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深紅の鎌.終

/深紅の鎌.終

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前回:深紅の鎌.十参



・深紅の鎌.終


ー1ー  愛する者と

幾つもの大恋木の花びらが風に揺れて横切る……
ヒラヒラと揺れて漂う花びらは飲み込まれる様に夜の闇の中へと消えて行く……
「綺麗だな、ライ殿……」
「ああ……」
俺達は夜の闇の中、桜色の輝きを放つ大恋木を見つめていた。
ソルベ国城で最も高い所から……監視塔からだ。
屋根より高い石造りの細長い塔の先、石造りの低い壁に囲まれているが
座ったままでも360度地平線まで見渡せる。
時折、大恋木の方から吹いて来るそよ風に乗って淡いピンク色の輝きを放つ花びらが横切る。
その度に俺の傍に居る彼女を美しく照らしては闇の中へと輝きながら消えて行く花びら……
身近に感じる大恋木だが、大恋木自体があまりにも大きく、気が付きにくいが
実際は此処から結構距離がある。そして、根元の幹周りを囲む大会会場。
灯りが灯っていてちらほらと人々が行き来している。
大恋木近くの平野には大会会場の大きさに負けないくらいの量の仮設住宅。
平野の一部が仮設住宅で白くなっている……
「ソラ……」
「?」
俺はソラの頭を優しく撫でる。
少し頬を赤くして、くすぐったそうに目を細めるソラ。
彼女のサラサラとした心地良い白い毛を撫でつつ俺は今日の事を思い出す。
大会6日目の今日まで連勝で勝ち進んで来た俺とソラ。
見事なチームワークを発揮して勝ち上がって来た。
だが、明日は準決勝と決勝戦が行われる最終日……
強者が集まる筈という事に答えるように準決勝の相手はスラーのペアだ。
スラーとペアを組んでいるのはスラーの彼女、霊華(レイカ)
素早い動きからの技を繰り出せる彼女は動きが重いスラー(バンギラス)の死角を補える。
正直、厄介な敵だ。一撃が重いスラーと死角を素早い動きでカバーするレイカ……
実際に戦っている所を観戦したが役割分担が出来ていて連携が取れていた。
そんな事を考えていると不意に
「決勝戦は誰と当たるのかの?」
というソラの言葉で現実に引き戻される。
「恐らくユメのペアかフィカのペアだろうな」
「頑張ろう、ライ殿!妾達が優勝するのだ!」
真剣な表情で張り切るソラに賛同して優勝を誓った。
あくまで優勝する気しか無いみたいだ。
なら、パートナーとして全力で頑張るのみだ……やってやる、ソラと優勝してみせる。
「ああ、そうだな」
ソラと抱き合うと背後から物音が聞こえて俺達は振り替える。
「お邪魔だったかの……?」
床の小さな穴、出入口からランウがひょっこり顔を覗かせる……
ソラが手招きすると、嬉しそうにランウはソラに寄り添って頬擦りした。
ちょっぴりくすぐったそうにソラは微笑んだ。
娘を見守る母親の優しく温かい光がソラの瞳に宿っていた。
「実はな、母上っ、父上っ♪」
ランウは楽しそうに口を開く。
「最近、近くの森まで散歩に行ったのぢゃ!そしたらのっ♪
森の木々がたくましくそびえ立ち、緑は豊富で、空気が澄んでいて、綺麗な小川が流れている
まさに自然を感じさせる場所を見つけたのぢゃ!
今度、一緒に行かぬか?父上と母上と行きたいのぢゃ!」
期待に瞳をキラキラと輝かせるランウ。幼いソラもこんな感じだったのだろうか?
「妾は構わぬぞランウ、ライ殿は?」
「分かった、喜んで付き合おう」
満面の笑みを浮かべて抱き付いてきたランウを俺達は同じく笑顔で受け止めたのであった……

ー2ー  混じり合う炎と土

「遂に来たな、この日が……」
「そうだな、ライ」
睨み合うバンギラスとフライゴン……其々の傍にはキュウコンとアブソルの姿がある。
キュウコンのレイカは瞼を閉じたままじっとしている……
試合は既に始まっている。スラーの特性の影響で砂風が戦闘場中に吹付ける……
ソラの毛が揺れ、俺の両翼も揺れている。
戦闘態勢のまま、構え合う俺達は相手の出方を探り合う……
戦意に満ちたスラーの眼、溢れんばかりの自信が感じ取れる……
「行くぞ!ライ」
スラーが最初に動いた!拳に力を込めて地面に叩きつける。
「!」
サッと俺は後退して床から突き出てきた槍状の土の棘を避ける!
続け様に2本目、3本目、4本目と突き出てきた棘を避けていく……
避けた先に5本目が出現して当たりそうになるがドラゴンクローで破壊する!
と、レイカの瞼が開くと蒼白い彼女の瞳が俺を捉えて炎を撒き出した。
間一髪、体を捻って倒して直撃を免れたが傍を通り過ぎた火炎はかなりの熱を帯びていた……
炎が通った後は黒い焦げ後が残り、幾つか小さい炎が揺れていた。
俺は怯む事無くすぐに体勢を立て直し、身構える。
その時には既に蒼白い炎の球が数個、レイカの体の周りを漂っていて
炎の球を飛ばしてソラを攻撃していた。
ソラは炎の球を鎌の衝撃波で切り裂き、迎撃を繰り返す。
迎撃しつつソラは視界確保の為に雨乞いを発動、砂嵐が消えて行き、雨が振り始めた。
素早く戦闘場を駆け巡り、互いに攻撃を仕掛け合うソラとレイカ。
彼方此方に焦げ後と切り裂き後を作り出す彼女達の戦いの中、俺とスラーの拳同士がぶつかり合う。
スラーの拳の威力に俺は思わず顔が引きつるが、衝撃は受け流して体勢を立て直した。
左からのフックを伏せて避けてドラゴンクローを繰り出す!
一瞬、スラーが怯むがすぐにシャドークローによるラッシュを繰り出して来る。
右上、左、下、左、下、上、右……様々な角度からシャドークローの攻撃が襲い掛かって来るのを
後退して辛うじて回避して行くが
不意にレイカの炎の球が右足に当たって体勢を崩してしまう……!
隙を見逃さずスラーは地震を発動して地を揺らして、俺の体勢を更に崩して倒れた所を
両拳を振り下ろして来た!
腹と胸に同時に衝撃が走って一瞬、息が詰まって意識が遠のいてしまうがすぐに意識を取り戻した俺。
空かさず仰向けのままスラーの顔面に竜の波動、爆風を利用して回転して退避する。
体勢を整えると同時に爆煙を突き破り、突き進む冷凍ビームが迫り来る。
守るで防いで跳ね返すとスラーの肩傍を通り過ぎて背後でソラと戦っていたレイカに当たる。
思わず振り替えるスラー、この動作を見逃す筈も無く接近する俺。
すぐに自分の隙に気が付いたスラーは地震を発動!
しかし、飛んでいる俺には効果は無く、接近を許す。
ならばとスラーは素早く一回転して大きく太い尾を鋼鉄化して振り回し、俺を吹き飛ばす!
……筈だったが。
俺がにほんばれを発動した所為でスラーは自身の鋼鉄化した尾の反射した光で狙いを外してしまう。
バランスを失ったスラーはよろめいて、尾は地面に叩きつけられ、
俺はスラーの懐に飛び込んでドラゴンクローを思い切り腹に打ち込む!
スラーの肺から空気が抜ける感触が拳に広がり、続けて俺は先程のスラーの様に回転して
尻尾をスラーの顔面に叩きつける!
ビシッ!という音が響いたと同時にスラーの反撃。
腹を蹴り飛ばし、後ろへ回避して両翼を広げて構える。
にほんばれで強くなった日光を吸収してソーラービームを放った!
直後にレイカが大文字を俺に向けて発動しようとしたがソラの雨乞いで再び大雨が降り始めて
威力が弱まり、ソラの切り裂きで消え去った。
俺のソーラービームの直撃でスラーは顔を歪めて膝を付く。
だが、予想通りまともに喰らってもスラーは立ち上がった。
かなり体力を消耗して苦しそうだが立ち上がったのだ。
「!」
突然、肌が焼ける様な風が通り過ぎて俺はすぐに両翼を羽ばたかせて大空へ舞う。
レイカの熱風だ……時々、炎を混じった灼熱の風が地上を這っていて、ソラを追い詰めた!
この大雨の中でも這い回る灼熱の風、アレを喰らったら、ソラはただでは済まない……!
這い回る灼熱の熱風と蒼白い炎を撒き散らす大文字が続け様にソラに向けて突き進んで行く……!
すぐに俺は急降下して行くとスラーが冷凍ビームで迎撃して来る。
スラーの攻撃を右翼を閉じて左翼で調整して自らの体を回転させて攻撃をスレスレで
避けていき、地上へ接近した。
ソラが待ってましたと言わんばかりに真上に向かって飛び跳ね、
俺がその下を通ると背中にソラが降り立つ……同時に急上昇!
熱風と大文字が直後に真下を通り過ぎて地面に焦げ後を残した……
「大丈夫かっ!?ライ殿っ!」
「問題無い、心配するな……」
そうは言ったものの、両足を襲う激痛が嫌でも息を荒くさせる……
ソラは無事だが俺は両足を熱風に焼かれていた……
特殊な空間が無ければ今頃、両足は炭になっていただろう……激痛がその現実を嫌でも教える。
「悪い、今のは嘘だ。あまり持ちそうに無い……」
「そうじゃな、一気にやるしか……」
俺が降下体勢になるとソラの鎌が光り輝き始める……
同時に俺は意識を集中させて残った体力を集める。
スラーの周りに岩石が漂い始め、レイカの周りには蒼白い炎の球が漂い始めた。
「来るぞライ殿!」
ソラの警告と同時に無数の岩石と炎の球が次々と空へと放たれた……!
無数の岩石と炎の球を守るで無効化しつつ降下を続け、地上へ降り立つとそのままスラーへ突進。
スラーは突進を俺の体を受け止める事で無効化、そのまま地面に叩きつけようとしたが
背中のソラが鎌を振り下ろした。
と、同時に空気を切り裂き、蒼白い大刃が風を纏いながら突き進み、スラーの体を切り裂いた。
あの巨体が吹き飛び、雨の中を舞った……
「きゃっ!?」
不意に背中の重みが消えて小さな悲鳴が聞こえたかと思うと爆風が巻き起こり、
泥だらけの地面に叩きつけられる!
悲鳴を上げる両足の激痛に耐えて立ち上がった俺が顔の泥を拭うと
少し離れた所でソラが同じ様に立ち上がった所だ。
レイカの攻撃をまともに受けたらしく、苦しそうなソラ。
どうやら先程の爆発はレイカのエナジーボールによるものだと推測。
それに答えるように、素早く俺が伏せると頭上をエナジーボールが通り過ぎた直後に
灼熱の炎を纏ったレイカが背後から接近!
レイカに反応が遅れた俺は回避出来ずに背中に衝撃が走り、吹き飛ばされて地面を転がり、
やがて止まると震える体を起こす。
体中が泥まみれ、 レイカの攻撃で意識を失いかけている……
視界がグラつき、両足の激痛と共に倒れかけるが持ち堪えて構える。
その時には既にレイカが再び灼熱の炎を纏い、突進して来ていた……!
これで決めてやる!俺は拳に力を込めて竜の波動を発動、爆風の中でも構わず進む
レイカに真正面からドラゴンクローを発動した!
力と力のぶつかり合い、結果は爆発を起こして終わった。
吹き飛ばされた俺は痛みを抑えて爆煙を注意深く見つめる……
爆煙が消えると気を失ったレイカが横たわっていた……奥にはスラーが同じく倒れていた……
俺とソラの勝利を告げる放送が流れて、会場中に拍手が鳴り響いた……
どうやら勝った様だ……体中が酷く疲れている……
一安心すると、フッと力が抜けてその場に座り込んでしまう……油断すると意識まで失いそうだ。
「お疲れ様、ライ殿っ♪」
ソラは泥だらけの俺に構わず抱き付いて来て笑顔で優しく、そう声を掛けてくれた。
「お疲れの様ですね……私達が送ります。どうぞ遠慮無く……」
サッと駆けつけてくれたのはフュイとフュンだった。体勢を低くして背中を空ける……
気を失ったスラーとレイカの救護班よりも素早く駆けつけたのだ。
「良いのか?俺とソラは泥まみれだぞ」
「お構いなく……それよりも、ライさんとソラさんの方が心配です
あれだけの戦闘を行ったのですからお身体を休めなくてはいけません……!
この大雨で風邪を引かれては此処まで戦って来たのが水の泡になってしまいますよ?」
「確かに、の……妾は疲れたのだライ殿」
大雨に関しては、にほんばれを発動すれば……って、そんな体力も残っていない様だ。
「じゃあ、お世話になるよフュイ、フュン……」
「はい……!」
笑顔を返してくれるフュイとフュン、俺達はこうしてソルベ国城へ戻るのであった……
決勝戦は明日、いよいよ優勝が見えて来たのだ……


ランウ「決勝戦進出ぢゃな父上、母上!」
ユリ「これで優勝が見えましたね……!」
ランウ「頑張れ~っ  父上、母上!妾も応援頑張るのだっ♪」
ユリ「ふふっ、当然私も応援させてもらいますっ」

とりあえず此処までです。


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Last-modified: 2011-10-19 (水) 00:00:00
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