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願い 01

/願い 01

作者 - ティア


 やっぱり、胸騒ぎと木々のざわめきが騒がしくなってきた...そろそろ向かわなければ間に合わない。私はそう思いながら森を抜け、だいたい10メートルはあるゴツゴツとした岩肌を踏み台にして駆け上る。
 そこから山肌に沿って、キュウコンの私一人がぎりぎり通れるくらいの道をゆっくりと歩み始める。そんな時、ふと駆け上がる時に見えた夜空を、今度はしっかりと見ることにした。

「...うん、雲が一つも無く綺麗な夜空ですね。こんなにも明るくて、寒くも熱くも無くて、過ごしやすい気候は初めて」

 つい昨日までの雨はピタリとやんで、湿っぽくも無い空気に地面の土は乾いて、しかも夜露も無いお陰で山肌を駆け上がる事が出来た。こんな日はゆっくりとしたいけれど、私には役目がある。感覚的にあのお方が眠る場所へ行かなければ行かない。
 何でかは分からない、けど今日はあのお方が起きてくるような胸騒ぎと、木々のざわめきに私はココに登って向かっている。確か先代から聞くに、今からお会いする方は人目に付かない、尚且つ秘境にて眠りに付かれていて、知っているのは先代と先代に教えてもらった私のみ。忘れているか不安でしたけど、身体が覚えていてくれて助かった。忘れていて聞こうとしても既に先代様はお役目を終えていて、聞く事が出来ませんからね...。
 私が今からする事は、先代様がやっていた、世界のあらゆる事を記憶して、目を覚ましている間はお守りしながら伝える事。とても重要であり、その方との時間は一週間と言うとても短いけれど、大切な時間。けれど短いながらに、出来事は簡潔に且つ退屈させてもならない。でも何から話せば良いかな...色んな事があって.........って、あれ?

「こ、こんなにも早く着いちゃうなんて。内容が決まって無いですし、心の準備も済んでない...」

 気が付いたら私は、まさに今からお会いする方が眠る洞窟が見えていて、あと5分も歩けば辿り着く位置を歩いていた。あはは、コレじゃ先代様と同じですね。
 先代様の心残りは出逢うまでに何も準備が出来てなくて、焦ってしまった事とおっしゃっていた。その事に先代様は私にはそう無いようにと酸っぱく言われたものだけれど、私も同じ事をしてしまいそう。でも、もう少しだけあの方が目覚めるのに時間がある。
 先代様が目覚めるのはお月様が真上に登り、この中の洞窟の真上から照らし出す事。その時間になるまでは大体...20分くらいはある筈。その時間の間に何を話すかを決めて...あ、どこに連れて行くのかも決めてない。そ、それは目覚めてからで良いとして、何があったか伝えるのが先...。
 うう...緊張で頭がグチャグチャ...けどそんな事は言ってられない。取り敢えず最初は八百年前に起きて二百年も尾を引いたあの事件をお話して、その後は.........あっ。じ、地面が光が出して、大地が鼓動し始めた...そんな、まだあの方が目覚めるまでまだもうちょっと時間がある筈。月だってまだ真上から...って、さっきまで1/3位しか見えてなかった筈なのにもう見えてる!?

 「なんで...なんでこんなに早いの!? あ...そっか、今回は冬に近い秋だから早いのですね。先代は真夏って言ってたから...ああ、完全にしくじっちゃった...」

 そう焦ってる間にどんどん光は強くなっていくし、繭状態のお姿が地面から...。確か地面から全部出た後は繭を持って、高い所に登ればいいのでしたよね。このお方が目覚めた事をみんなへ知らせる為に。

「よいしょっと...な、中々に重みがありますね。気を付けて上に行かないと」

 そこそこ重みのある紫色の水晶、アメジストで出来ている繭を背中に置いて尻尾で押さまえつつ、視界の中で一番高いところに駆け上った。上からの景色はとても綺麗で、場所によっては紅葉してたり、はたまた全くして無かったり...色々な表情なのが見て取れる。だけど、ちょっと肌寒い気がするのは季節的にしょうがないで...あれ、なんだかいきなり軽くなったような.........ってえっ!?

「うーん...くしゅん!」
「え、えっ...何も前触れもなく急に繭状態から...ジ、ジラーチ様、おはよう御座います」
「ふぇ? あっ、おはよう...うう、寒いよぉ...」
「ひゃっ!? きゅ、急に尻尾を...く、くすぐったいですって! 離して下さい!!」

 いつの間にかに繭状態から覚醒されたジラーチ様は、あろう事か私の尻尾に抱き付いてきた。まさかそんな事をするとは思ってなかったから、思わず振り落とそうとするところだった...。

「凄く寒いから嫌だよ...もうちょっとだけこうさせて...。あぁ...モフモフで暖かい...」
「ジ、ジラーチ様...何だか先代のお話と違って幼さが...。もしかして、早すひゃう!? ジラーチ様!」
「なーにぃ? ふふ、あったかーいっ///」
「っ!? な、何でもないです...///」

 ちょ、その笑顔は反則ですって...聞いてたギャップと違いすぎて、しかも可愛くて...なんだか母性本能的なものがくすぐられるような...で、でもこんなに話と違うなんて...。なんだか、明らかに幼い状態で生まれて出てきちゃったような...そんな感じがする。
 先代のお話ではもっと逞しいと言いますか、しっかりしているお方と聞いてた筈なのに。これじゃまるで子供のようで...もしかして、目覚めてしまった季節に関係が?
 うぅ、こんな時に先代が居て下さったらどんなに良い事か...っと言っても、くよくよしててもしょうがない。ジラーチ様は一週間後にまた深い眠りについてしまう。私はその間に寝て要らした間の事をお伝えして、護衛する事なのだから。それにしても...急に静かになったけど、あれ?

「あ、あのジラーチ様...ジラーチ様?」
「すぅ...すぅ...」
「あっ、寝ちゃってる。うーん、起こさないように動かなきゃか...んー、戻れるかな?」

 気が付いたらジラーチ様は私の尻尾に包まって小さな寝息を立てて寝ていた。なんだか遊び疲れて電池切れみたいな、感覚的にはそんな感じだった。私がまだ小さい頃も遊んでて急に寝出すことがあったって、先代が言ってたし。
 ...そんな事より、今の問題はどうココから移動するか。駆け上った崖を見下ろして、何処か良さげなところが無いか見回すけれど、どれも急な斜面だからかなり危ない。一応、肉球で滑って爪でブレーキ掛けるようにすれば安全には降りれるだろうけど、たぶん私の爪が欠けて持たないし、肉球もかなりのダメージで歩くだけで激痛が走るかもしれない。これから先一週間は移動かお守りしないといけないのに、動けないのは非常に不味い。
 だけど幸いにも私が居る場所はソコソコに足場が広いから、丸くなって寝ればどうにかはなると言う事。だったら星が近い所で、しかも綺麗な月が見れる特等席で寝てみても良いかもしれないと思ってみたりもしてしまう。若干肌寒い感じはあるけど、ジラーチ様は私の毛並みに包まれてれば大丈夫だろうし...そうしよっかな?

「すぅ...すぅ...」
「それに...こんな可愛い顔で寝られて、起こすわけにもいかないね。それに、急に眠くなってきちゃったし...ふぁぁ.........」

 ゴロンと横になると、意外と一気に睡魔が私を襲った。私はジラーチ様を少し強めに抱きしめ、頭を軽く撫でていると、いつの間に私の意識は夢の中に突入していた.........



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Last-modified: 2017-12-01 (金) 02:50:47
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