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Galaxy (story36~40)

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Galaxy (story36~40) 


著者 パウス


~story36~ ―最上魔術者 ジャンクル― 


私は『裏庭』の連中は嫌いだ。多分、大が付くくらい。
私は人間に捕まえられて無理矢理悪に加担させられているが―――いや、加担してないかな。
こんな弱い私を使う人間なんていないのだから・・・。
ただ私はここで暮らしているだけ・・・・。でも、ここだって居心地が良い訳ではない。
湧き上がる罪悪感と、根源的な恐怖感が私の中で燻っている。
もうそろそろ日が傾く頃。でも私はあの夕日を見ることも出来ない。

続々と『裏庭』の連中がここ、『中庭』に姿を現し始めた。
さっきまでざわざわとしていたこの場が一瞬にして凍りつく。
中には恐怖を露にしている者もいる。―――多分、無理矢理加担させられている者達だろう。
中には尊敬の眼差しで見据えている者もいる―――多分、納得の上で加担している者達だろう。
私は恐怖が8、尊敬が2くらいだ。何故なら連中の中には彼がいるから・・・。

いよいよ『裏庭』の列も最後尾に近づいてきた。
大きなボーマンダのネルピスが入ってきたその次、ぐんと体のラインが下がる。
小さな体に、申し訳なさそうな顔をしている彼こそアクアだった。
すでに中に入った連中は好き勝手に散らばって好き勝手やっている。寝ている者や走り回る者など様々だ。
アクアは端の方に歩いていき、そこで壁に寄りかかりながら腰を下ろした。遠くで見ている私には気付いていない様子。
どうせなら驚かしてやろうと、周りに生えている木に隠れながら少しずつ、少しずつアクアに近づいていった。
いよいよアクアの左隣の木まで辿り着いた。そこから少し顔を覗かせて彼の姿を確認し、いよいよ飛び出そうとしたその瞬間。
「・・くっ・・・あっははははははははははは!マリン、もう既に気付いてるよ!?」
びっくりしてまた顔を覗かせると、アクアは笑いながらこっちを見ていた。
必死に隠れてた私がそんなに可笑しかったのか、その笑いは長く、長く、長すぎるほど続く。
「もう!バカッ!!」
そっちは面白いだろうがこっちはがっかりだ。折角アクアの驚いた顔が見れると思ったのに。
私は怒りをぶつけるようにアクアの肩を叩き続けた。

ようやくアクアの笑いが収まった頃、もう『裏庭』の連中は移動し終えたはずにも係わらずまた入口が開き始めた。
入口の開く音は結構響くためか、皆視線がそっちへ一斉に移動する。
この入るのも気まずい空気の中、扉をゆらりとくぐって来たのはサーナイトだった。
その超が付くほどの美男子的な容姿でにこりと笑い、誰にともなく手を振るサーナイトに、皆一斉に黄色い声を浴びせる。
アクアは目を輝かせ、嬉しそうな顔をしてサーナイトを見ていた。
「・・・ジャンクルさん!」
そう弾んだ声で強く呟くと、一目散にサーナイトの元へと駆けて行ってしまった。
私も何となくその後を追うが、正直少し怖い。
というのも、サーナイト―――ジャンクルは『裏庭』より上の階級に位置する、頭領直属のポケモンだからだ。


~story37~ ―力のバランス― 


ジャンクルはよく『中庭』にも『裏庭』にも顔を出し、一緒に話をしたりバトルしたりしてるからか、他者からの人気が高い。
恐らくあの超絶的な容姿もそれを手伝っているのだろう。
思わず同性でも見とれてしまう程だ。―――勿論発情したりすることは絶対に無いが。
「ジャンクルさん、久しぶりです。」
ジャンクルは視線を僕の方へと滑らせると、にっこりと笑った。
「やあ、久しぶりだねアクア。もう『裏庭』の雰囲気にも慣れた?」
本当に『A・G団』の大幹部なのかと思ってしまう程のこの愛想の良さと優しさも人気の秘密だ。
「いや・・・それがまだ・・」
雰囲気には慣れていない。
僕だって無理矢理ここに叩き込まれた訳だ。『裏庭』にいるからって加担しようなんて一度も留めてはいない。
雰囲気に慣れられない理由はそこにある。
「早く慣れた方が良いよ。そうじゃないと精神的にまいっちゃうからね。」
ジャンクルはそう言うと僕の頭にポンっと手を乗せ、滑るように向こうに行ってしまった。
慣れた方が良い、彼の言った言葉には“慣れた方が楽”という意味も含まれている気がした。
確かにこのままではいずれまいってしまうかもしれない。慣れてしまった方が精神的に楽だ。
だがここでの慣れは加担を意味している。そんな気がしてならない。

僕がジャンクルさんに近づいている理由は、ただ慕っているだけではない。だが僕はその理由を彼に話せずにいる。彼の目の前だと緊張が解けないのだ。
また今回も駄目だったとため息をつきながら振り返ると、自然とマリンと目があった。
さっき見つけてしまったことをまだ根に持っているようで、完全に膨れっ面だ。
その様子があまりにも可愛く見えて頬が上がるのを抑えきれない。
「・・何笑ってるのよ。」
ぶうたれた彼女の声には何故か可愛いと思わせる追加効果があった。
自分のやろうとしていたことが失敗したから膨れるなんて完全に子供だ。
いつもは大人の雰囲気を醸し出しているマリンのそのギャップが可愛かったりする。
―――可愛い可愛いとばかり思ってて何だか気持ち悪くないか?

にやけてばかりで何も答えなかったせいで、マリンの機嫌は更に急斜面になってしまった。
「罰として、今日も私の相手してもらおうかしら。」
にやけっ面が間抜け面となった気がした。この前やったばかりだというのに。
「え・・、でもそれはこの前も・・」
「うるさいっ!罰よ罰!!」
完全にマリンの機嫌を損ねてしまった僕は、思わぬ“仕返し”を受けることとなった。

ほぼ無理矢理引き込まれた個室には恐ろしいことに敷布団が敷かれており、明かりも一つのランプしかなくて薄暗かった。
マリンがいまからやろうとしていることを実行するには、実に良い環境となっている。
後ろでマリンが更ににやりと笑ってるのは目に見えた。――っていうか「よっしゃ!」とかいう声も聞こえるし……。

「ほらほら、仰向けになってよ。」
仕方なく布団に転がり、これまた仕方なく仰向けになると―――
マリンの顔が既に顔と顔がぶつかりそうな位置にあり、暫くして唇に自分のものではない温もりが重なっていることに気が付いた。
マリンは暫くお互いの温もりを堪能した後、瞬時に自らの舌を僕の口内へと侵入させる。
外からでは分からないだろうが、今僕の口内ではマリンの舌が別の生き物のように動き回っているのだ。
今回、これは――少々横暴な気もするが――罰だ。故にマリンがリード出来るということで気合いが入っているらしい。
よく疲れないな、そう思ってしまうほど長い時間舌を動かし続けたマリンはようやく熱くなりすぎた唇を冷却させてくれた。

うっとりとしたその目を、今度は僕の股間へと移動させるのはいつものパターンだった。
その目をそこに向けたまま顔を僕の耳にゆっくりと近づかせ、マリンはふふっと小さく笑う。
「さっきも言ったけど・・・、これは罰なんだからね。覚悟しといてよ・・。」
マリンはそう言うとそのまま息を耳に吹きかけ、彼女の小さな舌でべろりと舐め上げられた。
「ひゃぁ!?」
まさかの耳攻撃のせいでより一層興奮してしまう。
耳からの快の名残が消えないうちに、マリンは素早く僕の足元の方へと移動していた。

全般的な戦闘能力では、マリンより僕の方が圧倒的に上だと確信している。だがこういう状況になってしまうと彼女には一生敵わない気がした。
まぁ、これはこれでバランスが取れてるからいいか、と何だか彼女に攻められることに慣れてしまった僕がいた。


~story38~ ―快電気― 


もう完全にアクアは私に身を任せている。抵抗してこないのがその証拠だ。
もしかしたらマゾッ気が彼にはあるのかも、そう思ったがそれでも多少のサディストである私とは良い相性だ。

こうやって体を重ねるごとに見るアクアのモノは、通常の二、三倍ほどもの大きさに膨張していて、それがまた私を興奮させる。
だって私の行為で気持ち良くなってるってことでしょ?
「凄いね、この前やったばっかりなのに……ね?」
意地の悪い笑みを浮かべたが、どうせ見えてないだろうと声まで意地悪くした。
「だって………今日はいつにも増して凄いんだもん。発端もいきなりだしさ。」
その顔、その私の前だけで見せてくれる弱々しい顔が駄目なのだ。
何故なら―――もっともっと攻めたくなっちゃうじゃないの!!
「んくっ……!」
アクアのモノを大きく舐め上げ、唇を押し付けながら舌の先でモノをくすぐる。
アクアは気持ち良さのあまり甘い声を漏らし、時折ぴくりと体を撥ねさせるがそれでもやめる気は無い。
寧ろやってほしいだろうし、私も止めたくは無い。
私はついにモノに齧り付き、音が聞こえるほどまでに強く吸う。
「・・・・・あぁぁああぅ!!」
アクアの声はまるで子供のように情けなくなっていた。
体が動くことを抑えきれていない感じだが、一切抵抗する様子は無い。
しようと思えば後足で私を押さえたり、蹴ったりすることも可能な位置に私はいるというのに…。

あぁ、駄目駄目……そんなに弱々しくなっちゃあ。
私の意地悪な人格がまた復活し、選択肢を二つ出した。
このまま一気に頂点まで達させるか、それともまだまだ焦らすか。こういう場合、いつもなら焦らしていたがいつもそれではつまらない。
じゃあ一気に―――そう考える前に体が先に動き始めていた。

「……うわぁあっっ!?えっ、何これ!?いきなり……うひゃあ!!」
アクアがずっと口から漏らしていた弱い喘ぎ声が一瞬にして叫び声のように大きな声と化した。
何これ、と驚くのも無理は無い。何故なら私は今までにやったことのないことをやっているのだ。
私はモノから口を離して、自然と笑みを浮かべていた。アクアにはこの笑顔がどう映っているのか分からない。
「うふふふ……、今ねぇ、頬の電気袋から口を通して弱い電気をあなたに流してね…」
ここで一旦切り、目の前にあるアクアのモノを指して続けた。
「ここに直接刺激を与えたの……。どう?結構気持ち良いでしょ?」
「気持ち良いけど……ちょっとやりすぎじゃないかい?」
結構なんてもんじゃない、そうアクアの顔は訴えているが意図的に無視した。そもそも私を怒らせたのが運の尽きだ。
私はまたモノに齧り付く。その口を顔ごと上下に動かすと共に、さっき言った弱電気を流していた。
勿論全く痛みも、感電した感じもない程に弱い電気だが、彼に快感を与えるには充分過ぎた。
快感を味わうたびに叫ぶ声は、既に私が時々ふざけて電気をぶつけた時の驚いた声よりも大きくなっている。
どのくらい気持ちが良いのか私も味わってみたくなったが、電気タイプである私には通用しないだろうと少しがっかりだ。

今までよく耐えてきたアクアはついに絶頂に達したようだ。
「あぅ………」
もう声を出し切ってしまったのか、力ない声で絶頂を迎えたアクアはモノから恒例の白い液体を放つ。
思いっ切り顔にかかったそれを私は拭き取り、この前は舐めたので今度は体に塗ることにした。
「……とんでもないこと考えついたもんだね。まぁ、気持ち良かったけどさぁ…」
ゆっくりと起き上がりながらアクアは苦笑する。
流石は『裏庭』所属と言ったところだろうか、それ程疲れてはいないようだった。むしろ電気を流し続けた私のほうが疲れているくらいだ。
ならば更に先まで行っても大丈夫だろう、とまた私自身の意地悪な人格が囁いた。


~story39~ ―室内熱帯― 


僕のモノは役目を終えたかのように萎んでいった。
その様子を見ながら苦笑する―――残念ながらお前の役目はまだ終わってないんだよ。
自分のモノを見下ろしながら思っていると、視界の中にマリンの顔が現れた。
マリンはモノに口を近づけ、小さな舌で大きくそれを舐め上げる。
「うっ……!」
「分かってるでしょ?まだ私とやることがあるって………」
全く、出会ったばかりの時は消極的で静かなポケモンだったのにいつからこんなに積極的になったのか。
小さくなったモノをもう一度復活させようと何度も何度も舐めるその姿は、あのころからは想像もつかない。
まぁ………僕には他の者に見せられない姿を見せてくれているということなのだろう。

暫くしてまた視線を落とすと、すっかり復活しきったモノが目に入った。
最後の仕上げにマリンは一度咥えてから離すと、スッと立ち上がる。
そして上から思いっきり体重をかけ、僕を押し倒した直後にマリンは丁度モノと彼女の秘部が一直線上になるように跨った。
「じゃあ、私も気持ち良くさせてね?」
マリンはうふふと低く、不気味な声で笑うと腰を下ろして一気に自らの秘部にモノを沈めていった。
「うんぁ……あっ!」
通常ならそれ程の大きさではない秘部が、僕のモノの上にぐいぐいと無理矢理押し当てられる。
モノはマリンの秘部を押し広げて入り、中はかなりきつかった。
それなのにまだ無理矢理中へと引き込まれるため、僕に襲い来る快の波は並の大きさではない。
無論、沈める側であるマリンにもその快楽が押し寄せているに違いなかった。
「あっ………う…ん…………とても……良いよ、アクアぁ……」
無理矢理押し込んでいる感じなのにこれでも気持ち良いんだな、と少し雌の立場について思った。
マリンの視線は泳ぎ、息遣いは更に荒くなり、顔は真っ赤に染まっている。

そして完全にマリンの秘部に沈められてしまった、もう外からは見えないモノを見下ろしながら一つの不安に駆られていた。
もしマリンがこの状態でも僕のモノにさっきの電気を流せるのだとしたら―――とんでもないことになる。
その思いが素直に顔に出たようで、マリンは僕に顔を近づけてにやりと笑う。
「流せるよ?電気。……流してあげようか?」
とんでもない。またあんな事をやられて身体が耐えられるっていう保障はどこにあるというのだ。
思いっきり首を横に振ると、今度は優しくマリンは笑って見せた。
「冗談よ。あれ、私も疲れるんだもん。」
ということは疲れなければやるつもりだったのだろうか。分からないがとりあえず安心してよさそうだ。
「じゃあ………動くよ?」
「う、うん……」
マリンは僕の唇に自分の唇を重ね、すぐに離したあと僕の胸の辺りに手を置いて腰を浮かした。
吸着して締め上げながら動く彼女の秘部の中は、何度経験しても気持ちの良いものだ。
「う……あ、はぁ…………っ!」
――こんな甘ったるい声を漏らしてしまうくらいに。
マリンは僕に快感を与えようと動くと同時に、自らも快感を得ていた。
「あん………んぁん……………ぁあん……!」
お互いの身体と身体がぶつかり合う、弾けるような音は、僕とマリンが繋がっていることを改めて認識させる。
マリンの口から漏れる艶のある甘い喘ぎ声もまた僕に快感を与え、恐らく僕から漏れる声もマリンに優越感と快感を与えていることだろう。
そしてやはりモノを締め上げながら上下に動く彼女の膣が、一番大きな快感の波を作る原因だ。

もう何度も経験したことのある、絶頂に達する予兆がついに感じられ始めた。
「マリ………ン……もう…………出そう……」
今日もマリンの中に出して良いのか分からないので、一応声に出して彼女に伝える。
するとマリンは更に上下運動を加速させ、にこりと笑った。
「大……丈夫…、そのまま出して………ね?」
だがやはり中に出そうとすると、本当に良いのかどうかと無意識のうちに身体が出すのを我慢してしまうのがオチだ。
マリンはそのことを知ってるのか、不意に僕の上半身を抱き上げ、腰を動かしながら強引に唇を押し付けた。―――勿論、僕の唇に。
そうして神経が一瞬、口の方に行ったせいでついに我慢が切れてしまった。
「ふぐ……っ!!んんんぁぁあぁんんんーーーっっ!!!」
マリンに口を塞がれているからあまり声は出なかったが、それとは裏腹にどうやらモノからは大量に放出してしまったようだった。
マリンはその後も暫く唇を押し付けた後、逃がさないようにと僕の頭の後ろに絡みつかせていた腕をようやく解いた。
一回唇を離し、そしてもう一度瞬間的にちゅっと唇を重ねた後でモノを秘部から抜く。
「はいっ、これで罰は終了ね。」
あぁ、そういえばこれは罰だったんだと今思い出した。
正直言えば、今まで身体を重ねてきた時とあまり変わらない気がするのだが。だがマリンがやたら張り切っていたからいつもより凄かった気もする。

まだ興奮の余韻が冷めないころ、マリンと並び合って横になっている時だった。
しっかりと閉じていた入口のドアを誰かがノックしたのだ。
「アクアー?入るよーー?」
今の状況で入られたらまずいことになる。
この個室はあくまで部屋なので、一歩でも入れば中は丸見え。それにまだあの行為の後片付けも出来ていなくて、この淫らなにおいや飛び散ったいろいろな液体もそのままだ。
「いやっ、ちょっとま―――」
焦って止めようとしたがそれも叶わず、入口のドアが開いてしまう。
顔を覗かせたのはジャンクルだった。
「もうそろそろ頭領が来るかも………よ………………っ!!」
ジャンクルは部屋の中を見回し、目を丸くして息を呑んだ。
僕は何とかこの気まずい空気をなくそうとしたが、あまりにも恥ずかしくて声も出ない。
「えーっと………あははっ、なんか邪魔だったみたいだ……ね?」
ジャンクルは明らかに無理矢理作った苦い笑みを浮かべ、即座に顔を引っ込めてドアを閉めた。

―――ジャンクルが出て行ってもなお直らないこの空気。この羞恥心。
視線を横に滑らせると、マリンは頬の電気袋を示す赤い丸の模様の区別がつかない程に顔を真っ赤に染め、俯いたままなかなか顔を上げなかった。


~story40~ ―ソノオタウン― 


204番道路を抜け、私達は花に囲まれた華の町―――ソノオタウンへと到着した。
すぐ傍に「ソノオの花畑」と呼ばれる、地面を覆いつくすほどの無数の花が咲いている場所もあり、心休まる場所として有名である。
いつもは冷たいとしか思わない夜風も、花々の良い香りを運ぶいい仕事をしていた。

204番道路で散々迷い、ソノオタウンに着いたのはもう空に星の光を見つけられるようになってからだった。
もうこれ以上先に進むには暗すぎるので今夜はここで一泊することになった。
トルマリンはリチアに惨敗し、怪我こそ大したことないものの自信は完全に粉砕したらしく、顔を俯かせたまま上げようとしない。
ご主人は手っ取り早く宿の部屋を取り終えた。こういう作業はかなり早いのがご主人の長所だ。
部屋の鍵を貰って部屋のある二階へと移動し、そこでご主人とミランは分かれた。
「多分俺は朝早く行くからよ。もう寝るわ。おやすみ。」
そう言って早々と扉を閉めてしまった。ミランのせっかちなところは昔っから変わっていない。
私達の部屋はそれなりに広い部屋で、ところどころに花が飾ってあるのはソノオの特徴を活かしたのだろう。

「ふうーーーっ、やっと外の空気が吸えたわぁ。」
ミランもトルマリンも居なくなった今、リチアの――正確にはアメシストの――身体からカーネリアが飛び出し、続いてクォーツ、コーラルと続く。
「すいません………」
苦笑しながら最後に出てきたのはアメシスト。何故に謝るのか、とカーネリアが首を傾げると、コーラルがそっと耳打ちした。
「……あっ、ごめん!そういう意味じゃないのよアメシスト!」
カーネリアは焦って頭を下げる。
恐らくさっきカーネリアの言った「やっと外の空気が吸えた」が失言だったのだろう。
アメシストの身体の中は窮屈だと示唆したようにアメシストは聞こえたらしい。
だが元々優しいアメシストはにっこりと笑い、「気にしないでください」とカーネリアを許した。

にこやかな空気が流れる中、朝からずっと暗い顔をしていたメノウがご主人のズボンの裾を引っ張った。
「ご主人……、ちょっと散歩してくるよ。」
そう言ってそそくさと外へ出て行ってしまった。
明らかに何かが変だ。話しかけると普通なのだが、漂わせている雰囲気が何か違う。
散歩に行くのはいつものことだが、あんなにそそくさと行ってしまうメノウは初めてだ。

皆でいろいろと楽しく過ごしていると、いつの間にかメノウが散歩に行ってから時計の長針が180度動いていた。
いつもなら5~10分ほどの散歩なのに、今日は30分だなんてやはりおかしい。
何故だろう………………分からない。

「メノウ、遅いね……」
そう呟きながら私はガーネットに視線を合わせ、首をかしげる。
するとガーネットも首をかしげた。やはり彼もメノウの様子がおかしいことに気付いているようだ。
ちょっと様子を見てこようかな、と立ち上がろうとした時。
「ちょっと身体貸して。」
カーネリアがリチアの身体をつんつんと突っついた。
何も知らない者が聞くと勘違いしてしまいそうな危ない言葉がいきなり吐き出されたので、リチアは少し戸惑い気味に答える。
「あ、あぁ。」
リチアが相槌を打つと、カーネリアはリチアの中に消え、リチアはカーネリアに変化する。
リチアは半透明な魂の状態となり、外に飛び出した。
「ちょっとメノウの様子を見てくるわ。」
そう言い残し、カーネリアも外へ駆け出て行ってしまった。


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Last-modified: 2011-10-27 (木) 00:00:00
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