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拐かされて、ふたごじま

/拐かされて、ふたごじま

 ※念のための警告:本作は官能小説でなおかつ、男色要素、スパンキング、アナルプレイといったフェチい要素が数多含まれております。

拐かされて、ふたごじま 作:群々


ふたごじまでガニュメーデース 

 
 死んだと思っていたから、目が覚めたとき、プテラはむしろ困惑した。しかも目覚めた場所はまったく見知らぬところ。洞窟の中だろうか、広大で仄暗い空間、天井のゴツゴツとした岩が遠く見える。耳を澄ますと、激しい水流の音がこだましている。
 何より、このなぞのばしょは肌寒くてならなかった。思わず翼で体を覆うが、薄い飛膜程度ではこの寒さは凌げない。体が勝手にガタガタ震えてしまう。死んではいないかもしれないが、どちらにせよ、このままでは凍え死んでしまいそうだ。
 なぜ、ここにいるのかはさっぱりわからないが、意識を失う直前のことはしっかりと覚えていた(つまり、やっぱり死ななかったということだ)。プテラはグレンタウンの研究所で暮らしていた。ニビという町から持ち込まれた琥珀から復元された、という話をなんとなくだが聞かされていた。古代の姿を留めた状態で現在に蘇った個体であるが故に、重要な研究対象として、プテラはこの町で丁重に管理される身だった。
 管理とはいっても、そこまで厳重なものではなかったし、トレーナー代わりの研究員のもと、しっかりとした世話もしてもらえていたから、ここでの生活は楽しいものであった。時々はグレン島を少し離れて、マサラやセキチク辺りまで飛んでいくこともあったし、同じく化石から復元されたカブトプスやオムナイトとも仲良しでよくつるんだ。研究所のヒトたちは何か難しいことをしていたのかもしれないが、当のプテラ自身の生活は、その辺の一般のポケモンたちとさして変わることはなかったのだ。
 それがさっきまであったはずの日常。それがずっと続くなんてことはプテラも思いはしなかったが、いきなり終わらされると、(おのの)きとか悲しみとかいう感情よりもずっと前に、ただ驚いてしまうばかりだった。
 島に近い火山が爆発する衝撃音は、ボールの中からも聞こえた。まもなく溶岩が町にまで押し寄せてくると、人々は怒鳴り合った。住人たちはすでに避難を始めていた。この研究所も(じき)に溶岩に飲み込まれてしまうだろう。研究員たちも、目についた研究資料だけをかき集めてすぐ逃げるしかなかったらしい。みな気が動転していて、化石ポケモンたちを収めたモンスターボールを持ち忘れていたのに気づく頃には、避難船はもうグレンの町を出港してしまったに違いない。
 建物が激しく揺さぶられる音、何か不気味なものが迫ってこようとする音だけが聞こえる。ボールの中の心地よさの中にうずくまりながら、プテラはたぶん死ぬのだろうと予感した。この感覚は、たぶん初めてではなかった。意識の奥底に、残滓として、まさしく化石のように残っている感覚。ひっそりと、一匹で、死を待つ恐怖。すぐに来るが、いつなのかはわからない瞬間を待たされ続ける苦しみ。きっと他のボールに入った仲間たちも思い出し始めているだろう。はるか昔、死ぬ直前に感じた、古傷のような感情を。
 そして、拷問のように気が滅入る時間の後で、その瞬間は来たはずだった。プテラが確かに覚えているのは、その瞬間までであった。
 ふと、自分の体に何かが降ってきたのに気づく。冷たさに身をピクリと震わせる。顔を上げてそれを見ると、氷を細かく刻んだようなものが腕にひっついている。
(なんだよ。なんなんだよ、コレ……)
 見上げると、その氷の粒が洞窟の天井の方から降ってきていた。雨みたいだ。でも、雨にしろ氷のようなものにしろ、なんで洞窟でそんなものが降ってくるのか、プテラには見当もつかなかった。この洞窟なのかなんなのかわからない空間が、急速に冷え始める。例えていえば、研究所にあった冷凍室みたいな。
(ダメだ、このままじゃ死ぬっ。でも、どこへ行けばいい? そもそも、ここがどこのどこだかわからないいっ……!)
 目についた草地へと本能的に飛び込んだプテラは、そのまま仰向けに倒れ込む。霜をかぶった草はやはり冷たく、何の気休めにもならないけれど、少しでも何かに包まれていたい一心で。
 降り積もる勢いはいっそう激しくなった。氷の冷たいのが瞬く間に全身を覆う。耐えがたい冷たさ。これなら溶岩の埋もれていた方がまだましだったかもしれない。いったいぜんたい、どうしてこんなところに? 誰が? どうして?
 にわかに、羽ばたきのような音が聞こえた気がした。ズバットのような忙しない羽音とは違って、ゆったりとして落ち着いた、どこか威圧感さえ感じさせる羽ばたき。大きい鳥のようだ。しかし、洞窟にそんな鳥なんて、普通はいないはずだ。
 恐る恐る辺りを見回してよく目を凝らすと、薄暗い中に異彩を放つ影に気がついた。それは、こちらの存在に気がついてか、ゆったりと方向を変えてこちらへ向かってくるようだった。まだ姿形がはっきりとしていないながらも、とてつもない殺気を覚えて、プテラは身構える。
 プテラもポケモンとしてはガタイのある方ではあったが、戦闘経験はほとんどない。いざとなったらわるあがきでもして抵抗するしかない。その場を凌げるかどうかなんて、もう関係がなかった。
「やれやれ。こんなところにいたのですか」
 影がため息をつきながら話した。
「……誰だよ、アンタ!」
 身構えた姿勢のまま、プテラは聞き返す。シルエットだけなのに、もう逃げ出したいほどのプレッシャーだ。
「誰ですかとは、人聞きが悪いですね」
 黒かった影が徐々に鮮やかな色を帯びていく。透き通った水色の毛並みが暗闇から浮き上がって、プテラの目の前に鎮座した。
「命の恩人、と呼んでいただかなければ」
「誰なんだよって、聞いてんだよ」
「まったく。あの研究員どもは礼儀というものは教えてこなかったようですね!」
 目の前の威容を放つ鳥は、呆れたように叫んだ。
「ですが、教え甲斐があるということは、悪くはありません、かね」
「なにブツブツと喋ってるんだよ! 教えてくれよ、アンタは誰なんだ? ここはどこなんだ? どうして俺はこんなところにいるんだよ? 他のみんなはどうなった?」
「ふう! 質問は一つ一つ、丁重に尋ねるものですよ」
 紅い瞳でじろりとプテラを睨みつけながら、透き通った翼を羽ばたかせると、瞬時にこごえる風が洞窟中に吹き付ける。鋭く吹いてくる風の直撃を受けたプテラは、バランスを崩し、そのまま仰向けに倒れてしまう。すぐに立ち上がろうとしたが、なぜか腕が重しを乗せられたかのように動かない。それに、手のついたあたりがやけに冷たい。首を持ち上げて見ると、いつのまにか、プテラの手足には氷の枷が嵌められ、きつく動きを封じ込められていた。
「……なんだよこれっ! 離せよっ!」
 叫ぶプテラを無視して、目の前の異形は胸のふさふさとした白い羽根を、艶やかな翼の動作でまさぐった。時間の流れ方がまるで違うことを見せつけるかのように、ジタバタするプテラの動きに対して、ノロすぎるほど緩慢に。
「おいっ! 聞いてんのかよっ、おまえ! いったい何のつもりだっ……!」
「……まずは覚えておきなさい。私の名はフリーザー「様」、です」
 そのフリーザーは翼を組んで、考え込むようなそぶりをして、わざとらしい間を置いた。
「この「ふたごじま」を司る神霊(ダイモーン)、とでも言っておきましょうか」
「……フリーザー?」
「おっと、「様」をつけていただかないといけませんね。私は、あなたとは次元の異なる存在ですから」
「……」
 プテラは黙った。なにもかもがわからなかった。フリーザー? 命の恩人? ダイモーン? 聴き慣れない言葉に言い回し、理解が追いつかない。なんだか知らないけど、こんな洞窟の奥深くに自分のことを閉じ込めたうえ、氷の枷で手足を封じて、いったいなにをしようというんだ?……とでも考えているのでしょう?
「……!!」
「あなたごときの心など、私には筒抜けです。ふたごじまを流れる水の音に耳を傾けるよりも容易いことです……手荒い真似は嫌いですが、少々気性が荒くれ者の相手は面倒だから(やぶさ)かではありません、ね」
 プテラは心の臓をフリーザーのそのかわよい脚にしかと握り締められているように感じ、ソワソワした。五臓六腑を、すべて目の前の美しくも残酷な鳥の前に晒しているような、羞恥を超えた畏怖。
「ちょっと待ちなさい」
 苛立たしげに、フリーザーは言う。
「あなたいま、私の脚のことを「かわよい」などと馬鹿げた形容をしましたね? 巫山戯(ふざけ)るのもいい加減にしていただきたい。私とポッポの区別もつかないなんて愚者は、端的に言って、死すべき、だ」
 フリーザーがそう吐き捨てたと同時に突然、プテラは体験したことのない寒さを感じたかと思うまもなく、体内の臓器という臓器が弾け飛んだような衝撃を受けた。
「あ」
 悲鳴をあげるべくもなかった。あまりにも一瞬のことだったので、目は見開き、口はぼんやりと開いたままで、プテラは事切れていた。
「……絶対零度」
 ひとりごちながら、フリーザーはのびた翼竜のそばに佇んだ。
「あなたの命など、私にかかれば、この雪よりも軽いのです。あなたを殺すも生かすも、私の自由だ。しかし、それを断じて不幸などと言わせるつもりはありません。これから、そのことを理解させてあげましょうか!」



「んっ」
 体を踏みにじられているような不快感でプテラが意識を取り戻すと、真上からあのフリーザーが、自分のことを倪視(げいし)していて、咄嗟に目を逸らしてしまう。
「おや、息を吹き返しました、か」
 感情の読み取れない声の調子。語りかけているのか、ひとりごちているのかもよくわからない言い方。プテラは、他に誰もいないことは知りながらも、辺りを見回さないわけにはいかなかった。どんな反応を返せばいいんだ? できるものなら、一刻も早くこの場を離れてしまいたい。
「……うっ」
 相変わらず氷の手枷足枷ははめられたままだった。しかも、自分の腹の上にフリーザーの脚がのせられている。目の前のフリーザーに抗議するように、プテラは野生児のように筋肉質な体をクネクネと捩らせる。
「おい、てめえ……! なんなんだよ、なにをしたんだよ、いったい!」
「やれやれ」
 独り言のように、まるで芝居がかった調子でフリーザーは答える。
「あなたの命を一度弄んでやったまでのことですよ」
 フリーザーの言うことはプテラにはなに一つわからなかった。
「あなたには理解できなくて当然です。私は超自然的な存在ですからね」
「どうでもいいけどさっ……なんだっけ、おまえの……えっと、フリーザー、だったっけ」
「「様」をつけるのを忘れないことです」
 踏みつけた脚の力をゆっくりと強めながら、プテラの腹筋の形を楽しむように握りしめる。
「いててててっ! やめろ……って……!」
「傍目からもわかる筋肉の造形。外見とは裏腹にしっとりと柔らかな触り心地」
 フリーザーは脚で腹筋の辺りを揉みしだきながら、暗唱でもしているかのようにつぶやく。
「やはり、いい躯体だ。私の眼に曇りなどあるわけがないが」
「な、なに変なことしゃべってんだよ、早く離せよっ……!」
 プテラが体を捩らせるたびに、フリーザーは翼を嘴の下、ヒトであれば顎にあたるであろう部位にあてながら、その様子をじっと検討している。
「あなたがそこで伸びている間に、あなたのことをじっくりと観察させていただきました」
 不意にフリーザーの表情が緩む。初めて見せた笑顔のようなものだが、あくまでも抑制された笑みであり、超自然的な不気味さも感じられる。
「自然によって鍛え上げられた肉体。かつてこの空を支配していたと言われるにふさわしい冠たる身の締まり。私に侍る存在として、実に似つかわしい」
「だ、だから、なに言ってんだって……」
「ですが、もう一つ確かめねばならないことがあります。あなたの雄としての矜恃」
 フリーザーは自分だけの世界に没入しながら、プテラの細く締まったカラダを片脚で堪能する。腹に浅く突き刺さる爪がチクリとし、電流を受けたようにピクと痙攣するカラダの反応が、この氷を纏った怪鳥には快いらしかった。
「口とは裏腹に、肉体はこの刺激に慄くどころか、深い悦びを得ているようです。ガーディが初めて目にするものを口にする前に、恐る恐る何度も舐めたり咥えたりしてから食べる、それと同じように、少しずつですが、あなたのカラダも快楽を認識し、それを享受し始めている」
「なにをっ!……やっ……あっ……」
 不慣れにもカラダを撫ぜられて、研究所より他の世界がわからないプテラに、感じたことのないものが体内から感じられた。なにか、熱く、胸を動悸させ、気味が悪いが気持ちのいいもの。それが、なぜだか自分の「性器」に凝縮し、瞬く間に外部へと隆起し、屹立させた。
「うっ……!」
「驚いた。期待以上の傑物ではありませんか!」
 興味津々でフリーザーは頭をそこへ垂れる。突き出した肉棒は見つめる相手の顔を優に超すほどの見事な勃起ぶりで、プテラが顔を赤らめるのに従って、さらに膨れ上がっていくかのようだった。
「見るな! 見るなっ……!」
 叫び、拒むプテラの身振りを、フリーザーはまるで気にしていなかった。ジタバタする翼竜の(うごめ)きに少し遅れるように、悠然と揺れる脈走ったそれを、美術品を鑑賞でもするかのように、じっくりと眺めていた。得体の知れなさにプテラははっとしてその様を見ているしかなかった。
「貞操を保つにふさわしく、それと同時に不貞であるべき、美しくも汚らわしい肉体。何も言うべきことはない。決めました!」
 フリーザーは宣言した。
「今からあなたは私に仕えるのです、プテラ」
 何の話なのかさっぱりわからなかった。目まぐるしい出来事の連なりを、起承から理解する間も無く、フリーザーは瞬く間に話を進めてしまうので、勝手に遙か先へ飛んでいってしまう。
「えっと、あの、なに?」
「あなたが全てを理解する必要はありません。ただ、私の問いかけに「はい」と答えればよろしい。今からあなたは私に仕える、誇るべき身の上となるのですから」
「い、いやだっ」
 とっさにプテラは拒絶した。よく理解できないながらも、フリーザーの言っていることは、自分にとって重大なことであることは本能的に察せた。
「お、俺をみんなのとこに戻せよ! 命の恩人とか言うんだったら、そうしてくれよ!」
「誠に残念ですが、あなたに帰る場所はありませんよ?」
 フリーザーはピシャリと言った。
「あなた自身がよくわかっていることでしょう?」
「うっ……」
 火山の噴火するあの爆発音が頭の中でこだまする。この目で見たわけではないが、恐らくこうなっているはずの故郷の姿が浮かんだ。
「グレンの島は跡形もなくなりました。私が訪れた時には、すでに溶岩は島のほとんどを覆い尽くしていました。幸い、人間たちはみな逃れることができたようですがね」
「……」
「ああ、それと、あなたと一緒にいた仲間たちは、みな私が解放してやりましたよ。今頃はどこかの海を泳ぎ回っていると思いますが」
 プテラは、グレンの周りの海を困惑しながらも遊泳するカブトプスとオムナイトの姿を想像した。なんとか、無事に生きていてほしいとプテラは願った。
「ただ、あなただけは。以前ふたごじまの上空を滑空する姿を目にしてから、密かに気に留めていましたから、これを機にと、(かどわ)かしてしまいました」
「かどわかしたって……なんだよそれっ! 身勝手だ、そんなのっ」
 仲間との会いたさに泣きそうになるプテラに対して、それすらも可愛がるかのようにフリーザーは微笑する。
「あなたが嘆き悲しもうが、問題ではありません。私に見初められた、ということがあなたの運命だったのですから、受け入れるがよろしい」
「絶対やだ! とっとと俺を離してくれ。運命なんて、んなもん知るか!」
「成程」
 瞑想するように目をつむり、首を緩やかに傾けながらフリーザーは考え込むふりをするのも束の間、ぱっと目を見開いて、慈愛の込もった笑みをプテラに注いだ。
「拒む姿もまた初い……ですが、もっと乙なのは」
 にわかに、そそり勃つストーンエッジを儚げな翼で包むように、さらりと一撫でして、
「そういう雄に道理を分からせてあげることだ」
「あはあっ……!」
 上向いた若いパラスは些細な刺激にも敏感に反応してプテラの身を仰け反らせ、不本意にもその傑出ぶりをいっそう見せつけ、氷鳥の目を楽しませる。
「さあ、吸わせてください。あなたから薫る若々しさ、雄々しさを」
 衣擦れのような音を立てる翼で、物欲しげに蠢く下の舌を包み込む。氷嚢(ひょうのう)をあてられたも同然の冷たさに驚いて、腹筋にもたれかかるプテラのそれを、両翼できりもみするように愛撫してやる。
「はあっ!……はあ、はああっ……!」
 見ず知らずの鳥に自分の弱みを見せる羞恥と、それを玩具のように弄ばれる屈辱感でプテラの密かな劣情は暴れ狂った。今すぐ止めてほしいけれども、ほんのちょっぴりこの感じが続いてほしいという素直な欲もあり、自分でも訳がわからない。
「肉体は大いに悦んでいるのですよ。さあ、虚しく抗うのは止しなさい……」
 フリーザーは時折、その儚げな嘴から舌を出して、赤みを帯びた竿の筋を愛おしげに舐めもする。ハッとしたように震える肉棒。
「本当はもっとあけすけに咥えてみたい。しかし、鳥というのは不便なものです。こんなに素晴らしいものを崇めるのに、翼も、嘴も、役には立たない」
 言いながら、プテラの胸筋から陰部までの壮健な体つきを翼で撫でさする。汗と霜で少し濡れた体は、薄白く照って、浮き出した筋肉のフチに走るハイライトが、自然に鍛えられた肉体をいっそう官能的なものに見せてくれる。
「はあっ、はあっ」
 プテラは口を開けて喘ぐばかりで、抵抗も何もできないまま、カラダを痺れさせる気味の悪い快感によがっていた。目から汗交じりの涙がこぼれる。カラダ中から分泌される汗が、筋肉をてからせ、その線がくっきりと浮かび上がっている。
「やだ、やだっ」
 懇願する目つきもフリーザーには通じず、ひたすら肉棒を弄ばれ、次第に否定しがたい興奮が高まり、熱いものがそこにこみ上げてくるのがわかった。
「出でよ……そのまま、その筋骨隆々した胴に、ぶちまけてしまうがよろしい」
 すかさず、フリーザーの翼の擦りが速まり、興奮のあまり反り返り、苦しげに腹筋運動をしているように見える進化したパラセクトをいじめ倒す。
「ああ、カラダが、カラダが、あついいっ……!」
 情けなく息を切らす。激しい隆起と沈下を繰り返す腹が作り出す陰った凹みから、発達した筋肉の輪郭や鼠径(そけい)部の細っそりした線が、血管のように浮き出ている。突き出した舌は先端から垂れて微かに震えながら、顎の裏側にまで達した。
「ああああああああっ……」
 洞窟の奥底はあんなにも肌寒かったはずなのに、気のおかしくなった遭難者のように暑苦しい。汗だくになった体をかき乱して、氷柱ではりつけられた全身を虚しく揺り動かして、汗水を撒き散らした。
 慈母のように伏し目がちに、泣き喚く幼子をあやそうと施しを与えるフリーザーの翼のくすぐりで、プテラはいよいよ、何かに耐えきれなくなる。
「……はあああっ! んっ」
 叫び声とともに、勃起した先端から放たれる初めての精液が、緊張した腹筋にべっとりとかかる。キャンパスに投げつけられた絵の具のように、しっかりとした形をもった粘液は、灰色の翼竜の石膏のような肉体を汚すが、それと同時に、聖別するようにも見えた。
「はあっ……あああっ……」
「素晴らしい」
 腹にべとついた濁りを羽根でうっすらと広げてやりながら、フリーザーは悦に入る。黒ミサを執り行う悪魔崇拝者のような邪念を湛えた微笑みだった。
「あなたはすっかり私のものですよ、プテラ」
 まだ、呼吸を整えるのに手一杯で、プテラは返事もできないでいる。初めて性を吐き出した感触は、気持ち悪くも気持ちがいい。何か得体のしれないものを出してしまったという不穏と、出したかったものを出せたという幼児的な快楽がないまぜとなって、わけがわからなかった。
「い、いやだっ」
 咄嗟に恐怖を覚えて、プテラは叫んだ。
「離してくれって! どんなことがあったって、お前といるのなんて、ヤに決まってんだろ」
 プテラの体内の臓器という臓器が、たちまち風船のようにパチンと割れた。短気にましますフリーザーが絶対零度を唱えたからだ。
「ここまで来てなおこれとは、聞き分けの悪い……」
 フリーザーは心外とでも言いたげに、嘴をカチンと音立てて重ね合わせた。
「お仕置きをして、分からせなければいけません、か」



 不意の暗転。そして明滅、覚醒。
「んぐ……………………?!」
 顎が地についた違和感で、なぜか自分が突っ伏した姿勢になっていることを意識する。そして、高く突き上がった腰、何やらおしりに感じる寒気。
 咄嗟に身をもたげようとしても、またもや手足に氷のくさびが嵌め込まれてあった。背中が急な勾配をなぞる四つん這いの体勢のまま動きを封じられてしまったため、ロコンが勢いよく伸びをする時の姿勢を如何とすることもできなかった。
「こ、今度は何するつもりだよっ」
 そいつがまだ背後にいることはわかっていた。ぞっとするような冷たさを孕んだ、妖しげな影がプテラの全身に覆いかぶさっていたから。
「まず、目覚めるのが遅い」
 氷翼でしたたかに、自らに献上された尻をポンと叩く。筋肉質ながら肉付きのよい臀部は、プルンと震えて洞窟内に小気味のよい音を立てる。
「五臓六腑を引き裂かれてでも、主の意志には応えねばならないというのに」
 (いずく)んぞ侍らんや、などと酔狂なことを口ずさみながらフリーザーは長々と(あく)ぶ。
「でもそれはこれから私の身の回りのこと一切を教え込んでいくうちに、自ずと身についていくことでしょう。それはさておき」
 冷ややかな羽根を、ピンと張り詰めた大臀にあてる。震えるような冷たさは、たちまちにして霜焼けしそうな痛みに変わり、図らずもまだまだ幼いプテラの腰を悶え、くねさせる。
「あはああっ……」
「精悍ながらいたいけな、得も言われない「口」だ。まずは、ここに道理を教え込まなければいけませんね」
「なに、言ってんだよ……!」
 フリーザーの方へ振り向いて、精一杯に凄みを利かせてにらみつけるが、遥かに経験豊かなフリーザーはその視線もそつなく受け流す。むしろ、抗うに合わせて揺れ動く尻の動きに興をそそられているかのようだった。
「いいから、離せ、離せよっ」
「まったく、すぐ口答えをする……」
 呆れながらも、喜びを隠さない口ぶりでフリーザーは舌舐めずりをし、目一杯に翼を広げて力を込める。
「三十発で勘弁しようと思っていたのに、気が変わってしまった」
「……?」
「決めた。五十発にしましょう!」
 嬉々として叫んだ途端に、掲げた翼を勢いよく振り落として、プテラの尻をしたたかに打つ。
「あ゛っ!」
 思わず悲鳴を上げたところへすかさずフリーザーは二発目を喰らわす。
「ああ゛あっ!!」
 力の込もった、文字通り氷のように堅くなった翼の一撃で、リザードのお腹のようなお尻は弾けるような高い音を立てて、プルンと震える。ほんのりと頬を染めたようになった尻を、一旦は慰めるように撫でさすってやるのも束の間、またピシャリと打ち始める。
「やめっ! やめ゛っ!……」
「ダメですよ、まだ始まったばかりなのに、もう音を上げてしまっては」
 折檻する翼は止めずに、フリーザーは我が子のように嗜める。
「悪いことをしたのですから!」
 力任せに二、三回続けて叩きのめすと、ドラムのようにテンポのいいリズムが洞窟いっぱいに響き渡る。奥深くとはいえ、なにものかに見られているかもしれない、と想像するだけでプテラは恥辱に苛まれ、この氷の縛めから逃れたいと願うが、どれだけ力を込めても外すことは叶わない。
 まだ幼いから、力が足りないのか? 昨日の今頃は、まだグレンの島で当たり前に続くと思っていた日常を過ごしていただけの自分が、どうして、フリーザーなんていう得体の知れない奴に拐われ、あまつさえ射精などさせられたうえに、四つん這いで尻を叩かれないといけないのか。
 理解はできそうもなかった。
「いだいっ、いだいっ、ひぐっ!」
「やれやれ、叩く方も楽ではない」
 翼を休めがてら、赤みを帯び始めながらもまだ水々しいツヤのある尻を、ゆったりと愛おしげに撫でさする。痛めつけられた肉体を懐柔するように、時おり、発達したての筋肉を揉みしだきながら。
「はああっん……」
「私はあなたを愛しているから拐ってきたのだ。それは分かっていただきたいのですよ」
 なに言ってんだこいつ、と思いながらも痺れるような尻の痛みに悶えて、ろくに口も利けないのが悔しい。でも、尻をさすってくる翼の優しさに、なぜだか絆されそうになって、思わず牙を喰いしばって正気になろうと努める。
「あなたは正確な意味での愛情は知らないのでしょう?」
「……」
「母の腕に抱かれて眠った記憶のない、生まれながらの孤児、か」
「だ、黙れ、黙れって」
「哀れなるかな」
 視線を尻尾の付け根にチラチラと落としつつ、フリーザーは嘆息する。純白の豊かな鳩胸が鷹揚と揺れる。
「バカにすんなっ!」
 尻がヒリヒリするのをこらえて、やっとのことで叫ぶことができた。
「お前なんかにっ、俺の、何が分かるんだってのっ」
 震える拳をぎゅっと握り潰して、きつく目を閉じる。後ろは振り向けなかった。そいつの、見透かすような瞳に睨まれたら、どうにかなってしまいそうな悪寒がした。
「母親がいてもいなくたって、俺は普通に、幸せに過ごしてきたんだから」
「ふうん」
 手慰みに、プテラの尻をパンと打つ。
「親、だと思っていたのですか? あんな時に、あなた方のことを見捨てた者たちを?」
「なにが、言いたいんっ……あ゛あ゛っ!……」
「あなたのそういうところは、よく言えば利口ですが、悪く言えば、愚かですよ!」
 言葉だけではなく、十回ほど立て続けに尻にもきつく言い聞かせた。破裂音と悲鳴が合わさり、増幅し、波紋のように洞窟の最奥に広がり、天井に潜んでいたズバットたちをささめかせる。
「あ゛っ! だっ! ぎゃっ! やっ! や゛あっ! ああっ! があっ! はあああっ!……あ゛あ゛あ゛あ゛っ……だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!…………」
「やれ、やれ!」
 赤く腫れ上がり出した尻を満足気に眺めながら、激しく振るって乱れた羽根を嘴で整える。
「しかし、その素朴なところも愛おしい……あなた、自分のいた場所がどんなところか、知らないのでしょう」
 プテラの返事を待たずに、フリーザーは滔々と話し始める。かつてあの島で行われていた研究について、それがもたらした災難。ミュウ……遺伝子……ミュウ……ツー……プテラにはほとんど理解できなかった。聞いているだけで頭が熱くなってダメだった。それに、話の間ずっとお尻を揉みさするフリーザーの翼の感触が気になる。
「……つまるところ、あなたもまたその研究の副産物に過ぎない。化石ポケモンの研究などというのは、所詮隠れ蓑なのですよ。あなたに与えられていた愛情とかいうものも、あくまでも一体のサンプルとしての礼儀でしかない、偽善、としか言いようがない」
「…………!」
「あの島が溶岩に飲まれたのも宜なるかな! 私ははっきりと感じ取っていたのだ。あの日以来、グレンの山が怒り狂っていたのを。自然というのは、その道理を侵そうとする者には容赦ない罰を与えるものなのです」
「嘘だ、出まかせ、言うな!」
 口答えすると、今までで一番痛烈な一撃。つんざくような悲鳴と共に、体が跳ね上がりそうだった。
「事実だよ……受け入れなさいな」
 耳元で囁く氷鳥のゾッとするほど冷淡な口調は、プテラの心肝を寒からしめる。その言葉は耳から脳へと達し、そこに新たなくさびを打ち込んだように思われた。水が皮膚に浸透するようにひたひたと、自分がコイツに支配されていく予感がして、ひとまず唾を飲み込んだ。フリーザーは不気味に微笑んだ。
「いずれにしても、あなたに戻る場所はない。今となっては、あなたは生きているだけで都合の悪い存在となってしまったのです。しかし私はあなたを哀れに思い、また愛おしく思うからこそ、希望を与えてやろうというのです」
 黙り込んだ翼竜が話を聞いているか確かめるために、さらに三発、尻をしばいた。
「だっ! あああっ……いだいっ! いだいからっ、聞いてるってえ゛っ……!」
「では、どうなのです? 私は先ほどからずっとあなたに問いかけているのです。私に侍ることを受け入れるか、拒むか、どちらか一つなのです」
「んっ……」
 フリーザーがにこやかに毛並み麗しい頬を擦り寄せながら語りかけてくる。初めて感じた他者の温もり(冷ややかではあったけれど)に本能的に顔を赤くしつつも、相手の言葉が見え透いた罠であることは明らかだった。
「ふうん。あなたも、理解しつつあるわけだ」
 和毛から薫る芳香は、こんな状況にあってもプテラをうっとりさせるのに十分だった。雄とも雌とも嗅ぎ分けがたい匂いは、この怪鳥に対する得も言われぬ畏怖をも感じさせた。逆らったら、どうなるかは言うまでもなかった。
「あなたは既に二度死んでいます。それに私は命を吹き込み直した。あなたの命は、もう私の命同然なのです……ねえ? もう、抗うのはよしなさい?」
「でも、でもっ!……」
 しかし、なにが「でも」なのか、プテラにもよくわからなくなっていた。もうとっくに万事は休していた。何かは言わなければならないが、的確な言葉は見つかりそうもなかった。
「嗚呼! もう少し折檻が必要なようですね……そういえば、あと何回でしたっけ?」
「……えっ」
「すみませんね。私としたことが、途中から数えるのを忘れてしまったもので」
 もちろん、プテラにも分かるはずはなかった。微かに皮膚の擦り剥け始めた真っ赤な尻だけが、いたぶられた回数を知っているのだろう。
「覚えているのでしょう、あなた?」
「ひぎゃああああんっ!!」
 氷の翼が、擦り剥けた傷にひどく滲みて若い翼竜は腰を垂直になるほどに突き上げて、激しい悶絶の嬌声をあげた。翼を放して欲しさに、腰全体がくびれからクネクネと波打った。
「わかんない、わかんないよっ、ぞんなもん、覚えでないっでえええっ!……」
「仕方が、ないですね」
 意地悪くため息をつくと、フリーザーは翼に改めて力を込めた。
「また最初からやり直しましょうかねえ」
「……………………へ?」
 不条理に抗う暇もなく、振り下ろされる氷の翼。弾けるような尻の呻き。
「さあちゃんと数えていなさい……忘れたら、またはじめから、ですよ……!」
「い゛っ……いぢっ!……に゛ぃぃぃぃっ!……ざんんんんっ……」
 今度は話を挟むことなく、フリーザーは一心に尻を叩く。叩かれるプテラも、また一からやり直されたらたまったものではないから、喘ぎつつも律儀に回数を数えた。臀部の皮膚が焼けただれたように痛いのを、ぎゅっと目を閉じて堪えながら、早くフリーザーの気が鎮まるように願った。
 半分まで叩いてから、フリーザーは一度羽根を休めながら、傷ついて微かに蠢く尻を労るように、舌でひと舐めしてやる。
「うっ……」
 生暖かい舌触りが、刺すような痛みと寒さの中にほんのりと気持ちがよかった。張り詰めていた筋肉の力がふっと抜けて、カラダ中がトロけたように地べたに垂れてしまう。
「いい子だ」
 ひくつく尻肉の窪みに沿うように舌を這わせると、プテラは腰をきつく捩らせて感じ入る。潜んでいた感情が擽られ、内側からカラダが熱くなってくる。
「やっ、やめっ」
 プテラは懇願した。これ以上舐められると、危ない気がした。
「んなことしてないで、叩けよ、早く叩いてくれよっ……」
「おやおや」
 フリーザーはくっきりとしてツヤツヤとした「線」を愛しげに舐め上げると、もの惜し気に舌舐めずりした。
「殊勝な心がけですねえ。いよいよ、解ってきたのですか」
「……」
 返事はせず、二十六から再び数え始める。だんだん、痛覚も麻痺してきていた。プテラにも変なこととは解っていたが、叩かれるのがなんだかクセになりそうだった。ハッとさせるような激しい一発があったかと思うと、すまないと謝るかのようなひと撫でがあり、拍子抜けするほど優しい尻への扱きもあった。打擲するフリーザーの翼は、巧みに無垢なプテラの心を握りしめ、その上に転がしているかのようだった。
「私はあなたを愛します! それは約束いたしましょう……だからあと残り、我慢してくださいよ……!」
「はひっ……ざんじゅっ……!!」
 月が陰るように、プテラの内面は何かに取り憑かれるみたいに、心変わりしていくのがよくわかった。もはや道は一本道だった。いや、遡っていけば最初からそうだったのかもしれない。すべてはこのふたごじまの最奥部へと通じていた、そう考えることにすれば、さしあたって辻褄は合う気もした。
 イヤだと言えばイヤだ。でも、これに抗う力もないし、いっそここで果てる度胸もなければ、ただ目の前の運命を受け入れるしかない。自分は弱かった。でも、このフリーザーについていけば、もしかしたら何かが変わっていくのかもしれない。いいか悪いかはさておいて、流れに身を任せてしまうのも必ずしも悪くはないんじゃないか?……罰を受けながら、プテラの若い頭の中を錯綜していたのは、そのような思考だった。
「嗚呼、無垢で精悍な雄とは、なんて可愛らしいものなんでしょう」
 悪戯に「口」を羽根でくすぐると、翼竜の赤らみながらも形の整った尻は煽情的なくねりを見せる。
「終わったら、ご褒美をあげましょうね」
「あっ!……じっ……じゅうっっ!……」
 翼の一撃ごとに、着実に自分が矯正されていく。フリーザーに晒される尻は悦びにプルプルと震えていた。さっきまで、この相手に抗っていた自分は、やはり悪い子だったんだと、思えるようになっていた。心境の変化!
「ごっ!……じゅっ!……ううううううっ……!……ああ゛っ……ああ……あっはああっ……!」
「おしまいです。よく、頑張りました」
 すっかり腫れ上がったプテラのモモンを介抱しながら、フリーザーは囁く、途端にあれだけプテラを戒めていた氷の枷が、たちまち音を立てて割れた。ようやく解放されたのに、もうプテラには逃げる気持ちは失せてしまっていた。余韻に浸ってでもいるかのように、四つん這いの姿勢を変えなかった。安堵した表情で名にし聞く鳥は、見出した稚児の姿態を眺め回す。
「はあっ、はあっ、はあっ…………フリーザー、様っ」
「おやおや」
 フリーザーは嘆息する。
「やっと、呼んでくださいましたね」
「俺っ、俺、あなたについて行きます。だって、それしか生きてける道がないんだっ……」
「その通りです。わかっているでは、ありませんか」
 フリーザーは慈愛ある翼を尻に置いた。染みるような痛みを恐れて、プテラはきゅっと大臀の筋肉を収縮させたが、不思議と痛くも痒くもない。
「傷は癒しました。赤らんだ臀部も、それはそれで愛おしくはありますが」
 何かの気を伝えたのか。そっと、尻に触れても擦り傷もなにも綺麗にふさがっているようだった。
 安心するのも束の間、プテラは股間に、冷やりとするような視線を感じた。フリーザーの好機の目も、また同じ地点に注がれている。
「先ほど出したばかりというのに、可愛らしいディグダだ。若さというのは、素晴らしい」
 尻を叩かれた弾みか、スリットから飛び出して激しく勃起をしたそれが健気に性を吐き出したがって、腹筋の下で跳ねていた。
「ご、ごめんなさいっ……だって、カラダが、どうしても……」
「構いやしません。雄なのですから、むしろ自信を持ちなさい」
 頬を緩めて、立ち上がった尻尾の付け根を覗き込む。
「それに、「口」からヨダレを垂らしている。嗚呼、どれだけひもじかったのでしょうねえ……」
 お仕置きの合間に、嘴や羽根で弄ばれたプテラの尻穴はとろけたようになり、自ずから愛液のようなものを溢れさせていた。
「えっと……」
「あなた、寒くて仕方がないでしょう?」
 興奮してすっかり忘れていたが、洞窟の最奥部は凍てつくような冷たさで、至るところ霜も張っているのだった。にわかに、皮膚に垂れる汗が冷えて、カラダの震えが止まらない。
「とても、寒いです……フリーザー様っ」
「凍てつくような寒さでしょう? このままだと凍え死んでしまいます」
 慈しみの込もった目つきで、四つん這いのプテラを見下ろし、微笑む。
「いいでしょう。鞭に耐えたご褒美に飴を与えてやりましょう」
 そう言って白い鳩胸をまさぐると、そこから一個の木の実を取り出した。
「ヤチェの実です。これを食べれば、しばし寒さは凌げるでしょう」
 さあ、口を開けてと言いながら、フリーザーは、プテラの太腿の間の洞穴にヤチェをあてがう。
「はううっ……」
「おっと、これでは大きすぎますよね……」
 冗談めかしつつ、木の実を地べたに置いて華奢な脚で踏み潰すと、ちょうど木の枝ほどの細長い切り身になった。それをプテラのヨダレの垂れた「口」へとゆっくりと食べさせる。
「ほら、よく味わって食べなさい」
「はあっ!……あああっ……!」
「ほら、よく噛まないと……!」
 括約筋をひくひくと動かしながら、フリーザーからの恵みを受け入れようと頑張る。絆された尻穴は特に何もせずとも、ごく自然に大した太さのヤチェの切れ端をしゃぶっていく。
「はあああんっ……美味しいですっ、フリーザー様っ」
 するすると、プテラの奥へと挿入ったヤチェが、肛門から直腸の突き当たった「喉仏」に触れると、経験したことのない快楽がでんきショックのように、筋骨隆々とした肉体を激しく波打たせた。お腹の張るような息苦しさを覚えながらも、この初めての感覚が、母乳か何かのように心のどこかで待ちわびていたように思えた。
「ぎもぢっ、ぎもっぢいっ……」
「さあ、もう少し、喉まで咥えてあげなさい……!」
「はいいっ……」
 僅かに露出したヤチェの端っこを、フリーザーが翼の先端で軽く押すと、それさえも食いたがりなアヌスがたちまちにして吸い込んだ。すっぽりと直腸に収まった木の実は、内壁を心地よく冷やして、尻をキュッと引き締めさせて、感度もいっそう増した。
「はああああああっ……! ああっ」
 尻が食欲を満たしたと同時に、劣情が充満していた股間のディグダが、ドロドロで真っ白に成熟した精液を地べたにぶちまけていた。若くして官能の悦楽に溺れる翼竜の背中を、母なるフリーザーは微笑ましく見守っている。
「さすが私に見出された玉だ。見込み以上かもしれません。雌の子の悦びをこんなに早く体得できてしまうなんて」
 褒めるように、プテラの滑らかな尻を舐める。
「きゅううん……んっ、ふうん……きもちっ」
「さて、もう十分咀嚼したでしょうから、ぺっ、しないといけませんよ」
「んんっ」
 促すように優しく尻を叩くと、プテラは小さく頷いて、お尻に力を入れてぎゅっと踏ん張り始める。
「んんっ、ああっ、はああっ」
 深呼吸に合わせて、お腹を膨らましては凹ませてやると、奥に詰まっていたヤチェの切れ端が、ゆっくりながらにゅるにゅると触手のように、尻から出てくる。
「ほら、もう一踏ん張りですよ……!」
「んんふっ!……んにゅっ!……………………んんんんんんんんっ…………あっっ」
 気の抜けるような空気音と共にヤチェの切り身が発射されて、緩やかな弧を描いて二匹の間にポトリと落ちた。
 たっぷりとしゃぶられて愛液塗れになったヤチェを、フリーザーは拾い上げて、一口齧る。味をよく確かめた後で、息を切らすプテラの頬にその実をあてがう。
「さあ、食べなさい」
「はいっ、フリーザー、様っ」
 ちょっと堅く歯応えがあり、酸っぱい後味が舌に残った。ガタガタと震えながら飲み込むと、内側からカラダがポカポカしてきた。満足気にぐっしょりと体液で濡れた肉体をさすってやると、それだけでもまた屹立しそうになってくる。
「はあっ……はあっ……フリーザー様っ」
 首を力一杯もたげて、フリーザーの透き通るような腿に縋り付いて、すっかり心身ともに侍者の心が染み付いた翼竜は、尻を盛んに振り乱して懇願する。
「もっと、食べさせて下さい……腹ペコなんです、お腹にもっと入れて欲しいっ……!」
「おや、おや!」
 フリーザーは水晶のような鶏冠(とさか)に垂れる露を拭った。
「随分と手のかかる子ですね、ほらっ」
 フリーザーといえどさすがにほのかな疲労を覚えつつも、才覚ある侍りを育てる楽しみにニンマリとして、残った切れ端を、プテラの(しこ)りに二度漬けしつつ、食べさせてやった。



 あれからというもの、伝説とされる鳥ポケモンに侍るべく、心身ともに教育されたプテラは、今ではフリーザーにとってもかけがえのない僕となっていた。時折、懲罰に絶対零度を受けながらも、いつしかカラダも逞しくなり、当のフリーザーの目を見張るほどの代物となっていた。
 フリーザーの身の回りの一切をそつなくこなし、寵愛を受ける肉体の筋肉という筋肉は胸鎖から腹まで、風を受けた帆のようにしっかりと張って、快に咽ぶファルスから吐き出される精液も雄らしい濃厚さを醸し、主を大いに満足させた。
「ここからまた寒い地方へ渡っていかねばなりません。私はともかく、あなたは身の備えをしなければ凍えることもある。……準備はできていますか」
 これから二匹は、渡りのために別の地方へと旅立つところであった。ふたごじまのみならず、世界各地に祀られるフリーザーは、折々にその地を訪ね、しばし人々の崇敬を受けながら憩うことにしていた。随一の侍従たるプテラもまた、主人に付き従っていたが、当然、いずれの地も極寒の土地であるから、常々寒さ凌ぎのヤチェの実は必須である。
 さらには、今度行く土地には、自らの名を僭称する不届きな鳥がいるという風説を聞きつけていた。フリーザーは、比肩する他の大鳥たちとの会合のうえ、その地を訪ね、件の僭称者を懲らすことにしたのであるから、なおのこと長い渡りになるだろう。
「勿論です、フリーザー様」
「本当ですね?……では、ヤチェの実を食べさせてあげましょう。さあ、「口」をお開けなさい」
「はいっ」
 威勢よく答えると同時に、いつものように翼竜は四つん這いになり、両翼と一体となった指で、目一杯に「口」をパックリと開き、フリーザーの労を軽くしてやる。
 過酷な渡りの前には、あらかじめ自ら尻を弄んで肉感のあるアヌスを広げておくのは、もはやカラダに染み付いた習慣である。
「いやはや」
 うっとりとして、氷鳥は(のたま)う。
「幸いなるかな、です。あなたを侍りとして見出しえたことは!」
 フリーザーは、ヤチェの実を地べたに置いて華奢な脚で踏み潰すと、ちょうど木の枝ほどの細長い切り身にしたのを、献上するように突き出された侍者の尻穴の奥に浸した。
「ああっ!……フリーザー様っ!!」
 身悶えしながら、プテラは雄らしくも艶かしい声をあげた。
「俺っ!……あなたにお仕えして、とても幸せですうっ……!」


附:ふたごじまでナルキッソス 


 フリーザーに愛でられてからというもの、その嘴が言う「従者」としての役割はだいぶ板に付いてきたという自覚はあったが、それでも時折主人が見せる神がかりのやんごとなさに、プテラはただ慄き震えているしかなかった。
 今さっき、またしてもフリーザーからの折檻を身をもって受けたところだった。というのも、プテラの肉体の均整が、主人の審美的基準を満たさないからだった。毎日のように、フリーザーはその内臓を凍らせるような心眼で、侍る稚児の身を隅々まで点検するのだったが、ほんの少しでも肉体の秩序を乱すような贅肉を見つけると、絶対零度の後に、厳しい仕置きが待ち受けているのだった。
「恩人を裏切る者は」
 アーボックのような手触りのする、平坦な岩場に腹這いにさせた翼竜の尻を強かに翼で打ち据えながら、フリーザーは嘆息しながら言うのであった。
「地獄では最も重い罰を受けることになるのですよ?……嗚呼! 考えてご覧なさい、我々より何十倍もの大きさをした悪魔大王(ルシフェル)とやらが、あなたのことを口に挟んでカビゴンのようにもぐもぐと、その凶器のような牙で永遠にあなたの肉体を噛み砕き続けるのを」
 百回尻を叩くごとに、フリーザーは輝く氷色の翼をかざしては「レイキ」をあてて、臀部の赤く腫れて擦り切れた傷を癒しては、慈しむように舌も這わした。尻を打たれるのは痛いからいつも嫌だとプテラは思っているけれども、主人がそうした慈悲をくれると、すっかり絆されたように腰を振って善がっているのもまた自分自身だった。実際、叩かれているうちから、すっかりペニスは勃起して、筋骨隆々とした下腹にしっかりとくっつくほどに熱り立ってしまって、恥ずかしいと同時に心から嬉しいとも感じていた。
 そういう、気分というのか日和というのか、フリーザーに対する志は複雑だった。慕っている気持ちに嘘はないし、寵愛を受けているということもわかってはいるのだけれども、それでもこうした罰を受けるのは、理不尽だと言う思いは捨てきれなかった。勿論、その相手から逃れたり、あるいは牙にかけたりする勇気も覚悟もなかったから、プテラはこの神鳥に従う道を選んだのである。運命は受け入れなければならない、とは分かりきっていたのだが、完全には割り切れなかった。
 今日は千回もの尻への折檻を耐え忍んだのに、いつも貰えるヤチェの実をお預けされてしまって、プテラはひもじくふたごじまの洞窟の奥地を彷徨っていた。引き締まったお腹から絶えず腹の虫が鳴り続けていた。それに一日中フリーザーの側に侍っていたおかげで、カラダが内側から寒くなっていた。全身が疼くようにヤチェの実を求めている。
「私の侍従たるもの、あらゆる苦難に対して適応力を持たねばなりませんよ?」
 肉体だけでなく精神も筋骨隆々としなければなりませんという理屈で、肉体がフリーザー様のお眼鏡に適うまで、木の実を含めて一切の食事を取り上げられることになった。その上、鍛錬のための運動も事細かに課され、それをずっと主人のまんじりとした眼の下でこなさなければいけなかった。ずっと心臓をあの美しい翼に掴まれているようで、命がいくつあっても足りないような恐れを抱きながら、必死の思いで腹筋運動や背筋運動に腕立て伏せといった、まるでゴーリキーやカイリキーがするような項目を延々淡々と消化した。苦しい中でも回数は自分で数えねばならず、途中で数え忘れたり、数え間違いがあれば、問答無用で最初からやり直しにされた。日差しの届かない洞窟であるから、一体何時間、自分の肉体を酷使していたものかわからなかった。しかし、一分も百年もさして変わらぬというようなフリーザーと共にあっては、そんなことは些かも関係がなく、プテラはただその超越的な基準に慣れなければいけなかった。
 やっと生き地獄のような修練から解放されて、プテラは何よりも喉が渇いていた。そもそも、折檻を受けている間ずっと叫んだり呻いてばかりだったのに、それからずっと筋肉を使いっぱなしだったから、まるで風邪に罹ったかのように、喉がヒリヒリと熱かった。とにかく、水が、潤いが欲しい。
(ああ、お尻が痛いっ。カラダのあちこちが痛い。寝て起きたら、俺、動けるかな?……)
 でも、動けなかったらきっと絶対零度を喰らうんだろうな。そう考えながら、よろめくような足取りでようやく水場へ辿り着いた。ふたごじまを流れる水の勢いは激しいところが多いが、主人たるフリーザーが住まう辺りは、その流れも穏やかなのが幸いだった。しゃにむに、水面にその頑強な石頭を突っ込んで、気がおかしくなったように飲んだ。ひんやりとした水は、火照った喉を忽ちに癒してくれる。それに、厳しい仕打ちでぼんやりとした意識が一気に冴えた。生き返った、という強烈な感動が身に沁みた。思えば、何かしくじる度に、五臓六腑を弾けさせて果てているのだから、尻を叩かれた回数には及ばずとも、両爪で数えるには到底足りないだけ、生き返って、いや、フリーザー様に命を吹き込ませていただいているのであった。
 ピクリ、と股から勃ち上がってきてしまうものを感じた。水に夢中になるあまり、プテラは上体を両翼ごと地べたに伏せて、腰を不自然なほどに垂直に持ち上げていたが、その姿勢だけで肉体は稚児の快楽を誤って想起したかのようだった。さっきの打擲の合間にも、フリーザーが愛おしげに尻肌に舌を這わせた(かたじけな)さに何度も射精したというのに、底知らずのペニスだった。
 しかも、尻尾の付け根のあたりが、ぐじゅぐじゅと水音を立てて弛緩して、敢えなくも異物を懇願しているらしい。主の慈悲に焦がれるあまり、時々プテラは爪を伸ばして、そこに触れてみたこともあったが、甲斐はなかった。この短く、不器用な爪では、入口のあたりを(くすぐ)るのが精一杯で、とてもヤチェの実を食べさせてもらう時のように、最奥を弄ることはできなかった。
「はあっ!」
 息が苦しくなると、首をもたげた勢いでそのまま仰向けに倒れ込んだ。繰り返し肺に空気を取り込みながら、硬直して少し前屈みになった三日月鎌のようなセックスをピンと直立させた。周囲に誰もいないところで、隆起した秘部を冷たい外気に曝していると、気の知れた誰かに秘密を打ち明けたように清らかな気分だった。自分をすっかり自然に解放する悦びを感じながら、手すさびに爪でペニスを弾くと、カウンターするソーナンスよろしく神経質に揺れ動いた。何となく面白くて、繰り返しているうちに、カラダが火照ってきた。それが性的欲望から来るものだということは勿論知らないではなかったので、なおも心の未熟な翼竜は赤面しながらも、ヤチェの実にありつけなかったことで内側から冷えていたカラダにとって、仮初のものだろうとも、肉体が発する熱はありがたかったのである。
「はあっ……」
 すると先ほどまでの苦痛などすっかり忘れてしまったかのように、プテラは主人たる氷鳥の情愛を渇望して、その先鋭なペニスを中心にして、カラダ全体に衝動が走った。ほんの少し主からの愛が欠けただけで、肉体はこんなにも苦しむんだなと思いながら、プテラは悲鳴を挙げている腹筋に力を入れながら上体を起こした。胃腸に溜まった水を感じるくらいには飲んだはずなのに、またしても喉がカラカラに渇いていた。ガーディが舌を出して体温を整えるみたいに、上下のベロを垂らしたまま、水辺へと近寄った。
 穏やかな水面には、プテラ自身の姿が揺らめく鏡の中に写し出されていた。自分の姿をありありと観察するなんて初めてかもしれないと、プテラは考えた。いつか、グレンの研究所にいた頃は、至る所に鏡があった気がするけれど、別に気にはしなかったのだろう。あの頃は、目に映る何もかもが新鮮で面白かったから、自分の外見になんてさして関心などなかったのだ。それに比べて、フリーザーの住むふたごじまの景色はあまりにも単調だった。ズバットやゴルバットの群れ、水流に顔を出すパウワウやジュゴンが時々あるくらいで、外界から全く隔絶されているのだった。
「!」
 そんな自然の監獄にあって、世界はただプテラと相対する神たるフリーザーの二匹だけであるかのようで、遅かれ早かれ自分自身へと眼差しが注がれるのは必然だったのかもしれない。過酷な奉公をひたすら耐え忍んできたその顔つきは、元から角が立っているのに加えて、更なる荒々しい雄々しさを帯びているように見えた。無駄肉が(こそ)げ落ちたことでくっきりと浮き出た首筋と鎖骨に、ほんのりと汗の滴が張り付いていた。汗ばんだ胸板は薄いながらも筋肉質な輪郭を作っていた。息を吐くたびに、灰色の滑らかな肌が筋肉にべったりと貼り付いて、六つに分けられた鱗のような腹筋が見え隠れした。その肉の溝に挟むこむようにそそり勃った自己のペニスには血が充溢しているのが感じられる。
 筋骨隆々たる芳しい肉体を、この時プテラはまじまじと見つめたのであるが、不覚だったことには、そこに浮かんだ像が自分であると知覚するよりも早く、目の前の壮健な翼竜を美しいと思ってしまった。プテラは慌てて横に首を振って、今の考えを打ち消そうとしたが、心に焚き付けられた情欲の炎は燃え盛るばかりだった。共謀するように、ペニスもますます勃起して、先端が鳩尾(みぞおち)にまで触れようとしていた。
 きっと俺はあんなことがあったばかりだから疲れているんだと、プテラは思い込もうとした、さっきから俺の意識はずっとぼんやりとしていたんだし、あまり鏡なんて見たこともないのだから、水面に浮かんだ自分をてっきり別の何かと見間違えたとしても無理はないだなんて言い聞かせても詮ないことではありませんか?
「わっ!」
「やれやれ」
 水面に映るプテラの背後に畏れ多い輪郭が現れ出ていた。三つの氷の結晶を鶏冠に載き、鮮血よりも紅い瞳を節くれだった背中に注いでいるのは、言うまでもなくフリーザーであった。プテラの心は一時に寒くなった。
「淫らな気配を感じて訪ねてみれば、何てことはない、己が分身に見惚れていたとは」
「フ、フリーザー様! えっと、これは」
 何も言うなとばかりに、背後から心眼を打ち据えられると、プテラの背筋は凍り、強張った背中から背骨が突き出した。冷や汗が一粒一粒、石のような肌を滑っていく感覚が生々しく、まるでプテラ自身もその一粒と化したかのように思えた。
「古代の半陰陽の予言者は」
 と、フリーザーが語り始める。
「とある見目麗しき少年に対して、『自らを知らずにいれば』、老年まで生きながらえることができるだろう、と予言されました。予言の意味するところはやがて成就されます。子供とも大人とも見紛う少年は、その心に潜ませていた自惚れのために復讐の女神に呪いをかけられたのです。ある日、少年は泉のほとりへ喉の渇きを癒しにやってきました。そして、水に口をつけようとした途端、道ならぬ恋に落ちてしまった。少年は、水鏡に写った自分自身に惚れてしまったのですね。狂おしいほどの恋情に煽られて、寝食すら忘れた少年は、そのまま痩せ衰えてその魂は冥府へと下っていった……」
 露出した脈打つペニスが、敏感に寒さに震えたが、それでいて一向に萎えることはなかった。主人が郎する間、揺らめく自分の肉体に視線が釘付けになって、寧ろいっそうピクリともたげていた。その美しい声調が、プテラの尖った耳から脳へとこだまして、主の語っているのはまさしく自分自身のことであるような錯覚までした。
「いやはや、貴方の心にもそのような思い上がりが生まれるとは、殊勝なことだ」
 呆れた中にも、どこか褒めるような口振りに戸惑いながら、プテラは恐縮して頭を垂れた。峻厳な瞼をした自分自身と目が合いそうで、合わなかった。突き出た鼻先が流水に触れて、その像を乱したからだった。
 氷の粒子が寄り集まってできたような、幻のような翼がやにわにプテラの体を包み込む。欲情して火照った肉体に、冷えた翼の刺激は強かった。反射的に身を震わせると、勃起したセックスもコンパンの触覚のようにたわわに揺れた。
「あ、あのっ、フリーザー様、お、俺、じゃなくて、私はどうすれば……」
「貴方は有りうべき侍りの姿に近づいたのです」
 事もなげに、フリーザーは囁いた。吐く息すらも吹雪のように冷たく、微睡んだプテラの意識を冴えさせた。
「誇るべきことですよ。なおも鍛錬は課しますけれど、ヤチェを与えるのに、(やぶさ)かではありませんよ……?」
「あっ!」
 ヤチェ、という言葉を美しい主人の嘴から聞いた途端、プテラはカラダ中を痙攣させて、来るべき悦びに震え上がった。その音の響きによって、「ヤチェ」という単語が含むあらゆる芳しい意味合いが果汁のように瞬時に弾けて、若人たるプテラを陶酔させた。のたうったペニスが、危うく吐精をしかけた。
「私の声で果てかけるとは、まったく、貪婪(どんらん)な宮仕えであることよ……」
 しもべの性の震えをその身に感じて、フリーザーは穏和な息を吐いた。思わず漏れるプテラの熱い息と混ざり合って、そこに温暖な気流が生まれる。
「さて、喉が渇いていたのでしょう?……飲んだら、どうです」
 そう言われると、枯れた喉の腫れたような痛みがずきん、と疼いた。あまりの渇きに、声すら出なかった。はい、と頷くと、プテラは四つん這いの姿勢になって、間近に水鏡を見つめた。自分が見つめる自分が自分を見つめている自分が自分と口づけをしようとしている自分が待ち焦がれた様子で自分を待ち受けているその眼差しは凛々しくも、これから混ざり合う悦楽に蕩けていた。
 上がる息を抑えて、水面に口をつけた。イーブイが給水するように、舌をペロペロとちらつかせながらガラガラした喉をうるかした。
「んっ」
 背後で突き出された尻を撫でさすられているのを感じて、忽ちにして臀部の筋肉をきゅうと引き締めると、プテラは徒らに腰を振った。
「成程」
 強張った大臀を氷翼で一打ちして、もどかしげな羽つきで揉みしだきながら、フリーザーは丹念に稚児の肉体を検分していた。
「無駄のない引き締まりをして、しかもプリンの肌のように肌触りは柔らかだ。主人に供するには、なかなか上等な肉、といったところでしょうか」
「んふうっ!……んんっ」
 夢中で水を掻き込むうちに、フリーザー様のありがたい御声を聴いては、絆されたように腰のうねりが止まらない。尻肉を弄られているだけで、心身いっぱいに官能が感じられて幸福だった。むっちりとした尻尾が自ずから高く持ち上がって主人の手間を省いた。慈悲深き翼が、盛り上がった肉をゆっくりと捏ねくり回して、ぎゅうと外側へ押し出すと、その谷間と尾の付け根に隠されたアヌスが現れた。
「……んん、んーんうっ……!」
「おやおや、何て淫らな縦割れなんでしょう!」
 フリーザーの語気に抑制された興奮と感嘆が混じっていた。無言のうちに尻をしばく頻度が増えると、アーボックのようにヌルヌルとした肌が、痛みと恥じらいと悦びにほんのりと赤みを帯びて、欲しがるように淫らに尻が波打った。
「どうしたのですか?……さっきから不遜にも腰を揺り動かすなどして……おねだりをしたいのなら、はっきりと口に出して言わねば駄目だと、いつも言っているではありませんか!」
「ぎゃあんっ!」
 促すように、手厳しく三発折檻すると、堪らずプテラは首をきつく上げて、嬌声を出した。水面に映る自分もまた、同じように首をもたげた。
「はあっ、はあっ、ああはんっ」
「え? 何を言いたいのです?」
「フ、フリーザァ、様ぁ」
 抑揚がおかしかったので、主人はもう一度三発、激しく体刑を加えた。
「んううっ!……ふうんんっ!……きゅうんっ!」
「私の稚児になったからには、自らの意志は明瞭に、かつ明晰に、しかも気高くなければなりませんよ? ほら、もう一度言ってご覧なさい!」
「はぁ、はぁ……フリーザー様! 卑しき下僕からのご無礼をお許し下さい」
 嗄れた喉と、腫れた尻の鈍痛に喘ぎながら、ありったけの理性を振り絞って、翼竜は懇願する。
「ひもじい私にヤチェの実をあてがって欲しいです……!」
「嗚呼、下賤な貴方にしては、随分と妙な心ばえではありませんか!」
 よく解された尻の肉にありがたい舌がぺったりとくっついた。氷鳥ながら温もりをもった舌が触れると、その舌先から主人の精気が尻へ注がれるように想像して、気が狂いそうになって、腹背から尻まで乳酸の溜まった筋肉を力一杯に収縮させながら、フリーザーの慈悲に感謝を示すべく、渾身の奉仕を見せた。
 嗜めるようにフリーザーは、翼を鋼のようにして、手厳しい一発でしもべを悶絶させる。
「まったく! まださして何もしていないというのに、何と媚びた品を作るのでしょう……!」
「ああっ、ああんっ」
 雄らしからぬ艶やかな喘ぎと共に、翼で厳しくも優しい愛撫をされたプテラの竿から、生糸のような精液が放たれて、地面を汚した。その量は年頃らしくまるで際限が無く、とくとくと注がれる白濁が、岩場を、草地を、逞しい肉体さえも真っ白にしても、まだ放たれ続けた。はしたない欲望の子種が、おねしょのように、翼竜の周囲にじんわりと広がっていく。
「はあっ、はあっ、フリーザー様、申し訳、ありませんっ、んんっ」
「やれやれ、とんだ出っ歯のカメックスとは、貴方みたいな者を言うのですよ!」
 ぷるぷると震える尻を撫でさすりながら、煩悩に塗れた稚児を憐れんでぴしゃりと叩くと、竿の先からなおも出切らなかった分が飛び出してきた。
「フリーザー様っ、俺っ、じゃなくて私はぁ……」
「はいはい、落ち着いて、丁寧に言ってご覧なさい?」
「フリーザー様、ひもじくて、それにカラダの中が凍えて死にそうです。どうか、私にお恵みを!……」
 翼竜の哀願は、うろ覚えの呪文を唱えるような虚ろな言葉であったが、そこに込められた想いは切実であった。しばらくの間黙りこくって、フリーザーは深く頷いた。
「仕方のない子だ」
 神にしか窺い知れぬ不思議な力で、その妙なる翼の上にヤチェの実を顕現させる。地面に転がして手際よく華奢な脚で握り潰し、棒状に仕立て上げると、器用に羽根の間に挟み込んで、まずは一(ねぶ)り舌を這わせた。
「んふぅ……」
 水面ごしに、その棒を見ただけで、甘い声が稚児たる翼竜から漏れた。尻尾を一杯に反らせて、槍のような先端が背中の突起に触れる。自ずと、両爪が尻の肉を掴んでぐいと左右へ引き伸ばし、貪欲なアナルを神である主人に捧げた。焦ったさに、腸液さえ垂れている。
「さて、いつにも増して倒錯的であるようですから、一際太くしてあげましたよ」
「お、お心遣い感謝しますっ、フリーザー様っ!」
「ほら、しっかりと食べなさいな……!」
「はい。欲しいです、フリーザー様」
 翼をニドクインの乳房を思わせる尻肉の片方に置きながら、もう片方の翼に挟んだヤチェの切身を開いた尻の口につけた。
「んうううっ」
 プテラは臀部の筋肉をひくひくさせて、ヤチェの端っこをがっつりと咥えると、ピジョットが餌のキャタピーを一飲みするように、するすると自分の中へと受け入れていく。
「相変わらず、世話の焼ける、赤子のような下の口をしていますね……」
「んうっ、んううっ」
「駄目ですよ。今度のは、しっかりと力を抜かないと全部挿入りませんよ?」
「ん……」
 促すように、フリーザーのいつくしい翼でぱんと臀部を打たれると、プテラは一思いに息を吐いて脱力して、主の負担を減らすべく尻を横に揺さぶりながら、挿入をてだすけしてやった。
「ううんっ! あああっ!」
 異物を尻に受け入れる痛みが、(にわか)に快楽に裏返った瞬間、いたいけな翼竜が一際、扇情的な喘ぎ声を漏らすに耐えず、口をぱっくりと開いて叫ぶのだった。(かしず)く子が理性を振り切って感動を表している姿は、無知蒙昧な若人の導き甲斐があったものだとフリーザーを深く感じ入らせるのだった。
「フリーザー様! ああはっ、気持ちいいです、とてもっ……」
 興奮の余りにまたぞろ勃起し出した、恥も外聞もないプテラの立派な男根には及ばずとも、なかなかの長さと太さのあるヤチェが、そろそろすっぽりとアヌスの中へ収まりそうだった。わずかに尻からはみ出るばかりになった木の実の破片を摘みながら、フリーザーは聖母とも父神ともつかぬ笑みを浮かべる。先鋭が内奥の(しこ)りに接したのを確認して、ぎゅうと羽根に力を入れて、皺と(ひだ)をなすアヌスの収縮に逆らった。
「うううふうっ!」
 つん、と敏感な部位を触れられて、思わず先走って悶絶しそうになったところで寸止めをさせられたので、プテラはもどかしさに水面の自分に口づけした。向こう側の俺も同じことを考えているんだなと思うと、雄々しいペニスがいっそう漲って、また破裂しそうだった。全身をひくつかせながら歓喜する若く美しい翼竜を憐れがりながら、フリーザーは意地悪く突き挿したヤチェをぐいと引き出した。
「んんうううっ……!」
「咀嚼もせずに飲み込むなんて、お行儀が悪い。そんなことも、私がしないと出来ないのですか?」
 悪い子だ、と囁きながらフリーザーは羽根と羽根の間に握りしめた男根のようなヤチェで、プテラの内壁の穢れを払うように激しく擦り始めた。
「んっ!……んんんっ!……んんっ!」
「ほら、しっかりと噛み砕かねば!」
「んああっ! あううっ! あああんっ!」
「しっかりと血肉にするのですよ……さあ!」
「やああっ! フリーザー様ああんっ! 気持ぢいでふうっ、嬉ぢいでじゅっ!」
 顎をくいと天上へと引き上げて狂喜する。奥の一番弱いところを、鐘のように打ち鳴らされるたびに、ずっと欲求していたものに辿り着いた安堵で、また絶頂に達してしまうのを何とか堪えながら、尻の筋肉をきゅっと引き締めて、その辺りが窪むと、カブトの甲羅のように見えた。
 水面に目をやると、快楽に引き攣り、歪んで蕩ける自分の顔がよく観察できた。畏き主人から尻に給餌されて、内から幸せそうな表情をしていた。それに加えて、後ろで急な傾斜を描く滑らかな腰と、てかてかと照る頂点の臀部、そこからラプラスの首のようにしな垂れる尻尾からなる実像は、快楽に浸っている最中に見てもはしたないのだが、そのあられもない姿を晒していること、それを見ていること、見られていることに対して、稚児ながら浅ましい興奮を覚えて、がっちりとしなやかな肉体の陰に隠れたセックスが最大限勃起した。
「うっふううううっ……!」
 水の鏡像と官能的にまぐわいながら、尻に走る慈愛への喜びを表現するには淫らな腰だけでは足りなくなって、プテラはふっくらとした腹筋に沿う肉棒を片爪で根本から握りしめると、溢れそうな感情をぶつけるために一心にオナニーした。ヒトカゲの腹のような握り心地なのに、芯はイワークのように硬いそれは、握り潰そうとばかりにきつく掴んで乱暴に扱けば扱くほど、被虐的に快感が倍増した。冷水と唾液、汗と精液、腸液と果汁が入り混じって、精悍な肉体から若々しい雄の蒸気が立ち昇るのには、召し使う立場のフリーザーもさすがに目が眩みそうになる。
「んんんんんっ! んんんんんっ!」
「嗚呼!」
 片翼で目元を覆いながらフリーザーが叫ぶ。
「理性を投擲した若い倒錯者の無様な放蕩ぶりが、ここまで目に余るものだとは!」
「んふうっ、うううふう……んんっ、んっ……」
「何てことだ! アルセウス神の被造物の倒錯もここまで来たものか! (おぞま)ましい!」
「ふあああっ! あっ、うぅふううっ! ふ、フリーザー様あっ……」
「何です? 変態の子よ、言ってみなさい」
「私はあっ、俺はああっ、んふうっ、フリーザー様に愛されて、っへううんっ、胸があっ、いっぱいでじゅうぅん!」
已矣哉(やんぬるかな)!」
 フリーザーは世紀病に罹った詩人のように深く嘆息した。俄に、抽き出しては抜いていたヤチェの欠片を物欲しげなアヌスから引き離した。合わせて、自慰する片爪も、接吻する口元もぴたりと止まった。水を打ったような静けさが、ふたごじまを包んだ。
「ん……」
「随分と、素直な淫乱に育ったものだ」
 哀れなるかな、と(うそぶ)きながらミニリュウのようなプテラの尻肌を、唾液の音を甘く立てつつ舐めると、それを(おかず)にしてプテラは欲求不満の肉棒を一気に扱き抜いた。栓が取れた性器から呆気なく、ビードルの吐く糸よりも清らかな白線が撒かれる。止めどなく放出される間、二匹は陶然としていた。凛々しい翼竜の苦しげな呼吸音だけが、閉じられた空間に艶かしく響いていた。
「我が神殿に(かどわ)かした頃とは、精神も肉体も、すっかり大人びたことよ」
「はあっ、はあっ、誉めていただけて、光栄です、んうっ」
「さて、今度はもっとじっくりと味わわせてあげましょうか……!」
「んっ」
 フリーザーは、腸液塗れのヤチェに接吻を施すと、餌を求める早るポッポの雛のように、期待にぐっと突き出されるプテラのアナルに再びその切身をあてがった。射精したばかりのペニスがもう勃ち直っていた。
「ううんっ」
「さあ、挿入()れますよ……」
 鼻腔からたっぷりと空気を吐きながら四股の力を抜いて、腰をくねくねと波打たせると、みるみると太巻が尻の中に取り込まれていく。これほどの名器なら、アーボ一匹くらいなら体内に収まってしまうのではないかと思われた。
「んっ! うふうっ……!」
 享楽のあまりに、水中に顔を埋める孤竜の姿もまたフリーザーの冷徹な頬を緩ませる。傅きがいがあったものだと、甲斐甲斐しい心境で、ヤチェを直腸にすっかり収めてしまうプテラの淫靡振りを見守っていた。
「どうです、美味しいですか」
「はいっ……フリーザー様っ、とっても美味しいですうっ」
 至福の表情を水面にも浮かべて、プテラがきゅっと大臀の肉を引き締めると、内側の腸壁がヤチェの切身をしっかりと包み込む。すると、果実の冷んやりとした触感が、肉体の内側に直に伝わっていたいけな翼竜を身震いさせるが、しばらくすると、ヤチェの効用がよく効いてきて、じわじわと凍えた身を暖めていくのであった。筋肉質で痩躯な全身に、薔薇のような赤みが帯びてきた。それに、肉を収縮させるたびに、体内で揉みくちゃにされる果実の先端が、翼竜の秘部を丁度よく突いてくれるのがたまらなくて、いつまでもきのみを口から離そうとせずに、尻をひくひくと動かしては、雄とも雌とも知れない甘やかな喘ぎをあげ続けた。
「雌の子の悦びの方が男のそれより大きい、とは言いますが」
 肩を叩くようにプテラの尻に翼を置いて神妙な面持ちをしたフリーザーが言う。
「貴方はどちらの悦びも知ってしまった。まったく、とんでもない色好みもあったものですね……!」
「はいっ、んっ、ううっ、フリーザー様、ああっ、俺、心もカラダもポカポカして、気持ちがよくて、とても幸福ですっ、んんっ」
 情感あまって、爪で肉棒を握って懸命に扱くと、幾夜もの雄の悦びを一度に味わったペニスから、尽きることのない子種が三度(みたび)ふたごじまの大地に蒔かれた。プテラの周りは、そこだけ雪が降られたかのように、一面白銀であった。
「はあっ、はあああっ……」
 胸郭が皮膚越しに見え隠れするほど激しい息遣いをしながら、翼竜はふたごじまを流れる比較的穏やかな水流を見つめた。同じように主人に愛されて、勇ましくも官能に蕩けた表情をした自分自身に情欲が掻き立てられて、カラダ中が満たされた思いの中で、うっとりと顔を水中に突っ込んで至福の極みであった。



後書き

これは、読まなくてもさほど問題ない後書き。
先日の爆誕するトライフォースに引き続いての投稿になります。前のやつと同様、pixivで7月に投稿したフリーザー×プテラ♂のSSに、おまけの書き下ろしを追加して、ついでに本編も若干の修正をした、のですがおまけも結構長くなったので、連作みたいな感じですね。
内容については……何だろう? 春〜夏にかけてひたすら推しポケであるプテラを「愛でる」行為をしていた時にふと、プテラとフリーザー、グレンじまとふたごじまって地理的に近いから、イケるのでは? という見切り発車で書いたものでした。確か『鎧の孤島』の前後に、三鳥ルギアと同時に思いついて、7月に立て続けに仕上げてたような……?
その結果、ガチホモなのかBLなのか、耽美なのかSMなのか稚児プレイなのかおねショタなのか得体の知れない、推しに対してひたすら性癖をモルペコした闇鍋話(?)になりました。おまけも書いてたらなおさら! それとフリーザー様、最初は超然としたキャラをイメージしてたのに、書いてるうちにただの変態になりましたね……
つくづく、最推しを小説で書くのは難しいと思わされたのでした。後書き終わりっ。
さて、次の妄想へ移ろう。

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Last-modified: 2020-11-03 (火) 21:00:02
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