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正しくない行方

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正しくない行方 


writer:レギュラス

この小説には人×ポケが含まれます。
シリーズになっています。先にこちらをお読みください。


 あれはいつのことだっただろう。私が手持ちのポケモンに常ならぬ感情を抱いていると自覚したのは。
 トレーナーはポケモンを愛するのが常だ。いや、ポケモンに愛情を持たない奴はトレーナー失格だろう。概して、ポケモンと仲の良いトレーナーほど強く、その逆もまた然りだ。
 ポケモンを愛するあまり、彼らを家族同然に扱い、手持ちがなくなったことを悲しんでご飯も喉を通らなくなるトレーナーの話も珍しくはない。
 ポケモンの方も、そんな主の期待に応えようと奮闘する。帰らない主人を待ち続けるヨーテリーの話やら、貧しい主人のために宝石の目を差し出したヤミラミの話もあるくらいだ。
 私も手持ちのポケモンは皆愛しているつもりだ。かけている愛情の深さならそこらのトレーナーには負けない自信はある。
 ただ、その……方向性、というのだろうか。その方向性が、若干、いや、かなり一般のトレーナーとずれていると思うのだ。
 ありていに言えば、私は自分のポケモンに恋愛感情を抱いている。それも、性的な感情まで含めて。本当に、いつからなのだろう。

 初めてマニューラにキスしたのは一ヶ月くらい前のことだったと記憶している。その時点では、もう私は自分の気持ちに気が付いていた。
 ただのポケモンとトレーナーの関係を越えて、もっと、……そう、親密になりたいと思った。さすがの私もしらふでそんなマネをするのは気後れしてしまって、自分の気持ちに素直になるためにお酒の力を借りた。
 初めはそう、抱きしめて、頭を撫でて、ちょっと口づけを交わすだけで良かった。でも、それだけでは満たされなくなった。
 それで、酔った勢いに任せて私はマニューラを押し倒し、好きなだけ彼の首を舐めまわした。驚いたことに、彼はのけぞるほどの大きな反応を示したのだ。どうも彼は首筋が敏感だったらしい。
 そして私は、マニューラが感じてくれているのが嬉しくて。もっと反応が見たいと思ってしまった。
 もうやめられなかった。私は毎晩マニューラを撫で、彼に頬ずりし、思うがまま、欲望のままに振る舞うようになった。
 彼が戸惑っているのは知っていた。私はこんなことはいけないと思いつつも、暴走する気持ちを抑えきれないず、絆を深めるだなんて称して彼との夜伽を続けていた。
 今日でやめよう、明日こそやめようと言いながら、行為はエスカレートしていくばかりだった。そして今夜、私は一線を越えようとしている。超えてはならない、その線を。

 準備はとうに済ませていた。マニューラの食べるごはんに、マタタビを混ぜておいたのだ。彼は首筋を責められて理性が飛びそうになっている時でも、やはりその行為だけは拒む。
 だが、あれを十分な量食べれば、彼の理性は吹き飛ぶはずだ。マタタビを売ってくれた薬屋はそう言っていた。まるで私のことをわかっているとでもいうかのような目で、
「使いすぎはだめだ。一時の快楽はあるが、ポケモンの体を壊しちまう。あんたの飲んでる酒と同じさ。ほれ、飲み過ぎに効く薬も買っていくかい?」
 と黄色い歯を見せて言っていた。嫌な爺だ。
 彼は私の作るご飯を疑いもせずに食べている。それが私の後ろめたさを増幅させる。でももうどうしようもないのだ。私には私のこの気持ちはもうコントロールできないところまで来てしまっている。
 私はグラスのワインを一気に呷る。体が内側から熱くなる。それがお酒によるものなのか、湧き上がる欲望のせいなのかはいまひとつ判然としない。
 彼はとろんとした眼で中空を見つめていた。どうやら効いてきたらしい。もう後戻りなんてできないんだ。引き返す道なんてとうの昔に消えていた。
 ただこの先の行方も知れぬまま進むしかない。たとえそれが正しくない行方だとしても。
「マニューラ」
 やさしく呼びかける。彼の目がこちらを向く。
「おいで」
 いつもは私から彼のもとへ行くけど、今夜は彼の方が応じ、ふらふらとした足取りでこちらへやってきた。そしてそのまま、おなかを見せて寝ころがるではないか。
 今夜はどんな顔を私に見せてくれるのだろう。胸が高鳴るのを感じる。彼にそっと口づけをして、いきなり首筋をひと舐めした。彼の体が跳ねる。いつもより数段激しい反応だ。
 マタタビに性感を高める作用でもあるのだろうか……? いや、そんなことはいい。待ちに待った瞬間が来ているのだ。脚に触れる。軽く撫でさすりながら、そろそろと上へ手を伸ばしていく。
 見れば、マニューラのそれはすでに大きく、硬くなっていた。そっと触れてみると、彼はびくりとしたが、拒絶することはなかった。
 先の方から、はじめは繊細に、それから徐々に大胆にそのものを刺激してみる。指で包みこむと、彼は聞いた事も無いような甘い声を漏らした。
 その声も、表情も、何もかもがいとおしくて、私はマニューラに覆いかぶさった。口づけを交わすと、彼は私の首に腕を回してきた。
 私は右手で彼を刺激しつつ、彼の耳をくわえる。はあはあと苦しげに吐く息が私の顔にかかる。強めに握ってみると、彼はうめき声を漏らした。その声が私をさらに興奮させる。唇を耳から離し、囁く。
「私と…………しない?」
 彼は答えない。ふと思いついて、
「にゃあ」
 鳴き真似をしてみる。すると彼は甘えた声を出して体をすり寄せてきたではないか。
 同族と勘違いしたのか。今、私のことは彼に見えているのだろうか。どうでもいい。私はただ、もう思いを抑えきれないのだ。もはやがちがちになっている彼を、私の秘所へと導く。
「んっ……」
 彼のものが挿しいれられる。繋がっている。夢にまで――淫夢にまで見た情景。彼は私の胸に顔を埋め、普段の様子に似つかわしくもなしに荒々しく腰を突き動かす。
「そう、いい……わ、はぁ、ん……」
 私の蜜壺はもうしとどに濡れていた。彼が動くたびに突き上げられ、私の中がぐちゃぐちゃにかき乱される。にもかかわらずそこには乱雑さはなかった。その動きはどこか細やかで、それでいて卑小でもなかった。
 激しい快感の波に次々と襲われ、私は今にも溺れそうになる。それでも彼は止まらない。
「あっ……もっと、き……て」
彼が反り返る。私はその頭を抱え込む。彼もぎゅっと腕を私に巻きつける。動きはさらに激しさを増して、
「にぃゃああぁっ」
「んうううぅっ」
 彼と私のみだらな声が二重奏を奏で、私たちは同時に果てた。私の中にたっぷりと精を吐き出した彼は失神していた。
 余韻に浸りながら、眠る彼の体を抱えてゆっくりと抜くと、寝床にどろりと粘液が垂れた。こんなに満たされたのは初めてだ。ポケモンバトルに勝った時ですらもこれには及ばないかもしれない。
マニューラを抱きしめ、引き寄せる。彼も満足げな顔をしていた。そんなマニューラの寝顔に見とれながら、私もまた眠りへと落ちて行ったのだった。


 翌朝。
「どうかしたの?」
マニューラは茫然としていた。私の呼びかけにも反応しない。
「ねえ、大丈夫?」
 軽く揺さぶってみる。マニューラは信じられないと言った顔のままふるふると首を振った。
「私たち、昨日……したんだよ」
 マニューラがびくりとする。怯えたような目で私をうかがう。私は彼を強く抱き寄せた。
「ねえマニューラ……私、あなたが好きなの。好き……」
 マニューラは何も言わない。言っても、私には意味が分からない。想いは一方通行だ。
「こんなの変かな。私、おかしいのかな……」
 気づけば私の目からは涙が零れ落ちていた。目の前が涙で見えなくなる。不意に、ざらざらとした痛みとともに、視界が晴れる。
「マニューラ……?」
 マニューラはその舌で、私の涙を舐めとっていた。舌を使ったのは爪で私を傷つけることのないように配慮してくれたのか。それでもやはりマニューラの舌は突起が生えていて少し痛かったけど。
 マニューラの目はもう虚ろではない。しっかりと私の目を見つめていた。
「いいの? こんな私、でも……」
 マニューラはしっかりとうなずく。私の目からまた新たな涙が流れる。
「じゃあ……」

「抱いて。今度はあなた自身の意思で」
 カーテンを閉め切った部屋で感じたそれの名前は、愛というのかもしれない。


 数日後のこと。私はジムを訪れていた。
「マニューラ、“おんがえし”」
 私が「マ」と言った時点で、すでにマニューラは風のように動いていた。そして、言い終わる前に勝負は決していた。
「マニューラ、もう少し手加減してあげなさい。相手のポケモンがかわいそうでしょう」
「ハクリュー! そんな、この私が負けるなんて……信じられない何かの間違いよ……」
 相手のハクリューはジムの壁まで吹っ飛ばされて気絶していた。それはもはや通常の“おんがえし”とは異なる技だった。技が命中した瞬間に轟音が響き、一撃で相手のポケモンを戦闘不能まで追い込む。
 “ねこだまし”や、マニューラの素早さを活かした攻撃はもはや必要なく、“おんがえし”のみで勝負は終わるのであった。
「どうして“れいとうパンチ”を使わなかったの!? ドラゴンに対して効果は抜群なはずでしょう!」
「決め技は“おんがえし”を使うことにしているの。それに――」
 私はマニューラをねぎらいながら言った。
「そちらの方が威力が高いのよ」
「そ、そんな馬鹿なことが、あるはずが!」
「それで? バッジを貰えるかしら?」
「く……渡すわよ」
 青髪の勝気そうな女は口をゆがませながら、
「こんなの絶対おかしいわ。いったいどんな方法を使ったの」
 と言った。
「たいした方法じゃないわ。ただ、愛情を注いだだけよ」

END?






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Last-modified: 2013-10-05 (土) 00:00:00
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