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女皇の凶毒溺れるがままに

/女皇の凶毒溺れるがままに

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 タイトルの酷さに妙な定評がある自分です。今度こそみんながしあわせやさしいせかいを書きたいとのたまっていたのに、どうしてこんな作品が出来上がったのかと絶望しています。タイトル通り死や官能があるので苦手な方はブラウザバックでお願いします白目。


女皇の凶毒溺れるがままに 




「ひぃ……ひぃっ!」
 若い雄のヤトウモリが、仰向けのままエンニュートに組み敷かれている。焦点の合わない瞳からは薄ら涙を零し、溢れ出る涎で呼吸もままならず。エンニュートの秘部に飲み込まれている性器も、もうだいぶ力尽きている。
「ほら、まだ始まったばかりなんだから……」
「あっ! がっはっ!」
 エンニュートがその細長い指先でヤトウモリの首筋を撫でた瞬間、ヤトウモリは力なく咳き込む。エンニュートの股の割れ目から僅かに精液が吹き出したことで、これで何度目とも知れない射精に至ったのだとはわかる。ヤトウモリが身を震わせること数秒、瞳孔が力無く開き切り、長いマズルの先を横に転がす。
「女皇(じょおう)様、今日も進んでいますね……」
 興奮と恐怖とが入り混じる何とも複雑な表情で、もう一匹雄のヤトウモリが現れる。エンニュートは声だけ聞きながら力尽きたヤトウモリの顎を軽く叩くが、もう動く様子もないヤトウモリを見て不満げに息を吐く。淫乱な臭気を纏った強烈なフェロモン。恐らく達した直後のヤトウモリを起こすために掛けようとしていたのだろう。
「まったく、どいつもこいつも情けなくて……。あ、孵化の報告?」
 その強烈な臭気に当てられながらも入ってくるヤトウモリ。首をそちらに向けつつ秘所に包まれていた雄を引き抜く。力無く縮み切った性器に溢れ出た汁が垂れる。その光景に、報告のヤトウモリはすっかり竦み上がっている。
「はい……。今日は13匹孵化して、2匹奇形がいました……」
「そう。その奇形は『食べさせて』いいわ」
 何を感じる様子もなく言い放つエンニュートに、ヤトウモリの方はげんなりと気落ちしている。成長したヤトウモリが進化するのがエンニュートであるのだが、進化できるのは雌のみである。その雌が生まれる確率は非常に低く、進化できない雄のヤトウモリは一生弱いままである。それを鑑みてこのエンニュートが採った生き残りの戦略は、とにかく数を産むというものである。各個は弱くともそれを大量に産んで群れを築けば、様々な動きができると考えたのだ。
 そこには当然狂ったように快楽を悦ぶ彼女の気質もあったのだが、如何せん彼女の性欲に耐えきれる雄などいるはずもなく。今果てた者も含めて、既に彼女の周りには三匹の雄が横たわっている。
「じゃあ、次を連れてきて」
「は、はい……」
 冷たく言い放つエンニュートに、ヤトウモリは恐怖のまま答える。エンニュートは交尾の数を増やすため、節操なく子にも手を出している。その子の中には先に生まれた子が父親である孫にあたる者もいる。そんな滅茶苦茶な近親相姦も平気で繰り返しているためか、生まれた赤子には奇形も非常に多い。孵化する前に死んでしまい生まれてこないことも当たり前に見るという有様である。
「あ、この子たちも持ってって『食べて』いいわ」
「ひっ! はい、はいっ!」
 エンニュートは横たわる三匹を指し示す。いずれも精を搾られ切っており、恍惚に蝕まれて事切れている。侍らせている雄は命すらどうとも思わない冷酷な彼女であるのだが、個では弱い雄のヤトウモリが出奔して生きていくすべはない。結局エンニュートを女皇としていただくこの狂った社会から逃げ出せる者などいないのである。勿論このヤトウモリもいずれはこの快楽に死する運命だというのは理解し怯えているのだが。
 報告の者が出ていき数分後には、何匹かのヤトウモリが部屋に入ってきていた。大半は亡骸を運び退出していったが、数匹は残った。その数匹はエンニュートに狂える毒気を浴びせられ、これより死出の享楽に埋もれることになるのである。



 雲間から差し込む頼りない日差しを浴びながら、エンニュートはゆっくり体を伸ばす。足を伸ばして座り込んだその姿は、女皇とは思えない無防備さだ。ひとしきり伸ばし切ると、口に咥えたものを指先で掴み落とさないように咀嚼する。ヤトウモリの足だ。脇には木の実もいくつか並べられている。使い捨てのヤトウモリたちに集めさせたものである。
「あーあ。退屈ね」
 エンニュートの命を命とも思わない非道な戦略だが、功を奏しているらしくこの付近は既に制圧されている。お陰でヤトウモリの死骸以外にも食事には事欠かない。ただ繰り返す交尾の相手にはどうにも恵まれていないらしく、エンニュートの秘所は今も不満気に疼いている。
「ここで一発、なんか面白いこと起こらないかな?」
 ヤトウモリの足に残った肉を丁寧にしゃぶり取り、のんびりと口の中で味わう。こうして命までなげうってこの女皇の社会に殉じているヤトウモリたちからすれば、何であれ事が起こるなどたまったものではないが。こんな独り言はこれでもう何度目かもわからない。
「じょ、女皇様! 襲撃です!」
「やばいです!」
 エンニュートが木の実に触れようとした瞬間、数匹のヤトウモリが泣き叫びながら駆け寄ってきた。随分と長く退屈していたが故にようやく飛び込んできた刺激の期待が頭をもたげる。一方でそのヤトウモリたちの姿の情けなさには若干嘆息が出る。粗製濫造状態の上に進化できるわけでもないヤトウモリの雄のため個々の戦闘力は低いのだが、如何せん相当の数を集めたつもりであったのだ。
「なに? 私が出て行かないと駄目なほどなの?」
「はい! 人間数匹を中心に、さらに何匹もポケモンがいる状態で!」
 見れば目の前にいるヤトウモリたちも少なからず負傷している。スピードスターのような周囲全体を攻撃する技であれば数などものの役にも立たない。勿論隙を突いて毒の一つも浴びせれば持久戦の末に仕留めることは可能であろうが、襲撃者の中に人間がいるということがことを難しくしている。人間はモンスターボールという利器であらゆる種族のポケモンを操るほか、道具を駆使してポケモンを強化したり治療したりしてくる。折角犠牲の上に毒を浴びせられても、次の瞬間には薬で治療されていても不思議ではないのだ。
「どうやら、最初っから私たちが狙いみたいね!」
 ヤトウモリたちの状態を見て相手を予想し、エンニュートの目に狂喜が宿る。この付近を制圧する中で他の野生ポケモンたちを追い払う等結構なことはしてきた。それに対して抱いたのが自己顕示欲なのか義憤なのかはわからないが、こうして付近を制圧するほどの自分たちに挑んでくる相手となるとそれなりに楽しめそうだ。
「うぅ……俺たち、どうなっちまうんでしょう?」
「上等よ! やってやろうじゃない!」
 言いながらエンニュートは目線を一つ送りつつ、咥えていた小骨を吹き出す。どうせ後でこのヤトウモリたちが片付けるだろう、そう思いつつ。ヤトウモリたちは慌ててその襲撃者たちが向かってくる方に駆け出す。その後に従うエンニュートの頭には久々の享楽への期待が膨らみ切っていた。

 茶色の逞しい体のポケモンが四つ足を踏み鳴らし、周囲の地面を揺する。その範囲内にいたヤトウモリたちは慌てて飛びのくが、攻撃のために前に出過ぎていた者が「地ならし」に巻き込まれる。
「ぐぁはっ!」
「駄目だ! 近付けない!」
 バンバドロが更に追撃を加えようと踏み込んで見せると、ヤトウモリたちは顔面蒼白というべき様で後ずさりする。相手が巨体とあって攻撃の範囲も広く、ヤトウモリたちの毒や炎は届いても向こうの体を少し汚す程度である。勿論向こうから射程内まで入り込んでくれば一矢報いる程度にはダメージを与えられるだろうが、相手もそれをわかっているらしく深く踏み込む様子は無い。加えて……。
『2匹やったか』
『回収しますね』
 巻き込まれて倒れたヤトウモリたちに、人間がボールを投げる。通常のトレーナーであれば、ダメージを受けて戦闘不能になったポケモンにボールを投げることはしない。ある程度立っていられる状態で捕獲する分には問題は起きないのだが、倒れるまでにダメージを受けたポケモンを捕獲しようとするとその体がもたないからだ。倒れた後に逃げ出せばまだ再起の可能性があるというのが基本的な見解で、倒れた野生ポケモンに捕獲のボールを投げるのは通常は法律で禁止されているのだ。勿論野生で暮らすヤトウモリたちにはそんな法律など知ったことではないのだが、いつもと違う状況であるのには錯乱させられてばかりだ。
『回収しても回収しても、うーん……。終わらないですね』
『まあこの周辺の荒れようを見ればわかるだろ。周辺住民や野生ポケモンの被害も相当だからな』
 人間たちはヤトウモリたちが逃げ込んだ木々や茂みを見て歯軋りしている。エンニュートたちはこの周辺を暮らしやすくするために、他の野生ポケモンを排除してきた。その際に毒を撒き散らし炎で焦がし、周りを諸共に破壊してしまったのだ。この襲い掛かってくる人間たちは、被害を拡大させている野生ポケモンたちを回収する特別な職員たちなのである。捕獲用のボールも扱いが難しい特別製のため、使用にあたっては資格が求められる代物だ。そのようなものが動員されるほど、エンニュートたちは被害を出していたのである。
『ルカリオ、隠れた位置はわかるか?』
「そっちです!」
 人間と手持ちのポケモンで組む陣形の中心で、ただ一匹戦闘には参加していないルカリオ。一声叫ぶと後ろ頭の房を逆立てて手のひらに波導をチャージし、ヤトウモリたちの隠れた場所に正確に放り込む。直接戦闘だとタイプ的にはヤトウモリたちにはどうしても不利になるルカリオであるが、索敵においては非常に強い能力を持っている。
「ぎゃはぁっ!」
「ひぃいいっ!」
 枯れて焦げた木々は本来であればヤトウモリたちの保護色となるのだが、これでは何の役にも立たない。しかも粗製濫造のヤトウモリたちにとっては、タイプ相性でも補いきれないほどに鍛え上げられている相手であるというのがわかる。直撃を受けた一匹が打ちのめされるのを見るまでもなく、残りのヤトウモリたちは悲鳴を上げて逃げ惑う。次の瞬間にはヤトウモリたちがいた場所はストリンダーのハイなオーバードライブで飲み込まれていた。
『なんだって……向こうは逃げまどってばかりですね』
『数に対策されると手を出せないか……まだ親玉のエンニュートがいるって話ですがね』
 戦いは一方的ではあるが、人間たちの方には今なお油断は見られない。反撃の隙を与えないように着実に、蝕まれきった地面の上を進んでいく。リーチの長さがあるのでこの調子を続けられている限りヤトウモリたちには手を出すことができない……両陣営にそんな空気が広がっていく中で。
「ぐっ!」
『バンバドロ? これは……おいでなさったようだな!』
 地ならしで上がる砂煙に紛れていてわからなかったが、バンバドロはいつの間にか火炎放射を食らっていたらしい。表情が苦悶に歪むことから、火傷の追加効果もしっかり加えられたのがわかる。ヤトウモリたちが今までまともに届くような攻撃をできずにいたことから見て、噂をすれば影で親玉が現れたのだとわかる。
『バンバドロ、火傷治しを使うから後退しろ!』
『ルカリオ、相手の位置はわかるか?』
「ええ! そこね!」
 ルカリオが気合一閃波導弾を放つのと入れ替わるように、バンバドロは主人の手が届くところまで後退する。素早く取り出せるように準備していたのだろう、その時には既に主人の手には火傷治しが握られていた。バンバドロの手当てを行う者以外はその波導弾が飛ぶ方向に目を向けた。その瞬間。
「それ! ふふ、隠れさせてはくれないみたいね?」
「こいつ……!」
 波導弾にヘドロ爆弾を命中させて打ち消した上で、エンニュートは悠々と人間たちの前に姿を現す。勿論姿を引き摺り出すことには成功したにしても、得意技を簡単にあしらわれたこととその余裕の態度にルカリオは歯軋り一つ。とは言えエンニュートもバンバドロやストリンダーの攻撃範囲に踏み込もうとはしないようだが。
「女皇様!」
「あんたたち、ちょっと情けなさ過ぎよ! 私が出てきたからにはしっかり手伝いなさい!」
 ヤトウモリたちを一喝するや、エンニュートは火炎放射をストリンダーに目掛けて放つ。今までのヤトウモリたちの火の粉など何の比にもならない熱を持ち。襲い掛かるそれを躱そうと体を少し反らせた瞬間、炎の陰に紛れて踏み込んできたヤトウモリたちの追撃の火の粉がストリンダーを一斉に襲う。
「うわあああっ!」
「あちちっ! やりやがって!」
 ストリンダーが反撃のオーバードライブでヤトウモリたちを一掃しようとした瞬間には、エンニュートの次の炎が襲い掛かってきていた。ストリンダーは舌打ちしながら攻撃を躱す間に、ヤトウモリたちは一気に距離を取っていた。この凶悪な攻撃を放つエンニュートに横槍を入れようと回復したバンバドロは踏み込もうとするが、他のヤトウモリたちに撒かれた火の粉に邪魔されて進むことができない。ルカリオの方はエンニュートに再び紛れさせないために波導で狙い続けることで手いっぱいであり。
『なるほど、やってくれる!』
『確かに手ごわいですけど、ここからですね!』
 隊長風の人間が相手の動きに頷きながら、後ろの若い男性に目をやる。エンニュートが出てくるのも打ち合わせ通りだったらしく、男性は後衛に並べていたポケモンたちをボールに戻して前に出る。ヤトウモリたちは範囲攻撃の使い手たちに押さえさせて、その手に握ったボールの中のポケモンでエンニュートに一騎討ちをしようというのだろう。
『メーティン! 初仕事、頼んだぞ!』
「は、はい!」
 男性はボールを投げることなく開き、手元にジメレオンを出す。男性が言う通り初陣なのだろう、ジメレオンは緊張の面持ちだ。そうなることも見越して手元に出したのだろう、男性はジメレオンの頭を撫でて気持ちを宥める。しっかり名前を付けているところからも、可愛がっていることが理解できる。とはいえ戦場でこの緊張感の無さには隊長も若干呆れた風ではあるが。
『大丈夫だ。今まで教えてきたとおりにやればいけるし、フォローも十分可能だ。自信を持っていけ』
「は、はい!」
 男性に撫でられて、若干嬉しそうな表情を見せるメーティン。改めて気を張りまっすぐにエンニュートを見据えるその顔は、まだ幼い少女のものであるが。それでもこの両者の関係は、エンニュートとしては見ていて若干羨ましさはある。何となくそんな気持ちを抱いた一瞬。
「おっ……と?」
「うわ……あいつ、でかい連中よりもリーチあるのか!」
 メーティンは手のひらを突き出し、エンニュートに向けて水流を放つ。それは周囲の空気を震わせながら、まっすぐエンニュートに向かって飛んでくる。エンニュートもヘドロ爆弾を打ち返しその水の波動を掻き消すが、それにメーティンは軽く笑みを浮かべる。バンバドロやストリンダーの攻撃範囲の倍以上の距離を狙って、それも挨拶程度の攻撃らしい。
「上等じゃない! あんたたち、でかいのをしっかり引き付けているのよ!」
「え? ちょ、女皇様!」
 挑まれた一騎討ちに、エンニュートも望むところと駆け出す。自らの楽しみに駆け出すエンニュートに置いて行かれて、ヤトウモリたちは悲鳴を上げるばかり。しかし動かないわけにはいかない。メーティンにヘドロ爆弾を浴びせようと狙うエンニュートの脇を突こうと、ストリンダーが踏み込んでいたからだ。慌ててヤトウモリたちはその更に外から攻撃すると、ストリンダーも仕方なさそうに飛びのく。実のところヤトウモリたちの援護が間に合わずにストリンダーの攻撃を向けられたとしても、エンニュート自身は躱し切る自信はあった。だがあまりにも醜態を晒す手下たちを無理やりにでも動かさせるため、この強引な踏み込みに入ったのである。ヤトウモリたちが引きずられるままに動いたのを確認してエンニュートはヘドロ爆弾を放ち。
「おっと! 派手なの撃つね、お姉ちゃん!」
 爆発して周囲に大きく飛び散ったヘドロだが、その爆風も全く届かないところまでメーティンは飛びのいていた。周囲を荒らして恐れられる敵を「お姉ちゃん」などと呼べるこの不敵な少女に、寧ろ可愛らしさすら感じる。その可愛らしさを壊してみたいと放ったヘドロ爆弾は、メーティンの水の波動とすれ違いで通り過ぎ。
「ぎゃあっ!」
「ごめんね!」
 エンニュートがいた位置を一瞬遅れて通り過ぎた水の波動は、その真後ろにいたヤトウモリに直撃する。一方のメーティンも手足の短さには似合わない速度で疾駆し、攻撃を食らう様子は全くない。互いの狙撃を遮るものが殆どない腐敗した一角で、ヘドロが飛び散り飛沫が舞うという異様な戦いの光景。しかしお互いに直撃は避けていても、少しずつ消耗していっているのを理解していた。
「お嬢ちゃん、随分撒き散らしてくれるわね……」
「お姉ちゃんの毒も、この場にいるだけでもきついよ……」
 炎を扱う種族であるがゆえにエンニュートが苦手とする水は、踏むだけで僅かながら確実に足元から体力を奪っていた。一方のエンニュートの毒気も着実に場の空気の中に染み込んでいっており、メーティンは呼吸するだけで眩暈を感じていた。撃ち合い躱し合いの中で着実にお互いの呼吸が荒くなっており……。
「次こそ、決めるわよ!」
「負けないからね!」
 お互い相手の狙いをずらすために横に駆けること数歩。エンニュートはメーティンの呼吸のタイミングを見て取りヘドロ爆弾を放つ。それを躱そうと踏み込んだ瞬間、メーティンは強い眩暈を覚えた。踏み込みと呼吸のタイミングが悪く、毒気を強く吸い込んでしまったのだ。
「いただきね!」
 それでも辛うじてヘドロ爆弾を躱すことはできたが、そちらに目線を奪われた横からエンニュートは一気に駆け込んでおり。持てるありったけの力を手元にチャージして、自分でも怖くなるほどに威力を持たせたヘドロ爆弾をメーティンの頭に直接叩きつけた。眩暈から立ち直れていないのだろうか、メーティンは躱す動きを取ろうともしない。メーティンの頭上で破裂したヘドロ爆弾は、エンニュート自身をも打ちのめし。
「ふ、ふ……。やりすぎちゃったかしら?」
 あまりの衝撃に視界が霞み、体中に痺れるような痛みが走っている。流石にこれほどの一撃をまともに受けては、メーティンが立っていることは無いだろう。あとは視界が回復するのを待って次の相手に攻撃に向かおう。そう思った瞬間だった。
『アクアジェットだ!』
 メーティンに指示を出していた男性の声が響いた瞬間には、エンニュートの腹に重い衝撃が走る。それは痛みという次元をも凌駕するほどの衝撃で、しかも同時に叩きつけられる水圧がエンニュートの中の熱を押し飛ばしており。
「か……はっ!」
「あ、はは……。慌てて『光の壁』張ったけど、やっぱりお姉ちゃんのきついや」
 視界を霞ませていたヘドロが消し飛ばされ、エンニュートは弾き飛ばされながらもメーティンと目線が合う。その体はうっすらと何かの技で守られている様子があること以上に、湛えられた巨大な力が瞳からこぼれ出ているのが感じられた。力はアクアジェットに乗せられてエンニュートに叩きつけられ、今一度激流としてメーティンの手元に集まる。それはエンニュートが地面に叩きつけられるまでの僅かな間のことであり、堰が切られるまでに自らの意志で動くことなどできず。
「ぎゃあああっ!」
「女皇様ぁっ!」
 最早「水の波動」という技名で括るのも愚かしくなるほどの決壊。エンニュートのみならず飲み込まれたヤトウモリたちは揃って悲鳴を上げ、難を逃れた者も頼みのエンニュートが飲まれたのを見て絶望に叫ぶ。意識こそ保ってはいたが、もう起き上がることができないのはわかった。彼方からヤトウモリたちが絶望に叫び逃げ惑うのが聞こえ、僅かに開いた視界でメーティンも程なく力尽きるのも見えたが。メーティンを指揮していた男性が投げたボールがこちらに飛んでくる、それがエンニュートの最後に見たものであった。



 負けた。全てが落ちた真っ白とも真っ黒ともつかない世界の中で、エンニュートにはその事実しか無かった。確かに負けたけど、久々に楽しかった。エンニュートにとってこの世は全てが奪い合いである。誰もが生きるため楽しむため、常に奪い合っている。たとえ自分が奪われる側に回ったとしても、お互い様だと思っている。だから現実として最期に楽しかった以上、悔いる要素が無いのだ。自分が支配してきたヤトウモリたちに場所が無くなったことについても、何かを思うどころか既に忘れた存在となっていた。ただ最後に戦ったジメレオンの少女、メーティンが少し可愛らしかったのがやや気になるくらいである。
 もし命を繋ぎ留めていたら、もう一度会えれば嬉しい。とはいえここから先は敗者の宿命なのだ、人間たちに奴隷として搾取されることも当然考えられる。それがただ苦しいだけの状況だったら、潔く死を選ぼう。他者はおろか自らの命すら享楽の前には軽いというのが彼女の考え方なのである。



 どれほどの時間が流れただろうか。体に重苦しさはなく、急に視界が開けて。エンニュートの目の前にいたのはあのジメレオンの少女だった。
「……えっ?」
「お姉ちゃん、これからよろしくね!」
 状況が理解できないエンニュートに駆け寄り、メーティンは嬉しそうにその手を握る。確かに命を繋ぎ留めていたらメーティンにもう一度会いたいとは思っていた。だが自分は敗者であり奪われることになった身の筈。だというのに虐げられそうな気配がまるで無いのに戸惑うエンニュート。脇でメーティンの喜ぶ顔を見て、男性が悦に浸っているのは確認できた。
『戦った相手として君の実力を見たというのもあるけど、メーティンがずっと気にしていたからね。教育の担当を任せてもらうためにちょっと無理は言ったけど、頼んで良かったよ』
「リーダー、ありがとう!」
 リーダーと呼ばれた男性は、左右それぞれの手でメーティンとエンニュートの頭を撫でる。その言葉がまだ正確にわかるわけではないが、自分の実力を認めて仲間に加えようという考えであるというのは何となくわかった。
 エンニュートを捕獲されたことで、残るヤトウモリたちにはもうどうすることもできなくなった。ヤトウモリたちは破れかぶれに突撃してきた者は皆残らず返り討ちに遭い捕獲され、どうしようもなく逃げ出した者も逃げきれなかった者は多い。勿論僅かながら逃げ切った者もいるだろうが、散り散りになってまともな力を出すことはできなくなっていた。既にエンニュートたちが荒らし切ったあの土地の浄化は邪魔されることなく進められている。
 野生世界の枠を破壊し暴走するようになったポケモンの存在が確認されたら、事態の鎮静化のために派遣されるのがこのリーダーたちである。そうして捕獲されたポケモンは、暴走原因を調べるために研究所に送られたり、再教育の上で社会の担い手として組み込まれたり様々ではあるが。手続きを済ませば沈静化部隊に組み込まれることも可能なのである。彼らの部隊が戦力不足であったわけではないが、帰還後にメーティンがエンニュートのことを気にしていたためリーダーは頼み込んでエンニュートを引き取ったのである。話としてエンニュートにとってはまだ慌てて死を選ぶほどの状況ではないというのだけは理解した。そして……。
『君の名前はメヒトだ。メーティンと頭文字を揃える名前にしたよ』
「お揃いだね、お姉ちゃん」
 何故か名前までつけられた。確かにヤトウモリたちに「女皇様」と呼ばれていた今までとは状況が変わるため、名前が付けられるのも別段文句があるわけではない。何よりその名前で何故か嬉しそうに笑顔を浮かべるメーティンが可愛らしいためいいことづくめではあるのだが、それでもこの状況の変化には戸惑いは隠せない。
『さ、て。急ぎの仕事片付けてくるから、今日は戻るのは夕方になると思う。メーティンはまずはメヒトが慣れられるように世話してあげてよ』
「わかった。行ってらっしゃい、リーダー!」
 言うが早いか、リーダーは二匹を残して部屋から出て行った。遠い彼方に意識が飛んで行った中で「もう一度会えれば嬉しい」くらいに思っていた少女と、今は部屋の中でふたりきり。ひとまず立て続けに起こった状況の急変はこれで止んだ感じではあるが、既にとんでもないことになっている気がしているメヒト。ひとまず何か話をしようかと思った瞬間には、体の方が先に反応していた。
「メヒトお姉ちゃん、お腹すいたの?」
「あー……。そういえば確かにね。最後に食べたのは……」
 空腹を訴え上がる唸り声に、メヒトは記憶を辿る。確か最後に食べたのはメーティンたちと戦う直前のヤトウモリの死肉だったはず。木の実に手を出そうとした瞬間ヤトウモリたちに呼ばれたのは何とか思い出せたが、如何せん戦いで意識を失ってからどれほどの時間が経ったかわからない。メーティンは脇にあるテーブルを指差す。
「お菓子ならリーダーが用意したのがあるよ。食べようか」
 言われるままにテーブルにつくと、その上には皿が置かれお菓子が並んでいた。メヒトに言わせればまずテーブル自体がよくわからないものであったし、その皿の上に並んでいるものもよくわからない存在であるが。白い皮の表面に全く同じ模様が描かれている物体が並ぶ。木の実の類でもここまで正確に同じ形になることは無いというのに、表面の模様まで揃えられるなど信じがたい光景であるが。如何せんこのようなものは見たことが無いので、このまま食べていいかすらわからない。
「メーティン……私、こういうの見たことが無いから」
「あ、そうなんだ? これは『いかりまんじゅう』っていってね」
 メーティンは並んでいるうちの一つを手に取ると、包装紙をそっと引っ張り破く。快活な音と共に中から丸い塊が姿を現したのだが、メヒトにとってはその行動すら大胆なものに感じられるほどだった。これからこの目を疑うものを幾度もなく見せられるんだろうと考えると、この程度では驚いていられないと落ち着くことに努めないといけない。
「はい、このまま食べて大丈夫だよ?」
 取り出したまんじゅうを差し出されると、メヒトは促されるままにメーティンから受け取る。ふと視界の端で、テーブルの上に木の実もいくらか積まれているのが確認できた。いきなり「いかりまんじゅう」よりも木の実の方がハードルがずっと低いので、そちらの方がありがたかったと思いつつ口に入れ噛み潰すと。
「甘い……!」
 中から出てきた餡がメヒトの味覚を猛烈に刺激する。芳醇な甘みが非常に豊かであるというのに、それでも飽き足らず味の中に乗せられる香ばしさ。粒状の中身が弾けるその食感も口いっぱい体いっぱいに響き渡り、生み出した者が食べる者を楽しませるために作ったようにしか思えない。メヒトが生きていた野生でも食べられる前提で結実する木の実はあるが、生存や繁殖の戦略を成立させるために敢えて「食べさせる」という形を採っているのだ。こんな「食べて楽しんでもらう」ことに特化した存在など触れたことが無い。いつの間にか二個目に手を伸ばしており。
「あっ!」
「あー……力加減、気を付けないとだったね」
 慌てて包装を破いた結果、力加減が悪く中身を潰してしまった。もし力加減がもっと悪ければ、中のまんじゅうはもっと酷く砕け飛び散っていただろう。中から飛び出したのは、恐らくはさっきの甘い味の源であろう。黒い粘土状の塊の中に散見されるのは、恐らくは何かの木の実か種をすり潰したその皮だろうか。メヒトはまだ「つぶあん」という単語は知らないが。一つ目で見た綺麗な球体のつやを思うと勿体ない気分ではあるが、食べる分には問題ないからと口に運ぶ。やはり刺激的である。
「えへへ……」
 五つ六つと食べ続けてようやく、その間ずっとメーティンが見つめていたことに気付くメヒト。何故だか急に胸中を支配した当惑のようなものに、得体が知れない混乱が上乗せされる。野生の世界でも更に強行的に生きていたメヒトにとっては、食べられる時に食べられるだけ食べるというのは寧ろ掟のようなものである。形振り構わず貪ることに「恥」などという着想は全く無かった。自分の胸中を支配した感情についていけず、慌てて頭の中で打開を探る。
「と、ところで……あんたたちは普段どんな生活しているの?」
「普段? 私は先輩たちと一緒にバトルして、お姉ちゃんと戦った時みたいな出撃に備えているよ」
 メヒトのそんな当惑に気付く様子もなく、その問いに答えるメーティン。一通り食べたので次は話す時間だろうかと、メヒトの投げ捨てた包装を拾い集めてごみ箱に捨てながら。その行動の意味はまだよくわからずにいたメヒトだったが、バトルで訓練する話の方は中々興味深かった。タイプ相性があるにせよメーティンはメヒト相手に間違いなく戦っていた。それは普段他のポケモンたちとバトルの経験を重ねていることが下地にあることを説明される。リーダーの所属するチームの他の人間の手持ちだったりチーム外との交流だったり相手は時によるが。メーティンがそこまで比較できているかまではわからなかったが、総合的に見れば自分よりも強い相手もいると感じられた。
「中々面白そうじゃない。強い相手と戦うの、刺激的で私は好きね」
「そっか。お姉ちゃんはやっぱりすごいね。私はまだバトルは不安でさ。始まってもずっと怖い気持ちが抜けなくて……」
 その言葉に、メヒトは一瞬「あれだけ堂々と戦っておいて何を言うんだろうか」とも思った。だが思い出してみれば、ボールから出された瞬間は物凄く不安そうだった。それを宥めるために撫でてあげていたリーダーも随分な溺愛であるとは思ったが、実際のところあれだけ堂々と戦っている心の奥では一歩間違えれば壊れそうなほどに怖かったのかもしれない。
「でも……なんかお姉ちゃんと戦っているうちに何か少しずつ吹っ切れてきて。最後のお姉ちゃんのあの一撃を受けた後は、もう気持ちがすごかったんだよね。トレーニングで『激流』を試したことは今までもあったけど」
 メーティンの透き通るような青い肌の頬が、その話が進むうちに見る見る赤く染まっていた。それさえなければひょっとしたら何も思わなかったかもしれないが、メヒトはここで完全に何かがおかしいと感じた。まさかとは思いたかったが、自分の扱う毒にはフェロモンとしての作用もあるため精神的に狂ったとしてもおかしくはないかもしれない。まさかとは思いたかったが、否定させて欲しかったが。
「お姉ちゃんの毒、もう一度掛けてくれないかな? いかりまんじゅうはポケモンになら解毒の作用をしてくれるからさ」
 一瞬で膨らんだ自らの願いがここまで無慈悲に打ち砕かれるとは。一応、納得する部分もある。ただ戦っただけの相手であれば、リーダーにおねだりするほど気に掛けることは無いだろう。勿論メーティンも自身の弱さを乗り越えたいと思ってのことなのだろうが、それでこんな要求に繋がっているとまでは流石のリーダーも知らないだろう。
「お姉ちゃん、お願い!」
 逡巡に縛られた一瞬の隙に、メーティンはメヒトの両手を握る。そして上目遣いで見上げるその目はうっすらと潤んでおり。間違いなく、メヒトの逃げ場は奪われていた。勿論力づくで突き放つこともまだできなくはないが、たとえ狂気に囚われていても可愛らしい少女であることには変わりないのだ。永遠とも一瞬とも思える混乱の末にメヒトの気持ちは折れて。
「まあ、まあ……。試すだけなら……」
「ありがとう、お姉ちゃん!」
 乱立する躊躇いを押しのけながら、メヒトはメーティンの首筋に両手を添える。そして胸いっぱいに息を吸い、自分の毒気に染まり切った息を顔面に吐き掛ける。僅かも散らさないとばかりに必死に吸い続けるメーティン。高揚に掻き立てられながらも恐怖に涙するヤトウモリたちの姿がこの時にようやく思い出され、その時にはもう戻れなくなってしまったのだと初めて悲壮さを抱いた。それも束の間。
「ありがとう、お姉ちゃん! ありがとう、お姉ちゃん!」
 メーティンは既に壊れきっており、目の前で意味もなくメーティンにお礼の言葉を繰り返していた。テーブルの上には解毒のためのいかりまんじゅうはまだ幾つも残っている。食べきってなくて良かった。それだけがメヒトの心の拠り所になっていた。蕩け切った表情で目の焦点が合わず、わかってはいたが早くもまずい状況に至ってしまったと慌てていかりまんじゅうに手を伸ばそうとするメヒト。
「お姉ちゃん、大好き……!」
 しかしその手がいかりまんじゅうにあと数センチ届かず、胸元に抱き着いてきたメーティンによって止められてしまっていた。ジメレオンは体温が高い種族ではないはずなのに、何故か異様に熱い。哀願に応えて行なったことだというのに、後悔ばかりが押し寄せてくる。ここに「罪悪感」があるということは、生まれてこの方経験がないので把握はできなかったが。
「ちょ……! ひゃっ!」
「お姉ちゃん! いいにおいがするね……!」
 メーティンに押し倒された瞬間、メヒトは憚る気持ちもなく無様に悲鳴を上げる。ヤトウモリたちに対してはどんな痴態にまみれた行為の中でもこんなことは無かったというのに。フェロモンを含む毒でもって精神や行動を操るということは今までもしてきたが、目の前にいるメーティンはそこに快楽を見出しているというのが信じられず。
「お姉ちゃん! 体が……熱いの!」
 メーティンはメヒトの体に覆い被さり、その滑らかな白い腹部を密着させる。興奮しきりすっかり濡れ切ったメーティンの秘部は、よりにもよってメヒトのそれと綺麗に重なり。同性とこんなことになるなんて思ってもみなかったメヒト。
「ひゃんっ! ちょっとっ!」
「私、お姉ちゃんみたいになりたいの!」
 メヒトに必死に抱き着いて、全身を狂うがままに擦り付け。これはメーティンにとっては戦いを楽しめる強い気持ちの持ち主との同化を願う儀式のようなものなのだ。しかし当然とばかりにメヒトは体中を刺激され、特に強い熱を持つ秘所が擦れ合っているため響くものは大きい。だがメーティンの声が妙に届いてしまい、気持ちを維持しなければいけないという思いが芽生えてくる。
「し、仕方ないわね……!」
 メヒトはメーティンの背筋に左手を回し込み、しっかりと抱きしめる。自分はお姉ちゃんなのだ、自分はなりたい存在なのだ、自分は女皇様だったのだ。ならばメーティンに対してはそれらしく振舞わないといけない。右手を重なる割れ目にそっと入り込ませて。
「ぁうゎああっ!」
「弱い自分は、全部壊しちゃいなさい!」
 二本の指をメーティンの割れ目にねじ込み、少しずつ拡げる。ついでに自分の割れ目も撫でて楽しみはするが、本当についでだ。思ってもみなかったメヒトの行動にメーティンは更に乱れる意識の中で当惑するが、不思議と悪い気分はしなかった。何よりもこの感覚に身を委ねることが自分の弱さを壊すことに繋がると思えて。
「お姉ちゃぁんっ!」
 指で割れ目を上下両端に広げ切ったところで、メーティンは果てた。ひとしきり体を震わせ潮を吹き、全てが崩れ切ったところで力無くメヒトの胸の上に倒れ込む。幸せそうに意識を手放そうとするメーティン。その顔は非常に可愛らしかったが、これで終わりというわけにはいかない。
「ほら、メーティン! ちゃんと毒は治しなさい!」
 その頬を軽く数発叩き、メーティンの意識を呼び戻す。叩いた瞬間の頬の弾力が若干良いななどとも思いながらも。気怠そうではあったが、それでもその声と共に自分の体を蝕む毒の感覚も理解し辛うじて起き上がる。このまま毒にまみれて永遠に眠るわけにはいかないと、メヒトが差し出したいかりまんじゅうを受け取り頬張る。
「ごめんね、お姉ちゃん……。ちょっと滅茶苦茶なことしちゃったよね……」
「実際、結構びっくりしたけどね……」
 毒が治って正気に戻るに従い、メーティンには徐々に自分のしたことへの後悔が芽生えだす。形振り構わない哀願で毒を浴びせて貰った後は、狂ったように暴れて体の恥ずかしい部分をも擦り付け。あと一歩で涙が出そうになったところでメヒトに頭を撫でられ。
「ここで泣いたら、私みたいになれないわ。もっとやりたいことに正直になりなさい」
「お姉ちゃん……」
 抱き寄せられ顔を埋めたメヒトのにおいの中で、メーティンは言われた通り涙を呑み込む。やりたいことに正直になる、それがメヒトの強さの秘訣のようなものかもしれない。自分がそこまで遠慮がちな性格だったかは考えなかったが、やりたいことに向かっていこうと思えれば確かに立ちはだかるものも怖くはないかもしれない。そんなことを考えるメーティンの前で、メヒトの方はあろうことか先の行為で火が点いたものを抑えられなくなっていた。
「ところで……私の方もちょっとどうにかしてくれないかな?」
 何となくメーティンが落ち着き始めたのを感じ取り、メヒトは一歩下がらせると。そのままメーティンの手を自分の秘所に引き寄せる。柔らかく弾力のあるその手の感触で、ただでさえ濡れ切っているメヒトの秘所は更に力んで引き締まり。メヒトの言う「どうにか」というのも一瞬は理解できなかったメーティンだが、先にメヒトにしてもらったことを思い出した後は迷うことは無かった。両手を丁寧にメヒトの割れ目にねじ込んでいき。
「っ! そう、頑張ってみてっ!」
 今までヤトウモリたちから搾り取ることに慣れていたため、メーティンの手にも遠慮なく絡みつくメヒトの肉。一瞬はメヒトの望みと違っているかもしれないと不安になったメーティンだが、彼女の言葉から間違いなかったことには安心する。とはいえその反応が息を荒げて体を震わせるものだったので、この行為を悦ぶことにはまだ若干疑問は残る。先程自分で感じたものを思い出し、一応「悪い気分はしない」程度の認識だったのは理解するが。
「もっと……気持ち良くして……!」
 立っていれなくなるほどの責めを期待して、メヒトは床に仰向けに転がる。若干腰を持ち上げて浮かせながら。とにかく弱い自分を壊すことを教えてくれたメヒトにお返しをしたい、こうして望んでいるのなら気持ち良くさせてあげたい。そう思った瞬間、メーティンはメヒトの「やりたいことに正直に」という言葉を思い出す。お返しとしてメヒトに気持ち良くさせたい、それが今の自分のやりたいことだ。それならば。
「頑張るよ。わからないから失敗しちゃうかもしれないけど、その時は教えてね?」
 自分の手を締め付ける肉を、ゆっくりと押し拡げる。それは何故だろうか異様に力を持っており。確か一度リーダーの両親という人たちが住んでいる家に行った時、確か父親の方が「肩が凝っている」と言ってリーダーがそこを揉んでいたのを思い出す。揉んで擦って少しずつ、緊張して凝り固まった肉を解していけばいいのだろうと思いゆっくりと手先を動かしていく。
「あっ……! あっ……!」
 メヒトの反応はより息を荒げて体の震わせ方を激しくしている。考え方として正しかったのかはわからないが、恐らくはこれが「気持ち良くなっている」のだと感じたメーティン。さらに動きを進めようとした瞬間、堪らなくなったのかメヒトが左右の手で胸と内股を擦り始めたのが視界の端に映る。自分の手と違い指が数本に枝分かれしており、細長く緻密な動きそうなのがわかる。水中での水かきの意味もあるために、中に骨格はあってもひとまとまりになっている自分の手と比べると、非常に細かい動きができそうだ。自分の手にはこんな細かい動きはできるのだろうか、自分の体でどこか代わりに使える場所はないだろうか。そう思った瞬間。
「そうか、そうか……!」
 その手で割れ目を左右に広げると、できた隙間から舌をゆっくりねじ込んでいく。手や指と違って一本ではあるが、長さや動きの緻密さはそちらではできないことを可能にしてくれる。入ってくるものの急変に、メヒトも思わず全身を震わせて反応してしまい。
「ちょ……! そこまでしてくれるなんて……!」
 とはいえ湿り気や弾力の質感にそれが何であるのかはすぐに理解する。しかも思いがけずその長さで深くまで入ってきたことで、全身を駆け巡る快楽に悶えて狂ったように身を捩じらせる。教えたわけでもないのにここまでの工夫に乗り込んでくれるなんて、いい素質だ……。そこまで思ったタイミングで、絶頂がきた。
「ああぁぁぁっ!」
 炎の属性を持ちながら、一見相容れないようにも思える潮を吹く。それは単なる水分ではなく油の方が近いのだが。いずれにせよメーティンもメヒトが気持ち良くなったのだということは理解する。快楽に堕ち切ったメヒトは虚ろな目つきながらもメーティンと視線を交差させ。
「ふ……ふっ。頑張ってくれたね……」
 労わないといけないという一心で上体を起こし、そっとその頭を撫でる。自分のやりたいことに正直になった結果行きつく先としては、間違いなく最高である。しかしメヒトもここまで燃え上がり染まり切ったのは久々のため、だいぶ消耗してしまった。
「少し、休もうか……」
 目線を上げると、寝転がって休むのに丁度良さそうな台がある。それが「ベッド」と呼ばれているのはまだ知らなかったが、メーティンも用途は理解しているので仲良くそちらに向かっていた。



 それから幾日経っただろうか。メヒトはメーティンと共に、他の者たちの目を忍んでだが狂ったように行為を繰り返してきた。勿論表ではバトルや訓練にも参加し、メヒトも徐々に人間と共に暮らす社会に慣れていた。そして。
「ふふ……メーティン、今日はいいものを持ってきたわ」
「いいもの?」
 いつものように行為に勤しもうと、ガレージの奥に隠れ寄り添う二匹。ここは普段はあまりリーダーやポケモンたちが来る場所ではないので、完全に自分たちの行為の場所として配置換えしてしまっている。とは言えこの二匹がどういうことをしているかはもう全員の知ることとなっていたのだが、普段表に出すメーティンの態度がやはり可愛らしいので許されていたのだ。
「これよ」
「え……? これ、痛いやつだよね?」
 メヒトが取り出したのは、一本の注射器だ。未使用未開封の新品である。ただメーティンはこれに良い思い出が無く、露骨に表情を歪める。メヒトも加入の翌日に「ポケモンセンター」というところに連れていかれ、いきなりこれで刺された時には猛烈に怒り狂った。注射を行なったイエッサンの雄を次の瞬間には締め上げており、怒涛のクレームを叩きつけていた。リーダーが戻そうと掴んでいたモンスターボールも素早くむしり取り、止めるためにポケモンが十匹がかりになったのはいい思い出となっている。
「私もいきなりこれをやられた時はもう本当に許せなかったんだけどね。でも詳しい説明を聞くと、意外と使えるんじゃないかって思ってね」
 不安そうな顔のメーティンをよそに、注射器の包装を剥くメヒト。注射器は押子となるプランジャ部分を引いて円筒のシリンジに液体を吸い込み、その吸い込んだ液体を細い管となっている針で他のものの内側に流し込むことを、メヒトは一つ一つ指差しメーティンに説明し。この前メヒトが大暴れした一件は「予防接種」と呼ばれ、病気を防ぐための薬を注入するものだった。他にも「採血」と呼ばれる健康状態の確認のために血液を吸い取るために使われることもあると説明した上で。
「だから、例えば……」
 メヒトは注射針を取り付け、プラスチックの外装を外すと自身の脇腹に手を添える。フェロモンの分泌腺が多い場所である。メーティンが「まさか」と思った瞬間には、メヒトはその自らの脇腹に針を刺していた。注射というものの説明を聞いた時からずっと興味を持っており、今日はたまたまポケモンセンターに行く機会があったのでその時に目を盗んで奥まで忍び込みくすねたのである。折良く研修の職員に注射の説明を行なっていたので、その手順もしっかり盗み聞きしてきたのである。消毒に関しては完全にスルーしているが。
「お姉ちゃん、血……」
「だけじゃないわ。あなたの大好きな私の毒もね」
 メヒトがプランジャを引くに合わせて、シリンジの中に液体が流れ込んでくる。それは全てが血ではないため色が薄いのだが、メーティンはよくわからず。痛々しく感じて怖さのあまり逆に凝視していた中、メヒトの一言にメーティンの目の色が変わる。出会いとなったあの戦いの時点で、メーティンはすっかりメヒトの毒の虜となっていたのである。やがてシリンジの中がいっぱいとなるのを確認すると、メヒトは針を抜いて採れたそれを眺め。刺した脇腹は血を止めるために手で押さえつつ。
「これを飲むんじゃなくて、あなたの血の中に直接流すの。きっと物凄く効くんじゃない?」
 そこまで言ったところで、メヒトは注射針に舌を這わせる。本来は清浄を保たないといけない注射針を舐めるなど、よりによってである。寧ろ自分の唾液をも帯びた針にすることでメーティンに自らの「汚れ」をより共有させたいという意図であるのだが、専門家が見たらきっと絶叫する瞬間であろう。舐めるだけでは飽き足らず、メヒトは咥え込むことで注射針をしっかりと唾液に浸し。
「ふふ、いいかしら? 首筋出して?」
「うん……うん!」
 その禍々しい凶毒をこれでもかというほどに纏った注射器を、メーティンはあらゆる欲を帯びた目で見つめる。刺す瞬間は痛いかもしれないが、躊躇いは無い。首を寝せて、既に懇願の姿となっていた。メヒトは首筋をなぞり血管を探ると、針先を当て。注入。
「入ってくる……入ってくる……!」
 血管の中に液体が流れ込んでくる感触は間違いない。メーティンも何回か注射を受けてきたことはあったが、それで入ってくるものをここまで愛おしく感じたのは初めてだ。その毒は入るや周囲の神経を着実に侵していき、全身に回り切るのを待つまでもなくメーティンを狂わせていた。瞬く間に快楽に腰が砕け、床に全身を投げ捨てるメーティン。
「ふふ……可愛い顔しちゃって。それじゃあ、取り換えっこね」
 毒に快楽を支配され悶えるメーティンの右腕を左手で掴み、血管に針先を当てる。その毒の感覚を浴びてこれでもかというほどに興奮し支配されているため、メーティンはほとんど動かないでくれて処置が楽である。刺されたのも吸われたのも気付かないまま、メーティンの採血は終わり。血を止めるために刺した場所を左手で押さえながら、メヒトはその腕に針を刺す。
「ふふ……。もっともっと、一つになろうね。メーティン?」
 メーティンの血液を自らの腕に流し終えると、メヒトはメーティンに覆い被さり唇を重ねる。ここからはいつも通り全身を重ね合わせる時間だ。



『さあ! これで最後の一匹だな!』
 行き交う人々がポケモンたちのバトルを眺める、昼下がりの公園のトレーニングコート。いつものトレーニングの一環で、リーダーは手持ちのポケモンを連れて来ていた。そして申し込まれた対戦を受けるのもいつも通りなのだが、今日の相手は中々に手ごわく苦戦しており。
『できれば出したくなかったんだけどね……。メーティン、頼む!』
 最後の一匹まで追い込まれるなど久しぶりだった。しかしメーティンの入ったボールを投げたリーダーの表情は、一番は苦笑と言った感じである。追い込まれた勝負への苦渋や興奮よりも、メーティンを出すことそのものが気が引けていたのだ。ボールが口を開きコートにメーティンが解き放たれると。
『……それ、ジメレオンだよな?』
 リーダーの苦渋などどこ吹く風で、メーティンは目の前の対戦相手に目を輝かせる。肌は全身赤黒く変色しており、本来であれば真っ白なはずの腹も紫色の紋様が渦巻いている。体の形状から向こうのトレーナーもジメレオンであることは理解するが、その姿を「ジメレオン」と形容していいかは甚だ疑問が残る。
『初手で出したエンニュートと仲がいいせいで、ちょっと影響されちゃって……』
『どう見ても「影響された」とかの次元じゃないよな?』
 相手トレーナーの驚愕と疑問の視線に耐えきれず、リーダーは宙に目線を逸らす。一方のメーティンは対戦相手のピクシーを笑顔で見つめる。それはかつてメヒトとの対戦で使った挑発するための仮初めの笑みではなく、まるで上等なご馳走を眺めるような欲望にまみれた目線だ。
『メーティン! 「ヘドロ爆弾」だ!』
『は?』
 相手トレーナーは頓狂な声を上げる。リーダーが指示したヘドロ爆弾の技は、通常ジメレオンが覚えられることは無い。勿論毒の技はピクシーの弱点を突けるため使えるのであれば有効だが、覚えられない技を指示するなど。しかしメーティンが何の迷いもなくヘドロ爆弾を放ったことで、不意を突かれたこともありピクシーはノックアウトされる。
「あ、はっ! まだ終わらないでよ、遊ぼうよ」
 愕然としながらも、相手トレーナーはピクシーをボールに収める。単にノックアウトされたポケモンをボールに戻すというだけではない。メーティンは抵抗できなくなったピクシーの姿に舌なめずりし、公然でとんでもない行為に及ぼうとしていたからだ。
『ちょっと待て! なんでジメレオンがヘドロ爆弾を使えるんだよ!』
『これもエンニュートの影響です、はい』
 リーダーは変わらず宙に目線を泳がせたまま。どう考えても「影響」などという言葉で片付けられるものではない、とんでもない肉体改造が行われたとしか思えない状態だ。しかしリーダーのこの様子からして、もうまともな受け答えなど期待できないだろう。その上メーティンが次のポケモンを目線で求めてきている。もしこのまま出さないでいたら自分が襲われるだろう、そんな恐怖に駆られたのもあり、相手トレーナーはボールを投げる。
『こっちも最後の一匹だけど、ジメレオンなら……! リーフィア! リーフブレードだ!』
『こっちもヘドロ爆弾で反撃だ!』
 出てきたリーフィアもここまで堕ちたジメレオンの姿にはたじろぐが、基本的にタイプ相性で有利なのだから恐れることは無い。勿論先に見せられたヘドロ爆弾はリーフィアにも弱点を突く技ではあるが、種族本来の属性を乗せたものではないため威力はリーフィアに分がある。素早さもリーフィアの方が高いため、誰の目にも勝負は明らかだ。明らかなはずだった。
「あはっ! いい一撃だね?」
「……えっ?」
 その手に次のヘドロ爆弾をチャージしながら、メーティンはリーフブレードを躱そうともせず受け止めた。相性が通常通り作用すればメーティンが立っていられるはずはないのだが、しっかりと踏みとどまっていた。勿論リーフィアは攻撃力が高いため元の威力は高く、メーティンも抜群ではない様子だがかなりのダメージを受けた様子ではある。だがタイプ相性が崩れているのは誰の目にも明らかだった。リーフブレード諸共に体を掴まれたリーフィアに逃げ場はなく、チャージが終わったヘドロ爆弾をゼロ距離で叩きつけられ。
『ちょっと待て! 草の技への耐性って……毒タイプでも加わってるのかよ!』
『エンニュートの影響は結構大きいみたいですね』
 リーフィアをボールに戻して詰問しようとしたが、やはりリーダーの受け答えは一点張りであった。いずれにしてもリーフィアを戻したことで勝利は確認できたので、リーダーはメーティンをボールに戻す。相手トレーナーは言いたいことは山ほどあったが、歯を食いしばって立ち去るほかなかった。リーダーは「エンニュートの影響」の一点張りである上、メーティンも戻される直前まで次はトレーナーを獲物にしようと狙う目つきだったからだ。メーティンはこのあまりに酷い状態だったため、リーダーとしても外ではなるべく出したくなかったのである。



 このメーティンの変化は瞬く間に世間の知るところとなり、様々な分野に衝撃をもたらした。研究者からの依頼も来るようになり、リーダーはある程度は応えていたが、しかし直接対面させることは無かった。それにはすっかり堕ち切ったメーティンでは安全性に不安があるというのもあるが。
「お姉ちゃん、今日もお願いね」
『こんなことになるなんて思わなかったな……』
 凶毒に溺れるがままに愉しむメーティンの姿を下手に見せるのは、あまりにも恥ずかしかったからである。とはいえことがここまで及んでもなおメーティンへの溺愛は捨てることができなかったし、出撃の際は活躍してくれるメーティンからメヒトを引き離す気にもなれなかったのである。






 タイトル詐欺でやさしいせかいになってくれるせめてもの可能性を願ったのに……いつも通りの自分です白目。自分もある意味通常運行ですが、主催者様も仰っています通り皆様性癖が加速してますね。レスポンスも半年以上流れてしまい申し訳ない限りです。

 エンニュートは図鑑説明からしてCERO貫通もいいところで、フェロモンで雄を狂わせて従わせるという設定から雄をガチ死するまで搾り取るという設定は割と発生しがちのような気がするのは自分だけでしょうか? 過去にもそんな狂わせるエンニュートさんの性質を書いていましたが、今回はそこをより深く掘り下げる形となりましたね。大会開催の発表を前にしても全くネタが思い浮かばずにいたのですが、ツイッターでの「おねロリキメセク天皇」の事件から一気に思い浮かんでしまいました。種族的にもエンニュートはまさに「女皇様」というに相応しいですし、名前の「メヒト」もこの事件をご存じの方は理解していただけると思います。エンニュートの「ト」をそのまま持って来れることに気付いた瞬間は戦慄しました。彼女は奪い奪われそれが当たり前でお互い様というクレイジーさですが、自分が奪われる側に回ったとしても受け入れられるという点では一つ筋が通っているとは思います。ダブルスタンダード、ダメ! ゼッタイ!

 そしてキメセクを書くにあたって注射器について「改めて」ネットを叩き調べました。去勢や焼灼止血法もそうですけど、自分が医療関係の知識を調べるときは更なる闇へと進んでいく気がしています白目。そして本来消毒された状態を保ち清浄にしなければいけない注射針を、わざわざ舐めてから刺すという逆転も生まれてしまい自分でも血涙を流しました。過去に「映画等で暗殺者がターゲットの前で刃物を舐めるのは、口の中の雑菌を塗ることでより致死の精度を上げる合理的な手段」という話を目にしたのですが、注射針でそれをやるというのを見たら関係者は絶叫ものでしょうね。そしてそれに対し感想会で焼灼止血法に言及された時も別な意味でクリティカルヒットを喰らった気分でした。

 そんなわけで返信です。

> (2020/05/26(火) 01:01)

 投票ありがとうございます。気に入っていただけたのは救いです。

>(2020/05/28(木) 08:50)
 同性でありながら、エンニュートの毒に堕ちきってしまうジメレオンがかわいい。

 ジメちゃんはジト目で白いお腹で色々とよろしくなかったので、一度使って処理したかった子です。

> (2020/05/30(土) 00:54)
 毒と共に依存していく関係……好きです!

 薬物ネタはこの時にはまらせてくれた某連邦漫画にかなり影響されていますね。不謹慎で謹慎ムードを吹っ飛ばせ!

 それでは皆様ありがとうございました。



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Last-modified: 2021-01-01 (金) 03:33:44
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