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快楽という名の代償

/快楽という名の代償

※この作品には強姦表現や軽めの流血表現が含まれます。閲覧の際にはご注意ください







 夜の仄冷たい風が頬に当たる。しかし感じるのは荒い息遣いの湿った空気。
 虫たちの大合奏が耳に入る。しかし聞こえるのは一心不乱に獣欲を満たさんとする調。
 口は幾度となく濡れそぼり、身体は快楽の洗礼を受けて少しも動かせない。
「……いいわっ! ……んっ! この感じ……!」
 朧気ながら聞こえたのは、今まさに自分の雄を包み込んでいる雌の歌声だった。
 それ以外、何も思い出せない。





    快楽という名の代償  作者:ウルラ






 黄色い塗装の施された機械を手に持つ。いくつもの銀色の凹凸が、太陽の日を受けて鈍く光った。機械から伸びたコードを思い切り引っ張ると、全体を震わせながら唸り声を上げる。銀色の凹凸を、しゃんとして立っている大木に当てがう。そして、男は手にあるレバーを強く握る。
 チェーンソーの駆動音が、断末魔のように森の中に響いた。やがて、その叫びは何度も、何度も。森の中に悲痛な爪痕を残して、それは行われていた。
「ふう……。これくらいでいいですか?」
 額についた汗を拭いながら、自分が切ってきた木々を一通り見回して、後ろにいるがっちりした男に問いかける。その男は木の切り口などを手で触って確かめながら、周りの木の本数を数えていた。
「そんなもんだな。後は荷台に放り込むだけだ。入らなかったら半分にしても構わない」
「はい、分かりました」
 出された指示に軽く頷きながらそう返事をして、他の仲間と共に大木を持ち上げ、次々に荷台へと積んでいく。
 ふと眺めた森。切っているときはそうは感じなかったはずなのに、ポッカリと開いた一部分が寂しく思えてならなかった。
 しかしそうしないと人は暮らしていけない。
 建物を建てるのに木は必要不可欠なものであるし、紙だってそこから作らねばならない。
 そしてこの仕事を生業としている俺にとっても、木を切り倒すのは生きていくためだった。
「ん……?」
 不意に感じた鋭い眼光。それは間違いなく森の中から向けられていた、気がした。ほんの一瞬だけだったから、もしかしたら気のせいなのかもしれない。森のポケモンだとは思うが、正直言ってあまりいい雰囲気ではなかった。むしろ、ぞわりと、寒気すら感じた。
 森の中を凝視していると、肩に手が置かれる。驚いて後ろに振り向くと、仕事の仲間が不機嫌な顔をして運ぼうとしている大木を指差した。
「おい、カワハラ。何ぼーっとしてるんだ。運ぶの手伝え」
「ああ。すまん」
 謝ってから、大木を一生懸命に担ぎ上げている仲間の元へと急ぐ。しかしその間にも、森の中から来る奇妙な感覚はどうにも拭いきれない。
「なあ。この森って何か出るのか?」
 あまりにも不安で、ついに同僚に問い掛けてしまう。大木を担ぎ上げながらも器用にこちらを向いて、苦笑いを浮かべながらははっと笑った。
「なにお前。びびってんのか?」
「いや、ただ向こうに何か気配感じたから……」
 はぁ? とでもいいそうな怪訝な表情をして同僚もその森の中を覗き込むように見る。しかし当然のようになにも感じないわけで。ただ肩をすくめた。
「何も感じないが? 気のせいだったんじゃないか?」
「そうか……」
 そう言われてもやはり腑に落ちない。今は森の奥を見ても特にぞわりとしたものは感じないが、さきほどは言いようの無い寒気がしたのだ。誰かがこちらをじっと見ている……そんな感じの、恐怖感が。
「よっと!」
 がたん、とトラックの荷台に大木が重々しくのしあげられた。同僚はふぅ、と息を整えると、軍手を外しながらこちらを見た。
「お前、疲れてるんじゃないのか?」
「分かんね。……そろそろ休憩じゃないか?」
「やっとかー。たっく、社長の野郎、予算がないとかでゴーリキーを派遣してくれなかったからそのしわ寄せが俺たちに来やがる……」
 同僚はそう悪態をつきながら「休憩行ってきまーす」と他の仲間に告げて、掘っ建て小屋に向かった。
 確かに、ここ最近上がゴーリキーの派遣を断っているから、その分こちらが働かなくてはならない。重たいものはゴーリキーに任せきっていたのだから、本末転倒といえばそうなるが。しかし、元々人手も少ないので疲労はかなり溜まっているかもしれない。
「おめえもそろそろ休憩入れ」
「はい、分かりました」
 親方に一礼して、休憩所の方に向かって重い足を進めていく。後ろの森を気にかけながら。
 

 日はもうすっかり落ち、辺りは静寂に包まれていた。もうほとんどの仲間がトラックに大木を積み終えて、小屋の方に戻っていた。唯一、残ったのは自分だけ。親方は「後始末は任せる」と言って戻っていった。普通後始末は親方の仕事じゃないのかと、そう言いたかったが、口を滑らせばその後にどんな怒声が飛んでくるかは大体見当がつく。
「よっ……!」
 丁度最後の大木を積み上げると、額についた汗をタオルで拭き取った。やっと仕事が終わったという開放感と、この薄気味悪い森からさっさと離れられるという二つの幸福感からか、小屋に戻る足取りは早足になっていた。しかし、すぐに戻れるわけがなかった。いや、許されてはいなかった。
 ガツン、と。頭に強い衝撃が走り、星が散ったと思った瞬間、目の前が真っ暗になった。



「ん……」
 頭に走った鈍痛に揺さぶられ、重たい瞼をゆっくりと引き上げる。目の前に見えた満面の星空に、思わず見とれてしまうがそれと同時に我に返る。どうして外にいるのだと。あの後小屋に戻ったのではないのかと。そういえば小屋に戻る手前から記憶が飛んでいるような気がする。確か、頭に強い衝撃がきて、それで……。
「お、目が覚めたわね」
「ん? うわぁあ!」
 突然目の前に現れた一つの顔、それは人間のものではなく、ポケモンの物。やや縦に伸びた形をしていて、額には金色に輝く六角形の鱗が見て取れた。そこから左右に一つずつある赤い目が、こちらを見据えていた。この山の整地工事に入る前から注意を受けていた、山に生息するハブネーク。前にもここで何人かがこいつの犠牲になったと聞く。帰ってこなかったわけではないものの、酷く満身創痍の状態で帰ってきたらしい。とはいえ傷ついていたわけではなく、目立った外傷も無かったという。ただその襲われた人たちはみんな意識を回復させたときに揃ってこう言ったらしい。
『なにも覚えていない。唯一覚えているのはハブネークの姿だけ』と。
 それを思い出した瞬間、背筋が凍るように冷たくなっていくのを感じた。
「ん~? 逃げるつもり?」
 こちらの顔が強張ったのがハブネークにも伝わったのだろう。こちらの心情を読み取られた気がして、手がいそいそと逃げ道を探す。だが、手がない。いや、動かないのだ。
「無駄よ? 気絶した時点であなたの負け。もうあなたは私の手中。……って言っても、手は無いけどね」
 ふふふ、と。ハブネークは不敵に笑った。もう、頭の中には恐怖の二文字しかない。しかし、逃げたくても自分の体はハブネークにがっちりと巻きつかれている。もう自分に、成す術は無かった。
「あれ~? もう抵抗やめちゃうの?」
 くたっ、と身の力を緩めた自分を見て、ハブネークはつまらなそうに言った。しかし、顔は依然として楽しそうな表情をしている。これからどうするのかよりも、これから何をされるかを考え始めていた自分にとってそれは正に恐怖を助長させるものでしかない。時折ハブネークは自身の体をくねらせて、こちらの体を弄んでいるかのように動く。
「私の仲間の雄も、そんな風に情けなかったなぁ……。人間が森を侵略し始めてからこの森の雄はみんなどっかに行ったしね。雄に屈強な奴ってもういないのかも」
 突然ハブネークは誰に話すわけもなく、そう呟き始める。どうやら人間がこの森を開拓のために切り崩したがために、ポケモンのほとんどが姿を消した話をしているらしい。少なくともこちらではそう話されていた。だが、実際に逃げたのは雄のポケモンらしい。でも、なぜ雄だけ?
「ふふふ。何か不思議そうな顔をしてるわね。いいわ、説明してあげる。私たち雌はね、この森で育てた子供たちを見放すわけにはいかないの。わかる?」
 だから、雌だけが残った。でもそれでも疑問が残る。少しは残ったっていいんじゃないか。雄の中にも色々いるだろうし、みんながみんな逃げたってわけじゃ……。
「だからさ。みんな雌だけで頑張っていこうって決めたんだけどね。一つだけ問題があったの。そう……雄がいないっていう弊害がね」
「うあ……」
 ハブネークの体がぐにゃりと動いたと同時に、なにやら言い知れぬ感覚が全身を走った。痛みじゃない、けども一回は味わったことのある、痺れるような感覚。それを思い出すまでもなく、このハブネークが何をしたいのか分かった。しかしご丁寧に、ハブネークはこう言った。
「要するに、欲求不満ってわけ……ここから先は言わなくてもわかるよね?」
 妖艶さを帯びだした声に、体が更に強張るのを感じた。でも、いくら体を強張らせたところで、ハブネークが体を動かしただけでもモノに刺激が走り、全身がぶるりと震え上がる。そしていつの間にかその感覚に身を任せてしまうのだ。
「ふふふ……」
 そう笑みを浮かべながらこちらのモノを弄ぶ様はまさに小悪魔といっても差し支えないくらいだった。器用にぐにゃりぐにゃりとくねりうねる蛇の独特な体の感触が、快楽を流し込んで、更に次の行為へと誘う。負けじと必死にその感覚を押さえ込もうとしても、逆手に取られて呆気なく崩落していく。すりすりと擦れる音がする度に起こる浮遊感。必死に耐えていた最中に目の前に差し出されたのは、一つの割れ目。とろりと透明な液体が漏れ出すそこからは、たまにくちゅりと不快な音が聞こえる。
「あなたばっかり気持ちよくなってもねぇ……。ほら、舐めなさい」
 戸惑った。誰が好き好んでポケモンの、しかも蛇の陰部を舐めるというのだ。なるべくそこから顔を遠ざけるようにすると、彼女はやがて痺れを切らしたのか、ため息をついて顔を険しくする。
「いっつ……」
「ほら、早く舐めないと大事なお顔に大きな傷がつくわよ」
 元々だらしの無い顔に、手始めに、といった感じで傷をつけられる。それでも彼女の尾の先にある刃物は十分鋭利だ。生暖かい何かが頬を伝っているのが分かる。多分、自分の血だ。その事実に顔が青ざめていく。このまま彼女の“欲求”を断れば、この後どれだけ苦しめられるか分かったものじゃない。もうこの場で人間というプライドに拘る理由なんて無かった。すぐさま目の前の割れ目に口を宛がうと、舌先で中を擽った。舌の上に、なんともいえない奇妙な味が伝わってくる。
「ん……。いいわあ……」
 ポケモンでも何でも感じる部分は感じるらしい。なんてそんなことを考えている暇さえも無く、彼女はこちらのモノへの愛撫を一切止めなかった。だからこちらが舐めるのを止めたら低い声が聞こえてきたし、頬に冷たいものが突きつけられた。今更だが、自分はもう、彼女の手中に納まっているらしい。……手が無いから実質は体中……かもしれないが。確かこれは彼女自身も言っていた気がするが……。うまく頭が回らない。
「はあっ……ん、ぅ」
 彼女の喘ぎ声がどんどんと遠慮なく、大きなものへと変わっていく。それでもなお更にこちらを確実に攻め立ててくるのは、自分が初めてじゃないからだろう。多分。被害者が、何人も。
「……?」
 突然、今まで来ていた快楽の波が止まる。何事かと思って顔を上げてみると、ハブネークが次の準備のために体をくねらせている。次に来るであろう行為は予想していた。しかし、実際にそれをするとなると、かなりの抵抗があるのはいうまでもない。勿論それに逆らう術など、一切持ち合わせてはいない。ただ、されるがままだ。
「じゃあ、そろそろ本番に行こうか……こっちも我慢の限界だしね」
 顔の目の前にあった割れ目はいつの間にか真下に来ていた。そして今更ながらに気づく。自分の衣服やら何やらは、すべて剥がれていた事を。ゆっくりと割れ目が雄に宛がわれ、小さな水音が頭の中に響く。もう、抵抗など出来ない。いや、生物としての本能が、逃げることを拒んでいた。俺はもう、彼女の言うとおりなにもかもが手中に収まってしまっているのだ。
「ん……」
 そう思った途端、今まで我慢して声が出ないように抑えていた口から、微かに喘ぐ声が漏れ出る。それを聞いたハブネークは、にっと、口元を綻ばせた。
「やっと鳴いてくれるのね。やっぱり本番はこうでなくっちゃ」
「う、あ!」
 ずりゅ、といきなり彼女の膣内に納められてしまった自分の雄が、情けない力で暴れているのを感じる。脈動する膣で締め付けられたり揉まれたり弄られたりする雄からくる様々な刺激に、意識が朦朧とした。
「あ……うぐぁ」
「ん、はぁっ……」
 自分の口から出てきているとは思えない喘ぎ声も、だんだんと呂律が回ってこなくなる。ハブネークの方もそれは同じようで、気持ちよさに体をくねらせていた。その最中にも、こちらに顔を向けたと思えば突然半開きになった口の中に舌が擦り込まれる。細いわりには自由自在に動くその舌を使って、こちらの舌を撫でたり、裏側に回したり、更には舌に巻きつけられたりもした。彼女は、俺の上も下も、完全に掌握していた。
「んふぅ……どう? 凄く気持ちいいでしょ? 人間の女よりも巧い自信はあるわよ」
「うあ……んは……」
「答えすら出ないのね……嬉しい」
 こっちはそれどころじゃなかった。彼女自身、上下に動かなくても膣を動かすだけでこちらに刺激を与えられる。それは強烈なものではないものの、ゆっくり、じわじわとこちらを攻め立ててくる。それはまるで追い詰めた獲物の疲弊を待って食らうかのように。……その例えは、後に来た刺激によって現実になった。
「そろそろ締め、いくわよ……」
「……あがぁあ!」
 今までゆっくりと弄ばれた分、ゆっくりとこみ上げてきた感覚が一気に吸い寄せられたかのように自分の雄から飛び出る。柔らかい膣の中でびくびくと波打った雄の感覚に、頭がどうにかなりそうだった。彼女は未だに膣を動かして、こちらの雄が力尽きるまで貪った。
「うあ……」
「はい、おしまい」
 ちゅぽ、と奇妙な音を立てながら、彼女の中から情けない姿となった自分の雄が出てくる。やっと開放されたという感覚と強い疲弊感に、逃げられるにもかかわらずその場にぐったりとするほかなかった。彼女は自分の体についた精液を舐め取ると、ふふふとまた怪しげに笑った。
「だいぶ疲れてるみたいだけど、そんなんじゃこの後辛いかもね」
「……?」
 この後……? まさかこれで終わりじゃないのか? まだ何かするつもりなのか?
 疲れきった体に鞭を打って、何とか首を動かして彼女の見る方向に視線を送ると、そこには様々な種類のポケモンがいた。まさかあれ全部を相手しろとでもいうのか……。
 ……果たして俺は、生きてここから帰れるのだろうか。

 集団の中から、また新たなポケモンが出てくる。多分次の相手はこいつなのだろう。
 ベージュ色のすらりとした体つきに、額に光る赤い宝石のようなもの。それと同じ色をした赤い目が、こちらをじっと見ていた。確かこのポケモンはペルシアンと言ったような気がする。幼い頃はよくポケモンの種類などを覚えていたものだったが、今は仕事に明け暮れる日々。そんなことを覚えている暇など無かったから、ポケモンの種類を見ただけで瞬時に判断できなくなっている。それに加えてこの頭の中がからっぽになっている感覚。それの所為で上手く物事を考えられなくなってきていた。ふとハブネークは何かを思い出したような表情を浮かべて、ああ、と尾を振った。
「なんかあなたの動きがとろとろしてるなって思ったら私、尾であなたの顔切ったから、それで毒が回ったのね」
 毒……? そういえば頭の回転が悪くなっているのはその所為か。しかも全身の感覚が妙に敏感になってるような気がする。冷たい風が体をかすめただけでも肌がぴりぴりする感覚。さっきの行為の時はあまり気にかけなかった、というか気にかけられなかったが、どうやら毒の所為で性帯感まで敏感になってしまっているらしい。これはもう、諦めるしか……。
「今度はあたしが相手になってあげるよ」
 そう言ってペルシアンはとろりとした目でこちらに近づいてくる。隣にいるハブネークとは明らかに様子が違う。
「ああ~。気をつけてね。このペルシアン、私よりもご無沙汰だから」
 獲物を狩るときと同じように低い姿勢でこちらに肉薄してくる様を見て思わず手で後ずさろうとしたが、それはただの悪あがきでしかなかった。ペルシアンは俊敏な動きで背中の方に回りこむと、動けないように俺の首に彼女は首を絡めてきた。
「ほら~。逃げないでよ~。あたしを置いてどっかいったあの雄みたいにさ」
 耳元にそう言った後、ふぅっと息を吹きかけられる。体中がぞくりとした。彼女の口元がにやりと綻んだ。
「さあて、あたしとのお楽しみの時間といきましょうか?」
「う……」
 受け入れるしかなかった。生きて帰れるかは分からない。だがここで下手して逃げようとすればその命さえ尽きてしまいそうで。そんなこと、度胸の無い俺にはまず無理な話。ここにいる雌ポケモン全員の鬱憤を晴らすまで、俺はここでずっと耐えなくてはいけないのだ。森を破壊している人間の、代償なのだろうか。それにしてはあまりにも不自然でなおかつ不気味だ。それと同時に、これ以上の代償はないのかもしれないが。
「一回ヤッたのに、まだまだ元気だね。頑張ってもらうよ」
 ペルシアンは舌なめずりとすると、味見するかのように少しだけひしゃげた雄をぺろりと軽く舐める。その刺激だけで、自分の体はぴくりと動き、雄は再びその形を取り戻していく。その様子を見て嬉しそうにする彼女。そして、雄は彼女にぱくりと加えられた。
「う……くぁあ」
 何とも言いがたい感覚。ハブネークの細い舌とは打って変わって、ペルシアンの太く濃厚な舌が雄を確実に攻め立ててくる。根元、竿、亀頭、と、様々な部分をゆっくり、次々に嘗め回していく。しかもペルシアン特有のざらついた舌が更に刺激を強くさせていた。再び頭が真っ白になりかけてきたその時、刺激はふと無くなった。疑問に思って見ようとすると、また刺激の伝達が再開される。止めたり再開したりして、焦らしてでもいるのだろうか。雄がいなくなった鬱憤から、全ての技巧を使ってでもそれを晴らそうとしているのだろうか。止めて欲しい。これじゃあ後にいるポケモンの相手を終えるまでも無く俺は過労で死んでしまう。
「うあ! んっ」
 それでも口から漏れ出てしまう声に自分自身を情けなく思いながらも、結局はその刺激に身の全てを授けてしまう。そればかりか、体は更に快楽を求めて自ら動き出していた。ペルシアンの口の奥深くまで行くように、自ら腰を振る姿。もう何も考えられなかった。ただ自分はこの雌たちと同じように快楽だけを求めるようになってしまっているのかもしれない。淫乱とも言えるその領域に、俺は足を踏み入れてしまったのかもしれない。
「さ、て、と……」
 口での愛撫が終わったかと思うと、次は何をしてくるのかと思いきや。ペルシアンはくるりと方向転換をすると、秘部を雄にピタリと密着させる。入るか入らないかというぎりぎりのところで止めた後、彼女の尻尾がこちらの背後へと回される。不意に菊門に感じた不思議な感触に思わず身震いをしてしまう。ペルシアンが舌なめずりをした後、それはすぐに始まった。
「ふっ……ぁぁぁあ……!」
 下半身から全身に向けた強い刺激に、声を出さずにはいられなかった。何なのだろうか、この感覚。肛門に何かを入れられているのは分かる。けれどもこの痛みは何なんだ? 痛いはずだったのにだんだんとそれが気持ちよさに変わっていく不思議な感覚。明らかに雄を扱かれた時とは違う強く鋭い刺激に、次々と喘ぎ声が口から漏れる。
「ふぅ! あが……ん゛っ!」
「どぉ? 今まで感じたことのない気持ちよさでしょお~」
 雄は雌の膣内でぐにゃりぐにゃりと弄られ、搾り取られ、肛門からは尾で逆に突かれ、犯される。ペルシアンの目が蕩けていって、その行為は更に加速の一途を辿った。
「あ……あっ……ぐぁ」
「んっ……いいわあ! これ! これよ!」
 なにがいいのか。なにがこれ、なのか。頭の中で考えても何も考えられそうにない。頭がぐわんぐわんとしてくる。視界がぼやけ始めてなにも分からなくなってくる。もう、限界なのかもしれない。
「あっ! あああああああっ!!」
 ペルシアンの勝利の雄たけびを聞いた後、俺は意識をゆっくりと手放した。





 暗闇の中。目の前には真っ暗な風景だけが広がる。耳に聞こえてくるのは揺れている何かの声。抑揚をつけながら何度も鳴くその声は、頭の髄を突ついていた。体がいうことを利かない。何が起きているのかもまったく分からない。このまま……闇の中に……取り残されて……しまうの……だろうか……。







【山中の作業場で全裸の男性発見】
 今朝未明、前日の夕方から行方をくらましていた男性作業員が全裸で発見された。男性は意識が無かったものの呼吸などもしており、病院に搬送されて無事一命を取り留めた。しかし昨夜は氷点下にもなる冷え込みだったにも関わらず、男性の体はさほど冷たくなかったと同僚の作業員は語る。何故全裸であったのか。何故氷点下の中、体温が保たれていたのか。

 ――実はこれと似たような事例が、過去この山中で数回起きている。1995年9月16日には登山客男性が、同年12月23日に山岳の地質調査の男性が、2001年2月14日には近所に住む無職の男性、2004年5月23日にはキャンプに来ていた男性が、それぞれ同様の被害に遭っている。興味深いことにどの事件も全裸で発見され、体のどこかに切り傷や噛み傷などが見受けられた。しかしどれも意識を失うにはほど遠い浅い傷で、重症と言えるものではない。今回発見されたこの男性の左頬にも、軽い切り傷が残されていた。更にその傷から少量の神経毒が検出された。

「この神経毒の主成分はたんぱく質で構成的にはクサリヘビ科の毒に似ています。ハブネークがそれにあたります。基本的にクサリヘビ科の爬虫類は血管系細胞を破壊する出血毒と、筋肉細胞を溶解する筋肉毒との二種類の毒を持っていることが多いのですが、ハブネークは例外に尾の刃に神経毒を持っています。恐らく尾の刃で切られ、少量の神経毒によって意識を失ったのでしょう。ただ普通は手を打たないと呼吸困難になり、死に至るケースが多いので、今回彼が生きていたのは不幸中の幸いと言えます」と、この神経毒を詳しく調べた爬虫類の毒を研究しているミムラ・コウキ氏は語った。

 確かにハブネークの毒で意識を失ったといえば、意識を失っていたのも説明がつく。しかしそれでも腑に落ちない点はいくつも転がっている。もしハブネークの毒によるものであれば、襲われて危害を加えられたということになるが、本来ハブネークは獲物をじわじわと追い詰めて狩る残忍な狩猟者だ。気絶した人間をそう簡単に見過ごしてくれるのだろうか。大抵は誤って縄張りに入った人が、死体で見つかることが多い。それにも関わらず生き残っているのだから、今回の件は稀にみる生還劇とも言える。しかし、似たような件が過去に何度もあるのが私自身気にかかる。本当に“稀”と言えるのだろうか。

 また“全裸”で発見されたという点も不思議でしょうがない。命からがら逃れて毒を取り除こうとしたのならば、そもそも顔に傷を負った今回の男性は服を取る必要性は無かったのだ。前の例では腕だったり足だったりしたのでまだ可能性は考えられる。しかしそれでも不自然なのは確かだ。だとすればこれはポケモンだけではなく、人間の手が加わっている可能性があるのかもしれない。一体誰が何の目的でやったのか。こればかりは分からない。

 この件を受け、政府はこの山中周辺の立ち入りをしばらくの間禁じるようにと警告を発した。警官が数人で見張りを続けると、警視庁本部も合わせて発表した。……果たして、それが本当に根本的な解決になっているのだろうかと私は思う。

 今度は警官が全裸で発見されないことを祈るばかりだ。

(筆者・カワハラジュン)


お名前:
  • >コミカルさん
    短めなのは私の力が及ばなかっただけです。意図的にここまで短くしたつもりはなかったですね。本来はもっと長くしようとは思っていたので。
    締め方に関しても個人的にはまだまだの作品でした。
    少なくとも現代の傾向上「分かりやすい終わり」を求める傾向があるのでそれに沿っていなかったのも個人的には反省すべき点だと思ってます。
    感想有難うございました。
    ――イノシア ? 2010-04-13 (火) 06:47:04
  • 少々遅れてしまいましたが、お疲れ様です。

    割と短めだったので、読みやすかったです。エロシーンが約半分を占めるのに、物語の設定はきちんと出来ていたのが良かったです。
    また、締め方が印象的でした。

    これからも頑張ってください。では。
    ――コミカル 2010-04-13 (火) 00:38:52
  • >&fervorさん
    意外と言って頂けて光栄です。もしかしたら何となくバレているんじゃないかと思っていましたので。
    欲求不満だけに容赦はないですからね。行為中は生かさず殺さずなので余計に恐ろしい。
    自分自身がへたれているっていうのも意外と関係しているのかもしれませんが、もうちょっと雄側を攻めさせてあげたいです。でもどうしても草食系になってしまうオチ。
    本当はもっと官能描写を書きたかったのですけれどね。でも続けすぎるとエグいものに変わっていきそうで。なるべくそういう人を選ぶ方向性には持っていきたくはなかったので、途中で区切ることにもなりました。文章も似た通ったかにしないようにすると、なかなかに難しくなりますしね。
    雌にやられて意識が朦朧としていくような作品を書きたかったので。最近私自身も欲求不満だったのかも
    コメントありがとうございました。これからもこういった作品……じゃないくて色々な作品を書いていこうと思います。

    >04-05(月)の方へ
    ルフも草食系なのか……は分かりませんが、周りの雌の気が強すぎてそんな感じになるでしょうね。チラシの裏はアレはアレですよっ。本編じゃないですからねっww

    ぞっとする作品ではありますが、バッドエンドにはしたくなかったので命までは奪っては居ませんね。童貞は奪ったかもしれませんが
    まだまだ先は続きますよ~みたいな終わり方でないと大会期間中にこの物語を書き終えることは多分出来ないと思いますw 多分今度は全裸の警官が数人……。
    いずれあの森にポケモンたちが住めなくなれば、また別の森に追われる形で移住をするのでしょうね。そしたら確かにこの件については終わりにはなりますが、またその森にはへっぴり腰の雄しかいなかったらまた同じことになりますね。
    だからといって人間も木を切らずに生活をしていくことはもう困難になってしまいましたから、どうやって対処していくかっていうのは簡単なことではないでしょうね。
    この作品の犠牲者は新聞の記事にしてひっそりと訴えかけましたが、一体それに気付く人はどのくらいいるのでしょう、と逆に問いかけてしまいましたすみませんw
    コメントありがとうございました。
    ――イノシア ? 2010-04-06 (火) 12:23:05
  • >>雄側が弱い立場になる
    あるあ……あるあるw そういやルフのとkゲフンゲフン ともあれ、仮面小説大会お疲れ様でした。

    どちらかと言えばぞっとするような作品で、最後の記者記事含め全体としてはそれを強調させるような内容だった気が。
    作品単体としては終了しましたけれど、物語そのものは終わっていないのが個人的にはポイントです。つか、どう考えてもこれから先も犠牲者がw
    しかし、この問題を根本的な解決へと導くのは難しいのかもしれませんね。むしろこういった形での犠牲だけで済んでいる内が幸運というかなんというか。
    快楽の代償を刻み込まれた犠牲者たちがこの先どのように行動するかが、もしかしたら本当に大事なことなのかもしれません
    ―― 2010-04-05 (月) 23:19:48
  • イノシアさんだとは思いませんでした。ちょっと意外ですw
    欲求不満の雌達を相手取るのは大変そうです。気を失っても絞り取られるとは恐ろしい。
    雄側が弱い立場になっちゃう気持ちはよく分かる気がします。自分も何となくその傾向がっ。
    何匹も相手取るような官能小説だと確かに省略しがちですよね。仰るとおり文章が似たようなものになりがちです。
    けれど官能の場面もなかなかでした。やっぱり雌に攻められる雄はこうでないと、です。……うんw
    執筆お疲れ様でした。これからも応援してますよー。
    ――&fervor 2010-04-05 (月) 20:45:56

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Last-modified: 2010-12-28 (火) 00:00:00
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