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花束の夜空 ―向かいの人―

/花束の夜空 ―向かいの人―

赤いツバメ ?です。

花束の夜空 ―心のお日様―の続きです。




お店の鈴の音が鳴ったのでお客さんが来たみたいです。しかし主人の声が聞こえず静けさが周りを包んで・・・。ご主人はお店にいないのですか?
・・・・・・いないのかな、少し私が見てきましょう。

ご主人が私用に付けてくれた低い位置にあるドアのノブに手を掛けドアを開き、お店へ出ました。そこはとてもいい香りのする花一面の空間。
お客さんが来たみたいですけど、ご主人はどこにいるのかな・・・。
と、店の中を歩き回ろうと思ったときガサガサと花が動きました。奥にだれかいるのでしょうか。
もしかしたらお外に行っていたご主人が帰ってきてお花の手入れをしているのかなと思った私は、動くものに近づいていきました。
そして私は目を疑う光景を目にしました。まだ眠かった私は一瞬で眠気が吹き飛んだかのように。だってそこにいたのは・・・
「クレス君っ!?」





・・・?
ここは・・・二階の部屋?・・・ベッド・・・・・・
どうやら私は夢を見ていたようです。外からは朝の日差しで部屋を明るくし、鳥さん達の元気な声も聞こえてきます。
いつもと変わらない朝・・・ではなかったです。

「リーフィア、ご飯よー」
まさかクレス君が夢に出てくるなんて・・・飛び起きちゃいましたね。
驚きすぎちゃってまだ胸がドキドキしてます。
クレス君・・・。

「リーフィアー?」
私は我に帰りご主人に大きな返事をしながらベッドから降り階段を駆け下りていき、ご主人のいる元まで行くと
そこにはテーブルの下に私の朝食が置かれてありました。
ご主人は仕事に行ったのか姿はありませんでした。あれ、さっき・・・じゃなくて夢の中でもこんなことがあったような・・・。
気のせいかな・・・まあいいや、ではいただきます。
最初にミルクを飲もうとしたとき、おかずの方に妙なものがあるのを発見しました。
カボチャ・・・!
い、嫌なのです!カボチャは嫌いです。の、残します。
しかし、私は残すに残せませんでした。さっきここに来たときには気付きませんでしたが食器の隣においてある紙切れに
『カボチャ食べたらモンブランあげる』
と書いてありました。モンブランは私の一番といってもいいほどの大好物なのです!最近全然食べてないので、思い出すと余計に食べたくなってきました・・・。
し、しかしカボチャはあぅあぅになります・・・でも、モンブランは食べたい・・・。そうだ!ご主人がいない今、カボチャが無くなれば私が食べたことになります。
ご主人がいないうちにこのカボチャを無くせば・・・。
いえ、ご主人のことです。今も私が気付かないところで見ているかも・・・。
それに捨てたり隠したりしたのが見つかると、もうモンブラン食べさせてもらえなくなるかも・・・。
ぅぅ、食べなきゃいけませんね・・・モンブランのために。
私は一番最初にカボチャを食べることにしました。早くカボチャを解決したいからです。
覚悟を決めて、そのおかずごと一気に平らげます!

・・・!!
あぅあぅ!!涙が出ているのか目の前が曇って・・・あ、あぅあぅ~!
すぐさま食べ終えミルクで口直し・・・そのミルクががカボチャの嫌な味と変に混ざり、更にあぅあぅが増しました!
私はしばらくその場で悶えていたと思います。


ようやく苦戦した朝食を終え、ソファーの上でゆっくりして丸まっていると
お店の方から《カランカラン》とまたまた出入り口の戸の開いた音が響いてきました。さっきもお客さん来ませんでしたか?思い違い・・・だったのでしょうか。
・・・ご主人はお店にいないのですか?何も聞こえてこないのでとても静かなのです。
・・・・・・いないのかな、少し私が見てきましょうか。
耳鳴りが聞こえそうなほどの静寂を、私はソファーから降りる音で破りお店へ向かいます。
ご主人がこのお家を建てるときに、私のために付けてもらった限りなく床に近い位置にあるドアのノブに手を掛けドアを開き、お店へ出ました。
そこはずっと嗅いでいても飽きないようなとてもいい香りのする花一面の空間。
えーと、お客さんが来たみたいですけど、それともご主人だったのかな?
とりあえず店の中を確認しようとしたそのとき、ガサガサと一部の花が揺れました。奥に誰かいるのですか?
誰にせよ確認しないといけませんね。泥棒さんだったら大変です。
私は動くものに近づいたそのとき、見えなかったお店の角から突然目の前に何かが現れました。
「ふみゃっ!?」
「わあっ!?」
反射的に私は飛び退いていました。
あまりに驚きすぎてまだ残っていた眠気は完全になくなった様です。
そして何者かの正体は・・・。

「イグニスさん・・・!び、びっくりしましたよ。」
そこに立っていたのはイグニスさんでした。
気持ち良さそうなもふもふの毛をもつブースターさんです。

「こ、こっちこそ驚かされましたよ・・・」
彼もまた相当驚いたようですね、目を丸くしてもふもな毛を逆立てています。
「ごめんなさい。姿も見えなかったから誰だかわからなくて・・・。」
「あ、いやいや・・・謝るのは俺の方ですよ。やっぱり・・・遊びに来るの急すぎたかな。昨日話したばかりなのに迷惑ですよね。」
なるほどです。イグニスさんは遊びに来たのですか。
「とんでもないですよっ。私も引っ越してきたばかりでお友達がいませんでしたから、毎日時間をもてあましていますよ。
 全然迷惑じゃないのです。あ、えと、いらっしゃいませです・・・なのかな?」

イグニスさんが笑ったのです。何故笑ったのですか?
私から何か話題をふらないと・・・、イグニスさんの性格なら黙ったままになっちゃう予感がしました。
「あ・・・私は暇なときはこのお店のお手伝いをしたり、お散歩して過ごしますがイグニスさんはどんな事しているのですか?
 えと、イグニスさんの事を全然知らないので。」
「・・・特には。」
「何もしてないのですか?そんなことないと思いますが・・・何かやるとしたらどんなことを?」
彼は首を傾げながら深く考えているようです。そんなに思いつかないものなのですか・・・?
「・・・う~ん、散歩かな。」
それでも考えて出したらしい彼の返事は散歩という短い答えでした。しかし私は散歩をすると聞きとても嬉しい気持ちになりました。
お花も好きだそうですし何かと彼とは趣味が合いそうな感じがしたので、早速ながらお散歩に誘ってみることにしました。
「あ、お散歩ですか、じゃあ今日イグニスさんの時間があいてましたら・・・お出かけしますか?いいお天気ですし、ここに来て初めてのお友達がイグニスさんですし色々お話したいです。」
「え・・・今から?」
今度は驚いたのか再び目を丸くしちゃいました。先ほどから色々な表情をなされていますね。
それにしても、こうやってまた近くでイグニスさんと会ってみると・・・優しい上にとても整った顔立ちで・・・ちょっとかっこいいです・・・。
それと、不思議とこの街で出会う前に以前会ったことのあるような感じがしてきましたが、そんなはずないですよね・・・。

「リーフィアさん?」
「あ、はいっ。イグニスさんが宜しければっ」
わ、私、今少し彼に見取れてました。気付かれていませんよね?大丈夫ですよね?
「いいですね。」
彼の返答はやはり短いものでしたが表情は微笑んでいました。二階の窓から見せてくれた口元の僅かな変化しかない笑顔とは違う
とても明るい笑顔だったので、また少しその笑顔に見取れてしました。その微笑み方を見て私はまたまた不思議な感覚を覚えました。
そのとき外からご主人がお店に入ってきました。どうやら外に並べてあるお花達のお世話をしていたみたいです。
「おはようリーフィア、あら?向かいのブースターちゃんじゃない。リーフィアったらもうお友達になったのねー。」
私の予想では、もう少し関心をもって構いに来てくれると思ったのですが、忙しいみたいで奥に行ってしまいました。
ご主人が見えなくなったのでイグニスさんに向き直ると、じ~っと私を見ていたようです。私と目があった瞬間に下を向いてしまいました。
私に何か付いていたのですか?それから彼は何故か暫く下を向いたままでした。
「えっと・・・どこに行きましょうか。私、このあたりもあまり良く知らないんで。」
私がそういうと彼は顔を上げ、耳をピンと張り明るい声でいいました。
「じゃあこのあたりで良いところを案内しますよ。」



それから私は彼に散歩ついでということで、この街周辺を案内してもらいました。
彼のお話によると数年前までこの商店街はなかったみたいです。言われてみればどのお店もまだまだ新しい雰囲気がします。
そもそもこの街自体も新しいそうで、丁度私たちが生まれた頃に街が大きくなり始め活気も出てきたみたいです。
イグニスさんはずっとこの街で暮らしており、商店街ができた当時をまだ覚えているみたいで、そのときはまだイーブイだったそうです。
じゃあそのときも私はイーブイだったわけですね。ちなみにイグニスさんは私より一つ歳上だそうです。

私たちは街の外までの道のりを歩き回ったので、結構長い距離を歩いたはずです。今は街のはずれにある河川に来てしばらく休憩です。
それにしてもここは空気が比較的澄んでいてとても落ち着ける場所ですね。
イグニスさんはといえば・・・ここの芝生の上で丸くなって座っています。私も少し横になろうと思います。
実際横になってみると芝生の匂いがとても気持ちいいのです。青空を見上げれば雲が一つもなくなっていました。気温もだいぶぽかぽかして暖かく・・・なんだか眠くなってきちゃいます。
しかし隣にお友達になったばかりのイグニスがいると思うと、少し嬉しくなって小さな眠気が消えちゃいました。
おや、あれは・・・ニワゼキショウが咲いていますね・・・。
ニワセギショウとは何かってですか?春に咲く野花のことですよ。綺麗な紫色のお花なのです。
そよ風に揺られてお花も心地よさそうです。とても良い場所で生まれて良かったですね。
それがイグニスさんを見ようとしたときに芝生の間からうっすらと丁度彼と重なって見えました。
そんな彼はいつ見てもとってももふもふで・・・あれ、イグニスさん寝ちゃってます?
立ち上がって彼の近くまで行ってみると、目を閉じて静かに寝息を立てていました。えーと・・・どうしましょうか。
私もお昼寝しちゃいましょうか。でもその間に彼が起きてしまったら申し訳ないですし
「リーフィアさん?」
「ふぁあ!」
あぅぅ、彼に驚かされるのは今日で二回目です。目を離した一瞬で起きましたね。
「ごめんなさい。寝ちゃいました・・・。」
彼は顔を前脚で顔を擦り・・・あれ、今の顔の擦り方、どこかで見たような・・・私じゃないですよね。
「いえいえ気にしないで下さい、こんなに良いお天気なら私も眠くなっちゃいますよ。それにイグニスさんが寝られたのは、ほんの少しの間でしたし」
「そうですか・・・。あ、これからどうします?」
今日は朝から歩き続けていたので少し疲れてきちゃったのも本音です。イグニスさんの歩くペースが私と比べて少し速かったのです・・・。
「そうですね、もうちょっとここでお話しませんか?イグニスさんのことをもっと知りたいので。」
彼は何故か照れくさそうにして頷いてくれました。

それから私たちは暫く芝生の上で河川を前にお話していました。どのくらいの時間だったでしょうか、三十分くらいはずっとお喋りしていたと思います。
イグニスさんは街のお友達より、意外にもこのあたりの山に住んでいる野生ポケモン達に知り合いが多く、お互いに戦いの腕を磨いていたりしているそうです。どうやら明日、丁度その人たちに会いに行くそうです。
野生ですか・・・。あまりよく知らない人たちなのです。確かに私にも前に住んでいた地域で野生の友人は一人くらいはいます。牝のマグマラシさんでした。
生まれたときから人間と共に生きている私のようなポケモン達にとっては、次元が違うと行って良いほどに生活が異なっていることを彼女との関係を通してよく分かりました。
最初、彼女と出会った頃は戸惑いを感じましたが、次第にお互いの生活の違いを話し合っているうちに仲良くなった人です。
それから彼女は決まった日数を開けて会いに来てくれるようになったのですが、ある日前触れもなく姿を現さなくなってしまい、それ以来一度もあっていません。
急に来なくなってしまった理由は今もわかりません。何故でしょうね?
ともかく人間と住んでいるポケモン達はあまり野生のポケモン達とは関わりがなく、飼い主側もトレーナーでもない限りは自分のポケモン達に「野生のポケモンには関わるな」と、きつく言っています。
マグマラシさんは生活以外は違いを感じさせないとても楽しい人だったのですけどね・・・。
気づけばもう夕方になってしまいました。そろそろ帰らないとまた家に着いた頃には暗くなってしまいます。
しかし夕焼けが川をオレンジ色に輝やかせとても綺麗で、もうちょっとこの景色をみていたいですね。

「多分、リーフィアさんが住んでいた土地よりこの街の冬はとっても暖かいですよ。寒いことは寒いですけど・・・
 気温もこっちの方が高いみたいだし、なにより街が賑わってるから暖かい気持ちになれるんですよ。」
私と同じように川を眺めていた彼に目をやると、また、彼の姿も夕陽に照らされて神秘的な感じがしました。
「ホントですか?寒いのは大の苦手でして・・・冬場は僅かの気温の差でも私にとっては大きいのです。
 気温が高いとなると、ちょっとでも安心ですね。」
イグニスさんって意外にも感傷的なところもありそうですね。なんとなくそんな感じがします。
私たちの影が段々と伸びるにつれて、すぐそばにある橋の上での車の交通量も多くなってきました。この時間帯は皆がもうお帰りの時間なのですね。

「じゃあ、そろそろ帰りますか。」
そう言ったのはイグニスさんでした。まるで私の考えていた事がわかったかのようなタイミングでしたね。
「そうですね。あの、ひとつお願いして良いですか・・・」
「あ、はい、なんですか。」
「イグニスさんとは三日前までは初対面だったのに、今では沢山お喋りできるお友達になれましたのです。ですから・・・
 えっと、敬語はやめませんか?もっと気軽にお話できるようにしたいですし。」
彼は少し驚いた様な表情をしてから、照れくさそうに頷いてくれました。
「じゃあ・・・帰ろうか、リーフィア。」
「うん。」
あ、なんだか懐かしい感覚ですね・・・。いえ、何でもないです。
私はちょっとぎこちない返事をしてしまいましたが、イグニスさんが快く承知してくれて嬉しかったです。


帰りの道中、空は薄暗くなっていき予想したとおりアーケード街に帰ってきたころには空が真っ暗でした。
また帰りが遅くなってしまったのでご主人に申し訳ないです。でも今日のイグニスさんとの散歩はとても楽しかったのでそれでも短く感じちゃいました。
私たちはお互いの家が真向かいなので私たちは家の前で別れました。
お店の玄関に入ると、お花の良い香りが私を包んでくれます。どうやらご主人もまだお仕事中のようです。
外を振り返ってみると家の中に入っていくイグニスさんらしきもふもふな尻尾が玄関に一瞬見えました。
「あ、リーフィア、おかえりー。」
ただいまなのです。ご主人は・・・アレンジメントを制作をしているようですね。これは是非作っているところを見たいです。
私はご主人の所に行きましたが、レジのテーブルの上で作業していて良く見えなかったので思わずテーブルに乗ってしまいました。
「こらこらリーフィア、大人しくしてなさい。」
あぅ、だって見たいのですもん。大人しくしてますから見てても良いですよね?
「何日か前にこの街に住んでいるお客さんからね。ブリザーブドフラワーのボックスアレンジの注文が来て今それを今まで作ってたの。
 春のお花が詰まった小さなボックスをお家のに飾りたいんだって。何個か作るけど今は一つできたところ。はい、見ても良いけど触らないでね。」
ご主人は私の目の前にできあがったばかりのボックスフラワーを置いてくれました。
ブリザーブド・・・。確か長い間お花を保存するときに使う方法だとつい最近ご主人に教えて貰いました。
詳しくはわかりませんが、専用の溶液に浸して作るものだとか・・・。ではここ数日で乾かしていたということでしょうかね。
その小さな箱をのぞき込むと、可愛らしいピンク色のカーネーションを中心としたお花が綺麗に詰めてありました。
箱の中心には大きめのバラが1輪。それを囲むようにカーネーションの仲間であるスターチェリーといった少し小柄で星形のお花が詰めてあります。
このスターチェリーは最近私のお気に入りのお花なのです。星形のお花は他の種類にも少なくありませんが、このお花はひと味変わった星形をしていますから。
一番外側は真ん中のバラと比べると四分の一の大きさにも満たない、よく見るスタンダードなカーネーションが内側にあるお花達をさらに囲むように並んでいました。
ご主人のアレンジは色々見させて貰ってきましたが、中でもこのボックスは今までで一番惹かれました。この中に収まっているお花達の色はピンクで統一されているにもかかわらず
赤に近い色と白に近い色のグラデーションを作っているので、遠くから見るとおそらく大きな一輪のお花に見えるのでしょう。本当に可愛くて素敵な箱ですね。
「あれ、そんなに良かったの?それ。」
どうも私が随分見入ってしまっていたようでした。
私はご主人に笑顔で一鳴きしてもう一度箱に目をやりました。やはり私はこれが気に入りました。
「う~ん、じゃあリーフィアにも今度作ってあげるね。」
ホントですか!とても嬉しいのです。私は思わず耳をピンと伸ばし軽く飛び跳ねてしまい、ご主人に叱られちゃいました。
それからご主人はまだ他にも今日の作業が少し残っているみたいで、先に私の夕食を出してくれました。
今日の夕食は夕食用ポケモンフードにご主人の作った簡単なおかずです。頂きます。
因みに「朝食のカボチャの件の約束」とさっきご主人に言われて首を傾げてしまいましたが、モンブランのは明日のおやつに出してくれるそうです。忘れてた・・・訳ではありませんよっ。
苦労して得たモンブランです。決して忘れてたわけじゃ・・・。


今私は屋根の上にいます。
ここでいつもと同じように一日を終えることにしましょう。気温もこの夜景も変わらず心地よいです。
今日はちょっと急でしたが向かいのイグニスさんとお散歩に出かけ、とても楽しい一日になりました。
出会って一週間も経っていないのに出かけるほど仲良くなれるなんて思っていませんでしたね。
そういえばイグニスさんの印象は出会った頃とはちょっと変わりました。無口と思いきや結構楽しくお話しできるし、トレーナーのポケモンにしてはおっとりとした性格だと思います。
優しい上に強いだなんて本当の意味で頼れるポケモンなのでしょう。既に彼には助けられた事もありました。
その彼はすぐ向かいのお家にいつもいる。そう思うといつでも会えるような気がしてちょっと嬉しいです。
ん、そよ風が気持ちいいです。夜のそよ風には昼とはまたひと味変わった雰囲気があっていいですね。
・・・そろそろ戻って寝ましょう。

私はベランダに降りて部屋に戻り明かりを消してからベッドに転がりました。こうやってベッドで横になって気付きましたが今日はとても疲れましたね。最近は充実した日常を送っていましたし、今日は特に長い距離を歩きました。
ご主人はまだ部屋に来ていませんので、まだまだ起きているのでしょうか。お休みなさいなのです。
疲れている私が横になると再び立つことは難しいです。すぐに睡魔の誘惑に負けてしまうので・・・。
明日はゆっくり休もうかな・・・。
そう思いながら私は目を閉じていました。


真っ白な空。曇り空ですね。
天気予報は晴れのち曇り。朝は晴れていましたが、あの山の向こうから雲が段々と流れてきて今では真っ白ですね。なぜ山の方向から雲が流れてきたかわかるかというと
朝から部屋でごろごろしていましたからです。ただいつ頃からかずっと空を眺めていました。今日は特にやることがないのです。押し花は毎日やる事でもないですし、お花の手入れも終わりました。
何もすることがない日は特に珍しくもないですが、最近充実した日々が続いていたので今日みたいな暇な日が訪れると、ぽっかり穴が開いた気分ですね。
何もしていないと時間が長く感じてしまいます。時刻はやっと二時半を回りました。
昨日の今頃はイグニスさんとお散歩中で丁度河川に着いた頃ですかね。昨日はあっという間と感じるほど楽しい一日でした。
イグニスさんは、私とクレス君と同じイーブイの進化系です。クレス君は触れると冷たいグレイシアでしたが、イグニスさんはブースターで、私が怪我を負った際背中に乗せられて感じましたがとても温かかったです。
間逆ですね。でも考えてみるとイグニスさんとクレス君って何処か似てるような気がしてきました・・・。

そのとき私はイグニスさんと出会ってから度々感じていた、何か引っかかる違和感の正体に気付きました。
イグニスさんとクレス君は性格がそれほど似てなくとも、何かが似ている。それは仕草がとても似ているのです。
微笑み、不思議そうな表情、眠そうな仕草までもが殆ど同じと思える程に。思い返してみれば他にも思い当たることがあるかもしれません。
なぜ最初見たときに気付かなかったのかはわかりません・・・。
不思議な偶然ですね。

それから私はベランダに出て、何も考えずに、いえ、何も考えないといったら嘘になりますね。何かを思っていたのでしょう。しばらく外の空気にあたっていました。
イグニスさんは不在のようです。雲がやってきた方向の山に住む野生のポケモンさん達に会いに行ったらしいです。
「リーフィア~、おやつ置いておくね~」
普段よりちょっと静かめなアーケード街を眺めていた私に、ご主人の声が聞こえてきました。私はすぐにベランダを後にし階段を降りました。
ご主人は既にお店へと戻っていったようです。
食卓の下に行くとそこには小さなモンブランが置いてあり、一見変ったお花にも見えますね。実は昨日からこれを楽しみにしていました。
私の大好物、いただきますなのです。
小さな私の口が、螺旋状のクリームを少し削ると、私の口の中に甘さが広がっていきました。
やはりモンブランは世界で一番おいしいのです。更にもう一口。
そういえば、引っ越してきてからモンブランは初めて食べますね。となると最後に食べたのは引っ越す前です。
最後に食べたのは・・・。
ご主人とクレス君と私。三人で食べたあの日を思い出しました。
引越しが決まりクレス君としばらく会わず、彼が心配して何度も私を尋ね、それで私はようやく会うことを決心した引越しの前々日のことでした。
ご主人はクレス君を家に寄せ、ご主人が一緒に食べようと出したものがこれですね。
コンビニのものらしく今、冷蔵庫の横にあるテーブルに置いてある容器のパッケージも確か同じものだと思います。
彼の頬にクリームがついていて、とってあげましたっけ。妙に懐かしいですが、これもたった三ヶ月前のことなのです。

クレス君・・・あれからモンブラン食べたかな?私がモンブランが大好きなのは彼も知っています。しかし彼からは好物だとは聞いていませんでした。
もし彼がモンブランを食べたとしても、あの日のことを私のように思い出すでしょうか・・・。
ごちそうさまでした・・・。綺麗になった皿はどことなく悲しいです。
それから私は、また部屋に戻り何もすることなく一日を終えました。

次の日も同じように特にすることもなく、何かやったことといえば短いお散歩をしてました。しかし変ったことはなく一日を終えました。
その日はイグニスさんとまたお話でもしようかと訪ねましたがどうやらその日も不在だったようです。

そしてまた次の日、イグニスさんとお散歩に行って二日が経っていました。天気は・・・あまり良いものではなく雨の予報になっています。
この二日間で私は彼に対しての好意を抱くようになりました。それはこの街での最初の友達としてです。
友達になってまともに一日しか付き合っていないので、色々と話したいことが沢山ありました。
そして昨日と同じように彼を訪ねると、彼が出てきてくれ、私は少し安心して話しかけようとしましたが彼の方から話しかけてきました。
「ごめん・・・今日と明日、また出かけるんだ。また二日後でもお話しようよ。」
二日前の彼とは少し雰囲気が違いました。ちょっと急いでるようにも見えましたがどうやら違うようです。
「どうしたの、また山に行くの?」
「うん。」
彼は短く答えながら私の横を通り過ぎました。ですから私も短く彼を送りました。
「そっか、じゃあいってらっしゃい。また今度お話しようね。」
気になることに、彼の体毛には艶がなくなっており、見間違いだと思いますが小さな傷跡が所々に見えました。
明日も会えないとなるとちょっと寂しくもなりますが、仕方ありませんね。
そういえばベランダのお花の手入れをするのを忘れていました。私が家に戻ろうとしたとき、鼻に冷たいものを感じました。見上げてみると・・・雨、降ってきましたね・・・。

イグニスさん平気でしょうか・・・。
彼の様子が二日前と比べると少し違っていたのと雨の中、山へ行く彼が心配になりましたが
その彼のもふもふな尻尾は今では小さくなっていて、私はそれを見えなくなるまで見送ってあげました。


途中保存です。更新おくれて申し訳ないです。
何かあれば気軽にどうぞ





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Last-modified: 2012-11-11 (日) 00:00:00
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