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深紅の鎌

/深紅の鎌

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・深紅の鎌



―1― 夢

空を飛ぶ俺の体に心地よい風が当たる。見渡す限り森、草原、山……本当に着けるのか心配だ。
そう思っていると眼下に一匹のポケモンが草原を走っているのが見えた。
「丁度良い、あいつにこの方角で合っているか聞いてみよう」
俺は翼を畳んで急降下する。地面との距離がどんどん迫る……と、同時に草原に生える草の一本一本がはっきりと見えてくる。
そこで俺は翼を広げて羽ばたく、地面すれすれで低空飛行する。そしてさっき見たポケモンの姿を見つけた。そいつはアブソルだった……
何故かそいつは全力疾走していた。俺は地面ぎりぎりを飛んで行き、そいつの横まで飛んでそのアブソルとスピードを合わせて話しかけた。
「お急ぎの所すまないがソルべという王国を探しているんだが」
「今(わらわ)の走っている方角だ!」
つまり俺が飛んでいた方向で合ってる訳でこのアブソルも向かってる。……ていうか珍しい一人称使うなこいつ…………
「有難う、俺はこれで」
俺が上昇しようとすると突然アブソルはこう言って来た
「待て、(わらわ)が道を教えてやったのだから助けてくれ!」
「何がだ?」
其方(そち)(わらわ)が追いかけられている事に気が付かぬのか!」
「?」
俺がその言葉に振り向くと少し離れた所からヨノワールが5匹、グラエナ5匹、ポチエナ10匹が追いかけてきていた。
あんな大群に気が付かなかった俺は少し馬鹿だな……と内心思った。
「あいつ等は何だ?」
(わらわ)の命を付け狙う奴等だ!」
「何で狙われてるんだお前は?」
「いいからあいつ等を倒してくれー!」
「はいはい……」
俺は口に灼熱の炎を集め大の字型に発射した。
辺りに爆発音と草が燃える匂いが広がった。
不意に撃たれたヨノワール達は直撃して瀕死になった……
俺とそのアブソルは立ち止まった。
「弱い……」
「あいつ等を一撃で!?」
「だから?」
「そ、其方(そち)は何者だ!?」
「ある町に住んでいる(ライ)という名のフライゴンだ。ソルべという王国に俺の母さんや父さんが住んでいるから会いに行こうとしている所だ」
「じゃ……何故あんなに強いのだ?」
「毎日、近くの山で鍛えているからだと思うぜ?」
「ラ、ライと言ったな……」
「何だ?」
其方(そち)を信じよう……他言はしないと誓えるか?」
「秘密なら他言はしないぞ?」
「じ、実はだな……(わらわ)はそのソルべの王国の……王女だ」
「へ?」
耳を疑う事しか出来ないだろう……王女が此処に居る筈が無い……
「その眼は(わらわ)を疑っているな!?(わらわ)は正真正銘のソルベ王国の王女、(ソラ)だぞ!」
「じゃあ、何故此処に居るんだ?」
「うっ……そ、それは……」
「嘘なんだろう?」
「嘘じゃない!た、ただ……外に出たかったのだ!」
「何で?」
「いつも、お父様に外は危険だと言われずっと城の中に閉じ込められていたのだ!」
「で、出てきた結果……この有様」
さっき俺が倒したヨノワール達の方を見ながら俺は言った。
「し、仕方が無かったのだ!」
「……」
「その眼は疑っておるな!?……よし、ならば(わらわ)と来い!」
「仕方が無いな……連きあってやるよ。……ほら」
俺は首を低くする。
「?」
「乗れという事だ」
「良いのか?」
「ああ」
ソラは俺の首に乗った。
そして俺とソラは空へと舞い上がった……
数十秒前まで居た草原がどんどん小さくなってゆく……ソラは俺の首にしっかり掴まっている。
「なぁライ?」
「何だ?王女さん?」
「む……特別にソラで良い」
「どうしてだ?」
「そ、それは聞くな!」
王女さんは頬を真っ赤にして言う……
「はいはい、じゃあ改めまして……何だ?ソラ?」
「ライ、(わらわ)の側近護衛になれ」
「はぁ?」
「だ、駄目か?」
「どうしてだ?」
「いつも身近に其方に居て欲しい……ライ殿程の実力があれば妾を守る事など容易であろう?それに妾の傍にいる護衛達よりライ殿は、実力が遥かに凌ぐ」
「堅苦しいのは御免だ」
「じゃあ、今と同じ態度で良いから!」
「王や女王の前ではどうするんだ?」
「そ、それは……」
ほら、やっぱり…………
「そんなに俺に守って欲しいのか?」
「ああ!」
「まだお互い初めて会ったばかりなのに?」
「そうだ」
「何で?」
「その眼を見れば分かる……瞳の奥がキラキラと輝き、自信に満ち溢れ、透き通っている。正直者では無い筈が無い」
見事に言い当てられた……何だか悔しい…………
「どうしてもか?」
「どうしてもだ!頼むライ殿!!」
そんなに必死に頼まれるとなぁ……
「しょうがないな、引き受けよう」
「本当か!?」
そんな眼をキラキラ輝かせて俺を見るなッ!!何だか恥ずかしくなるだろうが!……と、内心呟く。
「本当だ」
「有難う!」
ソラに思いっきり首に抱きつかれる。そのせいで首が絞まり、こ、呼吸が……!!
「ソ……ラ……い、息が……!」
「わっ!すまんライ殿!!」
「ごほっ、ごほっ……」
死ぬかと思った。
「お前は俺を殺すきか!?」
「す、すまん……」
「ん?あれがソルベ国か?」
「そうだが?」
3km位先にでっかい街が広がっていた。その中心には大きな城が……ん?雲行きが怪しくなってきたな……
「ちょっと少しの間、喋るなよ?」
俺は雲の近くまで上昇した。そして……
「うわわわわわあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ソラの悲鳴と共に街の中心に建つ城へ向けて急降下する。
「あと数十秒の我慢だ!」
さらにスピードを俺は上げる。吹き付ける強風が少し痛い……
城との距離が3分の1位になった頃、風だけではなく雨も急降下する俺とソラの体に吹き付けてきた!
「スピードを下げてくれ!」
ぐんぐん地面が近づくのでソラは恐怖感を覚えたのか俺の体の上で少し暴れる……と、次の瞬間!ソラの体が俺の体から離れた!!
「あっ!馬鹿野郎!!!」
「きゃゃゃゃああ!!」
ソラは下へ下へ落ちてゆく……俺は急いで方向転換して後を追いかける!俺はなるべく体の各部を胴体にピタリと付けて空気の抵抗を少なくした。
そのおかげでどんどんソラとの距離が縮まり……ソラの体を抱きかかえた!
そして俺は全力で羽ばたいたが地面との距離からして間に合わない!地面までは6、700m位しかない!
このスピードを止められはしないが王女を死なす訳にはいかない!!俺はソラを抱きかかえたまま本気で羽ばたく!!
「間に合えぇぇぇぇ!!!」
どしゃぶりと化した雨と地面に一緒に落ちてゆく感覚は背筋が凍るほど怖かった。全力で羽ばたいているとだんだんスピードが落ちてきた。
……そして
ドゴッという鈍い音がして俺の視界が真っ暗になった……

……暗い闇の世界がだんだんぼやけてきて、草と血の匂いがしてきた……俺は目を開ける。
「ライ殿!大丈夫か!!」
「何とかな……」
俺は立ち上がろうとするが背中がすごく痛い……ごほっごほっ……咳をすると血が地面に飛び散った。
「ラ、ライ殿!?」
「ああ、すまん、見苦しいものを見せちまったな」
「すぐに助けを呼んでくるからな!」
ソラが走っていく姿を見ながら俺は気を失った……

……此処は?
気が付くと俺は何処かの病室に居た。
「ライ殿!!」
その声の方向を見るとソラが俺の寝ているベットの横でイスに座り、俺を見ていた。
「良かった!」
ソラはそう言っていきなり俺の首に抱きつく……間近にいるソラから雌独特の匂いが漂ってくる。
「俺は……死ななかったのか?」
「ギリギリだったみたいだぞ」
「……そうか」
「?、嬉しくないのか?」
「いや、死を覚悟したから……まぁ、そういう事だ」
「妾のせいでライ殿がこんな事になってしまって申し訳ない……」
「違うぞソラ」
「?」
「俺がお前が乗っているのに急降下なんてしたから悪いんだ」
「其方が悪いのでは無い、妾がちゃんと掴まらなかったからだ……」
「まぁ、ソラの判断に任せるよ」
「それで良い」
ソラは笑みを見せた。
「ソラ、俺はどの位寝ていた?」
「数時間だ」
「意外と短いな……」
「ちゃんとした理由がある」
「何だ?その理由って」
「妾の世話役のユリがやってくれたのだ……癒し系の技がかなり強力なんだ」
「それでどの位、酷かったんだ俺」
「両肩、両腕、骨盤が骨折。背骨にわずかにひびが出来ている……殆どユリが治してくれた。エネルギーが足りず左腕は完全には治っていない……」
「左腕以外全て治ったのか!?」
「そうだ」
なんて奴だそのユリとかいう奴は……一度会ってみたい…………って会えるかその内……世話役と側近護衛は結構身近な筈だ。
「ところで王と女王の事だが……」
「先ほど来たが其方が妾の側近護衛になると妾が申すと簡単に承諾されたぞ」
「あ、あっさり……」
「其方が眼が覚めたらライ殿と一緒に来てくれと言っていたぞ」
「もう動いても良いのか俺は?」
「左腕だけだ問題は無かろう?それに腕はちゃんと首から掛けられたギプスで固定されているであろう?」
「確かに」
「では、参ろうぞ♪」
「分かった」
俺は布団から出て、ひとまず体を動かしてみた。……左腕以外問題は無いな……

少し緊張するな……俺は王と女王が待っている部屋に入る前にそう感じた。
……でも、このソルベ国の王と女王は優しいと評判である。国民を第一に考えて行動する王と女王、つまりソラの両親な訳だが……
その為、最近はソルベ国への引越しをする民が多いようだ。
「そう緊張するでないライ殿、父上と母上は優しいぞ」
「と、言われてもな……」
部屋の入り口の扉を守る強そうな二人の兵士を見ながら俺は返事をした。
「父上、母上、ソラだ。ライ殿を連れてきたぞ入って良いか?」
「大丈夫だ……ソラ」
ソラが扉を開けて俺はソラと一緒に中に入った。部屋の右側は壁ではなくガラス張りでそこからは城下の街が見える。
部屋の左側は大きい本棚が有り、その本棚は本で埋められていた……ボロボロの本やピカピカで新品同様の本もあった。
自分とソラが立っている所から部屋の中心にかけてレッドカーペット、天井には見事で大きなシャンデリアがぶら下がっている。
部屋の中心にはウィンディとアブソルが座っていた。王がウィンディ、女王がアブソルだ。
俺とソラはその二人の前へ歩いて行き、俺は王と女王の前で跪く。
「ライ、跪く必要は無いぞ」
「そうですよライ……普通にして良いのよ」
王と女王は穏やかな声でゆっくりと言った。
「立ってライ殿」
ソラに言われて俺は立ち上がった。
「ライ、質問したい」
「何でしょう?」
「私達を訪ねてくる者達は決まって跪く、跪かなくても良いと言っても……命令をしないと跪いたまま会話をするんだ。どうしてか分からぬか?」
「それは陛下を心の底から尊敬しているからだと思います」
「そうか、ライ……有難う」
王は笑顔を見せる。
「本題に入ろう、ライ……君は私の娘の側近護衛を引き受けたようだな?」
「そうです陛下」
「命がけで娘を守ってくれるのだろうな?……と、聞かなくても、もう君は行動で示してくれたか……」
「貴方が娘を守ろうとして自分の身を失いかけたと聞いています」
「はい」
「その心に私達は心を打たれた。……という訳で君が娘の側近護衛になる事を承諾した」
「娘をよろしくお願いしますねライ……」
「ちゃんと王女を守ります」
「では、ライ……」
王が俺に手招きをする……俺は王の前に歩いて行った。
「側近護衛の証を……」
金属で出来たバッチが俺の胸に付けられた。形は丸く、色は深海をイメージさせる程濃い青色で金色でバッチには†という記号が書かれていた。
バッチからは長方形に蒼色の布が垂れ下がっている。
「有難う御座います!」
「もう下がって良いぞライ、ソラ」
俺は深く頭を下げて退室した。
「ふぅ……」
部屋から出ると俺は溜息をつく
「どうだ?妾の父上と母上は?」
「噂通り優しかったがやっぱり王と女王だからな息が詰まりそうだった……」
「もっと気楽にしても良いのに……」
「それはソラが娘だから……お前以外は王と女王の前で気楽になれる訳が無い」
「そうか……」
「ところで今は何所に向かってるんだ」
「妾の部屋だ」
少し間を開けてからソラは言葉を続けた。
「ライ殿は側近護衛なのだから妾にずっと就くんだろうな?」
「そうだか?」
「良かった……」
「何でそこでホッとするんだ?何か近い内に起こるのか?」
「い、いや何でもない!」
ソラの頬は赤く染まっていた……変な奴……
「あっ、そういえば元々は俺は両親に会いに来たんだった」
「そうだったな……よし、妾の部屋にまずは行って、それからだ」
「分かった」
そう話している内にソラは一つの扉の前で止まった……その扉を守る兵士は頭を下げた。
「入るぞライ殿」
「ああ」
その兵士の横を通りソラの部屋に入る。
ソラの部屋の右側はソファやテレビが置いてあり、部屋の左側はこの国の歴史関係や難しそうな本が本棚に詰まっていた。
部屋の奥はガラス張りで城下が見えて、ガラスの前にはソラのベットがあった……そして部屋の中心にはテーブルが設置されていた。
ソファには一人の水色の……つまり色違いのサーナイトが座って読書をしていた。その色違いのサーナイトはこちらに気が付くと笑顔を見せて近づいてきた。
「戻ったぞ」
「お帰りなさいませ、ソラ様」
その色違いのサーナイトは俺に視線を移した。
「お怪我の方は如何ですか?」
「そんなに痛くは無い」
「そうですか……それは良い事ですね……すみません、自己紹介が遅れました……ユリと申します。ソラ様の世話役でございます……」
この穏やかでゆっくりとした喋り方をする色違いのサーナイトが俺の体を殆ど治してくれた奴か……色違いとは……珍しいな……
「有難う、殆ど俺の体を治してくれたのは貴女だろ?」
「ええ、そうでございます……ソラ様は必死で御座いましたよ……
『早くしてくれユリ!!ラ、ライ殿が死んでしまう!こやつには死んで欲しくない!』と叫んでおりましたよ」
「ば、馬鹿!その事を申すでない!!」
「フフフ……」
ユリは焦るソラを見て静かに笑う。
「ラ、ライ殿!わ、妾は決してそういう意味で言ったわけではなくて!し、しし、心配だったのだ!!」
焦りすぎて噛みまくってるぞ……と内心ツッコミを入れる……ソラの頬は真っ赤になっていた。
「そ、それより其方は両親に会いに行かないのか?!」
ソラが無理やり話題を変えようとしているのが簡単に分かるな……だが、可愛そうに思い話題に乗ってやった。
「じゃあ、俺は今から会いに行くから少しの間、待っててくれ」
「そ、そうだ!そうしてくれ」
いいかげん落ち着け……そう内心思いながら部屋から俺は出た。
階段を下っていると壁に窓があった。……此処から出ようと思い窓を開ける。
そしてそこから俺は飛び立った。当たり前だが空を飛ぶために翼を持っているポケモンだからこそ出来る事だ。
それで気が付いたがこの城、結構高い……つまり、攻められても敵歩兵は登りきる前に迎撃されるであろう……
だから空からじゃないと攻撃は出来ない事が分かる。……まぁ対空兵の方が対歩兵より多いから大丈夫だろう。
そう考えながら俺は街に目掛けて翼を閉じて急降下した。そして地が近くなると羽ばたいてスピードを落とす。
そしてある一軒の家の前に着地する。……久しぶりだな此処に来るのは、扉を開けて俺は中に入る。

「ライ殿にばれていないか心配だな……」
「何がですかソラ様……?」
「何がですかでは無いであろう!まったくユリは……ライ殿の前であんなにもはっきり言うとは!!」
「ソラ様がライさんの事が好きだとは……言ってませんよ?」
「確かに言ってはいないがあの言い方では好きだって言ってるのと同じじゃないか!!」
「クスクス……」
焦る妾をみてユリは静かに笑う。
「わ、笑うではない!」
「すみません、ソラ様……恥らうソラ様の姿が……あまりにも可愛かったので……」
「むぅ……」
「まぁまぁソラ様、落ち着いてください……」
「でも、ライ殿の命を救ってくれたのは感謝する……ユリ……」
「あれは当然の事をしたまでですよ……ソラ様」
ユリは妾に微笑みかける。
「さぁ、ソラ様……この国の歴史を学ぶ時間ですよ……?」
「勉強はあまり気が進まんな……」
「駄目ですよソラ様……?貴女は……王女様なんですよ?」
「分かっておる……やるしかないか……」
妾は溜息をつく……

「じゃあな父さん母さん」
「また来るんだぞ?」
「じゃあねライ」
両親に見送られて俺はまた、空へと舞い上がった。
「さて、早いとこソラの所へ行かないとな……」
早く行かないと多分あいつは色々と言ってきそうだったから俺は早く城へ着く為にどんどん高度を上げた。急降下で一気に行こうという考えで……
そして雲まであと少しという所で高度を保つ、急降下するのにはまだ距離がある。
ここでまた雲行きが怪しくなってきた……
「なんでまた雨が降りそうな雲行きになるんだよ……」
そう言っている間にも最悪な事に雨が振り始めた。眼下を見ると街中の人が走ったり、洗濯物を室内に入れていたりした。
「降り始めたか……」
やも得ず雲の中を突っ切って雲の上へと出る。ここなら濡れない……
そう考えていると突然!
ガァァウワァ!という耳を突くような高音がした。
突然、俺の目の前で小爆発が起こった。爆風を受けてバランスを失った俺は雲の中へと落ちてゆく……そして雲から出て街が見えた。
俺は羽ばたいて何とか体勢を立て直す。振り向くと紫色に輝く眼のドンカラス3匹がシャドーボールを同時に放ってきた所だった。
左翼を閉じて俺は緊急回避した。そして回避後すぐに右翼も閉じて城へ向かって急降下する。
ドンカラスは同じ様に翼を閉じて追いかけてくる!俺はわざと急降下のスピードをいつもより落としていた。そしてドンカラスがかなり近い距離になると俺は翼を広げて急ブレーキをかける!
突然のブレーキにドンカラス達は俺を避けて俺の前に出た。
「掛かったな!」
俺はドンカラス達の背後を取った。俺は大文字をお見舞いしてやる。三匹の内一匹が煙を上げながら落ちていった……素早くもう一匹に雷を発動する!そいつも雷を喰らって落ちていった。
最後の一匹は大文字を寸前で避けた。
「くそ、避けられたか」
最後の一匹のドンカラスは旋回して再び近づいてきて破壊光線を放つ!俺は上昇して攻撃を避けた。
俺は口にエネルギーを溜めて竜の波動を放った!ドンカラスは直撃して大きなダメージを受けたが黒い霧を発動させたのか俺の周りが黒い霧で包まれて視界が悪くなった。
これでは敵が何所にいるか分からない!俺は辺りを見回す……突然シャドーボールが飛んできた!
身を逸らして俺は避けたが避けた瞬間に顔にドンカラスが急接近して辻斬りをしたがかすって俺の左頬に切り傷が出来た。
俺は左腕は使えないのでやも得ず両腕ではなく右腕だけでドラゴンクローを決めた!
しかしそれでも威力は十分あり、最後のドンカラスも落ちていった……と、同時に黒い霧も消えた。
「ふぅ……」
俺は溜息をついた。
「片付いたか……」
そしてまた城へ向かって急降下した。
戦いで切れた左頬が痛い、そんなに傷は深くは無いがかなり痛い……そう思っていると俺がさっき飛び立った窓が見えた。
翼を広げてスピードを下げてその窓から中へと入った。そして階段を上がり、ソラの部屋の前へとやってきた。
「お帰りなさいライ殿、王女が待っていますよ」
扉の前に立つ兵士が頭を下げてから言った。
「ありがと」
俺はそう言って扉をノックした。
「ソラ、ライだ。入るぞ?」
「ライ殿か!?入ってくれ」
扉を開けて俺は中に入った。
ソラは机でユリが見守る中、勉強をしていたが俺が部屋に入ると椅子から立ち上がって俺の胸に飛び込んできた。
「駄目だぞソラ、お前は勉強中だろ?」
「分かった……(!)ライ殿!そ、その傷は?」
ソラは俺の左頬の切り傷を見て言う。
「ちょっと空中でドンカラス三匹に襲われてな……」
「何という無礼者だ!ライ殿を襲うとは!」
「いや、でも俺には正気には見えなかったぞあいつ等は」
「どうしてだ?」
「何だか紫色に眼が光ってたし、あいつ等の中に何か別の存在を感じた気がするんだ」
「別の存在?」
「ああ、でもはっきりと分かる事じゃない……さて、余計なお喋りは此処までだ。ソラ、勉強に戻れ」
「分かった」
「ライさん、お怪我を治しましょうか……?かすり傷を治す程のエネルギーはありますよ……?」
「いや、そのエネルギーは溜めておいてくれ……かすり傷よりこの左腕を早く治したい」
「かしこまりましたライさん……」
俺はソファに座った。
ユリはティシュ一枚と消毒薬、絆創膏を手にして俺に近づいてきて俺の前に来るとしゃがんだ。
「ちょっと染みますが……我慢してくださいねライさん……」
ティシュに少し消毒薬を染み込ませて俺の左頬の傷に優しく付ける。薬が染みてくるこの感じは好きにはなれないな……
血を拭き取るとユリは絆創膏を傷口に貼った。
「これで大丈夫ですよ……ライさん……」
「有難うユリ」
ユリは笑みを見せてティシュなどのごみをゴミ箱に入れてからソラの横に付き、勉強を見守ったり教えたりしている。
俺は部屋の奥に行き、ガラス越しに外を見た。どしゃぶりはまだ続いていた……城下の街を見ると所々に傘を差したポケモンが歩いていた……
自然に俺は歩く人達や街の家々を一軒づつ見ていた。

……その夜
「さぁ、ソラ様、お休みの時間ですよ……」
「ライ殿はどうするのだ?」
「大丈夫ですよ……ライさんのお休みになれる部屋はありますから……」
「そうではない……そ、その……ライ殿」
「何だ?」
少し間を置いてからソラは言葉を続けた。
「ライ殿と一緒に寝たい」
「!?」
「ライさん……どうでしょう?」
まさかの事態に俺は戸惑ったが…………こう言った。
「まぁ、ソラがそうしてほしいなら」
「では……ソラ様、ライさん……おやすみなさい、お体をごゆっくりお休め下さい」
ユリは頭を下げて退室した。
ソラはベットに入る。
「ライ殿」
俺に向かって手招きをする。
「ソラ、本当にいいのか?」
「いつも、一人で寝てるんだ。普通は慣れるだろう?……でも妾は一人は嫌いだ……」
「分かったよソラ」
俺はソラのベットの中に入る。ガラスの張りの壁の前に設置してあるベットからは城下の様子がよく見える。……雨はまだ止まなかった。
ソラは俺の右腕に抱きついてくる。俺は右翼でソラの体を包んでやる……
「ユリと父上、母上以外の人の温もりを感じたのは初めてだ……」
「だろうな……」
「ライ殿は大切な人は()るのか?」
「両親だけだ」
「……そうか」
ソラの瞳が輝いた気がしたがこの暗闇ではよく分からない……
「なぁ、ライ殿」
「何だソラ?」
「お前と二人っきりで空の散歩を今度してみたい……」
「別に構わんが?」
「あっ、でも急降下だけはもうやらないでくれよ?」
「安心しろ、お前が乗ってるときはやらない……」
「約束……だぞ?」
「ああ」
そこで体が眠いと訴えかけてきた。
「ソラ、すまんがもう寝て良いか?」
「良いぞ」
「お休みソラ」
「お休みなさいライ殿……」
俺とソラはゆっくりと瞼を閉じて夢の中へと入って行った。



―2― 嵐の前の平和

「……ラ……ライ……イ……殿…………ライ殿!」
誰かに呼ばれて俺は瞼を開ける。すると目の前にソラの顔が映る……
「もう朝か……おはようソラ」
「おはようライ殿」
「お前と会ってからどの位するっけ?」
「何を申しておるのだ?一週間経ってるぞ?」
「夢の中でお前と会った初日の事を見ていた」
「そうか……あれから一週間か……」
俺はユリに治してもらった左腕を見ながら言った。
「あの時、俺がお前が疾走している所を見ていなかったらどうなっていただろうな……今頃、俺は山で鍛えているだろう……」
「それは困る」
「どうしてだ?」
「そしたら、ライ殿と一緒に居られないどころか妾はあいつ等に人質にされていただろう!」
「そうだな……」
「でも、実際はこうして一緒に()る」
「ああ」
「ライ殿」
「何だ?」
「妾は初日の夜に言ったよな?空の散歩をしたいと……」
「覚えてるぞ」
「今から……どうだ?」
今からか……天気は晴れか……
「分かった行こう」
俺とソラは部屋から出た。
階段を下っていると……ユリと会った。
「ソラ様、ライさん……何方へ行くのですか……?」
「妾は空の散歩へ行く!」
「朝食は……どういたしますか……?」
と、ソラのお腹から音がする。ソラは頬を赤らめる……
「ライ殿、朝食にしよう……空の散歩はそれからだ」
「分かった」

……朝食後
俺とソラは城の入り口前に立っていた。
「さてと空の散歩をしようぞ♪」
俺は首を低くする。ソラは俺の首に乗った。
「掴まってろよ?」
地面を蹴り上げて翼で羽ばたき、俺はソラを乗せて飛び立った。
家々の上、ギリギリを飛ぶ……
「ところで何所に行く?」
「まずは川に行ってみたい」
「分かった」
俺は雲と同じ高度まで上昇する。晴れている為、雲は殆ど無い……
「なぁライ殿」
「何だ?」
「ライ殿のおかげで毎日がかなり楽しくなった」
「それは嬉しい事だな、俺にとっても、お前にとっても」
「お前が就いてくれてから一緒にいれば殆ど何所でも行って良いと許可されたし、何よりもライ殿と一緒に居ると楽しい……」
ソラは俺に笑顔を見せる。
「そうだな、俺も毎日が楽しくなったよ」
俺も笑顔を返す。
「そういえばライ殿には言っていなかったな」
「何がだ?」
「妾の先祖の話だ……」
「聞いてやるぞ?」
「実はな、妾の先祖はある能力を持っていた。その能力は深紅の鎌というんだが……」
「深紅の鎌?」
初めて聞いた名だ。
「破壊と絶望をもたらす能力らしいのだ。発動した時、本人は意識を失っている……つまり敵味方関係がつかない」
「危ないな……」
「でも、一つだけ意識を取り戻させる方法があるのだ」
「その方法は?」
「愛だ」
「愛……」
「その人を大切に思う気持ちが正気に戻すらしい……そして、正気に戻せば……」
「自由にその能力を使える……だろ?」
「そうだ」
「その先祖の血を妾は持っている。……もし、妾がそうなったr……」
「大丈夫だ。お前の側近護衛を引き受けたからにはソラが望まなくても俺は正気に戻してやる」
「有難うライ殿……」
ソラは頬を赤くして礼を言った。気が付くともう川に着いていた……
俺はゆっくりと高度を下げて川の近くに着地した。川は森の木で覆われており、陽の光があまり入ってこない……葉と葉の間から入ってくる光は葉に当たり、緑色の光へ変わる。
少し薄暗いながらも何だか神秘的な光景だった。
「なぁソラ、何だか神秘的な光k……」
ソラはいつの間にか俺の首から下りて川ではしゃいでいた……
「……早っ!」
俺はそう呟く……
「どうしたのだライ殿?じっとして……」
お前の速さに驚いたんだ……と、内心呟きながらも川に入り、ソラの所へ行く……川の水は俺の腹の高さ位あった。
「えいっ」
突然ソラに水をかけられた。
「あっ、やったなソラ!」
俺はソラにかけ帰す。
「きゃ……そらっ!」
しばらく、辺りにばしゃばしゃという水のかけ合う音が響いていた……
「ふぅ……疲れたなライ殿」
「ああ」
俺達は結構な時間水をかけあって遊んでいた為疲れた……だから川の近くに腰を下ろしていた。
「お腹空いたな……ライ殿……」
「確かにな、俺もだ……」
周りを見渡すと川の向こうに運がいい事にモモンの実が生っている木を見つけた。
「ちょっと待ってろソラ」
俺は立ち上がって翼を広げて羽ばたく、そして川の上を飛び、川の向こう側の木に生っているモモンの実を6個もぎ取る。
そして川で軽く洗ってからソラの元へ戻る。少し水が滴るモモンの実を3つソラに渡す。
「ほら、モモンの実だ」
「有難うライ殿」
川の音を聞きながらソラとモモンの実を食べて腹を満たした。
「ライ殿、妾は何だか眠くなってきた……」
「寝てもいいぞ、俺は此処に居る」
ソラは俺の胸に抱きつき、瞼を閉じた。
俺はそっとソラの頭を撫でる。
ゆっくりとソラは夢の中に入って行った……ソラの寝顔はほんの少し笑みを浮かべて可愛かった。
「……ライ殿……」
「ソラ?」
「……妾……ん……」
「寝言か……」
「ん……ラ、イ……殿…………ひゃ……」
「お、い……?」
「駄目……そんなぁ……」
ちょっと待った!どんな夢見てんだ……
ソラは俺に抱きつきながら身を捩じらせる……他人から見ればとんでもない勘違いをするだろう。
「そこはぁ……」
俺に抱きつくソラの腕の力が強くなっていく……同時にソラの胸が……意外とソラの胸って大きいnって何言っているんだ俺は?!
頭を振って余計な思考を掻き消す。
「ったく、俺しっかりしろ……」
自分の顔を軽く叩く、そこで何故か俺も眠くなってきた。
きっと水のかけ合いの疲れが出たのであろう……ソラがまだ危険な事を呟く中、俺は眠りについた。



ポツ……ポツ……
俺の頬に何か冷たいものが落ちてくる。その冷たさに俺は瞼を開ける……
「雨だ……」
俺の頬に落ちた冷たいものは雨だった。ソラはまだ俺に抱かれながら寝ていた……
このまま雨を受けるわけにはいかないな……ソラが風邪を引いちまう。
「もっと……動い……て」
ま、まだ同じ様な夢を見ているのか……
「おい、ソラ起きろ」
「やぁ……はぁ……うぅ……」
ちょっとさすがにまずいって……
「ソラ!」
俺はソラの体を揺する……
効果は無いようだ……▼
俺はソラの頬を掴んで捻る……
「痛いいいいぃぃぃ!!?」
効果は抜群だ!……▼
何かの効果音が聞こえた気がしたが気のせいらしい……
「痛いではないか!!何をするのだライ殿!」
ソラは眼に涙を溜めながら痛みを訴える……ちょっとやりすぎたな……俺は少し反省する。
「雨が降ってきたんだ。何処かに移動しよう」
「なら、普通に起こせばいいのに!」
揺すったけどお前は起きなかった……と言いたかったが雨が少しづつ強くなってきているので止めておいた。
「乗れ」
ソラはすぐに俺の首に乗った。
俺は飛び立った。周りを見渡すとそう遠くない所に小さい家が建っていた……
何故こんな所に家が?と思ったがそれどころではない……雨宿りをさせてもらおう……
そう思い、雨が強くなってきている中急いで向かった。
その家に近づいて分かったが家は廃墟と化していた。しかし殆ど原型を留めているため雨宿りは出来そうだ……
家の前に着地する。ソラは俺の首から降りる。
「待ったソラ、何か見えた気がする……」
そう、俺は屋根は錆だらけ……壁やドアは色あせている……家の壁に所々開く穴から何かが動くのを見た気がしたのだ。
「ラ、ライ殿……じょ、冗談だろうな?」
ソラの顔は引き攣っていた。
「いや、はっきりとは分からない……俺の後ろに連いていろよ?」
「そんなぁ……妾は怖いのは嫌いなのだ!」
「俺から離れればもっと危険だと思うが?」
そうソラに言いながら家に慎重に近づき、身構えながら扉を開ける。
「分かった!置いてかないでくれ!」
ソラは俺に走って近づき、俺の尻尾を左前足で掴む……ソラは震えていた。
「ちゃんと連いて来いよ」
「う、うむ……」
俺とソラは家の中に入る。ソラは俺の尻尾を掴みビクビクしていたが家中回っても何も無かったし、誰も居なかった。
「だ、誰も居ないようだな……」
「ひっ!?」
「どうしたソラ?」
「い、今、何かが妾の体に触れたのだ!」
辺りを見渡すが何も居ない……
……何かの気配を感じる。この部屋の中に……部屋の隅で足音がわずかにした。
「そこか!」
俺はドラゴンクローを部屋の隅まで素早く行き、繰り出す。すると技が当たる感触がした。
「ぎゃ!?」
という声が聞こえて姿を消していたカクレオンが姿を現す。俺はカクレオンの後ろに回りこみ、首を絞めるようにして動きを封じた。
「お前は何者だ!」
「ただのカクレオンです!」
「だったら何故ソラに手を出した?」
「雨が降ってきたので雨宿りをしていただけですッ!
そしたらお前らが来て……そのアブソルがビクビクしていたので悪戯してみようと思っt……」
「妾に許可無く触れるとは何たる無礼な行為!妾はソルベ国の王女だぞ!」
「ええぇぇぇ!?すみませんでした!!い、命だけは!!!」
「では妾に土下座で謝るのだ」
ソラは胸を張る。
俺はカクレオンを離す。カクレオンはすぐに土下座してソラに謝った。
「分かれば良い……」
「やりすぎじゃないか?」
「良いのだ」
そして俺とソラは別の部屋に移動して座る。互いに寄り添い、俺はソラの体を翼で包んでやり寒さを紛らわさせる。
カクレオンはさっきの部屋に居る。
「ソラ?」
「何だ?」
「さっきお前が寝ている時、お前は危険な言葉を呟いていたが何を見ていたんだ?」
ずっと気になっていて俺は聞いた。
「え……あ、あれはだな……い、言えん!!」
「どうしてもか?」
「馬鹿!それ以上、その事を申すではない!」
「どうしてだ?」
「お、思い出してしまうからだ!」
「何をだ?」
「夢の中でお前とy……ッ!何を喋らせているのだお前は!!」
ソラは顔を赤らめる。
「自分で喋ったんじゃないか?」
「ライ殿がsy……!?」
俺はソラの口を自らの口で塞いだ。
「あんまりお喋りな王女は嫌われると思うぞ?」
ソラはこれまで以上に頬を赤らめて黙り込む……
「早く雨が止まないかな……」
俺は頬が赤いソラと一緒にしばらくじっとしていた……
「な、なぁライ殿……」
「何だ?」
「妾は良い王女になれそうか?」
どしゃぶりが今も続く中、ソラがそう質問をしてきた。
「なれるさ、お前のような良い心を持っている奴は……でもな、あんまり無茶するのは駄目だ」
「そうか……有難うライ殿」
その時、朝日が部屋の中に差し込んできた……どうやら雨が止んだようだ。
「さぁ、ソラ……そろそろ城に帰ろう」
「うむ、ライ殿帰ろう」
俺はソラを首に乗せて飛び立った。



―3― 悲劇

あの山を越えれば城が少し先に見えるはずだ。俺は少し先にある大きな山を見ながらそう思った。
「そういえば思ったんだが」
「何がだライ殿?」
「お前は前に俺に大切な人はいるか?と聞いてきたな」
「そう……だが?」
「俺は両親だと言った」
「うむ」
わざと間を置いてから俺は続けた。
「お前は?」
「えっ!?」
「お前は誰か好きな人はいるかと聞いているんだ」
「えっ……えっと……両親以外い、いないぞ!!」
「おい、何だ?その両親以外にも好きな人がいるみたいな誤魔化し方……」
「本当にい、いない!!」
ソラはさっきみたいにまた頬を赤くする。
「そうか……」
そして俺は山を越えた。その瞬間、俺とソラは背筋がゾッとするのを感じた。
城の上には真っ黒な雲が広がり、そして城は所々火が見えて煙が立ち昇っていた……
「父上!母上!」
「一体誰が!?」
俺は城へ向かって全力で羽ばたき始めた。
ソラの世話役ユリや兵士達の事が心配だった。そして何よりもソラの両親、王と女王の安否が気になる。
所々火を噴く城の上空では城の兵士と敵の兵士が空中戦を繰り広げていた……
丁度、強い追い風が吹いて数十秒で城に着いた。
敵も味方も空中でごちゃごちゃに混ざって下手に攻撃をすれば味方を撃つ危険があり、俺は攻撃を控えた。
王と女王の部屋の窓から直接、中に入ろうかと考えたが戦いの最中を王女を乗せて王と女王の部屋に行くわけにはいかず、やも得ず俺は高度を下げた。
城の正面出入り口前では敵ボスコドラが数人生き残っていてその周りをソルベ国の兵士が囲んでいた。
俺は囲まれている敵ボスコドラ数人に向かって大文字を放つ。
突然上から攻撃された敵ボスコドラ達は回避行動をとれずに攻撃を受けて体勢を崩し、その隙をついて味方兵士が一斉に襲い掛かった!
不意をつかれたボスコドラ達はあっという間に倒れていった。
味方兵士達は勝利の雄叫びを上げた。地上の敵は全滅らしい、俺は味方兵士からの応援の声や礼の声を聞きながら城の正面出入り口から中に入った。
「ライ殿、早く!」
「分かってる!」
俺は城の中でも飛んで上へ上へ向かった。何回か壁に翼がかすったが気にせず上へ向かって飛んだ。
常に城の外から悲鳴、雄叫び、爆発音が聞こえてくる……
どうやら城の上空で派手に空中戦を繰り広げているようだ。
そうして飛び続けていると王と女王の部屋が見えた。
止まっている場合ではない!俺は壊れかけの扉を竜の波動で壊して爆煙の中を突っ切って部屋の中に入った。
その瞬間、時が遅くなったように見えた……
身長3m以上ある全身黒色のエレキブルが王の首を掴んで王の体が宙に浮かび、その心臓にエレキブルが電気で作り出した剣で貫き、同じく身長が3m以上ある全身紫色のブーバーンが床に倒れて瀕死になった女王に腕を向けて、止めを差そうとしていた!
止めろ!
俺はそう叫び、竜の波動をそのエレキブルとブーバーンに放つ!
攻撃に気が付いたエレキブルとブーバーンは身を逸らして攻撃を避ける。
俺はフラッドガ国の女王だ
身長が3m以上ある紫色のブーバーンが言った。
俺はフラッドガ国の王だ。お前は誰だ……
身長が3m以上ある黒色のエレキブルはそう言ってきた。
「お前の様な奴に誰が教えるか!!」
見る所、首に乗っているのはこの国の王女ソラ……そしてお前は王女の側近護衛
「妾の名を気安く呼ぶな!」
やはりか……
この殺気に満ちた王と女王の国、フラッドガ国……聞いた事がある。
海の向こうにある大陸の国だ。そしてその国は邪悪だ……子供から大人まで殺戮が好きで皆紫色の眼をしている。
周りの国を襲っては殺戮を繰り返している国だ……勇敢にも周りの国は反撃をしているが戦況は絶望的だと聞いている。
そのフラッドガ国の王はエレキブル、女王はブーバーン……何故此処に……
さてと王女もこいつの様に死んでもらおうか……
エレキブルは王の腹を蹴る。その行動に俺の心は怒りに染まった!
貴様!!
気が付くと俺はソラを地面に下ろしてエレキブルに急接近してドラゴンクローを決めていた!
攻撃はエレキブルの右肩に直撃してエレキブルは右肩を左手で抑える。
くっ……
俺はすぐに後ろへ下がった。
良い腕だなライ、俺の仲間にならないか?
「何故名前を!」
そんな事はどうでも良い、お前が俺の側近護衛に欲しい……そして殺戮を一緒に楽しm
誰がお前と手を組むか!!
そうか……ならば
ブーバーンが破壊光線をソラに向けて放つ!
「ライ殿!」
「ソラッ!!」
俺はソラの前に立ち、攻撃を自らの体で受け止める。
「ぐっ!」
爆風で俺の体は宙に浮き、地面に叩きつけられた。
ちっ……王女は殺れなかったが……王は殺ったし女王はそんな状態じゃ生きてはいられんだろう……
「待て!」
俺が腹を押さえながら立ち上がったときにはエレキブルとブーバーンはガラス張りの壁を突き破って落ちていった所だった。
ガラス張りの壁の突き破られた所から下を見るとエレキブルとブーバーンは普通より大きなボーマンダ二匹に乗って逃げていく所だった。
それと同時に空中で戦っていた敵兵士も続いて逃げていった。
「父上!母上!死なないで!」
俺は振り返った。ソラが大粒の涙を女王に抱きつきながら流していた。
王の傍に行き、俺は王の心臓に耳を当てた。駄目か……俺は王の開いたままの瞼を閉じさせた。
「貴方を守れませんでしたがきっと……俺はソラを守り抜きます」
俺は右手を握り胸に叩きつけ、それから敬礼をした。
そして立ち上がった……王の傍にユリが気を失って倒れているのが目に入った。
王と女王を守ろうとして攻撃をされて気を失ったようだ。
「ユリ、起きてくれ」
ユリの体を揺するとユリは上半身をゆっくり起こした。
「残念な知らせだ……王が死んだ」
「!?」
「すまない、俺が駆けつけた時には間に合わなかったんだ……」
「女王様は?!」
「生きているが虫の息だ。出来るかユリ?」
「ちょっと待ってください……」
ユリはすっと立ち上がり女王の近づいた。
「ソラ様、少しの間女王様から離れてくれますか?」
ソラは大人しく退いた。
ユリは女王の胸に手を置いた。
「生けるかもしれません!」
『頼む!』
ユリの体からは鮮やかで明るい緑色の煙が出てきた。
しばらくすると女王の体が白く輝き始めた。
そして……
「母上!」
目を覚ました女王にソラが抱きつく、俺はさっきの攻撃で体が痛かったが自然にホッとした。
「私は……生きている……?」
女王は自分に抱きついて泣いているソラを見てそう言った。
「ええ……生きておられますよ女王様……」
「確かに生きている」
「貴方達が救ってくれたのですね」
「王は残念ながら守れませんでした……」
「分かっております。でも、悔やんではいけませんライ……変えられない事もあるのです……」
「はい、女王様」

そしてその後、王の亡骸はソルベ国の沢山の民や、兵士の涙と共に近くの山の頂上に埋められた。
そこは昔からソルベ国の王や女王が永遠の眠りにつく場所だ。
王を墓に埋葬する時、ソラはずっと泣いていた。女王は悲しそうな顔をしていた……俺はソラを黙って優しく抱いてやった……
その時俺はあのエレキブルとブーバーンに復讐をすると女王と亡き王に誓った。


続き:深紅の鎌.弐


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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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