ポケモン小説wiki
PSB:砂嵐の二人

/PSB:砂嵐の二人

 前のお話……PSB:夜の散歩

Pokemon Survival Battle:砂嵐の二人

 夜戦のエキスパート、スキンヘッドのライアンの家には、ジュナイパーとガブリアスがリビングでまったりとしながら時間を過ごしている。だが、ガブリアスはこんなことを考えていた。
「あー……ご主人早く寝ないかな」
 考えるどころか、口に出していた。
「またやるつもりなの?」
 ジュナイパーは彼の独り言に対して、うんざりとした様子だ。
「いいだろー? お前に苦労をさせるつもりはないし、ちゃんと気持ちよくしてやるからさぁ。ほら、宝石もあるし」
「いらないわよそんなの……ってかこれ、ガントルのあの赤いのじゃない!?」
「栄養満点だぞ?」
「私はそういうの食べないの! ってか、そんなもん食べたら死ぬわ!」
 ガブリアスの言い分に、ジュナイパーはため息をつく。彼らの、会話はつまるところ、ガブリアスが交尾をしたがっていて、ジュナイパーはそれに付き合わされるという事であった。ジュナイパーも発情期のころはどうしようもなく交尾がしたくなってガブリアスと何日か甘い夜を過ごしたのだが、それ以降味を占めたガブリアスは、発情期が過ぎてからも、何度も何度も求めてくる。
 ジュナイパーは、発情期以外の交尾も気持ち良くないわけではないのだが、やはり気分が乗らないと不感症気味だし、面倒くさいし痛いし汚いしで、毎日やるとなるとうんざりしてしまうのが本音である。
 主人が寝静まったら外に出て適当に行為に及ぶのだが、そのときのガブリアスのウキウキぶり。あまりにも温度差があるのがつらくなってくる。
「じゃ、今日もよろしくお願いするぜー」
 太い尻尾をぶんぶん振ってジュナイパーを優しく抱きしめて、乱暴なキスをして。運動しているわけでも無いのに呼吸は荒くて、まだジュナイパーは何も感じていないというのに、彼の股間はすでに立派で。うんざりしたジュナイパーを感じさせようと、彼は必死で舌やひれを駆使して愛撫するのだ。
 ガブリアスも、自分の欲求を抑えきれないのは内心申し訳ないと思っているらしく、こうやって気持ちよくさせようと努力するあたり、性根まで腐っているわけではないらしいが。しかし、ジュナイパーとしては発情期でも無い気分が乗らない今の状況では、やはり快感を感じるには途方もない時間がかかる。
 ガブリアスの技術が足りていないというのもあるのかもしれないが、やはりセックスにおいて気分以上に大事なスパイスは無いのだろう。ジュナイパーは適当に感じたフリをして甘い声を出し、ガブリアスに早々に交尾を終えてもらうよう促した。
「もう大丈夫?」
「うん、大分……ん……気持ち良くなってきた」
 むなしい嘘をついてジュナイパーはガブリアスを受け入れる。彼がガシガシとジュナイパーを突いている間も、それらしい声を上げて場を盛り上げるだけ。一度はっきり言わないとだめなのだろうかと思いながら、ジュナイパーはたいして気持ちよくもない交尾に身を任せるのであった。
 彼女は発情期になると非常に甘え上手になるし、性格も別人と言っていいほど変わってしまうだけに平時にまで発情期のような態度を求められるのはつらくて仕方ない。速いガブリアスに彼女の一人でもできないものかと、ジュナイパーはうんざりする生活に悩まされていた。

 ◇

 今日は週末。練習試合を行う日である。今日のフィールドは、客不足により閉鎖されてからというもの、荒れ放題のゴルフ場を、PSBのために改修したフィールドである。そこかしこに背の高さほどある草が生い茂り、非常に見通しの悪いフィールドのため、サーチャーや高いところから攻撃できるポケモン。そして小さいポケモンの活躍が重要となるフィールドである。
 ちなみに、PSBの会場となる場所なので、消火班となる水タイプのポケモンは常駐である。ギャラドスやラプラスなど比較的大型のポケモンが、時折ゴルフ場の池でくつろいでいる姿が見えるのが特徴である。
「パチュリー。やー、一週間ぶりー」
「パチ!」
 ブルーナイツの指示専ことダリルは、週末になるとクロニカからパチリスを返してもらう。このパチリスは本来はダリルの手持ちであり、愛玩用として飼われていたポケモンだったのだが、戦いの才能を見い出だされた現在、ルカリオとグラエナを育てているトレーナー、クロニカの元で戦いの腕前を鍛えられている真っ最中だ。
 ちなみに、このブルーナイツのメンバーは全員、ポケモンにニックネームをつけている。例えばパチリスはパチュリー、ルカリオはグラディウス、グラエナはファルシオンといったように。だが、試合となると自分の手持ち以外のポケモンに指示をせざるを得ない場合も多々あるため、あえてニックネームでは呼ばなくなっていて、ニックネームを呼ぶのはこういった限られた時間くらいである。
 ダリルは平日会えなかった分、パチリスのことを過剰なくらいに可愛がってあげる。今日の練習試合は彼女のデビュー戦、防塵ゴーグルをつけて出陣である。今まで散々練習してきたので、主人であるダリルにふがいないところを見せないように、彼女はやる気満々だ。
 ダリルが彼女を過剰なまでに可愛がっていたところ、リーダーが作戦会議を始めたので、ダリルも撫でるのを中断してリーダーであるトニオの話を聞く。この作戦タイム、ポケモンたちは暇なので思い思いに過ごすのだが、そんな時パチリスは、ガブリアスの元へと歩み寄る……


「今日の相手は、サンライトバーン。いわゆる晴れパという奴でな……キュウコンやメガリザードンYの日照りの特性で、葉緑素やサンパワーなどの特性を発動させ、葉緑素ドレディアが援護に回るという恐ろしいパーティーだ、日本晴れで強化されたポケモンがポケモンが『仲間作り』や『お先にどうぞ』で恐ろしい素早さで襲ってくるし、特性ではなく普通に技を発動した場合でも同様だ。
 ドレディアの役割は『サポーター』であり、『ライダー』でもある。あいつがメガリザードンの上に乗ったときは、敵はいないと考えた方がいい……だが、それも太陽が燦々と輝いていればこそ。なので、今回はグラエナやラムパルドを控えにして、いざという時に雨乞いや砂嵐を使用してもらうとして……基本的にスタメンはバンギラスを起点とした砂パで行くことになる。
 スタメンはバンギラス、ガブリアス、ルカリオ、シャンデラ、ゲッコウガ、パチリス。控えはラティオス、グラエナ、フラージェス、ラムパルド、ジュナイパー、ゴルーグというメンバー構成だ。シャンデラはどうしても日照り状態で戦わなきゃいけない時の保険、ゲッコウガはマキビシをばらまきまくって、岩雪崩での攻撃を主体にして頑張ってくれ。隙があれば相手の炎タイプに水技をぶち込んでやってもいい。
 それで、パチリスはバンギラスを守ってほしい。他のメンバーは控えだ。誰かがやられ次第、状況に合わせて次を投入する。誰か、異論や質問のあるものは?」
 ブルーナイツの実質的なリーダーであり、ラティオスとシャンデラとペラップを擁する男性、トニオが皆に問う。
「バーストは誰にしますの?」
 質問をしたのは、バンギラスとラムパルドのトレーナー、エリザベスだ。トレーナーとの絆の力、バーストはバトル中に一匹、一回のみ認められており、強力なZ技を使ったりメガシンカを使用したり、そうでなくとも身体能力を劇的に強化することが出来る、フェルム地方で発達した貴重な逆転手段である。
「そうだな……相手は炎タイプが多いから、氷タイプの攻撃に弱いドラゴンでも活躍できる可能性は高い。だから、ガブリアスか……ラティオス、あとはそうだな、ゲッコウガがいいだろう。ただ、バーストするとゲッコウガは変幻自在の特性がなくなるからそこは注意だな」
 トニオがエリザベスに答えると、エリザベスが納得したのか、頷いた。それからも、トレーナー同士の作戦会議は続く……

 さて、その間のポケモンはといえば……自由行動中である。
「あー……、ムラムラする」
 ガブリアスは一人、欲求不満に苛まれていた。雌の匂いを嗅いでいるとムラムラしそうなため、彼はなるべく皆から離れて平静を保とうとしている。
「どうしたのだ、ガブリアス」
 そんなガブリアスと、何倍もの対格差がありながら全く臆すことなく語り掛けるのは、パチリスであった。パチリスも雌なだけに、ガブリアスの興奮を促してしまうため、ちょっと来てほしくない相手です。
「あー……その、なんというかだな……昔、一緒に住んでるジュナイパーが発情期になってだな……」
「うんうん、またうんざりする話題なのだ……」
「それで、彼女が求めてきたからこれ幸いにと毎日のように家を抜け出して、交尾していたんだが……」
「でも、発情期が終わってしまったのか?」
「そういうことだ。それ以降相手にしてもそっけないし、今は気分じゃないとかって断られることが多くなって……一度、交尾を知ってしまってからはもう一日一発抜かねえと気がすまなくなってるのになぁ」
「うーむ、それは深刻な悩みなのだ。逆にこっちは一緒に暮らしてるルカリオとグラエナがたまに外で交尾して帰ってきて、その匂いがつらいのだ……はぁ、僕もつがい欲しいのだ……」
「まじか!? お前も雌だし、俺と付き合ってくれね?」
「お前は何を言っているのだ!? 僕を殺す気か!? お前のちんちんが僕に入るわけないのだ!」
「いやぁ、わかってるさ。でも、全身を使ってこすりつけてもらうだけでも……」
「僕はでかいだけのちんちんに興味なんてないのだ。というか、そんなものに魅力があるとか思ってる時点で僕のつがいの資格はないのだ……やはり男は……男の価値は格好良さなのだ」
「はいはい、婚期逃すなよ……」
「うーむ、一人狙っている相手はいるから、その子とつがいになれれば……ムフフなのだ……」
「へいへい」
 一人佇んでいたガブリアスだが、パチリスが近づいてきたせいで結局ムラムラと来てしまう。流石に戦闘中はメロメロでも食らわない限りはムラムラ来ないので、、戦闘が始まるまでの辛抱だろうか。

 二人のやり取りを遠くから眺めていたバンギラスの元に、パチリスが舞い戻る。
「で、どうだったの? ガブリアス……私の事はなんて言っていた?」
「それがなんとも言ってなかったのだ。でも、奴はムラムラしていて見境がなくなっていて……何とこの僕にも交尾を要求してきたのだ……怖いのだ、マジ怖いのだ……ケダモノなのだ。今なら穴が開いていればヌケニンでも交尾しそうな勢いなのだ。そんなやつとつがいになりたいって本気なのか?」
「もちろん」
 バンギラスは胸を張って答えた。
 このポケモンサバイバルバトルにおいて。バンギラスとガブリアスは、特性の関係で一緒に戦うことが多い。バンギラスの砂起こしの特性で砂嵐が吹き荒れる状態となったバトルフィールドを、ガブリアスは砂隠れの特性で砂を体に纏わせて保護色となって駆け抜ける。
 この砂隠れの特性は、視覚に頼らないポケモンであっても効果があり、例えば超音波などによるエコロケーションは、反響してきた音を感知しようにも砂嵐のせいで感覚が鈍るし、聴覚や空気の流れで感知しようにも、砂嵐の状態ではその音も乱され、空気を感じる体毛も滅茶苦茶になる。敵のチームにはエーフィが『サーチャー』として参加しているが、砂嵐の中ではまともにサーチャーとして機能しないだろう。
 波導すらも砂嵐と一体化するため、砂隠れの特性はルカリオにすら有効だ。砂嵐の中でまともに機能するサーチャーは、サーナイトなど非常に少ないポケモンに限られるのである。
 砂がくれの特性は、どこに相手がいるか丸見えな普通のポケモンバトルですら効果がある。どこから襲われるかもわからないサバイバルバトルでなら、なおさら見つけにくい。彼がバンギラスと共に出たときは、ラティオス以上の擬態能力で次々と敵を倒していき、敵を寄せ付けないといった表現がふさわしい。トワイライツのような強豪には通用しないことも多いが、格下が相手ともなれば、独壇場となるのが当たり前だ。
 そんな彼のことを、現在バンギラスは片思い中である。今のところ、彼女が片思いをしていることを知っているのは、バンギラスの護衛としてサバイバルバトルデビューを目指し、何度も練習してきて仲良くなったパチリスだけ。そのパチリスは、バンギラスの恋の悩みを解決するべく、ガブリアスに意中の女性がいるかどうか聞きに行こうと思ったのだが……幸か不幸かガブリアスは現在、雌なら誰でもいいという感じであった。
「……えーと、つまり、あいつはすでにジュナイパーと経験済み!?」
「まぁ、そうらしいのだ……とはいえ、その時のジュナイパーは発情期で相手がいなかったとか、そういう話らしいのだ。今は発情期が終わってるらしいから、ガブリアスとは付き合いが悪いらしく……バンギラスがつがいになるなら今がチャンスなのだ」
「うぅぅぅ……あの泥棒フクロウ、私のガブリアスを横取りしやがってぇ……」
「別にお前のじゃないのだ」
 嫉妬で何か理不尽な怒りを燃やしそうなバンギラスに、パチリスは苦笑する。
「どちらにせよ、タマゴグループの違う鳥なんぞにガブリアスは渡しはしないわ。私がガブリアスを取り戻してやる!」
「取り戻すも何も、今のガブリアスはお前のじゃないのだ……」
 少し過激な発言のバンギラスに、パチリスはやれやれと手を広げる。あのガブリアスの見境のなさならば、バンギラスはとりあえず交尾までは持ち込めそうだが、そこから先、どのように浮気させないかが問題になりそうだ。とりあえず当面の問題は同じトレーナーの元で暮らしているジュナイパーだが、あいつが発情期になったら再び浮気されることもありそうだ。
「というか、一緒に暮らしているラムパルドはどうしたのだ? あいつも雄なのだ。お前も発情期ならラムパルドを誘えばいいのだ」
「あいつ、あまりに気性が荒いからって去勢済みなのよ……ちんちん勃たないの。フラージェスも雌だから、つがいにはなれないし……ゴルーグはそもそも色恋沙汰に興味がない。はぁ、欲求不満だわ」
「お、おう……去勢……それは……怖いのだ。僕は去勢されないようにつつましく生きるのだ……」
 ラムパルドの衝撃的な事実にパチリスはぞっとする。そんなことにならないよう、ガブリアスにもバンギラスも節度ある付き合いが求められそうだ。

 そんな恋模様はさておいて、今日もサバイバルバトルの練習試合が始まる。パチリスはバンギラスの周りを付かず離れず追従する。ルカリオが索敵した敵の居場所がトレーナーのゴーグルに表示されるので敵が来そうな方向に注意するよう呼びかけた
 トレーナーのガイドを聞きながらガブリアスが先行して敵を蹴散らしてゆく。砂嵐の中のガブリアスはまさに無敵の強さを誇る。たまに日本晴れに砂嵐を上書きされることもあったが、バンギラスが晴れの維持を許さなかったし、たとえ許したとしても晴れだからと言ってガブリアスがすぐに負けるわけではなかった。
 もともとガブリアスは炎タイプの攻撃に強い。草タイプの攻撃……例えばソーラービームなどはそれなりに食らうため、危ないと言えば危ないが、危ない目に合う前にバンギラスが天候は上書きしてくれる。
 ゲッコウガはポケモンが身を隠すのに適した背の高い草むらに撒き菱をばらまき、敵のダメージを誘う。草タイプ相手にはあまり有効ではないものの、踏んで血を流せば機動力の低下が期待できるし、出血すれば場所の特定だって出来るかもしれない。サバイバルバトルでは身を隠すことも重要な戦法なので、これが案外効くのである。
 薪びしを巻いた場所は、味方のヘッドセットの地図に記されるので味方に間違って踏まれることはまずないだろう。撒き菱を巻いている限り、ゲッコウガは地面タイプになるので、砂嵐のデメリットもない。草タイプに弱いのは気になるが、草タイプのポケモンを相手にするのであればとんぼ返りや冷凍ビームを有効活用する手もある。当然、炎タイプには水手裏剣で攻撃できるため、なにかと隙を生じない技構成なのだ。
 ゲッコウガの頑張りはすぐに報われるわけではないが、パチリスの頑張りは非常に目に見えやすい形で現れている。パチリスの役割は『デコイ』と『ミニマム』。敵の攻撃を引き受ける、この指とまれや怒りの粉を使えるものが、デコイ。小さな隙間を通り抜けたりして、他のポケモンでは不可能な場所から奇襲をかけるのがミニマム。
 パチリスは、この指とまれで敵の視線を集めながら、自身は小さな隙間やちょっとした岩陰で身を守ることもできるという、なかなかに稀有な特徴持ちである。彼女はその能力を存分に生かしてバンギラスへの攻撃を引き受け、自身は小ささを活かして小狡く立ち回り、力なら誰にも負けないバンギラスの攻撃を確実に当てさせる。
 背の高い草むらを活かしたパチリスの役割はよくできており、大抵の相手であればうまく引っかかってくれるだろう。デビュー戦でもこれほどの手ごたえがあるのならば、この地域でパチリスを出し抜けるのは、トワイライツのメンバーくらいであろう。攻撃が集中してしまうだけに彼女は序盤の方でやられてしまうのだが、それでも彼女が倒れるまでの間にバンギラスもガブリアスもルカリオも、五匹のポケモンを倒している。たとえ彼女が一匹も敵を倒していなくとも、仕事は果たしたと言って差し支えあるまい。

 代わって入ってきたラティオスは防塵ゴーグルを着用し、晴れの時には慎重に隠れ潜み、砂嵐の時には堂々と大空を舞い、その優れた擬態能力を活かして敵に気付かれもせずに襲い掛かる悪天候での彼の強さは、もはや止める相手がいないとまで称されるほど。とはいえ、日本晴れを発動されると地面に濃い影が残ってしまうため、擬態してもバレやすくなってしまうという対策法はある。だからこそ敵は日本晴れを維持しなければならないのだが、ガブリアスに守られたバンギラスを崩すのは容易ではなく、彼女らを崩せなければ、ラティオスも崩せない。
 日本晴れを発動してバンギラスの砂嵐の範囲を狭めれば狭めるほど、ラティオスやガブリアスはすなあらしの中心部に向かう……つまり、バンギラスの方へと近寄るため、日本晴れだけで押し返すのは逆効果になることも多いというのが非常によくできていた。

 そしてシャンデラは、ルカリオと共に進むのだが、シャンデラの役割は『ライダー』と『アタッカー』である。シャンデラは普段、ルカリオに乗れるほど小さくはないが、『小さくなる』を使うことが出来る。
 小さくなった状態でならルカリオに乗れるし、その状態でもらい火で炎を食ってルカリオを助けたり、ルカリオから飛んでくるはずのない炎やゴーストタイプの技で敵の意表を突いたりするのが彼女の仕事。ルカリオの懐に隠れていれば砂嵐もある程度は防げるので、持ちつ持たれつの関係だ。
「おや、晴れたな……」
「では、わらわの出番じゃのう!」
 砂嵐の際は前に出ることがない彼女も、晴れとなれば話は別。ただでさえ特攻の高い彼女が晴れを纏えば、その力はまさに大鑑巨砲。草タイプのポケモンはもちろん、炎に対し強くも弱くもないポケモンですら一撃で倒しかねない灼熱の炎の使い手となる。晴れパを相手にするならば、これ以上にふさわしい相手もおるまいが……相手チームにはサンパワーのエレザードがいるので、そこは注意しなければならないのである。
 とはいえ、ブルーナイツはポケモンたちの地力が全員バッジ八つを取れるくらいに高く、一対一ではよほど相性が悪い相手でなければ負けることはない。そのうえ、サバイバルゲームをEスポーツでは世界ランカー。実際に体を動かすスポーツでも優秀な成績を収めているダリルの指導があるため、素人同然だったチームの立ち回りはみるみる上達している。
 もともと、負ける戦いではなかった。

 結局、ブルーナイツは7対2で相手に快勝。パチリス、ゲッコウガとシャンデラがやられ、後続に交代を余儀なくされたものの、その他のメンバーは最後まで戦い続け、バンギラスのストーンエッジとラティオスの竜星群、ガブリアスのドラゴンクローで拠点を破壊した。今回のMVPはバンギラスを守り、アタッカーとしての役割を十二分に果たしたガブリアス、そしてクラッシャーとしての役割を全力で果たし、拠点の破壊に大いに貢献したバンギラス、二人がMVPとなった。

 練習試合が終わったら、まずはポケモンたちに労いのためのご褒美がふるまわれ、それが終わるとトレーナーたちの食事会である。今日はゴルフ場に併設されていたビュッフェで、食べ放題飲み放題の宴であるが、ポケモンたちにはそんなの関係なく、とにかく早く餌を寄こせといった感じであった。
「よくやりましたわ、アンドレア。ご褒美をここに」
 バンギラスのアンドレア。彼女のトレーナーであるエリザベスは、そう言って良質な肉と鉱石をバンギラスに差し出す。
「よくやったね、デューク。これをお食べ」
 ガブリアスのデュークには、トレーナーであるライアンからたっぷりの肉と少々の鉱石が与えられる。勝利の結果だったため、他のメンバーも良いものを食べているが、やはりMVPの食事は特別いいものだ。ガブリアスはさっそく与えられたご褒美にかじりついて尻尾をぶんぶん振っているのだが、そんな時に横やりが入る。
「ねぇ、ガブ君」
「んーなんだバンギラス? 飯ならやらねえぞ?」
「あらぁ? そんなこと言っていいの? 大分、ご無沙汰なんじゃない?」
「何が?」
「あら、女の子にそれを言わせる気? ここの事よ」
 言いながらバンギラスは彼の股間をチョンと、つま先で押す。バンギラスは腕が短すぎて彼の股間に届かないのである。
「……まさか、交尾?」
「そのまさかよ。私ならあなたの体格も、激しい交尾も存分に受け入れてあげられる自信があるけれど、どうかしら? ちょっとねぇ、子供が欲しいのよぉ」
「そりゃ願ってもない事だけれどよ、どこでやればいいんだ?」
「私のおうち。ご主人様、お金持ちだからねぇ、お庭もすごく広いでしょ? 場所は一度来たことあったから覚えてるはずよね? 私、夜に庭を出て遠くに行ったら、ゴルーグ君に怒られちゃうから、そっちには行けないの……」
「あー、あったな。夜にそこを訪ねればいいんだな? 俺は音速で飛べるからお安い御用さ」
「うふふ、待ってるわ」
 バンギラスは恥じらいもなく、話も早く、ガブリアスを誘い終える。ガブリアスは今夜が楽しみで仕方がなくなって、与えられた食事の味もわからないくらいに尻尾を振って喜んでいた。
 そうして、主人たちが気持ちよく酔って、眠りについたその夜の事。自分の主人が寝静まったことを確認したガブリアスは、部屋の窓を開けて外へと飛び出し、バンギラスの家を訪ねてくる。すでに主人のエリザベスはフラージェスと共に寝室で眠っており、庭で放し飼いにされている相方のラムパルドも寝静まっており、起きているのは玄関の前で立ち尽くしているゴルーグとバンギラスだけ。
「……ご主人は就寝中だ。報告はしないでおくが、なるべく早めに帰ってこい」
 ゴルーグは二人の時間を邪魔しないでくれるようで、バンギラスとガブリアスが少しだけ外出するのを見てみぬ振りをしてくれる。ここから先は二人の時間だ。
「やー、夜になるのが待ちきれなかったぜ。なぁ、本当にいいんだな、タマゴグループが同じだがいいんだな?」
「同じだからいいんじゃない。さ、始めましょう」
「まぁまぁ、待てって。俺が手に持ってるの、見えるだろ?」
 二人は異種族。タマゴグループは同じでも、求愛の方法はずいぶんと違う。と、いうのもガブリアスはどこで仕留めたのやら、ヤミラミの死体を持ってきていたのだがそれを無視されたらたまらない。
「あら、新鮮なお肉。食べていいの?」
「もちろんだ」
 だけれど、バンギラスにとってはそれは素敵な肉にしか見えなかったようだ。光物が好きなガブリアスにとっては、宝石でできたヤミラミやメレシーといったポケモンは渡せば雌が墜ちる贈り物なのだが、ジュナイパーもバンギラスも宝石には興味がないので、あまり関心は示さないようだ。宝石の価値がわからないだなんてもったいないと思いつつ、とりあえずいっぱい食べる女性は宝石を好むか好まないかにかかわらず魅力的なものである。
 口周りを血まみれにしながら笑顔で獲物を掻き込む姿はやはり魅力的だ。いっぱい食べる女性は丈夫な子供を産める、それが何よりの正義である。結局、宝石は口を付けられずに吐き出されてしまった。この価値がわからないとは、やはりほかの種族というのは不可解だが、まぁそんなことはどうでもいい。
「ふぅ……素敵な食事だったわ。やっぱり、狩りのうまい男は素敵ね」
 言いながら、バンギラスが口周りについた血を拭う様子もなしにガブリアスの肩をわしづかみにする。乱暴なキスが始まるまでに時間はかからなかった。思わず息が詰まるような口づけ。骨のかけらや血の味がまだ残っている。
 重厚な彼女の舌がガブリアスの中に入り込み品定めとでも言いたげにガブリアスの体内へ侵入されていく。
「ぷはっ……やぁ、ガブの匂い、すごくいい匂い。いいものを食べている証拠だね」
「そっちこそ、肉も土もいいもん食べてやがる。立派な体躯の女は素敵だ」
「あはぁ、そりゃもう、私がこの体で稼いでいるから」
 バンギラスは誇らしげに胸をどんと叩く。
「で、そっちは準備万端というわけだ……ふふ、そこが元気なのは、いいものを食べている証拠ね」
 バンギラスはガブリアスの体をひょいと持ちあげ、顔の前に彼の股間を持ってくる。普段はスリットの中に収納されている彼のペニス、人間だったら軽く顔をしかめるようない匂いがしているがポケモンにはそこまで関係ないようだ。
 反応を確かめるように、バンギラスが舌先でチョンと舐めた。ガブリアスが、その刺激に『ん……』と声を漏らす。岩をも削り取るバンギラスの舌は、本気で舐めれば(ヤスリ)とそう変わらない。半面、舌の裏側はなめらかな形状をしているため、バンギラスも裏側を使って舐めた。
 嘴のジュナイパーでは難しい、舌で舐めるという刺激に、ガブリアスはごくりとつばを飲む。とはいえ、バンギラスの舌はそんなに器用ではない。これは本当にただの味見だ。味見をしてみると、健康的ないい匂い。まさにお手本といった感じである。
「ううん、これが私の中に入るのね……」
 陶酔しながらバンギラスが言って、彼を地面に降ろす。もう彼女の体はすっかり出来上がっている。発情期の彼女の体は、自分よりも小柄なガブリアスのペニス程度、その気になればいつでも受けいられられる程度には体が受け入れる準備を整えている。
 充血した彼女の膣は常に暖かく、暖かいがゆえに柔軟。柔軟であるがゆえに、慣らす必要も大してない。バンギラスは後ろを向いて、尻尾を持ちあげ四つん這いになる。雌にこの体制を取られたら、雄がやるべきことなんてただ一つである。
 ガブリアスは彼女の太い尻尾を抱え、今すぐにでも射精を待ちわびている自身のペニスを勢いよくあてがった。発情期のジュナイパーと比べても、彼女の胎内の充血具合、暖かさや粘液の具合はやる気満々なのがありありとわかる。
 粘液滴る熱を帯びた肉の穴にペニスを突っ込めば、摩擦と圧迫と熱、その三つが強烈な歓迎で迎えてくれる。最近のジュナイパーは体が冷え切っていて、突っ込んだ時の具合があまり良くなかったが、今のバンギラスのそれはまさに名器である。ぎゅうぎゅうと容赦なく圧迫してくるこの感じ、外気に晒されたペニスを射精に最適な温度まで導くその熱。前後に往復してそのありがたみを存分に味わえば、射精までの道のりは驚くほどに近かった。
「いくぞっ……」
 ジュナイパーとするときは、相手を気持ちよくできるようにということを念頭に置いていたが、今回はあまりにもバンギラスが乗り気なので、そんなことを考える間もなくガブリアスは一回目を終えてしまった。
「すまねぇ……すぐに終わっちまった」
「うーん、この感じ……初めてだけれど、これがセックスの味……いいわね。速いのは気にしないで?」
 バンギラスはこの短時間でも満足したかのような口ぶりだ。発情期の恐ろしいところで、彼女はこの短時間で軽いオーガズムに達している。バンギラスの膣が脈動しているのがその証拠だろう。
「気持ちよかったか? 俺も驚くほど速かったが……」
「えぇ、とっても。でもまだまだ足りない。貴方だってそうでしょう?」
「当たり前じゃねえか。今日は夜が明けるまでやろうぜ?」
 ガブリアスもバンギラスも、交尾は時間ではなく手数で勝負である。すぐ終わり、すぐに回復し、すぐに終わる。互いの性質が上手くかみ合えば、それはもう楽しいうたげとなるのは間違いない。二人は、庭の反対側でラムパルドが眠っているにもかかわらず、それをはばかることなく交尾に興じ、快楽をむさぼり続けるのだ。
「ねぇ、そうそうガブリアス」
「ん、何?」
 二人の欲求も大分解消されてきたころ、疲れた体を地べたに休ませながら、バンギラスは甘く囁く。
「浮気はだめだからね? もうジュナイパーとの交尾は禁止よ? 同居していて手近だからって、浮気は許さないんだから」
「あぁ……まぁ、お前が相手してくれるなら必要ないしな」
 バンギラスの言葉に、ガブリアスは気のない返事をするが……
「破ったら、ちんちん噛み砕くからね?」
 ガブリアスは火照った体から熱が引いていくのを感じて、背筋に冷たいものを感じる。このバンギラスの言葉が嘘ではなさそうだと、そんな威圧感を感じて、ガブリアスは思わず勢い良く頷いた。そうでないと、殺される気がしてしまったのである。
「お、おう! 約束するぜ!」
「うふふふ、ありがとー。いやぁ、子供出来るかなぁ、楽しみだなぁ……卵どれくらい深くに埋めよっかなー」
「そんなこと考えるのは後にしようぜ。とりあえず、今は続きだ」
「ふふん、そうね。一杯やらないと卵は出来ないし」
 そうして、二人は盛り上がって何度も何度も交尾をします。一回一回は人間と比べて短く、量も少ないのですが、その回数は圧倒的で、二けたを軽く超えてしまいました。
 散々繰り返された交尾の果てに夜が明けて、バンギラスは何食わぬ顔で眠りにつきますが……エリザベス嬢がポケモンたちに食事を与えに来た時には、まき散らされた精液や愛液の匂いで、夜の間に何をしていたのかがしっかりとばれてしまうのであった。
「アンドレア、何をしていたのかしら?」
 両手で首を掴み、バンギラスを持ちあげ、エリザベスは笑顔でアンドレアこと、バンギラスに問いただす。とは言っても、エリザベスは答えがわかっているので、何をしていたかではなく誰としていたかの方が重要ではあったのだが、言葉が通じないため伝わることはないだろう。
 だが、エリザベスはお嬢様であり、怪獣マニアでもある。匂いや足跡でポケモンの種類を特定することなんて訳はないのである。
「ガブリアスか……後でライアンの奴をシメておきましょう。ゴルーグ、ライアンの家まで飛んでくださるかしら?」
 彼女は庭に残された痕跡から、ガブリアスが犯人であることをいともたやすく突き止める。こうして、夜戦に適したポケモンを育てる達人、ライアンはエリザベスに喉を掴まれ、片手で持ちあげられた状態で説教されたそうな。『自分のポケモンの管理もまともにできないのかしら?』と、足が宙に浮いた状態で長い時間脅されたため、ライアンはすっかり怯えてしまったのであるが、ポケモンたちの意思を尊重して、とりあえず二人がつがいになることは何とか許してもらえるのであった。

 それから数か月後……あれから、バンギラスには卵が出来て、それを庭に埋めた後、二週間ほどしたところでヨーギラスが地面から顔を出した。(フカマルだったら死んでたんじゃ……)今は主人のエリザベスと共にその子を育てている最中で、ある程度まで育ったら里親へ売りに出すそうだ。バッジを八つ持ったトレーナーのポケモンは高く売れるのである。
 そんなことはともかく、エリザベスに締めあげられたライアンの家では、ジュナイパーが一人そわそわとしていた。
「まずいな……この感じ、近いうちに発情期が来る……」
 ジュナイパーは自分の体に訪れた変調を感じながらガブリアスを見るのだが……彼は、夜に部屋を抜け出してバンギラスに会いに行ったあの日からというもの、ジュナイパーに対して交尾を要求しなくなった。それどころか……
「ねぇ、ガブ……私、もうすぐ発情期がきそうなんだけれど……」
「ひぇっ!」
 かつての彼にとっては嬉しいであろうこの申し出だが、今はむしろ肩をすくめて恐れるような始末である。いったい彼女との間に何があったのやら。
「あ、無理! 俺は無理! 浮気したらあいつに殺されるから!」
 いつだったか聞かされた『ちんちんを噛みちぎられる』、から『殺される』、まで変化した彼の認識を見る限り、浮気はしてくれなそうだ。それだと、発情期の解消は一体どうすればいいのか……
「どーしよ……誰か適当な雄を見つけないとなぁ……」
 ジュナイパーは独り言ちながら考える。すると、ちょうどよさげな人物が一人思い浮かぶのであった。
「ブリガロン……あいつなら、よくお世話になってるし……逆に私もお世話しているしね。何よりチョロそうだしいけるかも」
 次に彼と会える今週末のは、因縁のトワイライツとの練習試合がある時だ。勝って気分がいい時に誘えるといいのだけれど……あのトワイライツに勝てるのだろうか? ジュナイパーは、来る発情期に不安を覚えていた。

 つづいてる……PSB:背中を見る
 続きの続き……PSB:青い百合の花

コメントはありません。 Comments/PSB:砂嵐の二人 ?

お名前:

トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2019-10-05 (土) 23:21:57
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.