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波乱の友

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皆さんこんにちは。ん?お早う?こんばんわ?…どうでもいいですね。



今回の作品は第一回変態選手権に間に合わなかったという前回の作品、無人島の続きという事になっています。
書いてたらなんかラブコメみたいになってしまいました……(コメはちょっと薄いかな?)
戦闘ものではないので、 血 の表現はありません。BL等でもないですが、 強姦 ではあります。



結構長いですが、最後まで読んでください。





無人島 ~波乱の友~


カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ。
この四つのどの地方にも属さない島は幾つもある。
地方から外れた孤立した島であっても生物が暮らせないほど厳しい島というのはそれほど多くは無い。そこで生まれ、そこで暮らし、そこで死ぬ者もたくさんいる。
例え小さくとも、命を育むほどの力を持つ壮大なる自然の塊。



ここはその一つ。過酷な自然環境のため、人間があまり寄り付かない島。
人間にとっては過酷でも、自然の中で暮らすポケモンたちにとっては自然に囲まれた楽園。
人が寄り付かない自然のままの島。名も無き“無人島”。
朝は涼しい風に吹かれて木々が嬉しそうに揺れ動き、昼は太陽の日差しを充分に浴びて、日差しの差さない夜になると寝静まったかのように静かになり、夜行性の者が静かに活動を始める。
今、島は朝の優しい風に吹かれている真っ最中である。



1.
島の端に一本の木があった。周りの大自然に比べれば比にならないほど小さい木だが、それでも空に向かって威風堂々と立っている。
その木の島の中心部に向いている根元の部分には穴が開いており、中は空洞になっていた。
電気もない自然の島なので外からその空洞を覗いても薄暗く、よく見えない。
まるで大きな洞窟の入り口のようにも見えたが、ここにちゃんとポケモンが住んでいる。



一匹の小柄なポケモンが木から顔を出し、そのまま外へと乗り出した。
体はオレンジの体毛で覆われており、その中にギザギザした模様を写すように黒い毛も並んでいた。尻尾と首周りと口周りは白い毛で覆われていた。
そのポケモンは一匹のガーディ――名をグリンといった。
「・・・眠い・・。」
まだ起きて間もないのか眠たそうにあくびをした後、滲み出てきた少量の涙を前足で拭った。その目が捉らえているものは何も無く、目を見開いてはいるが頭はまだ寝ている気分らしい。色は見えるがそれが何なのかが分からない。
彼が瞼の重みに耐えかね、その場に座り込んで目を瞑った時だった。
「こらっ!何寝てんの!!」
「っうわぁ!!?」
小規模でも地震を起こすんじゃないかと思ってしまうほどの大声が、住処である木の中から響いた。グリンは驚いて飛び跳ねるように起き、後ろに振り向く。今度はちゃんと目で何かを捉えて言った。
「驚さないでよ・・・トパーズ。」
グリンが捉えたのは、薄い黄色の架かった短い体毛に包まれた体に炎の鬣と尻尾を持つ、紛れも無いポニータだった。
ポニータ―――トパーズはグリンの驚きように大きく声を上げて馬鹿にするように笑いながらグリンの横に並んだ。そして暫く笑った後、急に声が低くなった。
「大体たまには一緒に散歩でもしようって言ったのはあんたじゃん。なのに寝坊するなんてね。」
トパーズは膨れてそっぽを向く。こういう様子にも可愛らしさがあるのだが、今はそういう場面ではない。
しかしグリンは焦らず、冷静な態度をとり続けた。
「確かにそう言ったけどね、誰も朝早くからなんて言ってないじゃんか。それを君が・・・」
「あ~はいはい、あたしが悪かったですね!」
「な、何だよその言い方!」
お互い意地っ張りなのか、喧嘩になるといつもこんな感じだった。お互いに謝らない、お互いに引かない、まるで子供のような喧嘩である。



暫くお互いに沈黙が続いたが、トパーズがそれを破った。
「ま、いいじゃん。せっかく起きたんだしさ、早くいこうよ。」
トパーズは優しい表情をして微笑んだ。グリンも笑って頷き、そして二匹並んで歩き出した。
この二匹はあまり根に持たない性格であるが故か、暫く経つと喧嘩など既に終わっていることが殆どだった。相性で言えば全く反対の位置にいるのだが、二匹とも根に持たないのが幸いしている。




2.
「あ~、もうあたしが来て三年?になるのかぁ・・。」
トパーズは朝の日差しを全身で感じ、その温かみに包まれて気持ちよさそうに首を伸ばした。
もともとグリンとトパーズは一緒に住んでいたわけではない。三年前のある日の朝、グリンがいつもの様自分の住処の近くに立っている木から、食料である木の実を採って食べようとした時の事だった。
彼のちょうど目の前に茂っていた草が突然大きく揺れ始め、そこからトパーズが飛び出してきたのだ。



ちょっと隠れさせて。



すれ違いざまに彼女はグリンにそう耳打ちすると、グリンの家の中に駆け込んでいってしまったのである。
その後、少し遅れて飛び出してきた少々柄の悪そうなグラエナに「雌のポニータがこなかったか?」と迫力満点の声で言われるも、何とか知らぬ振りをして追い返したのだ。
それからトパーズは「助けてくれたお礼」と言い、グリンの『お手伝い』として同居し始めた。最初はすぐに出て行くという約束だったが、三年たった今も一緒に暮らしている。
現在はその『お手伝いとして』というのは全く消え去り、普通に暮らしている。何故すぐに出て行く約束を破ったのかはグリンにも分かっていない。否、気にしていない。
トパーズはもちろん、グリンさえもそんなのはどうでもよくなっていたのだ。



「そうだっけ?結構あっと言う間に過ぎていくもんだね。」
グリンも同じように伸びをした。
本心は眠いのだが、今はそんなことは言えない。この散歩が嫌というわけではなく、ただ睡魔が常に攻撃していた。こうやたら気持ちの良い日差しの下だと余計に眠くなってしまう。
「・・・・寝ないでよ?」
そんなグリンの様子に気付いたのか、トパーズはグリンを睨みつけた。
「わ、分かってるよ。・・・あのさ、ついでだから木の実も採っていかない?」
ちょうど、目の前には大きな木が立っており、濃い緑色の葉の間からは赤色の熟れた木の実が顔を覗かせていた。
トパーズも賛成し、早速木の実採りに取り掛かった。
木の実に向かって極力小さい炎を吐き、木の実と枝の連結を焼き切っていく。
ここで気を付けなければならないことは、大きな炎だと周りの葉に燃え移り、あっと言う間に火事騒ぎになってしまうことだった。そのことは当然よく分かっている。



数分経って数十個が採れ、それを二匹で割けて背中に乗せ、また歩き出した。
暫く経った後、二匹とも疲れた表情が出始めた。
「ねぇ、あんたさぁ・・・・あたしの分も持ってくれない?」
二匹は立ち止まり、トパーズがグリンを見た。
「え?・・僕も疲れてるんだけど・・・。」
グリンは野性にも拘らず、そう運動能力は高い方ではなかった。
グリンもトパーズと同じくらい疲れていたのだが、トパーズは諦めなかった。
「あんた雄なんだから、普通持ってあげるべきなんじゃない?」
「お、雄雌差別発言反た・・・ぐはぁ!!」
言い終わる前にトパーズはグリンに背中目掛けて、自分の分の木の実を転がした。
重みに耐えかねてグリンは地面に倒れ、数十個の木の実の下敷きになってしまった。
「痛っ・・!」
「あっははははははは!!」
トパーズは大声で笑い、グリンは赤面した。



3.
ちょうど目の前には草に囲まれた広場のようなスペースがあり、そこで一旦休憩することにした。
「ねぇ、どうせもうご飯時だしさ、これ以上持ってるのも疲れるし・・・ここで食べちゃわない?」
散歩の出かけてもう一時間程経っていた。と言っても住処を出た時間が早かったので、まだ太陽は随分東の方に傾いている。確かに丁度朝食時のようだった。
「うん、じゃあ食べよう。」
グリンは木の実の山から一個だけ前足で取り、大口を開けて齧り付いた。その時だった。
三年前、トパーズが飛び出す時のように草むらが大きく揺れ始める。そして案の定、何かが飛び出してきた。
飛び出してきたそれは二匹の前に着地し、目をゆっくり開きながら顔を上げた。
大きな耳と尻尾の先が紫色をしている。首周りも、紫色の毛が羽毛のように巻きついていた。
体は無駄な脂肪など無く、スラッとしていて少し濃い黄色の体毛に覆われていた。――エネコロロはジッとグリンとトパーズを見つめた。
「っうわ!?」
エネコロロはグリンに突撃し、勢いに任せてそのまま押し倒した。
「フフ・・・」
エネコロロの顔がグリンの顔に一気に近づき、彼女は妖しげな笑みを浮かべた。
妖艶な容姿に見とれてしまいそうだが、今はそんなことを思っている場合ではないと自分で欲を押さえつける。



驚いたトパーズはエネコロロをグリンの上から押しのけた。手加減する暇が無かったのでかなり痛そうな音と共に体を突撃させた。
「な、何よあんた!!?」
押しのけられたエネコロロは少し痛そうな表情をしたものの、転ぶことなくまた笑みを浮かべてトパーズに視線を向けた。
「冗談よ・・・。フフフ、でもあんたが押しのけなかったらそのまま・・」
「ちょ、ちょっと!何言ってんの!!?」
エネコロロの言葉をかき消すようにトパーズは慌てて言った。トパーズは完全に冷静さを失い、顔を赤らめる。
エネコロロに何か文句を言おうとしているのは分かるが傍から見たらキャイキャイ騒いでいるだけだ。
「・・・もう三年も会ってなかったからね。すぐに思い出せないのも・・・無理は無いかな・・。ねぇ、トパーズ。」
――何であたしの名前を知ってるの?トパーズは目を丸くしたが、過去の記憶を探ってようやくその答えを見つけたようだった。
「あ、もしかして・・・シディア?」
トパーズは冷静さを取り戻し、表情は一気に明るくなった。
エネコロロ――シディアは微笑みながら頷いた。
「知り合い・・・?」
知り合いということは一目見れば分かる。だが何で自分を押し倒したのかが全く分からなかった。




4.
草むらに囲まれ此処でシディアに出会ったことで、散歩は中断し、会話を楽しみたいということで今住処に戻っている最中だった。
彼女とトパーズは昔からの親友のようで、二匹で楽しくお喋りを満喫しているが、グリンは会話に入ることが出来ずに歩きながらただ見ているしか出来なかった。
寂しそうに様子を見ているグリンをシディアは一瞥し、会話を切ってトパーズにこう言った。
「ねぇ・・・あの子は・・?」
グリンは人間で言うと18歳くらいで、トパーズは20歳。シディアはトパーズより一歳年上らしいから21歳だ。
グリンは3歳しか離れていない者に『子』呼ばわりされることに少し不満を感じたが、彼女の大人の雰囲気の前ではやはり『子』だとも言えそうだ、と思ってしまうことも何だか無性に切ない気もする。



トパーズもまたグリンを一瞥し、すぐにシディアを見た
「あぁ、あいつはグリン。見た目通りガーディだよ。」
シディアはさらにこう聞き返した。
「一緒に暮らしてるの?」
「うん、話せば長くなるんだけど――」
トパーズは自分がグラエナに追いかけられたこと、グリンの住処に逃げ込んだこと、匿ってくれたお礼としてグリンの住処に『お手伝い』として住み込んでいることなど長々と全て話す。それも、グリンと話す時とは全く違う愛想の良さだ。
シディアはその話を頷きながら聞いていた。



楽しそうに話している二匹の横でつまらなさそうにしていたグリンだったが、あることを思い出した。
「あ、トパーズ!木の実・・・忘れてきた!!」
グリンの声でトパーズは会話を中断させた。自分も思い出したらしく、見る見るうちに表情が焦り始める。
「やばっ・・・!取りに行こ!グリン!」
一目散に走っていくトパーズ、それを追うようにグリンも走り出した。更に後ろからシディアが追いかけてきた。



数十個もの大量の木の実を、シディアの手伝いもあってようやく家まで運ぶことが出来た。
少しの散歩のつもりが思ったより長引き、もう既に太陽は真上に昇っている。
「んじゃ、食べようか。」
朝ごはんも食べ損ねて空腹を我慢できず、真っ先に木の実に齧り付く。
「シディアも食べなよ。」
次にトパーズが小さく齧った。
「いいの?じゃあ、いただきます・・。」
シディアはトパーズの好意を素直に受け止め、木の実に前足を伸ばした。
食事が始まってからも、グリンは会話に入ることが出来ず、ただ無言で木の実を齧っていた。
トパーズの友とはいえ初対面の者に馴れ馴れしく声を掛けることが出来ない。二匹の会話は聞こえているのだが頭に入らず、自分の木の実を齧る音だけが頭に響いて一層寂しい。



暫くして、つまらなそうにしているグリンにシディアは声を掛けた。
「ねぇ、……トパーズを追いかけてたグラエナをどうやって追い返したの?」
「えっ?」
突然声を掛けられたので、グリンは一瞬硬直した。
すぐに質問の意味を理解したが、返答に困ってしまった。グラエナを追い返せたのは正直運が良かったからだ。
グラエナに『ポニータなんて来てない』としらばっくれ、それを信じ込ませることが出来たからだ。怯えてそんなことしか出来なかったなんて言ったら何て言われるだろう。
グラエナがもっと執念深く、念入りな性格だったならただじゃ済まなかっただろうと思うと今でも背筋が寒くなる。
「・・いや、僕はただ・・・・嘘を付いただけ・・。」
細かい説明など無用で、自分は戦っただとか、そういう世間的に格好良いと思われている返答は出来ない。ただ怯えながら嘘をついて、運任せで危機を回避したなど格好悪い。
自分はヒーローでも何でもないのだから。



「ふぅん・・・。」
シディアはからかったり、笑ったりせず真剣な表情で頷いた。
「そうだったんだぁ。ふ~ん・・・へぇ~・・・・。」
それとは反対に、トパーズは嫌味な笑みで頷いた。
それにカチンときたグリンは、シディアがいるのも忘れて怒鳴る。
「な、何だよ。ど~せ僕は何も出来ない弱者ですよっ!」
グリンは膨れてそっぽ向いた



シディアが話しかけてくれたおかげもあって、グリンは会話に参加できるようになった。
だが楽しい時間はあっという間に過ぎていってしまうもの。気が付くともう日は沈みかけていた。
「あっ!やばっ、もうこんな時間!?」
外が刻々と暗くなっていくことに最初に気が付いたのはトパーズだった。
「じゃあ私は・・・・・そろそろ帰るね。」
シディアはその場で立ち上がり、外に向かって歩き出した。
そして入り口から出たところで一度振り返って笑った。
「また・・・来るから。」
その言葉の余韻が消える前には彼女の姿は見えなくなっていた。




5.
グリンとトパーズがシディアと会った翌日。いつもと同じ朝を迎える。
朝に起きるのはトパーズだけで、グリンは寝坊だ。
結局グリンは朝と呼べる時間内には起きることはなかった。
「ちょっとぉ?もう昼だよ。」
トパーズは半ば呆れ気味に言った。
グリンは割りと早起きのトパーズのおかげで、一匹で暮らしてた時のほぼ半分の量の事をこなすだけで生活が出来るようになった。今まで早起きして朝のご飯を採りに言ったり、住処の中を掃除したりしていたが、トパーズもそれをやってくれるおかげで早起きしなくて済むようになったため、遅く起きるのが日常に成りつつある。
「う~ん・・・・。」
グリンは寝返りを打っただけで起き上がろうとしない。そうなると恒例の怒鳴り声が、
「起きろっつってんでしょうが!!」
と響き、グリンの耳に直撃する。野生で暮らしているためか耳が良いグリンにはまさに“こうかはばつぐん”だった。
「うわぁ!?……君“ハイパーボイス”なんていつの間に…」
“ハイパーボイス”とは超大音量の音、または声を相手の耳に叩きつける技で、その音は時には岩をも砕く。
「そんなもん覚えられる訳無いでしょうが!あたしは変種か!?」
ポニータはそんな技を覚えられないというのが一般論だ。トパーズも例外ではない。だがさっきの凄まじい怒声を思い出すとやはりどこかで習得したのではないかと思ってしまう。
自分でも何を言っているんだと自分を呆れたが、寝ぼけていたせいだろうと勝手に結論に達した。
一体いつからこんなに怠けるようになってしまったのかは分からない。ただ安眠を求めているだけか、――それともトパーズがいるから安心するのか。
一匹で暮らしていたのは好きで暮らしていたわけではない。友達がいない訳ではないが一緒に暮らすほど、まさに兄弟のように親しいという訳ではない(それでもかなり親しいのだが)。
そんな中、あの事件だ。



―――じゃあさ、巻き込んじゃったおわびにここでしばらく住ませてもらうよ。



あの時には『はぁ!?』と思ったものだが、心のどこかでほっとしたのかもしれない。あそこでトパーズと出会わなかったら一生を一匹で暮らしていたかもしれないのだ。
最初の彼女の役目であった『お手伝い』なんていうのも無しにしようと言った事はあったが、彼女は意外と家庭的で最近怠けているグリンを見ると何かせずにはいられないようだ。
すでに木の隅には木の実がどっさりと積んであり、トパーズもまだそれを口にしていないようだった。この時本当に申し訳なく思えてきた。



時刻はもう昼。たいていの者達は活発に行動し始める時だ。
外からはポケモンたちの吠える声が中まで響き、今日も島は平和だろうと思わされた。
自分がすべきことは大体済ませ、あくびをしながら寝床に座り込んだ。「あんたあんだけ寝ててよくあくびがでるわね。」とトパーズが睨んできたのでとりあえず謝っておく。
それからトパーズとの会話が弾んでいるところ、聞いたことのある声が割り込んできた。
「・・おじゃまします。」
シディアの声だった。
「あっ、シディア!」
トパーズは嬉しそうな顔でシディアを迎えた。
シディアはグリンに笑みを投げかけ部屋の隅の方に座り込み、グリンは寝床の上に、トパーズはシディアの傍に座り直した。
今日はグリンが退屈することなく、三匹で大いに盛り上がった。



昨日のように、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。
外はもう暗くなりかけている。いつの間にか昼間聞こえた吠えも聞こえなくなっていた。
「ん・・・じゃあ、私はそろそろ・・。」
「そうだね、もう暗くなってきたしね。」
町や都市などといったところならば、この位の暗さは街灯で照らすことが出来るだろう。しかし何度も言うようにここは『無人島』、全てが自然に覆われている。多少暗くなるだけで、木に囲まれる森の中は真っ暗になりかねない。
シディアは立ち上がった。
すると何かを思い出したように、グリンの方を向いて言った。
「ねぇ、グリン君。もう外は暗いし、ちょっとそこまで一緒に行ってもらえない?」
予想だにしていなかったグリンは、「えっ!?」と驚いた。
「別にいいけど・・・、昨日はこのくらいの暗さなら平然と歩いてなかった?」
シディアは目を逸らさずに即答した。
「昨日ね、誰かに襲われそうになったの。だから・・・」
襲われそうになった・・・・。確かに比較的、おとなしい彼女なら襲われることはありそうだ。トパーズでさえ雄に追い掛け回されるのだ。
そういう理由ならば仕方ない、グリンはシディアを連れて外へ出た。
「じゃああたしも一緒に行くよ。」
トパーズが立ち上がった。
「大丈夫よ、あなたには迷惑掛けたくないし・・・。あっ、でもグリン君には迷惑掛けていいってわけじゃないわよ。ただもっと仲良くなりたいだけだから・・。」
相変わらずシディアは落ち着いた雰囲気で言った。
「あ、そう・・」
トパーズは少し不満げにまたその場に座り込んだ。
もっと仲良くなりたいのはグリンも同じことであった。グリンは嬉しそうにシディアと歩いていった。



6.
「うわっ・・・暗いね。」
森の中は殆ど真っ暗だった。
足元の道も見えず――道など無いのだが――かろうじて周りの木々が見えるほどだった。
「えぇ・・・・迷わないようにしなきゃね。」
シディアは草むらを器用に退けながら歩いていた。
グリンの頬を冷たい風が撫で、続いてシディアの頬を撫でた。
草がガサガサと不吉な音をたて、グリンの足をくすぐる。グリンはすでに寒さに震えていたが、シディアは平然としている。何とも頼りの無い炎タイプだろう。冷たさには多少の耐性はもっているはずなのに・・・。



ふと、シディアが立ち止まった。
「・・・お腹すいた・・」
足元の草を見下ろし、次に自分の腹を覗き込むようにして見ていた。
何か呟いたがそれはグリンの耳には届かなかったが、グリンはすぐ彼女が立ち止まったことに気付き、ゆっくりと歩み寄る。
「どうしたの?」
しかし彼女は何も答えなかったので、もしかしたら気分が悪いのかと思い、グリンはもう一度「どうしたの?」と繰り返した。
「いや、少し・・・・お腹がすいただけ。」
グリンはホッと息をついた。
幸い、この辺は木の実が豊富で、少し目線を上に傾ければ良い具合に熟れた木の実が風に揺られて動いていた。グリンもいつもこの恩威を授かっている。
「ちょっと待ってて、今あの木の実を採るから。」
グリンは木の実を落とそうと、口内に極小規模な炎を溜めた。この瞬間だった。



グリンの世界が一転し、背中が地面に叩きつけられる。
響く衝撃が消える間も無くシディアはグリン上に乗り四肢を押さえつけ、グリンを見下ろした。
「ごめんね。・・・我慢・・出来なかった。」
シディアは申し訳なさそうに、それでも何かを期待しているような目をしてグリンの上から一旦退いた。
「・・・?」
シディアは一端グリンの足元の辺りに腰を下ろした。そして彼女の視線の先には――グリンの股間があった。
まさかね、いやまさかね・・、グリンはどうしても浮かんでしまう妄想を振り払うように頭を振る。
そんなわけない、そんなこと、シディアがするはずがない。
だが知り合ってまだたった二日、まだ顔見知りレベルの相手に対してそう思うには全く根拠がなかった。



そう、彼の妄想は現実のものとなる。
シディアはグリンの股間に顔を近づけ、雄の象徴であるモノを両前足で挟み込むように握った。
「んぁ!?」
この時点では、気持ちが良いというよりもくすぐったい。
シディアはそのまま足を上下に動かし、くすぐったさを気持ち良さに変えた。
「ん・・・ぐっ・・!」
グリンはこの様な行為をされたのは初めてではない。と言っても夢の中の話だが、その夢の中でトパーズにされた時の気持ち良さとそっくりだった。
シディアの足の動きが次第に早くなっていき、我慢出来なくなったのか遂には咥え始めた。
“正当防衛として炎をぶつける覚悟”も一瞬で砕け散る。
「なっ・・・何やってるん・・だ・・・・・あぁ!」
グリンには到底理解出来なかった。
何故シディアがこんなことをするのか・・・。嫌々だというのに何故こんなにも気持ちが良いのだろうか・・・。



シディアの口はグリンのモノをしっかりと咥え、彼女の前足はしっかりとモノの固定している。
彼女の顔の前後運動の速さに比例して増していく快楽は、ついにグリンの限界を突き破った。
「ぐっ・・!あああっぁぁぁ!!」
シディアの口内に白濁色の液体が広がり、彼女の唾液に混ざっていった。
シディアはあまり気分の良さそうな表情は見せず、グリンの液体を地面に吐き出した。
自分からやっておいて嫌そうな顔をするのも変だが、グリンにはそんなことを考えることも出来ないほど消耗していた。
いきなりやられた上に一気に頂に達せられたのだから当然といえば当然だが・・。



シディアの言葉が脳内に反響し続けていた。
『ごめんね。・・我慢・・・出来なかった。』
『我慢出来なかった』とはどういうことなのだろうか。
まだ呼吸も整わないグリンだったが、気になったので上半身を起こしてシディアに問う。
「・・・・なんで・・こんなことを・・・・・・我慢・・出来なかったって・・・?」
シデイアは顔が赤く染まっていてさらに魅力さを増した顔になっており、それが更にグリンの心臓を高鳴らせた。
シディアは段々と萎んでいくグリンのモノを見つめながら口を開いた。
「う~ん・・・・簡単に言えば欲?グリン君・・可愛いから。」
予想外の答えだったのでシディアと同じく、自分の顔が更に赤くなっているのを感じる。
「な、何だって?」
シディアはグリンの頬のそっと前足で触れる。
「こんなに可愛いんだもの・・・・トパーズだけのものにしとくのも勿体無いかな・・・って思ったの。でも我慢して・・・・我慢したけど、結局こうなっちゃった・・。」
どさくさに紛れて『トパーズだけのもの』という、トパーズとグリンの関係を勝手に位置づける発言をされていたが、気持ちに余裕の無かったグリンは気付かなかった。




7.
グリンは悩んだ。
このままシディアから逃げ出すことは容易だ。
しかし、自分のことを可愛いと素直に言ってくれた相手から逃げ出す気にはなれなかった。
でも、だからと言ってこんなことをしていいとは思えない。だが、そう考えると自分の心の悪魔が今度は違う問題を投げかけてきた。中途半端にやられたこの状態、ここで逃げてしまうと二度とこんなことは無いかもしれない。
結局グリンには結論を出すことが出来なかった。



不意に、シディアが低く笑った。
「・・・まだ満足してないのかしら?」
「え・・?」
視線を下ろすと、そこにはまだ不満足気に膨張している自らのモノが目に入る。
一度萎びたモノが復活する――つまりまだ満足していないということを表していると自分でも思った。
「・・もっとやって欲しいみたいね。」
シディアはゆっくり顔の位置を下ろすと、自らの舌でグリンのモノをくすぐった。
「ひゃぁ!」
くすぐるといっても当然笑わせるためのくすぐりではなく、相手に快楽を与え、さらに自らも満足するためにくすぐる。
シディアはこのグリンに対する攻撃が効果覿面だと改めて理解すると、先程と同じようにモノを咥えた。
それをやられているグリンはたまったものではなかった。
「ちょ・・・うぁあ・・!」
抵抗しようとするが、心の中の悪魔がそれを遮り続ける。
まるで見えない枷に嵌められているかのように足が動かなかった。
そんなことはお構いなしにシディアはグリンを刺激し続けた。さらにモノを奥まで咥え、舌で嘗め回しながら顔を前後に動かした。
「うぅ・・・・あぁぁ・・・んぁ!」
女々しく、弱弱しい声を出し続けるグリンにはもう抵抗しようという気持ちは完全に押さえつけられて封印され、何も考えられなくなっていく。
まるで子供が飴を咥えるように全く躊躇なくシディアはモノを咥え続けた。



当然こんなことにいつまでも耐えられる訳ではない。
一度目と同じ衝動に襲われ、一度目と同じように限界に達し、一度目と同じように凄まじい疲労感に襲われた。
ただ限界に達した時に放出される白い液体の量は格段に減っていた。
シディアが口の中でもうそれが放出されているということに一瞬気付かなかったくらいだ。
「あら・・?もう全部出しちゃった?」
シディアはグリンの股間から顔を遠のけ、微量に放出された白い液体を飲み込んだ。
あまり良い味では無かったのか、一度に飲み込みきれなかったそれを地面に吐き出した。
そして口周りを前足で拭い、またもやグリンのモノに目を向けた。



二度目の絶頂の後、グリンの心は彼自身の悪魔の色に染められつつあった。
理性という頑丈な『檻』の中で蠢いていた性に対する本能。グリンの『檻』はかなりの強度を誇り、中の『怪物』を逃がすことはかつて無かった。一度、トパーズに夢の中で襲われた時に揺らいだことはあったが、それだけだった。
今はその『檻』が軋み、弱み、崩壊し始めていた。
この事はシディアは勿論の事、グリン自身も気付いていなかった。



シディアはグリンのモノを突っ突きながら、暫く何かを考え始めていた。
そしてその答えが見つかったのか彼女はニコリと笑ってグリンを見た。
「ねぇ、・・・中途半端っていうのも嫌じゃない?」
何の事を言っているのかグリンには分からない。
「え・・?ど、どういう事?」
シディアはゆっくり立ち上がる。
そしてグリンに跨ると、自分の顔をグリンに近づけた。お互いの興奮した荒い吐息がお互いの顔に掛かり合っているのが感じられるほど近く。
グリンは赤く染められた、何とも言いようのない彼女の妖しげな顔に釘付けになってしまった。
「フフフ・・・・・こういう事。」
この言葉を聞いた瞬間、グリンは下半身、つまり自分のモノに違和感を感じた。
視線を下ろすとシディアがそれを片方の前足で掴み、固定している。
グリンのモノの先端が指していたところには、何とシディアの股間に存在する雌の秘部が近づいていることに気が付いてかなり驚いた。
「ちょっ・・・!何やってんの!!君、正気!?」
出会ってたった二日でこの様な行為をするなど普通は考えられない。
グリンと一緒にシディアは視線を下ろし、自分の秘部がグリンのモノに触れた事を確認すると、また目の前のグリンの顔を見た。
「えぇ・・・至って正気よ・・?」
シディアはまたニッコリ笑った。



シディアはゆっくりと腰を下ろし、グリンのモノは彼女の秘部にゆっくりと入っていく。
入っていく量に比例し、グリンは勿論、シディアにも大きな快楽が襲った。
「あぁ・・・ぁん・・・ぁ・・」
「ぐぅ・・・うぅぁ・・・!」
お互いの甘ったるい喘ぎ声が混ざり、風になびく草の音にかき消されていく。



やがてグリンとシディアの下半身は繋がった。
お互い、荒かった息が益々荒くなっていた。
シディアは体制を上げ、繋がった下半身を前足で指した。本当に自分のモノがシディアの中に入ってしまい、外の空気から隔離されてしまっている事に驚いて声が口から漏れそうになり慌てて口を塞いだ。
大声なんか出したらここでこんなことをやっていることに誰かに気付かれるかもしれない。
「フフ・・・・・完全に・・・入っちゃったわね・・。」
シディアは一瞬苦しそうな表情になったが、すぐに恍惚とした表情に変わった。
それ程気持ちが良いのだろうかは分からないが、グリンも気持ち良いといえば気持ちが良い。
シディアの中はきつくて熱くてヌルヌルしていて、そのどれもが気持ち良かった。
体は思いっきり反応している――が、気持ちは拒絶していた。
彼女はトパーズの友達だ。こんなことをして良い訳がない。
だからと言って体も拒絶する訳ではない。むしろ望んでいる。
気持ちの面もどうだか・・・・。シディアの興奮した息使いや赤く染まった顔、そして何よりも魅力的な体がそれを揺るがす。



シディアは更なる快楽を求めて、腰を前後にくねらせる様にして動かした。
「ん・・・・あぁ」
シディアはさらに気持ち良さそうな表情を浮かべた。
「うぅ・・・・・」
グリンも当然気持ち良さが増していった。だが気持ちの面では苦痛だった。
彼女とこんなことをしては駄目だ―――でももっと気持ち良くなりたい。
矛盾した思いが脳の中を駆け巡っていく。



シディアの動きは次第に速くなっていった。
その時に生じた快楽がグリンの中で強固な槌へと変貌し、ついに彼の『檻』は打ち砕かれた。
理性の破片の下から中に閉じ込められていた『怪物』がするりと抜け出し、ついに飛び出した。




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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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