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憤然者

/憤然者

仮面小説大会用作品

作者僕、パウスです

特に危険な描写などはないと思います。
それではどうぞごゆっくりご覧ください。




――――――――――今から約16年前のこと。
全てを思い通りにしたいという欲に負けた者達が次々と集い、大きな団体となった時があった。その者達は自分勝手に行動し、他者を傷つけ、強奪、支配を繰り返していた。時には殺戮も繰り返していた。
皆その者達を「ダーク団」と呼び、その恐怖に打ちひしがれる毎日を送っていた。

――――――だが、その一方で、彼らには希望もあった。
「ダーク団」に対抗しようと、その力と正義心を持て余した者達が集い、対抗組織「ライト団」が結成されたのは、「ダーク団」が暴れ始めてから約二か月のことだった。
やがて二つの団体が衝突し、まるで戦争のように、ポケモン達の住む地域は戦いの渦に飲み込まれ、焼き払われていった。
その戦争は数カ月続き、徐々に「ライト団」が有利になっていくなか、ついに「ダーク団」が降伏したのだ。

「ライト団」の犠牲者は多くはなかった。犠牲となったのは九匹。全体の10分の1にも満たない。
だが少ないとはいったものの、九つの犠牲というものは、ポケモン達の心に深く足跡を残し、特にその遺族は、深い悲しみと怒り、そして憎しみを抑えなければならなかった。

――――――しかし、その気持ちを抑えられない者もいた。


―――――――――――――――――――――――――――― 憤然者 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


自然に囲まれた自然界。木々が並んで立ち、立派な緑の木の葉の帽子をかぶっていた。
日はとうに沈み、今は半月が星と共に天空に浮かび、冷やかな光を注いでいた。冷たい風が強く吹き、木の葉を怪しく歌わせる。
その木の間を走り抜け、全速力で移動するポケモンがいた。黄色い体の首回りに白い襟巻き状の毛が生え、大きな鼻をしたポケモン―――スリーパーが、地上にむき出しになった木の根につまずきながらも、そして何度も後ろを振り向きながら必死に走る。
そう、このスリーパーは今、何者かから逃げているようだった。

恐怖に顔を歪ませ、何度も何度も後ろを振り返ったのが災いした。後ろを気にするあまり、前方の大木に気付かずに激突してしまったのだ。
スリーパーは体を強く打ちつけ、その場に座り込む。その隙に、スリーパーを追っていた影が、彼の前に立ちはだかった。
「まっ、待ってくれよ……な?俺が『ダーク団』にいたのはもう15年以上も前の話だ。とっくに戦争だって終わってる。なぁ、見逃してくれよ……………!!」
スリーパーは恐怖にひきつった顔で笑いながら、地面に両手をついた。

「…………………貴様はそうやって命乞いする者を、何匹殺した………!!」
その影は冷酷な目を光らせ、スリーパーを見下ろす。
そして震えるスリーパーを片前足で押し倒し、抑えつけ、もう片方の前足をゆっくり上に引いた。
「やっ、やめろ……!やめろおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

そして夜の森は、風に煽られて鳴る草木の音以外に、何の音も鳴ることはなかった。
 
                                *

朝の森は静か過ぎず、うるさくもなかった。元気に小鳥ポケモン達は活動し、大型の鳥ポケモン達はそれを狙う。
人の息のかからない大きな自然の中の、極々当り前の風景である。
その小鳥ポケモン達が一本の枝に止まった。チャンスとばかりに、大型の鳥ポケモン達は羽を広げる。
そして飛び立とうとした瞬間、小鳥の止まっていた枝の上に、何者かが昇ってきた。そのせいで小鳥たちは逃げてしまう。それを追って、また大型の鳥ポケモンは飛び立った。
「…………ふぅ」
枝の上に登ってきた者は、先端に鮮やかな紫色の毛が大量に生えた、淡い山吹色毛に包まれた長い尻尾を垂れ下げた。
そして振動を起こさないよう、ゆっくりとそこに腰を掛ける。
前足で枝に生っていた赤色の木の実を一つ取り、小さな口の中へを運んだ。
その四足歩行型のポケモン―――エネコロロは、木の実の最後の一口を口に放り投げると、すぐさま今度は少し大きめの実を取ろうとした。
「おーいっ!カルマぁーーーっ!!」
エネコロロ―――カルマは声のした、自分の座っている木の枝の根元を見下ろした。
「俺の分も一つとってくれよっ!俺木登りは苦手なんだっ!!」
根元で木をゆすっているのは小柄なサンダース。カルマを見上げ、羨ましそうに唾を飲んだ。
カルマは一度軽く溜息をつくと、この枝に生っている最後の木の実を取り、サンダースの丁度上に来るようぶら下げ、落とした。
「うわっ!?おっとととととととと!!」
サンダースは落ちてきた木の実を一度は前足で捕まえたものの、落下の衝撃で木の実が跳ねてしまい、それをキャッチしようとして前足が滑り、そして地面すれすれのところで何とか木の実を捕らえた。
ふぅっと安堵の息を吐いてもう一度体勢を立て直したところに、カルマが木の幹を走るように降りてきた。
「いい加減木ぐらい登れるようになってよ。地面に落ちてる木の実ばっか食べてたら、いつか腐ってるものも食べちゃうかもよ、ソレイ?」
「う…ん……確かにそうかもね…………って、降りてくるんだったら木の実落とす必要なかったじゃんか!」
サンダース―――ソレイは木の実を一口齧り、その甘みに思わず満足そうに鼻息を吹く。そんな様子を、カルマは嬉しそうに眺めていた。
「もう腹もいっぱいになった?」
「………うん。」
「じゃあ帰ろうか。なんか雲が増えてきたし……」
ついさっきまで青空が空を支配していた。だが風に運ばれてきたのだろうか、この数分で厚く、暗い雲が増えてしまっている。
このままでは雨でも降りそうだ。
「ちょっと待って、小腹が空いた時用にもう二、三個木の実持って帰りたいから。カルマ、頼む。」
「自分で採ってきな。何で私がそんな面倒くさいことしなきゃいけないの。」
「えっ、ま、待ってよカルマ!分かった我慢するよぉ!!」
呆れて置いて行こうとするカルマの後を、ソレイは慌てて追いかけて行った。

                                *

大気に水気が溢れ、葉末の露が煌めく。
昨日はカルマ達が帰った直後に雨であった。その雨も昨晩には止み、今は嘘のように快晴である。
ソレイが起きた時は、まだカルマは寝ていた。その寝顔を覗いて、ソレイは彼女と同居し始めた時のことを思い出す。

「ダーク団」と「ライト団」の戦いが終結した後、その戦いの死者を全て埋葬し、特に「ライト団」の戦死者には壮大に葬式も行われた。
その葬式の場にソレイは居た。
夜も随分更け、闇夜は薪の炎によって照らされる。その中心にある九つのまっすぐ地面に突き立てられて並べられた木は、亡骸を埋葬した場所を示していた。
周りの者達は皆涙を浮かべ、何度も鼻を啜っている。死者に関わりのある者も、ない者も。
ソレイはただぼんやりとそれらを眺めていた。この時ソレイはまだ五歳のイーブイ。悲しくないのではない、悲しめないのだ。
まだ幼かったソレイにとって、この事実は実感のないものだった。

式の途中、帰ろうとしたソレイの目に、一匹のエネコの女の子が映る。そう、この時七歳のカルマである。
カルマはソレイと同じく、ぼんやりと墓を眺めて立ち去ろうとしている最中であった。
この時、ソレイの足は勝手に動いた。気がつけばカルマの肩に前足を乗せていた。
「君………一匹?」
声をかけられたカルマは足を止めた。首を動かして肩に乗った茶色の前足を一瞥し、振り返ってソレイと目が合った。
ソレイは笑顔を浮かべていた。そんなソレイに不審感を抱きながらも、カルマは頷く。
「それじゃあさ、僕と一緒に暮らさない?」
そう言ったソレイには、カルマも驚いた。そんなことをさらりと言える者はそういない。
人間とは違い、野生のポケモンは幼くとも自分で食料を採って暮らしていける。だが、初対面で同居など、考えられなかった。
しかし、直球な提案が逆にカルマの胸を打った。このイーブイとなら一緒にいれるかもしれない、そうカルマは直感的に思った。
カルマとソレイが共に暮らし始めたのは、それが最初である。

                                *

ソレイはカルマを起こさぬよう、外に出た。特に目的はなく、ただの散歩である。
「お、ソレイじゃねぇか!」
突然後ろから声をかけられ、ソレイは驚いて一瞬宙に浮いた。地面に足が着いてすぐに聞き覚えのある笑い声が響く。
ソレイが後ろを振り返ると、そこには年は中年くらいの、がっしりとした体つきのレントラーが笑っていた。
「何だ……ソリュ―ドさんか…………あーびっくりした。」
「はっはははは、びっくりしすぎなんだよお前は!」
ソリュ―ドは、「ライト団」の中で五本の指に入るほどの実力の持ち主で、元副団長である。
団員からの信頼も厚く、子供にも優しく、恐らくこの森中のポケモン達と仲がいいだろう。ソレイと仲がいいのもそれ故だった。
「今日は俺に何か用ですか?」
「あぁそうそう。また起こったんだよ。」
「………またって……あの事件………ですか?」
ソリュ―ドはゆっくりと頷いた。いつの間にか笑顔は消え、真剣な顔になっていた。

あの事件というのは、最近頻繁に起こり始めた元「ダーク団」団員を殺害する事件の事である。
自分達の住む場所を荒らされた恨みか、あるいは戦死者の遺族による仇打ちか、動機は分かっていない。
だが、後者が最も有力だろうと言われている。
現在、ソリュ―ドをはじめとする元「ライト団」の団員数匹で犯人を追及しているが、まだその犯人は見つかっていない。

ソリュ―ドの住処である洞窟とソレイの住処である大木は近かった。だからこうしてよく合うのだが、今日はいつもとソリュ―ドの話の重さが違った。
事件の話になるとソリュ―ドがいつも以上にソレイに対して真剣になるのは、ソレイとソリュ―ドの住むこの付近で、一番遺体が発見されやすいからだ。
「それでここから最も重要な話だ。」
ソレイは無意識に唾を飲み込んだ。今までソリュ―ドと何度も話してきたが、ここまで真剣なのは初めてだったからだ。
「昨日夜中にふと目が覚めたらな…………隣で寝てるはずのメリムルがいなかったんだ。それで………」
メリムルというのは、戦後にソリュ―ドと結婚をした女性である。
何にも勝るほどの妖艶な容姿に、ソリュ―ドと同じく誰にでも優しい性格。そして元「ライト団」女性団員を統率するほどの実力もある。
まさに才色兼備の女性であり、男性からも、女性からも好かれていた。
「それで………?」
ソリュ―ドがじれったく話すので、ソレイは思わず口が動いた。
まるでそう言われることを待っていたかのように、ソリュ―ドはもう一度口を開いた。
「おかしいなと思って出口の方を見てみたら…メリムルがまさに外に出ていく瞬間だったんだよ……!」
「え……それって………っ!」
この事件には未だ目撃者はいない。この森には夜行性のポケモンは少なく、故に犯行時期は夜中だろうと言われている。
夜道は危険だと解っていながらそんな時間に外に出るということは――――
「俺も信じたくないけど、まさか……な………………」
ソリュ―ドは口をソレイの耳に近づけ、そっと何かを囁く。その言葉を聞いたソレイは、目がこぼれそうになるほど大きく見開いた。

                                *

「おいしいねカルマ。」
ソレイはにこにこしながら、前に並ぶ色とりどりの木の実を次々に口に運んで齧っていた。
「……殆ど私が採ったんだけどね…………」
一方カルマは渋い顔をしながら木の実を頬張る。実の味が渋いのではなく、別の理由だった。
そう、これらの木の実は木に登ることが苦手なソレイの代わりに、殆どがカルマの採ってきたものなのだ。
「ご、ごめん…これからちゃんと練習するからさ。」
木に登れないソレイに新鮮な木の実が採れるはずもなく、採ってきたのは――というか拾ってきたのは――つぶれた物ばかりである。
「じゃあ来週!来週までに登れるようになってなかったら、もう私が採ってきたのは食べさせてあげないからね!」
「……えぇーーーっ!!それはきついよカルマぁーー!!」
ソレイの笑みが焦りに塗り替えられ、カルマはクスクスと笑いながら夕食をたいらげた。

カルマとソレイは共に夕食を終え、一緒に床に入っていた。
風と草の音しか聞こえない静かな真夜中に、カルマは目を覚ます。
ソレイが目を覚まさぬように気を十分に払って起き上がると、背中を向けたソレイの方を見た。
確かに寝ているな、と確認してからカルマは歩き出す。そして住処の外に一歩踏み出た瞬間だった。
「……どこいくの?」
「―――――――っ!!」
驚いてカルマは振り向くと、寝ていたと思っていたソレイがゆっくりと起き上がりだした。
「どこいくの?…って聞いてるんだけど」
「…………………散歩。」
カルマとしては冷静に言ったつもりだろうが、ソレイから見れば彼女は明らかに焦っていた。
カルマも、あまりにも不自然だとこの直後に気づいた。
「別に私がどこでどうしようたって勝手―――――」
「今日はこの付近は誰も通らないよ。」
「………何だって!?」
はっとカルマが口を噤んだ時には、すでに遅すぎた。ソレイの疑問は確信に変わり、更にカルマに歩み寄って行く。
「……………まさか………今までの事件の犯人がお前だったなんて………」
出来れば信じたくなかったであろう事実。だが、この状況で疑うことなど出来ない。
今ソレイが見て、聞いていることは、全て現なのだから。

「…………そうだ。今までの元「ダーク団」殺害事件は、全て私がやった。」
「カ……カルマ…………?」
「驚いてるようだが、今までお前が見てきたのは全て偽の私だ。今お前の目の前にいる私こそが本物………私の本性だ!」
口調も、雰囲気も、目つきも、全て今まで共に暮らしてきたカルマのものと全く変わった。
全てが冷酷で、恐ろしくて、まるで別者のようである。
「……で、これからどこいくんだよ。」
気圧されないようにと、ソレイも何とか強気な態度を保つが、あまりのカルマの変わりように衝撃は隠せなかった。
「この付近を誰も通らないなら、遠くまで出向いてやるまでだ。………私の家族を……幸せを奪った奴ら「ダーク団」共になっ!!」
「家族を…………じゃあお前の家族も………」
「そうだ。お前に出会った葬式の場にあった九つの墓、その内二つは私の両親の墓だ。」
ソレイは理解した。
あの時カルマが泣いていなかったのは、死が解らなかったわけじゃない。悲しみよりも、憎しみが心を支配していたからだ。

「お前も利用させてもらった。」
「……何?」
「雨風防げる住処を提供してもらったんだからな。おかげで随分行動がし易かった。…もっとも、お前が木に登れないせいで飯は自分で用意するはめになったがな。」
これが本当にあのカルマなのか。ソレイは唖然とするばかりだった。
カルマと共に暮らし始めてから15年近く経つというのに、ソレイはただ利用されていただけだったのだから、ショックをその顔に露わにしていた。
「………そうか。じゃあ今までも、これからもこんなことを続けるつもりか。」
「私の本性を知ったからには、お前の口を塞がなければいけないな。…………恨むなら、真実を知ってしまった自分を恨むんだなっ!!」
そう言った直後、カルマは体の向きを変えてソレイに飛びかかった。

                                *

カルマに押し倒され、ソレイは背中を強く打つ。そして反射的にカルマの腹を後足で蹴飛ばした。
カルマはソレイの横に転がり、今度はソレイがカルマを押さえつける。
「この事件も今日で終わりだ!カルマ……俺がお前を止める!!」
カルマは予想以上に抵抗せず、ソレイに抑えつけられてもじっとしていた。
少し拍子ぬけたソレイの下で、カルマは不敵に笑みを浮かべた。
「……フフフッ………お前ごときに私が止められるか!」
カルマの額の辺りが輝き出し、ソレイとカルマの顔の間でその光は星の形に固まっていく。
ソレイが身体を反らせると、その星―――〝スピードスター″はソレイの鼻先をかすって住処の木の上の方に穴をあけた。
体を反らしたことで無防備になったソレイの胸に頭突きをくらわせ、よろめいたところを体を大きく転がすようにしてソレイをどけたカルマ。
すぐさま立ち上がり、同時に起き上がろうとしたソレイに勢いよくぶつかって外に弾き飛ばす。
更に起き上がろうとしたソレイの顔を、体を回転させて長い尻尾でなぎ払った。
倒れながらも苦し紛れに打ち出したソレイの電撃もカルマにはかすりもせず避けられ、頭を突き出した突撃をくらってまたもや吹き飛び、木に勢いよく背中からぶつかった。
その木の根元で、ソレイはついに倒れた。

勝ち誇った笑みを浮かべてソレイに歩み寄り、カルマは口を動かした。
「これで解ったか。これまで平和にぼんやりと暮らしてきたお前と、復讐のために体を鍛えてきた私とでは実力が違うんだよ。」
にやりと笑うカルマの前足に、意識もうろうとするソレイの前足が伸びる。そしてソレイはしっかりとカルマの前足に触れた。
カルマが顔をしかめると、ソレイはかすれた声でこう言った。
「………なぁ……お願い……だから……………もうそんな………復讐……なんてことは……………やめ……………」
そこまで声を絞り出し、ソレイは気を失った。
カルマはソレイの必死の言葉を聞いた後、彼の前足と触れた自分の前足を持ち上げ、じっと見つめた。
その表情はどこか悲しげに、ただ沈黙する。
やがて覚悟を決めたように息を大きく吸い込んで吐き出すと、目を瞑ってその前足を天高く振り上げた。
「…………すまん………っ!!」
とどめを刺す前足が勢いよく振り下ろされる。それはソレイの首を、確実に狙っていた。
――――――だが、それが命中することはなかった。

カルマの前足は、何かに受け止められた。
「ふぅ……危ない危ない。」
目をあけたカルマが見た者は、黄金の毛に包まれた尻尾に受け止められた自分の前足と―――ほっと息を吐いた美しいキュウコンであった。
                       
                                *

「だ、誰だ!?」
そこで気絶していたソレイはいつの間にかキュウコンの背中に移っていた。
それよりも気になるのがこのキュウコンの存在。とどめを刺そうとしたカルマの足を尻尾で受け止めるとは、只者ではない。
「ナイスだぜメリムル。」
今度は後ろから男の声がして、カルマは前足を引いて後ろを向いた。―――そこには大きなレントラーが経っていた。
「間一髪だったわソリュ―ド。でも、やっぱり言った通りだったでしょ?」
「……あぁ、もう疑いようがねぇよ。まさか犯人がカルマだったとはな………」
ソリュ―ドとメリムルのことは、カルマも知っていた。
過去に「ライト団」として勇敢に戦った自分の両親の仲間だということも――――この二匹には実力で敵わないということも。

「ソリュ―ドと……メリムルか。まさかソレイに犯人を教えたのも……」
「それは私。」
「この付近を通行禁止にしたのも……」
「それは俺だ。お前の被害を出さないようにな。」
メリムルの横に並ぶソリュ―ド。カルマは後ろに跳んで距離を取った。
「何故……私が犯人だと………」
カルマにとって、一番気になることである。いつばれたのか、全く分からなかった。
「昨夜。私がたまたま眠れなくって散歩に出た時に……ね。」
ソリュ―ドが昨日、ソレイと話していたことだった。昨夜、メリムルが外に出たのは彼女がこの事件の犯人だからではなく、ただの散歩だったのだ。
まったくの偶然であるが、その時カルマが元「ダーク団」団員を殺害する現場を見たという。
「ソリュ―ドったら、最初は私が犯人だって疑ったのよ!?信じられる!?」
「だから悪いって!俺だってそう思いたくなかったけど、万が一のことだってあるし………」
「まったく………しょうがないわね。」
目の前でこんな茶番を見せられ、カルマは逆に焦りだした。どうすればいいのか、全くわからない。
そんな時、ソリュ―ドの目が一気に真剣になり、カルマの体が硬直した。

「…ソレイが……葬式の時どうしてお前に声かけたか知ってるか?」
「………何?」
ソリュ―ドはカルマに一歩近寄った。
「ソレイもな……お前と同じように、15年前に両親が死んだんだよ。」
「…………っ!!」
衝撃であった。カルマはそんなことを知らない。
ソレイは一度もそんなことをカルマに話したことはなかった。そんな事実はなかったように、いつもいつでも笑っていた。
「たった一匹になったソレイは、同じくたった一匹だったお前を放っておけなかったんだな。
ふっ………あいつも同じ餓鬼だったのくせによ。」
「だが……ソレイはそんなこと――――」
「話さなかっただろ?あいつは幼い頃に親を亡くしてから、たった一匹になっちまったっていう事実があるくせに、親が死んだってことを認めようとしなかったんだ。
だから………お前に話したくなかったんだろうな………」
最後には、ソリュ―ドも悲しく口を閉じて、地面に下ろされたソレイの傍で座った。
「カルマ……お前は悲しみより憎しみを覚えちまったけど、ホントは寂しかったんだろ?互いに心を許し合える相手が欲しかったんだろ?
だから………いきなり声をかけられたソレイに心を許したんだろ?」
「……………」
カルマは何も言い返せなかった。
今まで復讐するということで隠されてきた感情だったが、彼女もソレイと共に暮らして―――楽しかったということに、今更気がついた。
親に代わる唯一心を許していた存在だった。上っ面は偽物で接していたとしても、カルマはソレイと暮らせて楽しかったのだ。

カルマの瞳から、一粒の光が頬を伝った。
それを見ずとも気づいたソリュ―ドとメリムルは、ソレイをもう一度見た後、カルマを置いてゆっくりとその場を立ち去って行った。
―――そこに気を失ったソレイとカルマ以外に誰も居なくなると、彼女の涙は溢れて止まらずに流れ続けた。

                                *

チュンチュンと小鳥が鳴いている声がした。
朝日の温かさも感じた。
その温かみを感じ、ソレイはゆっくりと目をあける。
そして起き上がろうとした瞬間に走った痛みが、カルマと争ったことが現実だったことを物語っていた。
深く溜息をついて、もう一度体を動かす。痛みといっても、それほどきつい痛みではなかった。
動くのに多少の支障は出るかもしれないが、普段どおりに暮らせそうだった。
だが、昨日受けた痛みはこんなものではなかったと、ソレイは首をひねる。―――その時
「起きたか………ソレイ。」
「うわぁ!!」
急に声をかけられて、ソレイは飛び上がった。すぐさま立ち上がると、横でカルマが立っていた。
「カルマ………」
昨日あんなことがあったのに、あんなに痛めつけられたのに、ソレイはカルマの姿を見てほっとした。
だが、気になることが一つ。
「そ、そういえば昨日!!」
「……あぁ、あの後お前をここに運んで寝たよ。疲れたからな。」
「………ってことは……」
「…………もう、復讐なんてしない。そう決めた。決められたんだよ、お前のおかげでな。
今となっては平気で殺戮を繰り返してた私を恐ろしく思うよ。あのまま繰り返していれば、私はもう戻れなかっただろうな……。
その入口のところで、お前が止めてくれたんだ。……………ありがとうな。」
カルマが目をつむってそう言った瞬間、ソレイはまた飛び上がった。
「やった!やった!よかったぁーー!!」
カルマの周りを回るように飛び回って、体全体で喜びを表現するソレイに、カルマは目を丸くした。
「お、おい!まだ昨日少し治療しただけだぞ!?あんまり動くと………」
「こんなの、全然痛くないね!そんなことより嬉しいんだよ。カルマが改心してくれて………あっ………っっ!」
急にソレイは動きを止め、肩に前足を当ててその場にしゃがみこんでしまう。
カルマは驚き、慌ててソレイに駆け寄った。
「だから言っただろう!もう痛みはあまりないかもしれんが、まだ激しく動いたら傷口が開くだろうが!いいからそこに座ってろ!!」
言われたとおり、何とかソレイは体を動かして座ると、カルマがその前に座った。
「全く、言われないと解らないのかお前は……」
「へへへっ………」
「……何がおかしい。」
「いや、その口調は直さないんだなぁ…って思ってさ。」
「………もう嘘の私でいる必要もない。お前には………その……………ありのままの私を見てほしいんだ。」
「………え?」
急にカルマの顔が夕焼け空のように赤くなったのを、ソレイは見逃さなかった。
気になってソレイはカルマの顔を覗き込む。その視線から目を逸らしながらも、カルマは恥ずかしそうに口を開いた。
「つまり………こういうことだっ!」
「――――――っ!!」
ソレイは、一瞬頭の中が真っ白になった。
唐突過ぎて何も解らない。解るのは、カルマの顔が自分の顔に急接近していることだけ。

だんだん吹き飛んだソレイの感覚が戻ってくる。
そうして新たに分かったことは――――――――
カルマの柔らかい唇が、ソレイの唇と深く重なっていることだった。

                                *

カルマの優しい唇の感触は、ほんの少しだけそこに存在して消えた。
突然のことに頭が困惑してボーっとうわの空だったソレイを、カルマがゆする。
「お、おい!大丈夫か!?返事しろソレイ!」
「………んぁ!?」
情けない第一声を吐いて、ソレイは我に戻った。そしてソレイが最初に見たものは、更に紅潮しているカルマの顔だった。
その顔は何とも言えぬ可愛さがあり、ソレイはまた放心したように見とれてしまう。
「…すまん……いきなりこんなことして…………」
カルマは耳を垂らして、目をつむって頭を下げた。その行動でソレイは改めてさっきの状況が脳裏に浮かぶ。
―――――確かにソレイはカルマにキスをされていた。
「でも………昨日あんなこと言ったから信じてくれんかもしれんが…………私は何年もまえから……お、お前のことを――――――」
「――――俺も、お前が好きだ。」
「………え?」
カルマの言葉を遮るほど、ソレイは大きく、はっきりと言った。カルマにも聞こえたが、信じ難くて思わず聞き返しても、やはりおんなじことだった。
「俺も何年も前から……いや、きっとお前と出会ってからずっと…………カルマ、お前のことが……好きだった。
確かに俺はお前にあんなこと言われたけど、そんなのもう全然気にしてない。
だって…カルマは心を入れ替えてくれたじゃないか。もう昨日のことなんてどうでもいいんだよ。」
勢いでここまで言ってしまったことに対して恥ずかしげに笑うソレイを見て、カルマは安心したように小さく笑う。

その直後、カルマは体ごと上を向いていた――――正確には、ソレイに押し倒されていた。
「でも気にしてないって言ったけど、正直傷ついたんだよねぇ………『お前を利用させてもらった』とかさ……」
カルマの声真似をして、ソレイはニヤリと笑った。
「だからさ……ちょっと俺に仕返しさせてよ………ねぇ、カルマ?」
カルマは一瞬何が起こったのか解らなかったようだが、ソレイに何をされたか、これから何をされるかを理解した時、自然とニヤリと笑い返していた。
「あぁ、仕方ないことだな。…………好きにして……いい…ぞ………」
ただ友達として好きなわけではない。異性として、これから生きていく上のパートナーとして好きになったソレイになら、カルマは嫌ではなかった。
むしろ、生き物の性だろうか―――――望んでいた。
カルマは顔を再び真っ赤にして、ぎこちなく後足を大きく開いた。
そこに存在する雌のみが持つ桃色の秘部を見て、ソレイもまた顔を真っ赤にした。
「ど、どうした?雌の股を見るのは初めてか?」
「……悪かったね…」
ムスッとした顔をして、ソレイの顔の位置が下にずれていった。
「あっ…悪い、そういうつもりじゃ……………っっ!!」
突然、ゾクゾクとした快楽がカルマを襲った。何とか声を出さなかったものの、彼女の体は確実に反応していた。
ソレイが、カルマの秘部の割れ目に前足で触れて、その割れ目をなぞるように動かしたのだ。
更にもう片方の前足を添えて、何と秘部を広げるように外側に向けて力を加えたのだ。
「んあっっ!……ソ、ソレイ……っ!!」
カルマの喘ぐ声が聞こえて、ソレイはますます興奮する。あの強気な口調からは考えられないほど弱弱しく、女々しい声だ。
ソレイは手慣れた様子で、今度は広げた秘部に向けて舌を突き出し、溢れ出る愛液もろとも舐めあげた。
「…っ!………あぅっ!!お……お前…随分手慣れて………あぁん!!」
カルマも、こんなのは初めての体験であった。
それ故にこの凄まじい快楽に対する防御力はなく、うねるソレイの舌によってあっという間に限界を迎えてしまう。
「あぁっ!!ソレイ……っ!は、離れろ!!んぁぁぁああああっっ!!」
限界を迎えたカルマは、一気に大量の愛液を噴き出して全身脱力感に襲われる。
当然のごとく秘部と密着していたソレイの顔には、その愛液が直撃してしまった。
「…うわぁ……すごいねカルマ………」
自分の顔にかかった愛液を、ソレイは前足でゴシゴシと拭き取った。

ようやく拭き取り終えた頃に、今度はカルマがソレイを押し倒した。
「仕返しとはいえ、私をこんなに追い詰めたお前には………きっちりと釣りを返さなければな。」
「……えっ?」
そして、カルマの尻尾がソレイの雄の象徴をなでた。
ソレイも声を出さなかったが、ますますニヤリと笑ってカルマは体の位置を下に摺り寄せていく。
目の前に雄が来るようにし、すでに大きくそそり立ったそれを、大きく舐めあげた。
「……ぁ………っ!!」
ソレイもこんなことをされたのは初めてである。かすれた声が漏れ、カルマはそれだけで更に息を荒げた。
「結構……大きいんだなお前。」
「そ、そう?……っっ!!」
前足でしっかりとモノを固定して、カルマは更に舌を素早くくねらせて刺激する。
モノはその度に反応してピクッと震え、ソレイの声も大きくなってきた。
「うぁっ!カ、カルマもかなり……あっ!手慣れ………て……んあぁっっ!!」
派手に喘ぐソレイの様子を下から見て、カルマは笑う。
自分の方が有利な立場にいる、というのもそうだが、それよりもソレイが自分の行為によって快楽を感じてくれていることが嬉しかった。

モノがより一層大きく震え出し、カルマはそろそろ限界だと悟った。
「そろそろか………じゃあソレイ、覚悟しろよ?」
カルマの不適な笑みを、ソレイは見る暇もなかった。
カルマはモノを豪快に咥えると、顔ごと上下に動かして出し入れしながら、力いっぱい絞るようにモノを吸う。
「ふわっ!あ、ああぁぁぁああああーーーっっ!!」
――――ソレイにそれが耐えられるわけがなかった。
モノからは大量の白濁色の精が飛び出し、カルマの喉を突く。カルマはむせながらも、それを全て飲み込んだ。
「………おせじにも……いい味とは言えないな…これ……」
カルマは顔をしかめて、更にもう一度せき込んだ。

                                *

「い、いいの……?」
「あぁ………遠慮するな。ただ、お前の傷が開かん程度にな。」
ソレイはカルマの後足のところに座り込み、カルマはソレイに向けて大きく股を開いていた。
やがてお互いに頷き合うと、ソレイはカルマの広げられた股の間に腰を挟み、モノを秘部のに押し込んでいく。
「う………あぁ……!!」
「くっ……うぅ…………っ!!」
モノの先端が秘部にぬぷりと入り、そのままズブズブと奥まで差し込まれていく。
その途中のカルマの純潔の証であった処女膜は破られ、摩擦によってカルマに苦痛が襲った。
「つっ!!」
「だ、大丈夫!?」
顔を歪めたカルマだったが、ソレイに心配されてなんとか笑って見せた。
痛いだろうが我慢してくれているカルマに、早くその痛みから解放させてやりたい。ソレイは更に奥まで押し込んでいった。
―――――やがて最深までモノは差し込まれ、二匹はつながり合う。
「全部入ったよ………カルマ……」
「……あぁ………もう痛みもない…動いてくれ………ソレイ」
ソレイは一度遠慮がちに腰を引いてもう一度モノを差し込むと、カルマは痛みではなく、快楽で喘いだ。
もう大丈夫だと確信したソレイは、じょじょに速度を釣り上げていった。
「あっ!あぁん!!わ、私の中は気持ちいいか!?…んあぁぁっ!!」
「う、うん。気持ち良すぎて…………うっ!くぁぁっっ!!」
カルマの中はとても熱くてぬるぬるしていて、締め付けが強く、それのどれもがソレイにとっては快感に変わる。
もう恥ずかしいなんていう感情はどこか彼方へ吹っ飛んでいた。今二匹にあるのは、凄まじすぎる快楽だけ。
ソレイは我を忘れて腰を振り、カルマと共にそれに合わせて派手に喘ぐ。
カルマの秘部がソレイのモノを容赦なく精を絞りとろうと締め付け、カルマもまたモノが容赦なく奥をついてきていた。
それにより生じる大きすぎる快楽に、二匹とも長く持ちそうにない。

「カルマっ!お、俺ももう………っ!!」
「わ、私もだ!いいぞソレイ!!このまま私の中に……っっ!!」
そして、自分にも相手にもとどめを刺すソレイの腰の一振りが、お互いを限界まで導いた。
「うあああぁぁぁぁっっ!!」
「くぅぅぁああああああっっ!!」
カルマが絶頂に達したことで秘部内の締め付けが強くなり、ソレイのモノからは先ほどより勢いを増して精が飛び出る。
カルマの秘部内はあっと言う間に満たされ、おさまりきらなかった性は彼女の純潔の血と混ざりあって赤みを帯びて漏れ出した。

                                *

それから二匹で、派手に行為を続けていたせいで既に空は赤く染まっていた。
ポケモン達の姿もじょじょに少なくなり、夕暮れを告げる鳥達が鳴きながら飛びまわる。
ソレイとカルマは、並び合って仰向けに寝ていた。
「カルマ……中に出して大丈夫だったの?」
「………………さぁな。」
「えぇっ!?」
驚いて上半身を起こすソレイ。だがカルマは冷静に、かつ優しく微笑んだ。
「もし卵が出来たとしても、お前の子なら私は拒む理由などない。」
そう照れくさそうに言ってまた上を見上げるカルマを見て、ソレイも微笑みながら上を見上げた。
「そうか……………出来るといいね。俺達の子。」
「…あぁ……そうだな。」
暫く二匹で天井を仰ぎ、それからソレイが立ち上がった。
「そういえば何も食べてないよね、きょう。俺が何か採ってくるよ。」
「………大丈夫か?私も行こうか?」
「いや、いいよ。これからは、俺もちゃんと採れるようになんないと。………もしかしたら、父親になるのかもしれないしね。」
そう言ってソレイは笑うと、元気よく夕暮れの赤に染まりながら外に駆けだしていった。

大変な事件を起こしてしまったカルマは、これからいろいろと大変な思いをするだろう。
だが、それも全て、ソレイと一緒なら乗り越えられそうな気がする、とカルマは思う。
カルマはソレイ後ろ姿を優しく笑んで見送ると、自分に腹に視線を落として、ゆっくりと回すように摩った。

ようやく見つけた一生のパートナーとの、愛の結晶が出来ることを願って。

END


この作品は………正直言ってメチャクチャ急いで書きました。
仮面小説大会が開催されると宣言されてから、物語はすぐ思いついたのです。
でも「まだあと何か月かあるから……」てな感じで執筆を遅らせて行った結果、ものすごく慌てて書きました。
そのせいですね、エロシーンが異常に短く、しかも単純なプレイだったのは……orz

もっと丁寧に、慎重に書いていきたかったなぁ……と今更後悔しております。
この作品に投票してくださった方、また読んでくださった方、本当にありがとうございます。


カルマ「コメント…?ほぅ、作者が喜びそうだ。」


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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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