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守護の力 三、四話

/守護の力 三、四話

written by cotton

三, 牙の少女

青空の一つの影に、太陽が照りつける。白銀は光を受け、目映く輝く。月光のような柔らかさではなく、その光には、鋭いという印象を受ける。

取りあえず、上空から捜すことにした。当然、特性"鋭い眼"でも地上、それも森の中の一匹を見つけるのは容易ではない。
"聖地"ですら見つけるのが困難だというのに、"聖天"の助けを得るのはどうかと思うのだが…。
それでも、ヒントが無い訳ではない。捜す相手は負傷したクチート。それならば…。

…あったあった、岩場の真下のところに。牙を引き摺ったような跡。


着地したのは洞窟の前。"手がかり"は、洞窟の中へと続いている。洞窟といっても、そこまで大きいわけではなく、少し跳ぶだけで天井に頭がぶつかる高さである。
「…!?誰…?」
洞窟内に響く声。
「…いた。お前を捜してたんだ」
声の正体:クチートは恐れるように、石壁を背にしてこちらを見ている。
「…敵じゃない。助けに来ただけだ」
どんな言葉をかけようと、恐怖感が薄れる様子はない。まだ幼い彼女は、今にも泣き出しそうな雰囲気である。
「嫌…嫌…!」
「…ったく。どうすりゃ…」
『いたー!この中だよ、ドラ!』
「ッ…?誰だ…?」
入り口から声がする。二匹の影が、中へ伸びてくる。
『ドラじゃねぇッ!ドランだっ!!』
『いいじゃん、別にどっちでも』
『…まあ良い。で、居たのか、ナノ?』
声の主はこちらを指差す。クチートの、恐怖に満ちた声が響いた。
「ッと、…あれ~?誰かもう一匹いる~?」
近寄ってきた声の主。"ナノ"と呼ばれたニューラである。その後ろについてきたのは"ドラ"…もとい、"ドラン"と呼ばれたコドラ。
「…お前、"聖天"か?何故此処にいる?」
「任務だ、破壊者を捜せって」
「…ねぇ」
ニューラが辺りを見回して言う。
「ん…?どうした、ナノ」
「つまり、あたし達は任務を先に越されたってことよね」
「ああ、そうなるな」
「でもさ、今状況的に有利なのはこっちよね?」
「…!お前ら、まさか…!!」

「そう。あたし達と戦うの☆」

四, 絶体絶命

追い詰められたとしか言いようがない。
後ろは壁、こちらを恐れる少女がヒトリ。相手は二匹。洞窟の中、翼の力をフルに使えない。
こちらに味方する条件など、一つも無い。

考えている間に、だんだんと影は近づいてくる。
「そいつは良い考えだな。たまにはマシなこと言うじゃねーか」
「たまには~?ひっど~い」
二匹とも戦闘の体勢に入る。
「…"リーダー"ッ…!怖いよ…えぐっ…」
無論クチートに戦う様子は無い。
「貴様ら…!」
「行くよ?騙爪:騙し討ちッ☆」
消えた…と同時に、胸に刺さるような感触。
「ぐッ…!」
完全に油断していた。急所への一撃を受け、隙を作ってしまった。
「チャンスッ!乱爪:乱れ引っ掻き!」
隙のできた体に、一、二、三…と、舞うように鋭爪を当ててくる。鋼の体へも、確実にダメージを重ねてゆく。避けようとしても、体が言うことを聞かない。逃げることもできず、ただ受け続けるしか無かった。
乱爪が終わる頃には、体には重なった傷が残った。
「さあ、決めてあげて、ドラ?」
「だから…ドランだっつってんだろ…!」
一歩退いて、首を引っ込める。
「堅頭:頭突き!」
「くそッ…!」
翼で受け止める。堅頭の威力に、思わず後ずさりする。
「堅尾:アイアンテール!」
彼は更に攻撃を重ねてくる。後ろには、壁が迫ってきていた。

「…あの時の"リーダー"と、同じ眼してる…」
「…え?」
ふと少女が口を開いた。
「私に声掛けてくれた時の、"リーダー"の眼…」
"リーダー"の存在のお陰なのか、彼女の恐怖感はもう無かった。
「あの…エアームド…?」
「…何だ?」
「あたしにも、何か手伝える…?」
彼女の涙は頬を伝い、土を濡らした。

守護の力 五、六話へ。

気になった点などあれば。




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Last-modified: 2009-12-01 (火) 00:00:00
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