ポケモン小説wiki
Galaxy (story26~30)

/Galaxy (story26~30)

Galaxy (story26~30) 


著者 パウス


~story26~ ―動き出す翡翠― 


シンオウから少し離れた小さな名も無き島。
時はすでに夜。
木々がわずかな月明かりに照らされていた。
その木々の間を縫って動きまわっている男がいる
その男が己の相棒たちの力量を上げようと夜中まで特訓を続けていた。
彼の名はジェード。クロガネゲートでパールを追い詰めたトレーナーである。

「っしゃあ!!〝爆裂パンチ″!!」
ジェードのポケモン、つまり相棒のうちの一匹――パイロープはその拳に力を溜める。
もちろん、隙が出来てしまうが、そこはもう一匹が補う。
「〝切り裂く″」
ルベライトが美しい水色の体を持つ大きなポケモンに両腕の鎌を振り下ろす。
そこに同時にパイロープの〝爆裂パンチ″も加わる。
もはや普通のポケモンでは避けるのは不可能だった。

しかし、その水色の体のポケモンは二匹の技の隙間をいとも簡単に避けてしまう。
そう、そのポケモンは普通のポケモンではない。
「遅い!」
そのポケモンは伝説と呼ばれるポケモン――スイクンなのだ。
スイクンの放った〝風起こし″によって二匹は吹き飛ばされてしまう。
その様子をじっと見ているジェード・・・

彼の肩に、ある男性が手を置いた。
その男性の顔は夜の暗闇でよく見えなかった。
「何だ、あんたか。」
「そろそろ休憩させてやったらどうだ?昨日戻って来てからずっとやってるじゃないか?」
二人は知り合いのようだ。
「・・・・よし、お前ら適当に休んでろ!」
この言葉を合図に、三匹の動きがピタリと止まり、その場に座り込んだ。

真剣な表情で向き合う二人。
最初に口を開いたのはジェードだった。
「で?何の用だ?」
「パールはどうだった?」
この男もパールのことを知っているようだった。
「あぁ、俺がA・G団として待ち伏せたあいつか?弱ぇよ。なんであんな奴に目をつけたんだ?」
「じゃあ何故負けた?」
ジェードは少し赤面する。
「そ、それはあいつがまさか頭領の育てた八匹融合のイーブイを連れてたからだよ。
 実際、あいつのポケモンには負けてねぇ。」
「何?八匹融合だと?」
男は目を丸くする。どうやら知らなかったようだ。
「あぁ、シェルの野郎が言ってた四年前から頭領が育てて、好奇心で作られたという可哀想なイーブイだよ。」
「なるほど。・・・・で?あのブースターとは戦ったのか?」
『あのブースター』――つまりメノウの事だろうか。
ジェードは横に首を振った。

「何であんなブースターを調べさせようとしたんだ?」
ジェードは不思議そうな顔で男を見る。
男に巻いてあるモンスターボールのいくつか着いたベルトから一つのボールを取り出す。
その中にはオニドリルが羽を折りたたんで眠っていた。
「こいつはそのブースターと戦って・・・負けたんだ。たしかに手加減はしていたが負けるつもりはなかったらしい。」
ジェードはひどく驚いた。
彼の驚きようから察するに、そのオニドリルは相当な強さなのだろう。
さらに男は続けた。
「あのブースター、『メノウ』と呼ばれているんだ。
 どこかで聞いた事のある名だと思っていたんだが・・・ようやく分かったんだ。」
「何だ?」
「メノウは―――」
男の言った事はジェードにとって信じがたい事だった。
ジェードはさらに驚いた顔になる。

ジェードはハッと何かを思い出した。
「まさか奴らが言っていた『あいつ』ってぇのは・・・」
男は頷きながら口を開いた。
「多分な・・・」
「畜生!だったら何とかしないと・・・あいつらが連れてるのは危険すぎるぞ。」

男はジェードに一つのモンスターボールを渡した。
「そいつを使えばいいだろう。」
「・・・・・なるほど。」
男の考えていることを理解したのか、ジェードはにやりと笑う。

「お前、本部には戻らなくていいのか?」
男の問いに、ジェードは鼻で笑って答えた。
「奴らにはさっき『失敗したからしばらく特訓する』と言っておいた。もう一、二日くらい大丈夫だろ。」
「そうか・・・。」
ジェードは一度振り向いてパイロープたちをボールに戻そうとしたが、あることに気がついてもう一度振り返って言った。
「そういえばあんた・・・なんであのパールって小僧があの日旅立つって知ってたんだ?」 
男はオニドリルの入ったボールをベルトに戻し、顔を上げた。
「いや、あの日に戦ったのは偶然だ。優秀な仲間がいないか探してたら会ったんだよ。
 ただ・・・」
「ただ・・・?」
「あいつは私の・・・」

「ジェード!スイクンをなんとかしてくれ!厳しすぎるんだよ!」
せっかく男が口を開いたというのに、場違いな事にパイロープがジェードの服を引っ張って言った。
「わかったって、服を引っ張るな。」
ジェードの声は強めの口調だったが、どことなく楽しそうな声にも聞こえた。
男はその状況を見て笑っていた。
「………まぁいいや、その事はまた今度話そう。」
ジェードは男に向かって大きな声で言うと、パイロープに引かれてスイクンの所へと行ってしまった。


~Story27~ ―感電夜― 


何かすごく緊張する・・・。
この前ジェオードに襲われた時は突然だったからよかったけど・・・・いや、よくないけど。
カーネリアはは姿勢を低くして僕の股間の辺りをじっと見てるし・・。
何されるんだろう・・。

そんなことを考えていると、突如僕の全身を快感が突き抜ける。
「ひゃあ!?」
視線を下ろすと、彼女の小さな舌が僕のモノに触れているのが見えた。
彼女は上目使いで僕と視線を合わせると、にやりと笑った。
そしてもう一舐めする。
「ひぃぁ!」
「あなたいいリアクションするわね。見てるこっちも気持ちいいわ。」
――――やっぱり彼女は加虐愛好者(サディスト)だ。

僕は心の中で『やばいやばい』と連呼する。
それはもう絶頂に達する寸前だという事なのだろう。
「にゃぁあ!!」
あまりの衝撃に普段は絶対に出さない声まで出してしまう。
もう頂上は目に見えていた。
しかし、もう目前というところで彼女はその行為を止めてしまう。
「・・・・・・ぅえ?」
僕は思わず不満げな表情を作ってしまった。
「・・・・小さい?」
その言葉がきつく僕の心に突き刺さる。
「わ、悪かったね。」
ジェオードにも言われたよ・・・・なんか妙に悲しい。
少し目にたまった涙で視界が歪んだ。

「ごめんごめん。
 あはっ、でもその表情・・・・可愛い。」
「・・・へ?」
彼女の前足が僕の後頭部の後ろへ回り込む。
そうやって僕に抱きついたまま彼女は仰向けになった。
当然、僕は彼女に覆いかぶさる。
いきなり抱きつかれたので、一瞬五感が消失したが、それがだんだんと戻ってきた。
目の前は何も見えない。でも僕の顔は何か大きくて柔らかいものにうずまっているような・・。
そう、彼女の乳房だ。

とても暖かい温もりがあって・・・・とても気持ちいい。
僕の理性が揺れ動く中、一つ問題が発生した。

彼女の乳房は大きく膨らんでいて、とても柔らかい。
それ故に、呼吸をするのが難しいということだ。
このままでは・・・まずい。
自力で抜けだそうにも何故か彼女の後足も僕の腰の辺りに絡み付いていて殆ど動けない状態だ。
頭を動かしたり、足をバタバタさせたりしてみたものの、彼女は息を荒くするだけでまったく手を離す気配が無い。

今度は前足で彼女の横腹の辺りを軽く叩いてみた。
「どうしたの?
 あっ、もしかして息が出来ないの?」
さすがに気付いてくれたようだ。
僕を抱きしめていた彼女の前後足が離れた。
急いで僕は顔を上げる。
「っはぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・。」
充分に空気を取り入れた時、彼女はこう言った。
「じゃあ、今度は私が気持ちよくなる番。さぁ・・・・やって?」
彼女はにこりと笑った。
雄の本能を容赦なく狂わせるその笑顔は・・・とても魅力的で美しかった。
でも僕の理性はまだ生きている。
それが彼女の身体に触る事を必死に拒んでいた。

触る事を拒む僕の理性と、触りたくなる僕の本能とがぶつかり合って、何もすることが出来なかった。
そんな僕を見かねてか、また彼女は前足を僕の後頭部に絡みつかせてさっきと変わりない笑顔で言った。
「ねぇ、早くしてよ。
 今度は本当に窒息させるわよ?」
さっきと変わらない笑顔と言っても、今度は僕を恐怖させる小悪魔の笑顔に見えた。
「・・・わかったよ。」
そして彼女の身体に覆いかぶさった。
今度は・・・・自分から。

彼女の乳房は前足で触ってもとても柔らかくて、思わず夢中になってしまう。
僕の身体が少し動くたびに彼女の身体がビクッと動く。
僕の前足が彼女の乳房に触れて動くたびに彼女の息は荒くなっていった。
「あっ・・ぅうん・・・も・・・・・っとぉ・・。」
彼女の甘い喘ぎ声にも、僕を狂わせるなにかが含んでた。
大半の理性を吹き飛ばされた僕のもう片方の前足が自然と彼女の股間へと動いていく・・。
そして秘部に触れたとたん、彼女の息は一層激しくなった。
「メノウ?そこは・・・あ・・あぁん・・・やめ・・そこはまだ駄目ぇ!」
そんな声は耳に入らなくなっていた。
僕の意思とは無関係に前足がもっと激しく彼女の秘部を刺激し続ける。
と同時にもう片方の前足は彼女の乳房を刺激し続けていた。
「やめ・・・あぁ・・メノ・・・ウ・・・あぁぁぁああん!!」
彼女の秘部からにじんでいるだけだった透明なぬるぬるした愛液が、突然さらさらとした透明な液体になって一気に小さい鯨の潮吹きのごとく噴出した。
僕はその一瞬前に彼女から離れたため、それが身体に付くことは無かった。 

僕が正気に戻った時には、彼女はぐったりとして、仰向けに倒れていた。
この事から僕がさっきまでやっていたことはすぐに分かった。
「だ、大丈夫?カーネリア・・・。」
彼女の黄色い顔は赤く染まっていて、息もかなり荒かった。
「平気・・よ。これくらい。じゃあ・・・・今度は・・一緒に・・」
彼女は後足を開いて、秘部を露にした。
そこは大量の愛液で湿っていた。

彼女は僕のモノを指した後、自分の秘部を指した。
つまり・・・入れろって・・・・・こと?
僕が彼女を見ると、彼女はコクリと頷いた。


~Story28~ ―暴走雷獣― 


驚いたぁ。
まさかメノウがあんなにうまいだなんて思わなかった。
まぁ、でもこんなんじゃ終われないよ。
メノウの性格だったら多分自分から入れることを拒むだろうし・・・・ね。

「で、でもそれは・・・。」
予想通り。やっぱり拒んだ。
一歩私のところに近づいては遠ざかる。それの繰り返しだった。
「どうしたの?本当は入れたいんじゃないのぉ?」
私は上半身を起こして彼を誘う。
しかし、彼は屈しなかった。
一瞬私を見ては首を振って頭のなかの欲を振り払っていた。
「う・・、でも僕は君の事を好きだと言ったわけじゃないんだし・・。」
「別にいいじゃない。
 だってあなたも私とヤりたいって言ったんだから。」
「ぼ、僕はただ嫌じゃないって・・」
「どっちも同じよ。」
「君は・・いいの?」
「だ・か・ら、いいって言ってるじゃない。」
拒むと分かっていてもやっぱり少しイライラする・・。
こういうところが雄らしくないのよねぇ・・・まぁ、そこがいいんだけど。
「・・・・やっぱり無理・・」

このじれったい行為が、私の暴走スイッチを入れることになる。
「もうっ、だったら私がやってあげるわよ!?」
「・・・・はい?」
私は瞬時に起き上がって彼を押し倒して四肢の動きを奪った。
彼は何とか抜け出そうと力を入れるものの、私がモノを握るとすぐにまた倒れこんでしまう。

「いい?いくよぉ・・・・んっ。」
私は彼に跨り、彼のモノ目掛けて腰を沈めた。
「ちょっとま・・ぅあ!!」
ゆっくりと彼のモノが私の中に入っていくのがわかった。
それが中に入ろうと擦れるたびにお互いを快感が襲う。
「あ、・・・んぁあ・・」
「う・・・あぁ」
それまでに何度も快感の波に襲われたけど、ついにモノは私の中の奥まで達した。
「はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・・」
いままでとはまた違った快感が襲ってきたせいかお互いに息が荒く、しばらく動くことも話すことも出来なかった。

呼吸が整ってきたところで彼は口を開いた。
「・・・ひどいよ、いきなりやるなんて・・。」
彼の声は力の無い弱弱しい声だった。
「でも・・・いいでしょ?こういうのも・・・。」
「・・・・・うん。」
元々赤い顔をもっと赤く染めて涙目になっていた彼の顔が笑みを浮かべる。
その顔は・・・・例えようの無いほど可愛い表情だった。
「じゃ・・・動くよ?」
彼の返答を聞かないまま私は腰を動かし始めた。
「う・・・っひゃあ!」
彼はまた甘ったるい喘ぎ声をあげる。
それは私も同じことだった。
「あぁ・・ひゃあん!!」
私はどんどん腰のスピードを上げていく。
それに比例するように喘ぐ声もだんだんと大きくなっていき、叫び声に近くなっていった。
しかし彼はまだ気付いていない。
私の頭の中にとんでもない考えがあるということに・・・。

「うぁあ!・・・カーネリア?」
さすがに気付いたようだ。
「は、速・・・ひゃうあ!!」
そう、私がやっていることは・・・・
―――〝高速移動″自分の動きを速める技・・・。
「んぁ!・・・あぁ・・あっ・・ぃい・・」
私の腰は〝高速移動″によってとてつもない速度で動いている。
それは私にも彼にも絶大な快感を呼んだ。

「あぁ・・あぁん・・・ひゃあぁ・・ん!!」
「う・・ふぁあ・・あああああ!!」
もうお互いに絶頂に達する寸前、ふいに快感が私の中から姿を消した。
勢い余ってモノが私の中から抜けてしまったのだ。
「・・・ふぇ?」
「・・・・抜け・・ちゃった・・・。
 やっぱり駄目みたいね・・・・さすがに〝高速移動″は。」
私は彼に顔を近づけた。
「今度はゆっくり・・・・ね?」
彼は頷いた。

それからどれくらい身体を重ねていただろうか。
相変わらず私が上に乗っていたのは変わらなかったけど・・・。

「やばい・・・もう・・出るよ・・」
この言葉を聞いた瞬間、私は急いで腰を引いて彼のモノを外に出すと、それを私の胸に押し付けた。
そして彼は絶頂に達した。

「はぁ、はぁ、はぁ・・」
「あはは、やっと出したね。」
私の身体は白い粘り気のある液体で湿っていた。


私たちは横に並んで星を見上げた。
「ねぇ、さっきの告白の答え・・・・どうなの?」
「・・・・・まだ分からないよ。
 まだ会ってそんなに経ってないし・・。」
「・・・そう・・」
少し悲しかった。
でも嫌いと言われたわけではない。
ただまだ会って日が経ってないだけだと彼は言っている。
それって・・・まだチャンスがあるってことだよね・・・・・そう思っていいんだよね・・。

私はその不安を振り切るように彼に抱きついた。
「でもこれからも・・・ずっと一緒だよね?」
彼は私を抱き返してくれた。

でも彼は『ずっと一緒』だと返答したわけではなかった。
つまりもしかしたら一緒にいられないということなのだろうか・・。

彼のぬくもりだけを感じていた私は――――――そのことに気付かなかった。


~Story29~ ―疑いと動揺― 


カーネリアとの短い抱擁が終わった後、僕等は気付いた。
こんな精液やら愛液やらで濡れた身体でテントに戻るわけにはいかない・・・。
僕は自分で体温を上げて蒸発させられるけど彼女はそうはいかない。
「カーネリア・・・・身体洗わないと・・・。」
「あっ・・・。」
彼女も今気付いた、というふうに後頭部を掻いた。

どうしようか頭を悩ませてるときに、ふと静かな水の音が聞こえた。
それは川が流れるせせらぎの音だとすぐに分かった。
僕と彼女は視線を合わせると、一目散にその音のする方へと走った。

その川は幸い、すぐ近くを流れていた。
僕が彼女を川に入るよう促そうとしたとき、彼女は疑問の目つきでこっちを見ていることに気付いた。
「あんた・・・・そんなに足速かったっけ・・・。」
「え・・?いや、カーネリアがいつもより遅かったんだよ。」
彼女はその目つきを変えず、「ふ~ん」と言って首を傾げながら川のほうを向いた。

危ない危ない、つい気が緩んでしまった・・。
僕の正体は・・・・誰にも知られたくない・・・・。

彼女はそのまま川へと飛び込んでいった。
「冷たっ!?」
川に入った途端、彼女の身体が反射的に跳ね上がった。
同時に水しぶきも空高く上がっていく。
今はもう月と星が空を独占する真夜中。
いくら昼間は暖かいからって、こんな時間帯になれば水温は下がるだろう。
それなのに普通飛び込むかなぁ・・・。

彼女が身体を洗う、その光景を見ていたら自然と笑顔になった。
すると、突然後ろから草の揺れる音がした。
風による音ではない。明らかに誰かがそこにいる。
まさか・・・・奴等か?
カーネリアもこの音に気が付き、水の音をたてないよう静かに川から上がった。

だんだんとその音は近づいてくる・・。
こうなったら先手必勝!
僕は音の鳴る方へと飛び掛ろうとした瞬間だった。

「あっ、いたいた。まったく・・・いつまで外にいる気だよ。」
その音の主はクォーツだった。
遅れてコーラルとアメシストも後ろから歩いてきた。
もちろん、三匹とも今、魂の状態だった。
「あまり夜更かししちゃだめよ?明日も奴らが襲ってくるかもしれないんだから。」
「そうですよ。もう戻りましょう。」
どうやら彼らはなかなか帰ってこない僕たちを探しに来てくれたようだ。
僕の心の中は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「戻ろう、カーネリア。」
「・・・そうね。」
僕たちはクォーツたちと共に、テントの方に向かって歩き出した。
すると、ふいにクォーツがこんな質問をしてきた。
「お前ら、何やってたんだ?
 カーネリアは全身濡れてるし、メノウの前足にも何か付いてるぞ?」
「え!?」
僕は慌てて自分の前足を見下ろす。
たしかにそこには粘り気のある、透明な液体が付いていた。
これは・・・・まさかカーネリアの・・・。
まだ蒸発しきってなかったのか!

「べ、別に何もしてないわよ!ただ水浴びしてただけ。ね?メノウ?」
「う、うん。そうだよ。」
僕たちは無理矢理笑顔を作る。
それは誰がどう見ても何かを隠しているような笑顔だった。

クォーツたちの足の動きが止まる。
僕たちの顔色を見て、明らかに疑っている様子だった。
風の音も、草の音も全てが僕たちを焦らせる、静かな雰囲気を作り出していた。

僕の頬に一筋の汗が流れた。


~story30~ ―四匹目の悪戯― 


二匹の様子が明らかに様子がおかしかった。
様々な予想が頭の中をぐるぐると回っている。
その中に一際目立つものがあった。

……おいおい……まさか……?

動揺するメノウにさらに一歩近寄った時、ふいに、どこからか声が聞こえた。
「・・ん?目が覚めたと思ったら、何だこの雰囲気は?」
少し高めのこの声は、たしかにこの近くから聞こえる。
………だが、周りには俺たち以外誰もいない。
ただ草木と、一本の外灯の光があまり意味も無く草を照らしているだけだった。

「ここだ、ここ。」
「きゃぁあ!?」
アメシストが突然飛び上がった。
その後ろには、月光に照らされて、何者かの身体や頭の輪郭が薄っすらと見えた。

四足歩行で、黒い身体に、幾つかの黄色の輪の模様が付いている。
そう、それは俺たちと融合させられたポケモンの四匹目――ブラッキーだった。

「・・・驚かさないでくださいよ・・。」
アメシストはまだ怯えているのか少し震えた口調で言った。
「別に驚かしてなんかいないじゃないか。ただオレは君の肩に前足を乗せただけだ。
 どうやら魂の状態同士だったら触れることも出来るみたいだな。」
「・・・・それを驚かしてるって言うんだよ。」
「まぁ、そんなことより、四匹目も目覚めたことだし、別にいいじゃない。」

「まぁ、助かるよ。俺以外は皆雌だったからな。」
俺はブラッキーの肩に手を乗せて、ほっと一息ついた。
今のところ、俺らアメシストと同化している奴の中で、雄なのは俺だけだった。
肩身の狭い思いをしていた俺にとっては嬉しいことだ。
しかし、ブラッキーは意外なことを言った。
「・・・・いつオレが雄って言った?」
「・・・は?」
ブラッキーは鼻で小さく笑って俺を見た。
「オレは雌なんだけどなぁ・・。」
「・・・は?」
意外なことを二度言ったので、俺も二回同じリアクションをしてしまった。
この暗闇の中にその真っ黒の身体が同化して顔がよく見えないうえに、一人称が「オレ」だからか、雰囲気は雄っぽかったのか。
だから皆完全に雄だと思い込んでいたのだ。

「何だ、まだ疑うのか?・・・・なら見るか?」
彼女は俺たちの中で、一番驚いているであろう俺の前に立ち、にやりと笑って言った。
「はぁ!?お前何言って・・」
もちろんいきなりそんな大胆なことを言われた俺は激しく動揺しだす。
そのもともと赤い顔がもっと赤く染まっていったのを、自分でも感じた。
目を合わせることも出来なくて、ただ俯いていた。
それを見て、ブラッキーは声を上げて笑った。
「くっ・・・ははははは!
 見せるわけないだろ?まったく、単純なやつだな。」

いつもの俺なら怒るだろう。もしかしたら飛び掛っていたかもしれない。
それは自分自身がよく知っていることだ。
でも今回は飛び掛らなかった・・・・いや、飛び掛れなかった。
屈辱感より恥ずかしさの方が勝っていたからだ。
もっとも、今まで雌に関わりがあまりないせいだろうが・・・。
「さてと・・・・まぁ、オレの名前はリチアだ、よろしく。」
ブラッキー―――リチアは何事も無かったかのように平然とした態度のまま、握手を求めてきた。
俺は俯いたままその握手に答える。
すると彼女はこう言った。
「何だ、もしかしてまだ恥ずかしがってんのか?ん?」
「うるせぇな!仕方ねぇだろ!?初対面なのにあんなことされりゃあ誰だって恥ずかしいだろうが!?」
むきになって怒鳴っても彼女に冷静にあしわられるだけだった。
畜生、性格の悪ぃ女だ・・。
その事が俺の中に深く根付いた。
「・・・・お似合いだねぇ。」
「そうね。」
メノウとカーネリアが何か言っていたが、完全に頭に血が上っていた俺の耳には届かなかった。

何とかそれも一段落つき、また少し歩くとすぐにパールたちのいるテントが見えた。
随分叫び続けたせいか妙に疲れが出始め、息が上がっていた。
アメシストは、今カーネリアが使っている身体に入った。
「んじゃ、私は寝るわ。おやすみぃ・・。」
さっきまでカーネリアだった身体は、アメシストに入れ替わる。
「私も・・・おやすみ。」
次にコーラルがアメシストの中で眠りにつき、続いてリチアも眠りについた。
「じゃ、俺も寝るか。」
もう瞼が重くて重くて辛かった。
俺はあくびしながらメノウに前足を振り、アメシストに中に入っていった。

「おやすみ・・・。」
草の擦れる音と、夜風の音に混じってメノウの声が薄っすらと聞こえた。
そのまま俺は重くなった瞼に抵抗するのを止め、ゆっくりと夢の中へ向かっていった。


何かあれば、遠慮なくどうぞ




トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.