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絆〜遠い日の約束 四日目 夜

/絆〜遠い日の約束 四日目 夜

作者:COM


―――『思い出した…全て……全て!!』
「サカキィィ!!!てめえだけは絶対に許さねえ!!」
起き上がると共にそう叫んだ。
「遅い!いつまで寝てるつもりだ!!こちとらお前を守りながら戦っとんのじゃい!!」
ブレイズが起きたレイに一言、大声で叫んだ。
「レイさん!起きたんですか!というか、あいつを知ってるんですか?」
一人が聞いてきた。
「ああ、正確には今、全て思い出したんだが、あいつはサカキ、ポケモンを道具としか思ってない最低な人間だ。」
意識もはっきりし、落ち着いて周りを見渡すと、こちらがかなり押されていた。
「やばそうだな…十万ボルト!!」
一気に薙ぎ払いながら電撃を打ち、攻め込んでいたポケモンを全て押し返した。
「ちっ!…動き出したと思ったら、またでたらめな強さを…」
隊員が呟く。
「行くぞ!ブレイズ!一気にケリをつける!…ってブレイズ…ブレイズ……」
「どうしたんだレイ!さっさと終わらせちまうんだろ!」
そこで綺麗に思い出し、あまりの嬉しさに戦いの最中だということを忘れて、ブレイズに飛びついた。
「ブレイズ!ブレイズなんだな!うわ~懐かしい!…!!ゴメン!あの時、一人で消えて…」
一気にレイが喋り始めたため、ブレイズは混乱している。
「どうしたんだレイ!というか俺はお前を知らん!」
「知ってるさ。ブレイズ、かわらずの石はまだ持っててくれてるか?」
そう質問すると、ブレイズの表情が一変した。
「!!なんで…お前がそれを知ってるんだ…?」
「僕の思いは変わらずにあり続ける。俺がかわらずの石に込めたおまじないだ。」
そう言った途端、今度はブレイズが飛びついた来た。
「ウワァ~~!!レイさん!!まさかもう一度会える日が来るなんて…」
それを見ていた隊員が
「なんだ?あいつら…ぶっ壊れたのか?」
そう呟いた。
「いいよ!今まで通りレイで!しかし、こんな形での再会ですまない。」
「いやはや…まさかポケモンに生まれ変わってるとは…」
それを見ていたこちら側のポケモンも
「お二人はどこかで知り合ってたんですか?」
と質問してきた。
「知り合ってるも何も…」
「俺とレイは最高のコンビだ!」
そう言い、今度は二人で飛び込んだ。
「俺が指示を出しながら戦う!今度は同じポケモン同士、共闘だ!」
「了解!」
一気に二手に別れ、挟み込むようにして立ち、
「ブレイズ!広範囲(ワイド)!かえんほうしゃ!!」
そう指示を出すと、火炎放射を流し打ちし、広範囲を焼き払った。
「そのままでんこうせっか!!」
ブレイズは最後の旅で共に戦った仲間。故にもっとも共にした時間が長いためいろいろな指示を出すことが出来る。
「くそっ!まずはそのバシャーモを止めろ!ポチエナ!かみつき!!」
その指示を受け、真っ直ぐブレイズに突っ込むポチエナを見て
「ブレイズ!回転(ロール)!ブレイズキック!!」
ポチエナの後ろに回りこむように回転し、そのまま回し蹴りの要領でブレイズキックを当てた。
「なんだあの動きは!?いったい何があった!!」
完全に隊員はその動きに動揺している。
その隙を見て、レイも電気を溜めながら
「ブレイズ!もう一度でんこうせっか!!」
その指示を出し、
「十万ボルト!!」
レイはレイで丁度ポケモンとトレーナーが密集しているところに電撃を打ち込んだ。
「貴様ら!何をやっている!ちっ…!まあいい、せいぜい時間稼ぎをしておけ、俺はアブソルの回収に向かう。」
そう言い、サカキは闇の中へと消えていった。
『アブソルの回収…?まずい!キッシュが危ない!!』
「ブレイズ!一点(ピンポイント)!かえんほうしゃ!!」
「十万ボルト!!」
二人の攻撃を全く同じ位置でぶつかり合わせ、大爆発を起こさせた。
「ブレイズ!みんな!キッシュ達が危ない!」
そうみんなに伝えると、
「だったらさっさと行きな!ここは俺達に任せろ!」
とブレイズが言った。
「この中で一番強いのはレイさんなんですから!」
「それに、キッシュさんの前で一番良いカッコしないといけないのは、彼氏のあんただからな!」
「こっちは気にせず、キッシュさんのことだけ気にしてな!」
と、口々にみんながレイを励ますように言ってくれた。
「分かった…絶対にキッシュを…みんなを守ってくる!」
そう言い、電光石火を使い、一気に森を駆け抜けていった。
『おおよその場所は分かっている…だったらあいつらより先に行けるかもしれねぇ!!』
その頃、森の中の草原にみんなは集まっていた、いや、追い詰められていた。
「気張りなさいよ!オス達!私達も援護するわよ!」
既に囲まれ、一歩も動けない状況だった。
が、全員必死に抵抗していた。
「みんな……わたしも戦う!」
キッシュが思い詰め、考え抜いた末、そう言った。
しかし、
「何言ってるのよ!あなたレイに一撃でやられてたじゃないのよ!」
「違うの!あれは演戯で…」
そう言い返したが、
「わざわざ演戯でやられる必要ないでしょ?いいからあなたはレイを待っててあげなさい。」
そう窘められてしまった。
『わたしが戦えば…確実に戦況が変えられる…でも、もしもあの時みたいになったら…』
キッシュは一人葛藤し、悩んでいた。
「畜生!なんだってんだ!よってたかって攻め立てやがって!」
「こんな所で死んでたまるか!」
だんだんと劣勢になり、戦っているオス達が危ない目に遭うことが多くなりだした。
『迷ってる暇は無い!今はわたしが戦わないと!…信じてるよ…レイ…』
戦っているオスの内の一匹が追い詰められ、
「これで終わりだ!死ねぇ!!」
そう言いながら、ヘルガーが口に炎を溜めた。
オスが死を確信した時、横から冷凍ビームが真っ直ぐヘルガーを貫いた。
「ぐあぁぁぁ!!畜生!誰がやりやがった!」
しかし、それに返答することなく、そのまま体当たりで追撃し、吹き飛ばした。
「キッシュ!?君がやったのか?」
「下がってて!わたしが何とかする!」
そう言い、前線に立っていたのは紛れもなくキッシュだった。
「何してるの!危ないわよ!」
メス達が慌てて叫ぶが、
「メスだろうと容赦するか!死ねぇ!!」
近くにいたアーボックが飛び掛ってきた。
「かえんほうしゃ!!」
一気に炎を溜め、アーボック目掛けて撃つと、その衝撃でアーボックは吹き飛んでいった。
「ロックオン!」
そう言い、敵だけをロックし、
「でんきショック!!」
無数の電撃を一気に飛ばした。
味方のポケモンを全て避け、逆に敵のポケモンには全て命中した。
「すげぇ…キッシュってあんなに強かったのか…」
と、みんなが驚いていた。
「みんな下がって!少しの間わたしが戦うから!みんなはその間に回復して!」
そう指示したが、
「あいつだ!間違いない!あのアブソルを集中して狙うんだ!」
と隊員のうちの一人が気付き、全員に知らせた。
その途端、バラバラに戦っていたポケモン達が完全にキッシュ一人に狙いを定め、攻撃してきた。
「しまった!ばれた!」
キッシュは少し動揺したが、すぐに戦闘体勢を取り、
「ほのおのうず!!」
そう言い、自分の周りに高い火柱を作り上げた。
「ぐわぁ!くそっ!これ以上近寄れない!」
火柱が消えると同時に、味方のポケモンが一気にキッシュを囲み、
「狙いがキッシュだけなら守りやすいぜ!」
「俺達がついてるんだ!あんまり一人で頑張るな!」
と声をかけながら、戦いだしてくれた。
「分かったわ!わたしはみんなの援護をするから!」
そう言い、少し後ろに下がって、ロックオンと波状攻撃を上手く使い分け援護していた。
数時間は戦っていたが、やはり戦力差がだんだんと出てきた。
こちらは既にみんな疲れきっているが、向こうは人海戦術の如くポケモンを次々に投入していた。
すでに、多くのポケモンが倒れ、キッシュ達の戦力は風前の灯となっていた。
「くそっ……キッシュ…逃げるんだ…」
ついにキッシュとロケット団のポケモンが完全に向き合った。
「時間をかけさせやがって…これで終わりだ!!」
そう言い、二匹のポケモンが飛び掛かってきた。
『もう駄目!…お願い!助けて…レイ!!』
そう願った瞬間、
「ぐあぁ!!」
飛び掛った二匹を雷撃が吹き飛ばした。
何が起きたのか分からず、キッシュがゆっくり目を開けると、
「待たせたな…キッシュ…」
そこには…キッシュを庇うように立つ、レイの姿があった。
「レイ!」
「もう!キッシュちゃん危なかったのよ!来るならもっと早くきなさいよ!ホントにハラハラさせるわね!」
と、一人がレイに言ったが、レイはそれを無視して
「キッシュ、お前に言わないといけない事がある…」
そう切り出した。
「な…!なによ…必ず…無事に戻って…来るって約束…?あたりまえじゃない!…」
既にキッシュは涙目だ、
「違う、もっと大事な約束だ…」
「なによ…もっと大事な約束…って…」
「分かってるんだろ?俺が言いたい事。わざわざ言わせるのか?」
そう聞くと、
「あたりまえじゃない…わたしがどれだけ…その言葉を待ったのか…」
そう、答えた。
「二つ目の約束。生まれ変わっても、必ず君の元に駆けつけるから…間違い無く、その約束を果たしに来た!」
「レイーーーー!!」
泣きながら抱きついてきた。
「あらあら、何?プロポーズ?かっこいいわね!こんな所で。」
と、周りにいた森のポケモン達が騒ぎ出した。
「あはは…そんなんじゃないよ。ただ約束を果たしに来ただけさ。」
そう、苦笑しながら返した。
「てめぇ…いつまでも戦場でイチャイチャしてんじゃねえよ!そういう奴は死ぬって相場が決まってるんだよ!!」
そう言いながら、先ほど吹き飛ばされた二匹がもう一度攻撃を仕掛けていた。
「でんじは!!」
今度は電磁波を飛ばし、麻痺させてから吹き飛ばした。
「悪いな!こっちは運命の再会なんだ。邪魔しないでもらおうか。」
「ちょっと!レイ!みんな頑張っててくれたんだから戦う方に集中しなさいよ!」
とキッシュが怒る。
「そういや、もう一つ言うことがあった。」
「なに?」
そうキッシュが聞いてきたのを確認し、真っ直ぐ顔を見て
「やっぱり、キッシュは明るい方が可愛いよ。」
そう言うと小さい声で
「バカ…みんな見てるのに…」
と言いながら、顔を赤らめていた。
「そうだ…キッシュ、今日無事に帰ったら…家族を増やそう!」
と笑顔でキッシュに言った。
すると先ほどよりもさらに顔を真っ赤にし、
「ちょ…!バ、バババババカ!!いきなり何てこと言い出すのよ!!」
そう言い返した。が、動揺しているのだけは分かる。
「あら~…なになに?そんなかっこよく言われたらこっちまでムラムラしちゃうじゃないの♪」
と、完全にみんなが野次馬状態になっていた。
最後に真剣な顔をし、
「約束だ、今度こそ約束は一つだけだ。今回も必ず約束は守るぜ…!」
そう言いながら体に薄く電気を帯びさせ、真っ直ぐ敵のど真ん中に突っ込んでいった。
「馬鹿が!わざわざ囲まれに来るとはな…死ねぇ!!」
そう言い、一斉に技を出しながら突っ込んでくる。
「悪いが死ねないな!じゅうまんボルト!!」
一点ではなく、拡散させるように雷撃を放ち、飛び掛ってきたもの、飛んで来た物、その全てを弾き返した。
「約束なんでね…絶対に果たさなきゃなんねえからな!」
今度は牙に帯電させて電光石火を使い、一瞬でロケット団員全員に指示を出している男に飛びついた。
「な!?いつの間に!!」
「さっきから見させてもらってたぜ!お前がトレーナー全員に指示を出しているのをな!!っても言葉は通じないか…かみなりのきば!!」
見事命中、しかし、使った相手が人間だったため、死なない程度に威力を抑えていた。
その攻撃で敵側の士気が乱れたのをレイは見落とさなかった。
「今のうちだ!早くこの場から離れろ!」
そう言い、左右から襲い掛かってきた二匹を避け、逆に反撃を浴びせた。
「分かった!急げ!急いでみんなを避難させるぞ!」
そう言い、ゆっくりと移動しだした。
「なんだこの体たらくは!!貴様らたかが野生のポケモンが寄り集まっただけの集団にどれだけ時間をかけるつもりだ!!」
急に怒号が響いた。
もちろんその声の主はサカキだった。
「引け、貴様らがいるとこいつのテストの邪魔になる。」
そう言いながら見たことの無い色のモンスターボールを取り出した。
「申し訳ありません!全員聞いたはずだ!撤収!撤収!!」
そう言い、全員ポケモンをボールに戻し、一気にその場から離れていった。
「やったわ!私達が勝ったのよ!」
とその様子を見ていた一人のメスが言った。
『なんだ…?あのボール…俺でも見たことがない…いやな予感がする。』
「あのアブソルには劣るが…ベースがエスパータイプだ…思う存分、その力を見せてみろ。」
「させるか!」
そう言い、素早く電気を溜め、サカキに向かって飛ばした。
「出て来い…Mew-Ⅲ計画試作二号…エーフィ…」
その声が聞こえたが、電撃も見事命中した。
「へっ!余裕こいてるからだ!ざまあみ…ろ……」
煙が晴れると…そこには無傷のサカキと一匹のエーフィがいた。
「な…なんだ…ただのエーフィかよ…驚かせやがって…」
そうは言ったが、レイは得体の知れない恐怖を感じていた。
「レイ!!逃げて!あいつからわたしと同じ力を感じる!!」
と、キッシュが叫んだ。
レイが返事をするよりも早く、そのエーフィは一気にサイコパワーを溜め、放出した。
「ぐ…!ぐあぁぁぁ!!」
距離があったため、直撃ではなかったが、そのエネルギーの爆発によって生まれた爆風によって吹き飛ばされてしまった。
近くにいた森のみんなも吹き飛ばされ、望んでいた形ではないが、避難することができた。
「どうだ!たかが野生のポケモンでは一生かかっても手に入れることの出来ない力だ!!」
そう言うと、サカキはあたかも自分がやったかのように高笑いをしていた。
「えぇい!くそ!みんな大丈夫か!」
「とりあえずは…吹き飛ばされて泣いてる子もいるが、みんな無事だ!」
その返事を聞き、安堵したのもつかの間、目の前にはそれを巻き起こした張本人がいるのだから気が抜けない。
「キッシュ!こいつから同じ力を感じるってのはどういう意味だ!」
「恐らくわたしと同じで遺伝子レベルで改造されてるわ!サイコパワーとどんな技でも使うことが出来る能力を持ってるはずよ!」
「そういうことか…だったら速攻で終わらせてやる!」
そう言い、電光石火で突っ込む。
「さあ、やれエーフィ。ミュウ細胞の力を思い知らせてやれ。」
とサカキがエーフィに命令するが、動く気配が無い。
「でりゃあぁぁ!!」
そのままの勢いで突っ込むが、ヒラリと躱されてしまう。
それを見ていたサカキが不敵に笑い、
「いいのか?私の命令に逆らえば、ブラッキーの命は無いぞ?」
そう言われ、エーフィの表情が変わった。
「ごめんなさい。あなた達に恨みは無いけれど…ここで消えてもらうわ!」
初めて口を開いたが、その言葉は完全に敵対している者の言葉だった。
そのまま、小さな体に一気にサイコエネルギーを溜め、
「サイコストリーム!!」
その言葉と共に、サイコエネルギーの凄まじい爆発と竜巻が起こった。
「ぐっ…!これはさっきの技か…!しかし、こんな技見たこと無いぞ!」
爆風に何とか耐え、エーフィを真っ直ぐ視界に捕らえると
「レイ!恐らくこれはミュウ細胞がもたらした固有技よ!」
そう説明しながら走って横に並んだ。
「おい!キッシュ!なにしてんだ!危ないだろ!」
「わたしも戦う!だから指示をお願い!」
そう言い、身構えた。
「…分かった。ただ、絶対に無茶はするなよ!」
そう言うと頷いて答えた。
「二対一でも関係ないわ…サイケこうせん!!」
真っ直ぐに飛んでくるその光線を避けることは容易かったが、後ろにはみんなが居るためその選択は取れなかった。
「くそっ!キッシュ!この攻撃防げるか!?」
そう聞くと、レイの前に出てサイコパワーを溜め、
「バリヤー!!」
そう言い、薄紫の球状のバリアを張った。
見事その光線をバリヤーで弾き、最悪の事態を免れることが出来た。
「うおぉ…すげぇ…そういや、前から思ってたんだが、キッシュ4つ以上の技を使ってるよな?」
そう聞くと
「あら?言わなかったっけ?わたしは自分が使ったことのある技と、一度見た技はいつでも使えるって言ったわよね?」
と、さらっと言った。
「一回も言われたことねえよ!!てかそんな特技持ってたのかよ!!」
「だからあいつらは私を血眼になって捕獲しようとしてるのよ。わたしもあの時のあなたと同じ、特殊な体質だったの。」
『そうか…それでわざわざ新しくその改造ポケモンとやらを作ったのにも関わらず、キッシュを狙ってきたのか…』
と、心の中で納得した。
「キッシュは防御に専念しててくれ!俺が攻撃する!」
そう言い、特攻しようとすると、
「待ちなさいよレイ!あんたもうボロボロでしょ!回復するからこっちに来て!」
そう言って来た。
「回復って…なんか万能だなぁ…」
「そういう風に改造されたの。いやしのはどう!!」
そう言うと、キッシュから暖かな光が出て、みるみるうちに傷が治っていった。
「うお!すげぇ!…!!キッシュ!それ連発か断続的に出せるか?」
あることを閃き、キッシュにそう聞いた。
「どっちも出来るわよ!…でもどうして?」
「じゃあ疲れない方でずっと俺の体を癒しててくれ!」
そう言いながら、頭をフル回転させて考えた。
『一応俺だってただのポケモンじゃない!トレーナーの頃の知恵を活かせ!レントラーは確か雷が使えたはず!俺は覚えてないが…一か八か!勘で出してやらぁ!!』
一気に体中の残った電気を集め、空に向けて放った。
「何をする気かは知らないけど…私は負けるわけにはいかないのよ!サイコカッター!!」
そう言い、虹色の刃をこちらに飛ばしてきた。
「キッシュ!バリヤーだ!」
そう言うと、一瞬でバリヤーを張り、その斬撃を防いでくれた。
「くそっ…!早く降って来い!早く!早く!!」
そう焦りながら独り言を言っていると、
「レイ!お前もしかして雷が撃ちたいのか?」
とライボルトが話しかけてきた。
「そうだ!いまいちコツが分からん!教えてくれ!というか俺に落としてくれ!」
そう言うと
「は?あ~もう!分かった!口で言うより体で覚えろ!何考えてるかは知らんが、落とすぞ!かみなり!!」
そう言うと、さっきまで星が輝いていた夜空に暗雲が立ち込めた。
そして、そのままその暗雲からレイ目掛けて雷が落ちてきた。
「ぐあぁぁぁ!!…よし…!唐突だか理解した!」
そう言い、今の落雷で溜まった電気を集めて拡散するように空に撃った。
「よし!それで雷が落ちる!まさか一回で覚えるとはな!」
とライボルトが驚いていた。
「キッシュ!今から連続で自分自身にかみなりを落としまくる!だから体力の回復を任せたぞ!」
そう言うと
「え?あんた何言ってるのよ!バカじゃないの!かみなりは相手に落とす技よ!」
と、キッシュが驚きながら返答した。
「俺に考えがある!だから俺を信じて回復し続けてくれ!声をかけたら、バリヤーを貼ってくれ!」
すると、次の瞬間再度、レイ目掛けて落雷が降って来た。
「がぁぁぁ!!頼むぞ…!キッシュ!」
そうやって何度も自分自身にかみなりを落とし続けた。
「何をやっているの?それで本当に私と戦うつもり?あまり私を舐めないことね!!」
そう言いながら今度は波状のサイコエネルギーを飛ばしてきた。
「キッシュ!!」
その声ですぐに回復を止め、バリヤーを張る。
そして防いだのを確認し、もう一度回復しだすというローテーションが出来ていた。
「くそっ!まあ悠長に待ってくれるとも思ってなかったが…だったら乱射するしかねえな!」
そう言い、さらに雷を自身に落とし続け、だんだんと体から収まりきらないほどの電気が蓄積しだした。
「まさか…!レイの考えって!」
「まだだ!まだ足りない!アレに対抗するにはもっと溜める必要がある!」
そう言い、どんどん自分に落とし続けた。
「エーフィ…貴様、手を抜いていないか?そんなことをすればどうなるか分かっているよな?」
そう、サカキに忠告され、妨害のペースが速くなった。
「そろそろ大丈夫ね…今度こそ消し飛びなさい!サイコストリーム!!」
「よし!溜まった!キッシュ!サイコストリーム!!」
エーフィのサイコストリームとキッシュのサイコストリームがぶつかり合い、予想以上の大爆発が起こった。
吹き飛ばされないように耐えていたが、それでも一瞬でも気を抜けば吹き飛ばされるほどの爆風だった。
「よし!これで終わりだ!」
そう言ったレイの体は、通常では蓄積しない量まで電気を蓄積していたため、真っ白に光り輝いていた。
「100万ボルトォォ!!」
轟音と共にエーフィ目掛けて雷撃とは思えないほどの雷を撃ち込んだ。
「くっ…!サイコストリーム!!」
しかし、ついさっき撃ったばかりのため、威力がかなり落ちていた。
爆風を押しのけ、雷撃はほとんど威力を落とさずエーフィに命中した。
「ギャァァァァ!!」
一撃で並みのポケモンなら確実に再起不能になるほどのダメージだったがエーフィはかろうじて立っていた。
「くそっ!これでもまだ耐えるか!」
「私は…私はここで倒れるわけにはいかないのよ!!倒れれば…倒れれば弟の命が!!」
レイはそのエーフィの言葉を聞き、
「なに!エーフィ!詳しくその話を聞かせろ!」
そう聞いた。
「エーフィ!ここでやられることは許さんぞ!そうすればブラッキーがどうなるか分かっているな!?」
とさらにエーフィを追い詰める。
「あなたに話すことは何も無い!同情するぐらいなら今ここで消えなさい!」
「レイ!下がって!」
そう言うが、キッシュを止め、
「彼女もまた被害者の一人だ。説得すればこれ以上の戦闘を避けれる。」
「でも!…」
「俺を信じろ!」
そう言うと、無言で下がった。
「エーフィ!あんたの名前は!!」
「名乗る名など無い!!」
そう言い、再度サイコエネルギーを溜めている。
「もしあんたの弟が捕らえられているのなら、恐らくそいつはもう死んでいる!」
そう言うと流石に驚きを隠せなくなったようだ。
「なっ…!黙れぇぇ!!」
そう言い、刃を飛ばしてきた。
それを避け、さらに
「そのままでいいから聞いてくれ!俺も昔、あんたと同じ様にそいつら…ロケット団の言い成りになっていた!」
「あなたのそれと私がどう関係があるっていうの!?」
さらに斬撃を繰り出す。
「俺の仲間も捕らえられていた!大人しく言うことを聞けばもう一度会わせてやると約束してきたんだ!」
そう言ったが、全くの嘘ではないにしろ、説得するため已む無く虚飾した。
「!!!…詳しく聞かせて…」
そう言い、攻撃の手を止めた。
「ばれないように攻撃を止めないでくれ!俺はそいつらの言った通りに従順な奴隷となった。」
そういうと、分かり難い程度で手加減をしてくれたため、さっきよりも避けやすくなった。
見ている分では先ほどとの差がほとんど無い。
「だが!実際は俺が奴隷として捕らえられた時点で全員死んでいた!」
「嘘よ!私は確かに…確かにこの目で…」
流石に動揺し、攻撃が疎かになりだした。
「攻撃を止めるな!信じられないかもしれないが、そいつらは平気でそういうことを出来るやつらなんだ!ポケモンを道具としか思ってない卑劣なやつらなんだ!」
再度、攻撃を再開し、そのまま聞いてきた。
「私の…私の名前は…ルミナ…弟の名前は…キースよ…」
そう、震えた声で言ってきた。
「レイ…体が…体が熱い…!」
キッシュが不意にそう喋りかけてきた。
「なんだって!ぐあっ!!」
キッシュの思わぬ容態の変化に気を取られ、直撃ではないにしろ、斬撃が命中してしまった。
「くっ…!キッシュ!なんとか持ち堪えてくれ!ルミナ!もしかすると君の弟、俺は会ったことがあるかもしれない!」
「本当に!どこで!」
「すまない!正確には覚えていないが、ジョウト地方だった!」
この事は本当だった。ジョウト地方に言った際に、生き別れた姉がいると言っていたオスのブラッキーに出会っていた。
『てことは…そんなに前からやたらめったらポケモンを集めてやがったのか…!許せねぇ!!』
「……信じて…いいのね…?」
攻撃を止め、そう聞いてきた。
「ああ、信じてくれ。だが、確証が無いことも伝えておく。」
そう言うと、
「いいの…少しでも…希望が持てたから…ありがとう…」
そう言い、小さく礼をした。目から一粒光る物を落としながら…
「エーフィ!何をしている!さっさと止めを刺さんか!ブラッキーがどうなってもいいのか!!」
そう、サカキが罵声を浴びせると、ルミナは振り返り、
「黙れ!!貴様に弄ばれた者達の怒りを知れ!!」
そう言い、サイコカッターをサカキに向けて放った。
「ば…ばかな…こんなはずでは…Mew-Ⅲ…計画は…完璧な…はず……」
そう言いながら、体を真っ二つにされ、鮮血と共に、視界から消えた。
「これが…狂科学者の…人を利用し続けたものの…最後か…いい気味だ。」
視界から消えていくサカキを見て、やっと前世から溜まっていたいろんな思いが清算されたような気がした。
「そうだ…!!キッシュ!!」
ようやく余裕が生まれ、キッシュの方を見たが…あの時と同じ…既に遅かった…
「うわぁぁぁぁぁ!!!消し飛べ!!!」
完全にサイコパワーが暴走したキッシュは一気にエネルギーを溜め、サイコストリームを全力で撃った。
「ぐ…!くそっ!!っぐあぁぁぁ!!」
範囲も今までのそれとは比べ物にならないほど広範囲になっており、今度こそサイコストリーム自体をモロで喰らった。
「レイさん…レイさん!気が付いて!」
目を開けるとルミナが必死に俺を起こしていた。
「畜生!どれだけ意識を失ってた!?」
「ほんの一瞬です!気絶してただけですから!」
そう言われ、キッシュの方を見ると、前回と同じ様に、鎌に虹色の光を纏わせ始めていた。
「あれはいったいなんなんですか!」
「普通に喋っていい!あれは俺が勝手に付けた名前だがじげんぎりだ!」
「じげんぎり?まさか…固有技!」
ルミナが驚いて聞いてきた。
「前世の記憶上、あの斬撃は空間そのものを切り裂いていた。」
『そして…よりにもよってあの時と同じ場所でこんな目に遭うとはな…』
記憶を手繰り寄せ、繋げ合わせた結果、この地面がむき出しになっていた草原こそ、レイが死んだ場所だった。
「レーーーーイ!!一体どうなったんだ!!」
遠くから声が聞こえる。
「お前ら!!絶対に草原に入るな!!そこなら安全だ!」
そう指示を出し、立とうとしたが、すでに無茶な蓄電と、多量のダメージで体がいうことを聞かなくなっていた。
「畜生!!キーーーーーーーッシュ!!俺だ!!目を覚ませ!!」
無理やりその場から叫んで、キッシュを呼び覚まそうとするが、
「消え去れ……全て消え去れぇぇ!!!」
そんな声も虚しく、また前と同じように次元切りを乱発しだした。
「くそっ!止めないと!このままじゃ…今度はキッシュが!」
無理にでも体を叩き起こし、ふらつく足取りのまま、斬撃を避けながらキッシュの元へと向かった。
「レイさん!無茶です!」
「お前も絶対に草原に入るなよ!キッシュの出してる攻撃の境界線はそこだからな!!」
そう言い、無理やり電光石火を使いながら、斬撃を躱してゆっくり距離を詰めていっていた。
キッシュの出している斬撃は確かに早く、防御も不可能だが、直線的であるため、鎌を振ろうとしている方向がこちらの時は素早くそこを離れればいいだけの話だった。
「キッシュ!!気付け!!もう戦いは終わったんだ!!これ以上戦う必要は無いんだ!!」
そう必死に訴えかけるが、
「うわぁぁぁぁぁ!!!全て消えてしまえ!!!」
そう言い、斬撃を止める素振りは見えなかった。
『くそっ!…どうすれば…!!』
必死に考えるが、次第に動きが鈍くなり、避けることで精一杯になってきてしまった。
『くそっ!!もう駄目なのか!?』
そう思ったその時、
「レイさん!私が気を引きますから!その隙にキッシュさんを!」
そう言ってルミナはキッシュの真正面に立っていた。
「ば!!馬鹿野郎!!」
残った体力で必死にそこまで走りぬけ、倒れこむようにルミナを後ろに突き飛ばした。
それにキッシュも気付き、完全にこちらを視界に捕らえた。
「ええい!だったら一か八かだ!」
そう言い、二本足で立ち上がり、あの時と同じように仁王立ちでキッシュに向かって、
「キーーーーッシュ!!思い出せ!!俺がお前を守る!!」
そう、キッシュに言った。
すでに斬撃を出す寸前だったが…思いが通じたのか、
「レイ?いや…!レーーーイ!!避けて!!」
そう言い、斬撃を放った。
すでに遅く、あの時と同じように…左肩から…右足の付け根まで…血飛沫が吹き出し…そのまま…視界から消えた…
「イ、イヤ…イヤ!…イヤァァァァァァァァァ!!!」
すでに意識の戻っていたキッシュから…悲痛な叫びが聞こえ……草原を木霊した…
全力で駆け寄り、倒れたレイを必死に呼び起こそうと声をかけ続けている。
「イヤ…!いや……やっと…やっと巡り会えたのに…これからなのに…お願い…!お願いレイ!目を開けて!!」
『この声は…聞き覚えがある……キッシュだ…ん?どうなってるんだ…?』
「キ…キッシュ…?良かった…意識が戻ってたのか…良かった……」
目を開き、真っ先にキッシュの呼びかけに答えた。
「レイ!!……ごめんなさい!!……わたしのせいで…!!」
「なあ…キッシュ…一つ…約束して…くれるか…?」
そう、質問すると、
「なに…?教えて……絶対に約束するから…!」
そう答えた。
「もし…俺が死んだとしても…いや…俺が死んだ後も…俺を…愛してくれる…か…?」
そう聞くと、首をブンブン横に振って答えた。
「頼む…答えて…くれ…」
そう言うと、
「分かった…分かったから…絶対に愛するわ…だから…!だから死なないで!!」
そう、泣きながら言った。
「そうか…ありがとう……」
そう言い、静かに瞼を閉じた……
「イヤァァァァァァァ!!レイ!!目を開けて!!」
そう言われ、正直に目を開けた。
「そんなこと言われたらぁ、まだまだ死ねないな!」
そう言い、まるで何事も無かったかのように起き上がった。
「え…!!嘘…!そんな…だって…!」
「嬉しいもんだな!面等向かって愛してるなんて言ってもらえたら!」
そう、笑顔でキッシュに言った。
「馬鹿!レイの馬鹿!!バカァァァ……本当に死んだと思ってたのに…よかった…」
そう言って泣きついてきた。
「悪い悪い!迷惑かけたな!」
「でも…なんであの攻撃が当たってたのに死んでないの?」
そう質問していた。
「その言い方だと死んで欲しかったみたいだぞ…!実はあの時切れたのは胸の薄皮だけだったんだ。」
そう言い胸にできた傷を指差す。
「でも…!あれは途中で止まるような技じゃ…!」
「そう、本当は死んでるはずだった。でもキッシュが無意識のうちに威力を抑えてくれたんだろう。おかげでこうして生きてるよ。」
そう言った。
「良かった…本当に…本当に……!」
「約束したからな…一緒に静かに暮らそうって…」
そう言って抱き合っていた。
「お熱いわね。どうやら私はお邪魔なようね。」
そう言ってルミナがその場を離れようとした。
「ルミナ!君はこれからどうするんだ?」
そう聞くと、
「分からないわ…でもただ一つ、まだ弟が生きてると信じて…探してみるわ…お幸せに……そしてさようなら…」
そう言いながら、森の闇の中に、スゥーっと消えていった。
「あの人…探してる人と…出会えるかしら…」
とキッシュが呟いた。
「出会えるさ…信じれば…必ず叶う…」
そう、レイが答えた。
「なーにカッコつけとるんじゃい!!人の苦労も気にせんで!!」
そう言いながら、レイの頭を軽く小突いてきた。
「ブレイズ!無事だったか!!」
「おかげ様でな。ちくしょー!!様になってるじゃねえか!絶対にキッシュちゃんを泣かせるなよ!」
「悪い、それは約束できねぇ。もう、さっきも泣かせちまったしな。」
そう言うと、
「いいさ!これからは絶対に悲しさで泣かせなかったらいいだけだよ!幸せにな…!」
そう言って、こちらに背を向け、ドシンと座り込んだ。
「なんだよ…別にこっち見たって悪くはないだろ?」
そう言うと
「うるせー!みんなから聞いたよ!さっさと家に戻って夢だか愛だか叶えて来やがれ!」
そう言った。
「アハハハハ!流石に単刀直入に言われると恥ずかしいな!…ブレイズ、ありがとう。お前がいなかったらキッシュは助けられなかった。」
「うるせー!俺の事は忘れて、さっさと幸せしちまえ!」
そう言って今度はその場を離れていった。
「ねえ…帰ろう。」
そう、キッシュが言って来た。
「約束だったしな…さあ、やっと全て終わったんだ…今度こそ自由だ…帰ろう…我が家へ…」
そう言い、二人仲良く、皆にさよならを言い、家へ帰っていった。



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  • コメントありがとうございます。
    稚拙な文ですが、楽しんでいただけたのなら嬉しい限りです。 -- COM 2023-05-12 (金) 14:23:03
  • >>名無しさん
    返信遅れました
    何度も読んで頂けて幸いです。
    ――COM 2013-05-28 (火) 23:14:58
  • 10回読みました。凄く面白かったです!
    ―― 2013-05-25 (土) 13:16:04
  • >>ピカチュウ大好き人間さん
    わざわざこんな作品まで目を通していただけるとは…
    実はこれが私の処女作なんです。
    なんで構文がめちゃくちゃなんですよ…お恥ずかしい話。
    ――COM 2013-04-10 (水) 19:54:20
  • 質問で~す!
    これの何処が黒歴史何ですか?
    ――ピカチュウ大好き人間 2013-04-09 (火) 21:15:14
  • 感動しました。
    ――せいさん ? 2012-04-22 (日) 14:55:18
  • コメントページを作成しました。
    ――COM ? 2011-12-06 (火) 23:52:35
  • 私はこれを読みながら、誰かの考えを読んでいるような気がした。 驚くべきことに、私は謎めいたものではあるが、毎秒読むのが大好きだった。 まるであなたの人生の詩を読んでいるような気分でした。 --

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Last-modified: 2011-11-09 (水) 00:00:00
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