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強い牙には抗えず

/強い牙には抗えず

♂→♀の強姦っぽい描写があります。

強い牙には抗えず 

writer――――カゲフミ

―1―

「ねえ」
 ふいに響いた声。木の実を口へ運ぼうとしていた手を止めて、俺はきょろきょろと辺りを見回した。しかし、それらしい姿は確認できない。
背の高い木がまばらに伸びている他は、俺の腰の高さぐらいまでの茂みが所々に生えている。比較的見通しのいい、森というよりも林と呼んだ方がしっくりくる土地だ。
むう、呼びかけられたような気がしたんだが、誰もいねえな。何か聞こえたように思えたのは俺の気のせいか。それならさっさと木の実をいただくとしよう。
苦労してやっと一つ見つけた木の実。つるつるとした手触りといい、ずっしりとした重みといい、なかなか良さそうだ。一気にかぶりつこうとして、俺は再び口を開ける。
「そこのあなたよ、あなた」
 また聞こえた。今度ははっきりと。聞き間違いじゃなかったのか。ああもう誰だよ、俺の食事の時間を邪魔しやがるのは。
苛立ちを覚えつつも、俺は再度手を止める。周囲を確認しようとした矢先、がさりと茂みの揺れる音。細長い影が俺の前に飛びだしてきた。
「やっと気づいてくれたわね」
 ひらりと優雅に地面に着地して、すました顔で俺の方に視線を向けてきた声の主。紫色の体に所々に黄色い模様が入っている。
四肢の先とお腹の毛は、背中に点々と散らばる模様と同じ黄色だ。尻尾の付け根よりも先端の方がふさふさとしていて特徴的だった。
さっきから俺に声を掛けていたのはレパルダスだったのか。ふうん、この辺じゃ見かけない顔だな。 
「俺に何か用か?」
 二度も食事中に水を差されたのだ。本来ならば邪魔するんじゃねえよと怒鳴っていたところ。
ただ、出てきたレパルダスがなかなか綺麗な雌だったので、比較的俺の口調は穏やかなものになっていた。我ながら現金なことだ。
質問には答えずに、レパルダスはゆっくりと俺の方へ近づいてくる。だけど、目線は俺の顔ではなく右手に握られた木の実の方。なるほど、これが目当てってか。
「おいしそうな木の実ね」
 木の実をじっと見つめながら、ちらりと俺に流し目。不覚にもどきりとしてしまう。近くであらためて見ても、やっぱりいい雌だ。こいつ。
このレパルダスから感謝されるなら半分くらい分けてやってもいいかなあ、という考えがちらりと頭を掠めたが。
これ一個見つけるのにかかった時間を思えば割に合わない。ここでは雄としての感情よりも食欲が勝る。
欲しいとは直接言ってないものの、目は口ほどにものを言うとはまさにこのこと。こんな振る舞いをされれば、食べたいんだなってことは嫌でも分かる。
もし今日見つけた木の実がいくつかあって俺の腹が半分くらい膨れていたならば。仕方ねえなとぼやきつつもレパルダスに渡していたことだろう。
俺の心を動かすには十分すぎる程の外見をこいつは兼ね備えていた。綺麗な雌には弱いんだよな、俺。
きっとこのレパルダスも異性の目から見た自分がどんなふうに映るのか分かった上で、こんな行動を取ってるんじゃなかろうか。
彼女の堂々とした様子からすると、普段からこうやって雄に言い寄ることで食料を得ているのかもしれない。
「……やらねえぞ」
 右手に握りしめていた木の実を見、その後レパルダスの目を見て。ぶっきらぼうに俺は答えた。分けてやるつもりはないとしっかりと釘をさす。
ここであっさりと引き下がってくれたのなら俺としても面倒じゃなかったんだが。どうやら、このレパルダスはそんな簡単な相手じゃなかったようで。
下がるどころか更に俺の方へ体を近づけてきたからびっくりだ。体格差が少しあるので俺がレパルダスを見下ろすような形になる。
おそらく上目遣いになることも計算に入れてのことだ。狙った獲物は逃がさないとでも言いたげな彼女の視線は俺を捕えたまま離してくれそうにない。
「私、とってもお腹減ってるんだけどなあ」
「お、俺だって減ってるっての」
 ちなみに俺は綺麗な雌は好きだ。大好きだ。だが、こういう状況には慣れてねえ。余裕のある切り返しは無理だ。出来やしない。
手慣れた雰囲気のレパルダスに舐められたくはないが、ぼんやりしてるとすぐ傍にあるレパルダスの緑色の瞳に取って食われてしまいそうな気がして。
照れ隠しも含め、若干目を反らしつつ俺は答えた。とりあえずは声が裏返らなかったから上出来だ。
「ね、もしあなたがその木の実を分けてくれたら、いいことしてあげるわ」
 いいこと、だと。レパルダスは何をしてくれるのか具体的には言わなかったものの、この状況と俺の思考が合わさって行きつく答えは一つだけ。
いいや、思わせぶりな態度を取っただけで木の実を分けてやったらはいさよなら、なんてこともあり得る。
安易に信用するのは早計ってもんだ。このレパルダスが本気なんだったら、そりゃあもう大歓迎だが。
その一言で、俺の目の色が変わったのをこいつが見逃すはずがない。揺らいでいる心への追い打ちのつもりだったのだろうか。
顔を俺の喉元へぴたりと密着させて、レパルダスはぺろりと一舐め。生温かくて湿った感触が伝わってきた。
全身硬い鱗で覆われた俺と違って、彼女の毛は柔らかくていい匂いだ。もっと深く味わいたいと思わせるには申し分ないくらいに。
これはもう、そういうつもりなんだと受け止めてしまってもいいんだろうか。願わくばそうしてしまいたい。
流れに身を任せる形にはなってしまうが、このレパルダスと楽しめるんなら悪くねえ。むしろ木の実半分でいいなら儲けもの。
けど、食料欲しさに股を開くような雌が最初の相手ってどうなんだか。今まで何匹もの雄を相手にしてきたんだろうってことは想像に容易いし。
待て待て、外見だけなら上玉だし。何事も経験だし。きっと上手いだろうし。貰えるものはもらっといて損は――――と、あれこれ考えているうちに。
ふと、自分の右手が軽くなっていること気がつく。おや、木の実はどこいったんだろうと見ると、レパルダスがしたり顔で木の実を咥えていたりするわけだ。
いつの間に、って俺が不埒な妄想で上の空になってる間に奪われてたんだろうな。やっぱりそんな上手い話はやっぱりありませんってか、くそう。
「……返せっ!」
 咄嗟に掴みかかろうとしたものの、レパルダスにはあっさりとかわされる。だろうな。俺と違ってもともと素早い種族だ。
鱗を身に纏った鈍重なクリムガンじゃあ、瞬発力で敵うわけがない。無駄だろうなと諦観しつつも。それでも、木の実に手を伸ばさずにはいられなかった。
そんな俺の必死の抵抗をレパルダスは軽くあしらうと。ごちそうさま、と言わんばかりの満足げな表情で、いたずらっぽく笑いながら。
彼女は茂みの向こうへと消えてしまった。さすがの速さ。俺が走ってみたところで到底追いつけそうにない。目で追いかけるのがやっとだった。
こんなこそ泥みたいな行為を生業にするなら逃げ足が遅いんじゃあ話にならないか。あっという間に見えなくなってしまった。
しばらく呆然と立ち尽くしていた俺だが、腹の虫が知らせる空腹感で現実に引き戻される。はっ、何がいいこと、だ。
小さなため息と共に、乾いた笑いがこぼれ落ちる。レパルダスと楽しむどころか、食事の楽しみまで失っちまった。
確かに最初から怪しいとは思っていた。思ってはいたが、心のどこかで本当に楽しませてくれるんじゃないかという淡い期待を捨てきれなかったのだ。
レパルダスの色気に惑わされた結果がこれだ。あんな見え透いた手にやすやすと引っかかっちまうなんて情けねえ。
「ちくしょうっ!」
 怒りをぶつける矛先が見当たらず、俺はやみくもに地面を殴りつけた。歯を食いしばり、もともと赤い顔をさらに紅潮させて何度も何度も。
所々に短い草の生えた地面は程良く湿っていて、俺が力を込めて爪を振りおろすと案外あっさりと削れていく。
地面が乾き切っていなくてよかった。硬い土地だったら、腕を痛めてもっと惨めな気分になっていただろうから。
爪が足元の草を抉ったが、こんなことで気持ちが晴れてくれるはずもなかった。幸い、何かに当たり散らしたい衝動は少しは収まった。
ただ隙を突かれて木の実を取られただけなら、ここまで苛々したりはしなかったはずだ。いたずらに期待させられた分、失ったときの落胆も大きい。
まだ腹の中には煮え切らない思いが渦を巻いていたが、いくらその感情が折り重なっても空きっ腹を満たしてくれはしない。
憤るのでさえ腹が減っていては満足にできない。とはいえ、もう一回木の実を探す気にもなれねえし、今日は大人しく住処に戻って不貞寝するか。
嫌なことがあった日は寝るに限る。寝てる間は忘れられるし、明日になればまた何か運が向いてくるかもしれないし。
まあ、今日のは不運と言うよりも完全に俺の不注意だったわけなんだが。はあ……。

―2―

 時折ごろごろと不満の声を訴えてくる腹の虫を黙らせながら、重い足取りで俺は住処へと向かう。間に何度ため息が混じっただろうか。
出来るだけ考えないようにしていていても、やっぱり頭に浮かぶのはさっきのレパルダスのことばかり。
きっと今頃俺のことを嘲笑いながら、得意顔で木の実を一人占めしてるんだろうと思うと腹立たしくて仕方ない。でも。
足を止めてそっと首筋に手を当ててみる。レパルダスの舌が這った個所。もう湿り気も温もりも消え去ってしまっていたが。
ついさっきの出来事だ。記憶に新しい今ならばあの柔らかい舌や体毛の感触、そして匂いを思い出すことができる。逃がした獲物は大きいとはこのことなんだろうか。
俺の場合、獲物を掴めてさえいなかったのはさておき。思えば思うほどあのレパルダスはいい雌だったなあ。うん。
ほんの数秒しか見えなかったけど、茂みの向こうへ逃げていったときの後姿。すらっとしていていい尻してたし。もっとじっくりと眺めたかったぜ。
もし俺がレパルダスと同じくらい。いや、それ以上に素早かったら。木の実を奪われた報復として、捕まえた後は遠慮なしに押し倒して、こう。
見たところ無駄な肉付きはなかったし。運動能力に長けているなら、締まりも良さそうな雰囲気。きっと挿れたときの感触も……っとやめよう。
こうやって妄想するだけなら簡単なんだがな。実際はそうはいかない。一度でいいからあんな雌とヤってみたいもんだぜ、まったく。
「…………」
 あーやっぱりまずかったか。一度妄想し出すとなかなか収まらねえ。現に俺の下腹部がざわついてやがる。辛うじて外には顔を出しちゃあいないが。
後少しブレーキを掛けるのが遅かったら完全に股間からこんにちはだぜ。一旦元気になりだすとすぐに収束ってわけにもいかないのが厄介だ。
こんな昼間に外で股間のスリットからにょきっとさせてたんじゃあただの露出野郎になっちまう。見られて興奮するとかそういう性癖は持ってねえ。
まあ、このまま無理に押さえつける必要もないか。続きは誰かの目につく心配のない住処の中ですることにしよう。
もちろんそのときのオカズはレパルダス一択。俺があいつにできる唯一の仕返しだ。俺の妄想の中で存分に穢されるがよい。
住処に着くまでは極力頭の中を空っぽに。そう意識しつつも、ちょっと油断をすればレパルダスが俺の渾身の突きで喘いでやがる。
一度やると決めたらそっちに向かって一直線。スリットの狭間でもぞもぞと。まだ早いってのに。腹だけじゃなくてそっちにも飢えてるんだな、俺は。
 林の木々が途切れ始めたところに、どんといきなり顔を出す急斜面。表面にほとんど草木は生えておらず、岩肌が無骨に剥き出しになっている。
その斜面にぽっかりと開いた洞穴が俺の住処だ。どうにか外で痴態を晒すことなく、住処に戻ってこられたからよかった。
それじゃあ早速、と足早に中へ入ろうとして、ふと入り口に残された小さな足跡に気がつく。何だこりゃ、来るときはこんなのなかったぞ。
足跡は洞穴の奥へ向かって点々と続いている。行きの足跡しかないってことは、まだ中に居るな。
まったく、俺がいないからって勝手に上がり込まれちゃあ困るっての。ひょっとして留守を狙った泥棒か何かか。もう盗まれるのはこりごりだ。
あいにく盗るようなもんは何もないがな。非常時のことなんて知らん。その日の分の木の実が取れたらそれでよし。これが俺のスタンスだ。
そりゃあ木の実の備蓄があれば、今日みたく食事にありつけなかったときは助かるんだろうけど。
留守にしてる間に他のポケモンに物色される可能性を考えると、とてもじゃないが木の実を蓄えておくなんて出来そうにない。
現に今、何者かが俺の住処に侵入しているのは間違いない事実。さてどうするか。
このまま戻れば間違いなく鉢合わせするだろうし、無視するわけにもいかないだろう。俺だって住処で好き勝手されたくはない。
見た感じ、俺のよりもずっと小さい足跡。そんなに大きなポケモンじゃなさそうだ。
とりあえず中でそいつに会ったら出ていくように促して、それでも聞かないようだったら力ずくで追い返すことも出来るだろう。
そんなに警戒することもなく、俺は少し体勢を低くして洞穴の中へ入っていく。俺が居住スペースにしてるところはこの細い通路を進んだ先にある。
入り口周辺は若干狭くて住みにくそうな印象を受けるが、奥には空洞があって割と広い。
俺と同じくらいの体格のポケモンだったら、あと一匹なら一緒に住めるんじゃなかってくらいの空間はあった。
おそらく侵入者はこの広間のどこかに……っと、いたいた。広さはあっても隠れるところは少ないからすぐに見つけられた。空洞の中央付近に見える小さな影。
薄暗い洞窟の奥だ。目が慣れるまで少し時間がかかったが、徐々にその輪郭が明らかになってきた。
足跡からして小さいポケモンだとは思っていたが。想像してたよりも更に小柄な感じだ。高さは俺の半分もないんじゃないか。
頭からは角のような突起が一つ飛びだしている。体格相応の小さな手足に短い尻尾。ただ、口元から横に伸びている二本の牙だけは体に不釣り合いで、妙に大きい。
そいつは何か探し物でもしているかのように、きょろきょろとしきりに辺りを気にしている。その割には俺が戻ってきたことに気づいてなさそうだ。
ふむ。相手がキバゴなら仮に抵抗されたとしても何とかなるか。とっとと出て行ってもらうことにしよう。
俺は特に足音を忍ばせることもなく、そのキバゴの元へずかずかと近づいていく。すぐ傍で物音がしたことで、ようやくキバゴも気がついたらしく俺の方を振り返った。
瞬間、キバゴの表情が固まる。ぽかんと口を開けて、何とも間抜けな表情だ。無理もないか。
こいつからすれば俺は相当大きく見えてただろうし。自分の知らない間にそんなポケモンが背後に立ちふさがっていたんだから。
「おいお前。俺の住処で何やってやがる」
 叫んでこそいなかったもののどすの利いた声で、睨みをきかせて。キバゴの方へ顔を近づけながら俺は言ってやった。
相手が小さいポケモンだからって優しく接してやるつもりなんてない。勝手に他のポケモンの住処へ侵入したという事実は、進化前だろうが進化後だろうが関係ねえ。
「ひっ!」
 小さな悲鳴と共に、キバゴは慌てて洞窟の奥へと駆け出した。少々気合いを入れすぎたかもしれない。
俺の気迫に怯えて逃げ出すくらいなら、キバゴに見くびられる心配はないだろう。この調子だと追い出すのも難しくはなさそうだ。
どこへ向かおうとこの洞窟の入り口は一つだけ。キバゴが走って行ったのはそれとは正反対の方向だ。すぐに行き止まりになる。
なんてったって俺の住処だからな。空間を把握しきっている洞窟の主から逃げ出そうってのが無茶な相談だ。
駆け足になることもなく余裕たっぷりで足元の土を踏みしめながら、俺はキバゴを壁際へと追いつめる。
「あ……う……」
 退路を断たれ逃げられないと悟ったのか、背中を壁にぴたりとくっつけてキバゴは俺をおそるおそる見上げる。
一方俺は沈黙を保ったまま仏頂面でじっとキバゴを眺めているだけ。突き刺さる俺の視線は十分に伝わっていることだろう。
追いつめられたキバゴがどんな行動を取るのか。ちょっとした見物も兼ねて俺はあえて何も言わずにいたのだ。
往生際悪くまた逃走を図ったりしようものなら、痛い目を見てもらうことにになるかもしれないな。
それにしても、誰かに対して圧倒的に有意な立場でいられるってのはなかなか気分がいいもんだ。
レパルダスにはまんまとしてやられてしまったが、このキバゴのおかげでちょっとだけ気分が晴れた、かもしれない。
「ご、ごめんなさい。先に住んでるポケモンがいたなんて、し、知らなかったんです……」
 震える声で目に涙を浮かべながら、ぺこぺこと頭を下げるキバゴ。さすがにこの状況で悪態をつく度胸はないか。
なるほど。俺が留守だったから誰も住んでないと思って上がり込んだ、と。
住居者がいるかいないかくらい、匂いや足跡で判断できないもんかねえ。未進化だし、まだその辺りの洞察力が未熟ってことなのか。
たしかに俺が見る限り、嘘を言っているようには思えない。もしこれがこいつの渾身の演技だったのなら、逆に感心してしまう。
キバゴは俺を恐れてる。簡単に言うことに従うはずだ。さっさと出ていけと言って、洞窟から追い出すのは造作もないこと。しかし、何だろう。
このままこいつを逃がしてしまうのは。俺に抗う手段を持たないであろう、このキバゴを逃がしてしまうのは。何だかとても勿体ない事のように思えてきたのだ。
キバゴに涙目で見上げられて、俺の中の嗜虐心とその他もろもろの邪悪な感情が揺らめかなかったと言えば嘘になるんだよなあ。
一発抜こうと帰ってきたところにキバゴがいたせいで、中断せざるを得なかったわけだし。気持ちの高ぶりはもちろんあった。
ただ、それを実行に移すのはまだ早い。もう少し探りを入れる必要があるな。目の前の哀れなキバゴを前に、俺はにやりと笑みをこぼした。

―3―

 もちろんキバゴの言い分を完全に信用したわけではない。相手の言葉を鵜呑みにして痛い目にあったばかりだ。
とはいえ、必死にごめんなさいと俺に伝えようとしてくる姿からして、八割がた本意のものと判断しても問題ないような気はしていた。
「ふん、簡単には信用できねえな」
 しかしここで俺はあえて、キバゴの謝罪を鼻で笑うかのように突っぱねる。冷静さを失いつつあるこいつに、俺が本気で言っているかどうかの判別はつくまい。
現に俺の言葉を聞いた途端、キバゴの表情が見る見るうちに曇っていく。すぐ顔に出してくれたから、分かりやすくて助かるな。
きっとキバゴは俺が本気で苛立っていて許してくれそうにない、と受け止めているはずだ。発言の裏に隠された俺の企みには気づいてもいないだろう。
住処だと知らずに入ってしまって怒らせてしまったクリムガンは謝っても見逃してくれそうにない。このままだとどうしようもないよな。さあ、どうするよ。
「二度と住処に入ったりしませんから、ゆ、許してください……」
「んー、どうするかなあ」
 右手を顎に手を当てて、洞窟の天井を眺めながら俺は考えているふりをする。許すか許さないかの判断に迷ってキバゴを振り回してるわけじゃないんだよな。
どちらか選べと言われたら、許す方でいいと俺は思っていた。知らなかったとは言え勝手に住処に入られたことには、俺も腹が立ったが。
壁を壊されたり、木の実を盗まれたりしたわけじゃない。俺も本来ならば舌打ちしつつもキバゴを許してやっていたことだろう。本来ならば、な。
ただ、今日は。あのレパルダスに食事ともう一つのお楽しみと。一つは物理的に、もう一つは気持ち的に奪われ、悶々としていたせいで。
この鬱屈したものをぶつけられる対象が欲しかったのだ。それは別に幼いキバゴでも構いやしない。ちょうどそこにいたから利用する、それだけのこと。
結局のところ、キバゴはそんなに悪くない。俺の住処に足を踏み入れてしまったタイミングがこの上ないくらい、悪かっただけ。
「お、お願いします、そこを何とか。……な、何でもしますから」
 ほう、言ったな。もう取り消しは効かねえぞ。その言葉を待っていましたと言わんばかりに、俺はにいっと下劣な笑みを浮かべる。
焦って平常心を失っているこいつを揺さぶれば、いつかはそれが飛びだすんじゃないかと思ってはいたが。こうも簡単に行くとはな。
「ふうん……何でも、か。それなら許してやらないこともない」
「ほ、ほんとですか?」
 キバゴの顔つきがいきなり明るいものに変わる。微笑ましいくらいに単純だな、おい。
自分の言葉の意味、理解してないわけじゃないとは思うが。これから何をされるのかも知らずに、呑気なもんだ。
キバゴが何でもすると言ったときに俺の目の色が変わったことにも、おそらく気付いちゃいないんだろう。
「ああ。まずは質問だ、正直に答えな。お前……雌か?」
「え? あ、はい……そうです、けど」
 俺の問いかけの意図が分からなかったらしく拍子抜けした声で答えるキバゴ。なるほどな、雌か。
喋り方や声で何となくそうじゃないかとは思っていた。しかし、未進化のポケモンとなるとなかなか判別がつきにくいところがある。
雌だと思ってたら実は雄でした、なんて状況になったら萎えちまうだろうから念を入れて聞いてみたわけで。どうせならやっぱり雌がいいよな、うん。
仮にキバゴが雄だったら、この際それでもいいかなと思っていたのは置いておこう。今の俺の守備範囲は相当なもんだなあ。
「そうか、ならいい。ちょっと待ってな」
 キバゴにくるりと背を向けると俺はそっと下腹部に手を当てる。黄土色をした硬い鱗が首元から股ぐらまでしっかりと覆っているが。
下腹部の鱗と鱗の境目、一か所だけ軟らかい部分があってだな。そこに爪の先を入れてくにくにと多少動かしてやると。おお、出てきた出てきた。
もともと戻ってきたら扱いてやるつもりだったわけだし。気持ちの方はある程度整ってたせいか、割とすぐに顔を出してくれた。
だが、半ば無理やりこじ開けたのでまだ本調子じゃないし、軟らかさも残っている。完全に大きくなるのはこの後だ。
上下の鱗を押し広げるような形で顔を覗かせた俺の一物。体の表面が鱗で覆われているようなポケモンの雄は、スリットの中に収納されていることが多い。
もしキバゴが雄だったら、俺と同じような感じになってたんじゃなかろうか。縦に割れるのか、俺のように横に割れるのかは知らないが。
お腹に硬そうな鱗のラインも見当たらないし、縦割れか。いや、そんなことはこの際どうでもいい。下準備は整った。お楽しみはこれから。
「えっ……」
 振り返ると、一瞬ではあったがキバゴの視線が俺の股間に釘付けになる。慌てて目を反らしたが、俺はその瞬間を見逃さなかった。
明らかにキバゴは動揺しているのが見て取れる。と言うことは、俺の股間が今どういう状態なのかは知ってるみたいだな。
どっから知識を得たのかは知らんが、未進化の割にはなかなかませてるじゃないか。ひょっとすると既に経験済みだったりするのかねえ。
まあ処女だろうと非処女だろうと、利用する分には大した問題じゃない。雄に慣れてるか慣れてないかは知らんが、しっかり動いてもらうぜ。
「これ、見えるだろ。……舐めろ」
「え、ええっと……」
 片方の手で股間から這い出てきた肉棒を見せつけるようにしながら、俺はキバゴに要求する。しかし、当のキバゴは言葉を濁して目を合わせようとすらしねえ。
俺が何を求めているのか、これを舐めるという行為が何に繋がるのか。おそらくキバゴは知っているはずだ。だからこその躊躇なのだろう。
「聞こえなかったのか、うん?」
「で、でも」
 キバゴが命令通りに動かなかったので、俺の口調は徐々に荒いものへと変わっていく。それこそ最初、キバゴに怒鳴りつけたときと幾分も違わないものに。
しかしこいつはよっぽどこの状況を受け入れたくないのか、ここまで来てもまだ縦に首を縦に振ろうとはしなかった。
ただ、はっきりと嫌だと言わないところを見ると、そこまで俺に抵抗する勇気は持ち合わせていないらしい。
粘り強いのか、それとも往生際が悪いのか。その根性は認めてやってもいい。だがな、今の俺はあんまり気が長くないんだ。焦らすなよ。
「ひぃっ!」
 渋るキバゴの頭上を狙って。俺は思い切り右腕を岩壁に叩きつける。鈍い音がして、壁の岩がぱらぱらと崩れ落ちて乾いた音を立てた。
最初から本体を狙うつもりなんてなかった。こいつに力の差を悟らせるにはこれくらいで十分だろう。ここは大人しく従っとけ、な?
殴られる、と咄嗟に頭を抱えてぎゅっと目を閉じたキバゴ。だが自分の体に何事もなかったため、やがてゆっくりと目を開く。
そして大きく抉れた壁と足元に転がっている岩を見て、色を失った。もう俺から目を反らしはしない。
力なく俺を見上げるキバゴの表情は恐怖で塗りつぶされており、まるでおぞましい怪物を前にしているかのよう。
「何でもするって、お前言ったよなあ?」
「わ……わ、分かりました」
「ふん、それでいい」
 抗おうとする心は完全に砕け散ったはず。もう大丈夫だろう。俺はどかりと腰を下ろすと、キバゴに股間の部分まで近づくように促す。
腰を下ろせば俺の一物の高さがちょうどキバゴの口元辺りになる。わざわざ舐めやすくしてやってるんだ。ほら、来いよ。
キバゴはこくりと頷き、足早に俺の元まで駆け寄ってくる。よしよし、随分と従順になったもんだ。力量の差が分からない馬鹿じゃないらしい。
こんな風に最初から素直に従っておけば、俺も少しだけなら優しくしてやっていたかもしれねえのになあ。その辺の要領はまだまだってことか。
「牙を立てたりしたら、どうなるか分かってるよな」
 ひとまずキバゴは従ってはいるが、不意を突かれて噛みつかれでもしたら楽しむどころじゃねえ。傷ものにされるのはごめんだ。俺は念を押しておく。
キバゴが小さく頭を縦に振ったとき、瞳から零れ落ちた涙が地面を濡らした。目を潤ませたキバゴ……いいじゃねえか。無理矢理ってのもなかなかそそられるもんだ。
まさか初めて舐めてもらう相手がこんな幼いキバゴになるなんてなあ。別に小さなポケモンじゃないと勃たないとか、そういう性癖じゃない。
たぶんレパルダスの件で昂ぶっていなかったとしても、オカズにするくらいならキバゴの雌でも十分食える。
もちろんそれが進化系のオノンドでも、最終進化系のオノノクスだったとしても余裕でいける。もとからの守備範囲が広いんだよな。
ただ、力ずくで言いなりにする分には力も弱い未進化のキバゴのうちがやりやすいことには違いないだろう。
まだ俺の雄はスリットから顔を出したばかり。外気に当てられてちょっと涼しいくらいだが。これからもっと熱くなる。そうだよな、キバゴ。

―4―

 もう手を伸ばせば届く位置だというのに、キバゴはじっとしたまま。この期に及んでまだ踏ん切りがつかないってのか。
とは言え、全くやる気がないわけでもないらしい。肉棒に顔を近づけようとして少し前に出すものの、また引っ込めてしまったりしている。
やらなきゃと意識しつつもいざ舐めるとなると、寸でのところでブレーキが掛かってしまっているのだろう。
こいつが焦らしのなんたるかを習得しているとは思えねえが、今の俺はそれに近い感覚を抱かずにはいられなかった。
ここまで来ておきながら、出来ないなんて言わせねえぞ。俺の方も今更後には引き下がれねえんだよ。
「どうした、早くしろ」
「は……はい」
 俺の催促でキバゴは心を決めたらしく口を開けて舌を出し、一気に顔を肉棒へと接近させる。視界に映るのが嫌なのか、目は閉じたままだ。
生温かいキバゴの舌の感触が裏筋を伝っていく。レパルダスに首筋を舐められたときよりも、その舌はずっと温かくて柔らかい気がした。敏感な個所だからなのか。
「もっとだ」
 最初の一舐めだけじゃ全然物足りねえ。キバゴの舌の動きが止まってたから、俺は促すように言う。
俺の言葉を受け取ると、頑なにきつく閉じられた目に涙を浮かべながらも、キバゴはぺろり、ぺろぺろとフェラを続行してくれる。
ああ、無理矢理舐めさせてるからフェラとは言わねえか。まあそんなことはどうでもいいさ。命令には従ってくれてるんだからそれで十分だ。
くすぐったいようなむず痒いような妙な感覚だ。ぐっと直接伝わってくるものがない、何だかふにゃふにゃした刺激。
自分の手で扱いてやっていたときとは違う。だが、なかなか良いもんだ。自分以外の誰かに、奉仕してもらっているという事実がより興奮を掻き立てられる。
普段よりも明らかに刺激は弱かった。そりゃあ、ある程度強さもあった方が肉棒は悦ぶとは思うが。
気持ちの昂ぶりってのは物理的な要因からくるものだけじゃない。そして今回は精神的なものがいつもとは比べ物にならないくらい大きい。
連続でキバゴにぺろぺろとやられているうちに俺の息子はしっかりと斜め上を向き、固さも申し分なくなってきた。
ようやく、本領発揮と言ったところか。そそり立った肉棒はキバゴの口元から飛びだしている片方の牙の長さなんてゆうに越えてしまっている。
いい感じに元気になってきたところだし、前菜は終わりだ。舐めてもらうのは確かに興奮するが、舌先だけの刺激じゃ生殺しもいいところ。もっとキバゴには動いてもらう。
「今度は手で持って扱け。おっと、舐めるのも忘れるなよ」
「は、はいっ!」
 キバゴとしては出来るだけ何も見えないままことを進めたかったんだろうけど。手を使うとなれば、目を開けて対象を捉える必要があるだろう。
見るのが嫌だからと適当にごまかそうものなら、俺が許さない。その辺はもうキバゴも分かっているとは思うが。
一旦肉棒から口を離して深呼吸した後、恐る恐る目を開いたキバゴの表情が引き攣っていく。舐め始めたときはまだ不完全だったからな。
キバゴからすれば俺の勃った状態を見るのは初めてか。それにしても、そんなに衝撃を受けるもんかねえ。
もしキバゴがでかさに息を呑んでくれているんだったら。誰にも見せたことがない俺の息子にもちょっとだけ自信が出てくるが。
体格差があるからただ単に大きく映っているだけ、なんだろうなたぶん。と、俺がそんなことを考えているうちに、意を決したらしくキバゴはそっと肉棒に手を当てる。
位置的にいえばちょうど真ん中あたりだ。キバゴの腕の長さから考えて、一番掴みやすかった個所だからだろう。
そして、ぎこちなさを残しつつ両手を上下に動かし始めた。もちろん俺の言いつけを守ってか、舌で愛撫することも忘れていない。
不慣れで拙さを感じさせるものだったが。それでもぐにぐにと表面を撫でられれば。刺激はしっかりと伝わってくる。
幼いキバゴの両手の力と、舌に包まれて。……っ、何だ、意外に上手いじゃないか。こんな体験は初めてだから判断基準が良く分からんが。
もしかしたら俺が早いだけ、か。いやいやそんなことはいい。キバゴの手も、舌も。俺の肉棒の大きさからすれば不釣り合いな感じはある。
それを考えれば俺が物足りなく感じても何ら不思議ではないのだが。この感情の高揚は、伝わってくる心地よさは何なのだろう。
表面を擦る手つきや舌の動かし方は俺から見てもたどたどしいな、と思えるくらいだ。しかし、それも今は興奮の誘発剤にしかなっていない。
先端から溢れ出した先走りの汁が肉棒を伝い流れ落ちていく。滑りが良くなったせいなのか、キバゴの手の動きが少し早くなったような気がする。
段々勝手が分かってきたのか。最初に比べれば随分と迷いがない。いいぞ、その調子だ。そのまま、そのまま。もう一息で。
が、自分の手で強く扱きあげるのに慣れてしまったからなのか。刺激が足りないのだ。あと一歩、ぎりぎりのところで昂ぶり切れない。
やっぱり小さな手と舌は俺には優しすぎたのか。熱いものが体の底からこみあげてきているのは分かるのに、発射まで至らずにいる。
キバゴの舌や手から伝わってくる刺激は気持ちよかった。確かに気持ちよかったのだが。イきそうでイけないというのもこれはこれでかなり辛い。
せっかく極上の木の実を見つけたというのに精一杯手を伸ばしても爪の先しか触れられず、食べることは出来ないようなもどかしさ。
くそう……そこまで出かかってるってのに。ひょっとしてこれはキバゴなりの俺への報復なのか。だとしたらなかなかやりやがる。
舐めさせておきながら結局は自分で、というのも少々勿体ない気はするが。この寸止めの状態は俺が長く耐えられそうにない。
キバゴの手が当たっているのは真ん中の部分。竿の根元はまだスペースがある。俺はそこを表面が軽く凹むくらいにぐいと掴んで二、三度上下に擦ってやる。
ぎりぎりまでせりあがったところに、おなじみの強めの扱き。息子からは結局お前か、と文句をつけられそうだが。まあいいじゃないか。
自らの手で限界を迎えることにはなってしまったが、キバゴの両手と舌の感触は存分に堪能させてもらったんだし。悔いはない、さ。あ、ああ、出る……っ。
刹那、ぴくりと震えた肉棒が弾けた。第一波はぴゅっと勢いよく飛び出し、直後の後続部隊も飛びはしないもののとくとくと着実に精を外へ輸送していく。
「っく、あぁっ、はあっ……」
「ひゃっ!」
 一瞬、目の前が揺らいだ。それとほぼ同時にキバゴが小さく悲鳴を上げる。
傍らのキバゴにかかろうがお構いなしに。俺は息を荒げながら豪快に精を吐き出していた。
割と最近やったばかりだったのでそんなに多くは出なかったかもしれないが。キバゴからすれば結構な量なのではなかろうか。
まあどれくらい出たかなんて大した問題じゃない。大事なのは、イった後に気持ち良くなれたかどうか……だな。
「はっ……はぁっ、ふぅ……」
 肉棒の根元に添えていた片手をだらりと投げ出して、口を開いたままのだらしのない表情を浮かべながら。
俺は射精に伴う快感をじっくりと味わっていた。体の奥からかあっと熱くなって、目の焦点が定まらなくなって、ふわふわしたような感覚。
今まで数えきれないほどこなしてきたが、何度味わってもいいもんだ。俺は肉棒をきゅっと摘んで出渋っていた残りを外へ押し出すと、ふうと大きく息をついた。
正直、果てた直後の心地よさは自分でやるのと大して変わりない。頑張って扱かなくて良かった分、腕は疲れなかったが。
大きな違いはここに至るまでの精神的なものか。強引に舐めさせていたってのを差し引いても、一人でやるよりはずっと充実感があるような気がする。
いつもなら、一発抜いた後に必ずやってくる空しさの様なものを今日は不思議と感じなかったのだ。これもキバゴがいるおかげなんだろうか。
俺の白濁液を頭から被ることになったキバゴの顔は所々が濡れて、てらてらと光っている。おお、ぶっかけられて困ってる表情も……なかなか。
両手でそれを取り除こうとしているが、粘性があるので軽く払っただけでは逆効果。余計にその汚れを広げる結果となってしまっている。
精液に塗れたキバゴの姿を目の当たりにすると、一旦精を吐き出して鎮静化に向かっていた俺の嗜虐心が再びくすぶり始めていた。
キバゴを弄べる機会なんてこの先もう二度とないかもしれないし。やるだけやっといても損はないな。せっかくだし、もうしばらく付き合ってもらおう。
そんなどうしようもない俺の思考を、キバゴが知る由もなく。体に付着したものを拭うのに必死になっていて、俺が近づき始めても反応がない。
足元に影が重なってようやく気がついたのか、キバゴがはっと顔を上げる。俺はにやりと笑みをこぼすと、黙ったままキバゴの方へと手を伸ばしていた。

―5―

 俺の表情から只ならぬ気配を感じ取ったのか、キバゴは咄嗟に逃げだそうとする。が、対応が遅い。
俺は伸ばした右腕をキバゴの喉元に素早く押し当てると、そのまま仰向けになるような形で押さえつける。
まだ幼いからか、触れたキバゴの皮膚は柔らかかった。ごつごつした俺の表皮とは似ても似つかないくらいに。
もちろん爪で怪我をさせてしまわないように加減はしてある。痛みは感じていないはずだ。キバゴが身動きを取れなくなればそれで十分なのだから。
「ど、ど、どうしてっ。ちゃんと言う通りにやったのに……!」
 ん、俺が果てたからもう解放されると思ってたのか。残念だがその期待には答えてやれそうにない。
俺の手を払いのけようと、キバゴが死に物狂いで両手に力を込めているのが分かる。無駄だっての。そんな微力じゃびくともしねえぞ。
これまでの経緯で力の差は歴然のはずなのになあ。それでも抵抗せずにはいられなかったのは、死にたくないという生存本能か。
がたがたと震えながら理不尽さを訴えてくるキバゴの目からは、殺さないでという切実な気持ちが伝わってくる。
「心配すんな。殺しゃあしねえよ」
 住処に勝手に上がり込まれて気分を害した。さすがの俺も、そんなくだらない理由でそいつを殺めてしまおうなんて極端な考えには至らないさ。
もし、手を下してしまったとしたら。後味の悪さがとんでもないことになることは間違いない。それに血の匂いとか肉の感触とか。想像するだけでも気分が悪くなっちまう。
キバゴを拘束したのは殺すのが目的じゃない。もう少しの間、俺が発散するための相手になってもらう。それだけのこと。
「じゃ、じゃあ何を……んっ!」
 何かを言いかけたキバゴの言葉を遮るかのように。俺は一気に自分の口をキバゴのそれへと押し当てていた。
右腕で触れていた皮膚と同じような柔らかさが、俺の口元に纏わりつく。ぐいぐいと無遠慮に舌をすべり込ませても、キバゴは抗おうともせず。
くぐもった声を漏らしながら、ただただ俺に口内を弄ばれているだけ。強引に奪ったキバゴの唇は、白濁液の残滓もあってかどことなくほろ苦い味がした。
自ら略奪しておいてなんだが、初めてのキスがこれじゃあムードも何もあったもんじゃない。まあ、俺みたいな奴にはこういう状況の方がお似合いか。
ふにふにとして柔らかいキバゴの口をたっぷりと貪った後、俺はのそりと顔を上げる。溢れ出た唾液が俺と、キバゴと。両方の口元をつややかに光らせていた。
「あ、う……。ま、まだ……見逃しては……?」
 少しだけ息を荒くしながら、ぐったりとした目でキバゴは俺を見上げてくる。きっと他にも何かあるんだろうなと、どことなく表情に諦めの念が垣間見えた。
分かってるじゃねえか。解放してやるにはまだ早い。これが最初で最後かもしれない。だから、俺は雌の体を味わっておきたい。
嫌がってるキバゴを脅して舐めさせたり、拘束して無理矢理キスしたりした後だ。もはや何かを躊躇う必要なんてあるもんか。
「お前にやってもらうばかりじゃ悪いからな。今度は俺の番だ」
 右腕は喉元を押さえつけたまま、俺は左手をそっとキバゴの股間へと伸ばしていく。この時点で自分が何をされるのか悟ったらしく、足をばたつかせて必死に足掻くキバゴ。
ちっ、どこまでも反抗的な奴だ。俺がわざわざ傷つけないよう慎重になろうとしてるってのに。仕方ねえなあ。
「下手に暴れると刺さっちまうかもしれないぜ、いいのかあ?」
 左腕の尖った爪を誇張するかのように、キバゴの目の前へと持っていく。そこでわざとらしく爪の一本一本を交互に動かしてみた。
「う……うぅっ」
 傷つけられるのは、痛いのはやっぱり嫌だったらしくキバゴは両足を動かすことをやめてくれた。
そして、ぎゅっと瞼を閉じたキバゴの目からもう何度目になるか分からない、涙のしずくが溢れ出していく。
ふん、最初からそうやって大人しくしておけばいいものを。結局最後の最後まで従順にはなりきらないか。別にいいさ。じっとしていてくれさえすれば、俺の目的は果たせる。
俺は爪のある指先ではなく、指の腹の部分をゆっくりとキバゴの股間に這わせていく。何しろ雌に直接触れるのなんて初めてのこと。どうにも勝手が分からんから慎重に。
ごそごそと股ぐらを弄っていくうちに、小さな亀裂を発見することができた。凹凸のないすべすべした皮膚の間に一か所だけ、縦に筋が走っている。
うお、本当にあるもんなんだな。雌なんだから当然と言えばそうなんだが。今までは妄想だけで現物を見る機会がなかったせいか、感慨深いものがあった。
二本の指でその割れ目を挟むようにしつつ、ぐっと横に広げてやる。健康的な桃色をした肉壁が奥へ奥へと連なっていた。へえ、こんな風になってんだな。
湿った内部がつやつやとてかるその様子は、艶めかしいというよりも不思議な物を見ているような、そんな感覚だった。
さて、これからどうする。指を入れてみようか、とも考えたがこの尖った爪で上手に加減してやれる自信がないし。何しろやったことねえからなあ。
かと言ってキバゴの体相応の可愛げな割れ目が、俺の肉棒の相手が出来るとは到底思えないな。と、なるとキバゴにやらせたように舌で遊んどくのが無難か。
「お、お願いです……そ、そこだけは勘弁して、ひゃっ!」
 それで勘弁するくらいなら最初から押さえつけたりしねえって。キバゴの言葉を聞き流し、俺は筋に沿ってぺろりと舌を這わせてみる。
直後、甲高いキバゴの声が洞内に響き渡った。恐怖や苦痛から起こる悲鳴とはまた違った、艶を含んだもの。
未進化のキバゴでも舐められればちゃんと感じるもんなんだな。進化後のポケモンと比べると、ちょっと色気が足りない気がするが悪くない。
そんな反応に味を占めた俺は更に舌を侵入させて、ぴちゃぴちゃとキバゴの雌を愛撫する。
表面に近い部分はまだしも、奥へ行くに従ってだんだんと舌の潜入が難しくなってきた。この締め付け具合だとまだ誰にも開発されてないんじゃなかろうか。
もちろん前例がないので俺の勝手な憶測に過ぎないが。ここまできついと、これ以上奥へ進むのは舌の筋肉の力だけじゃ無理な気がしてきた。
俺の舌が内部をうねうねと這いまわる度に、キバゴの体ががくがくと揺れる。それでもがっちりと固められた俺の右腕を撥ね退ける程の力には至らず。
舐めるのに夢中で、拘束が疎かになってました、なんてへまはしない。ここで逃げられでもしたら中途半端極まりねえ。生殺しもいいところ。
「あっ……や、やめ……ひぁっ」
 頬を紅潮させて、涙交じりでそんなこと言われてもなあ。何の抑止力にもならない。むしろ、俺の行為を促進させる効果しかない。
舌を動かす時のテクニックなんて知らねえし、適当に舐めまわしてるだけなんだが。キバゴの反応は上々と言ったところ。
キバゴの秘所からは俺の唾液だけじゃない、ぬるぬるした別の液体がじわりと染みだしている。気持ちの方は嫌がっていても体の反応は正直だ。
拘束されて無理矢理舐められたにも関わらず、こんなに濡らしちまうなんて、実のところは淫乱なんじゃないだろうか。
こんな風に使うのはもちろん初めてだったけど、俺の舌も案外捨てたもんじゃないのかもしれない。
それとも、キバゴが慣れていないせいで、大したことない動きでも過敏に感じ取ってしまっているだけか。
そんなことはこの際どっちでもいい。重要なのは雌が果てる瞬間ってのをこの目で見られるかどうか。それが目的でやってるんだからな。
「ひゃあああっ!」
 さああと一息、と挿入した舌に力を込めようとした矢先だった。耳に突き刺さるような悲鳴と共にキバゴの下半身、そして背中が一際大きく引き攣る。
直後、割れ目からぴゅるりと透明な液体が吹き出し、俺の舌や鼻先に付着した。
あれ、もうイっちまいやがったか。これからだってのに、何だか肩すかしをくらった気分だ。ちょいとばかしキバゴには刺激が強すぎたのかねえ。
あるいは精神的な興奮は皆無で、物理的なものだけで事に至ったのが原因か。ちゃんと出ることには出たものの、その量は僅かなものだった。
俺は鼻に付いたそれを手のひらに擦り付けてじっと観察してみる。雄の精液とは違って濁っていないし、粘り気も少ない。
匂いもそんなに強くない気がする。というよりも、俺がさっき出した奴の匂いの方が強いせいかよく分からなかった。
雌が果てる瞬間を生まれて初めて目にしたのだ。もっと感動を覚えるかと思えばそうでもない。相手がキバゴだし、こんなもんなのかもな。
後半はふと閃いたおまけみたいなもんだったし、まあいいか。メインは前半だよな。小さな手に、舌に。十分楽しませてもらった。
もうやれることはなさそうだし、こいつに用はない。俺は右腕をゆっくりと持ち上げ、キバゴを自由にしてやる。
「う……ぁ」
 解放されてからもしばらくの間、キバゴは虚ろな目で洞窟の天井を見上げていた。
涙は浮かんでいるものの、瞳の輝きが失われてしまっている。ぽかんと開けられた口から漏れる呼吸音が、やけに俺の耳に響いてきた。
このまま動かないんなら、邪魔だし外まで運ぶかなと俺が腰を上げようとした時だ。キバゴはふらふらと立ち上がって俺に聞いてきた。
「も、もう……いいですか?」
「ああ。とっととどっかに行きな。ま、これからは住処を探すときはくれぐれも気をつけるんだな」
 くくく、と馬鹿にしたような俺の笑みを見て感情が弾けたらしく、キバゴはわっと泣きじゃくりながら住処の入り口まで走っていった。
おぼつかない足取りだったが、それでも転ばなかったのは少しでも早くこの洞窟から離れたいという気持ちが大きかったのだろう。
居住者がいると知らずに洞窟に入ってしまっただけ。それにしちゃあキバゴにとっては割に合わないペナルティだっただろうなあ。
かといって、罪悪感や後悔があるかと聞かれればそうでもない。後になって自分の行いを悔いるくらいなら最初からやらねえ。
「ふう」
 キバゴが立ち去って、住処の中にいるのは俺だけ。これがあたりまえのはずなんだが、途端に静かになったように思える。
最中は没頭していて忘れていたけど、腹減ってたんだっけ。空きっ腹には少々激しい運動だったな。
今になって疲れがどっと押し寄せてきたのか。途端に体が重く感じられて仕方がない。俺は壁にもたれかかると大きく息をついた。
本当なら自分で処理するところを、偶然居合わせたキバゴのおかげでこんなにも楽しむことができたわけか。
いやはや、予想外のおいしい出来事だったな。レパルダスなんて目じゃねえ。やっぱり現物と妄想とは比べ物にならない。
もしレパルダスかキバゴか、どちらかを選べる状況なら俺は迷わずレパルダスを取るが。
手が届く範囲にキバゴしかいなかったら、遠慮なくキバゴを取る。脳内のレパルダスより本物のキバゴ。これに尽きるな。
さあて、腹は減ってるが気分は充実してる。思いっきり出して疲れたし、今日はゆっくり休むことにしよう。
明日は木の実を探して腹を満たして、その後戻ってからはキバゴをオカズとして再利用するのも悪くねえな。
キバゴ相手に散々欲望を吐き出しときながら、早くも次の算段か。そんな自身のろくでもない脳内に苦笑しつつ、俺は静かに眠りについたのだった。

―6―

 洞窟の入り口から吹き込んできたと思われる、冷えた朝の空気で俺は目を覚ました。
洞内は外気に晒されにくいとはいえ、入り口に岩で蓋でもしない限り密封性はない。こうやって直接冷たい風が入り込むと思わず身震いしてしまう。
今朝はいつもと比べると少し気温が低いような気がするが。どうにも冷気が体に沁みて二度寝できそうにもないな。
お呼びが掛かるぎりぎりまで寝ときたいところだったが仕方ない、起きるか。呻き声の様なものを吐き出しながら、俺は上体を起こした。
体が重くて仕方がない。何度か目瞬きしてみるものの、すぐに瞼が瞳に覆いかぶさろうとしてくる。寝覚めは良くなかった。
特に下半身、股間の辺りに鈍痛がする。朝だというのに収納されたままで大人しい。朝勃ちする元気もありませんってか。
無理もねえ。昨日は結構な無茶させられた。ううむ、二回目に達したくらいまではちゃんと記憶があるんだが。それ以降は曖昧だ。
どうやら、また途中で気を失っちまったらしい。それなりに順応はしてきたが、ちょっとでも気を抜くとすぐこれだ。
「あら、起きたのね」
「……ああ」
 起きたばかりってのもあるし、寒さのせいでてんで調子が上がらない。背後から掛けられた声に気だるそうに返事をすると、俺は重い腰を上げて立ち上がる。
くるりと振り返った先には、俺の半分の高さもなくて簡単にひねりつぶせてしまいそうな貧弱なキバゴ――――ではなく。
口元から顔の両側まで伸びた鋭利な牙は見るものを圧倒する。両方の手こそ控え目な大きさであるものの、それを補うようなどっしりとした両足と尻尾を持つ。
真っ赤な牙と爪。そして黄色と黒の入り混じった鱗を持つ、オノノクスの赤い瞳が俺を捉えていた。
オノノクスは腰を下ろしているので立ち上がった俺と目線は大体同じくらい。立って並ぶと俺よりもでかく、見上げなければ視線が合わない。
「じゃあ早速だけど、木の実探してきて。もう蓄えてる分がないからね」
 開口一番にそれかよ。ああそういや昨日の夜食ったので全部なくなっちまったんだっけ。
食べきった時にああ明日探しに行かなきゃなあと薄々思ってはいたが。昨夜は失神という名の睡眠で全部吹っ飛んじまった。
そして今朝。そうやって忘れかけていた現実を再び目の当たりにしたことになる。ああ、気が重いぜ。
「あのなあ、そう簡単に言うなよ。一個取ってくるのもなかなか難しいんだぜ?」
 ため息交じりに反論してみるもオノノクスはどこ吹く風か。さっさと行きなさいよと言わんばかりに、鋭く尖った牙で洞窟の入り口の方を俺に促す。
オノノクスの指す方向に俺は目を向けた。ただ向けただけで動こうとはしていない。外を吹き流れていく風の音が洞内にこだまする。まだまだ寒そうだな。
もう少し頭がすっきりするまで休ませてくれてもさあ。俺もお前も昨日の夜何個か木の実食ったんだから朝飯くらい抜いたって別に……。
俺がすぐに言う通りにしなかったのが気に障ったのか、オノノクスは尻尾をばしんと地面に叩きつけた。鈍い音と共に砂埃が舞い上がる。
体格の違いもあってか、オノノクスの尻尾は俺のよりも太くて強靭だ。悲鳴こそあげなかったものの、俺が軽く怯んでしまうくらいの迫力はあった。
「なあに、何か文句でも?」
「いや、何でもない……」
 うう、口調は穏やかだってのになんて威圧感だ。朝の冷たい空気とは違う、もっと質の悪い寒気を感じて俺は思わず身震いする。
もう痛いのも苦しいのもこりごりだ。俺もそれ以上言及しようとは思わない。下手に波風は立てたくないし。明るいうちくらいは平穏に暮らしたかった。
俺が諦めたように洞窟の外へとぼとぼと歩き出すと、オノノクスは満足げに微笑みそのままごろりと横になってしまった。
食事が来るまでもうひと眠り、か。自分は寝てても勝手に飯が出てくる。楽な生き方だよなとつくづく思う。
木の実、なあ。上手く採れるといいが。一個だと俺の取り分がなくなるのは確実だが、オノノクスのご機嫌取りくらいはできる。
どんなに体がだるくても俺の保身のためには最低一つは見つけなけらばならないだろう。ただ、それだと俺の腹が減るから出来れば二つ以上か。
入り口付近まで足を進めて俺はふと振り返り、仰向けで両手両足を大胆に広げて寝転がっているオノノクスに目をやる。
あの時のキバゴがまさかこんなにも強く、そしてふてぶてしくなるなんて誰が想像できただろうか。どうやらこいつは相当根に持つタイプだったらしい。
俺の寝込みにいきなりドラゴンテールを食らわされたときは本気で死を覚悟した。思い切り壁に叩きつけられて満身創痍の俺に、あの時の倍返しと言わんばかりの仕打ち。
ぼろぼろになった俺の上に跨って、肉棒を締め付けながら勝ち誇った表情で高笑いしていたオノノクスの表情は今でも鮮明に覚えている。
色々な意味で襲われたものの、オノノクスは俺の命まで奪うつもりはなかったらしい。だが、ここの洞窟は良い住処だからということで居座られてしまった。
追い出そうにも俺の力でオノノクスをどうこう出来るわけもなく。こいつとの強制的な同居を受け入れるしか選択肢は残されていなかった。
そしてオノノクスはこんなふうに俺をいいようにこき使って木の実を集めさせ、その間自分は住処の中で悠々とくつろいでいるというわけだ。
これも欲望に任せてキバゴを弄んだ報い、因果応報ってやつなのか。
確かに、オノノクスに徹底的にぶちのめされた今なら俺がどれだけキバゴに酷いことをしたのか分かる気がするが……。
「ふふ。私の寝顔がそんなに気になるなら、まだ朝だけど……」
 まだ入り口付近で立ち止っている俺に気が付いたのか、ふとオノノクスが顔を上げて呼びかけてくる。
こっちにおいで、とでも言いたげにいたずらっぽく笑いながら手招き。あられもない姿で寝そべった雌に誘われているこの状況。
昔の俺なら間違いなく胸の高鳴りを覚えずにはいられなかっただろう。遠慮なくオノノクスの元へ向かい、己の欲望のまま行動していたはずだ。
だが今と昔とじゃ境遇がまるでが違う。朝っぱらからだなんて冗談じゃねえ。ただでさえ消耗している体力を無駄にできるか。
昨夜あれだけ俺から搾り取っておきながら、どこにそんな元気を隠し持ってるんだろうと思わずにはいられない。
「……勘弁してくれ」
 俺がそう言って肩をすくめると、あら残念ねとぽつりと零しオノノクスは再び寝そべって目を閉じる。
そうやって一日のほとんどを寝ててくれれば俺の生活も安泰なんだがなあ。寝顔は可愛いんだが、起きた途端にその可愛さはどこかへ吹き飛んでしまう。
正直、こいつの外見だけを考慮すれば俺の広い守備範囲の中でも中心に近い方に分類されるだろう。
俺と同じドラゴンポケモンの異性ということもあって、全くもって惹かれる部分がないと言えば嘘になる。それ以外の部分で散々閉口させられているのは置いといて、だ。
一方的な同居が始まってしばらくたってから、こんな奴隷みたいな生活が続くならいっそのこと抜け出してしまおうかと考えたこともある。
オノノクスが追って来られないような遠くの地で新しい住処を探して、そこで暮らすというのも一つの手段ではあった。しかし、ここの洞窟は俺もお気に入りの住処。
俺とオノノクスが横になって眠っても余裕があるくらいに広いし、朝晩の多少の冷え込みはあれど快適だし、何と言っても思い入れがある。
所有権はほとんどオノノクスのものになっているが、すごすごと出ていくのは癪だ。
それこそ、完全に負けを認めてしまうような気がしてならない。ほとんど負けてしまっている俺の最後の意地と言ってもいいだろう。
だから俺は新しい住処を探すのは面倒だから、ということで強引に自分を納得させている。
 まあ、もの凄く前向きに考えてみれば、だ。住処を乗っ取られたとはいえ、居座ったオノノクスは俺が留守の間の用心棒も兼ねているはず。
彼女がいる限りはここが他のポケモンに荒らされたりすることはないだろう。住処に戻ってくるときに余計な心配をしなくてよくなったのは確かだ。
そして、何よりも夜の相手。オノノクスの情欲は相当なもので、彼女がそうしたいと思った時に俺の体を求めてくる。二夜連続で、というのも少なくない。
そこへ俺の意思が介入する余地はもちろんあるはずもなく。俺がどんなに眠かろうと疲れていようと強制的に取り行われるのだ。
手加減なんて微塵も感じられない強烈な締め上げに、俺はなすすべもなく一滴残らず搾取されてしまう。
オノノクスとの行為に、最初は悔しかったり情けなかったりで涙が零れた時さえあったが。慣れってのは恐ろしいもんだ。
彼女の容赦ない攻めも、案外いいかもなって思えてくるようになったり。行為を重ねるうちに、いつの間にかそっちの性癖に傾いちまったのかな、俺。
仲睦まじい恋仲、とは口が裂けても言えそうにもないが。今まで生きてきて共に過ごす異性がいなかった俺にとっては結構新鮮で。
住処に戻ったら自分だけじゃなくて、声を掛けてくれる誰かがいる。それだけでも何だかあったかい気持ちになったんだ。
後は、すぐ近くにオノノクスという異性がいるおかげで、悶々とした気持ちを抱えたまま住処で自慰に耽ることはなくなった。
その辺は彼女が徹底的に欲望を処理してくれるので、自分で抜こうと思えなくなったというのが正しいか。
むしろ何日か貯めておかなければという必要性さえ感じてくる。何回も扱かれるから貯めててもきついんだがな。
昔の俺の一度でいいから雌とヤってみたいという願望は辛くも叶えられたということになる。蓋を開けてみれば、一度どころじゃなかったんだが。
 何にしても今の環境は自分の行いが招いた結果であることには変わりがない。俺は幸せなのか不幸なのか。その判断の全ては俺次第。
それならプラスの方向に考えてみるのも悪くない。俺の場合は前向きというよりは妥協に近いんだろうけど、細かいことはいいさ。
さあて、サボってるとまたお仕置きが飛んでくるからな。今日も木の実を探しに、一頑張りと行くか。

 END



何かあればお気軽にどうぞ

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  • こんばんは。
    感情のままに行動する、ちょっぴりヘタレなクリムガンが面白かったです。

    このお話は、まだ続く予定ですよね。
    流石に元凶であるレパルダスの登場が少ないので、これからどう絡んでくるのか楽しみです。

    執筆がんばって下さいね。続きを期待して待っています。では。
    ――コミカル 2011-03-17 (木) 01:09:18
  • こういうタイプの主人公は今まで書いたことがなかったので私もなかなか新鮮でした。
    物語の山場はだいたい書ききったような気がしますが、もうちょっとだけ続くのです。
    レスありがとうございました。
    ――カゲフミ 2011-03-18 (金) 20:49:11
  • やはりSM逆転か
    くそっ!!やられた!!カゲフミさんめ!!まさかここまでウッ!!……フゥさせられるとは思わなかった!!……フゥ
    さすが愛のSM伝道師。素晴らしくエロくて最高でしたウッ!!……フゥ。
    やはりというかクリムガンはやっぱりそんな感じでしたね。種族値的にわかってはいましたが(ry
    ともかくとても楽しかったです。新作も頑張ってくださいませー。
    ……フゥ
    ――ウロ 2011-03-26 (土) 19:38:53
  • なんかへんな臭いがしますねここ。

    上がっていたのであれ? とおもい覗いてみたらオノノクスによる下剋上……というより報復が成されていましたねww

    お疲れ様でした。
    次回作も楽しみにしています。
    ―― 2011-03-26 (土) 21:05:11
  • 見事な下剋上ですな。
    どんどんSMプレイに傾きつつ、それに順応していくクリムガン.....因果応報、自業自得ですね。
    でも、オノノクスもクリムガンとヤッているので報復という気持ち以外の感情も持ち合わせているはず.....超かかあ天下ですけどね。
    クリムガンの種族値は"帯に短し襷に長し"で繰り出しにくいです。パーティーとよう相談。
    クリムガンの翼(みたいなもの)の役割って何なんでしょうか?
    洞窟で暮らすには邪魔そうで.....自分では体温調節に一役買っているのではないかと思っております。(実は"空を飛ぶ)
    ――名無し ? 2011-03-27 (日) 01:15:37
  • (実は"空を飛ぶ"翼で打つ"鋼の翼"覚えたりしますか?)
    投稿ミスです(-_-;)スミマセン...
    ――名無し ? 2011-03-27 (日) 01:51:11
  • あぁ、なるほど。こういう結末でしたかw
    それにしても後味の悪くならないエンドを演出できるカゲフミさんはさすがですね。
    執筆お疲れ様でした。
    ――beita 2011-03-27 (日) 07:22:20
  • 尻に敷かれるクリムガン.....いいと思います!
    ―― 2011-03-27 (日) 14:45:30
  • やっぱり最後はこうなりますよね。個人的にはオノノクスが初めて来た辺りも読みたかったりしましたがw
    クリムガンじゃ仕方ないですね。それにオノノクス♀はこうであって欲しいです。ドラゴンなので……w

    オノノクスも進化の報復がアレな辺り、なんだかんだで気に入ってるんでしょうね、行為自体も、クリムガンのことも。
    そして改めてクリムガンの範囲の広さにびっくりします。大抵のものならいけちゃいそう。雑食にもほどがある。
    最終的には案の定クリムガンがちょっと可哀想な立場ですが、末永くそこそこ幸せに暮らしてほしいものです。

    執筆お疲れ様でした、次回作も頑張って下さいー。
    ――&fervor 2011-03-28 (月) 02:48:27
  • ウロさん>
    SM伝道師になった覚えはないんですがww
    しかし書いてる小説は割とそういう傾向にあるのは否定できませんねー。
    種族値から考えてやっぱりクリムガンはこうなっちゃいました。
    楽しんでいただけたようで何よりです(

    二番目の名無しさん>
    臭いはきっと気のせいです気のせい。
    下剋上と言う名の報復がしっかりなされたようです、ハイ。

    三番目の名無しさん>
    これもクリムガンの行いが招いた一つの結果です。
    そうですね、実際体を交えちゃってるわけですからオノノクスも多少は愛情なりなんなりそういう感情があってもおかしくはないです。9:1くらいの割合にはなりそうですが。
    クリムガンは対戦で使うにしてもちょっとした工夫が要りそうで、オノノクスやサザンドラに比べると使い勝手は劣ってしまうのかもしれませんねー。
    ちなみに翼技は覚えないようです。おそらく体温調節のためか何かかと。

    beitaさん>
    はい、こういう結末になりましたw
    あんまり悲惨な結果にするのはクリムガンがちょっとかわいそうだったので。
    服従しつつもそこまで苦痛に感じてないことをにおわせてみたり。

    五番目の名無しさん>
    いいですよね!

    &fervorさん>
    割と予想がついちゃいましたかね。種族値的にどうしてもこうなる。
    その辺も書いてみたくはあったんですがどうしても長くなってしまいそうだったので。
    今のところは皆さんの想像に任せることにしますw
    オノノクスもクリムガンのことを心から憎んでるわけじゃないんでしょう、おそらくは。
    守備範囲が広いとこういうときに便利だと思います、たぶん。

    皆様、レスありがとうございました!
    ――カゲフミ 2011-03-28 (月) 22:10:01
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