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初めての救助 (下)

/初めての救助 (下)

ヤシの実

初めての救助 (上)の続きです。 それにしても、自分はまだまだ習わないといけない事が多いなぁ……

初めての救助 (下) 


 日が昇って、まだ間もない頃、人気の無い小道を歩くセルシオ。キャモメが空を気持ち良さそうに飛んでいる。
 淡い朝の日差しの祝福を受け、小汚いカバンを首から提げて、通りの少ない道を一匹で独占。気持ちの良い風に煽られながら進んでいく。セルシオの日常だった。しかし、今日は何時もより早目の起床の為に、眠たい顔をしていた。
 寝ぼけ眼が直らず、半開きなまま歩いているが、危険は無い。歩きなれた道だから、視界が狭くても体が道筋を知っているから、外れる事は無い。だから安心して前に進める。
 余裕ぶって進みながら、ふわぁっと大口開けて欠伸をした。もう少し寝ていれば良かったかな、と早起きした事を今になって後悔する。
「今日は良さそうな依頼ないかなぁ……」
 眠気を誤魔化そうと別の事を考える。
 地下繁華街『ダグドリオ大道り』に入り、ギルドの掲示板に更新して貼られてある依頼書を見にいく。探検家の日課のようなものだ。
 出来れば、内容が簡単で苦労の少ない、報酬の多い依頼があればなと彼は考えた。しかし、そんな事があるはずないと自分の甘えを捨てた。
「高額な報酬かぁ……」
 生活が苦しいセルシオにとって、高額な報酬は憧れの的だ。一度で良いから、難関な依頼をこなしてどでかいポケをこの手に掴んでみたい。夢のような話だが……
 夢の話――ドーブルの老人と会った時の事をふと思い出した。秘薬の実験の見返りに、ギルドの追放の撤回と高額な報酬の依頼を約束されたのを思い出す。
 あれから三日経った。住みかのポストを除いても、空ばっかで何も入っていない。ブールは仕事を提供すると言っておきながら、あれから連絡は全く無い。毛繕いをしてもらった体毛はすっかり元の形に戻っていた。  
 今は猶予期間をもらって追放は間逃れているが、それも仕事が入ってからの事。上納金を払ってない状態でこのまま何も音沙汰無しが続けば、どの道探検家業を続けてはいられない。
 焼け石に水かもしれないが、少しでも依頼をこなしてポケを作らなければならない。しかし、この三日間はろくな依頼がなく、成功した依頼といえば初級の探検家がやりそうなアイテム集めだけ。収入もオニスズメの涙程度。
 このままでは何れ、兄妹で路頭に迷う光景が現実のものとなる。淡い期待は涙を呑んで忘れ、現実的な仕事をこなすしかない。
 そう考えている内に、何時も来ている半球状の建物のある岸壁に辿り着いた。落ち着いた海がざあぁと岸壁を波打つ。
 周りにはまだ誰も居なかった。探検隊の中で自分が一番早く着たのじゃないかと、ほんのり優越感に浸る中、ダグドリオの大通りに入ろうとしたその時、背後から声が掛けられた。
「来たな」
 誰も居ないはずだった背後から、自分を呼ぶ声。驚きながら振り返る。その声の主に、見覚えがあった。
「あなたは……確かギルド員の、ホーム……」
「さんを付けろ弱小探検家。まぁいい、朝早くここに来るとは分かっていたが、思ったより早く来るとはな、タイミングが良い」
 きつい言い方をするも、ホームは嘴を吊り上げて機嫌良さそうに笑った。セルシオの方に歩み寄る。
「貴様、三日前の話を覚えているか?」
「ブールさんの実験の手伝いでしょ、覚えてますよ」
 ニヤニヤしたホームを流すように答える。そんな話を何故、自分を待ってくれてまで話すのか分からなかった。
「なら話が早い、これをお前に渡す」
 ホームは羽の間に挟んだ、一枚の手紙をセルシオに差し出した。ピンク色の封筒だった。
「これは何ですか?」
「私がさっき言った話を聞いたら、分かると思うのだがな? 察しの悪い奴だ」
 毒を吐く言い草にムッとする。しかし、込み上げてくる期待感が、沈んだ心を躍らせる。もしかしてこれは――
 黙って差し出された封筒を受け取り、封を開けた。中には随分綺麗に紙を使っている手紙が入っていた。ほんのり香る甘い匂いに心が躍り、細かく折りたたまれた手紙を広げた。
 胸が高鳴り、若干震えながら、一番上の冒頭から読み上げる。手紙の内容はこうだった。

 依頼の詳細
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 何日か前にダンジョンに入って行ったニューラが帰ってきません。もしかしたら帰れない状況にいるかも知れません。
 怪我をしている可能性があると想像し、一刻の早く無事を確認したく、救助をお願いします。

 依頼主  :不明
 目的   :ニューラの救出
 目的地  :桃色の花園
 制限・条件:無し
 難度   :E
 報酬   :20000ポケ・その他アイテム等など
 その他詳細:ニューラの特徴について、右腕に紫色のバンダナを巻いています。情報は以上です。
 指名チーム:ライメイズ様へ

 記されていた内容を目に、持っていた左前肢がブルブルと震えた。一番下に記されている文字に目に付いた瞬間、感動か衝撃とも受け取れる感情が込み上げてきた。
 間違いじゃないのかと、目を疑い、擦っては見直す。それでも間違いではなかった。指名欄に、ライメイズ様へとちゃんと書かれてあった。
 信じがたい事が自分に起こり、震えが止まらない。嘘ではなかった。弱小探検隊であったセルシオを指名した依頼が着たのだ。
 だが驚いた事はそれだけじゃなかった。報酬欄に書かれてある内容にも、目が飛び出そうだった。二万ポケだ。その他アイテムも報酬に含まれているが、そっちには目が行かなかった。
 二万ポケとなると、弱小探検隊のセルシオから見てかなり大金と呼べる額だ。強豪な探検隊からしても、その額は破格と言って良い。
 禁句だが、たかが救助に莫大な報酬を用意するなんて、信じがたい話だ。
 セルシオは衝撃のあまり、聞きなれぬ嗚咽を漏らしていた。視点の定まらない瞳をしているが、表情は絶望の窮地から救出されたような歓喜に満ち溢れていた。
「約束通り、高額な報酬のある依頼書を持ってきた訳だ。きっちり仕事をしてもらうぞ。おい?」
 ホームが言うも、言葉が耳に入ってないのかセルシオは気づかない様子で依頼書を震えながら見ていた。
「二万ポケ、二万ポケ……!」
 報酬の数字を繰り返し言葉にするだけで、ホームに気が回らないでいる。その様に呆れて溜め息を吐くと、セルシオから乱暴に依頼書を取り上げた。
「あっ……」
 取り上げられた瞬間、玩具を取られた子供の眼差しをホームに向けた。
「聞いているのか貴様は?」 
 ポカンとするセルシオに苛立った口調で言い、睨み付ける。放っておいたら何時までも話を聞かずに、穴が開くほど依頼書を見ていたに違いないと考えた結果だ。
「す、すみません……」
 ようやく我に返り、慌てて謝った。
 今まで千を越えるような報酬のある依頼をこなした事がなかった彼にとって、桁を超えた額を見るのは初めてでひどく動揺してしまった。
 ホームは「まぁいい」と返し、取り上げた依頼書をセルシオに返した。
「これを持ってブールの所にさっさと行くがいい」
「はい、わざわざありがとうございます。お使いご苦労様です!」
 興奮しながらダグドリオの大通りに通じる階段に向かって走り出した。その背後でホームが、誰がお使いだ! っと怒鳴り声上げたのも無視して、素早く階段を駆け下りた。
 広々とした地下空間が目の前に広がる。年中明るく照らされている空洞には、露天の準備や朝の仕事を坦々とこなしているポケモン達の姿が確認できた。
 露天のポケモンは、大きな風呂敷に持ってきた商品を、自分たちの棚に置いて飾っている。他には、大量の木の実や荷物を運んでいるゴーリキーが忙しくあちらこちらに行って、店の商品を納入をしていた。
 店を出すポケモンの朝は何時も早い。冒険家は後から来ては、探検に必要なアイテムなどを購入する。それがダグドリオの大通りと呼ばれた地下繁華街の朝の姿だ。
 セルシオは、店の準備で勤しんでいるポケモン達を横切って走る。まっすぐにギルドのある方へと向かって行く。
 露天の列を過ぎ、飯店の列に入る。子供の様にはしゃいで移動する家に、危うく料理の材料を運んでいたブーバーンにぶつかりそうになった。
「あぶねぇな、もう!」
「ごめんなさーい」
 怒るブーバーンに、振り向きながら軽々と謝って、尚も走り続ける。止まってなどいられなかった。
 心がウキウキする。これでもう、ポケに困り続けた生活ともおさらばできる。苦労を掛け続けた妹に、十分に甘えさせられる。
 以来の成功の有無を考える事もなく、救いのなかった人生に、救いの光が差し込んでいるこの状況を喜んでいた。
 激しい動きで額に汗が流れるているのにも気にせず、口元を綻ばせていた。
 二万ポケが入ったら使い道はどうしようかと、そんな事を考えている家に、セルシオはギルドの門前に辿り着いた。そこで一時動きを止めた。
 門は開いているのに、出入りするポケモンはセルシオを除いて誰も居ない。
 呼吸が乱れ、今になって走り続けた疲労が体を襲う。だが止まってなど居られずにすぐに走り出した。
 中に入り、掲示板のある方向をチラッと見る、そこにも誰も居なかった。放置されていた依頼書がそのまま残されている。そんな物に構っていられず、その場を過ぎて、ブールの居る部屋の方へと向かって行った。
 やがて、三日前に来たブールの部屋へと辿り着き、セルシオはやや緊張した面持ちで扉を叩く。それと同時に、悪臭に備えた。
「誰じゃ……ってセルシオ君かぁ! 三日ぶりじゃのぉ。良くぞ来てくれた。ささ、中に入りなさい」
「は、はい!」
 中から出てきたブールはセルシオを見るなり機嫌良さそうに笑み、中に招き入れる。部屋の中からつーんと漂う臭いを堪えてその言葉に従った。
「さてさて、早速じゃが、ホームの奴からはもう依頼書を受け取っているな?」
 扉を閉めたブールが聞く。
「はい、仕事の話は本当だったのですね。僕、今とても嬉しいです!」
「そうかそうか、ワシも嬉しいよ。やっとワシの秘薬が世に試される時が来たのじゃから。ふぇっふぇっふぇ」
 ブールは高らかに笑った。セルシオは吊られて笑顔になった。
「あの、ブールさんの言う秘薬ってどのタイミングで飲めばいいのですか?」
 薬と言うなれば、探検活動中に傷ついた状態で飲むのが本来の正しい使い方だ。活動中に少々わざと手傷を負ってから飲めば良いのか聞いた。
「その必要は無い。救助する相手が見つかれば、その場でお主が飲めば良い。効果は時期に出てくるからな」
「えっと、相手にも飲まさないでいいのですか? 依頼には救助する相手が怪我をしている可能性があると書いてありますけど……」
「心配には及ばん。ワシは前に言ったが、これは接待目的の依頼じゃ。本当の救助ではない。だから怪我の可能性などゼロじゃ」
 そう言えば、ブールの提供してくれた仕事は、あくまで接待だと聞かされていたのを思い出した。しかし、秘薬の実験と接待との繋がりに何の意味があるかと疑問が残った。
「ど~でも良いけど、坊やが来たんだからさっさと準備に入らせてくれないかしらぁ」
 セルシオの背後で、突然声がした。驚いて背後を見やると、テーブルの影に現れるように、シャルルが姿を現した。
「シャルル……さん。居たんだ……」
「失礼ねぇ。背後霊でも出てきたみたいに驚いちゃって。そんなんだからガキなのよ」
 相変わらずな物言いにぐぅの音が出る。三日前に破ってしまったクッションの事、まだ根に持っているに違いないとセルシオは思った。
「おぉ、そうだったな。それじゃさっそくじゃが、シャルルの部屋に行って毛並みを直してもらってくるんじゃ」
「はぁ、よーやくこの臭い部屋から出られるわぁ……」
 何時から此処にいたのか分からないが、此処に来るまで大分待っていた愚痴を漏らした。
「ほら、さっさとアタシの部屋にいくわよ~坊や」
「また坊やって……」
 文句のひとつで言い返そうとしたが、寝起きと悪臭の部屋で待たされていたシャルルの不機嫌そうな顔を見て、止めた。
 しぶしぶと、尻尾を不機嫌そうに振るシャルルの後に着いて行った。
「それじゃ、用事が済んだらまた来てくれ」
 出る際にそう言ったブールを後に、二匹は悪臭の篭る部屋から出て行った。

「はい、終わりぃ~」
 一時間を掛けた、心地の良い一時が終わった。
 三日前と同じく、荒れまくりだったセルシオの体毛は見事にサラサラで無駄のない美しさを取り戻していた。
 端整な顔がサラサラした体毛にマッチして、見事な魅力が引き立っていた。
「前回と同じね。坊やの顔が良いだけだあって、毛繕いする方にも余念なく出来るってもんだわ」
「……その坊やって言うのやめてくれませんか?」
「ハッ、何を偉そうに。クッションのひとつでも弁償してからそんな台詞吐いてみたらぁ?」
 痛い所を突かれ、ぐうの音も出ない。せっかく外見は整ったのに、表情は弱々しく歪む。
 シュンと落ち込む様に、シャルルは鼻で笑う。
「でもまぁ良かったんじゃない? 二万ポケ払う買い手が見つかったんだし、後はあんた次第ね」
「あ、あのぉ。気になってた事があったのですが」
 しぶしぶと、質問しづらそうに口を開いた。シャルルは何だ、と顔を向ける。
「仕事は救助ですよね? 依頼書にも書いてあったし、それなのに、何でブールさんもシャルルさんも、皆『買う』って言うんですか?」
 前々から気になっていた事だった。三日前も、ブールは言っていた。救助するのに、買う意味の繋がりがずっと疑問に思っていた。
 聞かれたシャルルは困った顔で唸った。
「そのぉ、ブールからは何も聞いてないわけ?」
「はい、話の途中で何処か行ってしまったので。それに……」
「それに?」
 もうひとつ質問しようとしたが、聞くか聞かないか迷う。気になっていたのは、買うと言う理由だけじゃなかった。
 しかし、余計な事かもしれないと、首を振って聞くのを躊躇った。
「いえ、何でもありません。さっきの質問は忘れて、早く行きましょう」
「えぇ……そぉだ忘れてた。ちょっと外で待ってなさいよ」
 一緒にブールの元に行く手前で、シャルルが用事を思い出す。彼女の言葉に従い、先に扉から外に出た。
「ふぅ、さっさとブールさんの部屋に行くかぁ……」
 シャルルの部屋から出た途端に、ドッと疲労が出た。クッションの件で未だに憤りを持っていた彼女の視線が刺さりっぱなしだった。
 毛繕いをしている最中もそうだった為に、知らず知らずに気疲れしていた。早く弁償しなければ、ずっとあの視線に悩まされるに違いない。
 彼女の部屋から逃げ出すように、早歩きでブールの居る部屋へと向かった。
 再び悪臭の篭る部屋に戻る。一度嗅いだ臭いは既に慣れてしまい、大した覚悟も必要なくなり扉を開いた。
「おぉ、三日前と変わらず美しい様になったのぉ」
「えぇ、腕の良い彼女のおかげです。それでブールさん、持って行く秘薬はどれですか?」
「これじゃよ。これを君の体で体感してもらいたいのじゃ。安心せい、有害成分のある物は使っておらんから、身体に問題は無い」
 きっぱり言い放つが、気のせいか最後に「多分な……」と聞こえた気がしたが、セルシオは気のせいだと聞き流した。
 紫色のした子袋を渡され、前肢で受け取る。その後に扉からシャルルが姿を現した。
「うぅ~、くっさぁ……おじーさん、前にも言ったけど、この子の監視役としてアタシも行くから」
 鼻を抑えながらシャルルが言う。
「あぁ、秘薬の成果を第三者のお主にも確認してもらいたいからな。しっかり頼むぞい」
「別に監視役なんて……こんな大金な報酬をすっぽかす訳ありませんよ」
 セルシオが割って入る。何しろ、この思いがけない依頼に一番胸を高鳴らせているのはセルシオ自身なのだから。
「そうじゃな、しかし済まんなセルシオ君。本来ならペリッパー空配達で届く予定じゃったが、何せ大至急な指定じゃったから、わざわざホームに届けさせたのじゃ」
「そうだったのですか……でも僕構いません。むしろ感謝したいくらいですし、早くニューラの救出を終わらせて、秘薬の結果の報告に戻ります」
 細かい事を考えるのは止しにして、ニューラの救助(接待)と、ブールの本来のお願いである秘薬の効果を試し、報告に戻るだけ。それだけを頭の中に残すようにした。
「頼むぞ、十分に頑張って来てな?」
「はい。それじゃ、言って来ます」
 引き締まった表情で告げるも、嬉しさの余りに口元が吊りあがっていた。踵を返し、ブールの部屋から出て行き、シャルルも背後から着いて行った。
 扉が閉まりきり、一匹の老人だけが残された。ブールはふぇっふぇっと笑いながら、独り言を言い始めた。
「せいぜい満足させてやってくれよぉ、その為の秘薬なのじゃからなぁ……」
 誰も居なくなった部屋で、ブールは影の色を深めた、薄ら笑みを浮かべた。

 
 花の蜜が香る桃色の光景。辺り一面、淡い桃色の花を咲かした花達が風に靡き、ソワソワと揺れる。
 ポケモン達が住む場所から遠く離れ、途中の山道を越えた道中に、それは咲き乱れるように存在する。
 ずっと先を見ても、見る者の心を圧倒してしまうほどの、華やかで美しい大光景。大自然が生んだ芸術と言うべき花園は、見る者の心を奪うほどの絶景。
 何処までも広がる桃源郷の様な神秘な世界。心奪われた者ならば、誰もが一度は踏み入れてしまいたい極楽の地と言えよう。
 だが、けっして素晴らしいと言う安易な考えで、その地に迂闊に踏み込んではいけない。花の群れが誘い込むその先は、招かねざる者を罠に陥れてしまう。甘い蜜でさそい、生きる者の心を奪う罠。そう呼ぶに値する。
 見惚れて入ってしまえば、複雑に入り組んだ地形に惑わされ、そこから出る事が出来なくなる。
 ここは、探検隊が活動の場として知られているダンジョン、桃色の花園だ。
 一見、唯の花園だが、遠くから見ると誰もがダンジョンかと疑い、目を曇らせる。だが、いざ入ると花の巨大さに驚かされる。
 淡い桃色をした植物は近くで拝見する信じ難いほどに背が高い。身長をポケモンで表すとすれば、ちょうどポニータ一匹分に相当する。人間用語で言うならば一メートルはあると言う魑魅魍魎なサイズだ。
 幾多にも咲き乱れる花々が、進入する者の視界を奪い、迷わせる。『美しい花には棘がある』と偉い誰かが言っていた言葉が思い浮かぶ。ここはそういう場所だ。
 そんな場所に二匹のポケモンが、巧妙に入り組んだ花のダンジョンを進んでいる。
「どのくらい進んだかしら? 目的の場所は後どのくらいよ?」
 質問をしたのは古びた探検バッジを胸に付くたシャルルだった。
「後どのくらいって言われても、目的の場所まではちゃんと記入されてませんでしたし……」
 答えたのは同じく探検バッジを胸に付けた、端整な顔つきに整った体毛には不釣合いな小汚いバッグを掲げたセルシオだ。
 その場で止まり、大きな紙をを広げる。今自分達がどの辺りまで進んでいるかを表記している。
「はぁ……ダンジョンを記すなら、目的の場所書いときなさいよぉ……!」
 シャルルは疲れを見せて、セルシオの背後で猫座りする。
「僕に言ってもしょうがないでしょ……」
 二匹とも、入ってから結構の時間が経っている。ダンジョンの後半部分と言った辺りにまで来ていた。
 風景は淡い桃色の花ばかりで、これと言った違いは見られない。
「セルシオぉ、リンゴあるぅ?」
 疲れた表情で、メイクされた爪でクイクイとリンゴを要求する。
「もうですかぁ? あんまり多く持ってきてないんですから、無茶しないでくださいよ~」
 セルシオが不満を垂れる。
 急な依頼とあって、慌てて準備をしてきた為に持ってきたアイテムは、回復効果のあるオレンの実四つと、食料のリンゴ三つのみだった。後はブールに頼まれた秘薬がセルシオのカバンの中に入っている。
「いぃからよこしなさい~。空腹は美の敵なんだからぁ」
 なんて我侭を言いながら、腹の虫を鳴らした。これで二つ目だ。セルシオはまだ一個も手をつけていない。
 しぶしぶと言った感じで、自分のカバンの中から赤い果物を取り出す。それを咥えてシャルルの方に投げる。彼女はそれを口でキャッチし、すぐさまかぶり付いた。
「はぁ~生き返るぅ。それにしても、まさか急な依頼をしてくるなんてね。アタシは調査員としての仕事があるのに……」
 ぶつぶつ言いながらリンゴを食す。
「シャルルさんって、調査員だったんですか?」
 セルシオが尋ねると、彼女はきょとんとした顔を向ける。そして食べながら言う。
「そーよ。探検隊がよく行くダンジョンの現在の状況とか、異変がないかを絶えず調べてはギルドや掲示板に告示するの。異変があって、探検隊にもしもの事があったら大変でしょ?」
「そうですね。ダンジョンの情報は、僕ら探検家には欠かせませんから」
 セルシオを含めた他の探検隊は、常にダンジョンの様子の確認を怠らない。ダンジョンと言う魔物は、不規則的にその形を変えている。
 同じダンジョンに入っているつもりでも、まるで違う世界にでも入ってしまったかのように、絶えず迷路の様になっている。形だけでなく、気温の変化も不規則だ。
 雨が降るかと思えば日照りに変わったり、時に砂嵐が起きたり、更には雹が降り注ぐ時もある。まるでダンジョンその物が生きているかのように。
 また、そこにいる『輩』も何かしら変化がある。掲示板の隅にそのダンジョンの詳細が記載された紙がある。探検家からしたら、依頼の成功を左右する重要な情報なのだ。
「そのありがたい情報を、アタシが探って様子を見ている訳よ。感謝しなさいよ坊やぁ」
「分かってますよ。だから今日の桃色の花園が安全だと知っているのでしょう?」
「そうねぇ。だから大した敵なんて出てこないわよ。最も、こんな低レベルのダンジョンで朽ち果てちゃうような探検家なんて、早々いないでしょうけれど?」
 桃色の花園と呼ばれるダンジョン。危険と言っても、他のダンジョンと比べると大した事は無い。
 ここは探検家を希望するポケモンが、入門用の試験の場として使われている。その他は初心者探検隊がレベルの低い依頼でやってきたりもする。言わば初心者向けのダンジョンと言っていい。
 よほどの事が無い限り、瀕死になって帰って来る事は無い為に、探検活動の慣れ目的で利用される事が多い。
「だからと言って僕の分まで食べてしまって、空腹で倒れるなんて事、嫌ですからね」
「アハハハッ、こんな低級ダンジョンで空腹で倒れるなんて、バカの見本よそれ」
 リンゴをしゃりしゃり食べながら、セルシオの忠告に馬鹿笑いする。
「なら、ちょっとは遠慮してくださいょ……」
 愚痴りながら、地図に目を走らせる。ダンジョンに入ってから、大分歩いた。もうすぐ救助目的であるニューラに遭遇してもいいはず。
 歩けど歩けど、自分達の視界を阻む巨大な花の群ればかり。鼻腔をくすぐるように香る蜜にも、そろそろ飽きてきた所だ。
「小休憩はそれくらいにして、そろそろ進みましょう。シャルルさん」
「はいはい」
 適当な返事を返し、すでにほとんど実が無くなったリンゴの芯をポイッと道端に投げ捨てた。あまり品のある行為じゃない。
 呆れながら、シャルルが立ち上がる姿を見て自分も歩き出した。
「このまま行くと、最終辺りまで着いてしまいそうですよ?」
「そうねぇ、彼女は行き着く場所で待ってるのかしら……ん?」
 話の途中で、シャルルは髭がピクンと震え、そして身構える。何事かと、彼女を見やる。
「フフン。いるわよぉ。身の程知らずの雑魚ちゃんがぁ」
 それを聞いて、セルシオも身構える。電流の通う爪を伸ばして警戒する。
 道の角で何かの影が動いているのが確認できる。それは、こちらに向かって歩いている。
 二匹は緊張せず、落ち着いた表情で角で蠢く影に注目する。やがて角から飛び出してきたのは、一匹のプリンだった。
「プリンね、やっぱり雑魚だわぁ」
「これくらいなら、僕がやります」
 セルシオが前に出る。プリンはセルシオとシャルルを確認すると、咄嗟に警戒するように膨らんだ。
「プププ……ププゥーッ!」
 元の大きさの何倍にも膨れ上がり、セルシオを威嚇する。しかし、セルシオは気にする様子も無く構える。
 体毛から電流がビリビリと流れだし、放電の準備を整える。そして、溜まった電流を身に纏い、プリン目掛けて突進した。
「プリュリュゥゥッ!?」
 セルシオの纏った電撃がプリンにぶつかり、放電する。黄色い火花を散らし、空気の抜けた風船の様にプリンはしぼんでいく。
「プゥリィ……」
 その一撃でノックアウトしたプリンは、目をグルグル回したまま立ち上がらなくなった。
「やるじゃない坊や?」
「このくらい普通です」
 ペチャンコになったプリンを横切り、さっさと前に進んだ。シャルルは目もくれずに戦闘で毛並みを汚さずに済み、機嫌良さ気に着いて行く。
「やっぱさぁ、セルシオとしてはあんなレベルの相手より、もっと強い相手と戦ってみたいと思わない?」
「何です、突然?」
 唐突な事を聞かれ、隣に来たシャルルを横目に質問し返すと、彼女はニヤニヤした顔で続ける。
「ほらぁ、雄だったらもっと強そうな相手を前にして、雌にいる雌の前で見栄張ってみたい気持ちとかあるでしょ? アタシに格好良い姿を見せたいなぁって……」
 聞き返すのが馬鹿らしいほどくだらない質問だった。無視しようかと思ったがそれも失礼だと考え、会えて聞き返す。
「なんでそんな事思うんです?」
「雄だったらやっぱり、格好良い所見せてモテたいとか、そう思わない?」
「思いません。何が言いたいのですか」
 きっぱりと言い放った。シャルルは求めた答えが違い、つまらなそうに言う。
「セルシオってガキンチョだけど、容姿は良いじゃなぁい。それなのに何処か格好がつかないって言うか、弱々しいって言うか、せっかくのモノが台無しって感じがあるのよぉ。
 もう少しさ、雄らしく堂々としたらどうなのかって事。今恋してる雌に振り向いて欲しいとかさ……」
 余計なお世話だと顔を濁らせる。異性の話を持ち出されても、今頭の中にちらつく高額な報酬で頭がいっぱいなのだ。
 それだけでなく、三日前に酔っ払いに絡まれた時に言われた台詞を思い出してしまい、暗い気分になった。
「着飾った生き方しても、腹が膨れる訳じゃ無いです。今生活していくだけで精一杯で、他の事に興味なんて無いです」
「異性に興味ないの坊やは? その年になったら誰かと付き合って見たい女の子とかいるでしょ。何処かで女の娘の方から声を掛けてきたりしない?」
「そんなの、別に迷惑なだけですから……」
 ツンを含める言い方をすると、変わった者でも見るような目で見られた。
「そりゃ勿体無い話よねぇ。あんたがポケに困っている話は大体ブールやホームに聞いたけどさ。だけど生活する事ばかり考えて、ストレスも溜まってるんじゃなぁい?
 そういう時はやっぱり女の子と遊んで発散したいって思ったりするでしょ。可愛い娘と一発ヤったりとかさぁ~」
 気を利かしているつもりかもしれないが、とても雌の言葉とは思えなかった。
 だがシャルルの言う通り、確かに今の生活にストレスは感じている。ギルドからの追放の件や、ポケの無い生活、何時までも来なかったブールの仕事の話。不安と苛立ちが募り、押し潰されそうになった事は一度や二度ではない。
 鬱憤を晴らしたいのは山々だが、妹を支えていかないといけない責任感がある。迂闊な無駄遣いは決して許されない。誰に同情を求めず、暗い気持ちを抱えて今日まで生きてきたセルシオだからこそ、色事で逃げるわけにはいかないのだ。
「余計なお世話です。今を生きるのに苦労している僕にとって、遊びなんて時間の無駄なんですよ。暴発して発散する事に勤しんでしまったら、その場で足元を救われのがおちです……」
 気分を盛り上げようとして切り出した会話なのに、セルシオは俯いて暗くなってしまった。
 シャルルは気まずくなり、空気が重くなるのを感じた。それでも盛り上げようとテンションを高くして続けた。
「だ、だけどさ。そんな苦しい生活とももーすぐおさらばでしょぉ? 高いほうしゅーゲットしてさ、それで可愛い雌をナンパしたり出来るじゃないかな……」
「シャルルさんのクッションの弁償もしないといけないのに、そんな余裕があると思いますか?」
 忘れていた話を思い出し、そうだったと苦笑――と言うか、弁償して欲しい本人が忘れてはいけない事だ。
 セルシオは溜め息吐き、三日前に見せたあの憤怒の怒りはなんだったのかと言いたくなった。
 いっそ忘れてくれれば良いのだがと、セルシオは思わず口にしてしまったクッションの件について浅はかな自分を呪った。
「ま、まぁそれは置いといて、何れはしてもらうとしてさ。ほんの少しは、パァっと使うのもいいんじゃない? 溜まってるんでしょ?」
「何がですか!」
「あそこの事よ」
 セクハラ発言に暗い気分だったのが怒りで塗りかえられた。顔をやや紅くして言うも、軽く返されてしまった。
 派手なお洒落とセンスをしている癖に、そういう事には遠慮の無い所があり、セルシオの中での雌のイメージが壊れてしまう。
 元々、妹以外の雌に特別な感情を持った事などなかったが……
「もう止めてください! 贅沢な考えなんて、考えなければ発散の必要なんて無いんですから!」
 恥ずかしそうに怒りながら、そっぽを向いた。そんなセルシオを、彼女は特別な天然記念物でも見るような目で見やる。
 やがてシャルルは、急に冷静な顔を浮かべる。そして、誰にも聞こえない声でボソッと言った。
「どの道発散はする事にはなるけどね……」
「……?」
 僅かに、彼女が何かを言った言葉が聞こえたような気がしたかが、聞き取れなかった。聞き返そうとしたが、何故だか躊躇った。
 それにしても、救助相手はまだかと考えを切り替えた。広いフロアに辿り着く事は幾度とあったが、ニューラはいない。
 時折、小さい敵に遭遇する事があったが、難無く打ち倒す。このダンジョンは初心者向けにぴったりな雑魚しかいないからだ。
 最後のリンゴをセルシオが食べ終え、後は進むのみとなった。そして二匹のダンジョンは、いよいよ最終部に来る。
「もうすぐ最終部ですよ」
「そうねぇ……」
 歩きながら会話する二匹は何時の間にか最終部にまで差し掛かっていた。この時セルシオは、この依頼はもしかして悪戯じゃないのかと不安が横切った。
 依頼主の名前が不明と記入されていたのを思い出す。ぬか喜びさせて地獄に叩き落す魂胆かと想像し、冷や汗が流れる。もしそうならば、これほど最悪なものはない。
 しかし、そんな不安は案外打ち消された。シャルルの発見が彼を救う。
「セルシオ。あそこに居るのってニューラじゃない?」
 シャルルが前肢を指す方向に目を移す。視界を遮る花が途中で途切れている。そこは桃色の花園の終わりを告げる、巨大な樹がある場所。
 ニューラは肢を組むようにして樹に持たれかかっているのがわかる。間違いない、依頼人だ。
 依頼は嘘じゃなかった事を確信し、嬉しさと期待感で胸がいっぱいになり、居ても立ってもいられなくなるとすぐさま巨大な樹の方に走り出す。背後で自分を呼ぶシャルルの声を無視しながら。
 良かった、これでもう……自分とリンを路頭に迷わせる事なく、これまで通り暮らしていける。依頼人に深く感謝しなければ……辛いばかりだった自分に終止符を打つべく、ニューラの元へ駆け寄った。
 
 無限に広がると思われる桃色の花園を、全て見下してしまうほどの圧倒的な存在感のある巨大な樹。
 そこに眠りの姫のように、肢を組んで顔を俯かせている黒猫。黒い体毛風になびかせる。頭部と胸にある金色した宝石模様が光る。
 白く光る鉤爪は力なく、だらんと地面に落としている。左右の色の違う、赤色と黒色した長いを左右にペタンと寝かし、紅い木の葉の様な尾が覗く。
「このポケモンだよな……?」
 今一度、カバンから依頼書を取り出し、再確認してみる。依頼書には確かに『右腕に紫色のバンダナを巻いている』と書いてある。
 セルシオは救助目的でありニューラに歩み寄る。彼女は近づいても動く様子を全く見せず、静かな鼻息の音だけが聞こえた。まるで寝ている様子だった。
 なんて余裕なんだろう、と半分呆れつつ、地に着いた右腕に目を向けた。風に靡いてユラユラ揺れる紫色のバンダナが、確認できた。
「やった、このニューラで間違いないみたいだ……」
 ようやく会えた。初の救助の成功と、待ち遠しい報酬に胸が高まっていく。
 高鳴る興奮をなんとか抑え、セルシオはブールに言われた約束を思い出し、カバンの中から紫色の鼓袋を取る。
 中を開けて袋を逆さにして肉球の上に広げる。コロッと転がる丸い小さな塊が三粒ほど。セルシオはやや躊躇った後、覚悟を決めて全部をグッと飲み込んだ。
「ふぅ……」
 改めてニューラを見やる。相変わらず寝ている様子で目を閉じている。
「これでもう安心だ。やったんだ……やったんだぁ!」
 救助目的で着たのに、まるで自分が人生の救助をされたみたいな感覚に囚われ、喜びを露にした。
「やった! やったぁ!」
 嬉しさのあまり拉げた顔で笑みを作り、何度も喜びを叫んだ。
「それは良かったね。びしょーねん君」
 心躍らせる彼に祝福の声が上げられる。その声に虚を付かれ、目をニューラに落とす。
 視線の先には、流し目でこちらを見返す黒体毛の美少女。紅いの琥珀な瞳に自分が映る。彼女はセルシオを目にするなり、涼しそうな笑みを浮かばせた。
「え、あれ……起きてたのですか?」
「うん。ずっと前から起きてた」
 澄んだ声で質問を返す。
 セルシオは、さっき熟睡していると思ってたニューラの前ではしゃいでた自分が恥ずかしくなり赤面した。
「あ……うっ……そうでしたかぁ」
「うん。そうだよ」
 無垢な返事の返しに、苦笑で返すしか出来ない。
 ニューラは若干混乱しているセルシオに、曇りない瞳で見続けている。
「あ、あの……」
「うん。何?」
「お体は、大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫」
「怪我は、無いですか……?」
「うん。無いよ」
「それは、良かったですね……」
「うん。良かったね」
「……」
 坦々としたやりとりにセルシオの方がやりきれなくなり、次に何を言えばいいのか迷う。その反対にニューラは何とも無いような涼しい笑顔だ。
「それで、どうしましょうかね……?」
「うん。どうしようかな」
 自分でも何が言いたいのか分からず、次に何をするかニューラに尋ねてしまった。それを同じ単語でさらっと返してきた。
「……」
 何か言わなきゃと思考をフルに活用させるも、最適な言葉が見つからない。
 自分は今、救助をしているはずだ。なのに何で迷ってなければならないのだろう。
 実際、救助をするのはこれが始めで、今までやってきたお尋ね者なら相手を倒して捕縛したりアイテムを奪い返したりした後で、依頼人に持って行く依頼ばかりだった。
 しかし相手はお尋ね者じゃなくて、救助が必要な相手だ。どう対応して良いか分からず、汗ばかりが滲み出た。
「こら坊や、何黙っているの?」
 何の会話も無く、ニューラと過している間に、シャルルが追い着いてきた。
「あ、その……救助者に会えたのは良いのですが、この後どうしたらいいか迷っちゃって……」
 セルシオが言うと、シャルルは肩をがっくり落とし、呆れ果てた顔に変わる。
「あんたさ、探検家でしょ? いままで何回探検活動やってきたのよぉ……」
 叱責されて言い返す言葉が無く、情けなさでへこんだ。
「探検バッジをかざせば良いのよ。この場合はね……」
「そ、そうでしたね! 今思い出しました!」
 汚名返上と言わんばかりに張り切りだす。探検家入門の際に教えてもらった事を思い出した。
 頬を赤らめながら胸に着けている探検バッジを取り外す。これを救助者の前にかざせば、バッジの不思議な力によって、ダンジョンから外へ出してもらえるのだ。
 詳しい理由は知らないが、探検バッジには特別強い力が備わっている。これを使って、救助相手と探検家を危険無くして、安全な所まで運んでもらえるのだ。
「それじゃ、依頼人が心配しない内に……」
 初めての救助成功に、喜びを感じながら彼は探検バッジをかざそうとした。
 その時、前肢に持っていた探検バッジがスパッと、白い何かが過ぎた。
「えっ……?」
 唖然とした。まるで神風に攫われたかのように、目の前で消えてしまった。 
 あたふたして探そうとすると、横でシャルルが探検バッジを手にしながらセルシオを睨みつける。
「忘れてない? 自分がここに何しに来たのかさ」
「えっと、その……きゅうじょ」
「このお花畑探検家! ただの救助じゃないって事を忘れてたぁ?」
 それを聞いて、表情がハッとする。
 そうだった。ブールからは救助と銘打っていながら、接待が目的だと言われていたのを。
「もぅ! お客の前で失礼な!」
「いいよ別に」
 更に叱ろうとするシャルルを、横からニューラが止めに入った。救いの手を差し伸べられ、セルシオはホッとする。  
 シャルルは「失礼しました……」とおずおずと引き下がる。
「ねぇ、君」
「あ、はい」
 話す相手が変わり、やや緊張した面持ちで対応の構えを取る。
「この顔を見て……思い出さない?」
「へっ? 黒い色したグミジュースの事ですか……?」
 美麗な顔を近づけてまで尋ねた答えが、拍子抜けな為にニューラはがっくりと項垂れた。
 彼女は残念そうにため息をついて、再び顔を上げた。その表情には悲しみを含め、今にも泣きだしそうだった。
「ひどいなぁ……三日前に一回会ったはずだよ?」
 三日前の事と言えば、いろいろな事がありすぎて、細かい事にまで意識が回らなかいが、それでも思い当たる節があると思い、三日前の記憶の中かあら彼女の存在を掘り起こす。
 しかし、それでも思い出せず、魅せる様に組んだ美脚に視線を落とした。
 ニューラは困惑しながら記憶を探るセルシオに、助け舟を出す様にヒントを口に出した。
「しょうがないな~。こっちからの不意打ちだったけど、お互いに口付けをした仲じゃない?」
「ぇ? く、口付け?」
 セルシオは頭から蒸気が噴出す感覚に襲われる。しかし、口付けと言う単語で、錆付いて引き出せなかった頭に、電流が走った。それを切欠に悲しげに言うニューラの事を鮮明に思い出す。
「あなたは……あの時の酔っ払い……!」
「うん、そうそう! ようやく思い出してくれた!」
 記憶の第一号を口にし、彼女は喜びに満ちた顔で身を乗り出し、セルシオの前に立つ。
 手入れされた白く光る鍵爪で、彼の頬を傷つけない程度に優しく触り、後一声欲しいと、色の篭った瞳で伝えてくる。
「あの時は確か……サヤって言いましたよね?」
 鮮明と、しかし何処か曖昧だった記憶の中で蘇る、酔っ払いの時に勝手に名乗ってきた彼女の名を口にした。
「嬉しい。ちゃんと覚えてくれてたんだぁセルシオ君!」
 名を呼ばれた、ニューラのサヤは、更に笑顔を広げ、頬ずるように抱きついてきた。彼女の体温が体毛越しに伝わり、それとは別に三日前に擦り寄られた時の香りがした。
「ちょ……苦しいって。どうして僕の名前を……!?」
「そこはちょっとね、ある掲示板に君の顔と名前が載ってあったからさ。それで知ったんだよ。あれから三日間セルシオ君の事、ずっと探してたけど、まさかこんな商売をやってただなんてね……」
 こんな商売と言われても、セルシオは今一はっきりしないまま。
 距離を取り、意外そうに彼を見る彼女の顔には、笑んでいても何処か残念そうだった。しかし、次には捜し求めた相手にようやく出会えた喜びと感動の笑顔を魅せた。
 美女の偽り無い喜びの感情に胸が高鳴り、思わず見惚れてしまう。
「けど、一回しか会ってないのにどうして高いポケを出してまで僕に会おうと思ったのですか?」
「確かに一回だけど、サヤにとっては、特別な出会いだったの……」
「特別な……出会い?」
 サヤはコクンと頷くと、鉤爪をセルシオの頬を撫でる。
「あの時君、酔っていたサヤに絡まれて、迷惑そうにしてたじゃない? それでついからかっちゃって、最後には泣いて怒鳴ったよね……」
 当時の事をリアルタイムで思い出される。周囲の目を気にせずに感情的になってしまった自身が今になって恥ずかしくなり、また申し訳ない気持ちになった。
「あの時僕は、すごく不安だったりイライラしてたりで、自暴自棄になってかもしれなかったんです。それでつい癇癪起こしちゃって……」
「ふふ、そうだね。その時の君ったらすごい見幕をサヤに見せたよね」
「だから僕は、あなたの事を傷つけたんじゃないかって思って……」
 サヤのまっすぐな瞳を見たり反らしたりしながら、すまなそうに自身の心情を語った。
「そうだね。君が行っちゃったあの後、サヤはすっごく泣いたんだから」
「えっ――」
 落ち着いた口調できっぱり言った。ふふっと笑って過去の事を思い出す彼女に、セルシオは顔をしかめた。やはり、彼女の事を傷つけてしまったんだと激しい後悔を覚える。
 紅い色の双方の瞳から、真珠のような涙が零れた事を想像すると、胸が針で刺されたように痛くなる。
「酒場にいた他のお客さんに慰めてもらいながら、またそのポケモン達と一緒に自棄酒しちゃったんだよ。その次の日は頭痛がひどかったんだからね」 
 クスクスと微笑んでは鉤爪で頬を軽くツンと突き、その軽い衝撃で彼は引き気味になる。
「そうだったんだ……。その、本当にすみません。せっかく気分良い気持ちで飲んでいたのに、僕なんかのせいで台無しにしちゃって……
 イライラしすぎて自分の本心が出ちゃって、あなたにはどうでも良い事なのに――」
 一応、当時は相手にも非はあったが、それでも自分が悪いと言わんばかりにセルシオは必死に謝罪を口にする。
 そんな時、喋りの途中で彼女の鉤爪に口元を押さえられてしまった。サヤは首を左右に振りながら言う。
「どうでも良い事なんてないよ。セルシオ君。それどころかあれが切欠になっちゃって、サヤはあなたの事がずっと気になっていたの。
 何だかさ……大事な物を必死で守ろうとしているのに、それが叶わなくて、とても辛そうで、なのにそれが誰にも理解できなくて、今にも崩れ壊れてしまいそうな感じだった……
 サヤにはとても理解出来ないような苦しみを、ずっと抱えてそうな……そんな悲しい目をしてた。だから、どうしても君に会いたかったの。多分、あの時の事を謝りたかったんだと思う……」
 今こうしてセルシオ君と出会える事が出来て、とても嬉しく思ってるの。少しでも、君の事知って、癒してあげたらなぁって考えてさ……」
 そう言いセルシオの口元を開放するも、その後も彼は唖然としてサヤを見つめ続けていた。
 彼女の言うとおり、今までの生活の中で探検活動が上手い事いかず、切り詰めるばかりの苦労の連続で、妹にもその苦汁の舐めさせた自分に自己嫌悪していた時もあった。
 誰にもこの気持ちを理解して貰えないと、頭の片隅で思い続けていたはずだった。しかし、彼女はそんなセルシオの苦労を、目で見て理解出来ている様に言ってくれた。
 目頭が熱くなるのを感じ、慌てて堪える。
 ただの酔っ払いで無神経なニューラだと当時は思っていたが、高いポケを出してまで自分にそれを告げたいとするサヤに何とも言えない感謝と嬉しさが沸いた。
「とても嬉しいです。ありがとうございます、サヤさん……」
「サヤで良いよ。君は十五でしょ? サヤと同い年なんだから敬語も要らないよ」
 その言葉にセルシオは驚かされた。あの時酔っ払っていたサヤは自分の事をおねーさんと呼んでいた。外見では細かい年の判別が難しい為に、相手の口調で年上だという事を決め付けていた。
「そうだったんで……だったんだ。僕もさ、その……セルシオで良い。もっと話をしないか? 僕も君の事、知りたくなってきたんだ」
 嬉は恥かしそうに頬を紅潮させ、不器用ながらサヤに慣れ親しく呼び合う事を決めた。
「良かった、興味なんか無いなんて言われたら……また泣く所だったもん。だから、すっごく嬉しい。ありがとう、セルシオ……」
「うん、サヤ……沢山話を……えっ?」
 彼女は潤んだ瞳で名を呼び、礼を言った。
 それに呼応して会話をしようとする途端、彼女の顔がゆっくりと、吸い寄せられるように迫ってくる。アップする黒仔猫の美少女顔。
 閉じきった小さなその唇をやんわりと移動させながら、戸惑い半開きになっている彼の口元に寄る。
「んっ……」
 二匹の声が塞がり繋がった唇の間から漏れ出る。
 今度は、頭の中を整理する必要も無く今の状況を把握する事が出来た。三日前の不意打ちを受けたあの時の光景がセルシオの脳裏に浮かび上がる。
 驚きの余りに、彼は身を引いて尻餅を着く。離さないと言わんばかりにサヤは腕を体に回し、抱きつく。
 唇越しに伝わってくる。氷タイプである彼女の冷やかな温度と、気持ちの良い、むにゅっとした感触だった。
 しかし、感触自体を楽しむ余裕は無く、あえて一方的に迫り、再び奪われてしまった衝撃に、セルシオの表情は驚きが広がる。
 その様子をシャルルは驚く様子は全く無くて、むしろようやくかと言った面持ちで二匹の行為を冷静に見ていた。
「んはぁ……フフッ」
 サヤは心地良い一時を堪能した後、自分から唇を離した。また、奪ってやったと言わんばかりの表情で、小悪魔な微笑を浮かべた。
 その間も、セルシオをただ唖然とするばかり。頬を紅潮させたまま、目の前で笑う美女に目が焼き付く。
 何を言うべきか、それが判らなくなった彼の口は意味無く半開きのまま、唇を重ねられた時の状態を維持したままだった。その内、彼女のほうから言葉が出る。
「お話なんていらない。サヤは言葉なんかよりも、セルシオの体から知りたいの。心や気持ちとかね……」
 色っぽくした流し目の中に潤いが満ちる。
 未だ硬直したままの彼に、サヤはまだ足りないと言わんばかりに、鉤爪を頬に添えるようにすると今度はそれを支えにして、セルシオの頬にキスをした。
「んふっ……チュッ……チュッ……チュッ……」
 軽く笑み、柔らかい唇をその頬に何度も打ち付ける。くすぐる感触に戸惑いを覚えながら、彼女の口付けを肌で受け止める。
 一度や二度で終わらず、まるで彼の肌を唇で楽しむかの様に、位置を変えながら何度もキスを浴びせた。彼女が触れたいった頬に、生ぬるい感触の後が残る。
「あっ……ぅっ……」
 口付けはただ触れるだけでなく、時折サヤの舌先が頬を舐めるように触れていき、セルシオは驚きと喘ぎ声を漏らした。
 サヤは口元を吊り上げてニマッと笑う。彼の反応を楽しみつつ、止まる事無く彼の頬にキスを浴びせ続ける。
「ンフフ……チュッ……んっ……チュッ……」
「サ、サヤ……どうしたんだよ急にぃ……? 止めなってぇ……」
 セルシオの静止する声を無視し、次に丸っこい耳に顔を寄せて歯を立てずに唇を挟む。美味しそうに耳を甘噛みする彼女の顔には、無邪気そうに、また厭らしく歪む。
 触れた彼女の唇はヒヤッとしていて、柔らかくて心地良い刺激が走る。時折、彼女の甘い声が囁きが吐息と交じる。
「んふ、丸っこくて可愛い耳……こっちもキスしたくなっちゃう……」
「ま、待って……何を……?」
「何をって? その為に来たんでしょう。だからサヤも待ってたんだよ」
 セルシオは意味がわからず、やや離れた場所にいたシャルルに答えを求めた。
「ブールから聞かされて無いようね。この依頼の目的の意味を……抱きたいと思った相手と、一緒に抱き合うの。それはつまり……まぁ、彼女に身を任せれば自ずと理解出来るわ」
 今目の前にしている光景に何の揺らぎも無く答えるシャルルに、驚きと戸惑いの表情をするセルシオ。心の中で救いも求めようとしたが、とてもそうしてはくれなさそうだ。
「お邪魔でしたら、しばらく消えてますが?」
 話の矛先をサヤに変える。セルシオに抱きついたまま、彼女はシャルルに目を向ける。
「ううん、大丈夫。何も知らなそうだし、彼とサヤのする所を一緒に見ていてくれる?」
 サヤは恥ずかしげも無く答えた。シャルルは同意し、その場から二匹の行為を見守る事を了承する。
「どういう事? この依頼の目的……んぅっ!?」
 再び問おうとするセルシオの口に、再び冷気を含めた唇に塞がれる。
 鉤爪をセルシオの頬に添えるように触れ、一度離しては再び重ね合わせて接吻を楽しむ。交互に交し合い、優しかった時と比べ、動きが除々に荒くなっていく。
「んぅ……あむっ……チュッ……んんぅ……」
 サヤの行為はエスカレートし、重なり合ったまま自分の舌を相手の舌に添うように入れてくる。互いに触れ合う鼻息がこそばゆく感じる。
 雌の舌の進入にセルシオは再び困惑した。柔らかいと言うよりザラザラしていて戸惑いも覚える。
 お構い無しに彼女は唾液を絡めるように舌同士を交じり合わせる。口周りが汚れようがサヤは気にもとめない。体液のぶつかり合う卑猥な音がリズミカルに鳴り響いた。
 一方的に口内に侵入を許し続けていたセルシオも、自然と舌をサヤの中に進めていく。彼女の口内は暖かいように思えて、ひんやりしていた。しかしそれが、セルシオを興奮させる。
 不慣れながら彼女に負けじと口内を犯す。しかし慣れない行為で、次第に呼吸が乱れる。
「んふーっ……ふぅー……んーっ……!」
 表情が険しくなる。一生懸命になりすぎて息が苦しくなる。冷たい彼女の口内よりも、胸の底から湧き上がる熱によってセルシオを熱くさせる。それを感じ取ったサヤは細目で彼を見やると、一度口を離す。
 唇同士が離れると、乱れあう接吻によって生まれた液体の糸が引いた。テラテラと光を放ってゆっくりと下に引かれ、抱き合う二匹の体に落ちた。
 離れた後一気に疲労が出た。肩で呼吸をしながら、セルシオ自身でもだらしが無い思うほど脱力していた。
 サヤもまた、トロンとした瞳を向けて舌をだしながら息をしていた。乱れた呼吸をするその姿はとても色っぽく艶かしい。それでも、彼女は笑って見せた。
「ふふ……そうなの。セルシオの事を知りたいあまりに、ついそっちの方に手を出しちゃったの。ちょっと恥ずかしかったけど、でもどうしても会いたかったし……」
 それはつまり、セルシオはブールに『売られ』て、サヤはそれを『買った』と言う事になる。興奮し過ぎてサヤの言う事がいまいち理解出来ない状態にいるが……
「坊やにそれだけの価値があるって事よ。素直に喜んだらどう? 雄が雌に買われるなんて珍しい事もあったわねぇ」
「それだけセルシオに魅力があるんだもの。だから、どんどんヤっちゃぉ?」
「そ、僕はそっちの経験なんて……どうしたら良いかも分からない……」
 雄と雌同士でそういう事をする事くらいなら知っていたが、この年でまだ未経験なんて事は別に珍しくないと、セルシオは考えていた。
 しかしそれを口にした途端。シャルルは意外そうな顔でセルシオを見やる。
「本当に経験が無いのねぇ、そんな容姿をしているのに。他の探検隊じゃ若い内に卒業しているもんよぉ? 坊やの年で遅いくらいなのにさぁ」
 探険家業は肉体面でも精神面でも非常に消耗する、だからストレス発散で異性との肉体遊びが主になっている場合が多いのは知っていたが、セルシオの年齢でもまだ遅い方だと言われ、複雑な気分になる。 
「それは可哀相な話よねぇ、苦労ばっかりしてたから、女の子と遊ぶ事も出来なくて……だからサヤがセルシオの最初になってあげるよ」
 自身の常識を疑い、気を抜いた瞬間セルシオはサヤによって押し倒される。四速歩行の生き物として最も弱い部分である腹部分を彼女に抑えられた。
 サヤはセルシオのお腹に乗りかかり、マウントポジションを取った。いとも簡単に雌に押し倒され、降伏する様を見せてしまい唖然とする。
 流石に抵抗を覚え、前肢を伸ばしても彼女の体を押し返そうとするもギリギリ届かず、ばたつくだけだった。 
 赤子の様な同年齢の雄を前に、サヤは不適な笑みをこぼした。
「可愛いね……苛めたくなってきちゃう……」
 サヤは懸命にばたつく前肢を鉤爪で捕ると、傷つけない程度の力で握り自分の首下の胴体に持ってくる。一瞬、フニュっとした柔らかい感触が前肢を包んだ。
「ふにゃぁ……」
 二つの膨らみに前肢が触れた瞬間、サヤが甘ったるく喘いだ。
 触った事の無い乳房の膨らみに目を丸くした。肉球越しに伝わるそれに抵抗力を根こそぎ奪われ、心地よさが広がる。
 サヤは見下ろしながら鉤爪で掴んだ雄の肢をグイグイと押しやる。それに伴い肉球の中で乳房が押し潰れる。
「んぁ……何だかくすぐったくて、気持ち良い……」
 胸を押し付けながら聞く。セルシオは返す言葉は無いが、まじまじと自分が触っている乳房にばかり関心が行っている。
「なんか、ドキドキしてる……サヤ、興奮してるの……?」
「当たり前……だって君以外に触られた事無いんだもん……初めて触られちゃったにゃぁ……」
 胸の置くから鼓動が激しく打っている。そんな彼女の初々しさが、セルシオにも同じく胸の鼓動を高鳴らせていく。
「セルシオからも触ってみて……」
 そう言うと彼女は鉤爪を離した。自由になった前肢は、膨らみに密着したまま離れなかった。
 生唾を飲み込む音がする。彼女に言われたとおり、自分からその乳房を回すように触り始めた。
「やぁ……あっ……ん……」
 胸を犯す肉球の感触に身を震わせるサヤ。右腕で口元を押さえ、わずかに震える唇を隠すように覆った。
「すごいこれ、こんなに柔らかいんだ……」
 強弱を付けながら彼女の乳房を撫で回す。柔らかさが前肢全体に広がり、興奮を覚える。
「痛っ……乱暴には扱わないでっ……!」
 痛がる彼女の言葉にハッとして胸を離した。力加減を忘れて触っていた事に気づく。前肢から離れた乳房は元の形に戻り、再び誘惑するようにその膨らみを見せ付けた。
「ご、ごめん……」
「痛いよ……セルシオのばかぁ……」
 胸を腕で覆い、涙目でセルシオを軽く睨む。デリケートな物だと理性が片隅で教えてくれていたはずなのに、忘れていた。
「訳が分からなくなって……本当にごめんっ! その、だいじょうぶっ……んんっ!」
 思わず視線を反らし、謝罪の言葉を述べる最中。突然の視界が暗く覆われる。それと同時に、質量のある柔らかい物が鼻と口を塞いだ。
 呼吸の道を塞がれ、苦しみよりも先に困惑の色が浮かぶ。
「へへん、乱暴な雄はこうやって苛めちゃうもんっ! ちょっとお仕置きしちゃおっか……」
 意地悪な声で言うとサヤは程好い膨らみを、彼の顔面を押し潰すくらいの勢いで覆っている。悪戯に舌をチロッと見せ、怪しく微笑んだ。
「んぐぐぅっ……んむぅぅ……」
 自分を押し潰している物がサヤの乳房だと知ると、興奮が高まり過ぎて、尚呼吸が苦しくなった。谷間の間に挟まれ、底なし沼でもがくように顔を振る。しかし、程好いサイズのバストからは中々逃げられない。
 鼻も口も塞がれ、呼吸する術が無く彼女の中で悶える。許しを乞おうにも、言葉は出るはずもない。
「ほらほらぁ、もっと頑張って。君の大好きなおっぱいだよ~。ふふっ」
 そう言いながらもセルシオの退路を塞ぐかの様に、両腕を彼の頭部に回し、ギュッと抱きしめる。それが顔を圧迫し、ますます乳房から逃れられなくなってしまった。
 必死にもがけど、乳房の形を変えるだけで一向に抜け出せない。興奮し過ぎて、息も胸も苦しい。そんな様子をサヤはうっとりと眺めていた。
「もがく姿も可愛い……チュッ……チュッ……」
 サヤもまた、興奮に息遣いを荒くさせ、暇を持て余した口で彼の丸っこい耳に口づけをした。
 苦しむ彼に彼女は容赦なく、高まる気分にまかせて攻めに入る。
「んんっ……んんぅっ……!」
 新鮮な空気を奪われて長時間が経ち、流石に本格的な苦しさに悶える。前肢で彼女の背中を叩くも、彼女は気づく様子は無く、ザラザラした舌で耳を弄り遊んでいるのが分かる。
 たまらずセルシオは、彼女の片方の乳房に咥え、思いっきり吸い上げる。
「ひにゃんっ!」
 突然の行為にビックリしたサヤの体が仰け反り、身を起こした。
 セルシオは身を起こし、乳房から開放され頬を紅潮させたまま新鮮な空気を取り入れる。無理やり押し付けられた柔らかい肉質の感触が今にも肌に残ったまま。
「ひ、ひどいじゃないかぁ……ハァ、もう少しで……ハァ、息が止まりそうに……」
「セルシオが悪いもん……もぉ、びっくりしたなぁ……」
 サヤは吸い付かれた胸を鉤爪で撫でながら、ブスッとした。
「はぁ……はぁ……ふぅ……」
 一息尽き、ようやく呼吸が落ち着いたが、未だ高まる胸の鼓動と血が滾る様な興奮が収まらない。サヤを見ている限り、それが催しているかのように。
 あれだけ乳房に苦しめられたにも関わらず、谷間に視線を向け、もっと触れて見たいという欲求が高まる。
「ふふ、そんなに穴が開くほど見ちゃって、まだ触りたい?」
 心を見透かされた言葉にセルシオはギクッとした。視線をサヤから反らし、何も答えない。
「…………んっ!?」
 隙を付かれ、彼女はセルシオに急接近し唇に口づけをする。なんとも素早い動きに、セルシオは感心し、戸惑う。
 無邪気に笑みを浮かばせながら、今度は口元を吊り上げて言う。
「今度はさぁ、さっきみたいにお口で舐めてよ……」
 彼女は再び腕を頭部に回し、今度は優しくセルシオに乳房を押し付ける。頬に鼓動を含めた感触が伝わり、思わず顔が綻びる。
 口元を胸に持って行き、歯を立てて傷つけないように気をつけながら柔らかい肉質を咥える。サヤが、セルシオの耳にそうしたように。
「ふにゃっ……あんっ……」
 セルシオの唇が胸に吸い付き、堪らず喘いでしまう。耳元に囁く雌の甘ったるい声に高揚感を覚え、口を離してはまた咥える。
「んはっ……あむっ……んぅ……」
 唇に伝わるこのフニュフニュ感を、もっと味わいたいと彼は舌先も使う。丸みのある全体を嘗め回すように舌を這いずらせる。
 どの部分で触れても、癖になりそうな柔らかな感触が十分伝わる。もっと味わいたいと思えるほどに。
「にゃっ……ゃぁ……セルシ……にゃぁっ……」
 胸を撫でる舌先と吸い付く口に快感が伝わり、身を悶えるサヤ。
 セルシオは口だけでは飽き足らず、左前肢を指し伸ばし、空いている胸の方も撫で始める。更にサヤは心地良さそうに身を震わせながら、目を瞑らせ笑む。
 サヤの荒い呼吸がセルシオの耳を燻ると、反応するように彼の耳がピクピクと痙攣する。セルシオは一度、胸から離して言う。
「サヤ……くすぐったいって……集中できないよ……」
「うん、サヤも……セルシオの手が、すごくくすぐったいよ……」
 今度は乱暴にしまいと、強弱を付けて撫でている。それがサヤを燻っていた。困惑の色を浮かべながらも、どうしたらいいか分かるような気がした。
 セルシオは口元を前肢で触れていた場所へと写し、再び乳房を咥え始めた。そして、右前肢で胸に添え、今度は下から揉み上げるように撫でる。
「にゃぁ……気持ち良い……良いよぉ……サヤも……」
 吐息で動いていた耳に口元を寄せ、丸い左耳の根元に舌を滑らした。その時彼の体が、一瞬大きく震えたような気がした。それを敏感に感じ取ったサヤが囁く。
「いっぱい……お耳を弄ってあげる……んむっ……」
 サヤは小刻みに震えている耳を食み、唇で甘噛みしだした。微弱な刺激が彼に伝わり、胸を咥えていた口から声が漏れる。
「んんぅっ……あっ……あむっ……んむっ……」
 滑らかな動きが、何処かぎこちなくなってくる。セルシオの瞳が潤う。表情を確認する事は出来なくとも、サヤにはそれが分かっていた。
「んにゃっ……セルシオも感じてるんだね……嬉しい……ちゅっ……あむっ……んふ……」
 サヤの行為は更に勢いを増していく。左の鉤爪を余った耳の方に持って行き、白く光る鋭い方の刃とは逆に、裏を使って右耳を撫でていく。
 若干ヒヤッとする温度を感じ取り、また彼の体が大きく震えた。胸を弄られつつ、面白そうに笑むサヤ。
「あっ……くぅっ……耳は……ずるぃ……あむっ……」
 ザラザラする舌使いが快楽の刺激を小刻みに分け、セルシオを震え上がらせる。少しでも油断をすると、込み上げて来る物が零れてしまいそうだった。
 雄として意地をはるが、零れそうになるのを堪えるだけで精一杯。サヤは容赦してくれない。
 彼女は胸を弄られ喘ぎながらも、攻めを忘れない。右の耳を鉤爪の間に挟んでコリコリとする。
 そして、攻めに攻めようと唾液を混ぜた舌で、今度はセルシオの耳の奥を愛撫する。ネットリした液体音が響き、それを掻き混ぜるようにザラザラが燻る。これには、とても堪らなかった。
「あぅぁっ……うっ……くぅっ……ぁぁっ……!」
 胸から口が自然と離れ、押し殺してきた声が漏れ出る。あまりに堪らない刺激に、情けないまでに女々しい声が漏れる。
「休んじゃだめ……意地悪しちゃうよ……」
 小悪魔の囁きに、一瞬身を冷やした。これ以上、まだ何かされるものなら確実に泣いてしまう。雄として、そんな見っとも無い様はサヤや傍で見ているシャルルにも見せたくない。
 再び乳房に吸い付くも、震えていて上手く扱えない。
「もう……許してくれ……それ以上は……うっ……」
「許して欲しいの? そう言われると……もっと許したくなくなっちゃうじゃない……んむっ」
 雄としてのプライドを捨ててまでした懇願が、逆に彼女の攻めに火をつけてしまった。口元を吊り上げて笑う彼女の表情は、優越感たっぷり含んでいた。
 今更後悔しても遅く、サヤはまるで泣く子供に追い討ちを掛ける如く、弱点を容赦なく嘗め回していく。
「あっ……あぁっ……ひっ……」
 耳の中がねっとりするザラザラの舌に犯され。セルシオの身が竦み、快楽に抗えずビクビクと体が痙攣を起こす。堪えていた物が溢れ、頬を伝ってしまった。
「可愛いね。初エッチでそんなに感じてもらえると……こっちも元気になってきた事だし……」
 そう言うとサヤは頭部を離し行為を中断する。ようやく耳を開放する。安心を取り戻したセルシオは小刻みに息を吐いた。しかし、せっかく得た安らぎも束の間だった。
 白光する鉤爪をゆっくりと下半身に滑らすと、互いの愛撫によって出来たそれの先をツンと突いた。
「あっ……!」
 大事な物を触れられた衝撃で体が大きく反応する。確認するまでも無く、それはセルシオお雄たる象徴が膨張した肉竿だった。
 セルシオの反応をチラッと伺いながら、彼女は厭らしい手つきで物の先端に触れた。
「大きくなってきたね。女の子に触れられるのって初めてでしょ……? サヤもなんだ。セルシオの性器、初めて触っちゃったぁ」
 色目を使って触れてくる刺激が体全身に駆け巡り、ゾクゾク感が押し寄せてきた。鋭い刺激に抵抗感を覚えるも、何処か心地良くて癖になりそうだった。
「うわぁ……何これぇ……ねちょっとしてて、糸引いてる……」
 ねちょっとする液体らしきものを感じるとすかさず腕を上げてその正体を目にすると、余った方の腕で口元を抑えながら、初めて見る糸を引いた液に驚きと感動を交えた表情をした。
 雌の体に触れまくった反動でそそり勃った肉竿の先からは、我慢汁が糸を引いて見せていた。
 目を大きく開き見続けた後、好奇心と興奮でサヤは糸を引いた状態の液を口元に運び、舌で舐め取る。
「んちゅっ……うぇ……変な味っ……」
 興味本位で舐めた我慢汁の味に顔を渋くさせた。しかし……
「でも……何だか癖になりそ……」
 すぐに顔をほころばした。口元を逆への字にして見せた後すぐさま行動に移った。
 彼女は一度、セルシオから身を降ろす。そして後肢の間から顔を覗かせ、テラテラ輝く透明の液体を滲み出す肉竿に持ってくる。
 うっとりした顔で今一度性器を見つめ、サヤは胸の鼓動を高鳴らせた。
「サ、サヤ……そんなに見つめられたら恥ずかしいって……」
 顔を紅くさせながらも隠そうとはしない。薄い理性の膜の奥底で、にじり寄る醜い欲望が彼女に見て欲しいと告げる。それが堪らなくセルシオの羞恥心をかきたてた。
「サヤの胸でそこを大きくしちゃったんだね……嬉しいな……」
「だ、誰だってそうなるって……サヤは綺麗だし、その上に柔らかくて気持ちいっ……うっ!」
 自分で言って、恥ずかしくなった。それも肉竿を雌の前で突き出している状態で尚更恥ずかしい。
 滑ってしまった口を前足押さえ、またもや後悔するも、彼女はいっそう嬉しそうに顔をほころばした。
「セルシオって、素直な事言うんだね……嬉しいよ、もっと揉んでいて……ふふっ……」
 言葉通りに彼女は両方の腕で肉竿を傷つけないように触れ、その感触を確かめるように撫でる。
「んっ……ぁっ……」
「ちゅっ……暖かぁい……それに固いのに柔らかくて、ビクビクしてて、なんだか気持ち良い……サヤのよりも触り心地があってずるいなぁ、キスしちゃうぞこら……」
 甘く柔らかな声で言った後、意味の不明な嫉妬心を込め、犯罪的に心地良い肉竿を更に堪能しようと口を近づけさせ、言葉通りに口づけをした。
 一度だけでなく、付け根から先端部分に掛けて浴びせるようなキスを繰り返した。それに呼応するかのように、セルシオもビクンビクンと震える。口や頬にされるのとは違い、性感帯の弱い部分を攻められている。
「気持ちいぃ……ちゅっ……ちゅっ……癖になりそ……ちゅっ……」
「サヤぁ……くぅっ……あっ……ぅっ……」
 再び涙が込み上げ、肉竿を弄ぶ雌猫の快楽に成すすべなく、セルシオは彼女の前で見っとも無く涙を流す覚悟を決めた。
 なんで此処まで気持ちがいいのか――
 どうしてこんなに胸の鼓動が苦しいほどにまで高まるのか――
 サヤと一緒にいて互いに肉体を弄りあっているだけで、ここまで理性を狂わせられるなんて。
 プライドも責任感も、辛さも悲しさ苦しみも全部忘却の彼方に放り投げこんで、絶える事の無い刺激と快楽に身を投じて狂ってしまいたい。イかれてしまいたい。
「セルシぉ可愛い……サヤ、我慢できなくなっちゃう……ちゅっ……訳がわかんないよ……ちゅっ……」
 口付けはエスカレートし、肉竿に沿ってばかりだけでなく、我慢汁が滲み出ている竿の先端部分をも口付ける。舌先でチロッと掬い取る様に舐め回す。
「くぁぁぁっ……! 駄目だサヤぁ……おかしくぅ……くうぁぁっ……!」
 先端から走る激しい快楽の波に耐え切れず、遠慮なく彼女の目の前で喘ぎ、泣いた。
 それでもサヤは手を抜く事など一切せず、舌先を竿に沿って滑らし、また舐めたりと竿全体を愛撫する。
「いいよ……ちゅっ……セルシオの性器、気持ち良いから……ずっと触っていたい……ちゅぅっ……」
 サヤ自身も、セルシオが思っている事と同じ事を考えているのか。興奮と性欲に心を委ねる彼女。
 口付けではもはや飽きが来る。はぁはぁと荒呼吸をしながら物欲しそうな眼差しで肉竿を改めて見やる。トロンとした表情からは何処か肉食獣の雰囲気を漂わせる。
「もう我慢できなくなったな……食べてしまいたい……いいよね?」
 セルシオが答えを下す前に肉竿に手を掛けた。口を開けては肉竿の半分を一気に咥える。
「ふぁっ……ぁぁっ……」
 ひんやりしていたはずの口内が、何故だか生暖かい。唾液が沢山含めていた口の中が、ざらつく舌を滑らかに滑らす。
 肉竿全体にねっとり感が肉竿を包む。味わった事の無い強烈な快楽に下半身をブルブル震えていた。サヤの口内がゆっくりと進み、戻りを繰り返すたびにセルシオの甘ったるい声が漏れた。
 予想通り、耐え難いほどの快楽に襲われ嗚咽を堪えることができない。
「セルヒオ……んちゅっ……きもひいい……ちゅっ……んぅ……」
 雄の性器が放つ臭いに気分が高まり、加減を忘れてしまいそうな程肉竿に熱中する。
 存分に堪能したいと言わんばかりに、彼女は唇で先部分を吸い付き、口内の舌で厭らしく嘗め回す。雄の我慢汁と口内の唾液が混じりあい、ぐちゃぐちゃになっていく。
 竿がサヤの唾液で汚れる。雄の象徴とも言える性器を、今じゃ彼女が独占しているかのように扱われ、セルシオは服従したかのようにビクビクと体を震わせている。
「ぁぅっ……くぅっ……ぅぅっ……」
 涙で頬を濡らし懸命に堪えようとするセルシオを姿を上目で見て、胸がきゅんとした。その可愛らしい姿を目にして、もっと苛めて見たいと言う欲求が生まれる。
 口と舌で彼を存分に肉竿に刺激を
 しかし、下半身が雄肉を要求するように疼き、サヤ自身も彼の肉竿を受け入れたいと言う欲求が膨らんでくる。しなやかに伸びた足を、枝分かれする雌の分泌液が濡らす。
 それでもセルシオの悶える姿をもっと見ていたいと言う欲求が、サヤの頭の中でぶつかり合った。どちらを取るか迷う。
 股間の疼きが収まらず、我慢が出来なくなると竿を握る片方の腕をそっと離した。雄の我慢汁が糸を引いて付着しているのを目にしながら、うっとり。ゆっくりと自分の下半身に持っていく。
 ビショビショに濡れた割れ目にねっとりとした鉤爪の先を宛がい、微弱ながらそれで秘所の疼きを満たそうと考えた。
 雄の汁と自身の愛液が交じり合う様を想像して、更に分泌液が溢れ出たような気がした。
 二つに割れた爪で器用に割れ目を開き、愛液で溢れていたピンク色の肉壁を傷つけない程度に爪の先を入れる。
「んっ……にゃっ……んんっ……ちゅうっ……」
 小刻みに秘所を弄り、クチュクチュと卑猥な音を鳴らす。性器を懸命にしゃぶりつきながら、己の欲求も僅かながら満たしていく。
 だが、中途半端な快感は返って欲求不満を生み出し、生暖かい脈を打つ竿がますます恋しくなる。それでもまだ愛撫していたいと、我侭な欲求同士がぶつかり合う。
 何時しか竿を扱う速度は増し、苛めたいと言う欲求は消え、性と肉に飢えた獣の如く貪りつく。彼の喘ぎ声を耳にして、サヤの欲望を掻き立てる。
 もっと苛めたい、涙声で快楽に乱れ狂う彼の様を見ていたい。心地良い感触の肉竿に唇と舌で貪り続けて、端整な顔を涙でグショグショに汚してしまいたい。
 サヤの心の奥底から沸き上がる欲望がそう告げた。
「ぁっ……ぅぁっ……耐えれ……ない……」
 加減を忘れてしまった彼女の口が出入りを繰り返す度に、セルシオは自分でもコントロールする事が出来ない、快楽と言う名の電流にビクビクと身を震わせる。
 涙の筋を作った表情はだらしが無いまでに口を開きっぱなしにしている。砂漠地帯の様に渇がカラカラに乾き、水分を求めて舌先がダランと出ている。
 歪む視線の先に秘所を弄り愛液を散らしているサヤの股間部分に目が行った。今にも喉を潤したい欲求に駆られて口が動く。
「サ……ヤ……喉が渇いて……君のを……飲みたい……」
 枯れそうな声がサヤの耳に届く。上目使いで小刻みに震えるセルシオの姿を見て、彼女は肉竿から口を離す。しかし舌先はしっかりと先端を舐めるのをやめない。
 セルシオの要求に、サヤは更に胸を躍らせた。
「んっ……いいの? もっと気持ち良くしてあげようと思ったのに……どうしようかな……」
 サヤにとって願っても無い要求だが、ギリギリな状態なセルシオの様を見惚れ、あえて聞き返す。
 これで拒否でもしてみたらどんな反応が返ってくるのか楽しみでもあった。試しに焦らしてみると乾いた声で呻き、引き締まった面影が無いまでに辛そうにする。
 セルシオは一刻も早く喉の渇きを癒したく、必死に懇願する。
「お願いだ……変な気分が続いて……もう、口の中が……サヤのを欲しくて……」
 途切れ途切れだが、飲みたいという強い欲望と欲求が伝わる。あまりに無様とは言え、そこまで求められる事に嬉しさがこみ上げる。
 欲求を答えたいと下半身が更に疼きを増して、愛液が溢れ出る。弄り続けてビショビショに濡らした腕を、黙ってセルシオの前に持ち上げて見せた。
 糸を引いて銀色に光らせる液体を前にして、セルシオは美顔を崩してサヤの腕を両肢で捕る。極限まで飢えに追い込まれ、濡れた鉤爪に舌を伸ばすその様はまさに腑抜けた奴隷そのもの。
 乾いてざらついた舌でサヤの愛液をひと舐めし、糸を引いた液が口の中に運ばれる。甘酸っぱいような少々濃いい味が水気の無い口の中で広がる。ヌメッとしてなんとも言えぬ味わいに不可解さを覚えるも、気になんてならなかった。
 前に突き出された鉤爪に次々と舌を走らせる。乾ききった口内を少しでも潤そうと懸命に舐めた。
「美味しい……? ペロペロしたくなるほど欲しかったのかな……」
 聞かれてもセルシオは答えない、答えれなかった。水分に飢えた目はひたすら鉤爪に集中している。
 雄が、震えながら恥ずかしい部分から出る液を舐める様にサヤは上目でほっそりと見つめ、厭らしい笑みを浮かべた。
 愛液をすすり求めるセルシオの下半身にも影響が出る。そそり勃っていたものが膨張しているのを確認できる。再び肉竿に視線を向けたサヤは驚いた。
「また大きくなってるよ……サヤのエッチなお汁で興奮しちゃったんだ……ふふっ……」
 我慢汁で肉竿を濡らしているのを目にして、サヤも肉欲に対する我慢が抑えられずすぐさましゃぶりついた。
 口内に咥えた竿を、舌で撫で回すように雄汁を舐めとる。
「んくっ……ペロッ……すごくしょっぱくて……変な味がする……」
 素直な感想にサヤも恥ずかしくなり、仕返しに彼の竿の先端を舌でグリグリと苛める。
「んんぅっ!!」
 サヤの細い舌がセルシオの肉竿の先端の尿道を突き、敏感に感じてしまった体が大きく跳ねる。快感とも拷問とも区別のつかない強烈な刺激が頭の中で駆け巡る。
 セルシオがサヤの鉤爪を舐め、サヤはセルシオの性器に吸い付く。互いに求めあう、とても心地の良い、欲望の発散。幸福の時。
 しかし、お留守になったサヤの下半身が再び欲求不満を訴えてくる。ひくつく秘所が出張するように疼く。いくら雄の肉棒を口にしても、下半身の欲求は不満を募らすばかり。そろそろ、サヤは限界だった。
「セルシオ……サヤもう我慢できないの……あそこが疼いちゃって……君のお口で、サヤも気持ちよくしてよ……」
 強請る声をあげる。セルシオが水分を求める様に、サヤも下半身の凄まじい疼きに堪えられなくなっていたのだ。
「いいよ……もっとサヤの液を舐めたい……僕も我慢できないんだ……」
 要求に応えると彼女は嬉し恥かしそうな顔色をする。セルシオの体から身を引き、立ち上がる。
 改めて見ると、見栄えするほどのしなやかなサヤの体が眩しいくらいに美しい。周りに咲く桃色の花の背景も圧倒するほどの甘美な姿。
 セルシオを見やる流し目に、色っぽさを含んでいる。スラッと伸びた両足の股座から透明の愛液が伝う姿に見惚れる。
 下半身に視線が移っているのを感じ取り、サヤは慌てて鉤爪で股間を隠す。分泌液の出所を隠すことは出来ても、下に漏れ出る愛液だけは隠せれない。
「見てるだけじゃ嫌っ……恥かしいじゃない……」
 その恥かしい部分を今から愛撫してもらうと言うのに、改まって恥かしがる彼女の姿にセルシオは余裕を僅かに取り戻し、微笑を浮かべる。
 やるのなら早くして欲しいと言わんばかりに、サヤの視線がチラチラとセルシオに向く。
「今度は僕が下になるから、サヤのを見せてくれないかな……」
 恥を捨てて言うとサヤはやや躊躇い気味に股間に置いた鉤爪をどかした。隠す際に愛液が付着し糸を引いた。前よりもいっそうに溢れている気がした。
 やはり見惚れていたいが、これ以上は彼女に怒られて更なる快楽的な苛めをされかねないと思い、セルシオは腹を見せるように仰向けに倒れた。
「それじゃ……お願い……」
 サヤは仰向けになっているセルシオの顔の方に股間を持ってくる。背筋をピンッと伸ばした状態で、顔に跨る体制で乗りかかる。
 黒い体毛越しにピンク色をした割れ目が覗く。視界全体に広がるビショビショに濡れている雌の性器は何処か神秘的であり、セルシオは脱帽する。
 だが、まじまじと見ているとすぐに再び興奮と喉の渇きが襲った。高鳴る鼓動に呼吸を荒くさせる。下半身に熱が集中し、逸物をギンギンに固くする。
 サヤもまた、自分の性器を雄の前に曝け出しているのに羞恥心に顔を赤くした。上からセルシオの顔を見下ろし、恥かしさと期待感で胸をいっぱいにする。 
 その背後で惜しげもなく勃たせている肉竿を愛おしく見やった。
「すごい……サヤのあそこってこんなに濡れてるんだ……うわぁ……」
「口にしないでよ……いくらサヤでも恥かしいって……」
「ごめん……でも本当にすごい……」
「いいから早く舐めてよ……疼きすぎておかしくなっちゃうじゃん……」
 焦らされすぎて、彼女は欲求不満を訴えるように自分からセルシオの顔に秘所が触れるように腰を落とした。
 股座がセルシオの喋る口を塞ぎ、その口周りに愛液が付着しヌルヌルする。半場押し付けられた状態ではあるが、抗う気など毛頭無い。
 雌のデリケートな部分であるものが、すぐ目の前――舌を伸ばせば簡単に届くほど近づけられる。僅かに口に含んでしまった愛液と一緒に生唾を飲み込んだ。胸の高まりもいい加減苦しい。
 見下ろすサヤを見返しながら、まるで自分が下僕で彼女が女王と言う光景を想像をしてしまった。それでも、今のセルシオには関心など微塵も無かった。 
 未だ水分を欲している口で、ひくつく割れ目を震える舌先でこじあげた。
「やっ……あんっ……チロチロする……」 
 ピンク色の内部が覗く。肉壁には分泌液がべっとりと滲み出ているのが分かる。開いた瞬間に愛液が溢れる事によって口周りもいっそうべた付いてくる。
 舌で柔らかな内部をすくう様に嘗め回し、渇きはすぐに潤いを取り戻す。甘酸っぱい味が口内で満たされた。
 喉を小さく鳴らして雌汁を飲み込んでいく。もっと欲しくなり、ピンク色の肉壁の更なる奥に舌を侵入させる。その場所も満遍なく濡れていた。
「あっ……やんっ……そんな奥に突っ込んじゃ……くすぐったくて……気持ち良い……」
 サヤは口元を鉤爪で覆い隠し、性器内を犯す雄の侵入に身を震わせた。薄ら涙を浮かべ悲しみとも喜びとも区別のつかない表情をしていた。
 分泌液の増加は止まることなく溢れ、いくら舌で中を掻き回しても、永遠と沸き続く泉のように止まる事は無い。
 しかしいくら喉を潤そうとしても乾きは満たされる事なく、むしろ増す一方だった。それでも求める様に膣の中で舌を這いずらせる。
 顔中が火照ったように熱い。止まる事を知らない欲望に歯止めが利かなくなり、両肢でサヤの肉付きの良い太もも辺りを掴む。サラサラする足の体毛を感じ取り、十分に固定する。
 積極的になってサヤの秘所内で暴れる。口周りがどれほど汚れようがセルシオは構わなかった。甘酸っぱい愛液を愛おしそうに求めた。
「んぐっ……!?」
 その時、下半身から肉竿を触れる刺激によって、舌の動きが一瞬鈍くなった。
「セルシオがとても頑張ってるから……んぅ……サヤと一緒に気持ち良くさせてあげる……」
 見上げる先に、口を半開きにさせてトロンとしたサヤが若干笑む。左の鉤爪を背後で寂しく勃起させていた肉竿に触れていた。
 彼女は鉤爪に加える力を加減させ、優しく撫でるように竿の上下に触れる。痛くなく、むしろ程好い硬さの爪に逸物が敏感に感じる。
 残った鉤爪で自分の胸を触り、上から見せ付ける様にやんわりと揉むサヤ。
「んっ……ちゅるっ……くちゅっ……」
 魅惑的な姿した彼女を見上げながら、秘所の愛撫を再開させる。
 卑猥な水音とサヤの喘ぎ声が不思議と心地良く、セルシオの肉竿の膨張が催す。それをサヤが先端から付け根に掛けて器用に撫でと、我慢汁で再び鉤爪が汚れる。
「あはっ……すごいな……こんなにギンギンにしてて、また舐めたくなっちゃったよ……セルシオ?」
 そろそろ肉竿の温もりと感触が愛おしくなり、股座を顔面から退かそうとしたが、がっちり掴んだ両肢は離さない様にしているからだ。
 もっと、サヤの甘酸っぱい汁をすすっていたい。そんな欲望が彼女を放さないとしっかりホールドした。
「にゃぁんっ……セルシオが離してくれない……サヤもセルシオのをがっつきたいのに……」
 泣きそうな彼女の声に、獲物を捕獲したような優越感が彼を支配する。その間にも彼女の中で暴れるように溢れる蜜を味わう。 
 その時、サヤは突然口元を吊り上げて不適に笑ったような気がした。次に、彼女は離れる事を諦めたのか、腰を落とした――と言うより、股座を顔面に押し付けるように体重を掛けてくる。。
 それと同時に、余裕を持って開けていた空間を閉めるように股を閉じ始めた。セルシオの顔面が心地良い太ももの肉に圧迫され、苦しみが襲う。
「むぐぅっ! ううぅっ! んううっ!」
「そんなにサヤのお汁が欲しいなら……たっぷり舐めさせてあげる。ほら、どうしたの? すっごく苦しそうだよ~」
 彼女はケラケラと笑いながら業とらしく聞いてくる。答えようにも、口と鼻がねっとりとした液と肉圧に塞がれて答えられるはずがない。
 左右から伝わるむっちりとした感触。しかしそれを感じている余裕などない。息が苦しい。
 セルシオは掴んでいたはずの両肢が離れ、圧迫しようとする彼女のしなやかな足を開ける様に叩いて訴えるが、全く応える様子もない。むしろ更に力を加えてくる。
 しかし苦しい状況の中でも、しっかりと物は勃てている。その間にも彼女は肉竿への刺激は止めていない。
「んぶっ……サヤッ……苦しいって……んっ!」
「どーしたの? お口が止まってるよ。もっと舐めたいんじゃないの……」
 明らかに苦しんでいるセルシオを見下げて笑むサヤ。セルシオのマズルに秘所を擦り付ける様に腰をグイグイ動かす。
「息が……出来ないって……お願い……足をどけてって……」
「やだもん。ふとももがっちり掴んでいた癖に、ほら、遠慮しないでもっと触ってよ……」
「や、柔らかいのはわかったから……もう、開放してって……」
「あそこを固くしてる癖に、本当に開放して欲しいの? ふふふっ……」
 体毛越しのムチムチなふとももの中でもがき苦しむ。そんな情けない様をサヤをクスクスと笑った。 
 必死になってサヤの足から抜け出そうと必死に足掻くも、軟そうに見えて結構力強い。両肢で抉じ開けようと固く閉ざそうとする股座は中々開かない。
 こうしている間にも、サヤは肉竿を扱う速度を速めていく。器用に傷つけず、快楽を与えるように……
「んぁっ……! サヤァ……、うっくぅっ……!」
 快感の波が次々と押し寄せてくる。前肢に力が入らなくなり、息使いを荒くなる。
 高ぶり、込み上げてくるものに体全身が熱くなるのを感じる。鉤爪が撫でほど、それが強くなっていく。
 新鮮な空気を求めていたはずの思考は、サヤの愛液を求める欲望へと変わる。割れ目に舌を挿入してピチャピチャと音を立てながら中を掻き回す。
「あっ……気持ちいい……セルシオも気持ち良くなって……」
 美人な顔を崩すほど、だらしのない顔でよがるサヤ。表情はトロンとさせてるが、我慢汁で竿が全体が濡れても尚扱き続け、欲望の爆発を催すように速度を上げていく。
 快楽に体を震わせる彼女の蜜をすすりながら、セルシオは己の肉竿に限界が近づいてくるのを感じた。堪え切れず言う。
「サ……サヤぁ……僕もう、だめだ……出そう……うぅっ……!」
「いいよぉ……サヤもイっちゃいそう……ずっと舐めてて……セルシオのお顔に……エッチなお汁をいっぱいかけてあげるね……」
 絶頂が近くなり、痺れる舌を懸命に動かす。もはや愛液を舐め取る事など忘れ、自分と同じ絶頂をサヤにも催そうと舌を暴れさす。
「あっ……ぁっ……セルシ……だめ……サヤ……そんなにされたら……も、もぅ……イっちゃう……!」
 涙顔になり、閉じない口からは息が乱れ、途切れ途切れの口調からは高らかに喘ぎ声を上げている。それにつられ爪の動きも早くなっていく。もうそろそろ、限界だった。
 セルシオは、太ももに挟まれたまま呻き声を漏らす。鉤爪が擦る竿が熱く痺れて、雄の物が爆発しそうな感覚を催した。
「あぁっ……だめ……イく……イくぅっ……! ああぁぁぁっ!」
「んんぅっ!!」
 サヤの体が大きく仰け反り、絶叫する。ひくついた秘所から雌汁が勢い噴出し、透明な液体が端整な顔をビシャビシャに濡らしていく。それに呼応するように、一瞬遅れてセルシオの肉竿からも濃厚な液体がビュクビュクッと、握られたまま遠慮無しにぶちまけた。
 腰部分が痙攣を繰り返す度に止め処なく白濁液が溢れかえり、行き先の無いそれは、地に引かれてピチャピチャとセルシオの腹の上に落ちていくのが分かる。
「あ、あそこが……ビュクビュクしてて……すごいぃ……」
 彼女の握っている爪に力が入り、それがまた一瞬心地良く感じる。竿がビクンと震え上がり、ビュルッと濃厚なミルクを飛ばす。それが彼女の三つの尾にも付着して汚す。
「あんっ……尻尾に……かかっちゃう……熱いよ……」
 その様子を見る事が出来ないが、飛び散る己の精液が体の上部分にかかって来ない様子から、結構な量が彼女の紅い紅葉の尾を濡らしているに違いない。
 セルシオは息をする事も忘れ、欲望が静まるまでサヤの太ももを強く握り締めながら続く射精の快感に身を震わせる。
 やがて落ち着きを戻し、狭苦しい中で呼吸をした。
「セルシオの顔も……びしゃびしゃ……サヤがお漏らししたみたい……」
 その言葉通り、サヤの股座からは液が噴出し、上に跨っているセルシオの顔面に広がる。尿を漏らしてしまったかのように、その光景は悲惨だった。
「ぷはぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
 ようやくセルシオは息を吐いた。濡れた顔でゆっくりと目を開く。
 見上げたサヤの顔は、肩で息をしながら涙顔で無様に汚れたセルシオを見下ろしている。見っとも無い物でも見ているようで、どこか魅了された彼女はひくついた笑みを浮かべる。
 汚してはならぬ物を汚したと言う罪悪感よりも、誰かが手を掛ける前に自分が初めて彼を汚したと言う、そんな雄みたいな独特的な幸福感を感じている様子だった。
 小悪魔の様な、彼女の一面に、情けなくブルッと震えた。
「見てぇ……」
 サヤは蕩けるような甘い声で告げると、握っていた竿を離してゆっくりとセルシオの顔の方に持ってくる。
 白光する鉤爪にべったりと付着した、糸を引いて落ちていく己の精液を見せられる。彼女はうっとりと宝石でも眺めるように見つめた後、自分の口元に運ぶ。
 セルシオに見せ付ける様に、爪に付いた白濁液を舌でチロッと舐め、ねっとりと糸を引きながら口の中へ運ぶ。
「ん……苦くて、変な味……」
 初めて口にする精液の味に渋い顔をする。
「な、何飲んでいるんだよ……汚いって……!」
 セルシオは自分が吐き出した白濁液をサヤが舐め取るのを目にするなり驚愕し、恥ずかしくなった。
「そんな事ないもん……温かくてトロッとしてて、とっても素敵ぃ……」
「止めなよ……お腹壊すって……」
 セルシオは止めるも、サヤは聞かず残った液体も全て舐める。
「んっ……ペロッ……ちゅぅっ……」
 口に運ぶ度に綺麗な顔が苦々しく歪む。それでもサヤの魅力は全く劣らず、ますます魅了されてしまい、唾を飲み込む。
「サヤ……凄く厭らしくて……綺麗だ……」
 思っていた言葉が、うっとりと眺めている内に自然と口に出てしまう。
「セルシオも……ぐしゃぐしゃなのに、何だかとっても可愛い……もっと汚したい……」
 互いに汚れた姿に魅了され、見つめ合う桃色の視線が絡む。果てたはずの下半身が熱くなり、欲望が膨れ上がった。
「僕……何だかまた熱くなって……サヤを見てると、収まらないんだよ……」
「サヤもだよ……セルシオの体が欲しくて、あそこがまた疼いちゃうの……」
 何だかおかしい。サヤを見続けると興奮で胸が高まる。何時も妹以外にはクールにしてきたはずの自分が、こんなにも他のポケモンを愛おしく思うなんて。尽きて冷めたはずの欲求が、再び沸騰するかのように沸き起こる。
 こんな自分は恥ずかしい、だが、嫌悪感は不思議と無い。
 濡れた唇が乾き、目の前にいる雌猫の唇を欲している。それを悟ったサヤは、セルシオの顔面から腰を浮かし、腹の上に降ろす。そして体を前に倒し、ちょうど向き合う形で迫る。
「サヤ、キスしたいよ……」
「……んぅっ!」
 返答は無かった。同じ気持ちでいたサヤは両方の鉤爪で頬を押さえてくると、濡れた唇に重ねてきた。セルシオも彼女の体を抱きとめ、唇を受け止める。
 二匹の高ぶった鼓動が伝わりあう。遠慮無しといわんばかりにセルシオとサヤの口付けは荒々しく、とても厭らしく辺りに響いた。
「んふっ……んむぅっ……あむっ……」
 誰の声なのか判別付かない喘ぎ声。淫らに体をくねらせ、舌同士の絡ませあう卑猥な唾液音が響く。
 唇だけじゃ物足りなくなったセルシオは、サヤの体を抱いていた片方の前肢を離して、触れ合う腹の間に滑らす様にいれるとそのまま膨らみに触れる。
「んんぅ……」
 口付けを交し合いながら胸を撫でる。気のせいか、前より心地良い柔らかさを感じた。唇と胸、どちらに集中しようか迷った。
「んぁ……せるひお……おっぱいが好き……?」
「あっ……うん……」
 唇を離し、子供をあやす口調で言われると、胸にぴったりと前肢をくっつけたまま恥ずかしそうに頷いた。
「いいよ……セルシオに好かれてるなら……思う存分に触って……」
 鉤爪を胸に触れている前肢と重ねて続ける。
「サヤは、セルシオのこれが欲しい……いっぱい頂戴……」
 サヤは優しく言うようにもう片方の爪先で膨張しきった肉竿をツーッと撫でる。その行為にセルシオの体がビクッと跳ねた。
「あっ……あぁっ……」
 果てたばかりの竿は、すでに行為が可能なくらいに準備が整っていた。また舐められるのか、それとも爪で扱かれるのか、どちらかを期待した。
 しかし、どちらでもなかった。サヤは急に立ち上がると体から離れる。セルシオはどうしたのかと身を起こした。
「ねぇ、セルシオ……」
 腕を後ろに組んだサヤが尋ねる。改まった様子の彼女にセルシオはキョトンとする。
「サヤね、初めてだから……セルシオも初めてだけど、その……優しくしてね……」
 急に無垢な少女の様な態度を見せられ、戸惑った。
「う、うん……どうしたの急に……?」
「その……もう……言わせないで、恥ずかしいな……」
 彼女は照れた様子で教えてはくれなかった。そして、身を起こしたセルシオに目の前に寄りかかる様に、後ろを向いて座る。
「あっ……サヤっ……!?」
 すぐ目の前で彼女の後頭部が迫り、戸惑いが大きくなる。白濁液の付着した尾がお腹に触れてくすぐったく感じる。
「これならさ……一緒に気持ちよくなれて、胸も触れるでしょ……サヤね、いっぱい勉強したんだから、こういうの……」
 そう言って爪先を肉竿に触れる。
「これをね、サヤの中に入れて……」
「い、入れれば……いいの? どんな風に……?」
 躊躇い勝ちに言うと、サヤはやや呆れつつもクスッと笑いながら言う。
「もぉ、簡単だよ……これをまっすぐ入れてくれればいいの。 きっとすごく気持ちが良いから……ただ、ゆっくり入れてね……」
 戸惑い気味に答えるサヤにセルシオは違和感を覚える。しかし、更なる快楽が得られるのかと胸が高まり、彼女のくびれのあるボディを抑える。
「わかった……じゃ、いくよ……?」
 尋ねると、サヤは後頭部越しに頷く。気のせいか、肩が微弱に震えている気がした。後には引けず、覚悟を決めてまっすぐ勃起している性器を、滑り気のある秘所へと押しやる。グチュッと濡れた雌の性器を押し広げる水音を鳴らす。
「にゃっ……ぁっ……」
 まだ先部分しか入っていないのに、サヤの体がビクンッと仰け反る。セルシオもまた、ねっとりと温かい肉壁の感触に鈍い快楽が襲う。
 ゆっくりと、圧迫する膣内に身を震わせ、サヤの体を抑えている前肢にも力が入ってしまう。竿で抉じ開けるようにゆっくりと押し進む。
「んっ……? 何だこれ……?」
 先端部分に何かがぶつかる。それが進行を邪魔している。性にある程度知識のあるセルシオでも、これが何だか分からなかった。
「いっ……いって……そのまま……」
 自分の体を強く抱いているサヤが若干震えた声で言う。躊躇いを覚えるも、ゆっくりと腰に力を入れて突き進めた。
 ――ブチッ
 進入を阻む壁を押し退けた途端、何かを突き破る小さく音を聞いた気がした。
「にゃぁぁっ……!」
 サヤの小さな悲鳴を耳にする。彼女は歯を食いしばり、痛みを耐える様子を感じ取った。愛撫し合っていた時とは違う様子に、快楽よりも不安が襲った。
「サ、サヤ……!?」
「ううん……だ、大丈夫……」
「でもっ……え?」
 心配で声を掛ける最中、下半身に妙な違和感を覚え、セルシオは横から覗く様にして、サヤとの繋がっている部分を見下ろした。
 透明な愛液とは違う、赤い液体の筋が性器を通して伝っているのが見て分かる。それは明らかに分泌液ではなく、鮮血だった。
「サ、サヤっ! 大丈夫!? 血がっ……すぐに抜くから……!」
 血を見て気持ち良い所では無くなり、彼女の容体に気を使って慌てて竿を抜こうとした。しかし、サヤはセルシオの後肢に爪を置いて静止する。
「大丈夫ったらっ……そのまま……中に進んでよ……」
 平然を装って笑顔を作るも、紅い目からはじんわりと涙が浮かぶ。
「大丈夫なはず無いじゃないか……誰かに……見てもらわないと……!」
 今まで心地良さに心を奪われていたセルシオだが、この時ばかりは快楽を忘れ、心を取り乱してしまう。そんな時に、背後から別の声がかかる。
「ぼうや、女の子に恥をかかす気?」
 えっ、と思い、背後に背後に振り返る。横で二匹の行為をずっと見守り続けていたシャルルが、見ていられない顔で口を挟む。
「これはね、雌ならば誰にでも一度はある通過儀式よ。簡単に言えば、処女膜ね」
「しょ、処女膜……?」
 聞き慣れない言葉を聞き返すも、シャルルは無視してサヤに向き直る。
「まさかとは思ってましたが、大丈夫ですか?」
 心配そうに顔を覗き尋ねる。サヤは涙顔を上げて、ゆっくりと微笑んで見せた。
「うん……話には聞いていたけど……やっぱり痛いもんだよね……でも……思ったより痛くは無いな……」
 気を取り直し、落ち着いた様子で話す。雄のセルシオよりも、シャルルの方が彼女の気使いが上手だった。
「痛いって……皆そうなの……でも……怪我とかしてるんじゃ……だって血がこんなに……」
「一々五月蝿いのよガキンチョ。血を見たぐらいでオロオロしてどーすんの。痛いのは彼女の方でしょーが……」
 シャルルに叱責されて、ようやく落ち着きを取り戻す。
「うん、痛いのは確かだけど……でも嬉しいの、サヤの初めてをあげる事ができたんだから……」
 痛みからか、それとも嬉しさからなのか、ポロポロと涙を零しながら語る。
 彼女の事は酒場で別れて以来ずっと忘れていた。しかし、サヤはずっと自分の事を気にかけていた。ひどい事を言ったこんな自分を、どうして痛い思いをしてまで抱き合おうと思ったのか、理解出来なかった。
「その……本当に嬉しい……ありがとう……」
「礼を言っている暇があったら、早く続きをしたらぁ? 何時まで止まったままで彼女に恥じかかすんじゃないわよ」
「サヤは大丈夫だから、ねっ。お願い……」
 シャルルとサヤに言われ、セルシオは口を引き締める。そして、繋がったまま途中で止まった性器を再び動かしていく。
「んにゃっ……あんっ……」
 色々あって、肉竿はようやく根元まで彼女の膣内に入った。
「ぐぅっ……! きついっ……!」
 初めて雌の中を味わった感想は、内部が進入する者を引き締まると言わんばかりの滑りのある圧迫間による、窮屈さと圧迫感だった。
 受け入れた肉竿を放さんとばかりに締め付け、強く握られる。快楽と微弱な苦痛に顔をしかめた。
「入ってくる……暖かくて……ビクビクしてるよ……セルシオの……」
「サ、サヤのも……熱くて……すごく締まってる……ちょっときついなぁ……」
「恥ずかしいよ……でも嬉しい……もっと頂戴……」
 サヤの期待に応えセルシオは窮屈な肉壁の中の竿を引き抜き、そして半場の所で再び中へと押し進む。
「にゃぁっ……うぅっ……!」
 痛みと快楽でサヤが乾いた喘ぎ声をあげる。
「あぐっ……ぅっ……くっ……」
 滑り気があっても相当きつく、その肉壁内を出し入れするのは骨を折る行為だったが、苦労以上に快楽が走る。呼吸を乱し、卑猥な水音を鳴らす。
 肉竿を圧迫する肉壁はとても熱く、付け根から先端部分に掛けて快楽の刺激が走り、蕩けてしまいそうな感覚に浸る。まるでサヤの中に、自分が吸い込まれていくかのように。
 とても心地が良い。きついのに、快楽が疲労を打ち消しているかのように、疲れた体に不思議と力が入る。
「にゃっ……いっ……気持ちいいよ……」
「ふっ……ぐぅっ……僕も……サヤの中……すごい……」
 蕩けそうな快楽に頭の中がぼんやりする。冷静な考えが出来ず、下半身の竿を振り続ける事ばかりに意識が行く。
 気持ち良すぎて時折意識がふんわりと宙に飛んで生きそうな錯角さえ覚える。
「セル……シオ……胸も……触って……」
「あぁっ……んっ……くっ……すごい……暖かい……熱くなってる……」
 お望みどおりと、快楽で震える両肢を上辺に持っていき、程好い大きさの乳房に触る。ムニャッとする柔らかさが雄の肉竿を刺激し、中で膨張していく。
「やぁ……セルシオの……中で大きくなってるよ……」
「サヤ……柔らかい……気持ち良い……」
「にゃっ……あぁっ……そんなに激しくしないで……痛いよ……」
 気づけば、興奮の余りに自分が加減をしている事を忘れていた。痛がる声にハッとして、下半身の力を抜く。
「ご、ごめん……気持ちよすぎて……つい……」
 謝りながらも、一定のリズム感をとって微弱ながら動く。
「もっとやんわりとして……胸の方だって……」
「うんっ……わかった……」
 はぁはぁと生暖かい息を吐きながら、リズム感を守りながらゆっくりと出し入れを繰り返す。
 胸は先ほどみたいに肉球で左右に回すように揉み解し、時折やんわりと下から揉み上げる。
「ふにゃぁ……うぅんっ……」
 心地良さそうに、うっとりと解されていく。痛みはほとんど感じていない様子で、瞳はトロンとしている。
 その様子を伺って、性器の方はとりあえず一定のリズムを保ち、胸の方に集中する。
 前肢を駆使して押し潰し、離す。程好い弾力が弾み、潰れた形を元に戻す。何だか楽しくなり、色々な手法で乳房を転がす。
「うにゃぁ……んっ……くすぐったぁい……」
 胸を弄り続けている内に、サヤが身をくねらせる。その様が面白くてセルシオは出し入れのリズムを少し早めにして動き、胸の方は加減を加えてギュッと掴み、パッと離す。
 どんな風に弄っても弾んで元の形に戻る。乳房と言うのはなんて柔らかくて面白いのだろうと、セルシオの中で無邪気な部分が表に出る。
「そんなに……んぁっ……弄っちゃ……いやっ……えいっ……!」
「ひぅっ!?」
 乳房の感触を味わっていた最中、下半身から上半身に掛けてまで不可解な電流が走った。余りの快感で性器が止まる。
「えへへっ……んぅっ……セルシオは尻尾も敏感なんだぁ……」
「やっ……うっ……サヤぁ……そこは……!」
 見なくてもセルシオは自分が何されたか把握した。今彼は、サヤの爪によって尻尾を掴まれていた。
 尾を持つ生物ならば、そこは敏感な部分のひとつ。特にセルシオはその尾が他のポケモンよりも敏感に感じてしまう体質な為に、悶えてしまう。
「意地悪したお返し……ほらっ……休んじゃだめだよ……うふふっ……」
 トロンとして身を委ねていた雌は何時の間にか、頬を紅潮させたまま不適な笑みを浮かべていた。
 彼女はセルシオの細い部分の尾を爪の間に挟んでいる。器用に間を通すしてツーッと撫で、またもや体がビクンと震えた。
「やっ……止めてって……サヤっ……」
 下半身と胸を弄っていた前肢を止めて乞う。しかし彼女は、セルシオの弱点を見つけたと言わんばかりに優越感に浸る。
「やだもん……もっと意地悪する……今度はサヤがセルシオを気持ちよくしてあげる……」
 サヤはそう言うと、痛みを訴えていた膣内を自ら駆使し、上下に動き出す。その動きは唐突で、リズムを無視したようにやや激しい。
「うあっ……くっ……そんなに動いたら……君も痛いんじゃ……!?」
「んぅっ……痛いよ、でも……それ以上に気持ちが良いの……にゃんっ……」
 言葉通りにサヤは痛みを我慢している様子もなく、雄の肉竿を求めるかのように淫らに上下にピストン運動を繰り返す。もちろん。尾の愛撫も忘れてはいない。
「んぁっ……くっ……あっっ……そんな……駄目だよ……耐えられ……あぁっ……!」
 途中まで主導権を握っていたのに、奪われ、今じゃ彼女に快楽を与えられるか弱い雄と成り果てている。
「んにゃっ……セルシオ……可愛いよ……やっぱり……サヤがしてあげたほうが……良いみたい……んっ……」
 身をよがらせながらも、横目で顔をしかめているセルシオを見てクスッと笑む。
 下半身からの快感だけじゃ物足りず、彼女は前肢を止めていた方に、残った鉤爪を重ねて胸を揉み解す。
 快楽が全身と思考を満たし、分泌液が滲んで溢れ、結合部からチュプチュプと音を鳴らしながら漏れ出ている。
「んぁぁっ……サヤぁ……尻尾はあぁ……本当に……駄目ぇ……」
「にゃはっ……可愛い……とっても可愛いよ……んっ……サヤも……気持ち良すぎて……おかしくなっちゃうぅっ……」
 サヤは自然と腰の動きを早め、痛みすら感じていない様子で、激しい快楽に悦に入る。その反面、性器と尾からくる過激な刺激に身を震わせ、目は涙を流し、歯を食いしばりながらひぃひぃと呻く。
 もはや完全にサヤの手中に収められ、自分自身がサヤの玩具に成り果てたような劣等感に心が沈んでいく。それでも、この快楽は止まって欲しくなかった。
「ひぁっ……あっ……らめだぁ……ゆるひてぇ……さやぁ……」
「いやぁだ……にゃ……もっと……セルシオの情けない声……聞きたい……んっ……」
 情けない声でサヤに乞うも、逆に彼女の行為をエスカレートさせていく。爪先で尻尾をコリコリと弄り、下半身を激しく攻め立てる。
 再び横目で彼を見やるとその顔は涙と涎でぐしゃぐしゃ、悲惨そのものだ。
 それが良かった。前肢に重ねていた鉤爪に力が入る。胸をわざと乱暴に揉ませ、肉竿の先端から付け根に掛けて激しく動き、ピストン運動を早める。
「セルヒオ……すごいよ……あそこがビクビクひてる……! サヤも……すっごく気持ひいい……! もっと苛めてあげるぅっ……!」
 若干血走った目で弱々しい雄肉を食らい、性の根までも食らおうとするその姿は、まさに肉食的だった。
 サヤの容赦無い攻めにセルシオは抜け殻のように力が宿らず、涙を溢れさす。一方的に食われていくその様は、ただ食われ続ける草食だった。
「さ……やぁ…………耐えれ……な……ひぃ……」
「だめ……もっと我慢して……! こんな気持ち良い事なんて……他に無い……死ぬまで……犯しちゃうからぁ……!」
 物騒な事を言いながら、肉と肉がぶつかり合う音を響かせる。その卑猥な音色がサヤにはとても心地良く聞こえ、更に快楽を貪り、彼を苛める気持ちを催す素晴らしいメロディーとなる。
 果てたばかりで早々簡単には射精まで辿り着かず、敏感な尾と一緒に快楽ばかりが襲う。
 何時までも続くと思われるこの一方的な雄雌の淫らな行為。セルシオは、頭の中で地獄のような快楽によって本当に死をもたらすのではないかと、恐怖した。
 彼女に食われ続け、心はボロボロになり、最後には朽ち果てる己の姿を想像してしまった。大切に思っていた身内の笑顔が、一瞬ちらつく。
「げ、限……界……も……う……出るぅ……」
「んにゃっ……サヤの中で……思いっきり……出して……全部……絞ってあげるにゃぁ……」
 終わらぬ宴もそろそろ終盤に近づく。セルシオの逸物を食う膣が一層に引き締まり、彼の絶頂を催す。
 近くでシャルルが、顔を真っ赤にしながらその光景を見続けていた。その様子は、何だかそわそわしい。
「セル……シオ……サヤ……イく……イくぅ……! にゃぁぁぁっ!!!」
「……がっ……ぁぁぁぁっ……!」
 快楽の境地に達し、甲高い絶叫と乾いた呻き声が同時に発せられる。
 逸物を食い尽くさんばかりに肉壁がキュゥッと縛りつけ、竿から二度目の射精をした。彼女の中で、雄々しいまでに吐き出される濃厚な白濁液が、子宮にまで行き届く。
 ビュルッビュルッと結合部から性を放つ卑猥な音。最初のと比べ、それ以上の量をサヤの中で脈を打って吐き出し続ける。
「っ……ぁぁっ……~~っ……!!」
 射精を繰り返す度、セルシオはビクンビクンと全身を仰け反らす。涙と唾液と愛液で汚れた顔で舌を突き出し、聞き取れない嗚咽を吐き続ける。
 やがて収まりきれず、サヤと繋がっていた結合部から白い液体がびゅっと漏れ出た。若干血の色を混ぜた、ピンクの色をした精液が地面に落ちる。
「あはぁ……いっぱいでたぁ……お腹ぱんぱんだよ……」
 子宮を満たされ、ぽっこりと脹らんでいる腹を見るとサヤは満足そうに言う。その後もゆっくりと腰を浮かし、中に沈める行為を繰り返し最後の一滴まで絞りとろうと欲張る。
 追い討ちをかけられた肉竿は痙攣を繰り返し、やがて落ち着く。精根尽き、疲れ果てた雄は全身脱力感が襲う。体制を維持できなくなり崩れ落ちる。
 無言の呼吸を吐き、虚ろな視線は宙を泳ぐ。吐き出すものを吐き尽くした様に体中の力が入らない。
 長かったとも思える甘辛い一時が終わり、まだ体力を消耗しきっていないサヤはゆっくりと腰を浮かし竿を抜き、そのまま地面に腰を下ろした。
「雄ってこんなに出すんだ……ちょっと驚き……でも、すごく気持ち良かった証拠だよね……」
 肩で呼吸しながらサヤが言う。股を開き、栓を失った膣内からドロッと濃厚な淡いピンクのミルクが溢れかえり地面を汚した。
「はぁ……はぁ……」
 疲労感のあまりサヤの言葉に答える様子も無く、ただただ遠い空を眺めていた。そんな様をサヤは、にっこりと笑い。
「もう一回しよ、セルシオ。何度でも、あなたと繋がりたい……にゃぁっ……」
「サヤっ……んぅっ……!」
 汗だくな満面の笑みを、息を吸って吐く口元に唇を重ねた。再びサヤと体が重なり、二匹はふたたびひとつになる。体力が空になっているのにも関わらずセルシオは受け入れた。
 正気を失わせる激しい快楽と甘美な叫びを何時までも続けていたいと、彼女の体を強く抱きしめ、そう願った。

 巨大な樹の影に入り、何処までも広がる桃色の花園を眺めるようにセルシオとサヤ、シャルルの三匹が気持ち良さそうに座っている。
 あれからどのくらい時が経っただろう。
 長かったと思える甘美な一時が終わり、体を休めた二匹は体力を取り戻していた。あの後、甘美な行為が今になって恥ずかしいのか、二匹とも会話は無く一刻が過ぎた。
「それじゃ、サヤは帰るね……」
「え……」
 最初に切り出したのはサヤだ。何れ別れる事は分かっていた。だがセルシオの中でもう少し彼女と一緒に居たい気持ちがあり、名残惜しく言う。
「もう行ってしまうの?」
「うん、そろそろ戻らないとね……」
 サヤもまた名残惜しそうに寂しそうな表情を浮かべていた。
「君と一緒に過した時間は、恥ずかしくて、気持ちよくて、とても楽しかった。今でも胸がドキドキする……」
 爪を胸に当てて鼓動が今でも高鳴っているのを感じ取る。
「僕……初めての相手がサヤで……びっくりしたけど、とても良かった……」
 頬を紅く染めたセルシオが返す。
「サヤも、セルシオが最初の相手で良かったよ。ちょっと痛かったけどね」
 苦笑してこちらを向く彼女の笑顔が、とても綺麗だった。
「ねぇ、どうして僕の事を……その……する気になったの?」
 口に出し辛そうに、ずっと気になっていた理由を尋ねてみた。高いポケを出してまで、自分みたいな取り柄の無いポケモンを選んだのか、ずっと気になっていた。
 しかしサヤは、頬を紅く染めるとセルシオの顔を見づらそうに明後日の方向を向いた。
「そこまでは……言いたくないかも……ごめん……」
「いや、いいんだ。サヤには感謝してる。全力で恩返ししても、返しきれないくらい。本当にありがとう……」
 セルシオもちょっぴり小恥ずかしそうに、礼を述べた。そしてついうっかり口がすべり、最後の言葉を告げた。
「ほんの少しの間だけど、サヤに出会えて本当に良かった……」
 その言葉にサヤは驚き、顔を上げる。その表情からはうっすらと涙を浮かばせていた。
「サヤ……泣いてるの?」
 セルシオに指摘されると、慌てた彼女は涙を隠すように体育座りをして頭を膝につけて隠した。
「何でもない……こちらこそありがとうね。セルシオ……」
 突然の彼女の行動に、戸惑いを覚える。しかし、可愛らしい子供の様な彼女の姿がとても微笑ましく映った。
 やがて彼女は立ち上がり、背を向けたまま身支度をする。
 何処に置いていたのか、右腕に巻いているバンダナと同じ色した紫のポシェットを肩に掛けた。そして、背を向けて後ろ腕組をしてスラッとした体でクルリと振り返った。
「それじゃ。また何処かで会おうね。セルシオ」
「あっ!」
 前屈みになって弾ける笑顔をセルシオに向けて、魅惑的なポーズを取った。その姿にドキッとしながらも、ある事に気づいた。
「それは――」
 それを目にし、驚愕した。シャルルもそれに気づいたのか、目を丸くして驚く。
「探検……バッジ……」
 彼女の胸に付けている自分と同じ探検バッジ。形は同じだが、セルシオの探検バッジと比べて輝かしい光を放っていた。光に反射する、ダイヤモンドみたいに……
 探検家業を半年続けていたセルシオにとって、それが何を意味するかすぐに理解できた。自分のようなノーマルランクとは違う。栄光を積み重ねて続けて得られる、探検家が憧れ、目標の一つとする――ダイヤモンドランクだった。
「サヤ、君は――」
「バイバイ」
 何時までも耐える事の無い笑顔のまま、探検バッジをかざした。バッジの不思議な能力によって、彼女は一筋の光に照らされる。そして、光が消えると共に彼女の姿も消えていった。
 唖然とするセルシオと遠くで見ていたシャルル。
「アタシよりも、上だったんだぁ……」
 ぼそりと呟くシャルルの言葉が耳には入らなかった。セルシオは、サヤが消えた場所を何時までも眺め続けていた。彼女の満面な笑みと、ダイヤモンドのバッジが、何時までも脳裏に焼きついた。
 彼女の姿が消える寸前に、彼女の口が何かを告げていた。しかし口の動きをなぞるだけで、何を言っているかまではわからなかった。一部、解析できる部分だけをセルシオは口にした。
「だ……い…………き?」
 上手く見る事が出来なかった為に、その三文字程度しか解析できず、意味が分からなかった。中途半端な自分の記憶力を呪った。
 やがて涼しい風が残された二匹の体毛を靡いた。
「お、終わったようね。お疲れ様……」
 今まで見守ってくれていたシャルルが、何だかもじもじした様子でセルシオを労いの声を掛けた
「シャルルさん……これでいいんですか?」
 振り向かずに、落ち着いた声で言った。彼女は頬を紅潮させながらコクンと頷いた。
「えぇ、初めてにしてはまぁまぁね……んっ……」
「あれ、どうかしました……?」
「……」
 セルシオが尋ねても、シャルルはそっぽを向くだけで何も応えなかった。そして黙って自分から取り上げたバッジを差し出し、返す。
 バッジを受け取り、何の輝きを持たないバッジを思い思いにじっくり眺めた。そして前肢でそれをかざした。
 サヤと同じく、黄色い光が二匹を包む。宙に浮かんでいく心地を感じながら広大な桃源郷を後にした。

 眩いばかりの世界が続く。
 光に身を包み、自分の体が凄まじい速さで飛ばされる錯覚を覚える。そんな中で不思議と暖かさを肌で感じていた。
 これが、バッジの力なのかとセルシオはその能力に感動した。
 光が時を得て、やんわりと消える。セルシオの目の前には、ダンジョンである桃色の花園の入り口から遠く離れた場所に居た。壁代わりの巨大な花も、遠くから見れば他の小さな花と変わらなように見える。
 特別な思い出も無い低級ダンジョンだったが、初めて記憶に残る探検が出来た。茶番とも思えるような救助だったが、一生で一度しかない素晴らしい救助だと思えた。
 花の香を運んでくれる風がセルシオの体毛を靡いた。
「それじゃ、帰りますか……はぁ、疲れたぁ……」
 今になって、体中に蓄積された疲労が出る。初めての雌との交わり、あんなに激しくやったのだから当然だった。
 接待目的の救助とはこういう事なのかと、何だか半分だまされたような気がして腑に落ちなかった。
「あっ、そうだ……報酬は……!」
 今になって本来の目的を思い出す。サヤもう行ってしまい、聞く事も出来ない。セルシオは踏み倒されたのじゃないかと一瞬不安に思った。
 だがその不安もシャルルが一蹴して答える。
「問題ないわよ。早急な依頼だったから、報酬は予めブールが預かっているわ。その他の物も貰ってるからオロオロすんじゃないわよ」
 その言葉を聞いたセルシオはふぅと安堵した。
「全く……でもまぁ、これでブールにも報告が出来るわねぇ、秘薬の結果を」
 シャルルの返答に、セルシオはある事を思い出す。
「そうだ……あの秘薬の結果を言わなきゃ……でも……」
 ブールの頼み事である、秘薬の効果を報告する仕事が残っていた。だが、セルシオには秘薬を飲んでも、これと言った特別な感じるものはなかった。これではどうやって報告するか分からなかった。
「安心しなさいよ。効果はちゃんと出てたわよぉ」
「え、本当ですか? 僕はこれといって何とも……」
「アタシが無駄に坊やのエッチする所を眺めていただけじゃないのよ。ブールにはアタシが伝えてあげるから、とっととポケ受け取りに帰るわよ~」
 急かす様に言い放つとさっさと歩き出した。様子のおかしいシャルルに戸惑いながらも、追う様に後から着いて行った。
 ふと、背後を見やる。不意に自分がギルドから探検家としての資格を手にいれ、探検バッジを手に入れて最初にここに来たのを思い出した。それが懐かしくてクスッと笑った。
 サヤもまた、同じ気持ちじゃないのかと思った。桃色の花園は、初々しい探検家が初めて行く場所であり、最初の探検活動の思い出の場所とも言われている。だからこそ、彼女はここを選んだのかも知れないと勝手な解釈をした。
「置いていくわよガキンチョ!」
 思い出に耽っていると、シャルルの怒鳴り声に現実に引っ張られる。すでに小さくなっている彼女を、セルシオは慌てて追った。
 
「いやぁ、お疲れじゃお疲れじゃ~」
 大層機嫌良さそうに、髭をピクピク震えるくらいの高い声で笑うのはブール。
 目的を果たし、無事に『救助』を終えた事を報告してからこのテンションだった。
 取り合えず救助の成功を伝えたセルシオは今、彼の部屋にいる。つーんと臭う悪臭にもすっかりなれ、平然としていた。背後には、ホームとシャルルが退屈そうに待っていた。
「初めての救助で緊張して色々と大変じゃったろうが、無事に終わって良かったわい」
 ふぇっふぇっと笑うブールに、セルシオの表情は何処がムスッとしていた。
「あれが救助ですか? 接待とは聞いてましたが、まさかあんな事するなんて思ってませんでしたよ!」
 やや怒り口調で言う。ブールは惚けた顔で言い返す。
「おや、賢いお主の事じゃからてっきり把握していたかとワシは思っていたのじゃがね……?」
「とんだ救助でしたよ。おかげで明日からは腰が筋肉痛で地獄をみるでしょうね。じっくり接待しましたから……」
 冗談めかした台詞に、またもや大笑いされた。
「いやぁ、普段お主にはなかった若さを爆発させる良い機会じゃったろうに。これも経験じゃよ、経験。ワシもなぁ……昔はそれは自分の若さを女子に容赦なく爆発させててのぉ。どの娘もひぃひぃ言っておって……」
 勝手に昔話を始め、聞きたくも無いとセルシオは溜め息を吐く。 杖を必要とする老体に、若かった頃何をしていたか余り知りたい気はしなかった。それにしても、外見に似合わず結構の色好きな老人だと思った。
「もういいですから……秘薬の結果はシャルルさんが報告してくれると言うので、早く報酬をください」
 真の目的を口にする。話の途中だったブールは不満気に口元をへの字に曲げる。しぶしぶと、彼は後ろの相変わらず整理整頓されてないごっちゃした机と向かう。
 がさごそと物を散らかす様に探し出し、やがて何かを見つけたようにそれを手に取る。
「これじゃこれじゃ」
 よいしょと両手で持ち、セルシオの方に向ける。やや大きな布袋だった。重たそうに持ちながら歩く度に、袋の中でチャリチャリと気持ち良い音が響く。
 ブールはふぅと溜め息を吐いて彼の前に置いた。目の前の布袋はどっさりとした重量感を思わせる。
 首に提げるには大げさと言えるほどのサイズに、セルシオは目を輝かせた。現実味の無い感覚で大きな袋をみやる。夢ではないのかと、軽く頬を抓ってみた。だが、袋の存在は消えない。紛う事なく現実の代物。
「うわぁ……これが……二万ポケ……」
「全部がポケとは違う。他の報酬も含めてこのサイズなのじゃからな。全く、重くてしょうがないわい……」
 肩をがっくりと下げ、一息を吐くブール。彼が椅子に座ると、セルシオは居ても立ってもいられずになり袋を縛る紐を器用に解いた。パラリッと開けられた袋の中身に、心を奪われた。
 溢れんばかりに黄色く輝く無数の通過が広がるポケ。余りの素晴らしい眺めに、思わず全身を袋の中にダイブしたくなる衝動を抑える。
 ポケ以外にも、各種色々なアイテムがポケに混ざって埋まっている。青い玉をしたおおべやのたまや、ぼうぎょスカーフ。ポケに隠れて埋まって見えるのは、タウリンと言う高級なドリンクだ。
「すごい……これ全部、僕の……」
 邪気の無い笑みを広げる。夢の世界でお宝を見つけた子供の様な顔で、ボリュームのある袋の中身を若干震える前肢を伸ばし、一部のポケを掴み取ろうとした。これでもう、苦しい生活とはしばらくおさらば出来る。そう思った、その時――
「はいどいたどいた~」
「どけっ」
 セルシオの背後にいたシャルルとホームが、今まさにポケを掴まんとするセルシオの体を無理やり押し退ける。
 突然の行為に戸惑い、ムッとして吠えた。
「何をするんですかっ! それ全部僕のですよ!?」
「全部だと? お前は何か勘違いをしてないか?」
 ホームが嘲笑う口調で言う。何の事か分からず、理解に苦しむ若い雄を見下しながら話す。
「お前は負債者で、払うべきものが払えないでポケに行き詰っていたからブールの仕事を引き受けたのだろう?」
 そう言われてセルシオは押し黙る。ギルドへの上納金をずっと滞納していた事をすっかり忘れていた。
 それともうひとつ、彼には払うべき物があった。ホームの横でクスクスと笑うシャルルを見て思い出した。
「アタシもさぁ、坊やに破られたクッションの弁償がしてもらわないとねぇ~。それも高級の……ふふんっ」
 唖然としながら、体が麻痺したように動かない自分をせせら笑うホームとシャルルを見つめる。そしてポケの詰まった布袋に向き直る。
「さぁって、清算開始といきますかねぇ小鳥さぁん?」
「五月蝿いぞチャラ猫。こっちは後の仕事が詰まってるんだ。さっさと済ませるぞ……」
 そう言って二匹は勝手にセルシオの報酬に手を伸ばす。
「あ、あぁっ……! そんな、ブールさん!」
 頭では理解はしているものの、すぐには納得が出来ずブールに助け舟を求めた。だがしかし、彼はやれやれと言った顔をするだけで何も言わず、布袋に近寄る。
「そう言う事ならば仕方が無いが、もう少し礼儀ってものを弁えんかお主等は……っと言いたい所じゃが、ワシもさっさと貰う物もらって一眠りしたい所じゃ、さてさて……」
 ブールはそう言うも、途端に顔をニヤニヤさせて布袋の前で屈んだ。そしてポケに向かって手を伸ばしだした。
「ぶ……ブールさん……何をしてるのですか……?」
「何って、貰う物を貰うにきまっとるじゃろが」
「はぁっ!?」
 当たり前のように言うブールに、セルシオは驚愕した。ホームやシャルルはともかく、ブールに支払う物なんて無いはずだった。「何を言ってるんですか!? 僕はブールさんに特に払わないといけないものなんて無いでしょ? いくらなんでも理不尽すぎます!!」
 駄々をこねた子供の様に抗議するセルシオに、ブールはふぅと溜め息を吐くと、落ち着いた口調で話し出す。
「それがあるのじゃよ。お主の頭の中では、ワシが無料で仕事を紹介してもらえるとでも考えていたのじゃろうが、そんなはずは無い」
 理屈を語る彼の口調に、間の抜けた顔で聞く。
「仮にホームやシャルルに支払うべきものが無いとしても、仕事をわざわざ君に紹介したワシにも取り分はある。色々手はずを整えて、それだけやっておいたワシに取り分が無いってのは酷な話じゃろうに」
「そ、そんなぁ~……僕を助ける為にしてくれた事じゃ……」
 絶望するセルシオにブールは続ける。
「仕事の件だけではない。ギルドからの追放を白紙にした事だって、結構苦労したんじゃよ? 色々根回しをしたからのぉ。それを、セルシオ君に同情して救いの手を差し伸べたと勘違いするのは、ちと勝手がすぎるのでは無いかのぉ?」
「まさか……秘薬の件はあくまで次いで……本当は僕を売り物にしたんじゃぁ?」
「そこはどう思うが構わんが、悪者呼ばわりされる筋合いはないぞぉ? こうやって君も救われた訳じゃからな。機会をくれてやったワシの事を感謝するべきじゃよ
 それはそうと、秘薬の効果はワシ個人が知りたかった事じゃから、たまたまお主と言う丁度良い実験台があったからこの話を勧めたのじゃ。どうじゃ、ワシって中々利口じゃろ?」
 とんでもない話だったが、あくまで筋は通っている。セルシオは愕然のあまりにその場に崩れるように座り込む。
「そう言う事だ。お前は運が良かっただけだ」
「そうよぉ、その点アタシは被害者なんだから、運が無いほうよぉ。自分の幸運に感謝しなさい。坊や」
 ホームとシャルルが同調するように言う。
 もはや反論する気力もなくなり、自分の報酬を荒らされるように取られていく様を、ただただ見るしか出来なかった。
「あぁ~……もぅ~……」
「そぉがっくりするな、お主にもちゃんと取り分はあるわい。ん~っと、必要最低限には残すとして、ワシとホームとシャルルで……それぞれ三割と考えて、残り一割ってとこじゃな」
「えぇ!? って事はたったの二千!?」
 余りにも減らされた自分の取り分を耳にし、更なる追い討ちかけられた。精神的ダメージがでか過ぎて、ついに涙目になった。
 がっくりと、その場をうな垂れた。運が良かったと言われても、とてもそんな気がしない。利用され、労働の果てに搾り取られていくこの現状を呪った。
 そんなセルシオを余所に、三匹は鼻歌を歌いながら、15の弱小探検家が体を使って稼いだポケを分配していくのだった。
 清算が終わり、歩く気力も無い体に鞭を打って、ぐしゃぐしゃになった布袋に近づく。見るのも躊躇いたくなる気持ちを堪えて中を覗く。
 たんまりと詰まっていたポケは、見るも無残に減っていた。幸いにもアイテムの方には手をつけられていなかった。
 それでも無残な仕打ちにセルシオは袋に顔を突っ込むように崩れた。
「あぁ~っ……」
 たった二千ポケ、これでは貧乏脱出なんて夢のまた夢……救いはされたものの、現実と言う生き物はそうそう甘くはなかった。
 これでまた、切り詰める生活の続行を思い浮かべ、袋の中で大粒の涙を零した。一層と重くなり体を動かすのもだるい。
 魂が抜けたようにぐったりと項垂れるセルシオ。他の三匹は自分用のポケ入れ袋の中に入ったポケを確かめる。
「まぁ、大負けしてやった半年分には行き届かんが、とりあえずは良しとしよう。ご苦労だったな弱小探検家」
「アタシも破れたクッションには行き届いてないけど、それは後々じっくりと返してもらうわ。頑張りなさい、坊や」
「ふぇっふぇっ、これで今日は女子と酒を振舞おうかのぉ~」
 それぞれポケを確認し終え、袋の紐を締める。
 顔を向けずとも、まだ足りていないのを耳にして、更なる追い討ちをかけられた。まだ、負債が残っている……
「~っ……」
 もう声も出ない。今なら煮るなり焼くなり好きにしろと言える気分だった。
「それじゃ私は仕事があるからもう出る。次はきちんと支払うのだぞ、セルシオ」
 ホームがはじめて、セルシオの名を口にしたが、もうどうでも良い事だった。感動する気にもなれない。
 彼は口元をやんわりと吊り上げ笑って見せた後、扉を出た。
「ワシもこのポケでちょいと豪遊してくるワイ。それじゃ~の。セルシオ君」
 ブールも続いて、愉快そうに笑いながらセルシオに別れを告げた後、扉を出て行った。
 後に残されたのは、布袋に顔を突っ込んで魂が抜かれたセルシオとシャルルのみが残された。
「坊や、そう気を落とさない。あんたは若いから次があるわよ」
 慰めの言葉をかけて来るシャルルだが、それでも沈んだ彼の気持ちはちっとも和らぐ事はない。生暖かい溜め息を吐き、袋の中で反射する。
「結局利用されただけかぁ……はぁっ……」
 情けなく愚痴る雄に、シャルルはやれやれと溜め息を吐いた。ゆっくりと暗く小さくなった背中に近づき、ポンと背中を叩いた。撫でるように触った後、優しく呟く。
「毛並みが汚れてるわ。アタシの部屋に来なさい。綺麗にしてあげるわ」
 珍しい態度を取る彼女に、ようやくセルシオが落ち込む以外の反応を見せた。ぶかぶかになった布袋から顔を上げて、にんまりする笑顔を見返す。
 何故だかわからないがえらく上機嫌だった。クッションの弁償でもらった一部のポケを手にした喜びとはまた違っていた。尻尾をゆらゆらと振るって、まるで誘うように背中を向けた。
「はぁ……」
 やるせない返事をしながらも、重くなった体を起こす。ほとんどアイテムばかりが残った報酬の入った袋の紐を縛った。それを確認するや否や、シャルルは鼻歌を歌いながら扉を開く。
 彼女が扉を出た後、自分も続く。
「ほらぁ、こっちよん。早くきなさい~」
 急かすように言う。未だに落ち込む余裕も与えてくれない言動に迷惑しながらも言われたまま急ぐ。彼女の申し出は有り難いが、正直言ってそんな気分にはなれない。
 彼女を含む、三匹に報酬の九割を毟り取られているこの現状に何をされようがとても喜べる気がしない。放って欲しかった。
 そう思いながら、一瞬の出来事の様にシャルルの部屋に到着した。相変わらず派手なデコレーションを施した扉だ。
「早く早くぅ~」
 扉を開けて先に入るなり、誘うように手招きする。はいはい、と適当な返事を返しながら続いた。言われた通り彼女の部屋に到着した。
 甘ったるい臭いが漂うも今はそれすら気にならない。彼女はニコニコし、セルシオが入ってくるのを確認すると、また手招きする。
「こっちこっちぃ~、んふふ」
「何なんですか……」
 異常なくらい機嫌の良さそうなシャルルに疑問を抱く。何時もどおり部屋の中央で毛繕いをしてもらうはずだったが、なんだか様子が違う。彼女は部屋の中央ではなく、片隅に広げられた、ベッドと思わしき綿が広げられている。
 不思議に思いながらも、彼女のそばまで来るとセルシオはその場で座った。ふんわりとした感触が全身を包み、眠気を誘うような心地良さが広がった。
「どう? アタシのベッドなんだけど、気持ち良いでしょ~」
「え、えぇ……」
 躊躇い気味に返答をする。こんな気持ち良い場所で毛繕いをしてもらえるなんてとても有り難い事だ。
 しかし、セルシオの中で不安が生まれる。この綿のベッドも、自分が破ってしまったクッション同様に高いのだろうと想像した。いや、面積が広いだけあって、それ以上なのかもしれない。
 綿が生み出す眠気に負けて、また汚してしまったらどうしようかと、不安がつい面に出てしまう。しかし、シャルルはそんな想像を見抜いたように言った。
「だいじょーぶ。このベッドは古いからもうすぐ捨てる予定の物なの。だから汚れても心配しないでいいのよぉ」
 不安は杞憂に終わり、ふぅっと溜め息を吐いた。これなら安心して眠っていられる。そう考えた矢先、彼女の笑みが急に深く変わり――
「だから、たっくさんエッチな事をしても問題なぁ~し。ふふふっ」
「え……?」
 エッチな事? 急に何を言い出すのだ彼女は?
 訳が分からない表情するもシャルルは説明せず、目の前にご馳走でもあるかのように唇を舐める。気のせいか、ほんのり顔が紅潮していた。
 ゆっくりとセルシオに迫る。距離が縮み、もうこれ以上進めない所まで来ると、その厭らしい笑みを浮かべたまま、いきなり前肢で体を突き飛ばす。
「うわっ!?」
 不意打ちを食らい、大きく体制を崩して仰向けに倒れる。幸い、頭部は綿によって守られたが、無防備な腹をシャルルの前に曝け出してしまった。
 驚き、困惑する。間を置いて、身を起こそうとするセルシオの腹の上を、シャルルがピョンと飛び乗った。
「ははっ、坊やのお腹って以外に柔らかいのね~」
「ちょ……いきなり何をするんですか!?」
 憤りに叫ぶも、シャルルは動じる様子もなく彼の上で頬ずりをしてくる。
「ん~、フサフサしてて気持ち良いわぁ~……ペロッ」
「ひっ!?」
 両前肢でシャルルを押し退けようとした手前、彼女は味見をするように、四足生物の一番弱い部分に舌を走らせた。
 身を震わすほどの電流が全身に駆け巡り、たまらず悲鳴を上げてしまった。
「んふふ、効果はまだ続いているようね……秘薬の……」
「ひ、秘薬ぅ!?」
 ご名答と言わんばかりに彼女はクスッと笑い、もう一度セルシオを腹をなぞる様に滑らせる。
「ふわぁっ……」
「ペロッ……坊や、自分が飲んだ秘薬がどんな物か教えてあげましょうか?」
 誘惑するような囁きに、セルシオの体全身が熱くなっていくのを感じる。サヤと初めて抱いたあの高鳴りが甦ってくる。
「あれはね、長時間持続効果のある特性の媚薬よ」
「び、び、媚薬ぅぅぅっ!?」
 媚薬と聞き、セルシオの目が見開いた。知った途端に、全身が更に熱くなっていく。
「そうそう。しかも唯の媚薬じゃないの。快楽はそのまま感じながら、オーガニズムを迎えにくくさせる、遅漏効果付き。早漏で自信が無い雄ポケモンの為に作られた秘薬。
 それだけじゃなく、性的興奮も助長させるの。あなたがサヤって子と抱くとき、ほとんどスムーズにエッチする事が出来たのは、この効果のお・か・げ」
 それを聞いてハッとする。サヤに口付けをされた時、あの異常なまでの高まりと興奮を思い出す。あれは単なる性的欲求ではなくて、秘薬の効果だとはじめて知った。
 どうりであまり緊張がしないはずだった。もし秘薬がなかったら、緊張のあまりにサヤとあそこまで出来るはずない。
 自然的な本能ではなくて、秘薬による性的欲求を引き出されたに過ぎなかった。それが、今も尚あるのだ。
「なかなか良い出来だと思わない~? あれがあったからこそ、何度も気持ち良い事が出来たのよ。それも長時間! ブールも実験が成功してて大喜びしてたわ」
「そ、それを知っていてて、僕の監視をしたんですかぁぁ!?」
 苦痛そうに叫びながらも、抑えきれない欲求が沸き起こる。シャルルの腹の下で、自分の雄肉がそそり勃つ。
「あら、もうこんなに固くしてぇ、あれだけヤったのにまだ足りなかったのねぇ。おませな坊や……むふふふ」
 口を押さえて笑い、前肢を伸ばし、セルシオの物に触れていく。
「くはっ……!!」
「あ~ら、そんな声だしてぇ、触れただけなのにそんなに気持ち良かったのぉ?」
「ち、違うぅ。媚薬のせいでぇ!!」
 必死に媚薬に抗おうと体に力を入れるも、物は完全に固く勃起していた。情けないまでに効果に逆らえていない。
「まぁいいわ。実はね、アタシも坊やとサヤって子のする所見ている内に久しぶりに雌が疼いちゃったのよぉ……」
 シャルルは肉竿に触れた前肢を口元に持って行き、ペロリッと厭らしく舐める。やがて、肉竿にピチャッとねっとりとした液体が先端部分に触れる。
「だからさぁ、疲れている所もーしわけないんだけど。もう一戦相手してもらえるぅ~? 嫌と言っても無理やりヤっちゃうけどね~」
「は、離してぇ~っ」
 助けを乞う様に言うも、シャルルの力は体系差を思わせないほど強く、セルシオでは押し返せなかった。
 彼女はそのままジリジリと彼の上で這いずり、顔同士が向き合わせる。
「抵抗したって無駄。もちろん助けを呼ぶこともね、この時間帯はギルド員全員が出払ってるの。だからしばらくはアタシと坊やだけ~」
 念を押す声に、セルシオは絶望感を覚える。ひくついた笑みを浮かべる彼の顔を見て彼女は高らかに言った。
「だ~か~ら~、秘薬の効果が切れるまで、アタシと一緒にイチャコラしましょ~ね~、セ~ル~シ~オ~」
 色めいた甲高い声で、顔の周りにはハートマークを沢山浮かばせていた。
 セルシオは気づいていなかった。二匹が汗だくで乱れていた際に、ありったけのフェロモンを放出したおかげでシャルルの雌な感情を刺激し、彼女を興奮させていたのだ。
 力では及ばないばかりでなく、疲れきった体では抵抗する手段が無い。
「ひ、ひぃ~……」
 ポケだけでなく、精力まで摂取されるのか? 助けて欲しい。
 体は欲求するも、体はすでにサヤとの長い行為によって疲労がたんまりと蓄積している。それに搾り取られた報酬の事もあって、精神もズタボロ状態だ。
 雨に晒され、捨てられた子猫の様に怯えるセルシオの姿が、返ってシャルルを誘ってしまう。
「んんぅ~、良い顔ね~。坊やは笑う顔もいいけど、怯える顔の方がもっと素敵だわぁ~。こうなったらアタシもたまんなぁい~、うにゃぁん~」
 甲高い甘え声を耳にし、いよいよ食われていく恐怖が襲う。
「い、いやだぁ……ゆるしてぇ……」
 涙声になり、必死に懇願するも、彼女は唇を近づけながら、突き落とす様に言った。
「だぁ~めぇ~、枯れるまで付き合って、あ・げ・るぅ~」
「ぎにゃあぁぁ~~っ……」
 悲鳴を上げようとする若い雄の唇を、容赦なく塞いだ。
 塞がった唇の間から嗚咽が漏れた。いくら心の中で叫ぼうとしても、その声はシャルルと自分以外の者には届かない。他のギルド員が戻ってくるまでずっと彼女と一緒だ。そう、ずっと一緒……
 この日、若い十五の雄は経験し、知った。雌という生き物は、なんて性欲に溢れた生き物なんだろうと。
 誰も通らない扉の向こうで、肉を求める雌獣の甘ったるい声と、枯れた声で悲鳴をあげる雄獣の叫びがずっと響いたのであった。

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最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 新作キタコレ!
    俺はこの時を持っていた!
    ―― 2011-07-18 (月) 12:22:56
  • ごめんなさい。
    本当にどうでもいいことなんですが。

    初めての救助が一瞬初めての勃起に見えました。
    眼科行ってきます。
    ―― 2011-07-18 (月) 14:04:44
  • 今回はいつもと違って和姦に近い形での性交となりましたね。また、媚薬も気づかない程度に進行して行くのでご都合主義の過ぎない程度に感じられたのも私の好みにあい、美味しくいただけました。こんなヤシの実さんも新鮮でいい物ですね。
    今回は、ルクシオとニューラと言うことでどちらがネコだかわからない刺激的な展開に……っ。
    まだ続編を作ることもできそうな話しの終わり方、この作品を無理に続けてとは言えませんが、仕事を続けることへの葛藤から妹やサヤへの複雑な思い。客との関係や借金問題、そして何よりもラグラージなど、これから先の物語を創造するには材料が多いですね。
    今度とも料理を期待できる、そんな作品でした。執筆お疲れ様です。

    最後に誤字報告を


    前半
    辺り一面に広がるのはの臭いが香る海。

    丸い水色をした丸型

    二匹が向かっているのは、その岸壁の崖上にあるのは、灰色に塗られた木材作りの半球状の建物だ。大きさは差ほども無い。しかし崖に近い故に、周り草と岩以外ものは何も無く、孤立するように建てられている為に妙な存在感がある。

    ポケが常に耐える事なく行き交っているのだ。

    「それはそうと、ギルドからこいつを個々に連れて来る様にと、わざわざこんな悪臭のする部屋まできた。それでこいつの処分はどうなったのだ?」

    そんな乱れた体毛じゃ誰も及びにならん。ちょいとこっちに

    後半

    掲示板の墨に

    その場で足元を救われのがおちです

    袋の中で~文字の
    ――リング 2011-07-18 (月) 22:25:28
  • >名無しさん
    かなりお待たせしたみたいで申し訳ないです。
    出来る限り早く投稿したいのですが、どうにも低ペースなだけに時間が掛かってしまいましたw

    >名無しさん
    それは大変ですね~。ポケモンセンターで診断してもらった後に、ラッキー達の熱い介護を受けることをお勧めします。

    >リングさん
    初めてのポケダン物なので、ちょっとやんわりとした雰囲気を演出してみましたが、結局は雄が食われていく展開に…w
    どちらも猫ですが、二足と四足の官能シーンにはちょっと頭を悩ませましたねw
    ポケダン物は書いてて、人間の居ない世界観が素晴らしくて色々とアイデアが閃くので、書いている方も楽しいです。
    期待にお答えして、もし次回作を作るのであればラグラージのマダムを登場させたいと思います。インパクト要因としてw
    誤字の報告どうもありがとうございました。早速修正させてもらいました。これからもよろしくお願いします。
    ――ヤシの実 2011-07-19 (火) 22:54:46
  • 「雄としての"維持"が、懸命に零れる」 間違いです。
    それと、ホームはムクホーク、ムクバードどっちですか? 小説内だけでなく紹介ページ等でも統一されていません。
    間違いが他にもあった気がしなくもない。

    前半の実験やら薬やらでなんとなく思っていましたが、やっぱりこうなったか。
    濃厚エロご馳走様でした!美味しかったです。
    ヤシの実氏と言えばエロ。ほぼ全ての作品に入っていますので、そう思います。
    とても楽しめました。今後の活動も頑張ってください。

    ラグラージのイメージがなかなかブレイクされてしまった。崩壊とまでは行きませんが、お気に入りポケなんで……ある意味新鮮。
    ――ナナシ ? 2011-07-20 (水) 08:18:03
  • 続編期待したいです!
    表の顔は探検隊!しかし裏では…みたいな感じが好きです。
    そしてセルシオのウブさと周囲のセルシオに対する扱い方等で絶妙にいい感じのキャラが出てると思います

    2万ポケが強豪の探検隊にとっても破格なら2000ポケ(+アイテム)で、うなだれるほどではないかも?期待が大きすぎたからなのかな。
    極論道具を売れば…
    貧困な時期という記述があったかもしれませんが、物価が多少わかりづらいかもしれないです。
    ―― 2011-07-20 (水) 20:54:35
  • 非常に遅れた返信ですみません。

    >ナナシ様
    ご指摘どうもありがとうございます。確認しだい、即効で修正させてもらいました。

    健全な雄相手への薬といえば、それしか考えられませんね。しかし、媚薬と言っても、自分の中では様々です。
    強制発情とか、気づかない内にその気にさせたりとなどなどです。
    もっと沢山の官能パターンが思いつけば、薬も色々な使い道が見つかります。そうなるように自分も努力します。
    ラグラージに関しては、思い切った行動をしてみましたが、思った以上に好評(?)だったようで、嬉しい限りです。

    >名無しさん
    続編に関しては、自分も企画段階のまま保留をしてますが、続きは書きたいと自分も思っています。
    今まで登場してきたキャラの中で、セルシオは雄としても、分かり易い部分と気難しい所を盛り込んだ性格となっています。
    分かりやすく言えば、自分に正直じゃないって感じですね。でもいざ行為に走ると、素直な感情が出てくる少年ですね。
    そんなセルシオを取り巻くキャラ達にも、性格が分かりやすい様に工夫してみました。

    金銭面では、ちょっと考えが甘かったと言わざるえないです。
    しかし、セルシオ視点から言えば、一度に2万ポケという大金を手にしたのは初めてで、一時的な感覚麻痺があったと言う事を見てもらえれば幸いです。なにせ本当に貧乏ですから(笑)
    ――ヤシの実#grn 2011-08-16 (火) 21:18:11
  • サヤちゃん凄い可愛いです!
    ダイヤモンドランクとは、正に衝撃的でした。
    ―― 2012-01-14 (土) 22:33:52
  • 描写面で可愛いと感じてもらえて光栄です。もっと詳しく描写できるようになりたいですね。
    ダイヤモンドクラスって確かに名前からして高そうですが、中にはもっと高いランクがいっぱいありますからね。おくが深いですよポケダンは。
    ――ヤシの実 2012-12-26 (水) 01:20:48
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Last-modified: 2011-07-20 (水) 00:00:00
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