ポケモン小説wiki
赤い彼女五節

/赤い彼女五節

こんなのを書くのに随分頭をひねりました。

作者名:シャオルーク


彼女は俺を引っ張って迷路の様な路地裏の中を迷う事なく進んで行く。
おかしいな…地図にこんな通路書いてあった覚えはないのだが…
進んで行くにつれ、俺の覚えはやはり正しかった様に思えてくる。
綺麗に並んでいた家が段々と少なくなっていき、床にびっしり敷き詰められていたレンガは所々外れている道へと変わっていく。
「おい…いい加減どこに行くか教えろよ…こんな所に連れてきてどうするつもりだ?」
俺がそう言っても彼女は振り向いて微笑むだけ。
そんな余裕の表情で走り続ける彼女だが、逆に俺とラキはスタミナが切れてきて、息切れが激しくなってくる。いくら小さなペースでも長い間走り続けているからな…
「はぁ…はぁ……もぅ…いいかげ…ん…手だけでも…はぁ…離し…て…くれよ…はぁ…はぁ…」
俺がそう言っても彼女はペースをおとす事なく走り続ける。何故だか息切れ一つしてない。
馬鹿な…いくら自分のペースで走ってるからって、こんなに走ったら普通はかなりキツいはずだぞ…
「…はぁっ…しっ…んいち…いつまで…走んのさっ…」
「っるせぇ!俺の意志でどうにかなるかボっ…げほっ…げほっ……ぐぇほッ……」
「ははは!進一むせて…けほっ……けほっ…」
「お前…もむせて……る…だろが…はぁ…はぁ…」
比較的スタミナがあるラキでさえもかなりの息切れ。
でも彼女は漫才みたいな俺達のやりとりを見てくすくすと笑ってくる。だがやはり息切れしていない。
はっきり言って並外れた肺の持ち主としか思えない。
何でこんなにもスタミナがあるんだ…水泳部でもやってるのか?はたまた陸上部とか?もしかして吹奏楽部?
これらの部活をやっててもここまで息を切らさずにずっと同じペースで走り続けるのはいくらなんでも無理がありすぎるだろう。
一体何CCの肺活量の持ち主なんだ…彼女は…
そんな事を思っていると段々と辺りの景色が変わってくる。
綺麗に並んでいた家は姿を消し、何の手入れもされていない大地に雑草が生えているさみしい風景。
その先には俺達の行方を阻むかの様に俺の背丈以上もある大きな草むらが前方に大きく広がっていた。
そして草原の前まで来てようやく彼女が俺の手を離してくれた。
「…ぜぇ…はぁ…ぜぇ……やっと…かよ…でも…ここで何すんのさ…」
「…はぁ…はぁ……ボクもぅ無理…」
俺とラキは疲労のせいでその場にふにゃりと座り込んでしまった。
だが彼女は座り込んで息を切らしている俺達に、微笑みながら手で誘うように草むらの中に消えていった。
「…はぁ…来いって事か…?」
「……やめとこうよ…あの娘について行ったらろくな事が起こりそうにないよ…」
確かに動く気にもなれないし、ラキの言う事も一利ありそうな気もするが、ここまで走ってきて何も意味がないというのも腹が立つ。
「…でもここまで来て何もなしって方が嫌じゃねぇか?それにこの先にもしかしたら俺等の目当てのもんがあるかもしれねぇし。」
「それは…」
少し言葉が詰まるラキだが、立ち上がろうとする気配はない。
「…よし、行くか。」
「えぇ!?行くの!?やめようよ…」
だいぶ息が整ってきた俺は立ち上がり、草むらに入ろうとしたが、ラキが嫌がって来ようとしない。
「確かに嫌だけどそれ以上に気にならねぇのか?地図にも載っていない場所なんだ。もしかしたら本当にこの先にラティアスとラティオスがいるかもしんねぇだろ?」
「え〜…じゃあボクはボールに入っとくぅ…」
「ったく、ボールは嫌なんじゃないのかよ…」
俺はラキをモンスターボールにしまうと、1人で草むらに入っていった。
草むらの中は思ったよりも深く、全く辺りが見えない。
手探りで前に進んで行くと、段々と抜けた所の景色が見えてきた。
「…あ。」
俺が草むらを抜けると、そこには俺をここまで連れてきた女の子が立っていた。
そして彼女は後ろに広がっている林にまたしても誘うように入っていく。
「…ちょ、待って!」
俺はすぐに追いかけた。
道があるし、そんなに複雑な林ではないから迷う事はないだろう。

一方その頃、先程の草むらの中でその光景を見ている奴等がいた。
「おい、ほんとにあんな奴にやられたのか?」
「…るせぇ!だってあいつレウロシティの奴なんだぜ?」
「れ…レウロ?マジかよ…」
「ああ、でもレウロの奴だろうと関係ねぇ…俺等に喧嘩フっかけた代償はとってもらわねぇとなぁ。」
「へへ、取っ捕まえて袋叩きにしてやる…後で仲間全員集めて空から行くぞ。」
「空からか…俺の大好きなやり方だぜ……早く見たいねぇ…アイツのビビる顔…泣き顔…腫れ上がった顔がよぉ!」
「にしてもこんな所アルレにあったっけ?」
「地図には詳しく載ってねぇなぁ…ここまでの道筋も載ってねぇ。」
「じゃあ林の中までつけた方がよくねぇか?」
「いや、林は地図にも小さく載ってる。多分この大きさなら林っつー程でもない木の集まりだろ。空から行くんならつける程でもねぇよ。」
こんな会話が行われていたなんて俺は知るよしもなかった。
ましてやあとをつけられているなんて…

そして俺は林の奥に進むにつれ、先から大きな何かが見えてくるのが分かった。
だいぶ深くまで来ただろうか、だいぶはっきりと見えてくる。
「…え……?」
俺は目を疑った。目の前に現れたのはとても長く大きな塀があり、道をさえぎっているのだが、道の終わりには微笑んでいる彼女が立っていて、更に彼女の後ろには鉄柵の扉が塀についている状態で、扉の隙間から奥にも空間が広がっているのが分かった。
そして彼女は扉を開くと、中へと入っていく。
「…入って……いいのか…?」
俺は彼女に続いて恐る恐る扉を開いて塀の向こうへと進んで行った。
「…すげぇ……すげぇとしか言い様がねぇよ…ここ…どうなってんだ…」
俺は思わず立ち尽くした。公園…いや、庭か?なんと表現したらよいのだろうか…レンガを綺麗に敷き詰められた道が続いていて、奥には階段がついている小さな高台がある。更に高台の上には何か輝く物が見える。
「なんだろう…あれは……」
それにレンガの道の左右の景色には草原が敷地全体に広がっていて所々大きな木もあり、花も一杯咲いていて、アゲハントやバタフリーなどが飛び交っている。
それだけじゃない、小さな池もいくつかあって、余程綺麗な水なんだろう、水ポケモン達がとび跳ねたりしている。
ほんとにどこなんだろう…ここは……船から見たアルレ水島よりも美しい…美しすぎる…まさに楽園という表現がぴったりの場所。
俺はその美しさと驚きに心を奪われ、口をポカン開けたまま暫く立ち尽くしていた。
「…地図にこんな場所は……一体どこなんだ…ここは…」
暫く辺りを見渡しながら歩いていた俺だが、ふと目を前にやると彼女が立っていた。
「君…ここは…どこなのさ?」
俺がそう言うと、彼女は息をすぅ〜っ、と吸い込んで、ゆっくりと目を閉じた。
するとどうした事だろうか彼女の体が光に包まれる。
次の瞬間、光の中から現れたのは得体の知れない生物だった。
だが、どこかで見た気が…
「……ッ…!!」
そうだ…アルレ水島港の市場で売ってあったラティアスとラティオスを模した赤い方の置物だ……
だがやはり置物と違って随分違う体の形をしていた。
ツンとのびた耳、長い首、真っ直ぐ綺麗にのびた翼、そして黄色の大きな瞳。
この生物は呆然としている俺を見ながらニコニコと笑っていやがる。
「まさか…でも……え…そんな筈は…」
俺は驚きの連続で頭はパニックを通り越して真っ白になっていた。
そして真っ白な頭の中にふと浮かんだ馬鹿な思いつきが…
「……そうか…俺はまだレウロシティの家にいて…布団の中にいるんだ……更にその夢の中のお話なんだよこれは…はは…ははハはハはハハはッ……そうだよ楽園に来たと思ったら今度は女の子が何か変な生き物に変身?…おかしいよな…うん、おかしすぎる…フはハハはハはッッ…!夢から覚ましてっ……!!」
壊れた俺は溢れ出る涙を流しながら思い切り自分の揉み上げを引っ張った。
「いッてえぇぇぇ!でも夢でも痛い時ってあるよな!?あるよね!!?ハハはハハははッッ!!?」
完全にぶっ壊れた俺は大粒の涙を流して大笑いしながら揉み上げを引っ張り続けた。
「もぅっ!何言ってんの夢じゃないよ!」
「ははは……へ…?」
俺は前の生物の言葉でやっと正気に戻った。
「君…喋れんの?」
「だってそれつけてるじゃない。」
生物は俺が耳につけているインカムを指差す。
「…あ、君ポケモンなんだ……」
「うん!私種族はラティアスで、名前はリム!よろしくネ!」
「あぁ、ラティアスのリムね。うん、よろし……ラティアスッッ…!!?」
俺は目の前で起こっている事を必死に心の中で整理しようとする。
まず、女の子を輩から助けた。
そしてその女の子にここに連れてこられた。
その女の子が目の前で突然変な生き物に変身。
自分をラティアスだと言う。
……………
………

駄目だっ!整理しようとすればする程頭がッ…
俺はまたしても頭が爆発しそうになってしまう。
「…やっぱり……夢…」
「も〜!ちゃんと説明してあげるから落ち着いてよ!」
「なら早く説明してくれよ!俺もぅ限界だよ!」
色んな事がありすぎた俺はもぅ疲れて涙が止まらなかった。
「ン〜っとねぇ…兄さんを呼ぶから待ってて。」
「は…?兄さん……?」
俺はまた面倒臭そうな単語を聞いて涙を流し続けるしかなかった…


赤い彼女六節[グ?]へ続きます。


またしても微妙なところで終わってしまいましたが、感想や指摘があればお願いします。

シャオルーク



トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.