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明日は休日! 何しようかな、そうだ。久しぶりにカレに会いに行こうっと

/明日は休日! 何しようかな、そうだ。久しぶりにカレに会いに行こうっと

てるてる

1 


鉛色の雲の隙間から時折覗かせる薄い光の帯を纏った月は、連日の土砂降りに対して不平の一言も言わず、黙ったまま佇んでいる。
ひとけの無い大通りに雨粒の音が木霊する。十一月の初めといえど、天気が悪い上に雨が降れば真冬にも匹敵する。
そんな日に夜遅くまで自宅に帰らず、残業しようなどというのは自殺行為である。
彼女は窓ガラスを伝う何本もの水の筋から、目の前に広げられた書類に視線を戻した。
ごま粒のように小さい文字が、横一列何段かに分かれて整列している。
眠気に押されて夢の中に突き落とされては何度もはい上がってきているために涙で潤んでしまった目で、それらを読むことは不可能に近かった。
窓の外の雨を含んだ夕闇は、まるで水平連続窓の外側から黒いカーテンを引いたように真っ暗だった。
空の彼方でちらつく稲光が、外の黄色に点滅する信号機に対抗するように光った。
室内の蛍光灯の明かりを貫いた雷の光芒が、窓寄りの机の上で端末に向かって悪戦苦闘している上司を浮き立たせた。
四〇歳を超えた初老の男は、憤然として鼻を鳴らすとかぎ爪の付いた指を乱暴にキーボードのエンターキーに叩き付ける。
一瞬の間をおいてコンピュータの終了音が、雨音と石油ストーブのうなり声に混じって拡散する。
老眼鏡で疲れた目を庇うように瞬いたあと、バシャーモはのろのろと課内を見回した。
「リーフィアくん。ほかの二人はどこへ行った?」
散らかったままの机二つに気がついた課長は、ため息混じりに言った。
問われたリーフィアは、かぶりつくようにして見つめていた書類から顔を上げた。
額の大きな葉っぱがふわりと揺れる。
「課長さんがパソコンとにらめっこしているあいだにトイレに行きましたよ」
あくび混じりに答えた彼女は廊下へ視線を傾けた。
「もうそろそろ戻ってくると思います」
そうか、と独り言と思えるくらいに小さな声でバシャーモは返事を返した。
外の荒れ放題の天気を見るために回転いすに座ったまま背中を向けた課長から、リーフィアは意識を再び書類に向ける。
書類の脇の歯形だらけのボールペンを取ろうと前足を伸ばしたが、うっかりボールペンをはじき飛ばしてしまった。
堅い床に軽い音を立てて落ちたペンを拾おうと身を屈めた彼女は、思いのほか自分が疲れていることに気がついた。
連日連夜の残業で、ここ最近まともに眠れた試しがなかった。
ペンを拾い上げ、机の上に置く。
前肢で額の葉っぱを撫でてみると、散りかけの葉のようにかさかさしていて、水気がなかった。
やっぱり。彼女は思った。相当疲れている、と。
うんざりとした様子で机に突っ伏すリーフィア。
緑がかった大きな耳に先ほどのボールペンが触れ、また床に落ちる。
課長にいやな顔をされずに、かつ嫌みを言わせないためにも時計の針が明日を示す前に、目の前の紙切れを何とかしなくてはならない。
廊下の方から徐々に近づく賑やかな声が、バシャーモとリーフィアの周りに立ちこめる雷雨の轟音をかき消した。
不自然過ぎるほど長いトイレから戻ってきたベイリーフとキノガッサが、楽しげな会話と共に課内へ入った。
鋭く睨み付けるバシャーモのほうを向かないようにしながら、二人は席へ向かった。
キノガッサがキャスター付きのいすを引こうとしたとき、足下にボールペンが落ちているのに気がついた。
「落ちてるよー」
陽気な呼びかけに、リーフィアは顔を上げて何とか笑顔を作った。
「ありがとう」
彼女はリーフィアの机にペンを置くと、向かいの席に腰を下ろしたベイリーフと話の続きを始めた。
ぺちゃくちゃと互いに言葉のマシンガンを撃ち合う二人に対して、課長は眉をひそめたくらいでこれといった行動には出なかった。
つくづくバシャーモは部下に弱いとリーフィアは改めて思った。
おそらくは目元の幾多に刻まれた深いしわの中に、部下を叱って苦い体験をしたことも含まれているのだろう。
彼女は独りごちると、耳障りな笑い声の中で必死に咥えたボールペンを動かした。
徒歩で通勤しているので電車の心配はいらないとしても、刻一刻と濃くなる寒気の渦の中を歩くのは気が引ける。
途中に屋根のある商店街があるが、八時ちょうどにはシャッターで閉じられ通行止めとなってしまう。
気の利いた暖房こそ無いが、雨風を防いでくれる屋根はある。
リーフィアは顔を上げ、壁に掛けられた時計を確認した。
七時二〇分。商店街まで三〇分はかかるとして、残された時間はあまりなかった。
電卓の上を走る指が早くなり、紙を這うボールペンの文字が若干だが走り書きに近くなった。
明日は大切な用事がある。無駄に雨水と冷気を浴びて風邪なんかになりたくはない。
机の上から白紙の書類は姿を消し、代わりに乾ききっていないインクの乗った集計済みの書類が取って代わっていた。
記入漏れがあるかもしれないと思ったが、首を軽く振って不安をはねとばした。
その時はその時だ。休日明けにすればいい。課長の小言を聞くはめになるかもしれないが、風邪を引いて休むよりは会社にとっても良いはずだ。
と無理矢理に解釈すると、彼女はペンを口から放していすから降りた。床の冷たい感触が、足の裏から全身に行き渡る。
おそらく、水に濡れた帰り道はもっと冷たいだろう。思わず身震いをした。
彼女の温もりが残ったままの座面に、出来上がった書類を載せて台車代わりにして課長のほうへ押していく。
再び端末と格闘を始めたバシャーモは、床をはい回るコードに悪戦苦闘するリーフィアに気がつかなかった。
壁の隅のコンセントに繋がれた――若干熱を持った――たこ足配線と、そこからさらに繋がれたたこ足配線の堅い床面で織りなす無秩序な舞は、ここで働く者にとって厄介以外の何ものでもない。
もし油断して座ったままうしろにキャスターを転がそうものなら、たちまちコードにタイヤを捕まれて後頭部をしたたかに打つはめになる。
配線一本を乗り越えるごとに、油の切れかかったいすが迷惑そうな悲鳴を上げる。
甲高い不快な音に気がついたバシャーモが画面から顔を上げた。
リーフィアの差し出す紙の束を受け取った課長は、書類に軽く目を通したあと煙草のヤニで黄色みがかった机にそれを置いた。
「お疲れさん」
感情のこもっていない平板な言葉にリーフィアはお辞儀をしたが、すでに課長はパソコンへ意識を向けていたためそれに気づかなかった。
彼女はため息をつくといすを席まで押して戻ろうときびすを返した。
机にいすを押し込み、パニエ型の小さいバッグを背負う*1
「ねえねえリーフィア。あなた明日の休みどっか行く?」
机の上の書類を束ねながらキノガッサは訪ねた。
あれだけおしゃべりをしていたにもかかわらず、仕事はすべて完了していた。
正直な話、リーフィアはその才能をうらやましく思うことがある。
「うん、まあね」
バッグのずれを、体を揺さぶって修正しながらリーフィアは言った。
「どこ行くの? わたしはそこのベイリーフといっしょに買い物に行くのよ」
向かいの席に座っているベイリーフが二人に混じりけのない好意的な笑顔を向けた。
去年入ったばかりのこの好青年とリーフィアと同期のキノガッサが恋愛関係にあることを本人たちは隠しているつもりみたいだが、バシャーモを含めて誰もが知っていた。
実際逢い引きの現場を目撃した者はいなかったが、日を追うごとに砕けていく二人の会話から難なく予想できた。
ベイリーフから伸びたツルが机の上にあるキノガッサの書類を掴む。
「持っていっておくよ」
はーい、と了承の意を受け取った彼は書類をつかみ上げ、自分の書類といっしょにする。
つくづく手先の器用な人だと感心するリーフィアの目の前では、キノガッサが先ほどの問いに彼女が答えてくれるのを待っている。
待たせては悪いと思ったリーフィアは言いづらそうにうつむいたあと口を開いた。
「彼氏に会いに行くの」
ベイリーフのツルから書類が離れた。
ばらばらと床に舞い落ちる紙の向こうで、バシャーモが辛そうな視線をリーフィアへ向けた。
キノガッサの表情から笑顔が消えた。
「彼氏って……あのグラエナの?」
違っていてくれと祈るように絞り出した彼女の質問にリーフィアは頷いた。
そう、と哀れみを含んだ瞳で呟くようにして言ったキノガッサ。
いけないことを言ってしまったかな? なぜ彼女がショックを受けたのかリーフィアにはわからなかったが、何とかこの場を取り繕うため何か無いかと辺りを探し回る。
ベイリーフの足下に散らばった書類が目に入った。
誰も拾おうとしない紙の絨毯を彼女は一枚一枚拾い上げていく。
「い、いいえリーフィアさん。ぼくが落としたのにあなたの手を煩わすわけにはいきません」
やっとの事で我に返ったベイリーフが、途切れ途切れに言う。
ツルと前肢を使って、無造作に広がった書類を集めていく。
「でも、なんだかわたしのせいでこうなっちゃったみたいだから」
とんでもない、と彼は首を勢いよく左右に振る。
ツルがリーフィアのほうへ伸びてきて、集めた書類をひったくった。
「それよりも、リーフィアさんにはもっと大切なことがあるでしょう」
集めた書類を課長の机に置くと彼は彼女に向き直り、相手を元気づける効果のある、とびっきりの笑顔を向けた。
「明日のデート。がんばってください」
彼が人に好かれる理由がなんとなくわかる気がした。
いつも他人のことを優先してくれるベイリーフの性格は彼氏であるグラエナにそっくりだとリーフィアは思った。
彼女は時計を見上げる。針は三〇分を指していた。ここはベイリーフのお言葉に甘えるべきだろう。
「うんありがとう、そうする」
彼女はお辞儀をすると、後ろ足に下敷きにされていた書類をベイリーフに渡し、廊下へ向かう。
キノガッサはすれ違いざま、何かを言おうとして口を開きかけたが、リーフィアが振り向くと微笑みを浮かべてごまかした。
電気の節約のため、ほとんど灯されていない蛍光灯の下で、どこからか滑り込んできた冷たい風が行き来する。
壁際に一人寂しく佇む萎れかかった観葉植物は、吹きすさぶ冷風の中でゆらゆらと葉を揺らしていた。
霜が降りても不思議ではないくらいに冷え切った廊下に出たリーフィアは、口から漂う白い吐息を目で追いながらベイリーフたちのいる課内を振り返った。
前肢を揃え深々とお辞儀をする。
「ベイリーフにキノガッサ、それに課長さん。お先に失礼します」
暗い廊下をエレベータに向けて歩を進めるリーフィア。
その後ろでは、無言のとばりが下ろされた一室だけが残されていた。
口を一文字に引き結んだ三人に、横やりを入れるようにして暖房装置が咳き込んだ。
振り向いたバシャーモは、燃料切れを意味する赤い点滅を睨み付けた。
もう一度咳き込んだヒーターは、燃焼しきれなかった石油の不快なにおいをまき散らした後、完全に停止した。
胸の悪くなるような臭気は、無言が幅をきかせた室内にすぐ染み渡った。

2 


通勤電車の前照灯の光芒が暗い闇を切り裂いていく。
照らし出された雨は、白く光る尾を残して上から下へと一方通行に降り注ぐ。
高速で移動するパンタグラフに擦られた架線は、白く灼けた火花を生み出す。
七両編成の電車の乗客はまばらで、そのほとんどが眠りこけていたり携帯電話を弄くっていたりと各々の世界に入り込んでいた。
切れかかった常夜灯のみの沿道を金網越しにひとしきり明かりを振りまいた後、轟音と共に通勤電車は次の停車駅へと去っていく。
濡れそぼった線路の振動と、かすかに響く車輪の音のみが残されたが、雨と雷の音にかき消されてしまった。
人気のない屋根つきの駅前商店街を抜けたリーフィアは、立ちこめる冷気に思わず体がこわばった。
赤ん坊に舐められたキャンディーのようにびしょびしょになったアスファルトは、オレンジがかった街灯を浴びてぬらりと輝いている。
「寒いなあ」
思わず口をついて出てしまった正直な気持ちに呼応するかのように、大量の湿気を含んだ風を吹き付けてきた。
彼女は耳を寝かせ、尻尾を股のあいだに挟み込んで熱を逃げにくくする。
自然と逆立ったクリーム色の体毛が冷さをほんの気持ち程度に遮断してくれた。
ひとけのない寒々しい駅前を通り抜けようとしたリーフィアは、不意に大事なことを思い出した。
グラエナの通勤につかう電車の定期は六ヶ月までだった。今週末で有効期限は切れてしまう。
彼女は小走りで通りを横切ると、改札口の隣にある事務室の高い位置にある窓のサッシに手をかけ、つかまり立ちの姿勢になる。
雨だれが流れる窓を、リーフィアは叩いた。
内側から閉められたカーテンが開くと、紺色の駅員帽をかぶったブースターが顔を出した。
後ろには、ストーブで鉄の箸を刺した木の実をあぶっているエレブーがいた。
ぼさぼさで伸びっぱなしの黄色い冬毛の屈強そうな男は、突然の訪問者に見向きもしない。
「どうかなさいましたか」
窓を開けたブースターは凍てつく風になで上げられて身震いした。
炎ポケモンである彼は、このような寒さの中で動けるようには出来ていない。
リーフィアはなるべく早く、用件を済ませることにした。
彼女はあいさつ程度にお辞儀をした。
つられてお辞儀をしたブースターが頭を上げるのを待ってから本題に入った。
「定期券を買いたいのですが」
「定期券ですか? 良いですよ。一ヶ月、二ヶ月、六ヶ月の三つですがどれになさいますか?」
六ヶ月の定期を、と彼女は言うとその体勢のまま背中のバッグに手を伸ばす。
今まで使用してきた定期券を渡す必要があったからだ。
今日出かける際に放り込んだグラエナの定期を手の指で挟んで駅員に渡した。
ブースターは受け取った券をカードリーダで読み込むため、手元の機械に定期券を入れようとした。
その手が不意に止まった。
まじまじと券を見つめたあと、リーフィアの前に差し出した。
「えーと。リーフィアさんですよね」
はい、と彼女が答えると駅員の黒い瞳が怪訝そうに光った。
「お名前の部分がグラエナ様になっているのですが」
ブースターの指さした部分には、たしかにグラエナの名が記入されている。
「すいません。グラエナの……いえ彼の代わりに購入は出来ませんか?」
紺色帽の鉄道員はため息を吐いた。
湿気を含んだ高温の息が、白いもやとなって風に流されていく。
「すいませんが定期券の購入は本人にしてもらわないといけないことになっているのです」
「何とかなりませんか?」
懇願する彼女をよそに、ブースターはすまなさそうに小さく首を振った。
出し抜けに二人の視線が交差した。
寒さで赤く染めた頬のリーフィアが、上目遣いにブースターを見上げる。
事務室の明かりと、外の街灯の薄明かりに浮かぶびしょ濡れの女性。
 若い彼には、それが色気を含んだ官能的な姿に見えた。
鉄道員は顔を伏せた。
「駄目……ですか?」
うつむいたブースターの視線を後追いするリーフィア。
赤みがかった体毛をさらに赤く染めていることを気づかれまいと、駅員帽を深くかぶった。
「わ、わかりました。今回だけですからね」
しどろもどろに口を動かしながら、定期券をカードリーダーに通す。
数秒の読み込み時間を有したあと、電子音と共に定期の更新が完了した。
機械の熱を持った定期券を持ち主に渡す。
ありがとうございます。深々と頭を下げるリーフィア。
それにつられてブースターも頭を下げる。
顔を上げた鉄道員は、驚きのあまりかぶっていた帽子がずれ落ちそうになった。
びしょびしょに濡れたリーフィアの顔が目の前にあったからだ。
栗色の瞳に至近距離から射抜かれたブースターは金縛りというのを初めて体験する羽目になった。
混乱した思考を表すかのように彼の目が泳いだ。呼吸が速くなる。
ゆらゆらと安定しない瞳が、彼女の口元の数枚の紙幣を捉えた。
途端、ブースターは肩から重荷が下りたようにため息をついた。
無駄な期待をさせた彼女に若干の憤りを感じたが、最初から自分の思い違いだということを思い出したブースターは、代金を受け取るため手を伸ばした。
受け取った紙幣を数えた駅員は、おつりである数枚の硬貨を渡す。
リーフィアはもう一度お辞儀をすると、ひとけの無い暗い道路沿いの道を寒さに身を引きつらせながら家路を急いだ。
そんな後ろ姿が見えなくなるまでブースターは見送った。
閉められた窓が、呼吸と共に白く曇る。
それはまるで夜の闇がどっかりと腰を下ろした町並みに、白いとばりがその上を覆ったかのようであった。

3 


普段ならやさしさの感じられるだいだい色のマンションの壁も、この雨と夜の闇が手を組むとたちまち赤土色の苛烈な姿へ変貌する。
コンクリート敷きの四本の片廊下から漏れる黄色みがかった照明の中を、エレベータの油の切れた開閉音が轟いた。
三階で止まったエレベータから降りたリーフィアは、非常なほどに吹き付ける冷たい風に、身体を震わせる。
雨に濡らされた体毛は重く、一歩踏み出すごとに水気を含んだ不快な感触が地肌へ突き刺さる。
首から提げた携帯電話も水浸しで、防水加工を施してあるとはいえ機能するかどうか定かではない。
悪態をついても答えてくれる相手がいないことを知っている彼女は、無言で自分の家のドアに鍵を差し込み、ひねる。
音を立てずに開いたドアを尻尾で閉めると、窓の外から染みこんでくる町明かりの中、背中のバッグを放りだした。
バッグから染み出した水が絨毯を濡らす。
リーフィアは、ちょうど彼女の視線の高さに設置された数個のタッチパネルを順に触れていく。
短い間をおいて、部屋の証明が点り、テレビや暖房が息を吹き返した。
今まで暗いところにいたために、貧弱なはずの蛍光灯の明かりに目がくらんだ。
一方の前肢で光を遮りながら薄目を開けると、彼女のよく知る部屋がそこにあった。
部屋の隅で手つかずのまま埃をかぶったパズルの箱が積み上げられている。
部屋主の飽きっぽい性格をそのまま表したそのパズルの塔の陰では、折り目だらけの雑誌が暖房機の温風に吹かれてぱらぱらとめくれ上がっている。
暖かい風を陣取るようにして腰を下ろしたリーフィアは、ぷるぷると身体を振ってクリーム色の体毛の芯まで染みこんだ水を振り払う。
飛び散った水滴が、ベランダへ通じる窓ガラスを初め様々なところに斑点状の模様をこしらえる。
仕上げにと、折り曲げた後肢で耳の中に入り込んだ水分を掻き出した彼女は、首だけを曲げてテレビの画面に視線を合わせた。
所々に飛んだ水滴が、画面上の光を攪乱して虹色に光っている。
陸地を表す緑色の単純な図形と一緒に描かれた分厚い帯のような白い雲が描かれた天気図と、その横に並んで立っているグランブル。
紫色の毛をぱりっと整えた気象予報士の持つ、先端に矢印の付いた指揮杖のように細い棒は、いくつもの記号と線とで混沌とした天気図の上でせわしなく走り回っていた。
グランブルのしゃべる声を無視して、彼女はテレビの前を横切る。
冷蔵庫の中からラップに包まれた残り物を容器ごと取り出す。
透明な覆いに爪で小さく穴を開けると、その隙間から僅かに漂うにおいを確認する。
腐っていないと確認がとれた煮物を電子レンジに放り込む。
テレビでは相変わらず予報士が地域ごとの天気を読み上げている。
オレンジ色の光に包まれてくるくると回転する容器を見つめるのに気を取られているリーフィアの耳に、その声は届かない。
そんなものを聞かなくても、彼女は天気図の大半を覆っていた雲を見た瞬間に明日の天気をだいたい予想できた。
空腹できりきりと痛み出したお腹をさすりながら、ベランダへ通じる窓の方へ顔を向けた。
結露した窓と柵ごしに見る夜の中に、室内の明かりに照らされた雨粒が輝く直線となって顔を見せている。
昨日から降り続くこの雨は、恐らく明日も降り続いているだろう。
棚の上で佇む写真立てに視線を移す。
雨が降ろうが止もうが、彼に会いに行くには変わりない。
写真を手に取った彼女は小さく微笑んだ。
雲一つ無い空と緑豊かな自然公園を背景に、片手をリーフィアの頭の上に乗せ、心の底から笑顔を浮かべたグラエナと、いたずら好きな彼にその手で頭の体毛をめちゃくちゃにかき乱されているリーフィアが写っていた。
白い歯を見せて笑っている二人の表情は、幸せに対する純粋な歓喜の気持ちが現れている。
電子レンジは止まる気配を見せない。
暖房機たけでは、防ぎきれないすきま風から身を守るため、彼女は写真立てを咥えたまま万年布団と化した寝床に潜り込んだ。
枕元に首から提げた携帯電話を置く。
毛布を上からかぶり、幸せな一時を包み込んだ写真を抱き寄せる。
冷え切った手足の先がじんわりと温かくなっていく。
電子レンジの小さな窓が湯気で真っ白になった。
停止したレンジは、皿に載った残り物の煮物が十二分に加熱されたことを告げる甲高い電子ブザーの鋭い音を発した。
あらゆるポケモンの耳へ入りやすく、不快でもあるその叫びは部屋中に響いた。
しかし、毛布くるまった彼女にその音は届かなかった。
溜まりに溜まった仕事の疲れと、心地よい温もりの中で起きていようなんてことのほうが難しかったであろう。
静かな寝息をたてて眠るリーフィア。
電子レンジは《温まりました》の表示を残して、それっきり口を閉ざしてしまった。
はたから見ればそれはまるで電化製品の気遣いのようにも見えただろう。
実際はただ単に、内蔵時計が一定の時間を過ぎたことを感知しただけのことであった。
秋雨とも氷雨ともとれるどしゃぶりの大雨。
赤土色と化したマンションを雨粒が叩き付ける音をどこまでも轟かせる夜の闇の中で、ぽっかりと明かりの点った一室があった。
寝返り一つうたないくらいの深い眠りは、何があろうと朝までは起きないということを物語っているようでもあった。

4 


目覚まし代わりに使用している携帯電話のけたたましいアラームの音に起こされたリーフィア。
寝ぼけまなこで起き上がった彼女は、ふらふらとはっきりしない頭を軽く叩く。
携帯電話を手に取り、忌々しいアラーム音を止めると丸テーブルの上にそれを放り出し、大きなあくびをしながら伸びをする。
付けっぱなしのテレビと蛍光灯の光が、涙ぐんだ目を射抜く。
雨は上がったものの、手でつかめるのではないかと思われるほど低い位置にある厚い雲によって日光を遮られ、窓の外は不気味なほど薄暗い。
大量の湿気を含んだ空気が、同じように湿気を含んだ風に弄ばれて、気味の悪い風切り音を響かせている。
安全装置が働いて電源が落ちてしまった暖房機を恨めしく思いながら、毛布をかぶったまま洗面所へ向かう。
毛布に引っかかって軽い音を立てて落ちた写真立てをていねいに元の棚の上に戻す。
彼女は洗面所の蛇口をひねる。
凍てつくような水がお湯に変わるまで待ってから、顔に熱い湯を掛ける。
ある程度さっぱりしたリーフィアは、ぷるぷると首を振って水を飛ばし、前肢に残った水分を舐め取る。
クリーム色のかいなとそこから先端までの茶色のコントラストがはっきりしてきた。
鏡ごしに自分の姿を見たリーフィアは顔をしかめた。
毛づくろいの必要がある場所はほぼ全身だった。
松かさのように逆立った体毛は、さながらサーカスの道化師のようであった。
きのう湿った身体を乾かさずに寝てしまったことを悔やんだ。
彼女が身をよじり、一番酷いと思われる腰の部分を舌で平しているとテーブルの上の携帯電話が大声を上げ始めた。
振動機能で徐々にテーブルの隅まで滑っていく。
危うく落下しかけた電話を受け止めたリーフィアは通話ボタンを押す。
「はい――」
寝起きのため、その声は若干かすれていた。
彼女は通話口を出来るだけ顔から離して咳払いをすると、続きを言った。
「もしもし」
「リーフィアか?」
回線を通して聞こえてきたくぐもった男の声に、リーフィアは口をついて出そうになった悪態を堪えるのに苦労した。
「お父さん。一体何? こんな朝早くから」
 お父さんと呼ばれたブラッキーは、懐かしい響きに口元をつり上げた。
一人娘が上京してから、そうそう耳にする機会はない。
喜びのあまり思わずリーフィアに笑いかけたくなったが、父親としてそんな甘いまねを許されない。
彼は肺の中の空気を入れ換え、無理矢理に語気を荒げた。
「そんなことはどうでも良い。それよりも何ださっきの声は? 寝ぼけてたのか? 休みだからってだらしのない」
 電話ごしの怒鳴り声に、リーフィアは不愉快そうに耳を寝かせた。
彼女は父親のこういうところが嫌いだった。
とにかく厳しく、とにかく甘やかすながこの父の父親としての方針だった。
まるで父親になるための説明書を自分で作って、丸々暗記してしまったかのように抜かりがなかった。
たまには一人娘を純粋に心配してくれても良いのに。なんでああ怒鳴り声しか出せないのだろう。
「そんなだから、おまえはいつまでたっても――」
「わかった、わかったから。で、何のようなの? まさか怒るためだけにかけてきたんじゃないでしょ」
リーフィアは携帯電話を卓上の置き直すと、ハンズフリーの機能を入れた。
これでとりあえず毛づくろいができる。
「ああそうだった。実はな、話があるんだ」
腹の毛づくろいをしながら、スピーカーで拡大された父親の妙に改まった様子にリーフィアは相づちを打つ。
やなぎに風と受け流して成り行きに身を任せていれば、これ以上怒鳴られることもないだろう。
「一度こっちへ戻ってこないか。お見合いの話があるんだ」
向こう側からつぶやくようにして言ったブラッキーの言葉に、一驚して顔を上げた。
その拍子に腹の体毛を束で噛みちぎってしまったが、痛みよりも先に父への怒りがこみ上げてきた。
「お父さん。一体それはどういうことなの」
父親そっくりに語気を荒げながら彼女は携帯電話にかぶりつくようにして言った。
「どういうことって、こういうことさ。役場の集まりで村医者のゴウカザルがおまえの写真見てたいそう気に入ったらしくてな、息子に会わせたいそうだ」
「ゴウカザルの息子ってたしかあのヒコザル?」
口の中に残った毛をつまみ出しながらリーフィアは記憶を頼りにヒコザルの名を出した。
「そうそのヒコザルだ。もっとも今じゃ進化してモウカザルだがな。それに父親の跡を継いで医者になったぞ」
彼女の父親は続けた。
電話越しでなければ、ブラッキーは娘の苦々しく歪んだ表情を見ることになっただろう。
「食事だけでも良いんだ。会うだけでも良い。とにかく一度会ってくれ、紹介してしまったんだ」
勝手なことをする父親に、リーフィアは我慢ならなかった。
部屋の隅の雑誌を掴んで丸めると、携帯電話の通話口に叩き付けた。
ぎゃっ、と向こう側で耳をつんざくような音にブラッキーが悲鳴を上げた。
ヒコザルだって? 冗談じゃない。外見は変わっても中身はヒコザルのままだろう。
父親が医者だということをいつも鼻にかけていたあの男が、とうとう本物の医者になったのだ。
会ったら何を言われるか目に見えている。
父親の自分勝手なところも嫌いだったが、ヒコザルの嫌味な性格はもっと嫌いだった。
雑誌を放り出し、尻尾をいらいらと振る。
水気の抜けた葉っぱが絨毯で擦れる音がした。
「なんでそんな勝手なことをするの? わたし絶対行かないからね」
「おまえ、父親の言うことが聞けないのか。いつまでたっても嫁に行けないおまえが可哀想だから言ってやっているんだぞ」
スピーカーの能力を上回るブラッキーの大声は、わずかながら音割れしていた。
「わたしはまだ働きたいの。それに心配してくれなくてもわたしには相手がいるわ」
リーフィアは言った。
電話の向こうが静かになった。
一時の間のあと、ブラッキーのいつになく老け込んだ声が届いた。
「まさか、そいつはグラエナじゃないだろうな?」
父親の問いに対して、彼女は無言で返事をする。
娘の沈黙を肯定の意と受け取ったブラッキーは、わざとらしいほど大きなため息を吐いた。
「なぜグラエナなんだ。あいつは……」
それ以上言わせるつもりはなかった。
じゃあね、とだけ言って電話を切る。
どうも父はグラエナのことをかんばしく思っていないようだ。
嘆きを含んだため息が、自然と漏れ出た。
今までにも何度か見合い話を持ち込んできたことがあったが、そのどれもが父が勝手に手配したものだった。
一度お正月休みに、顔が見たいと言われて帰省して、全く面識のない男と会わされたこともあった。
弁護士、実業家、警察関係者ときて、お次は医者。うんざりだ。
家柄にこだわる父親は、娘の願いをろくに聞き入れようとしない。
一企業の経営責任者である父にとって、娘は道具としか見ていないのかもしれないと諦めかけたこともあった。
リーフィアにとって見知らぬ男といきなり突き合わせれるのは苦痛でしかない。
ブラッキーにしてみれば、娘のためなのかもしれないが彼女にしてみけば無理強いでしかない。
誰がなんと言おうと、わたしはグラエナを愛している。
携帯の電子メールの受信音に、突如現実に引き戻された彼女は、父親からでないことを祈りながら内容に目を通した。
何の変哲もない、ただの電話会社からの通知だった。
最後まで目を通す必要がないと判断した彼女は、さっさとそれを消去した。
これで受信メール一覧に残ったのは、一通だけになった。
それは最後にグラエナから送られてきたものだった。
《ちゃんと来てくれよ。待ってるぜ》
たった一言だけの電子メール。
携帯を卓上に置いたリーフィアは、唐突に強い空腹を覚えた。
そういえば、昨日の晩は何も食べていなかった。
何か無いかと冷蔵庫を開けようとした彼女の頭を、電子レンジの中の煮物がよぎった。
入れっぱなしだったことに一抹の不安を抱きながらも、《温まりました》の表示を睨め付ける。
小さくふたを開け、隙間に鼻を近づけた。
鼻孔を貫かんとする強烈な腐敗臭がどっと吹き出した。
そこに元の食べ物の影は微塵もなかった。
微生物にとってこの適度な湿度と温度はさぞ快適なことだろう。
肺の中まで腐りそうな臭気に咳き込み後ずさる。
この瞬間に、まともに食べられるものはないとわかった。
だが幸運なことに、この異臭のおかげで食欲がほとんどなくなってくれた。
どんよりとした風が、窓を叩く音が静かに響いた。

5 


湿気を含んで堅くなった菓子パンを口に詰め込み、保湿剤を額や尻尾の葉面にすり込んだ。
バッグを背負い込み、電気類を全て切ったリーフィアは忘れ物はないかと室内を見回したあと、部屋をあとにした。
雲で濁った空を、淀んだ空気がかき混ぜている。
雨は降っていないものの、いつ降りだしてもおかしくないような天気だった。
戸口の鍵をかけた彼女は、まっすぐにエレベータへ向かった。
エレベータの扉が閉まると、肌寒い風が遮断され、油のにおいに覆われた密室が完成した。
三階から一階へ下りるあいだ、他の住民と会うことは一切無かった。
このマンションの朝の八時はいつもこうだ。
家族との約束ごとや仕事のある者はもっと早くから出かけているし、仕事のない者はない者でまだ夢の中だ。
お世辞にもきれいとは言えないエントランスを抜けると、管理人が歩道の落ち葉を掃いているのが見えた。
ラジオから伸びたイヤホンを耳にはめ、鼻歌をうたっているバリヤード。
ちらりと顔を上げ、彼女のほうを見たがまたすぐに自身の作業に入った。
落ち葉は、そんな彼をまるであざ笑うかのように次から次へと並木から茶色くくすんだ葉を落としている。
水を含んだ葉は、路面の上に張り付いているらしく、半ば削るようにして竹ほうきを操っている。
リーフィアが背中越しにあいさつをすると、あたかも今気づいたように慌てながら、耳からイヤホンを抜き取る。
「あーリーフィアさん。おはようございます」
大げさとも言える身振りで挨拶する。
「いやー今日も冷えますねえ」
雪だまりのように降り積もった冷たい空気の中、親しみがこもった男の声が伝っていく。
雨を吸ってふやけ、重くなった大きな葉っぱが、枝から手を離して二人のあいだに落ちる。
目で追ったリーフィアは、裸同然になった並木が目に入った。
つい最近まで、黄や赤や紫に色づいた美しい容姿がそこにあったのに、今見ている姿はとても同じ木には見えなかった。
落葉樹の面白いところは、絵の少ない紙芝居のように、一瞬一瞬に姿が替わっていくところだ。
春夏秋冬、どこにも同じ姿はない。
「ちょっと前までは紅葉してきれいだったのに」
思わず口から出てきた独り言と大差ないつぶやき声に、バリヤードは嘲笑に似た笑いを返した。
「落ちてしまえばただのごみですよ」
そう言って、足下の落ち葉の絨毯を足で踏みならした。
「どこか行かれるんですか」
管理人の視線がバッグを捉えたことに気づいたリーフィアは、グラエナに会いに行くことを伝えた。
バリヤードはつまらなさそうに相づちを打つ。
「まあがんばってください」
興味なさげなその態度に苛立ちを感じた彼女は、短めな別辞を送り、管理人に背中を向けて歩を進めた。
一人ぽつんと佇んでいたバリヤードは目の前に横たわる落ち葉の群れを引きはがしにかかった。
背中越しにその音を聞いたリーフィアは足を速め、さっさと通りの十字路を曲がった。

6 


数台の車が路面に残ったタイヤの跡を追うようにして通りを駆け抜ける。
排気ガスの青白いもやは、しばらくはその場に気だるげに漂っていたが、際限なくやってくる車のバンパーにかき消され、辺りに霧散した。
朝がまだ早いこともあってか、エンジンの駆動音は通り沿いの無機質な建物に壁によく反響する。
空気全体に染み渡る薄もやに、厚い雲の隙間から覗く白く灼けた太陽が幻想的な光芒が無数の針のように映り、目覚めの時を伝えに町に突き刺さる。
一方通行を示す道路標識が立ち並ぶ住宅街を抜けた先にある駅前の白い高層マンション。
背の低い近隣の住宅からにょっきりと顔を出し、日の光を一身にうけるその姿は、さながら上座に座って部下を見下ろす巨頭のようであった。
大理石に覆われたエントランスホールに汚れは一片もなく、リーフィアは自分の住んでいるマンションとの差を感じた。
天井の照明が床で反射し、まるで四方から明かりを照らされているようだ。
背の高いエレベータの床面は、エントランスホール同様ぴかぴかに磨き上げられていた。
そこに天井近くにあるディスプレイを見上げたリーフィアの姿がおぼろげに映る。
ディスプレイの回数表示が一二を指した。
甲高いベルのような音ともに扉が横へ退いた。
おこうのやさしい香りと暖かい空気が、エレベータ内の冷たい外気を押しやった。
彼女は鉄籠から出ると、真っ直ぐに伸びる廊下を進んだ。
赤い色の絨毯が、しもやけを起こかけた手足を優しく包み込む。
最後にここに来たのはいつだっただろうか。
そんなことを考えながら二つ目の角を曲がる。
グラエナの表札のかかった扉はすごそこにあった。
彼女はバッグを床に下ろし、部屋の合い鍵を取り出した。
鍵穴にそれを差し込み、ぐいと横にひねると小気味良い音が誰もいない廊下に木霊する。
うっすらほこりの乗ったドアノブに手をかける。
高級ホテルのようなこのマンションに似つかわしくない、油の切れた鋭い悲鳴を立てて扉が開く。
カーテンが引かれ、電気すら点っていない真っ暗な部屋から、つんとしたカビのにおいが冷たい空気に乗ってリーフィアの足下を通り抜けた。
彼女はそれに怖じることなく足を踏み入れ、壁際のタッチパネルを手探りで探し当てた。
長いこと働くのを忘れていた蛍光灯が、慌てるように点滅したあと、室内を照らした。
分厚いほこりの層で白っぽくなった家具と床の絨毯が浮かび上がる。
リーフィアは絨毯に小さな足跡を作りながら部屋を横切る。
カーテンの端に噛み付き、さっと横へ引く。
黒っぽい苔がベランダの格子を覆っているのが見えた。
彼女はため息をつくと、最近人が出入りした形跡のない室内を見回した。
もっと早くきていれば良かったと、惨状を前に嘆いた。
だが、いつまでもこうしてはいられない。
自分を励ますかのように頷いた彼女は、押入れの奥で眠っていた掃除機を引っ張り出した。
コンセントを繋ぐと、轟音を立てて絨毯を元の色に戻していくノズルを口にくわえる。
もともと彼女のような骨格のポケモンのために作られていないそれを操るのはたいへん骨の折れる作業だった。
掃除機が終われば、次は窓ふきと家具ふきだ。
リーフィア自身掃除はだいの苦手だったが、グラエナのためにもと考えることでなんとか作業を続けることがてきた。
思い出のつまったここがほこりに飲み込まれるなんて耐えられない。
グラエナに会う前に、なんとかこの部屋だけはきれいにしたかった。

7 


悲鳴に似た駆動音を響かせて、乗客を乗せたタクシーが緩い坂を登っていた。
気分屋な蛇が通った跡のような曲がりくねった細い道を通る車はそのタクシーだけだった。
黒く塗りつぶされた車体に夕日の凛とした赤光がよく映えた。
何度か舗装された道路から外れかけながら、山を登っていく車が開けた場所に出た。
さび付いた金網に仕切られたそこに、人の気配はない。
コンクリートを突き破って草が顔を覗かせている駐車場に侵入したタクシーは、上へ行くための緩やかな坂の手前で止まった。
エンジンがアイドリングする音が、辺りに木霊する。
リーフィアは礼を言いながら料金を払うと車から降りた。
運転手は何も言わず、ただ渡された金額が正しいかどうか確かめ、行ってしまった。
帰りはバスをつかうしかなくなった。
夕焼けに染まった空を眩しそうに一瞥する彼女の身体は夕日で赤みを帯び、まるで紅葉した葉っぱのように鮮やかで、どこか哀愁の色をしていた。
部屋の掃除に思いの外手間取ってしまい、今の時間は四時を回っていた。
冬の色を強めた空は、すぐに暗くなってしまう。


バシャーモが立ち上がり、連続窓の一枚を開ける。
石油の胸の悪くなるようなにおいが暖かい空気と共に外へ吸い出され、代わりに冷たい湿気を含んだ冷気が飛び込んできた。
課長は背中越しに後ろでたたずむ二人に話しかけた。
「きみらも早く帰った方が良い」
吹きすさぶ凍てつく風がバシャーモの机の上に積まれた書類を数枚払い落とした。
ベイリーフは無言でそれを拾い上げる。
「リーフィアさん、行かれるんでしょうか。あそこに」
彼の問いかけにバシャーモは頷いた。
「あしたはちょうど命日だからな」
振り返り、ツルの先の書類を手に取る。
ツルを引っ込めたベイリーフは小さくかぶりを振りながらうつむいた。
「なぜ会いに行く必要があるのでしょうか。グラエナさんはもう……」
「約束を守るためよ」
出し抜けにキノガッサが割って入った。
「約束?」
男二人は同時に聞き返した。
彼女は黙ったまま窓辺まで歩いた。
下を見ると、雨の中、リーフィアがたった一人で歩いているのが見えた。
キノガッサは彼女から目をそらすと、課長とベイリーフに再び視線を向けた。
「グラエナと交わした最後の約束よ」
それきり押し黙ってしまったキノガッサ。
それにならうようにして、バシャーモとベイリーフも雨音の中に言葉を発しなかった。


乾ききっていない坂道を、淡々と歩くリーフィア。
山頂に近いここでは、底冷えする空気が幅を利かせていた。
口から白い吐息を漏らしながら、彼女は空を見上げた。
まばらな雲が、日の光を浴びてオレンジ色の陰影を付けている。
ずっと雨だという彼女の推測は外れてしまったが、こういう外れはありがたかった。
はあ、と大きくため息を吐いた。
大きな白いもやは、だんだんと薄くなりながら空へ消えた。
グラエナは、この空を見てどう思っているのだろうか。


白く曇った窓ガラスから視線を外し、木の実とストーブを見つめているエレブーを振り返った。
「彼女ですか。あなたの言っていた……」
ブースターの言葉に、エレブーは頷くと木の実をストーブの上に載せた。
水分が蒸発する音と共に、甘いにおいが狭い詰め所を覆った。
 ここにきたとき、ブースターが一番最初に聞かされたのは詳しい仕事の内容ではなく、リーフィアについてだった。
三年前に起こった山間部での電車脱線事故で最愛の人を亡くした女性が、使う必要のない定期券を買いに来るというものだった。
怪談じみたその話を聞いたときは気持ち悪いと感じたが、その本人を見た限り、そんなことはなかった。
彼氏への思いを忘れないため、残り香がいつまでもかき消されないように。
先ほど見た切ない後ろ姿には彼氏を思う気持ちもあったのだろう。
「なんだかかわいそうですね」
思わず漏らしたブースターのつぶやきを、エレブーは見逃さなかった。
「おまえさんが同情してやる義理はないさ」
ほどよく焦げ目のついた木の実をほおばる鉄道員は、いつもの感情の感じられない声色で言った。
「おまえはおまえ、あの人はあの人だ。赤の他人に同情したって何も良いことないぞ」
たしかに、ブースターはうつむいた。エレブーの言っていることは正しい。
自分は鉄道員であり、彼女との接点は全くと言って良いほどにない。
別々の人生を歩んでいる以上、関わることは得策ではない。
しかし、ブースターはどうしても彼女と会いたかった。
顔を合わせたときのあの雷に打たれたような感覚をもう一度味わいたかった。
「それはそうですけど、もしぼくとあのかたとが赤の他人でなくなったとしたら……」
言いかけたブースターをエレブーが睨み付けた。
蛇に睨まれた蛙よろしく押し黙った若い鉄道員を満足げに目を細めた。
「好きなのか」
出し抜けに飛び込んできた問いに、ブースターはどうして良いかわからず、ただ赤らめた顔を見られまいと駅員帽で顔を隠した。
エレブーはそんな様子を楽しみながら続けた。
「実はな、知り合いと賭けをしているんだ。あのリーフィアに取り憑いた亡霊をおまえに追い払えるかどうかでな」
帽子を下にずらし、目だけ出しているブースターにずんぐりした指を突きつける。
「おれを失望させるなよ」


磨き上げられた白っぽい花崗岩の石柱が立ち並ぶ。
冷たい風があいだを抜けると、風切り音の甲高い歌声が、永遠の眠りについた観客たちに染み渡る。
目覚めのときを知らせる朝日も、眠りのときを伝える夕日も彼らの前では意味を持たない。


「もしもし、もしもし……」
白い毛の混じったブラッキーが電話に向かって叫んだ。
繋がらないことがわかった彼は、乱暴に受話器をフックに叩き付けた。
悪態をつき、不安げに手で顔を覆うブラッキー。
もしリーフィアが見ていたら、お父さんらしくないと笑ったであろう。
娘に涙を見せるような愚かなまねは、父親には許されないという態度をいつもとっていたからだ。
顔を上げ、すがるような視線をエーフィの遺影に向ける。
長年連れ添った妻は、何年も前に旅立った。
最後まで娘のことを心配していた。
晩年は、リーフィアに対する考え方の相違からくる不仲でほとんど口を利いていなかった。
彼女はあくまで結婚する相手は自由であるべきだと言い張り、ブラッキーは将来のことを考えて親が決めるべきだの一点張りだった。
だが、今の彼にとって正しい方は明らかだった。
「たのむ、教えてくれ。わたしは、わたしはどうすれば良いんだ」
答えの帰ってこない問いを、エーフィに投げかける。
「間違っていたのはわたしだった。わたしがあの子に未来を選ぶ自由をやらなかったから、こんな……それでこんな」
何度目かもわからない懺悔の言葉を唱えるようにささやく。
写真の向こうで思慮深い眼差しをしたエーフィは、無言でそれを聞いていた。
ふすまを叩く音に彼は振り返った。
入るよう促すと、思いやりに溢れた顔つきのモウカザルが深々と頭をさげて、尻尾の炎に気をつけながらブラッキーの隣に座った。
最初会ったときブラッキーは心底驚いたことを今でも覚えている。
精神疾患に関する医療に長けていると耳にした彼が初めて訪ねたとき、かつての傲慢でうぬぼれ屋だった面影は消え去り、ただ医療に従事し、人を愛する術を知ったモウカザルの確固たる意志に燃えた瞳を忘れることはないだろう。
リーフィアについて話したときのモウカザルの悲しそうな表情は、医師としての枠を超え、一人の人間としての悲しみを感じていることが見て取れた。
医師になるための厳しい道のりが、この男を根本から変えてしまったのだ。
「どうでしたか」
穏やかでいて毅然とした眼差しをそのままに、古い友人に向けるようなやさしい口調だった。
ブラッキーは考え込むようにその目を真っ向から見つめ、やがて首を振った。
「そうですか」
必要以上の詮索はせず、医者はブラッキーが自分から言い出すのを待つかのように静かに深呼吸した。
互いに沈黙が室内で交差する。
「あの」
ブラッキーはようやく口を開いた。
「本当にあれで良かったのだろうか。やはり正直に診察するためと言った方があの子は聞き入れてくれたのでは」
モウカザルは小さく首を振った。
「いけません。お嬢さんにとって一番つらいのはあなたに無理強いされることではなく、あなたが――父親がいきなり態度を変えることです」
彼は一時の間を置いて、ブラッキーが飲み込むのを待った。
「心は普通の怪我と違って治療に時間が必要です。何年かかるやもしれませんが、あなたに出来ることは彼女を見守ることです」
「しかしわたしのせいなのでは。わたしの無理強いがあの子を苦しめた結果ではないのか。リーフィアが――」
自らを振り返っての後悔の涙が頬の白毛混じりの毛皮を伝い、畳に落ちる。
「――三年前に死んだ男を追い続けるのは」
うつむき、肩を震わせるブラッキーの背中に、モウカザルはそっとふれる。
 あなたのせいではない。
きっぱりとそう言いたがたっが、どの言葉も不適切に思われた。
「あなたは父親として正しいことを、お嬢さんはお嬢さんとして正しいことをしたまでです」
医師は一字一句をはっきりと強調する。
エーフィの遺影をちらと見た。
「過去のことを悔やんでもしかたありません。問題はこれからあなたとわたし、それとリーフィアさんがなにをするかにかかっているのです」


目をつぶり、祈るように耳を寝かせた彼女の前にはあるのは、最愛のひとが眠る墓。
「とうとう同い年になっちゃったね」
閉じた目を開け、まじまじと視界に入った花崗岩の塔を見つめる。
灰色の石の肌に前足を触れる。
墓石の感触は、死という避けることの出来ない不可逆的なものをなんとか伝えようとするかのように、冷たく、少しの温かみも感じられなかった。
リーフィアは手を離し、グラエナに向かって笑いかけた。
「ごめんね。仕事が忙しくてほとんど会いに来られなくて、寂しかった?」
沈黙が辺りを覆う。
それを彼からの回答だと思うことにした彼女は構わず続ける。
「約束通り来たよ」
彼女にとって、約束とはグラエナが最後によこしたメールのことだった。
《ちゃんと来てくれよ。待ってるぜ》


リーフィアの姿が見えなくなったことを確認したバリヤードは、イヤホンを再び耳に付けた。
彼にとって、死んだ人に会いに行く行為は哀れみを買うための行為にしか見えなかった。
自分はかわいそうだ。
それを周りに見せつけていい気になっている。しかも家賃を少しばかり滞納している。
聞くところによると、彼女はこのマンションともう一つのマンションの家賃を払っているのだとか。
くだらん。男は竹ぼうきを乱暴に歩道へ押し付けた。
そこまでして自分を哀れに見せたいのだろうか。
仮に本人はそうしている気ではなくても、世間ではそうは思ってくれない。
もし、これ以上家賃を滞納するようならば、すぐにでも出て行ってもらうつもりだった。
そうすれば、空いた部屋をもっと金をちゃんと払ってくれるやつに貸せる。
不景気な今、駅から遠いこの物件を守るためには、必要ないものはとことん切り捨てる必要がある。


ふと、花立てに萎れた花が入っているのをリーフィアは見つけた。
お盆にきたときに置いていったサギソウの花だ。
このままにしておくわけにもいかない。
彼女がそれに手をふれたとき、申し訳程度にくっついていた花びらが、風に舞った。
もとは白かったであろうそれは、夕焼けの中へと不格好に乱れ飛んだ。
リーフィアは思った。
あのまま遠くにいるグラエナまで届いてくれたらなと。
何もかも捨ててあの花びらのように彼のもとまで行けたらどんなに良いだろうか。
だが、花びらはいつまでも飛ぶことは出来ない。
風がなくなり、押してもらえる存在のなくなったサギソウは、ゆっくりと水たまりへ落ちた。
染みこんでいく水分は、一瞬だけもとのみずみずしい白い姿を思い出させるように揺らいだあと、もとの枯れた花びらに戻った。
リーフィアは帰り際、グラエナのほうを振り返った。
別れを惜しむその姿に、冷たい冬の風は良く映えた。
「じゃあね」

・終わり


レントラーとグレイシアのデータが消えてしまった怒りに身を任せて書きだしたのがこれです。

勢いで――とか言った割には全然進んでねーじゃねーか。
と心の声がしたので、一気に書き上げました。
なんか妙なところがありますが、おいおい修正していきます。

それにしても終わり方が微妙だなーと、


最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 「彼女は時計を見上げる。針は三〇分を指していた。ここはベイリーフのお言葉に甘えるべきだろう。」

    の「べき」が「ぺき」になっていましたよ~^^;
    ――赤いツバメ ? 2009-12-11 (金) 16:55:06
  • >カゲフミさん
    切ない物語も書いてみたいなと思ったのがこれを書きだした理由です。
    今回はあくまで「皆さんにお任せ」という最後にしたかったので、登場人物を増したりなど出来るだけ工夫をしてみたつもりです。
    まあその工夫の効果はさておいて、わたしのような新米の作品を読んでいただき、どう感謝して良いかわかりません。
    (皆さんにお任せ=自信がない)

    >名無しさん
    感動していただけるなんて、ありがたい限りです。
    「悲しみの余韻が美しいから。彼女の~」あなた様の言うとおりです、この小説に続編は必要ないかもしれません。
    感じられた余韻は人それぞれ、それを続編という形で画一化してしまうのは無用なことですもんね。

    >赤いツバメさん
    いえいえこちらこそ、こんな駄文に目を通していただけただなんて、うれしくて涙が止まりません。
    それと訂正部分のご報告ありがとうこざいます。修正しておきました。

    >ライさん
    素晴らしい文章力だなんて、わたしなんてまだまだです。課題が山積みです。
    続きについて、ご期待を裏切るようで恐縮ですが、
    やはり主人公たちには私的な時間を与えるべきだと思っていることと、
    前述したとおり、画一化してしまいたくないので続編は出さないつもりです。
    ……というのは建前で、実はちゃんと書ききる自信がないだけです。はい……。

    皆さんコメントありがとうこざいました。これからも向上を目指して、がんばります。
    ――てるてる 2009-12-12 (土) 01:53:32
  • 文章力と言い、ストーリーと言い、
    どれも素晴らしいです!
    これからも頑張ってください!
    ――lighter ? 2009-12-19 (土) 01:02:01
  • >lighterさん
    ありがとうごさいます。
    そう言っていただけるととてもうれしいです。
    これからもお互いがんばりましょう。
    ――てるてる 2009-12-22 (火) 00:47:37
  • てるてるさん、おはようございます。このお話読ませていただきました。
    チャットでいろんな方に「wiki内で心に残った作品を教えてください」と尋ねると、多くの方がこの作品を挙げておられましたので、以前からとても気になっており、今回読ませていただくに至りました。
    タイトルは割と明るいと言いますか、ふらっと出かけるような軽快なイメージがありましたが、序盤は割と平凡そうな日常が書かれていてタイトルから連想されるイメージとだいぶ違うものになっていますね。
    ラストを思うとタイトルや序盤のうちから既にミスリード的効果が出ており、一見普通の恋愛物をイメージしてしまうものですが、とても切なく素晴らしい物語でした。
    リーフィアの彼氏であるグラエナが3年前に亡くなっていて、それを今でも想い続けるリーフィアの姿は涙が出るほど切なかったです。
    とてもこのラストを連想できない軽快なタイトルは、人目を気にせず、ひたすらにグラエナを想い続けるリーフィアの純愛の気持ちが出ているんですね。
    ブースターのことなど、気になる点をいくつか残しつつも美しい余韻を残すために続編は書かないという選択をなさったお気持ちは分かりますし、多くの方がこの作品を心に残る名作として挙げるのもとてもよく分かりました。
    文章力が素晴らしいことはもちろん、こういう魅せ方は同じ作者として参考にしたくてもできない、深いオリジナリティがあるのかなとも感じました。

    意味不明で冗長なコメント大変失礼いたしました。これからも執筆頑張ってください。
    ――クロス 2011-03-24 (木) 09:47:53
  •  ええと、チャット以外でお会いするのはたしかこれが初めてですよね。わざわざ作品まで足を運んでいただき、そしてさらには感想まで残して頂けるだなんて……、まったくどうお礼を申し上げて良いのやら。本当にありがとうごさいます!
    個人的には、かなり昔に制作した作品ですので、まさか再びこの名前を見るとはっ、という感じで結構恥ずかしいという思いもあったり…w っと、話がズレちゃいましたね…。
     多くの方の印象に残っているだなんて、作者としてこれ以上の喜びはありません!
    この場を借りてお礼を申し上げさせてください。ありがとうございます!
    ついでに打ち明けますと、個々の登場人物に感情や視点を用意するという、現在執筆中の作品に通ずる要素を持った作品ですので、わたし自身にとってもこの作品は「心に残った作品」であるかもしれません。
     この作品を制作するにあたって、まず最初に思いついたのがタイトルでした。当初はタイトルの通り、リーフィアが単にグラエナに会いに行くというだけの物語になる予定でした。が、サブメニューのリンクにある「ライトノベル作法研究所」というサイトで、“どんでん返し”について紹介されていたのを見つけて、どうにかしてその要素を取り入れたいと思い、内容を変更して出来たのがこの作品だったりします。明るめの雰囲気や恋愛物っぽさは、もしかしたら変更前の名残かもしれません。その時なぜタイトルだけ変更を加えなかったのか、お恥ずかしながら当時つくった資料を紛失してしまったため、想像するしかありませんが、クロスさんのおっしゃるとおり、ミスリードの一環だったのかもです。言い方は悪いですが、うまく読者さんを誘導することができたというのは、作者として、嬉しい限りでございます。
     余韻に関しては、お恥ずかしながら、すべて読者さんのおかげだったりしますw
    ヘタに物語を完結してしまい、せっかくの情緒を崩してしまわないで済む方法を提供してくださったおかげで、いまのこの作品があるのだと思っております。
    当時のわたしはまだまだ至らない部分を多く持っていたのかも知れません。もちろん、現在のわたしがその当時より上達出来ているとは思いません。クロスさんなどの他の作者の方たちに少しでも早く追いつけるよう、精一杯の努力をしていきたく思っております。

    ……わたしのほうこそ、意味不明で長たらしいコメントになってしまったような…w
    お返事を書くことにあまり慣れていないせいか、読みにくい部分も多々あるかもですが。その辺は経験不足ということで今回はご勘弁願えないでしょうか(もちろんこれを言い訳にするわけにはいきませんが……)。

    最後になりましたが、コメントありがとうごさいました。
    同じwikiで活動する者同士、いっしょにがんばっていきましょう!
    ――てるてる 2011-03-27 (日) 03:26:09
  • 冒頭からどうも切ない香りが漂っていて
    もしかしたらグラエナは死んでるんじゃないかと思い
    でもそれだとリーフィアが可哀想だからどうか生きてて欲しいと願いましたが
    やっぱり既に亡くなっていたんでしたね。
    読み進めている内にだんだん自分の中に
    悲しみが降り積もるような感覚に陥りました。
    それだけでなく、会社の人達や父などの細かい心情描写にも
    凄く何かリアリティのようなものを感じました。

    ・・・語彙が少ないのです。感想を述べるには語彙が・・・orz

    拙文申し訳ないです。
    執筆活動、物陰からひっそりと応援させて頂きたいと思います。
    ――うらのす ? 2011-03-27 (日) 20:50:50
  •  うーん。なるべく最初のほうは結末がバレないようにと注意していたつもりでしたが、どうやら冒頭から早速バレてしまっていたようで…。
    バレないための工夫と言っては難があるかもですが、時系列に沿ったリーフィアの視点を中心にして、それ以外の視点(会社の同僚やブースターなど、太字の部分)を最後のほうで一気に明かしてしまうという作り方を意識したつもりです。そうすれば最後まで隠せると考えていましたが、うらのすさんの直感の鋭さにはかなわなかったようですね。
     作ったわたしが言うのもあれですが、この作品から感じられる悲しみは、どちらかというと“哀れ”に近いのかも知れません。
    主軸に捉えているリーフィア自身が悲しむ描写は作中ほとんどありませんが、代わりにリーフィアの周囲の者が哀れむ姿が多めに描かれています。読者さん≒リーフィアの周囲の者たち、というふうに形作ることで作品への共感性を高められたことに、この作品が皆様に評価された大きな理由なのかもしれません。

    応援ありがとうございます! 
    少しでもそれに応えていけるよう、これからも精一杯の努力を続けていきます!
    コメントのほう、ありがとうごさいましたー!!
    ――てるてる 2011-03-29 (火) 23:00:00
  • てるてるさん、この小説はとても素晴らしいですよ、涙が溢れています。てるてるさん、是非これからも素晴らしい作品を出してくださいね、応援しています。
    ――7名無し ? 2012-12-27 (木) 00:58:26
  • 涙があふれたのでしたら、感動を意識して書いた手前、こちらとしても幸いでございます。にしても素晴らしいだなんて……私にはもったいないお言葉かもですww

    お読み下さって本当にありがとうございました。これからも7名無しさんや皆さんを満足させられる作品を作れるよう、頑張らせていただきますっ。
    ――てるてる 2012-12-29 (土) 02:59:33
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*1 馬などの背中に装着するかばん。ここでは四足歩行ポケモンのポーチみたになものの意

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Last-modified: 2009-12-05 (土) 00:00:00
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