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大きな買い物・・・? 前半

/大きな買い物・・・? 前半

キャラ設定 


キョウイチ(16歳・男)
とある貿易会社社長の息子。親に家を建ててもらってそこで一人暮らしをしている。
町でいつも喧嘩をしていて、そこでは『暴れ馬』や『どら息子』として有名。人間だけど強い。
根は優しく、困っている人を放っておけない性格。


サーナイト(♀)
都会近くの森に住んでいたが、人間に捕まり奴隷として売られることになる。
そこでキョウイチに買われて、彼と一緒に生活することになった。



人とポケモンは共に助け合い生活を豊かにしてきた。それによって今の世の中がある。
しかしその裏には深い闇があり、社会に犯罪が横行しているのも事実だ。
ここでは、都会外れのある町を覗いてみる。



「オラッ!ちゃんと歩け!」
首輪を付けられ縄で手を拘束されたポケモンたちが、男によって歩かされている。
この町では、捕まえたポケモンを奴隷として売ったり、メスのポケモンを使って商売をするなどの違法行為が横行しており、それによって莫大な金を得ようとする人間がいた。
その中でも、サーナイトやミミロップなどの人型に近い美しいポケモンには高値が付くという。
「あっ・・・」
1匹のサーナイトが石につまづいて転んでしまった。
「何コケてんだ!」
「ごめんなさい・・・」
「まあいい。お前は今からそこで売り飛ばすんだからな。」
男の言葉を聞いたサーナイトの顔が青ざめる。
できればその売人の男を倒してどこかへ逃げてしまいたいが、付けられた首輪によって力を抑えられているので反抗できない。それは他のポケモンも同じだった。

男はポケモンたちを連れてある場所に着くと、そこには何十人か客が集まっていた。どうやらここはオークション会場のようだ。
着いたのも早々に準備をした男は、サーナイトを台の上に立たせる。
「さあいらっしゃい!このよく育ったサーナイトを100万円から開始だぁ!」
客が一斉にサーナイトに注目し、オークションが始まった。
「130万!(サーナイトはレア物だ!絶対俺が・・・!)」
「160万!(今日は絶対に買ってやる!)」
「200万!(いい身体してやがるなぁ・・・へへ。)」
客の視線にサーナイトはその思念を感じ、ただ恐怖に囚われてしまう。
そこに、目つきの悪い男が手を上げて一気に値段を上げてきた。
「300万。(たっぷり可愛がってから肉も内臓も売ってやるぜ・・・!)」
会場内を静寂が包む。
「300万!・・・それ以上はいませんか?」
サーナイトはその男に強い恐怖を感じていた。もしあの男に買われたらどうなるかと思い、ただ絶望感でいっぱいだった。
するとそこに、一人の少年が手を上げる。
「500万だ!」
少年の言い値に男は焦った。
「な、何ぃ!?(俺の予算は400万・・・ちくしょう!)」
「500万!!それ以上はいませんか・・・?・・・・・では、サーナイトは500万円で落札されます。」
売人は喜んで現金500万円を少年から受け取り、サーナイトを引き渡す。
「いや~、まさかあの貿易会社社長の息子、キョウイチ様がここにおられるとは・・・」
「このことは他の誰にも言うなよ!わかったな!」
「わかっております。・・・今度はもっといいのを入荷しますから、買ってくださいね。」
売人はポケモンたちを引き連れて去って行った。
「・・・お前、どこか住んでたところはあるのか?」
少年(キョウイチ)の質問に、サーナイトは暗い顔で答える。
「・・・森に住んでいましたが、その森は今、町になっているので・・・」
「そうか・・・悪ぃな。そんなこと聞いちまって。」
彼に謝られてサーナイトは「え?」と混乱してしまう。
ポケモンを買う人間のほとんどは奴隷として強制的に過酷な労働をさせたり、欲望を処理するためのはけ口にするから、自分を道具程度にしか思わないだろうと思っていたからだ。
「それより、その縄と首輪邪魔だろ?外してやるよ。」
キョウイチはサーナイトの腕の縄と首輪を外してあげた。
「え・・・いいんですか?こんなことして・・・」
「いいも何も、苦しそうだったじゃねえか。・・・それより、帰る場所がねえなら俺ん家でも来るか?」
「はい・・・あっ。」
サーナイトは石につまづいて転んだ。彼女の身体は弱っていて、立ち上がろうとする時にもフラついてしまう。
「ごめんなさい・・・」
「お前フラフラじゃねえか・・・俺が背負ってやっから。」
「え・・・?」
キョウイチは戸惑うサーナイトを背負うと、家路を歩き始める。
「俺はキョウイチってんだ。世の中の奴らは俺を『ドラ息子』とか『暴れ馬』って呼んでる。」
「キョウイチさん・・・ですね。私はサーナイトです。よろしくお願いします・・・。」
サーナイトは、いつの間にかその背中の上で眠っていた。

「着いたぜ。おい、起きろ。」
サーナイトはその声にビクッ!反応して起きると、ソファーの上に寝かされていたことに気付く。
そして、自分が大きな建物の中にいることがわかった。
「ここが俺ん家だ。一人で住んでんだけど、やっぱり広すぎだな。」
「一人・・・ですか?」
彼女の言葉も気にせず、キョウイチは何かを考えていた。
「そうだな・・・お前、腹減ってるだろ?」
彼に言われて、サーナイトは自分が空腹であることを意識した。
「はい・・・今日は何も食べていないので・・・」
「そうか・・・よし、10秒待ってろ!」
キョウイチは走って冷蔵庫に行くと、何種類か木の実をかごに入れて持ってきた。
「好きなの食っていいぜ。それから俺は今からお前の飯作るから!」
「え・・・いいんですか?ってもう台所に・・・」
キョウイチが料理を作っている間に、彼女は身を起こしてかごの中の木の実に手を伸ばす。
その中のモモンの実を取るとひんやりしていたので、無意識のうちに火照った頬にそれを当てた。
「ひんやりして・・・いい匂いがする・・・」
それから彼女は実を一口食べる。
「ん・・・おいしい・・・」
優しい甘さが口の中に広がり、彼女の緊張を解きほぐしてくれた。
それからも彼女はゆっくりとモモンの実を味わった。
すると、そうしている間にキョウイチが皿を持って来る。
「できたぜ!俺の自信作!『カモネギのクラボの実煮込み(ごめんね!)』だ!甘辛い味のつもりだけど、ちょっと辛さが強かったかも。」
「私のためにこんな・・・」
サーナイトの反応に、彼はちょっと勘違いしてしまう。
「まあ気にすんなって!ポケモン同士でも種類が違えば全く別の生き物なんだし、このカモネギは昨日俺ん家に強盗しに来たやつだから!」
「ぷっ・・・ふふ♪」
彼女は少し笑うと、目の前のニコニコした顔に促されて、料理を口に運ぶ。
「あむっ・・・もぐもぐ・・・」
辛さと甘さが溶け合ったその味には強さと優しさが宿っているようで、味わうほどに元気が出てくる。そして・・・
「もぐもぐ・・・ぅっ・・・うぅっ・・・!」
サーナイトは泣きだしてしまった。
「ど、どうした!?マズかったか?・・・ま、まさか、カモネギに毒が入ってたのか!?」
慌てて毒消しを用意するキョウイチに彼女は笑わされながらも、涙は止まらない。
「ふふっ・・・うぅっ・・・おいしかったので、つい・・・ひぐっ・・・ふぇ!?」
サーナイトの言葉を聞いて嬉しくなったキョウイチは、彼女の頭を撫でてあげた。
「良かった♪つーか、俺の料理でそこまで喜んでくれたのはお前が初めてだ。」
それから彼女はゆっくりと時間をかけて料理を味わい、食べ終わる頃には表情も明るくなっていた。

「水飲むか?一応コップに入れといたから。はい。」
サーナイトは水の入ったコップを手渡されると、それをゆっくり飲み干した。
「ん・・・ごく、ごく・・・ふぅ・・・本当に、ありがとうございます。」
サーナイトの言葉に、彼はとにかく明るい笑顔で返した。
「そんなお礼なんていいって。・・・それから、風呂沸かしておいたから入れよ。膝とか傷だらけの砂まみれだし、固まった血がいっぱいついてるからな。洗わなきゃ身体に悪ぃだろ?・・・それで、風呂はここだ。」
「あ、はい。」
キョウイチに案内されて風呂場に行くと、そこには広い風呂場があった。
「きれいにして来いよな♪」
そう言って彼がドアを閉めると、サーナイトはまずシャワーを浴びる。彼女の身体から砂やホコリや血の混じった水が滴り、心も同じように洗われていく気がした。
それからシャンプーで髪を洗い、石鹸とスポンジを使って全身を洗い、最後にシャワーで流してしまうと、彼女から真っ黒な水が流れてくることはなくなった。
その後、彼女は湯船に浸かりながらキョウイチの事を考える。
「キョウイチさん・・・なぜかあなたの心の中がわかりませんでした・・・。あなたはいい人なのですか?これから私はどうなるのでしょうか・・・?」
迷うサーナイトだったが、お湯の温かさが次第に彼女の心も温めてくれて、迷いも無くなったようだ。
「あんなに素敵な笑顔ができる人です。絶対にいい人だと・・・信じます。」
それからサーナイトが身体を拭いて、リビングに戻ろうとした時だ。
「ゴラァー!てめー勝手に人の家に入りやがって!!」
「うるせーこの無駄遣いヤロー!金目の物出しやがれってんだ!」
リビングからキョウイチと誰かの大きな声がする。彼女が走って駆けつけると、そこでキョウイチと見知らぬリングマが殴り合っていた。
「キョウイチさんっ・・・!」
サーナイトがその様子を見て慌てていると、いつの間にかキョウイチの手数の方が多くなっていて、最終的にはリングマが一方的に殴られていた。
彼は立ったままよろけるリングマにとどめをさす。
「二度と来んじゃねー!!」
バキッ!
「グハァー!・・・きゅぅ・・・。」
リングマは倒れた。
キョウイチはリングマの首根っこを掴むと、勢いよく外に放り投げる。
「ふぅ・・・これでもう来ねーだろ。・・・サーナイト、大丈夫か?」
「あ、はい・・・強いんですね。」
キョウイチは得意げになって笑った。
「鍛えてるからな!・・・そうだ、もう寝るか?疲れてるだろ?」
彼に言われて初めてサーナイトは自分の疲れを意識した。
「はい・・・ふあぁ~・・・」
彼女の口から思わずあくびが出る。
「個室にするか俺の部屋にもう一つベッドがあるけど、どっちにする?」
「キョウイチさんの部屋にします。一人では心細いので・・・。」
「そうか。じゃあ・・・俺の部屋はこっちだ。」
キョウイチは彼女を自分の部屋に案内した。
「俺は風呂に入ってくるから、もう寝てていいぜ。早く寝ないと疲れも取れねーしな。」
「あの、キョウイチさん・・・」
ガチャッ
彼はサーナイトの言葉を聞く前に風呂に行ってしまう。
彼女は部屋の電気を消すとベッドに入り、側にある灯りを点けて今日のことを振り返る。
「私はキョウイチさんに買われたからすごく運のいいポケモンなのかも・・・でも、他のポケモンたちは・・・」
そんなことを考えているうちに時間が経ち、キョウイチが風呂から上がってきた。
「ん、サーナイトまだ起きてたのか?」
「あの、どうしても聞きたいことがありまして・・・」
「そうか。で、何だ?」
彼女は目の前の明るい表情に勇気をもらい、彼に尋ねた。
「キョウイチさんは、なぜ私を買ってくれたのですか?」
その質問にキョウイチは難しい顔をしたが、それもすぐにやめて答える。
「助けたかったから、だな。」
「助けたい理由は何だったんですか・・・?」
「理由なんて特にねーよ。俺バカだから、何も考えてねーんだ。」
その答えに、サーナイトはつい嬉しくなる。
「ありがとうございます・・・♪(あなたの心の中が読めなかったのは、考えてなかったからなんですね♪)」
「じゃあ、俺は寝るから。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
キョウイチがベッドに入ると、サーナイトも灯りを消して寝ることにした。
「・・・・・」
彼女が窓を見ると空に雲はほとんどなく、まぶしいほどに明るい月と星が夜空を照らしていた。
その強すぎる明るさは、彼女の心の中の寂しさを呼び起こす。
「キョウイチさん・・・」
「スー・・・スー・・・」
彼は既に眠っているようだ。
「・・・・・」
彼女は寂しさに耐えられなくなってベッドから出ると、音を立てないようにキョウイチのベッドに入る。
「キョウイチさん・・・」
サーナイトは、横向きに眠る彼の胸に顔を埋めた。
「(まだ知り合ったばかりなのに・・・ごめんなさい・・・でも・・・いい匂い・・・それに、強くてゆっくりしたいい音・・・)」
その匂いと強くて優しい鼓動から、彼女は安心感を得ることができた。
その安心感からか、サーナイトはいつの間にか眠ってしまったようだ。

時間が経ち、朝の6時になる・・・まだ日が昇っていない時間だ。
「(ん・・・キョウイチさんの腕・・・?)」
異変に気付いた彼女がゆっくり目を開けると、いつの間にかキョウイチが彼女を抱きしめる体勢になっていた。
彼の左腕は彼女の身体に回され、右腕は彼女の頭を肩に抱き寄せている。お互いの顔の位置も少し近い。
「(途中で起きたんですね・・・ありがとうございます・・・何だかドキドキして苦しいです・・・でも・・・)」
彼女は、彼の身体に両腕を回して身体を密着させた。





次にサーナイトが目覚めた時には彼はおらず、キッチンの方から音が聞こえてくるのがわかった。
「ん・・・キッチンですか。・・・キョウイチさん・・・」
彼女は夜の事を思い出し、ドキドキしてしまう。
そして彼の眠っていた場所に触れてみると、まだ温もりが残っていた。
「ん・・・まだ温かい・・・・・匂いもまだ残っているんでしょうか・・・」
サーナイトは顔を近づけて匂いを嗅いでみると、ほんのり匂いが残っているのがわかった。
「ん・・・こんなことするなんて私、いけないポケモンですよね・・・でも、もう少し・・・」
「サーナイト!飯できたぜ!」
「ひっ!!」
キョウイチがいきなり入ってきたので、サーナイトはビクッ!として飛び跳ねてしまう。
「そんな飛び跳ねてどうしたんだ?」
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
サーナイトはつい謝ってしまう。
「何謝ってんだ?・・・それより、飯できたから食うか?」
「あ、はい。」
彼女は赤くなった顔を見られないように、キョウイチの後ろをついて行った。

「今日の朝飯は、トーストに手作り木の実ジャムと、ヨーグルトにサラダだ。」
「キョウイチさんすごいですね。」
2人は『いただきます』を言ってから、朝食を食べ始める。
「『せめて一人で生きていけるようにはなれ』っつーのが親父の口癖でさ、家事と料理とサバイバルの知識と勉強とポケモンバトルと格闘技は叩き込まれたな。あの時は少し大変だったけど、こうして家も建ててもらっていい生活できてんのも親父のおかげだからな。すっげー感謝してんだ。」
「キョウイチさんのお父様は、とても良い方なのですね。(そんなに目を見られると、恥ずかしいです・・・)」
サーナイトはキョウイチと目が合う度に、照れて顔が赤くなってしまう。
「ん?お前顔赤いぞ?熱でもあんのか?」
「えっ!?わ、私は大丈夫です・・・んっ!?」
キョウイチは彼女と額をくっつけて熱がないか調べてみた。
「・・・微熱か?いや、気のせいか。大丈夫か?」
「はい。大丈夫です!(心臓が止まりそう・・・)」
サーナイトの顔はさらに赤くなっていた。

食事が終わると、キョウイチは顔を洗って服を着替え、出かける準備をしていた。
「キョウイチさん、どこかへお出かけですか?」
「ああ。ちょっと作戦会議と団員集めにな!」
「作戦会議?団員・・・?」
サーナイトにはそれが何なのか全くわからなかった。
「わかりやすく説明するか。・・・ポケモン売買組織の『ジェット団』を壊滅させるために、レジスタンスの『クリア団』が極秘に活動してんだ。お前を捕まえて売ったやつもジェット団の奴な。で、作戦を成功させるためにクリア団の作戦会議を終えてから団員を集めなきゃならねーってわけ。俺もジェット団が許せねーからクリア団に入ってんだ。」
「そうだったんですか・・・ふぇ!?」
キョウイチは彼女の頭を撫でる。
「お前だけじゃねー。他のポケモン達も絶対に助けて、二度とこんなことがねーようにする・・・。」
「キョウイチさん・・・」
「お前も行くか?クリア団は団結力が強くてみんないい奴だから、きっと楽しいと思うぜ?」
「はいっ!一緒に行かせてもらいます。」
2人は10分ほどかけて家の戸締りを済ませると、クリア団のアジトへ向かった。

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Last-modified: 2013-04-21 (日) 00:00:00
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