ポケモン小説wiki
漆黒の満月 七話

/漆黒の満月 七話

written by cotton



漆黒の満月 七,



少し平地となった場所に、イーブイは辿り着いた。彼の前には彼の「御主人」、ロンが立っている。
「…御主人…」
「…ああ、フーディン。通訳頼む」
そう言って、フーディンを出した。
「…アブソルは?」
彼の通訳は、普通の人間の通訳とは少し違う。彼らの会話を変換し、それぞれの感覚に伝える。
「…お願いがあるの」
「…何だ」
「ボクを…」
イーブイはゆっくりと話し出した。
「…ボクを…連れていって…くれない…?」
「…嫌だな。一度捨てた奴なんて…」
「ロン」
シャワーズが静かに話し始めた。
「…シャワーズ?」
「聞いてあげて。私、『彼』に言われたの。…あいつを、独りにするなって」
「…」
「私からも、お願い」
ロンは考え込む。
「…分かった。チャンスをやる」
「ロン…!」
「御主人…」
「1対1でこいつと戦え。勝ったら、…認めてやる」
ロンはシャワーズを見、イーブイに話す。
「…姉ちゃんと…?そんなの…」
「いいよ。始めましょう」
「…え…?」
イーブイは戸惑いを隠せない。




「何処にいる…イーブイ…!」
彼を捜すため、アブソルは走っていた。もう日が暮れてから、だいぶ時間が経っていた。



ー思えば、彼と出会ってから今まで、彼の傍を離れたことは一度も無かった。…何故だ。何故、胸を締め付ける。何故、忘れたはずの痛みを再び思い出す。
「はぁッ…!はぁッ…!」
息は切れ、もう何も言えない。
ー何処にいるんだ…!答えてくれ…!
ーkrrr…
ー…ッ!?
どこかで聞き覚えのある鳴き声。彼はそっと、耳を澄ます。
ーkrrr…
今度ははっきりと聞こえた。
「…イー…ブイ…!」
それは、彼と出会った晩に聞いた寂しい鳴き声。誰かを待っている、孤独な鳴き声。
ー急がねば。「弟」のもとへ行かなければ。
「イーブイ…!」
ただ、叫び続ける。たとえそれが、彼に届かなくても。たとえそれが、声とならなくても。
体力は限界のはずだった。でも、止まることはできない。弱々しい鳴き声は、だんだんと、近づいている。確実に、すぐそこに。



「…あッ…はあッ…」
「終わりか?」
「まだ…!」
イーブイは傷だらけだった。それでも、立ち上がることをやめなかった。
「…粘り強さはあるみたいだな。…シャワーズ。オーロラビーム」
「…うあッ…!」
もう、彼には避ける体力もない。それでも、立ち上がる。自分には、もう帰る場所がないから。自分は、もう進むしかないから。
「イーブイッ!!」
「…兄…ちゃん…?」
「ロン…貴様…!」
「…やっと来たか」
息を切らし、彼は辿り着いた。傷だらけのイーブイを見て、ロンへの怒りが生まれる。
「…お前、こいつに何言った?」
「…ああ…?」
「なんて言ったかって聞いている。答えろ」
ロンはアブソルに問う。冷たい目ではなく、真剣で、厳しい目で。
「…泣いてたぞ。独りだったぞ。何を言った。こいつに…」
「…ブラッキーにはなるなって、俺と同じ思いはさせられないって…」
「…なるほど」
イーブイに目をやる。
「…仲間にしてくれって頼まれた。だから、こいつの力を試している」
「…?イーブイが…?」
「…そうだ」



「…兄ちゃん」
イーブイは傷だらけで、立ち上がる。
「…ボク、勝つよ。負けないよ、絶対…」
「…イー…ブイ?」
イーブイを光が包む。そしてー



「…驚いたな。こんな力、秘めていたのか」
イーブイの一撃を受け、倒れているシャワーズを見て、ロンは言った。
「…イーブイ?……!イーブイ!!」
彼は、その場に横たわっていた。



漆黒の満月 八話へ。



気になった点などあれば。

コメントはありません。 Comments/漆黒の満月 七話 ?

お名前:

トップページ   編集 凍結 差分 バックアップ ファイル添付 複製 名前変更 再読み込み   新規作成 ページ一覧 ページ検索 最近更新されたページ   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.