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現実と悪夢の出会い

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現実と悪夢の出会い 


ちょっとグロいシーンがあるけれど、そこは作者の描写力の無さでオッケーだっ!!
もうその血とかそういうワードに弱いっていう方は無理ですね。



・・・痛い・・・血のにおいをかぎつけられる・・・ごめんなさいお父さん・・・もう・・・だめ・・・




ドサッ・・・


まぶしく太陽が照りつける・・・窓際で涼しい秋風にその黒い身をさらす1匹のヘルガー。とても気持ちよくて、うとうとしている。
「お~い、タオぉぉ・・・」
「んだようるせえな。」
タオと呼ばれたヘルガーは黒い身体を鬱陶しそうに自分のご主人のもとへ動かした。
「うるさいってなんだよぉぉぉぉ!」
リビングのテレビの前で自分のパートナーの目を憚らず号泣する人間。その名前はリョウという。年齢はヒミツ。
「リョウ、うっさい。」
「ううっ・・うううっ・・・」
いつまでも泣いている情けない人間に、タオは頭の角で1回、ゴン、とリョウの頭に頭突きをした。

「すいません、落ち着きました。」
痛みで頭を抑えつつ、瞳を真っ赤にしたリョウは、タオにペコっと頭を下げる。
「よろしい。」
タオもどこか満足げだ。

「そうそう、今日は午後から育て屋さんに預けたクロノとアオちゃん、イーブイ3匹を引き取りに行くから。」
クロノ、と言うのはブラッキーで、アオちゃんってのはシャワーズのことだ。とっても仲がいい。言ってしまえば夫婦だ。
「ういうい。」
リョウはタオのリアクションに不満があるみたいで、ぶいぶい言っている。
「なんだよ、もうちょっと嬉しそうにしてもいいのに。」
「♀と♂の比率考えろよ。俺とクロノだけじゃねぇか。」
「年長者なのにモテないのが悔しいのか?」
ぶちっ・・・リョウの挑発に、タオは何かが切れた気がした。
「るせぇ!外行ってくるからな!」
「ああ!ちょっと待てよ。俺も行くって。」
タオもついつい言ってしまっただけなので、本心では外に行く気はあまりなかった。けれどリョウは外に行く準備をしている。リョウ以上に焦ったタオ。

「お~い・・・ユーリ?クレア?」
リョウがそう呼ぶと、騒がしく階段を下りる音が聞こえてきた。
「なに?ご主人、外でも連れてってくれるの?」
エーフィのユーリが、リョウの心を勝手に読んで、言った。たじろぐリョウ。
「ほんとに?やったぁ!」
サンダースのクレアもとっても嬉しそうだ。
「あ・・・まぁそうなんだけど・・・」
瞳をキラキラ輝かせるクレアとユーリ。頭をポリポリと掻いた後、リュックにボールと道具をいくつか入れたリョウは、それを背負う。
「さ、外行こうか。」

「うひゃひゃひゃ~!」
「やぁん!」
ユーリがクレアに抱きついたり、下らない悪戯をしながら、片側だけが林になっている林道を進んでいく。
「はぁ・・・」
その様子を見てため息をつくタオ。
「どした?入れてもらえばいいのに。」
リョウはタオに言う。
「んなことできるか・・・」
羨ましそうで、悔しそうな口調のタオ。
「この辺って確か、グラエナがいるんだよな・・・」
ふいに呟くリョウ。タオも顔をリョウに向ける。
「そうだ。・・・結構危険らしいぞ。・・・まぁ、群れで襲われたら、どんな奴でもあっという間に死んじまうけどな。」
「怖いこと言うなよ・・・」
リョウはタオの頭を撫でて、お互いの恐怖をなだめる。
「大丈夫・・・いや・・・ちょっと待て・・・」
タオは身体を低くして構える。リョウの顔は恐怖と緊張で一気にひきつった。
「クレア!ユーリ!戻ってこい!」
リョウは叫ぶ。すぐに、は~い!という2匹の元気な声が聞こえ、リョウのもとへ戻ってきた。
「どしたのご主人?」
「いや・・・」
ちらっとリョウはタオを見ると、その表情はニヤニヤしていた。
「タオ・・・つまらん悪戯はやめてよ。」
「それだけ心構えが出来てたら、十分だよ。」
試したんだよ、と言うタオにリョウは少し怒って、こつん、とタオの頭を小突く。
「ったくよ・・・」
また林道を進んでいく一同。またタオは動きを止める。
「ちょっとまて・・・」
「もうその手には引っかからないって。」
タオを無視しようとするリョウの脚に、タオは軽く噛みつく。リョウは止まらざるを得ない。
「わかったわかった・・・で、どうした?」
「血の匂いがする・・・」
感じていたのだ。人間やその他の生物では比較にならない鋭いタオの嗅覚は、血の匂いを。そしてタオは、ゆっくりと背の低い草を掻き分けて進んでいく。
「奥に行きすぎるなよ!」
「わかってるって。」
クンクン、と何度か鼻を鳴らすと、タオの目の前に、”それ”は現れた。
「リョウ!ちょっと来てくれ!」
あわててリョウも、タオのもとへ向かった。
「どした?」
「こいつ・・・」
タオは頭を上に振って、その先にあるものを、リョウに見せる。
「ポチエナだな・・・」
リョウの目の前には、力なくグレーの小さな身体を横たえているポチエナがいた。黒とグレーの肢体は血の匂いと、泥で汚れ、呼吸で時折震えているだけだった。
「生きてるな・・・」
「ちょっ・・・リョウ!」
リョウは止めようとしたタオを抑えて、そのポチエナを拾い上げた。
「そいつはユーリたちとは違う、野生だぞ!」
タオの叫び、つまりリョウの手元にいるポケモン、タオを除いて、全て人為的に生まれてきたポケモンたちだ。
要するに人間に慣れていない、ということは、懐きの度合いに大きな影響をもたらす、ということ。タオ自身も、リョウに懐くには、少し時間を要した。
「だからって、見殺しにはできない・・・」
「助けてしまえば、違う問題を起こすかもしれないんだぞ・・・」
タオは非情だ。自然に慈愛、という観念の存在の一切を、否定する。自身の経験からだろうか・・・それともただリョウが甘いからだけでそれを否定したいからなのか。
「じゃあ、俺がパートナーにしてみせる・・・」
「甘くはないぞ。」
戒めの言葉に顔を締めてそのポチエナを抱き上げるリョウ。そして林道を家へと駆け戻っていった。

「うぅん・・・どうだ?」
リョウはタオルを敷いたり、水を用意したり、ミルクを用意したりとせわしなく動き回っている。ポチエナの様子を見ているのは、タオ。
「はように身体洗ったげな。血なまぐさくて・・・こんな匂いを発していて他のグラエナにツけられてなきゃいいけどな。」
タオルの上でくぅくぅと寝息を立てているポチエナの頬をそっと触るタオ。
「今思い出したんだ・・・近所のガーディから聞いたんだが・・・」
「何を?」
タオの口ぶりに、リョウは興味津津、といった具合に、身体を乗り出す。
「最近、グラエナの群れの”浄化”が進んでいるらしい。」
「浄化?」
聞き慣れない言葉に怪訝な表情を浮かべるリョウ。
「人間との接触を恐れて森の奥から出れず、逼迫した食糧事情から、群れの中で意見を異にするものを集団で襲って家族ごと殺していくそうだ。もちろん、子供もな。」
「そんな・・・」
リョウの顔からさーっと血の気が引いていく。
「こいつはひょっとしたら・・・」
タオの示唆したこと、それは口に出すのもはばかられることだった。目の前にいるポチエナは、まだ幼く、人間でいえば2,3歳くらいだろう。
そのポチエナが、リョウの思ったこと、タオが示唆したことを経験したとすれば、その精神的なショックの大きさは計り知れない。
「グラエナは優れたリーダーに従うという本能があるが、リーダーが優れていなければ、仲間を殺すことを厭わないみたいだな・・・」
「獰猛・・・だからか?」
リョウの言葉に、タオは首をかしげる。
「少し違うな・・・獰猛であるということは、生への執着が強い、ということ、だが、仲間をいたぶって殺すのは・・・生への執着とは違うだろう。」
「たしかに・・・」
リョウは頷いてタオルを出した。ポチエナの身体はすこし動いた。
「そろそろ起きそうだな。」
「ああ・・・リョウは離れててくれ。」
グラエナという生物の特徴か、それともタオの単なる警告なのか、リョウはひとまずソファーの上にユーリとクレアと避難することにした。

「うっ・・・ううん・・・」
ぱちっとポチエナの瞳が開いた。呼吸だけに動いていた身体は、驚いたからなのか、素早く起き上がった。
「ここ・・・どこ・・・」
まだ起きたばかりで、意識がボーっとしているポチエナは当たりを見回した。そして近くにいる自分よりとても大きなヘルガー。
「やっ!やめてっ!」
突然金切り声のような悲鳴を上げて、ポチエナは疲労で重たくなった身体を引きずってヘルガーから逃れようとする。
「こっ・・・こないで・・・」
あっという間に澄んだ赤い瞳は潤み、ぽろぽろと涙をこぼす。出来るだけ警戒しないように、と、タオはゆっくりと近づいていく。
「・・・ころすの?」
ポチエナが発した言葉にぴくっとタオの動きが止まる。
「ぼくを・・・ころすの・・・とうさんみたいに・・・」
「違う・・・」
ついつい反応してしまうタオ。
「うっ・・・うぅっ・・・ころすの・・・ぼくを・・・」
「こっ・・殺さないし・・・それにそもそもお前は・・・」
すまいと思ってはいても動揺してしまったタオはたじろいで動きを止めてしまった。
「タオ!」
リョウがまずい、と思ってあわてて近づいてくる。そして叫んだ。
「ここには君の命を奪おうなんて思ってる奴はいないよ!」
「えっ・・・」
目の前のポチエナも、ぴくっと身体が固まる。
「ころさないの?」
「あたりまえじゃん!」
リョウの言葉は、ポチエナの心を掴んだみたいで、プルプルと震えて、再び泣き始めた。
「ふぇっ・・・えっ・・・えっ・・・ふぇぇぇっ・・・えぐえぐ・・・」
堤防が決壊したように、ポチエナはボロボロと涙をこぼす。下敷きにしていたタオルはあっという間に染みがついて、大きくなっていった。
前肢で顔を拭うように何度も動かすけれど、ポチエナの涙は止まらなかった。
「キミの心を・・・私に教えてくれないかな・・・」
ソファーに乗っかっていたユーリがポチエナの前まで来て、そっとポチエナの前肢を握る。
「えっ・・・ぇっ・・・」
ユーリは泣き続けるポチエナにかまわず、瞳を閉じて、心を読もうとした。

ガルル・・・
ふいに外から音が聞こえてきた。ぴくっと身体を震わすタオ。
「外に何かいるな・・・たぶんグラエナだろうな・・・血の匂いを嗅ぎつけてきたんだ・・・」
「えっ!?」
リョウはゆっくり身を屈めると、ドアの向こうに数頭の四足の生物がいることを、息遣いからはっきりと感じた。
「ここまで多いと・・・」
タオは一応構えている。だが、実際に戦えば、勝ち目はない。
「きゃうううう・・・」
さっきまで泣いてたポチエナは、また金切り声を出すと、臆病そうに身を低くして震えている。クレアも、ユーリも握っていたポチエナの前肢を放してかなり怯えていた。
「勝ち目はなくとも・・・追っ払わないとな・・・」
タオは覚悟を決めてそう言う。

がしゃぁぁん!ガラスの割れる音とともに、ガウガウという吠える音が耳障りなほどに聞こえてきた。
”おい!早く探せ!見つけ次第殺せ!”
リーダーだろうか。それに、足音、反応した声の数、それらから思うに相手は5匹。数の上では勝てそうにない。
”匂いはあるんだからな・・・人間に見られでもしてみろ。明日にでも駆除されるぞ。”
「なるほど・・・」
リーダーが優れていない・・・その理由をリョウは見抜けた。恐喝でしか成り立たない隷属関係。それに刃向かうのは・・・別に可笑しいことでもなんでもない。生きる者の権利だ。
”いたぞ!”
どたばたと言う音が大きくなり、近づいてきている・・・タオとリョウはポチエナを庇うように陣取る。
”おい!人間いるじゃねえかよ!”
リョウとタオの目の前には、4匹のグラエナがいた。皆一様に低く構え、威嚇をしている。
「とっとと帰れ!」
そう叫んでみるも、囲んだグラエナは嘲り笑うだけ。
”独りで何ができんの?”
”バカじゃねえの?”
まずいなぁ、とリョウは思ったけれど4匹のグラエナはリョウ達が逃げれないように、うまく配置していた。不意にポチエナがリーダー格のグラエナの前に飛びだす。
「・・・ぼくが死ねば帰ってくれる?」
「んなっ・・・何言ってんだ!」
リョウとタオはあわててポチエナを止める。
”そうだ・・・おまえが逃げたりしなきゃ、こいつらも死ぬことはねえのに。”
どうやらポチエナの生死の如何に関わらず、グラエナ達は、リョウ達を逃してはくれないようだ。ポチエナはじっと構える。リーダー格のグラエナはポチエナの身体を舐めまわすように見ている。
”まだ血の匂いがするな・・・どうだった?目の前で自分の親を殺される気分は?”
グラエナの口から飛び出した言葉・・・それは最も恐れていた言葉だった。ポチエナの身体がブルブルと震え始める。
「いうな・・・」
バッ!とタオが突然そのリーダー格のグラエナに飛び付いた。突然のことに反応できなかったグラエナは倒れこんだ。
”なんだてめ!”
「お前だけは絶対に許せない!」
タオはいつになく怒りに震え、リーダー格のグラエナを圧倒していた。リョウはチャンスだ!とポケモンたちに指示を与える。
「クレア!十万ボルト!」
「あいよぉ!」
クレアはとげとげを硬くとがらせて周囲のグラエナに十万ボルトを浴びせる。
「ユーリ!ポチエナを避難させて!」
「あいっ。」
ユーリはタオともみ合いになっているリーダー格のグラエナの前で身体を震わせていたポチエナを掴むと、ソファーの影に隠した。

「だいじょぶだから・・・」
ポチエナをあやすユーリ。ふいにポチエナの身体がぴくっと震え、上を向いた。
「うっ・・うえ・・・」
ユーリはポチエナに言われるがままにソファーの上を見た。
「えっ?あっ!!」
ソファーの上からグラエナがじっと2匹を睨んでいる。
「私エスパーだから・・・あくタイプ苦手なんだよね・・・」
”お前ら・・・こそこそしやがって・・・”
グラエナはソファーから身を乗り出して、ユーリに襲いかかろうとする。ユーリはせめて、とポチエナを庇おうとするが、ポチエナはユーリの肢体をすりぬけ、グラエナに向かっていく。
「ダメだって!・・・きゃぁっ!」
”ぎゃぅぅぅっ!”
もうダメだ、とユーリが瞳を閉じ、身体を固めてじっと耐える覚悟をしたけれど、何も起こらない・・・代わりに起きたのは、自分たちを襲おうとしたグラエナの悲鳴だった。
「・・・!ポチエナ!」
”うぁぁ・・・いでぇ・・・”
ポチエナが、グラエナの首元にまともに噛みついていた。急所をやられて、グラエナは苦悶の表情を浮かべる。
「離れなよ!」
ユーリは深く噛みついているポチエナをどうにかして引きはがす。グラエナの首からは、血が滴り落ちていた。
”ってぇ・・・くそっ・・・”
「これいじょう・・・みせるな・・・みせるなっ・・・」
声にならない悲しみを訴え、ふるふると震えだしたポチエナの身体をユーリはぎゅっと抱きしめる。グラエナも痛みに負けて、退散していった。

”逃げるぞ!”
1匹がやられると雪崩をうつようにグラエナたちは逃げていく。タオはリーダー格のグラエナを逃すまいと必死に身体を抑えつけている。
「逃がすか!」
”ふふっ・・・”
「いでえぇ!」
グラエナはほくそ笑むと身体を曲げて、ヘルガーのお腹にガブリと噛みつく。
”これだから甘いんだよ・・・人間と暮らしてる間抜けはな!”
捨て台詞を吐くと、グラエナはそのまま逃げていった。タオは痛みをこらえて、みんないるか、と確認していく。リョウは痛そうにしているタオの傍に寄る。
「タオ!大丈夫か?」
「ああ、ちょっと油断した・・・」
タオの傷を見る限りでは深いものではなさそうだ。ほっと安堵するリョウ。
「ユーリ?」
「あいあ~い。」
ユーリはにこっと微笑んでソファーの裏から、じらすように背中側から出てきた。
「ポチエナは?」
「こ・こ。」
ユーリはにこっと微笑んで前肢をまだ隠れてる自分のお腹に指す。リョウはソファーの上からそれを覗いた。
「くぅくぅ・・・」
「安心して寝ちゃったみたい・・・」
のんきな奴だなぁ、とリョウは思ったけれどユーリの硬い表情からそれは間違った推測であると、思い知った。
「強かったよ。この仔。自分の何倍もあるグラエナに立ち向かって・・・追っ払っちゃった。」
「そっか・・・」
クレアもあくびをしているし、ひとまずみんな無事でよかった、と安堵したリョウ。散らかった部屋とガラス片を片付ける間、動かないように、みんなに言う。

「くぅくぅ・・・」
「よく寝てるな・・・」
まだ眠ってるポチエナの傍で、タオも伏せてユーリとクレアと一緒にその様子を見守る。
「緊張の糸が切れちゃったのかな?」
ユーリはポチエナの頭を何度も撫でる。
「みたいだね・・・」
クレアもほほ笑んでポチエナの顔をじろじろ見ている。
「この仔の心・・・記憶を読んだけど・・・こんなのひどすぎるよ・・・」
ユーリがいつになく瞳を潤ませている。タオもクレアも、それは聞くべきじゃないんだろうな、と暗黙のうちに了解した。
「グラエナは・・・俺を甘い、と言ったな・・・人間のところで飼いならされてるから、大事な判断を見失う・・・って。」
タオの沈痛な喋り方は、クレアとユーリを不安にさせるには十分だった。
「でも・・・野生だからどうこうとか、そんなんじゃないと思うけどな・・・」
「うん・・・」
クレアが頷く。
「でさ、この仔、ウチで面倒見るのかな?」
「だろうなぁ・・・」
とってもクレアは嬉しそうだ。一方のタオは今でさえ大所帯なのに、これ以上増えるのは・・・という気があったし、こいつだけは、ウチで面倒を見たい、というのもあった。
「名前・・・どうしようかな・・・」
悩ましげなユーリ。
「リョウに任せたら?」
タオは言うけれど、クレアもユーリも自分で名前を決めたがっている。
「くーちゃんってのは?くぅくぅ寝てるから。」
「愛称としてはいいと思うけど・・・名前としてはどうかなぁ?」
ユーリの提案に、クレアは首をかしげる。少し落ち込むユーリ。
「ま、ひとまずくーちゃんでいいじゃないかな?」
クレアの一言に、嬉しくてユーリはにこっと笑う。

「もう掃除終わったぞ。」
掃除が終わった、リョウのそのセリフを聞いて、再びクレアとユーリは思い思いのポジションに散らばる。リョウもポチエナの傍でまだ傍にいたタオとともに様子を見守る。
「このポチエナ、名前決めてあげないとなぁ・・・」
タオは、リョウの呟きに気付いて身体をぴくっと震わすと、リョウの方に振り向く。
「ユーリがいい名前決めてたぞ。」
「へぇ・・・」
ほぉほぉ、と感心したリョウ。ユーリはどっちかというと1匹オオカミみたいなところがあったから、名前を決めるとか、イベントにはあまり加わってこない、そんなイメージがあった。
「ねぇねぇ!」
タオとの会話に気付いたらしく、ユーリが嬉しそうにリョウのところへ駆けてきた。
「名前?」
「うんっ!」
どんな名前を考えているのかな?とリョウは楽しみにしている。
「考えたんだけど・・・くーちゃんってのは?」
自信なさげに言うユーリ。リョウもしばらく考えて、うーん、と唸った。
「いいと思うんだけど、くーちゃんってことは・・・くーが名前になるんだろ・・・うーん・・・」
名前にちゃんを入れるのは不自然で、くーって言う名前もすこし違和感を感じるな、とリョウは思っている。しばらく考えて、リョウはひらめく。
「あっ・・・そうだ。」
リョウはおもむろに紙に漢字を書いた。
「ほれ!」
「よめないよ。」
冷静な突っ込みに、うう、とたじろぐリョウ。けれど一応説明はしてみる。
「これはそら、空って言う漢字なんだ。音読みはくう。」
「へぇ!」
自分のアイデアを採用してもらえて、ユーリは跳びはねて喜ぶ。
「だからこの仔の名前はソラね。愛称はくーちゃん。呼びやすい方で呼んで。」
「うん!」
タオもクレアもユーリも異存はなく、喜んでリョウの提案に頷く。

「んゅ・・・んっ・・・」
ポチエナは目を覚ました。瞳に映っているのは、ニコニコしているエーフィ、サンダース、ヘルガーそして人間。
「おはよっ!」
ユーリが声をかける。
「おはよぉ・・・」
ポチエナも返事をする。
「あのさ・・・ひとつお願いがあるんだけど。」
リョウがよそよそしく言う。ポチエナもなんだろう・・・とリョウの顔をじっと見つめている。
「俺たちと、一緒に暮らそう。俺のパートナーになってほしい。」
「えっ・・・」
ポチエナは少し驚いた。パートナーになってもらえる、ということは自分を受け入れてもらえたということ・・・とてもポチエナは嬉しかった。
「うん・・・いいよぉ・・・」
眠い目を擦って、ポチエナは言う。
「じゃあ、君に名前をつけてあげよう。」
「なまえ?」
「そう。これからみんなと暮らしていく中で、必要になってくるものだから。」
リョウの優しい口ぶりに、ポチエナの口元も自然とほころぶ。
「なまえ・・・つけて・・・」
「これだよ。ソラっ。」
「そ・・・ら・・・?」
自分の名前をかみしめるように言うポチエナ・・・ソラ。
「そう、ソラ。」
「ありがとござます・・・」
「ふふっ、どういたしまして。そうそう、俺の名前はリョウだよ。」
自己紹介するリョウ。またソラはかみしめるようにリョウの名前を口にしていた。
「りょう・・・」
ソラがリョウを見つめる瞳は期待と希望に満ちあふれていた。リョウもその期待に応えなくちゃ、という思いと、今まで以上にがんばろう、と意気込んでくるのを感じる。

「お風呂入ろうか?」
「おふろ?」
首をかしげるソラ。
「身体を綺麗にしないとね。」
「うん・・・」
リョウはそっとソラのグレーの柔らかい毛並みを触って警戒心を解いた後、そっと抱いた。ソラは、ひゃぁ、と少し驚いた声を出したけれど、すぐに照れ笑いをした。
「えへへ・・・」
そんなソラに、リョウは微笑んでお風呂に連れていった。
「怖がらなくていいからね。」
風呂場のマットの上で、仰向けになったソラ。お腹の黒い毛並みをぴくぴくと震わせて、少しおびえている。すでにリョウはシャワーを手にとって、温度を調節していた。
「水・・・怖い?」
「こわくない。」
ふいふいと首を横に振るソラ。安堵したリョウはにこっと笑ってシャワーを浴びせていく。
「ひゃぁぁ・・・」
ソラの明るいグレーの毛並みは水に濡れて濃い色に変わっていく。温かいシャワーはくすぐったいみたいでぱたぱたと四肢を振りまわして、ゴロゴロとマットの上を転がる。
「こらこら。」
くすくすと、笑うリョウの笑顔を見たソラは、楽しそうにまだぱたぱた動いている。
「きゃん!」
リョウはお湯をよく浸み渡らせるために、ソラのびしょ濡れの身体を体毛ごと掴んで、容赦なくシャワー責めをしていく。
「やぁぁん!くすぐったいよぉっ!」
可愛い悲鳴を上げるソラ。
「くーちゃん!ちゃんとしないと、シャンプー浸けたときに痛いから!」
「ひゃぁぁぁ・・・」
もう十分かな?と思ったリョウはシャワーを止めてシャンプーを手にとって伸ばす。
「んっ・・・」
リョウはソラの毛並みを掻き分けて、シャンプーを塗りこんで泡立てていく。ソラの小さい身体では、ものの数分で真っ白な泡になった。
「ひゃんっ・・・」
幼子とはいえ、♂の象徴に当たってしまうと、すこし気まずい。
「ごめ・・・」
謝るリョウだったけれど、気持ちよさそうなソラはお構いなしみたいだ。
「ふぁ・・・」
すこし瞳が虚ろになったソラ。
「流すね。」
「うん・・・」
またジャバジャバとシャワーで一気に汚れを流し落としていく。ソラは時折ぶるぶると身体を震わせて、水気を飛ばす。そしてそれを浴びるリョウ。
「あ、ソラ?」
「なぁに?」
リョウは、ソラに、桶に入ったお湯を差し出す。
「ちょっと口に含んで、飲んじゃ駄目だよ。」
「うん。」
ソラはリョウの言った通りに口にお湯を含んだ。
「頬を動かして、ぐちゅぐちゅ~ってやって、そしたらペッ、て吐いて。」
「ひゅん。」
言われるままにペッと、お湯を吐いたソラ。そのお湯は・・・血で少し赤らんでいる。素直なソラに、リョウは安堵した。風呂場から出すと、ソラの身体から優しく水気を拭きとった。

「じゃ、ソラ。お風呂入ったからこの家の設備を案内するね。」
「うん・・・きゃうっ。」
リョウはソラを抱えて、家の中をめぐっている、階段を上ったり、下りたり。ソラはどこか楽しそうだ。
「で、ソラの部屋は・・・」
リョウは2階の廊下を見回す。空いてる部屋は・・・と考えたけれど、孤独になるのを避けて誰かと相部屋にするか・・・とも考えたし・・・迷っていた。
「タオ?タオは誰かと一緒の部屋だったっけ?」
「クロノと同じ部屋だよ。」
タオの返事に、そっか・・・と再び頭を抱えるリョウ。
「うちの部屋なら空いてるよ。」
ガチャ、とドアを開けてユーリが顔を出す。
「え?いいのか?」
「うん。くーちゃんなら私の部屋に住まわせてもいいよ。」
「くーちゃん・・・?」
ソラが首をかしげる。
「くーちゃんってのは、ソラのあだ名だよ。」
「あだな?」
「うん。みんなが親しみをこめて呼んでくれる名前。」
「ふ~ん・・・」
不思議そうな顔をするソラ。
「いや・・・かな?」
「ううん、ぜんぜんやじゃない。」
赤い瞳を細めて、嬉しそうなソラ。ユーリもリョウもほっと胸をなでおろす。
「じゃ、ユーリ。くーちゃんのことよろしく。」
「あいあい。」
嬉しそうな返事をしたユーリ。リョウは再びソラを抱えてリビングに戻っていった。階段途中から見える割られたガラスには、段ボールと新聞紙で、風雨を凌げるよう、それだけは補強していた。

「今は・・・もう1時か・・・昼ごはん食ってねぇな。」
タオがリョウに聞こえるように言う。
「くーちゃん、お腹すいた?」
「う~?わかんない。」
エヘ、と笑うソラに、リョウもタオもすっかり困ってしまう。
「じゃあ、とりあえずタオ達はポケフードで我慢して。嫌ならクロノたちが帰ってくるまで我慢な。」
「えっ・・・」
いつの間にか傍にいたクレアも嫌だ、という表情を浮かべている。
「くーちゃんが何食べるかわかんないんだよな・・・タオって小さい時、何食べてた?」
冷蔵庫をガサゴソ漁りながら、リョウはタオに聞く。タオも、そうだな~、と言いつつリョウの傍までやってきた。
「うーん・・・おっぱ。」
バシッ!リョウの裏拳がタオの顔面に命中する。痛がるタオ。顔を赤くしたタオを見てきゃっきゃとはしゃぐソラ。痛い目でタオを見つめるクレアとリョウ。
「そっから後に決まってるだろ!なんならタオは今でもチューチュー吸ってんのか!」
リョウが笑いながらキレるので、全く怖くない。
「吸うわけないだろ。だいたい1歳くらいまでだな。・・・くーちゃんって・・・何歳?」
「あー・・・」
そう言えば、鼻づらの先から尻尾の先まで30cm定規より少しだけ小さいという大きさなのに、ソラの年齢はわからないままだ。
「くーちゃん。」
「なぁに?」
「いま何歳?」
「わかんない・・・」
ちょっと悲しそうなソラ。つぶらな瞳を潤ませて、リョウに訴えている。
「ソラ。泣いちゃだめだよ?」
「うん・・・」
その黒の前肢で、涙を拭きとるように瞳の周辺をくしゅくしゅと擦るソラ。
リョウの見つめる前肢の先っちょには、まだ柔らかい爪しか、しかしそれすら生えそろっていない。けれど、牙は生えている。牙というには誤りがあるくらいの可愛いものだったが。
「ネットか本でも見るか・・・」
ソラを見ていたリョウは呟く。
「くぅん・・・」
「ひゃっ!」
リョウの身体をひやりとしたものが駆け抜けた。抱えているソラを見ると、さっきとは違って笑顔だ。黒い毛並みの表情はほころんで、舌をペロッと出している。
「おどろいた?」
「くーちゃん・・・」
笑顔のソラの頭を何度もリョウは撫でる。 ソラが舐めてくれた首筋がまだ少しひんやりとしていた。

「腹減ったんだけど・・・」
「もうちょっと待てって・・・」
リョウは温めたミルクをお皿に入れてソラに差し出す。嬉しそうなソラはぴちゃぴちゃとあわただしくミルクを飲んでいた。
「ほい、ポケフード。」
ぶいぶい言うクレアとタオを横目に、リョウはポケフードのお皿を2つ出した。
「あれ?ユーリの分は?」
不思議に思ったクレアは聞く。リョウは何も言わずにソラのいるほうを指差した。
「あ・・・」
いつの間にかリビングにいたユーリは薄紫の毛並みを震わせて、ソラと同じお皿に入ったミルクを、ソラと同じように譲り合ってぴちゃぴちゃと飲んでいる。
「ユーリは同居するくーちゃんのことを知りたいから、同じものを食べたいんだってさ。」
「へぇ・・・」
リョウの説明に、納得して、クレアはポケフードをバクバクと食べ始めた。

「じゃ、2時半になったらクロノたちを迎えに行くから。準備しててくれるか?」
「はいは~い。」
「わかった。」
みんなで出かけるというので、クレアもタオも張り切っている。ソラは少し・・眠たそうだ。タオルの上でうとうとしている。
「くーちゃん、寝たらだめだよ。」
「うん・・・」
ユーリが伏せて眠そうにしているソラの背中をつんつんと何回か突っつく。ユーリはお昼ご飯が終わってからソラの傍にいて、ソラに家の道具の使い方を説明していた。
ちらっとユーリが時計を見ると、もう2時半前だ。
「さ、行こうか。」
リョウが立ちあがってボールを3つかざす。
「タオ?クレア?」
「はいはい。」
タオもクレアもおとなしくボールに収まった。
「ユーリ?」
「くーちゃんどうするの?休ませとく?」
「連れて行きたいんだけどなぁ・・・ボール怖がるかな?」
ユーリがソラを突っつくと、ソラはゆっくりと起き上がった。
「モンスターボール・・・怖い?」
「ううん。」
ソラはリョウの質問に2,3度首を横に振って否定した。安堵したリョウはそっとボールをかざすけれど・・・
「やっぱやめとくか。これだけ小さいんだもん。入れる必要もないよ。」
「そだね。ついでに私も・・・」
ユーリのねだるような声に、リョウもはいはい、とボールをカバンに直した。
「じゃ、リュックの上に私を背負ってね?」
仕方ないな、とリョウは屈んで、ユーリが背中に乗っかると、ソラを見る。
「うっし、じゃあくーちゃん。」
「きゃぅ!」
リョウが両手を開いてソラを迎え入れる格好になると、ソラはばたばたと走ってリョウに飛び付いた。
「じゃあ行くぞ。」
「うん。」
かなり重いのだが、そこを我慢してリョウは家を出た。かなり奇怪な格好だろう。リュックを背負って、その上にエーフィを乗っけて、さらに前でポチエナを抱いているというのは。

リョウは歩きながらさっきソラが倒れていた近辺をじろじろと気にしていた。グラエナがいないだろうか・・・襲ってこないだろうか・・・と。
いろいろなことを考えているうち、林道はすぐに終わり、育て屋さんのある道路に出た。手前にはすぐポケモンセンターがある。
「くぅくぅ・・・」
しっかりと抱きしめているソラはいつの間にか気持ちよさそうに眠っている。リョウもその寝顔を見ると、グラエナとの騒動を忘れてなんだか優しい気持ちになれた。
ふとリョウの目に、看板が目に入る。
”野生のグラエナの群れ同士の争い多発!怪我をしないように注意!!”
怪我をしないどころか、今自分が抱いている小さなポチエナは死にそうだったんだ、とリョウはむなしく思った。
「ご主人!あそこあそこ!」
ユーリが指さした先には育て屋さんの建物がある。気分を切り替えて育て屋さんの小さな建物に入っていくリョウ。

「いらっしゃい。」
育て屋のおじさんが気さくに出迎える。笑顔になるリョウとユーリ。
「ご主人!」
クロノが大はしゃぎでリョウの脚に抱きつく。
「ああ・・・クロノちょっと待って・・・」
リョウがクロノを制して、ソラをクロノに見せる。ソラはまだ眠っている。
「ポチエナ?」
「そう、ソラだよ。くーちゃんって呼んであげて・・・」
クロノがソラを受け入れてくれるか、リョウは不安で仕方がない。
「くーちゃんか・・・いい名前じゃん。」
ちょん、とクロノはソラの頬に触れた。
「むにゃ・・・りょう・・・ここ・・・どこ?」
「ここは育て屋さんだよ。」
ソラは眠そうに前肢で目を擦った。安堵したリョウが優しくソラを床に降ろす。
「よぉ!僕の名前はクロノって言うんだよ。」
「クロノ?」
「そう。よろしく。」
「よろしく・・・ぼくはソラだよ。」
クロノもソラもお互いを見て、微笑みあう。
「とーさーん!」
イーブイ3匹が元気に飛びだしてきた。そしてその矛先は・・・ソラに。
「ぽちえなくんじゃん!」
「あそぼーあそぼー!」
「いいじゃんかー!」
元気なイーブイたちはソラの目の前に座ると、ニコニコほほ笑む。
「名前決めなきゃな・・・」
「いい名前つけてくれよな。」
クロノの忠告に、わかってるけどなぁ・・・と頭を抱え込むリョウ。
「ソラくんっていうんだー!」
「そだよ。」
ソラもニコニコしてイーブイ達とお話をしている。その様子を見ていて、リョウもクロノもほっと安堵した。

「じゃ、大事にしてくれ。」
「はい。ありがとうございました。」
育て屋さんにお礼を言うと、リョウはまた林道を自宅に向けて歩み始めた。
イーブイ3匹もクロノもアオちゃんもモンスターボールに入れて、また最初と変わらない、ユーリとソラとに挟まれてリョウは歩いている。
少し疲れが出て、息の荒いリョウを気づかうようにソラは前肢で頬をペタペタ触ってくる。
「ありがと。くーちゃん。」
休息を取ると、ソラの身体が少し震えた。
「りょう・・・きた・・・」
リョウはあわてて辺りを見渡すと、黒い影とともに、ガサガサという草と何かが接触する音が辺り一面に響いていた。ユーリも驚いて首を振って警戒している。
ガサッ・・・
「グラエナだ!」
ヤバい・・・リョウは思った。家を襲ってきたやつは5匹だった。1つのグループの平均はおおよそ10匹。まだまだいたわけだ。
ガサガサッ!草むらからグレーの毛並みと黒の毛並みのグラエナが現れた。リョウの予想通り10匹近く、目の前にいる。しかも、囲まれている。
”殺せ!”
首に噛み痕のついたグラエナが叫ぶ。グラエナたちは一様に体毛を逆立ててリョウたちを威嚇する。
「どうするの?リョウ!」
「仕方ない!」
リョウはリュックから出した4個のモンスターボールを使って、一気に呼び出した。
「ふぁぁ・・・げっ・・・囲まれてんじゃん・・・」
出てきた4匹、タオ、クロノ、クレア、アオは戸惑いを隠せない。ガルルルル・・・グラエナの唸る声が、林に木霊する。
「どうすんのさ・・・リョウ?」
「・・・やるしかない。」
リョウは決断した。自分たちのためにも・・・そして何より・・・ソラのためにも・・・
「クレア!十万ボルト!・・・タオ!火炎放射!クロノ!あくのはどう!」
指示された3匹は、獰猛なグラエナにひるみもせず、次々と技を繰り出していく。アオは、リョウとユーリを守るようにガードしている。
グラエナ達は、包囲網を解いて、バラバラに動く。
「これじゃ数差が目立つだけじゃん・・・どうしよう・・・」
実際戦っているのは、サンダースのクレア、ヘルガーのタオ、ブラッキーのクロノ、の3匹だけ。1度に2匹を相手にするのがやっとだ。
「私も戦うよ!」
ユーリとアオが構える。
「ユーリ・・・アオ・・・よし・・・」
アオは水の技を有効に使って、グラエナを圧倒していく。ユーリもエスパー技を封印して物理技でなんとかグラエナを追いこんでいった。
「みんな強いなぁ・・・」
リョウが呟く。いつの間にかみんな強くなっていたのだ。

がさ・・・ふいにリョウの耳にさっきとは違う方向から足音が聞こえた。戦慄で身も凍る思いがした。
「まだいたのか・・・」
振りかえったリョウの前には、さっきのグラエナより一回り以上大きな身体を持つグラエナがいた。群れのリーダーのようだ。
”よぉ・・・よくもいたぶってくれたなぁ・・・”
「囮か・・・」
全て納得できた。なぜ集団で戦わずにバラバラで戦っていたのか、無意味に戦うスペースを拡大したのか・・・全て陽動だったのだ。
”ふふ・・・人間のくせに、頭はいいな。手下に置きたいくらいだ。”
野生のグラエナは狩りの達人である・・・リョウはこのフレーズがいまさら頭をよぎった。
「なぜくーちゃんを狙うんだ・・・なんで殺そうとするんだ・・・」
リョウは疑問をそのグラエナにぶつける。グラエナはその質問をふふっと笑って答える。ソラはさっきからグラエナに向かってずっと唸っている。
”当たり前だろ・・・復讐されたら困るからな・・・”
復讐・・・リョウは首をかしげる。たしかにソラが将来的にこいつらに復讐することはあるかもしれない・・・けれど、自分の手元にいるかぎりはそう簡単には出来ないのに、と。
”そいつを盾に取ったから、俺たちはそいつの群れを全滅させることができた。親を目の前で殺されて、その帰り血を浴びたんだ。何をされるかわからんからなぁ。殺すのが妥当だろう。”
グラエナから発せられる言葉に、怒りで震えるリョウ。
「許せない・・・」
怒るリョウだったけれどソラはじっと耐えるかのように、リョウの腕の中でじっと動かない。
”じゃ、そいつを離しな。そしたら人間、お前の命だけは助けてやる。”
「出来るか!」
叫ぶリョウ。だが、グラエナは余裕の笑みを浮かべている。
”なら、お前らを殺すまでだ。”
グラエナは構えて、リョウに飛びかかる。リョウは巨体のグラエナを間一髪でかわした。
”ふっ・・・避けたか。”
「はぁはぁ・・・」
素早く身体をリョウの方向に向けて、グラエナは再び襲いかかる構えを見せる。リョウもこれ以上避けられるか、ギリギリだった。
「ソラ!だめだ!」
ソラは身体をばたばた動かして、リョウの腕をするり、と抜けた。
「ごめんなさい・・・りょう・・・たのしかった・・・ありがとう・・・」
リョウに向かってにこっと笑みを見せると、自分の5倍はあろうかと言うグラエナに向かって構える。
”ほぉ・・・自分から殺されるとは・・・親と一緒でバカな奴だな。”
できればリョウは今すぐにでもソラを抱きたかった。けれど、もうソラはグラエナと対峙していて、もし抱いたり、庇ったりすればソラがリョウの行動を許してくれないだろう。
”行くぞ!”
「がう・・・」
決して勝ち目がないとわかっていても、ソラにもリョウにも選択の余地はなかった。
ドシドシ・・・グラエナが巨体を駆って小さなソラに襲いかかる。けれどソラはそれを避けるような気配は見せない。ドシンドシンと地響きを立たせて、グラエナはソラに体当たりをしようとする。
「ソラ!」
ソラはグラエナが当たる直前にぴょん、と跳んで、グラエナの身体に飛びついた。ぶんぶんと身体を振ってソラを振り落とそうとするグラエナ。
”いで!”
がぶり、とソラはグラエナの喉元に噛みついた。
”ふん・・・”
最初は痛そうにしていたグラエナも、慣れたのかソラがいくら力いっぱい噛んでも、全く動じない。それどころかグラエナは前肢を振りかぶってソラを叩き落とした。
「きゃん!」
地面に身体を叩きつけられたソラは痛そうに身体をぷるぷる震わせている。
”ったく・・・俺の身体に傷つけるとはな・・・”
「ぎゃぅん!」
ぐぐっと、おおきな前肢でグラエナはソラのお腹を踏みつけた。甲高い悲鳴を上げて、ソラは痛みに耐えている。
ぐぐぐ・・・
「ぎゃ・・・うっ・・・ごほっ・・・ごほっ・・・ぅ・・・」
「ソラ!グラエナ・・・やめろ!もうやめてくれ!」
痛みに耐えきれず咳き込むソラ。リョウは涙をぼろぼろ流してグラエナに止めるように訴える。
”止める?生きるのをか?”
グラエナは止めるどころか、また力を入れ続けて、容赦なくソラを踏みつけている。
「りょ・・・ごめ・・・やくぃ・・・たぇあくぇ・・・」
もう言葉も喋れないソラも涙をぽろぽろ流して、痛みをこらえている。次第に弛緩していくソラの身体。リョウはグラエナの身体に掴みかかる。
「やめろって言ってるだろ!」
打撃では期待出来ないな、とリョウはグラエナの尻尾を思いっきり引っ張ったり、毛をぶちぶち抜いたり、弱まりそうな攻撃があれば、すぐに実行した。
”いででで・・・”
かくっと、急にソラを踏みつけているグラエナの前肢に、硬い反応が無くなった。抵抗しなくなったのだ。そしてなにか温かいモノが前肢のかかとに当たった。
地味なリョウの攻撃を受けて、痛そうなグラエナは、ソラの意識が無くなったのを確認するとようやく、ソラを踏んでいた前肢をどけた。
「ソラ・・・!ソラ!」
リョウはすぐに解放されたソラの傍らに駆け寄って呼びかける。けれど応答はない。
”もう死んだんじゃないのか?後ろ脚、見てみろよ。”
グラエナの挑発するようなセリフを聞いて、リョウはソラの股間の当たりを見ていた。ソラの足元には温かい染みが出来ていた。
”しょんべん漏らしてんじゃん。こういうときはもうあきらめろってな!”
捨て台詞を吐くと、グラエナは群れのほかのところへ、加勢に行った。リョウはソラを抱いたり、呼吸を確かめたりするけれど、ほとんど無いに等しいくらい、弱かった。
「くーちゃん・・・なぁ!くーちゃん!」
リョウは涙で前を見ることすら難しかったが、どうにか戦況を確かめようとする。ふと黒い犬が視界に飛び込んできた。
「タオ?」
「なんだ?」
タオが戦うのを止めて、リョウの元へ寄ってくる。
「くーちゃんが・・・ポケモンセンター行ってくるから・・・後・・・たのんだぞ・・・」
「くーちゃん・・・」
リョウは意識のないソラをタオに見せた。タオの身体もふるふると震える。
「わかった・・・俺がこいつらを片付けるから、早く行ってやってくれ・・・」
タオの言葉を受けると、リョウは来た道をあわてて引き返す。途中、なんどもソラを呼び掛けるけれど、相変わらず反応はない。

びしゃぁぁぁん・・・
自動ドアを勢いよく手で開けると、ソラを抱えたリョウはあわててジョーイさんに詰め寄る。
「くーちゃんを・・・診てください・・・」
「わかりました、今すぐ手配しますので。」
ジョーイさんはタッチパネルを操作して、すぐさまベッドを呼びだす。
「このベッドの上に、そのポチエナを置いてください・・・」
リョウもジョーイさんの言葉に従って、優しくソラをベッドに横たえた。ラッキーの手によって運ばれていくベッド。
「じゃあ、すぐに診察して、回復処置を行いますので、待っていてください。」
ジョーイさんは焦るリョウを諭すように、呼びかける。リョウも力なくうん、と頷いた。
「すみません・・・ここにポチエナのお名前と・・・ご主人のお名前を・・・お願いします。」
申し訳なさそうなジョーイさんに、リョウははいはい、とすらすら書いていく。
「ありがとうございました。」
ジョーイさんは再び遠ざかっていった。途端に瞳からボロボロと涙がこぼれて、着ていたシャツも、ズボンも、すべてに染みを付けていった。

「はっはーん・・・ザコだねぇ・・・」
”ぐぇぇ・・・”
ユーリはアオやクロノと協力し、苦手な物理技を駆使して、かかってくるグラエナをなぎ倒していく。気付けばタオと揉み合っているリーダーのグラエナだけになっていた。
タオはグラエナの前肢の付け根を深く噛んだまま動こうとしない。グラエナは痛みでわめいている。
”いだだ・・・やめてくれ・・・”
懇願されても、タオは止める気にはならなかった。むしろ復讐心のほうが強く、慈愛という一切の概念を吹き飛ばしている。最期だ、と限界まで噛む力を上げた。
”やめっ・・・”
グラエナの身体がぴくぴくと痙攣して動かなくなると、ようやくタオはグラエナをかむのを止めた。
「ソラがどれだけ痛い思いをしたか・・・思い知れ・・・」
後悔の念をにじませるように、タオは呟いた。
「お前は、俺のことを甘い、と言った。確かに俺は甘いよ。だがな、仲間を思う気持ちは・・・絶対お前らには負けねぇ。」
「タオ!」
全員片付けたらしいので、タオたちは大挙してポケモンセンターに向かうことにした。

「すみません・・・」
「はい?」
ジョーイさんの力のない声でリョウは悲嘆からすこし救われた気がした。
「回復処置なんですけど・・・ソラ君に影響を及ぼすかもしれません・・・」
「影響?」
命が助かるなら、少しくらいは、とリョウは思ったけれど、影響、というのが気になった。
「はい・・・進化しても大きくなれない・・・8割くらいしか大きくなれない可能性が・・・あります。」
「それくらいなら・・・構いません・・・お願いします・・・ソラを助けてください・・・」
「わかりました・・・実はもう処置は終わったんです・・・」
また申し訳なさそうなジョーイさん。へ?とリョウはジョーイさんに案内されるがままにソラの元へ行く。
「驚かないでください・・・」
ジョーイさんがソラのベッドへ案内した。
「あ・・・」
リョウが目にしたのは、変わり果てたソラの姿だった。
「ごめんなさい・・・処置中にいきなり進化しちゃって・・・」
「進化・・・って全然大きくなってないじゃないですか・・・」
リョウの目の前にいるソラは、まったく大人びていないグラエナだった。ちょっとポチエナの時より大きくなったかな?っていうくらいの体長・・・華奢で幼い体つき・・・
先ほどまでソラを襲っていたグラエナとは似ても似つかない可愛い身体になっていた。
「詳しい説明をしますので・・・」
ジョーイさんは書類を何枚かリョウに渡す。そして説明を始める。
「ソラ君なんですが、年齢を骨格の発達度から推定して、人間の年齢で言うと3歳くらいだというのがわかりました。」
「はい。」
「体長も年齢相応なんですが、進化する要件を年齢以外で全て満たしていたので、グラエナに・・・」
「はぁ・・・」
「進化する標準年齢は早くても人間の年齢では12歳くらいなんですね、つまり4分の1で進化しちゃったんです。」
もうわけがわからないリョウだったけれど、とりあえず説明を全て聞くことにした。
「で・・・グラエナに進化してからのソラ君の体長は60センチ。グラエナの方が尻尾が長く、実質ポチエナの標準体長とほとんど変わりません。」
目の前のソラ、すっかり大きくはなってない・・・グレーの毛並みに、立派な黒の長髪のような毛並み・・・けれどそれはかっこいい、と言うよりは可愛い、というものでしかない。
「今の段階で進化しちゃうって言うことは、標準の体長にとどかない可能性があります。それがさっき言った影響です。」
「はぁ・・・ところでソラはいつになったら目を覚ますんですか?」
ソラはくぅくぅ寝息を立てて眠っている。
「もう起きますよ・・・待っていてください。」
ジョーイさんはそう言うと、病室にリョウとソラ、独りと1匹きりにして、出ていった。
「60センチって・・・ガーディよりちっちゃいじゃん・・・」
リョウはそう呟きながらソラの頭を撫でる。ちょっと太く長くなった尻尾、グレーのお腹の毛並みにいいアクセントになっている黒い四肢、グレーの端正・・・というより可愛い顔。
「んっ・・・んんっ・・・」
「くーちゃん・・・」
ソラは、リョウの呼び掛けにぴくっと身体を震わせて、少し反応した。目の下の逆三角の黒い模様が可愛いなとか・・・そんなことばかり考えていた。
「あー写真撮ってたらよかったなぁ・・・」
リョウの後悔。
「んっ・・・ぅ・・・りょ・・・りょう?」
「くーちゃん?」
ソラは瞳をぱちっと開いて、リョウを見つめている。
「りょう・・・どしたの・・・おれ・・・いきてる・・・」
幼い口調は全く変わらないけれど、反応が知りたかったリョウはそっとソラに鏡を見せる。
「うわぁぁぁぁぁぁ・・・なにこれぇ・・・」
可愛い悲鳴を上げるソラ。
「進化しちゃったの。」
「わかってるけど・・・」
戸惑いを隠せないソラは身体のあちこちを触りまくっている。
「ちなみに。ガーディよりちっちゃいよ。」
「ふぇ?」
前肢で何度も頭を抱えたり、ソラの行動には落ち着きが無くなっていた。そんなソラを見ていて、安堵したリョウはソラをギュッと抱きしめる。
「もう・・・無茶はやらないでくれ・・・俺だって悲しいから・・・」
「ごめん・・・りょう・・・」
ソラの身体はぷるぷると震えて、涙をこらえているようだった。
「もう・・・くーちゃんを悲しませるようなことは・・・させない・・・」
「りょう・・・ありがと・・・」
身体の芯からあふれ出たリョウの決意の言葉に、ソラは嬉しそうにほほ笑んだ。
「さ・・・帰ろうか・・・」
「うん・・・」
リョウはソラを抱いたまま、病室を出る。ちょっとソラの頬が赤い。
「ちょっ・・・」
「恥ずかしいのか?」
「ち、ちがう・・・」
恥ずかしいんだろ~?とリョウはソラの喉元を何度も撫でる。そのたびにソラは瞳を潤ませて、上目遣いでリョウを見つめた。

自動ドアを開けて、ポケモンセンターを出ると、そこにはタオたちがいた。
「リョウ・・・くーちゃんは?」
「え?・・・これ。」
ゆっさゆっさとグラエナになったソラを揺さぶるリョウ。ソラは恥ずかしそうにそっぽを向いている。
「うそ・・・ちっちぇえ・・・」
タオの呟き。
「ちっちゃいね・・・」
ユーリの呟き。
「みんなちっちゃいちっちゃい・・・いいすぎだよぉ・・・」
赤く澄んだ瞳を潤ませて、ソラは訴える。そんなソラをみんなは微笑んで見つめる。
「ちっちゃいけど・・・可愛いじゃん。」
「見た目もサイズも可愛いよね。」
「可愛い、可愛い。」
口々に可愛いと言う面々。ソラは恥ずかしいみたいで頬を赤らめてうつむいた。
「さ、帰ろうか・・・」
賑やかなユーリ達。囲まれるソラは確かに、失っていた幸せという温かみを感じることが出来た。

帰宅して、みんなリビングで思い思いに伸びている。
「じゃ、イーブイ達の名前を発表するよ?」
リョウが紙を持って、クロノとアオの間に立っている。興味津津、と他のポケモンも集まってくる。そしてテーブルの上には3匹のイーブイがいた。
「えっと・・・右端のが、長男のコロナな。で、真ん中のが長女のナオ。で、左端が、次女のクリス、です。」
みんなは拍手喝采で3匹を迎える。親以外のポケモンとあまり接したことがなかった3匹は照れてお互いを見つめている。
名前の発表が終わると、また思い思いに過ごす。コロナもナオもクリスも、わぁっとソラに群がる。どうやらコロナたちにはソラが進化したことなど、関係ないようだ。
「わー・・・かっこいいー・・・」
リビングでコロナたちがソラを捕まえて、遊んでもらっている。ソラはなかなか慣れないみたいで、少し戸惑っているようだ。そっと忍び寄る薄紫の身体。
ぎゅぅ・・・
「きゃんっ!」
突然、抱きつかれたソラはびっくりして声を出す。
「くーちゃん、びっくりした?」
「ゆーりさん・・・」
「呼び捨てでいいのに。」
ソラは帰ってきてからみんなの名前をさん付けで、呼んでいる。ユーリは自分より小さなグラエナのソラを目にして、遊びたいなぁ、という欲求があった。
しばし、ソラのもふもふの毛並みを堪能するユーリ。ソラはユーリより小さく、ユーリが覆いかぶさることが出来るほどだ。
「お~い!ユーリ!くーちゃん!晩御飯だぞ!」
リョウの叫びが、家じゅうに響き渡る。ソラもユーリも遊ぶのを止めてリョウが普段ご飯を食べているテーブルに向かった。テーブル傍の床には、既にいくつかのご飯が載ったお皿が置かれている。
ユーリとソラは、リョウの配慮でご飯のお皿が1つにされていた。
「くーちゃん。仲良くわけっこしようね。」
「うん。」
ソラも、ソラをリードするユーリも、ニコニコほほ笑んでいる。
「仲いいなぁ・・・」
リョウが呟く。ソラとユーリは昼間より仲良くなっている。今では普通に間接キスとか気にしない仲になっていた。
「くーちゃんが飲んだお水だから私も飲むね。」
ユーリはどこか嬉しそうだ。前のユーリはなんだか気難しい感じなのかな?と思っていたけれど、同居するポケモンが出来るとこうも変わるものなのか・・・とリョウは感心した。
「おい。ソラ。」
タオが突然口をはさむ。
「何よ?」
ソラの代わりに答えた、ちょっとご機嫌斜めなユーリ。
「ユーリには用は無ぇよ。」
「やめろやめろ。」
喧嘩寸前の2匹を抑えるクロノ。退屈そうに黒い肢体を伸ばしている。
「ソラ・・・俺のこと、タオさんって呼ぶのやめてくれないか?」
「えっ・・・」
ソラはタオの要求に戸惑っている。
「どう呼んだらいいか、それくらい言いなさいよ。」
「じゃあな・・・師匠って呼んでくれ。」
ちょっと笑顔のタオ。引いているクロノ、ユーリ、クレア。
「そんなにどん引きしなくてもいいだろ・・・一回呼ばれてみたかったんだよ。」
「後悔するよ。」
念押しするアオ。
「ししょお?」
まだ戸惑っているソラ。
「そう。」
にっこり笑っているタオ。
「気持ち悪いぞタオ。」
クロノの突っ込みにも動じることはないタオ。
「ししょお・・・」
ソラは何回か首をひねると、そのタオの呼称を受け入れたみたいだ。

食事も終わり、リビングでのんびりしているユーリとソラ、クレア。ソラはリョウとの生活になじめるよう、ユーリと会話のトレーニングをせっせとしている。
「お小遣い頂戴?」
「おこづかいちょぉだい?」
「ちょっと違うかな?」
ユーリは少し首をひねる。傍でクスクスとクレアが笑った。
「さ、風呂入れ~!」
台所から出てきたリョウが鍋とお玉を持ってガンガンと叩いている。
「くーちゃんは誰とお風呂入るの?」
「おふろ?」
ソラはお風呂の意味がわからないか、とユーリは思った。
「お風呂入って、身体を綺麗にするんだよ?」
「ふぅん・・・」
クレアが風呂場の方を向くと、コロナたち3匹と、クロノとアオが一緒に風呂場へ入っていった。
「5匹も一緒にお風呂入れるのかな・・・」
呟いて、首をかしげるクレア。
「じゃ、タオとくーちゃんで、お風呂入ってくれ。」
リョウの言葉に、嬉しそうに反応するタオ。ユーリはそうはさせまいと、ソラの身体をぎゅっと抱いた。ぴくっと震えるソラ。
「こら、ユーリ。くーちゃんをタオに引き渡しなさい。」
「やだもん。」
はぁ、とため息をつくと、リョウはユーリのわき腹をこちょこちょとくすぐった。
「ひゃぁぁん・・・ごしゅじん・・・やめて・・・」
攻撃に観念してユーリがソラを離すと、タオはソラを風呂場へ連れて行った。

みんなお風呂を済ませて、もう寝る準備をしている。

クロノとアオの部屋。
「こっちこっちー!」
「きゃぁぁぁ~。」
「こら、もう寝なさい!コロナ!クリス!」
アオが暴れまわるコロナとクリスに注意するけれど、それを聞く気配はない。
「やだもーん。」
また走り回るコロナとクリス。
「ナオちゃんはもう寝たぞ。」
クロノは、自分の傍らで気持ちよさそうに眠っているナオの頬を何回かつんつんと突いた。クロノは本当に可愛いなぁ、とナオの可愛い寝顔に見入っている。
「早く寝ろ!」
とうとう叫んだアオ。コロナもクリスも急におとなしくなって、ナオと同じように、クロノの傍らで眠り始めた。
「ふぅ・・・」
すっかり疲れたアオとクロノ。

クレアの部屋。
「えーっと・・・なにも忘れたことはないかな・・・」
クレアの部屋は、そんなに広くない。1匹用の部屋がほしい、とクレアが訴えたので、リョウがそれを聞き入れたのだ。
「明日は・・・何もないか。」
クレアは一通り部屋の中を見回すと、もういいや、と諦めた。大きなタオルを床に敷いて、その上にクレアはごろっと寝転がる。
「ふぅ・・・おやすみなさい・・・」
もう1枚のタオルを自分にかけて、クレアは眠気の赴くままに、瞳を閉じた。

タオと(クロノ)の部屋。
「はぁ・・・今日から独りっきりなんだな・・・」
しみじみと独り言をつぶやくタオ。同居していたクロノが、コロナたちの世話のためにアオの部屋で一緒に眠るようになって、いなくなったのだ。
「ソラも可哀想だよなぁ・・・」
自分の身の上とソラを比較して、なんだかいたたまれない気分になっているタオ。タオはデルビルだった時に、初めてリョウのパートナーとなって旅に出ることになった。
リョウは今では学校をさぼっているけれど、将来を嘱望された、獣医のタマゴだった。昔のリョウは、勉強のためなら見返りは求めなかった。その代わりタオも退屈だった。
けれど、4匹のイーブイを・・・クロノ、アオ、クレア、ユーリをつぎつぎと自分のパートナーにしてからは、自分のために勉強するのを止めた。
なんでだろう・・・タオは何度もそう思ったけれど、それは、自分のパートナーのため・・・それしか答えが出なかった。
リョウは、それから学校よりも自分たちを優先してくれて、ずっと楽しくなった・・・けれどリョウは親と連絡をしなくなったし、家族との関係も悪化した。
けれど、リョウの親御さんはまだ学費を払い続けているし、まだ幾許かの期待をしているみたいだ。
「ふぁぁ・・・」
なんだか難しいことを考えてしまったな・・・とタオはうとうとし始めて・・・そのまま眠りに落ちていった。

ユーリとソラの部屋。
「くーちゃん、お休み。」
「ゆーりさん・・・おやすみなしゃい。」
「違うの!」
まだ会話のトレーニングを続けているユーリとソラ。噛んだり、詰まるたびに、やり直し。
「私のことは呼び捨てでいいから、もうちょっと流暢に話せないの?」
「ごっ・・・ごめんなさぃ・・・」
瞳を潤ませるソラに、頭をポリポリ掻いて困ってしまうユーリ。
「はぁ・・・まぁいいや。また明日しよ。寝よう寝よう。」
ユーリはバッとふかふかのタオルを広げて、その上に寝転がる。
「さ、くーちゃん。おいで。」
「ぇっ?」
ソラはユーリの言っていることは理解できていないみたいだ。ユーリは大きなタオルにぽっかり空いたスペースを指さす。
「同じタオルで寝るの。ここ、空いてるから。」
ユーリは嘘をついた。タオルは2匹分、4枚、リョウがくれた。だから同じタオルで眠る必要はない。けれどユーリは同じタオルで寝ようとしている。
「はぃ・・・」
ソラはユーリの傍で、ゆっくりと身体を横たえた。グラエナなのに、エーフィのユーリよりもかなり身体が小さい。これから大きくなるにしても、不自然なほどだ。
「くーちゃん・・・」
ユーリはそっと抱きついた。ソラの心臓の鼓動がよく伝わった。身体をくっつけあってるソラはまだ幼く、生殖、ということには興味すらないだろう。
「おやすみなひゃぃ・・・」
「くーちゃん、お休み。」
先に眠ったのはソラの方だったみたいだ。くぅくぅと可愛い寝息をたてて眠っている。お風呂の石鹸のよい残り香が、ソラからも漂う。
「はぁ・・・私の方が気が張って眠れない・・・」
ユーリはそんな自分をクスクス笑いつつ、眠れるようになるのを待つことにした。
「むにゃ・・・あぁ・・・眠いわ・・・」
結局、自分の持ち技を使って眠ることにしたユーリだった。


月の光が優しくそれぞれの部屋に差し込んでいる。

ひっくひっくとなにかがひきつけを起こしている音がユーリの部屋に響く。
「ん・・・?」
その音に気付いて起きたユーリ。瞳をぱちっと開いて当たりを見回す。
「くーちゃん?」
ユーリはソラの身体がぴくぴくと震えているのに気付いた。つんつん、と何度か頬を突っついたり、身体を触ってみたりするが、ソラは眠っているようだ。
「ふっ・・・えっ・・・ふぇっ・・・えっ・・・えぐえぐ・・・」
「寝てるのか・・・怖い夢でも見てるのかな・・・」
仰向けに眠っているソラは、目じりから大量の涙をあふれさせて、タオルに染みを作っていた。ふと、昼間にソラの記憶を探ったことを思い出したユーリ。
その内容は・・・思い出しただけでも身体が震える思いがユーリにはする。
「まさか・・・」
怖い思いを抑えて、ユーリはゆっくりソラの額に自分の前肢を当てる。
「夢は記憶の一部だって、ご主人が言ってたから・・・ひょっとしたら見てる夢も探れるかも・・・」
淡い期待を抱いて、ソラの意識にゆっくり自分の意識を這わせていく。ふいに自分の身体から血の気が無くなっていくのを感じた。
・・・血まみれのグラエナが数頭・・・喉を噛みちぎられて、血を噴き出している・・・自分は?・・・別のグラエナに追われて、真っ赤な血しぶきを浴びながら涙を流し、限界を超えて走っている・・・
「きゃぁっ・・・」
すぐに悲鳴を上げたユーリ。ソラの額からは自然と手が離れた。はぁはぁと自分の息が荒くなるのを感じて、今経験したばかりのことを整理している。
「はぁはぁ・・・」
「ふぇぇぇっ・・・ふっ・・・ふぇっ・・・えっ・・・ぇぇぇっ・・・」
ユーリの思った通り、夢の内容を見ることはできた・・・けれど、こんな悪夢をソラは・・・いや、悪夢ではなかった、経験した現実なのだ。血を流していたグラエナは、おそらくソラのお父さん。
「くーちゃん・・・もうくーちゃんは苦しまなくていいよぉ・・・」
気付けば、ユーリ自身も涙をぽろぽろ流していた。紫の前肢に涙が付いたのを、月光が優しく照らし出した。
「くーちゃん。楽になろっか?」
「えっ・・・ふぇぇっ・・・ふぇっ・・・ぇっ・・・」
ユーリは涙をこらえてソラの額に触れる。
「私はくーちゃんの記憶を消すことは出来ないけど・・・今、少し楽には、なれるから・・・」
自分の力を自分で必要とするときが来るとは・・・ユーリは思った。記憶にノイズを紛れさせて、一時的に特定の記憶を見えにくくする・・・それはユーリには役に立つとは思えない技だった。
「くーちゃん・・・」
ユーリはソラに触れている前肢に力を入れて、再びソラの記憶に飛び込む・・・
「ん・・・よし・・・」
一応目的を達した、ユーリはソラから再び前肢を除けた。
「おやすみ・・・」
いいことを思いついたぞと、ユーリはニヤッと笑う。
「こんなことしたら怒るかなぁ?」
「くぅぅん・・・」
ソラの身体を自分のお腹の上に乗っけて、自分の前肢をソラの胸の前で組む。つまりユーリは自分をソラの下敷きにしたのだ。柔らかいソラの毛並みに少しうっとりするユーリ。
「おやすみぃ・・・」
ユーリはまた、技を使って眠りこんだ。

それぞれの夜は更けていく・・・

翌朝・・・まだ茜色の空。夜明けするかしないか・・・その絶妙なライン。
「おはよう。ユーリ。朝早く俺の部屋に来るなんて・・・悪夢でも見たか?」
冗談めかして言うリョウ。ユーリは、そんなんじゃない、と首をぶんぶん横に振った。部屋の外にはソラがお行儀よく、お座りをして待っている。その様は小型犬のようだ。
「ご主人・・・くーちゃんだけど・・・」
そのユーリの言葉を聞いた途端、やっぱり失敗だったかなぁ、とリョウは頭を掻く。
「私に任せてほしいんだ・・・」
「へ?」
いまいちユーリの言っていることの意味が掴めないリョウ。
「私に・・・くーちゃんの治療をさせてほしい。」
「つまり・・・トラウマか?」
首を縦に振るユーリ。リョウはペンと紙を取って、ユーリから詳しい事情を聞こうとする。
「ご主人。これは私とご主人、私とくーちゃん、くーちゃんとご主人の関係の問題になりかねないんだから・・・」
今まで見たことないくらい真剣なまなざしでリョウを見つめるユーリ。
「いや・・・俺も別に適当に聞き流そうなんて思ってない・・・」
「ごめん・・・」
失礼なこと言ったなと、思ったユーリは謝る。リョウも、いやいや、と返す。
「私が見たくーちゃんの記憶はね・・・」
記憶を探ったときの次第を事細かにリョウに話していくユーリ。リョウも次第に顔が青ざめていく。
・・・
「・・・わかった。ユーリ。」
全てを聞き終えて、リョウはペンを置いた。
「くーちゃんはこの先どう道を間違えても普通のグラエナにはならないよ・・・根が優しいし・・・それに・・・」
「それ以上言わなくていい・・・」
ユーリの推察を止めるリョウの悲しげな声。ユーリも自重するべきだったな、と深く反省した。
「くーちゃん入っておいで?」
「きゃう!」
ソラはドアを開くと元気いっぱいにリョウの前までやってきた。そしてまたお座りをする。
「元気だなぁ。」
「うぅん・・・ちょっとたいくつだったの。」
頭をポリポリ掻いて照れくさそうに言うソラ。
「ほんとくーちゃんって小型犬みたいだよね。」
さっきのシリアスな口調からうって変わって楽しげなユーリ。
「いつかおおきくなるもん・・・」
悔しそうなソラ。ユーリは、わかってるって、とソラに近づいて頭を優しく撫でる。嬉しそうに瞳を細めるソラ。

朝がやってきた・・・リョウの部屋で二度寝してしまったソラとユーリ、そしてリョウ。
「うぁぁ・・・ねむいなぁ・・・」
「あれだけ・・・ふぁぁ・・・寝といてそれはない。」
あくびをするリョウに、くすくす笑うユーリ。
「ふぁ・・・おはよぉ・・・」
伏せて眠っていたはずなのに、いつの間にかユーリに抱きつかれていたソラ。ユーリの身体にくっついているという違和感にソラが気付くには、少し時間を要した。
「くーちゃんおはよう。」
ユーリもリョウもニコニコしてソラが起きて、ユーリから離れるのを見守っている。けれどソラは解放されても、ユーリに身体をゆだねている。
「ゆーりさん・・・ぼくねて・・・」
ちゅっ。
話そうとするソラの唇をふいに奪ったユーリ。さっきから知らない間に抱きつかれているし、キスはされるわで、まだ幼いソラでもあっという間に頬を赤く染めていった。
「ファーストキスげっと。ふふふっ・・・」
くすくす笑っているユーリ。
「ふぇ?」
意味がわからなくて首をかしげるソラ。リョウもいつしか呆れている。
「嫌われるぞ、逆に。」
「まぁ・・・朝だから。」
朝だからなんなのか、とリョウは突っ込みを入れたくなる。

「早く朝飯にしよう。」
「うん。」
ソラを抱えて台所に向かうリョウを、ユーリは満足げに見送った。
「今日も1日始まるなぁ・・・」

朝ごはんを終えて、いつものようにリビングではしゃぐ面々。テーブルの傍で、リョウは独り、何かの準備をしている。
「ご主人何やってるの?」
クレアが聞く。
「ん?ああ・・・学校行こうと思ってな・・・」
「へ?」
リョウの口から出た言葉・・・リョウは全く学校へ行ってはいなかった。
「どういう風の吹きまわし?」
クレアが冗談めかして言うけれど、リョウは真剣なまなざしをクレアに向ける。
「くーちゃんが教えてくれたんだ。・・・現実が辛くても、それに立ち向かわないと・・・努力してそれを回避しないと、ダメなんだって。」
「ふぅん・・・」
ほぉほぉ、と頷くクレア。リョウはリュックを背負う。
「みんな!聞いてくれ・・・学校行ってくるから・・・」
「えー!」
「マジで!」
「雪でも降るんじゃないの?」
みんなの驚きようは半端じゃなかった。そんな中でソラはただ独りいまいち事情を掴めてないような感じだったけれど、特に不安はないようだ。
「えっと・・・ご飯は用意してるから・・・冷蔵庫と・・・」
誰かを留守番にしてお出かけするときのように、リョウはみんなに必要なものの説明をしている。
「で、何かあったらこれ使って。」
リョウはそう言うとテーブルの上に電話のようなものを置いた。
「これはボタンを押すだけでいいから。ボタンを押すと俺の持ってる端末に連絡が行くようになってる。」
説明するたびに、安心して頷くみんな。
「じゃ・・・行ってくるか。」
一通りの説明を終えて、リョウは玄関で靴を履いている。
つんつん・・・
「ん?」
突っつかれた気がしてリョウが振り返ると、小型犬・・・いやソラが不思議そうな瞳でリョウを見つめていた。おそらくソラが突っついてくれたんだろう。
「くーちゃん・・・」
ソラのもふもふの頭を撫でていると、何かを思いついたのか、リョウは突然笑みを浮かべる。
「くーちゃん、一緒に行く?」
「いいの?」
ちょっと嬉しそうなソラ。リョウの喜びもそれ以上だ。
「ウチの学校はポケモン持って行っていいんだよね。」
「ふぅん・・・」
「あ!ご主人、くーちゃんを拉致する気よね!?」
ユーリがニコニコほほ笑んでリョウとソラのところへやって来た。
「学校に連れて行こうかなって。」
「へぇ。・・・獣医の学校でしょ?献体しちゃダメよ。」
「そんなことするか!」
ユーリの冗談に、やや切れそうなリョウ。ソラが少し怯えている。
「じゃあさ、私も連れてってよ。」
「楽しくはないぞ。」
一応、と言う具合に忠告するリョウ。
「うん・・・くーちゃんも独りじゃ不安でしょ。」
「確かにな・・・授業中暴れたら、容赦なくボールに戻すけどな。」
ユーリの気遣いが、リョウにはとても嬉しかった。リョウはリビングに行ってモンスターボールを2つ、カバンに入れると、また玄関に戻ってきた。
「じゃ、くーちゃん。ユーリ、行くよ。」
「うん。」
リョウが玄関のドアを独りで開ける。朝の優しい日差しがドアの隙間から家に入り込む。ユーリがソラを先導するように外へ出ていく。
「あんまり行きすぎるなよ。」
「わかってる・・・待つもん。ここで。」
ユーリがお姉さんのような行動を見せる。
リョウはユーリも成長してるんだな、と感心して、外に出ると、ドアのカギを閉めた。玄関のすぐ外では、ユーリの言葉通りソラとユーリが仲良くお座りの姿勢でリョウを待っていた。
「じゃあ・・・行くか。」
「くーちゃん。行こう。」
「うんっ。」
ユーリはリョウが歩きだしたのを確認してから、ソラと一緒にトコトコと進んでいく。
幸せな光景・・・リョウがソラを自分のパートナーにする、そう宣言したとき、リョウが最も憧れを抱いていたワンシーンだ。そしてタオに言った・・・自分の覚悟・・・
”パートナーにしてみせる・・・”
タオはどう思っているだろうか・・・リョウは歩きながらに思った。
「ゆーりさっ・・・やめっ・・・くだぁぃ・・・」
ユーリがソラをコチョコチョとくすぐる。ソラはプルプル震えて、ユーリのくすぐり攻撃に耐えている。
「みんなに支えられてるから・・・俺はまだまだ頑張れるんだ・・・」
リョウはそう呟くと、ユーリをソラから引っぺがす。そしてソラを抱きかかえる。ユーリはいつものようにリョウのリュックの上に乗っかっている。
「りょう・・・」
ちょっと上目遣いで後ろのリョウを見るソラ。
「くーちゃん。」
ポチエナから進化して、ソラの可愛い背中の黒い毛並みがリョウの顔に当たる。ユーリもソラも、とても気持ちよさそうだ。
「まだ道は長いからね。行きで疲れるのも・・・アレだし。」
リョウはソラとユーリに言っているつもりだったけれど、いつしかそれは自分にも言い聞かせている、ということに気付かされていた。

”まだまだ道は長いんだ・・・けれどみんながいるから・・・まだまだやれる・・・頑張れるんだ・・・”


希望と、期待、まだまだやれるんだという自信を持って、リョウは歩み出す。まだ道は・・・長い・・・



今書いてるほうをそっちのけにして3日くらいで書き上げました。またこういう設定を生かせれば、続編を作れればな、と思う次第であります。
ポケモンのサイズの設定をかなりいい加減にしてます・・・その辺はご容赦ください。
青浪


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Last-modified: 2010-09-22 (水) 00:00:00
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