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想い続けること。

/想い続けること。

想い続けること。 


この作品は、相当久しぶりに書いたもので、途中何度も投げ出しそうになりながら、どうにか完成にこぎつけることが出来ました。

注!この作品はポケモン的世界観をすべて無視しています。ポケモンも力を持っていません。
ただこういうシチュエーションいいなぁ、と考え、そして一番やってみたかったカップルを勝手にストーリーに落とし込んだだけです。

あと、エロありです。
青浪




オレンジのどこか郷愁をさそう夕焼け。神社の広場に2つの小さな影がある。
「おれ、ホーちゃんとずっといる。」
「ギアス・・・ぼくはギアスのためならなんでもするよ。」
幼いルギアとホウオウはそう言ってぎゅっと抱き合った。永遠の友情を誓いあうように。

そしてそんな幼い光景も、少し色あせてしまうが、それでもゆっくりと時間は流れていく。

何年かが経っただろうか・・・
すっかり辺りは闇に包まれ、家屋から漏れる灯りだけが、闇夜のなかに営みを照らしている。
「ギアスなんて大嫌いだっ!」
俺の目の前に居るポケモン、ホウオウは澄んだ赤い瞳に涙を浮かべて、♂の声には似つかわしくない高い声を出して俺に怒る。
「ホーちゃんこそもういいよっ!」
けれど俺も冷静さを失って・・・ホウという自分の一番の親友と口げんかをしている。原因は俺にある。けれど、素直に謝れない。
ホーちゃんはどこか寂しそうに、怒鳴る俺を見た。俺への罪悪感を隠すように・・・でも、悪いのは俺だ。
「もういいよっ!!出ていく!!」
俺はそうとだけ言うと、罪悪感と、ほんの少しの利己的な憤りを抑えるために、何も持たず、部屋を飛び出した。
なんで大親友なのに素直になれないんだろう。

俺はギアス。種族はルギア。性別はもちろん♂。幼馴染で、ずっと俺と一緒に居てくれたホーちゃん。今でもホーちゃんはルームメイトで、家事の出来ない俺の代わりに家事をしてくれてる。
俺は今日、ホーちゃんが作ってくれた飯にケチを付けた。自分では作れもしないのに。最初はホーちゃんも怒ってなかったけど、俺があまりに追い詰め過ぎたから・・・ホーちゃんを怒らせてしまった。
心の中のモヤモヤ・・・間違いなく俺はホーちゃんに謝りたいと思ってる。素直になれない自分にだって、苛立ちを覚える。いつも・・・俺は自制が出来ない。
「はぁ・・・」
ひとまず俺は、ホーちゃんの次に頼る奴の部屋に行った。

ピンポーン。インターホンを押すと、ばつの悪い答えが返ってきた。
「おう?ギアス・・・なんだよ。」
俺が次に頼る相手。そいつはクラスの悪友、グラードンのグレンだ。いっつも悪戯を仕掛けるときはこいつと居る。
「実はさ・・・ホーちゃんとけんかしちゃって。」
「はぁ?」
グレンは思い切り首をかしげると、俺を部屋に入れてくれた。けれど、その表情はどこか鬱陶しそうだ。
「ちゃんと、謝れよな。朝イチに。」
「うん。はぁ・・・」
俺に忠告するグレン。とても面倒くさそうに俺と接する。そこまで鬱陶しいのか?俺は。
「ホーちゃんの次に頼るのが僕とか・・・最大の味方と喧嘩してどうすんの?」
「説教なら勘弁。」
「あ、そ。」
グレンはそう言うと、めちゃくちゃまずい飯を俺に食らわせた。その味は、ホーちゃんの作ってくれるご飯と比べると、ゴミみたいだった。
しかも、グレン一人のメシを俺と分けたからか、グレンはとても機嫌がよろしくない。
「早く帰りたいなぁ・・・」
「あ?なんか言ったか?」
俺に凄むグレン。視線が合うと、呆れたような表情をして、そっぽを向いた。確かにグレンの言うことは正しい。ホーちゃんはいつも俺の味方をしてくれる・・・喧嘩をしない限り。
「いやいや。」
慌てて俺も視線を外す。グレンは・・・相変わらず不機嫌なままだ。ホーちゃんならいつもニコニコして、俺と楽しそうに遊んでくれる。
ホーちゃんと生活してて・・・すっかり自分が贅沢になっていることに気付かされた。

翌朝、ほとんど眠れなかった俺はすぐにホーちゃんの部屋に帰った。
ガチャ・・・
ドアを開けたが、何も反応がない。今日は平日だ。学校ももちろんあるし。いつもなら起きてるはずの時間・・・ホーちゃんなら寝坊することなんて、あまりない。
「寝てるのかな?」
寝てるなら起こさなきゃ、と思った俺は、とっととホーちゃんが寝てるであろうベッドに近づいた。けれど、何か部屋の様子がおかしい、違和感を覚える。
「ホーちゃん?」
ホーちゃんは布団にくるまっていた。そして違和感の正体に気付いた。なぜか部屋がこぎれいで、周りのホーちゃんの荷物が全て片付けられていた。
「んふぁ・・・」
掛け布団からひょこっとホーちゃんが顔を出して、俺をじっと見ている。俺を怒るのかな、って思ったけどホーちゃんの赤い瞳はうるうる潤んでる。
「ホーちゃん・・・ごめん・・・俺がわがままだった。」
「違うよ。僕が怒っちゃったから・・・ギアスに食べさせてあげられなかった。ごめんね。」
「いいよぉ・・・そんなこときにすんなよぉ・・・」
涙があふれてきた。ホーちゃんが謝ることないのに。俺がホーちゃんのおいしいご飯にケチをつけたりしなかったら・・・喧嘩なんてするはずないのに。
「ギアスも泣かないでよ・・・」
悲しそうなホーちゃん。泣かないで、と言われるといつも泣かない分、余計に泣きたくなっちゃう。
ぎゅぅ・・・とっさに俺はホーちゃんに抱きついてしまった。けれど、そんなことなど気に留めることができないくらい、涙があふれてた。

しばらく俺はホーちゃんの胸でわんわん泣いてたみたい。毛並みの優しさと、お風呂入ったからなのか、石鹸のいい匂いがしてた。

「落ち着いた?」
「ありがと、ホーちゃん。」
ホーちゃんはホットココアを俺に作ってくれて、しかも朝飯のフレンチトーストまで用意してくれた。
「ところでさ、なんで荷物まとめてるの?」
トーストにかぶりついて、ホーちゃんに聞くと、ホーちゃんは5つの封筒をテーブルの上に置いた。
「なにこれ?」
封筒を手にとってじろじろ見ていると、差出元の住所に見覚えがあった。俺の実家付近の住所であり・・・ホーちゃんの実家でもある。
「実家?」
「うん。お父さんがいない間、帰ってこいって。5日連続で手紙が来た。だから・・・帰るの。」
寂しげなホーちゃんの口調。
「学校は・・・」
「休むの。」
ホーちゃんが学校に居ない・・・その話だけでも、今は心臓を打ち抜かれるほどショックだ。
喧嘩をして、まだ後悔が消えないから、ホーちゃんがいなくなってしまうことが、とっても怖い。
「いつ出発するの?」
「今日のお昼。だからおとといから居残りで全教科のテストを先に受けて、その準備してた。だから昨日はごはんおいしくなくて・・・」
「ごめん。」
謝るけれど、ホーちゃんは落ち込んでいそうだ。
「いいの。」
ホーちゃんの頭を俺が撫でると、少し、笑顔になった気がした。でも、今ホーちゃんがいなくなると、心残りは大きい。
「なんで戻らないといけないの?」
「神社だから。お父さん居ないと成り立たなくて・・・」
ああ。そうだ。ホーちゃんの家は神社で、ホーちゃんのおじさんはそこの神主でそこそこ偉い、ってのは子供のころに聞いた。学校が家から離れてるから、寮生活してて、すっかり忘れてた。
ホーちゃんのお父さんが出張でいないし、お母さんだけじゃ留守は心配だから帰ってこいってのが手紙の内容だったみたい。
「うーむ。」
「ほら。ギアスは学校でしょ。急がないと。」
ちょっと微笑んでるホーちゃんにそう急かされたけど、行く気が・・・湧かないね。
「よっし。俺、ホーちゃんに付いていく。」
「えっ!?」
俺の唐突な言葉に、ホーちゃんは驚いて、一瞬動きが止まった。けれど、俺は思いつきで言ったんじゃない。昨日ホーちゃんと喧嘩しちゃったし、このまま別れると後悔しそうだったから。
「面白くないよ。」
「いい。俺はホーちゃんに付いていくんだぁ!」
そう宣言すると、俺は自室の電話を取って、学校に電話をかけた。
「先生。学校休みます。」
”は?”
俺の電話の相手は担任のゲルド先生。アルセウスで、なんでもできる男らしい。自称だけど。
”休むって・・・おまえ・・・”
「ホーちゃんに付いていきます。」
俺がそう言うと、先生はケラケラ笑い出した。
”そっか。わかった。ただし、帰ってきたらホウ以上に補習とテストの嵐だぞ。覚悟しとけよ。”
あっさり先生は俺の言い分を認めてくれた。予想出来ていた、ということなんだろう。
「はい!!」
安堵とともに俺がとっても元気のいい返事をすると、先生は電話を切った。

電話を終えると、ホーちゃんがニコニコほほ笑んで、俺を見てる。
「ホーちゃん、行くぞ!荷物まとめるから待ってろ!」
「待っとくね。」
俺は大慌てで作業に取り掛かる。
そういえば、俺はこの学校に進学して以来、一度も実家に帰ってない。
ってことは、俺もホーちゃんと一緒に帰らなかったら、実家に帰ることもないんだな。それを考えれば、ホーちゃんに付いていく、という判断は正しいのかも。

いつもの大きめのカバンに、必要なもの、必要でないもの、携帯ゲーム機やら何やらを詰め込むと俺は服を着替えて、眠そうにあくびするホーちゃんの前に立った。
「ふぁぁ・・・」
「行くか。」
「早く行っても退屈だよ?」
ホーちゃんは苦笑いして、急ぐ俺を止めようとする。
「いいじゃんいいじゃん。」
「わぁっ!」
でも俺はホーちゃんの翼を取って、勢いよく寮を飛び出た。驚いたホーちゃんだったけど、すぐに笑顔になってくれた。

俺とホーちゃんは実家でもほとんど隣に住んでるけど、俺はホーちゃんほど実家に帰ってない。
母さんが帰ってくるな、と冗談めかして言うから、学校を卒業するまで一応帰らないつもりだ。つもりだった。

そういや・・・8歳になるかならないかの頃、ホーちゃんが和服を着せられそうになって、よっぽどヤだったのか大暴れして俺の家に来たことあったな。
半泣きのホーちゃんもめちゃくちゃ可愛かったけどな。

ホーちゃんはホウって名前だけど、ホーちゃんのお父さんが、男の子に付ける、伝統的な名前だ、って言ってたな。
ホウオウのホウって単純な名前だって、ホーちゃんは言ってたけど、俺はホーちゃんって呼びやすいから、ホウって名前は好きだな。
クラスでは男子はみんな同性なのにホーちゃん可愛いよなぁと言うけれど、ホーちゃんは肝心の女の子にモテないみたいだ。不思議なもんだな。

ホーちゃんっていう存在は、同性なのに俺をいっつもドキドキさせてる。ダメだと思うから、なのか。でも女の子だったら、絶対彼女にしてる。声も男の子っぽくないんだよな。
おっと、妄想が危ないフィールドに入る前に止めとこう。

学校から、俺たちの家までは、電車でしばらくってとこかな。3時間くらい。
電車と言えば、入学式の日に、4月の大雪で電車が止まって足止めさんざん食らったあげく、ホーちゃんも俺も入学式に行けなかったんだよな。
あのときは丸2日電車の中で、二人でトランプしたり、身体揉み合ったり、座席に折り重なって寝たり、今じゃ言えないようなこともしたような記憶がするなぁ・・・
ま、全部俺が唆してやったんだけどさ。

電車に乗った俺たちは仲良く二人、席に座って車窓から流れる景色をじっと見てる。かなり、退屈。
「ほーちゃん。」
「ん?」
くるっと俺の方を向いたホーちゃん。
「ジュース飲む?」
俺はペットボトルに入ったサイコソーダを差し出す。
「ありがとう。」
ホーちゃんはにこっと笑ってサイコソーダをぐいぐい飲む。退屈を紛らわせるために俺はとにかく何か話を繋ごうとしてみる。
「テスト、どんなのだった?」
俺の問いに、ホーちゃんはピタッと飲むのを止めて、首をかしげた。
「ギアスだったら大丈夫だと思うよ。僕は・・・勉強苦手で・・・難しいからわかんないけど。」
「なんだよそれー。俺も大丈夫じゃないって。」
クスクス笑う俺とホーちゃん。
うーむ、ホーちゃんの話を要約すると、難しかった、と。勉強と運動は俺の方がホーちゃんより得意なんだよな。
ホーちゃんはどっちかって言うとインドア派だし。でも、スポーツも大好きで、俺とよくポケモンバッカーをやる。いつも勝っちゃうけどね。
俺がホーちゃんにぎゅーと抱きついて、くたくたになるまで疲れさせると、ボールを奪ってゴールをするっていう・・・なんとも変な戦法で遊ぶからホーちゃんがいつも拗ねちゃう。

”まもなくキキョウです・・・”
終点が近づくと、俺たちはまた重い荷物を抱えて、電車を降りる。
駅からは歩きでホーちゃんの家に向かった。またしばらくの歩きが、疲労となって俺に襲いかかる。
舗装された道を進み、あぜ道を抜けると、小さな住宅街に、厳かな神社の赤の鳥居が見えてきた。

「着いたね。」
「うーん・・・」
「疲れた?」
「うん。」
俺がへばってるのを見て、愉しそうなホーちゃん。にこにこ微笑んで、また神社の本殿へ歩みを進めていく。
鳥居を抜けると、拝殿が手前にあって、奥に本殿と、その少し離れたところにホーちゃんが普段暮らす家がある。
「家に行かないの?」
「先にあいさつに行くの。」
挨拶?と思う俺に、ホーちゃんはどしどし進んでいく。すると、ホーちゃんより少し大きなホウオウがいた。
「お帰りぃ!!」
「うにゃぁ!」
ぎゅぅぅ・・・ホーちゃんより少し大きな巫女装束のホウオウは、ぎゅーっと強くホーちゃんを抱きしめた。
「も、もうやめて・・・」
「だめだめぇ。せっかく帰ってきたんだから。」
ああ、ホーちゃんのお母さんだ。親ばかって言うより、本当にスキンシップがハードなんだよな。そのおかげで、俺が過剰にスキンシップをしてもホーちゃんは怒らない。
「はぁ・・・はぁ・・・ひどい目に遭った・・・」
ようやく解放されて、息遣いの荒い疲労たっぷりになったホーちゃん。ホーちゃんのお母さんはとても満足そうにニコニコして、俺にあいさつをしてくれた。
「あ、ギアス君!お久しぶり!」
「お久しぶりです!」

この後俺はホーちゃんのお母さんに学校でのホーちゃんの話をして、ホーちゃんの家に入った。
いつも俺はおばさんって呼んでるんだよな。

ホーちゃんの家の居間でお茶を飲んでると、ホーちゃんのお母さん、おばさんはホーちゃんと何やら話をしてる。
「じゃ、ちょっと着替えさせるから。ギアス君、ゲームでもしてて。ホウ、行くよ?」
「ヤだよっ・・・」
「お父さん今居ないんだから、ホウがきちんとしないとダメでしょ~?」
おばさんは嫌そうな表情を浮かべるホーちゃんの頬を突っつく。事態が掴めないから、俺は見ているだけしかできなかった。
「わかったょ・・・」
ホーちゃんはしぶしぶ、奥へ消えていった。

「お待たせ。」
着替えが済んだホーちゃんは、白の布地の衣に、赤い袴を穿いて・・・何と巫女の装束をしていた。
「ほ・・・ホーちゃん?」
驚く俺に、ホーちゃんはがっくり肩を落とす。そしてすまなさそうな瞳を俺に向けた。
「それさ。女の子の衣装だよな。」
「うん。だって僕・・・女の子だもん。」
「へ?」
その言葉を聞いた途端、俺の身体から力という力、全てが抜けて無くなっていった。冗談だと思ったけれど、おばさんが俺のところにすまなさそうにやってきた。

ホーちゃんのことはおばさんが全て説明してくれた。
男の子がどうしても欲しかったこと。生まれる前に決めた名前を変えることが出来なかったこと。男の子として育ててしまった後悔。

・・・俺は少し救われた気もした。そりゃ・・・イロイロと普通の女の子には見られてはいけないところとか、俺が夜にこっそり何かしてるところ見られたりとかはしたけど。
「ギアス・・・ごめん。ずっと?黙ってるわけじゃなかったんだけどなぁ。」
ホーちゃんの声をよく聴けば、♂のものでは絶対にない、ということはどことなく掴みとれる。今まで声変わりが遅いだけだと思ってたけど・・・だんだん♂のものじゃないなぁ、とも思うようにはなってたし。
「うー・・・」
けどそれより俺が今までホーちゃんにしてきたことを思い起こして・・・俺♂だからセクハラじゃん。ってかそれ以上の話もしてるし!!
「ホーちゃん・・・俺、ホーちゃんにセクハラしてるじゃん。」
「そう?」
「うん。抱きついたり、ベッドに寝てるところを襲って起こしたり。」
素直な気持ちがなぜかボロボロと出てしまう・・・でも、不思議と後悔はないな。ホーちゃんだからなのか。
「ギアスと僕じゃん。そんなの関係ないって。」
ホーちゃんはオレンジの毛並みに、白衣の袖が可愛く透けて、とてもお似合いだった。可愛いし。というか、ホーちゃんって瞳がくりっとしてて、瞳の黒い毛並みがあんまり目立ってなくて、もとからすっごい可愛いんだよな。
「エロ本の話とか・・・」
自分でも何言ってるかわからないけれど、とりあえず今までにホーちゃんにしてきた♂の下衆な話を謝ろうとだけしてた。
「ああ。でもギアスなんてまだまだ普通だよ?」
「へ?」
「グレンとか本当にひどいから。」
ニコニコして話すホーちゃん。ホーちゃんは普段学校でも男子とばかり居て、本来なら女の子にしてはいけない話とか、みんな結構してるみたいだ。
「お茶だよ~。」
学校でのホーちゃんを思い出しているうちに、おばさんがお茶を持ってきてくれた。
「あ、ありがとうございます。」
ホーちゃんはおばさんと比べると、すっごく可愛いし、女の子っぽい。黄色の嘴は丸みを帯びた形で小さく、その黄色をアピールしてる、可愛くとさかも付いて・・・ぬいぐるみみたいだ。
「そーいやホーちゃん・・・あれ?体育の着替えの時ってどうしてた?」
「えーっと・・・下に着てた。」
てへ、と恥ずかしそうに言うホーちゃん。つぶらな瞳はきらきら輝いて、俺にはまぶしい。
ちなみにホーちゃんはいつも何かと理由をつけてプールの授業は受けてない。極度のカナヅチだからだってみんなは噂してるけど、女の子だったら男の子と一緒にプールに入るわけにはいかんよな。
「ってことは・・・寮とか学校でホーちゃんの着替えをまじまじと見てたのって・・・」
「ギアスだけかなぁ。」
ぶっ・・・俺が期待してしまうような物言いだなぁ。ホーちゃんも。
「ホーちゃんとは長い付き合いなのに・・・なぁ。気付かない俺が鈍感なのかな。」
「僕もずっとギアスと居たかったから、言えなくて。」
おぉぅ・・・更に期待させるような物言いだな。でも、ホーちゃんが女の子だったところで、俺のホーちゃんへの想いは変わらないし、好きっていう感情の方がひょこっと芽を出した、気もする。
普段の悪乗りする俺だったらホーちゃんを押し倒してるかもしれない。巫女装束だしすっげぇ可愛いし。
・・・けど、ホーちゃんがそうまでして俺と一緒に居たい理由、それがわからないから・・・悪乗りする気にならない。幼馴染だからなのか、それとも本当にいい友達だからなのか。もしかそれとも・・・

「ささ、ホウ手伝って。」
「はーい。」
嫌そうなホーちゃん。でも、おばさんから箒を渡されて外へ行く準備をしてる。俺、邪魔だな。何か手伝うか。
「あのー。何か手伝おうか?」
「ありがたいけど・・・ギアスに手伝わせるのは悪いよ。」
赤い刺繍の入った白衣の袖をぷいぷい振るホーちゃん。時折袖がはだけて、オレンジの翼がひょこっと出てるのが・・・すっごい可愛い。
「でも、邪魔すると悪いから。」
「じゃあ、手伝いをお願いしようかな?」
おばさんはそう言うと、俺にも箒と何か、白と紺の綺麗に折られた布をくれた。
「これ・・・和服ですか?」
「そうそう。ここの正装。」
俺がその布を広げると、それは袴だった。渡されたのはいいけど、俺、着れないし。
「着れないです。」
「ホウ?着せてあげて。」
「うんー。」
「え゛?」
おばさんの呼び掛けに、ホーちゃんはすぐ飛んできた。けど俺はかなりドキドキしている。まぁ衝撃のカミングアウトからまだ時間たってないし、そもそもホーちゃんに服着せてもらうなんて恥ずいし。
「ギアス、部屋行こっか。」
「あ、ああ。」
部屋?部屋ってか。ホーちゃんの部屋・・・もう何年も行ってないな。
動揺を隠せない俺は、それでもゆっくりと歩いてホーちゃんの部屋に向かった。

「僕の部屋、汚いけど入って。」
ホーちゃんは汚いというけれど、部屋は綺麗に片づけられ、俺の実家の部屋とは大違いだ。同じ寮生活なのにな。
「汚くねぇって全然。荷物ここ置いていい?」
「うん。」
俺はホーちゃんに袴を渡すと、ホーちゃんはベッドの上に袴を置いた。俺は部屋の隅っこに、寮から持ってきたカバンを置いた。
そしてホーちゃんの方へ向く。
「服脱げばいいのか?」
「うん。」
無邪気に頷くホーちゃん。俺のような心境の変化なんてないみたい。
「ったく・・ちょっと恥ずいんだって。」
俺はひとまず着ているYシャツを脱いで、床に置いた。
「ベッドの上に置いてていいのに。」
「ホーちゃん・・・汗かいてるから汚いかなって。」
「汚くなんてないって。」
ホーちゃんはニコニコほほ笑んで、戸惑う俺のしぐさを見つめてる。余計恥ずかしいって。もう顔から火どころか火炎放射出るだろ。
Tシャツに手をかけて脱ごうと思うんだが、ホーちゃんの視線がとっても気になる。
「こっちみんな。」
「ご、ごめん・・・」
あ、しまった。ホーちゃんが肩を落としてすっかり落ち込んでしまった。もうちょっと丁寧に言えばよかったな。いままでこんなこと言う機会なかったし。
「ホーちゃんごめん。ちょっと恥ずかしかったから。」
「僕こそ・・・ギアスの気持ちに気付かなくて・・・ごめん。」
悲しげなホーちゃんの声。なんだか永遠に出られない蟻地獄にハマった気がする。俺が言葉をかければかけるほど、ホーちゃんは傷ついていく。
俺はホーちゃんに、今までと同じように居てほしいのに。俺は気持ちに揺らぎがないと思ってた。けど、やっぱり俺の中には、異性としてのホーちゃんを意識してしまう自分がいる。
・・・ホーちゃんも今までと同じように俺に接してほしいんだろうか。だとすれば俺は?どうすればいいんだろう。

俺はTシャツを脱ぐと、また床に放り投げた。自分の想いを伝えられないことへの憤りだと、すぐに思った。さすがの俺でも、自分の気持ちに気付かないほど、バカじゃない。
ホーちゃんはさっきから悲しみに満ちた表情を浮かべて、ずっとそっぽを向いてる。

ばたた・・・
「ふにゃ!」
ぎゅっ・・・俺はとっさに、小走りになると、そのままギュッとホーちゃんに抱きついた。
「ぎっ・・・ギアス?」
「ごめんホーちゃん・・・やっぱ俺・・・ホーちゃんのことが・・・」
言葉としてここまで出たのに、そこから先は出なかった。なぜなら・・・
「ホウ?まだなの?」
すぐそばからおばさんの声がしたからだ。見られてなかったから良かったのか?灼熱にヒートアップした気持ちはあっという間に絶対零度の冷たさに冷えてしまった。
ホーちゃんを離すと、とっとと脱いだものを整えた。
「ごめんホーちゃん。後で。早く着替えよう。」
「う、うん。はやくしようしよう。」
俺はすぐにズボンを脱いで、また床に置いた。パンツ一丁ってやつだ。
「えっとー。まずこれ羽織って?」
「ういうい。」
ホーちゃんがくれたのは、白い大きめの衣で、袖を通すと、ひざ上まであった。サイズはかなり大きい。
「似合ってる似合ってる。」
さっきの悲しそうなのはどこかへ飛んでいったのか、ニコニコほほ笑みながらホーちゃんは俺の白衣の乱れを正している。
「そんなにきっちりしなくていいって。」
「ちゃんと着ないと、お母さんが怒るから。」
そんなに大事なものなのか、と思わせるホーちゃんの口調。たしかに、正装だ、って言ってたしな。
「いつも思うんだけどさ、制服とか乱して着てて、何が面白いの?」
「え?」
ホーちゃんの問いに俺は戸惑う。ホーちゃんは確かにあんまり自分から進んで制服を着崩すことなんてないな。男子の制服着てても女の子だしな。
「かっこいいからか?」
「そうなの?」
「多分。俺も深い意味は考えたことないな。・・・ただ周りに合わせてるだけって感じだし。」
ふーん、とどことなく納得してない様子のホーちゃん。俺はするすると紺の袴を穿いて、ホーちゃんが帯を締めてくれるのをボーっと見てる。
「キツい?」
「大丈夫。」
ぐいっ。
「いでで!」
急にお腹が締めつけられた。
「あ、ごめん!ごめん・・・」
慌てて謝るホーちゃんの頭を俺が撫でてあげると、ホーちゃんはまたにこっと笑ってくれた。
「よっ・・・ほっ。」
「おお。」
ホーちゃんは慣れた手羽先・・・いや、翼の手つきで帯を綺麗に締めてくれた。
「慣れてるね。」
「自分じゃなかったら出来るんだけど、自分のが出来なくて・・・」
てへっ、と照れ笑いするホーちゃん。多分子供のころから、させられてたんだろうなぁ。ホーちゃん、苦労は隠すタイプだし。
「どう?」
俺は見せつけるようにその場でくるくる回ってみる。
「すっごくかっこいいよ。」
とっても嬉しそうなホーちゃんに、俺も照れよりも嬉しさの方が上回った。
「行こうか。」
「うん。」
俺はとってもニコニコしてるホーちゃんの翼を軽く握って、仲良く部屋の外へ出た。
「すっごくお似合いなカップルだねー。」
部屋を出たところにいたおばさんに茶化されたけど、俺は冗談で受け取るつもりはない。さっき告白しそびれたけど、まだ火は消えてはいない。

ホーちゃんと俺は箒を持って外にいる。ホーちゃんから掃除の方法について指南を受けているところだ。
「えっと・・・石段の上に乗っかってる小石を箒で掃いて、落ち葉とかゴミは拾うの。」
「うっし。やるか。」
俺はサッサっと、箒で石段を掃く。ホーちゃんはゴミ拾いをしたり、落ちたおみくじや絵馬を拾っては結び直している。

「ホーちゃんの巫女服・・・似合うなぁ。」
そう呟きながらも、怒られるのが嫌だから、手は動かす。
けどホーちゃんに見惚れそうだ。赤い袴に白い装束。何よりニコニコしてるホーちゃん・・・オレンジの優しい毛並みに・・・可愛い瞳の赤と、女の子にお似合いな模様の黒の縁取り。
さっき抱きついた時も、とっても暖かかったな。ホーちゃんの性格そのものの暖かさだった。
心なしか、とっても嬉しい。喧嘩してたのが嘘みたいだ。

「あんな女の子と・・・いままでずっと一緒に居たんだなぁ。」
ほのぼのする俺。少し離れたところに居るホーちゃんをじっと見ている。
ばしっ!!
「いでぇ!」
突然頭を襲った痛みに、振りかえると、そこには今、最も会いたくないルギアがいた。
「母さん・・・」
「なにデレデレしてんのよ。」
俺より少し、少しだけ老けた俺の母さん。
「ぎーくん、学校は?」
ぎーくん、って母さんだけに昔から呼ばれてるけど、本当にこの呼ばれ方が嫌だ。ダサいもん。ホーちゃんは俺がこの呼び方嫌だ、って言ってから、ずっと呼び捨てだけどきちんと名前で呼んでくれる。
「ホーちゃんにくっついて帰ってきた。」
俺の言葉にはぁーとため息を漏らす母さん。そんなことより、と大事なことを思い出した。
「なぁなぁ、母さんはホーちゃんが女の子だって知ってたん?」
「うん。」
へ?とまた身体の力が抜けそうになる。
「だって、学校卒業するまでホウちゃんを男の子にしとこうって、私たちが決めたんだもん。」
母さんの口から語られる真実に、俺は少しの戸惑いと、なんで隠してたんだ、という憤りを覚えた。
「なんで隠してたんだよ?」
「へ?聞かなかったじゃん。」
うぐぐ・・・確かに母さんの言うとおりだけど・・・何か、納得いかないな。
「ホウちゃんが小学校を卒業する時、そのまま次の学校に行かせるか、神社を継がせるかホウちゃんのお父さんが迷って・・・」
母さんは物憂げな視線を俺に投げかける。
「で、男の子で育ったから、中学校に行かせる以上は男の子ってことにしとかないといけないからさ。」
「ふーん・・・先生はだませたの?」
俺の疑問に、母さんはクスッと笑った。
「先生も共犯なんだよ。」
「へっ?」
また衝撃の事実発覚だ。
「先生は少なくとも最初からそのことを知ってるから。協力者。」
「ってか・・・関係者で知らなかったのは俺だけか。」
がっくり、と肩を落とすと母さんは慰めるように俺の頭を撫でる。
「事情があってね。いろいろ。」
母さんは諦めるように俺に言う。事情って何なんだよ、と突っ込みたくなるが、どうせ大人の事情なんだろう。

「こんにちはっ。」
いつの間にか、俺たちの近くにホーちゃんが来ていた。掃除も終わったのか、ゴミ袋を翼に提げている。
「ひさしぶりぃぃホウちゃんっっ!」
母さんは、なぜかホーちゃんにギューっと抱きついた。見てる俺の方が戸惑うよ。けどホーちゃんはというと、どことなく嬉しそう。
「やめろって。」
俺は呆れて、二人を引き離した。ホーちゃんはずっとニコニコしてるけど、引き離された母さんはやっぱり不満そう。
「じゃ、ホウちゃんのお母さんとお茶してくるから。」
「行ってらっしゃい。」
母さんは俺たちを残して、ホーちゃんの家に入っていった。

再び二人っきりになった俺とホーちゃん。ホーちゃんはぼけーっと空を仰ぎ見て、何かを考えているみたいだ。
「あのさホーちゃん。」
「どしたのギアス?」
俺の呼び掛けに、すぐ振り向いてくれたホーちゃんは、ニコニコほほ笑んでいる。
「いつまで学校休むの?」
「大祭が終わったら帰る予定なんだ。」
「へぇ。」
大祭、とは立春の催されるこの街一番のイベントで、多くの人が集まる。ちっちゃいころの俺はいつも、大祭の日は家で寝てた。
誰も遊んでくれないし、ホーちゃんも居ないし。この神社の神主、つまりホーちゃんのおじさんが、大祭を主催してるってことになってる。
ホーちゃんは今の学校に進むまでいつもお手伝いしてて、一年間で唯一、俺と遊ばない日だ。冬休みも夏休みも欠かさず毎日遊ぶ俺たちが、唯一遊ばない日。
「大祭かぁ。」
「今年は来てくれる?」
「当たり前じゃん。」
俺の答えに、ホーちゃんはまた笑顔を咲かせた。いい機会だと思った俺は再び告白にチャレンジすることにした。
「ホーちゃん。」
「なに?」
俺より少し小さなホーちゃんの身体を軽く抑えて、俺はまじまじとホーちゃんを見つめる。ホーちゃんはそんな俺をまっすぐな眼差しでじっと見ている。
「あのさ・・・そのさ・・・」
けれど・・・やっぱり言葉が出てこない。心臓はドキドキバクバク。なぜ躊躇する俺。視線をホーちゃんからそらしてしまう。
「あのー・・・俺さ・・・俺・・・」
ぐぐっ!突然、俺の首を何か強い力が締めつける。
「ぐぇぇっ!」
「ぎーくん。さぼっちゃだめよ。」
母さんだった。息が出来ない苦しさから解放されるどころか、ギリギリと首を絞める母さん。でも顔は笑顔だから、怒ってるのではないんだな。
「わかったから放して!」
母さんは俺の訴えに素直に応じてくれた。しかし、また告白を邪魔されてしまった。わざとかと思いたくなるくらいだ。
「ギアス?僕ゴミ袋片付けてくるから。」
「あっ・・・ああ。」
ホーちゃんは白い袖を振ってぱたぱたと走り去ってしまった。

「ったく・・・」
ふて腐れそうになる俺だけど、母さんは瞳にすごい力を入れて俺を見る。
「ぎーくん。ホウちゃんのことは諦めなさい。」
「えっ?」
やはり見透かされていたようだ。俺がホーちゃんのこと好きになったってことを。
「仮にホウちゃんがぎーくんを受け入れても、私とホウちゃんのお母さん、お父さんは認めないと思う。」
「どうして?」
母さんの一言一言に腹が立つ。なんで認めないのか?と。
「ぎーくんは躊躇ないの?ずっと大親友だったホウちゃんと付き合うことに。」
「え?」
言われてみれば、確かに。これまでずっと男の子だと思ってたホーちゃんが女の子とわかったところで・・・すぐに付き合ってほしいなんて思う方がどうかしてるのかもな。
「えっと・・・まぁ・・・ホーちゃんのこと好きになっちゃったしなぁ。」
「ぷふふっ。」
クサいセリフに我慢できなかったのか、母さんはいきなり吹いた。
「ごめんごめんふふふっ・・・ごめふふっ・・・」
ごめんと謝ろうとしながらもいつまでも笑い続ける母さん。いい加減イライラしてきた。
「笑うなぁ!」
「あはははははは!あはっ・・・・あはははは!」
怒鳴ると母さんは壊れた人形みたく余計に大きな声で笑い出した。
「うるせぇ!」
むぐぐ・・・俺は勢いで母さんの口を閉じた。俺はとうとう導火線に火が付いた。けど、すぐに冷静になって母さんの口を開けた。
「いやっ!ごめっ!ごめんねっ!ぷふーっ!」
「まだ笑うかぁ!」
口を開けさせた途端にまた笑いだした母さん。そんなにツボにハマったのか、笑いながら目を真っ赤にして涙をぼろぼろこぼす。
「いやっ・・・ふふっ・・・そのねぷぷ・・・」
腹を抱えて大爆笑してるけど・・・ここまで笑われるとどこがおもしろいのか俺にすらわからない。けど、俺がホーちゃんのことを好きになった、という事実が母さんにはのたうちまわるほど面白い事実なんだろう。
ホーちゃんと俺・・・確かに今までずっと一緒に居たし、ずっと親友だと思ってたし、俺にとって不可欠なホーちゃん。
ホーちゃんがいなかったら俺はまずい飯を毎日食ってたし・・・ホーちゃん・・・

十数分後
「げほっ・・・ま、まぁげほげほっ。ホウちゃんがぎーくんのことをどう思ってるか、ってのを最優先すれば?」
さんざん笑って笑い疲れた母さんは、俺にそう捨て台詞を吐いて、またホーちゃんのおばさんのところへお茶を飲みに行った。

一人残された俺は、ホーちゃんがどこに行ったかと思って、あちこち見渡す。
「ここの神社・・・こんなに広かったんだな。」
小さい頃良く遊んでたはずなのに、それでも広いと思えるくらい、本当に広い。ただ単に俺が狭いと思いこんでただけってのもあるけど。桜の木もチラホラ、蕾から薄い紅色を覗かせている。
「ギアスっ。」
ホーちゃんの声に気付いて俺は振り返る。
「ホーちゃん・・・」
どこに行ってたかと思えば、普通に後ろに居た。ゴミ捨てを終えて、またしばらくおばさんと話をしてたみたいだ。
「お母さんが、今日はもうお疲れって。」
「終わりってこと?」
「うんっ。」
嬉しそうにぺこっと頷くホーちゃん。
「ギアスは今日おうちに帰るんでしょ?」
「え?ああ、泊まる場所か・・・」
そう言えば、すっかり今日泊まる場所のことを忘れてた。実家のそばなんだから、そのまま自分の家に帰ればいいと思うんだけど。
今までずっとホーちゃんと生活してたから、ホーちゃんと一緒に居るほうが落ち着くと言えば落ち着く。
「ホーちゃん・・・俺ホーちゃんと一緒に居たいな。」
「ふぇっ?」
俺の言葉を聞いて、ホーちゃんは固まってしまった。一緒に居たい、という意味をどう解釈したのか、俺は賭けに出たのだ。
「じゃさ、僕のうちに泊まる?」
「えーっと・・・」
たくらみは失敗のようだ。宿泊のこと、とホーちゃんが考えてくれて良かったのか、悪かったのか。
「あ、じゃあお願い。」
「うん。僕の部屋片付けとくから。」
ニコニコするホーちゃんを俺は連れて、ホーちゃんの家に戻った。ま、でも、寝る時にもう一回チャレンジすればいっか。な?
ここまで告白するのが大変だと思わなかった・・・外部障害的に。おばさんとか母さんとか。

このあと、俺とホーちゃんはいつもの私服に着替えて、おばさんが作る夕食を手伝った。おばさんは、ホーちゃんよりも料理の手さばきが良かった。

夕食。・・・なんだか気まずい。
「ほら!ぎーくんは遠慮しなさい。」
「うっさい。」
母さんが俺とホーちゃん、ホーちゃんのおばさんとの夕食に同席しているからだ。母さんは俺がおかずに箸を伸ばすたび、一言突っ込んでくる。
「ギアスは遠慮なく食べなよ。」
ニコニコほほ笑むホーちゃん。俺は何とも居心地が悪いけど、ホーちゃんの言葉に従うことにした。
ばしっ!
「いてっ!」
母さんが箸を持つ俺の右手を叩いた。
「遠慮しなさいよ。」
「うっさい。」
さすがにホーちゃんも箸を持つ左の翼を止めて、心配そうに俺を見る。
「あのー・・・おばさんもご飯を・・・」
「あ、ああ。ありがとう。ホウちゃんありがとう。」
結局ホーちゃんのこのセリフのおかげで俺は救われて、無事にご飯にありつけた。

こうして見てると、ホーちゃんが女の子だって知ってから、だんだん女の子にしか見えなくなってくる。不思議。
学校でも、女々しい男子よりもよっぽど男の子っぽかったし、グレンと下衆トークに花を咲かす場面でも普通に居たし・・・女の子ってそんなもんなのか?
そう考えると・・・俺の女の子像というのが、現実離れした理想に凝り固まったものって感じだな。

ん?でもそうなると、ホーちゃんの方がグレンが好き好き言ってるラティアスのロトとかよりも純真で、俺の理想に近いのかも。
なにしろ・・・その、女の子にもあるだろう下衆な部分を知らないわけだから。女の子のいじめの方が陰湿だとかその辺を。
グレンから伝え聞いただけでも、その恐ろしさは知っていた。あるはずの机がない、とか体操服とか水着が切り裂かれてる、とか弁当の中身が生ごみに変えられてる、とか。
無縁だからのほほん、と出来てるのかな?ま、その辺はホーちゃんの地の性格なんだろうけど。

ご飯を終えたホーちゃんと俺。ホーちゃんの部屋で、風呂までの時間を床に寝そべってゴロゴロ過ごしてる。
「ホーちゃんホーちゃん。」
「んー?」
俺はそっと隣で転がるホーちゃんに身体をくっつける。
「どしたのぎあす?」
ホーちゃんは俺にかまわず、と言った感じで小難しい本とずっとにらめっこしている。
「何の本読んでるの?」
「神社の歴史。大祭で必要かも、ってお母さんに言われたから。」
大変だなぁ・・・ホーちゃんも。隙間から覗き見ても、読めない漢字もかなりある。高校くらいで習う漢字とか、旧字体とか。そしてなにより、紙が日焼けして黄色くなってる。
受け継いできたもの、みたいだな。
「あれ?」
ふと俺が顔を上げると、写真立てに、2枚の写真が貼ってあるのが見えた。
1枚は・・・ホーちゃんの家族写真。男っぽい・・・青い4足のブサイクなドラゴン・・・ああ、ホーちゃんのお父さんのディアルガと、その隣に、小さな子を抱いてる女性らしいホーちゃんのお母さんホウオウ。
その小さな子はホウオウで、赤いリボンを付けてる。幼くてとっても可愛い。そして誰かに・・・いや、ホーちゃんだな。面影結構あるな。
嘴も男っぽい鋭く尖ったものじゃなくて、やや丸みを帯びた、女の子らしい、小さな可愛いものだ。

うーん・・・家族を見る限り、どうしてこうなった、ってくらいホーちゃん可愛いな。おばさんの若い時の写真よりも普通に可愛いな。
確かに、この写真を見ると、ホーちゃんが完全に女の子であることが分かる。

そしてもう1枚の写真。
ちっちゃなルギア、あ、俺だ。体操服を着た俺が、いかにもボーイッシュな格好?いや、半そで短パンの私服のちっちゃなホーちゃんと仲良く2ショットで写ってる。ほほえましいな。うん。でも何の時の写真だろう?
「ホーちゃん?」
「んっ?」
ホーちゃんは本を読むのをやめて、俺をじっと見つめる。ちょっと眠そう。
「この写真さ・・・いつの時の?」
「えっと・・・いつだったっけ?」
ホーちゃんは俺の問いに、翼で後頭部を触ると、少し考えている。綺麗なオレンジの毛並み、瞳を縁取る黒も・・・うーん、可愛い。黄色いとさかも・・・可愛い。
このままホーちゃんを見つめていると、脳がショートしそうだ。

「あ、思い出したよ。」
「いついつ?」
ホーちゃんは嬉しそうに言う。
「小学校の時のいつかの授業参観の後だよ。」
あー・・・そう言えば思い出した。で、でも待て・・・
「その時ギアスがさ・・・」
「ストーォップ!」
大声で叫び、無理やりホーちゃんの話を止めさせる俺。いやー・・・恥ずかしい思い出もあったもんだ。
「その時ギアスがさ。」
「やめろ。」
おどけて話を続けるホーちゃん。俺は止めようとする。
「その時・・・」
「やめてください。お願いします。」
「その・・・」
「お願いします、話を止めてください。死ぬほど恥ずかしいから。」
俺は起き上がって、ホーちゃんに土下座をした。ホーちゃんは変わらずにニコニコ笑って、わかってる、とだけ言うと、嬉しそうに写真を翼に取った。

何があったかって?あれは小学校2年生、7月の初めだった。
その日あった昼からの授業参観で、母さんの前で張り切ろうとしていた俺。
けどその直前の給食のとき、悲劇が起きた。
その日、珍しくフルーツポンチ?が出た。給食当番だった俺は給食が終わった後、その残りを給食室に運んでいた。もう授業参観も次の時間だったし、張り切っていた。
で、給食室に入った、その時だった。もう給食のおばちゃんが給食室を掃除してた。

そこで・・・俺は・・・洗剤の撒かれた床に滑って・・・持っていた容器の中身、フルーツポンチの残り、まぁシロップだな、を見事に身体に浴びたわけだ。
もう、絶望だった。泣いてたし。服もびしょびしょ、身体はべとべと。
給食のおばちゃんは俺に謝ってくれたけど、もうそれどころじゃなかった。授業参観はもうあと10分に迫ってた。
保健の先生に相談したら、体操服を貸してくれる、ということになったけど、運悪くサイズがなかった。
もう俺はパニックだったよ。

で、その時、その日たまたまホーちゃんがクラスメートに貸していた体操服が、返ってきて学校に、ホーちゃんの手元にある、という事実を思い出して、保健の先生に呼びに行ってもらった。
そしたら体操服の入った袋を持ったホーちゃんがやってきた。
んで、ホーちゃんが身体がベトベトだからシャワー浴びなよ、って言って・・・トイレの洗面台の前で、冷や水をホースから身体に浴びた。
その時は風邪をひかなかった。・・・今やると確実に肺炎になるな。
保健の先生が貸してくれたタオルで身体を拭いて・・・服着替えてそのまま遅れ気味に授業参観に出た。

クラスのみんなと母さんはパニックになっていたよ。朝、私服だったのに、昼には体操服に変わっていたんだから。

けど、ホーちゃんは母さんにだけ事実を伝えて、クラスのみんなには、お茶を浴びせられた、とか適当に言って誤魔化してくれた。
あの時、俺がみんなに事実を言っていたら、俺は散々冷やかされて、小学校を卒業したんだろうな。
んで、その写真は授業参観が終わって、そのまま俺の家で遊んでたホーちゃんと俺を母さんが撮ってくれたんだ。

普段は調子のいいこと言ってる俺だけど・・・こんな恥ずかしい経験も、記憶にある限り、何度もした。

ホーちゃんはなんだかんだで、いつも俺を支えてくれる。俺が支える場面もあったはずなんだけどなぁ・・・俺の記憶には、確実に残っているものはない。

「ホゥー?お風呂入りなさい?」
おばさんの声が、けっこう遠くから響く。多分、台所から。
「はぁい。じゃ、ギアスお風呂行ってくるね。」
「あ、ああ。いってら。」
ホーちゃんはニコニコしたまんま、着替えを持って部屋を出ていった。俺はホーちゃんが見えなくなるのを見送ると、仰向けになって天井を見上げた。
「はぁ。」
俺はふと考える。ホーちゃんは俺のこと、友達として見てるのか、♂として見てるのか。
♂として見ているとするなら、俺の告白は受け入れられるかもしれない。けど、友達として見られていると、受け入れられないかもしれない。グレンがそう言ってた。
長い間友達として過ごした女の子に、告白しても上手くいかないし、長続きしない、と。友達としての距離にお互い慣れてしまって、それ以上近づくことも遠ざかることもできない、らしい。
俺の気持ちはもう決まってる。母さんの言葉を反芻しながら、ホーちゃんにとって、俺はどういう存在なのか、そればかり考えてしまっている。
「うあー。」
ここまで悩むのも・・・生まれてはじめてかも。というか、まだ15年も生きてない。けど、グレンも俺も、声変わりをして、立派な♂になった。
ホーちゃんは、当然だが声変わりもなく、そして女の子みたいな雰囲気をどんどん醸し出していく。俺は焦りそうになっている。ここまで来ると・・・気付かない俺自身にも苛立つ。
「あ。」
俺の視線の先にあるのは、さっきの俺とホーちゃんの写真。ホーちゃんと一緒に居て、笑顔の俺。そして可愛いホーちゃんの愉しそうな笑顔。
オレンジの毛並みは優しく、黒の縁取りも、黄色のとさかも、はっきりとした輪郭はなく柔和で、女の子らしさが出てると言えば、これ以上ないくらいに出ている・・・その時は感じもしなかったけど。
紅い瞳・・・キラキラと輝いて・・・どんな物よりも澄んでいる。ぬいぐるみみたいに可愛いし、けど生きて、俺の傍に居る・・・そんな感じだ。
うん?そいうえば俺はホーちゃんとお風呂に入った記憶ないなぁ。泊まりに来たことは何度もあったのに。ぎゅーと抱きついたり、お触りしまくったり・・・してるのにな。

とことこと足音がしたので、身体を起こしてみれば、タオルを頭に巻いて湯気を纏ったホーちゃんが部屋に入ってきた。
「お風呂終わったよ。ギアスも入りなよ。」
嬉しそうに瞳を細めて、タオルでごしごしととさかと頭の毛並みを拭いてくホーちゃん。
「あ。ああ。」
俺は持ってきた荷物の中から、着替えを探しだすと、風呂場に・・・って風呂場どこだっけ?
「ホーちゃん・・・風呂場どこだっけ?」
「えっとねー。こっちだよ。」
道案内してくれる、楽しそうなホーちゃん。良く見ると、オレンジの綺麗な毛並みはまだ少し、湿っている。

ざぶーん。
身体を洗った俺は、浴槽に勢いよく浸かる。
「気持ちいいなぁ!」
白と青の毛並みもお湯にふわふわ揺られて嬉しそうにしてるように見える。
「ホーちゃん・・・」
良く考えたら、今朝ホーちゃんと仲直りして、すぐ寮を出て、着いたらホーちゃんが女の子だったって知って・・・いろいろありすぎて悩むばっかりだ。

「いいお湯でした。」
風呂場を出て、Tシャツと短パンを穿いた俺は、台所のおばさんに挨拶をした。
「予定通りにね・・・あ・・・じゃ、また明日。あ、ギアス君、ありがとう。」
おばさんは電話をしていたらしい、俺に気付くと電話を切って、俺の方を向いた。だれと電話してたかはどうでもいいけど、俺に気付いて電話を切ったから、何か気になる。
「いえいえ・・・」
けど俺は素直に疑問を吐きださず、またホーちゃんの部屋に戻る。

「ホーちゃんっ。」
ホーちゃんと一緒に寝るってことで、ちょっとわくわくしていた俺がホーちゃんの部屋に入るとホーちゃんは・・・
「すぅすぅ・・・」
寝てた。ベッドに布団で寝てる。身体を丸めてうつ伏せにくたっと伸びてる様は、寮で一緒に暮らしてた時と全く変わらない。身体は呼吸をして、ゆっくり動いている。
・・・可愛いなぁ。
そっと俺は顔を近づけて、ホーちゃんの寝顔をじっと見つめる。瞳を縁取る黒い毛並みは、閉じているからか、目じりの方に水滴みたいな形になってる。
「あれ?」
俺はふと気付いた。自分はどこで寝ればいいのかと。部屋に1つあるベッドではホーちゃんが寝ている。
今までなら、ホーちゃんのベッドに無理やりよじ登って、ホーちゃんと一緒に寝てた。今それをするのは気が引ける。
なんていうか・・・その・・・ホーちゃんに嫌われるんじゃないか、嫌われるのは嫌だ、とかいままで俺が考えもしなかった感情にとらわれてる。
「まぁいいや、床で寝よう。」
そのまま俺は伏せた状態になり、ジャージの上着を無造作に身体に掛けると、硬いフローリングの床で眠ることにする。

天井をじっと見ていると、丸い電灯が視界に入る。

・・・
寝れないな。ドキドキするし。

わさわさ・・・
「ん?」
布団が擦れるような小さな音が聞こえてきた。
「ギアス?」
ホーちゃんの声だ。床で寝そべってる俺に気付いたみたいだ。俺は身体をすぐに起こす。
「一緒に寝ようよ。床じゃ寝られないよ?」
瞳は虚ろで、眠そうなホーちゃんだけど、声色はとっても優しい。けど、迷いから俺は即答できなくなっていた。
「いいのか?」
「当たり前じゃん。」
にこっと笑うホーちゃんを見て、迷いが吹っ切れた俺はホーちゃんの布団にお邪魔することにした。
「よ・・・っと。」
ホーちゃんの邪魔にならないようにそっと布団に身体を滑り込ませる。
「よく寝れるといいね。」
「ああ。」
そう言うとホーちゃんはまた瞳を閉じてしまった。ホーちゃんが着てるのはパジャマじゃなくて、ぶかぶかの長袖Tシャツとハーフパンツだ。
Tシャツには見覚えがある。俺が買い物に失敗して、ホーちゃんに押し付け・・・いや、あげたやつだ。ハーフパンツの方は、ホーちゃんに誕生日プレゼントであげたやつだ。
俺でもデカいTシャツなのに、俺より小さいホーちゃんが着ていると、違和感しかない。穿いてるハーフパンツが見えなくなって、なんともえちぃな。
「んっ・・・」
ぶかぶかのTシャツからはみ出た、ホーちゃんの翼の毛先が俺の翼に当たって少しくすぐったい。
ホーちゃんの横顔が、すぐ傍にある。相変わらずドキドキはするけど、気持ちよさそうに寝てるホーちゃんを見ていると、なぜか心は落ち着いてくる。
ずっと・・・ずっと大事な友達だからかな・・・ホーちゃんが嬉しそうにしてる時は俺も嬉しい。悲しそうな時は・・・俺はもっと悲しい。
「ふぁぁ・・・」
そんなことを考えているうちにゆっくりと、俺のまぶたも重く・・・重く。


ん・・・まぶしい・・・
ゆさゆさ・・・ゆさゆさ・・・
うー眠い眠いんだ。だれだ身体を揺さぶるのは。

「ギアスっ!朝だよ!」
「んっ・・・」
ねむい・・・
「起きなよっ。」
ゆさゆさ・・・
うーん・・・
「起きろぉっ!!!」
ばしぃん!腹にものすごい痛みが走った。
「わぁぁぁぁっ!」
慌てて飛び起きると、心配そうな表情を浮かべるホーちゃんの傍に、母さんがいた。
「何やってんの?ホウちゃんみたいにさっさと起きなさいよ。」
どうやらホーちゃんがせっせと起こしてくれてたところに、母さんがやってきたようだ。
母さんははっきりと怒りの感情を顔に出してる。ホーちゃんは俺が起きて一安心なのか、安堵してるみたいだ。
「うっ・・・いだだだ・・・」
「あ、ごめんねぎーくん。」
立とうと思ったら、とてもお腹が痛い。どうやらさっき、母さんが叩いたらしい。力加減ってものを知ってほしいくらい痛い。母さんは謝るけれど、謝るくらいなら、最初からすんなよ。
「大丈夫?」
ホーちゃんの優しい気遣いに、大丈夫だよ、と答える。心配そうに俺を覗いてたホーちゃんは途端に笑顔になった。
「いたた・・・」
やっぱり痛い。みぞおちのあたりがふゆんふゆんしてる。意味わからないけど、とにかく痛い。
「お腹痛いならゆっくりしてていいよ。」
「ホーちゃんありがと。」
母さんとホーちゃんは嬉しそうに部屋から出ていった。ん?そういえばここ俺の部屋じゃ無いじゃん。ホーちゃんの部屋じゃん。
まぁいいや。俺は一応上半身だけ起こして、ホーちゃんの部屋をきょろきょろと見回す。綺麗な部屋。俺も何度も来たことがある。ずっと一緒に遊んでた。
ボードゲームとかTVゲームとか、おばさん交えてトランプしたり、一緒に昼寝したり。

「はぁ。」
そういえば・・・昔のホーちゃんと遊んでて、何度も喧嘩したことあったなぁ。原因はいっつも俺のわがままだったような気がする。
ホーちゃんの頬をつねったり、嘴を思いっきり引っ張ったり・・・それでホーちゃんが泣いて、いつも喧嘩が終わるたびにすごく後悔して、謝って・・・ホーちゃんはそんな俺をすぐに許してくれた。
今は落ち着いて・・・いや、落ち着いてもないか。つい一昨日喧嘩したばっかだもんな。申し訳ない。

それを考えると・・・ホーちゃんが俺を受け入れるなんていう想像は、俺の傲慢なだけなのかもしれない。

あれ?俺ってこんな鬱っぽい性格だったか?

いつも悩みがあれば・・・いつもいつもホーちゃんに相談してたな。グレンと大ゲンカした時、グレンと悪戯してセンセーに死ぬほど怒られた時、ホーちゃんが料理作ってくれない時。
ホーちゃんはアドバイスはくれなかった。俺がどうしたいか、という気持ちをいつもうまく引き出して、それを応援してくれた。

尊敬しないはずがない。大親友として・・・つい昨日の朝までは同性の友達として。昨日の昼からは異性の友達として。

「ギアス、痛いのおさまった?」
ホーちゃんがドアの開いた部分からひょっこり頭を出す。俺がもう大丈夫だ、と言うと、ホーちゃんは朝ごはんの準備できたよ、と言ってくれた。
俺もそれに付いていく。

「おおぅ・・・うまそう・・・」
テーブルの上に並んでいるのは俺の好物ばかりだった。いつもホーちゃんが作ってくれるフレンチトースト、ウィンナー、スクランブルエッグ。思わず声が漏れる。
「いただきます。」
母さんとおばさんは食事の挨拶をした途端、がつがつと食い始めた。俺もあわてて箸をさらに伸ばすけれど、母さんに負けてしまいそうだ。
味は、旨い・・・いや旨くないわけがない。いつもホーちゃんの手料理食べさせてもらって、おいしいなんてめったに言えなかったけれど、今日なら言えそうだ。
「おいしいねー。」
「でしょー。」
母さんの言葉に、おばさんが嬉しそうに答える。ホーちゃんは・・・いつも通り、マイペースに食べてる。
「ぎーくん、おいしいでしょ?」
「あぁ。すっげぇうまい。」
母さんに促されて、感想を言うと、おばさんも嬉しそうにほほ笑んだ。ホーちゃんもおばさんの料理が褒められてるからか、とっても嬉しそうにしてる。

「学校どうなの?」
「楽しいよ。」
ご飯が終わって、何もすることないので、俺は母さんと世間話をしてる。ホーちゃんとおばさんは後片付けしてた。
「成績は・・・まぁ通知簿学校から送ってくれるからよくわかるんだけど、友達づきあいとかどう?喧嘩してない?」
「・・・してる。」
普段なら否定したいところだけど、一昨日のこともあって、俺はちょっと弱気になっていて、認めてしまった。
「ホウちゃんと?」
「・・・うん。」
やっぱり、という具合の表情を浮かべた母さん。
「ぎーくんがそんな弱気な顔するなんて、ホウちゃんとのこと以外にはないもんね。」
「そっか・・・」
見抜かれてたみたいだ。いつもの強気な俺は・・・いなくなって、ホーちゃんとの関係に悩む弱い男の子になってしまった。
「ところで、母さんなんでいるの?」
俺の疑問に、なんだか嬉しそうな笑みを浮かべる母さん。
「ぎーくんがホウちゃんの家に泊まるって言うもんだから、私もお邪魔させてもらってたんだけどね。」
「この家に泊まったの?」
うん、と答える母さん。父さんは怒らないのかな?
「父さん何してんの?」
「ぎーくんと会うのが恥ずかしいって言って、今日から出張してる。」
なんじゃそりゃ。息子に会うのが恥ずかしいって、変なの。俺の父さんは、特に普通の?商店主。母さんも話が可笑しいとおもったのか、ちょっと笑ってる。
「そういえば・・・」
唐突に話を変えた母さん。
「明日はお祭りだから、ホウちゃんも今日、明日は忙しいんじゃないのかな?」
「そう?」
そっか、ホーちゃんと遊べないのかぁ・・・つまらんなぁ。
「だから、ちゃんと手伝ってあげてね。」
「えっ・・・あ、うん、当たり前じゃん。」
とても優しい母さんの口調に、俺はドキッとしてしまった。ここまで優しい口調で話すことは、めったにないから。少なくとも、今の学校に進んでからは一度もない。
俺には厳しい。けど、ホーちゃんとのことになると・・・優しい。母さんはそんな感じだ。ホーちゃんが身近にいる唯一の女の子で、俺に女兄弟いないから当然と言えば当然なのかな。
とにかく優しい口調で喋るってことは、俺に何か、あるのかな?
「それ以上に、家でも手伝って。」
「はいはい。」
と、思ったけど、母さんは元の口調にすぐ戻った。俺もいつもの通り、鬱陶しい返事をする。
「はい、は一回でいいの。」
ぺちっと俺の頭を軽く叩いた母さん。俺もいつものことだから、特に怒ったりはしない。ふと台所の方を見ると、ホーちゃんは皿洗いを終えたらしく、いなくなっていた。

「ホーちゃんは?」
「明日の準備のために、着替えに行っちゃったよ。」
おばさんは俺の問いに片手間でそう言いながら、汚れてもいいような上着を着ている。いかにも準備、という感じだ。
母さんとの約束の手前、手伝おうと思ったけれど、それ以上に、ホーちゃんがいない、ということは、俺はすることなし、ヒマだ。
「俺も手伝います。」
というわけでこう言いださずには居られなかった。母さんもおばさんも嬉しそうにほほ笑んで、じゃ、付いてきてとだけ言うと、玄関から外へ出て行った。俺も遅れることなく付いていく。

しばらくおばさんについていくと、どこか懐かしげな朱塗りの倉庫の前にやってきた。見覚えがあるな、と思えばちっちゃいころは日が暮れるまでずっとホーちゃんとここで遊んでた。
鍵を持っていたらしいおばさんは、ガチャガチャと南京錠を開けると、扉を開いた。
「じゃ、この中から長机30コ、出して並べといてね?」
「私たちは紅白の幕とか用意しなくちゃいけないから。それじゃ!」
母さんとおばさんはニコニコして俺に言う。どうやら俺は力仕事をするようはめられ・・・いや任されたんだな。
「あ・・・」
はぁ、とため息をついてみると、母さんとおばさんはもういなくなっていた。仕方なく、俺は倉庫に入っていった。

倉庫の中は暗いけれど、不思議なほどに温かいと言うか、涼しいというか・・・俺は霊感は無いけど、それに近いものを感じるような、そんな場所だ。
「電気電気っと・・・」
入り口すぐのところにあるスイッチを押すと、すぐに電灯が灯って、倉庫の中は明るくなった。
ここ、昔ホーちゃんに入れてもらったことがある。ホーちゃんは怒られるから嫌だって言ってたんだけど、無理を言って入れてもらった。
その時は怖くて仕方なかった。倉庫を出たところですぐ、俺とホーちゃんはおばさんと母さんに見つかってそのまま怒られた。
「うわ~・・・」
またため息をつく。そしてげんなりするぐらいの長机の山。縦に6つ積み重ねてある。綺麗に。
「あれ?」
不思議なことに、長机にはほとんど埃がついていない。昨日使ったばかり、みたいなほど、綺麗に折りたたまれていた。
「やるか!」
うんしょ、と俺は次々に重い長机を倉庫の外に運びだす。並べといてね?って言われてもどう並べたらいいかわからないから、とりあえず、倉庫の中と同じように積み重ねていく。
こんなの余裕余裕!

・・・
「あぁ・・・」
腰痛い・・・調子に乗りすぎました。
何度かトントンと翼で腰を叩きながら、大丈夫だと思うたびにまた倉庫に入って、机を運び出す。なかなか終わってくれない。
「ギアスっ!」
倉庫の中のまだ積まれたままの机を呆然と眺める俺の耳に、ホーちゃんの声が聞こえてきた。
「ホーちゃん・・・」
振り返ると、昨日と同じ巫女装束のホーちゃんが心配そうに俺を見つめてた。
「お疲れ・・・大丈夫?手伝うよ。」
「あ・・・」
いいよ、と断ろうとする前にホーちゃんは既に長机の片端を持っていた。
「早く早くっ。」
俺を急かすホーちゃん。俺も慌ててもう片方の長机の端を持つと、ふたりでうんしょ、と声と呼吸とを合わせて机を倉庫から運び始めた。

「ふぅ・・・」
ものの十分くらいで、必要とされた長机を運び出すことが出来た。俺はよっこいしょ、と長机の傍に腰を落とす。
「じゃ、ギアス。僕はまたお手伝いしてくるから。」
「あ、ああ。ありがとホーちゃん。」
ホーちゃんはとても忙しそうだ。俺の感謝の言葉を聞くと、にこっと笑ってぱたぱたと駆けだしていった。そのまま空を見上げると、少し雲がかかっていた。
「はぁ・・・」
また退屈になった。
「ぎーくん?」
母さんだ。母さんが遠くから俺を呼んでる。
「なに?」
「ちょっと早いけどおひるだよー!」
ちょっと早いけど、と言うセリフに反応して倉庫の中の時計を見ると、短針が11を指したところだった。俺は空腹から慌てて母さんたちがいるところへ駆けだした。

「うぃー・・・」
昼ごはんを食べ終わって、時計を見ると正午。母さんは雨が降りそうだなぁ・・・と俺に振った後、ビニールシート出しといてね、と脅した。
仕方なく俺は・・・倉庫に戻ってビニールシートを引っ張り出していた。
ホーちゃんはと言うと、近所の人たちと一緒に紐を張ったり、紅白幕を伸ばしてもう明日の大祭の準備も最終段階、という具合にあくせくと進めている。

「あのー。」
突然、俺の背後から声が聞こえた。
「あ?」
どうやら俺に声がかけられたらしいので振り返ると、そこには俺たちと同じくらいの年ごろを思わせる風貌のパルキアがいた。
その態度はなんだかイライラさせるくらいに誠実そうだ。
「何?誰?」
無愛想に答えると、パルキアはにこっと微笑んで俺に言う。
「おれ、ここの神主さんにあいさつに来たんす、神主さんいますか?」
「いない。」
ラフな口調に、イライラ度倍増。もっと無愛想に答える。
「ふーん・・・じゃそこの女の子は?」
そう言うとパルキアはホーちゃんを指差した。
「俺の友達。」
「ふーん。」
どこか見下ろす感じのリアクション。イライラする・・・ぶん殴りてぇ・・・けどパルキアは俺にはお構いなし、って感じだ。
「実はさ、おれ、あの仔と結婚するんだ。」
「は?」
その言葉を聞いた瞬間、わけがわからなくなった。は?結婚?ホーちゃんと?いつ?なんで?どこでどうやってきまった?なんでアイツ?すごく嫌なんだけど?
疑問はとめどなくあふれ出て、そのパルキアのことをまともに見れなくなっていた。
そしていつの間にかおばさんと母さんがやってきて、パルキアを家の中に連れて行った。残された俺はただ呆然と、唐突に訪れた事態に、何もすることが出来なくなっていた。
俺はいつの間にか、独りぼっちになっていたのか・・・

そいつと母さんたちの話は夕方まで続いたらしく、俺はショックでふさぎこんで誰とも話したくない思いから、ホーちゃんすら避けて、倉庫の中でボーっとしていた。

倉庫の窓からそいつが帰っていくのを見た後、俺はずっとため息をついていた。
「ぎーくん?」
「あ?」
どこからか、母さんの声がしたので、返事をしてしまった。すると母さんは声だけで俺の居場所を見つけたらしく、すぐにやってきた。
「大丈夫?」
「大丈夫なわけないだろ。なにもかも俺に隠してたんだな。」
怒りを隠せない俺は、強い口調で母さんを責める。
「かくしてたわけじゃ・・・」
「全部そうだもんな。隠してたわけじゃない?ふざけんな!そんなこと言い続けるならもう二度と俺の目の前に来るな!!」
イライラがピークに達した俺は、そう、叫んでしまった。母さんは弁解の余地がない、といった感じで俺から離れていった。

しばらくしてシトシトと雨が降り始めた。幸い倉庫の中には雨も入らず、ジメジメもしていず、快適な空間になっていた。
空はあっという間に暗くなったけれど、心の中のモヤモヤが晴れないまま、俺は電気も点けずにまたじっとため息ばかりついていた。
すっかり倉庫の主のような感じになってしまった。

「ギアス?」
ふとホーちゃんの声が聞こえたような気がした。
慌ててガラガラと倉庫の扉を開けると、何かお盆のようなものを持ったホーちゃんがびしょ濡れで立っていた。
「ホーちゃん!」
「ごはん・・・だよ。」
良く見ると、ホーちゃんは自分が着るレインコートを、持っていたものに掛けていた。それが俺の晩御飯だということに、ホーちゃんのセリフで気づいた。
「入れよ・・・」
「・・・うん。」
どこか申し訳なさそうなホーちゃんだけれど、俺は構わずにホーちゃんを倉庫の中に招き入れた。
「タオル・・・」
ひょいっと俺はホーちゃんにタオルを投げた。

「晩御飯だょ・・・」
いつもに比べて、とても語気の弱いホーちゃん。
「ありがと・・・」
俺も複雑な気持ちを自分で解消することが出来ていない。俺からホーちゃんに話しかけるのは無理だった。ホーちゃんも多分・・・
「あのさ・・・」
と、思っていたら、ホーちゃんは口を開いた。
「僕・・・どうしたらいいんだろう・・・結婚なんて・・・嫌だ。」
ホーちゃんの表情には戸惑いしかないように、俺には見えた。
「聞いてなかった?」
俺が聞くと、ホーちゃんはこくり、と小さく頷いた。
「帰ってきていきなりさ・・・」
そう言うとホーちゃんは黙ってしまった。そしてふるふると身体を震わせて泣いている。

「嫌なら・・・嫌って言えばいい・・・」
混乱した俺の口からはそうとしか言えなかった。
「そんなこと・・・できないよ・・・」
澄んだ赤い瞳はぽろぽろと涙をこぼして、じっと俺を見ている。
「じゃあ・・・俺がそう言う。」
「ギアスが言っても・・・」
ホーちゃんはもう立っているのも限界なんじゃないかと言うくらいに弱々しく震えていた。心の中にあったホーちゃんへの好意が、守りたいと言う気持ちに・・・変わっていくのを、俺は感じていた。
「ホーちゃん・・・俺さ・・・」
俺はそう言うと、泣きじゃくるホーちゃんをぎゅっと抱いて、床に座った。ホーちゃんは驚くほど軽く、びしょ濡れなのに温かかった。
「ホーちゃんのことが好きだ。誰にも負けない。」
大好きな親友に、ポロっと俺の口から出た告白の言葉。あれだけ躊躇したのに、いざというときには簡単に告白出来てしまった。俺にもこの心境の変化はわからない。
「ぎあすっ・・・」
ホーちゃんは顔をあげて、俺を見つめたまま・・・
「くしゅんっ!」
一度くしゃみをした。なんだかまたグダグダな流れになりそうだったので、俺は勢いでホーちゃんの小さなくちばしに、無理やり俺の口を重ねた。
「んっ・・・」
ホーちゃんはちょっとだけ驚いたらしく、小さく声を漏らしたけど、すぐに俺を受け入れてくれた。俺もびしょ濡れのホーちゃんのTシャツを掴む手に力を入れて、目を閉じた。
「んっ・・・」
ずっと俺の口でホーちゃんの口を覆っていると、どれだけ時間が経ったかわからなくなったくらいの時に、ホーちゃんは翼で軽く俺の胸を叩いた。
「あ、ごめん・・・」
「ちがう・・・いき・・・つづかない・・・」
キスをした後、ホーちゃんははぁはぁと息を荒くして謝る俺の言葉を遮った。申し訳ないなと思いつつも、表情が勝手にほころんでいく。
そしてホーちゃんと俺との口の間には、口づけで出来た透明な橋が架かっていた。俺はこの絆を・・・守りたい。

「ぼくも・・・ギアスのことすきだよ。」
そう言ってホーちゃんは俺に笑みを見せてくれた。
「ほーちゃん・・・」
ホーちゃんの見せた笑顔に、心のどこかの悪魔さんが、余計なことをささやく。
「逃げようか。」
でも抑えられなかった。
「だめだよっ・・・」
ホーちゃんは否定する。俺はホーちゃんを抱いたままだということに気付いて、このまま走り去ってやろうかと思うけど、外は雨だしなぁ・・・
「うーっ・・・ホーちゃんがそんなこと言うと、明日ひどいぞ。」
なんてバカな脅し文句なんだ。でもこのままだと収まりつかないし、確実に明日大暴れしたくなってしまう。
「ひどくしてもいいよ。」
「えっ?」
でもホーちゃんも乗り気のようだ。
「ってことはつまり・・・明日俺はホーちゃんを拉致しちゃえばいいのか。」
公衆の面前でホーちゃんを拉致することで、ホーちゃんのおばさんにも俺の母さんにもホーちゃんと俺との仲を認めさせることが出来る。
つまり結婚話を無茶苦茶につぶすようなことをホーちゃんに責任が生じないようなギリギリの範囲でホーちゃんとすればいいわけだ。
あのクソパルキアをホーちゃんの面前で殴る→ホーちゃんを奪う+破壊活動。うむ、完璧。

なぜか勉強でも回らないような頭脳がフル回転し始めた。

「あんまりやりすぎないでね。」
忠告するように言うホーちゃん。
「あえて言おう。無理。」
「やっぱり。」
がくっと肩を落としてホーちゃんは俯く。
「それに・・・お母さんが怒ると思うし・・・お父さんに何言われるかわかんないし・・・」
「そっか・・・」
俺の行動でホーちゃん一家の仲を引き裂くわけにはいかないな・・・困ったぞ。
「ギアス・・・ごめんね。」
またホーちゃんは泣きそうだ。
「いい。これは俺の決めることだから。」
「じゃ・・・また明日。」
「ああ。」
ホーちゃんと軽くキスを交わすとホーちゃんはびしょ濡れのまま境内を走っていった。

俺はご飯を平らげると、硬い木の床の上でごろっと寝転がる。

どうやってホーちゃんを・・・守ろうか・・・

そんなことを考える間もなくあっという間に・・・眠ってしまった。


「ん・・・」
わいわいと騒がしい声で俺は目が覚めた。うっすらと瞳を開けて、時計を見ると、10時。
「寝坊した・・・」
後悔する間もなくすぐに起き上がって窓からお祭りの、外の様子を眺めると、もうたくさんのポケモンが来ていた。
・・・あの忌々しいパルキアも。相変わらず巫女装束のホーちゃんの傍に居る。ホーちゃんはニコニコはしているけれど、俺には分かる。苦笑いだ。

ホーちゃんはいつもニコニコしているけれど、苦笑いの時と、本当に楽しそうな時とある。俺は長い付き合いからその違いに気付くことが出来ていた。

「ふぁぁ・・・」
あくびを3回ほどすると、徐々に頭が冴えてきた。俺の頭の中にあるのは1つのことだけ。・・・いつ行動しようか。
お祭りに来ているポケモンは、子供から大人まで、結構いる。服装はバラバラだから、俺だけが目立つってこともなさそうだ。
「よしっ。」
倉庫のドアをそっと開くと、こそこそと外に出て少しずつホーちゃんに近づいていく。

「ぎーくん?なにしてんの?」
げっ・・・母さんだ。声がした方を振り向くと俺をじっと睨んでいる。
「なにしてんの?」
恫喝しながら一歩ずつ近づいてくる母さん。俺も後ずさりする。俺は錯綜する思考の中で、ずっとホーちゃんの姿だけを探していた。
ふと母さんから目をそらすと、テントの中にホーちゃんがいるのに気付いた。
これは逃せないチャンスだ。母さんは俺しか見ていないし、誰もホーちゃんを気にしている気配はない。やるなら今しかない。
「るせぇ!」
俺は母さんに生意気な台詞を吐くと、ホーちゃんがいるテントに駆けこんだ。
「なんだお前!?」
テントに駆けこむなり、すぐにパルキアが異常に気付いた。ホーちゃんはちょっとびっくりしている。
「どけっ!」
げし!と右足で、運悪く俺の進路の邪魔になっていたパルキアの腹を蹴ると、パルキアはその場にうずくまった。
「ホーちゃん!行こう!」
そしてホーちゃんの巫女服の袖を掴んだ。
「え、でも・・・」
「いいから!」
戸惑うホーちゃんを引っ張って神社の出口を目で探す。そして小石の敷き詰められた道を駆けだす。

「ぎーくん。そこまで。」
母さんと神社の他の巫女さんが俺たちの行く手を阻むかのように進路の前に立っていた。
巫女装束のポケモンは、カイリュー、キュウコン、ペルシアン・・・俺たちよりもデカくて、いかつい。普通に戦えば、負ける。
母さんたちに全て読まれてたみたいだ。
「ここまで・・・かな。」
そう呟いたホーちゃんはそっと繋いでいた手を解いて、俺を守るように、俺の前に立っている。
「ぎーくん、バカなことはやめなさい。諦めないといけないこともあるの。」
母さんは優しくそう語りかけるけれど、めちゃくちゃに怒って、瞳には真っ赤な血管が浮き出ている。そんだけ力入れると脳出血起こすぞ、と思うほど。
「やだ。俺は絶対諦められないものがあるの。」
軽い感じに母さんに言葉を返すと、母さんは本気の怒りを俺に見せた。
「いいかげんにしなさい!!」
・・・久しぶりに怒鳴られたと思ったね。鼓膜破れるかと思った。けどヒートアップした母さんはまた次の言葉を発そうと構えている。
「あんたががちゃがちゃ・・・」
母さんは言いかけた言葉を止めた。それと同時に何の前触れもなく周りの巫女服のポケモンたちはその場に倒れこんだ。
「うぁっ!!あついっ!」
「あつぃぃ!!」
倒れこんだポケモンは苦悶を表情に浮かべ、身体を四肢でさんざんにはたいて口々に熱い熱いとわめきたてている。
「ちょっとどうしたの・・・」
母さんは混乱しておちつきなくきょろきょろとあたりを見ている。その光景に俺も目を奪われそうになったけれど、目の前のホーちゃんがふらふらと身体を崩しそうになった。
「ホーちゃん!」
「だいじょぶ・・・」
俺はすかさずホーちゃんの身体を支えることができた。大丈夫と強がるけれどホーちゃんは耐えきれず、俺に寄り掛かった。
「ホウちゃん・・・」
母さんはホーちゃんを見るなり何も言わなくなった。一方の俺はチャンス到来。
「うんしょっと。」
「わぁっ!」
そのままホーちゃんをお姫様だっこした。びっくりしたのかホーちゃんは可愛い声を出したけれど、俺が動きやすいよう、望むように身体をくっつけてくれた。
「じゃ!」
呆然としている母さんをその場に放置して、とっとと逃走。そしてそのまま何の障害もなく神社から脱出することが出来た。

「ホーちゃん大丈夫?」
「うん・・・」
ちょっと虚ろな瞳を俺に向けるホーちゃん。
ホーちゃんは巫女服のままだ。家が多いところを通ると、だれかが神社にチクる・・・と名探偵のように頭がキレている俺は、敢て右に曲がったり、出来るだけ住宅地を避けるように進んでいく。
「どこかで、休もっか?」
さっき倒れたホーちゃんの体調が心配な俺は・・・というより俺もいつまでもホーちゃんをお姫様だっこしているわけにはいかない、のでホーちゃんに休むように言ってみた。
「じゃぁさ・・・あそこに行きたいな。」
「川?」
「うんっ。」
あそこ、というセリフだけでなぜか場所を特定できてしまったけれど、昔、夏休みによくホーちゃんとその川で遊んでた。
小学校の低学年の頃の話だ。いつも服をびしょびしょにして・・・母さんは怒ったけれど、おばさんは嬉しそうにしてた。
俺は川に向かうべく、進路を変えた。そんなに距離もないしと思った俺は、ホーちゃんを抱っこしたまま、川を目指して、またトコトコと進む。

「ホーちゃん大丈夫?」
「うんー。」
石の河原で、俺は腰掛けて、照れくささから川面をながめつつ、未だ胸の中のホーちゃんを気づかう。
「もう大丈夫だよ。」
「そっか。」
ホーちゃんを包んでた翼をおろすと、ホーちゃんは少しふらつきつつもひょこっと起きて、俺の傍に座った。
「ふぁぁ・・・」
俺は背伸びをすると、そのままの勢いでホーちゃんに寄り添った。
「ごめんなホーちゃん・・・もっと穏やかにできなくて。」
迷惑かけたなぁと思った俺が謝ると、ホーちゃんは首を2,3度横に振った。
「あれくらいがちょうどいいよ。」
「だよなぁ。」
俺はくすくすとホーちゃんと見つめあって、笑う。ホーちゃんもクスクス笑ってる。
「これから・・・どうしよう。」
どうしよう・・・学校行くか・・・いやそのためには電車に・・・あ、財布持ってねぇ。
「・・・家に帰るか。良く考えたら財布も何も持ってない。」
「そうだね。」
ホーちゃんも異論はないみたいだ。
財布・・・持ってきたらよかった。財布は荷物と一緒に放置してた。こっちに帰ってきてから何不自由なく生活してたから、財布の必要性をすっかり忘れてた。
「でも・・・もうちょとこうしていようよ。」
俺はそう言ってホーちゃんに頬ずりした。もうすっかりホーちゃんとくっついてカップル状態・・・もう一度好きって言わないとな。
「ホーちゃん、好きだー!」
勢いつければいいか、と俺は好き、と言ってがばっとホーちゃんを押し倒した。
「なにしてんの?」
うぅっ・・・嫌われたかな?押し倒されたホーちゃんはちょっと冷めた瞳で俺を見ている。
「ごめん。つい・・・」
さっさと身体を起こそうと思ったけれど、ホーちゃんの倒れた身体と巫女服のはだけっぷりがエロくて、身体が金縛りにあったように動かない。
「ギアスさ・・・」
少しの沈黙の後、ホーちゃんが話し始めた。
「ん?」
「僕のこと・・・ホントに好き?」
「あったりまえだろぉ。ここで襲ってもいいんだぞぉ。」
俺は何を言ってるんだ?でもホーちゃんはそんな俺にかまわず話を続ける。
「僕、♀なんだよ?」
「ああ。だから?」
「♀なのに僕って・・・変じゃん。」
「んー・・・ホーちゃんのそういうところ好き。」
ホーちゃんにとって悩み相談なのかもしれないけれど、俺は翼で何度もホーちゃんの頭を撫でて、頬をベタベタ触って、オレンジの毛並みをまさぐる。
「ずっと僕・・・どうしようかと思ってた。本当に♂になったら、ギアスと一生友達でいられるのにって。」
「ホーちゃん・・・」
深刻な話だということが、ホーちゃんの口調から読みとれたので、すぐにふざけるのをやめて乗っかったままホーちゃんの話を聞き続ける。
「お風呂入るたび・・・ずっと思ってた。一生隠し続けるのかなって。」
ホーちゃんは言葉に詰まるたび、そのつぶらな瞳を俺から少しそらして、また少しして俺に視線を合わせると話を始めた。
「こんな僕を・・・ギアスは受け入れてくれるのかなって。」
でも・・・ホーちゃんの話をよく聞いていると、まるで俺と同じ悩みを抱えてたみたいだ。
俺もホーちゃんが前々から気になる存在ではあった。一応同性だったから、その思いはずっと隠してたけど・・・友達としても最高で・・・異性なら迷わず恋人にしてた。
それが現実になった。ホーちゃんは女の子で・・・
「あのさ・・・つまらないこと聞くんだけど・・・」
「なに?」
ホーちゃんは無邪気な子供みたいな視線を俺に向ける。
「声以外の女の子の証めぐふっ!」
えっちなことを考えていたのがばれてた。ホーちゃんの鋭いホウオウ拳キックがみぞおちにヒットした。
「もう!でも・・・やっぱり見せた方がいいのかな・・・」
「あ、気にしないで気にしないで・・・」
がっくりと、落ち込んだホーちゃんはずっと下を見てる。真面目な話をしてるホーちゃんにふざけてしまったことにちょっと反省。
「ごめんごめん。でも・・・俺もずっと思ってた。ホーちゃんみたいな仔が俺の彼女だったらって。」
「ギアス・・・んっ!・・・ん・・・」
俺はそうしてまた、ホーちゃんの嘴を奪った。俺のが口がデカいから、すぐにホーちゃんの口を覆えちゃう。
「んっ・・・ん・・・」
時折俺の口の中で、ホーちゃんがちっちゃな嘴を開いて呼吸をしようとするんだけど、それがまたなんともいとおしい。
「ふぁ・・・」
そしてそれが何度か続いた後、俺はホーちゃんの口に、舌をそっと挿れた。
「んぁん!・・・」
漏れた声がたまらなく可愛い。ホーちゃんの口腔をなぞるたび、ホーちゃんの滑らかで、少しだけザラつきのある舌を舐めまわすたび、ホーちゃんは可愛い声で啼く。
「んっ・・・」
下らないエロ本に載ってたイラストよりも、ホーちゃんと今していることが、俺にとってたまらなく愉しい。
ぱたぱたとまたホーちゃんが俺の胸を叩いた。俺はそっと唇を外すと、ホーちゃんは瞳を潤ませて、不足した空気を吸い上げた。
「ごめん・・・なんかいつも俺の勝手ばかりで・・・」
3回目のキスだけれど、どうしても俺の勝手でしてしまう。ホーちゃんは酸素不足になって、ぜえぜえいってるのに・・・それに気付かず。
「ううん・・・いいよ。」
ぷいぷいと首をふるホーちゃん。しばし現実を忘れてうっとりしていると、俺は今の状況を解決する策を思いついた。
「あのさホーちゃん・・・俺と結婚しよう。」
「え?」
さすがに突然のことでびっくりしてるのか、ホーちゃんは俺の下で、きょとんとして俺を見てる。
「俺と結婚すればさ、当然重婚はできないから自由でいられるじゃん。」
先生が歴史の授業で言ってたことを思い出した。ポケモンは結婚をしているときに他のポケモンとは制度上結婚できないって。
「あ、そっか。」
ホーちゃんも、ぽん、と翼を俺の方に置いて、頷いた。
「結婚したら・・・ずっと一緒に居ような。」
「あたりまえじゃん。ギアスのこと大好きだから。」
にこっと笑うホーちゃん。俺は嬉しさのあまり、ホーちゃんに抱きついて、そのまま仰向けに転がると、ホーちゃんをしばし、抱いていた。

「帰ろうか。」
「うん。」
よっこらしょ、と起き上がると俺はホーちゃんに背中を差し出す。
「おんぶしてあげる。」
「ありがとう・・・よっ、と。」
ホーちゃんはぴょん、と跳んで俺の背中に乗っかった。ホーちゃんの脚を俺の翼で抑えると、ホーちゃんは翼を俺の首周りに回した。
「さて、帰りますか。」
安定したのを確認すると、俺はゆっくりと歩き始めた。
河原から神社への帰り道の間中ずっと、俺とホーちゃんはこれからどうしようか、とか昔こんなことがあったよね~とか、いかにもカップルっぽい会話で盛り上がっていた。
背中のホーちゃんはとても温かかった。ずっとこうしていたいくらい・・・

神社に帰ると、全てはすっかり片付けられていて、鬼の形相の母さんと、心配そうな表情のおばさん以外、誰もいなくなっていた。
「お帰り。」
怒りの感情を少し、隠した声で俺にそう言う母さん。
「ただいま。」
満面の笑みで挨拶をする俺とホーちゃん。
「さて、ぎーくん、こっちに来なさい、って言うか、来い。」
ホーちゃんを降ろしたと同時に、母さんは俺の翼を思い切り引っ張って、家の中に引きずり込んだ。

そして俺は気絶するまで母さんに説教を食らい続けた。怒られて気絶することなんて、無いと思っていたけど、母さんは俺の予想以上に怖かった。

「うぁ・・・」
「起きた?」
母さんが俺の顔を覗く。説教をしているときの顔とは違って、すごく優しく、柔和な表情だった。
「ホーちゃんは?」
「みんなのところにお母さんと謝りに行って、疲れて寝ちゃってる。」
「そっか・・・」
本当に、本当に悪いことしたな、と後悔の念が浮かび上がってきた。
「あの後大変だったんだよー。お祭りどころじゃなくなって・・・」
母さんはしみじみと話し始める。お祭りをめちゃくちゃにしたことには反省は・・・ない。反省してま~す。
「でも・・・悪かったのは私たちの方だったみたい・・・ホウちゃんにいろんなこと隠して・・・結婚話はもう完全に御破算。」
反省してま~す・・・本当にそれくらいしかセリフが出ない。
「ホウちゃんのお父さんがそれ聞いて、慌てて帰ってくるらしいから。」
ホーちゃんのお父さん・・・どんなポケモンだったっけ・・・怖いのかな・・・ホーちゃんに聞かないとな。でも、俺の気持ちはきちんと伝えないと。
「ちょっとホーちゃんの部屋に行ってくる。」
起き上がって、まだ少し頭がふらふらするけれど、それでも今はホーちゃんのことで頭がいっぱいだ。
「襲ったらダメよ。」
「んぁ!何言ってんだよ!」
母さんは愉しそうに俺をからかう。一方の俺はそんな冗談を受け入れられないくらいに、ホーちゃんのことが好きだ。

「ホーちゃん?」
コンコン、とホーちゃんの部屋のドアをノックするけれど、返事はない。
「入るよ。」
勝手に部屋の扉を開けて、そーっとホーちゃんの部屋に侵入・・・いや、普通に入った。
「ホーちゃん。」
突然起きてびっくりさせないように、ちょっとずつ声をかけながら、ゆっくりとホーちゃんの形が付いている布団にゆっくり近づいていく。
「ホーちゃん?」
そっと布団をめくると、べたっと敷布団に張り付いているホーちゃんがいた。きちんと着替えてから寝る辺りがホーちゃんらしいなと思う。
翼をだらしなく広げて、脚もぐてーっと伸ばして、可愛い尻尾もすっかりくちゃくちゃだ。
本当に疲れているみたいで、きゅ~、という擬音がいまのホーちゃんにはぴったりだ。
「ごめんなホーちゃん。」
そっとホーちゃんの黄色いとさかに触れて、愛おしい気持ちを隠さずに、優しく撫でる。
「ん・・・」
ホーちゃんを起こしてしまったみたいだ。ぱちっと目を開いて、もぞもぞ身体を動かすと、顔をあげて俺を見た。
「ギアス・・・」
「おはようホーちゃん。」
「おはよぉ。」
ふわわ、とあくびをするホーちゃん。俺はそっとベッドに腰かけて、ホーちゃんが身体を起こすのを待った。
ホーちゃんは翼を支えに身体を起こそうとしているけど、どことなくうとうととしている。
「眠たい?」
「起きたばっかだからさ。」
苦笑いするホーちゃんに、俺も笑い返した。自分で起きるのがどことなく辛そうだったので、俺は姿勢を変えて、ホーちゃんの両脇をがしっと掴んだ。
「ひゃぁ!」
そしてホーちゃんを持ち上げると、向かい合うようにして俺の脚の上に置いた。
「こうすれば・・・いいじゃん。」
「・・・うん。」
恥ずかしそうなホーちゃん。オレンジの毛並みの頬が、ほんのりと紅くなっている。
「これだったら・・・あんまり前と変わらないよね?」
笑顔のホーちゃんは俺にそう語りかけてくれた。
確かに・・・前とやっていることは変わらないのかもしれない。ハードなスキンシップ、いつも仲良くベタベタくっついて、そして喧嘩して・・・
でも行動の意味は変わっている。ホーちゃんのことが好きだっていうこと、・・・誰よりも大切で、守りたいっていうこと。
「変わってると思うなぁ。俺は。」
「そう?」
思ったことをそのまま口に出した俺を、不思議そうな瞳で見つめるホーちゃん。
「うん・・・」
何だろう・・・とってもドキドキする。興奮というか・・・いつにない愉しい緊張、そう言えばいいのかもしれない。
「ギアス?」
「ほーちゃん・・・」
俺はそのままホーちゃんの嘴に唇をくっつけた。俺は左の翼でホーちゃんを支えて、右の翼はそっとホーちゃんの身体を服の上から・・・なぞっていく。
「んぁぁん・・・んっ・・・」
ホーちゃんはもともと敏感肌な方だ。くすぐり攻撃をしかけると、すぐに泣いてしまう。
今みたいに服の上から身体をなぞられるだけでも・・・相当辛いはず。
「んっ・・・ん・・・」
キスに耐えつ、そして身体をなぞるくすぐったい感触に耐えつ、ホーちゃんはそれでも俺の欲求に素直に従ってくれる。そして俺はさっきのようにまたホーちゃんの口腔に舌を挿れた。
俺はそっと、Tシャツをまくって、直接ホーちゃんの白のお腹の毛並みをまさぐる。感触はとても気持ちが良く、子供のころに1日中触っていたタオルの生地のように、ずっと触れていても、飽きることがない。
「ん・・・ん・・・」
口腔から微かに漏れる息、胸のドキドキと俺の翼に伝わるホーちゃんの生きている証・・・
さすがに耐えられないのか、ホーちゃんは瞳を閉じている。そっとそっと柔らかい毛並みを堪能するように、翼の指使いを丁寧に、慎重に・・・ホーちゃんの未征服の部分に向けていく。
ホーちゃんもこれからされることを理解しているのか、あまり抵抗しようとはしない。
胸・・・お腹・・・そして下腹・・・俺の翼は確実にホーちゃんの秘密を侵略しようとしていく。
「ふぁっ・・・」
「ふぁ・・・」
と、ここでキスを一度止めて、俺はホーちゃんをじっと見つめる。ホーちゃんも俺を見ている。
「続き・・・してもいいか?」
「いつも許可とらなくても勝手に・・・やるじゃん。」
いやいや・・・ホーちゃんの話も確かだけど、さすがにこれは勝手にやると・・・やろうとは思わない。
「ホーちゃんのこと、好きだからさ、ホーちゃんに確認取らないと。」
「わかった。僕もギアスのこと好きだから・・・いいよ。」
ホーちゃんはにこっと微笑んで、疲れているはずの身体を、俺に委ねてくれた。そうして、俺はまたホーちゃんと口づけを交わした。
「んっ・・・」
俺は右翼をホーちゃんの穿いている薄いグレーのクォーターパンツに、そっと後ろから忍ばせる。そしてさっきと同じように指先を繊細に動かして、柔らかい毛並みをそっと撫で、尻尾から徐々にお腹の方へ翼を動かしていく。
ホーちゃんはもうさすがに限界のようだ。じたばたとくすぐったそうに身体をくねらせている。口でホーちゃんの動きを止めていないと、身体のバランスを崩しかねない。
そして俺はホーちゃんの大事なところを守る最後の砦である、一枚布、水色のトランクスの中にそっと翼を忍ばせて、ホーちゃんの秘密のポイントを徐々に犯していく。
「ふにゃぁぁぁ・・・」
突然口づけをやめたホーちゃんは甘い声を漏らした。
「ホーちゃん、声出すと・・・聞こえるよ。」
「ふぇぇ・・・」
なぜか狡賢くなった俺は、ホーちゃんの羞恥心を煽った。ホーちゃんは瞳をうるうると潤ませて俺を困惑に満ちた瞳で見ている。
「んっ!」
またホーちゃんの口を覆うと、指先でホーちゃんの未知なる縦の割れ目を少しずつ、触れていく。そっと俺はホーちゃんの割れ目の筋に指をなぞる。
「ん~・・・」
途端にホーちゃんはプルプルと震えだした。けれど俺はお構いなしにつるつるぷにぷにのホーちゃんのまんまんに指を這わせていく。
「ゃだっ・・・」
そんな小さな声がホーちゃんから漏れる。そこで俺は一度ホーちゃんのパンツから翼を抜いて、指先をぺろぺろと舐めた。
口づけをやめると、ホーちゃんははぁはぁと荒い息を出すけれど、俺を見る視線は外れない。
「やめるか?」
「・・・」
ホーちゃんは黙ってしまった。ちょっと困惑があるみたい。
「ゃって・・・ぃぃょ・・・」
今にも泣きそうだけど、ホーちゃんは俺に続けるように言った。俺は待ってましたと言わんばかりに唾液でべとべとになった指先を、ホーちゃんの股間にまた、まさぐらせる。
「ゃっ・・・」
必死に声を押し殺そうとするホーちゃん。俺はそんなホーちゃんにかまわず、さっき陥れた割れ目にまた指を這わす。
「ゃぁぁっ・・・」
触れただけでも可愛い声を出すホーちゃん。そこで俺は指を1本、そっと割れ目に挿れることにした。
「ふぁぁん!あぅぅぅっ・・・」
そっと柔らかい肉の谷に、指を這わせると、唾液で少しだけ湿ったホーちゃんの割れ目をなぞり、その穴を見つけた。
そして、その柔肉の谷間に、いじらしく1本、指を挿れていく。その指はゆっくりとホーちゃんの柔肉に呑み込まれていった。
「んっ・・・んぁぁ・・・あぁぁ・・・」
ホーちゃんはお構いなしに嬌声を出す。小さなくちばしからは少し、唾液がこぼれていた。瞳はうつろで、とっても淫らだ。
俺はホーちゃんの狭い秘肉を少しずつ掻き分けて、指を奥まで奥まで進ませていく。その一方で余った指でホーちゃんの割れ目をなぞったり、こすったりしていく。
「うにゃぁぁぁっ・・・うぁぁぁんっ!・・・」
割れ目をなぞっていた俺の指が、小さな突起に触れると、ホーちゃんはまた可愛く鳴いた。すっかり顔も真っ赤で、激しく乱れている。
「ここかな?」
「やぁぁぁ・・・やん!・・・いぁぁぁ・・・あぁんっ・・・」
その突起をいじらしく、なぞったり、優しく揉みほぐしていくと、膣にあった俺の指に、液体がまとわりつくように浸み出してきた。
そしてその液体のおかげで、スムーズに膣の柔肉を掻き分けていくことが出来るようになった。すっかりホーちゃんは女の子でしか出ないような声をあげるようになっていた。
「あふぅっ・・・やぁぁっ!」
ホーちゃんはさっきの俺のセリフを覚えているのか、何としても声を出すまいとしているが、はっきり言えばドア傍に立ってても聞こえるくらい、結構声が出てる。
膣からあふれ出る、まさしく蜜は、俺が膣と、割れ目の突起をぐにぐに触れたり、ちゅぷちゅぷと淫らに前後に刺激したりするとますます、その量を増やし、俺の指を、そして俺を、虜にしていった。
事実、もう俺のモノもパンパンに膨れ上がっている。これはホーちゃんを見て興奮しているまぎれもない証だ。
「あっぁっぁぁっ・・・あうぅっ・・・」
指先に絡みついていた蜜はだんだん収まりきらなくなったようで、俺の指の付け根まで、ホーちゃんの膣の外にまで、ポトポトとあふれ出てきた。
ホーちゃんはと言えば、もう限界が近いのか、瞑る目に力を入れて何かに耐えるように身体をぴくぴく震わせている。
「うぁっ・・・あぅぅ・・・もぉ・・・だめぇっ・・・ふぁうぅっ・・・ああぁっ・・・ふぁぁっ・・・」
そして俺が割れ目の突起を摘まんだ、その瞬間だった。
「ふぁ・・・いやぁぁっ・・・ぅやぁぁっ!いあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!やぁぁぁぁぁぁ!・・・・やぁぁ・・・やぁぁ・・・いぁぁぁ・・・」
ホーちゃんはぴんと脚ごとつま先を伸ばすと、大きな嬌声をあげて、身体を何度もびくびくと痙攣させた。そしておしっこをしたように膣から温かい蜜をぷしゅぷしゅと放った。
トランクスもクォーターパンツもおもらしをしたような濃い色の染みを付けて、それでも収まらずにベッドのシーツに染みを付けていく。ホーちゃんは快楽の余韻からまだ抜け切れてないみたいで、ぶるぶると体を弱々しく震わせている。
どうやらホーちゃんはイったらしい・・・絶頂に達した、と言うのは何となくの知識で知っていたけれど・・・
「はぁぁ・・・あぁぁぁ・・・やぁぁぁ・・・あぁぁぁ・・・あぅぅぅ・・・」
ホーちゃんは何度も甘い声を漏らして、ぽたぽたと割れ目から愛液を溢れさせたまま、痙攣が終わるとがくっと、俺に身体をゆだねた。快楽が抜けきらないホーちゃんのその身体は、荒い呼吸で揺れていた。
俺の指が突っ込まれたままの膣も、ぴくぴくと痙攣をして、まだ蜜、愛液をとろとろと溢れださせていた。
「ホーちゃん・・・ごめん・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ん・・・」
俺の言葉は一応聞こえるみたいで、謝ると弱々しく首をぷいぷいと横に振った。ホーちゃんの蜜壺からゆっくりと指を引き抜いて、愛液のべっとりと付いた指を服でなぞるようにして拭くと、ホーちゃんをベッドに寝かせる。
「ふぅ・・・」
我に返った俺は、俺のジャージにもホーちゃんの愛液の染みが少し付いてるのに気付いた。そして気力なく横になってるホーちゃんの股間を見た。
「ホーちゃんのパンツ・・・びしょびしょにしちゃった・・・どうしよう・・・」
服を脱がせればよかった、と言ってももう後の祭り。おもらししたみたいにホーちゃんの股間の薄布はべっとりと濡れている。まぁいいや、と俺はホーちゃんを寝かせたベッドで一緒に横に寝転がった。
「んっ・・・」
ホーちゃんがまた甘えるような視線を送ってきたので、俺はホーちゃんを自分の翼の中で抱いた。
そして心地よい疲労感とともに、少し、眠ることにした。

「ぎあすっ・・・」
「ん・・・」
目を覚ますと、ホーちゃんが俺の翼の中で、俺を揺すっていた。
「晩御飯だって。」
「そっか・・・」
俺はホーちゃんごとガバッと身体を起こす。ホーちゃんはまだ疲れが取れないみたいで、うとうとと、している。話し方もどこか疲労を、滲ませていた。
窓から外を見ると、もうすっかり闇に包まれていた。電気を点けると、ホーちゃんがまぶしそうに顔を俺の胸に埋めた。
「ホーちゃん・・・パンツ変えた方がいいよ。」
「うん・・・」
ホーちゃんのパンツにはまだ、濃い色の濡れた染みが残っていた。
「ギアスっ・・・」
「ホーちゃん?」
何かを訴えるようなホーちゃんの視線。身体を起こそうとしているみたいだけれど、ホーちゃんは腰が抜けたみたいに俺の上に座ったまま、足腰がプルプル震えて動けていない。
「腰抜けた?」
「みたい。」
本当に腰が抜けたようだ。と言うより、生きてきて、腰が抜けたっていう表現を初めて使ったし、腰が抜けたポケモンを初めて見た。
がっくりと肩を落とすホーちゃん。俺が何度か頭を撫でてみても、イマイチ反応が良くない。
「うんしょと。」
とにかく俺はホーちゃんをベッドの上に置いて、俺が先に立ちあがった。
「そこにさ・・・パンツと短パンの替えがあるから・・・とって。」
「はいっ。」
ホーちゃんが動けないので、出来るだけ手伝うことに。俺は濃紺のクォーターパンツと赤のトランクスをかごから取ると、ホーちゃんに手渡す。
「着替え、出来る?」
「それくらいは・・・たぶん。」
そう言うとホーちゃんはいそいそと着替えを始めた。本当に座るのがやっとな感じのホーちゃんは、パンツを脱ぐのも穿くのも、コロコロ寝転がってしている。・・・かわいい。

「終わったよ。」
「立てそう?」
ホーちゃんはベッドで立とうとしてうんっ、と力を入れてみたけど、ぽてっ、とすぐに尻もちをついた。
「いたた・・・」
紅い瞳を潤ませて、ホーちゃんはちょっと泣きそうになってる。うああ・・・もうホーちゃん見てるだけでヤバいなぁ。可愛い。
「ほい、おんぶしてあげるから。」
すかさず傍によって腰を落とすと、ホーちゃんはゆっくり、俺の背中に乗ってくれた。
「ありがと・・・」
「何言ってんだよ。ホーちゃんがこうなったのは・・・俺のせいだし。」
謝る俺に、ぎゅ、とホーちゃんは強く抱いてくれた。ホーちゃんに触れているだけで、身も心も、とっても温かい。オレンジの毛並みが時折俺の首に触れて、気持ちのいいくすぐったさがある。
「ギアスは悪くないよっ。」
「ありがとなホーちゃん。」
俺はしっかりとホーちゃんを固定して、台所へ歩いていった。

「ぎーくん、ごは・・・ホウちゃんどしたの?」
母さんが出会うなりいきなり、ホーちゃんに声をかける。おぶられてるホーちゃんもおぶってる俺もまさか本当のことを言うわけにもいかないので、とてもしどろもどろになっている。
「ええとーこれはさっき足をひねったんだよね?」
「そ、そうそう。足ひねったの。」
疑惑の瞳を向ける母さんだけれど、ふーん、と納得はしてくれたみたいだ。
「ふぅ・・・」
「はぁ・・・」
母さんが去ると、俺もホーちゃんも安堵のため息をついた。
「あ、椅子に乗っけて。」
リビングに着くと、ホーちゃんが片方の翼で椅子を指して、そに座らせてほしいと言う。
「あ、あぁ。」
俺は慎重に移動すると、そっとホーちゃんを降ろした。ホーちゃんが無事に降りて、俺はほっと安堵する。
「ふぅ・・・」
「ご飯の用意は俺がするから、座ってて。」
「ありがと。」
にこっと笑うホーちゃん。俺もつられて微笑み、ホーちゃんの頭を撫でる。そしてそれから、台所から箸やら取り皿やらをせっせと運び、ホーちゃんが動けないことを出来るだけ悟らせないようにせっせと働く。

「いただきます。」
ご飯を前にして礼儀よく挨拶をするホーちゃん。
「ご飯おいしいね。」
「うまいな。」
ホーちゃんと俺とがご飯の最中仲良く喋っていると、母さんとおばさんもなにかほほ笑みながらおかずを突っついている。
「ホウ、明日お父さん帰ってくるから。家に居るのよ。」
「明日帰る予定だったんだけど・・・」
困惑しながら答えるホーちゃん。あれ?明日帰る?そうなんだっけ?俺は何も聞かずにくっついて帰ってきただけだから何もわからん。
「じゃ、明後日・・・は土曜日か、日曜に帰るって、学校に電話しとくね。」
「ありがとう。」
ホーちゃんはちょっと恥ずかしそうにおばさんにお礼を言った。
「ぎーくんも独りじゃ帰れないでしょ?」
突然話をフる母さん。
「あ、ああ。もちろん。」
「電話しとくから。」
「ありがとう。」
俺と母さんの会話を聞いて、ホーちゃんもおばさんもクスクス笑う。ちょっと時間がたってから、自分がかなり格好悪い、と言うことに気付いた。
「何だよー・・・恥ずかしいじゃん・・・」
恥ずかしい、と素直に白状すると母さんもクスクス笑い出した。

ご飯が終わると、また俺はホーちゃんをおんぶして、部屋に戻った。
「よいしょっと。」
「ありがとっ。」
ベッドにホーちゃんを降ろすと、ホーちゃんはまたぺたん、とシーツに尻もちをついた。
「大丈夫?」
「へーき。」
強がってるのか、平気だと言うけれど、俺の目から見て、どこがどう平気なのかわからん。
「うそつけ。」
ちょいっとホーちゃんの頬を突くとぷいぷいとホーちゃんは首を横に振った。
「大丈夫だって。」
「大丈夫だったら尻もちはつかない。」
強がるホーちゃんの言葉を打ち消すように言うと、ホーちゃんもがっくし、と肩を落とした。俺はベッドに腰掛けて、そっとホーちゃんの頭を撫でる。
「僕ってこんなに体力無かったかなぁ・・・今朝は全然普通だったのに・・・」
「俺が無茶したからだって。」
俺がそう言うけど、ホーちゃんはまた首を横に振った。
「昼・・・ちょうど逃げた後くらいから・・・ずっとこんな感じで・・・」
「俺の代わりに謝ってくれたから・・・そのせいだよ。」
ホーちゃんは悪くないのに、俺の代わりに謝ってくれた。本当なら、悪いのは俺で、俺が謝らないといけない。その罪悪感が、俺の心にふつふつと湧いて出てきた。
「ホーちゃんありがとな。」
俺はそう言って、ホーちゃんをそっと抱き寄せる。ホーちゃんも身体の力を抜いて、そのまま俺に寄り掛かってくれた。
温かいホーちゃんの身体・・・翼でホーちゃんを抱いていると、ホーちゃんが俺を見てる。
「んっ。」
その期待にこたえて、ホーちゃんの顔を覗きこむようにして、俺はホーちゃんとまた口づけを交わす。
ホーちゃんのエッチな姿を見るというさっきのこともあってか、だんだん身体が熱く疼くように、身体の芯から何か熱いものが、次第に込み上げてくるのを感じた。
そして・・・そっとまた翼でホーちゃんの身体を服の上から撫でていく。
「ねっ・・・」
「ん?」
ホーちゃんが俺から嘴を離すと、単純な好奇心を目に浮かべて、俺に聞いてきた。翼の撫でる動きを一度止める。
「エッチな本みたいなこと、するの?」
「したい。」
もう欲望を隠しきれない。ホーちゃんが好きだから、っていえば、なんだか薄い気がするけれど、ホーちゃんとずっといたいっていう思いは・・・濃い。
「素直でしょ?」
こんなこと聞くこともないと思うけど、ホーちゃんには可笑しかったみたいでクスクス笑ってる。
「素直・・・かなぁ。」
ホーちゃんは首をかしげて言う。なんだかおかしな会話だな、と思ったけれど、もう少しこの変な会話を続けることにした。
「俺のココはもう・・・いっぱいいっぱいです。」
「わぁ。」
俺はジャージの股間をつんつんと突っつくと、ぷるぷるっと俺のモノはジャージ越しに震えた。ホーちゃんはそんな俺のモノをジャージの上から見ると、ギュッと掴んだ。
「いでっ!なにすんだよ。」
「僕にしたこと、忘れた?」
無邪気な笑みを浮かべるホーちゃん。なんだかヤな予感がする。
「う?忘れてない。」
俺がそう切り返すと、ホーちゃんは俺のモノをむにむにと揉み始めた。
「やめっ!・・・だめだって・・・ほんっと。」
「止めない。」
ホーちゃんもしかして怒ってる?なんてことを考えているうちに俺のモノはどんどん大きくなって、敏感にぶるぶると震える。
「ちょ!ほんと!やぁめ!」
もともとホーちゃんのエッチな姿を見て興奮状態だった上に、こんなことされたら、たえられるわけがっ!
「うぁぁ・・・ちょ!やめてほぉちゃん!」
ぐにぐにと揉まれて、時に擦りつけられる動きをするホーちゃんの翼に、もうはちきれんばかりに、思考もモノも熱く、燃えたぎる。
「だめだっ・・・もぅ・・・でるっ・・・」
途端に視界が真っ白になった。そして身体がびくびくと震えて・・・
「うぁぁぁ・・・あぁぁ・・・」
モノからどくどくと、精液が放出されたのが、わかった。射精した瞬間にそのままジャージに染みが付いたから。
「あぁぁ・・・ほーちゃんなにすんだよ・・・」
「これでおあいこ。」
おあいこ・・・まあ、そうかな?納得は、出来ないけどさ。ホーちゃんはしてやった、みたいな笑みを浮かべてる。
「うあー・・・チンチンつめたいじゃんか。」
「後でお風呂入ろっか?」
苦情を訴える俺に、ホーちゃんはにこっと笑って言う。お風呂か・・・そうだな。風呂入るしか・・・無いな。
「お母さんたちが寝るのを待とうね。」
「そだな・・・バレたら、やだし。」
俺はジャージに染みをつけたまま、ホーちゃんの部屋を出て、きょろきょろとあちこちを窺う。まだ動けないホーちゃんはベッドに座ったままだ。
聞き耳を立てると、ざぶざぶとお風呂から音が聞こえてくる。

「さっきさ、おあいこって言ったじゃんか。」
ホーちゃんの傍に腰掛けると、俺は気になっていたことをホーちゃんに言う。その問いに、ホーちゃんは俯く。
「うん・・・」
「そんなにパンツに漏らすの、ヤだった?」
「うん。」
ホーちゃんはこくり、と頷いた。
「なんで?」
「おしっこ漏らしたみたいで恥ずかしいじゃん。」
恥ずかしそうに言うホーちゃんだけど、まぁ、そりゃそうだよな。事実ホーちゃんがまだ洗濯にも出せないクォーターパンツとトランクスには、まだうっすらとおもらししたみたいな蜜の染みが残ってるし。
「そっか。俺も今、気持ちが悪い。」
なんていうか、下着が毛並みと肌に触れるたびに、冷たいのが当たって、なんとも鬱陶しい。さっさと脱いでしまいたい。
「ホーちゃん・・・エッチなことしたい。」
「どうぞどうぞ。」
ありゃ?断らない。怒ると思ったのに。
「怒らないの?」
「うん。ギアスが僕のこと好きなら、怒るわけないじゃん。」
にこっと、ホーちゃんは笑む。俺はホーちゃんへの気持ちが抑えられなくなった。
「ほーちゃん・・・」
ぎゅっとホーちゃんを抱いて、どたっとベッドに押し倒した。そしてまたキスをしようとホーちゃんの顔に、俺は顔を近づけ・・・

「ぎーくん、ホウちゃん、お風呂どうぞ。もうあんたたちだけだから。」
と思ったら、母さんがすぐ近く、おそらく部屋の扉のすぐそば出だろう、声をかけた。ひょっとしたらエッチのセリフのくだりは聞かれていたかもしれない。そう考えると・・・めちゃくちゃ恥ずかしい。
「はぁい、おばさんありがと。」
でもホーちゃんは、仰向けのままだけど、母さんに返事をした。母さんは早くお風呂に入りなさいよ、と言うと、鼻歌を歌って、部屋から離れていった。
「風呂・・・一緒に入るか。」
「うん。」
ホーちゃんはおれの提案ににこっと笑んで頷く。そしてホーちゃんをおんぶして、着替えとホーちゃんの愛液の付いたパンツを取ると、風呂場にトコトコと歩いていった。

「さ、身体洗うぞ。」
風呂場に一糸まとわぬ姿で居る、俺とホーちゃん。座ってるホーちゃんは恥ずかしいのか、自分の翼で前を隠している。けど、俺はまたビンビンに勃ったモノをホーちゃんの前に惜しげもなく晒している。
「シャワーかけるね。」
「うん。」
シャワーの温度を手で確かめると、ホーちゃんに少しずつ浴びせていく。ホーちゃんの朱色と黄色、黄緑、そして白の毛並みは色濃く水に染まっていく。
「ほらー翼をどけろー。」
「やだ。」
一通りびしょ濡れにして、お腹にシャワーを浴びせようとしたけれど、下心を見抜かれたのか、ホーちゃんは拒否した。
「いいじゃんかー。」
「もぉヤなんだって。」
「そんなこと言うとー・・・」
そして俺はホーちゃんを押し倒した。仰向けにされたホーちゃんは翼をお腹から退けてくれて、俺はシャワーを浴びせる。
「うにゃぁ・・・そこダメだよぉ・・・」
もちろん、股間にしつこくシャワーを浴びせる。逃げたいホーちゃんなんだろうけど、まだ立つことがままならないみたいで足をぱたぱた動かすのがやっとだ。つまり俺のなすがままだ。
「んーそうか?」
俺はシャワーを浴びせるのを一度辞めると、ホーちゃんの上に重なって強引にキスをする。
「んっ!ん・・・」
お互いにいいように、俺はまたシャワーを少しずつホーちゃんに浴びせて、そして自分にも、自分のモノにも清潔にするようにシャワーを浴びせる。
シャワーから出てくるお湯は俺の毛並みを通ると、そのままホーちゃんの毛並みを通して、床に溢れていく。

俺に比べて小さいホーちゃんは、俺が覆いかぶさると、まず抵抗はかなわない。ま、本気で怒ったら急所へ100%の命中率を誇るホーちゃんキックをかまされるんだけど。少なくとも俺はかまされたことはない。
なんでかって聞くと、俺が優しいから本気で喧嘩できないんだってホーちゃんは言った。それだけでもありがたい話なんだけど、今みたいな状況でもホーちゃんは俺の優しさを信じてるのかな。
「あうぅぅ・・・」
仰向けのままのホーちゃん。俺は侵略するのにちょうどいいサイズのホーちゃんの身体をゆっくりと蹂躙していく。
俺がホーちゃんの割れ目をなぞるたび、可愛く鳴くホーちゃん。ホーちゃんの割れ目は白い毛並みに覆われて、指でくぱぁと開くと、とっても綺麗なピンクを誇っている。
そっと俺は指をホーちゃんの割れ目の突起に触れてさせから、膣の中にそっと挿れていく。
「あぁぁっ・・・やぁぁぁ・・・あううっ・・・」
散々愛撫したせいか、ホーちゃんのナカの柔肉は愛液でとろとろで、俺の指を呑み込む。
「あっあっあっあっあぅ・・・あああっ・・・やめぇ・・・」
ちゅぷちゅぷとピストンをすると、ホーちゃんは可愛く鳴いてそのたびに身体をぴくぴく震わせる。
最初シャワーで濡れていただけのホーちゃんの割れ目は、いつしかホーちゃん自身の愛液で濡れていった。
「イっちゃえよ。」
「やだっ。」
快楽との葛藤がまだホーちゃんには残されてるみたいだ。そんなホーちゃんに俺はまたちゅぷちゅぷと愛液にあふれる膣で指をピストンさせる。
「あうぅぅぅっ・・・やだぁ・・・はんっ!」
びくっとホーちゃんは一度身体を大きく震えさせると、ぷちゅっと膣から愛液が少し、飛び出た。
「身体はしょうじきだろー。」
なんか変なシチュエーションになってきたな。俺は一度止めたシャワーのつまみを回して、ホーちゃんの嬌声ともちろん俺の変な声が外に聞こえないようにした。
「やだよぉ・・・はぁんっ!」
ホーちゃんは散々いやだいやだ言いながら、俺がぐにぐに割れ目のいやらしい突起に触れると、これでもかと言わんばかりに悦ぶ。
指のピストンをだんだん俺が速めていくと、ホーちゃんも身体に力を入れて、快楽に飛ばされないように耐えている。
「あぅぅぅ・・・あぁぁぁん・・・やぁぁぁ・・・」
もう完全に抑制が効かないみたいで、ホーちゃんは翼で俺の身体を掴んできた。ホーちゃんの瞳は、もはや快楽におぼれて、俺をはっきりとは見ていない。
シャワーの音でも消せそうにない、じゅぷじゅぷと淫猥な音が風呂場に、俺の脳裏に響く。
「ホーちゃんの身体、エッチいなぁ・・・」
そう呟きながらも俺は膣を侵略する指の動きを止めない。柔肉は愛液で溢れ、割れ目から滴り落ちてくる。
「はぅぅぅん・・・あぅぅ・・・やぁっ・・・あぁぁぁぁっ・・・」
俺が興奮とともにピストン運動を最高潮にした時だった。ホーちゃんが突然身体のこわばりをピン、と伸ばして嬌声をあげた。
「あぅぅっ・・・やぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!ひゃぁぁぁぁぁぁぁんっ!」
ホーちゃんはびくびくと身体を震わして、最初の時と同じように、ぷしゅぷしゅと愛液を割れ目から放って、可愛く鳴いた。
イったホーちゃんをそれでも俺は少しの間、ピストンし続けた。止めることが出来なかったからだ。指も翼も愛液に塗れて、俺はホーちゃんに快楽を与えられたことに、なんだか満足していた。
「あぅぅぅ・・・はぁぁぁぁ・・・はぁぁ・・・はぁぁ・・・」
快楽に散々弄ばれたホーちゃんは、がくがく身体を震わせた後、全てが尽きたようにばたり、と床に身体を打ちつけた。俺を掴んでいた翼も、力尽きて離れた。
「はぁぁ・・・あぁぁ・・・」
荒い呼吸をし続けるホーちゃん。
「ホーちゃん?」
「あぁぅ・・・」
よっぽど疲労も大きかったようだ。ホーちゃんはずっと虚ろな瞳で俺を見ている。と、同時に俺は少し股間の熱を抑えきれなくなっていた。
「もう寝る?」
ホーちゃんは弱く首を横に振った。俺も多分寝ることはできない。欲求を抑えきれない俺は、ホーちゃんに聞くことに。
「一緒に気持ち良くなろっか?」
俺のそのセリフに、ホーちゃんは何のリアクションも示さなかった。多分意味を理解できるだけの余力が残っていないんだろう。
言葉の端々をはしょればいいか、と言い方を俺は変えることにした。
「一緒ならいい?」
いっしょ、の意味をホーちゃんは理解したのか、少し悩んで、うん、と首を縦に振った。
「じゃあ、俺の・・・入れていい?」
「・・・うん。」
俺はビンビンにカタくなったモノをホーちゃんに見せる。ホーちゃんは少し、怯えている。少し閉じた白い毛並みのホーちゃんの脚を俺は翼でゆっくりと開かせると、力が入らないようだけどホーちゃんも俺の望むとおりにしてくれた。
さっとシャワーでモノを湿らせると、俺はホーちゃんの蜜壺を見据えて、じっくりと自分のモノを近づけていく。
「ぁぅん!」
モノでちょっと割れ目を擦っただけでも敏感なホーちゃんはぴくっと反応して、甘い声を出した。
「大丈夫だから。」
ホーちゃんを安堵させるように言うと、ホーちゃんも軽く頷いた。俺は膣口にじっくりと、自分のモノを宛がう。
「あぁぁっ!」
ず、と軽く挿れても、ホーちゃんは反応した。それでも俺はず、ず、とゆっくり、慎重にモノをホーちゃんの蜜壺に呑み込ませていく。
「あうぅぅ・・・はぅぅ・・・」
濡れているとはいえ、ホーちゃんの柔肉はとってもきつい。ちょっとずつ腰を進めても、なかなか俺にフィットしてくれない。
「いた!いたぃ!」
突然ホーちゃんが痛みを訴えた。俺は注送を一度止めて、ホーちゃんの苦悶を訴える表情をじっと見つめる。
「だいじょうぶ?」
「だいじょぅぶ・・・」
大丈夫、とか言われても弱々しくて、どこが大丈夫なのかわからない。その間にもホーちゃんの膣の柔肉は俺のモノを刺激し続ける。
「つよがらなくていいよ?」
「だいじょぶだもん・・・」
俺が股間に目をやると、少し、温かい血が浸み出していた。ちょっとさすがにやめた方がいいんじゃないかと俺は思った。けどホーちゃんは拒む。
「痛いならやめるけど・・・」
「だいじょぉぶだもん・・・」
なんでそこまで強がるのかわからないけど、ホーちゃんは瞳から涙をあふれさせて俺に止めないようにせがむ。
「続ける?」
「うん・・・」
ホーちゃんの体の負担のことを思えば、やめた方がいいのかもしれないけど、ホーちゃんの心のことを思えば、ヤったほうがいいのかもしれない。
続ける決断を、俺はした。
「じゃ、続けるね。」
こく、と力なく頷くホーちゃん。俺は3分の1くらいがホーちゃんの膣に呑み込まれているモノを、腰を動かして再びゆっくりと送りこんでいく。
モノからはじゅ、じゅ、と温かい柔肉と愛液との摩擦をとてもよく感じる。
「あぅぅぅっ・・・あぁぁっ・・・」
俺は片方の手でホーちゃんの腰を掴んで、もう片方の手で、ホーちゃんの頭を優しく撫でる。そしてホーちゃんに倒れこむように、またゆっくり覆いかぶさっていく。
ずっ、ずっ、とホーちゃんを傷つけないように挿れ、半分くらい俺のモノの感覚が柔肉と愛液に塗れたところでホーちゃんの表情を見ると、うるうると瞳を潤ませて、虚ろなんだけどその瞳はじっと俺を捉えてた。
「痛い?」
「ぃたくなぃ・・・」
山なりな声だ。ちょっと痛そうだ。強がっててもホーちゃん可愛いな。
「じゃ、続けるから。」
「うん。」
また、ず、ず、と進めていくと、ゆっくりだけれど、いつしか膣が、俺のモノを受け入れたようにそれまでのキツい感触から気持ちいい感覚へと変わっていった。
「うにゃ?」
「っ!・・・」
ちょっと何か足りないな、という感覚に気付いてみれば。すっぽりと俺のモノがホーちゃんのなかに呑み込まれた。ちょうどその時、ホーちゃんの身体がぴくっと震えた。
「だいじょぶ?」
「はぁ・・・はぁ・・・うん・・・おくに・・・きたみたい・・・」
さらっとエロいこというなぁ、ホーちゃんは。ちょっと圧迫感を感じているのか、ホーちゃんは呼吸を荒くして、俺とホーちゃんの繋がりを見ている。そっと俺は腰を動かして、みた。
「あぁぁぅ・・・」
ちょっとモノをずらしてみても、ホーちゃんは嬌声をあげた。ホーちゃんを見てみると、声を何とか抑えようとして可愛く喘いでる。
「動かして・・・いい?」
「・・・ぅん。」
瞳は相変わらず虚ろだけれど、ホーちゃんは動作で恥じらいを隠そうとしている。俺はそっと腰を引いて、また突くように腰を深く入れる。
「はぁぅぅぅ・・・ぁぁぁぅ・・・」
動作が緩慢なせいか、ホーちゃんの感じ具合も鈍い。ホーちゃんのことを心配して遅くしてたんだけど、その心配もいらないか、と自分のペースでホーちゃんを突いていくことにした。
じゅぷっ、じゅぷっ・・・最初はホーちゃんの様子を確かめるようにゆっくり、モノを柔肉に出し入れする。
「はぅぅ・・・あぁぁぁぁっ・・・」
ホーちゃんの柔肉はとても温かく、優しく、俺に絡みついてくる。気持ちよくなりたくて、俺の腰のピストンは次第にスピードをあげる。
「あっ、あぁっ、はぁぁっ、はぁぁっ・・・」
俺が腰を深く入れてホーちゃんを突くたび、ホーちゃんは可愛い声を出して鳴く。恥ずかしいのか片方の翼でその可愛い目を隠したホーちゃん。じゅぷじゅぷと淫猥な音と、ホーちゃんの可愛い嬌声とが、俺の頭の中に響いて、もっとホーちゃんを欲する。
「あぁぁっ!あぅぅぅぅっ・・・うにゃぁぁぁっ・・・」
次第に俺も快楽を求めるようになって、がしがしと激しく腰をホーちゃんに打ち付ける。ホーちゃんも激しく揺らされて、泣きながら身を快楽によがらせてる。ホーちゃんの瞳を隠していた翼を俺はそっと退けた。
「あぁんっ、ぁぁっ、あぅぅっ・・・」
ホーちゃんは喘ぎ、快楽に耐えながら、俺を見つめている。その物欲しそうな視線に応えて俺はそっとホーちゃんの翼を掴む。するとホーちゃんの口元がちょっとほころぶ。
ごしごしと腰を擦るように俺のモノをホーちゃんのナカから出し入れすれば、愛液が一緒にあふれ出る。ホーちゃんの膣の絡みつきも、俺に快楽を催す。
割れ目はじゅくじゅくと愛液が俺のモノとの摩擦で泡立ち、ホーちゃんの濡れた毛並みをいやらしく飾っている。
「ひゃぁぁっ、やぁぁぁっ!」
俺も気持ち良くなって、身体の中から熱い射精感がどんどん込み上げてくる。ピストン運動を早くすれば早くするほどに気持ち良く、俺も、激しく喘ぐホーちゃんも高みに昇っていく。
激しくホーちゃんを突くと、ホーちゃんは風呂場の濡れた床を、嬌声をあげて頭の方に身体を引きずり、勢いよく引けば、ホーちゃんは感じたままを声に出してまた俺のいる方に引きずられる。
「っ、ほーちゃっ・・・」
「あぁっ、あぁぁっ・・・なっ、なに?ふぁぁん!」
「も、もうさ、限界が・・・ちか・・・」
「ぼ、ぼくも・・・あぁぁ・・・もぉ・・・いっちゃいそぉ・・・」
涎をはしたなく垂らして、いっちゃいそう、と俺に言うホーちゃん。淫らな言葉に反応したいところだけど、俺もぐちゅぐちゅとかき乱す音に、思考を焼かれて、もう何も・・・考えられない。
ホーちゃんはいつになく顔を紅潮させて、瞳を潤ませて快楽に溺れている。
ピストン運動を続けていると、だんだん頭の中の熱いのが・・・もっと快楽を求めてホーちゃんを攻め立てる。
俺のモノに絡みつく愛液と膣壁とが更に絡みついてきて、俺に射精を促してくる。もぅ・・・だめだ・・・俺はとっさにぎゅ、とホーちゃんの翼を掴む翼に力を入れた。
「うぁぁっ・・・あぁぁぁぁっ!あぁぁぁぁ・・・あぁぁ・・・」
「ひあっ・・・はぁぁんっ!いあぁぁぁぁぁぁっ!ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!ぁぁぁっ!やぁぁぁぁっ・・・・」
絶頂を迎えた俺は耐えられず、絡みついてくるホーちゃんの膣に白濁を放った。ホーちゃんも同時に達したらしく、限界に近い嬌声をあげて何度もびくびくと震えてる・・・でも、膣だけは俺の精子を逃すまいと痙攣して、俺を捉えてくる。
俺のモノがどくどくと震えて、ホーちゃんの中に温かい精液を送り込んでいく。でも俺はなかなかピストン運動を止められず、精子をホーちゃんに吐き出しながらぐいぐいと何度も腰をピストンさせる。
ホーちゃんはすっかり体力を快楽に奪われたみたいで、俺がピストンの余韻でホーちゃんをぐいぐい突きあげているとあぁぁ、と甘い声を出して俺のなすがままに揺られてた。
「あぅ・・・はぁ、はぁ、はぁ、ぎあすの・・・あったかいよぉ・・・」
まだ快楽が続いているらしいホーちゃんは、潤んだ瞳をとろんとさせて俺が放った白濁を感じている。俺はゆっくりとピストンをやめて、満たすように最後の一滴までホーちゃんの中に送り込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、ほぉちゃん・・・」
ホーちゃんに言われて、自分が何をしてるのか、ようやく冷静に考えることが出来た。でも、いまさら何もできない。まだ俺のちんちんはホーちゃんのまんまんに挿されたままだ。
俺は触れたままのホーちゃんの翼に愛おしく頬ずりをした。
「抜いていい?」
「・・・うん。」
まだ赤らんだ頬を見せるホーちゃん。俺はそっとモノをホーちゃんの割れ目から引き抜いた。
じゅぷ・・・と淫猥な音を立てて抜いてみれば、ホーちゃんのぴくぴくとかすかに震えるの割れ目には俺のモノの形がついていた。そして収まりきらなかった俺の白濁がホーちゃんの血と混じってピンクになり、どろどろと溢れて、ホーちゃんの白の毛並みの股間を汚していく。
「いっぱいでてるな・・・」
「なにがぁ?」
俺の精子が溢れていることを言おうかと思ったけれど、ホーちゃんはもう限界そうなのでやめておこう。ホーちゃんはもう身体を動かす力もないみたいで、ただ虚ろな瞳で俺の動きをじっと見ている。
可愛いホーちゃんの黄色いくちばしからは膣の精液と同じようにとめどなく涎が溢れていた。
「ホーちゃん?」
「・・・なぁに?」
いまいち反応がよろしくないホーちゃん。声をかけても、なんだか眠たそうな感じだ。
「身体・・・洗おうか?」
「・・・むりっぽい。」
「だよな。」
俺はホーちゃんを翼で抱いて、お互い向かい合わせで横向きになるように、ごろんと床に寝転がった。
「にぇむいよぉ・・・」
ホーちゃんが女の子の可愛い声で甘えるような声を出してきた。俺もいやらしい姿にしてしまったホーちゃんのオレンジの毛並みの額にそっとキスをしてあげた。
「んー・・・じゃあ俺が抱いてあげる。」
「ぎぁす・・・だぃすき・・・」
眠たさをこらえて、ホーちゃんが告白しているのは、口調から明らかだ。
「おれも・・・ホーちゃんのこと大好きだ。」
「ぎぁ・・・」
何かセリフの途中ですやすやとホーちゃんは寝てしまった。最後まで言えよ!とか突っ込みたくなったけれど、そこは野暮な気がしたので、ホーちゃんと一緒にしばらく眠ることに・・・なった。

「ん・・・」
気が付くと、外はまだ暗いままみたいで、風呂場だけ、電灯が付いているようだ。ホーちゃんは瞳だけを開けてぽけーっとしている。
「ホーちゃん?」
「ぁ・・・ぉきた?」
俺が起きたのに気付くと、まだ虚ろな瞳を俺に向ける。でもその表情はやさしく、ほほ笑んでいる。
「うん。身体洗おうか。」
「うにゅ。」
俺が身体を起こすと、出っぱなしになっていたシャワーの温度を確かめて、そっとホーちゃんに浴びせていく。
「うにゃー・・・」
シャワーを浴びせられる感覚がくすぐったいらしいけど、疲労のせいかホーちゃんは鈍く身体を震わせている。
「ねむいかー?」
「うにゅ。」
「そっか。」
ホーちゃんの姿が愛おしくて、クスクスと笑いながら濡らせて、翼、身体、とシャンプーをつけていく。
「身体起こすよ。」
「ふにゅ。」
微妙にバリエーションつけるなって。ホーちゃんの身体を起こしてごしゅごしゅと泡を立てていると、ホーちゃんは俺に身体を預けてきた。
「体力の限界かー?」
「たぅん。」
ホーちゃんの体力的な負荷を考えると、俺も反省しないとなぁ。今のホーちゃんはいつものきりっとした動きがなくて、まるで人形みたい。
ぺちっ!あいた。ホーちゃんに叩かれた。叩かれた、って言ってもただ上から下ろしただけ、みたいに威力のないビンタだったけど。
「ごめん、なんかした?」
「なんのまえぶれもなくぅ・・・だいじなところをごしごししないでよぉ・・・」
「あ。」
何も考えずに俺はホーちゃんの割れ目の周辺をごしごしと擦っていた。
「ごめんごめん。洗っていい?」
「うにゅ。」
そっとまだ白濁の残るホーちゃんの割れ目をそっと指で綺麗にしていく。そっと指で白濁をこそぎ落とそうと、秘肉にふれるたび、ホーちゃんは反応していた。
「ふにゃぁ・・・やめてよぉ・・・」
「ごめん。」
今のホーちゃんのダメダメっぷりを見ると、本当に体力がなくなったんだなぁというのがわかる。

その後俺はホーちゃんを綺麗にし、そして俺も身体を綺麗に洗うと、服を着ることも忘れてホーちゃんをおんぶして、ホーちゃんのベッドに仲良くふたり、転がった。
「おやすみほーちゃんっ。」
「ぎあす・・・おやすみ、すひだよぉ・・・」
まだ言葉もちゃんと喋れてないホーちゃん。でも俺はホーちゃんを深く抱きしめると、ホーちゃんはにこっと笑って、眠りに落ちていった。
俺はさっき寝たからそんなに眠くはなかったけど、ホーちゃんの笑顔を見ているうちに、なんともいとおしい気持ちと、一緒に眠りたいという気持ちが湧きでて、あっという間に眠くなった。

その夜俺は夢を見た。
幼いルギアとホウオウの幼馴染が成長して、親友になったところで終わるっていう・・・なんとも後味の悪い夢。

「ぎあすっ・・・」
ん?
「ぎあすっ・・・あさだよぉ。」
ホーちゃん?
俺がうっすらと瞳を開くと、ホーちゃんはなにも着てなくて、ただ俺を覗いていた。
「うぁ・・・ホーちゃん?」
「おはよぉ。」
ホーちゃんも今起きたばっかりみたいで、オレンジの綺麗な毛並みを誇る翼で眠たそうに瞳を擦っている。
「服は?」
「昨日着ないで寝たじゃんか。」
「あ。」
脳裏に昨日のことがフラッシュバックする。そして俺も何も着てないことも、思い出した。
「あー・・・服着ようか。」
「うん。」
そしてホーちゃんはまた昨日と同じようにうんしょ、と身体を起こそうとしてぺたん、と尻もちをついた。
「まだ腰が抜けたままなの?」
「昨日・・・あんなことしなかったら・・・抜けてないはずだけどなぁ。」
チクリと痛いセリフを言うホーちゃん。
「あ、いやそのー。」
「ギアスのこと、好きだからいっか。」
弁解を俺がする前にぼそっと呟くホーちゃん。俺は顔が熱くなったのを感じた。ホーちゃんも顔を真っ赤にして俯いてる。
「・・・」
「・・・」
お互い照れて会話が止まった。

会話が再び始まったのは、服を着終えてからだった。
「ほい。」
また屈んで背中を差し出すと、ホーちゃんはひょいっと乗ってくれた。
「ありがと。」
「ホーちゃんのこと好きだから、やって当然だよ。」
むふふ、と笑うと、ホーちゃんもくすくす笑ってる。
「母さんに、俺たちのこと、言おうか?」
「そうだね・・・」
もう幼馴染としてふたり仲良く行動するのにも限界があるな、と思った俺たちは、母さんたちに自分たちの関係を言うことにした。
「あ、おはようぎーくん、ホウちゃん。」
居間に行くと、母さんがおばさんと仲良く朝ごはんの準備をしていた。
「母さんもいい加減、家に帰ったら?・・・いででででで・・・」
「余計なこと言わなくてよろしい。」
苦言を呈すと、母さんは俺の頬を思いっきりつねった。
「あのさ母さん・・・」
「なによ?」
「あの~・・・お母さん?」
「どしたのホウ?」
俺たちはお互いの気持ちを素直に母さんとおばさんに言った。
ホーちゃんは俺のことを好きって言ってくれて、俺はホーちゃんのことが好きで結婚したい、とまで言った。
おばさんも母さんも困惑してた。
「いいわ、でもね、ホウちゃんと結婚しようと思ったら、この神社を継がないといけないんだよ?めんどくさがりのぎーくんに出来るの?」
神社を・・継ぐ?母さんは意外なことを言い出した。母さんとしては結婚してもいい、けど相応の覚悟が必要だと求めてきた。
「ウチはホウだけのひとりっこだから、ホウのことが好きだってなったら、それを考えないといけないのよ。」
「そうなの?ホーちゃん。」
「みたい。」
ホーちゃんは俺が答えを出すことを躊躇するんじゃないか、って怯えた瞳を俺に向けてる。ホーちゃんを守る・・・そうホーちゃんに言ったんだ・・・約束は守る。
「わかった。で、どうしたらいいの?」
そう言うと、母さんもおばさんも途端ニコニコし始めて、期待してた、とまでいい始めた。
「で、神社を継ぐにはちゃんと大学の神学部を卒業しないといけないからね。」
「へ?」
大学って・・・まだまだ先だなぁ。
「それが出来たらホウちゃんと結婚してもいいよ。」
「ホーちゃん、俺、頑張る。」
「がんばって。僕も大学目指してるから。」
ホーちゃんは笑顔で俺に言う。後継ぎになる気マンマンだな。ま、俺もホーちゃんのこと好きだからホーちゃん以上に頑張らないといけないんだけどさ。
「あとはお父さんの了承を得てね?」
「は、はい。」
おばさんと母さんはそう言うと、朝ごはんの準備の続きを始めた。話は10分ほどだったんだけど、それ以上に長かったように感じた。

ホーちゃんはまだ腰が抜けたままで、朝ご飯が終わると、俺がおんぶして和室に運ぶとごろっと寝転がってた。座ってると脚が震えるんだってさ。

ホーちゃんのお父さんは、それからしばらくして帰ってきた。

俺は今度は、独りでさっきおばさんにした話をしなければならなかった。
居間で俺とホーちゃんのお父さん、ディアルガなんだけど、テーブルをはさんでじっと向かい合っている。
「で、ギアス君、話って言うのは?」
「ほっ・・・ホーちゃんと結婚させてください!」
俺がそう言うと、ホーちゃんのお父さんは少しぽかーんとしていた。そしてずっと何もしゃべらない時間が続いた。
その間ずっと、俺は何か悪いことをしてしまったんではないか、という思いに駆られていた。怒られるんじゃないかとも。
「結婚ねぇ。」
無言の間を破るホーちゃんのお父さんの一言。
「まだ・・・一生は長いし・・・今決めなくても・・・」
「いえ・・・俺はホーちゃんが好きなんです。・・・守りたいんです。」
ホーちゃんのお父さんは俺の反応に、おぉとテーブルに身を乗り出した。
「そうか・・・ウチの神社・・・継いでくれる?もうホウ以外に継いでくれる仔が居なくて。」
「は、はぃ、それはさっき母さんから言われました。」
ホーちゃんのお父さんはそれでも硬い表情を崩さない。
「君はいろいろ苦労すると思うよ。あのパルキア・・・君が急所に当てた仔、あの仔は多分ホウとはどのみち結婚できなかったと思う。」
「へ?」
結婚できない?なぜ?と、疑問が湧いたところだけど、ホーちゃんのお父さんは話を続ける。
「神官がこんなこと言うのも・・・アレなんだけど・・・私は神通力とか、そう言うたぐいの力を信じてなかった。ホウが生まれるまでは。」
「神通力・・・」
「そんな力はとうに失われたと思っていたからね。けれど・・・あの仔を初めてこの手で抱いた時、なぜかその力がホウにあると・・・確信してしまった。」
ホーちゃんのお父さんの話の風呂敷の広げっぷりがすごすぎて話に付いていけない。
「ギアス君はずっとホウと居るけど、不思議な出来事に遭遇したことないかな?」
「不思議な・・・出来事・・・」
ふと、昨日、逃げる時に巫女さんたちが熱いと言いながら倒れた出来事を思い出した。
「はい・・・たしかに昨日。」
「だろうね。あの仔は・・・自分の意思ではコントロールできない、何かの力を持ってるんだ。だから危険を感じたときにだけ・・・」
「なるほど・・・」
たしかにホーちゃんのお父さんの話には合点が行くところが多い。
「それでも・・・ホウのこと、好きなのかい?」
「はい。」
「そうか・・・なら、きちんと、ホウのこと、よろしく。」
そう言うと、俺もよろしくお願いします、と返した。そして話を終えて、ホーちゃんのところに行った。

「ホーちゃん?」
ホーちゃんは和室で座布団に腰をおろして、脚を伸ばすと、お茶を飲んでいた。
「ここまで回復したよ?」
嬉しそうに笑むホーちゃん。俺がホーちゃんの頭を撫でると、ホーちゃんはぺたっと身体を俺に添わせる。
「ういー。ホーちゃん物足りないの?」
エロい目つきでホーちゃんを見ると、何か嫌だったのか、ホーちゃんは途端に否定するリアクションをした。
「あぁ!そういうのじゃないよぉ!」
すぐにホーちゃんは俺から身体を離すと翼で受け身をとる間もなくぺたん、と体のバランスを崩して畳に身体を打ち付けた。
「ホーちゃん!ごめんごめん・・・」
謝ってホーちゃんの身体を起こすのを支えると、そのまま同じ座布団に腰をおろして、ホーちゃんと寄り添う。
「ホーちゃん、これから・・・よろしくな。」
「うん・・・ギアスもよろしく。」
そして俺はホーちゃんの肩に翼を置いて、ホーちゃんの笑みをすぐ近くで見る。ずっとこの笑顔を見ていたいなぁ。

すぐに寮に戻る日がやってきた。

俺たちは行きと同じ列車に乗ったけれど、ずっと翼をつないでいた。
「そう言えばさホーちゃん。」
「なに?」
俺はふと湧いた疑問をホーちゃんにぶつけることにした。
「ホーちゃんってさ、学校では女子にモテてなかったけどさ、どうだったの?」
そう、俺が聞くと、ホーちゃんは苦笑いし始めた。
「ごめんギアス・・・実は僕・・・女の子だって、みんな知ってる。」
「えっ?」
「先生がさ、実害のないところから公表していけばいいっておすすめしてくれたから、そうしたの。」
「ということは・・・」
「知らないのは・・・ギアスとグレンとか・・・数人の男子だけじゃないかな?」
「うそ・・・」
「ほんと。」
なんだよそれー・・・実害のないところって・・・俺は害なのか?なんだか納得いかない。

寮に帰ると俺たちは、・・・俺だけ先生の手荒い歓迎を受けた。
テストをいきなりやらされて、その間ホーちゃんはずっと晩御飯の準備をしていてくれた。

ホーちゃんは、一人称を僕、から私に変えるって言って、そこから俺はホーちゃんが自分のことを僕って言うのを、聞かなくなった。
すると・・・なぜだか急にホーちゃんは女の子っぽく・・・いや、本当に女の子になった。

そして卒業式のあと、ホーちゃんはグレンに自分が♀だってカミングアウトした。
グレンは相当ヤバイ話をしていたみたいで、紅い顔が真っ青になっていた。


・・・それからまた、俺たちは実家の近くにある同じ高校へ進み、また同じクラスになれた。

ホーちゃんはよかったけど・・・俺はよくない。

「ホーちゃんホーちゃん!遊びに行こうよぉ!」
「えーっ・・・ギアスと遊ぶんだけど・・・」
「そんなのいいじゃん。ボクと遊びに行こうよ!」

ホーちゃんは料理もできるし、性格もいいし、女の子に大人気だ。
すぐに女の子の友達がたくさん出来て、ホーちゃんの周りをいつも取り囲んでいる。俺は・・・男友達・・・特に同じ高校に進んだグレンと相変わらず、つるんでいる。

でも、ホーちゃんはいつも俺のことを気にかけてくれる。だから俺も、ホーちゃんのことを一番大事にしてる。

学校からいつもの帰り道。けど俺とホーちゃんの間では前に比べて少し、変わったところがある。
俺は男子の制服を着て、ホーちゃんは女子の可愛い制服を着ているところだ。ホーちゃんはいつもパンツをはく癖しかないから、スカートは嫌だ、って言ってる。そういうところもホーちゃんの可愛いところなんだけどさ。
「ねぇぎあすっ!晩御飯何が食べたい?」
「ホーちゃんの作るものなら何でも、特にオムライスがうまい。」
「オムライスね。」
俺はホーちゃんに笑いかけると、ホーちゃんもいつもほほ笑んでくれる。
「ホーちゃん、キスしよ。」
「うんっ!」


いつもありがとな、ホーちゃん。


END


最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。
この作品は去年の12月から書き始めて、途中すっかり何も手に付かない状態になって、ようやく7月に入ってから再開、完結出来ました。
季節感も設定も全く守れてないところもあります。
書きたい話といえば、こういったコメディっぽい作品になってしまいます。

まだ製作中の話もありますので、バーンアウトしないようこれから頑張っていきたいと思います。



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Last-modified: 2011-08-01 (月) 00:00:00
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