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混沌を探す旅人

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混沌を探す旅人 

by蒼空



僕はいつも、一匹だった。理由は僕がアブソルだから。
アブソルは災いを起こす悪魔だって皆は言う。
本当は違う。僕達アブソルは災いを皆に知らせようとしてるだけなのに。
だから、僕はアブソルとしての使命を果たすために旅をしていた。

『……お前、悪魔と契約する勇気はあるか?』

彼と出会ったのは僕が他のポケモンに追われて逃げた洞窟の中だった。



彼と一緒に旅をするようになってもう一年が経とうとしていた。
大人しい僕とは正反対の行動的な彼。
僕には彼が必要だし、彼も僕を必要としてくれている。
だから、今は彼の目的の為に旅をしている。彼の力になりたいから。

『ハザード。この辺は今、グラエナ同士のボス争いでピリピリしてる。
 かかわり合いになる前にさっさと抜けるぞ』
「そうだね。忠告ありがとうカオス。
 こんなに綺麗な景色の所なのにゆっくり出来ないのは残念だね」

凄く綺麗な場所で、本当はもっとゆっくりして行きたいのにな。
僕が景色を眺めながら歩いていると、カオスは溜息をついていた。

「居たぞ! 今度こそ逃がすな!!」
「……まったく。しつこい奴等だね」

僕達の目の前を若い雌のグラエナが通り過ぎていく。
二十歳位に見えたけど、僕よりも一歳か二歳年上かな?
通り過ぎたと思うと今度は三匹の雄のグラエナが飛び出してくる。
雄のグラエナ達はさっきの若いグラエナしか目に入ってなかったのか、先頭のグラエナが僕とぶつかった。

「てめぇ! 何処に目つけてやがる!! くそっ! 見失ったか」
「こいつアブソルか。なら、丁度良いか。世界に災いをもたらす悪魔を殺そうじゃないか」
「そうだな。俺達は雌に逃げられて少々ご立腹だ。だから、少しは楽しませてくれよな!!」

僕、いきなりグラエナに絡まれてます。
そもそも、前を見てなかったのは、そっちじゃないか。
何で皆、アブソルってだけでこんなにも冷たくするんだろう……。
流石に僕一匹じゃ、三匹も相手にするのは分が悪いかな。
一緒に旅をしてるけど、カオスは僕の隣には居ない。
彼は僕の中に居る。そう、僕等は二匹で一匹のポケモンだ。

『この一年、お前と旅をして思ってたが……お前って本当に厄介事に巻き込まれるよな。
 俺はこんな所で死ぬ気も無いしな。ハザード、大人しく身体を渡せ』
「うん。お願いするよカオス」

力を抜くとまるで金縛りにあったように、僕の身体は自由に動かない。
それでも、身体は僕の意思とは関係なく動いている。
今、僕の身体はカオスの意思で動く。

「お前等に敗北という名の悪夢を見せてやろう」
『前から思ってたけど、戦闘になって変わってもらうと、いつもその台詞言ってるよね?』
「この台詞を言わないとやる気が出ないんだ。集中出来ないから、少し黙ってろよハザード」

カオスにも意外な一面があるんだね。
これ以上何か言ってカオスを怒らせるは良くないから黙ってよう……。

「独り言とは随分、余裕じゃないか。死ねぇええええ!!」
「死ぬのは俺じゃない。お前達の方だ」
『流石にそれはダメだよカオス!』

敵意を剥き出しにしたグラエナ達が襲い掛かってくる。
それを綺麗に回避するカオス。……流石、戦闘に慣れてるだけはあるよ。
すれ違いざまの一匹に『切り裂く』を放ち、戦闘不能にさせる。
良かった。気絶してるだけみたい。カオスも僕の頼みを聞いてくれたみたい。

「そもそも、相手はこっちを殺そうとしてるんだぞ。
 だが、こっちは敵を殺すななんてな。甘いなハザード」
『でも、カオスも僕の頼みを聞いてくれたよ。カオスも同じでしょ?』
「……そうだな。俺もお前の甘さがうつっちまったみたいだな」

続いて二匹目をアイアンテールで気絶させる。
残るは一匹だけになったね。
会話の最中に今の反応速度は、僕も凄いと思う。

「な、何なんだ!? 何で一匹のアブソルなんかに勝てないんだ!?」
「理由は簡単さ。俺がお前達よりも強いからだ。それだけだな」

最後の一匹はアブソルの必殺技『かまいたち』をお見舞いし、吹き飛ばす。
カオスは辺りを見渡し、まだ仲間が居ないか慎重に探している。

「……そこに一匹居るな。隠れてないで出てきたらどうだ!」

カオスは一点の茂みを睨みつける。
しかし、返事は返ってこない。

『返事が無いけど……気のせいだったんじゃない?』
「いや、絶対あそこに一匹居る……」
「流石は一匹で三匹のグラエナを倒しただけはあるみたいだね」

茂みの中から、さっきすれ違った雌のグラエナが現れる。
……つまり、僕達ってあのグラエナ達の相手を押し付けられた?

「……さっさと居なくなったと思ってたんだがな。まさか隠れて見物かよ……。
 少しだけ趣味が悪いんじゃないか?」
「それは悪かったよ。私はループス。ねぇ、あんた強いけど私達の仲間にならないかい?
 ……ん? 珍しいね。あんた虹彩異色症なんだね。右目が青で、左目が普通の赤か……」
「普通にオッドアイって言わないか? そんな言い方されると悪い病気みたいだろ……。
 見た目はこんなんだが、別に視力が悪いとか、何か影響がある訳じゃないんだ。
 さっきのグラエナ達との戦闘は試験のつもりか? 俺達はグラエナのリーダー争いに興味なんて無い。
 俺達は旅人なんだ。こんな所でゆっくりなんて、してられないな。悪く思わないでくれ」

ループスと名乗ったグラエナが「それくらい、良いじゃないか」と言いながら、抱きついてくる。
雌と全く縁が無かった僕には刺激的過ぎるんですけど……。
何かの縁で知り合った以上、ほっておく事なんて僕には出来ないな。

『ねぇ、カオス。協力して挙げられないかな?』
「冗談じゃない! ハザード、お前は俺達の旅の目的を忘れてないか?
 そうやって、何回も俺はお前のほっとけない病に巻き込まれてるんだぞ!
 いい加減、その病気を早く治療しろ! 俺が迷惑だ!」
「さっきから、何を一匹で怒鳴ってるんだい? それに私はあんたの名前、まだ聞いてないよ。
 それとも、さっきから叫んでるハザードってのがあんたの名前かい?」

……ハザードは僕の名前です。そっちはカオス。
って言っても今の僕の声は彼女には届かないんですけどね。

「……俺はカオス。訳ありで今はこいつ……ハザードの身体を借りてる。
 一匹の身体に二匹の意識がある。俺は自分の身体を見つけなきゃならないんだ」
「カオス? カオスってまさか、千年前に世界に混沌を招いたっていう、あのダークライの?
 心、技、体の三つの分けられて封印されてるって聞いてるんだけど」
「……もし、そうならどうする? 俺を消すか? それなら容赦しないぜ」

あわわ! 何か険悪なムードになってきてるよ!
流石に騒ぎを起こすのは不味いよね。さっきカオス自身が言ってたし。

『カオス。ここは穏便に行こうよ。さっき自分でも言ってたじゃない』
「なら、俺の役目は終わってるんだ。あとはお前がなんとかすれば良いだろう。俺はもう変わるぞ」
「ちょっと、カオス。……変わっちゃったよ。あ、さっきカオスが紹介したけど僕がハザードです。よろしくループスさん」

失礼のないように話を始める前にとり合えずループスさんに挨拶をしておく。
いきなり人格が変わったからか、ループスが唖然としてるよ……。

「え? ああ。よろしくハザード。さっきの話だけどあんたの中に居るのは本当にあのカオスかい?
 あんたの相棒はその事を、肯定も否定もしなかったからさ……」
「……本当だよ。それにしても、まともな伝承すら残ってないのにカオスの名前を聞いただけでよく分かったね」
「私達の一族が特殊でね。千年前にカオスを封印した一族で、『混沌の封魔』って呼ばれてるんだ。
 それで、カオスの事は知っていたんだよ。まさか、復活して目の前に現れるなんて思ってなかったけど……。
 そもそも、今のリーダー争いもこの力が原因で起きてるんだよ……。
 この群も他の群と例外なく、リーダーの血統の長兄がなるんだけどそれ以外にもあと一つだけ要素があるんだ。
 群のリーダーになるためには混沌の封魔の力を継いでなきゃならないんだよ。
 兄さん……いや、リーダー候補のジョーカーはその混沌の封魔の力を継いでいないんだ。
 だけど、雌である私が混沌の封魔の力を継いでいる。
 そこでリーダーはどちらが相応しいかって話になるわけさ。
 リーダーの血統の長兄か、混沌の封魔の力を継いだ雌か……。
 あんたならどっちがリーダーになるべきだと思う?」

いきなり、僕に振られても、困るよ。
決まらないからこそ、今の状況になってるんだよね。

「僕は力よりも弱者が安心して暮らせる方がリーダーになるべきだと思う。
 それが、外敵から群を守るって事なら力があるほうがリーダーになるべき……じゃないかな」
「なら、強い力を持っている長兄が弱者を切り捨てる性格なら話は別って事で良いのかい?
 と言う事で、こんな話を聞いたわけだし私に協力してくれるよな!」
『何故か俺達、無理矢理協力するハメになってなってないか?
 まぁ、こいつが千年前に俺を封印した一族の末裔ね……。
 その話が本当なら、俺の力か身体の封印場所をどちらか、あるいは両方……知ってるかもしれないしな。
 不本意だが俺にもこいつに協力する理由が出来たか』

……僕もそう思う。協力する気はあったけど、こうも強制だとやる気が失せるよね。
でも、混沌の封魔か。カオスにも黙ってるけど僕も本当は……。

「まぁ、こんな所で立ち話をしててもしょうがないし、私達の群に案内するよ。
 ……と言っても群と言うより隠れ家って言ったほうがしっくりくるんだけどね。
 私よりもジョーカーの方が勢力が強くてね。今は小さくても、いつかは私達が勝つよ」
『いつかか……。いつか誰かが。そんな未来なんて本当に来るのかね。
 思いだけで戦っても無駄に被害を出すだけだろうに……』

カオスの言いたいことは僕も分かる。誰もが、戦いを望むわけじゃない。
でも、だからって何もしないで相手の言いなりになるのも僕は嫌だ。
だから皆、戦うんじゃないのかな? 少なくても僕はそう思うけど。

「……カオス。でも、力だけで皆をまとめても、いずれは瓦解するよ。
 強制的な手段はそれを良しとしない反乱分子を生むから……。
 思いだけでも、力だけでもダメなんだ。その両方があって初めて意味がある。
 だから、僕は『思い』のために自分の力を使いたいんだ。」
『ハザード。確かにそうかもしれないな……。だが、これだけは言っておくぞ。
 戦うのはお前じゃなくて俺になるんだろう? カッコイイ事言っても台無しだ。
 そういう事を言うには、お前自身が戦えるようになってからにするんだな』
「そ、そうだねカオス……。じゃあ行こうかループスさん」

ループスさんが声をかけてから、返事が遅かったから少し怒ってるよ。
しょうがないよね。こればっかりは僕一匹の問題じゃないんだし。
確かにカオスは見えないし、他のポケモンは声も聞こえないけど……。

「……ああ。だけどその前に一つだけ、やっておかないといけない事があるんだ。
 その用事を済ませないと群に行くわけにもいかなんだよ」
「で、その用事って面倒な事なの?」
「いや、簡単事だ。そこで狸寝入りしてるジョーカーの部下を三匹をもう一回眠らせるだけだ」

そういえば、すっかり忘れてたよ。まだ、ここに倒れてたんだよね。
グラエナ達の方を見ると『狸寝入り』って言われた瞬間にピクリと動いたよ。
ループスさんは三匹を再び気絶させると何事も無かったようにこちらを向く。
僕達がループスさんに従わなかったら、こうなってたかもしないんだよね……。
ループスさんの用事が終わると僕等は群へと向かって歩き出した。



道と呼べるほどのものがないほどまでに、草木が生い茂った道を僕等は進んでいく。
草木が生い茂りすぎて、自分が今どの位歩いたのか、何処にいるのか全く分からない。
……ここでループスさんとはぐれたら確実に迷子になるね。気をつけないと。
ループスさんの後ろを歩き続けると、ようやく一筋の光が見えてくる。
生い茂った木々を抜けれると、広場が顔を覗かせた。
ループスさんの言うとおり、群と言うよりは『隠れ家』って言ったほうがしっくり来るかな。
広場には少数のポチエナやグラエナが居る。
僕達が広場に着くと遊んでいたポチエナが僕等に気付いて近づいてきた。
無邪気な雄みたい。僕にもこんな少年時代があったんだよね。

「お帰りなさいループス様。そっちの白いポケモンは誰なんですか?」
「ああ、ただいま。こっちの白いポケモンはアブソルのハザード。
 しばらく、私達の群で用心棒をしてくれることになった」
「わざわざ、用心棒なんかに頼らなくても俺が居れば大丈夫だろう。
 それともループスは俺の事が信用できないか?」

ループスさんとポチエナが話していると奥から一匹の雄のグラエナが姿を現す。
余程、自分の力に自信があるのかループスさんに馴れ馴れしい。
年齢はループスさんよりも一歳か二歳年上かな? 見た感じの判断だけど。
ループスさんも彼の事を良く思っていないのか、明らかに嫌そうな顔をしてるし。

「流石にファングだけでジョーカーの群を倒すのは無理だろう?
 その為にこうやって戦力を集めているんじゃないか」
「別に群全体を倒す必要は無い。重要なのはジョーカーの首だ。
 頭を潰せば群は機能を失う。あとは、ループスが統括すれば良いだろう。
 それに戦力増強と言っても多種族に頼るのはどうかと思うぞ。
 これは俺達グラエナ、ポチエナの群の問題だ」
「確かにそうだが……。今更、私かジョーカーについてないグラエナやポチエナは居ないだろう?
 なら、どうやっても戦力増強は多種族に頼るしか方法はない」

ファングさんの考えも分からなくはないし、正しい気がする。
多種族の僕が、グラエナの群の問題に関与するのはやっぱり変なのかな?
でも、僕がループスさんの力になりたいのは本当だし。

「ループスの言う事も一理あるが……。俺は他種族に頼るのは賛成できない。
 お前、ハザードとか言ったか。これだけは忠告しておくぞ。俺の邪魔だけは絶対にするなよ」

僕に一方的に忠告してファングさんはこの場を去っていく。
ここまで、ループスさんと思想が会わないのに何で一緒に居るんだろう?

「ねぇ、ループスさん。ファングさんと随分と意見が合わないようだけど、何で一緒に?」
「いや、まぁ、あいつとは群のリーダー争いの前からの付き合いなんだけどね……。
 昔、あいつから告白されていてだな……。断わったんだが、今も諦めてないみたいで……」
『なるほどな。他種族に頼りたくないってだけには強すぎる殺気だったわけだ。
 ループスと仲良くしてた俺達が気に食わないって事か。嫉妬とは醜いな』

……別に僕とループスさんはそんな関係じゃないのに。
いや、僕だってそういう関係になりたくないって嘘になるけど。
綺麗で面倒見が良くて、弱気な僕を引っ張ってくれそうなループスさんは僕の理想だし……。
いやいや、僕は何て疚しい事を考えてるんだろう。……それに僕は幸せになる資格なんてない。

「ん? そんな、暗い顔をしてどうしたんだハザード?
 ファングの言った事が気に障ったんなら、悪かったね。
 言う事はきついけど悪い奴じゃないんだ」
「え!? いや、別にファングさんの言ってた事を気にしてた訳じゃないんだ!」
「そうかい。なら、良いんだけどね。
 いつまでも立ち話は難だし……着いて来てくれないかい」

僕は一言「うん。分かったよ」と返事をする。
ループスさんは僕の返事を聞いて満足そうにすると、目的地へと歩き出した。
少し歩くと小さな洞窟が見えてくる。
しばらくはここで過ごす事になるのかな?
中に入ってみると思った以上に広い。
入り口が小さいだけだったみたいだね。

「しばらくはここで寝泊りしてもらうからねハザード。
 慣れない洞窟暮らしで苦労するかもしれないがそこは慣れておくれ」
「そこは気にしないで平気だよ。僕達は旅をしてるから野宿なんかも良くあるし。
 寧ろ、中に入って予想以上に広くて驚いたくらいだもん」
「私が生活してる洞窟だからね。ここいらじゃ一番広い洞窟だよ」

なるほど。群のリーダーが使ってるなら広いよね。
あれ? 僕がここを使ったらループスさんはどうするんだろう。
流石に一緒って事は無いだろうし……。

「僕がここを使ったらループスさんはどうするの?」
「何、変な質問をしてるんだい? 私もここを使うに決まってるじゃないか。
 それとも私と一緒な事がそんなに不満かい? 不満なら野宿でも構わないよ」
「不満って事はないけど……。流石に野宿はよりはしっかりした寝床が良いし。
 流石に何の接点も無い雌雄が同じ住処っていうには良くないんじゃない?」

まさか、同居しろって言われるとは僕も予想外だったけど……。
意外にも、ループスさんにはこういう羞恥心がないのかな?

「別に私は気にしないよ。だから、ハザードも気にしないで大丈夫だよ。
 特にすることも無いようなら、群の仲間に紹介するから着いてきてくれ」
「うん。他種族の僕が、この群に受け入れてもらえるかな……」

さっきのファングさん事もあるし、今更不安になってきたよ。
でも、協力するって言った以上は僕も皆と仲良くならないと……。
ループスさんと洞窟を出ると、目の前にファングさんが待っていた。
僕を見つけるなりファングさんは不敵な笑みを浮かべる。

「……少しだけ俺に付き合えハザード」
「え? でも、ループスさんとの用事が……」
「どうせ、顔合わせだろ? それにもう全員広場に集まってるさ」

ファングさんは一体何を考えてるんだろう?
少なくても、目つきからして楽しい事じゃなさそうだけど……。

「ファング。何を考えてるんだい?」
「この群に受け入れられる、一番簡単な方法を試すだけさ。
 そいつがこの群に必要な戦闘能力を持っているのかテストする。
 俺に負ければ必要ないし、勝てば受け入れられる。簡単だろう?
 さぁ、俺と戦え。勿論、互いに手加減無しの真剣勝負だ」
「なるほどね。手加減無しなのは良いけど殺す事だけは勘弁してくれよ。
 これ以上、戦力が低下したら本気でジョーカーに勝てないからね」

ループスさんの言葉に「当然だ」と一言だけ答えると、ファングさんは背を向け広場に向かう。
既に、僕の意見なんかお構いなしに話が進んでるんですけど……。
戦わなきゃならないんだよね。気が進まないな……。
僕とループスさんは群の皆が待つ広場へと歩き出した。



ファングさんの言うとおり、広場には大勢のグラエナやポチエナが集まっている。
大勢のグラエナ達の中央にはファングさんが僕を待っていた。

『まさか、決闘を申し込まれるまでに敵意を持たれていたなんてな。
 こんなに早く俺の出番が来るとは思っていなかったが……。
 向こうが売ってきた喧嘩だ。相手になってやろうじゃないか』
「うん。お願いカオス。いつも戦闘を押し付けてごめんね」
「決闘を始める前に何か言う事はあるかハザード?」

既に僕じゃないですよファングさん。今、あなたが話してるのはカオスです。
でも、今僕の声はファングさんには届かないしな……。

「お前に敗北という名の悪夢を見せてやろう」
「……随分と舐めた事を言ってくれるな。だが、そうじゃなきゃ面白くない。
 決闘をすると言った瞬間にこの変わりよう。思ったよりは楽しませてくれそうじゃないか」

ファングさんとカオスが睨みあうと同時に動き出す。
総合的な能力的はグラエナよりもアブソルの方が高い。
その御かげでカオスはファングさんの懐に入ることに成功する。
懐に『辻斬り』を決めるも相手は悪タイプ。当然、決定打には程遠い。

「……流石だな。ループスに目をつけられるだけはある」
「そう言うお前もな。さっき相手をしたグラエナなら倒してだろうに。
 急所を庇うだけの余裕を与えたつもりはないんだけどな」
「俺をそこら辺の雑魚と一緒にされては困るな。腕に自信があると言っただろう」

二匹は一度距離を離すと再び睨みあう。
でも、決闘開始前とは違い二匹には殺気はない。
強い者と戦う。強者にとってはそれだけで喜びとなる。
今のハザードとファングさんは戦いを楽しんでいる事だろう。
正直に言うと、戦い自体が嫌いな僕にはこの思想は理解できない。
戦えば、自身が傷付く事もあるし、何より誰かを傷つける。
僕はもう大切な誰かを傷つけたくない……。だから僕は戦えない……。

「こんなに楽しい戦いは久しぶりだぞハザード」
「良いぞ。この命を賭ける緊張感こそ戦いの醍醐味だ。まだ続けるぞファング」

……無駄に考え事をしてたけど二匹はまだ戦う気満々みたい。
そろそろ誰か止めてください。そうじゃないとこの二匹の歯止めが利かなくなりそうだよ。
カオスなんて命を賭けるって言ってるし……。

「……はぁ。もう良いだろう? それ位にしておきなよ。本気で殺し合う気かい?」
「だが……。いや、分かったよ。お前が俺の足を引っ張らないって事は分かった。それで十分だ」
「楽しい戦いに水を差しやがって。まぁ、良いか。ファングは口先だけじゃないみたいだな」

お互いに不満そうにはしてるけど、ループスさんの言葉はこの群では絶対って事みたいだね。
その証拠にあんなに不満そうにしてるファングさんが、こんなにもあっさりと引き下がったし。

「俺の出番は終わったから身体を返すぞハザード」
「お疲れ様カオス。また何かあったらよろしくね」
『まぁ、どうせ戦闘に関する事だけだろうがな。次も強敵を相手にしてみたいもんだ。
 最近は雑魚の相手ばかりで面白くなかったからな』

戦いを中断されて不満そうなカオス。何であんなにも戦いを楽しめるんだろう。
傷付くことは怖くないのかな? 傷つけることが怖くないのかな?

「お兄ちゃん強いね! 僕も大きくなったらお兄ちゃんみたいに強くなる!」
「どうやら群に仲間として認められたようだね。気分はどうだい?」
「気分はどうだいって言われても……」

広場で会ったポチエナに随分と懐かれたみたい。
ループスさんの質問には答えづらいよ。正直、僕は何もしてないし。
でも話を振られたからには答えないといけないよね。

「……認めてもらえて嬉しいよ。誰かに必要とされるのは悪くないし」
「素直な回答だね。まぁ、日も暮れてきたし住処へ戻ろうか」

ループスさんに言われて気付いたけど、空はすっかり赤くなっている。
今日は色々ありすぎて時間が経つのが早く感じるよ。
まだ、この群の地形に慣れていない僕等は素直にループスさん後を着いてった。



洞窟でループスさんと食事を済ませると新たな問題が浮上してきた。
この洞窟はリーダー用であり勿論、ループスさんが一匹で使用している。
当然、ここに寝床が二ヶ所もあるわけが無い。

「僕は野宿にもなれてるから普段通りにループスさんが使えば良いよ」
「客をそのように持て成すのは失礼だろう?
 それに大きめな寝床だ。詰めれば二匹までなら十分寝れる」

なぜ、ループスさんはここまで無防備なんでしょうか?
それとも年下の僕は雄に見られてないのかな?
いくら、僕が床で寝ると言ってもループスさんは聞いてくれない。

『このままじゃ埒が明かない。ハザード、素直にループスと一緒に寝ろ。
 異性と一緒の寝床で寝れるなんて普通は喜ぶところじゃないか?
 それともまさか……お前ホモか!?』
「そ、そんな事はないよ! カオス、この状況を面白がってない?
 そりゃあ、僕だって年頃の雄だよ。異性にまったく興味が無いわけじゃないよ。ただね……」
『理由はどうでも良い。強引なループスの事だ。何を言っても無駄だろう。
 だから素直に諦めろって言ってるんだ。分かったかハザード!?』

カオスの言いたい事が分かった気がする……。
確かにループスさんに何を言っても聞いてくれなさそう。
それなら素直に僕が折れるしかないって事だよね。
納得できないけど、納得するしかないんだよね。

「分かりました。ありがたく寝床を使わせてもらいます……」
「よしよし。初めからそう言えば良いんだ。じゃあ、私は寝るからね。おやすみハザード」
『……高貴な雌がお前の隣で寝てるんだ。今夜はきっと良い夢が見れるんじゃないか?』

ダークライだったカオスに『良い夢』って言われても皮肉にしか聞こえないよ。
それともカオス自身、僕に対する皮肉でこの言葉を言ったのかな?
変なことを考えてないで僕も寝よう。
ループスさんの隣に移動し僕は丸くなった。



……寝ようと思って丸くなってからどれだけの時間が経っただろう。
背中越しのループスさんの体温にドキドキして眠れない……。
だから僕は一緒に眠るのは反対だったのに。

『……ハザード。隣でループスが寝ているだけで興奮しすぎだぞ。
 今、お前が身体の主導権を握ってる以上はお前が寝ないと俺も寝れないんだ。
 まずは下半身でビンビンになってる己の竿を何とかしろ』
「下半身でビンビンになってるって……」

僕はカオスに言われて初めて自分の下半身を見る。
そこには、雄の証が雄々しく天を向いていた。

「えっと、これは、その……」
『言い訳は良いから、さっさと一発抜けよ』
「う、うん」

うぅ。同じ身体だから気付かれるのは当たり前だけど、流石に恥ずかしい……。
モタモタしてループスさんに見られるのだけは避けたい。
僕は、ループスさんを起こさないように、ゆっくりと起き上がり洞窟を出る。
夜だからこそ、僕の白い体毛は目立つ。誰かに見られないように木陰に移動しよう。

木に寄りかかると僕は自らの前足で竿を弄る。
前足が竿に触れる度に、僕の身体の熱くなっていく。
更に、その刺激で竿の先端からは透明な粘液が溢れ、白い毛を汚す。

「はぁはぁ……。ループスさん……」

刺激を与える時にループスさんを思い浮かべてる自分が居た。
今日会ったばかりなのに、アブソルの僕に優しくしてくれる。
それだけで、僕はループスさんに惹かれていた。

でも、この行為はそんなループスさんを汚している……。
罪悪感を感じながらも、今の僕は前足からの快楽の方が大事に思っていた。

段々と僕の竿は今にも爆発までカウントダウンしている。
前足で一回擦るたびにカウントが減っていく。
五……四……三……二……一……。

「ぜ、零ろぉお!! もうダメぇええ!!」

僕の竿から白濁の粘液を飛ばし、周辺を、そして自身を汚す。
この時ばかりは、自分の体毛が白かった事に感謝したい。

『……ぬるいな。まだ満足してないんだろう?』
「え?」

僕はカオスの言葉に一瞬、ドキっとする。
自慰に夢中になりすぎて、カオスが居ると事をすっかり忘れていた。
カオスの言葉通り、僕の竿は萎むどころか更に硬さを増している。

『俺はこんな刺激じゃ満足できないな。変わって貰うぞハザード
 お前に、気持ち良い自慰って奴を教えてやる』

普段は僕がカオスに一方的に身体を取られる事はありえない。
でも、今回は僕の気の緩みがこういう事態を引き起こした。

「こうやって、身体を丸めてと……。
 そんでもって自分の竿を舐めるんだ。
 お前の身体は使ってて随分動かしやすかったからな。
 これ位なら、平気でできるって思った」
『これ位ならって……。ひゃっ!?』

竿から電撃が走ったような、鋭い感覚。
目の前の竿を見ると舌が触れていた。
前足で弄った時とは比べ物にならない。
違う。比べること自体が間違ってるほどの快楽。
これがカオスの言ってた『気持ち良い自慰』ってこと?

「良い声で鳴くじゃないかハザード。俺も興奮してくるぜ。
 こうしてみると、お前って結構可愛い顔してるし、声も高いよな」
『ひゃぁあん!! そ、そんな事ないもん。僕はちゃんと雄だよぉお!』 
「雄だとか雌だとかそんなの些細な事なんだよ。
 俺からすれば可愛ければ雄でも雌でも構わないしな。
 逆に言えば、不細工な雌なら綺麗な雄の方が俺は好みだ」

一年間も一緒に居て全く知らなかった相方の素顔。
それはもしかしたら、カオスも同じ事を思ってるかもしれない。
僕等は互いの事を殆ど知らないで一緒に居る。

「そろそろ、俺もフィニッシュさせてもらうぞ」
『もっとぉ。もっと気持ち良くしてよカオスゥウウ!!』

カオスは舐めるのを止めると、竿を口に含む。
口内が火傷しそうなほど熱い……。僕はこんなに興奮してるんだ……。

「くぅう。心配しなくても、お望み通りにしてやるさ……。
 ちゃんと全部飲めよハザード」
『全部飲めよって……。カオス、何をする気なの!?』

カオスが不可思議な事を言うと、急に身体の感覚が戻ってくる。
ほぼ、感覚が戻ると同時に僕の竿は快楽に負け、爆発した。
僕の口内に熱い熱い粘液が一気に押し寄せる。
あまりに突然の事で、僕はどうして良いか分からず口を離す。

「げほっ。いきなり酷いじゃないかカオスぅう」
『何だ、全部吐き出しちまったのか? 可愛げの無い奴だ。
 まぁ、全身汁だらけってのも、なかなかそそるし良いんだけどな。
 ここには自分の身体を移すものがないから、白濁で汚れたお前の姿を見れないのが残念だ』

射精して、すぐに口を離したけど、少し飲んじゃった。
苦いっていうか、甘いっていうか……。精液ってこんな味がするんだ……。
身体を移すものがないって言ったって、水辺を探して身体を洗わなきゃ。
でも、この近くに水辺ってあるのかな? ……勝手に探して迷子になるのは避けたい。
だからと言って、こんな姿を誰かに見られるわけにはいかないし……。どうしよう。

「用心棒が雇い主を置いて、どこかに行くのは酷くないのかなハザード君。
 そこで何をしてたのかな? 大人しく、こっちを向いてくれないかい」

背後から、聞き覚えのある雌の声がする。
口調はまだ、優しくは言ってるけど、きっとかなり怒ってるだろうな……。
でも、こんな姿じゃ振り向けない。振り向きたくない。

「はぁ~。素直に『ループスさんをオカズにオナニーしてました』とか言えないのかい?」
「ル、ループスさん、今来たばかりじゃなくて、ずっと見てたの?」
『くそっ。俺も自慰に夢中でループスに気が付かなかったな。
 だが、ハザード。ここで俺に振るなよな。俺はお前の自慰を手伝っただけだ。
 俺は悪くねぇ。この問題の解決は自分自身で何とかしてくれ。それじゃな』

僕はループスさんの言葉に慌てて振り向く。
そこには、妙にニヤニヤと不敵な笑みを浮かべたループスさんが目の前に居た。
……この事で、顔や身体に精液を浴びて、いまだに勃起してる竿を見られたことになる。
慌ててたとは、かなり恥ずかしい姿をループスさんに見せちゃったよ……。
そして、カオスは完全に黙秘を続ける気だし……。

「あんたが背中越しに息を荒くして、住処を出て行くところから知ってるよ」
「それって全部じゃないですか!?」
「まぁ、そうだね。で、さっきの質問だけど君はここで何をしていたのかな?」

つまり、ループスさんは僕の口から直接、『オナニーしてた』って言わせたいんですね?
僕もだけど、流石は悪タイプ。やることが、かなりえげつないです。

「……ル、ループスさんをオカズに……オナニー、してました……」
「何!? 声が小さくて聞こえないよ!? 何をしてたって!?」

さっきから、この声の大きさで喋ったから、絶対に聞こえてますよね?
酷い。あんまりだ。僕もう泣きたい……。

「ループスさんをオカズにオナニーしてました!!」

僕は涙目になりまがら、大声で叫ぶ。
もしかしたら、他の誰かに聞かれたかもしれない。
でも、ループスさん自身に自慰を見られた時点でこれ以上に恥ずかしいことなんてないはず。

「くふふ。そうかい、そうかい。そんな悪き子はお仕置きが必要だね……。
 さぁ、ハザード。その勃起した醜い竿を私にしっかり見せなさい」

ループスさんが笑いながら、僕に命令してくる。
もう何も考えたくない……。僕は素直に命令に従った。
僕の竿をループスさんがじっくりと視姦する。

「可愛い顔して、中々立派なのを持ってるじゃないかい。
 ……昔見た兄さんのよりも大きいか?」

高圧的な態度とは違い、恐る恐るループスさんは僕の竿に触れた。
ループスさんが僕の竿を触ってる……。そう思うだけで僕の竿は更に大きくなる。

「まだ、大きくなるなんて……。何処まで大きくなるか試してみようか?」
「ひやぁあん! ループスさん……」

ループスさんが僕の竿を弄ってる……。
カオスに舐められたのも凄かったけど、綺麗な雌が弄ってくれるのなんて凄く興奮するよぉ。
ダメ! もう我慢なんて出来ないよ!

「何か、竿がビクビクって……」
「ご、ごめん……なさい、ループスさん。出るぅう!!」
「ん? 出るって何が……」

我慢出来ずに僕は三度目の射精をしてしまった。
僕自身だけでなく竿を弄ってたループスさんにも精液が降りかかる。

「ふ~ん。これが精液か……。
 どれどれ味の方は……。うぇ、何かしょっぱいね」
「はぁ、はぁ、ループス……さん」
「まだ、終わりなんかにしないからねハザード」

凄すぎる……。気持ち良すぎて変になりそうだよ。

『俺はやられっぱなしってのは嫌いなんだ。
 疲れて動けないなら引っ込んでなハザード』
「引っ込んでろって……。カオス、何をする気?」

僕の答えなんか聞かずに、カオスは僕から身体の主導権を奪う。
自分の身体をこうも簡単に取られるなんて……。

「当たり前だ。ここまま終われるわけないだろう?
 今度はこっちから、やらせてもらうぞループス!」
「え? ハザードじゃない!? ちょっと待てカオス!」

カオスはループスさんを押し倒すと、すかさず唇を奪う。
ループスさんの顔がこんな近くに……。それに凄く柔らかい唇だよ。
そして、舌を侵入させ、ループスさんの舌と自分の舌を絡ませた。
ぴちゃぴちゃと卑猥な水音が響き渡る。
どの位そうしてのかな? 満足したのか、それとも次へと進むためかカオスは口を離した。
互いの口からは銀の橋が築かれ、すぐに崩壊する。

「い、いきなり何するんだカオス!」
「いきなり? 誘ってきたのは、そっちだろループス。
 俺はハザードと違って、攻められるより、攻める方が良いんでな。
 今度は俺がお前の性器を弄ってやるよ」

カオスはループスさんを押し倒すと右前足でそっと縦スジをなぞる。
それに反応してループスさんの身体がビクビクと震えた。

「ちょっと触れただけなのに随分と反応するじゃないか。
 流石は処女だな。弄りがいがあるねぇ」
「わ、私は処女なんて言ってない……」
「ハザードのを弄ってる時からそうだが、ここまで初々しい反応すれば誤魔化しようがないぜ?
 身体は快楽が初めてって反応してるからな。俺はこれでも、他の奴よりは長生きしてるんだ。
 少しは見る目はあるつもりだけどな。それでも、処女じゃないって言うなら本気で容赦しないぞ」

ループスさんは顔を真っ赤にして押し黙る。
反論しないってことはカオスの予想が当たったって事?

「素直でよろしいこった。優しくしてやるから安心しろ」
「ああ。そうしてくれ……」

カオスはループスさんの秘所を弄り始める。
時には速く、時にはゆっくりと、時には激しく、時には優しく。
ループスさんは目をぎゅっと瞑り快楽に耐えている。
声を出さないのは彼女自身のプライドの問題かな?
それでも、身体は正直で、秘所からは愛液が染み出てる。

「くく。随分と耐えるじゃないかループス。
 なら、もっと気持ち良い事してやるよ」
「こ、これ以上に気持ち良い事って……?」

不敵に笑うカオスが妙に怖いんですけど……。
ループスさんの後足をこじ開けると、カオスはそこに顔を埋める。

「ひゃっ! そ、そこは汚い……」
「良い事を教えてやろうかループス。
 雌の身体に汚い箇所なんてないんだぜ」

妙にキザっぽいことを言うねカオス。
でも、それも間違ってない気がする。
目の前に広がるループスさんの秘所は凄く綺麗だ。
カオスはループスさの秘所をペロッと一度だけ舐めた。

「ひゃぁあん!!」
「ようやく折れたか。お前に快楽と言う悪夢を見せてやろう」

ループスさんの秘所をカオスはペロペロと舐める。
縦スジにそうように舐め、時には下の先端を膣内に侵入させた。

「す、凄すぎる! 変になる! 私、変になるぅうう!!」

ループスさんは絶叫を上げると、秘所からは激しく潮を噴く。
当然、僕の顔にもループスさんの潮がかかる。
でも嫌な気はしない。ループスさんのだから当然か。

「じゃあ、俺も気持ち良くなろうかな。まだ、終わらないぞループス」
「はぁはぁ、もうちょっと待って。カオスのは激しすぎる」
「待ったなし。俺ももう我慢出来ないんだよ」

ループスさんに覆いかぶさるとはち切れんばかりの竿を秘所に宛がう。
竿が秘所に触れただけで凄い快楽が押し寄せてくる……。

「カ、カオス!? ま、まさか入れるの……?」
「そうして欲しいならそうしてやるけど? だが、別にそうするつもりはない。
 旅人が子供なんか作ったら厄介だしな」

カオスが腰をスライドさせる。
竿と秘所が擦れて、もの凄く気持ち良い。
僕が腰を動かしてるわけじゃないけど、僕も変になりそう……。

「らめぇええ!! しゅ、しゅごい! 私、可笑しくなっちゃうぅうう!!」
「ループス……。お、俺も気も気持ち良いぜ」

腰を振るスピードがどんどん速くなる。
気持ち良過ぎて、もう何も考えられない。

「イク! わ、私、イッっちゃう! ひゃぁあああん!!」
「俺も出すぞループスぅうう!!」
「出して!! いっぱい精液だしてぇえええ!!」

カオスとループスさんは同時に絶頂を向かえる。
僕の精液とループスさんの愛液がお互いの腹を汚す。

「はぁはぁ。好き……」
「それは、俺に言ってるのか? それともハザードにか?」

余韻に浸ってる最中にループスさんが頬にキスをしてきた。
確かに僕もその答えは気になる。どっちなのループスさん?

「そんなの決まってるじゃないか……」

ダメだ。頭の中が真っ白に……。
ループスさんの声が聞こえ……な、い……。



ポッポの声が辺りに響き渡り、朝であることを知らされる。
まだ眠い身体を起こすと、辺りは洞窟でループスさんの寝床である事がわかった。
隣にはループスさんは居ない。もう起きてどこかに出かけてるのかな?
しばらくすると、ループスさんが洞窟の奥から木の実を持って現れる。

「おはようハザード。昨日はゆっくり眠れたかい?
 で、これ朝食。あんたの好みが分からなかったから、この中適当に取ってくれるかい」
「え? うん。よく眠れたよ。その、昨日の事なんだけど……」
「そうかい。それは良かった。で、昨日の事って?」

まるで、昨日の事が嘘のような、何事もない会話。
それとも、昨日の出来事は僕の夢だったのかな?

「えっと……何でもないです」
「変な奴だね」

やっぱり夢だったのかな?
そうだ! カオスに聞けば分かるかも。

「ねぇ、カオス。昨日の夜の事なんだけど……」
『お前が、最後に気絶した御かげで後始末は全部俺だもんな。
 これだから、快楽になれてない童貞坊やは困るんだ。
 今度は気絶しないように俺が鍛えてやろうか?』
「良かった。僕の夢じゃなかったんだね」

もしかしたら、僕の見た夢って思ったよ。
ループスさんも変に誤魔化さなくても良いのに。
僕とループスさんは朝食を取っていると傷だらけのグラエナが現れた。

「ループス様。ジョーカーの群がすぐそばまで……。
 今、ファングが何とか押さえていますが、何時まで持つか」
「その群にジョーカー本人は確認できたかい?」
「ジョーカーを見たと言う報告は受けていません……」

……僕達の戦う相手がすぐそこに来てる。
ループスさんはどうするつもりなんだろう?
逃げる? それとも戦うの? ここは、はっきりしてもらわないと。
でも逃げるにしろ、逃げ切る時間は稼がないと……。

「ファングを見捨てるわけには、いかないけど……。
 ここで戦ってもジョーカーが居ないなら消耗戦になるだけ」
「逃げるにしろ時間稼ぎは必要でしょ? なら僕が行くよ」
「……ジョーカー達との戦いは避けるよ。
 あんた達は逃げる準備をしなさい。私とハザードで時間を稼ぐ」

へ? リーダー自ら囮役?
ループスさんは何を考えてるんだよ!

「ループスさんが囮になるなんて可笑しいよ!
 ここで、ループスさんが倒れれば、それでこの群はおしまいなんだよ!?」
「そうならないように、あんたが居るんでしょ?」
『無茶な司令官だ。だが、悪くない。
 部下はリーダーの為に、リーダーは部下の為に命を賭ける。
 強い絆で結ばれた群は少数でもかなり強いからな。
 覚悟は出来てるだろうなハザード?
 これは負けられない戦いになるぞ』

カオスに言われなくても大丈夫。
それに、僕達はこんな所で死ぬわけにはいかない。

「じゃあ、行くよハザード!」
「うん。ファングさんを助けに行こう!」

僕とループスさんはファングさんを助けに行くため走り出す。
ここで、戦わなきゃ子供達まで巻き込まれカも知れない。それだけは避けないと……。



僕達がたどり着く頃には、ファングさんが一匹で他のグラエナ達と戦っていた。
他の仲間は既に傷付き倒れ、戦闘できる状態じゃない。
僕はカオスに身体の主導権を譲り、ループスさんと共に相手の陣地に飛び込む。

「ファング、まだ戦えるかい?」
「はぁ!? ループス何で、ここに来た!!
 この状況で俺達に勝ち目がないくらい分かってただろう?」
「じゃあ、何であんたは勝ち目のない戦いを一匹でしてるんだい?
 大勢を相手に戦うのは、あんたの流儀に反するだろうに」

昨日のファングさんの言葉を聞けば、確かに今回の戦いは可笑しい。
それでも、戦いを挑んだファングさんは……やっぱりループスさんのつくる未来を信じてるんだろう。

「クハハハ。じっくりと追い詰めるつもりが、まさかお前の方から来てくれるとはな。
 探したぜぇ、妹よ。大人しくしてれば楽に殺してやる。悪い話じゃないだろう?」

僕等を囲んでいたグラエナの群が急に方位を解く。
そして新たに、一匹のグラエナが姿を現す。
年齢はファングさんと同い年か少し上かな?
物凄い、威厳と貫禄を感じる。このグラエナがジョーカーさん?

「……ジョーカー、来てたのかい。悪いけど私は諦めだけは悪いんでね。
 その取引はお断りさせてもらうよ」
「実の兄を呼び捨てとは、偉くなったなループス。
 ファングも、そんな奴の下についてないで俺の部下になれ。
 お前にはそれだけの力がある。ループスと一緒にここで死ぬのは惜しい」
「冗談で言ってるなら笑ってやるぞ。
 確かに俺達は昔は、ファングジョーカーって言えば知らない奴は居ない程のコンビだったな。
 それも、もう昔の話だ。お前は、リーダー争いで変わった。昔のお前じゃない。
 だから俺はお前じゃなくてループスの元についた。……俺がループスに惚れてたったの少しはあるが」

やっぱり、このグラエナがジョーカーさんか。
ループスさんとファングさんはジョーカーさんの誘いを断わる。
この誘いに乗るようなら初めから、ここには居ないだろうしね。
……今更だけど、何か僕等、凄く無視されてませんか?

「……で、そっちのアブソルは誰だ? 用がないなら、ここから消えろ」
「悪いな。俺もそこのお嬢さんに用があって一緒に居るんだ。逃げるわけにはいかないな」
「そうか。なら、少しお寝んねしてな」

ジョーカーさんがこちらに、何か包んだ木の葉を投げてくる。
木の葉は身体に当たると、中から何かの粉が舞い上がった。
粉を浴びたカオスがフラフラとしている。

「げほっ、げほっ! 何だこの粉……は……」
「流石はパラセクトのキノコ胞子だな。効き目は一瞬だな」
『起きてよカオス! ダークライが相手に眠らせられてどうするの!?』

ダメだ。まともに胞子を吸い込んだから起きそうにない。
まさか、この粉がキノコ胞子なんて予想してなかった。
この事態を見ていたループスさんとファングさんは唖然としている。
そうだよね。用心棒が一瞬で戦闘不能にされれば呆れるよね……。

「……あいつ、一体何をしようとここまで来たんだ?
 しょうがない。俺達だけで何とかするぞループス!!」
「そうするしかないみたいだね。持ちこたえるよファング」
「……剥き出しの敵意。馬鹿か?」

ループスさんとファングさんがジョーカーさんに攻撃しようとした瞬間……。
ジョーカーさんは一瞬にファングさんの目の前に移動していた。
まさしく『不意打ち』だね。この一撃でファングさんは大きく吹き飛ばされる。

「ぐはぁあ。ジョーカー、貴様……」
「殺すには惜しいって言ったろ? そこで大人しくループスが死ぬのを見てるんだな。
 残るはお前だけだ。極上の悲鳴を聞かせてもらおうか」
「……強い。これがジョーカーの実力なのか?」

確かに強い。でも、それはあくまでも普通のポケモンとして。
僕がここで本気を出せば、カオスの力を使えば、勝てる。
でも、あの力は危険すぎる……。容易に使うわけにはいかない。

こうして悩んでるうちにループスさんは、どんどん傷付いていく。
ここで僕が戦わなきゃ、本気で殺される。
なら僕の取る行動は一つしかないよ。

「もう、立っているのもやっとじゃないか。次の一撃で殺してやるよ!」
「っく。動け私の身体!!」

ジョーカーさんがループスさんに近づく。
殺させない。僕はもう大切な者を失いたくない。

身体の主導権をカオスから戻し、僕は二匹の間に割って入る。
そして、ループスさんを背中に乗せて、ジョーカーの攻撃を避けた。
ジョーカーさんの一撃は文字通り宙を切る。

「目が覚めたのかいカオス!?」
「ごめん。僕はカオスじゃない。僕は僕の意思でループスさんを助ける!」
「……ジョーカーの部下の時も、ファングとの戦いの時もカオスだったけど平気なのかい?

そうだね。でも、戦わないわけにはいかない。
もし、逃げてしまえばきっと後悔する。本当は怖いよ。
でも、僕は戦う。だってループスさんを失いたくないから。

「何だ? 殺される為にわざわざ目を覚ましたか。
 なら、精々神に祈るんだな。楽に死ねますようにってなぁ!!」
「折角の忠告だけでも、それは聞けないね。
 僕は既に悪魔と契約しているから、今更神とは仲良く出来ない。
 もう、どうなっても知らないからね!!」

僕の中に眠るのはカオスの意識だけじゃない。
僕もループスさん達みたいに言えば『混沌の封魔』だ。
千年前にカオスを封印した一族の末裔。
そして、僕等の一族の混沌の封印が『カオスの力』だ。
それが、僕の身体の中に封印されている。

この力は戦闘意欲が高くなると封印が弱まる。
だから、僕は戦闘を避けてきた。この力を使いたくなかったから……。
この力を暴走させて、僕は家族を殺してしまったから……。

「カオスの力の解放。僕の両目は青くダークライの目へと変化する」
「何を訳の分からない事を……。目が青くなっただけ強くなると思ってるのか!?」

……遅い。さっきまではあんなに速く見えたのに。
僕はジョーカーの後ろに回りこむとアイアンテールをお見舞いする。

「さっきまでと動きが違うぞ!? っち。一時撤退する! お前ら何とかしろ!! 」

ジョーカーは部下を捨石にして逃げる気?
部下のグラエナ達が僕を包囲する。
雑魚がいくら集まったって、悪魔に勝てるわけないだろう?

「目覚めない悪夢が君達のゴールだよ」

ダークライの最も恐れられる技、ダークホール。
僕はそれを放つと周りのグラエナは次々と倒れていく。
カオスの力を解放してる僕には、これ位の事は児戯等しい。
そして、ナイトメアが眠るグラエナ達を苦しめる。

「あの大軍団が一瞬で戦闘不能だと!? あいつは一体何なんだ!?」
「世界に混沌を招いた悪魔。その力を身体に封印する者」
『ふわぁ~。あ? 何がどうなってるんだ?』

カオスが目を覚ましたみたいだね。
今更、交代する気なんかないけどさ。
ループスさんを傷つけたジョーカーを僕が……殺す。

「やるしかないか……」
「苦しまないように一撃で殺してあげる。大丈夫、痛みは一瞬だよ」
『おい、止めろ!!』

……身体が動かない?
あと一息で、ジョーカーに止めがさせるのに!!

『ハザードの身体中から俺の力を感じる。
 まさか、こいつが俺の『意識』と『力』の二つを封印してたなんてな。
 だが、その御かげで俺が干渉しやすくなったな。
 止めておけ、お前が誰かを殺すなんて似合わない』
「僕が誰かを殺すのが似合わない?
 そんな事を言ったって僕は既に両親と姉を殺してる!
 今更、殺す事に躊躇いなんてない!!
 僕がこの群の戦いを止めるんだ!!」
『もう、勝負はついただろう!?
 これ以上お前が戦う必要は無い!!』

何でカオスは僕の邪魔をするんだ。
あと、一撃。たった一撃でこの群の争いに決着がつくのに。

「ハザード、もうこれ位で十分だろう!? 少し頭を冷やせ!」
「ループスさんまで、邪魔をするの!?」
『家族を失う気持ちを分かってるなら、これで止めておけ。
 ループスの兄を殺す気か?』

……そうだ。僕は家族を失う悲しさを知っている。
なら、ここでジョーカーさんを殺せば、きっとループスさんが悲しむ。
強すぎる力は心を暴走させる。やっぱりこの力は危険だよ。

『ようやく正気に戻ったか。お前は不用意にその力を使うな。
 今後も戦闘は俺が出るから、お前は大人しくしてろよ』
「僕を気づかってくれてありがとうカオス」
『お前が暴走すると俺も困るからだ。
 後の事はループスに任せて俺達は旅の準備でもするか』

確かに、もう僕らの出番はないよね。
短い付き合いだったけど、何か寂しいな。
やっぱり、僕はループスさんに恋をしたんだ。
でも、僕は旅をする根無し草。
これから群を率いるループスさんとは一緒に居られない。

「そうだね。カオス」

それに僕は暴走して家族を殺した。
今回だって、カオスが止めてくれなきゃどうなってたか分からない。
僕はここに居ない方が良いんだ。



あれから一週間が過ぎていた。
グラエナの群もループスさんの指揮の下、落ち着きを取り戻している。
僕等も旅の支度を終え、封印されたカオスを探す、あてのない旅をまた始めようとしていた。
ループスさんは忙しそうだから、伝言を頼んだんだけど『待ってろ』って言われこうやって待っている。

「待たせたねハザード。次の目的地は何処にするんだい?」
「……俺は止めたんだけどな」
「諦めろファング。あいつは自分の意見を簡単に曲げる奴じゃない。
 それに、俺はあいつが居なくなれば、ここのリーダーになれるからな。
 そこに行ったって心配なんてしないけどな。お前は心配か?
 そうだよな。惚れた雌が危険な旅に出るんだもんな。心配だよね?」

ループスさんの声に振り向くと驚きの事態が……。
ファングさんとジョーカーさんは二匹で漫才を始めちゃったし。
元々は良いコンビだったって言うし、これが本来の姿なのかな。
でも何故、ループスさんは大きな荷物を持っているんですが?
それに、ここに来た時のファングさん愚痴から、何となく嫌な予感がする……。

「……ループスさん、その荷物は何?」
「何って? 旅の支度に決まってるじゃないか!
 私達の一族はカオスを封印するための一族だったんだよ。
 目の前にそのカオスが居るのに、ほっておく事なんで出来るわけないじゃないか。
 だから、わたしもハザードに着いて行くよ」
『言いたい事は分かるし、間違ってないと思う……。
 だが、何か色々と間違ってないか? リーダーが群をほって旅にでるなんて……』

うん、カオスの意見は凄く正しいと思う。
ループスさんがこれからも一緒っていうのは嬉しいけど。

「心配しなくても大丈夫だよ。
 群の事は、屈指のダブルチーム、ファングジョーカーに頼んだから!
 さぁ、私たちは新しい情報を探して、次の目的地へ進もうじゃないかい」
「え? そ、そうだね。よろしく、ループスさん」
「ああ。こっちこそよろしく頼むよハザード」

僕等のカオスを探す旅はまだ終わらない。
それに、新しい仲間も増えて、これからもっと良い事がありそう。

~fin~


大会中にいただいたコメントの返信を。

三匹の絶妙なバランスと、毎回やるカオスのキメ台詞にやられました。面白かったです。
官能の部分では、ループスのギャップに萌えました。
最終的に彼らが行き着く先、彼らの恋愛模様、続きが早く見てみたいと思ってしまう自分がここにいます。
ごちそうさまでした! (2010/03/22(月) 09:26)

ループスは初々しい姉さんを目指したので気に入っていただけて嬉しいです。続けられるようには終わらせましたが続きはまだ考えてないです。

すごく良かったので、続きが気になります。 (2010/03/22(月) 21:07)

凄く良かった何てコメントありがとうございます。続きは現在のところ未定です


コメント頂けると嬉しいです。




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Last-modified: 2016-03-29 (火) 15:25:50
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