ポケモン小説wiki
第二話:孤独の理由

/第二話:孤独の理由

  

――眩しさに恋焦がれて――                            Written by水無月六丸
 
前回のお話:第一話:悪ノリはほどほどに
 
 
 

人物紹介:簡易版 


 
  
 
                                       ―――1―――
 
 
 
 深い藍色の空。針の穴の如き微細な星の光が、紺碧の上に散りばめられていた。先刻まで空を焙っていた斜陽は火勢を失い、西の末端に追いやられ弱々しく燻っている。
空の遥か下方に位置する大地には、黒い木立が萌えていた。一つの巨大な影にも見えるその森は、宵闇に呼応し静寂のオーラを纏う。時折吹く夜風の度に影は蠢き、そこはかとない薄気味悪さを感じさせた。
海は空よりも尚厚く紺を塗り重ね、海面はさながら生物であるかの様に波打つ。寄せては返し、寄せては返しの小さな鼓動が、非常にゆっくりとしたサイクルで、しかし途切れる事無く延々と続いている。砂浜は昼間の喧騒が虚構だったかと思わせる程、寂寞という言葉に合致する雰囲気だった。
森、海、砂浜。それら全てを一眸に収められる高台の上には、威風堂々聳え立つ鉄筋コンクリートの建造物……ホテル『グランドレイク』がある。内側に蓄えた照明の輝きを窓から放ち、自身を煌びやかに装飾する様は、差し詰め光の柱といった所か。何もかもが昏黒に沈んでいく中において、無数の照明が織り成す著しい明るさは、同時に微妙な違和感をも湛えていた。周囲の景観を損ねている。悪く言うなれば、そんな批判が真っ先に浮かぶ見掛けだ。恐らくは、この213番道路の界隈を住処としている野生ポケモンは人間への反抗心も手伝って、常々そう思っているであろう。
 
 一方でホテルのある一室には、自分のポケモンに復讐心を燃やす銀髪の少年、レイガが居た。既に遁走し姿を消したパートナーへ向けて、ベランダの柵を拳で連打しながら駑馬の叫びを上げている。
一分程はそうしていただろうか。己の行動の無意味さを悟ってか、或いは飽きたのか。溜息を漏らすと、部屋の中へと戻った。
 
「くそ……あの野郎、逃げやがって。戻ってきたらお仕置きのフルコースを食わせてやる」

 ベランダの窓を後ろ手で閉めながら、レイガが恨めしそうに言った。
何もかもしてやられたままでいるのは、彼にとって我慢ならない事だった。
逃げ出したポケモン……フライゴンのデューンが戻ってきた暁には、もう一騒ぎ起こるのだろう。これから夜の帳が落ちる刻限だというのに、他の宿泊客への配慮など眼中にすら無い彼等なら、勢い余ってホテルから追い出されても何ら不思議ではあるまい。
 
「ふふ。やっぱり主人(マスター)もデューンには敵いませんでしたね」
 
 ベッドで仰向けに寝ているサーナイト……アリスが、レイガを見上げて微笑んだ。さも自分もデューンにしてやられました、と言わんばかりに、困った(おとこ)の子ですね、と小声で付け加える。自分から仕掛けた悪戯であった事を棚に上げて。
 
「お前も共犯者だろうが! 何だその他人事みたいな物言い!?」

 右手でアリスを指差し、大袈裟なアクションでレイガが突っ込んだ。アリスは目を細め、小さく笑う。最初から突っ込みを期待しての振りだったことに、彼は気付いているのだろうか。
そこの所は、彼女は良く分からなかった。気分によって多少ムラがあるものの、レイガはバトルの時以外、四六時中こんな調子なのだから。お陰で退屈しない生活を送れている事に感謝すべきなのだろうかと、アリスはふと何の気無しに思った。
 
「やっぱりボールを投げた経験が無いと、こうなるんですかねぇ……」
 
 主人(マスター)にとっては少々耳に痛い言葉だと、アリスは言ってから気付いた。案の定レイガはうぐ、と喉を詰まらせて怯み、反論のタイミングが一拍ずれる。それでも先程までの気勢を保ったまま、どうにかやり取りを繋いだ。
 
「それは関係ねぇ、てか誰のせいだよ誰の! 窓を開けるだけの隙がありゃ、絶対に捉え――」
 
 レイガが憤慨し地団駄を踏み始める。
だが、カーペットを叩く音は五、六回鳴った後唐突に止んだ。天井を見ていたアリスが不審に思ってレイガの顔を覗くと、やり場の無い苛立ちを抱いた表情が徐々に崩れ、身の危険を感じる実に嫌らしいものへと変貌していく最中だった。心中に溢れる邪念に耐えかねたように、レイガの口から笑いが漏れる。
  
「……お前が馬鹿な真似をしなきゃ、それで収拾がついたかも知れねぇなぁ、アリス? さっき言ったように、お前も共犯者だ。だったら俺のやる事は一つだろう? え?」
 
 まずい――アリスの直感が警告を発した時には、もう手遅れであった。もっとも、余裕をかまして仰向けにベッドへ寝転がる等という愚行を犯した時から、既に手遅れだったろうが。
レイガは素早くベッドへジャンプ、アリスに馬乗りになった。大きな加重がスプリングを軋ませ、一人と一匹の身体が反発力で上下する。
  
「……あ、あの……? 何を……」

 アリスはある筈の無い寒気を感じ、背筋を震わせた。夏に冷や汗を掻くのは、怪談を聞く時だけだと思っていた。彼女はその手の話が苦手なのだが、この状況はそれ以上のプレッシャーが圧し掛かってくる。
もしかしたらこのまま、お召し上がりされてしまうのではないか。嫌な予感が脳裏を掠めるのは至当であった。「迫られても拒まない」などと愚かしい発言をした十数分程前の自分を、アリスは本気で呪った。
 
「ひひひひひひ! 覚悟しろよ、ア~リ~スゥゥゥゥゥゥ……」

 レイガが両手を構え、指を怪しげな挙動で曲げ伸ばしして攻撃の意思を表明した。
いざとなったら技を使ってでも抜け出さなくては。だがアリスがその覚悟を決めるよりも先に、レイガは強襲を決行した。アリスは二の腕を掴まれ、無理矢理腕を広げられる。
 
「え、えぇ? ちょ、待って下さいな……きゃふっ!?」

 アリスが懇願するような表情で許しを乞う。その制止をレイガは黙過し、彼女の脇の下に手を突っ込んだ。普段他人に触れられる事の無い場所を襲われ、不覚にも素っ頓狂な声を上げてしまう。

「問答無用! 笑え、苦しめ、悶え死ね! ご主人様の怒りを思い知れやぁぁぁぁぁぁぁ!」
 
 脇の下に始まり、首筋、脇腹を満遍無くわしょわしょと、優しく指先で刺激する。アリスは堪らず、ひくつく横隔膜に呼吸を詰まらせながら絶笑した。
 
「ひははっ、あは、あはぅ! やめっははははは! 苦しっきゃふふふふふ! ひゃはぅあはひは、あはははあはは!」
 
 マウントポジションを取られている中必死に身体を捩り、手足をばたつかせ、くすぐったさを発散させようとするアリス。それがレイガのサディズムに火をつけたらしい。愉悦に浸った表情を浮かべ、お仕置きの醍醐味に陶酔し始めた彼はもう止まらない。

「酸欠になるまでやめねぇから、せいぜい頑張って耐えるんだな! ほらほらほらぁ!?」

 執拗にアリスを責め苛むレイガが無慈悲に言い放つ。彼女にとってそれは、死刑宣告にも感じられた。ほとぼりが冷め、主人(マスター)が飽きるまで、この地獄の試練に甘んじなければならないのか。こんな事になるなら食い意地を張るんじゃ無かった。今更省みた所で後の祭りであると重々分かってはいたが、麻痺していく意識の中、アリスはそう思わずにはいられなかった。
 
 
 
 ――いっそ、抱かれた方が楽だったでしょうか……。
  

 
「そんにゃあんっ! ははははひひひ! 死んじゃふはふひはぅ、ひあはははははくひぁ!」
 
 
 
 
 
 
 
                                       ―――2―――
 
 
 
 アリスが罰を受けている頃、デューンは浜辺で黙々とトレーニングをこなしていた。
トレーニングというよりも、動作の確認というべきものかもしれない。自分が習得している技を一つ一つ繰り出して、威力や切れなどを確かめていく。見渡す限り周囲には誰も居ないので、“火炎放射”や“龍の波動”といった技でも躊躇う事無く放てる。一応安全面に気を配って、飛び道具の射線は海へ向けているが。
動きを確認する上では技と身体捌きの繋がりが重要なポイントである。
咄嗟の判断で戦闘行動を取る際には勿論直感が物を言うのだが、動き自体を身体に染み込ませ反応の精度を高める事も欠かせない。脳は、晒されている状況に出来るだけ類似した記憶を引っ張り出し、組み合わせる事で対処しようと働くからだ。したがってより多くの動作を反復し定着させれば、瞬間的な判断において動作の正確性が増す。
……といったトレーナー関係の特集番組か何かで耳にした話を基に、デューンは自分なりに練習方法を考えて実践している。噛み砕いてしまえば兎に角経験を積め、という基本を小難しく述べているだけだと彼は理解していた。だが実際にバトルをしていれば、一瞬の判断を迫られる状況が当然のように出てくる。身を持って感じるからこそ、教えがリアルに実感できるのだ。その事は、レイガと出会って彼についていく前まで師匠と崇めていたポケモンに、骨の髄まで叩き込まれている。しかし指導方法が少なからず手荒だった為に、デューンは今でも幼少の日々を思い出すと、蘇る恐怖からくる薄ら寒さを禁じ得ないのであった。
 飛び跳ね、宙に弧を描き、流れるように技を繰り出していく。傍からはコンテストの演技練習にも見える動き。美しい星空の下、砂浜の上を舞い踊るフライゴンの観客は、雄大な自然だけだった。

「よし……疲れてる割にはまずまずだね」

 やや息を弾ませながらデューンが満足げに呟いた。舞踊を終えた彼へ、波の音がささやかな賛辞を呈する。高台の木々も風に吹かれ、木の葉を打ち鳴らして波に倣った。
ちょっと休憩してから部屋へ戻ろうとデューンは思った。どうせまたレイガが五月蠅いし、アリスが恨み言の一つ二つをかけてくるだろうけど、まあご愛嬌だ。
 砂浜へ仰向けに寝転がると、ちょっとだけだと自分に言い聞かせデューンは目を閉じた。しかし、疲れに負けて横になり目を閉じるという行為は、睡魔に屈するのと同義である。案の定、デューンは直ぐに眠くなってきてしまった。もうここで寝てしまおうか。いやそれでは、レイガとアリスに心配をかけてしまう。心地良い波の音と押し寄せる眠気に、彼の意識はぼやけていく――
 
 
 
 暗色が渦巻くグニャグニャと歪んだ空間を、デューンは漂っていた。
身体の何処も、地面に着いている感触が無い。かといって翼で羽ばたき浮いているでも無い。所謂無重力状態だった。身体に掛かる圧力や筋肉の緊張。それら全てから解き放たれた感覚は、思わず顔が緩んでしまう程に心地良い。ずっとこのままでいたいと、ぼんやり思う。
 どれ程の時間そうしていただろうか、心身共に満たされた気分になった頃だった。
 暗色の背景に風穴を開けるかの如く、突然目の前に白い点が現れた。
それは木葉を蝕む虫食いのような荒い縁取りを保ちつつ、ゆっくりと大きく広がっていき、やがてシルエットとして認識できる形となった。特徴的なのは菱形を模した一対の翼と、尾の先端にある、扇を思わせる三つの菱形。そう、混沌のスクリーンに投影されたのは紛れも無い、自分自身の姿だった。

「おいおい、折角目と鼻の先に(おんな)の身体があったってのに。みすみす見逃すとは意気地がねえのなぁ? デューン」

 開口一番、シルエットが陰険な口調でデューンを罵った。
こいつに屈してはいけないと、何の気無しにデューンは思った。勿論夢の中であるから、明確な意識を持って自分の思考で判断したのかは疑わしいが。

「冗談じゃない。よしんば犯る( ・ ・ )にしたって、他人の居る所でなんか逆立ちしたってするものか。それは最低限のマナー……おっと、腕短いから逆立ちは出来ないんだっけ」

 デューンの口からでた言葉には、相手を苛立たせる小馬鹿にしたような響きがあった。
しかしシルエットは意に介さず平然として、横柄な態度を崩さない。

「はいはい殊勝なこった。だがよ、てめぇはそれで満足してんのか?」

「ごめん。僕に理解できる言語で話してくれないかな?」

 もしシルエットが立体でフライゴンの体色をしていたなら、下劣な笑みを浮かべた自身の姿を目の当たりにしただろう。それを知ってか知らずか、自己否定をするようにデューンはシルエットの問いを切って捨てた。

「てめぇの意志に聞いてんじゃねぇ、身体に聞いてんだ。さっきあの(おんな)を組み敷いた時、一瞬だがてめぇ本気になりかけてたろう? たかが遊びだってのによぉ」

 図星だったからか。ほんの片時、デューンは顔をしかめてシルエットを睨んだ。シルエットはわが意を得たりと言わんばかりに、小刻みに震えてケラケラと醜く嗤う。

「否定はしないよ」

「溜まってんだろ、え? 何時まで痩せ我慢を続けるつもりだ」

 実に下らない質問だと、デューンは見下すような目線で心情を語った。シルエットは笑いを止め、震えて歪んでいた形が元のはっきりした輪郭を取り戻した。

「さぁね。でも一つだけ明らかになったのは、君が目の上の瘤だって事さ」

 放つ声に最大限の侮蔑を乗せてデューンは言い切った。口を挟む隙を与えずに、今度は自分からシルエットへと問う。

「さっきから訊かれてばかりだから、僕からも一つ訊こうか。君ならあの時、どうしてた?」

「決まってんだろ、俺は犯る( ・ ・ )ぜ! 人間を張っ倒しちまえば邪魔する奴はいねぇんだからな!」

 語調を荒げ、威勢良く吐いたシルエットの答えは、全くデューンの予期した通りであった。
呆れ返る内心を包み隠さずあからさまに見せ付けて、デューンはシルエットを批判した。

「呆れた……随分と刹那的なんだね。諸々の事後処理はどうするつもりだい?」

 何処か哀れみをも含んだ面持ちを浮かべて、再び答えの決まりきった質問をした。シルエットは輪郭を大きく歪曲させ、気色ばんで叫ぶ。

「んなモン知ったことか!」

 ……こっちのペースに引っかかった。
今度はデューンが我が意を得てにやりとする番だった。指を立てて、チッチッチ、と舌を鳴らす。まるで疎い者に教え諭す経験豊富な熟達者の如く、「その辺り」の方法論についてデューンは雄弁に語り始めた。

「分かってないなぁ、全然ダメ! 君のような欲望剥き出しの迫り方じゃ――」

「……ーンさん、デューンさんってば。 こんな所で寝てていいの?」

 次の言葉を紡ごうとした時だった。夢の中の意識や感覚、歪んだ暗色の空間に白いシルエット、展開されていた全てが掻き消えて、デューンは唐突に現実へと引き戻された。
突然単調な黒一色に切り替わった視界が、瞼に由来するものだと気付くのに三、四秒掛かった。遅鈍な思考が徐々に覚醒していくにつれて、ようやく自分の状況や時間の繋がりが飲み込めてくる。
結局僕は眠ってしまったのかと今更な確認をして、自分が砂浜に寝転がっている事を思い出し、寝る前に自分が何をしていたのかを一通り振り返ってから、自分の身体を揺さぶっている何かに対して初めて注意を向けた。
 右脇腹に宛がわれた二つの固い、石ころ程の大きさの物体が身体を揺さぶっているようだ。うっすらと目を開けたデューンの視界に入ってきたのは、炎の鬣を持つ子馬のポケモン、ポニータだった。石ころの正体は前足の蹄だ。どうやらデューンを起こす為に、彼の身体を揺らしていたらしい。

「あ、起きた」

 デューンが目を開いたのを見て、ポニータは愛想のいい顔で無邪気に言った。
この雌のポニータは、今日知り合って昼間浜辺で大騒ぎした仲間の一匹である。彼女の名前はプロミネ。同様に昼間知り合った赤帽子のトレーナー、ユウムの手持ちポケモンで、彼のメンバーの紅一点だ。
のっそりと身体を起こしたデューンは首を回し、伸びをして眠気を退散させる。

「いけない、危うく朝まで寝ちゃうとこだった」

 恥ずかしさで皮膚の血行が良くなるのをデューンは感じた。
折角柔らかいベッドで寝られるというのに、うっかりこんな所で一晩過ごしてしまった……からかいの種にされる事請け合いだ。彼は常時あの二人を手玉にとって遊んでいるのだが、裏を返せば常に反撃のチャンスを狙われている。だからこそ自分に隙を作る事態は全力で避けねばならないのだ。デューンには、自分を起こしてくれたプロミネの姿が何故か神々しいものに思えてきた。

「ありがとプロミネ。あれ、他の皆は?」

 辺りを見回しても彼女の仲間がいない事に気付いて、デューンが言う。
本心では、自分が居眠りをしていた事から離れて欲しいという願いを込めていた。他人をからかうのは得意だが、からかわれる事に対してあまり免疫が無い自分を、彼は少しだけ情けなく思った。

「高台を回りこんだむこうにいるよ。皆昼間のままの調子でいるからもう大変! 私、一人で静かになりたくて抜け出してきちゃった」

 迷惑極まりない、といった口調でプロミネが答えた。
どうやら昼間の大騒ぎで遊び心が盛大に燃え上がってしまった彼等は、未だ貪欲に酸素を喰らい燃焼しつづけているらしい。一番「燃えている」筈の彼女が一番冷めているのは、どういうわけなのだろうか。

「そっか。悪影響を与えちゃったかな。どうもお騒がせしまして」

 とりあえずレイガに代わって、デューンは謝意を表明した。こちらの勝手で迷惑を掛けたのは事実なので、きっちり頭まで下げて真剣に恐縮しておく。

「ううん、本当に楽しかったもの。ただ夜は静かに寝かせて欲しいなぁ……何だか今あの中に居ると、凄く身の危険を感じるの」

 プロミネが最後の部分を、声のトーンを落として言った。
 一体どういう意味で身の危険を感じたというのか。もし想像でき得る通りの意味なら、今度は土下座しても彼女に謝りきれないかもしれない。非常に気になる、しかし直に聞くのは止めておこうと考えたデューンは、色々な意味に対応可能な上、この疑問を解消できるという素晴らしいアドバイスの脳内練成に成功し、喜々として飛びついた。

「ははは……四対一じゃ敵わないよね。いっその事どうにでもなれ、って感じではっちゃけるのはいかが?」

 うん、悪くない。自画自賛するデューンを尻目に、プロミネは青ざめて悲痛な声を上げた。もっとも青ざめていたかどうかは、デューンには暗くて分からないのだが。

「絶対やだよ! 四人を相手にするなんて、私絶対死んじゃうよ!」

 これはどうとでも取れる。デューンの中に真実を掴み損ねた残念な気持ちと、プロミネに謝り損ねた事になるかもしれないという申し訳無さが広がった。
同時に彼女の不幸を察したり、原因を作った事を謝ったりする前に、これから自身に降りかかるであろう厄介に備えなくてはならない、という事実を思い出し、デューンは気分が沈んでいった。正に自業自得。この言葉はこんなにも耳に痛い言葉だったのか。

「ああ、死んじゃうと言えば今頃アリスは……それ考えると僕も、今夜は戻らない方がいいかな……」

 つい先程まで、ご愛嬌位にしか思っていなかった事などすっかり頭から抜け落ちたデューンは未来を憂えた。逃亡劇自体は自分から仕掛けたものだというのに、最初にレイガを貶める為に誘ってきたアリスに文句を言ってやりたくなる。戻らないと彼等に心配を掛けるとか、うっかりここで寝て朝帰りするとからかわれるとか、思いついた限りのマイナスを改めて並べ立てる。
そこへ自分が調子に乗ってレイガを挑発し、逃げ出す所まで予測していたのでは、というアリスへの懐疑が加わった。たちまち意地悪な感情の出来上がりである。帰ったら言いがかりをつけてアリスをイジメてやろう、とデューンは固く誓った。
 ここで自分の顔を窺うプロミネの視線に気付く。考えに耽っていたせいでぼっとしていた彼は、会話中であった事を半ば忘れていた。何かあったの、と心配そうに尋ねる彼女に、デューンは部屋での一件を簡潔に話した。

「デューンさんもアリスさんも、そんな事を日頃から平然とやってるの?」

 プロミネが後退りしながら訊く。明らかに敬遠されたようだが、無論承知の上で話したのだ。デューンは彼女の様子を見て笑い、弁解を始める。こんな風に、一切合財を全て笑って誤魔化せればいいのだが。

「まさか、僕等も君達と一緒さ。勢い余って螺子(ねじ)が二、三個外れたってわけ。しょっちゅう馬鹿騒ぎしてるのは認めるけどね」

 正直二、三個どころでは無かったとデューンは思う。螺子穴が意味を成さなくなり、零れ落ちる水滴の如く外れていった気がするのだ。だがこれ以上悪いイメージをもたれても困るので、敢えて言わない。

「よく疲れないね」

「慣れてるから」

 感心したような、呆れたような。どっちつかずな表情のプロミネに、デューンはさらりと返事を返した。馬鹿騒ぎが毎日の日課となっているのは、完全にレイガのせいである。自分達だけで盛り上がるならともかく、赤の他人を平気で巻き込んだり、迷惑を掛けたりする辺りは直して欲しいと思う。今夜の宿だって、下手をすれば周りから苦情が飛んでくるかもしれないのだから。
しかし常々そう思いながらも、デューンとアリスはレイガの勢いに押され、つい彼に合わせてしまうのだった。

「これでドアも窓も鍵閉められてたら泣くに泣けないや。そしたら君、今夜は一緒に居てくれる?」

 流石にそこまでの仕返しはされない筈だが、確信が持てない。本当にやられたらどうしようか、という疑懼が脳裏を掠めるのは、日頃の行いが悪いからだ。

「全力でお断りさせて頂きます」

 冗談の積もりだったのだが、首を横に振られ真剣に断られてしまった。仲間達の勢いに追従できないわけである。何処までが冗談で、何処までが本気なのか、プロミネは見分けるのがあまり得意で無さそうであった。きっと、真面目な性格である事の裏返しなのだろう。

「えー、つれないねぇ」

「当たり前だよ。あんな話を聞かされた後で、一晩傍に居て欲しいだなんて」

「そりゃそうだね。じゃ、戻った方がいいよ。皆心配するからさ」

 幾ら仲間が恐ろしくとも、ここに留まり続けるのは良くない。野生ポケモンや、その他面倒な連中に絡まれる可能性が多少なりともあるからだ。
プロミネは決して自衛が出来ない程弱くはないが、だから安全だと油断するのは早合点である。面倒な連中というのは往々にして、自分より弱そうに見える相手を好んで狙う。
彼女の容姿や雰囲気は強さが滲み出ているとは言いがたく、寧ろ可愛らしい魅力的な雌という印象が前面に出ている。そういった異性の魅力に釣られて短絡的な行動に走る連中を、デューンは旅の中で何度か目にしてきた。
アリスの様に、中途半端な相手を軽くあしらう実力があれば安心できるのだが。どうやら彼女が仲間の下へ戻るまで、一緒に付き添っていたほうが良さそうだ。

「うん、もう少し待ってから戻るよ。デューンさんは?」

「僕は大丈夫。仲間の所まで君を送ってく」

「えー、いいよ。何か気を使ってもらうようで悪いし……」

 プロミネが遠慮した。

「気にしないで。危うく朝まで寝そうだったのを起こしてもらったんだ、それ位の気遣いはするよ」

 プロミネはありがと、と微笑み砂の上にしゃがみ込む。デューンも腰を下ろし、綺麗な星空を眺めた。

「デューンさん達って、普段どういう練習してるの?」

「秘密。そいつぁ企業秘密でっせ、お嬢さん」

 普通に反応するのがどうしてもつまらないような気がして、おかしな事を口走ってしまう。一体何時から自分はこうなったんだろうか。デューンは訝しく思った。

「もう! 真剣に聞いたのに。確かに教えたくないかもしれないけどさー……」

 プロミネが頬を膨らませて拗ねる。

「じゃあ、あのレイガって人とどういう風に知り合ったの?」

 自分とレイガの馴れ初めを誰かに話すのは久々だったので、少し思い返す時間が必要だった。デューンは数秒唸った後、大方頭の中で整理した記憶を静かに話し始める。

「そうだな……何て言えばいいかな? 師匠にレイガについていくよう命令された、ってのが一番近いかな」

 意味が飲み込めなかったようだ、きょとんとした顔でプロミネはデューンを見る。

「僕は元々砂漠で暮らしてた野生のポケモンでさ。何でもタマゴの時に両親と逸れたらしくて、雌のガブリアス――僕は師匠って呼んでるけど――彼女に育てられたんだ。そして彼女に生き抜く知恵と力、ってことで色々と叩き込まれたのがまず始まり」

「生き抜く知恵と力かぁ……何か凄く逞しい響きだね。 どんな事?」

 彼女は興味本位で聞いているだけだ。分かっていたが、どうしてもそれは明かす気になれない。
デューンは野生ポケモンだった頃を回想するのを、ずっと忌避してきた。今の自分があるのは、幼少の過酷な日々という土台があればこそだと肝に銘じているし、耐え抜いた事の自信と誇りは揺るぎ無いものとして心に刻まれている。
しかし口に出せば、再びその日々に後戻りする感覚に襲われる気がしてしまうのだ。生きる為、強くなる為とは言え、二度とあんな鍛錬はしたくない。考えるだけで薄ら寒くなる。

「話したく無い……。こればっかりは……まあ、とにかく滅茶苦茶だったよ……」

 だからデューンは、苦笑いでこれだけ返事をするのが精一杯だった。明らかに消沈した彼を見てプロミネも気まずくなり、口を濁す。

「そ、そう……」

 その後二匹は砂浜を歩きながら、これからの冒険についてだとか、ジム戦についてだとか、お互いの身の上から外れた当たり障りの無い会話を続けた。
二匹はプロミネの仲間が居る、林の近くまで来た所で挨拶を交わして別れた。木立の合間に揺動する薪の光へと駆けていく、彼女の後ろ姿を最後まで見届けてから、デューンはその場を後にした。
 
 
 
 
 
 
 
                                       ―――3―――
 
 
 

「よっ、と」

 羽ばたきを止めて降り立ったのは、切り立った崖の縁だった。
 生い茂る背の高い草叢がデューンを出迎える。中に入るには草を掻き分け、踏み倒していかなければならなそうだ。誰の手も加えられていないであろう群生は、誰にも(はばか)る事無く勝手気ままに土壌の養分を吸い上げ、他者よりも日光に近づこうと競い合うように背丈を伸ばし。飽くなき高みへの切磋琢磨を続けた結果、草叢はデューンの身長では頭まですっかり隠れてしまう高さまで、伸びに伸びていたのであった。
 デューンはプロミネを見送った後、この213番道路を象徴する地形――高台の上に寄り道していた。実の所昼間から、もっと言えば初めてここに来たときから、高台の上に何があるのか気になっていた。しかし昼間の馬鹿騒ぎのせいで、抱いていた興味は一時何処かへ吹き飛んでしまっていたのだが。少し気持ちが落ち着いた所で改めて、高台の上を見物しようと思い立ったのである。こういう時に翼があり、自由に飛べるというのは非常に便利なものだ。どんな場所でも気軽に足を運べるし、地形を無視して移動できるのだから。
 翼を持つ身体にある種のありがたみを意識するのは、飛べる事が当たり前である種族にとっては稀有な感覚だろう。かつてのデューンにとって翼は、背中から生えているだけの忌々しい(おもり)に過ぎなかった。理不尽とも言える過酷な野生時代、あの場所から開放されるには絶対に必要なものだったのに……彼のそれは、その役割を果たさなかった。


「……分かったのか? 答えないのなら、斬り落とす――」


 頭の中を埋め尽くす、死命の狭間で彷徨った記憶。彼女に付き従ったのは敬慕からでは無く、恐怖から。
 デューンの心中に、ドリの実よりも苦い感情が広がった。同時に彼は、断片的にでも自分の過去を思い返して、プロミネに話してしまった事を後悔した。忘れよう、とデューンは自分に言い聞かせる。忘れられないなら封じ込めるだけでもいい、今の自分に必要なのはそんなものじゃない、と。
 仕切り直しの意を込めて、デューンは大きく深呼吸を始めた。青い匂いが鼻腔を満たし、口から抜けていく。思い出せ、自分はどうしてここに来たのだったか。純粋に楽しい何かを求めていた筈だ。
深呼吸を繰り返す内に、普段の自分が少しづつ戻ってくるのを感じてデューンは安心した。苦味は鳴りを潜め、ぐらついた理性が元通りになる。我ながらこの切り替えの早さは称賛に値する、と彼は自分を景気づけた。
 ここ最近レイガとの旅は、専ら各地のジムを回る為に町から町へと移動する事だけに終始していた。道中に面白そうな洞窟や、不気味な無人の洋館等、寄り道したくなる場所が幾つもあったのだが(因みに後者は絶対に入りたくない、とアリスが涙目になり本気で嫌がったので、渋々スルーした)、それら全てを素通りして今に至る。旅ではあるが、「冒険」ではないのである。
 別段、バトル漬けの生活に不満を持ってはいない。しかし元野生ポケモンだからだろうか、昔の事を差し引いても、時々無性に自然が恋しくなるのだ。木の香りや草の匂い、流れる水の音を聞いていると、ふっと心が落ち着き軽くなる。先程浜辺で眠りそうになってしまったのも、その為だったかもしれない。
 お調子者のレイガなら、適当に説得して冒険をさせるよう仕向けられるが、バトルを疎かにするのはデューンの本望ではないし、チームとしての動きに反する。寄り道は息抜き程度に済ませ、リーグ制覇の目標に向けて邁進していこうとの意気込みを掲げたのだ。最後までその姿勢に徹してこそ達成されるし、妥協は要らないとデューンは思っていた。
 とは言え、やはり自然を求める冒険心には抗いがたい。今日明日は息抜きの時間だから別にいいよねと考えてしまう。実際別にいいのだが、この二日間で緩み切ってしまわないだろうか、という不安も多少頭にもたげてくる。

――まあ、気にしたら息抜きにならないか。

 今一度、草の匂いを吸い込んだ。心持ちに順じて草叢へと踏み入ると、青い匂いは濃厚になり、身体を撫でる感触が加わった。
 思っていたよりも翼が邪魔だった。普段通り左右に広げたままだと、どうしても草に引っかかって抵抗が大きくなり、歩き辛くなってしまう。仕方なく背中に翼を回してみたが、この態勢のまま歩くのはこれまた思っていたよりもきつかった。翼の重みで重心が後ろへ傾いてしまい、非常に歩きづらい。ある意味トレーニングになるかもしれないな、とデューンは苦笑した。
 少し前のめりの姿勢になって、バランスをとる。すると今度は草が顔にかかって鬱陶しい。カバーがあるお陰で目に当たる恐れはなかったが、顔で草を掻き分ける格好になってしまっている。いっそ技を放って刈り取ってしまおうか。そう思い至るのに時間は掛からなかったが、いやいやそれでは意味が無いと気を取り直し、デューンは草との戦いを続けた。そもそも一体何処に意味があるのかという根源的な疑問は置き去りにしたままだったが、この重要な疑問を都合良く忘れるスキルを、彼はレイガから学んでいた。
 暫く奥へと進んでみたが、ひたすら視界を埋め尽くすのは草、草、草。野生ポケモンとも遭遇せず、特に変わった事は無かった。
 そうなると、いよいよ忘却スキルの行使が難しくなってくる。何か真新しい刺激があると期待して崖の上へ来て、苦労して草叢を進んでいるのに――

「……ん?」

 もう止めておこうかと思い始めた頃、顔を叩いていた草が突然消えた。
草が薙ぎ倒されて出来た、開けた場所に出たのだ。デューンがやっと翼を伸ばせる程度の広さで、南の森と北の崖を繋ぐ、細い獣道の様になっている。野生ポケモンが通った後らしいが、草の潰れ方や道幅からして、どうやらそれなりに大きいポケモンが残した跡のようだ。

「ふぅん……。やっぱり探険はこうでなくちゃね!」

 もしかしたら自分達が浜辺で騒いでいた時、この道の主は崖の上にいたのだろうか。
 正体を知りたい。好奇心が湧き上がってくる。左を見れば、道の主は森から出てきたか、若しくは森に戻っていったと分かる。草の倒れた方向が所々一致しない事から、恐らくは同じ道を往復したのだろう。となれば、道の主は森を住処にしているポケモンかも知れない。レイガとアリスには悪いが、自分だけで楽しませてもらおう。デューンは早速、森を探索することにした。

 頭上の木々が月光を遮り、森の中は草叢に増して黒が張り付いている。
 当然、視界は悪い。だからと言って木に激突したり、目の前の茂みに気が付かないということは無いが。朧げに浮かぶ木立の影を頼りに、デューンは臆する事無く突き進んでいく。いざとなれば空へ飛び出してしまえばいいのだから、どれだけ道に迷おうが平気なのである。
 あの高台は北に進むにつれて低くなり、平地と繋がっているらしい。地面はなだらかな下り坂になっていた。分かった事といえばそれ位で、肝心の道の主は何処へ行ったのか。暗がりの中では手掛かりが見つからないので勘任せだった。
 当ても無く夜の森を散策するのは、ある意味新鮮な体験だったが。夜行性のポケモンの一匹や二匹と遭遇してもいい筈なのだが、時折木の上からヤミカラスやホーホー、ヨルノズクの鳴き声がするだけで、地上は静まり返っている。野生にとっては、もう寝床で寝静まっている時間帯なのか。
 それもそうか、とデューンは一人納得した。こんな暗闇の中、何をやる事があるというのか。すっかり人間の生活リズムに慣れきってしまい、たまに夜更かしまでするようになった自分達でも、それはやる事があるからそうしているだけであって。人間社会に比べて刺激の少ない自然界では、自分達よりもずっとシンプルな生活サイクルが当たり前なのだ。
 身も蓋も無い話暇だから寝るというわけだ。やることがある楽しみか、暇を持て余す贅沢か。本当の所、一体どちらが幸せなのだろうとデューンは歩きながら考えに耽っていた。が、それがいけなかった。
 足元が、消えた。右足が宙に浮いている。体が……前に傾く。

「うわ!?」

 迂闊過ぎる、やっぱり今日の僕はおかしい――デューンはようやく、自身の不調をはっきりと自覚するに至った。
 前方への注意を疎かにした為、足元が崖になっている事に気づかず踏み外してしまったのだ。
 その崖が十メートルとか、そういう高さなら翼を使って十分対処が追いついた。しかし不運な事に、彼が飛び降りようとしているのはせいぜい一メートル半程度の高さ、崖というよりは段差というべき地形だった。無論成す術の無いまま身体は重力に従い、自然落下する。静寂を破り、腑抜けた衝撃音が周囲に響いた。

「うう、心が折れそうだよ」

 デューンが仰向けになったまま、大袈裟に呟いた。彼が落ちた場所は、木の葉が途切れて月光が差し込み、他の場所よりもやや明るい。月が自分の間抜けな失態にスポットライトを当てているような気がして、デューンは無性に悔しくなった。尤も、その悔しさの矛先は自分に向ける以外どうしようも無いのだが。素早く立ち上がって土を払い、地団駄を踏みつつさっきまでの己自身を心の中で罵倒した。どれだけ叫んでも取り戻せない繰り言である。自分が何処かの誰かに似てきてしまっている気がするのは、一体何故だろうか。
 一頻り扱き下ろしにしてすっきりしたデューンは、振り返って自らを貶めた段差を憎々しげな目で見つめた。こいつめ、中途半端な高さをしちゃって――恨み言の一つでも掛けてやろうと思った刹那、そこに横穴が出来ていることに気が付いた。
 離れて見てみると、穴は横には広いが高さは低い。デューンでも屈むどころか、地面に這い(つくば)らなければ入れない低さである。それさえ気にしなければ、十分野生ポケモンの住処となり得る横穴だ。それとも、ただの洞窟なのか。デューンは這い蹲って、穴の中を覗き込んだ。
 何も見える筈は無かったが、もし自分の起こした音で中の住人が起きてしまっていたら難なので、とりあえず謝ろう、位の軽い気持ちで頭を突っ込んだのであったが。
 


「……っ!」



 デューンは頭に血が上るのを感じた。
 反射的に頭を引っ込め、弾かれたように起き上がって後退る。その動きは、極限まで集中力が高まったバトルにおいても意図して出すのは困難な程の、鋭さと速さだった。
 最早言い逃れが出来ない程に動揺している。心臓は早鐘を打ち、血液は沸騰したかのように熱く、小さな掌に汗が滲む。翼が麻痺し、小刻みに痙攣する。それでも瞳は横穴を凝視したまま、足は張り付いたようにその場から動けない。
 穴の中には、生々しい匂いが充満していた。雌の放つ、甘く艶めかしい匂いが。 
 知っているつもりだった。アリスに限らず、かつて共に旅をしていた仲間にも雌はいたし、仲間同士で夫婦になった者もいる。図らずして行為の残り香を嗅ぎつけてしまう事も度々あった。だから、この匂いの意味する所は知っているつもりだった。
 だが、この匂いが自身にどう作用するのかという点について、デューンは認識が甘かったのだ。いや、ここまで彼が動揺したのは、横穴という閉ざされた空間によって濃縮された匂いに当たってしまったからだろう。彼は冗談とはいえども、雌を押し倒す位の事は平気でやってのけるのだから。
 身体は熱く滾り、しかし凍りついたように立ち尽くすデューン。脳裏に浮かび上がるのは、砂浜で転寝(うたたね)していた時に見た、今の今まで忘れていた夢。自分自身の理性と……恐らく本能との対話。

「おいおい、折角目と鼻の先に(おんな)の身体があったってのに。みすみす見逃すとは意気地がねえのなぁ? デューン」

 その通りかもしれない、とデューンは思った。一体何に遠慮してアリスを見逃したのか、デューンはその時の状況をうまく思い出せなくなっていた。
 最初に振ってきたアリスの責任なのだから、そこにつけ込んでしまえば良かったのではないか? そんな事を切実に考える程、デューンの意識は本能の言葉に傾いていた。

「はいはい殊勝なこった。だがよ、てめぇはそれで満足してんのか?」

 満足しているわけが無かった。今となっては、デューンは彼女を見逃した事に後悔すら感じ始めている。

「てめぇの意志に聞いてんじゃねぇ、身体に聞いてんだ。さっきあの(おんな)を組み敷いた時、一瞬だがてめぇ本気になりかけてたろう? たかが遊びだってのによぉ」

 あのまま続けられたら。詰まらない遊びでは無く、本当に自分の欲望を満たすことができていれば、どれ程楽であったか。想像すると、デューンは殊更に後悔に駆られた。

「溜まってんだろ、え? 何時まで痩せ我慢を続けるつもりだ」

 今までの自分は、全て仕舞い込んで我慢ばかりを続けてきたのだろうか。 
 勝手に先走ろうする本能を抑えるのには、多大な苦痛が伴っていたような気がしてきた。もう限界だ、自分はよくやった方だとデューンは思う。

「決まってんだろ、俺は犯る( ・ ・ )ぜ! 人間を張っ倒しちまえば邪魔する奴はいねぇんだからな!」

 そうだ、至極簡単な事だったのだとデューンは気付く。
 あの状況、邪魔者はたった一人で、しかも人間。更にアリスは冗談のつもりで、自分に対してあけすけになっている。これ程好条件が揃っていたにも関わらず、自分はその好機を溝に捨てたのだ。
 何て馬鹿な事をしたのだろうか。デューンは自分の馬鹿さ加減を激しく苛んだ。逆らった所で無駄な足掻きだったのである。一旦身を任せてしまえば、鬱屈したこの感情を全て吐き出せたかも知れないのだ。誰でもいい。誰かを滅茶苦茶にしてやりたい。凶暴な衝動に駆られたデューンはふらふらと歩を進め、穴に近づいた。無論中に居る何者かを狙う為に、である。

「アステアネ、あの(おんな)め……アステアネ、てめぇのせいで僕は……貴方のせいで俺は」

 うわ言の様に呟くデューンには、何時もの剽軽(ひょうきん)な雰囲気は微塵も無かった。蛇睨みすら凌駕するかと思われる程に眼は鋭く、どす黒い憎悪の念を瞳に込めて。得体の分からない激情を映し歪みきった顔に、歯軋りの音が一層醜悪さを際立たせていた。

「……」

 デューンの意志に反して、ふらつく身体は歩を止める。
 穴の前で暫し立ち止まったのは、何処かで良心と理性の呼ぶ声が聞こえたからだろうか。
 進めば、自分の抱えてきたものをぶつけられる筈なのに。内に秘めた狂気の炎は、それ以上燃え広がる事を拒んでいるようだった。
 楽になりたい。でも、躊躇してしまう。けど、このままでいるのも嫌だ。じゃあ、どうすればいい。
 煮え切らない自分自身に、デューンは更に苛々を募らせた。にも関わらず、踏み出そうとする身体を引き止める力に、逆らえず愚図つく。
 デューンは理性というものを激しく憎んだ。どうして立ち止まる必要がある。穴の中で呑気に寝入っている誰かを、思う存分蹂躙してやるだけ。たったそれだけの事を、あの(おんな)の許で育ってきた自分が出来ない筈が無い。
 非情に成り切れ、と自らに言い聞かせる。性格を取り繕って自分を偽るのは、自由を得たあの日から今までずっと続けてきた生き方だ。違うのは、単に今この時ベクトルの向きを真逆に転換するという一点のみ。温和だろうと、凶悪だろうと、自分の行為の本質は不変なのである。何故迷う、何故躊躇う。何故、何故。
 悶々と逡巡を続ける内に、どれだけの時間が過ぎただろうか。進む事も退く事もせず、デューンは穴の前で立ち尽しているだけだった。雌の匂いに中てられた身体は依然として火照ったまま、神経は張り詰めて過敏なまま。真っ当な紳士然としたポケモンであったなら、即座にこの場から立ち去る事ができたろう。或いは、膨れ上がった情欲を抑える為手段を講じるのは、自然な反応である筈だ。
 しかしデューンは、情欲以外の蓄積した感情によって正常な判断を妨げられていた。一時でも過去を振り返ったが為に、本能を刺激される事によって歪んだ自身が顔を覗かせたのだ。それでも彼が決定的に破綻せず踏み止まっていられるのは、醜さを隠そうと取り繕う努力をしてきた積み重ねがあったからだろう。屈すれば、全てを無に帰してしまいかねないとの思いが、危うい所で彼を引き止めている。

「……っ……っぁあああああ!!」

 静寂の森に、突如響き渡る絶叫。叫びの主――デューンは天を仰ぎ、やり場の無い憤りを吐露した。
 振り向くと同時に力強く地面を蹴り、翼を巧みに操って空中で姿勢を整える。そして鈍い光を放ち始めた尾……“アイアンテール”を横薙ぎに振るい、木の幹へ叩きつけた。
 鈍い炸裂音と共に、樹皮が砕け木片が散る。切り出された直後の木材に似た香りが、抉られた幹から蒸散する。攻撃は太い幹を、三分の一程の深さまで削り取っていた。
 息を荒げ、八つ当たりの後を見つめるデューン。厳つく顔をしかめていたが、瞳からは邪気が消えうせていた。

「はぁ、はぁ……はぁ、まさか、この僕が、物に当たる、だなんてね……」

 もう二度と揺らぐものか。デューンの表情には、新たに固い決意が刻まれていた。
 自分には仕切り直しが必要だったのだろうと思った。それを鑑みれば、今日の自分がどこか調子外れだったのも、ふとした拍子で錯乱したのも合点がいく。
 荒れた息を整え、デューンは精神を落ち着かせる。だが、どうにも身体の熱だけは失われない。
 当然どうすれば治まるのかは熟知しているが、この場でしようにも穴の住人の事が気掛かりだ。騒音で叩き起こされ、文句を言いに外に出たら……なんて気まず過ぎる。デューンには、森を出る以外の選択肢が残されていなかった。
 お騒がせしましたと穴の住人に声を掛けていきたい所だったが、流石にそれは憚られる。若干肩身の狭い思いをしながら、デューンはそそくさと木立へ逃げ込もうした。空へ飛び出すのが一番帰りが早いにもかかわらず、わざわざ森へ入ろうとしたのは恥じる気持ちからである。
 だからこそ、一部始終を何者かに見られていたと知って、デューンはひどく赤面した。

「……どなたですか?」

 背後の茂みに隠れている何者かに気付き、声を掛ける。
 いつからそこにいたのかは分からない。いつからであろうと、デューンを変なポケモンと見ている事は間違いないだろうが。それとも、騒音に対する苦情だろうか。できれば後者の方がありがたい、とデューンは切に願った。

「僕が立てた物音で起きてしまった、という事であれば申し訳有りませんでした。直ぐにでもここから消えます」

 恥ずかしさからあがってしまい、意図せず畏まった口調になる。
 遭遇してしまったからにはあらぬ誤解だけは解いておきたい。デューンはただそれだけを思い詰めて、隠れている何者かの返答を待つ。

「何だ、あんたは普通に話せる奴みたいじゃないか――あんたは正気か?」

「正気かと申されますと、全て見ておられたということで? これはお目汚し失礼致しました。今の僕は至って正気です」

 唐突にぶつけられた問い。幸いな事に、返事は即座に返ってきた。
 茂みの影から姿を現した相手は、ゆっくりと歩きデューンに近づいてくる。月明かりが照らし出したのはオレンジ色の毛皮と、腰の辺りまで伸びた黄色の浮き袋。雄のフローゼルだった。
 デューンを見据えるフローゼルの表情には、僅かに驚きと警戒の色がちらついていた。その事が自身に対する印象を雄弁に物語っている様に感じたデューンは、いよいよ自身の不甲斐無さを今一度直視せねばならなかった。やけくそになりたい気分を抑えつつ、デューンは想定される二つ三つの問答を覚悟した。

「そうかい悪かった。俺はてっきり、あんたもおかしい奴かと思っちまってさ」

 先程の問いといい普通は、面には出さないにせよ失礼な奴だと内心毒づく所であろう。如何に他者からは気違いじみて見える所作であろうとも、当の本人にとってはそうなって然るべき背景があるのだから。しかしデューンは真面目過ぎるが故に、フローゼルの非礼に対して心の内ですら反論出来なかった。一瞬たりとも理性を欠き凶暴な衝動に駆られた自分を、ただ深く反省して恥じる事しか出来なかったのである。

「あの穴の所で何をしてたんだ?」

 反省という言葉が念頭に形而したデューンは、考えに耽っていた為に足を踏み外して、段差から落ちた時に横穴を見つけ、迷惑を詫びようと巣穴を覗いたら――という一連の流れを全て話し聞かせた。それでも流石に、自分の過去に抵触する部分は適当に取り繕ったが。デューンが語っている間、フローゼルは只静かに頷きながら聞き役に徹していた。
 やがて一通りの事情を説明し終えると、フローゼルは何故か神妙な面持ちで話を始めた。よくよく考えてみれば、冗長な言い訳を遮らずに最後まで聞いているあたり、何かおかしいと思うべきだったんだろうとデューンは思った。

「あんた見た所ドラゴンなんだし、釣られるのも無理ないけど。だけどあれは絶対に駄目だ。あれは狂ってる」

 デューンは横穴の住人を「蔑んで」評しているのではないのだ、とフローゼルの言葉を解釈した。狂ってる、と強く断言する彼の様子が目に見えて真剣だったからである。
 同時にフローゼルが「あんたも」と言っていたのを思い出し、その事と意味を繋げる。あの道の主の正体が何者なのか、デューンには分かるような気がした。

「狂ってる? つまりあの穴に棲んでる、雌のドラゴンポケモンが?」 

「そうだ。あれがここに棲み付いたのは前の夏頃だったから、多分一年前になる。ここに来た時からあれはおかしかった」

 デューンの言葉に、フローゼルは大きく頷いて首肯した。

「生気の無い目をしてて、不気味なだけだったらまだ良かったし気遣う奴がいただろうが。自分で自分の身体を滅多打ちにしたり、突然吼えたり、泣き出したり」

 フローゼルは声を落とし、彼女の様子を語った。
 かつての自分も同じように見えていたかもしれない。デューンには、ぼろぼろになった哀れなその姿がリアルに想像できるような気がした。奇妙なシンパシーすら感じられた。

「とにかく頭がどうかしてるんだ。尤も最近は随分大人しくなったけど」

「……彼女自身は、何か言ってるの?」

 誰かに助けを求めているなら、これ程の言われ方はしないだろうが。助けて貰いたくても助けて貰えなかったデューンとしては、そこの所が気になるのであろう。手を伸ばせば誰かが引っ張り上げてくれるかもしれないのに、最初から諦めているような者だったなら、感じた親近感を撤回しなければ自身のプライドに関わる。
 しかしフローゼルは、とんでもない、といった調子で声を上げた。どうやら彼は彼女(あれ)を心底敬遠しているようだ。

「話なんかできやしない! 何されるか分かったもんじゃないんだからな。俺も含めて、皆怖がって今だにあれとは距離をおいてる」

 理解出来ないものには関わらず逃げるのが得策ではあろう。野生の世界なのだから、安易に薄情者だと非難することは安全圏からの物言いである。だがそれでも、踏み込もうとするお節介が一匹も現れなかったらしい事にデューンは驚いた。皆一様に交流を自粛する程彼女(あれ)は特別な存在なのだろうか。

「で、君達があれと呼んでる彼女は、結局何者なんだい?」


「種族名は……何て言ったっけな、忘れちまったよ。実はあんたが何てポケモンなのかも、俺は知らないんだけど。でもあれは間違いなくドラゴンタイプだね。四足で緑色、腹が白くて尾が長い。赤色の翼が生えてるんだ」

 名前は兎も角、種族名ですら呼んで貰えないというのは哀れ過ぎはしないか。フローゼルに対する批判を暗に込めて、デューンは僅かに語気を強めた。しかし単に彼が……彼らが無知なだけだったと判明して、少し肩透かしを食らった気分になる。
 名前が分からない、というのが恐怖を煽る原因にもなり得るのかどうかはさて置いて。デューンの知り得る中にも、フローゼルが語った特徴に合致するポケモンはいない。正確に言えば一つだけ噛み合わない要素があった。それは体色が緑だという事である。まさか、俗に言われる「色違い」ポケモンだろうか。もしそうであるなら、彼女がここにやってくるまでの経緯は大方想像が付く。
 色違いはその希少性故に、しばしば心無い人間達の間で金銭取引のダシにされる。取り締まりの目を掻い潜って遣り取りが行われる裏の市場は、近年の拡大傾向に歯止めが掛からない状態らしい。密猟が増加するにつれて自然とマーケットも膨らみ、果てにはあろうことかトレーナーのポケモンを「ゲット」してしまうという技術まで現れ、一時期とある地方では大いに問題となった。
 人間も人間だが、色違いの彼ら自身も問題を抱えている。余程の強運でもない限り、何かしら狙われたり、売り買いされた経験を持っている彼らは、人間のみならず専ら他人という他人を信用しない。故に誰かに助けを求める、という選択肢を選べない彼らは益々孤立し、自ら事態を悪化させている節がある。転売に次ぐ転売が日常茶飯事と化した頃には、良くも悪くも要領を得た生き方の出来上がり。諦めの気持ちから、商品として扱われている境遇に憤りの感情も湧かなくなってしまうという。
 いつだったか。こんな類の話をレイガから聞かされた時、正直彼らは甘ちゃんだとデューンは思った。不愉快ですらあった。別に具体的な根拠はなかったし、人様には人様の事情というものがあるのだと頭では分かっていた。だが、何かどうしても気に入らないものが引っ掛かって、単純に可哀想だなどとは思えなかったのである。
 混濁した感情が渋顔となって表出したからか、傍で同じ話を耳にしていたアリスがどうかしたのかと訊いてきた。後にも先にも、彼女に嫌悪感を抱いたのはその時が唯一だった。内心の混乱をひどく見透かされたような心持がして、幾ばくか刺々しさを含んだ調子で、煩い、と切り返してしまった。皆の手前、常にひょうひょうと振舞っていた自分が崩れかかった事に気付いて、今度は冷水を浴びせられたかの様に身体が冷えた。
 幸いアリスは冗談として受け取りその場を流したが、大丈夫かと後になって再び訊ねてきた。感受性の高い彼女はあの一瞬で、直感的に自分の本心を読み取ったに違いない。そう思ったデューンは敢えて彼女に真剣な眼差しを向けて、大丈夫だ、どうにもならなくなった時には君を頼りにしてるからと言った。アリスは分かりました、と短く答えたきりで追及はしてこなかったし、その一件以来同様の問答を仕掛けてくる事は無かった。
 
「おい、おいってば。ぼーっとして、あんた熱でもあるのかい? まさか自分の名前忘れたとか言わないよな?」

 ふと現実に立ち返ったデューンは、話し相手を置き去りにして思案に暮れていた事をようやく自覚する。何を話していたのか思い出すのに暫しの間が必要だったが、ペースを立て直して口を開く。どうにも今夜は、考え事が多くていけない。下手な悪戯はせずに大人しくベッドで寝るのが正解だったとデューンは改めて痛感した。

「あぁ、ごめんごめん。僕はフライゴン、名前はデューンだよ」

「俺はフローゼルのフロト、一応この辺りを仕切ってるポケモンさ。というわけで歓迎するよ、新入りさん」

 決定的な勘違いをされている。自身の内面世界に入り浸って、現実を把握する能力を削がれているデューンでもそれは明確に認識出来た。デューンは誤解を解こうと、若干慌てて早口になった。

「いや、僕はトレーナー付きなんだ。今は旅の道中で、高台のホテルに一晩宿を取ってる」

「おっと失礼、先走った。……トレーナーと喧嘩でもしたのか?」

 フロトは小さく舌打ちをして、後ろ手で頭を掻く。それから気遣うような視線をデューンに向けた。
 こんな時間にトレーナー付きのポケモンが森を徘徊しているとなれば、そんな想像をされて当然だろう。かといって先程のような姿を見られたからには、動機は本当にその積もりだったにせよ、ただの散歩ですと言って誤魔化せる筈も無い。やや間を空けて、デューンは他躊躇いがちに呟いた。

「ちょっと嫌な事を思い出してさ。一人になりたくて」

「……そうかい。悪い、邪魔しちまったかな。だけど俺(かしら)って身分だからよ、森に入ってくる奴には逐一事情を説明しにゃならないんだ」

「ううん。お陰で気が紛れたよ」

 なら良かった、とフロトは息を一つ吐いた。それからデューンに背を向けて茂みを飛び越え、振り返って再び声を掛ける。

「ちょっと待たせてるのが居るんでね、俺はこの辺で。あんた強そうだし大丈夫とは思うが、一応気を付けろよ」

 右手を上げ、フロトは別れの挨拶をする。デューンもそれに、僅かばかりの微笑みを返した。

「ありがとう。君もこれから頑張って」

「……何で分かった?」

 フロトがうろたえてまごついたのを見て、してやったりと悪戯な顔をするデューン。表向きは既に、普段の彼の姿を取り戻しているようだった。

「君は仕事で僕は寸止め、お預け食らったのはお互い様じゃない? 同類の気配がしたんだよ」

「無駄に目敏いな……」

「よく言われる」

 苦笑する二匹。今度こそさよならだとフロトは踵を返し、じゃあなと言い残して走り去って行った。




  
 
どうにもならない倦怠感、何をするのも億劫になりつつあって。
考え悩んでも仕方ないとは思えども、どうしても足踏みをしてしまっていました。
何もしてないのにいつも疲れてばっかりで……何なんですかね、これ。

言い訳になっていない言い訳はさて置き、ようやく書き進める事が出来そうです。
私にとっては気の遠くなりそうなものですが、どんな形でもいいから完結に漕ぎ着けたいと思っております。
 
 


 
 


トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.