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無人島 二又妖炎

/無人島 二又妖炎

無人島 

      ~二又妖炎~ 


    byパウス



無人島第五作目。
非エロなので、エロシーンはない…………予定です。




今日はいつにも増して涼しい日だった。
まだ昇りきらない太陽の光が薄い雲に遮られ、丁度いい具合にこの無人島を照らす。風はそよ風が多く吹き、それに合わせて草花は歌うように鳴った。
涼しいそよ風は身体を撫でるたびに、温まり過ぎた体温を程よく奪って行ってくれた。

そよ風に体毛を揺らし、自分の足が動いた振動で毛を揺らし、ただ向いている方向にまっすぐ進むポケモンがいた。
時折立ち止まっては周りを見渡し、そして溜息をつきながらまた歩を進めていく。何を探しているのだろうか、周りを見渡す時の眼は真剣そのものだった。

「何か探し物かい?」
ふと、木の上から声がした。そのポケモンは上を見上げると、真上にあった太い木の枝に、立派な鳥―――否、鳥ポケモンが羽を折りたたんでいた。
鳥ポケモン―――ピジョンに目を向け、そのポケモンは口を開く。
「……この辺に、グリンっていうガーディが住んでるって聞いたんだ………知ってる?」
「グリン…………」
ピジョンはくちばしを閉じ、羽を広げた。そして空を覆い尽くすほど密集した木の葉を払いのけ、空に舞い上がると、ある方向を羽で差した。
「向こうに少し大きめな木があるだろ。そのグリンって奴かどうかしらねぇが、あそこにガーディが一匹住んでるはずだ。」
そのポケモンはピジョンの差した方向を見、一度頷くと、もう一度ピジョンを見上げた。
「……ありがとう。」
とびっきりの笑顔を投げかけ、そのポケモンはまたゆっくり歩き始める。

さっきまでの心地よいそよ風が、ほんの少し、強くなったような気がした。

                                         *

グリンの住処である木の中は、妙に静かだった。
よく耳を澄ますと、二重に重なる安らかで静かな寝息―――グリンとトパーズは、床に横になっていた。
グリンは落ち葉を重ねた寝床の上で仰向けに、トパーズはその隣の固い床で足を折りたたみ、うつ伏せで目を閉じていた。

既に日は頂点を過ぎ、西の空へと徐々に下降しつつあった。時間と共に、ドアのない住処の中に入り込んでくる日なたは伸びていく。
その日がトパーズとグリンに覆いかぶさった時、トパーズだけが目を覚ました。
「ん…………っ」
トパーズは小さくあくびをすると、まだ寝起きのだるさの残った体を持ち上げた。頭がまだボーっとしているのか、眼は虚ろで炎の鬣もまだ火力が弱い。
やがて誘われるように、トパーズは外に乗り出した。
「………うぅん……よく寝たっ。」
まだ夕焼けにならない太陽が放つ光は強すぎず弱すぎず、トパーズの身体を優しく包み込む。トパーズの惚けていた頭もすっきりしたようだ。

「あらっ、トパーズ。」
不意に横から声をかけられた。トパーズはその聞きなれた声の方を向くと、そこには相変わらず女っ気充分の親友―――シディアが笑っていた。
「あぁ、シディア。どうしたの?こんなところで」
「ふふふ、暇だったから、グリン君とトパーズの様子でも覗きにいこうかなぁ…って思ってたの。」
時々トパーズは思うのだが、シディアを見ていると自分には雄を誘うような色気がないような気がするのだった。
グリンと出会う前は常に男に追いかけられていたものだが―――――怠けかけ始めているグリンにいつも怒鳴っているからだろうか。
「あとね、さっき向こうの方に綺麗な花畑を見つけたものだから、あなた達を誘おうと思ってね。」

トパーズは住処の中を覗き込む。未だに起きようとしないグリンが、温かい日光に照らされて映し出されていた。
「いいけど……今グリンがあんな状態だからさぁ…………」
トパーズに指され、シディアも中を覗き込み、そして苦く笑った。
「あらぁ……グリン君よく寝てるわねぇ……。それじゃあ、私達だけで行く?たまには女同士ってのもね」
「んーー…………まっ、いっか。夕方になる前には帰れば。」
シディアはにこりと微笑んだ。そしてトパーズはもう一度住処の中のグリンの状態を確認すると、花畑があるという方向に向かってシディアと一緒に歩き始めた。

                                         *

「ん…………ふぁぁ……」
グリンが目覚めたのは、トパーズ達が出かけて行ってから約20分後のことだった。まだ日は沈みかけてもいない。
「あれ……トパーズ………?」
霞む目を擦りながら見渡すと、そこにトパーズの姿が見当たらない。しかしグリンはそれほど慌てず、ゆっくりと外に出た。
そこでグリンは鼻をピクッと動かす。そして地面すれすれまで鼻を近づけ、もう一度顔を上げた。
住処の中に広がっていたものと同じ、トパーズのにおいと、それとは違うにおい―――シディアのにおいを嗅ぎ取ったグリンは、小さくため息をついてまた住処の中へと戻った。
自分が寝ていてトパーズがいなくなった時、そこにシディアのにおいも一緒に残っていれば、それは大抵シディアと共にどこかに遊びに行っている時だということを、グリンは知っていたのだ。
起きた時に誰もいないと、少なからず寂しくなる。せめて一声かけてから出かけて行ってほしいものだ。

―――――――一匹暮らしの時は、起きて誰もいなかったとしても、寂しくもなんともなかったのに。

もう一度小さくため息をついた時、グリンは耳を一瞬だけ動かした。―――誰かいる。
グリンは恐る恐る顔を上げると、住処の入り口の外に何者かが立っていた。逆光で影となり輪郭しか見えないが、少なくともグリンより二、三はでかい。
四足で立っていて、頭に立派な毛と、後ろには大きな尻尾が風にあおられている。この状況でグリンが得られた情報はそれくらいだった。
「……………………」
無言のまま立ちつくす影と、なるべく刺激しないようにと、ゆっくり後ろに下がるグリン。重苦しい緊張が、グリンに冷や汗を流させた。
「………………」
影の方が動いた。影は素早く宙に跳ね、空中で縦に一回転する。そしてグリンに向かって、遠心力を加えた尻尾を振りおろした。
その尻尾から発せられる銀色の光がグリンの目に飛び込んできた時、グリンは慌てて横に飛びついた。
影はよけられること予測していたように、一瞬で体を半回転させて床に着地した。
これが尻尾を鉄のように硬質化させ、相手に叩きつける技―――〝アイアンテール″だと、気づくのが遅かったとしたら、グリンは間違いなくやられていたに違いない。

だがグリンはよけることで精一杯で、その後のことを全く考えていなかった。慌ててよけたせいで着地に失敗し、地面に転がったグリン。この隙が逃されるはずがなかった。
すぐに起き上がろうとしたグリンの前足は影の前足に押さえつけられ、蹴りを入れてやろうとした後足も同じように影の後足に押さえつけられる。
「くそっ!離せっ!!」
グリンは必死にもがくも、グリンの倍はあるであろう強靭な足をどかせるはずもなかった。

日は傾き、住処の中に入り込む光もまた伸びる。その光は、グリンを押さえつけている影を剥がしてくれた。
照らされたその何者かは整ったオレンジ色の体毛を生やし、その中でグリンと同じように黒い毛が模様を作っていた。後足首と首回り、そして額に立派な極薄茶色の毛を生やしていた。
グリンの種族、ガーディの進化した姿―――その何者かの正体は、ウィンディであった。

                                         *

「久し振りだね。グリン」
ウィンディはグリンを押さえつける足を緩め、自分の顔をよく見せつけるように顔を寄せた。
「き、君は…………!」
少しでも近くで見ようと、無理な体勢でグリンは頭を浮かせた。ウィンディの方は微笑みながら、ゆっくり頷く。
――――しかし、グリンはくっ、と眉間にしわを寄せた。その微笑みが気に入らなかったわけではない。ただ―――
「………………………………………誰だっけ?」
思わずノリでずっこけそうになるほど、グリンの言葉は意外だったウィンディはより一層グリンの四肢を強く押さえつけた。そのことにまた恐怖を感じたグリンだが、どうする事も出来ない。本当に思い出せないのだ。
「……お前ねぇ………!ずっと会いに来てくれなかったから、さみしかったんだよ?私。」
これで思い出すだろうとウィンディは考えたが、依然グリンの頭の上には大きなクエスチョンマークが浮かび上がっていた。勿論実際に見えるわけはないが、ウィンディにはグリンの表情からよく分かった。
「………………えぇ……っと………」
下に押さえつけられたままではグリンの不利は変わらない。唯一出来る手段として自分の記憶の中をまさぐることしか出来なく、それでもまだ思い出せなかった。
――――衝撃は、まさにこの瞬間にやってきた。

「グリーーン!向こうに花畑があったからさぁ!少し花つんできたんだけど、飾らない?」
記憶の海を泳いでいたグリンを陸に引き戻したのは、聞きなれたトパーズの声だった。
まだ住処に入ってきてはいないが、外からこんなに耳に通る声の大きさから、もう既にすぐそこまで来ている。グリンの恐怖は一気に焦りに塗り替えられた。
急に聞こえた声に気を取られ、ウィンディは足の力を緩めた。その隙に抜け出そうとグリンが身体をよじろうとした――――が、時既に遅し。

「ちょっと、返事くらいしな……さ…………………っ!!」
トパーズは口に咥えていた花の束をバサッ、と音をたてて落した。身体は硬直して動かず、瞬きさえ忘れていた。
――――自分の目の前に、グリンが知らない雌に襲われている。という衝撃的な光景に、トパーズは何も言葉が出てこない。
しかもその雌――ウィンディがグリンの上に乗っかっているという位置も災いした。これでは今どういう状況か、変な状況だと勘違いされてもおかしくない。
グリンの額に、どっと汗が噴き出した。
「ま、待ってトパーズ!ち、ちちち違うんだ!」
「………ごめん、邪魔だったみたい…………ね。」
状況を受け入れたかのように、トパーズの声は冷静だった。それが更にグリンを追い詰める。
トパーズはその場に花を残したまま、踵を返した。何度か見てるはずの彼女の後ろ姿が、今日は異常なほど見たくなかった。
「ト、トパーズ!!」
ようやくウィンディの足を振り払い、グリンは立ち上がる。と同時に、トパーズは外に向かって全速力で走り出した。
グリンもその後を追おうと外に駈け出したが、そこにトパーズの姿は既にない。

不気味で残酷な静寂と悲しげな花束だけがその場に取り残され、トパーズの姿は音もなく、まるで霧のように消えてなくなった。

                                         *

トパーズと花畑観賞を終え、シディアはグリンの住処から数キロ離れた大木の中に入っていった。ここがシディアの住処である。
摘んできた赤、黄、ピンクの色とりどりの花を束ね、内側の壁の微妙な凹凸に引っ掛けていった。
花を引っかけたことで濃茶色だった木の壁が、少しは鮮やかになったとシディアは微笑む。
住処の真ん中の方まで進んで座り込み、前足をたたむ様に折って地面にうつぶせになったシディアは、静かな時を心地よく感じていた。

太陽はもう西に降りていく途中で、空はうっすらとオレンジがかって来た。暫くシディアは静寂とかすかに香る花の香りを堪能すると、またスラリと立ち上がる。
これからやってくる夜のために、シディアは食料を採ってこようと住処を出た。
温かくも涼しく、冷たくもない風がシディアの身体を通り抜けて行った時、ふと、シディアは風に運ばれてきたいつもと違うにおいに気がついた。
このにおいはついさっき別れたばかりの――――――――
「………?…トパーズ……?」
風上の方を向くと、そこにはトパーズが立っていた。顔は暗く、体は小刻みに震え、うるんだ眼をシディアに向けていた。
「……どうしたの?」
シディアがいつものように微笑みながら声をかけた時だった。
トパーズの目から一粒の光がこぼれ落ち、やがて二粒、三粒と数が増えていく。トパーズはその光景が信じられなかった。
いつも活発で元気で、なによりも強気なトパーズが―――――――泣いていたのだ。
「え…………?……ど、どうしたの!?トパーズ!?」
「………シディアぁ……………」
トパーズはシディアが自分より小さいのも関係なく、シディアに抱きついてまた涙をこぼす。
目を皿にして驚くシディアだったが、何が起こったのか詮索する前にするべきことがあった。トパーズが泣くなんて余程のことだ。
シディアは優しくトパーズを抱き返すと、まるで母親のように親友の背中を軽く撫でた。

                                         *

空は完全に暁に映えた。早い者は寝床で横になり、夜行性の者が眠りから覚め始める。
トパーズの涙も夕暮れ色に染まり、更にその存在をはっきりさせた。
シディアには話しかけることも、慰めることも出来ずにただ嘆く親友の姿を見ては、自分も表情を曇らせるばかり。何が原因でトパーズが普段は見せないような涙を流しているのか、シディアはまだ知らなかった。
―――――いや、たとえ知っていたとしても、ここまで悲しむトパーズを慰める言葉など見つからなかっただろう。

トパーズがようやく涙を止めたのは、世界が暁から暗闇に変わる境目の時だった。
「……………ごめん…シディア……。いきなり…………」
シディアは目を瞑り、ゆっくり顔を横に振った。
「ううん………それより、どうしたの……?」
まだうっすらと残った涙を前足でぬぐい、トパーズはまた俯く。
「あのね………………――――――」

トパーズの言ったことは、シディアにとっても驚きであった。この気丈な親友が泣くのも頷けた。
「……そう………グリン君に…彼女が………」
トパーズは小さく頷いた。
シディアはその端麗な顔の眉間にしわを寄せた。方前足の平を額に当てながら、少しずつ目を細めていく。暫く考えるそぶりを見せたあと、トパーズの目を見た。
「そう………。……そのウィンディ、自分でグリン君とそういう関係だって言ったの?」
「……………………えっ?」
トパーズは僅かにシディアに顔を寄せ、目を丸くした。
「え……………っ!?」
わかりきっていた質問の答えが予想外に異なり、シディアも目を丸くする。まさか、と思ってもう一度唇を動かした。
「………そのウィンディ本人が言ったわけじゃないの?」
―――――トパーズは頷いた、というよりも傾いたに近かった。

暫く時間と空間が黙したあと、恐る恐るシディアがまた唇をはじいた。
「それじゃあ…グリン君がそう言ったの?」
恐る恐る、というのは、この問いがトパーズを頷かせるような結果になってほしくなかったからである。
たとえ仕方ない状況であったとしても、グリンがトパーズを悲しませるようなことはあってほしくなかったのだ。
聞いてしまったことに対する後悔か、シディアは顔を俯かせる。願わくば、NOという答えがほしい。
「………………………」
この沈黙は何を意味するのか。トパーズが何も言わないことで、更に場の空気が重苦しくなっていく。
やがて、ようやくトパーズは口を開いた。
「……グリンが………言ったわけでもない……」
トパーズがいい方向に裏切ってくれて、シディアは安堵と呆れをフゥ、という吐息に混ぜて空気中に放出した。
「まったく…それじゃあまだ分からないじゃない。」
「………うん、そういえばそうだね。あたし、頭が真っ白になっちゃって………」
トパーズがなかなか言い出さなかったのは、まだそれが真実だと誰かが言ったわけではないのに、勝手に自分がそう思い込んでいることに気がついたからだ。
だが、一度受けたショックはなかなか消えないもの。トパーズの表情は依然暗いままである。
シディアは壁にかかった花々を見ながら、首をすくめた。
「それじゃあ、今からグリン君のところ行ってたしかめてきましょうか。」
スッと立ち上がると、シディアはトパーズの前足を引っ張って立ち上がらせた。トパーズはひかれるがままに膝を伸ばした。
「えっ…?い、今から!?」
「もちろん、今から。」
シディアはトパーズににこりと微笑みかけると、有無を言わさずトパーズを外に引っ張り出した。

                                         *

「ねぇ、グリン。もっといろいろ話でもしようよ。」
住処の中を忙しく往復していたグリンを、ウィンディは手招いた。グリンは無性に腹が立ち、ウィンディの前で床を強く叩く。
「さっきからうるさいな君は!少しは静かにしたらどうだい!?」
グリンは心の底から怒鳴りつけたが、ウィンディはたじろぎもせず、何故か満足そうに何度か小さくうなずいた。
「うんうん、あんたも大分他者にものを言えるようになったね。感心感心。」
「やかましい!!」
さっきよりも強く怒鳴りつけたグリン。だがこのウィンディには全く効果はなかった。怒鳴れば怒鳴るほど、満足そうにうなずくだけ。

「君と話することなんてない!僕はトパーズを探しに行く!!」
待っていても一向にトパーズの姿どころか、足音もにおいもしない。トパーズが出て行ってからすでに3時間ほど経った。
ウィンディが住処にいるという焦りも手伝って、グリンは外に駆けだした。
森の木々の間に突っ込み、トパーズがいそうなところを頭の底から引っ張り出して一目散に走り抜けていく。
いつも水を飲みに行く泉。そこから少し離れた木の実のなる木々周辺。そして反対方向に位置する、昼寝にはもってこいの木々の過疎地域などを懸命に探しまわったが、それでも見つかりはしなかった。
シディアに聞けば何かわかるかもしれない。そう思ったグリンだったが、残念なことに彼女の住処の場所をグリンは知らなかった。
行き詰って、木の根元に座り込む。そして、深く溜息を吐いた。
「………どこにいるんだよ……トパーズ…」
グリンはがっくりと俯いた。

トパーズがいないだけで、こんなにもさみしいものだと思わなかった。当たり前になっていたトパーズの存在が、これだけ大きかったことを、グリンは初めて身にしみた。
グレインやシディアに何度言われても、トパーズに対する恋心だとか、愛だとかは感じていなかったはずなのに――――今のこの気持ちは………
うるさくて、図々しくて、ちょっとのことですぐ怒ったりするが、それもひっくるめてトパーズの魅力。―――それに今まで気付けなかった。

暫くしてハッとグリンは我に帰る。――――何を僕は考えてるんだ。
こんなことを考えるよりも、今はトパーズを探すことが先決だ。
グリンは立ち上がって、また歩き出そうとした。その時、グリンの座っていた木の後ろから、ウィンディが顔をのぞいた。
「へぇ……あの娘、トパーズって言うんだ。」
声に気づいたグリンは、ウィンディの方に顔だけ向けた。
「うるさい!大体君は誰なんだ!もう僕につきまとうなっ!!」
グリンはそう言い捨て、また前を向く。歩き出そうとした時、ウィンディの声がまた鼓膜を震わせた。
「まだわかんないのか。………あきれるほど記憶力ないな。」
そう言ってため息をついた―――かと思えば、唐突にウィンディはグリンに後ろから抱きついた。
「ヒントあげるよ。」
「っ!!な、何を言って……!!離れろっ!!」
必死に突き放そうとするが、どうにも絡みついたウィンディの前足をほどくことが出来ない。ウィンディはグリンにほどかれそうになるたびに一層強く抱きしめ、気にせずに続けた。

「私達ねぇ…………、友達以上の仲なんだよ。」
――――――――必死に振りほどこうとするグリンの動きが、一瞬にして止まった。

                                         *

真っ直ぐにグリンの住処の方まで草を掻き分けながら進むシディアの後を、トパーズは暗い顔と思い足取りで追いかけていた。
トパーズはシディアが草を掻き分けて出来る道をただ通るだけなのだが、シディアよりも歩くのが遅い。
トパーズとしては、時間をかけて心の準備をしてから出発したかった。だが、この深く落とされた影は、日を追えば日を追うほど更に悪質で深いものになることを、シディアは感じ取ったのだ。
ふと、トパーズの蹄に小石が当たった。これをきっかけにトパーズは足を止めた。
「ねぇ……ホントにいくの………?」
次に掻き分ける草の塊の中に前足を突っこんだまま、シディアも動きが止まる。
「勿論。せっかくここまで来たんだから……」
その草の塊を軽く開いて横に押し倒し、出来た隙間に入って更に後足で草を踏みつけ、トパーズも自分も入れるスペースを作ると、体を少し横に向けてトパーズを振り返った。
「あなたも私も、このままじゃスッキリしないわ。……もしかしたら、あなたの勘違い…ってこともあるしね。」
「か、勘違い…?」
トパーズが一歩シディアに近づくと、シディアは四足全ての膝を曲げ、上に跳躍した。上には大きな人間が乗ってもびくともしないであろう太い枝が、シディアの足場になった。
グリンがこの辺りにいないかどうか周囲を見渡すシディア。その眼と首の動きを止めないまま、もう一度口を開く。
「そう、勘違い。…そうね……たとえば…………」
一通り見渡し終え、シディアは枝の上でうつ伏せになった。枝の横から顔を覗かせ、またしょんぼりと俯いているトパーズを見下ろした。
「家族…だったりとか?もしかしたら、妹とか姉とかなのかもしれないわよ?」
「あっ――――」
トパーズは顔を上げた。そしてシディアを見た。
シディアはその視線に対し、微笑みで返す。そして枝からさっき自分で草をなぎ倒して作った空間に飛び降りた。
「さっ、先を急ぎましょうか。」
「…………うんっ」
トパーズの表情が、ほんの少し明るくなった。

トパーズは目の前で見たことに対して早とちりしたり、周りの意見に左右されやすいという、ちょっとした気持ちの脆さがある。
良い言い方では純粋、悪い言い方では単純なのだが、そこがシディアはたまらなく好きであった。
長い付き合いを経て、シディアにはトパーズに対する姉のような感情も抱く時がたまにある。今、トパーズのためにこうして動いているのも、それに似た感情を覚えたからだった。
トパーズを置いて行かんばかりの速さでシディアは進む。トパーズはそのあとをひたすらに追っていった。

シディアとトパーズが外に出て二十分ほどが経った。そろそろ外をうろうろと歩き回るのは危険なほど、空が闇に包まれていく。
太陽に比べて月や星の輝きはあまりにも弱すぎ、更にその僅かな光をも森の木々に遮られ、無人島全体も闇に染まった。
そろそろグリンの住処も見えてくるころであった。これだけ遅くなってしまったので、もしトパーズの勘違いだったのなら今夜はグリンの住処に止めてもらおうと思った矢先、シディアの鼻が何かを嗅ぎ取った。
身軽な体系を活かしてまた枝を足場とし、においのする方を鼻で探知するシディア。
――――そう、このにおいはグリンのにおいであった。
「トパーズ、いたわよグリン君。」
トパーズはビクッと反射的に縮こまった。それからシディアの前足が指す方向を、音を立てずに草をよけて見ると――――
「……………っ!」
トパーズは一瞬目を大きく開くと、見なかったことにするようにすぐさま背を低くして隠れた。
そこにシディアが降りてくると、今にも泣きそうな目を彼女に向ける。
ウィンディが後ろからグリンに――――抱きついているのだ。

「………………」
「………もう、見たこと聞いたことで、何でも勝手に判断しないの。例え家族だって、抱きつくくらいはするでしょ?」
伏せって立ち上がろうとしないトパーズに、極力小さな声でシディアは言った。すると、トパーズはもう一度渋々と立ち上がった。
もう一度草をどけてみると、何やらグリンとウィンディの会話を耳が捉えた。
「……………それは……いったいどういうこと………」
「んーー……言った通りの意味だけど。」
「そうじゃない!僕と君が何で『友達以上の関係』なんだって聞いてるんだ!!」
衝撃的なこの発言から逃げようとトパーズが顔を伏せようとした瞬間、シディアが肩に前足を乗せて横に首を振った。
『何でも勝手に判断しないの。』
そうもう一度言っているようだった。トパーズは恐る恐る顔を上げた。
「これでも思い出せないかぁ………。………んー……………」
「と、とにかく、僕から離れてくれ!」
「やだよ。せっかく久し振りに会えたんだから。………言い方によっちゃあ、私達は肉体的な関係もあるんだよ……?」

―――トパーズが耐えられたのはここまでであった。
「トパーズ!!」
シディアの声など耳に入れず、トパーズはさっきまで通っていた道を逆走し始めた。全速力で走り去ろうとするトパーズの後を追いかけようと、シディアも地面を蹴ろうとした時、さっき出した大声のせいでグリンに気付かれてしまった。
「え……シディア………!?」
ようやくウィンディの前足を振りほどき、グリンがシディアに駆け寄る。
だがシディアはその声に返事をせず、ただグリンを一度目を鋭くして睨んでからトパーズの後を追って行った。

                                         *

トパーズに後ろを振り向く気などなかった。
ただまっすぐ、途中で木の枝に毛が擦れようが、目の前に突然木の葉が落ちてこようが関係なく、一直線にグリンから離れていく。
振り返って誰もいなければ、いつも一緒にいたグリンが離れていく悲しみが更に増加するような気がして――――
悲しみをこらえるあまり前を見ることを疎かにしていたトパーズは、凄まじい勢いで何かに正面衝突してしまう。
「痛っ!!」
トパーズは無言で後ろに弾きとび、ぶつかられた影はトパーズと接触した鼻を押さえて唸った。
「…………ごめんなさい……」
そう小さく言ってまた走り出そうとしたトパーズの肩を、その影は力強く掴み、グイッと引き寄せた。
変な男に絡まれるのかと、トパーズが目を瞑る。だが、かかってきた言葉は意外なものであった。
「こっちこそすみません。……大丈夫ですか?どこか怪我は?」
そう言って近づいてきたことで、その影は徐々に剥げていく。そして、影が剥げたにも関わらず漆黒な体毛がトパーズの目に入った。
それが代表的な肉食ポケモン―――グラエナだと解ったとき、トパーズは大きく目を開いて驚いたが、それが誰かわかると、また溜まっていた涙が、ポロポロと溢れ出す。
「え…………っ!?ちょ、大丈夫!?」
そのグラエナは、グリンの兄のような存在であり、親友でもある心優しいグラエナ―――グレインであった。
急に涙を流し始めるトパーズに、何も事情を知らないグレインは焦うばかり。
ようやくシディアが追いついたのは、訳も分からず何度も何度もグレインがトパーズに謝り続けている時だった。

「何だってえぇぇぇぇっ!?」
グレインの大声で、一瞬だけ風が荒れたような気がした。
「まだ確実じゃないけど………私たち、見ちゃったから…グリン君に抱きついてるとこ……」
グレインはシディアの言葉に耳を傾けたあと、トパーズにも目をやった。変わりなく下を向いたまま、彼女の一番可愛いところである活気が、全く感じられない。
「グリンの奴…いつの間に…………?」
ブツブツとグレインは呟きだした。そしてもう一度シディアを見ると、いつになく真剣に首をひねる。
「いつもトパーズと一緒に居たのに、グリンはいつそいつに会いに行ってたんだ……?その女の種族は?」
「……ウィンディだったかしら。」
「ウィンディ……?」
そう呟くことで返事の代わりにすると、グレインはまたブツブツとひとりごとを言い始めた。
やがてそれが止まると、「もしかして…」と最後に呟いてトパーズの顔を下から覗きこみ、にこりと笑った。
「トパーズ、つらいかもしれないけど、もう一度グリンが居たとこに連れてってくれないかな?」
えっ?とトパーズは顔を上げた。だがグレインの真剣な顔を見ると、トパーズは元気なく僅かに首を縦に振った。
後ろを振り返ってまた歩き出すトパーズの後を、グレインは追う。途中、シディアがそれを引き留めた。
「どうしてまたトパーズをあそこに行かせるの……!?もうトパーズの心はボロボロなの……よ!?」
滅多に見せないシディアの鋭い目つきにも、グレインは動じない。グレインも、トパーズのために真剣になっているからである。
「ちょっと…気になることがあってね。…………もしかしたら、もしかするかもよ?」
キョトンとするシディアにグレインは微笑みかけると、トパーズが歩いて行ったあとを追う。シディアも一度首を捻りながら、その後を追って行った。
 
                                         *

グリンは木の下で尻もちついて座り込み、自分の後足と後足の間の地面に生えた雑草を見ていた。
その目に元気はない。ただ虚ろに、揺れる草を見ていた。
最後、去り際に見たシディアの鋭い視線。それは、自分を軽蔑するような目つきにしか、グリンには見えなかった。
「グリン……」
調子よくグリンにくっついてからかい続けたウィンディも、心配そうにグリンを見る。
座り込んでグリンの顔を覗き込もうとした時、グリンはウィンディを睨みつけた。
それが涙目ながら凄まじく迫力があり、ウィンディは精神的にも肉体的にも押し返されてしまう。なす術もなく、ウィンディはグリンの横に座り込んだ。
ウィンディにとって、グリンとシディアとトパーズの関係は皆無であり、グリンもウィンディのことは知らない。
ウィンディ曰く「思い出せないだけ」だというが、それさえも考える余裕は、グリンにはなかった。
風でガサッと草が揺れても、グリンは動じない。ゆっくり目を閉じて、うっすらと涙を浮かべ、小さくため息をつく。
ウィンディは、そのひとつひとつの動作を気にして、何度もグリンを見てはうつむいた。

また草が揺れる。だが、今度は風ではないことはグリンにもウィンディにも解った。
グリンが顔を上げると、そこから黒い塊―――否、黒い毛に包まれたポケモンが、草の合間から現れた。
そう、グレインである。
「よう、グリン」
陽気に声をかけるグレインにグリンは駆け寄ろうとした。だが、その後ろからトパーズの炎の鬣が見えたせいで、立ちあがるだけにとどまってしまう。
ふぅ、とグレインはため息をついた時、声を出したのは意外にもウィンディであった。
「グレイン!?あんたグレインだよね!?」
グリンではなく、ウィンディの方がグレインに駆け寄っていった。これにはグリンもトパーズも、トパーズの後ろにいたシディアも目を丸くするばかりである。
普通なら、肉食ポケモンであるグラエナを見た時点で驚くことだろう。
だがこのウィンディは、グレインが肉を食べない―――食べられないことを知っていて、なお且つ知り合いでもあったのだ。
「うわー、あんた男らしくなったねぇ。」
「いやいや、そっちこそ随分女らしく………なって?」
「なんだよその疑問形は!!」
更に近づいてくるウィンディに、トパーズは反射的に後ろに下がった。

「グレインさん……このウィンディのこと………知ってるの?」
一番驚いているのはグリンである。グレインと知り合いであるのに、自分が知らないなんて信じられなかったのだ。
グレインは肉食ポケモンと同じ種族故、同じ肉食のポケモンとしか相容れない。しかし、肉を食べれないグラエナなどおかしいと、同じ肉食でも冷たい目で見られるのだ。
仲良くなれるのは、自分が肉食でないと信じてくれる者のみである。
だから、グレインがグリンの知らない者と仲がいいのは信じられないのだ。

「そりゃあ知ってるさ何年も前からな。……でもな、グリン」
グレインがゆっくりとグリンに近寄って行った。そしてグリンの肩を掴んで引っ張り、ウィンディの前に立たせると、口を開いた。
「俺よりもお前の方がこのウィンディのことよーく知ってるし、俺よりも何年も何年も前から知っているはずなんだぞ?
………そう、お前が生まれた時からな。」
ハッとグリンは息を吸い込んだ。そしてもう一度、ウィンディの顔をよく見る。
そして、過去の記憶を引っ張り出し、この顔に当てはまるであろう顔を求め、探し、結果グリンはついに――――
「もしかして……………お姉ちゃん………?」
グリンは自信なさ気にそう言ったが、ウィンディもグレインもにこりと笑った。
唯一話題に乗れないトパーズとシディアは、衝撃の事実にただ口をあけてポカンとするだけであった。
 
                                         *

「お………お姉ちゃん!?」
トパーズはグリンの横に並び、一緒にウィンディを見上げた。
「そう、私の名前はヴェイン。グリンとはちゃんと血の繋がった姉弟だよ。」
「お姉ちゃんって……あのお姉ちゃん?」
「……ってそこで僕を見ないでよ。僕だってよく覚えてないんだから…………だいたい『あのお姉ちゃん』って何だよ。」
「お、覚えてないって……っ!あんた馬鹿!?実の姉のことも覚えてないの!?」
ウッと言葉に詰まったグリン。そんなことは気にせず、トパーズはグリンに呆れた様子ながらも、激しく怒鳴った。
今まで勝手に勘違いしていた自分があまりに恥ずかしく、それをグリンにぶつける様に。

そのトパーズの肩にウィンディ―――ヴェインは前足を軽く乗せて、ゆっくり首を横に振る。怒鳴り途中でトパーズは口を止めた。
「グリンが私のこと覚えてないのも……仕方ないことなんだよ………。」
そう小さく言うヴェインの目は悲しげにトパーズに語りかける。トパーズはその目を覗き込むように、ヴェインの顔を見た。
「仕方ない……?」
確認するような声に、ヴェインはゆっくりと頷く。
「実はね………私達の両親はグリンが生まれて、物心つく前に分かれてね。原因は些細な喧嘩だったんだけど、それがどんどんヒートアップしていって………」
その時グリン一歳、ヴェインは六歳だったのだという。幼い子供だった彼女たちとって――特にヴェインには――ショックな出来事だろう。
「母親はグリンを引き取って、父親は私を連れていった。……悲しい事だったよ。親の離婚もそうだけど、やっと生まれた弟と、たった一年だけ過ごして別れるなんてさ。
………グリンは覚えてないだろうけどね、私はグリンに抱きついて泣きじゃくったよ………。」
言いつつヴェインは苦笑した。
ここまでの話ですでにトパーズとシディアにとっては驚きであった。トパーズは特に、何年か共に暮らしているのに、グリンの過去についてあまりにも知らなさすぎたからだ。
「私達が分かれて八年くらいで母親が死んだっていうことを風の便りで聞いた時、私はひっくり返りそうになったよ。だってその時グリンは九歳になるかならないかの時だよ?まだ一匹で暮らすには早いじゃん。
やっぱり生き別れた弟って気になるもんでね、どうしようかと考えた時に、一匹の男に出会ったんだ。」
話している途中に、ヴェインの目線がトパーズでもグリンでもない方向にいった。気になって追ってみると、その先にはグレインが真面目な顔で頷いていた。

改めてグレインを前足で指し、ヴェインは話を続ける。
「ちょうどグレインが木の実をかじってるところを見つけてね、肉食のグラエナがどうして木の実なんか……と思って、勇気を出して声掛けてみたわけよ。それがきっかけで仲良くなって、いろいろ話してたら可愛い女を探し回って島中駆け回ってるっていう話をし始めた…………ね、グレイン?」
「ちょっ……!!今そんな話しなくても…………っ!!」
焦りに焦るグレインは突き刺さる皆の視線をどうすればいいか解決策が見つからず、挙動不審に前足を動かした。
くすっと笑ってトパーズとグリン、そしてシディアは顔の向く方向をヴェインに戻す。
「そんなグレインだから、思い切って頼んでみたんだ。「この島のどこかにいる弟の世話をしてほしい」ってね。グレインは快く引き受けてくれたね。」
こんな面倒で手間のかかることを、何故グレインは引き受けたのか。
それは、肉が食えない肉食獣だから他の肉食獣から軽蔑され、だが姿かたちがグラエナのせいでその他のポケモンたちとも仲良くなれない。
そんなグレインに、声をかけてくれたのがヴェインだったからだろう。
グレインはどれだけ嬉しかったことだろうか。
「そうしてグレインに任せてから大体五年、私が十九歳の時、父親が病気で死んだ。それからずっとグリンを探し続けて、今ようやく…………ね。」
ヴェインは艶やかに微笑んで、グリンの前に立った。
グレインの件を知らなかったらしく、ただ驚くグリンにヴェインは正面から抱きついた。
「会いたかったよ………グリン。」
グリンの顔の横で、ヴェインは目を瞑る。そしてじっくりとグリンの体温を感じ続けた。
愛おしかった弟に、十七年ぶりに会えたのだから――――― 
 
                                         *

ヴェインがようやくグリンを離すと、グリンは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「こ、こんなとこでいきなり抱きつくなよ。恥ずかしいって…………」
「十七年振りなんだから、これくらいいいじゃんか。」
そう言ってヴェインは微笑む。
それから、トパーズとシディアを順に一瞥してからグレインの方に近寄った。
「あの子達は…………?」
「あぁ、あいつらはグリンの………―――――」
グレインはヴェインの耳元に口を寄せると、グリンに聞こえないよう囁いた。
「ポニータの方はグリンの――――――――」
うんうんと数回頷いた後、ヴェインは目を見開いた。そして耳元から離れたグレインの顔を見て、声に出ないほど小さく「本当!?」と聞いた。
グレインがそれに笑いながら頷く。
「そう、それとエネコロロの方がトパーズとグリンの友達の………」
「シディアです、よろしく。」
シディアはとびっきりのスマイルでヴェインを見上げた。
「よろしく。」
と言った後、ヴェインは素早くグリンに近寄って肩を叩きながら、トパーズの方を見た後またグリンを見る。
「あんたやるねぇ!!」
ニヤリと笑うヴェインから、グリンはグレインが言ったことを全て悟る。グレインを睨みつけ、それから慌てて口を開いた。
「ち、ちちちち違うよ!僕とトパーズはただ一緒に暮らしてるだけであの…………と、とにかく違うんだって!!」
「何がぁ?」
「何がって……えっと…………」
言葉が出ずに頭を抱えるグリンの頭を、ヴェインはポンッと叩いて笑った。

「よかったわね、トパーズ。」
ニコリとしながらシディアはトパーズに肩を並べた。
「………で、でも違うんだからね。あたしは別にグリンのことはどうも…………こ、今回はちょっと驚いて動揺しただけで…………」
激しく否定しながら、トパーズは顔をどんどん赤くしていった。
「素直じゃないわね………」
そうポツリとつぶやいてトパーズと、まだ頭を抱えているグリンを見た後、誰にもばれないようにシディアはクスリと笑った。


 終


あとがき

ようやく終了。思ったより長いものとなってしまいました。

姉の登場とグリンの過去については、「無人島」を書き始めて最初の方で思いついていたもので、今回でやっと書くことができました。
鈍感にする予定だたトパーズがいつの間にやらツンデレみたいに………
まぁこれはこれでいいか、といい加減に納得する作者でした。



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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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