺めていた。今ご主人が座っている椅子、あれでよく私は遊んでいる。遊び方は簡単、背もたれのところに両前足をかけて椅子の上にお座りをする。そして、尻尾をご主人の部屋に置かれている家具に引っかけてから引っかけた尻尾で強く家具を押す。すると、椅子がくるくると回り出してとっても楽しいの!何回か振り落されたけどそのスリルもたまらないね。一回まわりすぎて気持ち悪くなった時もあった。あの時は本当にご主人にあきれられたよなぁ………

「お~い……リーフィア?」
ご主人の声とともに少しずつ現実へと戻される。しまった。考え込んでしまうのが私の悪い癖だったんだっけ?ご主人はさっきの格好を崩すことなく私に声をかけていた。私はあわてて鳴き声を発して平気だと伝える。一応人間の言葉は少しだけ話せるけど私の場合言葉を選ぶのに多少の時間がかかる。あわてるとついポケモンの言葉になっちゃうみたい。人間には「ふぃ~」っていう感じの発音に聴こえているみたい。……しまった。話がずれた。
ご主人は私の意識が飛んでないことを確認したからか再びしかめっ面になって宙を見上げる。このままじゃ居心地が悪い。私はご主人に声をかけようかと思い口を開けた。「………どうか……した?」無理矢理ひねり出したような声、ハスキーと言えば聞こえはいいだろうけどみずみずしさとは遠くかけ離れた乾燥しきった声。これがいやだから人間の言葉をあまり使わないんだけどね…。

「いや……なんでもないよ。どうやったらあいつに勝てるかなぁ?」
そう言い本棚からきれいなファイルを取り出し再び椅子に座りあれこれファイルとにらめっこしながらぶつぶつと言っていた。ファイルには大きく「リーフィア育成論」と書かれていた。要は私をどんなバランスで強くしていけば最強へと近づくかを記したファイルのこと。私たちポケモンだって成長の限界がいつか必ず訪れる。その時にアンバランスな力のつき方だと戦闘には向かなくなってしまう。そうなってしまったポケモンは不幸の極みだと思う。私は「実践が一番」とご主人に教えられよく鳥ポケモンと戦っている。あの俊敏な敵に追い付こうと必死になっているうちに私の動きも素早くなっていった。たまに食事にふしぎなくすりが並べられていることがあるけどそれで強くなれるのなら喜んで飲む。味も悪くはないしね。

私はしばらく部屋をうろうろ…というかフラフラしていた。さっきの戦いでだいぶ疲れがたまったのか立ち止まると睡魔に襲われそうになる。その様子にご主人が気がついたのかファイルを机に置いて私に声をかけた。
「つかれたの…?……そう…。じゃあ、早くに休んだ方がいいよ」
ここはお言葉に甘えたほうがいいね……。これ以上起きていたら立ったまま寝ちゃいそうな気がする。私はご主人に素の鳴き声でお休みを伝えるとご主人のベッドの横に置いてある大きめのバスケットの中で眠りについた。




次の日の朝から私たちの猛特訓が始まった。言いだしっぺは私なんだけどね。ご主人は素早さだけではダメ、決定的な一撃を相手に与えるための力も必要だと考えてるみたい。私はご主人に連れられて力の強いポケモンたちを相手に実戦練習を重ねることにした。もともとブースター程じゃないけどある程度力はあった。でも、その力を上回るパワフルなポケモンに苦戦しながらも私はさらに力をつけていった。
その特訓の帰りにご主人はミックスオレを買ってくれた。いつもそうしてくれる。味にはもう飽きちゃったけどよく冷えたこのジュースにご主人なりの温かい気遣いを感じる。だから、飽きたとかは絶対に言わないの。かわりに私は一生懸命戦うの。ご主人のために……ね。

「リーフィア、ちょっといいかい?」
部屋でご主人にそう声をかけられた。何だろう?そう思って首をかしげながらご主人の座っている椅子のところまで駆け寄った。ご主人は空色のディスクを片手に持って不安そうな顔をしている。どうしたんだろうと思ってさらに私は首をかしげて不安そうに声を漏らした。
「ん、……決定打には欠けるけど……。ちょっとこの技を覚えてみない?」
そう言って私に空色のディスクを見せる。そこにはひらがなで「つばめがえし」と書かれていた。確か飛行タイプの技だったから相手の意表はつけるだろうし苦手な虫タイプを克服できるかもしれない。それに私は基本的には地面で戦うタイプのポケモンだから空中戦にはあこがれのようなものを抱いていた。私はご主人に向かって元気良くうなずいて見せた。覚えたいってことで伝わってくれるかな?

「よし、じゃあおでこ出して…」
私はニコニコしながら頭をご主人の方に近づけた。ご主人は私のおでこにディスクをそっとくっつけた。その瞬間、私の頭の中に直接燕返しのやり方が伝わってきた。決して心地がいいものじゃない。むしろやった後頭がくらくらして足取りもフラフラしちゃう感じになる。シザークロスを覚えた時なんて我慢できずに吐いちゃったような記憶がある。でも、今回はぐっとこらえて………うぷっ……気持ち悪いよぉ……。

「っと…。リーフィア、大丈夫?」
涙目になりながらもがんばった。でも、立ってると地面がぐらぐらしてるみたい……。ぱた…、と横になってこの悪夢が終わるのを待つしかなかった。ご主人がしきりに心配していたけど私はそれをよそに床の上で寝てしまった……。



次の日には私の体調は万全だった。早速燕返しをやってみたいってことでご主人に外出を急かしたりもした。おかげで充分に朝飯を食えなかったとかで文句を言っていたけどなんだかんだ言ってもご主人も燕返しの威力を早く確かめたいといった様子だった。私たちは昨日実戦練習をしていたところで燕返しの威力を思う存分確かめてみた。確かにとどめの一撃には向いていない技だったね。でも、序盤で素早い動きで敵を翻弄しながらもジワリジワリと体力を削っていくにはもってこいの技かも。それに炎タイプのブースターに威力を半減されることなく使える技として活用できるかもしれないね。あぁ!リーフブレードでゴリ押しの時代はもう終わったんだね!


私たちはそれから特訓を続けた。そのたびに私の力、人間でいうところの攻撃力が強化されていった。ご主人はだいぶ私の成長に満足したのかブースターを使うあのトレーナーとの勝負の日の前日はゆっくりと休ませてくれた。




ついに決戦の日が来た。ご主人は私のコンディションを念入りに確認してちいさく「よし!」と言うと戦闘用のグッズの入ったリュックサックを背負って勇ましく家を出た。私たちの勝負にかかる時間はだいたい3時間ぐらい。その長さと使っている種族から私たちの勝負はちょっとした公園の名物になっている。けれどご主人の指示通りに戦っている私たちよりも指示を出しているご主人たちの方が大変そうだ。
私たちは前に戦った場所である公園の隅でのんびりとしていた。ご主人は慎重すぎるのか待ち合わせのだいぶ前には絶対ここにいる。対するブースターを使っているトレーナーはなんというか……ズボラなの。いつも待ち合わせぎりぎりに来る。……って、あれ?もう来た。いつもはこんなことは絶対ないのに。ご主人も少し驚いている。

「よお!待たせたな!」
「いや……僕らも来たばかりだよ。どうしたの?そんなに早く来て」
私も疑問に思っていたことをご主人が聞いてくれた。すると彼はにやにやにやけながらご主人に大胆な事を言ったのだった。
「へっへっへ…。今日は絶対に負けない自信があるんだぜ!」
「へぇ……。それは楽しみだよ。それじゃあ、いつも通り公園の管理人さんに審判は任せてはじめよっか」
「おう!」

私は少なからず不安を抱いていた。ご主人はあまり気にしていなかったけどあの自信に満ち溢れた顔。普段は不安が混じったような面持ちの彼がこんなにも勝利の確定したようなそぶりを見せるはず無いのに……。そんあ不安そうにしている私にご主人は優しく声かけてくれた。
「大丈夫だよ。きっと、今日はテンションがハイなだけだから」
そうだよね。不安がったってしょうがない。私たちの秘技燕返しを見せてあっと言わせてやるんだから!





「それでは、戦闘……始め!」
審判の声が公園に響き渡る。勝負が始まる。この瞬間はやっぱりワクワクしてしまう。今こそ私の力を見せるときっ!

「リーフィア!連続で燕返し!!」
「えっ!燕返し!?……ブースター!近寄ってきたら炎の牙!!」

私は勢いよく地面をけって大ジャンプを見せる。ブースターは口のあたりに赤々とした炎がちらちらと見えているから正面からの突撃は危ないよね。私は一回目の燕返しのコースを大きくずらしてブースターの後ろに回り込む。そしてがら空きの背中に二回目の渾身の燕返しを直撃させた。

「あっ!チクショウ!!…それなら……ブースター!……フレアドライブ!!!」
「えっ!そんなはずは……」

ブースターが紅蓮の炎を身にまとい始めた。ブースターの姿に恐怖を覚え私はあわててご主人の方を振り向いてみたけどご主人はパニックに陥っていた。しきりとブースターのつかえるはずの炎タイプの技をぶつぶつと言っていて顔は蒼白だった。私は鳴き声でご主人に呼びかけの声をかけようとした。


……しかしものすごい轟音とともに私の呼びかけは悲鳴へと変わった…。












…………。
……あれ?

ここは………どこ?

私が目を開けてみるとそこはモンスターボールの外で真っ白い部屋の中にラッキーさんが心配そうな顔をしてこちらを見ている。見覚えのあるこの空間は……ポケモンセンターかな?ご主人はパイプ椅子に座って眠ってしまっているようだった。ふと仰向けに寝ている私の体を見てみるとおなかにはさらし状に包帯が巻かれていた。ぐるぐる巻きって感じ。右前脚を見てみると管のついている針が刺さっている。点滴ってやつかな?管の上には赤々とした液体がたっぷりとはいっている。……もしかして……血?そんなことを考えていると私の視界が妙にせまいのに気がついた。瞬きをしてみると左目に違和感がある。眼帯までつけてるの?……なんか私、重傷患者みたいなんですけど…。

「あっ!院長先生!リーフィアちゃんの意識が回復しました!」
そうラッキーが声を張り上げる。気がつくのが少し遅いよ……もう。すると白衣を着た男の人……というかおっさんが近づいてきた。
「ほう……。起きたかね…。ほら、そこの君、君の大切な子が起きたよ。起きて」
そう言っておっさんは私のご主人の肩を揺する。ご主人はハッと目を覚まして急いでパイプ椅子から立ち上がり私のもとへ駆け寄った。

「リーフィア、大丈夫?」
心配そうなご主人に私は素の鳴き声で元気であることを伝える。見た目の割にはそんなに痛いってわけじゃないし。ご主人は私が元気そうだったのに安心してほっと溜息をついた。それから私は運ばれてきたときは目も当てられないくらいの重傷だったこと、その傷を跡も残さずきれいに治療してくれたのはこのおっさんであること、私がなかなか目覚めなかったこと、等を伝えられた。私は隣にいるおっさんに鳴き声でありがとうって伝えた。……あ。命の恩人におっさん呼ばわりはいけないよね。今度からおじさんと呼ぶことにしよ。
実際、傷はほとんど治っていて治療の最中外部から細菌を入れない為に包帯と眼帯をつけていたのだとか。どうりで痛くないわけだ。おじさんは治療といっても最近は私たちの治癒能力を高めて直すものが主流だとかいう事を話していた。よくよく考えてみると包帯や眼帯をつけながらの治療が無理だ。なるほど、その話なら合点がいく。そしてやはりあの点滴の正体は血だった。いくら治癒能力を高めても足りない血はどうしようもないらしく輸血を図ったのだという。
私たちは夜もだいぶ遅くなってからポケモンセンターを出た(もちろん包帯も眼帯もとってから)。いつもならこんな時間に帰ってくればお母さんに怒られるけど今日は訳を知っているからか少し遅めの夕食をとらせてから私には早く寝るように言った。ご主人は帰路でも始終無言だったしさっきお風呂に入りに行ってしまった。少しさみしいような気もするけど今日は疲れちゃった。ご主人に心の中でお休みをいてから私は眠りについた。







次の日、ご主人は朝から家を空けていた。私が寝ているうちに行ってしまったらしく私はご主人と顔をあわせられなかった。ご主人はお母さんに「探し物があるから」と言って出てしまったのだという。私はお昼までご主人の部屋にある椅子で遊んでいた。

お昼になってご主人は家に帰ってきた。その顔は満足感でいっぱいだった。何を探していたかは知らないけれどあの様子だと探し物は見つかったみたいだね。私もなんだか嬉しくなってくる。これが共感ってやつかな?
ご主人は「お昼を食べたら見つけたものを早速買ってくるからまた外出する」と言っていた。午前中私はご主人と一緒にいれなかったし家で遊んでいたからちょっと外に出たかった。ご主人についていくと言った。そして、お昼をご主人と一緒に食べ私たちは出発した。

ご主人は人のあふれかえっている商店街へといった。私は商店街が嫌い。苦手意識を持っている。私のように人よりも小さいポケモンがあるいているとよく「オバチャン」と呼ばれる人から足を攻撃される。具体的に言うと足を踏みつけられたり蹴られたりする。これは流石に参ってしまう。だから、私はモンスターボールの中に避難する。でも、当然のことながらモンスターボールの中に入ってしまうとご主人とお話しできなくなってしまう。その寂しさが一番嫌いなの。しばらくしてご主人は商店街を抜け出した。私はそれと同時にモンスターボールから出される。ちょっと細い道をご主人は無言で通っていく。裏路地とはちょっと違うけど人が全く通らなそうなところ。そこにご主人の探し物があるのかな?
ご主人は一際あやしそうな店の前でとまるそこには張り紙がたくさん貼られていた「ポケモン育成用周辺機器販売中」とか「今噂のあれ、在庫あり!」とか「品切れ必須、あの商品!」とかの類のものばかりだったけど。ポケモンに科学技術が介入してきたのはごく最近のことだとか私は聞いている。確かに、モンスターボールや、簡易回復装置や技マシンとかもそういった類の科学技術。でも、それを問題視する人もいるとかで最近じゃあ問題になってきているらしい。
そんなことはどうでもいいね。とにかく今、私の目の前にあるお店は何となく嫌な感じのするお店だった。ご主人はそのお店に躊躇することなく入っていった。ドアも商店街のとは違って勝手に開くやつじゃなくて自分で開けるやつだった。
ご主人はいろんな怪しい機械が並べられている店内の一番目立たない隅の方に置かれている商品を手に取った。私はそこに貼られている張り紙を読んだ。

「裏ルートから仕入れました!
 今噂の非公認機器『コンドーフリーク』!
 在庫あとわずか!」

と書かれていた。「非公認」という響きが私を余計不安にした。しかし、ご主人はそれをよそにその機器をレジまでもっていき財布からごっそりと札束を抜いてそれを購入した。レジにいた胡散臭いおっさんはニコニコしながらご主人に話しかけた。
「いやぁ~。お買い上げ、ありがとうございますぅ!実は少し前にも一人、これを買っていった子供がいましてねぇ。
 まあ、大事に使ってください。…あ、あと、この店のことは秘密にしておいてくださいね。よろしくお願いしますよ」
ますます、胡散臭いおっさんだ。ご主人は騙されたりしてないよね…?そんな不安がどんどん膨らみながらも私たちは家に帰った。


ご主人はそれから購入したコンドーフリークの「取扱説明書」と書いてある機器に付属していた本を読み始めていた。コンドーフリークは机の上に大切に置かれている。クリーム色の四角いプラスチック性のものに電卓のように数字と英語とかが並んでいるもの。そのコンドーフリークにはリモコンのように先に何かセンサー的な何かが出てきそうなものもついていた。何をする機械かは分からないけど私の育成に大きくかかわっていることぐらいはあの店の雰囲気からして理解できる。結局その日は晴れだったにもかかわらず特訓をすることなく私たちは一日を終えた。




それから鬱陶しい雨の日続きだった。雨の日は嫌い。ぜいたくを言わせてもらうなら曇りの日も嫌い。私たちの力の源を作り出す光合成がすることの出来ないこの天気は一刻も早く終わってほしかった。それだけじゃない。雨の日なら当然、私たちは特訓をすることが出来ない。お母さんに止められるの。
しょうがないから私はご主人の使っている椅子で遊び始めた。ご主人は相変わらずコンドーフリークのことで頭がいっぱいみたいだし……。





雨の日、3日目。流石に萎えてきた。光合成できないから私の体についている葉はいつもなら重力に逆らって立っているのに今日は元気なく垂れ下がっている。おまけに台風の影響とかいうことで外で雷がゴロゴロとなっている。雷も嫌い。落ちる瞬間のあの音が大嫌い。その雷が朝からなり続けている。それが余計に私の心をどんよりさせた。
……でも、私の憂鬱の一番の原因はご主人だと思う。最近ずっとコンドーフリークのことしか頭にないみたいで私が声をかけてもどことなく上の空。……これじゃあつまんないよ。

私は強行手段に出た。といってもとにかく駄々をこねてみるだけなんだけどね。ご主人の前で私のわがままを人間の言葉で伝える。ブースターいわく、私のかたことな言葉と上目づかいな視線だったら人間、だれでも堕ちるよ。等と言っていた。よく意味が分からないけど活用した方がいいってことだよね。
「ご主人………私……外……いきたい…………一緒……」
これで大体は伝わるはず……。ご主人は頭をポリポリとかきながら「じゃあ、ジムにでもいこっか」と言った。ジムっていうのはトレーニングセンターのこと。この町にポケモンリーグ公認のジムなんてないからね。場所も使わなければひとりで体を鍛えられる施設としてけっこう重宝している。

「よお!久しぶり!」
「ん、久しぶり……」
ジムに行ったらあのブースターを使っている少年に会った。ご主人は少しバツが悪そうな顔をして返事をする。それから一発で負けてしまったこの前の勝負じゃあ納得がいかないってことで私がバトルしたいって伝えた。ご主人は止めたけど私は気が済まなかった。あんな一方的で無様な負け方をしていられるわけないしね!

審判のいないなか私たちは勝負を始めた。

………しかし、それはやはり惨敗だった。

開始直後にブースターの電光石火が私に直撃したときは私自身まだやれる。って思っていたけど私の体は動いてくれなかった。次第に意識が遠のいていって…………

今回は早く目が覚めた。ジムに置いてあった簡易回復装置で私を治療してくれたみたい。あのトレーナーは意気揚々と帰っていったそうだ。今日はもうトレーニングなんかする気になれないとご主人は私を連れてさっさと帰ってしまった。


ご主人はその日家に帰ってからも浮かない顔をしていた。私もただでさえどんよりしていた気分が余計に沈みこむ結果となった。


その夜、とうとう私はコンドーフリークの性能を目の当たりにすることとなった。

………それは、とても恐ろしいものだった。


……………でも、それをとても素晴らしいものかもしれないと考えてしまったのも事実だった。





ご主人はコンドーフリークに付属していた本を片手にコンドーフリークに何かを打ち込んでいった。そして何回も本とコンドーフリークを見比べていた。やがてご主人は笑みを浮かべて私を呼んだ。近寄ってきた私に向けてコンドーフリークを向ける。ご主人は戸惑った表情に一瞬だけなりながらも私に向けてコンドーフリークのボタンを押した。






……ビキッ…。


私の体から確かにそう聞こえた。…………でも、特に何も起こr……



い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいぃ!!!!

突如私の四肢を襲った激痛。足全体が今めった切りにでもされているかのように痛みは引くことなく新たな痛みが私の足をさらに苦しめる。

耐えられない。でも、この痛みからは逃げられない。

叫びたかった。素の泣き声でも人間の言葉でもどっちでもいいから。ご主人に痛いと伝えられるなら。でも、私を襲った痛みはそれを許してはくれなかった。歯をくいしばって耐えている私に声を出せと言うのも無理な話だったし、息も荒くて声なんか発する事のできる状態じゃなかった。


当然、立っている事も出来ずに私は力なく横に倒れた。そのまま床の上でしばらくこの地獄を味わい続けることとなった……。






気がつけば朝だった。どうやら昨日の痛みのせいで意識が飛んでいたようだった。昨日の痛みは嘘のように引いている。それを確認してホッとため息をついてあたりを見回すとご主人が心配そうな顔でこちらを見ていた。
「リーフィア、大丈夫?」
私は素の声で元気である事を伝える。するとご主人はわくわくした様子で朝ごはんを食べるとさっそく特訓する場所へ私と一緒に赴いた。いつものパワフルなポケモンが野生でわんさか出てくるところに。

そこで特訓を始めたんだけど………特訓にならない。素早さは今まで通り変わってないんだけど……敵のポケモンが燕返しみたいな弱い技でも一撃で倒れてしまう。確かにうれしいけどなんか達成感を感じる事が出来ないなぁ…。でも、ご主人も喜んでくれてるし私も一緒に喜ぶよ。だって私のご主人だもん♪


それから3日間、私たちは自分たちの強さに酔いしれた。私はこれで満足。……でも、ご主人はまだまだ私のパワーアップが必要だ。って考えてるみたい。ご主人は再びコンドーフリークを使い始めた。

私は怖かった。再びあの苦痛を味わうことになると自然に冷や汗が出てきた。体が小刻みに震える。息が自然に荒くなる。私の体は明らかにそれを拒否していた。でも、それを振り払うかのように私の頭の中にひとつの意志がはじき出される。……強くなる事をやめたポケモンをご主人が好きになってくれるわけがない。
そんな意志が浮かんだ時、私はハッとした。嫌だ…。ご主人に嫌われたくない…。ずっと一緒にいたい。
私は覚悟した。あれを受け入れようと。地獄のような苦痛と引き換えにご主人の笑顔を見る事が出来るのなら私はどんな苦痛にも耐えてみせる。そう私は一人で決意を固めた。




私が決意を固めた日の夜。ご主人は私にコンドーフリークについて話して聞かせた。
「リーフィア、この装置はコンドーフリークっていうんだ」
そう話を切り出された。機器の名称は知っているから別に驚きもしなかったけどご主人は私の知らないコンドーフリークの力を言って聞かせた。

私は話を聞き終えてなんてすばらしい機械だろう、と思った。ご主人いわくこの機器を使えば戦わなくても強くなれるんだって。そりゃあ辛い思いをして特訓するよりかは部屋の中で楽して強くなりたい。稀にこの機械の副作用が出るポケモンがいる。そういう話も聞かされた。もしかしたらこの前の痛みは稀に出る副作用のものだったのかな?ご主人は話の後にご主人がいつも読んでいた本を私に見せてくれた。難しい事がいっぱい書いてあったけどどういう仕組みで動いているのか知りたかったからその部分だけ読んでみた。

「この装置の原理としては最近のポケモン医療に使われている治癒能力を高める技術を育成向けに応用したものでありこの原理を確立したのがこの装置の設計者、近藤勇先生である」

と書かれていた。う~ん。よく読めない。難しい漢字があると私の頭は拒否反応を示すのか結局理解できなくてもいいや。という結論をはじき出した。



そして、ご主人は私にコンドーフリークを使う事を話して聞かせた。もちろん私は元気良くうなずいた。ほんの少し怖かったけどご主人の笑顔と勝利のために私、がんばる!



ご主人は今度は技マシンを扱うかのようにコンドーフリークを私のおでこに近づけていった。そして私のおでこにコンドーフリークをくっつっけ静かにボタンを押した……。



その瞬間、頭の中に直接何か得体のしれない技の情報が一気に伝わってきた。………いや。無理矢理頭の中にねじ込まれてきた。の方が正しいかな…?

とにかく頭痛がひどかった。きりきりと痛む頭を前足で抑えながら目に涙をためる。
………気持ち悪い…。さっきからずっと吐き気を催している。……ダメ…。こんなところではいたら前みたいにご主人に迷惑をかけちゃう……。
……寒気までする。今、小刻みに体が震えているのが分かる。それでいて頭が妙に熱い…。病名は忘れちゃったけどナントカエンザみたいな感じ。


ああ………。ダメ……。他の事考えてても一向に良くならない……。

……

………

…………うっ…。

……もうダメ…………。




先ほどまで一生懸命こらえてはいたものの体のありとあらゆる部分が悲鳴をあげていたためか、私の努力はむなしくご主人の部屋のカーペットの上に盛大に吐き散らした。

口の中が嫌な味とともに酸っぱくなっていく。あたりにはつんと鼻にさすような臭いが立ち込める。


……ああ…、やっちゃった……。


ご主人の顔を見るのが怖かった。きっと嫌な顔をしていると思う。少なくともいい表情なわけがない。

ああ、私がもっと我慢できていれば……。私の意志がもっと強ければ……。私が……。私が……っ!



「うわああああああん!!」

私は大声をあげて泣いた。何で泣いたのかよくわからない。
ご主人が今不快に思っているから?私の我慢が続かなかったから?体の調子が悪いから?
……ご主人に嫌われると思ったから?


そんな事を思いながら私は泣き続けた。いつまで泣き続けたかは覚えてない。気がついたら朝になっていた。そんな感じだった。




次の日は朝から晴れていたのに私の気分は土砂降りだった。憂鬱って表現の方が良いかな?ご主人の顔を見るのが怖かったから私はずっとうつむいて午前中を過ごした。

午後、ご主人の部屋でバスケットの中で丸まっているとご主人に声をかけられた。
「リーフィア?ちょっといい?」
その声を聞いた時びくっと体が反応した。やめて……。いいわけないじゃん…。ご主人がこれから何の話をするのか不安が爆発しそうになりながらもご主人に起きている事を尻尾をゆらゆらと振って伝えた。ご主人は少しためらいながらも口を開いた。
「リーフィア……昨日は………」
やめて……。その話をしないで…。ご主人の前でのあんな失態を思い出させないで……。今すぐ耳をふさぎたいと思った。
「ごめん…」
………え?何を言われるだろうかと身構えていた私にかけられた言葉は意外なものだった。なんでご主人が謝ってるの……?私が不可解なご主人の発言に首をかしげながらご主人の顔を覗き込む。ご主人は申し訳なさそうな顔をしてこっちを見ていた。
「昨日……、リーフィアに僕、酷いことしちゃったと思って…」
そう言ってご主人がしゅんとした顔を見せる。やだ……。そんな顔しないでよ…。ご主人は笑顔でいてよ……。私はにっこりと笑ったような顔を作って首を横に振った。ご主人はそんな私を見て少し元の表情に戻った。
「私……、外……行く…。……一緒…!」
そう言ってみる。昨日ご主人が一体何をしたのか私はまだ理解していない。私はご主人と一緒に外へ行きたいと誘ってみた。私の元気よりもご主人の元気の方が何倍も大事だから……。




私とご主人は最近特訓の場所として使い始めた所へ足を運んだ。私達が行くと体のひと際大きなポケモンたちが私の行く手をふさぐ。私は視線でご主人の指示を仰ぐ。ご主人の口元が少しだけつり上がっていたのは私の見間違いかな?
「リーフィア!パワーウィップ!!」

えっ?私は聞きなれない単語に戸惑いを覚えた。ご主人の方を振り返ってみると早く技を発動させろと言わんばかりに敵を指差してこちらを見てみている。私はそんな技知らない。そう、知らないはずなのに……。

気がついたら地面に思いきり両前足をたたきつけていた。そのまま叩きつけた前足に力を込める。すると地面から頑丈そうな蔓が意志を持っているかのようにうねうね動きながらかなりの長さを私たちに見せつけた。その蔓が敵のポケモンを勝手になぎ倒していく。まだ意識のあるポケモンは蔓が無慈悲に締めあげて、敵のポケモンに意識を残すことを許さなかった。
蔓が出てきた地面の中に戻っていきあたりは何もなかったかのように再び静寂を取り戻した。全てのポケモンが意識をなくし私の前に力なく横たわっている。怖かった。私がこの惨劇を作り出したのかと思うと。私は震えながらあらためてあたりを見回してみる。地面には蔓を呼び出したときにできた大穴がぽっかりと開いていた。目の前に広がってた草むらは私の蔓が敵のポケモンをなぎ払ったときに巻き込まれて命を散らしてしまった。

もういやだ……。こんな技使いたくない…。植物たちの怒りを私は敏感に感じ取った。仲間を殺されて恨まない生き物なんていない。私は草むらを移動している最中ずっと植物たちの怒りの声を聞かされることとなった。


ご主人はそんなことを知っている訳もなく再び大型のポケモンの群れに喧嘩を吹っ掛ける。そして私にパワーウィップを命じる。テリトリーを侵された挙句私の蔓になぎ払われて締め付けられる苦痛。それを視線で訴えてくるポケモンを見るたび心が痛んだ。

二つ目の群れも壊滅。辺りの植物も皆なぎ払われた。

「ご主人……私…帰る……」
そう言ってはみたものの私の強さに好奇心を燃やしに燃やしているご主人を止められなかった。
「まだまだ8回もパワーウィップ使えるんだから使わなきゃ損だよ。
 それに一回目よりも二回目の発動の方が若干速くなっていたからこの調子でどんどん速くしていこうよ」

そんな調子で色んな群れに喧嘩を吹っ掛けていった私たちは他のポケモンと目が合うととたんに逃げられるような脅威に一日でなってしまった。今まで心を通わしていた植物にも私は口もきいてもらえなくなった。ご主人は満足しているみたいだったけど…。

その日の帰りにいつも通りミックスオレを買ってもらった。でも、その味が妙に薄かったのは私の気のせいだったのかな…?



それから私たちはコンドーフリークをたくさん使った。まずは技をいっぱい使えるようにした。それからいろんな技を使えるようにした。そのたびに私はどんどん強くなっていった。そのたびにご主人の笑顔を見れた。ご主人の笑顔が何よりの励みになった。どんな苦痛にも勝るご主人の笑顔を私は求め続けた。






「それでは、戦闘開始!」
審判の公園の管理人さんが赤と白の旗を高々と掲げた戦闘開始の合図。
敵の出方を伺うご主人はこちらから攻撃を仕掛ける事は無い。敵のトレーナーがブースターに指示を出す。

「ブースター!最初からかましてやれ!ブラストバーン!!」
「リーフィア!燕返しでよけろ!!」
ブースターが恐ろしい形相でこちらに突進してくる。当たる直前で私は燕返しを使ってブースターの技をよける。
「リーフィア!ウッドハンマー!!」
ブースターがブラストバーンを外してこちらを向こうとした時に私はブースターに急接近して右前脚を高々と上げる。そしてそのままブースターの頭を殴りつけた。硬化した右前脚がブースターの頭のふさふさにクリーンヒットしたのかかなり痛そうな音とともにブースターがうめき声を上げる。私の右前脚に電撃が走った。反動を受ける技を使ったから当たり前だけどね…。
「今だブースター!フレアドライブ!!」
直撃は避けたかったから急いで横っとびに逃げるけれど脇腹にフレアドライブを決められた。流石にこれは効いたな…。痛みをこらえてブースターの方へ視線を戻す。フレアドライブの反動で動きが鈍ってる。今がチャンス!
「リーフィア!パワーウィップを決めろ!!」
そうご主人がナイスなタイミングで私に指示を出す。私は地面を前足で叩きつけて数本の蔓を呼び出した。この技ももう使いなれてしまって蔓を自分の意志で動かす事が出来る。蔓を操ってブースターを捕らえ蔓で締め上げる。やりすぎると骨まで折れてしまうそうだけど今は真剣勝負。相手が倒れるまで本気でやるのみっ!
「ブースター!フレアドライブで抜け出すんだ!!」
全身にまとった紅蓮の炎が私の呼び出した蔓を焼いていく。辺りに焦げ臭いにおいと黒煙が立ち込めた。
「そろそろ終わりにするぜぇ!フレアドライブ!!」
「行けぇ!ウッドハンマー!!」

二つの技が同時にぶつかった。ものすごい衝撃とともに私たちの体と意識は一緒に吹き飛んだ。








私はご主人の家のバスケットの中で目覚めた。既に回復した後だったらしく傷は消えている。カーテンをめくってみると辺りはすでに暗かった。ご主人が机に突っ伏している。声をかけようかと思いバスケットから抜け出す。すると、ご主人がぶつぶつ呟きながらコンドーフリークを片手に私に近づいてきた。
「ふふっ……。全ステータスの個体値と努力値がMAXになって種族値の限界を大幅に上げておいた……。
 これで、あいつに勝てる!」
そうご主人は言って何を言っているのかさっぱり理解できていない私に向けてコンドーフリークのボタンを押した………………


――――――プツンッ――


私は立っていられなかった。足の力が、いや体の力が抜けていく。床が目の前に迫ってくる。
その間たくさんの事を私は考えた。





―――cheat――


それはポケモンをポケモンではなくす行為…

それはポケモンの思いを踏みにじる行為……

それはポケモンの命をもてあそぶ行為………


それはとても悲しく、つらく、虚しい行為…………



床に顔が落ちていく。そっと私は目をつぶった。



――――cheat―――


私はそれを




許さない。










…………そして私は事切れた……







この終わり方は一体何事だ!?



Southern Crossのつぶやき出張版

はい、グダグダになりながらもなんとか書き終えました。
最後の方は見逃してやってください……。

さて、この作品の元ネタですが
僕の友達のブースターがフレアドライブを放ってきてこの小説の構想が浮かびました。
フレドラを当てられたのはリーフィアではなくサンダースでしたけど(もちろん逝きました)
僕個人の意見ですが「改造なんてなくなっちゃえばいいのに!」ってイメージで書いていました。(笑)
僕の小説でここまでのバトルシーンは始めてだったような気が……。結構頑張りましたが…。

最後に………ポケモンは正々堂々バトルしましょう!

file私はそれを、許さない


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Last-modified: 2013-08-13 (火) 00:00:00
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