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好きすぎて・・・

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好きすぎて・・・ 

少しエロ表現あります。
青浪



夏の強い日差しが突き刺さる少し前・・・まだ少し冷たい朝。
「や、やめっ・・・」
よくある学校の25mプールのプールサイドで、グレーの身体と特徴のある黒のラインを持つ1匹のグラエナがおびえた表情でプールを背にして後ずさりしている。
「グラエナが悪いんだよぉ。」
そういうと薄紫の身体のエーフィがふっと手をかざす。
「このまま落ちて、びしょびしょで授業受ける?」
「やめろよぉ・・・」
グラエナが逃げようにも、すでにねんりきで動きを抑えられ、唯一後ろにしか動きが取れない。赤い瞳は恐怖で怯えて、涙で潤んでいる。
このエーフィとグラエナの関係は単に、いじめっこといじめられっこ、そういうわけではない、いや、そうではなかった。
「落ちたいの?」
意地悪なエーフィの質問に、グラエナはぶんぶん、と首を横に振る。尻尾もだらりと垂らして、もう精神でしか抵抗できないようだ。
グラエナはどうしてこうなったのか、身体を震えさせて出来る限りで思い出そうとしていた。
「グラエナが私の告白断るから悪いんだよぉ・・・」
そうだった、グラエナは思い出した。エーフィはグラエナに告白して、グラエナはあろうことかそれを断った。
すると、次の日からいじめられることになった。グラエナはエーフィのことが嫌いじゃない、むしろ好きだった。でも、あの時、断ってしまった。
べつにエーフィは♀だし、力づくで抑えようと思えば抑えられる。でもグラエナにはそれが出来ない。
タイプの相性でそれが出来ない、そういうわけじゃない。グラエナの、自分はエーフィにやられても仕方ない、そんな諦めだった。
「どうしようかな~・・・落とそうかな?それとも・・・落とそうかな?」
笑顔でそう言うエーフィには落とす以外の選択肢がないみたい。
グラエナも後ろには自由に身体が動かせるからと言って、いつまでも後ろに下がるわけにはいかない。その、グラエナの後ろがプールだし。
エーフィの蒼い瞳は、いじめることを楽しんでるというより、どこか悲しげだった。それに気付いてたグラエナは、もっと抵抗することを躊躇した。
ずりずりと後ずさりをしていくグラエナは何かが尻尾に当たったことに気付いた。
「あれ~?もうグラエナに後ろはないよ~?」
相変わらず楽しそうに言うエーフィ。確かにグラエナにはもう後ろはなかった。これ以上下がるとプールにおっこちる・・・
「どうする?」
「やめて・・・」
聞かれたので一応、一応グラエナはエーフィにお願いしてみた。無駄だと思ったけど。
「ダメ。」
ほら。冷徹に言い放つエーフィ。エーフィはふっとかざした手に力を入れる。それを見たグラエナは覚悟を決めた。
「じゃ。教室で待ってるよ。」
エーフィがそう言った刹那、グラエナの身体は吹っ飛ばされ、バシャァン!と勢いのいい音を立てて、プールにその身体を沈めていった。
ぶくぶくと息を吐くが、グラエナは浮き上がる気になれない。体毛が水を吸ってどんどん重くなる。それに比例するかのように、グラエナはこのまま沈んでいきたかった。
目を閉じて、じっと息たえるのを待つ。身体は思うようには沈んではくれないが、生きるのをやめるにはプールは十分な深さだ。
次第に息苦しくなって、身体は自然と浮きあがろうと筋肉を動かす。でもグラエナの精神はそれを拒み続ける。
ふと、授業で教えられた世界史の話をグラエナは思い出した。
”大昔、魔女狩りで、魔女は水に浮くと信じられていた。魔女とされた者は必死に水に沈もうとするが、それは容易に出来ることではない。”
水に浮くのは、生物の必然と言える部分もあるので、意図して身体を水に沈めることは出来ないのだ。
”魔女とされた者は沈むことができず、おぼれ死ぬことも許されず、筆舌に尽くしがたい苦しみを味わった。”
一通りその話を思い出した後グラエナはふっと笑みを浮かべた。ならば今、ここで自分が死んでやろう・・・と。
「!」
ぐぐっと首根っこを掴まれた気がしたグラエナはあわてて目を開ける。確かに誰かが自分の首根っこを掴んでてずいずいと水の中をプールサイドに向かって進んでいた。
バシャっとプールから引き揚げられたグラエナは仰向けに寝かされた。グラエナの視界に映っていたのは、体育でプールのときにいつも教えてくれる、カメックス先生だった。
「グラエナぁ!お前!死ぬぞ!」
いつもの温厚な感じは消え失せて、ただショックに打ちひしがれてる・・・カメックス先生はそんな感じでグラエナに話しかける。
グラエナはなにも答えない。身体をびしょ濡れにさせて、目は虚ろにあちこちを見ている。
「何かショックなことがあったかもしれないけど・・・だからって自分で死を選ぶようなマネだけはしないでくれ・・・」
カメックス先生はそう言うとグラエナの顔を何度も手で触る。するとグラエナの瞳からは涙が流れ落ちた。
「医務室に行くか?どっちにしろびしょ濡れだと授業は受けられないぞ。」
「・・・」
「なんか言えよ。」
お互い落ち着いたのか、カメックス先生は普段のような声色にもどったし・・・でも、口調は少し険しいけれど・・・
グラエナは助かってしまった、という考えと助かってよかった、いう考えのはざまで揺られていた。
「お~い。」
ふにふにとカメックス先生がグラエナのお腹を何度か軽くもむ。くすぐったいグラエナは身体をぴくっと跳ねさせたあと、笑った。
「・・・やめてくださいよ。」
「やっと笑ってくれたから。」
照れ隠しもせず、そう言うカメックス先生をグラエナは慕っていた。さっき・・・とグラエナは先ほどのプールサイドでの出来事をカメックス先生に話す。
「エーフィが?信じられんなぁ・・・おしとやかキャラで通ってるからなぁ・・・誰もが二面性を持ってるってことなのかな。」
意外だ、という表情を浮かべるカメックス先生は、エーフィの普段の学校でのキャラをよく理解してるみたいだった。
エーフィはおしとやかで♂からの人気も高い、学校では。でも、グラエナはエーフィはおしとやかなんじゃなくて、感情を表に出すのが下手糞なんだ、と感じてる。
「医務室いこうか。とりあえず。」
カメックス先生はグラエナを起こすと、びしょびしょのグラエナを誰にも見つからないように医務室に連れて行ってくれた。

「すいませ~ん。」
ガラガラとカメックス先生が医務室のドアを開けると医務室のラッキーさんが、不思議そうな目でグラエナを見ていた。
「どうしたんですか?グラエナ君?」
あわててタオルを持ってグラエナに駆け寄るラッキーさん。グラエナは何も言わず、ずっとうつむいている。
「びしょびしょじゃないですか!カメックス先生?」
ラッキーさんはグラエナの身体をごしごしと拭き始めると、カメックス先生を責めている。
「いや・・・俺じゃなくて・・・その・・・」
まさか、目の前にいる温厚そうなグラエナが、自分で死を選びそうだった、なんてカメックス先生は言えなかった。
言ってしまえばグラエナの今後に大きな影響を及ぼすし、カメックス自身の教師としてのプライドに傷がつくかもしれなかったからだ。
「・・・何があったかは聞きませんけど、グラエナ君は泳ぐの苦手でしょ・・・」
呟くような小声でラッキーさんは言う。この学校はすごく小さいから、全ての先生が生徒の性格とか行動を把握してる。
だから下手に問題を起こせば、たちどころに全ての先生が問題を起こした生徒のところにやってくるわけ。
それが抑止力として働いているせいか、非行に走る奴はいない。いじめもない・・・そのはずだった。
”いじめる”のにエーフィはグループを持ってるわけでも、誰かほかの奴をけしかけて来るわけでもない。すべてエーフィ自身の力でグラエナを追い詰めていたのだ。
グラエナがエーフィにいじめられてる・・・その事実を知ってるのは、生徒数名と、さっき話したばかりのカメックス先生だけだ。
カメックス先生はさっきからずっとグラエナの頭を撫でてる。水で冷え切ったグラエナの身体にはカメックス先生の手は温かかった。
「さ、一応拭き終わったから。」
「ありがとうございます。」
ラッキーさんにお礼を言うと、グラエナはカメックス先生に連れられて、医務室から出て行った。
「風邪ひくぞ。」
「わかってます・・・へっくし!」
「ほらぁ~。」
グラエナがクシャミをするたびに、カメックス先生はまだ少し湿って、冷たい喉元を撫でる。
カメックス先生が教室にグラエナを連れて行くと、授業中だった。教室のドアを開けて、カメックス先生が担任のバシャーモ先生に事情を説明しているうちにグラエナは席に着いた。
「へっくし!」
「大丈夫か?」
声をかけてくれたのは隣のヘルガー・・・反対の隣は・・・エーフィだ。エーフィはむすっとした顔でヘルガーを見ている。
「大丈夫・・・じゃないかも、へっくし!」
「身体を大事になぁ・・・」
ヘルガーは憐れんで、前肢でグラエナの頭を何度も撫でた。ヘルガーはグラエナとエーフィの関係をもちろん知ってる。
グラエナはエーフィのほうを見れない。怖いから。

「じゃあ今日はここまで。さようなら。気をつけて帰れよ。」
バシャーモ先生がそう言うとみんなカバンを背負って教室から出て行く。グラエナもカバンを首から提げて、トコトコ教室のドアに向かって進んでいく。
「グラエナ!一緒に帰ろうぜ!」
ヘルガーの声だ。グラエナが振りかえると、ヘルガーがあわてて帰る準備をしている。はぁ、とため息をつくとグラエナはヘルガーを待った。
「いでっ!」
叩かれたグラエナが振り向くとエーフィがいて、拗ねた表情をしてるけど、上目遣いでグラエナを見てる。
「な、何?」
いきなりちょっかいをかけられて動揺を隠せないグラエナ。エーフィはその眼力を強める。
「いっしょに・・・帰ってくれない?」
「へ?」
意外な頼みだった。エーフィは拗ねてるのか、とおもったら照れた声でグラエナに話しかけた。
「い、いいよ。一緒に帰ろう・・・ヘルガーも一緒だけど。」
ヘルガーも一緒、という言葉を聞いた途端に、エーフィはやっぱりいいや、と言って教室からあわてて出て行った。
ドン!
「おっす!」
身体を叩かれた、と思ったらヘルガーだった。グラエナと同じように首からカバンを提げてる。どうやら帰る準備ができたみたいだ。
「帰るか。」
「そうだな。」
ヘルガーもグラエナも寮住まいで、といっても1匹1室っていう贅沢な寮・・・というよりアパートだけど。
じりじりと太陽の照りつける中、寮への道をトコトコ進んでいると、ヘルガーが唐突に口を開いた。
「なんで、エーフィの告白、断ったの?」
「え?」
グラエナが戸惑うくらいヘルガーの顔はいたって真剣だ。
「それは・・・」
「ったく、素直にOKしてたら、今頃ウハウハだったのによぉ。」
けどすぐにヘルガーは真剣な顔からいつものおちゃらけた顔に戻った。
「エーフィは100発100中の♀なんだから、告白してNG出されたの、多分お前が初めてなんじゃないかな。」
初めて?俺が?エーフィを断ったのが?グラエナは不思議に思った。
「どういうこと?」
「エーフィは今まで告白を断られたことなかったと思う。だからエーフィにはすこしつけあがってる部分があったんじゃないか?」
ヘルガーはグラエナを擁護するようなセリフを言う。
「でもお前もいじめられて嫌だと思うけど、エーフィのプライドもひどく傷ついたと思うぞ。」
「なるほど・・・」
グラエナはヘルガーの一言一句に同意せざるを得ない。シチュエーション的にも、ヘルガーの仮説がぴったりだったからだ。
「ま、あまり深く悩まないことだ。どのみち卒業したらおさらばだし。じゃぁな。」
そう言ってヘルガーとグラエナは別れた。
グラエナは自分の部屋に入って、ゴロンと仰向けになって寝る。今日あったことを振り返りながら・・・
プールに落とされた時はずいぶん寒く感じたが、今となってはかなり暑い。

次の日の学校。陽はギラギラと少し西の空から地を照らしている。
「今日はプールだぞ。」
嬉しそうに言うヘルガー。グラエナはプールの授業を見学することをすでに決めていたし、カメックス先生もそれを快諾した。
「おーい、グラエナ~。なんでお前泳がないんだよ~。」
「別に。」
ぷいっと首をふるグラエナにヘルガーはプールに入れることのメリットをたーんと解説する。
「♀の濡れてるところが見れるんだぜ!嬉しいよなぁ!」
「うるさいって。」
大声をだすヘルガーをグラエナが注意する。あまりにも下品だったから。誤解も招くし。
「おーい、授業終わったんなら早くプールに来いよ。」
教室にカメックス先生がやってきて、ざわざわ騒いでる生徒にはやくプールに来るように言う。
みんなタオルを持ってプールに向かうと、いきなりバシャバシャ水音をたててプールに入っていく。
昨日以上にギラギラ照りつける太陽のもと、グラエナはプールサイドに出来た日陰でうつ伏せになってボーっとしていた。
「グラエナ。風邪ひいてないか?」
カメックス先生がグラエナを心配して声をかけてくる。グラエナは身体を起こして大丈夫です、と返事をして、再びうつ伏せになった。
「あいつなにやってんだ・・・」
ふとプールに目をやるとヘルガーが♀を追いかけまわしてる。しかも追いかけるたびにカメックス先生にハイドロポンプを食らってる。
「せんせ~やめてくださ~い~!」
ヘルガーの楽しそうな声がプールに響く。カメックス先生はヘルガーにそうか、そうか、といいつつもハイドロポンプをやめる気配を見せない。
あいつも彼女いるのに、たまにはいい薬だ、と思っているグラエナは、水が好きなヘルガーが少しうらやましかった。
うらやましいといっても、水が苦手じゃない、というだけの意味で、水が好きで、♀を追いかけまわしているところがうらやましいわけでは決してなかった。
グラエナは気分がよくてついウトウトしていた。今日の学校の授業はこのプールで終わり。もう夏休み。
つんつん、誰かに身体を突っつかれた気がしてグラエナは目を覚ます。
「え、エーフィ・・・」
薄紫の身体をびしょびしょに濡らせて、エーフィはグラエナを見ていた。エーフィを警戒しようにも、少し遅い。
「水、苦手なの?」
その声は決して意地悪そうなものではなく、単純な興味から来るものだと、グラエナは思った。
「おかげ様で。」
逆にグラエナが意地悪な返答をしてしまう。何されるかわからない恐怖がグラエナの心を頑なにしていた。エーフィには恐怖を感じてはいなかったけれど。
エーフィはすこしむすっとした顔をした、悪い、と思ったグラエナはとりあえず謝る。
「ごめん。別に苦手じゃ・・・いや、苦手。泳げないから。」
「そうなんだ。」
昨日のプールに落としたこともあるのか、エーフィは少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「泳げないって・・・夏の楽しみがないよね。」
少し小ばかにするようなエーフィの態度に、はいはい、と適当にあしらうグラエナ。少ししてエーフィは悪いことをしたと思ったのか、表情を暗くする。
「いや・・・その。今日さ、今日こそ一緒に帰ろうよ。」
「へ?」
意外な提案だった。昨日はただのエーフィの思いつきで言ってると思ってたグラエナは今日も同じお誘いを受けたので、少し戸惑う。
「いや・・・いやだったらいいの。」
「じゃあさ、帰ろう。今日こそ。」
すこし落ち込んで言うエーフィに、グラエナの快諾はかなり意外だったみたい。
「いいの?」
「はい。」
何度も聞いてくるエーフィ。グラエナは素直じゃないなぁ・・・と思ってる。
プールに落とされた事件があってから、エーフィのグラエナに対する態度は、告白する前のおとなしい態度に変わってきているように、エーフィ自身もグラエナも感じていた。
「じゃあ、約束だよぉ。」
そのセリフをグラエナは何カ月ぶりに聞いただろうか。
エーフィのその顔にはかつての笑顔はないけど、押し殺してる感情、その表情の下に、エーフィが喜んでいるのを、少しグラエナは感じられた。
「ああ。」
グラエナが返事をすると、エーフィは友達・・・ヘルガーの彼女のブラッキーのところに舞い戻って行った。
ブラッキーとエーフィは何やらグラエナのほうを見て話しこんでいる。その視線にグラエナが気付くことはなかったけれど。
時間になったのか、みんなぽつぽつとプールから出て、身体を乾かしている。
「じゃあ、今日の授業はここまで。明後日は終業式だぞ。」
カメックス先生がそう言うと、みんな濡れたタオルを持って教室に帰っていく。
グラエナはヘルガーがカメックス先生に説教を食らってると思ったので、そのまま1匹トコトコと教室に戻っていった。
教室ではエーフィがグラエナの帰りを待っていたらしく、カバンを提げて、グラエナの席にいる。
「遅い。」
「ごめん。」
不満そうなエーフィに怯えたグラエナはあわてて帰る準備を済ませると、カバンをいつものように首から提げた。
「お待たせ。」
すこしよそよそしい感じにグラエナは言うと、エーフィはううん、と首を横に振った。
寮までの帰り道、2匹の間にほとんど会話らしい会話はなく、ずっとうつむいている。何かされるんだろうか、そうグラエナは感じていたし、エーフィは、話の種に困っていた。
「あのさ・・・そこの公園いかない?」
エーフィが指さしたのは、誰も遊んでいない、そこそこの大きさの静かな公園。コクリとグラエナがうなずくと、エーフィに導かれるように公園に入っていく。
2匹は公園のグラウンド脇のベンチに乗ると、エーフィは少し憂鬱そうな表情を浮かべた。
「グラエナ・・・あのさ。」
暗い口調でエーフィは話し始める。グラエナはそっと聞いている。
「私・・・どうしてこんなに素直になれないんだろう・・・好きなポケモンに告白して・・・振られて・・・」
エーフィは感情を抑えきれないみたいで、時折泣きそうな表情を浮かべて話している。
「ずっと、おしとやかとか、百発百中の♀とか・・・そう言われてきたけど・・・違うの。ずっと悩んでた・・・私の影に。」
「影?」
グラエナは聞く。影って?ウラでもあるのか、と。
「影っていうのは本当の私のこと。私・・・百発百中の♀っていうのは・・・その・・・」
エーフィは後ろめたい気持ちを一生懸命にいじめてたグラエナに話そうとする。
「私、本当に自信がなくて、好きなポケモンのこと、ずっと聞き回って、私のことが好きだって知ってから告白してたの。だから百発百中なんて嘘なの・・・」
目に涙を浮かべて、エーフィは告白する。
「みんな付き合ったら本当の私のことなんて知りはしてくれなかった。みんな私の身体を・・・尻の軽い♀だって何度も罵られた・・・」
グラエナは少しショックを受けた。エーフィにではなくて、付き合った♂みんなにだ。
「でも私は一度も身体を預けたことなんてなかった。そうしたらみんな私から離れていった・・・それで悩んでるときにグラエナが現れたの・・・」
「俺が?」
ちょっと悪い空気を察知してグラエナは話に間を入れる。でもエーフィはそんなの関係なく話し続ける。
「そう。いつもみたいに友達のヘルガーに何回も聞いて、自信を持ってグラエナに告白したの。そしたらグラエナは私のこと・・・」
「あ、あれは・・・」
何かされる、そう思ったグラエナは話を止めようとするけど、エーフィは止めない。
「グラエナは・・・私を拒んだ。私のことが好きだって知ってたのに・・・私を拒んだ。羞恥で頭がおかしくなりそうだった。」
エーフィの怒りのエネルギーはグラエナを完全に捉えた。抵抗する気はなかったけど、グラエナは身体を動かすことができなくなった。
「グラエナをもっと知りたくなった・・・でももっと私のことを知ってほしいと思った。」
ふわ~、とグラエナの身体の力がエーフィによって奪われていく。
「グラエナも私のことケツの軽い♀だと思ってるんでしょぉっ!」
そのセリフをエーフィが吐いた途端、グラエナは身体を投げ飛ばされ、石垣に背を打ちつけた。首から提げていたカバンはエーフィのベンチの反対側まで飛んで行った。
散乱する教科書。失われていく意識。最初の一撃でグラエナは声も出せないくらいにダメージを食らった。
「でも、グラエナはそんなこと思ってないよね?ほかの♂とは違う。」
祟っても祟りきれない・・・グラエナは今までエーフィが付き合った♂を全員呪い殺したくなった。それぐらい痛い。
エーフィは言葉に一貫性を無くして、自問自答し続けている。
「いでで・・・」
「グラエナは・・・ぐらえなは・・・ぐらえなは・・・」
「っ・・・」
ずりずり・・・エーフィはグラエナの身体を石垣から引きななすと、ゆっくりとグラエナの身体を地面に打ち付け、引きずっていく。
グレーの体毛も血が垂れて赤く染まり、地面に引きずられている部分の傷はえぐられるような痛みだった。
「・・・っ・・・ってぇ・・・」
念力でずりずりと引きずられていくグラエナはエーフィに近づけられていく。
「こんな私でも・・・グラエナは好き?」
明らかに嫌い、という答えを引き出そうとエーフィはしているのだ、そうグラエナは思った。
「好きだ。」
「ふ~ん・・・」
「ぎゃっ!」
今度は直接エーフィに頭を踏まれた。結構痛いみたいで、グラエナは身体の毛を逆立てている。
「こんな・・・こんあわたしでもだよぉ・・・ぐらえなにこんなひどいことしてるのに・・・ぐらえなは・・・」
ぐりぐりとグラエナの頭を踏みつけるエーフィは目から大粒の涙を流して、痛がるグラエナをずっと見ていた。
「・・・エーフィは・・・」
「な、なぁに?」
痛みをこらえて、グラエナは喋ろうとするが、相当痛いらしくギリギリだ。
「自分の・・・いい点を・・・もっとし・・・いだいっ!」
虚ろにグラエナの話を聞いているエーフィは急に痛みを訴えたグラエナに現実に引き戻された。と、いってもグラエナが痛がったのはエーフィが踏みつける力を強くした、とかそういうわけではない。
「グラエナ!ごめん!大丈夫?」
「エーフィが言うセリフじゃないな。いでで・・・」
足を離して、全ての力を抑え、我を取り戻したエーフィはあわててグラエナの傷を見る。
「舌噛んだ。思いっきり。すんげぇ痛い。」
グラエナの口調が可笑しくて、ずっと謝ってたエーフィも笑ってしまう。
「笑い事じゃないって。ほれ。」
グラエナが舌を見せると、血が出ている。
「グラエナ・・・私のこと嫌いだよね・・・」
落ち着いたエーフィはもう一度聞く。
「嫌いだったら、もうとっくに逃げてるよ。」
実は逃げる体力のないグラエナだったが、エーフィとの会話を尊重してそう言った。
「グラエナ・・・怪我の治療しようよ。私がするからさ・・・」
「ああ・・・頼むわ。そのまえに教科書とカバン拾ってきて。」
「ごめん・・・わかった。」
エーフィはあわてて散乱したカバンと教科書を拾い集める。グラエナはその様をみて普段のエーフィに戻ったかな?と少し安堵した。
集め終わったのか、息を切らせてカバンを咥えたエーフィが走ってきた。
「これ!ちゃんとあるか見て!」
「うん。」
グラエナはエーフィが拾ってきたカバンと教科書を見て、無くなった物はないかと、何度も確認して、ありがと、とエーフィにお礼を言った。
「じゃ、グラエナの家に行こう!泊まるよぉ~。」
「え?」
エーフィが突如大胆なことを言ってきたので、グラエナは驚いて、リアクションが出来ないでいる。
「怪我を治療するんでしょ?だったら私に責任があるから。」
「でも、泊まるっていうのは・・・」
「さぁいくよ。」
そう言ってボロボロのグラエナをエーフィは起こす。2匹が公園を出ると、ボロボロのグラエナは明らかに不格好で、違和感のある外見だった。
「グラエナが告白を受け入れてくれたら、どうなったのかなぁ・・・」
「俺をモルモットにしたのか。」
「違うよぉ。グラエナはモルモットじゃないじゃん。グラエナはグラエナだよ。」
「そう言う意味じゃなくて・・・」
急にマイペースになったエーフィについていけないグラエナは肩をがっくりと落とす。
寮にたどり着いた2匹は、グラエナの部屋に入ると、荷物を置いた。
「さ、風呂場行こう。きずぐすりも持ったし。」
エーフィはグラエナの前肢を引っ張って風呂場に連れて行く。風呂場に入ると、エーフィはシャワーの温度の調節をして、グラエナに確認を取る。
「痛かったら言ってね。」
そう言うとエーフィはシャワーをゆっくりとグラエナに浴びせる。グラエナの身体に当たったシャワーのお湯は、血が混じったのか、少し赤くなった。
「いでで・・・」
「もうちょっと我慢してって。」
エーフィは手際よく、グラエナの身体を適度にシャワーで流すと、きずぐすりを塗っていく。
「慣れてるの?」
グラエナは聞いた。
「ううん。ただ、念力を使えるとこういうところにも役に立つんだよ。」
「ふーん・・・」
エーフィの口調にはさっきの険しさはどこにもない。いじめているときの瞳の悲しさも、全て消えて行ったようだ。
「さ、さ出て出て。」
グラエナはエーフィに言われるままにふろ場を出て、身体を乾かして、ベッドの横でごろっと寝ていた。
「私が晩御飯作るから。じっとしてていいよ。」
「ありがとう・・・」
晩御飯を作らないなら作らないで、かなり眠い、グラエナはうとうとしている。エーフィの味の好みの質問の答えにもだんだんいい加減になってきた。
「辛いのが好き?」
「ううん。」
「辛いのが苦手?」
「ううん。」
ばしっ!
「あいた!」
グラエナが目を覚まして見てみると、フライ返しが宙にぷかぷか浮いていた。
「いい加減なこと言うから、叩いたんだよぉ。」
台所からエーフィの可愛い声が聞こえる。
「ごめん、眠くて。」
グラエナの返事を聞くと、宙に浮いてたフライ返しがまた台所に戻っていった。おもしろい、と思ったグラエナはフライ返しを追っかけて、台所へ行く。
「舌切ったから、辛いのはダメだから・・・って。」
「ありがとう・・・」
グラエナはエーフィに感動していた。もういじめられてたとか、いじめてた、とか2匹にはもう関係ないものになっていた。
「いいの。できたよ。」
そう言ってエーフィは狭い部屋のベッド近くにあるテーブルに、スープと、パンを置いた。
「これ。私の得意なポタージュ。ありあわせで作ったからおいしいか・・・」
自信なさげに言うエーフィにグラエナはポタージュを飲む。
「ふむふむ・・・おいしい。」
「ほんと?」
「うん。今まで飲んだことない。」
グラエナの率直な感想に、エーフィは頬を赤らめる。力を使い果たしたエーフィと、すっかり力を奪われたグラエナの2匹は競うようにバクバクご飯を食べた。
「おなかいっぱい・・・あ、お皿洗うから・・・」
「いいよ。これくらいさせて。ご飯の手間を考えたら、これだけでは割に合わないけど・・・」
エーフィの気づかいを振り切って、グラエナは食器を片づける。だいたい自分の家だし・・・とグラエナは思っていた。

「うあ~つかれたぁ~・・・」
ごろっと仰向けに寝るグラエナはすっかり綺麗になったグレーのお腹を上に向けて無防備に転がっている。
「ばーん!」
エーフィはそう言って寝るグラエナのお腹の上に乗っかる。
「ああ・・・やめて。」
「じゃあ言うこと聞いて。」
「はい?・・・ちょっ・・・エーフィ!」
グラエナのお腹に乗っていたエーフィはグラエナと同じようにお腹の上で仰向けになる。仰向けになったエーフィからは、さっきの間にお風呂に入っていたのか、石鹸のいい匂いがした。
エーフィの薄紫の毛が、グラエナのグレーの体毛とこすれあって、お互いくすぐったいけれど、そんなの気にならないくらい、2匹はお互いを愛していた。
「あのさ・・・エーフィ?女の子なんだから・・・」
「襲ったらダメだよ。」
「襲わないよ。」
あっさりと答えるグラエナにエーフィはむっとしてお腹の上で四肢を動かしたり、お腹をくねくね動かしたりして激しく動く。
「ダメだって・・・くすぐったいんだって。痛いしこすれて熱いし。」
「じゃあさ、手、貸して。」
そう言うエーフィに前肢を投げ出すグラエナ。エーフィはグラエナの前肢を自分の前肢を使ってエーフィの胸元でクロスするように組んだ。
「このまま寝るから。あ、胸当たってるよ。」
おどけて言うエーフィにグラエナは時限爆弾を抱えた、みたいな顔してがっくりうなだれる。
嬉しそうなエーフィの顔には悪意はなく、単純にグラエナとの時を楽しんでるみたいだった。
「ちゃんと持ってて。離したらダメだよ。」
そう言うとエーフィはさっさと寝てしまった。どうしよう、と悩むグラエナだったけど・・・それ以上に自分のモノにエーフィの尻尾が何回も当たって・・・
「なんで俺は♂なのかな・・・」
変な不満をグラエナはぶちまけた。エーフィはすやすやと可愛い寝息をたてているし、エーフィの胸元で組んだ自分の前肢はエーフィの手が当たって外せないし・・・
「寝れないぞ・・・」
グラエナはエーフィの短い薄紫の毛が体のあちこちに当たる感覚は、気にならなくなっていたけど、もっと大事な・・・
そう、♂と♀、エーフィが自分のお腹の上で眠ってるうちはその♀という部分を気にせずに眠る・・・それはグラエナにとっては不可能に近かった。

「おはよ!」
「ん・・・」
ゆさゆさとエーフィがグラエナを揺さぶる。と言っても、エーフィはグラエナのお腹の上で寝ていたので、エーフィが思いっきり身体を揺さぶってグラエナを揺さぶっている。
グラエナは一応・・・眠れたみたいだ。といってもすごく眠そうだが。
「ふぁぁ・・・」
大あくびをするグラエナを見て、お腹の上にまだ乗っかってたエーフィは嬉しそうにほほ笑む。
「退いて・・・お腹が痛いから・・・」
「トイレ?」
「違う~・・・ずっとお腹の上に重り載せ続ける夢見てた・・・」
グラエナの見た変な夢の話に、エーフィはふふっと笑ってグラエナから退いた。
「忘れてたけど、家族は心配しないの?」
一番大事な質問をようやくグラエナはぶつける。
「私も寮住まいなんだよ~?1週間友達の部屋に泊まり歩いてたこともあるんだよ?」
「自慢することじゃないって。」
にこっと笑って言うエーフィをたしなめるグラエナ。
「さっさと起きて。学校だよぉ。」
うーん・・・眠くてなかなか仰向けのまま起きられないグラエナは、再びうとうとしてしまう。
「きゃうっ!どこ触ってん・・・」
驚いてグラエナが目を覚ますと、朝勃ちしたモノをエーフィが触っていた。
「早く起きないとねんりきでいじいじしちゃうよぉ・・・」
そう言うエーフィだったけど、すでにねんりきでグラエナの身体を抑えつけていた。
「やめろって。ほんと。」
こうなるとエーフィはやめるはずがないけど、とりあえずグラエナはやめるように言ってみる。
「だめ。」
ほら。エーフィはねんりきではなく・・・直接、顔をグラエナのモノに近づける。
「だぁぁぁ・・・」
グラエナの抵抗むなしく、あっという間にモノは・・・エーフィの口に。
「やっ・・・こらっ・・・ぅぅっ・・・ふぁっ・・・」
ねとねととねちっこく動くエーフィの舌の動きに、グラエナのモノも、グラエナもいちいち反応してしまう。
「んふっ・・・んっ・・・んんっ・・・んっ・・・」
エーフィがねちょねちょと唾液を絡ませると、グラエナのモノは嬉しそうに隆起していく。
「も・・・だめだっ・・・うぅぅっ・・・」
グラエナの身体を電撃が貫き、グラエナのモノはビクンビクンと大きく脈打つ。
「んんっ・・・んんんっ!・・・」
エーフィはずっとモノを咥えていたが、突然の射精にびっくりして、モノを口から離してしまう。
精液はエーフィの顔に襲いかかる。薄紫の綺麗で端正な顔は白濁で汚されていく。
「はぁっ・・・はぁっ・・・んあっ!もういいって!」
何か物足りないのか、エーフィは再びグラエナのモノを咥えると、ぺろぺろとグレーの身体に付いた白濁を舐め取っていく。
「綺麗にしたよぉ・・・」
にこっと笑うとエーフィは笑顔でグラエナを見た。
「もう・・・精も根もつきはてた・・・」
グラエナはねんりきから解放されても、身体を動かせない。
「睡眠不足でこれはきつい・・・」
うわごとのように言い続けるグラエナに、エーフィは白濁のついた顔のままグラエナに近づく。
「顔洗ってきなよ。」
「実はねぇ・・・こんなことしたのグラエナが初めてだよ。」
自慢するようにエーフィは言うが、当のグラエナは疲労困憊で、それどころじゃない。
「俺はモルモットか。」
そう言うのが精いっぱいだった。
「違うよぉ、グラエナはモルモットじゃないよ。グラエナはグラエナだよぉ?」
「もういいです・・・早く洗面所に行ってきなよ。」
グラエナが重い身体を起こして、エーフィに言うと、エーフィは洗面所に向かって行った。
「早く学校・・・今日学校だったぁ・・・最悪・・・」
テンションもろくに上がらない。普段だったら、嬉しすぎて心臓まひしちゃうのに。グラエナはカバンに筆記用具だけ入れて、四肢を曲げてボーっと座ってる。
「グラエナぁ~?来て来て!」
エーフィに促されるように、グラエナは洗面所に向かう。洗面所につくと、エーフィが顔をタオルで拭いてる。いつの間にかエーフィはタオルの位置を憶えてた。
「取れた?」
グラエナのほうにむけて、白濁の取れた顔を見せるエーフィ。
「取れてるよ。」
「もっと近くで見てよ。」
不機嫌そうに言うエーフィに、グラエナははいはい、と顔をどんどんエーフィに近づけて行く。
「!」
グラエナの口にエーフィの唇が当たった・・・といってもアクシデントではない。エーフィが自分からグラエナにキスをしてきたのだ。
柔らかいエーフィの唇に、ずっと自分の唇を当て続ける。エーフィから石鹸とグラエナの汗と、ちょっぴりの♂の匂いがした。
「ふぁっ・・・」
グラエナもエーフィも顔を真っ赤にする。
「は、早く朝ごはん食べようよぉ。学校だよ?あ、そうそう、舌見せて。」
エーフィの言葉通り、グラエナは舌をべろっと出した。
「まだ怪我してるね。さっきちょっぴり血の味がしたから。そのためにキスしたんだけど。」
「なにそれ?」
「うそだよ。そう言ったら簡単にキスさせてくれるかなぁって。」
「俺はモルモットか。」
照れながら言うエーフィに、グラエナも照れて定番の”返し”をする。変な会話だけど、2匹には、十分満足な会話として、成立していた。
「違うよぉ(略。」
2匹は昨日のパンと、ポタージュの残りを相変わらずがつがつと食べた。
「さ、学校行こうか。」
「あの・・・その・・・先に出ててくれない?」
「いいよ。はい。鍵。」
グラエナはエーフィに寮のカギを渡す。エーフィは少し驚いたような顔をした。
「いいの?」
「なんかあったら寮長に開けてもらうよ。学校で鍵返してくれたらいいし。」
そう言い残してグラエナは学校へ向かった。グラエナの言葉に嬉しくなったエーフィも少しして学校へ向かう。

「ふぁぁ~・・・」
グラエナは朝からの出来事で、すっかり体力が無くなっていた。でも、そのおかげで、エーフィとの関係の変化を誰にも悟られることはなかった。
「じゃ、明日は終業式です。さようなら。」
担任のバシャーモ先生がそう言うとみんな家路につく。みんなは夏休み何する?とか楽しそうな話ばかりをしていた。
「疲れた・・・本当に今日は疲れるわ・・・」
グラエナがぐちぐち言いながら帰る準備をしていると、バシッと強く身体を叩かれた。
「痛いって・・・ああ、ヘルガー?」
「明日の晩さ、肝試しやろうぜ!学校でよ!」
ヘルガーは興奮して言うが、グラエナは何度も首をかしげる。
「楽しいか?」
「俺はブラッキーと一緒だから楽しいぜ。」
「お前はな。」
そうヘルガーをたしなめるけど、聞き耳を立てたら、隣のエーフィも何やらそのブラッキーと話をしている。
「あのね~、明日さ・・・肝試しやるんだけど。来る?」
「肝試しかぁ~・・・怖いから・・・」
「ヘルガーが♂も誘ってるから、この機会にゲットしちゃいなよ。」
「私?私は好きな♂いるから・・・」
「いいじゃん!そいつも誘っちゃえ!」
グラエナではなくヘルガーが少し不安になる。エーフィも来るの?と。
「わかった。ヘルガー。行くよ。」
「いいのか!決まりな!」
グラエナは少し・・・下手だがヘルガーに演技をした。エーフィと自分が仲直りした、なんて言ったら、気絶しちゃいそうだったから。
「じゃ、また明日。」
そう言って、ヘルガーとグラエナ、ブラッキーとエーフィは教室から出て行った。
「なぁ・・・なんで終業式の夜に肝試しやるの?」
太陽の照りつける帰路で、ふと疑問に思ったグラエナはヘルガーに聞く。
「え?ブラッキーが言ってきたんだけど・・・お祭りの約束もあるし。」
「祭りか・・・行ってないなぁ・・・久しく。」
ヘルガーは俺はブラッキーと行くんだぜ!とグラエナに自慢する。グラエナは何も言えない。
「じゃ、また明日。」
「おう。」
寮の前でヘルガーと別れる。グラエナはトコトコと自分の部屋の前で、ガチャっと前肢を動かして部屋のドアを開けた。
「お・・・」
ドアは鍵が開いていた。もうエーフィは帰ってきてるみたいだ。グラエナはギィっと自分の部屋のドアを開ける。
「お帰り!グラエナ!」
「ただいま・・・エーフィ。」
エーフィは嬉しそうにドアが閉まりきる前に、グラエナにぎゅっと抱きつく。
「グラエナぁ・・・私・・・」
「疲れた・・・いででっ。」
空気を読まないグラエナの、意地悪に怒ったエーフィは抱きついたまま首にかみついた。
「もう!・・・シャワー借りるね。」
「ああ。」
噛み痕をチェックしていたグラエナは怒ったエーフィに二つ返事で答える。
グラエナがベッドにたどり着くころには、エーフィはすでに風呂場のドアを開けて、シャワーを浴びてたみたいだ。
”ふんふんふ~ん♪”風呂場から楽しそうなエーフィの声が聞こえた。グラエナもエーフィは怒ってないなぁ、と感じて安堵する。
「ふぁぁ・・・疲れたな・・・今日は・・・まぁ明日で授業は最後だし・・・ぅんん・・・くぅくぅ・・・」
学校が終わって、ようやく安心して眠れるぞ、と思ったグラエナはそのままベッドの上で目を閉じて眠りに落ちていった。

「っ・・・ぁっ・・・ぐらえなぁっ・・・ぁっ・・・いいよぉ・・・ぁぁっ・・・」
ん?・・・グラエナになにか甘い声が夢うつつながら聞こえた。その声はかすかだが、エーフィのものだった。
「ぁぁぁっ・・・わたし・・・すなおじゃっ・・・ぁぁっ・・・だめだよね・・・ふぁぁっ!・・・」
そっと目を開けて、耳を澄ませる。耳はぴくぴく動いているから、エーフィがそばにいたら、それにすぐ、反応するはずだ。
「っ!・・・グラエナ?・・・起きて?」
やっぱりエーフィはグラエナのそばにいたみたいだ。グラエナはすこし眠くて重い身体をすぐに起こすと、エーフィを見た。
グラエナはエーフィの綺麗な青色の瞳がうるんでいて、今にも泣き出しそうになってることに気付いた。
「どうした?なんか嫌なことでもあった?」
心配で聞くグラエナに、エーフィはふるふると首を横に振る。
よくよく観察するとエーフィは泣きそうなだけじゃなくて、身体を小刻みに震えさせているし、何より・・・すごく艶やかだった。
昨日から感じてる・・・今まで感じていた可愛さと違って、すごく♀っぽいというか・・・グラエナが見たことのないエーフィの姿だった。
朝、エーフィに放った後にキスしたときの感じた自分の♂と・・・正反対のような・・・いろいろな表現を思いつく限り自分の心に表すグラエナ。
グラエナは、エーフィの姿を見て困惑した。さっきまでの強気な姿はそこにはなかったから。かわいらしい耳もぺたっと寝かせて、エーフィはずっとふるふると震えてる。
「エーフィ、ご飯食べようよ。」
思いつく限りで、エーフィをこの状況から脱させたいグラエナは晩御飯の準備をしようと、ベッドから降りて、台所へ向かおうとする。
「!」
エーフィがグラエナの身体を引っ張った。
「エーフィ・・・」
「グラエナ。私ね・・・」
グラエナはエーフィに無理するなよ、と言って、エーフィを制しようとする。
エーフィはグラエナを引き留めるように、立ち上がろうとしたけど、バタン!と後ろ脚から身体を崩した。
「エーフィ?エーフィ!」
エーフィの後ろ脚はプルプルと震え、起き上がろうとするエーフィの身体を阻むように動かない。
「エーフィ!大丈夫か?」
あわててグラエナはエーフィのほうに身体を向けて顔を見る。
「だいじょう・・・う。脚が・・・ちょっと・・・」
「もんであげるよ。」
「ぇえ!ちょっ・・・あっ・・・」
グラエナは好意で言ってるのに、エーフィがすごく嫌そうな反応をしたので、少しためらう。
「いい?もんだりしなくても。」
「ぅう・・・やっぱ揉んで・・・」
エーフィの態度が変わったので、少し深刻な気がしたグラエナは、前肢を、エーフィの右の後ろ脚に当てて、マッサージし始める。
身体全体が汗にまみれ、エーフィはかなり、暑そうだ。
「ぁぅ・・・ぁあっ。ぐらえなっ・・・ちょぉっ・・・やぁっ・・・やぁん!」
「うるさいって。」
後ろ脚をもんでるだけなのに、エーフィは身体をびくびくさせて、喘いでいる。
「とめてよぉ!」
エーフィの訴えにすぐさま応えるグラエナ。
「ごめん。」
「ちがうの・・・」
謝るグラエナに、エーフィは戸惑う表情を見せた。
「その・・・そのね・・・続けて。」
「・・・うん。」
脚が動かないエーフィはとにかく動かしたくて、グラエナにマッサージするように言うけど、グラエナが揉むたびに、エーフィは身体をぴくぴくさせる。
「ゃぁっ・・・ぁっ・・・ぁぁぁっ・・・ぁぁっ・・・」
「大丈夫?」
嬌声を出し続けるエーフィをさすがに怪しんだグラエナは揉むのをやめた。
「なんでぇ・・・続けてよぉ・・・」
今にも泣きそうな瞳でグラエナを見るエーフィだったけど、グラエナははぁ、とため息をついてエーフィの頭を撫でた。
「なんかした?寝てる間に。」
「えぇぇ・・・なにもない・・・なにも・・・」
率直な疑問をぶつけるグラエナだったが、エーフィは半端じゃないくらいのあわてっぷりを見せた。
「素直に言ってよ。」
そのグラエナの言葉にエーフィは身体を大きくびくっとさせる。
「言えるわけないじゃん!・・・その・・・その・・・」
「?」
すこし大きな声を出した後、口ごもるエーフィを見てグラエナは首をかしげる。
「グラエナが・・・悪いんだよぉ・・・」
「へ?」
いきなり、グラエナが悪い、と名指しでエーフィに言われたグラエナは思い当たる節がなくて必死に考える。
「私・・・ここまで♂のこと好きになったの・・・初めて・・・グラエナのことずっと考えてた・・・身も心もずっとグラエナを求めてるの。」
エーフィは動きづらい後ろ脚をもじもじさせて、グラエナに訴える。
今までに言われたことのないことをエーフィから言われたグラエナもエーフィの一言一言に心臓をバクバク、大きく鼓動させていた。
「だから・・・グラエナが寝てるときに・・・寝てるときに・・・」
そう言うとエーフィは仰向けに寝る体勢をとって、股を少しグラエナに向けて開く。
「っ・・・」
グラエナはエーフィの股の綺麗なピンクの縦の筋の割れ目を見た。見てしまった。
「ここ・・・触って。」
誘うエーフィになんとか自我を保って、抑えようとするグラエナ。
「おねがい・・・」
「わかった・・・」
グラエナは、エーフィに覆いかぶさるような姿勢になって、エーフィの股の幼い縦筋に前肢を当てる。
「ぁっ・・・グラエナ・・・いいよぉ・・・」
少し縦の筋に触っただけでも、エーフィは信じられないくらい喘いだ。そして、割れ目はすでに相当の愛液で濡れていた。おそらく何度かこぼれた、そんな形跡が床にはあった。
エーフィの幼い性の萌芽は、グラエナへの想いで一気に芽生えたのだった。
「わたし・・・だめだよね・・・こんないやらしかったら・・・ぐらえなにきらわれちゃう・・・ぁぁっ!」
エーフィが喘ぐたびに、愛液が割れ目から出てくる。割れ目からお尻にかけての薄紫の体毛は、すでに濡れて色が変わっていた。
「素直になったらいいの。」
グラエナは、説得力がないなぁと思いつつも前肢を動かしながら、エーフィに言う。
「すなお・・・ぁっ・・・わたぁっ・・・わたし・・・すなおじゃなっ・・・いよね・・・ぁん・・・」
エーフィの愛液で、グラエナの指の先っちょはすでに濡れている。
「入れていい?指。」
「入れて・・・ゆび・・・」
もう頭が真っ白なエーフィは、グラエナの言葉を繰り返すように喋る。
くちゅ・・・
「やぁぁん!」
グラエナがゆっくり指を入れた途端、エーフィは身体をぶるっと震わせて、喘いだ。割れ目から溢れた愛液が床を濡らしていく。
「薬とか使ってないよね?」
不安になったグラエナは聞いた。
「くすり・・・やぁぁっ・・・つぁっ!なにのくすり?」
知らないようだったので、グラエナはほっとして、エーフィに言葉を返した。
「そぅいう薬があるの。」
「へぇ・・・あぁっ・・・ゃぁぁぁ・・・」
前肢をエーフィの膣の奥へと進めて行くグラエナ。ゆっくり進んでいくので、ほとんど音は立てていない。そのぶんエーフィはかなりじれったかった。
割れ目からは、愛液が小川のようにたまに出て、お尻と尻尾を濡らせていく。
ぴくぴくとエーフィは身体を震わせながら、グラエナの指の快感を楽しみつつ、来る快感に頭を焦がされそうになっていた。
「ぁぁん・・・ぐらえなぁ・・・いいよぉ・・・」
エーフィの下半身はすでに力が抜けて、だらっと後ろ脚をグラエナに投げ出している。その後ろ脚の付け根近くの割れ目は、いやらしく愛液で照らされていた。
「やらしい仔だね・・・エーフィは。」
「ふぁぁっ・・・そんなこといわないで・・・ぁぁっ・・・ぁぁん・・・」
嫌いにならないで、と喘ぎながら必死に懇願してくるエーフィだったけど、身体はいやらしく、♂を引きつける♀の匂いを発していた。
「ふー・・・かなりキツキツだな・・・エーフィのナカは。」
指を侵入させる動きを止めるグラエナ。気付けば、エーフィは喘ぎに喘いで、身体をびくびく動かし、乱れていた。
割れ目の愛液も、エーフィの額の赤い物体くらいの小さな水たまりを形作るくらい、溢れている。
「ふぁっ・・・ぐらえなのゆび・・・わたしのに・・・」
そう自分で言ったあと、エーフィは頬を赤らめて、それよりも顔面を紅潮させてるグラエナを見た。
「ぐらえな?わたし・・・おかえしがほしい。あさの・・・」
「へ?ああ。」
言われたグラエナは朝のフェラを思い出していた。あの時は疲労で心地いいものじゃなかったけど・・・今は・・・今となっては・・・
グラエナの突っ込んだままの指は、粘液で気持ちよく濡らされて、いつでもその柔らかい膣の肉を動かせる状態だった。
「・・・じゃ、動かすね。」
「うん・・・」
すでに濡れていた膣のなかで、グラエナは指をクチュクチュと動かす。
「はぁん!・・・・やぁん!ぁぁぁっ・・・ぁぁん!」
エーフィは数回動かすたびに何度も喘いで、割れ目からぴゅっと愛液を垂らす。
「クジラか?」
情緒もへったくれもないことをグラエナは言って、エーフィのその気をそごうとしたけど、エーフィは逆にうれしそうに言う。
「わたし・・・くじら・・・くじらっ・・・だよぉっ・・・ぁぁぁっ・・・」
充血し、収縮する膣のナカで、グラエナの指はますます動きを速めていく。エーフィの身体はさっきよりも汗にまみれ、快感の激しさを物語っていた。
「ぁぁぁっ・・・ぁぁぁん!・・・ふぁぁ・・・なか・・・くるよぉっ・・・ぁぁぁっ・・・」
グラエナは指がエーフィの快感を強めていることを膣の収縮と、割れ目からあふれ出る愛液で悟っていた。
エーフィは頭が真っ白になって、ただ快感に身をゆだねていた。
「くっ・・・やぁん!」
エーフィの身体を、体験したことのない電撃に似た快感が押し寄せ、思考の回路をすっかり焼き切ってしまう。
「きぁっ・・・あぁっ!やぁっ!やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!・・・・ぁぁっ・・・ぁぁっ・・・ぁぁ・・・ぁっ・・・」
割れ目からはぴゅっぴゅっと愛液が出て、まるでおもらしをしたかのように水たまりを広げていった。
エーフィの身体は逃れるように喘いでも喘いでも、感じるばかりで、一向に考えることができない。辺りにはエーフィの♀の匂いが広まった。
「抜くよ。」
グラエナは唐突にそう言うと、じゅぷっと指を抜いた。
「ぁぁっ・・・はぁっ・・・ぁぁっ・・・やっ・・・ぁぁっ・・・」
快感に打ちひしがれたエーフィはいつまでたっても喘ぐのをやめない。グラエナは、ティッシュを持ってきて、水たまりの後始末をしていた。
でも、拭いても拭いても、エーフィの割れ目からは愛液がちょろちょろ、気持ちよさそうに出てくる。
「ぬああっ・・・ぜんぜん・・・おい。」
グラエナはちょん、と割れ目を突っついた。
「ひゃん!・・・ぁぁっ・・・ぁぁっ・・・」
エーフィはまだまだ動かないし、愛液を垂らし続ける。グラエナは割れ目になにかマメみたいなものが見えてるのに気付く。
「これが悪いのかな~?」
いたずらっ気満面にグラエナはそのマメを舐める。
「きゃうぅぅぅ!やぁっ・・・だめあっえ!」
すこしいたずらしただけでもエーフィは悶え狂っていた。グラエナはこれ以上は、と思ってティッシュで床を綺麗にする作業を続ける。
「綺麗にしたげようか?」
またわるい考えがグラエナの頭に浮かぶ。
「どこぉ?」
はぁはぁと息の荒いエーフィは懸命に応える。
「エーフィの身体。」
「お願い・・・」
と、言っても素直にグラエナがエーフィの汗まみれの身体を綺麗にすることは・・・ない。
「いやぁぁぁぁん!あえぁっえ!ぐあえあぁぁ!」
エーフィは技を使えるような体力はもはや残ってなかった。いやだいやだ言いながら、グラエナが割れ目をぴちょぴちょ舐めるのをただ喘ぎながら耐えていた。
グラエナはただ、さっきのマメ、クリを狙っていた。正確に舌はマメを捉えて、舐めずる。
「やぁぁあぁぁん!ぐあえぁあぁ!やぇぇよぉ!ぁぁぁぁん!」
「聞こえない。」
「やぁぁん!」
エーフィは割れ目からさっきよりも多くの愛液をぴゅっぴゅと放出し続けている。水たまりに敷き詰められたティッシュの量は増すばかり。
身体はびくびく震え、瞳はとろんとしている。次第に口数も少なくなってきた。
「ぅぅっ・・・ぁぁっ・・・ぁぁっ・・・ぁっ・・・ぁっ・・・ぁっ・・・やぁぁ・・・やぁぁあっぁぁぁぁぁあぁ!・・・・・・ぁぁっ・・・ぁぁっ・・・」
また、エーフィの身体をさっきと同じ快感が突き抜ける。身体を大きく跳ねて、背は反らせ、前肢を突きあげると、力なくぐたっと倒れた。
エーフィの割れ目からはとめどなく愛液が流れ、グラエナの顔にかかった。
「あ・・・エーフィ?」
割れ目からの愛液ですっかり濡れたグラエナは何度も、喘ぎ声が絶えたエーフィを呼び掛けるが、息が荒いだけで、返事がない。
事の重大さに気付いたグラエナは、あわててエーフィの身体を濡れタオルで拭いて、ベッドで寝かせた。
「うぅん・・・ぐらぇなぁ・・・すきだよぉ・・・」
寝言でそれを言われても、今のグラエナは後悔で、それを受け止められる状態じゃなかった。
エーフィは綺麗な割れ目からまだ少し愛液を垂らしてる。それに気付いたグラエナは、さらに申し訳ないと深く思った。
「ごめん・・・エーフィ。」
そう言ってグラエナは大きなバスタオルを仰向けで気を失ってるエーフィの身体に巻いた。
グラエナは結局、晩御飯はおろか、軽くシャワーを浴びただけで、ずっとエーフィの看病をせざるを得なくなる。
後悔の気持ちで、なんども涙を流したグラエナは、そのたびにくぅくぅと寝息を立てるエーフィの可愛い顔をじっと見ていた。
「嫌われるよね・・・さすがに・・・」
うとうとと、眠気に勝てなくなったグラエナは、エーフィが寝ているベッドのすぐそばの床にごろんと横になって、眠りに落ちていく。

「グラエナ!起きてっ!ねぇっ・・・」
「ん・・・」
グラエナが目を開けると、バスタオルを巻いたままのエーフィが心配そうにグラエナを見てた。どうやら朝になったみたいだ。がばっと身体を起こすと、必死にグラエナはエーフィに昨日の失態を謝る。
「ごめん!ほんとごめん!」
「グラエナも・・・♂だから仕方ないよ。」
「そんなことないって!ホントごめん!」
エーフィはずっと謝り続けるグラエナに、あれやこれやと言って謝るのをやめるように、諭し続ける。
「グラエナ・・・身体拭いてくれたの?」
「へ?気付いたの?」
「当たり前じゃん・・・だって・・・お尻にも、どこにも匂いが付いてないから・・・」
グラエナはエーフィが気付いてくれたことがすごくうれしかった。
「シャワー浴びなよ。」
「いっしょに浴びようよぉ!」
エーフィはすっかり元気になって、グラエナを風呂場に連れて行った。と、いってもその動きはどこかぎこちない。
「ほれほれ~。」
楽しそうにエーフィは巻いてたバスタオルをバッと広げて、グラエナにお腹と下腹部を見せる。
「やめなって。」
「一回やってみたかったんだもん。」
♀っぽくないまだまだ子供じみた発言に、グラエナはやっぱり昨日のことを思い出してすごく後悔した。
「エーフィ・・・ごめんな。」
「グラエナ・・・私はもう子供じゃないよぉ・・・」
そういうエーフィだったけど、性器も、身体も穢れのない・・・子供みたいなものだった。ただ、性の甘美を知ってる点を除けば。
風呂場に入ると、エーフィがシャワーを持って、温度の調節をしてた。
「これで熱くない?」
そう言って、エーフィはグラエナに少しシャワーをかける。
「大丈夫。ありがと。」
「えへへ・・・」
エーフィは久しぶりに、自分に屈託のない笑顔を見せてくれた・・・グラエナはそう感じていた。
ばしゃぁっ・・・薄紫色の綺麗な身体をふるふると震わせてエーフィはシャワーを浴びながら、グラエナにもシャワーを浴びせる。
「今日さ!夜、楽しみだよね!」
楽しそうにエーフィはグラエナに言う。なんだっけ?と思ってるグラエナは必死に思い出す。
「えーっと・・・」
「肝試しだよぉ。」
「ああ。」
そういえばヘルガーがそんなこと言ってたな、とグラエナは思い出していた。
「でも学校で肝試ししても先生しか出てこないぞ。」
「だよね。」
2匹は身体をシャワーで濡らしあいながら、変なところでうなずく。
「まぁ、楽しもうよ。」
「そうだな。」
シャワーを止めると、笑顔で2匹とも風呂場から出た。
ぱたぱた~・・・
「こら、エーフィ。俺のタオル!」
エーフィはグラエナのタオルを身体に巻いてあちこち走り回ってる。グラエナは追っかけるけど、水を気にしてか、なかなかエーフィに追いつけない。
「ここだよ~。」
ベッドの上でエーフィはグラエナを呼ぶ。それを聞いたグラエナはベッドの上に乗ると、エーフィを抑える。
「やぁん!グラエナのえっちぃ~!」
「ぬぁぁぁ!言うなぁ!」
昨日の出来事が相当グラエナにはショックだったみたいで、エーフィの言葉についつい反応してしまう。
そんなグラエナに、エーフィは顔をあげて、キスを求めた。
「ん・・・ん・・・」
グラエナも応じて、エーフィと唇を重ねる。エーフィには、まだ少し♀の淫美な匂いが残っていた。
「ふぁ・・・ん・・・ん・・・」
一度グラエナは離そうとしたが、エーフィはグラエナの顔をがっちり押さえて、なかなか離さない。エーフィはグラエナの口腔に舌を入れて、唾液を送る。
グラエナもエーフィの舌と自分のを絡ませて、濃密なキスを交わす。ピチャピチャといやらしい音が静まり返った部屋に響く。お互いが満足するまで、ずっとキスをし続けていた。
「ふぁっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・エーフィ・・・よかったよ・・・」
グラエナが言うと、エーフィはにこっと笑う・・・好きなグラエナに認めてもらえた、エーフィはそう感じていた。
ぐるるるる~・・・グラエナのお腹から信じられないくらい、大きな音がした。
「食べてないの?」
「まあね。」
「昨日の晩も?」
適当にごまかすグラエナだったけど、エーフィは深く突っ込んできた。
「うん。」
「ひょっとして・・・わたし・・・」
「いやいや、エーフィは関係ないって。」
「関係あるじゃんか!」
すこし怒ったエーフィに、グラエナはごめんなさい、と言って頭を下げた。
「よろしい。じゃ、ご飯食べよ。私もお腹すいた。」
タッタッタとベットから降りてあわてて台所に向かうエーフィを追っかけて、グラエナも台所へ向かった。
「うーん・・・」
「何もないでしょ・・・さすがに・・・」
グラエナはここ2日、買い出しに出てない。しかもエーフィの1匹分、量が増えてる。
「ま、私が何とかするから・・・」
「ありがと・・・」
エーフィはまだ回復してないのか、少し四肢が震えている。
「昨日は・・・ほんとに・・・」
「グラエナが謝ることじゃないよぉ。私が・・・そのね・・・」
赤面したエーフィはすこし口ごもると、また明瞭な声で話し始める。
「私・・・あんなことしたの初めてだった・・・脚はプルプル震えて動かなかったし・・・」
少し、グラエナに申し訳なさそうな口調でエーフィは言う。
「エーフィ・・・」
グラエナは、エーフィはやっぱりまだまだ、性の甘美に触れるべきじゃなかったな、と思った。
なぜなら、今のエーフィを見てても、身体への負担が尋常じゃないようだから。昨日、脚が動かなかったのも・・・
「でも、グラエナでよかった。」
エーフィはもとの明るい声で、恥ずかしげもなく言う。グラエナは顔面を真っ赤にして、うつむいた。
「グラエナじゃなかったら・・・私はあの後も・・・」
「それ以上言うなって。」
止めるグラエナは、エーフィの身体を支えるように、傍に寄り沿う。薄紫の綺麗な体毛が、グラエナの黒とグレーの体毛にうずまる。
「私って・・・素直なのかな?」
聞くエーフィにグラエナは少し間をおいて話す。
「最初は、素直に感情表現が出来ないのかな?って思ってたけど、だんだん素直で、時折、曲がる、いい性格だと思うようになったよ。」
落ち着いて話すグラエナに、エーフィは料理を作る片手間ながら、何度も頭を撫でる。嬉しそうに目を細めるグラエナ。エーフィは、再び屈託のない笑顔を浮かべた。
朝ごはんをテーブルに並べて、時間に余裕のある2匹はゆっくりと食べる。
「おいひい?」
「ちゃんと食べてから聞きなよ。おいしいよ。」
グラエナは照れるエーフィを見つめていた。
「私ね・・・触ったポケモンの心が読めるの・・・」
唐突なエーフィの話に、グラエナは戸惑う。
「物心ついたときからずっとね・・・だから付き合った♂の心を知って、いつも絶望してた。だからずっと身体を預けることはなかったの・・・」
「俺は?」
グラエナが聞くと、エーフィは微笑んでうつむく。
「グラエナは・・・あくタイプのくせにエスパーに弱いって知ったとき・・・何かあるんじゃないかって、ずっと心を読もうとしてたけど・・・」
「読めない?」
少し困った感じで話すエーフィ。
「読めるんだけど・・・すごく優しくて・・・でも少しいたずらも好きで・・・って。」
「それ以上は言わないで・・・」
自分の心をすらすら言われそうになるグラエナは恥ずかしくなってエーフィにそれ以上言わないように頼んだ。ふふっとエーフィは笑う。
「あくタイプだから、とかエスパータイプだから、とかそんなのもうどうでもいいじゃん、って今は思うけどなぁ・・・」
エーフィはスープをくいっと飲むと、カバンに筆記用具を放り込んで、ベッドの上でゴロっと寝ころんだ。
「寝たらだめだよ。」
「わかってるって。あんまり身体言うこと聞かないから、それが不安で・・・」
不安な面持ちのエーフィに、グラエナは食器を片づけると、エーフィのそばに行った。
「途中まで、乗ってく?」
「え!ほんと!?」
エーフィはぷるぷる震える四肢を何とか抑えて、起き上がる。グラエナも背中を見せて、エーフィに乗るように促す。
「カバン持つからちょっと待ってね。」
グラエナはカバンを拾い上げると、首から提げて、またエーフィのそばに戻った。
「じゃ、ありがたく・・・グラエナの背中をいただきます。」
ひょいっとエーフィはグラエナの背中に乗って、2匹は寮を出た。朝早くて、幸い誰も見てないことに、2匹は安堵する。
「早く出てよかったね。」
「まあ、まだ学校まであるから。」
笑顔でまたがってるエーフィと、グラエナ。この絵は何か可笑しかったけど、2匹にとっては、信頼と好きだっていうことの証。
「重い?」
「全然。」
エーフィは嬉しくなって、グラエナの黒い体毛を何度か揉みしだく。
「くすぐったい。」
「だよね。やる前から読めてた。でも嫌そうじゃないから・・・」
学校までの道を誰にも見つからないようにこの2匹、カップルは移動していく。
「ほら、学校だよ。」
「降りる。」
「降りれる?教室までなら・・・」
心配して言うグラエナに、エーフィは大丈夫、ととびっきりの笑顔で言う。グラエナも不安と心配はとれないながらも、エーフィの気持ちを優先することにした。
すたっと降りるとずいぶん、エーフィの動きは良くなったみたいで、終業式くらいなら、問題ない、そうグラエナは思った。
「私、ちょっとトイレ行くから、先に教室行ってて?」
「わかった。」
グラエナはエーフィを見送ると職員室、医務室横の廊下をトコトコと進んでいった。
ガラガラ・・・教室のドアを開けると、ヘルガーとブラッキーがいる。
「おっす!グラエナ!おはよう!」
「ああ・・・朝早いね。」
ヘルガーの高いテンションが少し気になるけど、グラエナはいちゃいちゃするヘルガーとブラッキーを横目に自分の席についた。
「おはよぉ~!」
「あ!エーフィおはよう。」
グラエナが席に着いたのを見計らったように、エーフィも教室に入ってくる。エーフィの動きはまぁまぁ元通りってところかな。
「ごめ~ん、エーフィ。今日の肝試しだけど・・・ぜんぜん集まらなくて・・・」
「え~・・・」
ブラッキーの話に落胆・・・してるように見えるエーフィ。
「でさぁ~・・・今日やろう、って話なんだけど。やるよね。」
「やる!」
エーフィはブラッキーとの立ち話を終えると、エーフィは席に着くように、動く。
「ぁぁっ・・・」
ふらっとエーフィの身体のバランスが崩れて、倒れそうになる・・・
「ん!・・・グラエナ?」
倒れそうになったエーフィの身体をグラエナが支えていた。エーフィは照れくさい表情を浮かべた後、いじめをするときの顔になった。
ばし!
「いだっ!」
「触るなよぉ!」
ばし!ばし!ばし!
すこし演技臭いエーフィはさんざんグラエナを前肢で叩くと、むすっとした顔で席に着いた。
「あいたたた・・・」
「おーい・・・グラエナ大丈夫か?」
心配したヘルガーがグラエナに声をかける。グラエナは大丈夫、と言ってエーフィのほうを向いた。
エーフィはグラエナにしか見えないように紙に”叩いてごめん”と書いて見せていた。それを見たグラエナはやっぱり、と安堵して、前を向いた。
終業式は終わり、エーフィは疲れた身体でなんとかその日の学校行事を乗り切ることができた。

「は~い。じゃあ次会うのは夏休み明けだから。元気でなぁ。」
バシャーモ先生がそう言うと、みんなは思い思いの友達と仲良く喋りながら教室を出ていく。
「じゃあグラエナ。7時半正門集合な!」
「ああ・・・」
そう言うとヘルガーは教室を出て行った。グラエナはだるい身体を起こして、カバンに筆記具やらプリントやらを詰めていく。
エーフィはブラッキーと・・・そういえば、ヘルガーはブラッキーをほったらかして、帰ったみたいだな・・・にわかに信じがたいけど。
そのブラッキーと楽しそうに話すエーフィ。グラエナはエーフィの身体のことがかなり気がかりで、なかなか動けないでいた。
自分のせいだ・・・とグラエナは朝からずっと悩んでる。エーフィは気にしなくていいよ、って言ってくれたけど、やっぱり気になる。
「!」
グラエナはくいくいと自分の尻尾が引っ張られる感覚を覚えて、後ろを振り向く。しかし誰もいない。
「エーフィ。」
隣でブラッキーと仲良く話してるエーフィがにこにこしてグラエナの反応を見ていた。
「グラエナ・・・叩いてごめん!」
エーフィは、手を合わせてグラエナに謝る。グラエナも別に謝らなくていいよ、とエーフィに言う。
「エーフィ!抜け駆け?」
ブラッキーが明るい口調で言う。
「知ってたでしょ!」
「冗談だって。グラエナがどんなリアクションするか見てみたかったから。」
ブラッキーとエーフィは楽しそうにグラエナに話しかける。
「ヘルガーには言ってないけどね。おもしろいから。」
ブラッキーもエーフィもいい性格してるよなぁ・・・グラエナはぐでーっと机に伏して、そう思った。
「エーフィ?そろそろ帰ったら?」
グラエナが退屈そうにしてるのを察したのか、ブラッキーがエーフィに帰ったら?と言う。
「帰ったら寝ちゃいそうで・・・ふぁぁ・・・」
「眠たいの?」
「まぁね。学校が短いといっつもこうだから。」
「だよね~。」
帰ったら?とかブラッキーもいいつつ、なかなか2匹のお話は終わらない。♀同士だとこんなもんか、とグラエナは席をはずそうとする。
「ちょっ・・・グラエナ・・・どこ行くのぉ?」
急に不安げになったエーフィの声が教室に響く。
「え?ああ。ごめん。ちょっとトイレ。」
「早く帰ってきてよ。」
グラエナは後悔の気持ちでいっぱいだった。あんなことしなければ・・・と。エーフィも、グラエナの気持ちを痛いほどに感じていた。自分が・・・ちゃんと抑えることが出来ていたら・・・と。
トイレから戻ると、ブラッキーはヘルガーと約束あるから~、と調子よく出て行った。グラエナはカバンを首から提げて、エーフィのもとに駆け寄る。
「帰る?」
「うん。」
はい、と言ってグラエナはエーフィに再び背中を差し出す。
「まって・・・グラエナ・・・」
「ん?」
グラエナは首をふいっとエーフィのほうに向ける。
「明日さ・・・お祭り行こうよ。」
「いいよ。行こう。あ、ちょっと待って。」
「へ?」
グラエナはカバンから財布を取り出して、中身を確認していた。
「オッケー。」
「お金なんて気にしなくていいって。」
エーフィの優しい言葉に、グラエナはうん、とうなずいて財布をカバンの中に再びしまう。
「エーフィ。大丈夫?」
「大丈夫だって。・・・でも、乗せて。」
「はい。」
グラエナはまた背中をエーフィに差し出す。エーフィも再びひょいっと背中に乗る。
「ところで、7時まで何する?」
「うーん・・・このままお話しようよぉ。」
「そんなに話のネタはないよ。」
「いいじゃんかぁ。」
背中のエーフィは楽しそうに、グラエナと喋る。グラエナもいつしか、後悔で落ち込んでた気持ちを再び前に向けることができるようになっていた。

気付けば辺りはすこし暗い。7時半になった。学校の正門にはヘルガーとグラエナ、ブラッキーとエーフィ、という順に並んでいた。
「あれ?これだけなの?」
「みんな断られたの。早いって。」
「まぁ、今すぐ肝試しするわけじゃないけどな。」
ヘルガーとブラッキーは何やら話しあってる。エーフィとグラエナは少し喋りつかれて、あくびをしている。結局あれからずっとエーフィはグラエナの背の上で楽しく喋ってた。
「ふぁぁ・・・今から何するの?」
グラエナが退屈気味に聞く。ヘルガーも頭を何度かポリポリと掻いて、困ってる。
「うーん8時まで、明日の話しようぜ。グラエナさ、明日のお祭り来る?」
「ああ・・・まあ一応な。」
グラエナの答えにヘルガーは驚いたような顔をした。
「珍しいな・・・祭りとか来ないイメージあったのに。ま、いいや明日は6時に寮玄関集合で。」
「・・・いや待った。」
「個別に行くよ。そっちのがいいだろ。」
「えーっ・・・じゃあそれでいいよ。」
ヘルガーはグラエナに提案を止められて、嫌そうに口をとがらす。でも、しぶしぶヘルガーはグラエナの話を受け入れた。気付けば、辺りはさっきよりかは、暗くなった。
「よし、じゃ、肝試しするから。」
「じゃあさ!私たち2匹で行きたいから、エーフィ達は適当に行動しときなよ!」
ブラッキーが元気よく言って、ヘルガーを連れたまま強引に校舎に入っていった。残されたエーフィとグラエナは顔を見合った後、お互い照れてうつむく。
「これって終わりとかあるのか?」
「ないでしょ。帰ろうかな・・・でもせっかくだから見てみようよ。」
「いいね。行こう。」
エーフィはグラエナと一緒にトコトコと校舎の外周をうろうろしていく。見つかったらダメだから、喋らず慎重に・・・
「飽きた。校舎に入ろうよ。」
「うん。」
2匹はゆっくりと校舎に入る。肝試しって言うより、ただのスニーキング。
医務室前を通り過ぎようとする2匹。ゆーっくりと、中をのぞく。中ではカメックス先生が冷房の風に当たって、ラッキーさんと会話をしてる。
「何やってるのかなぁ・・・」
「さぁ・・・」
2匹はブラッキーとヘルガー達のことを気にも留めず、ただ医務室を覗いてるだけだった。
ガチャ・・・医務室の隣の部屋で音がした。
「ぎゃっ・・・誰か出て来る!」
「逃げようよ!」
驚いた2匹はあわてて医務室の窓から離れようとするけど、ガチャガチャと余計に物音を立ててしまう。
ガラガラ・・・
「誰かいるのか?」
「ギャー!」
「グラエナ?エーフィ?おい!待て!」
2匹はカメックス先生が信じられないくらいのスピードで追ってきてることを承知で、逃げていく。
「捕まるって。」
「二手に分かれようよ。」
「よし!」
エーフィは空きっぱなしになってたプールの門に入り、グラエナは、校舎の影に隠れる。
間もなく、グラエナの耳にバシャン・・・何か水の音が聞こえた・・・エーフィに何かあったと思ったグラエナは先生に見つかるのを承知であわててプールに駆け出す。
「こら!グラエナ!」
グラエナはカメックス先生の声を振り切ると、プールに目をやる。エーフィはすでにあっぷあっぷだ。
「ぐらぇなぁ・・・こなくていいよぉ・・・みずだめなんでしょ・・・」
エーフィは身体がいまいち不調なせいか、溺れかけてる、そんな気がグラエナはした。もう水が苦手だなんて関係ない・・・グラエナはそう思って水に飛び込む。
ばしゃぁん!
「まってろ・・・えーふぃ・・・」
グラエナは苦手ながらなんとか水をバシャバシャ掻いて進んでいく。
「ぐらえな・・・来なくていいのに・・・うぷっ・・・」
「エーフィ・・・ダメだって・・・はやくプールサイドに上がらないと・・・」
いつものグラエナだったら、プールに入った時点で、もうパニックになってしまうだろう・・・でもエーフィがいるから今は強くいられる。
だだだっと大きな足音がして、カメックス先生が、やってきた。
「おい!お前ら何やってんだ!」
「へ?」
カメックス先生の声で安堵したのか、グラエナは我に返った。
「わぁぁ・・・水・・・水・・・ダメだ・・・助けて・・・」
グラエナは水が苦手だってことを突然思い出したみたいで、溺れた犬があがくように動き始めた。
「ちょっ!グラエナ!ちょっと待ってろ。」
カメックス先生はパニックになったグラエナを引き上げるべく勢いよく水に飛び込む。エーフィもグラエナの身体を必死に支えるけど、なかなか抑えることが出来ない。
「さっ・・・早く医務室に運ぶぞ。」
「はい!」
エーフィとカメックス先生はパニックになったグラエナをプールサイドにあげると、素早く医務室まで運んだ。

「肝試しぃ!?」
医務室に入ったカメックス先生はびしょ濡れのエーフィから説明を受けて、大きな声を出した。
「すいません・・・それで逃げる途中に・・・私がプールに落ちちゃって・・・」
怒ろうとするカメックス先生をラッキーさんが止める。ラッキーさんはエーフィの身体をタオルで拭き始めた。
「はい。さっさとグラエナ君拭いてきなさい。」
カメックス先生にラッキーさんはタオルを渡す。びしょ濡れで、でも少し落ち着いたグラエナを見て安心したカメックス先生はごしごしと拭き始める。
「すみません。先生。」
「いいんだよ。エーフィと仲良くなれたみたいだしな。」
「あ、そうだ・・・」
グラエナはスッと立ち上がると、エーフィのほうに向かう。カメックス先生はグラエナを拭いたまま一緒に移動する。
「エーフィ。」
「な、なぁに?」
エーフィはびしょ濡れの身体で、グラエナを上目遣いで見ている。
「大事なこと言い忘れてたわ。」
「なになに?」
興味津津、といった顔でエーフィはグラエナの顔をさらに強く見る。
「返事、返したか、忘れてたから。今ここで聞くよ。」
エーフィもラッキーさんもカメックス先生もグラエナの口ぶりに思わず息をのむ。
「エーフィ・・・好きだ。」


ひとまずここまでです。
長丁場になりそうなので、まだまだ続きますが、ひとまずここで分割します。


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Last-modified: 2014-05-22 (木) 00:35:46
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