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爆誕するトライフォース

/爆誕するトライフォース

 ※官能要素有 とりわけ巨根からの腹ボコ要素があります。念のため、ご注意下さい。


 カントー地方は年の初めから異常気象に見舞われていた。四月になっても雪が降り続け、ようやく春が訪れたかと思えば、また雪が降り、桜が咲いては散り、川面が凍ったり溶けたりを繰り返したかと思えば、唐突に真夏のような1日が挟まり、激しい夕立が襲い。天候の乱れはいっそう酷く、時には一日の間に春のような陽気があり、夏のようなうだる暑さと、冬のような凍てつく寒さが混じりあった。
 まるで四季が喧嘩をしているかのようだった。
 困り果てた人々は、口々に季節を司る「彼ら」が怒っているのだと考え、その怒りを鎮めるべく、ジョウト地方に参詣する者まで現れた。伝説の鳥ポケモンと称えられるサンダー・ファイヤー・フリーザーを束ねる存在であり、潮流を司る「海の神」に縋ろうとしたのである。
 人々の祈りは、海の底深く眠る神に届いた。神はようやく、重い腰を上げる。


爆誕するトライフォース 作:群々


爆誕するトライフォース 


 うずまきじま、最深部。注連縄(しめなわ)の巡らされた大岩を玉座として、ルギアは瞑想するように目を閉じている。
 というよりも、目の前で姦しく言い争う三鳥の主張に耳を傾けようとしている。彼らは、親たるルギアに呼び出され、カントーの天候が乱れた原因を問い質されているところであった。
「何かと思って目覚めてみれば」
 話を一通り理解したところで、ルギアは苦々しく口を開く。
「単なる子ども同士の、くだらぬ喧嘩ではないか」
「そんなことはございません!」
 フリーザーが即座に反論する。
「私は、この恥知らずに謂れのない侮辱を受けたのですよ!」
「何、言ってんだ」
 舌打ちしながら、サンダーがせせら笑う。
「当然のことを言っただけだろ? いちいち神様気取りなあんたの態度が気に入らない、ってさ?」
「何を言う! 実際、我々は「神」ではありませんか! ありうべき立ち居振る舞いをするというのが、道理というものではないですか!」
「馬鹿じゃねえの。度が過ぎてるっつってんだよ、度が!」
「痴れた鳥め」
 フリーザーは無骨な雷鳥を見下すように、鼻を鳴らし、自慢の白銀の鳩胸をさする。サンダーは相手の方を見ようともしなかった。
「そんなことより」
 そんなこと、とは何ですか、というフリーザーの怒号をいなしつつ、サンダーが言う。
「問題は、ファイヤーの野郎だ。身の程知らずが、自惚れやがって……!」
 名指しされたファイヤーの鶏冠の炎が黄色く燃え盛る。
「不細工と言ったのが、そんなに不満なのかな?」
「テメエにだけは、言われたくねえな!」
 ファイヤーは苦笑いする。
「だったら、いい加減、仮の宿りを見つけていただたきたいな。貴様、あの無人の発電所を追い立てられてからというもの、忙しなくブラブラしやがって。ドードリオと見分けもつかない」
「ああ?」
 サンダーはファイヤーの首元に詰め寄り、長い嘴を喉へと突き立てる。炎鳥は踏ん反り返って、いきり立つサンダーをにらみつける。二羽の様子を、軽蔑するようにフリーザーが一瞥する。
「なるほど。ドードリオというのはいい喩えですね! 伝説の威厳も何もかも欠如しているという意味では。どうです、草叢にでも生息してみたらいかがですか?」
 けっ。サンダーは地べたに唾を吐く。放たれたその穢れを、ルギアが苦々しい思いで見つめる。
「ルギア殿。こんなオニドリルの言うことなど、聞き流して構いませんよ」
「そんな例え、ちっとも面白くねーから」
 ファイヤーは無視して、話を続ける。
「しかし、先ほどこいつの言ったことには同意する。フリーザー、貴様のこの頃の振る舞いは異常だ」
「何が、でしょう?」
「しらばっくれるな」
 ファイヤーが、にらみつける。
「ルギア殿。こいつをこれ以上放っておいてはいけません。父殺しだって厭わない奴なのですよ、このナルキッソスめは」
「ふん!」
 冷ややかな目線を、ファイヤーに向ける。
「……にらみつけることしか能のない鳥さんに言われたくはありませんね!」
 サンダーが含み笑いする。
「言えてる」
「な、なんだと!」
「事実ではありませんか。あなた、住処のポケモンたちにも馬鹿にされてるそうじゃないですか」
「だ、誰が、そんな……出任せを並べても無駄だ!」
「俺も聞いたわー。ゴローンとかが散々陰口してたぜ、あんたの」
「そっ、そんなっ……ことっ……」
 睨め付ける瞳がもう潤んでいる。あれだけ燃え盛っていた炎は、弱ったヒトカゲのような有様だった。
「まったく、あなたのせいで私の誉れまで汚すのはやめてほしいものですね」
 フリーザーが勝ち誇ったような表情で言う。
「第一、伝説と呼ばれる身なのに、ろくな住処を持たないのは論外なのです。私たちは、圧倒的な神秘を身に(まと)うべき存在なのに」
「あ? それ、俺に言ってんのか?」
 今度は、サンダーがフリーザーの胸元に嘴を突きつける。二羽が冷酷な目つきをして、互いのプレッシャーをぶつけ合う。
「何のことでしょう? オニドリル如きが、私に近づかないでくださいよ」
「俺は、オニドリルじゃねえ! そういう、自分以外をなんでもかんでも見下す態度が、大っ嫌いだっつってんだよ!」
 目に涙を溜めながらファイヤーが頷く。
「嘆かわしい。いったいいつからそんな下賤な考えを持つようになってしまったのか」
「ふたごじまなんて何もねえところに引き篭もってっから、了見が狭くなんだよ」
「はい?」
「………………そうだ、そうだ」
「あそこは我が神殿です! これ以上侮辱を続けるのなら、死の覚悟をしておくのですね!」
「へー、その当たんないぜったいれいどでか? やれるもんならやってみろよ!」
「………………神殿もなにも、うずまきじまに比べたら、屁でもないじゃないか」
「黙れ! 黙れ!」
「それしか言うことねーのかよ、「フリーザー様」ぁ?」
「まったく、なんてひどい中傷でしょう!」
 フリーザーは二羽の姿を見たくもないと言わんばかりに、翼で目を覆った。
「ルギア様! 全てはこの見下げ果てた鳥たちのせいなのです。どうか、この馬鹿どもに伝説の威厳を教えてやってくださいませ!」
「父さんっ!」
 サンダーがルギアの腹に詰め寄る。嘴が微かに脂肪の中に沈み込む。
「悪いのはこいつらだ! 騙されるなよ! こいつら、最近調子にのってるんだからさ!」
 口惜しげに、ファイヤーの瞳がルギアを見据える。
「あなたなら、きっと私の思いを理解してくだいますね、ルギア殿?」
「ルギア様!」
「父さん!」
「ルギア殿ぉ!」
 三鳥が一斉に、ルギアに詰め寄る。揉み合いへし合いしながら、また同じ言い争い、罵詈雑言の投げ合いが始まった。
 ルギアは相変わらず目を瞑りながら、銀色の羽根と一体になった手で、目元のヒレを何度か弾いた。薄青のお腹が頻りに揉まれているのを感じる。けたたましい三鳥の罵り合い。それに反して研ぎ澄まされる思慮。
 ルギアはゆっくりと目を開く。
 罵り合っていた三羽が、急に黙り込む。みな一様に恐る恐る親の顔を見上げる。眼光がギラリと青白く光って、いかなる表情も伺うことができない。突然、脳味噌をいじられているような寒気を感じる。
(貴様らは我を怒らせた……)
 サンダーの瞳孔が急速に細まり、ビクビクと震える。
(無用な諍いを起こし、玩具を弄ぶが如く、徒らに秩序を乱し……)
 ファイヤーの目は虚ろだ。
(その為に、我は要らぬ目覚めをする羽目となったのだ……)
 フリーザーは若干、不服そうに目を逸らす。
(よって、全員に罰を与えよう)
 三鳥とも、ぎょっとして、たまらずにルギアのがっしりとした腿に縋って、抗議する。
「ルギア様、嗚呼、なんて酔狂な!」
「俺は悪くないって、全、然!」
「私に罰を受けるべき点はなんらないではありませんか、そうでしょうルギア殿!」
(一度言ったことを、覆すつもりは、ない)
 途端に、物言わぬ力によって、石室の扉が固く封じられた。
(とにかく、お前たちが和睦するまで、ここから帰さぬ……)
 突如として、激しい耳鳴りが三鳥を襲い、脳が犯されたかのように悶えさせる。アルフの遺跡に流れる怪電波を思わせる超音波が、それぞれの理性を大いに苛む。
「嗚呼っ!」
 たまらず、フリーザーが絶叫する。
「ルギア様っ、駄目っ、狂う……!」
「うっ……頭が、頭がっ!……」
「びぃぇっ」
 みな一様に頭を抱えて、ルギアの足元に平伏すように倒れた。怪音は、ますますつんざくように高く、頭蓋に反響し、そのまま音立てて割れてしまいそうだった。いっそ、割れてしまった方がよかったかもしれないくらいの痛みだった。
(やん)(ぬる)(かな)、ルギア様……」
 フリーザーが息も絶え絶えに懇願する。
「どうか、お許しを……このままではみんな、死んでしまいます……!」
 ルギアは黙っている。不気味な眼光はひとときも失せることがない。
「頼みますうっ……」
 無慈悲な海神は、頑なだった。キリキリと上げられていく音圧が、脳を麻痺させ、考えることも、口に出すことも困難にさせていく。コダックの数万倍もの苦悩。
「あああああああああああああああっ!!」
 サンダーは、丸焦げになったコラッタのように仰向けに倒れ、尖った毛並みを振り乱してのたうち回っていた。
「たずけで、たずけでええええっ!……とうざあんっ」
「…………」
「死ぬぅ! 死ぬぅぅぅ!」
 いっそう心を頑なにして、三鳥の悶絶する姿を無言で見下ろすルギアは、ふくよかな体型に比して、恐るべき威圧感を放つ。彼らよりも一回りも、二回りもする巨躯を持つ父なる神は、これまでに見せたことのない、得体の知れない驚異を身に纏っていた。
 確かに、三鳥もまた驚異的な存在であることには変わりなかった。しかし、それすら包含するような絶対的な、逆らいがたい力というのも存在することを、その沈黙によって、ルギアははっきりと分からせていた。神々の秩序は、下界の秩序よりも確固としていて、それがために残酷な一面も持ち合わせていることを、体現していた。
「も゛」
 奇声を上げてファイヤーが泡を吹いて伸びる。フリーザーとサンダーも、失神寸前の体。しかし石室に響き渡る阿鼻叫喚も、ルギアには何の哀れも催さない。それが、自らの子どもたちであったとしても、触れられた逆鱗は容赦がなかった。
「はあっ……はあっ……ルギア、様……」
 高慢なプライドだけで持ち堪えていたフリーザーが、全身に走る電撃のような楔に悶えながらも立ち上がり、ふらふらとルギアの前に跪く。絞り出される哀願の声は、熱に浮かされているかのように、色っぽくもある。
「私たちが、悪かったです……申し訳、ありません……どんな、罰、でも受け、ますからっ……」
 フリーザーは激痛に撃ち抜かれたように腹這ったのを、なんとか持ち直した。
「どうか! これだけは、止めて、くだ、さい……!」
 サンダーの目はやぶにらみになって、意識の糸が切れる直前といった塩梅だった。ファイヤーは嘴をガタガタ言わして、言葉にならない譫言を呟いていた。もう限界だった。自分たちの親鳥は、怒りのために我が子さえ滅ぼすのも厭わないことを、フリーザーは恐れ多くも理解した。
(しからば)
 ルギアが重々しく脳内に語りかけた。
(貴様らの身を以て、誠意を示せよ)
 その言葉の後で、三鳥を死の淵まで苛んだ耳鳴りが止んだ。
「はあっ!……はあっ!」
 頭蓋にこだます余韻が、フリーザー自身の尾のように長引く。大量の酒精(アルコール)を摂取したかのように、クラクラで、意識は朦朧としている。吐き気だってする。しかし、あの拷問のような苦しみからは一旦解放されたことの安堵の方が大きかった。
「慈悲を、感謝、致します、ルギア、様」
 強大な神の存在を痛感しながら、フリーザーは口にした。どこか口にさせられているような感じもあった。いや、口にせざるを得ないのだった。
「お前たち、目を覚ましなさい……」
 水色に透き通った翼で、サンダーを介抱する。
「あっ……あう……あう」
 中毒に侵されたように、サンダーの首は勝手にゆらゆらと揺れていた。稲妻を思わせる立派な嘴からは信じられない量の唾液が漏れ出して、無様だった。普段の気性からはおよそ想像もつかない姿に、フリーザーは慄然とする。
 その脇で、早くから意識を喪失していたファイヤーはさらに、惨たらしい姿態を晒していた。吹き出した泡は、嘔吐物のように嘴から顔面をいっぱいに覆っていた。瞳からは光が消え、鶏冠や翼や尾にまとわりつく炎は残り火のように微かだった。見てくれはまさしく、大きいだけのヒヨコで、伝説の威厳など見出すべくもない。
「これでよくわかっただろう」
 ルギアが口を開いたのに、フリーザーは本能的な恐怖を覚え、びくりとした。まるで、古代のえもいわれぬ石像が突然喋り出したかのようであった。
「貴様らは、畢竟(ひっきょう)、我に従属する運命であることがな。そこからは、いかなる手を使おうとも、逃れることはできないのだ」
 フリーザーは何も言うことができなかった。
「それにフリーザーよ。貴様は下界のあらゆるものを見下しているようだが、これでよくわかっただろう? 貴様は、一介のコラッタやポッポより、遙かに悲惨な存在であるということをな」
 脚がガクガクと震えていた。自然と、ルギアの足元に跪き、力を失ったように平伏していた。(たお)れたピジョットのように、ふしだらで、しどけなかった。
「嗚呼、ルギア様」
 啓示を受けたかのように、心を震わせながらフリーザーは主神を讃えた。
「私たちは過ちました。どうか、身の程知らずの私たちに罰をっ……!」
 すると不思議な光が三鳥を包んだ。失われていた気力がみるみるうちに肉の中を巡っていくのが感じられた。いまさっきまでの疲弊が、幻のように掻き消えていた。
 ようやくサンダーとファイヤーも正気を取り戻し、起き上がる。劈かれた頭蓋は嘘のように軽く、ただ慈悲を施したルギアへの心底からの愛だけが残っていた。
「父さんっ」
 サンダーが即座にルギアの腹に抱きつく。
「すみませんでしたっ。俺、悪いことをしましたっ……!」
「どうか我らを哀れみ給え、ルギア殿……」
 跪いて深く頭を下げて、ファイヤーがルギアの足の指に額を合わせた。自らの浅ましさにすすり泣く三鳥の、か弱い身どもを、ルギアの太く大きな(かいな)がそうっと包み込んだ。
「如何にも。貴様たちは罪を、犯してしまった」
 玉音が耳から脳へ心地よく轟いた。
「その罪に対して、受けて然るべき罰を与えることとしよう」
「あなたになら、肉塊にされても悦びとなりましょう、ルギア様……」
「俺をっ、ミンチにでもなんでもしてくれよ、父さん!」
「ルギア殿、私を丸焼きにして食べて下さい!……」
 心奪われた三鳥が、ルギアに懲罰を迫る姿は、既にして淫乱の体をなしており、思わずルギアは苦笑する一方、我が子である鳥たちのいたいけさに、溜まりかねるものを一挙に感じずにはいなかった。
 たちまちにして、聖杯が生え伸びてきた。子鳥たちは身を仰け反らせて、一様に感嘆の鳴き声を上げる。自分らの胴をも凌駕するほどの巨根は、海の底での長い眠りの間を通じて体内で熟成された、父の臭いを醸していた。その臭気は石室中にガスのように充満していったが、子なる三鳥には、情欲を焚きつける媚薬も同然であった。
 フリーザーの嘴がそっと開いて、滑らかな舌を出すと、日光を求める蔓のように伸びて、ルギアの根元をくすぐる。他の二羽も触発されるように、我こそがと舌を出し、視界一杯に広がる男根にありつき始めた。
 舐めろ、と命令されるまでもなく、三鳥は為すべきことを為していた。それは主人の意を汲んだというのではない。それより遥か以前、ルギアに属するものとしての役割を与えられた瞬間から、こうなる定めであったかのようだった。
「美味しいっ、美味しいっ」
 フリーザーは首を軽くもたげながら、父であり主人である存在を慕って、懸命な口淫(フェラチオ)に励んでいた。目は蕩けたように微睡み、健気な舌が男根(ファルス)の浮き出た筋を伝うたびに、体の内側から込み上げてくる歓喜に咽ぶのだった。御自ら差し出し、その絶対的な権威を誇るかのような聖剣を、一思いに咥えることのできない貧弱な嘴が、憎く思われた。
 嘴への憎悪は、サンダーとファイヤーにとってはより深刻なものであった。長すぎる上嘴が、主人との接触を邪魔していた。二羽ともヨルノゾクのように無理に首を傾けなければならず、それを以てしても十分に愛撫することがかなわず、もどかしくてならなかった。
「ああ、父さんっ、愛してるっ」
 やにむに、サンダーは立ち上がると、そのままルギアの神聖な茎に抱きついて、頬を擦った。雷撃を思わせるような見事な黄色の羽根が縺れ合う。一体と化すことを切望しながら、血と汗と性からなる濃厚な臭いをサンダーは吸い込み、その刺激的な芳香を楽しむように肺一杯に閉じ込めてから、口と鼻から物惜し気に吐き出した。
「ん゛うううぅ……」
 ファイヤーもまた、嘴では飽き足らずに、御根のそばに恭しく跪くと、下半身を突き出して、自らの股を擦り合わせ始めた。臭気を鼻腔に触れたときからもう、卑しく濡れていた秘部が触れ合わさると、凄まじい程の悦びがファイヤーを串刺しにし、驚いて水面から飛び出したミニリュウさながらの反り返りを見せた。
「うむ」
 三鳥三様の求愛に、極太の冠もさすがに感じ入る。ただでさえ軟弱なものを平伏させるにふさわしいそれが、寵愛を受けてさらに一回り大きくなり、硬さを増した。忘我して自らに奉仕する僕たる子らを、ルギアは大いなる翼で愛撫する。サンダーの針のような翼を、フリーザーの乱れた尾羽を、ファイヤーの悦び震える喉頭に触れると、三鳥とも施しを受けたかのように歓喜し、いっそう淫らに姿態をうねらせ、主人を満足させようと躍起になる。
「我が自然の化身どもよ、大いに(みだ)れるがいい……!」
 フリーザーが聖根に甘噛みした。飼いたてのオニスズメのような、甘やかな噛り付きが、ルギアの心を和ませる。サンダーの頬から弾ける微量の電撃は、いい按摩であった。恋い焦がれるファイヤーの献身が、ルギアの海底で抑え付けられてきた欲望を引き出してくれる。
 甘いため息と同時に、聖欲がいっそうと屹立する。
 プクリンのように膨れ上がったそれを、必死に扱き愛そうとするが、その絶倫は、徐々に三鳥の手に余りつつもあった。皆、慈愛に飢える股が濡れそぼち、だらしなく弛緩し、ドロドロとした愛液が漏れ出している御ありさまである。
 主の絶頂は遠かった。責め立てているはずの方が先に果ててしまいそうな倒錯ぶりである。
「軟弱者どもめ」
 見かねたルギアは柔和に罵る。
「三羽がかりで我を満たせぬとは」
 ルギアのエアロブラストが勢いよく跳ね上がって、テッポウオのように張り付いていた鳥たちを弾き飛ばした。哀れな神鳥どもが、力なく仰向けに伏して、不満気な息を漏らしながら、乱れた翼を晒す。のびたコラッタのようにだらりと開脚したその間には、蕩けた鳥孔が広がり、自らを卑下してやまない。
「いかにも」
 ルギアが三つの穴の黒がりを点検しながら、呟く。
「貴様らはピジョットやオニドリルと寸分も変わらぬ鳥に過ぎないのだ」
「ルギア様っ、ルギア様っ!……」
 首を垂れて、厚みある舌でふたごじまを詣でると、たちまちフリーザーは美しく甲高いよがり声を、大神に供した。
「嗚呼アアアアアアアアアアアア!」
 噴き上がりかけの間欠泉の味を堪能しつつ、ルギアがいっそう舌で縁の輪郭をなぞって弄ぶ。
「随分と脆いことだ。貴様の氷が、舌だけで溶けてなくなってしまいそうではないか」
「嗚呼、嗚呼、その神々しい舌で、私を蒸発させてください、ルギア様……」
「否」
 炎をチロチロと燃えたたせながら、ルギアは宣告する。
「さっきも言ったであろう。貴様は、一介のコラッタやポッポより、遙かに悲惨な存在であるということを。それを理解させてやらねばならぬのだ」
 再び眼光を不気味に光らせると、フリーザーの身体が勝手に浮き上がり、うつ伏せに腰を浮かされ、後ろ向きに己が深淵を差し出す姿勢となる。
「嗚呼っ」
 長く鮮やかな尾羽をよけて、その付け根の膨らみを大いなる翼で撫でると、その感度の凄まじいこと、カントーに冠たる氷鳥は甘たるい嬌声をあげた。
「ルギア様ぁ……欲しいです……」
 言うもさらなりと、ぼんじりを一打ちする。衰えを知らない聖を扱きつつ、先端を秘部に押し当てると、待ち受ける快楽に早くも歓喜のなきごえをする。
「貴様に悲惨な奴隷の従順さを教えてやろう」
 フリーザーの小柄な身に余るそれを、平然と押し込むと、弱々しい鳥の腰はガクガクと震え、痛みを堪えながらも、必死に主人を奥へ迎え入れようと気ばる。自らの胴をも凌ぐ凶器が、フリーザーの体を食していく。
「嗚呼、気持ちいいっ、気持ちいいっ……!」
 見目麗しいはずの薄水色の羽毛から、おぞましい隆起が現出する。得体の知れない寄生獣に体を乗っ取られでもしたかのように、腹が出て、その皮膚を突き破ろうとしているかのようだったが、健気なフリーザーは深く息を吐きながら、驚くべき敬虔さで、ルギアの全てを遊女のように受け入れた。
 ルギアはしなだれる美しき鳥の腰を抱き上げて、そのまま太り(じし)の腰を揺らすと、たちまちにして怜悧な氷鳥は快楽に狂う淫鳥に成り果てた。
「感謝、しますっ、感謝、しますっ、ルギア様! ルギア様ぁ!」
「我が奴隷よ。貴様は、もはやポッポの脚にも及ばぬ存在だ。わかるな?」
「嗚呼、まさしくその通りです! その通りですっ……私は思いあがっていたっ……もっと残忍に私を犯してくださいっ……ポッポに唾を吐かれたいっ!……嗚呼っ、あなたに跪く身となれて、嬉しいっ……!」
「げにも!」
 ルギアの腰がいっそうと揺れて、フリーザーを悦び喚かせる横で、ファイヤーとサンダーが睦まじく絡み合っていた。横たわりながら、主人からの授乳を待ち焦がれていたものの、高まる劣情の忍び難さを慰めおうと、サンダーがファイヤーの上にのしかかっていた。
「ファイヤー!」
 首筋の赤みを帯びる羽毛に顎を埋めながら、サンダーが荒々しく叫ぶ。
「バカにしてゴメンな!……でも、ちょっとカラかってただけなんだ……なあ、仲良くしてくれよっ、頼むよう……!」
「ふっ、当たり前、だろうっ?……」
 炎を(まと)った翼がサンダーを包み込む。毛布のように温い翼が、共寝の気分を燠火のようにかきたてる。祈るように脚が組み合わされ、二羽の柔らかな腹がピッタリと重なり合い、互いの満たされなさを励まし合うように、意地らしく擦れていた。
「本当に可愛いよなっ! もっとそのいい顔、見してくれよっ……」
「お前だってえ」
 甘やかな声でファイヤーがサンダーの背中を撫でる。嘴を傾け合い、慈しみの接吻を交わす。
「そんな、ヤラシイ顔、できたんだなあ。甘えん坊なんだなあ、頬まで赤く染めてえ……」
「意地悪りいな! お前とだからに決まってるだろっ?」
「馬鹿いえ」
「馬鹿じゃねえよ……今まで黙ってたけどよお、シロガネ山の連中、本当はお前のこと信頼してるってこと、俺は知ってんだぞ……!」
「ま、まさか……」
「お前は愛されてるんだよ、もっと自分に誇りを持てってば……!」
「そ、そうか……?」
「俺なんて、独りぼっちなんだからな……馬鹿にしてくれる相手だって、いないんだからなっ……」
「褒めてるのか?……それって……?」
 睦まじく馴れ合う二羽をチラリと見たルギアは、満足気に微笑みながら、フリーザーの中に渦巻く嵐をいっそう激しくさせた。
「嗚呼、嗚呼、嗚呼っ!……もっと、もっとう……」
 もはや翼で体を支えることもできず、地に這いつくばり、尾羽振り乱して、透き通った体をくねらせ悶えるフリーザーの姿は、言うも愚かだった。
「そうだ、(みだ)れろ、もっと紊れていろ、40日も収まらぬ嵐のように紊れて、我を失ってしまえ……それが奴隷というものだ!……」
 冷徹な瞳が焦点を乱していた。快楽に打ち震えるばかりになった小鳥が、いよいよ絶頂に達そうとしていたところで、ルギアは意地悪く聖なるねっこを、乱暴に引き抜いてしまう。
「ルギア様!……ルギア様っ……嗚呼っ、なんてひどいっ……」
 艶やかに恨み言を呟くフリーザーを打ち置いたルギアは、のっそりと歩んで、絡み合う二羽の鳥たちに近寄る。やにわに、主を認めた二羽の表情が華やいで、我先にその恵みに預かろうと翼を広げるが、ルギアは先にサンダーの身を持ち上げた。
「悪いな、ファイヤー!」
 申し訳なさそうに、サンダーが叫ぶ。
「先にイかせてもらうぜ……」
「ふむ、仕方あるまい」
 羨望の眼差しでサンダーを見送りながらも、またも放置されるファイヤーの身は激しく疼いている。
「父さん、父さん!……」
 雛のようにはしゃぐ雷鳥を横たえさせ、片脚を持ち上げると、改めてほつれた線を露わにさせる。黒い毛並に挟まった辺りにあるそれは、既に何度かは交わってきたかのような広がり方をしており、情けないことには、耐えかねた我慢の汁が股を伝って、幾何学模様を描く黄黒の尾羽にヌレジミを生み出していた。
「早くうっ……!」
 一心に親鳥を慕うサンダーの股を()むと、刺々しい風貌のわりに柔和な甘味が、ルギアの舌に広がった。
「はあっ……んんっ!」
 サンダーから漏れ出る悦楽の声を肴にしながら、良質な酒のごとく、味蕾にたっぷりとその味を染み込ませてからから呑むと、快く性の酔いが回った。おもむろに、子を仰向けにさせ、両翼で開かせた脚を掴んで、欲しがりな鞘へと自らの宝刀をぎゅっと寄せた。
「さて、サンダーよ」
 威厳ある調子でルギアは語った。
「貴様はまだ、その言動といい振る舞いといい、嘴が青い。花開くためには、受粉してやらねばならぬ」
「はい、父さんっ……」
 ルギアは頷くと、トロトロの秘穴に先端を押しつけ、そのままぐいと奥へと挿し込んだ。父に従順な股ぐらは、慈愛の形に沿って自在に変形し、つっかえることもなくスルスルと奥へと招いていった。
「ああっ、父さんっ」
 サンダーの切なげな叫びは、ルギアの愛欲をたちまちにして煮沸させる。背鰭が嬉しげにはためいた。正面から詰め込んだ情愛が膨れ上がって恐ろしく膨れ上がり、サンダーの黄色の羽毛に覆われた下半身を孕ませる。
「嬉しい、俺にもっとっ、大人ってこと、教えてよおっ……」
 滾った御茎の震えが、サンダーへと施す帝王学は、余裕ある一突きごとに体内に充実する苦しみと共に、他の何事にも変えがたい快楽の存在を教えた。きっと目を閉じて神経を研ぎ澄ませながらサンダーは、かき回される内壁の感覚に痺れていた。
「サンダーよ、目を開け」
 視界が開けると、上嘴の先にルギアが顔を寄せていた。耐え忍ぶサンダーの表情と、侵犯される股とを交互に眺めながら、伏し目がちに微笑んでいる。
「父さん!」
「そう、雛鳥みたいに喚くでない」
 頬を軽く打擲する。それでもサンダーの身は給餌を求めるように躍り、潤んだ瞳で嘴を目一杯開いて、ルギアを求めるのだった。
「ごめんなさい、俺、まだ、立派なサンダーにはなれそうもないよっ!……だからっ、父さんのいいもの、もっと、たくさんくれよう!……」
「心配するな。貴様は、既に私によって熟しつつあるのだ」
 過酷な抽送。サンダーに宿らされた巨人による痛烈な腹へのひと蹴り。
「ああ゛っ!!」
「だが、まだ足りぬ。貴様は、身を引き裂くような苦痛を乗り越えねばならぬのだから」
 その宣告に合わせて、ルギアはいっそうその実を大きくし、サンダーの体内を占領した。悲鳴が劈く。尻が窒息するようだった。さっきまでの快楽は失せ、ヒトの陣痛とはかくもというような言語に絶する痛みが駆けた。
てゅうぉう(とう)しゅぃあんっ(さん)!」
 甲高くなりすぎた声が、アンノーンたちのささめきのようにかすれていた。
「いじゅぁい! いじゅぁいゆぉうぅぅぅぅ!」
「耐えるのだ! 我が子よ」
 優しく微笑みながら、残忍さに顔を歪ませてルギアは語りかける。愛する喜びと、虐める愉しみは、その御心の内では何も矛盾することなく共存していたのである。いま、まさに我が子が生みの苦しみを味わっているところだった。王たる大鳥は、その尖った羽が濡れた髪のように形を失っているのを、愛しげに撫でてやりつつ、無慈悲に腰の振りを速めた。
 石室に渡るかみなりのような叫びを聞きながら、ファイヤーは二羽が愛を為すのをもどかしくうち眺めていたが、疼く情欲があまりに堪え難い。気怠げに寝返りを打つと、マグマッグのように這いずり始めた。
 その間にも、ルギアの腰は神罰的なほどに烈しくなっていった。サンダーの中は荒れ果て、内蔵という内蔵が、渦を巻く恐るべき潮流にかき混ぜられているようだった。五臓六腑が散り散りにならないのが不思議なくらいだった。
「くぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁあ……!!」
 限界を訴えることも叶わなかった。ただ、この痛みが過ぎ去るのを堪えるサンダーを、ルギアは暖かい目で見守っている。
 その満足げに揺れる太い尾のそばまでファイヤーが達した。もう少しだ。焚き火のように燃える翼で体を引きずりながら、力一杯に首を突き出す。嘴が、リボンのように長い尾羽の端っこを僅かに咥えた。ルギアに愛されていた姿勢のまま、呆然としていたフリーザーは微かな感触に震える。
()っは()……!」
 ファイヤーが翼で上体を支えながら、尾羽の付け根の毛並に口づけをしたのだった。隠微な刺激にも、フリーザーは発情し、清らかに身をくねらせる様は、絵巻物に描かれた女官のしな垂れた様を思わせる。
「フリーザーぁ……」
 背後から抱きついたファイヤーが、静かに耳元に話しかける。
「……なんでしょう。あなたにしては、やけに積極的じゃないですか」
 冷淡を装いながらも、満更ではないという反応。
「なあ」
 少し、口ごもりつつ、ファイヤーは話す。
「お前の気高さを、どうか、俺にも分けてくれないだろうか……?」
「ふんっ……馬鹿も、休み休み、言いなさいな……」
 氷のような頬と、ほの温かい頬が寄り添い、擦れ合う。燃え立つ翼が、白い胸の毛を揉みしだくと、さすがの氷鳥からも狂おしげな息が漏れる。
「もう十分に、持っているではありませんか」
「……そうかな?」
「睨め付ける目つき、私はけして嫌いではありませんよ?」
 照れ隠しをするように、ファイヤーは股を擦りつけた。二羽の秘められたシェルダーが互いを求め合い、褒め称えると同時に、嘆息と喘ぎが混ざり合って、あまいかおりを辺りに漂わせた。
「ハアんっ……!」
「うっ……うっ……!」
「まったく……そんな見下げ果てた腰つき、どこで覚えてきたのですか?……」
「お前に憧れていると、勝手にうねっちまうんだよ……!」
 フリーザーは失笑しながら、嘴を軽く開いて品をつくった喘ぎをし、ファイヤーの炎をいっそうと燃え上がらせた。間違って溶けて水になってしまっても別にいいと思えた。
 ルギアにも二羽の嬌声は聞こえていた。氷と炎が擦れあい、湯気をたてる一瞬は何にもまして甘美と思われた。それに、交感するサンダーの表情も、次第に凪いできていた。
 己を圧倒していた痛痒は、縋っていた主への愛のおかげか、快楽へと鮮やかに転換していった。かき乱され、まるで体内を組み替えられているような感触は、いっそ心地よかった。むしろ、自分が自分でない自分として新生する悦びで、胸がいっぱいになっていた。
「父さんっ、俺、カラダ一杯に父さんを感じてるよっ……!」
 大いなるものを感じながら、サンダーは幸福に喘いだ。腹ごしに撫でると、その存在感が実によく感じられた。自分はまさしく愛されているのだということがしみじみと感じられて、嬉しかった。
「よくやった、我が子よ」
 ルギアは慈悲深い両翼で、サンダーの顔を包み込んで支え、褒美の接吻を施した。おねだりに開いた下嘴から伸びた舌をしっかりと組み交わし、長い間そうしていた。感無量のサンダーの目からは、幾筋もの涙が溢れていた。
 感慨の中で、ルギアは聖刀を引き抜いた。しかし滾り続けるそれは、なおも堅く屹立したまま、いつ果てるとも知れなかった。ルギア自身も通過儀礼(イニシエーション)の悦びを感じないわけではなかったが、神がかりの絶倫が満足するためには、このうずまきじまに住むポケモンたちを山のように神に供しても、まだ足りないと思われる程であった。
 父さん、父さん、と呻くサンダーをよそにして、ルギアは再び動き始める。言うまでもなく、睦み合う二羽のもとへ。フリーザーに抱きつくファイヤーは恍惚の体で、物足りない性を励まし合っている。その背後に、というよりも、求め合う二羽もろとも覆い隠すように、主は抱きついた。
 ファイヤーが振り向く。目先にはちょうどルギアの鎖骨があった。ちょうどその藍色の腹部が自らに影を作り出していた。
「さて」
 衰えを知らないルギアが低音で囁く。その大いなる翼でファイヤーの柔らかな腿を揉みながら。
「ん゛」
「待たせたようだ、ファイヤー」
 その言葉だけで、ファイヤーには効いた。主の奏でる低音(バリトン)は、耳を通じて全身に媚薬のように行き渡り、それだけで果ててしまいそうだった。股が、電流を浴びたようにピクリと痙攣した。
「待き侘びてをりまひた、ルギア殿」
 そう言う股ぐらからは、既にポタポタと愛液が溢れ出していた。だらしなく開いた鳥孔は、これから産卵でもしようかというザマである。微笑すべきか、苦笑すべきか、ルギアは曖昧な笑みを浮かべながら、ひょいとファイヤーの身を持ち上げた。
「やれ、やれ……!」
 体の軽くなったフリーザーが、ぐったりと地に身を伏せる。
「せいぜい、愉しんでくることです!……」
 ファイヤーを抱き抱えたまま、ルギアは仰向けに寝そべった。高い高いをされている赤子も同然で、春告げる鳥もさすがに恥じらいの表情を見せる。
「ええと、ルギア殿、これは……」
「ファイヤーよ」
 有無を言わさずに、ルギアが述べる。
「我を悦ばせてみるがいい」
 真下を見ると、親の聖根が直立している。跨ぐのもやっとかというほどの威容に、ファイヤーは思わず息を飲み、無い襟を正した。
「了解、致しました」
 半笑いを浮かべながら、ファイヤーは頭を下げてみせる。声が震えている。
「精一、杯、頑張らせ、ていただきま、っす」
 ルギアは鷹揚に頷いて、両翼に掲げたファイヤーの体を徐々にその先端へと下ろしていく。覚悟を決めて、祠を最大限に開いて祭神を招き入れたファイヤーは、即座に死に近しい感情を抱いた。入り込むものの形に従って、自らの羽毛が不気味に膨れ上がるのを見て、失神しそうになるのをやっとのことで堪えたのだった。
「ぼむ゛」
 震え上がるファイヤーを可愛がってやりながら、ますます内奥へと神酒を注ぎ込む。まだ先しか受け入れないうちに、全身に酔いが回ったかのように、ファイヤーは炎を振り乱していた。
「も゛っっ」
「まだだ、ファイヤー!」
 ルギアはファイヤーの頬を叩きながら、譴責した。
「貴様にはその仮初の威厳を(まこと)のものにしてもらわねばならぬのだ」
「そうだぞ、ファイヤー!」
 寝そべったまま、サンダーが茶々を入れてくる。さっきまでの苦悶などけろっと忘れたかのように、口調はいきいきして、あと何発かは平気だと(うそぶ)いている。
「俺たちだってやったんだからさ。逃げてんじゃねーぞ!……」
「その通りですよ」
 か細い声でフリーザーも加勢する。
「三位一体の我々なのです。私とサンダーにできて、あなたにできないことがあろうはずがありません」
「も、もむ゛」
 頷いたように、頷いた。頭の中は、今下半身を浸しつつある言うも恐ろしい傑物でいっぱいで、二羽の気遣いに応える余裕だにない。まるでトゲの上に座らされているかのように、股が悲鳴を上げ、激しく痙攣していた。
「びべぇっ!」
「もう、一息だ」
 長い首をもたげて、ファイヤーの顎を舐める。太く唾液に塗れた舌の一撫では、気付け薬のように、混濁したファイヤーの意識を叩き起こした。
「ん゛む゛っ゛、ん゛む゛む゛う゛……」
 なおも飛んでしまいそうな意識、破裂してしまいそうでなぜかしない体。ファイヤーの脳味噌が胃から大腸の辺りまで落ちて、もう腹で考えることしかできなくなってしまったかのようだった。
 だが、フリーザーが言ったように、ファイヤーの柔らかな身も、すっかりルギアからの愛を咥え込んでしまった。痛みを堪えつつ、恐る恐る眼下を見下ろす。父の上に馬乗りになり、その聖男根と一体化してしまった自分が、途端に冒涜的に思われて恐ろしく、慄然とするとともに、秘部がきゅっと締まって、腹の苦しみが増す。
「も゛んんんんんんっ……!」
「さあ、貴様の思うがままに、我を犯してみるがよい……!」
「む゛ん」
 不敵なルギアの視線と、フリーザー、サンダーの好奇と羨望の目に晒されながら、ほとんど無意識にファイヤーは全身を上下させ始める。
「む、む、むぉぉぉぉぉぉん」
 ピジョットのような甲高い鳴き声を上げながら、体の訴える限界と、天井知らずの自尊心との均衡をなんとか保ちながら、しゃにむに全身ごと揺さぶって、ルギアの御櫛を扱いた。
「………………!」
 ルギアが、たまらず目をきつく閉じた。金切り声を出しながらも、献身をまさしく体現するファイヤーの揺さぶりは、子なる鳥たちへの愛情の昂りと合わせて、ルギアを強く刺激するのだった。
「ふむ……!」
 噛み殺した喘ぎを出す。得も言われぬ巨根もさすがに、強く愛撫をされると快楽の痺れが全身に渡っていく。一方、ファイヤーは勢い任せに、全身を張形にして父を楽しませるのに必死だったが、さほど経たない時間のうちにも、体力は激しく消耗する。
 体内に汁のようなものかかる感触はした。着実にだが、ルギアの巨峰の高み(アクメ)に迫っているという股応えはあった。しかし、そこまで耐える精神力は、とてもではないが備わっていないと思えた。
「…………ルギ、ア殿ぉん」
「なんだ」
「調子こ、いてすみ、ませんでし、たぁ!……禾、ム(わたし)、は睨むこ、としか能のな、い女、又(やつ)ですっ……言、午(ゆる)して一下(くだ)さいいいいっ」
 合間に、も゛も゛も゛と奇声を織り交ぜながら、大股開きにファイヤーが陳情する。
「構わぬ」
 ルギアは慈悲と無慈悲のあわいに漂った返事をした。
「そのまま、続けてみるがよい!……」
 ファイヤーの自己犠牲に呼応するように、ルギアも利他の心を示し、そのふっくらとした胴を微かに浮き沈みさせて、炎鳥の腹をいっそうと突き上げた。
「もん、びょん!」
 飛び上がるような、痛みがファイヤーの体を反らせた。長い首が後ろへ垂れて、目に映る石室の光景がグルグルと回り、それから上下へグラグラ揺れた。恋い慕うルギアの藍白の顔がチラリと見える、その大海のような腹も見える、うずまきじま最奥らしい素っ気ない岩壁が見える、脇目に、それぞれ主の施しを受けたばかりの二羽が映り込む。
「んん゛ま! んん゛まっ」
 体を振り乱した甲斐はあって、激痛がひらりと愉楽となる一瞬がありはしたが、すっかり快くなるにはまだ乱れ足りないようだった。自分が今、主たるルギアの掌上にあり、天国から地獄、地獄から天国へと絶えずお手玉されているような気分だった。自分が壊れるのが先か、主が果てるのが先か、どちらかしかない。
「ん゛も゛う゛」
 ファイヤーは全身の炎を激しく燃えたたせた。怒り狂ったリザードンほどに、青白い炎である。それを鬨の声として、我が身などこのまま爆散してしまえとばかりに、猛烈に腰を振り上げ振り下げした。
「…………!!」
 腹上で暴れるファイヤーにルギアは、一瞬、呆気に取られた。意地らしく自分を睨みつけながら、腹を弾けさせながら、全身でしゃぶりつく姿は大したものだった。
「ぐおっ……!」
 不意に、嬌声が漏れた。油断すると、昇天させられてしまいそうだった。ファイヤーがここまで己に尽くしてくれるとは嬉しい誤算であった。適度に腰を浮かしてファイヤーを責め立てながら、そろそろか、とルギアは自問する。
「ファイヤー、あなたという者は……!」
「てめえ、無理とか抜かしてからにっ」
 逆鱗を放つファイヤーの両脇に、抗議するように二鳥がしがみつく。ルギアを僅かながら悶絶させる睨み鳥への羨みとやっかみだった。
「我々に先駆けて、ルギア様から絞り取ろうとするなんて! 傲岸不遜! 厚顔無恥! 鉄面皮だ! あなたの片割れとして、厳重に抗議します!」
「俺らを油断させて独り占めってか? んなもん反則だ、反則っ! 今すぐそこを俺と代わりやがれ!」
「な、何をっ……!」
 ファイヤーも咄嗟に反論した。
「貴様らだって、恩恵に浴したばかりだろうが! 私は三番目なんだ。ルギア殿とはいえ、さすがに限界というものもあるだろう……」
「何と! あなたはルギア様の神性を否定するつもりですか?」
 フリーザーが叫ぶ。
「あるいは、ルギア様があなた如きで絶頂に達するとでも言いたいのですか? 思い上がりです! ひどい冒瀆だ! それに、我々への侮辱でもありますねっ!」
「何を言ってるかわからんぞ……」
「鳥頭には、わかるべくもありませんか……そんなことはどうでもいいっ、あなた、そこを下りて私に跨らせなさいよ……!」
「へへっ!」
 サンダーがわざとらしく鼻を鳴らす。
「お高く止まってても、お下はムレムレってことさ!」
「なんですって!」
「認めろよ。父さんともっとヤリたいって、さ」
「嗚呼! 何と汚らわしい言葉でしょう……!」
「いくら取り繕ったって、汚いもんは汚え、そうだろ?」
「そ、そうだそうだ!」
 会話の流れにのって、ファイヤーも加勢する。
「だが、今は私の番だからな。これからどうするかは、ルギア殿の御心次第なのだ。だから、貴様らはじっとしていればいいじゃないか……」
「何をっ!」
「何だとっ!」
 揃った二羽の叫び声にも、ファイヤーは余裕の笑みを浮かべて、宙を見上げ、これみよがしに腰を揺らして見せ、二羽の嫉妬をたくましくさせた。
「嗚呼、酷いっ。裏切り者、裏切り者っ!」
「ぜ、前言撤回だ! やっぱり、シロガネ山の奴らは……!」
 ファイヤーを父なる神から引き剥がそうと、二羽が両側から掴みかかってきつく引っ張り合う。それが、ファイヤーの中に宿った熊手をいっそうと刺激し、ルギアに思わぬ喘ぎ声をあげさせたが、騒ぎ合う三鳥には聞こえないようだった。
「……ふむ」
 ルギアはため息をついた。そしておもむろに眼光を妖しく光らせると、ファイヤーのカラダがその聖器より引き離された。同時に、フリーザーとサンダーの体も己から離れる。宙に浮き上がって、身動きが取れずに呻く三鳥を鎮めるように、そのまま強く地べたに落とした。三様の悲鳴とともに、石室は静かになる。
「嗚呼、ルギア、様……」
「父、さんっ……!」
「ルギア、展、殳(どの)ぉん……」
「たわけども」
 厳然たる口ぶりでルギアが言う。
「無益なことで争っては、ならぬと言ったではないか」
 口々に許しを請う子らに頷きながら、話を継ぐ。
「貴様らは各々が自然と結びついた化身であるゆえ、貴様らの関係はそのまま世界の均衡となるのだ。すなわち、争えば世界は乱れる。和すれば世界は凪ぐ」
 神妙に耳傾ける三鳥たちは、しかし体中を快楽に蝕まれて、込み入った話どころではないのだった。果てる寸前でルギアより引き離されたせいで、三羽とも絶頂寸前のもどかしい状態に置かれていた。あともう少し秘奥を突っついてくれれば達することができるのに、自分だけではそれがどうしてもできず、不器用な鳥の体をいたく呪いながら、悶えていた。
「ところで」
 ニヤリとルギアが笑みをこぼす。
「いい加減、解き放たれたいのだろう?」
 性にひもじくなった三鳥は「解き放つ」という言葉に敏感に反応した。それに心を囚われているために、その言葉だけで股を舐められているように感じた。
「勿論です、ルギア様……!」
「俺たち、このままじゃ体がオカシクなっちまうよう……」
「…………ん゛ん゛」
「然もありなん」
 ルギアは慈悲深く頷く。下腹より発する威容はなおもそそり立ち、三鳥をあくがれさせる。それにトドメをさされることを空想して、ずぶ濡れの股を疼かせた。
「ならば、だ」
「あっ……」
 寝そべるサンダーの首を持ち上げ、そのまま白銀の羽毛に隠れたフリーザーの股へと嘴をあてがってやる。
「……嗚呼アアアアアアアアア!!」
 サンダーの嘴がトングのように秘部を挟みこんだだけで、刺激に敏感になった全身が激しく痺れた。華奢な脚を震わせて、フリルのような白い鳩胸をたわわに揺らしながら、(みだ)れる様は、淫乱ながら清らかだった。
「んんんんんんんんんんんん!……んんんんんんんんん!」
 限界に喘ぐフリーザーの嘴を、今度はファイヤーの股へと繋いだ。大きなヒヨコの体はすぐさま、孵ったばかりのように鳴く。
「びっ……びぃ!……びぃびぃ!……びぃっ」
 仕上げに、鳴きわめくファイヤーの赤土色の嘴をサンダーの石墨(グラファイト)の腿の間に突っ込ませた。フリーザーの花蕊を咥えたサンダーが、気持ちよさに嘴を締めると、フリーザーが艶やかに悲鳴を上げ、強かに股を挟みつけられたファイヤーが奇声をあげて善がる。
 ルギアの眼前に、炎・氷・雷が織りなす見事な三角形(トライアングル)が現出した。御竿を握りしめて数度扱くと、硬質な護謨(ゴム)のような握り応えだ。
「さあ、存分に慈しみ合うがいい!」
 孤高をピンといきり立たせながら、その聖三角(トライフォース)の形を整えて、三鳥同士が慰めやすいようにしてやる。
「フリーザ、アっ……!」
 儚げな羽衣に顔を埋めながら、サンダーは懸命にアーボックのように舌を這わす。自身の嘴に邪魔をされつつ、もどかしく首を傾け試行錯誤しながら、フリーザーの奥へ辿り着こうと欲する。
「アンタの鳥マンコ、可愛いっ……!」
「はっ……はしたない言葉は、慎みなさい……っ!」
「無理だようっ……アンタのピジョンミルク、飲ませてくれよおうっ!」
「あっ、嗚呼、臆っ!……」
 抵抗する口振りながら、フリーザーは次々と押し寄せる電撃的な快楽を、むしろ待ち望んでもいた。主人の偉大さに与かることができない口惜さがないではなかったが、早く体内に溜め込んだ欲を、カイリューのように放出したくてたまらない気持ちも抑え難いのだった。
 ほぞを噛むように、ファイヤーの蕾を冷んやりとした舌で責め立てる。
「あぅお゛お゛お゛お゛ん!」
 体内に氷を詰め込まれたも同然の冷たさに、ファイヤーはコイキングのように跳ねた。挿れられた氷はファイヤーの体温に耐えかねて溶けてしまったかのように、ジュっという音を立てた。
「フリー、ザァ……!」
「イクなば諸共ですよっ……ファイヤーっ……」
「ん゛っ……ん゛お゛れ゛お゛ぉぉん!……」
「その見下げ果てた声も……嫌いじゃない、ですねっ……!」
 己が身をすっかりフリーザーの舌遣いに委ねる。気高く振る舞っているとはいえ、所詮は三鳥の片割れ、性欲も等く与えられていると思うと、高慢で度し難いこいつの態度にも、何とも言えず可愛げがあった。
 それに、このザマをこうして主たる海神に見られているのが堪らなかった。横目にて、立派な御肉が覗くたび、その凛々しく傑出する様に、心が躍る。
 自分たちは主人にとって最高のオカズなのだ。それにふさわしく、淫らにそれぞれの初々しい実を啄まねばと、固く心に誓って、サンダーの草叢の奥に滑らかな舌を伸ばす。
「おいっ!……舐め方が甘いぜ、ファイヤーっ!」
「みぇっ?!」
「分かるだろっ……お前も同じ鳥なんだからさ!……俺の弱点、思いっきり突っついてくれようっ!」
「い゛、言われなくとも」
 煽られては後に引けず、サンダーの奥にありうべき秘所を躍起になって舌で弄る。恐々とした外見の割に、ふさふさとした黄色の毛並み、そして百合の柔らかさに、ファイヤーは夢中になっていた。フリーザーの舌に蕩けながら、自分の感じているのと同等の気持ちよさを分け与えてやるべく、奮闘した。
 そうして、サンダーの漏らす無垢で不純なる喘ぎが、ファイヤーの中をトロのように脂ぎらせ、フリーザーの舌に甘みのある味わいをもたらすのだった。
「嗚呼ンっ……なんて、美味、なんだろう!……あなたの体、もっと味わいたい……!」
「に゛ゃっ……そこはっ……む゛んんん゛っ!」
「あっ……ファイヤーっ、そこっ、ぎもぢっ、いいっ……!」
「嗚呼! 嗚呼! サンダーっ……私のことは構わないですから……もう、滅茶苦茶にしてえっ……!」
「ぶぅぁぃに゛っ」
「急にいっ、跳ねないで下さいよっ……せっかくいい所を、舐めていた、のにっ」
「ぐり゛ゃり゛ら゛ゃんっ!」
「ぎゃんっ!……んんああああああああっ!」
「いにゅに゛ゅぅっ………………」
「やだっ、ファイヤーっ……俺の鳥マンがあっ……」
「わ゛っん゛!!」
「ああああああっ!」
「嗚呼、サン、ダーっ!……舌を離しちゃ、厭だあっ……」
「っっっ!」
「はああっ……! いいいいいいっ……」
「ぐぢゅっ、じゅぢゅじゅじゅるっ!」
「駄目、(みまか)る、薨るぅぅぅぅ……!」
「ばっ……フリーザーあ゛っ、いいどこだったのに……んも゛ぅぅぅぅ!」
「くっ……分かっていますよ!……はああああっん……!」
「あ゛っ、クソうっ……気持ぢ、気持ちぃっ」
「ぷぁ……ぱぎゅあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」
「ふんっうっ……もっと、無様に鳴いてみなさいようぅ……あっ……あっん!」
 犯されながら犯す恥辱と悦楽が作り上げる甘美な三位一体は、雛のようにピイピイとささめきながら、情感に満ちた水音を立てて、うち眺めるルギアの情欲を、一気に煽り立ててやまなかった。各々がその妙なる身を横たえ、片脚をあげて大っぴらに股を晒し合い、相手の嘴に啄ませてしっとりと乱交する様子は尊く、まさしく妄想の具現化と言うべきであった。
「貴様たちっ……! ああ、いい子だっ……!」
 見事な三つ鱗に身を乗り出し、嘴で契り合う三鳥たちの腰の辺りを撫でさすると、ルギアに愛を受けた悦びに、腹をくねらせつつ、舌を奥へと伸ばし、自らの淫らさを父への供物とする。一羽の快感はすぐさま他の鳥たちに伝導し、互いに悶えつつ、一周して自らへと還ってくると、さらに増幅して回る。無作法な永久機関と化した我が子らに感じ入って、性欲任せに乱入してしまいたいという衝動を抑えるのがやっとだった。
「ぐぬうっ!」
 しかし、神としての威厳はもとより、あまりにも妖しく美しい呑尾蛇(ウロボロス)を崩すのは、明らかに愚かだと考えを改めた。ならば、尊い輪を為す子らに、祝福を施すのが筋というものだ。脈打つ大竿を摩る御手を凄まじくして、眠りのうちに溜まった性を促し続ける。
 やがて、サンダーの舌がフリーザーの感部に、フリーザーの舌がファイヤーの、ファイヤーのがサンダーに触れる。刹那、全員目を見張って、首を斬られたかのようにビクビクと痙攣した。しかも、一度秘孔に引っ付いた舌先は、湯気を放つ氷に触れたかのように決して剥がれることはなく、ドクドクと音を打つそれを事切れるまで舐め続けていた。
「は嗚っは呼っ……!」
「はあっ!……はあっ」
「はふっ!……はふっ!……はふっ!」
「はあ……はあ……」
 片腕では到底扱いきれなくなった巨物に抱きつくように、酔い狂って自慰し続けるルギアは夢見心地だった。あれほどまで啀み合った三鳥が今や麗しい三すくみを形成していた。奉仕し合う(かんなぎ)たちは、まこと麗しい光景であった。ルギアは目を閉じ、耳を澄ます。荒れ乱れた人間世界が凪いできている! 眼下に横たわった聖三角形(トライフォース)のように安定した秩序が、戻ってきたのだ!
「あああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「むぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおん゛っ!」
 三羽とも通じ合って、同時に絶頂に達すると、香り高い鳥乳を溢れさせ、しとどに顔を濡らし合った。ようやく疼き続けた欲を撒き散らせた安堵感があり、いつまでも長く尾を引く麻痺感は、浅い眠りのような心地よさをもたらしてくれる。待ちに待った感覚だけに、悦びもひとしおだった。
「貴様たちいいっ……! 我も出すぞっ!……」
 ルギアもこれを止めに聖器を苛め抜けば、溜め込んだ聖液がついに爆発した。親の臭気を放つ聖水はとめどもなく湧き出で、平かなる彼らに幸あれかしと祝福を施した。ぐったりと、意識も朧ながら三鳥は、愛し愛される悦びを全身に感じながら、雪のように降り注ぐ祝聖をありがたがった。皆、すっかり立派な化身となった。
「ルギア、様ぁ……」
 白く染まった姿も何かは、しどけなくフリーザーが嘴を動かした。
「私、今、とても、幸福な気持ちです……!」
 サンダーとファイヤーも口々に言い合う。彼らを束ねるルギアは、慈愛深く頷いた。
「わかった、わかった。貴様らは、よく理解り合えたのだから……」
 称えるように、それぞれをでっぷりとした舌で愛撫してやる。フリーザーの気だかい三つ鉾の鶏冠を、サンダーの隈のような目の縁取りを、ファイヤーの茫洋とした股を。舌を這わせられた感激のあまり、出し漏らしていた潮が噴いた。
「いやしけ吉事、よ!」
 ルギアは横臥し、卵を孵した時のように、その長い首と豊かな藍白の腹で、三鳥の正三角形を囲った。大いなる父神に守られているという胸いっぱいの温かみを感じながら、一羽、また一羽と、穏やかな眠りに落ちていった。
 ……爾来(じらい)、カントーの気候が乱れることは絶えてなく、人々は枕を高くして眠られるようになったそうである。


附:和して同ぜず(喧嘩しないとは言っていない) 


 いやしけ吉事より爾来、カントーの気候は凪いで人びとの憂いは取り払われていた。主の懲罰を身に受け、またその慈愛を五臓六腑にまで感じ合った三鳥は、以後も和して同ぜずといった態度をもって互いに接し、その正三角形の如き調和を心においても保ち続けていた。
 その彼ら、サンダー・ファイヤー・フリーザーという尋常のポケモンよりも遥かに凄まじい異様な鳥たちが、同じ場所、氷鳥の神殿たるふたごじまの最奥部に集まっているようである。しばらく無言のうちに顔を見合わせるうちに、フリーザーが言うことには、
「あなたたちに態々(わざわざ)お集まりいただいたのは、他でもない、遠いガラルの地に居るという我々を僭称する不届者についてです」
 サンダー、ファイヤーの両鳥はうたてげな表情で耳を傾けている。
「私たちはカントーのみならず、各地の気候を司る神霊(ダイモーン)であることは言うまでもありません! 然れども、ガラルという土地においては、我々とは似ても似つかぬ鳥どもが我らの名を襲って、勝手気儘な振舞に耽っていると聞きます。ルギア様も、音に聞いてはいたく憂慮しておられた……」
 これ以上放置していたら秩序は乱され、我ら聖三鳥の権威すら危うくなってしまう。あの愚かな僭主どもに正統な主の血の施しを受けた我々が正義の鉄槌を下さねばならない。長口舌の後、フリーザーは、儚げな首を横に振って、深いため息を吐きながら、世の乱れを大いに嘆いて見せた。
「嗚呼! 返す返すも、なんてひどい浮世なのでしょう!」
「ま、その話はようくわかったけどよ」
 神妙に話を聞き続けていたサンダーが嘴を挟む。
「わざわざ、ふたごじまで話し合う必要、あったか? すっげえ(さみ)いんだけど……」
「え? 今なんとおっしゃいました?」
 フリーザーがその紅玉のような瞳で冷徹に睨みつける。
「貴方、口さがなくも、またしても我が神殿を謗ろうと言うのですね?」
「いやいやいや、そういうこと言ってんじゃねえだろ! 馬鹿か、季節の話をしてんだよ。今はもう夏じゃねえだろう、って。集まるなら他にいい場所があっただろうに、なんでこんなところ……」
「こんなところ、とは一体、何という言い様ですか! それがルギア様に忠するものの取るべき態度ですか! 断じてない! 巫山戯(ふざけ)ないで頂きたい! 撤回を要求します!」
「誰がするかよ、アイスイキリ鳥! 事あるごとにテメエは一番偉いアピールしてきやがって、兄弟分のくせに、そういうところ、ほんっとウゼえ!」
「なんですって……!」
「やれやれ、貴様も相変わらず青いものだ、サンダーよ」
 二羽の諍いを達観するような態度で、ファイヤーが間に入る。
「寒い、などと下界の者のようなつまらぬ感覚に固執するようでは、其の名を僭称されても致し方あるまいな」
「はあ? テメエ、何様だあ……?」
「いみじくも! ファイヤーの言う通りですよ、サンダー」
 勝ち誇ったように、氷の翼を扇のように嘴元(くちもと)にあてて、鷹揚に笑ってみせる。
「いい加減、神霊(ダイモーン)の自覚を持って頂きませんと。そのうち、貴方の首が挿げ替わっているかもしれませんよ!」
「然もありなんといったところだな」
「うっせえ、何が大門だよ! 訳わかんねえことグチグチグチグチ言いやがって……ほんっと、お前らなんて嫌いだっ!」
 サンダーは、二羽の顔など視界にも入れないぞとばかりに背中を向け、ふたごじまを流れる海流を眺めた。
「だが、フリーザーよ、貴様も(くち)では威厳たっぷりに振る舞っておきながら、所詮は同じ穴のジグザグマではないだろうか?」
「何です? 上手いことを言ったつもりですか?」
 ファイヤーからの挑発にも超然として、フリーザーはぴしゃりと言い返す。
「いくら修辞(レトリック)を凝らそうが、無い頭をひけらかしてみっともないだけですよ? だいたい、首の心配をすべきなのは、寧ろ貴方ではありませんかファイヤー?」
「なっ!」
 嘲るように、フリーザーはファイヤーをにらみつける。
「風の噂で聞きましたが、なんでもそのファイヤーを自称する鳥、貴方よりもアウラがあって炎鳥らしいと聞きましたがね」
「なななななな……!」
「だって貴方の炎など所詮は虚妄に過ぎぬではありませんか!……一度氷漬けにされた貴方を見た時の無様な姿と言ったらありませんでしたね! なんでもニューラのれいとうビームの流れ弾をくらって、凍りついてしまったそうではありませんか。私どもも一応飛んで参りましたが、なんたる醜態! それこそ、肥大化した雛といったところで!」
「あー、あれは最高だったわ」
 風のように機嫌が移り変わるサンダーが、フリーザーに加勢した。
「トサカとか羽根の炎が消えちゃってな。シロガネ山の連中、今でもネタにしてるみたいだぜ。冷凍ヒヨコ大明神(だいみょーじん)って、な!」
「そそっそそっそそそんな、あれは些細な事故だったのだぞゾ! あり得ぬ、断じてあり得ぬ!」
 二羽を睨みつける瞳は潤んで弱々しく、地を踏みしめる脚はガタガタと震えて、声調はひどく乱れていた。
「有り得ぬ、断じてっ……私はシロガネのポケモンたちには心を尽くして春を(もたら)し、厳しい冬を和らげてやってきたというのに」
「だーかーらあ、そこが馬鹿にされてるんだろって」
「む゛」
 綽々とした余裕を見せて、フリーザーが言を結んだ。
「成程。痴れ者は井の中のニョロモの如し、とはよく言ったものですね!」
「むうううううううううううう゛っ……!」
 泣き暮らしそうになるのを、嘴をきつく結んでようやっと堪えた。驕慢で口達者なフリーザーに勝ち目が無いと見て、ファイヤーがサンダーに矛先を向けて言うことには、
「だが、貴様、サンダーよ、私はシロガネの民に嘲られる程度で済んでいるが、貴様など世間の嘲笑の的なのだぞ!」
「はあ? 何言ってやがるんだコイツ……?」
「貴様、依然として元の住処に拘って出没などしているようだが、それが世の中で何と言われてるのか知らんのか? 駅の片隅を酒場代わりにして晩酌をする親父みたいだと、な!」
「な、なんだって?」
「言葉通りだ。貴様は世界中から伝説にふさわしからぬ落伍者、敗残者扱いされているということさ……日頃の行いを悔いるのだな!」
「嘘だ! 適当なことばかり抜かしやがって、そんなに馬鹿にされて悔しいのかよ?」
「私は下界の者の塵芥(ちりあくた)のような流行になど露も関心はありませんが」
 フリーザーが言い添える。
「あれには確かに、笑わせてもらいましたよ! いかですぐ忘れ去られるとも、哀れな中年男になど比せられるとは、貴方、詩神(ムーサ)に見捨てられたも同然ではありませんか? やれやれ、ドードリオの脚でも舐めていたら如何でしょう!」
「て、テメエら……好き放題いいやがって!」
 サンダーは憤然とした。咄嗟に機転を利かせて、この横暴なフリーザーに恥をかかせてやろうと決心した。
「そういや、フリーザー様? 貴殿はそうやっていっつも神っぽく振る舞ってらっしゃいますけどお、さっきから遠くあっちの方に控えてるプテラ君は一体、何者なんでしょうかねえ?」
 フリーザーは二羽を前にして、きっぱりと否定する。
「貴方が何を言っているのか、ちっとも分かりませんね」
「しらばっくれんじゃねえよ。こんなところに野生のプテラがいるわけねえってくらい、俺でも知ってるからな! おおかた、テメエが拐ってきたんだろ? 何のためかは聞かないでおくけどさ!」
 フリーザーは首肯せず、重ねて否む。
「いえ、そんなものは知りません」
「貴様、俺たちが知らないとでも思ったのか」
 ファイヤーがここぞとばかりにフリーザーに近づいて問い詰めて言うことには、
「そもそも、俺たちはあの子の案内でここまで来たのだがな。そして言っていたぞ。私はフリーザー様にお仕えしている身ですから、と。フリーザー様のことを心からお慕いしております、とも言ってたかな? 随分と可愛くも逞しい「稚児」を(かどわ)かしたものだな……」
「いえ、そんなものは知らない……」
 その時、遠くの岩陰で「あっ」という悲鳴に至らぬ声と、臓腑の弾けるような音が聞こえ、辺りは水を打ったように静まり返った。
「嗚呼! 嗚呼! なんて! なんて嘆かわしい!」
 その軽口を後でたっぷり後悔させてあげますからね、と顔を真っ赤にして沈黙する岩陰の方へ叫んだ。サンダーとファイヤーは腹を抱えて笑い転げた。
「だーはっはっはっ、バーカバーカ、引っかかってやんのっ! 釣り耐性無さすぎてウケるわー、マジ、ダッセー」
「な!」
「俺とサンダーで密かにあいつをダシに使おうと思ってな……おかしいとは思っていたのだ、いつも下界を見下してるくせに、妙に現世のことに通じているからな。まあどうせ、そんなものだろうと思っていた……」
「なっ……なっ……」
「あー、ほんっとファイヤー最高……そういうとこ、マジで好きだわー、愛してる」
「ああ、私もお前を誇りに思うよ、サンダー」
「きいいいいいいいいいいいいい!」
 言語に絶する、おどろおどろしい奇声をふたごじま中に響かせながら、フリーザーは憤死寸前の体でふたごじまの草地をのたうち回った。天上に翼を伸ばし、父なる神に懇願した。
「嗚呼偉大な父たるルギア様! この神霊(ダイモーン)にふさわしからぬ無知蒙昧な鳥どもに神罰を……!」
「ダメだぜ、フリーザー様ぁ。父さんはいま、お疲れなんだから」
「知らないっ……関係などあるものか……! 私はてひどい侮辱を受けたのだ……! こんなこと決して赦されるはずがない……」
「ルギア殿を無理に起こしたらどうなるか、思い知らされたばかりではないか、フリーザーよ」
 また逆鱗に触れたら、次こそ脳が割れるだろう? と知ったような(くち)でファイヤーが(うそぶ)く。
「黙れヒヨコめ! 家畜のようにその首を斧で叩き斬って、丸焼きにでもしてやろうか!」
「わっ、フリーザー様がキレた! おお、こええ、こええ」
「こ、この乞食鳥! 貴方もだ! その馬鹿げた瞳を()り抜いて、一生荒地を彷徨わせてやるぞ……」
「ふっ!」
 もはや立場が逆転したと告げるべく、ファイヤーは勝ち誇ったように燃える翼を広げて言うには、
「言っただろう。所詮貴様も、同じ穴のジグザグマに過ぎぬ、とな……」
 いみじくも! とサンダーが合いの手を入れる。
「この……この……面白いこと言ったつもりか……っ」
 自尊心を大いに傷つけられたフリーザーは、薄水色の翼で顔を覆って嘆いた。己が、自己同一性(アイデンティティ)に懊悩するミュウツーと同等か、それ以上であるかのような振舞であった、
「嗚呼! 嗚呼! ルギア様! 哀れな氷鳥の戯言をお許しいただきたい!……私はかの創世を成ししアルセウス様の御時(おおんとき)に生を受けたかったあ! こんな、有象無象に取り囲まれて生きるより、どれだけ幸福だったことでしょう!」
 ディアルガよ! パルキアよ! ギラティナよ! 我を私生児でもいいから同胞(はらから)に受け入れ給え! 慨嘆しつつ喚き散らすフリーザーを、サンダーとファイヤーがにやにやと取り囲む。
「フリーザー様ぁ? いかがなされました?」
「ご乱心ですか、フリーザー殿!」
 暴れる氷鳥の両翼の片方ずつを、雷鳴と火炎の翼が押さえつけると、開けひろげになった脚の間へと首をもたげた。
「ぶっ、ぶっ……無礼者! 無礼者!」
 戯れを演じつつ、サンダーとファイヤーが嘴で股を(まさぐ)ると、弱みを啄まれたフリーザーは嬌声をあげざるをえなかった。
「嗚呼アアアアアア!」
「ほうほう、さすがフリーザー様ぁ、氷が溶けたような舌触りでいらっしゃる」
「や、やめなさ嗚呼い! こんなことは嗚呼っ、許されない……!」
「どうしたのですフリーザー殿、あまりのことに、気が動転しておられるのですか?」
「痴れた鳥どもめええええええっ!」
 罵倒と悶絶の入り混じった妙なる声を響かせる。折を見て三鳥が落ち合うたびに、自ずから和の為にまぐわう習いとは雖も、一方的に淫されるのはフリーザーにとっていとも凄まじいことであったが、本意なくも慣らされた尾の付け根は、しとどに濡れて、いっそうの言祝(ことほぎ)を乞うていた。
「嗚呼貴方たちっ……こんな行いは秩序に反するうっ!」
「とか言っちゃって? やっぱり、嬉しいんだろ?」
 俺は久々にここに会えて嬉しいぜ、と言いながらフリーザーの恥部を一舐めすると、十舐めたような反応をくねる氷の羽根が見せ、情感が三羽の心に渡る。
「フリーザーよ、よもやこのような顔をあの稚児に見せているわけではあるまいな?」
「そ、そんな下賤な真似をするわけがないでしょうっ……!」
「だが、あの筋骨隆々として壮なる躯体はどうだ。さては貴様、あれを(かしず)いているな? どう傅いているのだ?」
「傅くもなにもありませんっ……過酷な環境に、自ずから肉体が鍛錬されただけでしょうよ!」
「どうかな」
「くっ、くうんっ!……」
 二羽の舌がもどかしくフリーザーの孔を(わざ)とらしく水音立てて撫で味わうと、堪能された側は覚えず清らな喘ぎを鳴らす。並びなき鳥ならではの聖俗入り混じった妙なる声であり、雅であった。
「ですが嗚っ、誓って言いますが呼っ、断じて、あの下賤な翼竜とは致していませんから嗚呼!」
「はいはい、フリーザー様、別に俺らはどっちだっていいですよ、っと。な、ファイヤー?」
 御意、と頷くと、嘴を秘孔から離した二羽が首を傾け、情愛を(くち)移しする。雷と炎が睦む有様は、いかにも夏の訪れを告げる入道雲を擁した名高きキキョウの山を思わせ、嘴では足らずに擦り合わせて付いたり離れたりする股は、知る人も知らぬ人も皆行き交い、別れては出逢うというスリバチ山の関所のかつての賑わいを彷彿とさせる。
「下民からの揶揄というものは」
 ファイヤーが言い継ぐことには、
「尊い信仰心の裏返しだ。私はそう思うのだが、サンダーよ……」
「俺もそう思うよファイヤー」
 普段は敏い目つきを今は蕩かせて、サンダーが受け合って、
「春が来ると、みんなお前に感謝するんだ……お前が愛されてるのを見ると、俺、すっごく嬉しくなるんだよ……」
 二羽は一羽にならんと(こいねが)い、遠いイッシュの地に(いま)します神、かつては一体であったというゼクロムとレシラムに(あくが)れつつ、互いを愛でたくも思し召す。その交歓を、仰向けに股を引き攣らせながら打ち眺めるフリーザーもさすがに、恋しく覚えて、
「貴方たちっ、私を置いて勝手に交尾(つる)むなどとは、口惜しいことをするではありませんか……!」
 十二分に甚振られて火照った股を緩く上下に振りながら、(かたじけな)くも求愛をする氷鳥の姿態に、乳繰り合う二羽の発情はやはり忍び得ず、やがてしなだれ掛かるように三鳥は絡れ合った。
「貴殿のことは勿論、心に留めているさ、フリーザーよ」
 添い寝しながら、悋気するうまし鳥の華奢な下嘴を、燃え盛る翼が撫でさすると、まっさらな胸毛を膨らませては、飼い慣らされたペルシアンのような仕草を見せるのに感じ入って、滾る嘴をするすると、溶けるような胯間へと滑り寄らせると、既にして漏れ出した果汁を啜るべく決して飽きることのない舌を伸ばした。
「嗚呼! 熱い、熱いっ」
「もむ゛っ、なんとっ、しゅばらしい(素晴らしい)声なのだっ……」
「いやだっ、溶ける、溶けるっ!」
「聴かせてくりぇ……貴殿の愛らしいこゔぇ()を!」
「きゅうううううううっ!……貴方という(ひと)は、なんといううっ、見下げ果てた……あわれの鳥めえええっ」
 ファイヤーが舌先をちろちろとフリーザーの大門に行き来すると、とくとくと流れ出す神酒がありがたく、千年の渇きが一度に癒されるかのようであった。目を瞑ってうっとりと呑んでいたが、自分もまた呑まれるものであることを失念もしていた。
「も゛……」
「ファイヤーっ、何、テメエの世界に浸ってんだよ……」
 長い上嘴をファイヤーの腹にあてるようにして、温かみのある股を優しく挟み、いたいけな舌がそっと内奥を擽っている。
「みみ゛ぇっ……!」
「けっ!……相変わらず、情けねえ声出しやがってよお」
「びべぼ!……ゔぉ!……」
「ああっ……バカみてえだけどすっげえカワイイ……!」
 ファイヤーより充溢する熱燗がサンダーの舌に染み込み、快い眩暈のような酔いが瞬く間に回ると、夢に生きるような心地がして、主の大いなる(かいな)に抱かれているかのように覚えまばゆくて、一心に念じて燃え立つ炎のごとく舌を這い回らせると、両の口を満たされたファイヤーの悶えが凄まじい。
「むう……み゛ゅんみ……ぼんも゛んっ……」
「あああああっ! ファイヤー、お前の鳥マンもっと食いてえよっ……」
「ぼ、ぼぼぼぼむ゛っ!」
「んんっ、ホカホカのピジョンミルクもっと飲ませてくれようファイヤア……!」
 サンダーの傾いた風貌も、をかしき三叉路にのめり込んでは荒々しさは和らいで、よもや雛に返ったとも驚かれる舌で、ファイヤーの歓喜をおどろおどろしくさせると、なおも満たされなくて、跳ねるコイキングのように身をのたうちながら、痩躯の股をぺしぺしとフリーザーの顔へあてた。
「おい、フリーザー! さっきからああああ言って善がってないで、早く、早く俺の鳥マンコも喜ばせてくれって」
「嗚呼っ……あまりのことに失念もしていましたね……!」
 股を埋めるファイヤーの発心が身を蕩してくるのを忍びながら、やれやれとフリーザーの愛敬(あいぎょう)ある嘴が、ねだるサンダーの秘孔を(まさぐ)っては、匂いやかな舌をこちょこちょとすると、
「あはあああっ!……ああん、フリーザー、気持ちいい!」
「相も変わらず、下衆な言葉遣いですね!……もう少し上臈の身というのを弁えなさいいっ」
「んなことより、もっと俺のペロペロ舐めてよお、フリーザーあああアっ」
「仕方のない雷鶏め、甘える身ならもっと脚を開いたらどうです!……」
 喜んで開脚するサンダーの女郎にもあるまじきと思える有様に、浅ましくも心凄く覚えて、かくもがなと念じつつ、熱心に鳥孔を(ねぶ)ると、鈍色の毛並みの腿をピンと張りつつ悶えて、その間から垂れる林檎酒のもの珍かな味わいがフリーザーを存分に愉しませた。
「んんっ、フリーザーのペロペロ気持ちいい……ファイヤーの鳥マンコ美味しい……」
「嗚呼! ()ね! (みまか)れ! 尽くすなら私をもっと狂わせなさいっ……!」
「む゛ま゛! べぼ! げぴ!」
 和した三鳥の色好みはいとどしくなる。サンダーの舌がファイヤーのトロ火にかかった肉を蹂躙すると、感受したファイヤーの舌先がフリーザーの氷を溶かし、尾を乱すフリーザーの舌尖(ぜっせん)がサンダーの蕾を開かせる。二度(ふたたび)顕現する甘やかな聖三角(トライフォース)、三つ鱗はもし父たるルギアが目にしたならばありがたく拝すると思われたほどで、和を以って尊しとはかくもという御ありさまであった。
「そぎぽ」
「ファイヤー、舐るならもっと心を尽くしたらどうです……」
「ばふん゛」
「ファイヤー、腰付きがやらしくてカワイイようっ」
「びぇびぇびぇぽぱぽい」
「まったくうっ、淫らな鳥どもだことうっ!……」
「ああんっ、俺、フリーザーに愛されてる……すげえ嬉しい……」
「誇り高きらいの鳥が口にすることではないと言うにんっ!」
「も゛っ!……ふ、フュリージャーよ、さてはあのちゅいご(稚児)のことをきゃんが()えているに゛ゃん?」
「しいっ……しれっと、また蒸し返すとは、生意気なヒヨコみぇっん!」
じゅぼし(図星)にゃにょじゃにゃあ……しぇいしぇい(精々)貴殿のくうちょう(偶像)ゔぉちゃっぷりぎゃばい(可愛)がるこったも゛!」
「はあっ……勝手に言っていなさいっ……嗚呼ン」
「フリーザー! フリーザー! 舌を離したらやだよっ……!」
「やれ、やれ!……小鳥ですかっ、貴方あっ……」
「ううううんっ」
「びゃっ!」
「あゝっ!」
「んんうううううっ」
「嗚呼ああああああん!」
「ぢゅる、ぐぎゅるりゅりゅりゅぎゅぷっ!」
「ううっ……んんんんんんっ……」
「ぺえ……ぢゅぢゅぢゅじゅ」
「ふうううう……うううううううううううんっ!」
「な、なんて(こと)うっ、嗚呼っ……貴方たちっ……天晴れだっ、何(より)もうっ……」
「ィ゛ゃゾ」
 愛でて愛でられつつ、同じきのみを啄むごとく分かち合いながら、高まる情欲に、いかで勃ちしがな、挿れしがなとさえ思えど、もどかしく生まれし鳥の身を嘆きつつ、舐め舐られて、おのがじし同胞に絶頂を託して、理を忘れる淫らさは、ゆゆしいとまで思われるほどだった。
「ぴゃ、ぴゃいにい゛……!」
「嗚っ、呼っ……!」
「んっふうっ……!」
「は、儚く、儚くなるう……」
「ひぎゃ、れっぎゃ!」
「ううううっ、俺もイきそううううう!」
 あまりのことに、嘴より漏れ出る諸々の麗しき御声で、三鳥が罵り騒ぐと、晴れやかに洞窟が色めくようで、ふたごじまの荒々しい水流の流れも穏やかに、吹き荒ぶ通り風も今は温和で、ゴルバットはバタフリーのように優雅に飛び回り、水面からはタッツーが跳ねて宙を優雅に一回転した。神々の三すくみは、えも言われずいつくしく、ホウオウの極彩色の羽根さえ思わせた。
「うあああああああああ!……」
「嗚呼あああああああっ!……」
「ぼおおおおおおおおお!……」
 もはや一体となった三鳥は、絶頂もまたまばゆく、その畏き鳥居より噴き出づる聖潮は、散々に焦がれただけあって大層いみじくて、サンダー、ファイヤー、フリーザーの(かん)ばせを白くした。決して宿すことの叶わぬ種を、片割れに放ち終えると、なおも噴き切らない鳥乳を乞うように、微睡みつつ舌を動かしながら、やがて心安らかに雷鳥、炎鳥、氷鳥と眠りについた。
 サンダー、ファイヤー、フリーザーの三鳥がふたごじまにて熟慮に熟慮を重ねた結論として、サンダーはワイルドエリア、ファイヤーはヨロイ島、そしてフリーザーは従者と共にカンムリ雪原へと向かい、僭称者に相対することで合意した。



後書き

定型句ですが、知っている方はどうもこんにちは、初めましての方は初めまして。群々と申します。読みは「グングン」のつもりですが、「ムレムレ」でも「ムラムラ」でも構いません。気分に応じて、どうぞ……
普段はpixivとtwitterで活動しているポケ字書きですが、発起してポケモン小説wikiにお邪魔いたしました。後書きついでに、ちょっとその経緯から。
きっかけは9月でしたか、twitterで毎晩やってる「ポケモン版深夜の140字ワンライティング」で、このwikiで活動しておられる水のミドリさんとリプし合っていた時に、ふと小説wikiの話題になったわけです。そこで、ミドリさんが「なぜ貴殿はいらっしゃらない?(勧誘)」と。その時は「ちょっと編集方法とか覚えるの大変そうだし……」みたいな返事をして言葉を濁していたのですが、実を言うとその時期から、wikiでの活動を考え始めていたわけですね。動機は色々あるわけですが、長くなって小説が霞むといけないから省略。
さて、初投稿です。するなら、いつ、何にすればいいか、しばらく考えていたわけです。年末の仮面小説大会にしれっと参戦するかーとも思ってたんですが、10月に入ってからwikiが結構更新されて賑わってるのを見ていたら、自分も何かしらでポケモン小説の盛り上がりに加わりたくなってきたんですな。「冠の雪原」もちょうど配信されたことだし、と!

ここから実に後書きらしい後書き。
この小説、実は7月にpixivの方に投稿したものになります。ルギア♂×三鳥(サンダー・ファイヤー・フリーザー)入り乱れての乱行ものです。ただ、既出作を転載するだけでは味気なさすぎるだろうということで、新たに『和して同ぜず(以下略)』をおまけとして書き下ろしました。ついでに本編の方も、せっかくなんで微修正してます。一番大きいのは、ファイヤーの住処が「チャンピオンロード」から「シロガネ山」になっていることですね。時系列としては明らかに『HGSS』なのだから、前者は明らかな間違いですね!
ついでに、おまけの方にちらりとプテラの話が出てきてますが、これもpixivの方に投稿した別作(フリーザー×プテラ♂)の設定を引き継いだものになります。書いた当初は、2作のフリーザーが同一個体かどうかはぼかしてたんですが、いいや、この際同じにしちゃえ、ってことで同じにしました。そちらの方も、おいおい書き下ろしもつけて投稿したいところです。推しはつい軽率に出して、しかもエロい目に遭わせてしまう。
小説のコンセプト(?)としては、ただ、ひたすら三鳥のトライアングル3Pを書きたかった! それだけ! でも小説だからね、それを書くために書かないといけないことが無限後退的に出てくるからね、ってことでこういう形になりました。キャラ付けにしても展開にしても、その場その場で考えたものを勢いで書いているので、おまけの方と比べて文体と性格が一致しているかどうかは不安ですが、書いてる側としては楽しくヤらせていただきました。
ええ、最後にwikiでの活動方針ですが、一応pixivとは並行しながら、今回のように既作におまけを付けてみたりとか、あっちだとやりにくい連載とか、やってみたいですね。書いてて、長くなりそうだなと思った作品なんかを、こっちで少しずつ更新していく、みたいな。これを契機に、より自分も積極的になっていきたいなあ、と。
以上、長々しいお話でした。あ、作者ページは投稿数が増えてきたらぼちぼち作るつもりです……

作品の感想やご指摘はこちらか自分のTwitterアカウントにでも……

お名前:
  • この作品を読んでいなかったので、初めて読ませていただきました。
    なんだろう、許しを請うはずがそれが一瞬で卑猥なことに変わって、罰と言いつつヨガってる3体を見てて、ちょっとばかり笑いながら読んでいました。行為から秘所から文章から、あれよあれよとでてくる表現は本当にすごいと思いました。一部分からない言葉があったのが残念です。
    いくつかpixivの作品も読ませてもらってます。僕は同性愛は苦手ではありませんが興味がほぼ無いほうです。ですが、群々さんの書くものって、なん言えばいいんだろう……みずみずしい?違いますね。とりあえずジャッバジャバのベッチョベッチョのグッジュグジュなんです。異性とか同性とか、そんな定義を超えたような愛そのものの表現を感じました。ただそこに愛とその先の行為があるだけで、性別気にせず読めるような、そんな感じです。エロいってことですかね?
    頭に感じてること、表現しきれてません。語彙不足です。すいません。
    これからも頑張ってください。 -- カナヘビ
  • カナヘビさんお読みいただいた上、コメントまでいただきありがとうございます……!
    エロを書くとなると、気恥ずかしさのせいなのか、ちょっとコミカルな要素を交えてしまいがちです。三鳥のキャラ付け、特に奇声担当のファイヤーだとか。そもそも、最終的にはエロで解決させてるって時点で、もうギャグなのですが……
    表現に関しても、途中から古典っぽい雰囲気にしようとした結果、古い和語なんかを引っ張りだしていましたね……特におまけなんかは顕著かと思います。ド直球のエロを書くって難しいです……
    僕が書くとついホモ寄りになってしまうんですが、性別気にせず読めると言われると嬉しいです……僕も自覚をもって書いてるわけではないんですが、ただ言えるのは、この手の小説っておおまかに「BL」系と「ガチホモ」系に分かれていますけど、正直その区別がわからないのです。読む側はともかく、僕はそういうジャンル分けって興味ないんですよね……エロなんだから、ひたすら、自分がエロいと感じたことを書いたり読んだりしてくだけだよなあ、くらいとしか。要は雑食、ってことなんですかね……?
    コメント返し長くて申し訳ないです……! ワンラも含めて、今後ともよろしくお願いします。 -- 群々

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Last-modified: 2020-10-27 (火) 18:24:20
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