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欲望狂い果てて

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作者:オレ
官能及び残虐描写あり。
最悪をやろうと決めたならとことんまで最悪であれという姿勢で書きましたので、苦手な要素がある方は気を付けてください。


欲望狂い果てて [#8YtXzTX] 




「あぅう……はぁっ!」

 ラティオスは視界が明転するとともに、音を立てて精液を吐き出す。ベッドで仰向けの状態で晒している美しい青い竜鱗の肌と、紅色の性器のコントラスト。それも既に大量の精液で濡らされている。部屋の中も異臭が充満している。

「うあぁ……」

 喘ぎ声と共に精液にまみれた手をベッドに転がす。首を投げ出して横倒しにし、そこからだらだらと涎を垂らしている。涎が垂れている場所は布地の色が変わっており、数え切れないほどにこの行為を繰り返したことが伺える。だが繰り返してもなお飽きとは程遠い余韻。それはゆっくり引いていくと同時にラティオスの意識もさらっていく波のようで。

「お兄ちゃん、お風呂空いた……またやってる」

 扉を開け部屋をのぞき込んだラティアスの前には、亡骸の如く意識を失う兄の姿。精液で汚れ切った姿も充満した臭いも慣れた光景らしく、軽く笑うだけで済ませるラティアス。仕方なさそうに扉を閉める。

「私に見られてないと思ってるのかな? お兄ちゃんが私に隠し事なんてできないのに」

 一言呟き台所に向かう。風呂の保温のスイッチを切るためだ。恐らくラティオスは夜半過ぎに目を覚まして、冷めた風呂場で精液にまみれた体を洗うのだろう。いつものパターンである。ボタン一つでラティアスはスイッチを切ると、そのまま部屋に戻る。兄の姿と臭いはまともに浴びせられたが、それでも今日は「こない」から。いつも通りこのまま大人しく漫画でも読んで眠りにつくだろう。

「今度、ちょっと意地悪してみようかな?」

 漫画を手にベッドに横になった瞬間、ラティアスの頭にラティオスの顔が浮かぶ。全てが抜けきったような幸せそうな表情、それを妹に見られていたことを知ったらどのように変わるか。嗜虐的な好奇心が妹の胸中で膨らみ始めるのであった。






 ラティオスとラティアスは、その日も仲良く一緒に帰宅した。親元から離れて旅をして、行き着いたこの町の工場で働くふたり。近所でも仲のいい兄と妹として評判だ。

「お兄ちゃん、今日のご飯も美味しかったよ」
「そう? 良かった」

 食器を洗いながら無邪気に話しかける妹に対し、ラティオスの態度はどこか落ち着きがない。これが珍しいことなのかというと、ラティアスにとってはそうではなく。ラティオスが妹の目を盗んでエロ本を買った時は、決まってこうなることを知っている。今日は前々から気にしていた新刊が出る日だというのも、しっかり知られてしまっている。

「部屋に戻ってたら? お風呂が沸くまでもう少し時間があるし、私は明日の朝ごはんも準備しないといけないからあんまり喋れなくなるし」
「そ、そう? じゃあそうするか」

 ラティオスは寂しそうな顔を取り繕って見せているが、ラティアスの目には完全にばれている。仕方なさそうに部屋に戻るラティオスの背中を見送ると、ラティアスは黙々と作業に入る。家事は交代でやることを決めており、先程は兄が夕食を作ったので明日の朝食の下ごしらえは自分の番。包丁で野菜を切っていき、しかし頭の方では兄が部屋で何をしているか思い浮かべながらだから危なっかしい。

「さて、そろそろいいかな?」

 野菜が煮詰まったのを確認し、コンロの火を止める。食器や調理道具も洗い終えて片付いている。風呂が沸いたアラームも途中で聞こえたので、気にするものはないだろう。あとは兄の部屋に入り込むまでだ。兄が気を失っていたら、ことはまた明日に持ち越しになる。

「お兄ちゃん、どうかな?」

 ラティアスは息を殺して兄の部屋の前に近づく。さながら泥棒のごとく。せっかく自慰の最中の兄を驚かすのだから、なるべくその瞬間まで気付かれないように。かと言っても動きはなるべく「偶発的に部屋を開けた」と言えるように。狙ったような態度で飛び込んで「最初からこのつもりだっただろう」と言われるようなことになっては目も当てられない。

「ぁぅ……。ぁ……」

 そんなラティアスの考えもどこ吹く風で、部屋の扉越しにラティオスの幸せそうな自慰の声が漏れている。既に何度か致したのだろうか、水音が混じっていていやらしい。この後の兄の顔の想像に顔が緩みそうになりつつ、ラティアスは首を振って気持ちを落ち着かせる。真意を知られることなく、兄を驚愕に叩き落とすために。

「お兄ちゃん、お風呂沸いたよ?」
「ぁっ!」

 扉を開ける手が若干不自然に力が入っていたかもしれないと思いつつも、ラティアスは部屋の中に乱入する。想像していた通りラティオスはベッドの上で仰向けになり、反り立った肉棒を晒している。それをしっかりと握りしめた両手も含めて、腹の上はすっかり精液にまみれていた。ラティアスが入ったのはこれで何度目かもわからない射精の瞬間で、絶頂と思わぬ事態への驚愕に咳き込むような声を漏らすラティオス。

「何、してるの?」
「ぃ、や……これは!」

 今の今まで重ねていた快楽も全部消し飛ばされ、驚愕と絶望に飲み込まれるラティオス。元々色白な竜鱗の肌である頬からは一気に血の気が引き、青ざめた色合いになっていた。精液まみれのまま哀れな表情を晒す兄の姿に、ラティアスの胸の奥は高鳴り。

「そんなの弄り回して、お兄ちゃんって汚いのが大好きなの?」
「その……違ぅ……」

 ラティアスは僅かにだがはっきりと「汚い」を強調した。自らのものを「汚い」などと言われれば傷つくだろうという、嗜虐心からの言葉である。それはラティアスが予想した以上にラティオスに刺さったのか、返す言葉が尻すぼみになっている。

「何が違うのかな? そんな風にしてて汚くないの?」
「うぅ……」

 水面で餌をねだる魚のように口を開け閉めし続けた後、震えながらも顔をそむけるラティオス。閉じたまぶたからはうっすらと涙がにじんでおり。そんな哀れな姿を眺めるうちに、ラティアスの下腹の奥がうずき始め……。

「あっ……」

 最近は自慰で寝入っていた兄を見ても来なかった「それ」が「来て」しまった。あるいはずっと来なかったものがここで爆発してしまったのか。兄をさらに追及していじめないといけないというタイミングで、よりによってである。瞬く間に上気してしまい、体が熱い。そんな表情を見て取られたくないとラティアスも思わず顔をそらせた。ひとまず気付かれないように深呼吸をして状態を整え、意を決して兄の方に向き直ろうとした瞬間であった。

「ラティアスだって……!」

 内股を撫でる感触に、全身を突き上げられるラティアス。顔をそらせていた間にラティオスが背後に回り込み、そこに手を伸ばしていたのだ。ラティオスは妹が上気していたことに全く気付いておらず、顔をそらされた瞬間は完全に絶望に叩き落されていた。それでもラティアスだってそこを撫でれば簡単に上気すると思い手を出したのだ。もはや落ちるところまで落ち、どうしようもないと破れかぶれになっていたのだが。

「ひゃぁあんっ!」
「なんだよ、ラティアスだってここを濡らして汚いじゃないか!」

 手を更に突っ込むと、妹は甲高い嬌声を上げる。思いがけずラティアスが上気していたことがわかると、反対の手も背中に添えて更に責めを強める。お返しとばかりに「汚い」と罵倒する声が上ずってしまったのは気になったが、失うものは何もないとばかりに手の方の責めは緩めない。

「やっ! ちょっ! おにいちゃぁああっ!」
「汚い者同士だよね? もう汚くなれるところまで汚くなろう?」

 念動力を維持するための精神は兄の責めに掻き乱され、ラティアスは浮遊する力を徐々に失っていく。それを見たラティオスは両腕に力を込め、その体を裏返す。呆気なく仰向けの状態で床に墜ちたラティアスは、紅色の体の中でもひときわ存在感を放つすじを無防備に兄に晒す。

「やめてえええっ!」
「言ってる割には僕の手を締め付けてくるじゃないか。きっと入れるとすごく気持ちいいよね?」

 ラティオス自身異性の経験はなく、この責め手もエロ本の見様見真似なのだが。それでも同じく異性経験のないラティアスには強烈な責めであった。手の先は長い爪になっているので傷つけないように気を付けつつも、すじの内側に突っ込んで左右に拡げて。

「やあああんっ!」

 ラティアスはあっさりと絶頂を迎え、揉み解すそこを覗き込んでいた兄の顔面に思いっきり液を吹きかける。濃縮された異性の香りに当てられ、先に待つものの期待の上に重なって更にラティオスを高揚させる。股間から飛び出した逸物は勢いを増しており、今にもはちきれんばかりに痛いが……。

「まだ、まだまだだよ!」

 手先を更に深くねじ込み、拡張を続ける。これからそこに入れようとしているものは、手先の爪など比にならない大きな物。それでも流石に手の甲や腕ほどではないが、小さい物で先に拡げて壊れないかを試さないといけない。それはあくまでも読んでいたエロ本からの影響での行動だが。

「もぅ……いやぁぁぁあああっ!」

 絶頂を重ねるあまり拒絶を叫ぶラティアスだが、兄の責めの手が止まらないことに涙を流す。どうして自分がこんな目に遭わないといけないのか。確かに兄の自慰を覗き込むのは多少意地の悪い行動だったかもしれないが。それでもここまでの凌辱を受けなければならない理由ではないだろう。

「さて……。そろそろ、挿入れるね?」

 そそり立ち膨れ上がった自らの欲望の具現を、もみくちゃにされたラティアスのそこにあてがう。爪となっている指を伸ばしてもこれが突き込むであろう奥の方までは揉み解せないが、それでも入口の方はだいぶ緩んでいる。ラティオスは妹の中に、ゆっくりと雄をねじ込んでいき。

「ひゃ……やぁぁぁ……」

 先程の指よりも圧倒的に太い物が進んできて、ラティアスは押し寄せる快楽の波に息を漏らす。頭の中はどうしようもない状態であるのに対し、体の方は反射的に筋肉を収縮させてしまう。そんな肉壁は入ってくる雄を締め上げ、精を搾り取ろうとばかり。そんな妹の体の激しい歓迎に息を漏らしながら、ラティオスは肉槍を半分ももう少し過ぎたところまで入り込ませ。

「ここからは解しながら入っていくしかないね。あと少しだから、頑張ってよ?」

 そう言って、ラティオスは妹の中を突き込むべく腹に力を入れ、一度。

「ひゃうっくぅっ!」

 二度。

「あうぅぅんっ!」

 三度。

「やぁあああんっ!」

 強引ではあったがラティアスの中は拡げられ、兄のそれは根元まで入り込んだ。自分の内側から自分とは違う脈動が響いているのに、確実に何かが壊されていっているのがわかる。一方のラティオスは自らのものが根元まで入ったのを確認すると、軽く息をつき。

「それじゃあ、最後は一気にいくよ」

 一旦腰を持ち上げると、それに引かれて出ていく逸物。お互いの肉を撫であい。しかしあと一歩で全てが外に出るというところで止まると、今度は一気に奥へと突き入れられる。液を散らして肉を擦らせて、淫猥な音が部屋の中に響き続ける。引いては押してを何度も重ねる間もなく、ラティオスの奥のものも一気に昂ぶっていき。

「ぅわあああっ!」
「ぁあああんっ!」

 ラティアスの最奥で絶頂の熱は爆ぜた。それは全ての感覚を一瞬で焼き切り、兄と一瞬ずれた嬌声のハーモニーを奏でさせる。普段の浮遊とも全く違う、全てを投げ捨てて宙に漂うような心地。それが波のように引いていくに従い、今度は自分の中に兄のものがしみこんでいくような感覚になる。

「ぅっ……ふ……。自慰よりもずっと良かったよ、ラティアス」

 彼方からようやく届いたかのような兄の声に、少しずつ現実に戻ってくるラティアス。ラティアス自身も自慰はある程度経験しているが、中に入ってくるものがあるとこれほどまでに違うとは思ってもみなかった。改めて自分も楽しんだと思うラティアス。一方でこの染み渡る感覚に、自分は兄のものになって戻せなくなったとも思う。

「お兄ちゃん……私のこと、大切にしてね?」

 戻れなくなったからこそと、ラティアスは想いを漏らす。今までもぞんざいに扱われていると考えたことはないが、兄のものとなったからには約束して欲しい。デートで色々なところを遊び歩き、美味しいものを一緒に楽しむ。子供を産んで育て、一緒の墓に入る。瞬く間にそんな未来がラティアスの頭の中に浮かんでいく。

「ん……んぅ……」

 気が付くとラティオスは床の上に転がり寝息を立てていた。妹と及ぶ前から既に何度も射精しており、一日の疲れも重なって自然と意識が消えていったのだろう。ラティアスはそんな寝息を漏らす口に自らの口を重ねると、念力で兄を持ち上げてベッドに寝せる。そしてその隣に自らも転がる。自分の方も兄との交わりに、すっかり体力を持っていかれており。夢路に入るのに時間はかからなかった。






 どれほどの時間眠っただろうか。何となく周りが明るく、もう朝なのだろうかとラティアスは薄目を開ける。その瞬間、体の奥を突き上げるような感覚に襲われる。ラティアスははっと目を覚ますと。

「お、お兄ちゃん?」
「ああ、ラティアス。おはよう」

 仰向けの状態になった妹の腹にのしかかり、ラティオスは自らのものを中にねじ込んでいる。差し込んできている朝日の感じから、今は大体6時くらいだろうか。打ち付けられる快楽の波の中で、ラティアスはようやく昨晩のことを思い出した。兄の自慰を覗き込むだけのつもりが、そのまま行為に及んでしまった夜が明けて。再び兄が行為に及んでいる目の前の状況がそれでも信じられない。昨夜散々出した後ではないのか。

「お兄ちゃん、朝から何やってるの?」
「うん。昨日出した後一晩でたまった分を抜こうと思って」

 言いながら自らのもので妹の中を突き込むラティオスに対し、兄の言葉が理解できずに困惑するラティアス。確かに毎晩繰り返し自慰で射精してきていたのは知っていたが、まさかそれでも次の朝には再び催すような性欲なのだろうか。

「ちょ、お兄ちゃ……あっ!」
「ぅんっ! ぃいよっ!」

 深いところを突き込まれ、思わず全身を震わせるラティアス。その反応がラティオスの性器を刺激し、快楽を覚えさせる。一晩でたまり切ったものが、自らの奥で力を持ち始めるのを感じるラティオス。それに対してラティアスの方も一気に息を上がらせ、全身から汗を染み出させる。

「やめ……! うわぁんっ!」

 慌てて兄に制止を掛けようとするラティアスだが、全身に響き渡る衝撃に言葉を奪われてしまう。ラティアスの経験上自慰は体力を消耗する行為で、夜の寝る前にやっても次の日に響くのだ。ましてや今日も一日があるという朝からこんなことに及ぶなど、自殺行為にすら感じられる。

「ぅくっ! 出すよ!」

 だというのにラティオスの方は全く止まる様子もなく。兄の欲望のままの暴走に振り回され、一晩休んで整えたものが滅茶苦茶に崩されていくのを感じるラティアス。一方で自分の方も刺激される本能に狂い出し、自殺行為とすら感じられた享楽に身体をゆだね切っていた。向かう先はもはや分かり切っており。

「ぁあああぁぁぁっ!」
「ふあっ!」

 絶頂の潮を吹き縮み上がる妹の体に刺激され、ラティオスも爆発したかのような声を漏らして果てる。絶頂の余韻に漂い、漏れ出る息を絡ませる兄妹。それが引いていくと同時に体の中に重苦しいものを感じ始めるラティアス。すっかり疲れ果ててしまい、意識を投げ出したい気分だった。せめて時間ぎりぎりまでは二度寝を決め込みたい、そう思っていた。だというのに。

「はぁっ……。もう一回」
「嘘……?」

 ラティアスが驚愕するよりも早く、ラティオスはその中で暴れはじめていた。たった今出したばかりだというのに、それが少しでも萎えた瞬間があっただろうか。全く勢いを失わず貫いてくる兄のものに、否が応でも体が反応してしまうラティアス。

「ぃやぁあああっ!」

 疲れ切った体を投げ出して眠ることも許されず、兄の性欲のままの暴走に叫ぶラティアス。重苦しさと快楽に振り回されて、ラティアスはその場に「地獄」を感じてしまうのであった。






「今日も疲れたね、ラティアス」
「ぅん……」

 食事が終わり笑顔を向けるラティオスに対し、ラティアスは疲れ切った表情で形になっているかもわからない返事をする。明け方あれだけの行為をした上で一日働いたのに、平然と笑顔になれる兄が信じられない。今日の料理当番が兄だったのは不幸中の幸いで、こんな状態で料理のために包丁を扱っていたらどんな怪我をしていたか想像がつかない。

「それじゃあお風呂から上がったら、今夜も楽しもうね」
「今夜も……?」

 兄の言うことが理解できずに、茫然とその顔に目線を向けるラティアス。優しげないつものラティオスの笑顔の裏側から、狂わんばかりの性欲が漏れ出ているのにすぐに気付く。まさか昨晩も今朝もあれだけ暴れたというのに、これからまたさらに盛ろうというのか。

「うん、えっちしよう。今朝出した後の今日一日だからね。もうたまり切っちゃってね」

 遠慮のないラティオスの言葉に、妹は唖然とするばかりであった。昨晩出した後今朝までの間にたまり切るようなラティオスなのだから、それから今までに経過した時間の長さを考えればまたたまり切っててもおかしくはないが。そもそもがこんな短い時間でたまり切ることが信じられない。

「無理! ちょっと、無理だよ!」

 思わず首を左右に激しく振るラティアス。目にはうっすらと涙を浮かべて。その反応にラティオスの方も不満げな表情となり。

「えー? もうたまり切っちゃってるんだよ?」
「無理だよ! 体がもたないって!」

 何とか合意を引き出そうとするが、ラティアスはなおも強く拒絶する。体がもたないと言われると流石に無理をさせるわけにはいかないが、たった一日で持たなくなってしまう妹には不満を感じてしまう。しかしラティアスは逃げるように席を立ち。

「今夜は絶対無理だからね! 絶対!」

 拒絶の徹底を重ねて、そのまま食卓の間から出て行ってしまう。部屋に戻ったのだろう。完全に置いて行かれてしまったラティオスは寂寥感を感じる。ここまで言われては流石に今夜は無理をさせるわけにもいかないだろう。仕方がないので自慰で我慢するかと決めると、ラティオスはため息をつきながら片付けのために席を立った。






「っは! あっ!」

 一通り片付けを終えると、ラティオスは自室に戻りベッドで自慰を始めた。腹の奥で鈍く熱を帯びたそれを抱えていてはただただ苦しい。一刻も早く抜き去りたいと、いきりたてた性器を撫でまわすのだが。

「なん……だ……?」

 体の深く底は疼き続けているのに、最後の一押しがまるで届かないかのような。いつもなら既に何度も達している時間擦り続けているのだが、一向に射精の気配はない。

「どう……して……?」

 奥から体を破裂させんとばかりに膨らんでいるものが苦しく、ラティオスは到達を求めて性器を握る手に力が入っていく。その力がある一点を超えた瞬間、ラティオスは全身を震わせる。

「っ……!」

 絶頂ではなく、力を込めすぎた痛みであった。抜き去られた快楽もなくえぐられたような痛みのみで、性器は逃げるようにしぼんでいく。体の奥にたまり切ったものは全く出て行かず、苦痛が二重になるだけで。

「あっ……、あっ……!」

 救いの手が自らを振り払い、無情にも立ち去ってしまうかのように。痛みの方はすぐに引くが、それで身の中でうごめくものが抜き去れるわけもなく。今までの自慰ではこんなことは無かったというのに。

「どうしてこんな……?」

 ラティオスは信じがたい絶望の底で茫然と身を投げ出す。体の奥の存在はなおも苦しめ続けているのだが、先程の痛みはそれを抜くために再起する力を完全に萎えさせていた。そこに朝から始まる今日一日の疲れがのしかかってきて、動く気力すら奪われてしまう。

「まさか、ラティアスの体が無いと?」

 狂おしいまでの性欲と絶望と疲労感の中で、ラティオスの脳裏に一つの予想が浮かぶ。妹の中での行為に感じ入ったばかりに、自慰で得られる刺激では物足りない体になってしまった。確実なわけではないが、前回の自慰からの決定的な違いはそれしか思い当たらない。

「無理……!」

 そこまで思い至った瞬間、先程の妹の徹底的なまでの拒絶が浮かんでくる。繰り返し「無理」の言葉を重ねた必死の表情に、ラティオスもこの場にいない妹へ同じ言葉を返す。ラティアスは「体がもたない」と言ったが、自分の方もたまり切ったものを我慢し続けることなどできない。

「どうすれば……!」

 まさかあれだけ拒絶された今夜のうちに求めるわけにもいかないし、どちらにしても気が折れた上に疲れきっていてそんな行動に乗り出す力もない。だが内側からは破裂させんばかりの渇望に苛まれ、眠りに落ちることもできないまま。ラティオスは悶々と、ベッドの上でただ時が流れるのを見送ることしかできなかった。






 どれほどの時間眠っていただろうか、頭がはっきりとしない。全身が石にでもなったかのように重い。徐々に意識が戻ってくるに従い、ラティアスはそれだけの熟睡だったことを理解する。昨日は朝から兄に狂わされて、疲れ切った状態で一日を過ごしたのだ。それだけの熟睡になるのも仕方ない。

「っは!」

 そんな記憶の糸を辿っている最中に、生ぬるい吐息がのしかかってきているのに気付く。直後に上乗せされる体重と、突き上げられるかのような感覚。覚醒と混乱が一気にラティアスを襲う。

「お、お兄ちゃん?」

 目の前では激しく息を荒げる兄が、自らの中に性器を突っ込んで暴れ狂っていた。昨日の朝の光景の再来である。昨晩あれだけ拒絶の言葉を重ねたというのに、それでも突っ込んでくることが信じられなかった。もはや相手の気持ちなどどうだっていいのか。

「今夜は無理って言うから、一晩我慢したんだからね?」
「そんな……!」

 ラティアスの疑問を押し潰すように言い放つラティオス。昨夜の「今夜は絶対無理」の言葉を「今夜限定」の意味に捉えたのだろう。ほぼ間違いなく自らのいいようにこじつけたのであろうが。

「ゃっぱり、いぃよっ!」
「いやあっ!」

 兄を止めようにも、なじる目線すらも作れずただ叫ぶラティアス。中を突き上げる感覚は今回も瞬く間にラティアスを上気させ、一晩眠って整えたものを再び突き崩していく。昨日も満身創痍な一日を過ごして頭ではわかっているのに、否が応でも体が反応してしまう。拒絶の悲鳴を漏らしても、それが兄を止める力になるはずもなく。

「うっふっ! 出すよ!」
「やめぇっ!」

 わかっていても反応してしまう体はラティオスの性器を締め上げる。まとわりつく湿り気と体温、絶妙な柔らかさ。自慰では到底得られない刺激に、昨晩は彼方に消えてしまったものが一気に近づくのを感じる。妹の悲鳴などお構いなしに突き上げると。

「ははぁあああっ!」
「うわあぁぁんっ!」

 自らの中のものを一気に噴き出させる。いつになく押さえ続けてため込んだため、その分強烈さを増す絶頂。欲望はおろか魂まで抜き去りそうな快楽に、ただただ息を漏らすラティオス。いつもなら波が引いて後続の処理に入るはずなのに、全く引くことのない絶頂。妹にのしかかったままただただ快楽に身をゆだねて動かないまま。

「ぶっ!」

 そんな幸せな時間は、強烈な衝撃と共に唐突に断ち切られる。真後ろに突き飛ばされて壁に叩きつけられて、全身に鈍い痛みが走る。薄目を開けたその前で、怒り心頭の妹が涙を浮かべてこちらを睨んでいた。

「こんな酷い……信じられない!」

 いつになく長い絶頂の間に意識を取り戻した妹が、自分を念力で突き飛ばしたのだということはわかった。そうでなければまだまだ残っているものを吐き出したかったのだが、衝撃と痛みが立ち上がっていたものの力を奪う。それと同時に妹の気持ちを無視して欲望に走った自らも理解し。

「ごめん……。本当に苦しくて……」
「今度は私が今日一日苦しくなるんだよ!」

 ひとまず謝るラティオスだったが、たった一言でラティアスの怒りが収まるはずもなく。ラティアスは仰向けだった自らの体を起こし、秘所からこぼれた精液をシーツで拭う。そしてもう一度睨みつけると、ラティオスは更に震え上がり。

「その、耐えられなくて……」
「知らない! 私がやっていいって言うまでは、もう絶対しないで!」

 思わず漏らしてしまう言い訳はラティアスを更に怒らせるばかりで。昨夜の言葉がいいように解釈されていた点に対して、手厳しく逃げ道を断ち切る。それにどうしようもなく口を震わせる兄を捨て去るように、ラティアスは部屋から出ていく。残されたラティオスは自責の念に包まれたまま、どうしようもなくその場に浮かぶだけであった。






 それから一日を過ごし更に次の日の夜。一日半もの間ラティオスは煩悶とし続けていた。妹を欲望のままに犯してしまった後悔の念ももちろんあるのだが、それ以上に再びたまり切った欲望が先に出ていた。

「ぅう……」
「なに?」

 一昨日に続いて昨夜の自慰でも抜けず、にも拘わらず今朝は妹で出すこともしなかった。耐えたという意味では昨日の朝の段階すら比にならない。だというのに苦悶に呻く兄の声に対して、ラティアスの返しは怒気がこもっている。当然と言えば当然だが、明らかに昨日のことが残っている。

「耐えられない! 頼むラティアス! 今夜はやらせて!」

 絶叫と共に妹の前に土下座するラティオス。妹が怒るだけの理由はわかっているのだが、それでもたまり切ったものが耐えられない。昨日の朝冷たく言い放たれた以上、及ぶことを許してもらうしかない。プライドも何もかなぐり捨てて必死に解放を哀願するのだが、ラティアスの目つきは全く変わらず。

「いい加減にしてよ! 昨日出したばっかりじゃない!」
「朝のあの一回だけだよ! もう自慰で抜けない体になっちゃって! お願い!」

 この全てを捨て去り性欲の捌け口に必死になる姿は、むしろラティアスの嫌悪感を煽っていた。土下座で床に這いつくばる姿はラティアスにとってはさながら捨てられたゴミであり、醜悪な汚物でしかなかった。目線で背中を突き刺してみたが、床に顔を押し付けたラティオスはそれに全く気付かず。

「とにかく、無理なものは無理!」
「ううー……」

 ラティアスは哀れに土下座したままの兄を残し、食卓の間からさっさと逃げ出す。叩きつけるように扉を閉めた音に、ようやく少しだけ顔を上げるラティオス。これだけ頼み込んでも許してもらえないなんて、どれだけ嫌われてしまったのだろうか。昨日の朝耐えきれずに欲望に走ってしまった自分が恨めしい。そんな絶望の中でも疼いている性欲が、更にラティオスを苦しめる。

「うわあああああっ!」

 逃げ場のない苦しみに、ラティオスは絶叫する。家中に響き渡る声は同じ屋根の下のラティアスには迷惑極まりないだろうが、文句ひとつ返ってくる様子がない。言いに来ると顔を見ることになるためそれすらも嫌がっている、それがわかってしまいラティオスの悲痛はさらに深まるのであった。






 苦痛ばかりが重なった夜が明け、いつものように職場に出た兄妹。だがラティオスの方は狂わんばかりのフラストレーションでまともな精神状態を保てず、仕事に全く身が入らずにいた。

「とりあえず届けるものも届けたから、あとは戻ってお昼休憩かな? ぅう……」

 ぶつぶつと現状を独り言ち、狂わんばかりの欲望から必死に逃げ出そうとするラティオス。気持ちが欲望に流されてしまったら、タイミングが悪ければ妹を含め多くの同僚たちの前で勃起した性器を晒す事態になってしまう。ただでさえも苦悶に息を荒げている状態なのに、そんなものを見られては目も当てられない。

「って、うわっ!」
「きゃっ! すみません!」

 廊下の曲がり角から突然現れた影に、ラティオスは驚き大きくのけ反ってしまう。そして後ろの棚に強く激突してしまい、乗せられていた荷物をぶち撒いてしまう。何個かが頭を直撃して痛みもあるが、荷物が床に散らばってしまった光景には面倒くささが押し寄せてくる。フラストレーションのたまっていない落ち着いた状態ならこんなことにはならなかっただろうが、それを言っても仕方ない。

「大丈夫ですか、ラティオスさん?」
「ああ。こちらこそすみません、カイリューさん」

 ラティオスに声を掛けながら、散らばった荷物を拾い始める女性。優し気な顔立ちとは裏腹にたくましい体を持つ、ラティオスの後輩だ。痛みがすぐに引いたので、ラティオスも念力で散らばる荷物を拾い始める。元の順に並べるという手間もあったので少し時間がかかったが、ひとまず荷物を棚の上に戻し終える。

「はぁ……すみません、カイリューさん」
「いえ。でもラティオスさん、今日は調子が悪いんですか? なんか様子がおかしい気がします」

 いつの間にかカイリューがそばに寄ってきており、荒げてしまう息を必死に抑え込んでいるラティオスの顔を覗き込んでくる。何とか隠し通しておきたかったところを突かれて、ラティオスの表情に当惑も上乗せされる。

「いやまあ、その……」

 隠しきれていないのはわかっていたが、自分の苦しみの原因は誰かに言えるような話ではない以上対応に苦しむ。はぐらかそうにも疼き続けるもので思考が回らない。そんな反応にカイリューは怪訝そうな表情で、ラティオスの様子を更に深く覗き込む。そこに午前の業務時間終了のチャイムが鳴り響き。

「言いづらいことなら、屋上にでも場所を移しますか? 丁度お昼休みですし」

 言い終わる頃には、カイリューはラティオスの手を握っていた。窓から見える外も快晴で、遊びがてらの誘いなのだろう。優柔不断で振り払うわけにもいかず、ラティオスは引っ張られるように屋上に連れていかれていた。

「ここなら誰かが来るとかもそんなにありませんし、言いづらいことでも言えるんじゃないですか?」

 言いながらカイリューはラティオスの背中をそっと撫でる。その優しい感触に、ラティオスの中で何かが崩れるのを感じた。一昨日の朝のあの一件以降、昨日も今朝もラティアスから向けられる態度は非常に冷たかった。唐突に降り注いできた優しさに、ラティオスの押さえていた感情が決壊した。

「妹が……ラティアスが、セックスしてくれないんだ」

 子供のようにぼろぼろと音を立てて涙をこぼすラティオスの口から、しかし子供だったら絶対出てこない単語が飛び出す。ここまでの様子を見ていれば本気とわかる悲痛で、生々しい欲求にまみれた話であったことが信じられなかった。だがラティオスが涙ながらにする説明を理解していくと、徐々に納得した様子になっていく。

「もうオナニーで抜くことができなくなっちゃったのに、ラティアスは助けてくれないんだ……! ラティアスにとってはセックスは体を使って辛いことなのはわかるけど、このままだと僕の方が苦しくて……!」

 そこまで言ったところで一度両手で涙を拭う。しかしすぐにラティオスの目には次の涙が押し寄せる。もう情けなくてどうしようもない。そんな様子を見て何を思ったのか、カイリューはラティオスの両肩に手を乗せ。

「苦しんでたんですか。仕方ないですね」

 言うが早いか、カイリューは腕に一気に力を掛ける。ラティオスは戸惑う暇もなく押し倒され、気が付いた時には仰向けになっていた。怪力が自慢である種族のカイリューにとっては、腕づくで押し倒すなど朝飯前だろう。

「カイリューさん?」
「大丈夫です、誰も来ませんから」

 言いながら左右の脇腹を撫でまわし、下腹部の両側を優しく押していく。カイリューの手に引っ張られてラティオスのスリットが開き、中からそれの先端が飛び出す。急に空気に触れたことが刺激となり、ラティオスが抑えようとするのもかまわず徐々に性器は力を持ち始める。異性に軽々しく見せるべきではないはずの部分が異性であるカイリューに覗かれているのに気付き、羞恥心から身じろぎしそうになる。だがそれよりも早くカイリューはそこに顔を近付け。

「あっ!」

 一瞬で根元まで口にくわえ込む。まだ殆ど膨らんでもいなかったが、欲望のお陰で感度は異常なまでに高まっており。ラティオスが甲高い声を上げて身を震わせると、カイリューは逃がさないとばかりに両脇に腕を回し込む。怪力を誇る種族相手に性器を刺激されて骨抜きにされ、ラティオスはもう逃げられない状態になっていた。

「んぅっ!」
「ちょ、カイリューさ……! ぁああああああっ!」

 早かった。たまり切った欲望に絡みつく、生暖かさと湿り気。膣とはまた違う絡み方をする唇と舌は、深く届かなかったはずの精液を瞬く間に吸い出し。妹にもしてもらったことのない行為に、ラティオスはあっさりと果ててしまう。

「んぐっ……。ぅっ!」

 喉を鳴らして精液を飲み込みながら、カイリューは舌で更にラティオスの性器を転がす。ラティオスの絶頂はあまりにも早くまだ勃起しきってもいないうちだったので、それは遅れて口の中で力を溜めていく。ただでさえ精液が流し込まれて膨らんでいるというのに、更に重なる膨張でカイリューは吹き出しそうになるが。それでもこぼれそうな精液を丁寧にすすって舐めとり、全部飲み込んでいく。

「ぅう……。はぁっ……! あっ……!」

 そんな丁寧な舌遣いで、ラティオスの性器はようやく完成する。それは連戦が可能なことの証明であり、カイリューは遠慮なしにそれを舌で弄り回す。歯には当たらないように気を付けながらも、粘膜が覆う内壁に擦れるとまた違う刺激を感じる。

「ふぅ?」

 カイリューが若干顔を上げると、こちらを見下ろすラティオスを目線が合う。ラティオスの目には妹への罪悪感など欠片もなく、この場で自らを飲み込む快楽だけが見て取れた。それにカイリューは安心し、もうひとすすりすると。

「うわぁあああっ!」

 ラティオスは二度目の絶頂に至る。一度目と変わらない量が口の中を満たし、同時に反射的に腰で突き上げられて。最初以上に口から零さないのが大変であった。だがそれでも丁寧に飲み込み、しごくように混じり合う汁を唇で拭う。ようやく解放された性器は、しかしまだ足りないと言うように萎えることなく脈打っており。

「ふふ。言ってた通りまだいける感じですね。それじゃあ私の方も……」

 カイリューは嬉しそうにラティオスの性器を眺めながら、よじ登るように体を合わせていく。すぐに雄の先端はカイリューの秘所と重なり、そこが濡れているのをラティオスに感じさせる。重力に従うように腰を下げていくと、カイリューの秘所はラティオスの性器を徐々にくわえ込んでいき。

「あっ! あぅっ!」
「全く衰えませんねっ! これをラティアスちゃんだけでどうにかしようなんて最初から無理な話なんですよっ!」

 カイリューの肉を遠慮なく押しのけ、力を失うことなく入っていくラティオスの性器。カイリューが思わず漏らした妹の名前にも、ラティオスは全く顔色を変えることなく。狂おしきまでの快楽を前に相手が誰であるかなど無関係になっていた。あと少しで根元まで包み込まれるというところで、ラティオスの中で何かが完全に目覚め。

「はぁっ!」
「ひゃんっ! ラティオスさぁあああんっ!」

 腰を突き出しカイリューの中で暴れはじめていた。ラティアスのことがある手前甘受するだけだと思っていたカイリューに、その積極的に乗り出す行動は予想外であった。一気に腰の力は砕け、ラティオスの上に崩れ込むように上体を寝かせ。あとはただ突き込まれ振り回されるばかりであった。

「ふあぁぁぁあああっ!」
「ラティオスさあああんっ!」

 絶頂と共に中に流し込まれる精液が熱い。カイリューは涎をラティオスの首筋に垂らしながら負けじと絶頂する。そのまま押しのけられるようにラティオスの脇へと転がり、並んで仰向けとなる。秘所から抜ける間際に若干性器が柔らかくなっているのが見えた。三度の絶頂でようやく一段落したのだろう。

「はあっ……! はあ……っ!」
「ラティオスさん、最高です……!」

 並んで交互に息を吐くラティオスとカイリュー。カイリューはその口にキスをしようとするが、全身を投げ出すラティオスとは位置が悪く届かない。起き上がろうにも絶頂の衝撃が引かず、急に動くことは難しい。ひとまずはラティオスの息を聞き、自分の吐息をそれに絡めることで時を流れさせる。

「カイリューさんも、良かったよ」
「そう言ってもらえると嬉しいです。私もラティオスさんのことが好きですからね」

 まだまだ絶頂の余韻が残っており、体が奥から大きく揺さぶられるが。それでも休憩中誰かが来るような場所ではないと言っても、この屋上も職場であることに変わりはない。互いに悦びの言葉を交わすと、覚束ない足取りで起き上がる。

「好き、か……。多分明日もたまっていると思うけど、してもらってもいいのかな?」
「流石ですね。ラティオスさんの性欲は私だけじゃ受け止めきれないので、ちゃんと準備しておきます」

 その言葉を聞いて、ラティオスは安心しつつ妹の顔を思い浮かべる。昨日や一昨日見せつけられた、険悪な表情での拒絶を。今は抜いてもらったばかりだが、恐らく家に帰って夕食後にはまた催すほどにたまっているだろう。そしてまた妹に頼んだら拒絶されて、自分でやろうにも今夜も明日の朝も抜けないだろう。この地獄からの解放を「準備する」と約束してもらえた今、カイリューの顔に救いを感じるラティオスであった。






 いつものように次の日が明けて、今日も昼の休憩が近づいていた。ラティオスは時折カイリューの顔に目を向けながら、意気揚々と仕事に取り組んでいる。昨晩も駄目元で妹に頼み込んでみたが、全部言い終わる前に憤怒の目線で拒絶されてしまった。そしてその後はここ数日の例の通りで自力で抜くことが出来ず、既にたまり切っていて体が熱い。

「もうすぐだな」

 カイリューに目線を向けると、今はラティアスと何やら仕事の相談をしている。流石にこれからすることが妹にばれるわけにはいかないので、そちらに目を向けすぎるのは避けた方がいいと自制を思いつつも。それでもラティアスとカイリューの会話が聞こえてきて止められなかった。

「これらのことは、午後ね。それでラティアスちゃん、ランチ一緒にどう?」
「あ、そうですね。ご一緒します」

 その瞬間聞こえてきたやり取りに、ラティオスは愕然とした。昨日の約束はどうしたのだと混乱する。だが声を掛けようにも、目の前にラティアスがいる状況で何を言えるわけでもなく。目線を向けることすらできないまま、ラティオスはその場で立ち尽くす。

「と、時間ね。それじゃあ行こうか?」
「そうですね。行きましょう」

 ラティアスとカイリューの会話で、ようやくラティオスは昼休憩のチャイムが鳴っていたのに気付いた。ショックでその瞬間まで気付くことができなかったのだ。振り返りラティアスとカイリューの方を見ると、ふたりは楽しそうに手をつないでいた。久々に遠目で観る妹の笑顔。実際、ラティアスとカイリューは前から仲がいい。まさか昨日の約束で持ち上げておいて、妹を裏切った自分を叩き落そうとしたのか。愕然とふたりの背中を見送るラティオス。その時だった。

「お兄さん」
「ラティオス君」

 ラティオスの両肩に柔らかい感触が引っ付く。妹と同期で入社したアシレーヌは、ラティオスの左肩から腹までその手を絡ませる。それに向かい合うように、ラティオスにとっても先輩であるエンニュートが首筋に手を這わせる。更なる事態に当惑するラティオス。

「カイリューさんから聞きましたよ。ひとりじゃ受け止めきれない性欲なんですってね?」
「抜け駆けなんてあの子も手が早いわよね。でもまあ、独占しようと考えなかったから許してあげるとして……うふっ!」

 ふたりの言葉でラティオスは昨日のカイリューの言葉を思い出す。私「も」ラティオスのことが好きというのは、カイリュー以外にもラティオスのことが好きな女性がいるということだ。先にラティアスと行為に及んでいたので別段気にならない言葉であったのだが、どうやらそういう意味だったらしい。

「そうそう。昨日の夕方カイリューさんがいきなり土下座してきてびっくりしましたよね。代わりに今日はラティアスちゃんを見張ってくれるそうです」
「どっちみちあの子も自分だけじゃ受け止められない性欲だって言ってたからね。上手いこと休みを入れる計算でもあるわけね」

 この説明でようやく、カイリューがさっさと妹を連れて出て行ったことにも納得した。事前に説明してくれないなど意地が悪い気もするが、下手なタイミングで説明してそれこそ他ならぬラティアスに聞かれたりでもしたら目も当てられない。頭の中にいろいろなものが駆け巡りどうしようもないラティオスに対し、アシレーヌとエンニュートはその体を嘗め回すように眺める。どうやらカイリューの言う通り、前々からラティオスのことが好きだったらしい。

「それじゃあ行きましょう、お兄さん」
「たっぷり楽しませてもらうわよ、ラティオス君?」

 ふたりはラティオスの腕を片方ずつつかむと、そのまま引きずるように駆けだす。どうやら行為の場所も事前に見定めているらしい。まだ状況が受け入れられているわけではないが、拒む理由もないのでラティオスも引かれるままについていく。






 それから何週間も経過した。ラティオスを囲む女の子もいつの間にか増え、昼になると職場の裏の廃屋で性欲の処理に狂う毎日を繰り返していた。一方でラティアスの嫌悪感は解くことが出来ず、帰宅後は未だに頼み込もうとしては拒絶される日々である。ラティオスの方も既にそちらは駄目元になっており、昼の女の子たちとの行為に気持ちが完全に移っていたのだが。

「なんか、怪しい」

 ラティアスはロッカーから弁当箱を取り出しながら、小声で呟く。今日昼食に誘ってきたのはカイリューだが、このところ毎日彼女からの誘いが続いているというわけではない。誰かひとりかふたり、その日によって誘ってくる相手は違う。気になる点は昼休憩の間兄の姿が見えないくらいで、それも自分が誰かしらと一緒にいるから当然と言えば当然の気もする。根拠など全くないのだが。

「どうしたの、ラティアスちゃん?」
「いえ、なんでもないです」

 ラティアスの呟きが聞こえなかったため、カイリューは何の気もなくその顔を覗き込む。ラティアスは慌ててロッカーを閉めると、長机の上のカイリューの弁当箱の隣に自分のものを並べる。何となくカイリューの瞳の奥に怪しいものを感じてしまい、居づらさを感じていた。

「……カイリューさん、ちょっとお手洗い行ってきますね」
「そう? じゃあ私も」

 付いてくる、怪しい。ラティアスはなんとなく感じてしまった。たまたま同じタイミングで催しただけかもしれないし、早めに行っておこうということも考えられるが。しかし思い始めるとラティアスには全てが怪しく見え始めて止まらなかった。結局トイレで隣同士の個室に入るまで、お互い黙り込んでしまったことが何となく息苦しかった。

「さて……」

 ラティアスは心の中で呟くと、個室の中で自らの姿を透明にする。種族固有の能力で、自分の姿を他のものに見せかけることができるのだ。ラティアスは透明な空気の姿となり、念浮遊で個室の仕切り板と天井の間から抜け出す。あまり長い間抜け出しているとカイリューに気付かれる恐れがあるので、少しの間だけ。

「お兄ちゃん、どこだろう?」

 焦る気持ちで飛行速度が上がってしまうが、姿が透明だから他の者とぶつかってしまいそうで危なっかしい。とにかく早く兄を見つけなければ。男子トイレや倉庫などを駆け巡って探していき、ひょっとしたらと思って上がった屋上にも誰の姿もなく。

「なんだろう、本当にいないなんて……」

 ラティアスは透明のまま、屋上の柵から身を乗り出すように外を眺める。自分が廻った場所は短い時間での範囲だが、それでもどこにも兄の姿を見られなかったことに疑念が膨らんでいた。一体兄はどこに行ってしまったのだろう。ふと、ラティアスの目が会社の裏の廃屋に引き付けられる。

「……まさかね?」

 独り言ちながらも、ラティアスはまっすぐ廃屋目掛けて飛び立つ。どうせ誰もいるはずはないだろうと、その玄関先に降り立った瞬間だった。

「じゃあ、買ってくるぞ」

 いきなりドアが開き、女性がひとり出てくる。ラティオスのすぐ上の先輩のボーマンダは、透明になっているラティアスには全く気付かずに赤い翼を広げて飛び立つ。前足にメモのようなものを持っており、恐らくジュースか何かを買い出しに行くのだろう。扉が開けっ放しなのを見ると、彼女のがさつさを相変わらずと感じてしまうが。まだ中に誰かいるみたいなので、ラティアスは透明のまま音を立てずに入っていくと。

「やっぱりラティオス先輩のはいい味ですね」
「ふぅ……。本当にガブリアスはフェラチオが好きだね」

 玄関からすぐのリビングに残されたソファの上で、仰向けになっているラティオスがいた。その兄に向かい合い語り掛けるガブリアスは、口元で糸を引く精液を嬉しそうに舐めとっている。その顔に突き付けるように立っているラティオスの性器。入るなり見せつけられた光景に、ラティアスは硬直する。

「これで一周ですね。お兄さん、今日も尽きる様子はないですね」
「うふふ、次はこっちに出してもらおうじゃない」

 ラティアスの思考が回りだす間もなく、次の衝撃が襲い掛かる。同期のアシレーヌと大先輩のエンニュートが、意気揚々とラティオスの傍に寄ってきたのだ。すぐ脇の家具に姿が若干隠れ気味ではあったが、それでも十分に見えるはずの位置にいた彼女たち。最初の兄の姿だけでもショックだったので、そのあまり気付けなかったのだ。

「またアシレーヌに戻って、次がエンニュートさんだよね」
「うちの前にボーマンダ先輩ですよ? 戻ってくるまで持ちこたえてくださいね?」

 そんなやりとりの間にも、アシレーヌはラティオスが仰向けになるソファに上がっていく。そして覆いかぶさるようにラティオスの腹の上に乗り、すっかり出来上がっている濡れた秘所を性器にあてがう。エンニュートとガブリアスが凝視する目の前で、アシレーヌはラティオスの雄を飲み込む。

「はぁんっ! お兄さんっ!」
「つぅっ! 今日もいい具合だね」

 よく響く甲高い声を上げるアシレーヌに対し、その顎を手で撫でてご満悦のラティオス。そんなやりとりを前にして、ラティアスの方は声すらも全く出なかった。叫ぼうかとも突っ込んで二人を引き離そうかとも考えることもできず、透明のままただその場に浮かぶラティアス。そうしている間にもラティオスは目の前でアシレーヌを下から何度も突き上げて。その動きも徐々にスパートがかかっていき。

「ぁあああぁぁぁっ!」
「うはぁっ!」

 ラティオスとアシレーヌは声を絡ませ絶頂する。お互いにひとしきり激しく全身を震わせた後、息を荒げて寝そべり重なる。しばしの余韻に浸るふたりの顔を、エンニュートは脇から嬉しそうに眺めている。

「お待たせしました、エンニュートさん……。どきますね……」
「あらあら、もう少しいいのに。でもまあ、それなら交代させてもらうわね」

 まだ余韻が残っており震えているままのアシレーヌが、なんとか力を込めてラティオスの上から退く。混じり合ったふたりの液が離れると同時にこぼれ、ガブリアスは物欲しげに目を輝かせ舌なめずりする。すっかり大好物となっているようだが、流石に割り込むのは我慢していた。出した直後で若干勢いは弱っているが、まだまだラティオスの性器は力を持っている。エンニュートはその先端に自らの艶めかしい割れ目を当てると。

「それじゃあラティオス君、いただきまーす」
「ふぁうっ!」

 大事なものを今度はエンニュートに飲み込まれ、壊れたような嬌声を上げるラティオス。挿入の衝撃に打たれ、しばし幸せそうに抱き合い。その間にアシレーヌはソファの横に転がり、こちらも幸せそうにすっかり伸びていた。一瞬の静寂の後、ラティオスはいきなり目を開く。充血しきっており、まるで毒に侵されたかのように。

「ぅんっ! あぁうんっ!」
「うわぁうあぅあっ!」

 狂ったように絶叫しながら暴れだすラティオスに、その強烈な衝撃にも振り回されることなく受け止めるエンニュート。先輩として見せる余裕とばかりに、しかし同時に存分に楽しんでもいるようで。

「うふぅっ! あんまりがっつくと……! ボーマンダちゃんが戻ってくるの間に合わない……うぅふっ!」
「その時はその時……うはぁあああっ!」

 毒を食らわばとばかりに、ラティオスとエンニュートはお互いの体をつかんで押し付けあう。エンニュートの妖艶な脚を握りしめて引っ張るラティオスに対し、エンニュートはラティオスのわき腹から背中に届くようにその長い指を絡め。交わるその場所を密着させることで、一滴も零さないという意志を迸らせている。その両者の姿に舌なめずりしながら、ガブリアスも自らの秘所を撫でて自分の番の準備を進めている。

「う……ふ……っ! やればやるほど良くなっていくよね、ラティオス君ったら」
「皆さん最高ですから。はあ……っ!」

 どちらも両手を投げ出し、全身を打ち貫く余韻に浸りきる。ボーマンダが戻ってくるのを待つ意味もあるのだろうが、こうして悶えられる時間は他に代えがたいものなのだ。そんな時間がどの程度か流れ、玄関の外から羽音が聞こえてくる。予定通りとばかりだ。自らを忘れていたかのように透明なまま佇んでいたラティアスは、なんとか意識だけは取り戻す。

「買ってきたぞ。待たせちまったか?」
「い……や……。丁度いいくらいだね」

 ラティオスが答えると同時に、エンニュートは少々名残惜し気な顔をしながらもその上を退く。ボーマンダはなおも力を持っている性器に頷きながら、ラティオスたちの方に入っていく。ラティアスは体を傾け、ボーマンダの進行方向をかわす。翼のふちがわずかにラティアスの背中に触れたが、壁にでも触れたと思ったのかボーマンダは気にせず進んでいく。ラティアスはどうしようもなく、仕方なしに廃屋から出ていく。

「……とりあえずカイリューさんも流石に気にしている頃だろうし、戻らないと」

 小声で呟きながら、先程入ったトイレに向かっていく。いい加減カイリューが声を掛けていておかしくない頃だ。それに対してもぬけの殻の個室が答えるわけもなく、心配が募れば仕切り板の上から覗き込むかもしれない。そうならないうちに戻らないと、抜け出したことで兄の乱れた姿を見たことまでばれてしまうかもしれない。今の愕然とした気持ちでは、誤魔化すことはできそうにない。

「それにしても、お兄ちゃん……」

 急いで飛び進みながらも、ラティアスの頭に先程の兄の乱れた姿が映る。夕方帰って食事をした後は、拒否されるのをわかっていても性懲りもなく求めてきた。そのためこんなことをしているなんて全く気付かなかった。今日昼食に誘ってきたのはカイリューだが、このところは日によってアシレーヌやエンニュートやボーマンダやガブリアスだったこともあった。きっとカイリューもグルで、交代で自分を見張っていたのだろうという予想が浮かぶ。

「ラティアスちゃん? どうかしたの?」

 トイレに戻ってみると予想通り、カイリューが自分が入っていた個室のドアを叩いて声を掛けていた。仕切り板の上から覗けるとは言っても、流石にすぐに覗き込むようなことはしていないだろうが。ラティアスは出たときと同じく透明のまま仕切り板の上まで浮かび上がり、カイリューの頭上を堂々と通り抜けて個室に戻る。そして無言のまま水を流し、扉の鍵を開ける。

「ああ、ラティアスちゃん! ずっと出てこなかったけど、どうしたの?」

 扉が開くと、当然のごとくカイリューと目線が合う。追求するかとか誤魔化すかとか思考を回し始めた瞬間、限界が来た。堰を切ったように涙があふれ始め、浮遊する力を失い床に落ちる。

「ラティアスちゃん? ねえ、どうしたの?」

 そんなラティアスの肩に手を当て、寄り添いながら訊くカイリュー。涙の向こうでラティアスは「白々しい」とは思ったが、それを言葉どころか微妙な身振りにすることもできず。

「体調が悪いの?」

 それにも首を振るでも頷くでもなく。自分を強姦するまで振り回した兄が、他の相手が見つかるとさっさとそちらに向かってしまった。自らが誰を相手に選んだかを決める重要な行為のはずなのに、あっさりと快楽に飛びついて回る兄の節操のなさ。一瞬は夢見た未来もとっくに幻滅していたが、ここまで酷い裏切りには絶望が非常に大きかった。

「とりあえず、今日はもう休んで。仕事の方は何とかするから、帰れるようになったら帰りなよ」

 そんなラティアスの心中がカイリューに届いているはずもなく。ラティオスのことはあるにしても、カイリューは純粋に心配してラティアスのための言葉をかける。






 それからどこでどうしたかは思い出せず、ラティアスは気付いた時には家に帰り着いていた。いつの間に始めていたのか、夕食の準備で野菜を切っている。確かに今日の当番はラティアスだが、体調が悪いという話は聞くだろうから兄に代わってもらうのも簡単なはずである。その辺りの気も回らないくらい、ラティアスは錯乱していたのである。気持ちの状態もそうだし、視界が涙でぼやけることが多い中で包丁を扱うなど危険でしかないのだが。

「お兄ちゃん……」

 肉欲でさんざん振り回し、最後は強姦までした。そのあんまりな行為に交わりを断り続けていたら、今度は他の女の子を並べてとっかえひっかえに性交する毎日を送るようになった。これでは自分が捨てられたようでみじめだ。

 だが兄が自分のところに戻るようにするなら、そのためにはあの欲望に狂い果てる日々にずっと体を捧げ続けなければならないということだ。ただでさえそんな日々はラティアスにとっては地獄でしかないし、裏切った兄の気を引くために媚びるなど耐えがたい屈辱だ。

 或いは浮気をして裏切ってきたのなら、こちらも浮気をして意趣返ししようかとも思った。しかしラティアスはこれにもすぐに首を振る。相手が兄ではないだけで、性行為であれば結局体の負担は大きい。それに相手も思いつくような者は出てこない。しかも兄は自分の性欲さえ発散できれば相手はどうだっていいのだろうから、今のメンバーと行為できる状況が破壊できなければ何とも思わないだろう。

 ここまで思ったところで、ラティアスの脳裏に「じゃあ殺すか」という選択肢まで浮かんでしまった。部屋で寝ているところに忍び込めば殺すのは簡単だろう。だがそれでいいのだろうか。寝ているところをいきなり殺されては、兄は自分のしたことを後悔する暇もないだろう。しかも殺してしまってはその後の自分の社会的立場が大変なことになる。

「痛っ!」

 頭の中であまりに沢山のことが巡っていたため、野菜を切るため包丁を扱う手元がすっかりおろそかになっていた。ラティアスは指の付け根を、結構な深さで切り込んでしまう。後からくる鈍い痛みが響き続ける中、流れる血は切っている途中だった長ねぎに垂れる。すぐに手当てにかかるべきなのは頭の中ではわかっていても、何故か動く気になれない。茫然と流れ落ちる血を眺め、赤に染まっていく長ねぎを見つめる。そのうちに、ラティアスの頭の中に「あること」が浮かんできた。






 それから一週間。ラティアスは兄にも女の子たちにも変わらない態度を見せて生活していた。しかし裏で気付かれないように、あの日思いついたことの準備を進めていた。必要な知識を本やネットで手に入れ、どのように進めるか計画を立てる。その計画に必要な物資を揃えて、そして今日。

「そういうわけで、兄の調子が悪いので休ませます。私も看病のため休みます」

 会社への連絡の電話を切り、ラティアスはにんまりと笑う。いよいよ兄の裏切りに制裁を下す、その時が来たんだと。意気揚々と向かうのは兄の部屋。

「くそっ! くっ! ラティアス! これはどういうことだ!」

 部屋の扉を開けると、ベッドの上で鎖に雁字搦めにされたラティオスが妹に叫ぶ。首と両腕と胴回りと翼には、鎖とは別に黒いベルトが巻かれている。それについている装置は、バトル施設などで使われる肉体的な能力を調整するためのものである。本来は対戦者同士を同じ力量にすることでフェアな対戦を楽しむためのものであるが、調節次第で生まれたての子供のような能力にまで落とすことができる。今のラティオスだとエスパーの全力でもってしても鉛筆一本転がすのも難しい状態だ。

「起きてたんだね? 起こす手間が省けて良かったよ」
「何を……?」

 起きるなり突然の状況に困惑する兄の顔をよそに、ラティアスは仰向けに寝せられた腹の前に近づく。そして両手で内股を軽くさすった後、今度は左右に広げるように揉む。

「うん、出てきたね」
「ぅう……。何をするんだ?」

 突然の事態に当惑してはいたが、その部分をさすられてラティオスは早くも上気していた。引っ張られて開いたスリットから飛び出した雄は、徐々に先端に力を持ち始めている。わからない態度は続けていたが、実際のところラティオスの頭の中であることが浮かんでいた。エロ本でよくある鬼畜な拘束プレイだ。何の影響なのかはわからないが、珍しく妹の方が求めてきたのだと思った。

「これからのお楽しみだよ?」
「ひゃん!」

 妹に性器を撫でられ、嬌声を上げるラティオス。このところ数を繰り返してきた女の子たちと比べると拙い気はするが、余計なことは言わず妹が行為を進めてくれるままに身を委ねようと考える。早くも先走りが漏れており、ラティオスの肉棒もラティアスの手もすでに濡れ切っていた。

「準備万端になるの早いね、お兄ちゃん?」
「ぁぁ……」

 ラティアスは独特の臭気に濡れ切った手を放し、自らの秘所を兄の先端にあてがう。淡々と手早くこなす感じでもう少し楽しむようにしてもいいのではないかとラティオスは思うが、余計なことを言って機嫌を損ねたらこの状況では大変なことになりそうだ。拘束されたまま何日も放置されたりしたら目も当てられない。そもそも妹は性行為で体力を消耗する性質なのはわかっていることなので、ここは全てを妹に委ねることにする。

「つっ……! はぁ……っ!」
「ぅう……いいね……」

 久しぶりの妹の中は、慣れていないせいか若干強張っているような気がする。口に出すわけにはいかないが、他の女の子たちと比べるとどこか今一つである。それでも熱や湿り気は体を感じさせるには十分で、昨晩でたまったものを目覚めさせてくれる。

「じゃあ……いくよ? 頑張るからね?」
「うん、うん」

 言うが早いか、動けないラティオスに代わってラティアスが腰を前後に振り始める。慣れない運動は息苦しく、ラティアスは息を荒げて汗を垂らすが。そんな姿はそれはそれで、ラティオスの中のものを煽っており。

「はっ! あっはっ!」
「ふわぁあああっ!」

 強引に力で持っていかれた感はあるが、それでもラティオスは達した。この時間帯に抜けるなど本当に久しぶりで、その余韻は痺れんばかりである。一方ラティアスの方は余韻など気にせず兄の性器を抜き、ベッドの脇に用意していたカバンの前に降りる。

「はぁ……」

 兄の喘ぎ声も適当に、ラティアスはカバンを開ける。取り出したのはカセットコンロと、金属製のスプーン。カセットコンロを組み立てて火を点けると、その上にスプーンを並べて。ラティオスは余韻に感じ入るばかりで、ラティアスには「何かやっている」くらいにしか思わなかった。拘束されているという異常な状況のため、変なことが気にならなくなっているのだ。勿論拘束されていて見れないというのもあるが。

「最後のセックス、楽しんだ?」

 どれほどの時間がたったか、ラティアスが不意に声を掛ける。ラティオスはそれに対し、一瞬は行為について素直に「良かった」と言おうとした。しかしその口を疑問符が止める。ラティアスは今「最後のセックス」と言ったが、どういうつもりか。なんとか上げられる範囲で顔を上げると、ラティアスと目が合い。

「お兄ちゃんは私のもの。だからもう勝手に他の女の子と浮気しないように……去勢してあげる」

 部屋中を震わせんばかりの狂気に息を飲む。ラティアスは笑顔ではあるが、誰もが恐怖する狂気を瞳から迸らせている。押され切ったラティオスは混乱のあまり、妹の口から出た言葉が余計に理解できなかった。

「きょせ……え?」
「去勢してあげる」

 思わずその言葉を聞き返したラティオスは、妹の笑顔で恐怖に縛り付けられる。体の方は何とか逃げ出したいというのに、拘束する鎖が許してくれない。そのどうしようもなく慌てふためく姿がラティアスの嗜虐心を満たす。

「ちょっと待ってよ! 浮気って、なんの話なんだ!」

 実際のところ自分が浮気をしているのは間違いのないことであるが、だからと言っていきなり認めるわけにもいかないと思ったラティオス。事実ではあっても妹が根拠のないうわさに飛びついただけで、何かを押さえているわけではない可能性もある。そんな可能性もあると思ったため、まずは妹がどのくらい理解しているかを確認しなければならない。

「職場の裏の廃屋で、あの日はアシレーヌさんにエンニュートさんにガブリアスちゃん……ボーマンダさんもいたよね? カイリューさんもグルなんでしょ? トイレの中で透明になって抜け出して、お楽しみだったところ見せてもらったよ?」

 現場を押さえられていた。ラティオスがそうであって欲しいとすがった可能性は、絶望的なまでに呆気なく粉砕されてしまった。だがこれで大人しくなるわけにはいかない。鎖が肉に食い込んで痛みすら感じる拘束をされている現状、黙っていたら去勢まで一直線だろう。生きる実感と活力と快楽を与えてくれる何よりも大切な性器を切られるなど、痛みが無かったとしても御免被りたい事態である。

「ラティアスが相手してくれなかったから、ずっとたまり切って苦しかったんだよ!」

 とにかく妹を説得して解放してもらうしかない。力を弱める装置も着けられている以上、できる抵抗などたかが知れている。そもそもこんな拘束された状況では、抵抗し続けたところでいずれは力尽きるのが見えている。とにかく妹に納得してもらって、拘束を解いてもらう以外はない。

「じゃあ、もうしない?」
「それは……!」

 返ってきた妹からの残酷な問いかけに、ラティオスは言葉に詰まる。たった数回妹と交わっただけで、自力で抜くことができない体になってしまったラティオス。あれから他の女の子たちとさんざん交わってきた今になって、自慰に戻るなど無理難題である。勿論咄嗟に出まかせを言うこともできるが、それに何の説得材料があるだろうか。

「無理やりやらせたり浮気したり、お兄ちゃんのしたことで私が苦しむのは関係ないんだね?」

 言葉に詰まっている兄に対し、ラティアスは性欲からの所業に対する恨みを突き付ける。それまでは評判になるほど仲の良かった関係が、一転して破綻したまま戻るきっかけもない日々の原因。それを言われてラティオスの脳内にも、じわじわと恨みが湧いてくる。性欲がたまり切って処理できない状況で、苦しみ続ける自分が哀願してもなお助けようともしないラティアス。

「そんなに浮気されたくなかったんなら、もっと頑張ってくれればよかったじゃないか! なんで僕ばっかり苦しむんだよ!」

 その瞬間には助けてくれなかった妹に対する恨みが、ラティオスの口から飛び出していた。自分のしたことは確かに悪いとは理解するが、それよりもラティアスの方がずっと酷いのではないかという責任転嫁。それを聞いてラティアスは数度頷く。

「だからその苦しみの元凶を断ち切ってあげるんじゃない。感謝してよね?」

 やはり兄は自分の性欲のことを考えてないと、言われた言葉ですっかり達観したラティアス。どちらも自分の苦しみしか見えておらず、相手を追求する方向にしか進めなかった。そうなると目の前の状況が全ての力関係となる。ラティオスは言ってしまった言葉に恐怖するが、もう遅い。

「やめてくれよラティアス! ラティアスだって今、自分の方からやってきたじゃないか!」
「うん。そうしないとお兄ちゃんの最後の相手が私に上書きできないからね」

 先程ラティアスが言った「最後のセックス」というのは、そういう意味らしい。ラティアスの目当ては決して快楽などのセックスで得られるものではなく、兄を自分のものとして決めることであった。おぞましいまでの独占欲に、ラティオスはそれ以上返す言葉が思いつかなくなっていた。

「そんなわけでお兄ちゃん」

 言いながらラティアスはカバンの中から念力で包丁を引き寄せる。兄も目にする台所のものとは別のものを新調し、この時のためにしっかり研いでおいたのだ。普段使いのものとは全く違う怨念のこもった鋭利さに、ラティオスの心臓はその輝きだけで止まりそうになっていた。

「ちょっきんね」

 恐怖に縮み上がりするするとスリットの中に逃げ込もうとする兄の雄を、その先端を掴んで引きずり出すラティアス。逃げ込んだところでまたすぐに引きずり出されるだけなのだが。先程の性行為でまとっている精液のぬめりはあっても、その甲斐もなく縮こまった性器が伸びるまでに引っ張られ。

「いやぁああぎゃぁあああっ!」

 ラティアスは包丁を横薙ぎに、性器の裏側の根元に叩き込む。刃が性器に真横から三分の一ほどまで食い込んだ瞬間、ラティオスの悲鳴は恐怖から苦悶のものに変わる。飛び出さんとまでに見開いた眼球は充血しきり、筆舌に尽くしえない痛みをあらん限りで訴える。だがまだ断ち切られてはいない、終わりではない。

「ぎゃぅあぐうわぁあっ!」

 完全に切り落とすためにラティアスが包丁を前後させるたびに、絶叫をその動きと重ねさせるラティオス。壊れた弦楽器のようなその姿に、しかしラティアスは自分でも気が付かないほどの興奮を覚えていた。自分を苦しめた兄が全身でのたうち回り、鎖が軋み肉が呻く無数の音が響く。地獄の果てからの狂想曲は、ラティアスに天にも昇るような心地を与え。

「はい、さよなら!」
「あ……っ! あ……っ!」

 完全に断ち切られた頃には、ラティオスの全身にも鎖に嬲られた無数のあざが出来上がっていた。股間からも全身の震えに合わせて血を噴き出させ。やがてのたうち回る力も無くなり声も涸れ果てると、逝ってしまったかのように首も力なく投げ出す。

「お兄ちゃん、血がいっぱい出てるね。このままだと死んじゃうね?」

 そんな全てを無くしたかのように兄が動かなくなったのを見届け、ようやくラティアスは口を開く。全身に脈動する痛みで既に答える気力はなく、ただ荒い息を繰り返すだけのラティオス。刻一刻と股間から大量の血が噴き出し、実際このままだと失血死は免れないだろう。

「とりあえず、止血しようか」

 言葉にまで出す余力はないが、ラティオスは消え去りそうな心の奥底で「お前のせいだろう」とは思う。ともあれ脈と共に全身を駆け巡る痛みが続いている現状、それを止めてくれるならせめてもの救い……そう感じた瞬間。プラスチックが焼けた不快な甘さと苦さが混じった臭気がラティオスの嗅覚を刺激する。

「いくよ?」
「ひぃぎぃいいいっ!」

 強烈な熱が傷口に突き刺さり、ラティオスは涸れたはずの声をまたしても張り上げる。焼灼止血法。カセットコンロで強熱したスプーンをラティオスの傷口に押し当てて、焦げ付かせることで傷口を塞ぐというものだ。ラティアスの方は念力でスプーンを持ち上げているため熱くもなんともないが、ラティオスの方は地獄である。

「まだ終わりじゃないよ?」
「いぎゃあぁあああっ!」

 一瞬でも痛みを終わらせてくれると思った自分に、ラティオスは叫びながら後悔する。止血という治療の一環である筈の行為ですら苦痛を与えてくるなど想像もしていなかった。どこまでも苦痛を与えないと気が済まない妹の行動は、もはや狂気ですら説明ができなかった。

「あと少し。頑張って?」
「あぐあぁぁぁっ!」

 竜の鱗肌で守られている部分であれば多少は熱に強いが、傷口となっている部分はその限りではない。その傷口を押し潰す形でも塞ごうと、ラティアスは強められる限りの念力でスプーンを押し付ける。先程使ったスプーンは、連戦のために再びカセットコンロにくべられている。

「はい、最後ね」
「んぎぅうううぅっ!」

 傷口の埋まり具合を見て、ラティアスはスプーンを床に投げ出す。出し尽くしてかすれた声だというのに、なおも苦痛を漏らすラティオス。彼方からスプーンを転がす音が響き、ようやくこの熱による責めも終わりだと思った。それで一瞬顔から力が抜けたのを見て、ラティアスはふっと息を漏らす。

「で、予備で熱してたやつ。いい声出してたから、さっきの声もう一度聞きたいな」
「やぎゃっはっ!」

 首筋の鎖の隙間から、もう一本熱していたスプーンを入り込ませる。気持ちが切れたところに思わぬものを入れられて、ラティオスは咳き込んだようなここまでとは違う奇声を上げる。鎖から解放されるまで終わりなどないというのを、改めて思い知らされるラティオス。苦痛と恐怖に震え上がり思わず目を閉じると、涙が両目からこぼれる。

「お兄ちゃん、目を開けて」

 ラティアスが少しの間何かをいじっていたのは、ラティオスも音で理解できた。もしかしたらこれで解放するために鎖を外しているのではないかとも頭に浮かぶ。しかし終わりと気を緩めたところで追撃が来た先程のこともあるので、慌てて期待を振り払い身をこわばらせて備えていた。そんな兄の頬を、ラティアスは揺り起こすように軽く叩く。

「お兄ちゃん、さあ……目を開けて」

 まだなにかあるのかと思いつつも、一瞬はその先に何を見せつけられるかという恐怖で目を開けるのが億劫だった。しかし兄の頬を叩き続けるラティアスの手は、徐々に力を強めている。このまま目を開けずにいたら妹の手はエスカレートするだろうと感じ、ラティオスは仕方なくまぶたを開ける。目の前にあったのは、蓋をされた透明のプラスチックのカップ状のもの。ラティオスはそれが何なのか一瞬では理解できなかったが。

「おちんちんの哀れな最期を見ろ」

 ラティアスは口元を吊り上げ、狂気に高揚しながら言い放つ。同時にエスパーで兄のまぶたを縛り付け、目の前の光景をシャットアウトするために目を閉じるということができなくなった。その行動に恐怖した後、目の前のカップの中の存在に気付く。透明なカップの中には、まず先程切られたラティオスの性器がある。それが横たわっているところには、反りかえった金属板が固定されている。

「ミキサーっ!」

 自身の性器が封入された装置を見て、ラティオスは叫ぶ。ミキサーの中に詰められた性器は、装置が起動された瞬間がラティアスの言う「最期」になる。全体の形が残っていれば、もしかしたら解放された後医者に持ち込めば縫合してもらえるかもしれないという淡い期待があった。勿論その前にいくつもの障壁はあるが、そのままの形であればまだ可能性はましであるはずだ。そのましなくらいの可能性も、ここですり潰されれば消え去ってしまう。

「それじゃあ、加工スタートね?」
「いっ、いやだっ! やめろおおおおおおっ!」

 涙をまき散らして絶叫するラティオス。その姿を笑顔で眺めながら、ラティアスは無情にもミキサーのスイッチを入れる。一瞬で中の機械が起動し、刃は性器を巻き込みながら最高速度で回転していく。

「やめてくれぇぇぇえええっ!」

 駆動音が絶叫と共にこだまし、部屋中を震わせるが。しかし誰かの救いを呼ぶわけでもなく。ラティアスがミキサーのスイッチを切ると、中で性器はどろどろの肉塊と化していた。その一部始終の間目を閉じることも許されず、ラティオスは全てを見せつけられていた。そこまででラティアスのエスパーからまぶたは解放されていたが、目を閉じるでもなく力なく宙を眺めていた。今まで全身に刺さっていた苦痛も恐怖も、ここに現れた絶望の前に消え去ってしまった。

「いい感じに加工できたね。あとは……」

 ラティアスはミキサーを床に置き、蓋を開ける。そしてカバンからタッパーに詰められた粉を取り出しミキサーに入れていく。宙を眺めて放心状態のラティオスに構いもせず、てきぱきと作業を進めていく。やがてラティオスの嗅覚を、肉を焼く香ばしい香りが刺激する。

「お楽しみはここまで。あとは栄養を摂って、ゆっくり養生しようね? さあ、できたてだよ!」

 カセットコンロの火を止めると、エスパーで手元に皿を引き寄せる。そこにコンロの上のフライパンから、言う通り出来立てのハンバーグを乗せる。一口サイズの小さなハンバーグが三つ。ラティアスはそのうちの一本をフォークで刺し、兄の口元に差し出す。それに対しラティオスはそれが何で作ったハンバーグか想像がつくので、うつむき加減になり首を振るだけ。

「ごちそうなのに」

 仕方ないと頷くと、ラティアスはハンバーグを自分の口に運ぶ。






 その後ようやく解放されたラティオスは、医者に駆け込み正式な治療を受ける。命に別状は無かったが、当然性器を復活させてもらうことはできなかった。
 この一件は職場全体を騒然とさせ、結局関係したメンバーは全員解雇されてしまった。ラティオスもラティアスも、ラティオスと関係を持った女の子たちも全員。性行為の関係だったので、女の子たちは性器を失ったその後のラティオスを助けようとはせず捨て去っていった。

「うぅ……」

 完全に性行為が出来なくなったラティオスだが、睾丸の方は無事のため前と同じく性欲は残っており。たまの夢精でしか発散できなくなった体で、常に耐え難いフラストレーションに晒されることとなる。

「たまり切って苦しいんだ、ラティアス……。どうにかならない……?」

 仰向け気味に体を浮かせ、ラティオスは妹に股間を見せる。そこには今までは無かった巨大な膨らみが二つ。異常な精力性欲に対し全く処置をできないので、睾丸が肥大化してしまったのである。普通であればラティオスの体だと睾丸は表に出ず収納されているのに、悲惨な状態である。

「じゃあ、そこも切っちゃう?」

 そんな悲痛の声に対し返ってきた答えは、あまりにも無情であった。兄さえ望めばぜひ切りに掛かりたいとでも言わんばかりに、ラティアスは意気揚々と目を輝かせる。対して恐怖に歪むラティオスの表情を見ると、ラティアスはそれはそれでいいものだと言わんばかりに笑みを浮かべる。

 仲が良いと評判だったラティオスとラティアスの兄妹。周囲ではどうしてこうなったのかと言われずにはいられなかった。







どうも、自分です。
去年去勢ネタを書くに至って、すっかり去勢に魅了されてしまった自分です。恐怖からの苦痛、そして絶望……そのどれも絶大なものとして叩きつけられる去勢にすっかり取り憑かれてしまいました。そういうわけで再びの去勢ネタ。ことあるごとに去勢ネタの魅力を語ってきたため、仮面小説大会という場であっても「去勢」の単語を出せば確実に仮面は吹っ飛ぶと思っていました。なのでエントリー文で伏線を張りつつ、ラティアスがその台詞を言った瞬間に仮面を引きちぎって読者に叩きつける気持ちで書いたわけですが……。

……タイトルだけで自分だとわかった人がいるってのが白目でした。自分のタイトルってそんなに独特なんでしょうか?

まあ実際このタイトルが思い浮かんだ瞬間はかなりの衝撃でしたがね。自分でもぴったり来てしまい大草原でした。ちなみにこのタイトルはまたしてもFEifで、テーマ曲の歌詞に入っており章タイトルにもなっている「埋もれ狂い果てて」から着想を得ました。

そして今回はメジャーどころのラティ兄妹を物語のメインに据えました。兄妹近親相姦ネタが多いこの二匹、それが相まって特にラティオスはラティアスに対し異常性欲を抱くというイメージが自分の中で完成していました。こういうゲテモノ枠はメジャーどころを使い、序盤は官能を並べることで読者に徹底的に媚びておいて叩き落すというスタイルが自分の中で完成しつつあります。

とはいえ今回の大会は自分以外にもタイトルからしてゲテモノという作品が並んでいましたがね。ゲテモノだらけの中だとあんまり目立たなかったのでしょうか、得票は二票で下から数えた方が早い順位でした。実際誰も死なないで済む優しい物語でしたしね。

去年ジュプトルを去勢したときに悩んだ点に「竿だけでなく玉も切って繁殖能力を完全に喪失させる」か「竿だけ切って玉は残し射精は不自由になってなお性欲に苦しむ状態は残す」かという選択がありました。結局ジュプトルの方は「未来という名の子孫を断ち切る」という意味で玉まで切ったため、今回はラティオスは性欲に苦しむ顛末になってもらうことにしました。逆に失禁しやすくなるという方はジュプトルの時にやったので今回は触れもしませんでしたが、構想はその頃から少しずつ生まれていたわけです。

ちなみにこの作品はいくつかネタもちりばめられています。
まず冒頭の警告文ですが、とあるバーチャルユーチューバーがホラー映画を紹介した回で言った台詞を持ってきております。また当初はラティオスを囲む女の子は全員ドラゴンタイプにしようと思ったのですが、結構前に見てふぁぼツイートにしたイラストに「アシレーヌとエンニュートにボーイハントに掛かられて焦るラティオスを寂しそうに眺めるラティアス」というものがあったのを思い出してアシレーヌとエンニュートを加えました。また焼きごてを向ける時や自身の肉の料理を差し出すシーンは、ジュナイパーがそんな目に遭うイラストから思いつきました。焼灼止血法は作中でも述べた通り「治療でも苦痛を与える」ということでその前からあったネタでしたが。
あとはミキサーですが(※ネタバレ注意)→スプラトゥーン2のオクトエキスパンションで集める「4つのアレ」です。この作品の構想自体はだいぶ前から既にあり、当初はアニメの「メイドインアビス」のナナチのすり潰し器(漫画版では存在が確認できず)なんかも考えていたわけですが。夏になって配信されたオクトで一気にミキサーに持っていかれました。オクトの作中ではあわやミンチの18Gというところで前作主人公が助けに来るのですが、こちらは助けに来る3号などいるはずもなく←というお話でした。
最後にそんなミキサーのシーンを「見たくないのに無理矢理見せる」という展開は、スプラトゥーン仲間の漫画描きどうくつねずみさんの漫画が下地になっています。許可をいただけて感謝。

さて、言いたいことはひとまず終わりましたので、投票コメントをくださった方々への謝辞。

> 欲望は狂うもの (2018/10/13(土) 20:23)
自分もすっかり狂った勢いで書かせていただきました。

> 読者を切る側のラティアス視点に立たせるのが巧妙で、クソ兄貴去勢シーンはけっこうノリノリで読めました。「そんなわけでお兄ちゃん」「ちょっきんね」が最高にCOOL。ミキサーにかけるのはやりすぎかな? とは思いましたが面白いので強い。でもハンバーグはまずそう。こう、やっぱり同じテーマで2回書くと見えてくるものがあるんですねえ……。 (2018/10/14(日) 21:52)
去勢はやはり切る側に立ちたいものです。切られた上にクソ兄貴呼ばわりされるラティアスも哀れだと思いますが、徹底的に地獄に叩き落すのは楽しかったです。ちなみにペニスは強靭な海綿体で、食いちぎるのもまともにやると苦労するとのこと。ハンバーグにしないと食えたものじゃないだろうというのもあります。

お二方はじめ読んでくださった皆様、場を設けてくださった管理人様、本当にありがとうございました。

それではまた次の作品でお会いしましょう。

お名前:
  • とっても狂気を感じるお話でした。
    性欲のために妹を利用し、自分の気持ちばかりを優先して文字通りの独りよがりそしてしまう兄も、そんな兄を欲望のままに手籠めにする女性陣も、激しい行為を拒絶しておきながら嫉妬にくるってしまって自分のために独占しようとする妹も、まともな登場人物がだれ一人いない世界って怖い! -- リング
  • >リングさん
    まともな登場人物が誰一人いないのもそうですが、そのまともじゃないはずの登場人物たちもこの少し前までは人畜無害に善良な生活をしていたわけですからね。ラティアスが一歩踏み込んだことがスタートですが、そんなちょっとしたことで善良な生活がこの狂乱状態になるのも怖さだと思います。 -- オレ

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Last-modified: 2018-10-27 (土) 01:23:12
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